(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】新規のマイクロジストロフィンおよび使用の関連する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20240507BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20240507BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240507BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240507BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240507BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240507BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20240507BHJP
【FI】
A61K48/00 ZNA
A61K38/17
A61K35/76
A61P21/00
A61P43/00 101
C12N15/12
C12N15/864 100Z
(21)【出願番号】P 2022165111
(22)【出願日】2022-10-14
(62)【分割の表示】P 2021014384の分割
【原出願日】2016-01-15
【審査請求日】2022-11-10
(32)【優先日】2015-01-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517075883
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ワシントン
【氏名又は名称原語表記】University of Washington
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(72)【発明者】
【氏名】チャンバーレイン,ジェフリー エス.
(72)【発明者】
【氏名】ラモス,ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】ハウシュカ,ステファン ディー.
【審査官】池上 文緒
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-516252(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0136729(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0234255(US,A1)
【文献】Molecular Therapy,2011年,Vol.19, No.7,p.1331-1341
【文献】Human Gene Therapy,2012年,Vol.23,p.98-103
【文献】Molecular Therapy,2013年,Vol.21, No.4,p.750-757
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 48/00
A61K 38/17
C12N 15/12
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号16と少なくとも
90%の配列同一性を有する核酸配列を含むマイクロジストロフィン遺伝子、および
アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノウイルス随伴ウイルス(rAAV)ベクター
を含む、医薬組成物。
【請求項2】
前記核酸配列が、配列番号16に少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記核酸配列が、配列番号16に少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
タンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子であって、前記タンパク質が、配列番号4に少なくとも
90%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、マイクロジストロフィン遺伝子、および
アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノウイルス随伴ウイルス(rAAV)ベクター
を含む医薬組成物。
【請求項5】
前記アミノ酸配列が、配列番号4に少なくとも95%の配列同一性を有する、請求項
4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記アミノ酸配列が、配列番号4に少なくとも99%の配列同一性を有する、請求項
4に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)ベクターが、AAV6、AAV8、またはAAV9血清型を含む、したがって、請求項1または
4に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記組換えアデノウイルス随伴ウイルス(rAAV)ベクターが、rAAV6、rAAV8、rAAV9、またはrAAV2/6を含む、請求項1または
4に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記アデノウイルス随伴ウイルス(AAV)ベクターが、AAV9血清型のものである、請求項1または
4に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記組換えアデノウイルス随伴ウイルス(rAAV)ベクターが、AAV9血清型のものである、請求項1または
4に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物が、筋肉内投与のために調製されている、請求項1から
10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物が、静脈内投与のために調製されている、請求項1から
10のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記医薬組成物が、サルコペニア、心臓疾患、および悪液質のうちの少なくとも1つの病理学的影響または症状を軽減するように構成されている、請求項1から
12のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
対象において筋ジストロフィーを処置または予防するための医薬の製造にお
いて使用するための請求項1から
13のいずれか一項に記載の医薬組成
物。
【請求項15】
対象における筋ジストロフィーを処置または予防する
ことに使用するための、請求項1から
13のいずれか一項に記載の医薬組成
物。
【請求項16】
前記ベクターは、前記マイクロジストロフィン遺伝子の発現のレベルが、横紋筋細胞において非筋肉細胞における前記マイクロジストロフィン遺伝子の発現のレベルよりも少なくとも約100倍高くなるように、前記マイクロジストロフィン遺伝子を発現するよう構成されている、請求項
14または
15に記載の
医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物が、筋肉内投与および/または静脈内投与によって投与される、請求項
14から
16のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項18】
前記マイクロジストロフィン遺伝子が、前記対象の1つまたは複数の筋肉内で前記1つまたは複数の筋肉の収縮性が向上するように発現されるマイクロジストロフィンタンパク質をコードする、請求項
14から
17のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項19】
前記マイクロジストロフィン遺伝子が、前記1つまたは複数の骨格筋の少なくとも1つの比筋力発揮能力が正常な比筋力発揮能力の少なくとも40%の範囲内まで増加されるように、前記対象の1つまたは複数の骨格筋において発現されるマイクロジストロフィンタンパク質をコードする、請求項
14から
18のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項20】
前記マイクロジストロフィン遺伝子が、基準拡張終末期容積の不足が正常な拡張終末期容積の少なくとも40%の範囲内まで回復するように、前記対象の1つまたは複数の心筋において発現されるマイクロジストロフィンタンパク質をコードする、請求項
14から
19のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項21】
前記マイクロジストロフィン遺伝子が、前記ジストロフィン糖タンパク質複合体への神経型一酸化窒素合成酵素の局在化が前記対象において向上するように発現されるマイクロジストロフィンタンパク質をコードする、請求項
14から
20のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項22】
前記筋ジストロフィーが、筋強直性筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィー、およびエメリードレイフス型筋ジストロフィーからなる群から選択される、請求項
14から
21のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項23】
前記筋ジストロフィーが、デュシェンヌ型筋ジストロフィーである、請求項
14から
22のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項24】
前記筋ジストロフィーが、ベッカー型筋ジストロフィーである、請求項
14から
23のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項25】
前記医薬組成物が、前記筋ジストロフィーの少なくとも1つの病理学的影響または症状を低減する、請求項
14から
24のいずれか一項に記載の
医薬組成物。
【請求項26】
前記筋ジストロフィーの病理学的影響または症状は、筋痛、筋力低下、筋肉疲労、筋萎縮、線維症、炎症、骨格筋の平均筋線維直径の増加、心筋症、6分間歩行試験時間の減少、歩行の減少、および心ポンプ失調からなる群の少なくとも1つから選択される、請求項
25に記載の
医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2015年1月16日に出願された米国仮特許出願第62/104,537
号の利益を主張するものであり、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
連邦政府資金による研究の記載
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与された助成金第R01 AG033610
号のもと政府の支援を受けて成された。政府は、本発明の一定の権利を有する。
【0003】
本開示は、概してマイクロジストロフィンに関する。本開示はまた、筋ジストロフィー
、サルコペニア、心不全または悪液質を有する対象を処置する方法に関する。本開示はま
た、筋ジストロフィー、サルコペニア、心不全または悪液質を発症するリスクのある対象
に予防的処置を行う方法に関する。特に、本方法は、マイクロジストロフィン遺伝子およ
び送達媒体(delivery vehicle)を含む医薬組成物を対象に投与することを含んでもよい
。特に、本方法は、医薬組成物をデュシェンヌ型筋ジストロフィーまたはベッカー型筋ジ
ストロフィーを有する対象に投与することを含んでもよい。
【背景技術】
【0004】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、およそ3500人に1人の男性を冒す
劣性遺伝性筋消耗疾患である。DMD患者は、ジストロフィン遺伝子に突然変異があり、
これがジストロフィンタンパク質の異常な発現または発現の欠損を引き起こす。DMD患
者は、骨格筋の進行性消耗および心機能不全を経験し、これが、歩行の減少および主に心
不全または呼吸器不全のため早期の死亡につながる。不運にも、現在利用可能な処置は、
一般にDMDの病態を遅らせることしかできない。したがって、DMDを処置するための
組成物および方法に対して差し迫ったニーズがある。
【発明の概要】
【0005】
本開示は以下の[1]から[94]を含む。
[1](a)アミノ末端アクチン結合ドメインと、
β-ジストログリカン結合ドメインと、
少なくとも4個のスペクトリン様リピートを含むスペクトリン様リピートドメインであって、上記少なくとも4個のスペクトリン様リピートのうちの2個は、神経型一酸化窒素合成酵素結合ドメインを含む、スペクトリン様リピートドメインと、
を含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子、および
(b)制御カセット
を含む、単離および精製されたヌクレオチド配列。
[2]上記少なくとも4個のスペクトリン様リピートは、スペクトリン様リピート1(SR1)、スペクトリン様リピート16(SR16)、スペクトリン様リピート17(SR17)、およびスペクトリン様リピート24(SR24)を含む、上記[1]に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[3]上記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる上記タンパク質は、ヒンジドメインの少なくとも一部をさらに含む、上記[1]または[2]に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[4]上記ヒンジドメインは、ヒンジ1ドメイン、ヒンジ2ドメイン、ヒンジ3ドメイン、ヒンジ4ドメイン、およびヒンジ様ドメインのうちの少なくとも1つから選択される、上記[3]に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[5]上記制御カセットは、CK8プロモーターおよび心筋トロポニンT(cTnT)プロモーターからなる群から選択される、上記[1]~[4]のいずれか一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[6]上記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる上記タンパク質は、5個のスペクトリン様リピートから8個のスペクトリン様リピートの間のスペクトリン様リピートを有する、上記[1]~[5]のいずれか一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[7]上記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる上記タンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、上記[1]~[6]のいずれか一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[8]上記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる上記タンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、上記[1]~[7]のいずれか一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[9]上記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる上記タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、上記[1]~[8]のいずれか一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[10]上記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる上記タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、上記[1]~[9]のいずれか一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[11]上記制御カセットは、CK8プロモーターであり、上記CK8プロモーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、上記[1]~[10]のいずれか一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[12]上記制御カセットは、CK8プロモーターであり、上記CK8プロモーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、上記[1]~[11]のいずれか一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[13]上記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、上記cTnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、上記[1]~[12]のいずれか一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[14]上記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、上記cTnTプロモーターは配列番号1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、上記[1]~[13]のいずれか一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[15]アミノ末端アクチン結合ドメインと、
スペクトリン様リピート2と直接連結されたスペクトリン様リピート1、スペクトリン様リピート3と直接連結されたスペクトリン様リピート2、スペクトリン様リピート16と直接連結されたスペクトリン様リピート1、スペクトリン様リピート23と直接連結されたスペクトリン様リピート17、スペクトリン様リピート24と直接連結されたスペクトリン様リピート17、およびスペクトリン様リピート24と直接連結されたスペクトリン様リピート23のうちの少なくとも1つから選択される、互いに直接連結された少なくとも2個のスペクトリン様リピートと
を含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子を含む、単離および精製されたヌクレオチド配列。
[16]順番に
ヒンジ1ドメイン(H1)と、
スペクトリン様リピート1(SR1)と、
スペクトリン様リピート16(SR16)と、
スペクトリン様リピート17(SR17)と、
スペクトリン様リピート24(SR24)と、
ヒンジ4ドメイン(H4)と
を含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子を含む、単離および精製されたヌクレオチド配列。
[17]上記H1は、上記SR1と直接連結されている、上記[16]に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[18]上記SR1は、上記SR16と直接連結されている、上記[16]に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[19]上記SR16は、上記SR17と直接連結されている、上記[16]に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[20]上記SR17は、上記SR24と直接連結されている、上記[16]に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[21]上記SR24は、上記H4と直接連結されている、上記[16]に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[22]上記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる上記タンパク質は、上記SR1と上記SR16との間に順番にスペクトリン様リピート2(SR2)およびスペクトリン様リピート3(SR3)をさらに含む、上記[16]に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[23]上記SR1は、上記SR2と直接連結され、上記SR2は、上記SR3とさらに連結されている、上記[22]に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[24]順番に
ヒンジ1ドメイン(H1)と、
スペクトリン様リピート1(SR1)と、
スペクトリン様リピート16(SR16)と、
スペクトリン様リピート17(SR17)と、
スペクトリン様リピート23(SR23)と、
スペクトリン様リピート24(SR24)と、
ヒンジ4ドメイン(H4)と、
を含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子を含む、単離および精製されたヌクレオチド配列。
[25]上記H1は上記SR1と直接連結され、上記SR1は上記SR16と直接連結され、上記SR16は上記SR17と直接連結され、上記SR17は上記SR23と直接連結され、上記SR23は上記SR24と直接連結され、上記SR24は上記H4と直接連結されている、上記[24]に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列。
[26]上記[1]~[25]のいずれか一項に記載の単離および精製されたヌクレオチド配列、および
送達媒体
を含む医薬組成物。
[27]上記送達媒体は、組換えアデノ随伴ウイルスベクターを含む、上記[26]に記載の医薬組成物。
[28]上記送達媒体は、上記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させ、上記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる上記タンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、上記[26]または[27]に記載の医薬組成物。
[29]上記送達媒体は、上記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させ、上記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる上記タンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、上記[26]~[28]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[30]上記送達媒体は、上記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させ、上記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる上記タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、上記[26]~[29]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[31]上記送達媒体は、上記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させ、上記マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされる上記タンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、上記[26]~[30]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[32]上記制御カセットは、CK8プロモーターであり、上記CK8プロモーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、上記[26]~[31]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[33]上記制御カセットは、CK8プロモーターであり、上記CK8プロモーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、上記[26]~[32]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[34]上記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、上記cTnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、上記[26]~[33]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[35]上記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、上記cTnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、上記[26]~[34]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[36]上記医薬組成物は、筋強直性筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィー、およびエメリードレイフス型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択される筋ジストロフィーの病理学的影響または症状を低減するよう構成される、上記[26]~[35]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[37]上記医薬組成物は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択される筋ジストロフィーの病理学的影響または症状を低減するよう構成される、上記[26]~[36]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[38]上記医薬組成物は、サルコペニア、心臓疾患および悪液質のうちの少なくとも1つの病理学的影響または症状を低減するよう構成される、上記[26]~[37]のいずれか一項に記載の医薬組成物。
[39]配列番号16の核酸配列を含むマイクロジストロフィン遺伝子、および
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター
を含む医薬組成物。
[40]上記AAVベクターまたは上記rAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8および血清型9のうちの少なくとも1つから選択される、上記[39]に記載の医薬組成物。
[41]配列番号4のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子、および
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター
を含む医薬組成物。
[42]上記AAVベクターまたは上記rAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8および血清型9のうちの少なくとも1つから選択される、上記[41]に記載の医薬組成物。
[43]配列番号18の核酸配列を含むマイクロジストロフィン遺伝子、および
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター
を含む医薬組成物。
[44]上記AAVベクターまたは上記rAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8および血清型9のうちの少なくとも1つから選択される、上記[43]に記載の医薬組成物。
[45]配列番号5のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子、および
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター
を含む医薬組成物。
[46]上記AAVベクターまたは上記rAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8および血清型9のうちの少なくとも1つから選択される、上記[45]に記載の医薬組成物。
[47]配列番号16または配列番号18の核酸配列を含むマイクロジストロフィン遺伝子、および
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであって、上記AAVベクターまたは上記rAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8および血清型9のうちの少なくとも1つから選択される、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター
を含む、筋ジストロフィーの処置または予防的処置において使用するための医薬組成物。[48]配列番号16または配列番号18の核酸配列を含むマイクロジストロフィン遺伝子、および
アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターであって、上記AAVベクターまたは上記rAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8および血清型9のうちの少なくとも1つから選択される、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター
を含む、筋ジストロフィーの処置または予防的処置のための医薬組成物。
[49]筋ジストロフィーを有する対象を処置する方法であって、
上記対象に制御カセットと、機能可能に連結されたマイクロジストロフィン遺伝子とを含む治療有効量の医薬組成物を投与することを含む方法。
[50]上記制御カセットは、CK8プロモーターおよび心筋トロポニンT(cTnT)プロモーターからなる群から選択される、上記[49]に記載の方法。
[51]上記制御カセットは、横紋筋細胞における上記マイクロジストロフィン遺伝子の発現のレベルが、非筋肉細胞における上記マイクロジストロフィン遺伝子の発現のレベルよりも少なくとも100倍高くなるように上記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させるよう構成される、上記[49]または[50]に記載の方法。
[52]上記医薬組成物は、上記対象において上記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させるよう構成された組換えアデノ随伴ウイルスベクターをさらに含む、上記[49]~[51]のいずれか一項に記載の方法。
[53]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、上記[49]~[52]のいずれか一項に記載の方法。
[54]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、上記[49]~[53]のいずれか一項に記載の方法。
[55]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、上記[49]~[54]のいずれか一項に記載の方法。
[56]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、上記[49]~[55]のいずれか一項に記載の方法。
[57]上記制御カセットは、CK8プロモーターであり、上記CK8プロモーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、上記[49]~[56]のいずれか一項に記載の方法。
[58]上記制御カセットは、CK8プロモーターであり、上記CK8プロモーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、上記[49]~[57]のいずれか一項に記載の方法。
[59]上記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、上記cTnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、上記[49]~[58]のいずれか一項に記載の方法。
[60]上記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、上記cTnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、上記[49]~[59]のいずれか一項に記載の方法。
[61]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、上記対象の1つまたは複数の筋肉の収縮性が向上するように、上記1つまたは複数の筋肉においてマイクロジストロフィンタンパク質を発現する、上記[49]~[60]のいずれか一項に記載の方法。
[62]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の骨格筋のうちの少なくとも1つの比筋力発揮能力が正常な比筋力発揮能力の少なくとも40%の範囲内まで増加させられるように、上記対象の上記1つまたは複数の骨格筋においてマイクロジストロフィンタンパク質を発現する、上記[49]~[61]のいずれか一項に記載の方法。
[63]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、基準拡張終末期容積の不足が正常な拡張終末期容積の少なくとも40%の範囲内まで回復するように、上記対象の1つまたは複数の心筋においてマイクロジストロフィンタンパク質を発現する、上記[49]~[62]のいずれか一項に記載の方法。
[64]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、ジストロフィン糖タンパク質複合体への神経型一酸化窒素合成酵素の局在化が上記対象において向上するように、マイクロジストロフィンタンパク質を発現する、上記[49]~[63]のいずれか一項に記載の方法。[65]上記筋ジストロフィーは、筋強直性筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィー、およびエメリードレイフス型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択される、上記[49]~[64]のいずれか一項に記載の方法。
[66]上記筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択される、上記[49]~[65]のいずれか一項に記載の方法。
[67]上記医薬組成物は、上記筋ジストロフィーの病理学的影響または症状を低減する、上記[49]~[66]のいずれか一項に記載の方法。
[68]上記筋ジストロフィーの病理学的影響または症状は、筋痛、筋力低下、筋肉疲労、筋萎縮、線維症、炎症、骨格筋の平均筋線維直径の増加、心筋症、6分間歩行試験時間の減少、歩行の減少、および心ポンプ失調のうちの少なくとも1つから選択される、上記[67]に記載の方法。
[69]上記筋ジストロフィーを有する上記対象を特定することさらに含む、上記[49]~[68]のいずれか一項に記載の方法。
[70]上記対象は、哺乳動物である、上記[49]~[69]のいずれか一項に記載の方法。
[71]上記対象はヒトである、上記[49]~[70]のいずれか一項に記載の方法。[72]筋ジストロフィー発症するリスクのある対象に予防的処置を行うための方法であって、機能可能に制御カセットと連結されたマイクロジストロフィン遺伝子を含む治療有効量の医薬組成物を上記対象に投与することを含む方法。
[73]上記制御カセットは、CK8プロモーターおよび心筋トロポニンT(cTnT)プロモーターからなる群から選択される、上記[72]に記載の方法。
[74]上記制御カセットは、横紋筋細胞における上記マイクロジストロフィン遺伝子の発現のレベルが、非筋肉細胞における上記マイクロジストロフィン遺伝子の発現のレベルよりも少なくとも100倍高くなるように上記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させるよう構成される、上記[72]または[73]に記載の方法。
[75]上記医薬組成物は、上記対象において上記マイクロジストロフィン遺伝子を発現させるよう構成された組換えアデノ随伴ウイルスベクターをさらに含む、上記[72]~[74]のいずれか一項に記載の方法。
[76]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、上記[72]~[75]のいずれか一項に記載の方法。
[77]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、上記[72]~[76]のいずれか一項に記載の方法。
[78]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、上記[72]~[77]のいずれか一項に記載の方法。
[79]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質をコードする、上記[72]~[78]のいずれか一項に記載の方法。
[80]上記制御カセットは、CK8プロモーターであり、上記CK8プロモーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、上記[72]~[79]のいずれか一項に記載の方法。
[81]上記制御カセットは、CK8プロモーターであり、上記CK8プロモーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、上記[72]~[80]のいずれか一項に記載の方法。
[82]上記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、上記cTnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する、上記[72]~[81]のいずれか一項に記載の方法。
[83]上記制御カセットは、cTnTプロモーターであり、上記cTnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する、上記[72]~[82]のいずれか一項に記載の方法。
[84]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、上記対象の1つまたは複数の筋肉の収縮性が向上するように、上記1つまたは複数の筋肉においてマイクロジストロフィンタンパク質を発現する、上記[72]~[83]のいずれか一項に記載の方法。
[85]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、上記対象の1つまたは複数の骨格筋のうちの少なくとも1つの比筋力発揮能力が正常な比筋力発揮能力の少なくとも40%の範囲内まで増加させられるように、上記1つまたは複数の骨格筋においてマイクロジストロフィンタンパク質を発現する、上記[72]~[84]のいずれか一項に記載の方法。
[86]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、基準拡張終末期容積の不足が正常な拡張終末期容積の少なくとも40%の範囲内まで回復するように、上記対象の1つまたは複数の心筋においてマイクロジストロフィンタンパク質を発現する、上記[72]~[85]のいずれか一項に記載の方法。
[87]上記マイクロジストロフィン遺伝子は、上記ジストロフィン糖タンパク質複合体への神経型一酸化窒素合成酵素の局在化が上記対象において向上するように、マイクロジストロフィンタンパク質を発現する、上記[72]~[86]のいずれか一項に記載の方法。
[88]上記筋ジストロフィーは、筋強直性筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィー、遠位型筋ジストロフィー、およびエメリードレイフス型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択される、上記[72]~[87]のいずれか一項に記載の方法。
[89]上記筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよびベッカー型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択される、上記[72]~[88]のいずれか一項に記載の方法。
[90]上記医薬組成物は、上記筋ジストロフィーの病理学的影響または症状を発症するリスクを低減する、上記[72]~[89]のいずれか一項に記載の方法。
[91]上記筋ジストロフィーの病理学的影響または症状は、筋痛、筋力低下、筋肉疲労、筋萎縮、線維症、炎症、骨格筋の平均筋線維直径の増加、心筋症、6分間歩行試験時間の減少、歩行の減少、および心ポンプ失調のうちの少なくとも1つから選択される、上記[90]に記載の方法。
[92]上記筋ジストロフィーを発症するリスクのある上記対象を特定することをさらに含む、上記[72]~[91]のいずれか一項に記載の方法。
[93]上記対象は、哺乳動物である、上記[72]~[92]のいずれか一項に記載の方法。
[94]上記対象は、ヒトである、上記[72]~[93]のいずれか一項に記載の方法。
本開示は、少なくとも部分的に新規のマイクロジストロフィン、その組成物および使用の関連する方法に基づく。
【0006】
本開示の一部の実施形態において、単離および精製されたヌクレオチド配列は、(a)
アミノ末端アクチン結合ドメインと、β-ジストログリカン結合ドメインと、少なくとも
4個のスペクトリン様リピートのうちの2個が神経型一酸化窒素合成酵素結合ドメインを
含むような少なくとも4個のスペクトリン様リピートを含むスペクトリン様リピートドメ
インとを含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子;および(b)制御
カセットを含む。
【0007】
一実施形態において、少なくとも4個のスペクトリン様リピートは、スペクトリン様リ
ピート1(SR1)、スペクトリン様リピート16(SR16)、スペクトリン様リピー
ト17(SR17)、およびスペクトリン様リピート24(SR24)を含む。
【0008】
別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク
質は、ヒンジドメインの少なくとも一部をさらに含む。
【0009】
さらに別の実施形態において、ヒンジドメインは、ヒンジ1ドメイン、ヒンジ2ドメイ
ン、ヒンジ3ドメイン、ヒンジ4ドメイン、およびヒンジ様ドメインのうちの少なくとも
1つから選択される。
【0010】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターおよび心筋トロポ
ニンT(cTnT)プロモーターから成る群から選択される。
【0011】
一実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質
は、5個のスペクトリン様リピートから8個のスペクトリン様リピートの間のスペクトリ
ン様リピートを有する。
【0012】
別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク
質は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0013】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタ
ンパク質は、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0014】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタ
ンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0015】
一実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質
は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0016】
別の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであり、CK8プロモー
ターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0017】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであり、CK8プ
ロモーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0018】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであり、cTn
Tプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0019】
一実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであり、cTnTプロモ
ーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0020】
本開示の特定の実施形態において、単離および精製されたヌクレオチド配列は、アミノ
末端アクチン結合ドメインと、スペクトリン様リピート2と直接連結されたスペクトリン
様リピート1、スペクトリン様リピート3と直接連結されたスペクトリン様リピート2、
スペクトリン様リピート16と直接連結されたスペクトリン様リピート1、スペクトリン
様リピート23と直接連結されたスペクトリン様リピート17、スペクトリン様リピート
24と直接連結されたスペクトリン様リピート17、およびスペクトリン様リピート24
と直接連結されたスペクトリン様リピート23のうちの少なくとも1つから選択される、
互いに直接連結された少なくとも2個のスペクトリン様リピートとを含むタンパク質をコ
ードするマイクロジストロフィン遺伝子を含む。
【0021】
本開示の特定の他の実施形態において、単離および精製されたヌクレオチド配列は、順
番にヒンジ1ドメイン(H1)と、スペクトリン様リピート1(SR1)と、スペクトリ
ン様リピート16(SR16)と、スペクトリン様リピート17(SR17)と、スペク
トリン様リピート24(SR24)と、ヒンジ4ドメイン(H4)とを含むタンパク質を
コードするマイクロジストロフィン遺伝子を含む。
【0022】
一実施形態において、H1は、SR1と直接連結されている。
【0023】
別の実施形態において、SR1は、SR16と直接連結されている。
【0024】
さらに別の実施形態において、SR16は、SR17と直接連結されている。
【0025】
さらに別の実施形態において、SR17は、SR24と直接連結されている。
【0026】
別の実施形態において、SR24は、H4と直接連結されている。
【0027】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタ
ンパク質は、SR1とSR16との間に、順番にスペクトリン様リピート2(SR2)お
よびスペクトリン様リピート3(SR3)をさらに含む。
【0028】
さらに別の実施形態において、SR1は、SR2と直接連結され、SR2は、SR3と
さらに連結されている。
【0029】
本開示の一部の実施形態において、単離および精製されたヌクレオチド配列は、順番に
ヒンジ1ドメイン(H1)と、スペクトリン様リピート1(SR1)と、スペクトリン様
リピート16(SR16)と、スペクトリン様リピート17(SR17)と、スペクトリ
ン様リピート23(SR23)と、スペクトリン様リピート24(SR24)と、ヒンジ
4ドメイン(H4)とを含むタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子を含
む。
【0030】
一実施形態において、H1はSR1と直接連結され、SR1はSR16と直接連結され
、SR16はSR17と直接連結され、SR17はSR23と直接連結され、SR23は
SR24と直接連結され、SR24はH4と直接連結されている。
【0031】
本開示の特定の実施形態において、本医薬組成物は、本明細書に記載されている単離お
よび精製されたヌクレオチド配列および送達媒体を含む。
【0032】
一実施形態において、送達媒体は、組換えアデノ随伴ウイルスベクターを含む。
【0033】
別の実施形態において、送達媒体は、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードさ
れるタンパク質が、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する
ようなマイクロジストロフィン遺伝子を発現させる。
【0034】
さらに別の実施形態において、送達媒体は、マイクロジストロフィン遺伝子によってコ
ードされるタンパク質が、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を
有するようなマイクロジストロフィン遺伝子を発現させる。
【0035】
さらに別の実施形態において、送達媒体は、マイクロジストロフィン遺伝子によってコ
ードされるタンパク質が、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%の配列同一性を
有するようなマイクロジストロフィン遺伝子を発現させる。
【0036】
別の実施形態において、送達媒体は、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードさ
れるタンパク質が、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する
ようなマイクロジストロフィン遺伝子を発現させる。
【0037】
本開示の一部の実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、制御カセ
ットがCK8プロモーターであり、CK8プロモーターが配列番号19の核酸配列と少な
くとも80%の配列同一性を有するような制御カセットを含む。
【0038】
本開示の特定の実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、制御カセ
ットがCK8プロモーターであり、CK8プロモーターが配列番号19の核酸配列と少な
くとも90%の配列同一性を有するような制御カセットを含む。
【0039】
本開示の一部の実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、制御カセ
ットがcTnTプロモーターであり、cTnTプロモーターが配列番号1の核酸配列と少
なくとも80%の配列同一性を有するような制御カセットを含む。
【0040】
本開示の特定の実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、制御カセ
ットがcTnTプロモーターであり、cTnTプロモーターが配列番号1の核酸配列と少
なくとも90%の配列同一性を有するような制御カセットを含む。
【0041】
本開示の一部の実施形態において、本医薬組成物は、筋強直性筋ジストロフィー、デュ
シェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィ
ー、遠位型筋ジストロフィー、およびエメリードレイフス型筋ジストロフィーのうちの少
なくとも1つから選択される筋ジストロフィーの病理学的影響または症状を低減するよう
構成される。
【0042】
本開示の特定の実施形態において、本医薬組成物は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー
およびベッカー型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択される筋ジストロフ
ィーの病理学的影響または症状を低減するよう構成される。
【0043】
本開示の一部の実施形態において、本医薬組成物は、サルコペニア、心臓疾患および悪
液質のうちの少なくとも1つの病理学的影響または症状を低減するよう構成される。
【0044】
本開示の特定の実施形態において、本医薬組成物は、配列番号16の核酸配列を含むマ
イクロジストロフィン遺伝子およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換え
アデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含む。特定の実施形態において、AAVベク
ターまたはrAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8および血清型9のうちの少
なくとも1つから選択される。
【0045】
本開示の一部の実施形態において、本医薬組成物は、タンパク質が配列番号4のアミノ
酸配列を含むようなタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子およびアデノ
随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター
を含む。特定の実施形態において、AAVベクターまたはrAAVベクターの血清型は、
血清型6、血清型8および血清型9のうちの少なくとも1つから選択される。
【0046】
本開示の特定の実施形態において、本医薬組成物は、配列番号18の核酸配列を含むマ
イクロジストロフィン遺伝子およびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換え
アデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含む。一部の実施形態において、AAVベク
ターまたはrAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8および血清型9のうちの少
なくとも1つから選択される。
【0047】
本開示の特定の実施形態において、本医薬組成物は、タンパク質が配列番号5のアミノ
酸配列を含むようなタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子およびアデノ
随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクター
を含む。一部の実施形態において、AAVベクターまたはrAAVベクターの血清型は、
血清型6、血清型8および血清型9のうちの少なくとも1つから選択される。
【0048】
本開示の一部の実施形態において、筋ジストロフィーの処置または予防的処置への使用
に適した医薬組成物は、配列番号16または配列番号18の核酸配列を含むマイクロジス
トロフィン遺伝子と、AAVベクターまたはrAAVベクターの血清型が血清型6、血清
型8および血清型9のうちの少なくとも1つから選択されるようなアデノ随伴ウイルス(
AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターとを含む。
【0049】
本開示の特定の実施形態において、筋ジストロフィーの処置または予防的処置に適した
医薬組成物は、配列番号16または配列番号18の核酸配列を含むマイクロジストロフィ
ン遺伝子と、AAVベクターまたはrAAVベクターの血清型が血清型6、血清型8およ
び血清型9のうちの少なくとも1つから選択されるようなアデノ随伴ウイルス(AAV)
ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターとを含む。
【0050】
本開示の特定の実施形態において、筋ジストロフィーを有する対象を処置するための方
法は、機能可能に制御カセットと連結されたマイクロジストロフィン遺伝子を含む治療有
効量の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0051】
一実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターおよび心筋トロポニンT(
cTnT)プロモーターから成る群から選択される。
【0052】
別の実施形態において、制御カセットは、横紋筋細胞におけるマイクロジストロフィン
遺伝子の発現のレベルが、非筋肉細胞におけるマイクロジストロフィン遺伝子の発現のレ
ベルよりも少なくとも100倍高くなるようにマイクロジストロフィン遺伝子を発現させ
るよう構成される。
【0053】
本開示の特定の実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、対象にお
いてマイクロジストロフィン遺伝子を発現させるよう構成された組換えアデノ随伴ウイル
スベクターをさらに含む。
【0054】
一実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配列と
少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0055】
別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配列
と少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0056】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ
酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0057】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ
酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0058】
一実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであり、CK8プロモータ
ーは、配列番号19の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0059】
別の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであり、CK8プロモー
ターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0060】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであり、cTn
Tプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0061】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであり、cTn
Tプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0062】
一実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の筋肉の収縮
性が向上するように、対象の1つまたは複数の筋肉においてマイクロジストロフィンタン
パク質を発現する。
【0063】
別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の骨格筋の
うちの少なくとも1つの比筋力発揮能力が正常な比筋力発揮能力の少なくとも40%の範
囲内まで増加させられるように、対象の1つまたは複数の骨格筋においてマイクロジスト
ロフィンタンパク質を発現する。
【0064】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、基準拡張終末期容積
の不足が正常な拡張終末期容積の少なくとも40%の範囲内まで回復するように、対象の
1つまたは複数の心筋においてマイクロジストロフィンタンパク質を発現する。
【0065】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、ジストロフィン糖タ
ンパク質複合体への神経型一酸化窒素合成酵素の局在化が対象において向上するように、
マイクロジストロフィンタンパク質を発現する。
【0066】
一部の実施形態において、筋ジストロフィーは、筋強直性筋ジストロフィー、デュシェ
ンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面
肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィー、
遠位型筋ジストロフィー、およびエメリードレイフス型筋ジストロフィーのうちの少なく
とも1つから選択される。
【0067】
特定の実施形態において、筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよ
びベッカー型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択される。
【0068】
本開示の一部の実施形態において、本医薬組成物は、筋ジストロフィーの病理学的影響
または症状を低減する。
【0069】
特定の実施形態において、筋ジストロフィーの病理学的影響または症状は、筋痛、筋力
低下、筋肉疲労、筋萎縮、線維症、炎症、骨格筋の平均筋線維直径の増加、心筋症、6分
間歩行試験時間の減少、歩行の減少、および心ポンプ失調のうちの少なくとも1つから選
択される。
【0070】
一部の実施形態において、本明細書に記載される方法は、筋ジストロフィーを有する対
象を特定することを含む。
【0071】
特定の実施形態において、対象は、哺乳動物である。
【0072】
特定の実施形態において、対象はヒトである。
【0073】
本開示の一部の実施形態において、筋ジストロフィー発症するリスクのある対象に予防
的処置を行うための方法は、機能可能に制御カセットと連結されたマイクロジストロフィ
ン遺伝子を含む治療有効量の医薬組成物を対象に投与することを含む。
【0074】
一実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターおよび心筋トロポニンT(
cTnT)プロモーターから成る群から選択される。
【0075】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、横紋筋細胞におけるマイクロジストロ
フィン遺伝子の発現のレベルが、非筋肉細胞におけるマイクロジストロフィン遺伝子の発
現のレベルよりも少なくとも100倍高くなるようにマイクロジストロフィン遺伝子を発
現させるよう構成される。
【0076】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、対象においてマイクロジストロフィン遺伝
子を発現させるよう構成された組換えアデノ随伴ウイルスベクターをさらに含む。
【0077】
特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配
列と少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0078】
別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号4のアミノ酸配列
と少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0079】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ酸配
列と少なくとも80%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0080】
さらに別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号5のアミノ
酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有するタンパク質をコードする。
【0081】
特定の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであり、CK8プロモ
ーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0082】
別の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであり、CK8プロモー
ターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0083】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであり、cTn
Tプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。
【0084】
さらに別の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであり、cTn
Tプロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも90%の配列同一性を有する。
【0085】
特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の筋肉の
収縮性が向上するように、対象の1つまたは複数の筋肉においてマイクロジストロフィン
タンパク質を発現する。
【0086】
別の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の骨格筋の
うちの少なくとも1つの比筋力発揮能力が正常な比筋力発揮能力の少なくとも40%の範
囲内まで増加させられるように、対象の1つまたは複数の骨格筋においてマイクロジスト
ロフィンタンパク質を発現する。
【0087】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、基準拡張終末期容積の不
足が正常な拡張終末期容積の少なくとも40%の範囲内まで回復するように、対象の1つ
または複数の心筋においてマイクロジストロフィンタンパク質を発現する。
【0088】
特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、ジストロフィン糖タンパ
ク質複合体への神経型一酸化窒素合成酵素の局在化が対象において向上するように、マイ
クロジストロフィンタンパク質を発現する。
【0089】
特定の実施形態において、筋ジストロフィーは、筋強直性筋ジストロフィー、デュシェ
ンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面
肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィー、
遠位型筋ジストロフィー、およびエメリードレイフス型筋ジストロフィーのうちの少なく
とも1つから選択される。
【0090】
一部の実施形態において、筋ジストロフィーは、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよ
びベッカー型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択される。
【0091】
特定の実施形態において、本明細書に記載されている医薬組成物は、筋ジストロフィー
の病理学的影響または症状を発症するリスクを減少させる。
【0092】
一実施形態において、筋ジストロフィーの病理学的影響または症状は、筋痛、筋力低下
、筋肉疲労、筋萎縮、線維症、炎症、骨格筋の平均筋線維直径の増加、心筋症、6分間歩
行試験時間の減少、歩行の減少、および心ポンプ失調のうちの少なくとも1つから選択さ
れる。
【0093】
本開示の一部の実施形態において、本明細書に記載される方法は、筋ジストロフィーを
発症するリスクのある対象を特定することをさらに含む。
【0094】
一実施形態において、対象は、哺乳動物である。
【0095】
別の実施形態において、対象はヒトである。
【0096】
本開示の他の特徴および利点が、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から明らかに
なるであろう。
【0097】
本明細書中で開示される実施形態は、添付の図面と併せて、以下の説明および添付の特
許請求の範囲から完全にさらに十分に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【
図1A】本明細書中で開示される切断型ジストロフィン構築物の実施形態のタンパク質構造図である。NT、アミノ末端ドメイン;H、ヒンジ;R、スペクトリン様リピート;nNOS BD、神経型一酸化窒素合成酵素結合ドメイン;CR、システインリッチドメイン;CT、カルボキシル末端ドメイン;Syn、シントロフィン結合ドメイン;Db BD、ジストロブレビン結合ドメイン;何も記されていない領域はR15とR16との間の20個のアミノ酸を示す;aa、アミノ酸;およびkDa、キロダルトン。
【
図1B】ジストロフィーmdx
4cvマウスに5×10
10ベクターゲノム(vg)のrAAV/CMV-μDysを一方の前脛骨(TA)筋に注射した結果を示すウエスタンブロットの写真であり、反対側の筋肉は内的な未処置対照の役割を果たす。試験したすべての構築物の発現を、TA筋ライセートのウエスタンブロット分析によって野生型および未処置mdx
4cv対照とともに処置の4週後に検証した。グリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)は、内的ローディングコントロールの役割を果たす。
【
図1C】それぞれ処置の4週または12週後のジストロフィン発現および中心核形成に関するTA断面からの筋線維の定量化を示すグラフである(各時点に対してコホート当たりN=3~5、平均値±S.E.M.)。μDysH3は、性能の比較基準の役割を果たす。μDys6およびμDys7は、広く普及しているサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを使用してAAV発現ベクターにクローン化されるには大き過ぎたため、効率的なパッケージングおよびインビボ評価を可能にするためにCMVプロモーターを筋特異的CK8プロモーターで置き換えた。したがって、μDysH3を、CK8制御発現カセットを用いて再評価した。記号は、野生型マウスに基づく有意性を指す。*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001、#はP<0.0001である。
【
図1D】それぞれ処置の4週または12週後のジストロフィン発現および中心核形成に関するTA断面からの筋線維の定量化を示すグラフである(各時点に対してコホート当たりN=3~5、平均値±S.E.M.)。μDysH3は、性能の比較基準の役割を果たす。μDys6およびμDys7は、広く普及しているサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターを使用してAAV発現ベクターにクローン化されるには大き過ぎたため、効率的なパッケージングおよびインビボ評価を可能にするためにCMVプロモーターを筋特異的CK8プロモーターで置き換えた。したがって、μDysH3を、CK8制御発現カセットを用いて再評価した。記号は、野生型マウスに基づく有意性を指す。*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001、#はP<0.0001である。
【
図2】処置の6か月後の代表的な腓腹筋断面を示す一連の顕微鏡写真である。示したとおり、ジストロフィンおよびDAPI染色核を左列に示し、β-ジストログリカンおよびDAPIを中央列に示し、神経型一酸化窒素合成酵素(nNOS)を右列に示す。各行は、野生型マウス、処置mdx
4cvマウスおよび未処置mdx
4cvマウスのコホートの代表的な結果を示す。スケールバーは200μmである。ジストロフィン糖タンパク質複合体(DGC)メンバーの動員は、μDys構築物内の結合ドメインに一般に依存する。14日齢のジストロフィーmdx
4cvマウスに、1×10
13vgのrAAV6/CK8-μDysを後眼窩静脈叢より注射した。処置の3か月および6か月後、DGCメンバーに関して骨格筋を免疫染色した。
【
図3A】処置の3か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。新規のμDys構築物の性能を判定するために腓腹筋(
図3Aおよび3B)および横隔膜筋(
図3Cおよび3D)を評価した。ジストロフィン発現および中心に核のある筋線維に関して筋肉断面を定量した。ジストロフィン発現を示す筋線維および/または中心核形成を示す筋線維のレベルをパーセンテージとして表わす(
図3Aおよび3C)。腓腹筋細片に関してインサイチュで(
図3B)および横隔膜細片に関してインビトロで(
図3D)比筋力発揮を測定した。各コホートに関するn値を
図3Dの棒に列挙する。括弧でくくられていない記号に関して、野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys5で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図3B】処置の3か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。新規のμDys構築物の性能を判定するために腓腹筋(
図3Aおよび3B)および横隔膜筋(
図3Cおよび3D)を評価した。ジストロフィン発現および中心に核のある筋線維に関して筋肉断面を定量した。ジストロフィン発現を示す筋線維および/または中心核形成を示す筋線維のレベルをパーセンテージとして表わす(
図3Aおよび3C)。腓腹筋細片に関してインサイチュで(
図3B)および横隔膜細片に関してインビトロで(
図3D)比筋力発揮を測定した。各コホートに関するn値を
図3Dの棒に列挙する。括弧でくくられていない記号に関して、野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys5で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図3C】処置の3か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。新規のμDys構築物の性能を判定するために腓腹筋(
図3Aおよび3B)および横隔膜筋(
図3Cおよび3D)を評価した。ジストロフィン発現および中心に核のある筋線維に関して筋肉断面を定量した。ジストロフィン発現を示す筋線維および/または中心核形成を示す筋線維のレベルをパーセンテージとして表わす(
図3Aおよび3C)。腓腹筋細片に関してインサイチュで(
図3B)および横隔膜細片に関してインビトロで(
図3D)比筋力発揮を測定した。各コホートに関するn値を
図3Dの棒に列挙する。括弧でくくられていない記号に関して、野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys5で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図3D】処置の3か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。新規のμDys構築物の性能を判定するために腓腹筋(
図3Aおよび3B)および横隔膜筋(
図3Cおよび3D)を評価した。ジストロフィン発現および中心に核のある筋線維に関して筋肉断面を定量した。ジストロフィン発現を示す筋線維および/または中心核形成を示す筋線維のレベルをパーセンテージとして表わす(
図3Aおよび3C)。腓腹筋細片に関してインサイチュで(
図3B)および横隔膜細片に関してインビトロで(
図3D)比筋力発揮を測定した。各コホートに関するn値を
図3Dの棒に列挙する。括弧でくくられていない記号に関して、野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys5で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図4A】処置の6か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。
図3A~3Dに記載されているとおりに腓腹筋(
図4Aおよび4B)および横隔膜筋(
図4Cおよび4D)を評価した。各コホートに関するn値を
図4Dの棒に列挙する。野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys7で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図4B】処置の6か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。
図3A~3Dに記載されているとおりに腓腹筋(
図4Aおよび4B)および横隔膜筋(
図4Cおよび4D)を評価した。各コホートに関するn値を
図4Dの棒に列挙する。野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys7で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図4C】処置の6か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。
図3A~3Dに記載されているとおりに腓腹筋(
図4Aおよび4B)および横隔膜筋(
図4Cおよび4D)を評価した。各コホートに関するn値を
図4Dの棒に列挙する。野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys7で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図4D】処置の6か月後における全身的処置の評価を示すグラフである。
図3A~3Dに記載されているとおりに腓腹筋(
図4Aおよび4B)および横隔膜筋(
図4Cおよび4D)を評価した。各コホートに関するn値を
図4Dの棒に列挙する。野生型に基づき、*はP<0.05、**はP<0.01、***はP<0.001である。μDys2で処置したマウスに基づき、^はP<0.05、^^はP<0.01、^^^はP<0.001である。μDys7で処置したマウスに基づき、#はP<0.05、##はP<0.01、###はP<0.001である。
【
図5A】骨格筋における伸張性収縮からの筋細胞膜の保護の程度を示すグラフである。
図2および
図4A~4Dに記載されているとおりに全身的に処置したマウスに長さを増加させる伸張性収縮をさせた。伸張性収縮に先立って発揮される等尺性最大筋力に関して腓腹筋細片(
図5A)および横隔膜細片(
図5B)を測定した。収縮を刺激する間、筋肉は、その最適線維長を超えて規定される距離で伸ばされた。距離は最適線維長(L
O)を超えたパーセンテージとして報告する。L
Oを45%超えた野生型に基づいて、*はP<0.05、***はP<0.001、****はP<0.0001である。L
Oを45%超えたμDys2で処置したマウスに基づき、^^^はP<0.001、^^^^はP<0.0001である。L
Oを45%超えたμDys7で処置したマウスに基づき、∇∇∇∇はP<0.0001である。
【
図5B】骨格筋における伸張性収縮からの筋細胞膜の保護の程度を示すグラフである。
図2および
図4A~4Dに記載されているとおりに全身的に処置したマウスに長さを増加させる伸張性収縮をさせた。伸張性収縮に先立って発揮される等尺性最大筋力に関して腓腹筋細片(
図5A)および横隔膜細片(
図5B)を測定した。収縮を刺激する間、筋肉は、その最適線維長を超えて規定される距離で伸ばされた。距離は最適線維長(L
O)を超えたパーセンテージとして報告する。L
Oを45%超えた野生型に基づいて、*はP<0.05、***はP<0.001、****はP<0.0001である。L
Oを45%超えたμDys2で処置したマウスに基づき、^^^はP<0.001、^^^^はP<0.0001である。L
Oを45%超えたμDys7で処置したマウスに基づき、∇∇∇∇はP<0.0001である。
【
図6】全身的に試験した新規のμDys構築物が骨格筋においてリングバインデン表現型を誘導しないことを示す一連の顕微鏡写真である。14日齢のジストロフィーmdx
4cvマウスの後眼窩静脈叢に1×10
13vgを注射した。処置の6か月後に、腓腹筋の断面をジストロフィン、DAPI、およびα-サルコメアアクチンに関して免疫染色した。野生型マウス(パネル「a」)およびμDysH3(パネル「b」)、μDys1(パネル「c」)、μDys2(パネル「d」)、μDys5(パネル「e」)、μDys6(パネル「f」)、μDys7(パネル「g」)で処置したmdx
4cvマウスまたは未処置のmdx
4cvマウス(パネル「h」)コホートの代表的な一断面を示す。mdx
4cvバックグラウンドに関してΔR4-R23/ΔCTを発現しているトランスジェニックマウスの腓腹筋(Harper, S. Q., et al., Nature Medicine 8, 253-261, (2002)を参照)(パネル「i」)も陽性対照として免疫染色した。矢じりは、筋線維の周りのリングバインデン形成の例に印をつけている。スケールバーは50μmである。
【
図7】本明細書中で開示される新規のマイクロジストロフィン構築物の実施形態のタンパク質構造図である。上側のタンパク質構造図は、多くの既知の機能的ドメイン:NT、アミノ末端アクチン結合ドメイン;H、ヒンジ;R、スペクトリン様リピート;nNOS BD、神経型一酸化窒素合成酵素結合ドメイン;CR、システインリッチドメイン;CT、カルボキシル末端ドメイン;Dg BD、ジストログリカン結合ドメイン;Syn、シントロフィン結合ドメイン;Db BD、ジストロブレビン結合ドメイン;および何も記されていない領域はR15とR16との間の20個のアミノ酸を示す完全長ジストロフィンのものである。WWドメインはヒンジ4内にある。マイクロジストロフィンタンパク質構造を左側に、タンパク質構造図の左側に呼称を示し、概略図の右側にドメイン構造が列挙される。
【
図8】未処置(UN;n=S)対低用量(L;n=3)または高用量(H;n=3)のAAV6-L48Qに関する2週目(左)および3週目(右)における左室(LV)駆出率を示す2つのグラフである。
【
図9】示したとおり、AAV6-L48Q cTnCを注射したマウスの心臓組織(左)および未注射対照(右)に対する抗cTnCウエスタンブロットである。
【
図10】[
図10A]ローディングコントロールとしてGAPDHを用いたR1に関するウエスタンブロットである。[
図10B]ローディングコントロールとしてGAPDHを用いたR2に関するウエスタンブロットである。[
図10C]トランスフェクション心筋細胞のHPLC[dATP]を示すグラフである。
【
図11】2つのグラフである。左のグラフは、R1R2を過剰発現するマウス対対照同腹子におけるパーセンテージ短縮率(FS)の増加を示す。右のグラフは、R1R2を過剰発現するマウス対対照同腹子における左室内径(LVID)の変化を示す。d-拡張期、s-収縮期。
【
図13】[
図13A]R1およびR2に関するウエスタンブロットである。[
図13B]
図13Aのウエスタンブロットに関するローディングコントロールとしてのα-チューブリンを示す。
【
図14】rAAV6-R1R2
cTnT455を注射(4.5×10
13)したマウスおよび対照マウスの骨格筋、肺、および心臓におけるR1およびR2サブユニットの発現レベルに関する事前のウエスタンブロットの証拠を示す(パネル「A」)。
図14はまた、注射しないマウス(パネル「B」)対AAV6-アルカリホスファターゼを注射したマウス(パネル「C」)の20か月後の心臓組織に関するデータを提供し(Rafael, J. A., et al., The Journal of Cell Biology 134, 93-102 (1996)を参照)、これは、AAV6-R1R2
cTnT455が安定した長期のR1R2過剰発現をもたらす可能性があることを示唆している。
【
図15】おおよそ10倍の範囲にわたり3か月齢のマウス(1群当たりn=6)に全身注射した1.5×10
13、4.5×10
13、および1.35×10
14のrAAV6-R1R2
cTnT455ベクターゲノムまたは生理的食塩水(対照)のLV機能に対する効果を示すグラフである。
【
図16】未処置の梗塞ラットおよび未処置の偽手術されたラットと比較して心臓エコー検査によって測定される、梗塞後5日目にrAAV6-R1R2を直接心臓注射したラットにおける短縮率の変化を示す2つのグラフである。
【
図17】
図16で評価されたラットの心臓のインビトロにおけるNeelyワーキングハート測定を示すグラフである。y軸に力をg・cm/分の単位で示す。梗塞した(未処置)心臓の前負荷反応性の低下(心不全)およびベクターを与えられている梗塞心臓の前負荷反応性の、対照の梗塞していない心臓のレベルへの回復が観察され、これにより心機能の回復を実証する。
【
図18】比較的低い活性を有すると仮定される配列の除去に基づくヒト-cTnT(エンハンサー+プロモーター)制御カセットの小型化を示す図である。
【
図19】天然のヒト-cTnTエンハンサー/プロモーターと比較した
図18の欠失の転写試験を示すグラフであり、320bpバージョンが活性の約95%を保持している。
【
図20】第2の小型化エンハンサーを付加することにより、天然のエンハンサー/プロモーター、320bpバージョンおよびニワトリcTnTプロモーター/エンハンサーと比較して高められたヒト-cTnT455の活性を示すグラフである(American Journal of Physiology - Cell Physiology 280, C556-C564 (2004)を参照)。
【
図21】ジストロフィンスペクトリン様リピートの構造およびヒンジドメインとの並列の一連の略図である。上側左、個々のスペクトリン様リピートの互いに入り込んだフォールディングは、異なるアルファ-ヘリックスセグメントを強調して、3個の隣接するリピートがどのように一緒に折りたためるのかを見せるために示される(a、b、c;a’、b’、c’;およびa”、b”、c”は、3個の異なるスペクトリン様リピートのヘリックスドメインを示す)。上側右、未変性ジストロフィンおよびユートロフィンでは、一部のスペクトリン様リピートが、隣接するスペクトリン様リピートの通常の互いに入り込んだフォールディングを中断させるヒンジドメインによって分離される。上側右に示されるのは、スペクトリン様リピート18、19および20のフォールディングパターンおよびヒンジ3によるそれらの分離である。中段左、最適化したミニジストロフィンおよびマイクロジストロフィンは、スペクトリン様リピートドメインが通常のフォールディングパターンを保持するように配列される場合、一般に最高の機能活性を示し、非整数の単位のスペクトリン様リピートがミニジストロフィンまたはマイクロジストロフィンタンパク質中に存在する場合、例えば、ベッカー型筋ジストロフィー患者において全エクソンを除去する自然に生じる欠失が起こる場合に、この通常のフォールディングは崩壊している。この後者の状況は、中段右の略図に示され、これは、エクソン17~48を除去するゲノムの欠失を有する患者のジストロフィンの連結ドメインの予想される構造を表わす。下側の略図は、μDysH2(左)およびμDysH3(右)タンパク質において予想されるフォールディングパターンを示し、小型化ジストロフィンタンパク質の機能活性の予測できない性質も示す。μDysH2およびμDysH3は類似したフォールディングパターンを有するが、μDysH2は、mdxマウスの骨格筋において発現するとリングバインデンの原因となるのに対し、μDysH3はリングバインデンの原因とならない(Banks, G. B., et al., PLoS Genetics 6, e1000958, (2010)を参照)。
【
図22】抗ジストロフィン抗体を使用してジストロフィン発現に関して着色したmdx
4cvマウスの筋肉の凍結切片のイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0099】
本開示は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)を処置するための組成物および
方法を特徴とする。特に、本開示は、筋ジストロフィー、DMD、サルコペニア、心不全
および/または悪液質を有する対象を処置するためのミニジストロフィンタンパク質を生
成するための方法に関する。下で詳細に記載されるとおり、本開示は、少なくとも部分的
にジストロフィンタンパク質のタンパク質ドメイン(例えば、N末端ドメイン、H1ドメ
イン、SR1ドメイン、SR16ドメイン、SR17ドメイン、SR23ドメイン、SR
24ドメイン、H4ドメイン、およびCRドメインを含むミニジストロフィンタンパク質
)の特定の組み合わせを含むミニジストロフィンタンパク質が、ジストロフィン機能を筋
ジストロフィー、DMD、サルコペニア、心不全および/または悪液質を処置するのに十
分なレベルまで回復させることができるという予想外の発見に基づく。
【0100】
デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)は、およそ3500人に1人の男性を苦し
める劣性遺伝性筋消耗疾患である。DMD患者は、ジストロフィン遺伝子に突然変異をも
ち、結果としてジストロフィンタンパク質の異常な発現が生じるか、または発現しない。
DMD患者は、骨格筋の進行性消耗および心機能不全を経験し、歩行の減少および主に心
不全または呼吸器不全による早期の死亡につながる。現在利用可能な処置は、一般にDM
Dの病態を遅らせることしかできない(Emery, A. E. H. and Muntoni, F., Duchenne Mu
scular Dystrophy, Third Edition (Oxford University Press, 2003)を参照)。DMD
に対する遺伝子治療アプローチが、エクソンスキッピングのように突然変異のクラスを直
接標的とすること、またはウイルスベクターを介した送達により変異遺伝子を置換するこ
とのいずれかによってジストロフィーの動物モデルにおいて実証された(Koo, T. and Wo
od, M. J. Human Gene Therapy 24, (2013); Benedetti, S., et al., The FEBS Journa
l 280, 4263-4280, (2013);およびSeto, J. T., et al., Current Gene Therapy 12, 13
9-151 (2012)を参照)。組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターは、遺伝子治療
のための可能性のある媒体であり、これは、既にDMDおよび肢帯型筋ジストロフィーの
両方に対する臨床試験において試験されている(Mendell, J. R., et al., The New Engl
and Journal of Medicine 363, 1429-1437, (2010); Mendell, J. R., et al., Annals
of Neurology 68, 629-638 (2010);およびHerson, S., et al., Brain: A Journal of N
eurology 135, 483-492, (2012)を参照)。いくつかの血清型のアデノ随伴ウイルス(A
AV)は、横紋筋に対して高い程度の指向性を示す(Seto, J. T., et al., Current Gen
e Therapy 12, 139-151 (2012)を参照)。
【0101】
DMDに対するさらに新しい世代の治療構築物を設計および試験する前臨床試験は、お
よそ4.9kbサイズの一本鎖rAAVベクターゲノムによって制限される可能性がある
(Dong, B., et al., Molecular Therapy: The Journal of the American Society of Ge
ne Therapy 18, 87-92, (2010)およびWu, Z., et al., Molecular Therapy: The Journal
of the American Society of Gene Therapy 18, 80-86, (2010)を参照)。単一のrAA
Vカプシドに筋特異的アイソフォームのジストロフィンのおよそ13.9kbの全cDN
Aをパッケージングすることはできないため、筋特異的アイソフォームのジストロフィン
cDNAの小型化された合成版を使用することができる。ミニジストロフィンまたは完全
長ジストロフィンコード配列を送達するための2つおよび3つのrAAVベクターゲノム
のインビボ組換えが実証されたが(Odom, G. L., et al., Molecular Therapy: The Jour
nal of the American Society of Gene Therapy 19, 36-45, (2011); Lostal, W., et a
l., Human Gene Therapy, (2014);およびKoo, T., et al., Human Gene Therapy 25, 98
-108, (2014)を参照)、完全長ジストロフィンを再構成するための複数のベクターの送達
効率は最適状態には及ばない場合もあり、ベクターを送達するために必要とされるウイル
スカプシドタンパク質の全用量を増加させる可能性がある。しかしながら、rAAVを介
する有益な遺伝子治療が、遺伝子内にインフレーム欠失をもつ軽症のベッカー型筋ジスト
ロフィー患者で発現するmRNAに部分的に基づく合理的に設計された小型版のジストロ
フィンcDNAを使用して達成された(Beggs, A. H., et al., American Journal of Hu
man Genetics 49, 54-67 (1991); Koenig, M., et al., American Journal of Human Ge
netics 45, 498-506 (1989); Goldberg, L. R., et al., Annals of Neurology 44, 971
-976, (1998);およびEngland, S. B., et al., Nature 343, 180-182 (1990)を参照)。
さまざまなジストロフィントランケーションを発現するトランスジェニックの、ベクター
処理されたジストロフィーマウスにおける研究が、機能的なマイクロジストロフィン(μ
Dys)に存在している可能性のあるジストロフィン遺伝子のいくつかのエレメントを特
定した(Harper, S. Q., et al., Nature Medicine 8, 253-261, (2002)を参照)。
【0102】
完全長横紋筋アイソフォームのジストロフィンは、収縮力を、筋細胞膜を通じて細胞外
基質へと伝達することに関与している可能性がある。細胞内骨格と膜結合ジストロフィン
糖タンパク質複合体(DGC)との間の機械的連結の維持に加えて、ジストロフィンは、
シグナル伝達タンパク質のための足場である可能性もある(Ozawa, E. in Myology (ed.
Franzini-Armstrong C Engel A) 455-470 (McGraw-Hill, 2004); Winder, S. J. Journa
l of Muscle Research and Cell Motility 18, 617-629 (1997);およびCampbell, K. P.
and Kahl, S. D. Nature 338, 259-262, (1989)を参照)。ジストロフィンのアミノ末端
ドメインはまた、細胞内骨格のF-アクチンフィラメントと結合することができる(Way,
M., et al., FEBS Letters 301, 243-245 (1992); Hemmings, L., et al., The Journa
l of Cell Biology 116, 1369-1380 (1992); Fabbrizio, E., et al., Biochemistry 32
, 10457-10463 (1993);およびPavalko, F. M. and Otey, C. A. Proceedings of the So
ciety for Experimental Biology and Medicine 205, 282-293 (1994)を参照)。中央の
ロッドドメインが最も大きく、24のスペクトリン様リピート(SR)から構成され、ス
ペクトリン様リピートは、両側に少なくとも4個のヒンジサブドメインがあり、それらが
点在している。ロッドドメインは、筋肉の収縮中に筋細胞膜の完全性を維持するためにジ
ストロフィンに弾性および柔軟性をもたらすことができる(Winder, S. J. Journal of M
uscle Research and Cell Motility 18, 617-629 (1997)を参照)。さまざまなSRは、
細胞内骨格、筋細胞膜ならびにDGCのメンバーのための付加的な結合部位として働くこ
とが可能な固有の領域を提供する(Rybakova, I. N., et al., The Journal of Cell Bio
logy 135, 661-672 (1996); Warner, L. E., et al., Human Molecular Genetics 11, 1
095-1105 (2002); Metzinger, L., et al., Human Molecular Genetics 6, 1185-1191 (
1997); Lai, Y., et al., The Journal of Clinical Investigation 119, 624-635, (20
09)を参照)。特に、システインリッチドメインおよび隣接するヒンジ4領域は、β-ジ
ストログリカン結合ドメイン(Dg BD)を形成する(Blake, D. J., et al., Physio
logical Reviews 82, 291-329, (2002); Ishikawa-Sakurai, M., et al., Human Molecu
lar Genetics 13, 693-702, (2004)を参照)一方で、カルボキシ末端ドメインは、付加的
なDGC構成要素のための足場である(Abmayr S, in Molecular Mechanisms of Muscula
r Dystrophies (ed. Winder, S. J.) 14-34 (Landes Biosciences, 2006)を参照)。
【0103】
部分的に機能的なマイクロジストロフィンは、収縮により引き起こされる損傷から筋細
胞膜を保護することおよび力を発揮する能力を増加させることによって横紋筋におけるジ
ストロフィーの病態を改善することができる。これらのパラメーターは、アミノ末端ドメ
インおよびDg BDを介してF-アクチンフィラメントおよびβ-ジストログリカンと
結合することによって達成することができる(Harper, S. Q., et al., Nature Medicine
8, 253-261, (2002); Warner, L. E., et al., Human Molecular Genetics 11, 1095-1
105 (2002); Cox, G. A., et al., Nature Genetics 8, 333-339, (1994); Greenberg,
D. S., et al., Nature Genetics 8, 340-344, (1994); Gardner, K. L., et al., Gen
e Therapy 13, 744-751, (2006); Corrado, K., et al., The Journal of Cell Biology
134, 873-884 (1996);およびRafael, J. A., et al., The Journal of Cell Biology 1
34, 93-102 (1996)を参照)。いずれかの特定の理論に縛られることなく、先の研究は、
これらの2個のドメインが中心のロッドドメインの少なくとも4個のSRによって連結さ
れなければならないが、少なくとも4個のSRを含む小型化ジストロフィンが構築され得
る数々の方法が存在することを示している。SRのいくつかの組み合わせがジストロフィ
ーの病態生理を改善することが示されたが、他の組み合わせは顕著な機能的能力を有する
タンパク質をもたらさなかった(Harper, S. Q., et al., Nature Medicine 8, 253-261,
(2002)およびAbmayr S, in Molecular Mechanisms of Muscular Dystrophies (ed. Wind
er, S. J.) 14-34 (Landes Biosciences, 2006)を参照)。μDysの設計における特定
のSRの選択により、付加的なDGC構成要素を筋細胞膜に戻すことができる。神経型一
酸化窒素合成酵素(nNOS)はシグナル伝達タンパク質であり、これは、筋肉の収縮活
動に応じた血管拡張に関与している可能性があり(Stamler, J. S. and Meissner, G. Ph
ysiological Reviews 81, 209-237 (2001); Brenman, J. E., et al., Cell 82, 743-75
2 (1995); Kobayashi, Y. M., et al., Nature 456, 511-515, (2008);およびTorelli,
S., et al., Neuropathology and Applied Neurobiology 30, 540-545, (2004)を参照)
、SR16および17の存在がnNOSのDGCとの適切な結合に関与している可能性が
ある(28 Lai, Y. et al., The Journal of Clinical Investigation 119, 624-635, (20
09)およびLai, Y., et al., Proceedings of the National Academy of Sciences of the
United States of America 110, 525-530, (2013)を参照)。
【0104】
スペクトリン様リピート20~24ならびにヒンジ4内の配列は、ジストロフィンの微
小管との適切な結合に関与している可能性があり、これは、骨格筋における細胞内構造お
よびトルク産生を維持するために重要な可能性がある(Prins, K. W. et al., The Journ
al of Cell Biology 186, 363-369, (2009)およびBelanto, J. J., et al., Proceedings
of the National Academy of Sciences of the United States of America 111, 5723-5
728, (2014)を参照)。それにもかかわらず、カルボキシ末端ドメインおよび大半のSR
ドメインは、なくても横紋筋の健全な状態を極度に損なうことがないことがわかった(Mc
Cabe, E. R., et al., The Journal of Clinical Investigation 83, 95-99, (1989); C
rawford, G. E., et al., The Journal of Cell Biology 150, 1399-1410 (2000);およ
びDunckley, M. G., et al., FEBS Letters 296, 128-134 (1992)を参照)。
【0105】
今までに試験された最良のマイクロジストロフィンのいくつかは、DMDに関するジス
トロフィーマウスおよびイヌモデルに対して収縮により引き起こされる損傷から筋肉を保
護し、一般にすべてではないが、比筋力発揮能力のいくらかを回復させることができる(
Seto, J. T., et al., Current Gene Therapy 12, 139-151 (2012)およびWang, Z., et a
l., Frontiers in Microbiology 2, 201, (2011)を参照)。SRおよびヒンジのさまざま
な組み合わせをもつその他のマイクロジストロフィンは、ジストロフィー筋では十分に機
能していない場合もあり、機能性の差に対する理由は明らかでない。しかしながら、いず
れかの特定の理論に縛られることなく、これらは、マイクロジストロフィンの弾性、フォ
ールディング、安定性および立体障害なくDGCの小部分を組み立てる能力に対する影響
に関連している可能性もある。
【0106】
本開示は、概してマイクロジストロフィンに関する。マイクロジストロフィンは、機能
するよう制御カセットと連結されてもよい。本開示はまた、筋ジストロフィー、サルコペ
ニア、心不全または悪液質を有する対象を処置する方法に関する。さらに、本開示は、筋
ジストロフィー、サルコペニア、心不全または悪液質を発症するリスクのある対象に予防
的処置を行う方法に関する。筋ジストロフィー、サルコペニア、心不全もしくは悪液質を
有するか、またはそれを発症するリスクのある対象を処置するための方法は、マイクロジ
ストロフィン遺伝子および送達媒体を含む医薬組成物を対象に投与すること含んでもよい
。
【0107】
概して本明細書に記載されているとおりの実施形態は例となるものであることが容易に
理解されるであろう。各種実施形態の以下のさらに詳細な説明は、本開示の範囲を限定す
ることを意図せず、各種実施形態の単なる代表的なものである。さらに、本明細書中で開
示される方法のステップまたは動作の順序は、本開示の範囲から逸脱することなく当業者
によって変更されてもよい。言い換えると、実施形態の適切な操作のためにステップまた
は動作の特定の順序が必要とされない限り、特定のステップまたは動作の順序または使用
は変更されてもよい。
【0108】
別に明確に定義されていない限り、本明細書中で使用される技術用語は、当該技術分野
において理解されるとおりの通常の意味を有する。理解しやすいように例を用いて以下の
用語を明確に定義する。
【0109】
本明細書中で使用される場合、「ペプチド」および「ポリペプチド」は、サブユニット
アミノ酸の配列を指すその最も広い意味で使用されてもよい。本開示のペプチドまたはポ
リペプチドは、L-アミノ酸、D-アミノ酸(インビボにおいてL-アミノ酸に特異的な
プロテアーゼに抵抗性であることがある)またはD-アミノ酸およびL-アミノ酸の組み
合わせを含んでもよい。ペプチドおよびポリペプチドという用語は、同義に使用すること
ができる。本明細書に記載されているペプチドおよびポリペプチドは、化学合成されても
、または組換え発現されてもよい。ペプチドおよびポリペプチドは、所与の目的のために
有用だと考えられる任意のその他の部分と結合されてもよい。そのような結合は、当業者
によって理解されるような共有結合または非共有結合を含んでもよい。
【0110】
本明細書中で開示されるアミノ酸残基は、全般的なポリペプチド構造および/または機
能を保持する、または実質的に保持する保存的置換によって改変されてもよい。本明細書
中で使用される場合、「保存的アミノ酸置換」とは、疎水性アミノ酸(すなわち、Ala
、Cys、Gly、Pro、Met、Val、IleおよびLeu)が、他の疎水性アミ
ノ酸で置換されてもよく、大きな側鎖を有する疎水性アミノ酸(すなわち、Phe、Ty
rおよびTrp)が、大きな側鎖を有する他の疎水性アミノ酸で置換されてもよく、正電
荷側鎖を有するアミノ酸(すなわち、Arg、His、およびLys)が、正電荷側鎖を
有する他のアミノ酸で置換されてもよく、負電荷側鎖を有するアミノ酸(すなわち、As
pおよびGlu)が、負電荷側鎖を有する他のアミノ酸で置換されてもよく、極性無電荷
側鎖を有するアミノ酸(すなわち、Ser、Thr、Asn、およびGln)が、極性無
電荷側鎖を有する他のアミノ酸で置換されてもよいことを示す。
【0111】
対象の処置は、対象(例えば、患者)に有効量を与えること、または予防的処置および
/または治療的処置を与えること含んでもよい。「有効量」は、対象に所望の生理的変化
をもたらすことができる化合物の量である。有効量はまた、研究目的のために投与されて
もよい。
【0112】
「予防的処置」は、処置が疾患または状態をさらに発症するリスクを減少させる、予防
するおよび/または低減するため、あるいは疾患または状態を発症するリスクを減少させ
る、予防するおよび/または低減するために施されるような、疾患もしくは状態の徴候も
しくは症状を示さない対象または疾患もしくは状態の初期の徴候もしくは症状のみを示す
対象に施される処置を含む。したがって、予防的処置は、疾患または状態に対する予防処
置として機能してもよい。
【0113】
「治療的処置」は、疾患または状態の症状または徴候を示す対象に施される処置を含み
、治療的処置は、疾患または状態の症状または徴候を減少させるか、あるいは除去するた
めに対象に施される。
【0114】
「治療有効量」は、予防的処置および/または治療的処置をもたらす量を含む。治療有
効量はまた、疾患または状態を完全に予防するか、または治す必要はないが、発症の遅延
あるいは疾患または状態の少なくとも1つの症状の緩和または改善などの部分的な利益を
もたらしてもよい。
【0115】
投与に関して、有効量および治療有効量(本明細書において用量とも称される)は、イ
ンビトロアッセイおよび/または動物モデル試験の結果に基づいてまず推定することがで
きる。例えば、細胞培養において求められたIC50を含む血中濃度範囲を達成するため
の用量が動物モデルに関して配合されてもよい。そのような情報は、目的とする対象にお
いて有用な用量をさらに正確に決定するために使用することができる。
【0116】
特定の対象に投与される実際の用量は、医師、獣医師または研究者が以下に限定される
ものではないが、体重、状態の重症度、病気の種類、以前もしくは併用の治療的介入、対
象の特発性疾患および/または投与経路を含む身体的および生理的要因などのパラメータ
ーを考慮して決定することができる。
【0117】
用量は、1×108ベクターゲノム/kg(vg/kg)から1×1015vg/kg
、1×109vg/kgから1×1014vg/kg、1×1010vg/kgから1×
1013vg/kg、または1×1011vg/kgから1×1012vg/kgまで変
動してもよい。その他の非限定例において、用量は、約1×108vg/kg、約1×1
09vg/kg、約1×1010vg/kg、約1×1011vg/kg、約1×101
2vg/kg、約1×1013vg/kg、約1×1014vg/kgまたは約1×10
15vg/kgを含んでもよい。治療有効量は、処置計画の過程(すなわち、日、週、月
など)において単回または複数用量を投与することによって達成されてもよい。
【0118】
本明細書中で開示の化合物の薬学的に許容される塩、互変異性体および異性体も使用さ
れてもよい。例となる塩としては、これらに限定されるものではないが、硫酸塩、クエン
酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、
酸性リン酸塩、イソニコチン酸塩、乳酸塩、サリチル酸塩、酸性クエン酸塩、酒石酸塩、
オレイン酸塩、タンニン酸塩、パントテン酸塩、重酒石酸塩、アスコルビン酸塩、コハク
酸塩、マレイン酸塩、ベシル酸塩、ゲンチシネート(gentisinate)、フマル酸塩、グル
コン酸塩、グルカロネート(glucaronate)、糖酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩、グルタミン
酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p-トルエン
スルホン酸塩、およびパモ酸塩(すなわち、1,1’-メチレン-ビス-(2-ヒドロキ
シ-3-ナフトアート))を挙げることができる。
【0119】
本明細書に記載されている製剤は、以下に限定されないが、注射、注入、灌流、吸入、
洗浄、および/または摂取によって投与することができる。投与の経路としては、これら
に限定されるものではないが、静脈内、皮内、動脈内、腹腔内、病巣内、頭蓋内、関節腔
内、前立腺内、胸膜内、気管内、鼻腔内、硝子体内、腟内、直腸内、局所、腫瘍内、筋肉
内、小胞内、心膜内、臍帯内、眼内、粘膜、経口、皮下および/または結膜下を挙げるこ
とができる。その他の非限定例において、投与は、筋肉内注射、血管内注射、腹腔内注射
または筋系へのベクターの送達に適したその他の任意の方法によって行うことができる。
【0120】
一部の実施形態において、注射用製剤は、Hanks液、リンゲル液、および/または
生理的食塩水を含むが、それらに限定されない緩衝液中の水溶液として生成されてもよい
。溶液は、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤などの製剤に関連する薬剤を含んでも
よい。あるいは、製剤は、使用前に適した媒体制御(vehicle control)(例えば、滅菌
パイロジェンフリー水)で構成するための凍結乾燥および/または粉末形態であってもよ
い。
【0121】
本明細書中で開示されるあらゆる製剤は、研究、予防的処置および/または治療的処置
かにかかわらず、投与の利益より勝る可能性のある著しく有害な反応、アレルギー反応ま
たはその他の都合の悪い反応をもたらさないものを含むその他の薬学的に許容される任意
の担体(複数可)を有利に含んでもよい。例となる薬学的に許容される担体および製剤は
、Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th Ed., Mack Printing Company, 1990に
開示されており、それらに関するその教示が参照により本明細書に組み込まれる。さらに
、製剤は、生物学的基準および品質管理の米国FDAの部門および/またはその他の関連
した米国および外国の規制当局によって要求される無菌性、発熱性、一般的な安全性およ
び純度基準を満たすよう調製することができる。
【0122】
例となる一般に使用される薬学的に許容される担体は、これらに限定されるものではな
いが、増量剤または充填剤、溶媒または共溶媒、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸
化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メチオニン、およびビタミンE)、保存料、等張化
剤、吸収遅延剤、塩、安定剤、緩衝剤、キレート剤(例えば、EDTA)、ゲル、結合剤
、崩壊剤および/または滑沢剤を含んでもよい。
【0123】
例となる緩衝剤は、これらに限定されるものではないが、クエン酸緩衝剤、コハク酸緩
衝剤、酒石酸緩衝剤、フマル酸緩衝剤、グルコン酸緩衝剤、シュウ酸緩衝剤、乳酸緩衝剤
、酢酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、ヒスチジン緩衝剤、および/またはトリメチルアミン塩を
含んでもよい。
【0124】
例となる保存料は、これらに限定されるものではないが、フェノール、ベンジルアルコ
ール、メタクレゾール、メチルパラベン、プロピルパラベン、オクタデシルジメチルベン
ジルアンモニウムクロリド、ハロゲン化ベンザルコニウム、ヘキサメトニウムクロリド、
アルキルパラベン(メチルもしくはプロピルパラベンなど)、カテコール、レゾルシノー
ル、シクロヘキサノール、および/または3-ペンタノールを含んでもよい。
【0125】
例となる等張化剤は、以下に限定されるものではないが、三価以上の糖アルコール(例
えば、グリセリン、エリトリトール、アラビトール、キシリトール、ソルビトール、およ
び/またはマンニトール)を含む多価糖アルコールを含んでもよい。
【0126】
例となる安定剤は、これらに限定されるものではないが、有機糖、多価糖アルコール、
ポリエチレングリコール、硫黄含有還元剤、アミノ酸、低分子量ポリペプチド、タンパク
質、免疫グロブリン、親水性ポリマー、および/またはポリサッカライドを含んでもよい
。
【0127】
製剤はまた、デポ剤であってもよい。一部の実施形態において、そのような長時間作用
性製剤は、以下に限定されないが、植込み(例えば、皮下もしくは筋肉内)または筋肉内
注射によって投与されてもよい。したがって、例えば、化合物は、適したポリマー材料お
よび/もしくは疎水性材料(例えば、許容できる油中のエマルジョンとして)またはイオ
ン交換樹脂とともに、あるいはやや可溶性の誘導体として(例えば、やや可溶性の塩とし
て)製剤化されてもよい。
【0128】
さらに、さまざまな実施形態において、化合物は、少なくとも1つの化合物を含む固体
ポリマーの半透性マトリックスなどの持続放出システムを使用して送達することができる
。さまざまな持続放出材料が確立され、当業者によく知られている。持続放出カプセルは
、その化学的性質に応じて、投与後、数週間から最大100日を超えて化合物を放出する
ことができる。
【0129】
遺伝子治療方法は、特定のタンパク質を患者または対象に(例えば、持続性レベルで)
送達するために使用することができる。これらの方法は、技術者が目的とする遺伝子をコ
ードするDNAを直接患者もしくは対象(インビボ遺伝子治療)または患者、対象もしく
はドナーから単離された細胞(エクスビボ遺伝子治療)に導入することを可能にする。導
入されたDNAは、その後、患者もしくは対象自身の細胞または移植細胞に所望のタンパ
ク質産物を産生するよう指示する。したがって、遺伝子送達は、毎日の注射の必要性を回
避することができる。遺伝子治療はまた、治療のために技術者が特定の臓器または細胞標
的(例えば、筋肉、肝臓、血液細胞、脳細胞など)を選択することを可能にする。
【0130】
DNAは、対象の細胞にいくつかの方法で導入することができる。リン酸カルシウム沈
殿およびリポソームによるトランスフェクションなどの化学的方法、ならびにエレクトロ
ポレーションなどの物理的方法含むトランスフェクション方法がある。一般に、トランス
フェクション方法は、インビボ遺伝子送達に適していない。組換えウイルスを使用する方
法もある。現在のウイルスによる遺伝子送達方法としては、レトロウイルス、アデノウイ
ルス、ヘルペスウイルス、ポックスウイルスおよびアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクタ
ーが挙げられるが、これらに限定されない。
【0131】
遺伝子送達に使用されてきたウイルスシステムの1つは、アデノ随伴ウイルス(AAV
)である。AAVは、デペンドパルボウイルス(Dependoparvovirus)属に属するパルボ
ウイルスである。AAVは、他のウイルスには見られないいくつかの魅力的な特徴を有す
る。第1に、AAVは、非分裂細胞を含む広い範囲の宿主細胞に感染することができる。
第2に、AAVは、異なる種由来の細胞に感染することができる。第3に、AAVは、あ
らゆるヒトまたは動物疾患と関連しておらず、組込み時に宿主細胞の生物学的特性を変え
ないようである。実際に、ヒト母集団の80~85%がこのウイルスに曝露されていると
推定される。最後に、AAVは、広い範囲の物理的および化学的条件において安定であり
、これは、製造、保管および輸送要件に役立つ。
【0132】
AAVゲノムは、4681のヌクレオチドを含む直線的な一本鎖DNA分子である。A
AVゲノムは、一般に両末端に末端逆位配列(ITR)が隣接する内側の非反復ゲノムを
含む。ITRは、およそ145塩基対(bp)の長さである。ITRは、DNA複製の開
始点としておよびウイルスゲノムのためのパッケージングシグナルとしてなど複数の機能
を有する。
【0133】
ゲノムの内側の非反復部分は、AAV複製(rep)遺伝子およびカプシド(cap)
遺伝子として知られる2個の大きなオープンリーディングフレームを含む。rep遺伝子
およびcap遺伝子は、ウイルスがウイルスゲノムを複製し、ビリオンにパッケージング
するのを可能にするウイルスタンパク質をコードする。特に、それらの見かけの分子量に
従って名づけられたRep78、Rep68、Rep52およびRep40の少なくとも
4つのウイルスタンパク質のファミリーがAAVのrep領域から発現される。AAVの
cap領域は、少なくとも3つタンパク質、VP1、VP2およびVP3をコードする。
【0134】
AAVは、ヘルパー依存性ウイルスであり、すなわち、AAVは、AAVビリオンを形
成するためにヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルスまたはワク
チニア)の共感染が必要である。ヘルパーウイルスの共感染がないと、AAVは、ウイル
スゲノムが宿主細胞の染色体に挿入されるが、感染性ビリオンは産生されない潜伏状態を
確立する。後のヘルパーウイルスの感染が組み込まれたゲノムを「レスキュー」し、それ
により、AVVが、そのゲノムを複製し、感染性AAVビリオンにパッケージングするの
を可能にする。AAVは異なる種由来の細胞に感染することができるが、ヘルパーウイル
スは宿主細胞と同じ種のものでなければならない。したがって、例えば、ヒトAAVは、
イヌアデノウイルスに共感染したイヌ細胞において複製することになる。
【0135】
「遺伝子導入」または「遺伝子送達」は、外来DNAを宿主細胞に挿入するための方法
またはシステムを含む。遺伝子導入は、組み込まれていない導入DNAの一過性の発現、
染色体外複製、および導入レプリコン(例えば、エピゾーム)の発現または宿主細胞のゲ
ノムDNAへの導入遺伝物質の組込みをもたらす。
【0136】
「ベクター」は、以下に限定されるものではないが、プラスミド、ファージ、トランス
ポゾン、コスミド、染色体、人工染色体、ウイルス、ビリオンなどの任意の遺伝エレメン
トを含み、これは、適切な制御エレメントと結合されると複製することができ、細胞間で
遺伝子配列を移すことができる。したがって、この用語は、クローニング媒体および発現
媒体ならびにウイルスベクターを含む。
【0137】
「AAVベクター」は、以下に限定されないが、AAV1、AAV2、AAV3、AA
V4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、およびAAV9を含むアデノ随伴ウイ
ルス血清型由来のベクターを含む。AAVベクターは、全体または一部が除去された1つ
または複数のAAV野生型遺伝子、例えば、rep遺伝子および/またはcap遺伝子を
有してもよいが、機能的な隣接するITR配列を保持する。機能的なITR配列は、レス
キュー、複製およびAAVビリオンのパッケージングのために必須である。したがって、
AAVベクターは、本明細書においてはウイルスの複製およびパッケージング(例えば、
機能的なITR)のためにシス位置に必要とされる少なくともそれらの配列を含むと定義
される。ITRは、野生型ヌクレオチド配列である必要はなく、配列が機能的レスキュー
、複製およびパッケージングをもたらす限り、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または
置換によって改変されてもよい。
【0138】
「組換えAAVベクター」または「rAAVベクター」は、AAV ITRが両側に隣
接した目的とする異種のヌクレオチド配列を被包するAAVタンパク質殻から構成される
感染性で複製に欠陥のあるウイルスを含む。rAAVベクターは、AAVベクター、AA
Vヘルパー機能および付属の機能を含む適切な宿主細胞において生成される。この手法で
は、宿主細胞が、続く遺伝子送達のためにAAVベクター(目的とする組換えヌクレオチ
ド配列を含む)を感染性の組換えビリオン粒子にパッケージングするために必要とされる
AAVポリペプチドをコードすることができるようにされる。
【0139】
本開示の第1の態様は、タンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子を含む
ヌクレオチド配列に関する。ヌクレオチド配列はまた、制御カセットも含んでよい。さら
に、ヌクレオチド配列は、単離および/または精製されてもよい。
【0140】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパ
ク質は、アミノ末端アクチン結合ドメイン、ジストログリカン結合ドメイン、および/ま
たはスペクトリン様リピートドメインを含んでもよい。スペクトリン様リピートドメイン
は、少なくとも4個のスペクトリン様リピートまたは少なくとも4個のスペクトリン様リ
ピートの一部を含んでもよい。少なくとも4個のスペクトリン様リピートのうちの2個は
、神経型一酸化窒素合成酵素結合ドメインを含んでもよい。言い換えれば、少なくとも4
個のスペクトリン様リピートは、スペクトリン様リピート16および17またはそれらの
一部を含んでもよい。一部の実施形態において、少なくとも4個のスペクトリン様リピー
トは、スペクトリン様リピート1および24またはそれらの一部を含んでもよい。代替的
実施形態において、少なくとも4個のスペクトリン様リピートは、その他の適したスペク
トリン様リピートまたはそれらの一部(例えば、スペクトリン様リピート2、3、4、5
、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、18、19、20、21、2
2、および/または23)を含んでもよい。
【0141】
特定の実施形態において、スペクトリン様リピートドメインは、4個、5個、6個、7
個、8個以上のスペクトリン様リピートまたはそれらの一部を含んでもよい。特定の他の
実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、
5個のスペクトリン様リピートから8個のスペクトリン様リピートの間のスペクトリン様
リピート(例えば、5個、6個、7個または8個スペクトリン様リピート)を含んでもよ
い。さらに特定の他の実施形態において、スペクトリン様リピートドメインは、別の適し
た数のスペクトリン様リピートまたはそれらの一部を含んでもよい。
【0142】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパ
ク質は、ヒンジドメインまたはその一部をさらに含んでもよい。例えば、マイクロジスト
ロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、ヒンジ1ドメイン、ヒンジ2ドメイ
ン、ヒンジ3ドメイン、ヒンジ4ドメインおよび/またはヒンジ様ドメインの少なくとも
1つから選択されるヒンジドメインの少なくとも一部を含んでもよい(スペクトリン様リ
ピート15(配列番号20)から下流の配列およびスペクトリン様リピート23(配列番
号21)内の配列によってコードされるヒンジ様ドメインなど)。
【0143】
さまざまな実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号16の核酸
配列の一部を含んでもよい。さまざまな他の実施形態において、マイクロジストロフィン
遺伝子は、配列番号16の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも
40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、
少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくと
も80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%
、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なく
とも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93
%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少な
くとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざまな
他の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号16の核酸配列と1
00%の配列同一性を有してもよい。
【0144】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパ
ク質は、配列番号4のアミノ酸配列の一部を含んでもよい。一部の他の実施形態において
、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号4のアミ
ノ酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%
、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なく
とも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81
%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少な
くとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも9
0%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少
なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少な
くとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにいくつかの他の実施形態において、マ
イクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号4のアミノ酸
配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0145】
特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号18の核酸配列
の一部を含んでもよい。特定の他の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は
、配列番号18の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、
少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくと
も76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%
、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なく
とも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89
%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少な
くとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも9
8%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざまな他の実施
形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号18の核酸配列と100%の
配列同一性を有してもよい。
【0146】
さまざまな実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタ
ンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列の一部を含んでもよい。さまざまな他の実施形態
において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号
5のアミノ酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくと
も50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも76%
、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なく
とも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85
%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少な
くとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも9
4%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、ま
たは少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざまな他の実施形態にお
いて、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号5の
アミノ酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0147】
さらに、マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の配列番号11~18の核
酸配列の一部を含んでもよい。特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子
によってコードされるタンパク質は、1つまたは複数の配列番号3~10のアミノ酸配列
の一部を含んでもよい。特定の他の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子に
よってコードされるタンパク質は、
図7のタンパク質構造図に示される1つまたは複数の
タンパク質の一部を含んでもよい(例えば、μDysH3およびμDys1~μDys1
6)。
【0148】
一部の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーター、心筋トロポニンT(
cTnT)プロモーターおよび/または別の適した制御カセットの少なくとも1つから選
択されてもよい。特定の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであっ
てもよく、CK8プロモーターは、配列番号19の核酸配列の一部を含んでもよい。特定
の他の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであってもよく、CK8
プロモーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少な
くとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも7
5%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少
なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも
84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、
少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくと
も93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%
、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらに特定
の他の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであってもよく、CK8
プロモーターは、配列番号19の核酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0149】
さまざまな実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく
、cTnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列の一部を含んでもよい。さまざまな他
の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく、cTnT
プロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なく
とも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75
%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少な
くとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも8
4%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少
なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも
93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、
少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざ
まな他の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく、c
TnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0150】
本開示の別の態様は、上記のとおりのヌクレオチド配列を含む医薬組成物に関する。一
部の実施形態において、本医薬組成物は、送達媒体をさらに含んでもよい。例えば、本医
薬組成物は、制御カセットおよびタンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子
を含むヌクレオチド配列を含んでもよく、医薬組成物は、送達媒体をさらに含んでもよい
。本医薬組成物のヌクレオチド配列は、単離および精製されたヌクレオチド配列であって
もよい。
【0151】
さまざまな実施形態において、送達媒体は、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターま
たは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)ベクターを含んでもよい。AAVベクターは
、血清型6のAAV(AAV6)であってもよい。同様に、rAAVベクターは、血清型
6のrAAV(rAAV6)であってもよい。AAVベクターは、血清型8のAAV(A
AV8)であってもよい。同様に、rAAVベクターは、血清型8のrAAV(rAAV
8)であってもよい。AAVベクターは、血清型9のAAV(AAV9)であってもよい
。同様に、rAAVベクターは、血清型9のrAAV(rAAV9)であってもよい。r
AAVベクターは、AAV血清型6由来のカプシドタンパク質でシュードタイピングした
AAV2ゲノム末端逆位配列(ITR)(rAAV2/6)から構成されてもよい。AA
VまたはrAAVのその他の適した血清型も、本開示の範囲内にある。
【0152】
一部の実施形態において、上記のとおり、送達媒体は、マイクロジストロフィン遺伝子
を発現させてもよく、またはそれを発現させるよう構成されてもよい。さまざまな実施形
態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号16の核酸配列の一部を含んで
もよい。さまざまな他の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号
16の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも
50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも76%、
少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくと
も81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%
、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なく
とも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94
%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、また
は少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざまな他の実施形態におい
て、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号16の核酸配列と100%の配列同一性
を有してもよい。
【0153】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパ
ク質は、配列番号4のアミノ酸配列の一部を含んでもよい。一部の他の実施形態において
、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号4のアミ
ノ酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%
、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なく
とも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81
%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少な
くとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも9
0%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少
なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少な
くとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにいくつかの他の実施形態において、マ
イクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号4のアミノ酸
配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0154】
特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号18の核酸配列
の一部を含んでもよい。特定の他の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は
、配列番号18の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、
少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくと
も76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%
、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なく
とも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89
%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少な
くとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも9
8%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらに特定の他の実施形態
において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号18の核酸配列と100%の配列
同一性を有してもよい。
【0155】
さまざまな実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタ
ンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列の一部を含んでもよい。さまざまな他の実施形態
において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号
5のアミノ酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくと
も50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも76%
、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なく
とも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85
%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少な
くとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも9
4%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、ま
たは少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざまな他の実施形態にお
いて、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号5の
アミノ酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0156】
また、上記のとおり、制御カセットは、CK8プロモーター、心筋トロポニンT(cT
nT)プロモーターおよび/または別の適した制御カセットの少なくとも1つから選択さ
れてもよい。特定の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであっても
よく、CK8プロモーターは、配列番号19の核酸配列の一部を含んでもよい。特定の他
の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであってもよく、CK8プロ
モーターは、配列番号19の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくと
も40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%
、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なく
とも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84
%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少な
くとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも9
3%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少
なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらに特定の他
の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであってもよく、CK8プロ
モーターは、配列番号19の核酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0157】
さまざまな実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく
、cTnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列の一部を含んでもよい。さまざまな他
の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく、cTnT
プロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも少なくとも20%、少なくとも30
%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少な
くとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも7
9%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少
なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも
88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、
少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくと
も97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さ
らにさまざまな他の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであって
もよく、cTnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列と100%の配列同一性を有し
てもよい。
【0158】
一部の実施形態において、本医薬組成物は、筋ジストロフィーの病理学的影響または症
状を低減するよう構成されてもよい。筋ジストロフィーは、筋強直性筋ジストロフィー、
デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィ
ー、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロ
フィー、遠位型筋ジストロフィー、エメリードレイフス型筋ジストロフィー、および/ま
たは別の適した筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択されてもよい。一部の
他の実施形態において、本医薬組成物は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーおよび/また
はベッカー型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つから選択される筋ジストロフィー
の病理学的影響または症状を低減するよう構成されてもよい。特定の実施形態において、
本医薬組成物は、サルコペニア、心臓疾患および/または悪液質のうちの少なくとも1つ
の病理学的影響または症状を低減するよう構成されてもよい。
【0159】
本開示の別の態様は、筋ジストロフィー、サルコペニア、心臓疾患および/または悪液
質を有する対象を処置するための方法に関する。本方法は、対象に制御カセットと連結さ
れたマイクロジストロフィン遺伝子を含む医薬組成物を投与することを含んでもよい。本
方法は、対象に治療有効量の医薬組成物を投与することを含んでもよい。さらに、マイク
ロジストロフィン遺伝子は、機能可能に制御カセットと連結されてもよい。
【0160】
一部の実施形態において、本方法は、対象に医薬組成物を投与することを含んでもよく
、医薬組成物は、AAVベクター、rAAVベクターおよび/または別の適した送達媒体
をさらに含む。送達媒体は、対象においてマイクロジストロフィン遺伝子を発現させても
よく、またはそれを発現させるよう構成されてもよい。
【0161】
上記のとおり、さまざまな実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列
番号16の核酸配列の一部を含んでもよい。さまざまな他の実施形態において、マイクロ
ジストロフィン遺伝子は、配列番号16の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30
%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少な
くとも75%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも7
9%、少なくとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少
なくとも84%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも
88%、少なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、
少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくと
も97%、少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さ
らにさまざまな他の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号16
の核酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0162】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパ
ク質は、配列番号4のアミノ酸配列の一部を含んでもよい。一部の他の実施形態において
、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号4のアミ
ノ酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%
、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも76%、少なく
とも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なくとも81
%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85%、少な
くとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少なくとも9
0%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少
なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少な
くとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにいくつかの他の実施形態において、マ
イクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号4のアミノ酸
配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0163】
特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号18の核酸配列
の一部を含んでもよい。特定の他の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は
、配列番号18の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、
少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくと
も76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%
、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なく
とも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89
%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少な
くとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも9
8%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらに特定の他の実施形態
において、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号18の核酸配列と100%の配列
同一性を有してもよい。
【0164】
さまざまな実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタ
ンパク質は、配列番号5のアミノ酸配列の一部を含んでもよい。さまざまな他の実施形態
において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号
5のアミノ酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくと
も50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも76%
、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも80%、少なく
とも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少なくとも85
%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも89%、少な
くとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも9
4%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、ま
たは少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざまな他の実施形態にお
いて、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパク質は、配列番号5の
アミノ酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0165】
一部の実施形態において、制御カセットは、横紋筋細胞におけるマイクロジストロフィ
ン遺伝子の発現のレベルが、非筋肉細胞におけるマイクロジストロフィン遺伝子の発現の
レベルよりも少なくとも100倍高くなるようにマイクロジストロフィン遺伝子を発現さ
せてもよく、または発現させるよう構成されてもよい。例えば、マイクロジストロフィン
遺伝子の発現のレベルは、対象の肺細胞においてよりも対象の横紋筋細胞において少なく
とも100倍高くてもよい。一部の他の実施形態において、制御カセットは、横紋筋細胞
におけるマイクロジストロフィン遺伝子の発現のレベルが、非筋肉細胞におけるマイクロ
ジストロフィン遺伝子の発現のレベルよりも少なくとも50倍高いレベルから150倍高
いレベルの間、少なくとも75倍高いレベルから125倍高いレベルの間または少なくと
も90倍高いレベルから110倍高いレベルの間であるようにマイクロジストロフィン遺
伝子を発現させてもよく、または発現させるよう構成されてもよい。
【0166】
上記のとおり、制御カセットは、CK8プロモーター、心筋トロポニンT(cTnT)
プロモーターおよび/または別の適した制御カセットの少なくとも1つから選択されても
よい。特定の実施形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであってもよく、
CK8プロモーターは、配列番号19の核酸配列の一部を含んでもよい。特定の他の実施
形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであってもよく、CK8プロモータ
ーは、配列番号19の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40
%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75%、少な
くとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少なくとも8
0%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも84%、少
なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少なくとも
89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、
少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくと
も98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらに特定の他の実施
形態において、制御カセットは、CK8プロモーターであってもよく、CK8プロモータ
ーは、配列番号19の核酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0167】
さまざまな実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく
、cTnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列の一部を含んでもよい。さまざまな他
の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく、cTnT
プロモーターは、配列番号1の核酸配列と少なくとも20%、少なくとも30%、少なく
とも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも75
%、少なくとも76%、少なくとも77%、少なくとも78%、少なくとも79%、少な
くとも80%、少なくとも81%、少なくとも82%、少なくとも83%、少なくとも8
4%、少なくとも85%、少なくとも86%、少なくとも87%、少なくとも88%、少
なくとも89%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも
93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、
少なくとも98%、または少なくとも99%の配列同一性を有してもよい。さらにさまざ
まな他の実施形態において、制御カセットは、cTnTプロモーターであってもよく、c
TnTプロモーターは、配列番号1の核酸配列と100%の配列同一性を有してもよい。
【0168】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の筋肉の
収縮性が向上するか、または増加するように対象の1つまたは複数の筋肉においてマイク
ロジストロフィンタンパク質を発現してもよく、または発現するよう構成されてもよい。
特定の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、1つまたは複数の骨格筋の
うちの少なくとも1つの比筋力発揮能力が正常な比筋力発揮能力の少なくとも10%、少
なくとも20%、少なくとも30%または少なくとも40%の範囲内まで向上するか、ま
たは増加するように対象の1つまたは複数の骨格筋においてマイクロジストロフィンタン
パク質を発現してもよく、または発現するよう構成されてもよい。特定の他の実施形態に
おいて、マイクロジストロフィン遺伝子は、基準拡張終末期容積の不足が、正常な拡張終
末期容積の少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%または少なくとも4
0%の範囲内まで回復するように対象の1つまたは複数の心筋においてマイクロジストロ
フィンタンパク質を発現してもよく、または発現するよう構成されてもよい。さまざまな
実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子は、ジストロフィン糖タンパク質複合
体への神経型一酸化窒素合成酵素の局在化が対象において向上するか、または増加するよ
うにマイクロジストロフィンタンパク質を発現してもよく、または発現するよう構成され
てもよい。
【0169】
一部の実施形態において、上記のとおり、本方法は、筋強直性筋ジストロフィー、デュ
シェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィ
ー、遠位型筋ジストロフィー、エメリードレイフス型筋ジストロフィー、および/または
別の適した筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つを有する対象を処置することを含ん
でもよい。一部の他の実施形態において、本方法は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーお
よび/またはベッカー型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つを有する対象を処置す
ることを含んでもよい。
【0170】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、筋ジストロフィー、サルコペニア、心臓疾
患および/または悪液質の病理学的影響または症状を低減してもよく、または低減するよ
う構成されてもよい。筋ジストロフィーの病理学的影響または症状は、筋痛、筋力低下、
筋肉疲労、筋萎縮、線維症、炎症、骨格筋の平均筋線維直径の増加、心筋症、6分間歩行
試験時間の減少、歩行の減少、心ポンプ失調、および/または1つまたは複数のその他の
適した病理学的影響または症状のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。サルコペ
ニアの病理学的影響または症状は、筋消耗および/または筋力低下のうちの少なくとも1
つから選択されてもよい。心臓疾患の病理学的影響または症状は、心筋症、血行動態の低
下、および/または不整脈のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。悪液質の病理
学的影響または症状は、筋消耗および/または筋力低下のうちの少なくとも1つから選択
されてもよい。
【0171】
筋ジストロフィーを有する対象を処置する方法は、筋ジストロフィーを有する対象を特
定することをさらに含んでもよい。同様に、サルコペニア、心臓疾患および/または悪液
質を有する対象を処置する方法は、それぞれサルコペニア、心臓疾患および/または悪液
質を有する対象を特定することをさらに含んでもよい。一部の実施形態において、対象は
、哺乳動物であってもよい。特定の実施形態において、対象は、ヒトであってもよい。
【0172】
本開示の別の態様は、筋ジストロフィー、サルコペニア、心臓疾患および/または悪液
質を発症するリスクのある対象に予防的処置を行うための方法に関する。本方法は、筋ジ
ストロフィー、サルコペニア、心臓疾患および/または悪液質を有する対象を処置する方
法に関して上記のとおりの医薬組成物を対象に投与すること含んでもよい。
【0173】
一部の実施形態において、本方法は、筋強直性筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジ
ストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー、肢帯型筋ジストロフィー、顔面肩甲上腕型
筋ジストロフィー、先天性筋ジストロフィー、眼咽頭筋型筋ジストロフィー、遠位型筋ジ
ストロフィー、エメリードレイフス型筋ジストロフィー、および/または別の適した筋ジ
ストロフィーのうちの少なくとも1つを発症するリスクのある対象を処置することを含ん
でもよい。一部の他の実施形態において、本方法は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーお
よび/またはベッカー型筋ジストロフィーのうちの少なくとも1つを発症するリスクのあ
る対象を処置することを含んでもよい。
【0174】
特定の実施形態において、本医薬組成物は、筋ジストロフィー、サルコペニア、心臓疾
患および/または悪液質の病理学的影響または症状を発症するリスクを低減してもよく、
または低減するよう構成されてもよい。筋ジストロフィー、サルコペニア、心臓疾患およ
び/または悪液質を発症するリスクのある対象を処置する方法は、それぞれ筋ジストロフ
ィー、サルコペニア、心臓疾患および/または悪液質を発症するリスクのある対象を特定
することをさらに含んでもよい。一部の実施形態において、対象は、哺乳動物であっても
よい。特定の実施形態において、対象は、ヒトであってもよい。
【0175】
本開示の別の態様は、医薬組成物(例えば、マイクロジストロフィン遺伝子)の発現を
向上させる、かつ/または標的とするエンハンサーおよび/またはプロモーターを含む制
御カセットに関する。一部の実施形態において、医薬組成物の発現を向上させる、かつ/
または標的とするためのエンハンサーまたはプロモーターは、遺伝子、ペプチド、ポリペ
プチドおよび/または調節性RNAの少なくとも一部を含んでもよい。医薬組成物の発現
を標的とすることは、対象の特定の細胞タイプ、組織、および/または臓器における医薬
組成物の発現を含んでもよい。例えば、cTnT455(配列番号1)は、心臓特異的な
発現に使用することができる。
【0176】
特定の実施形態において、エンハンサーまたはプロモーターは、ペプチドを含む医薬組
成物を発現させてもよく、発現させるよう構成されてもよい。さまざまな実施形態におい
て、エンハンサーまたはプロモーターは、発生中の筋肉、損傷を受けた筋肉および/また
は病気の筋肉(すなわち、再生している可能性のある筋肉)においてペプチドを発現させ
てもよく、または発現させるよう構成されてもよい。ヒトcTnT455 RC(配列番
号1)は、安定状態の成熟骨格筋において転写活性がなくてもよい。
【0177】
上記のとおり、エンハンサーおよび/またはプロモーターは、機能するよう、すなわち
、医薬組成物の発現を向上させる、かつ/または医薬組成物を標的とするため医薬組成物
と連結されてもよい。さらに、本医薬組成物は、機能するよう1つ以上のエンハンサーお
よび/またはプロモーターと連結されてもよい。一部の実施形態において、本明細書中に
おいて開示される医薬組成物の発現は、心筋を再生する助けとなる場合もある。例えば、
ヒトcTnT455 RC(配列番号1)は、傷ついた心筋および/または再生している
心筋において医薬組成物の一過性の発現を向上させてもよく、またはそれを標的としても
よい。一部の実施形態において、本明細書中で開示される医薬組成物の発現は、心筋およ
び/または心筋細胞の減少を予防する助けとなる場合もある。特定の実施形態において、
本明細書中において開示される医薬組成物の発現は、骨格筋を再生する助けとなる場合も
ある。さまざまな実施形態において、本明細書中で開示される医薬組成物の発現は、骨格
筋の壊死および/または消耗を予防する助けとなる場合もある。
【0178】
本開示の別の態様は、マイクロジストロフィン遺伝子を含むヌクレオチド配列に関し、
マイクロジストロフィン遺伝子は、互いに直接連結された少なくとも2個のスペクトリン
様リピートを含むタンパク質をコードしてもよい。一部の実施形態において、互いに直接
連結された少なくとも2個のスペクトリン様リピートは、スペクトリン様リピート2(S
R2)と直接連結されたスペクトリン様リピート1(SR1)、スペクトリン様リピート
3(SR3)と直接連結されたSR2、スペクトリン様リピート16(SR16)と直接
連結されたSR1、スペクトリン様リピート23(SR23)と直接連結されたスペクト
リン様リピート17(SR17)、スペクトリン様リピート24(SR24)と直接連結
されたSR17、および/またはSR24と直接連結されたSR23のうちの少なくとも
1つから選択されてもよい。マイクロジストロフィン遺伝子はまた、アミノ末端アクチン
結合ドメインおよび/またはβ-ジストログリカン結合ドメインを含むタンパク質をコー
ドしてもよい。
【0179】
本開示の別の態様は、マイクロジストロフィン遺伝子を含むヌクレオチド配列に関し、
マイクロジストロフィン遺伝子は、順番にヒンジ1ドメイン(H1)、SR1、SR16
、SR17、SR24、および/またはヒンジ4ドメイン(H4)を含むタンパク質をコ
ードしてもよい。一部の実施形態において、H1は、SR1と直接連結されてもよい。さ
まざまな実施形態において、SR1は、SR16と直接連結されてもよい。特定の実施形
態において、SR16は、SR17と直接連結されてもよい。一部の実施形態において、
SR17は、SR24と直接連結されてもよい。さまざまな実施形態において、SR24
は、H4と直接連結されてもよい。
【0180】
一部の実施形態において、マイクロジストロフィン遺伝子によってコードされるタンパ
ク質は、順番にSR2およびSR3をさらに含んでもよく、SR2およびSR3は、SR
1とSR16との間に配置されてもよい。さらに、SR1は、SR2と直接連結されても
よく、SR2は、SR3とさらに連結されてもよい。
【0181】
本開示の別の態様は、タンパク質をコードするマイクロジストロフィン遺伝子を含むヌ
クレオチド配列に関し、マイクロジストロフィン遺伝子は、順番にH1、SR1、SR1
6、SR17、SR23、SR24、および/またはH4を含むタンパク質をコードして
もよい。一部の実施形態において、H1は、SR1と直接連結されてもよい、SR1は、
SR16と直接連結されてもよい、SR16は、SR17と直接連結されてもよい、SR
17は、SR23と直接連結されてもよい、SR23は、SR24と直接連結されてもよ
く、かつ/またはSR24は、H4と直接連結されてもよい。
【0182】
本開示の別の態様は、配列番号16の核酸配列を含むマイクロジストロフィン遺伝子と
、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターまたは組換えアデノ随伴ウイルス(rAAV)
ベクターとを含んでもよい医薬組成物に関する。一部の実施形態において、AAVベクタ
ーまたはrAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8、血清型9または別の適した
血清型のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。
【0183】
本開示の別の態様は、配列番号4のアミノ酸配列を含んでもよいタンパク質をコードす
るマイクロジストロフィン遺伝子と、AAVベクターまたはrAAVベクターとを含んで
もよい医薬組成物に関する。特定の実施形態において、AAVベクターまたはrAAVベ
クターの血清型は、血清型6、血清型8、血清型9または別の適した血清型のうちの少な
くとも1つから選択されてもよい。
【0184】
本開示の別の態様は、配列番号18の核酸配列を含むマイクロジストロフィン遺伝子と
、AAVベクターまたはrAAVベクターとを含んでもよい医薬組成物に関する。さまざ
まな実施形態において、AAVベクターまたはrAAVベクターの血清型は、血清型6、
血清型8、血清型9または別の適した血清型のうちの少なくとも1つから選択される。
【0185】
本開示の別の態様は、配列番号5のアミノ酸配列を含んでもよいタンパク質をコードす
るマイクロジストロフィン遺伝子と、AAVベクターまたはrAAVベクターとを含んで
もよい医薬組成物に関する。一部の実施形態において、AAVベクターまたはrAAVベ
クターの血清型は、血清型6、血清型8、血清型9または別の適した血清型のうちの少な
くとも1つから選択される。
【0186】
本開示の別の態様は、筋ジストロフィー、サルコペニア、心不全、および/または悪液
質の処置または予防的処置に使用するための医薬組成物に関する。一部の実施形態におい
て、本医薬組成物は、マイクロジストロフィン遺伝子を含んでもよい。特定の実施形態に
おいて、マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号16または配列番号18の核酸配列
と、AAVベクターまたはrAAVベクターとを含んでもよい。さまざまな実施形態にお
いて、AAVベクターまたはrAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8、血清型
9または別の適した血清型のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。
【0187】
本開示の別の態様は、筋ジストロフィー、サルコペニア、心不全、および/または悪液
質の処置または予防的処置のための医薬組成物に関する。一部の実施形態において、本医
薬組成物は、マイクロジストロフィン遺伝子を含んでもよい。特定の実施形態において、
マイクロジストロフィン遺伝子は、配列番号16または配列番号18の核酸配列と、AA
VベクターまたはrAAVベクターとを含んでもよい。さまざまな実施形態において、A
AVベクターまたはrAAVベクターの血清型は、血清型6、血清型8、血清型9または
別の適した血清型のうちの少なくとも1つから選択されてもよい。
[実施例]
【0188】
以下の実施例は、開示されている方法および組成物の説明のためのものである。本開示
に照らして、当業者は、過度の実験を行うことなく、開示されている方法および組成物の
これら例および他の例の変形が可能であろうことを認識するであろう。
【実施例1】
【0189】
マイクロジストロフィンの開発
改善された性能を有するマイクロジストロフィンを開発するために、コード領域のおよ
そ80%を占めるジストロフィンの中心のロッドドメインのさまざまな構造的変更を評価
した。完全長タンパク質に存在する24のスペクトリン様リピート(SR)のうちの4個
から6個の間のスペクトリン様リピートならびに内部のヒンジドメインのあり、またはな
しの固有の組み合わせを含む新規の構築物を形成した。これらの新規のマイクロジストロ
フィンを、ジストロフィーmdxマウスにrAAVにより送達し、続いて3か月および6
か月後に骨格筋の病態生理学的分析を行うことによって評価した。
【0190】
μDysクローンのいくつかの種類を、ジストロフィン糖タンパク質複合体(DGC)
のより完全な回復を可能にすると同時に機能活性を増加させることに重点を置いて設計し
た。設計したμDysクローンを、mdxマウスの横紋筋において高度に機能的であり得
る予め特徴づけられたΔH2-R23+H3/ΔCTクローン、μDysH3と比較した
(Banks, G. B., et al., PLoS Genetics 6, e1000958, (2010)を参照)。これらの構築
物の設計は、この構築物を発現する筋肉の収縮性を改善し、DGCへの神経型一酸化窒素
合成酵素(nNOS)の局在化を回復させるために少なくとも部分的に中心のロッドドメ
インに焦点を合わせた(Lai, Y., et al., The Journal of Clinical Investigation 119
, 624-635, (2009)およびLai, Y., et al., Proceedings of the National Academy of S
ciences of the United States of America 110, 525-530, (2013)を参照)。機能的能力
および4個、5個または6個のSRを有するより大きな構築物を送達する能力も試験した
。これらのより大きなμDysクローンの安定したパッケージングを可能にするために、
筋肉クレアチンキナーゼ遺伝子から改変された小さな遺伝子制御カセット(RC)を組み
込んだ。このCK8 RCは、筋肉に限定された高い発現を示すことができるが、このC
K8 RCは500bps未満のサイズである(Goncalves, M. A., et al., Molecular
Therapy: The Journal of the American Society of Gene Therapy 19, 1331-1341, (201
1)およびMartari, M., et al., Human Gene Therapy 20, 759-766, (2009)を参照)。
【実施例2】
【0191】
マイクロジストロフィンクローンの設計
ロッドドメイン構造のバリエーションを試験するために7種の新規のマイクロジストロ
フィン(μDys)クローンを設計した。7種のマイクロジストロフィンクローンのそれ
ぞれは、N末端アクチン結合ドメイン(N-ABD)およびジストログリカン結合ドメイ
ン(Dg BD)に対するコード配列を保持するが、送達され、rAAVベクターから発
現され得る改善された機能特性を有するμDysクローンを形成することを目的として、
各μDysクローンは、SRとヒンジドメインの新規の組み合わせを含むものとした。μ
Dysクローンのそれぞれを、以下に記載されるようにデュシェンヌ型筋ジストロフィー
(DMD)のマウスモデルにおいても試験した。μDysH3およびこれらの7種の新規
のμDys構築物のアミノ酸配列および核酸配列の配列番号を表1に列挙する。
【0192】
【0193】
以前の研究は、μDysクローン内のヒンジドメインの選択が、タンパク質の機能に影
響を与える可能性があることを示唆している(Banks, G. B., et al., PLoS Genetics 6,
e1000958, (2010)を参照)。代替のおよび/またはより短いヒンジドメインが、μDy
sクローン、μDysH3に使用されているヒンジ3ドメインを置換できるかどうかを評
価した(同上を参照)。SR16および17を含めると、(例えば、DGCにnNOSを
動員することによって)いくつかのμDysクローンの機能を改善することができること
を示した。それに応じて、SR16および17もさまざまなヒンジドメインおよびその他
のSRと関連して試験した。新しい接合部(すなわち、完全長タンパク質中では通常互い
に隣接していないドメインを一緒にさせる接合部)を作り出すことも最小限にした。さら
に、5個または6個のSRのいずれかの組み合わせを含めることによるμDys-クロー
ンの機能に対する影響も評価した。μDysH3クローンおよび完全長タンパク質と比較
した7種の新規のμDysクローンの構造を、
図1Aに示す。
【0194】
ジストロフィン中の2つの領域を、ヒンジ3を置換するそれらの能力に関して試験した
。ロッドドメインのヒンジ領域は、プロリンが豊富で、スペクトリン様リピートの三重ら
せんコイルドコイルを構成するアルファ-ヘリックスシグネチャーモチーフがない(Wind
er, S. J., et al., FEBS Letters 369, 27-33 (1995)を参照)。SR23は、アルファ
-ヘリックスbとcとの間にプロリンリッチリンカーを含む(例えば、
図21を参照)。
この配列(SR23のアルファ-ヘリックスcを有する)が、それ自体によって(μDy
s1)、SR16~17と隣接することによって(μDys2)またはH3と一緒になる
(μDys4)のいずれかでヒンジドメインとして使用できるかどうか評価した。追加の
構築物の1つは、ヒンジ3を完全なSR23で置き換えた(μDys5、
図1Aを参照)
。SR15とSR16との間に位置する、前に示した20個のアミノ酸の挿入から成る第
2のヒンジ様領域(配列番号20)も試験した(μDys6)(Winder, S. J., et al.,
FEBS Letters 369, 27-33 (1995)を参照)。追加の構築物を、これらのヒンジと関連し
てSRドメインのさまざまな組み合わせを試験するために設計した。SRドメインの文脈
がそれらの機能に重要な可能性があることが示されたため、SR20の前半およびSR2
4の後半から成るハイブリッドSRがμDysの機能(μDys3)を改善するかどうか
試験した。このハイブリッドSRは、通常ヒンジ3と隣接するSR20の部分を、ヒンジ
4と合体するSR24の部分と合体させる(
図1Aを参照)。同様の考慮は上に示したμ
Dys6構築物の設計にも影響を与え、SR15とSR16との間に位置する新規のヒン
ジを、SR16~17のnNOS位置領域と隣接する通常の文脈で使用した。この後者の
構築物も、類似の構築物と直接比較したが、これは、SR15とSR16との間の短いヒ
ンジ様領域の代わりにヒンジ3を使用した(
図1Bを参照)。5個または6個のいずれか
のSRドメインを含むμDysクローン5~7が、場合によってはタンパク質の全般的な
機能を高めることも留意した(Harper, S. Q. et al., Nature Medicine 8, 253-261, (2
002)を参照)。
【実施例3】
【0195】
部分的なスペクトリン様リピートの機能性はロッドドメイン構成により決まる可能性が
ある
CMVプロモーターによって制御されるrAAV6ベクターを形成することによってμ
DysH3クローンと比較して、μDysクローン1~7の最初の機能的なスクリーニン
グを行った。5×1010ベクターゲノム(vg)の用量を、5~6週齢のジストロフィ
ーmdx4cv雄マウスの一方の前脛骨(TA)筋に筋肉注射し(Chapman, V. M., et a
l., Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of Amer
ica 86, 1292-1296 (1989)を参照)、反対側の筋肉は内的陰性対照の役割を果たす(構築
物当たりN=4~5匹のマウス)。
【0196】
どれだけ良好に各構築物が発現されたか、発現が持続したかどうか、および構築物が進
行中の筋線維壊死を予防または低減できたかどうかを判定するために、ジストロフィンの
発現および変性/再生の特徴である中心核形成を注射後4週目および12週目に判定した
(
図1Cおよび1Dを参照)。ウエスタンブロット分析によって示されるとおり、すべて
の構築物が予想したサイズのμDysタンパク質を形成した(
図1Bを参照)。この週齢
および注射されたTA筋当たりのベクター用量において、すべての処置mdx
4cvコホ
ートは、野生型C57BL/6マウスと比較して著しくジストロフィン-陽性(Dys+
)筋線維が少なかった(P<0.001)が、マイクロジストロフィン間で機能性の差が
確認された。注射後4週目から12週目の間にジストロフィン陽性筋線維が減少したこと
によって証明されるように、構築物μDys3およびμDys4はμDysH3よりもよ
く機能しなかった。構築物μDys-1、2および5は、注射後12週目までμDysH
3よりも多くのジストロフィン陽性筋線維を示した(
図1Dを参照)。CK8プロモータ
ーによって駆動されるμDysH3に対してμDys6およびμDys7の最初のスクリ
ーニングを行った。新規の両構築物は、注射後12週目までμDysH3と比較して同等
のレベルの形質導入された(Dys+)中心部に核のある(CNF+)筋線維(
図1Dを
参照)をもたらした。ジストロフィン発現および中心核形成の両方を示す筋線維を両方の
時点で定量した(
図1Cおよび1Dを参照)。Dys+およびCNF+の筋線維のレベル
は、処置したコホートにおいて注射後4週目から12週目までに減少したが、野生型の筋
肉よりも高いレベルで残っていた。これがマイクロジストロフィン構築物の不良な機能性
または最適な用量未満の結果なのかどうか最初のスクリーニングだけでは不確実なままで
あり、このため、さらなる評価のための全身投与を行うこととなった。
【実施例4】
【0197】
新規のμDys構築物は呼吸器筋および後肢骨格筋における病態を和らげる
μDys-1、2、3、4、5およびμDysH3ベクターを再びクローン化して、C
MVをより小さな筋特異的CK8プロモーターで置き換え、それにより、より大きな6個
のSRを含有する構築物(μDys6および7)との直接的な比較を可能にする。全身的
処置のために、10
13vgを後眼窩静脈叢への注射により14日齢のmdx
4cv雄マ
ウスに大量急速送達した。未処置対照および野生型対照と一致する日齢の処置マウスを、
注射後3か月または6か月のいずれかに評価した。この実験は、μDys構築物の発現を
モニタし、それらがジストロフィーの病態生理を停止させることができる相対的な程度を
評価するために設計した。μDys発現の持続性を腓腹筋凍結切片および横隔膜筋凍結切
片の免疫蛍光染色によって判定した。DGCメンバー、β-ジストログリカンおよびnN
OS(適切な構築物に関する)の筋細胞膜への動員も検証した(
図2を参照)。
【0198】
注射後3か月目に、すべての処置群は、腓腹筋線維および横隔膜筋線維の両方の筋細胞
膜において60%を超えるジストロフィンの発現があった。中心に核のあるジストロフィ
ン陽性筋線維のパーセンテージは、野生型対照とは有意差がなかった(
図3Aおよび3C
を参照)。この時点において、腓腹筋および横隔膜においてμDys2が、μDys5と
比較して著しく低いレベルで発現されたことを観察した(
図3Aおよび3Cを参照)。μ
Dys2で処置したマウスはまた、μDys1、μDys5およびμDysH3を注射し
た動物と比較して横隔膜において形質導入された筋線維が著しく少なかった(
図3Cを参
照)。反対に、μDys5を注射したマウスは、その他のすべての処置群と比較して腓腹
筋において著しく多くの数の形質導入された筋線維を示した(
図3Aを参照)。同じ筋肉
の形態的分析により、すべての処置群の中心に核のある筋線維のパーセンテージが著しく
低下したことが証明された。横隔膜では、野生型群と処置群との間の中心に核のある筋線
維のパーセンテージに有意差がなかった。しかしながら、μDys2およびμDysH3
を注射したマウスは、腓腹筋では野生型(0%)よりも有意に高いレベルの中心核形成(
それぞれ19%および20%、P<0.001)を示した。
【0199】
機能的なジストロフィンがないと、DGCの構築が損なわれる可能性がある。これは、
機械力の伝達を低下させ、収縮により引き起こされる損傷の受けやすさを増加させる可能
性がある(Emery, A. E. H. and Muntoni, F., Duchenne Muscular Dystrophy, Third Ed
ition (Oxford University Press, 2003)およびOzawa, E. in Myology (ed. Franzini-Ar
mstrong C Engel A) 455-470 (McGraw-Hill, 2004)を参照)。いくつかのrAAV-μD
ysベクターの発現は、ジストロフィーの動物モデルにおける比筋力発揮および収縮によ
り引き起こされる損傷に対する耐性を増加させる能力を証明した(Seto, J. T., et al.,
Current Gene Therapy 12, 139-151 (2012)を参照)。注射後3か月目にどの新規のμD
ys構築物がこれらの測定規準を改善することができるか評価した(
図3Cおよび3Dを
参照)。
【0200】
それぞれ機械的特性のインサイチュ測定およびインビトロ測定のために腓腹筋細片およ
び横隔膜筋細片を作製した。未処置ジストロフィー対照と比較して、すべての処置群にお
いて腓腹筋における比筋力発揮が増加した(
図3Bを参照)。μDys1およびμDys
2を注射したマウスのみが横隔膜筋細片における比筋力の増加を示した(未処置マウスに
おける98kN/m
2と比較して、それぞれ156kN/m
2および110kN/m
2)
(
図3Dを参照)。さらに、新規のすべてのμDys構築物の発現が、収縮により引き起
こされる損傷に対する耐性を増加させたが、互いに比較して有意差はなかった。ジストロ
フィーの病態は、注射後3か月目までに停止したようであったが、生理的能力は有意に改
善されなかった。μDys構築物の機能性をさらに評価するために、さらに長い時点を用
いてもよい。
【実施例5】
【0201】
長期発現はμDys構築物の機能的矛盾を明かす
処置後6か月目まで、大半の処置群は、処置後3か月目の分析と比較してさまざまな程
度ではあるがジストロフィンの発現の低下および中心核形成を呈する筋線維のパーセンテ
ージの付随する増加を示した。しかしながら、ジストロフィン発現および中心核形成の両
方を示す筋線維のパーセンテージは、野生型対照と有意差がなかった(
図4Aおよび4C
を参照)。6か月目にμDys1、μDys5、μDys6、μDys7およびμDys
H3を注射したマウスは、腓腹筋で60%以上および横隔膜で74%以上のジストロフィ
ン陽性筋線維を示した。μDys2の形質導入レベルは、3か月のうちに腓腹筋において
およそ2分の1に減少し(陽性筋線維が63%から31%に)、横隔膜では20%減少し
、試験した構築物のうちその性能を最も悪くした(P<0.001、
図4Aおよび4Cを
参照)。試験した2つの構築物を除いてすべての処置コホートに関して両筋肉において変
性/再生の程度が増加した。μDys1に関する中心核形成は横隔膜では3%のままであ
り、腓腹筋ではμDysH3が20%から8%に減少した(
図4Aおよび4Cを参照)。
【0202】
処置後6か月目のデータで観察された形態的傾向にもかかわらず、比筋力発揮は、未処
置対照の筋肉においてよりも依然として高かった。一構築物μDys5の注射は、腓腹筋
(225対226kN/m
2、
図4Bを参照)および横隔膜(148対160kN/m
2
、
図4Dを参照)の両方において力発揮レベルを野生型マウスの力発揮レベルに近づけた
。6個から8個のSRを含有するミニジストロフィンを用いた以前の研究に基づいて、6
個のSRを含有するμDys構築物が最大の比筋力を発揮し、収縮により引き起こされる
損傷に対して最大の保護を提供するであろうことが予想された(Harper, S. Q., et al.,
Nature Medicine 8, 253-261, (2002)を参照)。しかしながら、μDys6およびμD
ys7で処置したマウスの腓腹筋における比筋力発揮は、未処置対照よりも有意に高かっ
た(それぞれ、P<0.01およびP<0.0001)は、最高ではなかった(
図4Bお
よび4Dを参照)。その代わりに、μDys5を注射したマウスが最高レベルの比筋力発
揮を示した。より大きな構築物は、収縮により引き起こされる損傷からの保護に対しても
必ずしも最良でなかった。例えば、腓腹筋において、μDys6を注射したマウスは、筋
力不足が最大であったが、μDys7は収縮により引き起こされる損傷から最も高い保護
をもたらした(
図5Aを参照)。しかしながら、横隔膜筋細片における収縮により引き起
こされる損傷に対する耐性は、μDys6およびμDys7ならびにμDys5およびμ
DysH3を発現するマウスで最も高かった(
図5Bを参照)。各筋肉群間のμDys6
およびμDys7の間の比較結果ならびに腓腹筋内の筋力不足の有意差(P<0.000
1)は、特定のμDys構築物の性能が制御発現カセットおよび評価した筋肉により影響
を受ける可能性があることを示唆する(Harper, S. Q., et al., Nature medicine 8, 25
3-261, (2002)およびSalva, M. Z., et al., Molecular Therapy: The Journal of the A
merican Society of Gene Therapy 15, 320-329, (2007)を参照)。この点は、μDys
2処置を用いても例示され、収縮により引き起こされる損傷の受けやすさは、未処置対照
と比較して腓腹筋で低下したが、予想外にも横隔膜では悪化した(
図5Aおよび5Bを参
照)。
【実施例6】
【0203】
rAAV6+心臓特異的プロモーターによる遺伝子送達
WTおよびL48Q cTnCに対するベクター(それぞれrAAV6-WT cTn
CおよびrAAV6-L48Q cTnC)を生成した。心臓特異的プロモーター(cT
nT455)およびC末端のc-Mycタグを含有するrAAVゲノムを用いてプラスミ
ドを生成することができる。CaPO4沈殿法によりcTnCバリアント導入遺伝子発現
カセット(mCherry蛍光レポーターを伴う)をパッケージング/ヘルパープラスミ
ドpDGM6とともにHEK293細胞にコトランスフェクションすることができる。ベ
クターを培養物から回収し、凍結融解することができ、その上清を回収することができる
。親和性精製にはHITRAP(商標)ヘパリンカラム(GE HEALTHCARE
LIFE SCIENCES(商標)、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)を使用す
ることができる。そのウイルスをショ糖濃度勾配(40%)により濃縮し、27,000
rpmで回転し(18時間、4℃)、ハンクス平衡塩溶液に再び可溶化することができる
。ベクターゲノムは、サザンブロットハイブリダイゼーションで、SV40ポリアデニル
化領域オリゴヌクレオチド32P末端標識化プローブを使用しプラスミド標準と比較して
決定し、qPCRによって確認することができる。
【0204】
図8は、3匹のマウスそれぞれに低い(L;0.6×10
12)および高い(H;1.
2×10
12)ウイルス粒子用量で全身注射した(眼内)rAAV6-L48Q cTn
Cの最初の使用を示す。心臓エコー検査は、未注射(UN)対照と比較して左室(LV)
駆出率が注射の2週間後に約20%の増加、3週目に30~40%の増加を示した。対照
アデノウイルスベクターの全身注射は、LV機能を変えなかった。1匹のrAAV6-L
48Q cTnC-mycトランスフェクションマウス(および未注射対照)の筋原線維
をSDS-PAGEによって分離し、ウエスタンブロットを抗cTnCを用いて調べた。
mycタグがあるとcTnCの移動が遅くなり(
図9を参照)、未変性cTnCに対する
cTnC-mycの比を濃度測定により求め、約40%であった(アデノウイルスおよび
トランスジェニック動物に見られるのと同様、以下参照)。
【実施例7】
【0205】
心機能に対するcTnCバリアントの急性および慢性効果
心機能に対するcTnCバリアントの急性および慢性効果は、rAAV6-cTnCベ
クターおよびトランスジェニックマウスを使用して評価することができる。筋フィラメン
ト機能の急性変化に対する反応を判定するために、正常な成体マウスに、心臓特異的プロ
モーター(cTnT455)を伴うrAAV6-cTnCバリアント(例えば、WT、L
48Q、L57Qまたは161Q)の尾部静脈注射または眼窩注射によりトランスフェク
ションを行うことができる。成体になるまでMHCプロモーターを抑制することによって
、L48Q cTnCおよび161Q cTnCトランスジェニックマウスを用いて平行
実験を行うことができる。これらのcTnCバリアントの正常な心臓発生および心機能に
対する影響を判定するために、プロモーターの抑制がないマウスを用いて付加的な研究を
行うことができる。機能の任意の変化の開始および進行を判定するために、1、2、3お
よび6か月齢において心臓エコー検査による評価を行うことができる。一部の動物には、
イソプロテレノールを用いたβ-アドレナリン刺激によりストレスを与えてもよい。心臓
エコー検査に続いて、一部の動物には、MILLAR(商標)カテーテルプロトコルを使
用した血行動態測定を受けさせてもよく、他は安楽死させて、ワーキングハートプロトコ
ルを行うため、あるいは完全なもしくは除膜した肉柱の調製、培養される心筋細胞または
筋原線維の調製のために心臓を解剖してもよい。
【実施例8】
【0206】
rAAV6構築物を用いた組織特異的ターゲティング
rAAV6構築物中のさまざまな遺伝子プロモーターによって駆動されるアルカリホス
ファターゼを使用して組織特異性を評価した。表2(以下参照)は、2つの心臓特異的プ
ロモーター(クレアチンキナーゼ7(CK7)および心筋トロポニンT(cTnT455
))を非特異的なサイトメガロウイルス(CMV)プロモーターと比較し、値はTAのC
K7に対して正規化した。cTnT455は、心臓において高い発現をもたらすことがで
きるが、他の組織ではほとんどまたは全く発現しない。この特異性は、非心臓組織におけ
るR1R2過剰発現の影響の可能性を低減することができる。
【0207】
dATPは、マウスの大動脈平滑筋力発揮に有意な効果がない。dATPが高いことに
よる全身的な効果の可能性を調査するために、dATPがマウスの大動脈平滑筋収縮に影
響を及ぼすかどうかを判定した。
図12Aは、除膜した筋肉細片における連続した収縮が
、収縮基質としてのdATP対ATPで異ならなかったことを示し、複数の実験に関する
データの概要を
図12Bに示す。さらに、対照測定により、dATPが、平滑筋ミオシン
のアクチンとの結合を制御するミオシン軽鎖リン酸化のレベルを変化させなかったことが
証明された。
【実施例9】
【0208】
心臓特異的ターゲティングのための組換えAAV6-R1R2
心臓のR1R2(および[dATP])のレベルを急性的に増加させるためにrAAV
6ベクターを使用した。心臓特異的プロモーター(cTnT455)を含む組換えrAA
Vゲノムを用いてプラスミドを生成することができる。CaPO4沈殿法によってR1R
2導入遺伝子発現カセットをHEK293細胞にパッケージング/ヘルパープラスミドp
DGM6とともにコトランスフェクションすることができる。ベクターを培養物から回収
し、凍結融解することができ、その上清を回収することができる。親和性精製にはHIT
RAP(商標)ヘパリンカラムを使用することができる(GE HEALTHCARE
LIFE SCIENCES(商標)、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)。そのベ
クターをショ糖濃度勾配(40%)により濃縮し、27,000rpmで回転し(18時
間、4℃)、ハンクス平衡塩溶液に再び可溶化することができる。ベクターゲノムは、サ
ザンブロットハイブリダイゼーションで、SV40ポリアデニル化領域オリゴヌクレオチ
ド32P末端標識化プローブを使用しプラスミド標準と比較して決定し、qPCRによっ
て確認することができる。
【0209】
【0210】
心臓ターゲティング構築物の選択を、rAAV6構築物中のさまざまな遺伝子プロモー
ターによって駆動されるアルカリホスファターゼを使用して評価した。表2は、2つの横
紋筋特異的なプロモーター(クレアチンキナーゼ7(CK7)および心筋トロポニンT(
cTnT455))を非特異的サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターと比較し、
値はTAのCK7に対して正規化した。cTnT455は、心臓において高い発現をもた
らすことができるが、他の組織ではほとんどまたは全く発現しないため、非心臓組織にお
けるR1R2過剰発現の影響の可能性を低減する。
図14Aは、これに関するウエスタン
ブロットの証拠を示し、rAAV6-R1R2cTnT455を注射した(4.5e
13
)マウスの心臓組織が対照マウス心臓と比較して高くR1およびR2サブユニットを発現
した。なお、上側のバンドは非特異的染色であり、矢印は(分子量マーカーによって特定
した)R1およびR2タンパク質を示す。肺におけるR1およびR2発現は、心臓と比較
して極めて低く、骨格筋では変わらなかった。これは、注射しなかったマウス(パネル「
B」)対rAAV6-アルカリホスファターゼ(パネル「C」)を注射したマウスの心臓
組織に関する
図14において証明され、このことは、rAAV6-R1R2cTnT45
5が安定した長期のR1R2過剰発現をもたらす可能性があることを示唆している。安定
したrAAV6導入遺伝子発現はまた、ラットにおいて12週間以上、イヌにおいて少な
くとも6か月以上持続することが示された。
【0211】
試験は、rAAV6-R1R2cTnT455注射用量、時間経過と、増加したLVポ
ンプ機能の安定性、心臓組織のR1R2レベルおよび[dATP]との間の関係を判定す
ることができる。
図15は、3か月齢のマウス(1群当たりn=6)に注射したrAAV
6-R1R2cTnT455ベクターゲノムの3つのベクター用量、すなわち、1.5×
10
13、4.5×10
13および1.35×10
14または生理的食塩水(対照)のL
V機能に対する効果を示す。高用量での1週間後およびすべての用量での2週間後にLV
短縮率(FS)が有意に増加し、6週間まで同等の効果があった。FSの増加の規模は2
5%~50%であり、これは、比較的低いベクター用量を用いて達成され得る効果を示す
。
【実施例10】
【0212】
トランスジェニックR1R2過剰発現マウス(TG-R1R2)
RRの両サブユニット(Rrm1およびRrm2)を過剰発現する二重トランスジェニ
ックマウスを利用することができる。
図13は、心筋における両サブユニットの過剰発現
を示し、これらのTG-R1R2マウスの濃度測定計算値は野生型(WT)マウスの対応
する値よりも33.7±7.6(Rrm1)および23.7±3.4(Rrm2)倍大き
い。なお、Rrm2について、上側のバンド(*)は非特異的である。WT組織において
内在性Rrm2タンパク質は検出できないが、TG-R1R2マウスでは、それがバック
グラウンドバンドの下のバンドとして現れる。心臓組織のdATPレベルはまだ評価して
いなかったが、骨格筋では[dATP]が10倍増加し、これは、酵素サブユニットの対
応する3.3±2.1(Rrm1)および35.7±11.1(Rrm2)倍の増加を有
した。培養物中のdATPのこの増加の規模は、アデノウイルス-R1R2を用いてトラ
ンスフェクションされた心筋細胞において確認されたものと類似している(
図10を参照
)。これらのTG-R1R2マウスの6~8か月齢における事前の心臓エコー検査(3週
にわたって測定した)は、短縮率(FS)の平均50%を超える増加およびLV拡張期末
期径(LVIDd)の15%の減少を明らかにした。
図11に示されるとおり、(WT対
照との)これらの差は、事前のアデノウイルス-R1R2注射実験に対する値と規模が類
似している。
【実施例11】
【0213】
心機能に対する上昇した細胞のR1R2および[dATP]の急性効果
(rAAV6-R1R2ベクターによる)急性のR1R2過剰発現は、マウスの心臓に
おける[dATP]を増加させる可能性があり、結果として収縮機能および拡張機能を高
める。これは、1)より速い弛緩を伴う心筋細胞および筋原線維収縮の増加(部分的にク
ロスブリッジサイクル速度の増加のため)、2)エネルギー保持を損なうことがない基礎
心代謝の増加、および3)活動電位持続時間の無変化または短縮(向上したCa2+隔離
のため)として示される場合もある。
【0214】
正常な成体FVB/Nマウスに、(上記のとおりの)心臓特異的プロモーターcTnT
455を伴うrAAV6-R1R2ベクター尾部静脈注射または眼窩注射によりトランス
フェクションを行うことができ、対照として偽注射およびcTnT455のみを含むrA
AV6を用いた。注射後、心臓エコー検査を週に1回(6週まで)実施して、さらなる評
価のための最適(最高の効果)な時点を決定することができる。最初の調査は、心臓エコ
ー検査によりインビボにおける心機能を特徴づけることができ、それにインサイチュでの
血行動態測定またはエネルギー調査のためのランゲンドルフ灌流心およびポンプ性能を評
価するためのワーキングハート装置を使用したエクスビボでの血行動態測定が続く。選択
した時点において、他のマウスを安楽死させ、完全なもしくは除膜した肉柱の調製、単離
心筋細胞、筋原線維調製、タンパク質分析、および(免疫)組織学のために心臓を解剖し
てもよい。これらの測定から、急性のR1R2過剰発現による心機能の変化に関する分子
メカニズムがもたらされる可能性もある。
【実施例12】
【0215】
筋フィラメントおよびSRタンパク質プロファイリング
あらゆる条件下における収縮機能の変化、Ca
2+トランジェント、SRスパーク活性
、および/またはCa
2+負荷が、アイソフォーム、存在量、および筋フィラメントタン
パク質(cTn1、cTnT、MLC-2、cMyBP-C、およびTm)のリン酸化、
SRタンパク質(PLB、RyR)、ならびに筋細胞膜タンパク質(NCX、PMCA、
およびL型Ca
2+チャネル)と相互に関連している可能性がある。mRNAおよびタン
パク質発現の変化は、RT-PCRおよびウエスタンブロット分析を使用して測定するこ
とができる。SRタンパク質画分を調製することができる。電気生理学的測定が変化を示
す場合、特異抗体を用いてイオンチャネルを評価することができる。R1R2発現の分析
は、ウエスタンブロット(
図10を参照)または免疫組織化学的検査により行うことがで
き、実験のエンドポイントと関連づけられてもよい。cTnT455プロモーターの特異
性は、骨格筋および肺などの非心臓組織におけるR1R2発現を測定することによって評
価することができる。リン酸化は、PRO-Q(登録商標)Diamondリン酸化タン
パク質ゲル染色(SYPRO(登録商標)Rubyタンパク質ゲル染色を用いて)および
ウエスタンブロット分析を使用して概略を示すことができる。部位特異的セリンおよびト
レオニン残基リン酸化に対して、質量分析を行うことができる。
【0216】
R1R2過剰発現および増加した[dATP]は、分析の選択した時点における梗塞心
臓の心機能を改善する可能性がある。高Ca
2+チャレンジ、β-アドレナリン刺激、お
よび増加する前負荷に対する反応が改善される可能性がある。
図16で評価した心臓のイ
ンビトロにおけるNeelyワーキングハート測定は、梗塞した(未処置)心臓の前負荷
反応性の低下(心不全)を示したが、ベクターを与えられている梗塞心臓の前負荷反応性
は対照である梗塞していない心臓のレベルへ回復したことを示し、これにより心機能の回
復を実証する。
図17を参照すると、力がg・cm/分の単位で与えられる場合に、効果
は、長期的なβ-アドレナリン刺激を減らすことによって生じた可能性がある(血漿ホル
モンをモニタすることによって評価することができる)。これは、1)Ca
2+トランジ
ェント、2)筋フィラメント収縮および弛緩の大きさおよび速度、ならびに3)エネルギ
ープロファイルの改善として複数の規模の分析に反映される可能性がある。α-およびβ
-アドレナリンが関係する心筋細胞タンパク質のリン酸化における、処置された心臓と未
処置の心臓との間に差が見られる可能性もある。
【実施例13】
【0217】
CK8-μDys5を運ぶAAV9ベクター
8週齢のmdx
4cvマウスのTA筋に2.5×10
11ベクターゲノムのCK8-μ
Dys5発現カセットを運ぶAAV9ベクターを(筋肉)注射した。2週間後に、マウス
を屠殺し、筋肉凍結切片を抗ジストロフィン抗体を使用してジストロフィン発現に関して
着色した。
図22に示されるとおり、注射した筋肉においてμDys5タンパク質の広範
な確固とした発現が観察された。
【0218】
AAV9ベクターは、AAV末端逆位配列(ITR)と連結された発現カセット(例え
ば、プロモーター、cDNA、およびポリ(A)部位)を含んでもよい。ITRは、AA
V2由来のものであってもよい。AAV9ベクターは、AAV9由来のカプシドタンパク
質を使用してベクターにパッケージングされた、発現カセットおよびITRを含むゲノム
DNAを含んでもよい。配列番号22は、末端逆位配列(ITR)がついたCK8-μD
ys5カセットの例となる核酸配列である。そのような配列を使用してAAV6、AAV
9などを形成してもよい。さまざまなイントロン、ポリ(A)部位、スペーサーなども配
列に加えてよい。
【実施例14】
【0219】
動物実験
C57BL/6近交系で繁殖した雄の野生型マウスおよびジストロフィーmdx4cv
マウスをこの試験に使用した。ワシントン大学のInstitutional Anim
al Care and Use Committeeに従って動物実験を行った。最初
のスクリーニングのために、5~6週齢のジストロフィーmdx4cvマウスのTA筋に
5×1010vgのrAAV6ベクターを投与した。偽処置として対照のマウスにハンク
ス平衡塩溶液を注射した。全身的な分析では、14日齢のmdx4cv雄に1013vg
のrAAV6ベクターを後眼窩静脈叢への注射により静脈内投与した。さらなる評価のた
めに、処置の3か月または6か月後のいずれかにおいてマウスを屠殺した。
【実施例15】
【0220】
ベクタークローニングおよびウイルス産生
標準的なクローニング技術を使用してすべてのマイクロジストロフィン導入遺伝子を操
作した(Chamberlain, J., PCR-mediated Mutagenesis, doi:10.1038/npg.els.0003766 (
2004)を参照)。改変領域を、中心のロッドドメインの大部分に隣接するMfeI/Xh
oIまたはNheI/XhoI制限部位を使用してAAVベクターゲノム骨格プラスミド
、pARAP4内のμDysヒンジ3(ΔH2-R23/ΔCT、+H3)にサブクロー
ニングした(Banks, G. B., et al., PLoS Genetics 6, e1000958, (2010)を参照)。ウ
サギベータ-グロビン遺伝子のポリアデニル化シグナルを、μDys cDNAカルボキ
シ末端の直後にサブクローニングした。サイトメガロウイルス最初期プロモーターおよび
エンハンサーから構成されるCMVプロモーターは、マイクロジストロフィンcDNAを
発現させた。CMVプロモーターを置き換え、筋原細胞においてマイクロジストロフィン
cDNAを発現させるために、CK8制御カセット(Goncalves, M. A., et al., Molecu
lar Therapy: The Journal of the American Society of Gene Therapy 19, 1331-1341,
(2011)を参照)を、SphI/SacII部位にサブクローニングした。組換えAAV6
ベクターは、以前に記載されたとおりに作製した(Gregorevic, P., et al., Nature Med
icine 12, 787-789, (2006)を参照)。簡単にいえば、発現構築物を、pDGM6パッケ
ージングプラスミドを用いてHEK293細胞にコトランスフェクションした後、ろ過、
ヘパリンアフィニティークロマトグラフィー、および超遠心分離法の組み合わせによって
回収および精製した。ジストロフィーマウスを処置する際に確実に等しい投薬にするため
に、ウイルス調製物をサザンブロットおよび定量PCR分析、ならびにこの試験に使用し
た他の調製物との常時の比較によって定量した。
【実施例16】
【0221】
組織学的分析
生理学的分析後に、マウスを剖検のために屠殺した。筋肉を水溶性グリコールおよび樹
脂の最適切削温度製剤であるTISSUE-TEK(登録商標)O.C.T.コンパウン
ド(SAKURA FINETEK USA(商標)、トランス、カリフォルニア州)に
包埋し、液体窒素冷却イソペンタン中で凍結した。およそ10μmの厚さの横断切片を免
疫蛍光試験に使用した。リン酸カリウム緩衝生理食塩水(KPBS)中の2%ゼラチンお
よび1%Tween-20において切片をブロッキングした。切片をリン酸カリウム緩衝
生理食塩水(KPBS-G)中の0.2%ゼラチンで洗浄し、続いてKPBS-G中の2
%の正常ヤギ血清中に希釈した一次抗体とのインキュベーションを行った。切片を、その
後、KPBS-G中で3回すすいだ後に、二次抗体および4’,6-ジアミジン-2’-
フェニルインドール二塩酸塩であるDAPI(SIGMA-ALDRICH(登録商標)
、セントルイス、ミズーリ州)とともにインキュベーションした。KPBS-G中でさら
に3回洗浄した後、スライドを液体封入剤であるPROLONG(登録商標)GOLD
ANTIFADE MOUNTANT(LIFE TECHNOLOGIES(商標)、
グランドアイランド、ニューヨーク州)中に封入した。一次抗体には、ウサギポリクロー
ナルN末端抗ジストロフィン抗体(Harper, S. Q., et al., Nature Medicine 8, 253-26
1, (2002)を参照)、緑蛍光色素であるALEXA FLUOR(登録商標)488 D
YE(LIFE TECHNOLOGIES(商標))と結合したマウスモノクローナル
抗ジストロフィン(MANEX1011Bクローン1C7、アイオワ大学のDevelo
pmental Studies Hybridoma Bank(DSHB)、アイオ
ワシティー、アイオワ州)、アミン反応性色素であるDYLIGHT(商標)594(T
HERMO FISHER SCIENTIFIC(商標)、ロックフォード、イリノイ
州)と結合したマウス抗β-ジストログリカン(MANDAG2クローン7D11、DS
HB)、ラット抗α2-ラミニン(クローン4H8-2、SIGMA-ALDRICH(
登録商標)、セントルイス、ミズーリ州)、およびウサギ抗nNOS(Z-RNN3、L
IFE TECHNOLOGIES(商標))が含まれた。二次抗体は、それぞれALE
XA FLUOR(登録商標)660遠赤色色素またはALEXA FLUOR(登録商
標)594赤蛍光色素(LIFE TECHNOLOGIES(商標))と結合したヤギ
抗ウサギまたは抗ラットであった。イメージをDP(商標)ソフトウェア(OLYMPU
S(商標)、センターバレー、ペンシルバニア州)を用いてOLYMPUS(商標)SZ
X16(商標)解剖蛍光顕微鏡により取り込んだ。
【実施例17】
【0222】
イムノブロッティング
最初のスクリーニングのマウスのTA筋を液体窒素中で瞬間凍結した後、ドライアイス
で冷した乳鉢および乳棒によって粉砕した。筋肉をキナーゼアッセイ細胞溶解バッファー
(COMPLETE(商標)MINIプロテアーゼインヒビターカクテル錠(ROCHE
(商標)、インディアナポリス、インディアナ州)を加えた1%Triton X-10
0、50mM TRIS-HCl、pH7.5、150mM NaCl、1mM EDT
A)中でホモジナイズした。PIERCE(商標)Coomassie Plus(Br
adford)アッセイ(PIERCE(商標)、ロックフォード、イリノイ州)を使用
してライセートのタンパク質濃度を測定した。40μgのタンパク質を100mMのジチ
オスレイトールを加えたNUPAGE(登録商標)LDSサンプルバッファー(LIFE
TECHNOLOGIES(商標))に懸濁し、NuPAGE(登録商標)4~12%
Bis-Trisポリアクリルアミドゲル(LIFE TECHNOLOGIES(商標
))に入れた。ゲルに流し、サンプルをAMERSHAM(商標)HYBOND(商標)
Pポリビニリデンフルオライド膜(GE HEALTHCARE LIFE SCIEN
CES(商標)、ピスカタウェイ、ニュージャージー州)に転写した後、ブロットをPB
S中の10%スキムミルクでブロッキングした。その後、ブロットをPBS(PBST)
中の5%スキムミルク、0.1%Tween-20において一次抗体とともにインキュベ
ーションした。PBST中で3回洗浄した後、二次抗体を、PBST中の5%脱脂乳にお
いてインキュベーションした後、PBST中で4回洗浄した。一次抗体には、マウス抗ジ
ストロフィン(MANEX1011Bクローン1C7、DSHB)およびローディングコ
ントロールとしてウサギ抗グリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(G9545
、SIGMA-ALDRICH(登録商標))が含まれた。二次抗体には、ロバ抗ウサギ
またはマウス(JACKSON IMMUNORESEARCH LABORATORI
ES(商標)、ウェストグローブ、ペンシルバニア州)が含まれた。ブロットをPIER
CE(商標)ECL Plusウエスタンブロッティング基質(THERMO FISH
ER SCIENTIFIC(商標))を用いて現像し、STORM(商標)860イメ
ージングシステム(GE HEALTHCARE LIFE SCIENCES(商標)
)を使用してスキャンした。
【実施例18】
【0223】
骨格筋の機能分析
よく知られた変更を伴い以前に記載されたとおりに、力発揮および収縮により引き起こ
される損傷の受けやすさに関してインサイチュ(腓腹筋)およびインビトロ(横隔膜)に
おいて筋肉をアッセイした(Banks, G. B., et al., Human Molecular Genetics 17, 397
5-3986, (2008)およびGregorevic, P., et al., The American Journal of Pathology 16
1, 2263-2272, (2002)を参照)。最適筋線維長における等尺性最大筋力を測定した後、筋
肉を刺激下(モデル701C(商標)、高出力二相性刺激装置、AURORA SCIE
NTIFIC(商標))において一連の漸進的に増加する長さ変化に供した。それぞれ腓
腹筋および横隔膜に対して150Hzおよび180Hzで刺激することによって最大等尺
性強縮力を測定した。それぞれが、ピーク等尺性筋力を可能にするための150ms(腓
腹筋)または100ms(横隔膜)のいずれかの固定された長さの刺激、続いて筋肉の物
理的な伸長の間の連続した200ms(腓腹筋)または300ms(横隔膜)の刺激を含
む伸張性収縮を30秒間隔で行った。収縮特性の過負荷および筋肉構造に対する損傷を助
長するために最適長の0~45%の一連の長さ変化、すなわちひずみを加えた。伸張性収
縮の結果を次の伸張性収縮の直前に発揮されるピーク等尺性筋力として測定した。
【0224】
マウスを2,2,2-トリブロムエタノール(SIGMA-ALDRICH(登録商標
))で麻酔して、触刺激に対して無反応にし、その後、腓腹筋のインサイチュ分析のため
に準備した。足首を切開することによってアキレス腱を露出し、3-0ブレードシルク(
ETHICON(商標)、シンシナティ、オハイオ州)で縫合し、切断し、デュアルモー
ド力変換器サーボモーター(モデル305B-LR(商標)、AURORA SCIEN
TIFIC(商標)、オンタリオ、カリフォルニア州)のレバーアームに固定した。マウ
スを動けなくし、膝を通して挿入したステンレス鋼ピンによって、およびカスタマイズし
たPLEXIGLAS(登録商標)ポリ(メチルメタクリラート)台に後肢をテープ留め
することによって装置に固定した。皮膚を通して膝と尻の間の領域にある腓骨神経の両側
に挿入した2つの針電極により腓腹筋を刺激した。最適な筋線維長さを測定するのを助け
るために三軸に対してサーボモーターの位置を操作した。データ取得も可能にするLAB
VIEW(商標)ソフトウェア(NATIONAL INSTRUMENTS(登録商標
)、オースティン、テキサス州)によってサーボモーターを制御した。
【0225】
横隔膜のインビトロ調製物のために、腓腹筋分析後に麻酔したマウスを屠殺し、全横隔
膜筋および周辺の胸郭を直ちに切除して、5%CO2・95%O2混合物でバブリングし
たNaCl 121mM、KCl 5mM、CaCl2 1.8mM、MgCl2 0.
5mM、NaH2PO4 0.4mM、NaHCO3 24mM、グルコース 5.5m
Mの溶液(pH7.3)を含む酸素を送り込んだタイロード溶液を入れた皿に入れた(La
nnergren, J., Bruton, et al., The Journal of Physiology 526 Pt 3, 597-611 (2000)
を参照)。縦方向に並んだ完全長筋線維、中心腱の一部ならびに細片の遠位末端の肋骨の
一部および肋間筋から構成された横隔膜細片を顕微鏡下で分離した。筋肉細片を中心腱に
おいて針が先についた外科用ブレードシルク(6-0、P1、ETHICON(商標))
で縛り、肋骨部分を通して縫合し(5-0、ETHICON(商標))、その後、温度制
御された水平な槽を備えたインサイチュマウス装置(モデル809A(商標)、AURO
RA SCIENTIFIC(商標))に固定した。装置の槽を上記のバブリングしたタ
イロード溶液で満たし、25℃に維持した。最適線維長を測定し、等尺性および伸張性収
縮特性を、腓腹筋分析と類似の様式で、横隔膜筋に関して上で明記した条件を用いて評価
した。それぞれ腓腹筋の塊または横隔膜細片に対する等尺性最大筋力を正規化することに
よって両筋肉群の比筋力を測定した。以下の方程式を使用した:比筋力=最大力×羽状角
×筋長×1.04密度/筋肉重量(Burkholder, T. J., et al., Journal of Morphology
221, 177-190, (1994)を参照)。羽状角は、筋肉の腱間で骨格筋線維の束自体が向く角
度である。腓腹筋に関するこの角度は、以前の研究によって求められた(Banks, G. B.,
et al., PLoS Genetics 6, e1000958, (2010)を参照)。横隔膜筋細片を、筋線維が半腱
様筋接合部から肋骨の筋腱間接合部の間で一直線に収縮するように分離した(Gregorevic
, P., et al., The American Journal of Pathology 161, 2263-2272, (2002)を参照)。
腓腹筋および横隔膜の羽状角は、それぞれ0.45および1と等しい。
【実施例19】
【0226】
cTnT455制御カセットの構築
cTnT455制御カセット(配列番号1、455は、RC中の塩基対の数を示す)を
本明細書に記載されるとおりに構築した。DNAをヒト細胞から調製した。PCRプライ
マーを使用してラットおよびニワトリcTnT配列との配列類似性に基づいてcTnTエ
ンハンサー/プロモーター領域を増幅した。野生型cTnTエンハンサー/プロモーター
をヒト胎盤アルカリホスファターゼ(AP)cDNAと連結し、プラスミドDNAを生成
した。cTnT-APプラスミドを、新生ラット心筋細胞および分化マウス骨格筋細胞に
トランスフェクションした。
【0227】
野生型ヒトcTnT RC(配列番号2)は、心臓細胞および骨格筋細胞の両培養物に
おいて高い活性を有した。骨格筋におけるcTnTの発現は、初期には予期しないもので
あった。しかしながら、いずれかの特定の理論に縛られないが、骨格筋におけるcTnT
発現は、初期の骨格筋発生中および筋肉再生中における心臓遺伝子発現の通常の活性化に
よるものである可能性がある。この特性は、場合によっては、一部の遺伝子治療用途、例
えば、筋肉再生中のみにおける治療タンパク質の一過性の発現などに有益である可能性も
ある。
【0228】
その後、野生型cTnTエンハンサーを、非保存的塩基配列(ヒト、ラット、イヌ、お
よびニワトリ間の比較に基づいて)ならびに一部の保存配列モチーフを取り除くことによ
って小型化し、続いて上記のとおりトランスフェクション試験を行って、欠失が転写活性
を低下させないことを確認した(
図18および19を参照)。
【0229】
さらに高い活性を得るために、複数の小型化cTnTエンハンサーのcTnTプロモー
ターへの付加が活性を高めるかどうかを試験した。これらの試験は、心臓および骨格筋培
養物で行い、(1つの追加のエンハンサーを含む)cTnT455が最も活性があること
がわかった(
図20を参照)。
【0230】
cTnT455がインビボにおいて活性であるかどうかを判定するために、cTnT4
55-AP構築物をrAAV6にパッケージングし、ベクターを後眼窩静脈叢からの全身
送達によりマウスに投与した。4週間後に、マウスを安楽死させ、心筋ならびに骨格筋お
よび非筋肉組織におけるRC発現レベルに関してアッセイを行った。このデータは、cT
nT455が心筋において高い転写活性を有し、骨格筋およびあらゆる非筋肉組織の両方
では転写的にサイレントであることを示した(表2を参照、また、その全体が参照により
本明細書に組み込まれる「Cell and Gene Based Methods
to Improve Cardiac Function」という名称のPCT出願第
PCT/US2012/039897号も参照)。
【実施例20】
【0231】
統計分析
すべての結果を平均値±平均値の標準誤差として報告する。コホート間の差は、チュー
キーの事後多重比較検定を用いて一元配置および二元配置ANOVAを使用して求めた。
すべてのデータ分析は、GRAPHPAD(商標)PRISM(商標)6ソフトウェア(
サンディエゴ、カリフォルニア州)により行った。
【0232】
当業者に理解されるであろうように、本明細書中で開示されている各実施形態は、その
特定の明記される要素、ステップ、成分または構成要素を含んでもよく、本質的にそれか
ら成ってもよく、またはそれらから成ってもよい。本明細書中で使用される場合、移行語
「含む(compriseまたはcomprises)」は、含むが、以下に限定されるものではない、を
意味し、大量であっても不特定の要素、ステップ、成分または構成要素を含めることを可
能にする。移行語句「から成ること」は、不特定のあらゆる要素、ステップ、成分または
構成要素を排除する。移行語句「本質的に~から成ること」は、実施形態の範囲を特定の
要素、ステップ、成分または構成要素および実質的に実施形態に影響を及ぼさない要素、
ステップ、成分または構成要素に限定する。
【0233】
別に指示がある場合を除いて、本明細書および特許請求の範囲において使用される成分
の量、分子量などの特性、反応条件などを表わすすべての数は、すべての場合において用
語「約」によって修飾されているものと理解されるべきである。したがって、反対の指示
がない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載される数値的パラメーターは、
本発明によって得ようとする所望の特性によって変化してもよい近似値である。特許請求
の範囲に対する均等論の適応を限定しようとするものとしてではなく、少なくともそれぞ
れの数値的パラメーターは、少なくとも報告される有効数字の数に照らして、通常の丸め
手法を適用することによって解釈されるべきである。さらに明確さが必要とされる場合、
「約」という用語は、明記される数値または範囲と併せて使用されるとき、当業者がそれ
に適度に属するものと見なす意味を有する。すなわち、明記される値の±20%;明記さ
れる値の±19%;明記される値の±18%;明記される値の±17%;明記される値の
±16%;明記される値の±15%;明記される値の±14%;明記される値の±13%
;明記される値の±12%;明記される値の±11%;明記される値の±10%;明記さ
れる値の±9%;明記される値の±8%;明記される値の±7%;明記される値の±6%
;明記される値の±5%;明記される値の±4%;明記される値の±3%;明記される値
の±2%、または明記される値の±1%の範囲内で明記される値または範囲よりもいくぶ
ん大きいか、またはいくぶん小さいことを意味する。
【0234】
本発明の広い範囲を明記する数量的な範囲およびパラメーターが近似値であるにもかか
わらず、特定の例に記載される数値は可能な限り正確に報告する。ただし、あらゆる数値
は、それらのそれぞれの試験測定値に見出される標準偏差から必ず得られる一定の誤差を
本質的に含む。
【0235】
本発明を説明する文脈において(とりわけ、添付の特許請求の範囲の文脈において)使
用される「1つの(a、an)」、「前記(the)」という用語および同様のものは、本明細
書において別の指示があるか、または文脈から明らかに矛盾する場合を除いて、単数およ
び複数の両方を含むものと解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、
単に範囲内にあるそれぞれ個別の値を個々に言及することの省略表現法としての役割を果
たすことが意図される。本明細書において別の指示がある場合を除いて、それぞれ個別の
値は、それが本明細書に個別に列挙されたかのごとく本明細書に組み込まれる。本明細書
に記載されているすべての方法は、本明細書において別の指示があるか、または別に文脈
が明らかに否定している場合を除いて任意の適した順序で実施することができる。本明細
書において示される任意のおよびすべての例または例示的表現(例えば、「など」)の使
用は、単に本発明をさらに明確にすることが意図され、別に特許請求される本発明の範囲
に制限を与えるものではない。本明細書にない言葉は、発明の実施に必須の特許請求され
ていない任意の要素を示すものと解釈されるべきである。
【0236】
本明細書中で開示される本発明の代替的な要素または実施形態の分類は、限定と解釈さ
れるべきではない。それぞれの群のメンバーは、個別にまたはその群の他のメンバーもし
くは本明細書に見出されるその他の要素との任意の組み合わせとして言及および特許請求
されてもよい。群の1つまたは複数のメンバーは、利便性および/または特許性の理由か
ら、群に含まれてもよく、またはグループから除去されることもあることが予想される。
任意のそのような含めることまたは除去することがある場合、本明細書は、添付の特許請
求の範囲に使用されるすべてのマーカッシュ群の記載された説明を満たすように変更され
た群を含むものと見なされる。
【0237】
本発明者が知る、本発明を実施するための最良の形態を含む本発明の特定の実施形態が
本明細書に記載されている。当然、記載されたこれらの実施形態に対する変形は、前述の
説明を読めば当業者に明白になるであろう。本出願人は、当業者が適切な場合にそのよう
な変形を用いることを予期し、本出願人は、本明細書において具体的に記載されるのと別
の方法で実施される本開示の各種実施形態を意図する。それゆえに、本開示は、適用法に
よって許されるここに添付される特許請求の範囲に列挙される主題のすべての改変物およ
び均等物を含む。さらに、本明細書に別に指示があるか、または別に文脈が明らかに否定
している場合を除いて、それらのすべての可能な変形における上記の要素の任意の組み合
わせが本開示に包含される。
【0238】
さらに、本明細書全体を通して特許および印刷刊行物を多数参照してきた。上記引用文
献および印刷刊行物のそれぞれが、個別にその全体を参照によって本明細書に組み込む。
【0239】
本開示の実施形態は、本開示の原理を説明するためのものであることが理解されるべき
である。利用されてもよい他の改変物は本開示の範囲内にある。よって、限定ではないが
例として、本開示の代替的な構成が、本明細書の教示に従って利用されてもよい。それゆ
えに、本開示は、正確に示され、記載されるとおりのものに限定されない。
【0240】
本明細書において示される詳細は、例としてのものであり、本開示の好適な実施形態の
説明的解説に過ぎず、本開示の各種実施形態の原理および概念上の態様の最も有用で容易
に理解される説明であると考えられるものを提供するために提示されている。
【0241】
本開示において使用される定義および説明は、例においてはっきりと明白に変更されな
い、または意味の適用が任意の構成を無意味または本質的に無意味にしない限り、あらゆ
る今後の構成において優先されることを意味し、それが意図される。用語の構造がそれを
無意味または本質的に無意味にするであろう場合、定義は、Webster's Dictionary, 3rd
EditionまたはOxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology (Ed. Anthon
y Smith, Oxford University Press, Oxford, 2004)などの当業者に既知の辞書から採用
されなければならない。
【0242】
本発明の基となる原理から逸脱することなく上記の実施形態の細部に多くの変更を行え
ることが当業者には明白であろう。したがって、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲
によってのみ決定されるべきである。
【配列表】