(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】電気外科装置
(51)【国際特許分類】
A61B 18/18 20060101AFI20240507BHJP
A61B 18/14 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61B18/18 100
A61B18/14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022209981
(22)【出願日】2022-12-27
(62)【分割の表示】P 2020514258の分割
【原出願日】2018-10-12
【審査請求日】2023-01-25
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ,ジョージ・クリスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ウェッブ,デイビッド・エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ターナー,ルイス
(72)【発明者】
【氏名】メドウクロフト,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン,ジェシ
(72)【発明者】
【氏名】タイミスト,ミリアム
【審査官】羽月 竜治
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-511191(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0358140(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0137585(US,A1)
【文献】特開2012-125339(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063376(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/055595(WO,A2)
【文献】国際公開第2010/134273(WO,A1)
【文献】特開2007-195982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科器具を制御するためのハンドピースであって、前記ハンドピースが、
本体と、
前記本体の
遠位端から延びる可撓性シャフトと、
前記可撓性シャフトによって画定された管腔を通って延びる同軸ケーブルであって、前記同軸ケーブルが、前記可撓性シャフトの遠位端に配置可能な電気外科器具に接続するためのものである、前記同軸ケーブルと、
前記管腔を通って延びる制御ロッドであって、前記制御ロッドが、前記可撓性シャフトの遠位端に配置可能な電気外科器具に接続するためのものである、前記制御ロッドと、
前記本体にスライド可能に取り付けられた作動要素と、
前記本体に回転可能に取り付けられたローテータと、を備え、
前記同軸ケーブル及び前記可撓性シャフトが、前記作動要素とともに、前記本体に対してスライドするように、かつ、前記ローテータとともに、前記本体に対して回転するように、取り付けられており、
前記制御ロッドが、前記本体に対して長手方向の決まった位置に取り付けられた近位部を有
し、前記長手方向が、前記可撓性シャフトが前記本体から延びる方向に整列されている、前記ハンドピース。
【請求項2】
前記制御ロッドが、前記本体に対して回転可能である、請求項1に記載のハンドピース。
【請求項3】
前記制御ロッドの前記近位部が、前記ローテータ上に取り付けられている、請求項1または請求項2に記載のハンドピース。
【請求項4】
前記作動要素が、前記
本体内で
前記長手方向にスライドするように取り付けられたシャフトを備
えている、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のハンドピース。
【請求項5】
前記作動要素上の電力入力ポートを含み、前記電力入力ポートが、前記電力入力ポート内で受領した電力を前記同軸ケーブルに送信するように接続されている、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のハンドピース。
【請求項6】
前記電力入力ポートへの接続方向が、前記作動要素が前記本体に対してスライド可能である方向に対して垂直に延びている、請求項
5に記載のハンドピース。
【請求項7】
前記電力入力ポートと前記同軸ケーブルとの間で、前記作動要素に取り付けられたRFブロック回路を有する、請求項5または請求項6に記載のハンドピース。
【請求項8】
マイクロウェーブエネルギを供給するための電気外科ジェネレータと、
患者の身体に挿入するための器具コードを有する外科検査デバイスであって、前記器具コードが、前記器具コードを通って延びる器具チャネルを有する、前記外科検査デバイスと、
前記電気外科ジェネレータから前記マイクロウェーブエネルギを受領するように接続された、請求項
1から請求項
7のいずれか一項に記載のハンドピースであって、前記ハンドピースの前記可撓性シャフトが、前記外科検査デバイスの前記器具チャネルを通る、前記ハンドピースと、
前記ハンドピースの前記可撓性シャフトの遠位端に接続された電気外科鉗子器具と、を備え、
前記作動要素が、前記電気外科鉗子器具の開閉を制御するように接続されており、
前記ローテータが、前記器具チャネルに対する前記電気外科鉗子器具の回転を制御するように構成されている、電気外科装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織を把持するため、及び、マイクロウェーブエネルギを把持された組織に送って、その組織を凝固させるか、焼灼するか、封止するための、電気外科鉗子に関する。具体的には、鉗子は、電磁放射(好ましくは、マイクロウェーブエネルギ)を印加して、血管(複数可)をシールする前に、1つまたは複数の血管を閉じるように、圧力を印加するために使用される場合がある。鉗子は、凝固または封止の後に、たとえば無線周波数(RF)エネルギ、または、ブレードなどの機械式切除要素を使用して、組織を切除するように配置されている場合もある。本発明は、内視鏡、胃カメラ、または気管支鏡の器具チャネルに挿入することができる鉗子に適用される場合があるか、腹腔鏡手術または切開手術で使用される場合がある。
【背景技術】
【0002】
電気外科器具は、生体組織を切除するか、血管を凝固させるなどの目的のために、無線周波数エネルギ及び/またはマイクロウェーブ周波数エネルギを、生体組織に搬送するために使用される器具である。無線周波数エネルギ及び/またはマイクロウェーブ周波数エネルギは、同軸ケーブル、導波管、マイクロストリップラインなどの伝達線を使用して、電気外科器具に供給される。
【0003】
いくつかのケースでは、電気外科器具は、鉗子を含む場合がある。この鉗子は、熱エネルギを、鉗子の顎部間に把持された生体組織に搬送ことが可能である。たとえば、無線周波数(RF)エネルギは、鉗子の顎部の双極電極配置から搬送される場合がある。RFエネルギは、管壁内の細胞外マトリックス蛋白質(たとえば、コラーゲン)の熱変性により、管をシールするために使用される場合がある。熱エネルギによっても、把持された組織が焼灼され、凝固が促進される場合がある。代替的には、顎部は、1つまたは複数のマイクロウェーブ放出構造を含む場合がある。この構造は、組織を封止するために、顎部間に把持された生体組織にマイクロウェーブEMエネルギを放射するように配置されている。
【0004】
そのようなデバイスは、通常、侵襲性が最小の外科腹腔鏡検査ツールの端部に用途が見出されるが、婦人科、泌尿器内視鏡、胃腸外科手術、ENT手術などの、他の臨床上の処置のエリアにおいて、等しく用途を見出すことができる。用途の文脈に応じて、これらデバイスは、様々な物理的構造、サイズ、スケール、及び複雑さを有し得る。
【0005】
止血と同時に体組織を切断することが可能である、侵襲性が最小のデバイスの現在の実施例には、Covidienによって製造されたLigaSure管シール技術、及び、OlympusからのThunderbeatプラットフォームが含まれる。LigaSureシステムは、圧力が印加されている間に組織をシールするように電流が搬送される、双極鉗子配置である。Thunderbeatプラットフォームは、超音波源を使用して発生された熱エネルギと、双極電気エネルギとを同時に搬送する。
【0006】
US6,585,735には、内視鏡検査用の双極鉗子が記載されている。この中では、鉗子の顎部が、顎部間に保持された組織を通して双極性エネルギを伝達するように配置されている。
【0007】
EP2233098には、組織を封止するためのマイクロウェーブ鉗子が記載されている。この中では、顎部のシール表面は、鉗子の顎部間に把持された組織内にマイクロウェーブエネルギを放射するための、1つまたは複数のマイクロウェーブアンテナを含んでいる。
【0008】
WO2015/097472には、電気外科鉗子が記載されている。この中では、1つまたは複数の対の非共振性のアンバランスな損失の多い伝達線構造が、一対の顎部の内側表面上に配置されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
もっとも概略的には、本開示は、電気外科装置、特に、電気外科鉗子器具の制御のための様々な向上を提供する。一態様では、本開示は、強固な顎部開放機構をマイクロウェーブエネルギ搬送機構と合わせる、電気外科鉗子器具を提供する。別の態様では、本開示は、電気外科器具の回転制御を、電力供給と、エンドエフェクタの作動(たとえば、顎部の閉鎖、ブレードの後退など)との両方と合わせるハンドピースを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、管腔を画定する可撓性シャフトと、可撓性シャフトの管腔内に配置された、マイクロウェーブエネルギを搬送するための同軸ケーブルと、可撓性シャフトの遠位端に取り付けられた剛性ブラケットと、剛性ブラケットに旋回可能に取り付けられた一対の顎部であって、一対の顎部が、一対の顎部の対向する内側表面間の隙間を開閉するように、互いに対して移動可能である、一対の顎部と、可撓性シャフトの管腔内に配置され、管腔から剛性ブラケットを通って延びて、一対の顎部と操作可能に係合する作動要素と、を備え、一対の顎部が、内側表面に取り付けられたエネルギ搬送構造を有する第1の顎部を備え、それにより、エネルギ搬送構造が、上に形成された第1の電極及び第2の電極を有するフレキシブル誘電体基板を備えており、エネルギ搬送構造が、同軸ケーブルからマイクロウェーブエネルギを受領するように接続されており、第1の電極及び第2の電極が、エネルギ搬送構造によって受領されたマイクロウェーブエネルギを一対の顎部間の隙間に放出するように配置されている、電気外科鉗子器具が提供される。この構造は、剛性の顎部開放機構を提供することができ、この構造では、一対の顎部が、この顎部が、たとえば使用中に一方側に反れるリスクを低減するか除去する方式で、シャフトの遠位部に対してしっかりと取り付けられている。顎部自体は、たとえば、ステンレス鋼などの生体親和性金属から、剛性の鉤爪状の構造として形成されている場合がある。顎部は、エネルギ搬送構造を保護するように作用する場合があり、こうして、マイクロウェーブ出力の搬送に影響することなく、顎部が互いに対して移動する際に、その構造が変形することを可能にする柔軟性を構造が保持することを可能にする。
【0011】
使用時には、一対の顎部は、生体組織、たとえば血管を把持するように配置されており、顎部の内側表面間の隙間の両側にマイクロウェーブエネルギを印加して、管内に包含された組織、すなわち、生体組織内のコラーゲン、エラスチン、脂肪、もしくは血液、またはそれらの組み合せを凝固させ、したがって、グリップされた管を封止する場合がある。封止した後に、管は、たとえば、ブレード、または、マイクロウェーブエネルギを搬送する電極と同じ電極から搬送されるRFエネルギを使用して、切られる場合がある。可動ブレードは、鉗子に組み込まれている場合がある。
【0012】
電極が、顎部の一方にのみ設けられている場合があるが、電極は、マイクロウェーブエネルギの凝固作用が、より良好に封止するとされる、一様な方式で印加されるように、両方の顎部に設けることが望ましい。このため、一対の顎部は、第1の顎部と対向して配置された第2の顎部を備える場合があり、この第2の顎部は、第1の顎部と同一の構造を有している。このため、一対の顎部は、内側表面に取り付けられたエネルギ搬送構造を有する第2の顎部を備えている場合があり、それにより、エネルギ搬送構造が、上に形成された第1の電極及び第2の電極を有するフレキシブル誘電体基板を備えており、エネルギ搬送構造が、同軸ケーブルからマイクロウェーブエネルギを受領するように接続されており
、第1の電極及び第2の電極が、エネルギ搬送構造によって受領されたマイクロウェーブエネルギを一対の顎部間の隙間に放出するように配置されている。他の実施例では、両方の顎部は、単一の電極を各々が有する、フレキシブル誘電体基板を有する場合がある。マイクロウェーブエネルギは、次いで、両方の顎部の電極から形成された伝達線構造によって搬送される場合がある。
【0013】
剛性ブラケットは、可撓性シャフトの遠位端に取り付けられている、たとえば固定されている、又状であるか、U形状の構造である場合がある。アクスルまたは旋回ピンが、叉、または、U形状の構造の脚部間に取り付けられている場合がある。一対の顎部は、この同じ軸周りに、旋回可能に取り付けられている場合がある。すなわち、一対の顎部は、共通の軸周りに旋回する場合がある。
【0014】
一対の顎部は、軸に関して対称的な方式で移動する場合がある。一実施例では、一対の顎部は、第1の顎部及び第2の顎部を備えている場合があり、作動要素は、第1の顎部に接続された第1の制御ワイヤ、及び、第2の顎部に接続された第2の制御ワイヤを備えている場合がある。第1の制御ワイヤ及び第2の制御ワイヤは、一対の顎部の開閉に影響するように、ブラケットに対して長手方向に移動可能である場合がある。各制御ワイヤは、そのそれぞれの顎部の近位部に、固定されている、たとえば、接着されているか、引っ掛けられている場合がある。制御ワイヤは、押圧力と引張力との両方を、一対の顎部に伝達することを可能にするために、剛性である場合がある。
【0015】
作動要素は、可撓性シャフトの管腔を通って延びるメイン制御ワイヤを備えている場合がある。メイン制御ワイヤは、メイン制御ワイヤの遠位端で分岐して、第1の制御ワイヤと第2の制御ワイヤとを形成する場合がある。
【0016】
保持フレームは、同軸ケーブルと作動要素とを、互いに対して決まった向きで保持するように、管腔の近位部内に取り付けられている場合がある。保持フレームは、同軸ケーブルを受領し、保持するような形状の第1の取付け領域と、作動要素を受領し、保持するような形状の第2の取付け領域とを有する場合がある。スリーブが、保持フレーム、同軸ケーブル、及び、可撓性シャフトの管腔内の作動要素の周りに形成されている場合がある。この配置は、可撓性シャフトが操作された際の摩擦を低減する場合があり、また、作動要素と同軸ケーブルとの間の相対的なスライドを補助する場合がある。
【0017】
保持フレームは、剛性ブラケットから長手方向に離間した遠位端を有している場合がある。この配置では、剛性ブラケットに隣接する可撓性シャフトの遠位部が、より空の管腔を有し、したがって、さらなる柔軟性を示すことができる。これにより、器具を扱いにくい位置に配置することが促される。
【0018】
第1の電極及び第2の電極は、顎部内のフレキシブル誘電体基板に形成された細長い導電要素である場合がある。これら電極は、平行な伝達線である場合があり、また、内側表面上の同一平面のライン構造を形成する場合がある。同一平面のラインまたは平行な伝達線間の離間距離は、RF切断機能を与えるように選択される場合がある。すなわち、RFエネルギが印加された際に生成されるE場を、組織の切断、または、解剖/切除を行うのに十分な高さにすることを可能にする。平行な伝達電極は、顎部間の隙間の両側で対向する電極が、逆極性であるように、すなわち、一方のラインの正電荷が、対向するラインの負電荷に対面するように、配置されている場合がある。組織の切断動作は、顎部が密に隣接している、たとえば、間が1mm以下、好ましくは、間が0.5mm以下である場合に、2つの対向する面上の逆向きのE場によって増大される場合がある。顎部上の第1の電極と第2の電極との間の間隔は、0.5mm以下である場合がある。
【0019】
フレキシブル誘電体基板は、同軸ケーブルの遠位端と、内側表面の近位端との間に延びる近位部を備えている場合があり、近位部が、一対の顎部が開閉した際に変形可能である。近位部は、剛性ブラケットを通っている場合がある。同軸ケーブルは、このため、可撓性シャフトの管腔内で終端している場合がある。
【0020】
フレキシブル誘電体基板は、同軸ケーブルから第1の電極及び第2の電極にマイクロウェーブエネルギを搬送するための、フレキシブル誘電体基板上に形成された一対の導電体トラックを有する。一対の導電体トラックは、フレキシブル誘電体基板の両側に形成されている場合がある。たとえば、一対の導電体トラックは、同軸ケーブルの内側導電体に電気的に接続された第1の導電体トラックと、同軸ケーブルの外側導電体に電気的に接続された第2の導電体トラックとを備えている場合がある。
【0021】
第1の導電体トラックは、第1の電極に電気的に接続されている場合があり、第2の導電体トラックは、第2の電極に電気的に接続されている。これら接続は、顎部の内側表面の交差部において生じる場合がある。
【0022】
フレキシブル誘電体基板は、第1の電極及び第2の電極を提供するように、導電性材料が上に形成された絶縁材料のリボンである場合がある。リボンは、一対の導電体トラックの幅より大である幅を有する場合がある。内側顎部要素に取り付けられた追加の誘電材料(たとえば、セラミックか、PTFEか、セラミックが含まれるPTFE)のピースが存在する場合がある。フレキシブル誘電体基板における出力の損失を最小にするため、及び、RF切断に関連する電圧、すなわち、400V以上にまでなるピーク電圧に、材料が耐えることができることを確実にするために、材料は、好ましくは、低い消散係数または損失係数、すなわち、0.001以下を有するとともに、高い絶縁耐力または絶縁破壊電圧、すなわち、100kV/mm以上にまでなる電圧を有する。ポリイミドまたは類似の材料を使用することができる。
【0023】
第1の顎部(または、両方もしくは一対の顎部)は、カッティングブレードの通過を可能にするために、内部に形成された長手スロットを有する場合がある。カッティングブレードは、第1の顎部上にスライド可能に設けられている場合がある。ブレードは、管腔内に配置されるとともに、管腔から延びて、ブレードと操作可能に係合するブレード制御ワイヤを使用して、操作可能である場合がある。第1の顎部は、たとえばその遠位端にカバー部を備えている。カバー部は、ブレードを後退位置に保持するようなサイズである場合がある。ブレードは、後退位置に向けて付勢されている場合がある。代替的または追加的に、ブレード制御ワイヤは、後退位置から離れるブレードの移動が、一対の顎部を閉じた位置に向けて付勢するように、作動要素に操作可能に結合されている場合がある。これら特徴は、ブレードが誤って露出することを防止するために、別々に、または組み合わせて使用される場合がある。
【0024】
一対の顎部は、たとえば内視鏡、胃カメラ、気管支鏡などの、外科検査デバイスの器具チャネル内にフィットするような寸法である場合がある。
【0025】
別の態様では、本発明は、電気外科器具を制御するためのハンドピースであって、ハンドピースが、本体と、本体の近位端から延びる可撓性シャフトと、可撓性シャフトによって画定された管腔を通って延びる同軸ケーブルであって、同軸ケーブルが、可撓性シャフトの遠位端に配置可能な電気外科器具に接続するためのものである、同軸ケーブルと、管腔を通って延びる制御ロッドであって、制御ロッドが、可撓性シャフトの遠位端に配置可能な電気外科器具に接続するためのものである、制御ロッドと、本体にスライド可能に取り付けられた作動要素と、本体に回転可能に取り付けられたローテータと、を備え、同軸ケーブル及び可撓性シャフトが、作動要素とともに、本体に対してスライドするように、
かつ、ローテータとともに、本体に対して回転するように、取り付けられており、制御ロッドが、本体に対して長手方向の決まった位置に取り付けられた近位部を有する、ハンドピースを提供する場合がある。使用時には、ハンドピースは、(制御ロッドを介しての)長手方向(軸方向)の力と、(可撓性シャフトを介しての)回転方向の力との両方と組み合わせて、可撓性シャフトの遠位端において、電気外科器具に電力を搬送することができる。長手方向の力は、器具上のエンドエフェクタ、たとえば、上述の鉗子器具の一対の顎部、または、スライディングブレード、またはニードルを制御するために使用される場合がある。回転力は、器具の向きを制御するために使用される場合がある。
【0026】
ハンドピース内の構成要素間の接続は、可撓性シャフト及び同軸ケーブルが、制御ロッドに対してスライド可能であるような接続である。換言すると、制御ロッドの位置は、可撓性シャフトに対して変更することができ、これにより、器具を操作するために、制御ロッドの遠位端を物理的に移動させることができる。
【0027】
本体は、本体から離れるように延びるように、可撓性シャフトと整列された軸上にある、バレルタイプのハウジングである場合がある。ローテータの回転軸は、本体の軸と整列しているか、本体の軸内で同軸である場合がある。ローテータは、本体の外側表面上に取り付けられた襟部またはリングである場合がある。ローテータは、本体上に、長手方向(軸方向)に保持されている場合がある。たとえば、本体は、周方向の凹部を有する場合があり、この凹部内に、ローテータが着座されている。
【0028】
制御ロッドは、本体に対して回転可能である場合がある。このことは、ローテータが回転すると、可撓性シャフト、制御ロッド、及び同軸ケーブルのすべてが、本体に対して回転することを意味している。このことは、可撓性シャフト内で構成要素がねじれることを防止することができる。一実施例では、制御ロッドの近位部は、ローテータに取り付けられている場合がある。ローテータが本体に対して軸方向に固定されている場合、この取付けは、制御ロッドが、ローテータとともに回転するが、本体に対してスライドしないことを意味している。近位部は、ローテータに接続するために、可撓性シャフトを通る径方向の延長部を含む場合がある。
【0029】
ハンドピースは、可撓性シャフトの近位部を収容する内部シャフトを備えている場合がある。内部シャフトは、ローテータとともに回転するように、ローテータに結合されている場合がある。内部シャフトは、ローテータ内に形成されたトラックに沿って軸方向にスライド可能である場合がある。
【0030】
作動要素は、ハウジング内で長手方向(すなわち、上述の軸方向)にスライドするように取り付けられたシャフトを備えている場合がある。作動要素または本体は、デバイスを操作する間にユーザが保持するための、グリップ要素、たとえば、フィンガリングなどを有する場合がある。
【0031】
ハンドピースは、作動要素上に電力入力ポートを備えている場合がある。電力入力ポートは、QMAコネクタなどである場合がある。電力入力ポートは、電力入力ポート内で受領した電力を同軸ケーブルに送信するように接続されている場合がある。このため、同軸ケーブルの近位端は、電力入力ポートから電力を受領するように、作動要素に接続されている場合がある。同軸ケーブルの近位端は、この近位端と作動要素との間の相対的な回転を可能にするように、回転可能なカップリングを介して作動要素に接続されている場合がある。
【0032】
電力入力ポートは、たとえば電気外科ジェネレータからの、外部の同軸ケーブルに接続されている場合がある。電力入力ポートへの接続方向は、作動要素が本体に対してスライ
ド可能である方向に対して垂直に延びている場合がある。たとえば、電力入力ポートは、作動要素の下側にある場合がある。
【0033】
本発明の別の態様では、エネルギの望ましくない周波数をブロックするためのフィルタが、ハンドピースに組み込まれている場合がある。フィルタは、フィルタが、同軸ケーブルとともに移動するように、作動要素内に位置する場合がある。一実施例では、フィルタは、電力入力ポートと同軸ケーブルとの間で、作動要素に取り付けられたRFブロック回路である。電気外科ジェネレータが、RFエネルギとマイクロウェーブエネルギとの両方を搬送することが可能であるが、電気外科器具が、マイクロウェーブエネルギを使用するためにのみ設計されている場合、RFブロック回路は、誤った使用を防止するために、安全機構を提供する。本発明のこの態様は、上述の特徴のいずれか1つまたは複数を共有する場合がある。
【0034】
上述のハンドピースは、マイクロウェーブエネルギを供給するための電気外科ジェネレータと、患者の身体に挿入するための器具コードを有する外科検査デバイスであって、器具コードが、器具コードを通って延びる器具チャネルを有する、外科検査デバイスと、を備えた電気外科装置で使用される場合がある。ハンドピースは、マイクロウェーブエネルギを電気外科ジェネレータから受領するように接続されている場合がある。ハンドピースの可撓性シャフトが、外科検査デバイスの器具チャネルを通る場合がある。たとえば本明細書に論じるような器具などの、電気外科鉗子器具は、ハンドピースの可撓性シャフトの遠位端に接続されている場合がある。ハンドピースの作動要素(器具の作動要素でもある)は、電気外科鉗子器具の開閉を制御するように接続されている。ローテータは、器具チャネルに対する電気外科鉗子器具の回転を制御するように作動する。
【0035】
「外科検査デバイス(surgical scoping device)」との用語は、本明細書では、侵襲性の処置の間、患者の身体内に導入される、剛性であるか柔軟な(たとえば、操縦可能な)導管である、挿入チューブが設けられた任意の外科デバイスを意味するために使用される場合がある。挿入チューブには、器具チャネル、ならびに、(たとえば、挿入チューブの遠位端において、処置場所を照らす、及び/または、処置場所の画像を取得する光を伝達するための)光学チャネルが含まれる場合がある。器具チャネルは、侵襲性の外科ツールを受領するために適切な直径を有する場合がある。器具チャネルの直径は、5mm以下である場合がある。
【0036】
本明細書では、「内側(inner)」との用語は、器具チャネル及び/または同軸ケーブルの中心(たとえば軸)に、径方向により近いことを意味している。「外側(outer)」との用語は、器具チャネル及び/または同軸ケーブルの中心(軸)から、径方向に離れていることを意味している。
【0037】
「導電性(conductive)」との用語は、本明細書では、文脈に別様に示されていない限り、電気的に伝導性であることを意味するために使用される。
【0038】
本明細書では、「近位(proximal)」及び「遠位(distal)」との用語は、細長いプローブの端部に関する。使用時には、近位端は、RFエネルギ及び/またはマイクロウェーブエネルギを提供するためのジェネレータにより近く、一方、遠位端は、ジェネレータから離れている。
【0039】
本明細書では、「マイクロウェーブ」は、400MHzから100GHzの周波数領域を示すために概して使用され得るが、1GHzから60GHzが好ましい。検討した特定の周波数は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、及び24GHzである。対照的に、本明細書では、大きさが少なくと
も3桁少ない周波数領域、たとえば、300MHz以下、好ましくは、10kHzから1MHz、もっとも好ましくは、400kHzの周波数領域を示すために、「無線周波数」または「RF」を使用する。
【0040】
実施例としてのみ、本開示の各実施形態が、ここで、添付図面を参照して論じられる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態である電気外科システムの概略図である。
【
図2a】
図2aは、本発明の実施形態である、電気外科鉗子器具の器具先端の斜視図である。
【
図2b】
図2bは、本発明の実施形態である、電気外科鉗子器具の器具先端の斜視図である。
【
図2c】
図2cは、本発明の実施形態である、電気外科鉗子器具の器具先端の斜視図である。
【
図3a】
図3aは、本発明の別の実施形態である、電気外科鉗子器具の器具先端の斜視図である。
【
図3b】
図3bは、本発明の別の実施形態である、電気外科鉗子器具の器具先端の斜視図である。
【
図4a】
図4aは、
図3a及び
図3bの器具先端のスライドブレードを作動させるために使用することができる、安全機構を示す概略図である。
【
図4b】
図4bは、
図3a及び
図3bの器具先端のスライドブレードを作動させるために使用することができる、安全機構を示す概略図である。
【
図4c】
図4cは、
図3a及び
図3bの器具先端のスライドブレードを作動させるために使用することができる、安全機構を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本発明の別の実施形態である、電気外科鉗子器具の器具先端の斜視図である。
【
図6a】
図6aは、本発明の実施形態である電気外科装置のハンドピースの斜視図である。
【
図6b】
図6bは、
図6aのハンドピースの部分破断図であり、ハンドピースの内部構造の部品を示している。
【
図7a】
図7aは、本発明の実施形態である電気外科装置のハンドピース内に取り付けることができる回路基板の上面図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の実施形態である電気外科鉗子器具で使用することができるエネルギ搬送構造の概略側面図であり、エネルギ搬送構造の電極ストリップを通る拡大断面図を示す差込図を含んでいる。
【
図8B】
図8Bは、組織内にある際、及び、生理食塩水に浸された際の、
図8Aのエネルギ搬送構造に関する反射減衰量を示すグラフである。
【
図9A】
図9Aは、
図8Aのエネルギ搬送構造で使用するのに適切である例示的な電極ストリップの上面図である。
【
図9B】
図9Bは、
図8Aのエネルギ搬送構造で使用するのに適切である例示的な電極ストリップの底面図である。
【
図9C】
図9Cは、
図9A及び
図9Bの電極ストリップで使用される、ストリップラインタイプの伝達線を通る、拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明の実施形態である、完全な電気外科システム100の概略図である。本システムは、器具先端からのマイクロウェーブ周波数エネルギを使用して、生体組織(た
とえば、腫瘍、障害、または線維腫)を処置するために配置されている。システム100は、マイクロウェーブEMエネルギを制御可能に供給するためのジェネレータ102を備えている。いくつかのケースでは、ジェネレータ102は、RF電磁(EM)エネルギを供給することも可能である場合がある。この目的のために適切なジェネレータが、WO2012/076844に記載されている。この文献は、参照することにより、本明細書に組み込まれる。ジェネレータ102は、インターフェースケーブル104によってハンドピース106に接続されている。ハンドピース106は、注入器などの流体搬送デバイス108からの流体供給部107を受領するようにも接続されている場合があるが、このことは必須ではない。必要である場合は、ハンドピース106は、アクチュエータ109、たとえば、親指で操作されるスライダまたはプランジャによって操作可能である器具作動機構を収容する場合がある。たとえば、器具作動機構は、本明細書に論じるように、鉗子器具の顎部を操作するために使用される場合がある。他の機構も、ハンドピース内に含まれる場合がある。たとえば、ブレード及び/またはニードルの移動機構が、器具において、カッティングブレードを移動させるか、ニードルを配置するために、設けられる場合がある(ハンドピースの適切なトリガによって操作可能である)。ハンドピース106の機能は、ジェネレータ102からの入力、流体搬送デバイス108からの入力、及び器具作動機構からの入力を、必要とされる場合がある任意の他の入力とともに、単一の可撓性シャフト112に合わせることである。この可撓性シャフト112は、ハンドピース106の遠位端から延びている。
【0043】
可撓性シャフト112は、外科検査デバイス114の器具(作動)チャネルの長さ全体を通して挿入可能である。可撓性シャフト112は、外科検査デバイス114の器具チャネルを貫通し、内視鏡のチューブの遠位端において(たとえば、患者の内側で)突出するような形状である、器具先端118を有している。器具先端118は、生体組織を把持するための一対の顎部と、ジェネレータ102から搬送されるマイクロウェーブEMエネルギを放出するように配置されたエネルギ搬送構造とを含んでいる。任意選択的には、器具先端118は、生体組織をカットするための可動ブレード、及び/または、流体搬送デバイス108から搬送された流体を送るための、後退可能な皮下注射用ニードルとをも含む場合がある。以下により詳細に記載するように、ハンドピース106は、器具先端118の顎部を開閉するための作動機構を含んでいる。ハンドピース106は、外科検査デバイス114の器具チャネルに対して器具先端118を回転させるための回転機構をも含んでいる。
【0044】
器具先端118の構造は、作動チャネルを通過するのに適切な最大外径を有するように配置されている場合がある。通常は、内視鏡などの外科検査デバイス内の作動チャネルの直径は、4.0mm未満、たとえば、2.8mm、3.2mm、3.7mm、3.8mmのいずれかである。可撓性シャフト112の長さは、1.2m以上、たとえば、2m以上とすることができる。他の実施例では、器具先端118は、シャフトが作動チャネルを通して挿入された後(かつ、器具コードが患者内に導入される前)に、可撓性シャフト112の遠位端に取り付けられる場合がある。代替的には、可撓性シャフト112は、このシャフトの近位の接続を行う前に、遠位端から作動チャネル内に挿入することができる。これら配置では、遠位端アセンブリ118は、外科検査デバイス114の作動チャネルより大である寸法を有することが許容され得る。上述のシステムは、器具を患者内に導入する1つの方法である。他の技術が可能である。たとえば、器具は、カテーテルを使用して挿入される場合もある。
【0045】
器具先端構造
図2aは、本発明の実施形態である、電気外科鉗子器具の器具先端200の斜視図を示す概略図である。器具先端200は、第1の顎部202及び第2の顎部204を含んでおり、第1の顎部202と第2の顎部204との各々は、これら顎部間の隙間を開閉するた
めに、これら顎部が互いに対して移動可能であるように、アクスル206上に旋回可能に取り付けられている。顎部は、金属、たとえば、ステンレス鋼または他の生体親和性金属で形成されている場合がある。アクスル206は、器具シャフト210の遠位端から突出する剛性ブラケット208上に取り付けられている。ブラケット208は、器具シャフト210の遠位端内に延びる様な形状であるとともに、この遠位端を閉じる取付け部212を含んでいる。ブラケット208は、接着剤または他の適切な手段(たとえば、超音波溶接)で、器具シャフト210に固定されている場合がある。この方式で、器具シャフト210に印加されるあらゆるトルクが、器具先端200に伝達され得る。器具シャフト210は、任意の適切な材料、たとえばPTFEで形成された中空チューブを備えている場合がある。
【0046】
第1の顎部202は、生体組織を把持するためのグリップ部214と、顎部202をアクスル206周りに旋回させるための作動部216とを含んでいる。グリップ部214と作動部216とは、顎部202の両端の、アクスル206の両側に配置されている。グリップ部214は、器具先端200の遠位端に配置されており、一方、作動部216は、器具シャフト210の近位に位置している。同様に、第2の顎部204は、アクスル206の両側に位置するグリップ部218と作動部220とを含んでいる。グリップ部214と218とは、各々が、生体組織のグリップを容易にするために、鋸歯状の縁部を含む場合がある。顎部202と204とは、顎部のグリップ部214と218との間の隙間を変化させることができる(すなわち、隙間を開閉させることができる)ように、アクスル206に旋回可能に取り付けられている。使用時には、このことは、生体組織を、顎部202のグリップ部214と、顎部204のグリップ部218との間に把持することを可能にする。
【0047】
第1の制御ワイヤ222は、第1の顎部202の作動部216に接続されており、第2の制御ワイヤ224は、第2の顎部204の作動部220に接続されている。第1の制御ワイヤ222及び第2の制御ワイヤ224は、ブラケット208を通って器具シャフト210内に通り、器具シャフト210の長さ全体に沿って延びている。第1の制御ワイヤ222及び第2の制御ワイヤ224は、電気外科器具の近位端において、ハンドピース(以下により詳細に論じる)に接続されており、このことは、制御ワイヤを、器具シャフト210に沿って前後に移動するために使用され得る。制御ワイヤ222、224は、ブラケット208の取付け部212の穴を介して、ブラケット208を通る場合がある。流体が、取付け部212の穴を介して器具シャフト210内に入ることを防止するために、制御ワイヤ周りの水密シールを形成するように配置された、適切な材料(たとえばポリイミド)で形成されたチューブは、穴の内側に置かれる場合がある。そのようなチューブは、接着剤(たとえば、製造の間に、ブラケット208を器具シャフト210に接着するために使用される)が、誤って制御ワイヤ222、224上に落ち、制御ワイヤ222、224を接着させることを防止する役割も果たす場合がある。
【0048】
図示の実施例では、グリップ部216と220とは、各々が、第1の制御ワイヤ222と第2の制御ワイヤ224とをそれぞれ受領するための穴を含んでいる。第1の制御ワイヤ222と第2の制御ワイヤ224とは、各々が、その遠位端に、作動部216と作動部220とのそれぞれの穴と機械的に係合するためのホックを含んでいる。制御ワイヤ222、224をグリップ部216、220に固定する他の方式も、可能である。たとえば、制御ワイヤは、グリップ部に接着されるか、はんだ付けされるか、溶接される場合がある。
【0049】
器具シャフト210に沿う第1の制御ワイヤ222及び第2の制御ワイヤ224の長手方向の移動は、顎部202、204を、アクスル206周りに旋回させ、顎部のグリップ部214と218との間の隙間を変化させる。たとえば、第1の制御ワイヤ222及び第
2の制御ワイヤ224が器具シャフト210に沿って押された場合(すなわち、第1の制御ワイヤ222及び第2の制御ワイヤ224が器具先端200に向かって押された場合)、顎部202、204は、それらのグリップ部214と218とが、互いから離れるように移動し、こうして、グリップ部214と218との間の隙間を開くように、旋回する。逆に、第1の制御ワイヤ222及び第2の制御ワイヤ224が器具シャフト210に沿って引っ張られた場合(すなわち、器具先端200から離れるように後退された場合)、顎部202、204は、それらのグリップ部214と218とが、互いに向かって移動し、こうして、グリップ部214と218との間の隙間を閉じるように、旋回する。
【0050】
第1の制御ワイヤ222と第2の制御ワイヤ224とは、ともに、器具シャフト210に沿って移動される場合があるか、第1の制御ワイヤ222と第2の制御ワイヤ224とは、互いに対して独立して移動される場合がある。制御ワイヤをともに移動することにより、顎部を、器具シャフト210の長手軸に関して対称的に移動させる場合がある。このことは、顎部間の生体組織のグリップを容易にする場合がある。他の実施例では、顎部の一方が、ブラケット208に対して固定されている場合があり(すなわち、顎部の一方がアクスルに対して旋回しない)、顎部の一方のみが、アクスルに旋回可能に取り付けられている場合がある。そのような実施例では、旋回可能に取り付けられた顎部に接続された単一の制御ワイヤのみが存在する場合がある。
【0051】
図2bは、器具先端200の異なる斜視図を示す概略図である。特徴が
図2aを参照してすでに上述されている場合、同一の参照符号が使用されている。
【0052】
同軸伝達線226は、器具シャフト210を通っている。同軸伝達線226は、無線周波数(RF)電磁(EM)エネルギ、及び/または、マイクロウェーブEMエネルギは、ジェネレータ(たとえば、ジェネレータ102)から器具先端200に搬送する役割を果たす。同軸伝達線226は、従来のフレキシブル同軸ケーブルである場合があり、誘電材料によって外側導電体から分離された内側導電体を含んでいる。同軸伝達線226は、保護用外側誘電体層をも含む場合がある。同軸伝達線226は、器具シャフト210の内側に位置する(たとえば、固定されているか、別様に留められている)コネクタ228において終端している。第1の制御ワイヤ222及び第2の制御ワイヤ224は、器具シャフト210の内側の同軸伝達線226に沿って通っており、コネクタ228の開口を通って延び、それにより、第1の制御ワイヤ222と第2の制御ワイヤ224とが、上述の方式で、顎部202と顎部204とに接続され得るようになっている。
【0053】
第1のフレキシブルマイクロウェーブ基板230と第2のフレキシブルマイクロウェーブ基板232とが、たとえば接着剤を使用して、コネクタ228に固定されている。図示の実施例では、コネクタ228は、長手方向に延びる一対のレッジを含んでおり、このレッジに、フレキシブルマイクロウェーブ基板が固定されている。フレキシブルマイクロウェーブ基板230、232(電極ストリップとも呼ばれる場合がある)は、任意の適切な、柔軟な誘電材料で形成されている場合がある。たとえば、フレキシブルマイクロウェーブ基板230、232は、Rogers Corporationからの、RFlexのマイクロウェーブ基板である場合がある。
【0054】
第1のフレキシブルマイクロウェーブ基板230は、コネクタ228から延び、ブラケット208の取付け部212のアパーチャを通過する。第1のフレキシブルマイクロウェーブ基板230の遠位部は、第1の顎部202の内側表面234に固定されている。同様に、第2のフレキシブルマイクロウェーブ基板232は、コネクタ228から延び、ステップ208の取付け部212のアパーチャを通過し、第2の顎部204の内側表面236に遠位部で固定されている。説明の目的のために、第1のフレキシブルマイクロウェーブ基板230と第2のフレキシブルマイクロウェーブ基板232とが、顎部202の内側表
面と顎部204の内側表面とに固定されているものとしては示されていないが、第1のフレキシブルマイクロウェーブ基板230と第2のフレキシブルマイクロウェーブ基板232とが、顎部202の内側表面と顎部204の内側表面とに固定される前の状態を示していることに留意されたい。フレキシブルマイクロウェーブ基板は、顎部202、204の内側表面に、任意の適切な接着方法または固定方法を使用して固定される場合がある。たとえば、これらは、接着剤によって取り付けられる場合がある。代替的には、フレキシブルマイクロウェーブ基板は、それらのそれぞれの内側表面に、はんだを使用して固定されている場合がある。
図2bは、第2のフレキシブルマイクロウェーブ基板232の下側に添付されたはんだパッチ238を示している。はんだフラックス(図示せず)が、顎部204の内側表面236に添付されている。このため、第2のフレキシブルマイクロウェーブ基板232は、第2のフレキシブルマイクロウェーブ基板232を内側表面236上に押圧し、顎部204を(たとえば、はんだごての先端で)加熱し、これにより、はんだを流し、はんだ自体を第2のフレキシブルマイクロウェーブ基板232と内側表面236との間に均一に分布させることにより、内側表面236に接着され得る。説明の目的のために、フレキシブルマイクロウェーブ基板230、232は、
図2aには図示されていないことに留意されたい。
【0055】
マイクロウェーブ放出構造は、フレキシブルマイクロウェーブ基板230、232の各々の遠位部に形成されている。
図2bは、たとえば、フレキシブルマイクロウェーブ基板230の遠位部のマイクロウェーブ放出構造240を示している。各マイクロウェーブ放出構造は、同軸伝達線から、フレキシブルマイクロウェーブ基板上の導電パスを介してマイクロウェーブEMエネルギを受領するように接続されている。各マイクロウェーブ放出構造は、顎部202と204との間にグリップされた生体組織内にマイクロウェーブEMエネルギを放出するように構成されている場合がある。たとえば、マイクロウェーブ放出構造の一方または両方が、アクティブストリップ及びグラウンドストリップを有する、同一平面のマイクロストリップアンテナである場合がある。そのようなケースでは、フレキシブルマイクロウェーブ基板は、同軸伝達線226の内側導電体をアクティブストリップに接続する第1の導電パスと、同軸伝達線226の外側導電体をグラウンドストリップに接続する第2の導電パスとの、2つの導電パスを含む場合がある。マイクロウェーブ放出構造の他のタイプも可能である。
【0056】
いくつかのケースでは、器具先端200は、2つの顎部202と204との間で分かれた単一のマイクロウェーブ放出構造を含む場合がある。たとえば、同軸伝達線226の内側導電体に接続されたアクティブストリップは、第1のフレキシブルマイクロウェーブ基板230の遠位部に形成されている場合があり、同軸伝達線226の外側導電体に接続されたグラウンドストリップは、第2のフレキシブルマイクロウェーブ基板232の遠位部に形成されている場合がある。他の実施例では、器具先端200は、単一の顎部に形成された単一のマイクロウェーブ放出構造を含む場合がある。そのようなケースでは、単一のフレキシブルマイクロウェーブ基板を提供することのみが必要である場合がある。
【0057】
フレキシブルマイクロウェーブ基板上のマイクロウェーブ放出構造及び導電パスは、フレキシブルマイクロウェーブ基板上に配置された導電材料で形成されている場合がある。たとえば、放出構造及び導電パスは、フレキシブルマイクロウェーブ基板上にプリントされた金属で形成されている場合がある。したがって、フレキシブルマイクロウェーブ基板は、マイクロウェーブ放出構造の支持を提供することと、マイクロウェーブ放出構造を同軸伝達線226に接続することとの、両方の役割を果たす。
【0058】
フレキシブルマイクロウェーブ基板が柔軟であることから、これら基板は、顎部202、204が開閉される際に曲がり、こうして、マイクロウェーブ放出構造と同軸伝達線226との間の接続を維持しつつ、顎部の移動を可能にする。フレキシブルマイクロウェー
ブ基板230、232の曲げは、顎部202、204に固定されたフレキシブルマイクロウェーブ基板の遠位部の近位で主に生じる場合がある。これにより、コネクタ228とフレキシブルマイクロウェーブ基板230、232との間の接続部に大きい機械的応力が生じることを避ける。このことは、顎部202、204の開閉が繰り返し行われた後にさえも、マイクロウェーブ放出構造と、同軸伝達ケーブルとの間で電気接続が維持されることを確実にする。さらに、フレキシブルマイクロウェーブ基板230、232が内部を通る、ブラケット208の取付け部212のアパーチャは、フレキシブルマイクロウェーブ基板230、232の曲げに起因して、コネクタ228に生じる機械的応力を低減するために、器具シャフトに対するフレキシブルマイクロウェーブ基板230、232の移動を制限するように配置されている場合がある。
【0059】
器具先端200は、こうして、マイクロウェーブ放出構造で生体組織にマイクロウェーブEMエネルギを印加することにより、顎部202と204との間の保持される生体組織(たとえば、血管)を封止するために使用される場合がある。
【0060】
図2cは、器具シャフト210の長さとともに、器具先端200の斜視図を示す概略図である。特徴が
図2a及び
図2bを参照してすでに上述されている場合、同一の参照符号が使用されている。
【0061】
図2cに示すように、第1の制御ワイヤ222及び第2の制御ワイヤ224は、器具シャフト210に沿う途中で単一のメイン制御ワイヤ242に接続されている。第1の制御ワイヤ222及び第2の制御ワイヤ224は、たとえば、メイン制御ワイヤ242に接着されているか、溶接されているか、はんだ付けされている場合がある。この方式で、メイン制御ワイヤ242の、器具シャフト210に沿う長手方向の移動が、第1の制御ワイヤ222及び第2の制御ワイヤ224に伝達され得、顎部202、204を移動させる。メイン制御ワイヤ242は、第1の制御ワイヤ222及び第2の制御ワイヤ224と、ハンドピース(以下により詳細に論じる)との間に、器具シャフト210に沿って延びている。第1の制御ワイヤ222及び第2の制御ワイヤ224は、器具シャフト210の遠位端の近位でメイン制御ワイヤ242に接続されており、それにより、単一の制御ワイヤ(すなわち、メイン制御ワイヤ242)のみが、器具シャフト210の長さのほとんどに沿って延びているようになっている。このことは、電気外科器具の構成を簡略化する場合がある。
【0062】
器具シャフト210に沿う途中では、同軸伝達線226及びメイン制御ワイヤ242は、同軸伝達線226の一部が包含された第1の通路と、メイン制御ワイヤ242の一部が包含された第2の通路とを有する、ワイヤホルダ244に入る。ワイヤホルダ244は、メイン制御ワイヤ242が器具シャフト210に沿って長手方向に移動することを可能にしつつ、同軸伝達線226の横方向の位置と、メイン制御ワイヤ242の横方向の位置とを、互いに対して固定する役割を果たす。したがって、ワイヤホルダ244は、同軸伝達線226とメイン制御ワイヤ242とが、器具シャフト210の内側で絡まるか、ねじれることを防止する。このことは、顎部の開閉を制御できる正確さに影響し得る。他のワイヤ(たとえば、ブレード制御ワイヤ)または導管(たとえば、流体導管)が使用されるケースでは、ワイヤホルダ244は、追加のワイヤ及び/または導管を保持するためのさらなる通路をも含む場合がある。ワイヤホルダは、プラスチックで形成される場合があり、たとえば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)で形成された押出し成形品である場合がある。
【0063】
ワイヤホルダ244は、それ自体が、チューブ246内に包含されている場合がある(たとえば、PEEKチューブ)。チューブ246は、ワイヤホルダをチューブ246に挿入することを容易にするために、その長さに沿って割れ目248を有する場合がある。チ
ューブ246は、ワイヤホルダ244が器具シャフト210の内側で移動することを防止するために、ワイヤホルダ244と、器具シャフト210の内側表面との間の詰め物として作用する場合がある。このことは、メイン制御ワイヤ242を押すか引くかして、顎部202、204を移動させる場合の遅れを避けることを補助する場合がある。
【0064】
ワイヤホルダ244の遠位端及びチューブ246の遠位端は、所定の距離だけ、器具先端200から離れている。したがって、器具シャフト210は、器具先端200と、ワイヤホルダの遠位端及びチューブ246の遠位端との間に、ワイヤホルダ244またはチューブ246が存在しない遠位部250を含んでいる。ワイヤホルダ244及びチューブ246は、その遠位端とハンドピースとの間の長さのほとんどかすべてで、器具シャフト210に沿って延びる場合がある。したがって、器具シャフト210の遠位部250は、器具シャフト210の残りの部分に比べ、柔軟性が向上している場合がある。このことは、この柔軟性がタイトに曲げられた通路を通して遠位部250をガイドすることを可能にする場合があることから、器具シャフト210の可動性を向上させる場合がある。遠位部250にワイヤホルダ244及びチューブ246が欠けていることは、第1の制御ワイヤ222及び第2の制御ワイヤ224と、メイン制御ワイヤ242との間の接続部のための空間を提供する役割も果たす。いくつかの実施形態では、器具シャフト210の遠位部250の長さは、150mmである場合がある。
【0065】
図3a及び
図3bは、本発明による電気外科器具の別の器具先端300の斜視図を示している。器具先端300は、アクスル305に旋回可能に取り付けられた第1の顎部302及び第2の顎部304を含んでいる。第1の顎部302と第2の顎部304とは、グリップ部306とグリップ部308とをそれぞれ含んでいる。グリップ部306とグリップ部308とは、それらの間に生体組織を把持するためのものである。上述の器具先端200と同様に、顎部302、304は、顎部を開閉するために、制御ワイヤ(図示せず)が取り付けられた作動部をも含んでいる。
【0066】
第1の顎部302は、顎部302において長手方向に延びるスロット308に沿って移動可能であるブレード306を含んでいる。ブレードは、ブレード306に取り付けられ、器具シャフトを通ってハンドピースに延びる制御ワイヤ(図示せず)により、スロット308に沿って前後に移動される場合がある。第1の顎部302は、その遠位端にカバー310をさらに含み、ブレード306は、ブレードが露出しないように、このカバー310内に後退することができる。このため、ブレード306が使用されない場合、意図せずに組織を切ることを避けるために、カバー310内に後退される場合がある。ブレード306は、後退位置に向かって付勢されている場合がある。この後退位置では、ブレード306はカバー310によって隠されている。
【0067】
第2の顎部304は、器具先端200に関して上述した方式と同様の方式で、フレキシブルマイクロウェーブ基板314に配置されたマイクロウェーブ放出構造312を含んでいる。マイクロウェーブ放出構造312は、顎部302と304との間にグリップされた組織内にマイクロウェーブEMエネルギを放出するように配置されている場合がある。第2の顎部304は、ブレード306を受領するためのスロット316をさらに含んでいる。スロット316は、
図3cに示すように、作動電極315が2つの叉に分かれるように、マイクロウェーブ放出構造312及びフレキシブルマイクロウェーブ基板314の一部を通って延びている。
図3cは、第2の顎部304の概略図を示している。第2の顎部304のスロット316は、第1の顎部のスロット308と整列しており、それにより、顎部が一体にされると、ブレード306が、第2の顎部304のスロット316内に受領され得、また、スロット316に沿って前後に移動され得るようになっている。スロット308とスロット316との両方は、長手方向に向けられている(すなわち、器具シャフトの軸に沿う)。ブレード306は、内側に、アクスル305に向いたカッティングエッジ
318を含んでいる。この方式で、顎部302と304との間に保持された生体組織は、ブレードをスロット308に沿って、アクスル305に向かって引くことにより、切られる場合がある。器具先端300で達成することができる切断の最大の長さは、顎部302、304の長さ、ならびに、スロット308及び316の長さによって判定される。この理由は、これらがブレード306の移動の範囲を判定するためである。より長いスロット308、316は、より長い切断が実施されることを可能にする場合がある。
【0068】
器具先端300の例示的用途をここで記載する。最初に、ブレード306は、ブレード306がカバー310によって隠れるように、後退した(もっとも遠位の)位置に配置されている。次いで、顎部302、304が、制御ワイヤを使用して開かれる。切断されることになる生体組織が、次いで、顎部302と304との間に配置され、顎部間に生体組織がグリップされるように、顎部が閉じられる。次いで、マイクロウェーブ放出構造312を使用して、マイクロウェーブEMエネルギが、生体組織を焼灼するために、生体組織に印加される。この後に、ブレード306が、顎部302と304との間に保持された生体組織を切断するために、スロット308に沿って、アクスル305に向かって引かれる場合がある。生体組織が切断される前に、この生体組織が焼灼されることから、出血が避けられる場合がある。
【0069】
図4a、
図4b、及び
図4cは、器具先端300内のスロット308に沿ってブレード306を移動するために使用される場合がある安全機構400を示す概略図である。機構400は、ブレード306がカバー310によって隠れている後退位置に向かって、ブレード306が付勢されるように、押圧力がブレード306に常に印加されることを確実にしている。安全機構400は、器具先端が接続された器具シャフトの遠位端の近くで、器具シャフトの内側に配置されている場合がある。説明の目的のために、器具シャフトは、
図4a、
図4b、及び
図4cでは示されていない。
【0070】
図4a、
図4b、及び
図4cは、マイクロウェーブEMエネルギを器具先端に搬送するための、電気外科器具の同軸伝達線402を示している。上述のような、器具先端の顎部を開閉するための第1の制御ワイヤ404及び第2の制御ワイヤ406も、同様に示されている。第3の制御ワイヤ408は、ブレード306をスロット308に沿って前後に移動させるために、器具シャフト内に延びている。第3の制御ワイヤ408を長手方向に、器具シャフトに沿って移動させることにより、ブレード306をスロット308に沿って移動させる。安全機構400は、らせんバネ414によって離間した近位リング410と遠位リング412とを含んでいる。同軸伝達線402は、近位リング410及び遠位リング412、ならびに、らせんバネ414を通っている。遠位リング412は、近位リング410よりも器具先端の近くに位置している。近位リング410と遠位リング412との両方は、3つの溝を有している。これら3つの溝の内、1つは第1の制御ワイヤ404を受領するためのものであり、1つは第2の制御ワイヤ406を受領するためのものであり、1つは第3の制御ワイヤ408を受領するためのものである。
図4bと
図4cとは、近位リング410と遠位リング412とをそれぞれ示す拡大図である。
【0071】
第1の制御ワイヤ404及び第2の制御ワイヤ406は、これら第1の制御ワイヤ404及び第2の制御ワイヤ406が、近位リング410に対して固定されている(すなわち、第1の制御ワイヤ404及び第2の制御ワイヤ406が、近位リングに対してそれらのそれぞれの溝内をスライド可能ではない)ように、近位リング410に固定されている。たとえば、第1の制御ワイヤ404及び第2の制御ワイヤ406は、近位リング410に接着されているか、はんだ付けされている場合がある。しかし、第1の制御ワイヤ404及び第2の制御ワイヤ406は、第1の制御ワイヤ404及び第2の制御ワイヤ406が、遠位リング412に対してそれらの溝内をスライド可能であるように、遠位リング412に対しては固定されていない。逆に、第3の制御ワイヤ408は、近位リング410に
対して固定されておらず、それにより、制御ワイヤ408が、近位リング410に対し、その溝内でスライド可能であるようになっている。しかし、第3の制御ワイヤ408は、遠位リング412に対して固定されており、それにより、制御ワイヤ408が、遠位リングに対し、その溝内でスライド可能ではないようになっている。近位リング410及び遠位リング412は、同軸伝達線402に対して固定されておらず、また、同軸伝達線402に対してスライドできる。
【0072】
安全機構400は、バネ414が近位リング410と遠位リング412とを離間させる付勢力を提供するように、配置されている場合がある。近位方向における近位リング410の長手方向の移動は、顎部によって制限されている。顎部が閉じられている場合、近位リング410は、シャフトに沿って戻るようにさらに移動することができない。この理由は、近位リング410が、第1の制御ワイヤ404及び第2の制御ワイヤ406に対して固定されているためである。第3の制御ワイヤ408に外力が生じていない場合、バネによって判定される近位リング410と遠位リング412との分離は、近位リング410がこの位置にある際に、ブレードが依然としてカバー内に保持されたままであるようになっている場合がある。こうして、ブレードは、遠位リング412を近位リング410により近付くように移動させるように、バネを圧縮する力を第3の制御ワイヤ408に印加することにより、移動され得る。
【0073】
同様に、遠位方向における遠位リング412の長手方向の移動は、カバーによって制限されている場合がある。このカバーは、ブレードの遠位方向の移動に対する物理的なブロックを提供する。ブレードがカバー内に保持されている場合、遠位リング412は、シャフトに沿ってさらに前方には移動することはできない。この理由は、遠位リング412が、第3の制御ワイヤ408に対して固定されているためである。このシナリオでは、顎部は、近位リング410を遠位リング412により近付くように移動させるように、バネを圧縮する力を第1の制御ワイヤ404及び第2の制御ワイヤ406に印加することにより、依然として開かれている場合がある。
【0074】
ブレード及び/または顎部の位置を付勢するための代替的な安全機構が使用される場合があることに留意されたい。たとえば、ブレード306の位置を付勢するのみである安全機構のケースでは、近位リング410は、同軸伝達線402に対して固定されている場合があり、第1の制御ワイヤ404及び第2の制御ワイヤ406は、近位リング410に対してスライド可能である場合がある。遠位リング412は、安全機構400に関して上述したように構成されている場合がある。このため、バネ414の圧縮は、ブレード306を後退位置に向けて付勢するように、上述したように作用するが、顎部302、304の位置を付勢するように、第1の制御ワイヤ404及び第2の制御ワイヤ406に任意の力を加える。
【0075】
本発明の電気外科器具の器具先端は、管の封止に追加される機能を実施するように構成されている場合がある。たとえば、器具先端は、その器具先端の遠位端に取り付けられた、補助的な無線周波数(RF)解剖要素を有する場合がある。
図5は、本発明に係る器具先端500の実施例を示しており、一対の顎部502、504と、顎部502の遠位端に取り付けられたRF解剖要素506とを有している。RF解剖要素506は、セラミックチューブ508に取り付けられた作動電極と、セラミックチューブ508の近位において、顎部502上に形成されているか、顎部502と一体である場合があるリターン電極とを備えている、双極構造である。溝は、セラミックチューブ508を受領するように、顎部502の上側表面上に設けられている。解剖要素506は、器具シャフト512を通って延び、電気外科器具の近位端に位置するRFEMエネルギジェネレータからRFEMエネルギを搬送するように構成された、RF伝達ワイヤ510に接続されている。たとえば、RF伝達ワイヤ510は、PTFEジャケット内に包含された銅ワイヤである場合があ
る。
【0076】
RF解剖要素506は、良好な、流血のない組織の切除及び組織の解剖のために使用することができる。
図5に示す構成では、RF解剖要素506は、顎部502の遠位端に突き出る前縁部を示す。この位置は、側部での解剖と前面での解剖との両方を実施することを可能にすることができる。乾燥した場での処置のシナリオ(すなわち、生理食塩水または他の導電性流体がない)では、リターン電極が、RF解剖要素506上にある作動電極のすぐ近くにあることが望ましい。電極のエリアに接している、露出した組織の割合も、RF解剖要素506の前縁部上で最大の電流密度が生じる所望の方式で、電流が発生することを確実にするためには、重要である。
【0077】
RF解剖要素506が、
図5では顎部502の遠位端に示されているが、RF解剖要素506は、遠位端アセンブリ上の様々な向き及び位置、たとえば、垂直、水平、ある角度で、一方側、及び一方の顎部に、取り付けることができる。
【0078】
ハンドピースの構造
図6aは、本発明の実施形態である、電気外科装置の一部として使用される場合があるハンドピース600を示している。ハンドピース600は、本体602と、作動部604とを含んでいる。本体602は、中空バレル606を含んでいる。中空バレル606内には、作動部604のシャフト608がスライド可能に係合している。本体602は、バレル606に回転可能に接続されたローテータ610をも含んでいる。作動部604は、バレル606及びローテータ610を通って延び、ローテータ610の遠位端から突出する内部シャフト628に接続されている。内部シャフト628は、シャフト608とともに長手方向に移動するが、シャフト608に対して回転可能である。器具シャフト612は、内部シャフト628の遠位端から、ハンドピース600を出る。たとえば、器具シャフト612は、その遠位端において器具先端に接続された、上述の器具シャフト210である場合がある。器具シャフト612は、内部シャフト628とともに回転するように接続されている。
【0079】
作動部604は、本体602に対し、そのシャフト608に沿って、シャフト608のある長さがバレル606内に包含された閉じた位置と、シャフト608のこの長さがバレル606の外側にある開いた位置との、2つの位置間で、長手方向にスライド可能である。
図6aは、作動部604が開いた位置にあるハンドピース600を示している。本体602に対する作動部604の動きの全体の範囲は、約35mmである場合がある。本体602に対する作動部604の動きの長手方向は、内部シャフト628の外に通過するように、器具シャフト612の長手軸に整列している。シャフト608は、作動部604が本体602に対して回転することを防止するために、バレル606の内側で突起(図示せず)と係合する1つまたは複数の溝614を含む場合がある。本体602は、一対のフィンガリング614、616を含んでおり、作動部604は、親指リング618を含んでおり、これらリングは、作動部604を本体602に対して移動する際に、ユーザが把持することを容易にするために使用される場合がある。作動部は、ハンドピース600をジェネレータ(たとえば、ジェネレータ102)に接続するインターフェースケーブル(たとえば、インターフェースケーブル104)を接続するために、入力コネクタ620をさらに含んでいる。入力コネクタ620は、たとえば、QMAコネクタであるか、ジェネレータと相互作用するための任意の他の適切なコネクタである場合がある。
【0080】
図6bは、ハンドピースの内部構造を示すために、特定の部品が示されていない、ハンドピース600の破断図である。特徴が
図6aを参照してすでに上述されている場合、同一の参照符号が使用されている。
【0081】
入力コネクタ620は、作動部604のシャフト608内に包含される回路基板622に電気的に接続されている。入力コネクタ620は、回路基板622と、実質的に直角を形成しており、それにより、作動部と本体602との間の相対移動の方向に対して実質的に垂直である方向に反って向けられているようになっている。この方式で、入力コネクタ620に接続されているケーブルは、ユーザの通路には入らない場合がある。出力コネクタ624は、回路基板622の縁部において取り付けられている。回路基板622は、入力コネクタ620内へのRFEMエネルギの入力をブロックするように構成された回路を包含し、コネクタ620へのあらゆるマイクロウェーブEMエネルギの入力を、出力コネクタ624へ送信する。出力コネクタ624は、同軸伝達線626の嵌合コネクタ627を介して、同軸伝達線626に電気的に接続されている。同軸伝達線626は、ハンドピース600を通って延び、ハンドピース600の遠位端において、器具シャフト612に入る。同軸伝達線626は、たとえば、上述の同軸線226に対応する場合があり、マイクロウェーブEMエネルギを器具先端に搬送する役割を果たす。したがって、回路基板622は、RFEMエネルギが、意図せずに同軸伝達線626に搬送されることを防止する安全機構を提供する。回路基板622は、以下にさらに詳細に記載される。
【0082】
出力コネクタ624と同軸伝達線626との間の電気接続部は、回転可能である。すなわち、この接続部は、同軸伝達線が、その軸周りに、出力コネクタ624に対して回転することを可能にする。回転可能な電気接続部を可能にする適切なコネクタには、QMAコネクタ、マイクロ同軸(MCX)コネクタ、及び、マイクロミニチュア同軸(MMCX)コネクタが含まれる。
【0083】
図6bに示すように、内部シャフト628は、本体602のバレル606とローテータ610との両方を通って延びるとともに、両方に対して長手方向にスライド可能である。内部シャフト628の遠位端は、ローテータ610から突出している。突出部分の長さは、作動部604のシャフト608の位置に依存する。内部シャフト628は、内部シャフト628の外側表面周りの周方向の凹部630により、作動部604のシャフト608に、近位端で接続されている。周方向の凹部630には、シャフト608の内側表面の径方向の突起632が係合する。シャフト608と内部シャフト628との間の接続により、内部シャフト628が、シャフト608に対して長手方向に移動することが防止されるが、内部シャフト628が、その軸周りに、シャフト608に対して回転することを可能にしている。したがって、内部シャフト628は、作動部604を本体602に対して移動することにより、本体602に対して長手方向に前後に移動される場合がある。
【0084】
内部シャフト628は、同軸伝達線626のコネクタ627を、コネクタ627が、回路基板622の出力コネクタ624にしっかりと接続されたままであることを確実にする位置に保持するためのキャビティを有する近位部631を含む場合がある。さらに、同軸伝達線626のコネクタ627は、突起633を含む場合がある。突起633は、内部シャフト628の近位部630のスロットと係合して、コネクタ627が、内部シャフト628に対して移動することを防止するように構成されている。たとえば、突起633は、コネクタ627の一部であるか、コネクタ627に(たとえば、はんだ付けによって)取り付けられたナットである場合がある。突起627は、内部シャフト628の回転が、コネクタ627を回転させるように、コネクタ627を内部シャフト628に対して回転をロックするようにも構成されている場合がある。
【0085】
同軸伝達線626は、内部シャフト628を通り、ここで、内部シャフト628の遠位端において、同軸伝達線626が器具シャフト612に入る。器具シャフト612のある長さは、内部シャフト628の遠位部634内に包含されており、ここでは、器具シャフト612は、内部シャフト628に固定されている。この方式で、内部シャフト628の長手方向の動きと回転方向の動きとの両方が、器具シャフト612に伝達される場合があ
る。たとえば、器具シャフト612は、エポキシ樹脂を使用して、内部シャフト628の遠位部634に接着される場合がある。器具シャフト612と内部シャフト628との間の接着は、エポキシ樹脂を添付する前に、器具シャフト612の表面を粗くすることにより、向上される場合がある。いくつかのケースでは、遠位部634に包含される器具シャフト612の長さは、良好な接着を確実にするために、約22mmである場合がある。
【0086】
ローテータ610は、バレル606に接続されており、それにより、ローテータ610が、バレルに対し、ハンドピース600の長手軸周りに回転可能であるようになっている。図示の実施例では、ローテータ610は、バレル606上の、径方向内側に延びる突起646を受領する、周方向の凹状のチャネル644を有する近位部642を有している。
【0087】
内部シャフト628は、ローテータ610を通るとともに、ローテータ610と係合しており、それにより、内部シャフト628が、その長さに沿ってローテータ610に対してスライド可能であるが、ローテータ610に対して回転可能ではない(すなわち、ローテータ610と内部シャフト628とが、互いに対して回転がロックされている)ようになっている。このことは、回転移動を伝達する任意の種類の内部の係合によって達成され得る。たとえば、内部シャフト628の外側表面と、ローテータ610の内側表面とに形成された、1つまたは複数の長手方向に向けられた、協同する係合要素(たとえば、溝と歯)が存在する場合がある。係合要素は、ローテータ610がバレル606上で回転されると、それぞれ、互いに係合して、内部シャフト628を回転させる。このことは、次いで、内部シャフト628に固定されている器具シャフト612を回転させ、それにより、器具シャフト612の遠位端において接続された器具先端も回転させられ得るようになっている。しかし、内部シャフト628が、作動部604に回転可能には結合されていないことから、作動部604は、ローテータ610の回転によっては回転されない。バレル606に対するローテータ610の回転軸は、内部シャフト628の長手軸に対して整列している場合があり、それにより、ローテータ610の回転が、内部シャフト628を、その長手軸周りに回転させるようになっている。
【0088】
メイン制御ワイヤ636のある長さが、内部シャフト628に包含されており、また、器具シャフト612を通ってハンドピースを出る。メイン制御ワイヤ636は、器具シャフト612の遠位端において接続されている、器具先端の顎部を開閉するために使用される場合がある。たとえば、メイン制御ワイヤ636は、上述のメイン制御ワイヤ242に対応している場合がある。メイン制御ワイヤ636の近位端は、ハンドピース600の本体602に対して固定された状態で保持されている。したがって、作動部604に対する本体602の移動が、メイン制御ワイヤ636を、器具シャフト612に沿って長手方向に移動させる場合がある。この理由は、器具シャフト612の長手方向の位置が、(一方の端部で作動部604に接続され、別の端部で器具シャフト612に接続されている内部シャフト628によって)作動部604に対して固定された状態で保持されており、一方、メイン制御ワイヤ636が、本体602とともに、作動部604に対して、そしてひいては、器具シャフト612に対して移動可能であるためである。
【0089】
このため、ユーザは、メイン制御ワイヤ636を、器具シャフト612に対して前後に移動させ、また、器具シャフト612の遠位端において接続された、器具先端の顎部の開閉を制御するために、本体602に対して作動部604を移動させる場合がある。
【0090】
メイン制御ワイヤ636の近位端を、ハンドピース600の本体602に対して固定された状態で保持するための、いくつかの可能な方法が存在する。図示の実施例では、ブロック638が、メイン制御ワイヤ636の近位端に取り付けられている。ブロック638は、たとえば、メイン制御ワイヤ638の近位端にはんだ付けされたか溶接された金属片である場合がある。ブロック638は、ローテータ610に強固に接続されたホルダ(図
示せず)内にフィットするように構成されている場合があり、それにより、作動部604に対する本体602の長手方向の移動が、ホルダを介してブロック638(そしてひいては、メイン制御ワイヤ636)に伝達されるようになっている。ホルダは、内部シャフト628の側壁の開口を通して、ローテータ610に接続されている場合がある。
【0091】
内部シャフト628内のメイン制御ワイヤ636の一部は、保護チューブ640内に包含されている場合がある。保護チューブは、任意の適切な材料(たとえば、PTFE)で形成されている場合があり、また、ハンドピース600が開かれた際に、メイン制御ワイヤ636が曲がることを防止する役割を果たす場合がある。代替的には、金属チューブが、メイン制御ワイヤ636にはんだ付けされるか溶接されて、同じ効果を達成する場合がある。
【0092】
作動部604と本体602との間の相対的な線形移動により、器具シャフト612に対するメイン制御ワイヤ636の線形移動が直接制御される。このことは、ユーザが、器具シャフト612の遠位端において、器具先端の顎部の開閉を正確に制御することを可能にする場合がある。さらに、ハンドピース600の構成により、ユーザが、片手でハンドピース600を快適に保持し、また、(片手の指をフィンガリング614、616、618に配置することにより)片手で顎部の開閉を制御することを可能にする。ユーザは、器具先端を回転させるために、他方の手で、ローテータ610を同時に回転させる場合もある。入力コネクタ620の向きは、入力コネクタ620に接続された任意のケーブルが、ユーザのハンドピース600の操作を妨げないことを確実にする場合がある。この方式で、ユーザは、ケーブルに順応するために、ハンドピース600を不便な位置で保持することが強要されない。不便な位置での保持は、ユーザの手首にストレスを生じる場合がある。
【0093】
RFブロック回路基板
図7aは、本発明の実施形態である電気外科器具のハンドピース内に包含されている場合がある、回路基板700の上側表面の上面図の概略図を示している。たとえば、回路基板700は、ハンドピース600に関して上述した回路基板622に対応する場合がある。
図7bは、回路基板700の下側表面の斜視図を示しており、一方、
図7cは、回路基板700の上側表面の斜視図を示している。
【0094】
回路基板700は、その下側表面に取り付けられた入力コネクタ702と、回路基板700の縁部の近くに取り付けられた出力コネクタ704とを含んでいる。回路基板700は、その上側表面にRFブロック回路を包含している。このRFブロック回路は、入力コネクタ702から出力コネクタ704に、マイクロウェーブEMエネルギを伝達するように構成されており、一方、あらゆるRFEMエネルギが、入力コネクタ702から出力コネクタ704に伝達されることをブロックする。
【0095】
図7aに示すように、回路基板700上のRFブロック回路は、メインストリップライン706を含んでいる。入力コネクタ704の内側(アクティブな)導電体は、接続ポイント708において、メインストリップライン706に電気的に接続されている。回路基板700を通る穴が、入力コネクタ704の内側導電体を、メインストリップライン706に電気的に接続できるように、設けられている場合がある。メインストリップライン706は、遠位端において、出力コネクタ704の内側導電体710に接続されている。メインストリップライン706には破断部があり、メインストリップライン706を、第1の部分712と第2の部分714とに分割している。メインストリップライン706の第1の部分712と第2の部分714とは、RFブロックコンデンサ716によって接続されている。このRFブロックコンデンサ716は、RFEMエネルギが、メインストリップライン706に沿って、出力コネクタ704に伝達されることをブロックする。たとえば、RFブロックコンデンサ716は、約3.3pFの静電容量を有する場合がある。
【0096】
回路基板700の上側表面と下側表面とは、各々が、それぞれ接地平面718と接地平面720とを含んでいる。接地平面718と720とは、たとえば、それぞれ上側表面と下側表面とのほとんどをカバーする金属層である場合がある。メインストリップライン706は、メインストリップライン706を囲む絶縁バリア722によって接地平面718から絶縁されている。下側表面上の接地平面720は、入力コネクタ702の外側シェルに電気的に接続されている。出力コネクタ704は、出力コネクタ704の外側シェルが、接地平面718と720との両方に電気的に接続されているように、回路基板700上に取り付けられている。入力コネクタ702の外側シェルは、ジェネレータ(たとえば、インターフェースケーブル104を介するジェネレータ102)の接地に接続されるように構成されている場合がある。この方式で、接地平面718、720、及び、出力コネクタ704の外側シェルが、入力コネクタ702に接続されたジェネレータを通して接地されている場合がある。
【0097】
上側表面のRFブロック回路は、RFブロックコンデンサ716の前にメインストリップライン706から分枝したスタブ724をさらに含んでいる場合がある。マイクロウェーブ短絡コンデンサ726は、メインストリップライン706から、(使用されるマイクロウェーブEMエネルギの波長に関して)約4分の1波長離れて、スタブ724上に位置している場合がある。マイクロウェーブ短絡コンデンサ726は、スタブ724と接地平面718との間に接続されており、また、マイクロウェーブEMエネルギのための、接地への短絡として作用する。この方式で、スタブは、メインストリップライン706におけるマイクロウェーブ開回路のように見られる。マイクロウェーブ短絡コンデンサ726は、RFブロックコンデンサ716と同様の静電容量を有する場合がある。マイクロウェーブ短絡コンデンサ726の後には、スタブ724と接地平面718との間に接続された負荷抵抗器728が存在する。RFブロック回路に供給される任意のRFEMエネルギは、負荷抵抗器728に通さなければならず、この負荷抵抗器728では、RFEMエネルギが、RFブロックコンデンサ716により、メインストリップライン706に沿って通過することがブロックされることから、このRFEMエネルギが消散させられる場合がある。負荷抵抗器728の抵抗は、RFEMエネルギがRFブロック回路に誤って供給された場合に、この抵抗が、回路基板700に接続されたジェネレータに、エラー信号を生成させるように、選択される場合がある。負荷抵抗器728は、たとえば、約9.1オームの抵抗を有する場合がある。
【0098】
RFブロックコンデンサ716及びマイクロウェーブ短絡コンデンサ726の静電容量値は、これら値が、マイクロウェーブの周波数(たとえば、5.8GHz)において、合理的に低いインピーダンスを生成し、また、RF周波数(たとえば、400kHz)において、合理的に高いインピーダンスを生成するように、選択される場合がある。換言すると、コンデンサ716及び726は、マイクロウェーブ周波数においては、短絡に近く、RF周波数においては、開回路に近いように、見られるものとする。RFブロック回路は、このため、出力704へのマイクロウェーブエネルギの良好なマッチを提供する場合がある。回路基板700は、任意の適切な回路基板材料で形成されている場合がある。たとえば、回路基板は、Rogers CorporationからのRO3006ラミネートで形成されている場合がある。この材料は、約6の誘電率を有し、回路基板700の設計を小型化することを可能にする。
【0099】
回路基板700は、迷放射線によって生じる干渉を低減するために、メインストリップライン706及びスタブ724に沿って配置された一連のバイア730をさらに含む場合がある。バイア730は、回路基板の貫通穴である場合がある。迷放射線をさらに低減するために、(たとえば、金属で形成された)シールドエンクロージャが、回路基板700の上側表面上に配置されている場合がある。回路基板700は、シールドエンクロージャ
内に完全に包含されている場合もある。回路基板700がハンドピース(たとえば、ハンドピース600)内に包含されている場合、回路基板700がハンドピース内に取り付けられた際に、回路基板700が部分的または全体的に、金属コーティングによって囲まれるように、ハンドピースの内側表面に金属コーティングを添付することにより、回路基板700をシールドすることが可能である場合がある。
【0100】
回路基板700は、RFEMエネルギが誤って電気外科器具内に供給されることがないことを確実にするための、追加の安全機構としての役割を果たす。回路基板700は、望ましくないRFEMエネルギが、患者に損傷を生じ得る場合、RFEMエネルギが、ジェネレータから器具先端に伝達されることを防止する。回路基板が、電気外科器具のハンドピースに直接組み込まれていることから、ユーザが、電気外科器具を誤用している状況(たとえば、ユーザが、間違ったジェネレータをハンドピースに接続した場合)でさえも、このことは有効である。回路基板700が、実施例としてのみ示されており、代替的構成を有する回路基板も、同じ効果を達成するために使用される場合があることに留意されたい。
【0101】
図8Aは、上で説明されたタイプの電気外科鉗子器具で使用することができる、エネルギ搬送構造800の一実施例の概略側面図であり、ここでは、両方の顎部802が、間にグリップされた組織内にエネルギを送るように配置されている。各顎部は、同軸ケーブル808から、上述の方式で遠位のブラケット(図示せず)を通して延びることができる、それぞれのフレキシブル電極ストリップ804を介して、エネルギを受領する。
【0102】
この実施例では、フレキシブル電極ストリップ804は、ストリップラインタイプの伝達線構造を使用して、長手方向にエネルギを搬送する。この構造の断面が、
図8Aに差し込まれた拡大図に示されている。ストリップラインは、中心導電体層822を備えた、柔軟で平らな構造を有している。この中心導電体層822は、その両側の一対の接地平面層818、826から、一対のフレキシブル誘電体層820、824によって分離されている。接地平面層は、それぞれの誘電(絶縁)カバー層816、828により、そのもっとも外側の表面(すなわち、中心導電体層822から外側に向いた表面)がカバーされている。
【0103】
各フレキシブル電極ストリップ804の近位端は、コネクタ806において、同軸ケーブル808の遠位端に接続されている。コネクタ806は、フレキシブル電極ストリップ804と同軸ケーブル808との間の重なっている領域を覆って配置された、スリーブまたはチューブである場合がある。同軸ケーブル808は、誘電材料811によって外側導電体812から分離されている内側導電体810を備えている。
【0104】
内側導電体810及び誘電材料811は、外側導電体812の遠位端を越えて突出している。内側導電体810は、導電コンタクトブロック814に電気的に接続されている。導電コンタクトブロック814は、次いで、各フレキシブル電極ストリップ804内の中心導電体822の露出部分に電気的に接続されている。中心導電体は、第1のカバー層816、下側の接地平面層818、及び、第1のフレキシブル誘電体層820のセクションを、導電コンタクトブロック814と接触する領域において、切除するか、エッチングするか、別様に除去することにより、露出される場合がある。
【0105】
その間に、たとえば上側接地層826の遠位部を露出させ、この遠位部を外側導電体812と、たとえばコネクタ806の内側表面上の導電体層を介して電気的に接触させることにより、外側導電体812が、接地平面層の1つに電気的に接続される。接地平面層818、826は、中心導電体が存在しないストリップラインの側部領域において、フレキシブル誘電体層820、824を通して延びる、導電材料で充填された、1つまたは複数
のバイア(図示せず)により、互いに対して電気的に接続されている場合がある。たとえば、中心導電体層822の幅は、ストリップラインの長さに沿って、接地平面層820、824の幅より小である場合がある。このことは、接地平面層820、824が、中心導電体層上で、その一方側か両側で側縁部を越えて幅方向に延びていることを意味する。バイアは、この側部ゾーンでは、接地平面層820と824との間に形成されている場合がある。
【0106】
ストリップラインの遠位端においては、中心導電体層822、及び、接地平面層の一方または両方が、上述の電極を形成するように、露出されている場合がある。
【0107】
電極ストリップのストリップラインを使用することにより、上述のマイクロストリップの配置よりも絶縁されたエネルギ搬送構造が提供される。ストリップラインにより、エネルギは、信号が外側表面に発せられないように、2つの接地平面層820、824間にほとんど完全に包含される。この配置の利点は、器具の遠位端周りの生理食塩水または他の導電流体の存在が、エネルギの搬送に不利に影響しないことである。この利点は、
図8Bに示すグラフによって証明されている。
図8Bのグラフでは、線830が、生理食塩水が存在する中での反射減衰量が、組織内の反射減衰量を示す線832に非常に類似していることを示している。このことは、各シナリオの電力吸収のブレークダウンによってさらに支持される。
【0108】
【0109】
図9A及び
図9Bは、
図8Aのエネルギ搬送構造で使用するのに適切である例示的電極ストリップ900の上面図及び底面図である。電極ストリップ900は、遠位端及び近位端が整形された、細長い平らなストリップライン904を備えている。この遠位端と近位端とでは、ストリップライン904が、それぞれの顎部と同軸ケーブルとに、それぞれ接続されている。
【0110】
図9Cは、ストリップライン904を通る、拡大断面図である。伝達線構造自体は、一対の柔軟なラミネートされた誘電体基板915、916で形成されている。ラミネートされた誘電体基板の各々は、フレキシブル誘電体(たとえば、ポリイミド)層を備えている。フレキシブル誘電体層は、導電材料、たとえば銅が、その一方または両方の表面上にラミネートされている。ラミネートされた導電材料には、エッチングなどにより、基板上で所望の形状が与えられ得る。
【0111】
この実施例では、上側ラミネート基板915が、第1の誘電体層918と、上側接地平面層916とを備えている。下側ラミネート基板919は、第2の誘電体層922と、中心導電体層920と、下側接地平面層924とを備えている。上側ラミネート基板915と下側ラミネート基板とは、中心導電体層920が、第1の誘電体層918と第2の誘電体層922との間に挟まれるように、たとえば(非導電性)接着剤928を使用して、ともに取り付けられている。中心導電体層920は、ストリップラインに関し、上側接地平面層916及び下側接地平面層924よりも小さい幅を有している。上側ラミネート基板915は、一方側がラミネートされている場合があるか、導電体表面の1つを完全にエッ
チングすることにより、両側のラミネートで形成されている場合がある。
【0112】
伝達線は、ポリイミドなどの柔軟な絶縁材料で形成された、一対の外側カバー層914と926との間に挟まれている。カバー層914、926は、ストリップラインの隣接する表面に接着されている場合がある。
図9Cには示されていないが、上側接地平面層916と下側接地平面層924とは、中心導電体層920から、幅方向に離間した領域において、電極ストリップの近位端及び遠位端に形成された一連のバイア930によって電気的に接続されている。バイアは、上側接地平面層916と下側接地平面層924との間で、第1の誘電体層918及び第2の誘電体層922を通って延び、電気接続を形成するために導電材料を保持している。
【0113】
電極ストリップの近位端は、導電体層が同軸ケーブルに接続されることを可能にするように適合されている。(
図9Aに示す)電極ストリップ900の頂部表面では、上側カバー層914が、上側接地平面層916の一部906を露出させるように、除去されている。この一部906は、次いで、たとえば
図8Aに関して上述した方式と同様の方式で、同軸ケーブルの外側導電体に電気的に接続される。(
図9Bに示す)電極ストリップ900の底部表面では、下側カバー層926、下側接地平面層924、及び第2の誘電体層922が、中心導電体層920の一部908を露出させるように、除去されている。この一部908は、次いで、たとえば
図8Aに関して上述した方式と同様の方式で、同軸ケーブルの内側導電体に電気的に接続される。実際には、チャネル910が、同軸ケーブルの遠位端から突出した内側導電体のある長さを受領するために、上述した3つの層から除去される。中心導電体層920は、この交差部におけるエネルギの損失を低減するか最小化するために、電極ストリップ900の近位端には延びていない。
【0114】
電極ストリップ900の遠位端は、それぞれの顎部において、エネルギ搬送電極を提供するように適合されている。(
図9Aに示す)電極ストリップ900の頂部表面では、上側カバー層914が、上側接地平面層916の一部902を露出させるように、遠位端の前に終端している。この一部906は、次いで、そのそれぞれの顎部に電気的に接続される。(
図9Bに示す)電極ストリップ900の底部表面では、下側カバー層926、下側接地平面層924、及び第2の誘電体層922が、中心導電体層920の一部912を露出させるように、遠位端の前に終端する。この一部912から、エネルギが搬送される。露出部分は、放射される場の形状を制御するために、第1の誘電体層918の縁部から後退している。