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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】フォトマスク及びその検査方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/44 20120101AFI20240507BHJP
   G03F 1/36 20120101ALI20240507BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20240507BHJP
【FI】
G03F1/44
G03F1/36
G03F1/84
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023128395
(22)【出願日】2023-08-07
【審査請求日】2024-02-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522212882
【氏名又は名称】株式会社トッパンフォトマスク
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】影山 清志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 直樹
(72)【発明者】
【氏名】松本 真由子
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-116237(JP,A)
【文献】特開平5-158210(JP,A)
【文献】特開2012-119694(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/20-1/86、7/20-7/24、9/00-9/02
H01L 21/027、21/30、21/64-21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
デバイスパターンを形成されたデバイス領域と、
前記デバイス領域以外に設けられて検査パターンを形成された検査領域と
を有するフォトマスクであって、
下記式(1),(2)で表される、互いに直交する2方向の単振動の周期の変位量x,yを合成することにより得られる閉曲線のリサジュー図形が前記検査パターンとして前記検査領域に形成されている
ことを特徴とするフォトマスク。
x=Acos(at) (1)
y=Bsin(bt+δ) (2)
ただし、A,Bは振幅、a,bは振動数、tは時間、δは初期位相差である。
【請求項2】
前記検査領域は、前記デバイス領域の前記デバイスパターンの線幅に基づいて設定される測長走査型電子顕微鏡(CD-SEM)の測定倍率での観察視野(FOV)内に収まるサイズである
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトマスク。
【請求項3】
前記検査領域は、複数設けられ、
複数の前記検査領域の前記検査パターンは、互いに異なる形状の前記リサジュー図形である
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトマスク。
【請求項4】
前記検査領域は、複数設けられ、
少なくとも1つの前記検査領域の前記検査パターンは、前記リサジュー図形であり、
他の少なくとも1つの前記検査領域の前記検査パターンは、直線のみからなる図形である
ことを特徴とする請求項1に記載のフォトマスク。
【請求項5】
請求項1に記載のフォトマスクの検査方法であって、
前記フォトマスクの前記検査領域内の前記検査パターンをビットマップ画像として撮影する撮影ステップと、
前記ビットマップ画像のデータから、前記検査パターンの中心位置のピクセル座標を求めると共に、前記検査パターンのX軸方向及びY軸方向での各最大位置のピクセル座標を求める座標算出ステップと、
得られた前記ピクセル座標から、前記検査パターンの前記式(1),(2)を構成する前記A及び前記Bの値を求め、前記式(1),(2)に基づいて、前記検査パターンに対応する基準パターンのビットマップ画像を作成する基準パターン作成ステップと、
前記基準パターンの前記ビットマップ画像のデータの中心位置のピクセル座標を、前記検査パターンの前記ビットマップ画像のデータの中心位置のピクセル座標に一致させるように前記基準パターンを前記検査パターン上に重ね合わせるパターン合成ステップと、
重ね合わされた前記基準パターンと前記検査パターンとを比較することにより、評価を行う評価ステップと
を行うことを特徴とするフォトマスクの検査方法。
【請求項6】
前記撮影ステップは、前記検査パターンの全体画像を単一データとして一括して撮影するステップである
ことを特徴とする請求項5に記載のフォトマスクの検査方法。
【請求項7】
前記評価ステップは、
重ね合わされた前記基準パターンと前記検査パターンとの間の距離を規定間隔ごとに求める距離算出ステップと、
求められた前記距離のバラツキを算出するバラツキ算出ステップと、
算出された前記バラツキが、予め設定された範囲内のときに合格と判定し、予め設定された範囲外のときに不合格と判定する判定ステップと
を行うステップである
ことを特徴とする請求項5に記載のフォトマスクの検査方法。
【請求項8】
前記距離算出ステップは、
前記基準パターンの規定間隔ごとの傾きを微分法によってそれぞれ算出し、
算出された各前記傾きに基づいて、前記基準パターンに対する垂線をそれぞれ求め、
各前記垂線の、前記検査パターンの線の縁端までの距離をそれぞれ算出するステップである
ことを特徴とする請求項7に記載のフォトマスクの検査方法。
【請求項9】
請求項7に記載のフォトマスクの検査方法の前記判定ステップで不合格と評価された前記バラツキを、予め設定された前記範囲内となるように、前記フォトマスクの加工条件を調整して前記フォトマスクを製造する
ことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォトマスク及びその検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体を製造する際に使用するフォトマスクは、その半導体に形成するデバイスパターンのデザインが、水平面を構成するX軸及びY軸に平行となるようにCADにより設計されている。しかしながら、設計されたデザインのままフォトマスクにデバイスパターンを形成すると、半導体を製造する際に、光近接効果の影響により、デバイスパターン通りの形状にウエハが露光されず、設計されたデザインの半導体を得ることができない。
【0003】
そのため、光近接効果の影響を予め考慮して、設計されたデザインでウエハを露光可能なデバイスパターンをシミュレーションして求めることにより、フォトマスクに形成するデバイスパターンを予め補正しておく光近接効果補正(OPC)を行うようにしている。
【0004】
このとき、設計されたデザインでウエハを露光可能なフォトマスクのデバイスパターンは、多くの部分で曲線形状になり易い。他方、フォトマスクにデバイスパターンを形成する電子線描画装置は、矩形の可変成形ビーム(VSB)方式が主流となっており、矩形を並べた形状、すなわち、直線を繋いだ形状によりデバイスパターンを形成するものである。そのため、OPC処理により求められたデバイスパターンの曲線を直線で近似させるように置換したデバイスパターンをフォトマスクに形成するようにしている。
【0005】
このようなフォトマスクにおいては、製造の際に、デバイスパターンを形成されるデバイス領域以外のデバイス外領域に、正方形、長方形、L字形、十字形等のX軸及びY軸に平行な直線のみから構成される検査パターンがデバイスパターンの形成と同時に形成されている。そして、この検査パターンを測長走査型電子顕微鏡(CD-SEM)で測長することにより、複雑な形状のデバイスパターンの寸法精度を容易に検査できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-161834号公報
【文献】米国特許第9557655号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、フォトマスクにデバイスパターンを形成する描画装置は、上述したVSB方式から、マルチビーム(MB)方式への移行が検討されている。MB方式は、まず、OPC処理されたデバイスパターンをラスタライズ処理して、すべてピクセル(ドット)に変換したリソグラフィマスクパターンを作成する。そして、このリソグラフィマスクパターンに対応して電子ビームを一度に多数(約26万本)照射して、OPC処理されたデバイスパターンを描画して形成するものである。
【0008】
このようなMB方式によれば、OPC処理されたデバイスパターンの多くの部分に曲線形状があっても、その曲線形状に対応したリソグラフィマスクパターンでデバイスパターンを描画して形成することが容易に実現できる。そのため、より高精度なデバイスパターンの半導体を製造することが可能となる。
【0009】
ところで、曲線形状を有するデバイスパターンを形成したフォトマスクにおいて、デバイスパターンの寸法精度を検査する場合には、次のような方法が考えられている。すなわち、フォトマスクに形成されたデバイスパターンをCD-SEMで撮影して輪郭画像を抽出すると共に、シミュレーションモデルによってリソグラフィマスクパターンから仕上り形状を予測し、輪郭画像と予測形状とを重ね合わせて検査する方法である。
【0010】
しかしながら、CD-SEMで撮影して抽出した輪郭画像は、ノイズが多く、非常に不安定であることから、多数の画像を利用して平均化したり、機械学習によって真の輪郭位置を算出したりしなければならず、精度よく検査することに非常に手間がかかってしまう。
【0011】
このようなことから、本発明は、曲線形状を有するデバイスパターンであっても、精度よく検査することが容易にできるフォトマスク及びその検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前述した課題を解決するための、本発明に係るフォトマスクは、デバイスパターンを形成されたデバイス領域と、前記デバイス領域以外に設けられて検査パターンを形成された検査領域とを有するフォトマスクであって、下記式(1),(2)で表される、互いに直交する2方向の単振動の周期の変位量x,yを合成することにより得られる閉曲線のリサジュー図形が前記検査パターンとして前記検査領域に形成されていることを特徴とする。
【0013】
x=Acos(at) (1)
y=Bsin(bt+δ) (2)
ただし、A,Bは振幅、a,bは振動数、tは時間、δは初期位相差である。
【0014】
また、本発明に係るフォトマスクは、上述したフォトマスクにおいて、前記検査領域が、前記デバイス領域の前記デバイスパターンの線幅に基づいて設定される測長走査型電子顕微鏡(CD-SEM)の測定倍率での観察視野(FOV)内に収まるサイズであると好ましい。
【0015】
また、本発明に係るフォトマスクは、上述したフォトマスクにおいて、前記検査領域が、複数設けられ、複数の前記検査領域の前記検査パターンが、互いに異なる形状の前記リサジュー図形であると好ましい。
【0016】
また、本発明に係るフォトマスクは、上述したフォトマスクにおいて、前記検査領域が、複数設けられ、少なくとも1つの前記検査領域の前記検査パターンが、前記リサジュー図形であり、他の少なくとも1つの前記検査領域の前記検査パターンが、直線のみからなる図形であると好ましい。
【0017】
他方、前述した課題を解決するための、本発明に係るフォトマスクの検査方法は、上述したフォトマスクの検査方法であって、前記フォトマスクの前記検査領域内の前記検査パターンをビットマップ画像として撮影する撮影ステップと、前記ビットマップ画像のデータから、前記検査パターンの中心位置のピクセル座標を求めると共に、前記検査パターンのX軸方向及びY軸方向での各最大位置のピクセル座標を求める座標算出ステップと、得られた前記ピクセル座標から、前記検査パターンの前記式(1),(2)を構成する前記A及び前記Bの値を求め、前記式(1),(2)に基づいて、前記検査パターンに対応する基準パターンのビットマップ画像を作成する基準パターン作成ステップと、前記基準パターンの前記ビットマップ画像のデータの中心位置のピクセル座標を、前記検査パターンの前記ビットマップ画像のデータの中心位置のピクセル座標に一致させるように前記基準パターンを前記検査パターン上に重ね合わせるパターン合成ステップと、重ね合わされた前記基準パターンと前記検査パターンとを比較することにより、評価を行う評価ステップとを行うことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、上述したフォトマスクの製造方法において、前記撮影ステップが、前記検査パターンの全体画像を単一データとして一括して撮影するステップであると好ましい。
【0019】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、上述したフォトマスクの製造方法において、前記評価ステップが、重ね合わされた前記基準パターンと前記検査パターンとの間の距離を規定間隔ごとに求める距離算出ステップと、求められた前記距離のバラツキを算出するバラツキ算出ステップと、算出された前記バラツキが、予め設定された範囲内のときに合格と判定し、予め設定された範囲外のときに不合格と判定する判定ステップとを行うステップであると好ましい。
【0020】
また、本発明に係るフォトマスクの製造方法は、上述したフォトマスクの製造方法において、前記距離算出ステップが、前記基準パターンの規定間隔ごとの傾きを微分法によってそれぞれ算出し、算出された各前記傾きに基づいて、前記基準パターンに対する垂線をそれぞれ求め、各前記垂線の、前記検査パターンの線の縁端までの距離をそれぞれ算出するステップであると好ましい。
【0021】
くわえて、本発明は、上述したフォトマスクの検査方法の前記判定ステップで不合格と判定された前記バラツキを、予め設定された前記範囲内となるように、前記フォトマスクの加工条件を調整して前記フォトマスクを製造することを特徴とするフォトマスクの製造方法もある。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係るフォトマスク及びその検査方法によれば、前記式(1),(2)で表されるリサジュー図形が検査パターンとして検査領域に形成されていることから、原点に中心となる交点を有すると共に、X軸及びY軸を中心に線対称(ミラー対称)となる検査パターン及び基準パターンを数式に基づいて作成して重ね合わせて検査することができる。このため、多様な曲率や向きの曲線形状を有するデバイスパターンであっても、デバイスパターンの曲線形状に対応した検査パターン及び基準パターンによって簡易に検査することができるので、精度よく検査することが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明に係るフォトマスクの主な実施形態の概略構成を示す平面図である。
図2図1のII-II線断面矢線視図である。
図3】検査領域に形成される各種リサジュー図形の検査パターンの平面図である。
図4図1のフォトマスクの製造方法の手順説明図である。
図5】本発明に係るフォトマスクの検査方法の主な実施形態の手順を説明するフロー図である。
図6図1のフォトマスクの検査領域の検査パターンを測長走査型電子顕微鏡で測長したときの観察視野内の説明図である。
図7図1のフォトマスクの検査領域の検査パターンに対応する基準パターンの説明図である。
図8図6の検査パターンと図7の基準パターンとを重ね合わせたときの説明図である。
図9図8の検査方法の説明図である。
図10】本発明に係るフォトマスクの他の実施形態の概略構成を示す平面図である。
図11図10の長方形状(ライン)の検査パターンを形成した検査領域の抽出拡大図である。
図12図10の正方形状(スペース)の検査パターンを形成した検査領域の抽出拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係るフォトマスク及びその検査方法の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明は、図面に基づいて説明する以下の各実施形態のみに限定されるものではなく、各実施形態で説明する種々の技術的事項を必要に応じて組み合わせることや置換することが適宜可能なものである。
【0025】
[主な実施形態]
本発明に係るフォトマスク及びその検査方法の主な実施形態を図1~9に基づいて説明する。
【0026】
図1,2に示すように、ガラス等の基板110上には、クロム等の遮光膜120が設けられている。遮光膜120には、デバイスパターンを形成されるデバイス領域121と、検査パターンを形成される検査領域122とが設けられている。デバイス領域121は、半導体等のデバイスに形成するデザインを光近接効果補正(OPC)したデバイスパターンが形成される。
【0027】
検査領域122は、デバイス領域121以外のエリアに設けられ、下記式(1),(2)で表される、互いに直交する2方向(X軸方向及びY軸方向)の単振動の周期の変位量x,yを合成することにより得られる閉曲線のリサジュー図形が検査パターンとして形成されている。
【0028】
x=Acos(at) (1)
y=Bsin(bt+δ) (2)
ただし、A,Bは振幅、a,bは振動数、tは時間、δは初期位相差である。
【0029】
ここで、例えば、A,Bを1として、δを0とし、a=1,b=2としたときには、図3(A)に示すような中心に交点を有する対称性のある閉曲線のリサジュー図形の検査パターン122Aとなり、a=3,b=2としたときには、図3(B)に示すような中心に交点を有する対称性のある閉曲線のリサジュー図形の検査パターン122Bとなり、a=3,b=4としたときには、図3(C)に示すような中心に交点を有する対称性のある閉曲線のリサジュー図形の検査パターン122Cとなり、a=5,b=4としたときには、図3(D)に示すような中心に交点を有する対称性のある閉曲線のリサジュー図形の検査パターン122Dとなる。
【0030】
なお、X軸方向の変位量xを表す上記式(1)においては、余弦(cos)を使用し、Y軸方向の変位量yを表す上記式(2)においては、正弦(sin)を使用しているため、X軸方向とY軸方向とで位相差π/2が元々生じている。そのため、初期位相差δを0(又はπ)にして実際の位相差をπ/2とすることにより、対称性を有する閉曲線のリサジュー図形としている。
【0031】
他方、X軸方向の変位量x及びY軸方向の変位量yの両方共に正弦(sin)又は余弦(cos)を使用して表されている場合には、X軸方向とY軸方向とが同相となる。そのため、初期位相差δをπ/2にして実際の位相差をπ/2とすることにより、対称性を有する閉曲線のリサジュー図形とすることができる。
【0032】
このような上記式(1),(2)において、上記A,Bの値及び上記a,bの値は、OPCによって得られたデバイスパターンの形状、すなわち、曲線部分の曲率や向き等の条件に応じて適宜設定される。
【0033】
また、検査領域122は、デバイス領域121のデバイスパターンの線幅に基づいて設定される測長走査型電子顕微鏡(CD-SEM)の測定倍率での観察視野(FOV)内に収まるサイズとなっている。具体的には、例えば、デバイス領域121のデバイスパターンの線幅が60nmであると、適切なCD-SEMの測定倍率が5万倍(50k倍)程度となるため、検査領域122は、一辺の長さが2.8~3μm程度の四角形状に設定される。
【0034】
このような本実施形態に係るフォトマスク100は、従来と同様にして製造することができる。例えば、図4に示すように、ガラス等の基板110上にクロム等を蒸着させて遮光膜120を設けてフォトマスクブランクスを作製した後(図4(A)参照)、遮光膜120上に感光性樹脂溶液を均一に塗布して乾燥させてレジスト膜130を形成する(図4(B)参照)。
【0035】
次に、検査パターン及びOPC処理されたデバイスパターンをすべてピクセル(ドット)に変換したリソグラフィマスクパターンをレジスト膜130上に描画するようにMBを照射した後、現像処理してレジスト膜130のMB照射部分を除去する(図4(C)参照)。
【0036】
続いて、遮光膜120の、レジスト膜130からの露出部分を反応性ガス等によってドライエッチングして除去した後(図4(D)参照)、レジスト膜130をすべて除去して洗浄する(図4(E)参照)。これにより、デバイス領域121及び検査領域122を形成された遮光膜120を基板110上に有するフォトマスク100を得ることができる。
【0037】
このように製造された本実施形態に係るフォトマスク100の検査方法を図5に基づいて以下に説明する。
【0038】
まず、製造されたフォトマスク100をCD-SEMにセットする(図5中、設置ステップS1)。次に、デバイス領域121のデバイスパターンの線幅(例えば、60nm)に対応する測定倍率(例えば、5万倍(50k倍))にCD-SEMを設定すると共に、検査領域122が観察視野(FOV)内に位置するようにCD-SEMを調整する。このとき、検査領域122は、CD-SEMによる測定倍率に対応した長さ(例えば、2.8~3μm)となっているので、FOV内に領域の内部全体が収まるようになる(図5中、調整ステップS2)。
【0039】
具体的には、前記式(1),(2)において、例えば、A,Bを1μmとし、a=3,b=4とし、δを0とすると共に、線幅を60nmとすると、図6に示すような検査パターン122Cを形成された検査領域122をFOV内に収めることができる。そして、検査領域122を撮影することにより、検査領域122内の検査パターン122Cの全体をビットマップ画像の単一(同一)データとして一括して取得する(図5中、撮影ステップS3)。
【0040】
続いて、得られたビットマップ画像のデータから、検査パターン122Cの中心位置Ocのピクセル座標を求めると共に、検査パターン122CのX軸方向及びY軸方向での各最大位置のピクセル座標を求める(図5中、座標算出ステップS4)。
【0041】
得られた上記ピクセル座標から、ビットマップ画像上における検査パターン122Cの前記式(1),(2)を構成するA,Bの値を求め、前記式(1),(2)に基づいて、検査パターン122Cに対応する図7に示すような基準パターン122Csを作成する(図5中、基準パターン作成ステップS5)。
【0042】
そして、作成された基準パターン122Csのビットマップ画像のデータの中心位置Osのピクセル座標を、検査パターン122Cのビットマップ画像のデータの中心位置Ocのピクセル座標に一致させるように基準パターン122Csを検査パターン122C上に重ね合わせる(図5中、パターン合成ステップS6)。これにより、図8に示すように、検査パターン122Cに基準パターン122Csによるセンタラインを設けることができる。
【0043】
次に、重ね合わされた基準パターン122Csと検査パターン122Cとを比較することによって評価する評価ステップを行う。具体的には、基準パターン122Csの規定間隔ごとの傾きを微分法によってそれぞれ算出し、算出された各傾きに基づいて、図9に示すように、基準パターン122Csに対する垂線Lvをそれぞれ設定し、各垂線Lvの、検査パターン122Cの線の縁端までの距離をそれぞれ算出する。これにより、基準パターン122Csと検査パターン122Cとの間の距離が規定間隔ごとに求められる(図5中、距離算出ステップS7)。
【0044】
そして、求められた規定間隔ごとの前記距離のバラツキを算出して(図5中、バラツキ算出ステップS8)、バラツキが、予め設定された範囲内であるか否かを判定し(図5中、判定ステップS9)、範囲内であれば合格とし、範囲外であれば不合格とする。
【0045】
つまり、原点に中心となる交点を有すると共に、X軸及びY軸を中心に線対称(ミラー対称)となり、X軸方向及びY軸方向に拡縮可能な閉曲線、すなわち、リサジュー図形を描画できる数式に基づいて、検査パターン及び基準パターンを作成し、重ね合わせて検査するようにしたのである。これにより、多様な曲率や向きの曲線形状を有するデバイスパターンであっても、デバイスパターンの曲線形状に対応した検査パターン122C及び基準パターン122Csによって簡易に検査することができる。
【0046】
したがって、本実施形態に係るフォトマスク100及びその検査方法によれば、曲線形状を有するデバイスパターンであっても、精度よく検査することが容易にできる。
【0047】
また、検査パターン122C及び基準パターン122Csは、X軸方向及びY軸方向に拡縮可能であることから、デバイス領域121のデバイスパターンの線幅に対応するCD-SEMの測定倍率の設定によって、検査領域122Cの検査パターン122Csの全体もFOV内に収めることができる。このため、検査パターン122Csを分割して撮影する必要がないので、検査に要する手間を削減することができると共に、分割画像の接続ずれによる検査精度の低下も防止することができる。
【0048】
また、互いに原点に中心となる交点を有する閉曲線であることから、撮影によって得られる検査パターン122Cの中心位置Ocと、計算式によって得られる基準パターン122Csの中心位置Osとをビットマップ画像上で一致させることにより簡単に重ね合わせることができる。このため、撮影画像と数式画像とを合成することが簡単にできる。
【0049】
また、判定ステップS9で不合格と判定されたバラツキを、予め設定された前記範囲内となるように加工条件を調整して製造する、すなわち、検査結果を製造条件にフィードバックすることにより、フォトマスク100を常に高精度で製造することができる。
【0050】
具体的には、例えば、リサジュー図形はX軸及びY軸を中心に線対称(ミラー対称)であることから、検査パターン122Cの対称性を検査することにより、MBの偏心度合いを求めることができる。このようにして求められた偏心度合いを、次にフォトマスクを製造するときの描画装置のMB照射ヘッドの角度制御にフィードバックする。これにより、フォトマスクを常に高精度で製造することができる。
【0051】
[他の実施形態]
なお、前述した実施形態においては、検査パターン122Cを形成した検査領域122を1つ設けたフォトマスク100の場合について説明したが、本発明はこれに限らない。他の実施形態として、例えば、必要に応じて、検査パターン122Cを形成した検査領域122を複数設けたフォトマスクとすることや、互いに異なる形状のリサジュー図形の検査パターン122A~122Dをそれぞれに形成した複数の検査領域122を設けたフォトマスクとすることも適宜可能である。
【0052】
さらに、例えば、図10に示すように、リサジュー図形の検査パターンを形成した検査領域122を複数設けるだけでなく、正方形、長方形、L字形、十字形等のX軸及びY軸に平行な直線のみからなる図形(直線図形)の検査パターンを形成した検査領域123,124を複数設けることも可能である。具体的には、例えば、図11に示すような長方形状(ライン)の検査パターン123Aを形成した検査領域123や、図12に示すような正方形状(スペース)の検査パターン124Aを形成した検査領域124をそれぞれ複数設けることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明に係るフォトマスク及びその検査方法は、精度よく検査することが容易にできるので、各種産業において、極めて有益に利用することができる。
【符号の説明】
【0054】
100 フォトマスク
110 基板
120 遮光膜
121 デバイス領域
122 検査領域
122A~122D 検査パターン(リサジュー図形)
122Cs 基準パターン(リサジュー図形)
123 検査領域
123A 検査パターン(ライン)
124 検査領域
124A 検査パターン(スペース)
【要約】
【課題】曲線形状を有するデバイスパターンであっても、精度よく検査することが容易にできるフォトマスク及びその検査方法を提供する。
【解決手段】デバイスパターンを形成されたデバイス領域121と、デバイス領域121以外に設けられて検査パターンを形成された検査領域122とを有するフォトマスク100であって、下記式(1),(2)で表される、互いに直交する2方向の単振動の周期の変位量x,yを合成することにより得られる閉曲線のリサジュー図形が検査パターン122Cとして検査領域122に形成されている。
x=Acos(at) (1)
y=Bsin(bt+δ) (2)
ただし、A,Bは振幅、a,bは振動数、tは時間、δは初期位相差である。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12