(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ファン装置
(51)【国際特許分類】
F04D 25/16 20060101AFI20240507BHJP
F04D 29/10 20060101ALI20240507BHJP
F04D 29/38 20060101ALI20240507BHJP
F04D 29/30 20060101ALI20240507BHJP
F04D 29/58 20060101ALI20240507BHJP
F23L 17/00 20060101ALI20240507BHJP
F24H 9/02 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
F04D25/16
F04D29/10 A
F04D29/38 A
F04D29/30 C
F04D29/58 P
F23L17/00 601C
F24H9/02 301D
(21)【出願番号】P 2020098057
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】中谷 立好
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-052321(JP,A)
【文献】特開2010-127236(JP,A)
【文献】特開平10-232053(JP,A)
【文献】特開2018-044477(JP,A)
【文献】実開昭54-181006(JP,U)
【文献】特開2020-031523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 25/16
F04D 29/10
F04D 29/38
F04D 29/30
F04D 29/58
F23L 17/00
F24H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料ガスを燃焼させる燃焼装置に接続されて、燃焼用空気を供給すると共に、燃焼後の排ガスを排出することが可能なファン装置において、
複数の翼片が回転軸に対して放射状に配置された羽根車と、
前記羽根車を収容するケーシングと、
前記羽根車の前記回転軸にシャフトが固定されて、該羽根車を回転させるモータと、
前記ケーシングで前記回転軸の軸方向の一端面に形成されて前記シャフトを挿通する挿通孔と、
前記ケーシングで前記一端面とは反対側の他端面に開口した吸気口と、
前記ケーシングの周面から延設された送風路と
を備え、
前記モータの駆動で前記羽根車を回転させることで、前記吸気口から吸い込んだ気体を前記送風路へと送り出し、
前記ケーシングの前記一端面と前記モータとの間に配置され、前記羽根車の回転に伴って回転し、前記一端面に向けて気流を発生させる複数の軸流羽根
と、径方向の内側から外側に向けて気流を発生させる複数の遠心羽根とが一体に設けられた回転翼が前記シャフトに取り付けられて
おり、
前記回転翼は、前記シャフトに対して略垂直に取り付けられた回転円板と、該回転円板に前記シャフトを囲んで形成された複数の貫通孔とを有し、
前記複数の遠心羽根は、前記シャフトに対して放射状に、前記回転円板における前記モータ側の面から立設されており、
前記軸流羽根は、前記回転円板の回転に伴って、該回転円板と前記モータとの間の空気を、前記貫通孔を通して前記ケーシング側に送ることが可能に設けられている
ことを特徴とするファン装置。
【請求項2】
請求項1に記載のファン装置において、
前記軸流羽根は、前記回転円板の回転方向における前縁側よりも後縁側が前記ケーシング側に位置するように該回転円板に対して傾斜している
ことを特徴とするファン装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のファン装置において、
前記回転翼は、前記軸流羽根の枚数と前記遠心羽根の枚数とが異なっている
ことを特徴とするファン装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーシング内の羽根車を外部のモータの駆動で回転させるファン装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給湯器のように燃料ガスを燃焼させる燃焼装置には、燃焼用空気を供給すると共に、燃焼後の排ガスを排出するためのファン装置が接続されているのが一般的である。例えば、特許文献1のようにファン装置が燃焼装置の排気側に接続されて排ガスを吸引する引張式や、特許文献2のようにファン装置が燃焼装置の給気側に接続されて燃焼用空気を送り込む押込式が知られている。
【0003】
こうしたファン装置は、複数の翼片が回転軸に対して放射状に配置された羽根車や、羽根車を収容するケーシングや、羽根車の回転軸にシャフトが固定されて羽根車を回転させるモータなどを備えている。ケーシングには、回転軸の軸方向の一端面にシャフトを挿通する挿通孔が設けられると共に、一端面とは反対側の他端面に吸気口が設けられており、周面から送風路が延設されている。モータの駆動で羽根車が回転すると、遠心力で羽根車の内側から外側に気体が吹き出すので、吸気口から吸い込んだ気体を送風路へと送り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-232053号公報
【文献】特開2005-180179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述のようなファン装置では、ケーシングの一端面の挿通孔とモータのシャフトとの間に隙間が存在し、送風路側で閉塞が発生するなどしてケーシング内の圧力が高まると、この隙間からケーシング内の気体が漏れ出てしまうことがあるという問題があった。特に、燃焼装置の排気側に接続される引張式のファン装置では、排ガスが隙間から漏れ出ることになり、また、燃焼装置の給気側に接続される押込式のファン装置でも、燃焼装置に送り込まれるはずの気体が隙間から漏れ出ることがある。
【0006】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、ケーシングの挿通孔とモータのシャフトとの隙間からの気体の漏れを抑制することが可能なファン装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために本発明のファン装置は次の構成を採用した。すなわち、
燃料ガスを燃焼させる燃焼装置に接続されて、燃焼用空気を供給すると共に、燃焼後の排ガスを排出することが可能なファン装置において、
複数の翼片が回転軸に対して放射状に配置された羽根車と、
前記羽根車を収容するケーシングと、
前記羽根車の前記回転軸にシャフトが固定されて、該羽根車を回転させるモータと、
前記ケーシングで前記回転軸の軸方向の一端面に形成されて前記シャフトを挿通する挿通孔と、
前記ケーシングで前記一端面とは反対側の他端面に開口した吸気口と、
前記ケーシングの周面から延設された送風路と
を備え、
前記モータの駆動で前記羽根車を回転させることで、前記吸気口から吸い込んだ気体を前記送風路へと送り出し、
前記ケーシングの前記一端面と前記モータとの間に配置され、前記羽根車の回転に伴って回転し、前記一端面に向けて気流を発生させる複数の軸流羽根と、径方向の内側から外側に向けて気流を発生させる複数の遠心羽根とが一体に設けられた回転翼が前記シャフトに取り付けられており、
前記回転翼は、前記シャフトに対して略垂直に取り付けられた回転円板と、該回転円板に前記シャフトを囲んで形成された複数の貫通孔とを有し、
前記複数の遠心羽根は、前記シャフトに対して放射状に、前記回転円板における前記モータ側の面から立設されており、
前記軸流羽根は、前記回転円板の回転に伴って、該回転円板と前記モータとの間の空気を、前記貫通孔を通して前記ケーシング側に送ることが可能に設けられている
ことを特徴とする。
【0008】
このような本発明のファン装置では、羽根車の回転に伴って回転翼が回転すると、軸流羽根によるケーシングの一端面に向かう気流が、シャフトを囲む複数の貫通孔を通して発生する。この気流によって一端面と回転翼との間では圧力が上昇して正圧に保たれ、特に、挿通孔の周囲の正圧を高めておくことが可能となる。そのため、送風路側で閉塞が発生するなどしてケーシング内の圧力が高まった場合でも、一端面の挿通孔とモータのシャフトとの隙間から気体が漏れ出ることを抑制することができる。
【0012】
また、回転翼が回転すると、回転円板におけるモータ側の面では、遠心羽根によって回転方向に押される空気に遠心力が働くため、径方向の内側から外側に向けて吹き出す気流が発生し、この気流によってモータを冷却しながら、上述のように一端面の挿通孔とモータのシャフトとの隙間からの気体の漏れを抑制することができる。特に、引張式のファン装置では、高温の排ガスを吸引してケーシングが高温になり、その輻射熱によってモータの温度が上昇し易いが、ケーシングとモータとの間に径方向の内側から外側に向かう気流が存在することによって、輻射熱で熱せられた空気が径方向の外側に追い出されるため、ケーシングからモータへの熱の伝わりが抑制され、モータの昇温を低減することが可能となる。
【0015】
また、上述した本発明のファン装置では、軸流羽根を回転円板の回転方向における前縁側よりも後縁側がケーシング側に位置するように回転円板に対して傾斜させておいてもよい。
【0016】
このようにすれば、回転翼が回転すると、軸流羽根の傾斜に沿って空気がケーシング側に押し出されるので、ケーシングの一端面に向かう気流を発生させることができる。
【0017】
こうした本発明のファン装置では、回転翼における軸流羽根の枚数と遠心羽根の枚数とを異ならせてもよい。
【0018】
一般に、n枚の羽根を有する回転体が回転すると、羽根に起因するn次成分(回転周波数のn倍の周波数)の騒音が顕著に発生する。そのため、軸流羽根の枚数と遠心羽根の枚数とを異ならせておけば、軸流羽根に起因する騒音と、遠心羽根に起因する騒音との共鳴を避けて、回転翼全体での騒音の低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施例のファン装置10が接続された燃焼装置の例として給湯器1の大まかな構成を示した説明図である。
【
図2】本実施例のファン装置10を分解した状態を示した斜視図である。
【
図3】本実施例のファン装置10を、モータ40のシャフト41を含む平面で切断した断面図である。
【
図4】本実施例の回転翼50の形状を示した説明図である。
【
図5】本実施例の回転翼50の回転によって生じる気流を示した説明図である。
【
図6】第1変形例の回転翼50の形状を示した断面図である。
【
図7】第2変形例の回転翼50の形状を示した斜視図である。
【
図8】第3変形例の回転翼50を分解した状態を示した斜視図である。
【
図9】ファン装置10が給気側に接続された押込式の給湯器1の大まかな構成を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本実施例のファン装置10が接続された燃焼装置の例として給湯器1の大まかな構成を示した説明図である。図示されるように給湯器1の筐形の缶体2の内部には、燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスを燃焼させるバーナ3が搭載されており、ガス供給路4を通じて燃料ガスがバーナ3に供給される。
【0021】
バーナ3の上方には、熱交換器5が設けられている。熱交換器5は、一端に給水通路6が接続されており、他端に給湯通路7が接続されている。給水通路6を通じて供給された水は、バーナ3での燃焼後の排ガスとの熱交換器5における熱交換によって加熱され、湯となって給湯通路7に流出する。
【0022】
缶体2の上部にはファン装置10の吸入側が接続されており、ファン装置10の吐出側に排気ダクト8が接続されている。また、缶体2の下部には空気の取込口9が開口している。ファン装置10が作動すると、熱交換器5を通過した排ガスを吸引して排気ダクト8へと送り出し、排気ダクト8を通った排ガスは末端の排気口8aから外部に排出される。このように本実施例の給湯器1は、ファン装置10が燃焼装置の排気側に接続されて排ガスを吸引する引張式であり、排ガスの排出に伴って取込口9から空気が取り込まれ、バーナ3に燃焼用空気が供給される。
【0023】
図2は、本実施例のファン装置10を分解した状態を示した斜視図である。図示されるようにファン装置10は、回転することで風を起こす羽根車20や、羽根車20を収容するケーシング30や、羽根車20を回転させるモータ40などを備えている。
【0024】
羽根車20は、複数の翼片21が回転軸に対して放射状に所定の間隔で配置されて円筒形状になっている。これらの翼片21は、回転軸の軸方向の一端(図中の手前側)が円形の回転基板22の外縁部分に接合されており、他端(図中の奥側)が環状の支持板23に接合されている。回転基板22の中央(回転軸)にはモータ40のシャフト41が固定され、モータ40の駆動によって羽根車20がシャフト41を中心に回転する。
【0025】
ケーシング30は、板金で凹形に加工された第1ケース31と、同じく板金で第1ケース31と対向する凹形に加工された第2ケース32とを外縁部分で接合して形成される。ケーシング30における羽根車20の回転軸方向の一端面であり、第1ケース31で回転基板22に対向する基底面30aには、モータ40のシャフト41を挿通する挿通孔33が設けられている。一方、ケーシング30における基底面30aとは反対側の他端面であり、第2ケース32で支持板23に面する被覆面30bには、缶体2の上部に接続される吸気口34が設けられている。
【0026】
また、ケーシング30における羽根車20の外周を囲む周面30cは、羽根車20の回転軸に対する半径が羽根車20の回転方向に大きくなる形状に形成されている。そして、周面30cの半径が大きい側から接線方向に延設して送風路35が設けられており、送風路35の端部の吐出口36に排気ダクト8が接続される。
【0027】
加えて、第1ケース31には、基底面30aと間隔を設けてモータ40を支持するための複数(図示した例では3つ)の支持台38が、ケーシング30の外側から基底面30aに取り付けられている。モータ40は、基底面30aに対向する側の端部に径方向の外側に張り出して複数(図示した例では3つ)の継手42を有しており、この継手42が支持台38にビス(図示省略)を用いて固定される。
【0028】
さらに、本実施例のファン装置10におけるケーシング30の基底面30aとモータ40との間には、モータ40のシャフト41に取り付けられ、羽根車20の回転に伴って回転することで気流を発生させる複数の羽根が設けられた回転翼50が設置されている。尚、この回転翼50の形状については、別図を用いて後述する。
【0029】
図3は、本実施例のファン装置10を、モータ40のシャフト41を含む平面で切断した断面図である。尚、
図3では、ファン装置10の上下の配置を
図1に対して反転している。前述したようにケーシング30は、第1ケース31と第2ケース32とを外縁部分で接合して形成されており、第1ケース31側の基底面30aには、モータ40のシャフト41を挿通する挿通孔33が設けられている。
【0030】
モータ40のシャフト41は、回転基板22の中央に固定されており、モータ40の駆動によって羽根車20が回転すると、遠心力によって複数の翼片21のそれぞれの間に羽根車20の径方向の内側から外側に向けて吹き出す気流が生じる。すると、羽根車20の内側が負圧になるので、缶体2の上部(排気側)に接続された吸気口34から排ガスが環状の支持板23の中央開口部を通って羽根車20の内側に吸い込まれる。図中の白抜きの矢印は、排ガスの流れを模式的に表している。そして、羽根車20の外側に吹き出した排ガスは、ケーシング30の周面30cに沿って進み、送風路35を通って吐出口36に接続された排気ダクト8へと送り出される。
【0031】
このようなファン装置10が接続された給湯器1では、排気ダクト8に経年による腐食あるいは埃等の堆積が生じたり、排気口8aに強い風が吹き付けたりするなどして閉塞が発生する場合がある。こうした送風路35側の閉塞によって吐出口36から排ガスを送り出せず、ケーシング30内(羽根車20とケーシング30との間)の圧力が高まると、基底面30aの挿通孔33とモータ40のシャフト41との隙間から排ガスが漏れ出てしまうことがある。そこで、本実施例のファン装置10では、ケーシング30の基底面30aとモータ40との間に、支持台38で間隔を設けて、以下のような回転翼50を羽根車20と連動して回転可能に設置することにより、挿通孔33とシャフト41との隙間からの排ガスの漏れを抑制することが可能となっている。
【0032】
図4は、本実施例の回転翼50の形状を示した説明図である。まず、
図4(a)には、回転翼50の全体が斜視図で示されている。回転翼50は、モータ40のシャフト41に対して略垂直に取り付けられる円形の回転円板51を有しており、回転円板51の中央には、シャフト41を通す取付孔52が設けられている。図示されるように、この取付孔52を囲んで複数(図示した例では7つ)の貫通孔53が、回転円板51の中央側に寄せて等間隔に設けられると共に、各貫通孔53には、軸流羽根54が設けられている。
【0033】
本実施例の軸流羽根54は、回転円板51からの切り起こしによって形成されている。すなわち、軸流羽根54は、回転翼50の回転方向(図中に太線の矢印で示される時計回り)における前縁側に繋ぎ部分を残して輪郭が回転円板51から切り抜かれており、この繋ぎ部分でケーシング30側(図中の上側)に折り曲げられている。そして、回転円板51から軸流羽根54が切り抜かれた輪郭の内側部分が貫通孔53になっている。
【0034】
図4(b)には、
図4(a)のP-Pの位置で回転翼50を切断した断面が示されている。図示されるように軸流羽根54は、回転翼50の回転方向における前縁側よりも後縁側がケーシング30側(図中の上側)に位置するように回転円板51に対して傾斜している。モータ40の駆動で回転翼50が回転すると、回転円板51におけるケーシング30側の面では、軸流羽根54の傾斜に沿って空気がケーシング30(基底面30a)側に押し出されるので、図中に白抜きの矢印で示されるように、基底面30aに向かう回転軸方向の気流が発生する。すると、回転翼50の回転方向における軸流羽根54の後方では、圧力が低下して負圧となるので、回転円板51におけるモータ40側から貫通孔53を通ってケーシング30側に空気が流れ込む。
【0035】
また、
図4(a)に示されるように本実施例の回転翼50には、軸流羽根54に加えて、回転円板51の貫通孔53よりも径方向の外側の位置に、複数(図示した例では9枚)の遠心羽根56がシャフト41に対して放射状に、回転円板51におけるモータ40側の面から立設されている。
【0036】
図示した遠心羽根56は、回転円板51の外縁に沿って複数(図示した例では9つ)の切欠き55を設ける際に、回転翼50の回転方向における切欠き55の前縁側を切断せずに残しておき、その残した部分でモータ40側(図中の下側)に折り曲げられており、回転円板51に対して遠心羽根56が略垂直になっている。そして、モータ40の駆動で回転翼50が回転すると、回転円板51におけるモータ40側の面では、遠心羽根56によって回転方向に押される空気に遠心力が働くため、回転翼50の径方向の内側から外側に向けて吹き出す気流が発生する。
【0037】
図5は、本実施例の回転翼50の回転によって生じる気流を示した説明図である。図では、モータ40のシャフト41を含む平面でファン装置10を切断した断面を表しており、ケーシング30の基底面30aとモータ40との間を拡大すると共に、基底面30aとモータ40との間隔を設けるための支持台38の図示を省略している。また、図中のシャフト41よりも右側に示した白抜きの矢印は、回転翼50の回転によって生じる気流を模式的に表している。
【0038】
前述したように本実施例の回転翼50は、軸流羽根54および遠心羽根56の2種類の羽根を備えており、モータ40の駆動による羽根車20の回転に伴って回転翼50が回転すると、軸流羽根54は、回転円板51におけるモータ40側から貫通孔53を通して基底面30a側へと空気を送る(押し込む)流れを発生させる。このような基底面30aに向かう回転軸方向の気流によって、基底面30aと回転円板51との間では圧力が上昇して正圧に保たれるため、基底面30aの挿通孔33とモータ40のシャフト41との隙間から排ガスが漏れ出ることを抑制することができる。特に、本実施例の回転翼50では、複数の貫通孔53が回転円板51の中央に寄せて(取付孔52を囲んで)配置されており、挿通孔33の周辺の正圧を高めておくことによって、排ガスの漏れを抑制する効果を向上させることが可能となる。
【0039】
一方、遠心羽根56は、回転円板51におけるモータ40側で径方向の内側から外側に向けて吹き出す気流を発生させる。このとき、遠心羽根56よりも径方向の内側では圧力が低下するものの、モータ40側から空気が流れ込んで補給されるため負圧が進行することはない。加えて、基底面30aと回転円板51との間には、上述した軸流羽根54による空気の押し込みで正圧が高まると、この正圧を径方向の外側に逃がす気流が生じる。
【0040】
引張式の給湯器1の排気側に接続されて高温の排ガスを吸引するファン装置10では、ケーシング30が高温になり、その輻射熱によってモータ40の温度が上昇してしまう。ただし、上述のようにケーシング30とモータ40との間に径方向の内側から外側に向かう気流が存在することにより、輻射熱で熱せられた空気が径方向の外側に追い出されるため、ケーシング30からモータ40への熱の伝わりが抑制され、モータ40の昇温を低減することが可能となる。また、回転翼50の遠心羽根56よりも径方向の内側にはモータ40側から新たな空気が流れ込んで補給されるため、この気流によってモータ40を冷却する効果を得ることができる。
【0041】
このように本実施例の回転翼50には、複数の軸流羽根54と複数の遠心羽根56とが一体に設けられており、回転翼50が回転すると、ケーシング30の基底面30aに向けて回転軸方向の気流を発生させると共に、径方向の内側から外側に向けて気流を発生させることができ、これらの気流によって、基底面30aの挿通孔33とモータ40のシャフト41との隙間からの排ガスの漏れを抑制しながら、モータ40の昇温を抑制することが可能となる。
【0042】
また、本実施例の回転翼50では、軸流羽根54の枚数(7枚)と、遠心羽根56の枚数(9枚)とを意図的に異ならせている。一般に、n枚の羽根を有する回転体が回転すると、羽根に起因するn次成分(回転周波数のn倍の周波数)の騒音が顕著に発生する。そこで、本実施例のように2種類の羽根の枚数を互いに異ならせておけば、軸流羽根54に起因する騒音と、遠心羽根56に起因する騒音との共鳴を避けて、回転翼50全体での騒音の低減を図ることが可能となる。
【0043】
上述した本実施例のファン装置10には、次のような変形例も存在する。以下では、上述の実施例とは異なる点を中心に変形例について説明する。尚、変形例の説明では、上述の実施例と同様の構成については同じ符号を付して説明を省略する。
【0044】
上述した実施例のファン装置10の回転翼50では、回転円板51から軸流羽根54が回転方向の前縁側に繋ぎ部分を残して切り抜かれ、繋ぎ部分でケーシング30側に折り曲げられていた(
図4(b)参照)。これに対して、第1変形例のファン装置10の回転翼50では、
図6に示されるように、回転円板51から軸流羽根54が回転方向の後縁側に繋ぎ部分を残して切り抜かれ、この繋ぎ部分でモータ40側(図中の下側)に折り曲げられている。このため、軸流羽根54は、回転翼50の回転方向における前縁側が回転円板51よりもモータ40側に突出しており、後縁側が前縁側よりもケーシング30側(図中の上側)に位置するように回転円板51に対して傾斜している。
【0045】
このような第1変形例の回転翼50がモータ40の駆動で回転すると、軸流羽根54が回転円板51よりもモータ40側(図中の下側)の空気をケーシング30の基底面30a側(図中の上側)に押し出すので、図中に白抜きの矢印で示されるように、回転円板51におけるモータ40側から貫通孔53を通して基底面30aに向かう回転軸方向の気流が発生する。この気流によって、前述した実施例と同様に、基底面30aと回転円板51との間では圧力が上昇して正圧に保たれるため、基底面30aの挿通孔33とモータ40のシャフト41との隙間からの排ガスの漏れを抑制することができる。
【0046】
図7は、第2変形例の回転翼50の形状を示した斜視図である。前述した実施例の回転翼50には、軸流羽根54に加えて、遠心羽根56が一体に設けられていた。これに対して、第2変形例の回転翼50には、遠心羽根56が設けられておらず、軸流羽根54だけが設けられている。
図7に示した例では、回転円板51に厚みがあり、回転円板51の外周面から径方向の外側に複数(7枚)の軸流羽根54が等間隔に設けられている。また、各軸流羽根54は、回転翼50の回転方向における前縁側よりも後縁側がケーシング30側(図中の上側)に位置するように回転円板51に対して傾斜している。
【0047】
このような第2変形例の回転翼50がモータ40の駆動で回転すると、軸流羽根54がケーシング30の基底面30a(図中の上側)に向けて回転軸方向の気流を発生させるので、前述した実施例と同様に、基底面30aと回転円板51との間の圧力を正圧に保つことにより、基底面30aの挿通孔33とモータ40のシャフト41との隙間からの排ガスの漏れを抑制することができる。尚、前述した実施例のように、回転翼50に軸流羽根54と遠心羽根56とを一体に設けておけば、排ガスの漏れを抑制しながら、モータ40の昇温を抑制することが可能となる。
【0048】
図8は、第3変形例の回転翼50を分解した状態を示した斜視図である。前述した実施例の回転翼50が1つの部材であったのに対して、第3変形例の回転翼50は、図示されるように第1円板51aおよび第2円板51bの2つの部材で構成されている。まず、ケーシング30の基底面30aに面する第1円板51aには、中央の取付孔52aと、貫通孔53と、軸流羽根54とが前述の実施例と同様に設けられている。また、モータ40に面する第2円板51bには、中央の取付孔52bと、切欠き55と、遠心羽根56とが前述の実施例と同様に設けられている。尚、第3変形例の回転翼50では、軸流羽根54の枚数(貫通孔53の個数)と、遠心羽根56の枚数とが同数になっており、周方向で隣接する2つの貫通孔53の間に遠心羽根56が配置される。
【0049】
こうした第1円板51aと第2円板51bとを接合することで、第3変形例の回転翼50には軸流羽根54および遠心羽根56が一体に設けられている。そのため、第3変形例の回転翼50がモータ40の駆動で回転すると、前述した実施例と同様に、軸流羽根54による基底面30aに向かう回転軸方向の気流と、遠心羽根56による径方向の内側から外側に向かう気流とが発生し、これらの気流を用いて、基底面30aの挿通孔33とモータ40のシャフト41との隙間からの排ガスの漏れを抑制しながら、モータ40の昇温を抑制することが可能となる。
【0050】
そして、回転翼50が1つの部材であった前述の実施例では、回転円板51の貫通孔53よりも径方向の外側の位置に、遠心羽根56を設ける必要があったのに対して、第3変形例の回転翼50では、2つの部材で構成することにより、遠心羽根56の径方向の位置が貫通孔53よりも外側に限定されず、遠心羽根56の径方向の位置と貫通孔53の径方向の位置とを一部で重複させることが可能である。その結果、遠心羽根56の径方向の長さや、貫通孔53の径方向の幅の確保が容易となる。
【0051】
以上、本実施例および変形例のファン装置10について説明したが、本発明は上記の実施例および変形例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0052】
例えば、前述した実施例および変形例では、ファン装置10が給湯器1の排気側に接続されて排ガスを吸引する引張式であるものとして説明した。しかし、引張式に限定されず、ファン装置10が給湯器1の給気側に接続されて燃焼用空気を送り込む押込式にも、本願を好適に適用することが可能である。
【0053】
図9は、ファン装置10が給気側に接続された押込式の給湯器1の大まかな構成を示した説明図である。尚、
図1を用いて説明した引張式の給湯器1と同様の構成については、同じ符号を付して説明を省略する。図示されるように押込式の給湯器1は、缶体2の上部に排気ダクト8が直接的に接続されている。一方、缶体2の下部には、ファン装置10の吐出側が接続されており、ファン装置10の吸入側に給気ダクト11が接続されている。ファン装置10が作動すると、給気ダクト11の末端の給気口11aから取り入れられた外部の空気が給気ダクト11を通ってファン装置10に吸い込まれ、バーナ3に燃焼用空気が送り込まれる。
【0054】
また、バーナ3での燃焼後の排ガスは、ファン装置10の送風で上方に送られ、熱交換器5を通過すると、排気ダクト8を通って排気口8aから外部に排出される。図示した例では、給気ダクト11の一部が内部に排気ダクト8を通した二重管構造になっており、外部から取り入れられた空気が排ガスの余熱で暖められた後にバーナ3に供給されるので、熱効率を高めることができる。
【0055】
こうした押込式の給湯器1でも、排気ダクト8に経年による腐食あるいは埃等の堆積が生じたり、排気口8aに強い風が吹き付けたりするなどして閉塞が発生する場合があり、缶体2内の圧力が高まると、ファン装置10からバーナ3に空気を送り込むことができなくなる。その結果、ケーシング30内の圧力が高まることによって、排ガスの余熱で暖められた空気が基底面30aの挿通孔33とモータ40のシャフト41との隙間から漏れ出ることがある。
【0056】
そこで、前述した実施例や変形例と同様に、ケーシング30の基底面30aとモータ40との間に回転翼50を羽根車20と連動して回転可能に設置することとして、回転翼50に設けた軸流羽根54で基底面30aに向かう回転軸方向の気流を発生させ、基底面30aと回転円板51との間の圧力を正圧に保つことにより、基底面30aの挿通孔33とモータ40のシャフト41との隙間からの気体の漏れを抑制することができる。また、回転翼50に設けた遠心羽根56で径方向の内側から外側に向かう気流を発生させることにより、モータ40を冷却する効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0057】
1…給湯器、 2…缶体、 3…バーナ、
4…ガス供給路、 5…熱交換器、 6…給水通路、
7…給湯通路、 8…排気ダクト、 8a…排気口、
9…取込口、 10…ファン装置、 11…給気ダクト、
11a…給気口、 20…羽根車、 21…翼片、
22…回転基板、 23…支持板、 30…ケーシング、
30a…基底面、 30b…被覆面、 30c…周面、
31…第1ケース、 32…第2ケース、 33…挿通孔、
34…吸気口、 35…送風路、 36…吐出口、
38…支持台、 40…モータ、 41…シャフト、
42…継手、 50…回転翼、 51…回転円板、
51a…第1円板、 51b…第2円板、 52…取付孔、
53…貫通孔、 54…軸流羽根、 55…切欠き、
56…遠心羽根。