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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】竪型ミルおよびストッパ荷重推定方法
(51)【国際特許分類】
   B02C 15/04 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B02C15/04
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2017246753
(22)【出願日】2017-12-22
(65)【公開番号】P2019111486
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-10-29
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】503245465
【氏名又は名称】株式会社アーステクニカ
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(72)【発明者】
【氏名】佐 藤 武 士
【合議体】
【審判長】宮澤 尚之
【審判官】日比野 隆治
【審判官】後藤 政博
(56)【参考文献】
【文献】特開平5-345138(JP,A)
【文献】特開2000-197830(JP,A)
【文献】特開2000-246126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B02C 1/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転テーブルと、前記回転テーブルの上方に配置されたローラと、前記ローラを保持して上下に揺動可能な揺動アームと、前記ローラと前記回転テーブルとの間隙を調整するための間隙調整手段と、を備え、前記ローラを前記回転テーブルに向けて押圧して前記回転テーブル上の被粉砕物を粉砕する竪型ミルであって、
前記間隙調整手段が、
前記揺動アームに配設された当接手段と、
前記当接手段に向けて前後進可能であって、前記揺動アームが下方に揺動したときに、前記当接手段が当接する受圧手段を有するストッパ機構と、
前記受圧手段と前記当接手段との間の当接荷重を取得するための当接荷重取得手段と、を備えている竪型ミル。
【請求項2】
前記ストッパ機構が、前記ローラと前記回転テーブルとの初期隙間に基づいて前記受圧手段と前記当接手段とが当接する位置を調整することができるように構成されている、請求項1に記載の竪型ミル。
【請求項3】
前記ストッパ機構が、固定された雌ネジ部に螺合されて回転させることにより直線移動する調整ボルトを有する、請求項2に記載の竪型ミル。
【請求項4】
前記当接手段が、前記揺動アームが下方に揺動して前記受圧手段と当接するときの衝撃を緩和するための緩衝手段を備え、
前記当接荷重取得手段が、前記緩衝手段の変位に基づいて前記当接荷重を取得するように構成されている、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の竪型ミル。
【請求項5】
前記当接手段が、表側に前記受圧手段に当接する板状部材を有し、
前記緩衝手段が、前記板状部材の裏側に配設された弾性部材を有する、請求項4に記載の竪型ミル。
【請求項6】
前記弾性部材は、中空部材で構成されており、
前記緩衝手段が、前記弾性部材の中空部に配設されたスペーサを有し、
前記板状部材が前記受圧手段に当接していないときに、前記板状部材の裏面が、前記弾性部材の弾力により前記スペーサの先端部と所定の距離離れた位置にあり、
前記揺動アームを下方に揺動させて、前記板状部材を前記受圧手段に当接させ、さらに前記弾性部材の弾力に打ち勝って前記板状部材を押し込んだときに、前記スペーサの先端部が前記板状部材の裏面に当接して停止するように構成されている、請求項5に記載の竪型ミル。
【請求項7】
前記揺動アームを下方に揺動させて、前記板状部材を前記受圧手段に当接させ、さらに前記弾性部材の弾力に打ち勝って前記板状部材を押し込んだときに、前記スペーサが前記板状部材の裏面に当接して停止したときの前記揺動アームの揺動角度における前記ローラと前記回転テーブルとの間隙が、前記揺動アームを下方に揺動させるときに前記ローラが前記回転テーブルへの接近を制限する限界間隙である、請求項6に記載の竪型ミル。
【請求項8】
前記弾性部材が、ばね部材である、請求項5ないし7のいずれか一項に記載の竪型ミル。
【請求項9】
前記受圧手段が、表側に前記当接手段に当接する板状部材を有し、
前記緩衝手段が、前記板状部材の裏側に配設された弾性部材を有する、請求項4に記載の竪型ミル。
【請求項10】
前記弾性部材は、中空部材で構成されており、
前記緩衝手段が、前記弾性部材の中空部に配設されたスペーサを有し、
前記当接手段が前記板状部材に当接していないときに、前記板状部材の裏面がそれぞれ前記弾性部材の弾力により前記スペーサの先端部と所定の距離離れた位置にあり、
前記揺動アームを下方に揺動させて、前記当接手段を前記板状部材に当接させ、さらに前記弾性部材の弾力に打ち勝って前記板状部材を押し込んだときに、前記板状部材の裏面が前記スペーサの先端部に当接して停止するように構成されている、請求項9に記載の竪型ミル。
【請求項11】
前記揺動アームを下方に揺動させて、前記当接手段を前記板状部材に当接させ、さらに前記弾性部材の弾力に打ち勝って前記板状部材を押し込んだときに、前記板状部材の裏面が前記スペーサの先端部に当接して停止したときの前記揺動アームの揺動角度における前記ローラと前記回転テーブルとの間隙が、前記揺動アームを下方に揺動させるときに前記ローラが前記回転テーブルへの接近を制限する限界間隙である、請求項10に記載の竪型ミル。
【請求項12】
前記弾性部材が、ばね部材である、請求項9ないし11のいずれか一項に記載の竪型ミル。
【請求項13】
前記当接荷重取得手段が、前記調整ボルトの少なくとも一つの軸方向の変位に基づいて前記当接荷重を取得するように構成されている、請求項3に記載の竪型ミル。
【請求項14】
前記当接荷重取得手段が、歪みゲージにより前記調整ボルトの少なくとも一つの軸方向の変位を取得するように構成されている、請求項13に記載の竪型ミル。
【請求項15】
前記当接手段が、前記揺動アームの両側に略対称に配置された第一および第二の当接部を有し、
前記受圧手段が、前記第一の当接部が当接する第一の受圧部と、前記第二の当接部が当接する第二の受圧部と、を有し、
前記ストッパ機構が、
前記第一の受圧部を有する第一のストッパおよび前記第二の受圧部を有する第二のストッパを有し、
前記荷重取得手段が、
前記第一の受圧部と前記第一の当接部との間の第一の当接荷重を取得する第一の当接荷重取得部と、前記第二の受圧部と前記第二の当接部との間の第二の当接荷重を取得するための第二の当接荷重取得部と、を有している、請求項1乃至14のいずれか一項に記載の竪型ミル。
【請求項16】
前記当接荷重取得手段により取得された前記第一および第二の当接荷重に基づいて、前記第一の当接荷重および前記第二の当接荷重が均等になるように前記第一および前記第二の受圧部の位置を調整するように構成されている、請求項15に記載の竪型ミル。
【請求項17】
請求項1乃至16のいずれか一項に記載の竪型ミルにおいて前記ストッパ機構への荷重を推定する方法であって、
前記揺動アームを所定の揺動角度に位置決めする揺動アーム位置決め工程と、
前記受圧手段を前記当接手段に当接させる当接工程と、
前記当接荷重取得手段により前記当接荷重を取得する当接荷重取得工程と、を有する、ストッパの荷重推定方法。
【請求項18】
前記揺動アームの前記所定の揺動角度が、前記ローラと前記回転テーブルとの初期隙間に対応する角度である、請求項17に記載のストッパの荷重推定方法。
【請求項19】
前記当接手段が、前記揺動アームが下方に揺動して前記受圧手段と当接するときの衝撃を緩和するための緩衝装置を備え、
前記当接荷重取得工程において、前記緩衝装置の変位に基づいて前記当接荷重を取得する、請求項17または18に記載のストッパの荷重推定方法。
【請求項20】
前記ストッパ機構が、固定された雌ネジ部に螺合されて回転させることにより直線移動する調整ボルトを有し、
前記当接荷重取得工程において、前記調整ボルトの少なくとも一つの軸方向の変位に基づいて前記当接荷重を取得する、請求項17または18に記載のストッパの荷重推定方法。
【請求項21】
請求項15記載の竪型ミルにおいて前記ストッパ機構への荷重を推定する方法であって、
前記揺動アームを所定の揺動角度に位置決めする揺動アーム位置決め工程と、
前記第一および前記第二の受圧部をそれぞれ前記第一および前記第二の当接部に当接させる当接工程と、
前記当接荷重取得手段により前記第一の当接荷重および前記第二の当接荷重を取得し、取得された前記第一の当接荷重および前記第二の当接荷重に基づいて、前記第一および前記第二のストッパの少なくとも一つを前後進させて前記第一の当接荷重および前記第二の当接荷重が均等になるようにするストッパ位置調整工程と、を有する、ストッパの荷重推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラと回転テーブルとの初期隙間を調整するためのストッパを備え、回転テーブルとローラとの間に石炭などの被粉砕物を挟み込んで粉砕する竪型ミル、および当該竪型ミルにおけるストッパへの当接荷重を推定するためのストッパ荷重推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1および図2に示されるように、石炭などの被粉砕物を挟み込んで粉砕する竪型ミル51は、一般に、ケーシング52と、ケーシング52の内部に被粉砕物を積層して水平面内で回転する回転テーブル53と、油圧シリンダ等を使用した加圧機構55の先端に支軸56周りに上下に揺動する揺動アーム61と、揺動アーム61の下部のローラ支持部59に回転自在に連結されたローラ54とを備え、加圧機構55の作動により回転テーブル53上に積層された被粉砕物を、ローラ54を回転テーブル53の表面に向けて押し付けることにより粉砕するように構成されている(例えば、特許文献1、2)。
【0003】
このような粉砕メカニズムに基づく竪型ミル51においては、運転開始直後に回転テーブル53上に十分な量の被粉砕物が積層されていない場合や、運転中に回転テーブル53上に積層された被粉砕物が欠落した場合に、ローラ54が回転テーブル53の表面に当接(メタルタッチ)し、ローラ54および回転テーブル53に重大な損傷を与え、また、竪型ミル51に過大な振動を発生させ、竪型ミル51に重大な損傷を招くおそれがある。
【0004】
このため、竪型ミル51においては、一般に、回転テーブル53とローラ54との間隙が、予め設定された初期隙間以下に接近しないように、加圧機構55によるローラ54の下方への揺動を制限するためのストッパ57が配設されている。図2に示されるように、ストッパ57は、例えば、ケーシング52に備えられた雌ネジ部63に螺合された調整ボルト58が前後進することにより調整ボルト58の先端の受圧部62が前記初期隙間に対応した位置に位置決めされ、揺動アーム61の当接部60がストッパ57の受圧部62に当接することにより、ローラ54の下方への揺動を制限するように構成されている。
【0005】
このような機能を有するストッパ57は、例えば、水平面内において、ローラ54の両側に一対(57a、57b)配置されており、一対のストッパ57a、57bを用いたローラ54と回転テーブル53との初期隙間の設定に際しては、ローラ54が回転テーブル53に対して初期隙間にある位置まで揺動アーム61を揺動させて停止させた状態で、雌ネジ部63a、63bとそれぞれ螺合している調整ボルト58a、58bを前後進させて、受圧部62a、62bをそれぞれ当接部60a、60bに当接させる構成とされている。
【0006】
ところが、運転継続に伴ってローラ54が摩耗すると、当初は最適に設定されていた初期隙間が、摩耗に伴って拡大してしまうという問題がある。
【0007】
ここで、初期隙間とは、ミルが運転を開始し、原料を噛み込み、必要な層厚を形成する上で必要な隙間であり、広過ぎても狭すぎても問題がある。ローラ54の摩耗によって初期隙間が拡大してしまうと、所望の粉砕性能を担保することが困難となり、最終製品の品質が劣化する可能性がある。
【0008】
しかしながら、従来の竪型ミルにおいては、ローラ54の摩耗に伴って初期隙間が拡大した場合、ケーシング52を開放して作業員がミル機内に入り、ミル機内にてローラ54の摩耗量を確認する必要があった。このため、ローラ摩耗量の確認作業に長時間を要し、竪型ミルの稼働率が低下してしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開平5-345138号公報
【文献】特開2000-197830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記の従来技術の課題を解決するためになされたものであって、ローラの摩耗量をミル機外からの測定により推定することができる竪型ミルおよびストッパ荷重推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、回転テーブルと、前記回転テーブルの上方に配置されたローラと、前記ローラを保持して上下に揺動可能な揺動アームと、前記ローラと前記回転テーブルとの間隙を調整するための間隙調整手段と、を備え、前記ローラを前記回転テーブルに向けて押圧して前記回転テーブル上の被粉砕物を粉砕する竪型ミルであって、前記間隙調整手段が、前記揺動アームに配設された当接手段と、前記当接手段に向けて前後進可能であって、前記揺動アームが下方に揺動したときに、前記当接手段が当接する受圧手段を有するストッパ機構と、前記受圧手段と前記当接手段との間の当接荷重を取得するための当接荷重取得手段と、を備えている、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第2の態様は、第1の態様において、前記ストッパ機構が、前記ローラと前記回転テーブルとの初期隙間に基づいて前記受圧手段と前記当接手段とが当接する位置を調整することができるように構成されている、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第3の態様は、第2の態様において、前記ストッパ機構が、固定された雌ネジ部に螺合されて回転させることにより直線移動する調整ボルトを有する、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第4の態様は、第1ないし第3のいずれかの態様において、前記当接手段が、前記揺動アームが下方に揺動して前記受圧手段と当接するときの衝撃を緩和するための緩衝手段を備え、前記当接荷重取得手段が、前記緩衝手段の変位に基づいて前記当接荷重を取得するように構成されている、ことを特徴とする。
【0015】
本発明の第5の態様は、第4の態様において、前記当接手段が、表側に前記受圧手段に当接する板状部材を有し、前記緩衝手段が、前記板状部材の裏側に配設された弾性部材を有する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の第6の態様は、第5の態様において、前記弾性部材は、中空部材で構成されており、前記緩衝手段が、前記弾性部材の中空部に配設されたスペーサを有し、前記板状部材が前記受圧手段に当接していないときに、前記板状部材の裏面が、前記弾性部材の弾力により前記スペーサの先端部と所定の距離離れた位置にあり、前記揺動アームを下方に揺動させて、前記板状部材を前記受圧手段に当接させ、さらに前記弾性部材の弾力に打ち勝って前記板状部材を押し込んだときに、前記スペーサの先端部が前記板状部材の裏面に当接して停止するように構成されている、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の第7の態様は、第6の態様において、前記揺動アームを下方に揺動させて、前記板状部材を前記受圧手段に当接させ、さらに前記弾性部材の弾力に打ち勝って前記板状部材を押し込んだときに、前記スペーサが前記板状部材の裏面に当接して停止したときの前記揺動アームの揺動角度における前記ローラと前記回転テーブルとの間隙が、前記揺動アームを下方に揺動させるときに前記ローラが前記回転テーブルへの接近を制限する限界間隙である、ことを特徴とする。
【0018】
本発明の第8の態様は、第5ないし第7のいずれかの態様において、前記弾性部材が、ばね部材である、ことを特徴とする。
【0019】
本発明の第9の態様は、第4の態様において、前記受圧手段が、表側に前記当接手段に当接する板状部材を有し、前記緩衝手段が、前記板状部材の裏側に配設された弾性部材を有する、ことを特徴とする。
【0020】
本発明の第10の態様は、第9の態様において、前記弾性部材は、中空部材で構成されており、前記緩衝手段が、前記弾性部材の中空部に配設されたスペーサを有し、前記当接手段が前記板状部材に当接していないときに、前記板状部材の裏面がそれぞれ前記弾性部材の弾力により前記スペーサの先端部と所定の距離離れた位置にあり、前記揺動アームを下方に揺動させて、前記当接手段を前記板状部材に当接させ、さらに前記弾性部材の弾力に打ち勝って前記板状部材を押し込んだときに、前記板状部材の裏面が前記スペーサの先端部に当接して停止するように構成されている、ことを特徴とする。
【0021】
本発明の第11の態様は、第10の態様において、前記揺動アームを下方に揺動させて、前記当接手段を前記板状部材に当接させ、さらに前記弾性部材の弾力に打ち勝って前記板状部材を押し込んだときに、前記板状部材の裏面が前記スペーサの先端部に当接して停止したときの前記揺動アームの揺動角度における前記ローラと前記回転テーブルとの間隙が、前記揺動アームを下方に揺動させるときに前記ローラが前記回転テーブルへの接近を制限する限界間隙である、ことを特徴とする。
【0022】
本発明の第12の態様は、第9ないし第11のいずれかの態様において、前記弾性部材が、ばね部材である、ことを特徴とする。
【0023】
本発明の第13の態様は、第3の態様において、前記当接荷重取得手段が、前記調整ボルトの少なくとも一つの軸方向の変位に基づいて前記当接荷重を取得するように構成されている、ことを特徴とする。
【0024】
本発明の第14の態様は、第13の態様において、前記当接荷重取得手段が、歪みゲージにより前記調整ボルトの少なくとも一つの軸方向の変位を取得するように構成されている、ことを特徴とする。
【0025】
本発明の第15の態様は、第1ないし第14のいずれかの態様において、前記当接手段が、前記揺動アームの両側に略対称に配置された第一および第二の当接部を有し、前記受圧手段が、前記第一の当接部が当接する第一の受圧部と、前記第二の当接部が当接する第二の受圧部と、を有し、前記ストッパ機構が、前記第一の受圧部を有する第一のストッパおよび前記第二の受圧部を有する第二のストッパを有し、前記荷重取得手段が、前記第一の受圧部と前記第一の当接部との間の第一の当接荷重を取得する第一の当接荷重取得部と、前記第二の受圧部と前記第二の当接部との間の第二の当接荷重を取得するための第二の当接荷重取得部と、を有している、ことを特徴とする。
【0026】
本発明の第16の態様は、第15の態様において、前記当接荷重取得手段により取得された前記第一および第二の当接荷重に基づいて、前記第一の当接荷重および前記第二の当接荷重が均等になるように前記第一および前記第二の受圧部の位置を調整するように構成されている、ことを特徴とする。
【0027】
本発明の第17の態様は、第1ないし第16のいずれかの竪型ミルにおいて前記ストッパ機構への荷重を推定する方法であって、前記揺動アームを所定の揺動角度に位置決めする揺動アーム位置決め工程と、前記受圧手段を前記当接手段に当接させる当接工程と、前記当接荷重取得手段により前記当接荷重を取得する当接荷重取得工程と、を有する、ことを特徴とする。
【0028】
本発明の第18の態様は、第17の態様において、前記揺動アームの前記所定の揺動角度が、前記ローラと前記回転テーブルとの初期隙間に対応する角度である、ことを特徴とする。
【0029】
本発明の第19の態様は、第17または第18の態様において、前記当接手段が、前記揺動アームが下方に揺動して前記受圧手段と当接するときの衝撃を緩和するための緩衝装置を備え、前記当接荷重取得工程において、前記緩衝装置の変位に基づいて前記当接荷重を取得する、ことを特徴とする。
【0030】
本発明の第20の態様は、第17または第18の態様において、前記ストッパ機構が、固定された雌ネジ部に螺合されて回転させることにより直線移動する調整ボルトを有し、前記当接荷重取得工程において、前記調整ボルトの少なくとも一つの軸方向の変位に基づいて前記当接荷重を取得する、ことを特徴とする。
【0031】
本発明の第21の態様は、第15の態様の竪型ミルにおいて前記ストッパ機構への荷重を推定する方法であって、前記揺動アームを所定の揺動角度に位置決めする揺動アーム位置決め工程と、前記第一および前記第二の受圧部をそれぞれ前記第一および前記第二の当接部に当接させる当接工程と、前記当接荷重取得手段により前記第一の当接荷重および前記第二の当接荷重を取得し、取得された前記第一の当接荷重および前記第二の当接荷重に基づいて、前記第一および前記第二のストッパの少なくとも一つを前後進させて前記第一の当接荷重および前記第二の当接荷重が均等になるようにするストッパ位置調整工程と、を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、ローラの摩耗量をミル機外からの測定により推定することができる竪型ミルおよびストッパ荷重推定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】従来の竪型ミルの構成を示す断面図である。
図2図1における断面AAを示す断面図である。
図3】本発明に係る竪型ミルの第一の実施形態における間隙調整手段の構成概念を示す図である。
図4図3における断面BBを示す断面図である。
図5図3におけるC部の詳細を示す図である。
図6】間隙調整手段の作動原理を示す図である。
図7】本発明に係る竪型ミルの第二の実施形態における間隙調整手段の構成を示す図である。
図8図7におけるD部の詳細を示す図である。
図9】本発明に係る竪型ミルの第三の実施形態における間隙調整手段の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明に係る竪型ミルの実施形態について、図面を参照して説明する。
【0035】
<第一の実施形態>
図3は本発明に係る竪型ミルの第一の実施形態における間隙調整手段の構成概念を示す図、図4図3における断面BBを示す断面図、図5図3におけるC部の詳細を示す図である。なお、本発明に係る竪型ミルの第一の実施形態は、図3ないし5に示される間隙調整手段以外の部分については、特に矛盾等がない限り、図1および2に示される竪型ミルと同様である。
【0036】
図3および図4に示したように、第一の実施形態の竪型ミルは、ケーシング2と、ケーシング2の内部に配置され、被粉砕物を積層して回転する回転テーブル3と、回転テーブル3の上方に配置されたローラ4と、ローラ4を保持部9により回転自在に保持して支軸10まわりに上下に揺動可能な揺動アーム7と、ローラ4と回転テーブル3との間隙を調整するための間隙調整手段5とを備えている。なお、揺動アーム7は、ケーシング2に支持されて直線方向に前後進する油圧シリンダ6を前後進することにより、支軸10まわりに上下に揺動する。
【0037】
本実施形態による竪型ミルにおける間隙調整手段5は、粉砕製品について粒度等の所定の品質を確保するためにローラ4と回転テーブル3との適切な初期隙間を確保すると共に、粉砕運転時に、回転テーブル3上に十分な被粉砕物がない場合等においてローラ4が回転テーブル3の表面に当接して破損等を防止するために、予め設定された限界間隙以下にローラ4が回転テーブル3に接近することを防止するものである。
【0038】
間隙調整手段5は、揺動アーム7に配設された当接手段18と、当接手段18に向けて前後進可能であって、揺動アーム7が下方に揺動したときに、当接手段18が当接する受圧手段17を有するストッパ機構14と、受圧手段17と当接手段18との間の当接荷重を取得するための当接荷重取得手段20と、を備えている(図5参照)。また、当接手段18は、揺動アーム7の下部にローラ4の中心軸を挟んで左右の両側に略対称に一対配設された第一の当接部18aおよび第二の当接部18bと、を有し、受圧手段17は、第一の当接部18aが当接する第一の受圧部17aおよび第二の当接部18bが当接する第二の受圧部17bを有し、ストッパ機構14は、第一の受圧部17aを有する第一のストッパ14aおよび第二の受圧部18bを有する第二のストッパ14bと、を備えている(図4参照)。
【0039】
ストッパ機構14は、ケーシング2の内部を開放するためのカバー30に配設された雌ネジ部15と、雌ネジ部15に螺合する調整ボルト部16とを有し、調整ボルト部16を回転させることにより、受圧手段17を当接手段18に向けて前後進(移動)させ、かつ位置決めすることができる。ここで、前進方向とは、調整ボルト部16が当接手段18に向かう方向を言い、後進方向とは、逆に遠ざかる方向を言う。
【0040】
また雌ネジ部15は、第一および第二のストッパ14a、14bのそれぞれに第一および第二の雌ネジ15a、15bを有し、調整ボルト部16は、第一および第二の雌ネジ15a、15bのそれぞれに螺合する第一および第二の調整ボルト16a、16bを有している。第一および第二の調整ボルト16a、16bを回転させることにより、第一および第二の受圧部17a、17bを当接部18a、18bに向けて前後進(移動)させ、回転テーブル3とローラ4との限界間隙および初期隙間を決定することができる。調整ボルト部16(16a、16b)は、ナット24(24a、24b)によって固定される。
【0041】
また、間隙調整手段5は、揺動アーム7を下方に揺動させて、当接手段18が受圧手段17に当接するときの衝撃を緩和するために、当接手段18には緩衝手段23を備えている。より具体的には、緩衝手段23は、第一および第二の当接部18a、18bがそれぞれ第一および第二の受圧部17a、17bに当接するときの衝撃を緩和するために、第一および第二の当接部18a、18bに、それぞれ第一および第二の緩衝装置23a、23bを備えている。
【0042】
以下、第一の実施形態における間隙調整手段5の構成、作動原理、機能等について、図5および図6に基づいて詳細に説明する。なお、ローラ4を挟んで略対称に左右一対として配置された、第一の当接部18aや受圧部17a等間の関係や作用等と第二の当接部18bや受圧部17b等間の関係や作用等は特に断らない限り同一であるので、以下の記載においては、説明の便宜から、「第一の」構成について主とし、「第二の」構成について括弧内に記載する。
【0043】
第一の当接部18a(第二の当接部18b)は、第一の受圧部17a(第二の受圧部17b)と対向する側(表側)に第一の受圧部17a(第二の受圧部17b)に当接する円盤状の第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)を有し、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)の裏側に第一の中空弾性部材(第二の中空弾性部材)として第一の皿ばね19a(第二の皿ばね19b)を有する第一の緩衝装置23a(第二の緩衝装置23b)が配設されている。なお、第一の中空弾性部材(第二の中空弾性部材)は、皿ばね以外にも、コイルばね、板ばね、竹の子ばね、輪ばね等のばね部材とすることもできる。
【0044】
また、第一の皿ばね19a(第二の皿ばね19b)の中空部(中央部)には、円筒状の第一のスペーサ21a(第二のスペーサ21b)が配設されており、第一のスペーサ21a(第二のスペーサ21b)の中央部には、第一のリニアスケール20a(第二のリニアスケール20b)が配設されている。第一のリニアスケール20a(第二のリニアスケール20b)は、当接荷重取得手段を構成している。
【0045】
通常、原料粉砕時は、原料層厚により、揺動アーム7が上方に揺動するため、受圧部17(17a、17b)と板状部材25(25a、25b)とが当接していない状態となる(図6(a)に示した状態A)。このとき、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)は、第一の皿ばね19a(第二の皿ばね19b)の弾力により、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)の表側の外周部に配設された中空円盤形状の第一の留め具22a(第二の留め具22b)に押し付けられており、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)の裏面が第一のスペーサ21a(第二のスペーサ21b)の先端部と所定の距離離れている(図6(a))。
【0046】
粉砕中に原料層厚が減少した際や、ミル停止時の原料層厚がない状態では、揺動アーム7が下方に揺動し、受圧部17(17a、17b)と板状部材25(25a、25b)が当接し、皿ばね19(19a、19b)を圧縮するように押し込む状態となる(図6(b)に示した状態B)。すなわち、揺動アーム7が下方に揺動し、第一の受圧部17a(第二の受圧部17b)を第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)に当接して第一の皿ばね19a(第二の皿ばね19b)が圧縮されるように押し込むと、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)の表側外周部が中空円盤形状の第一の留め具22a(第二の留め具22b)から離反する一方、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)の裏面はまだ第一のスペーサ21a(第二のスペーサ21b)の先端部から離反しており、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)が、第一の留め具22a(第二の留め具22b)と第一のスペーサ21a(第二のスペーサ21b)との中間の領域に位置している状態(状態B)となっている(図6(b))。
【0047】
状態Bにおいては、油圧シリンダ6の推力と、圧縮された皿ばね19a、19bの弾性力とが釣り合っており、揺動アーム7の下方への揺動動作が停止している状態である。この状態Bにおけるローラ4と回転テーブル3との隙間は、ミルが所望の粉砕能力を出す上で必要な隙間であり、本明細書においては「初期隙間」と呼んでいる。
【0048】
本実施形態による竪型ミルにおいては、ストッパ機構14が、ローラ4と回転テーブル3との初期隙間に基づいて受圧手段17と当接手段18とが当接する位置を調整することができるように構成されている。すなわち、調整ボルト部16を前後進させることによって、受圧手段17と当接手段18とが当接する時点(当接時点)での揺動アーム7の揺動角度を決定することができるので、当接時点から状態Bに至るまでの揺動アーム7の動作角度を調整できる。なぜなら、当接時点から状態Bに至るまでの揺動アーム7の動作角度は、緩衝手段19(皿ばね19a、b)の押込み量(=ばね反発力)で決まり、この押込み量(=ばね反発力)は、調整ボルト16の前後位置を変えることで調整できるからである。すなわち、状態Bの位置において揺動アーム7の下方への揺動動作が停止する(シリンダ推力と、ばね反発力とがバランスする)ように、調整ボルト16の前後位置を調整すれば良い。 揺動アーム7に更なる加圧力が付加されると、第一の皿ばね19a(第二の皿ばね19b)が、状態B(受圧部17と板状部材25とが当接した状態)よりもさらに圧縮されるように押し込まれ、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)の裏面と第一のスペーサ21a(第二のスペーサ21b)の先端部とが当接した状態となる(図6(c)に示した状態C)。
【0049】
この状態Cにおけるローラ4と回転テーブル3との隙間は、ローラ4と回転テーブル3との接触(メタルタッチ)を防止するための隙間であり、本明細書においては「限界間隙」と呼んでいる。
【0050】
第一のスペーサ21a(第二のスペーサ21b)の中央部に配設されている第一のリニアスケール20a(第二のリニアスケール20b)は、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)の位置の変化を測定するものであり、特に状態Bにおける第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)の位置の変化(例えば、状態Aにおける位置からの変位x)に基づき、第一の皿ばね19a(第二の皿ばね19b)のばね定数kから第一の受圧部17a(第二の受圧部17b)と第一の当接部18a(第二の当接部18b)との当接荷重W(=kx)を求めることができる。
【0051】
以上の説明においては、第一および第二の緩衝装置23a、23bにおいて、第一および第二の中空弾性部材として、皿ばねを使用したが、皿ばねの代わりにつる巻きばねを使用することもでき、また、天然ゴムや合成ゴム等の弾性材料により製造された円筒形状の弾性体であってもよい。
【0052】
上記構成を備えた本実施形態においては、当接荷重取得手段20を備えているため、原料等を加圧していない状態、すなわち静荷重のみが作用している状態で、受圧手段17に当接手段18を当接しているときには、ローラ4の重量を推定するための測定値を取得することができることから、ローラ4の重量変化によりローラ4の摩耗量を推定することができる。また、ローラ4が摩耗してくると、初期隙間が広がり、摩耗していなければ、通常の原料粉砕時の状態(図6(a))となるべき条件でも、受圧部17a、17bと板状部材25a、25bが当接し、皿ばね19a、19bを圧縮するように押し込む状態(図6(b))となる頻度が増えるため、当接荷重取得手段20により、ローラ4の摩耗が進行していることを予測することもできる。これにより、ローラ4の摩耗量測定のためにケーシング2を開放して内部に入ることなく、外部から容易にローラ4の摩耗量を推定でき、竪型ミルの稼働率の向上等が容易に可能となる。
【0053】
次に、前記で説明した間隙調整手段5を使用して、一対のストッパ(第一および第二のストッパ14a、14b)のそれぞれの受圧部(第一および第二の受圧部17a、17b)を、揺動アーム7のそれぞれ対応する当接部(第一および第二の当接部18a、18b)に均等な荷重で当接させる方法(当接荷重分配調整方法)について説明する。
【0054】
当接荷重分配調整は、以下の手順で実行される。
【0055】
(1)まず、回転テーブル3上に被粉砕物を積層せずに、ローラ4と回転テーブル3との間に目標間隙の厚みのスペーサ等を設置して、揺動アーム7を下方に揺動させ、第一および第二の受圧部17a、17bを、第一および第二の当接部18a、18bに当接しない位置まで後進(後退)させる。なお、この状態は、第一および第二の皿ばね19a、bが自由伸びの状態である(状態A)。
【0056】
(2)一対の調整ボルトの一方、例えば第一の調整ボルト16aを前進させ、第一の受圧部17aを第一の板状部材25aに当接させた後、ローラ4が浮き上がり始める位置まで第一の調整ボルト16aをさらに前進させ、第一の板状部材25aが第一の留め具22aと第一のスペーサ21aとの中間の領域に位置し、第一の皿ばね19aが押し込まれて変位している状態Bとする。なお、第一の板状部材25aの変位(量)は、第一の皿ばね19aの自由伸びの状態を原点とする。
【0057】
(3)第一の皿ばね19aの変位(第一のリニアスケール20aにより取得)に基づいて、第一の皿ばね19aのばね定数から、第一の当接荷重Waを求める。
【0058】
(4)第二の調整ボルト16bを前進させ、第二の受圧部17bを第二の板状部材25bに当接させた後、第二の板状部材25bが、第二の留め具22bと第二のスペーサ21bとの中間の領域に位置し、第二の皿ばね19bが押し込まれて変位している状態Bとし、第二のリニアスケール20bにより取得された第二の板状部材25bの位置の変化に基づいて、第二の皿ばね19bのばね定数から、第二の当接荷重Wbを求める。第二の当接荷重Wbの値によって、第一の当接荷重Waの値は増減するが、第二の当接荷重Wbを第一の当接荷重Waと比較して、第二の調整ボルト16bの前後進を繰り返しつつ(微調整)、第二の当接荷重Wbが第一の当接荷重Waと略同一となった位置に第二の調整ボルト16bを位置決めする。
【0059】
(5)ローラ4と回転テーブル3との間に設定したスペーサ等を撤去する。
【0060】
以上の方法により、一対のストッパ(第一および第二のストッパ14a、14b)のそれぞれの受圧部(第一および第二の受圧部17a、17b)を揺動アーム7のそれぞれ対応する当接部(第一および第二の当接部18a、18b)に均等な荷重で当接させることができる。
【0061】
<第二の実施形態>
図7は本発明に係る竪型ミルの第二の実施形態における間隙調整手段の構成概念を示す図、図8図7におけるD部の詳細を示す図である。
【0062】
以下では、本発明に係る竪型ミルの第二の実施形態について、主として第一の実施形態と相違する事項を中心に説明するものとし、以下で説明しない事項等については、特に矛盾等がない限り、第一の実施形態と同様とする。
【0063】
第二の実施形態における間隙調整手段5は、第一の実施形態と同様に、揺動アーム7の下部にローラ4の中心軸を挟んで左右の両側に略対称に一対配設された第一の当接部18aおよび第二の当接部18bと、揺動アーム7が下方に揺動したときに、第一の当接部18aが当接する第一の受圧部17aを有する第一のストッパ14aおよび第二の当接部18bが当接する第二の受圧部17bを有する第二のストッパ14bと、を備えている。
【0064】
第一および第二のストッパ14a、14bは、それぞれケーシング2の内部を開放するためのカバー30に配設された第一および第二の雌ネジ15a、15bと、第一および第二の雌ネジ15a、15bのそれぞれに螺合する第一および第二の調整ボルト16a、16bとを有し、第一および第二の調整ボルト16a、16bを回転させることにより、第一および第二の受圧部17a、17bを当接部18a、18bに向けて前後進(移動)させ、回転テーブル3とローラ4との限界間隙および初期隙間を設定することができる。ここで、前進方向とは、第一および第二の調整ボルト16a、16bがそれぞれ第一および第二の当接部18a、18bに向かう方向をいう。
【0065】
第二の実施形態における間隙調整手段5においても、第一の実施形態と同様に、揺動アーム7を下方に揺動させて、第一および第二の当接部18a、18bがそれぞれ第一および第二の受圧部17a、17bに当接するときの衝撃を緩和するための第一および第二の緩衝装置23a、23bが備えられているが、第二の実施形態においては、第一の実施形態とは異なり、第一および第二の緩衝装置23a、23bは、それぞれ第一および第二の受圧部17a、17bに備えられている。
【0066】
以下、第二の実施形態における間隙調整手段5の構成、作動原理、機能等について、図7および図8に基づいて詳細に説明する。なお、ローラ4を挟んで略対称に左右一対として配置された、第一の当接部18aや受圧部17a等間の関係や作用等と第二の当接部18bや受圧部17b等間の関係や作用等は特に断らない限り同一であるので、以下においては、第一の実施形態の場合と同様に、説明の便宜から、「第一の」構成について主とし、「第二の」構成について括弧内に記載する。
【0067】
第一の受圧部17a(第二の受圧部17b)は、第一の当接部18a(第二の当接部18b)と対向する側(表側)に第一の当接部18a(第二の当接部18b)に当接する円盤状の第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)を有し、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)裏側に第一の中空弾性部材(第二の中空弾性部材)として第一の皿ばね19a(第二の皿ばね19b)を有する第一の緩衝装置23a(第二の緩衝装置23b)が配設されている。また、第一の皿ばね19a(第二の皿ばね19b)の中空部(中央部)には、円筒状の第一のスペーサ21a(第二のスペーサ21b)が配設されており、第一のスペーサ21a(第二のスペーサ21b)の中央部には、第一のリニアスケール20a(第二のリニアスケール20b)が配設されている。
【0068】
通常、原料粉砕時は、原料層厚により、揺動アーム7が上方に揺動するため、受圧部17(17a、17b)と板状部材25(25a、25b)とが当接していない状態となる(図6(a)に示した状態A)。このとき、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)は、第一の皿ばね19a(第二の皿ばね19b)の弾力により、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)の表側の外周部に配設された中空円盤形状の第一の留め具22a(第二の留め具22b)に押し付けられており、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)の裏面が第一のスペーサ21a(第二のスペーサ21b)の先端部と所定の距離離れている(図6(a))。
【0069】
粉砕中に原料層厚が減少した際や、ミル停止時の原料層厚がない状態では、揺動アーム7が下方に揺動し、受圧部17(17a、17b)と板状部材25(25a、25b)が当接し、皿ばね19(19a、19b)を圧縮するように押し込む状態となる(図6(b)に示した状態B)。すなわち、揺動アーム7が下方に揺動し、第一の受圧部17a(第二の受圧部17b)に第一の当接部18a(第二の当接部18b)を当接して第一の皿ばね19a(第二の皿ばね19b)が圧縮されるように押し込むと、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)の表側外周部が中空円盤形状の第一の留め具22a(第二の留め具22b)から離反する一方、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)の裏面はまだ第一のスペーサ21a(第二のスペーサ21b)の先端部から離反しており、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)が、第一の留め具22a(第二の留め具22b)と第一のスペーサ21a(第二のスペーサ21b)との中間の領域に位置している状態(状態B)となっている。
【0070】
揺動アーム7に更なる加圧力が付加されると、第一の皿ばね19a(第二の皿ばね19b)が、状態B(受圧部17と板状部材25とが当接した状態)よりもさらに圧縮されるように押し込まれ、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)の裏面と第一のスペーサ21a(第二のスペーサ21b)の先端部とが当接した状態となる(図6(c)に示した状態C)。
【0071】
第一のスペーサ21a(第二のスペーサ21b)の中央部に配設されている第一のリニアスケール20a(第二のリニアスケール20b)は、第一の板状部材25a(第二の板状部材25b)の位置の変化を測定するものであり、特に状態Bにおける第一の留め具22a(第二の留め具22b)の位置の変化(例えば、状態Aにおける位置からの変位x)に基づき、第一の皿ばね19a(第二の皿ばね19b)のばね定数kから第一の受圧部17a(第二の受圧部17b)と第一の当接部18a(第二の当接部18b)との当接荷重W(=kx)を求めることができる。
【0072】
上記構成を備えた第二の実施形態においても、第一の実施形態と同様に、当接荷重取得手段20を備えているため、原料等を加圧していない状態、すなわち静荷重のみが作用している状態で、受圧手段17に当接手段18を当接しているときには、ローラ4の重量を推定するための測定値を取得することができることから、ローラ4の重量変化によりローラ4の摩耗量を推定することができる。また、ローラ4が摩耗してくると、初期隙間が広がり、摩耗していなければ、通常の原料粉砕時の状態(図6(a))となるべき条件でも、受圧部17a、17bと板状部材25a、25bが当接し、皿ばね19a、19bを圧縮するように押し込む状態(図6(b))となる頻度が増えるため、当接荷重取得手段20により、ローラ4の摩耗が進行していることを予測することもできる。これにより、ローラ4の摩耗量測定のためにケーシング2を開放して内部に入ることなく、外部から容易にローラ4の摩耗量を推定でき、竪型ミルの稼働率の向上等が容易に可能となる。
【0073】
次に、前記で説明した間隙調整手段5を使用して一対のストッパ(第一および第二のストッパ14a、14b)のそれぞれの受圧部(第一および第二の受圧部17a、17b)を、揺動アーム7のそれぞれ対応する当接部(第一および第二の当接部18a、18b)に均等な荷重で当接させる方法(当接荷重分配調整方法)について説明する。
【0074】
当接荷重分配調整は、以下の手順で実行される。
【0075】
(1)まず、回転テーブル3上に被粉砕物を積層せずに、ローラ4と回転テーブル3との間に目標間隙の厚みのスペーサ等を設置して、揺動アーム7を下方に揺動させ、第一および第二の受圧部17a、17bを、第一および第二の当接部18a、18bに当接しない位置まで後進(後退)させる。なお、この状態は、第一および第二の皿ばね19a、bが自由伸びの状態である(状態A)。
【0076】
(2)一対の調整ボルトの一方、例えば第一の調整ボルト16aを前進させ、第一の板状部材25aを第一の当接部18aに当接させた後、ローラ4が浮き上がり始める位置まで第一の調整ボルト16aをさらに前進させ、第一の板状部材25aが第一の留め具22aと第一のスペーサ21aとの中間の領域に位置している状態Bの状態とする。なお、第一の板状部材25aの変位(量)は、第一の皿ばね19aの自由伸びの状態を原点とする。
【0077】
(3)第一の皿ばね19aの変位(第一のリニアスケール20aにより取得)に基づいて、第一の皿ばね19aのばね定数から、第一の当接荷重Waを求める。
【0078】
(4)第二の調整ボルト16bを前進させ、第二の板状部材25bを第二の当接部18bに当接させた後、第二の板状部材25bが第二の留め具22bと第二のスペーサ21bとの中間の領域に位置し、第二の皿ばね19bが押し込まれている状態Bとし、第二のリニアスケール20bにより取得された第二の板状部材25bの位置の変化に基づいて、第二の皿ばね19bのばね定数から、第二の当接荷重Wbを求める。第二の当接荷重Wbの値によって、第一の当接荷重Waの値は増減するが、第二の当接荷重Wbを第一の当接荷重Waと比較して、第二の調整ボルト16bの前後進を繰り返しつつ(微調整)、第二の当接荷重Wbが第一の当接荷重Waと略同一となった位置に第二の調整ボルト16bを位置決めする。
【0079】
(5)ローラ4と回転テーブル3との間に設定したスペーサ等を撤去する。
【0080】
以上の方法により、一対のストッパ(第一および第二のストッパ14a、14b)のそれぞれの受圧部(第一および第二の受圧部17a、17b)を揺動アーム7のそれぞれ対応する当接部(第一および第二の当接部18a、18b)に均等な荷重で当接させることができる。
【0081】
<第三の実施形態>
図9は、本発明に係る竪型ミルの第三の実施形態における間隙調整手段の構成を示す図である。
【0082】
以下、本発明に係る竪型ミルの第三の実施形態について、主として第一または第二の実施形態と相違する事項を中心に説明するものとし、以下で説明しない事項等については、特に矛盾等がない限り、第一または第二の実施形態と同様とする。
【0083】
第三の実施形態における間隙調整手段5は、揺動アーム7の下部にローラ4の中心軸を挟んで左右の両側に略対称に一対配設された第一の当接部18aおよび第二の当接部18bと、揺動アーム7が下方に揺動したときに、第一の当接部18aが当接する第一の受圧部17aを有する第一のストッパ14aおよび第二の当接部18bが当接する第二の受圧部17bを有する第二のストッパ14bと、を備えている。
【0084】
第一および第二のストッパ14a、14bは、それぞれケーシング2の内部を開放するためのカバー30に配設された第一および第二の雌ネジ15a、15bと、第一および第二の雌ネジ15a、15bのそれぞれに螺合する第一および第二の調整ボルト16a、16bとを有し、第一および第二の調整ボルト16a、16bを回転させることにより、第一および第二の受圧部17a、17bを当接部18a、18bに向けて前後進(移動)させ、回転テーブル3とローラ4との限界間隙および初期隙間を設定することができる。
【0085】
以下、第三の実施形態における間隙調整手段5の構成、作動原理、機能等について、図9に基づいて詳細に説明する。なお、ローラ4を挟んで略対称に左右一対として配置された、第一の当接部18aや受圧部17a等間の関係や作用等と第二の当接部18bや受圧部17b等間の関係や作用等は特に断らない限り同一であるので、以下においては、第一の実施形態の場合と同様に、説明の便宜から、「第一の」構成について主とし、「第二の」構成について括弧内に記載する。
【0086】
第一の調整ボルト16a(第二の調整ボルト16b)には、第一の雌ネジ15a(第二の雌ネジ15b)と螺合する雄ネジが形成されている部分より前方の部分に、軸方向の変位(歪み)を測定する第一の歪みゲージ26a(第二の歪みゲージ26b)が配設されており、第一調整ボルト16a(第二の調整ボルト16b)と第一の当接部18a(第二の当接部18b)とが当接したとき、歪みゲージ26a(26b)の変位により第一の受圧部17a(第二の受圧部17b)と第一の当接部18a(第二の当接部18b)との第一の当接荷重Wa(第二の当接荷重Wa)を取得することができる。第一の歪みゲージ26a(第二の歪みゲージ26b)は、当接荷重取得手段を構成している。
【0087】
上記構成を備えた第三の実施形態においても、第一および第二の実施形態と同様に、当接荷重取得手段20を備えているため、原料等を加圧していない状態、すなわち静荷重のみが作用している状態で、受圧手段17に当接手段18を当接しているときには、ローラ4の重量を推定するための測定値を取得することができることから、ローラ4の重量変化によりローラ4の摩耗量を推定することができる。また、ローラ4が摩耗してくると、初期隙間が広がり、摩耗していなければ、通常の原料粉砕時の状態(図6(a))となるべき条件でも、受圧部17a、17bと板状部材25a、25bが当接し、皿ばね19a、19bを圧縮するように押し込む状態(図6(b))となる頻度が増えるため、当接荷重取得手段20により、ローラ4の摩耗が進行していることを予測することもできる。これにより、ローラ4の摩耗量測定のためにケーシング2を開放して内部に入ることなく、外部から容易にローラ4の摩耗量を推定でき、竪型ミルの稼働率の向上等が容易に可能となる。
【0088】
次に、前記で説明した間隙調整手段5を使用して一対のストッパ(第一および第二のストッパ14a、14b)のそれぞれの受圧部(第一および第二の受圧部17a、17b)を揺動アーム7のそれぞれ対応する当接部(第一および第二の当接部18a、18b)に均等な荷重で当接させる方法(当接荷重分配調整方法)について、以下に説明する。
【0089】
当接荷重分配調整は、以下の手順で実行される。
【0090】
(1)まず、回転テーブル3上に被粉砕物を積層せずに、ローラ4と回転テーブル3との間に目標間隙の厚みのスペーサ等を設置して、揺動アーム7を下方に揺動させ、第一および第二の受圧部17a、17bを、第一および第二の当接部18a、18bに当接しない位置まで後進(後退)させる。なお、第一および第二の受圧部17a、bは、第一および第二の歪みゲージ26a、bの変位がない状態の位置まで後進(後退)させておく。
【0091】
(2)一対の調整ボルトの一方、例えば第一の調整ボルト16aを前進させ、第一の受圧部17aを第一の当接部18aに当接させた後、ローラ4が浮き上がり始める位置まで第一の調整ボルト16aをさらに前進させ、第一の板状部材25aが第一の留め具22aと第一のスペーサ21aとの中間の領域に位置し、第一の皿ばね19aが押し込まれて変位している状態Bとする。ここで、計測されたひずみより、第一の当接荷重Waを求める。
【0092】
(3)第二の調整ボルト16bを前進させ、第二の受圧部17bを第二の当接部18bに当接させ後、第二の板状部材25bが、第二の留め具22bと第二のスペーサ21bとの中間の領域に位置し、第二の皿ばね19bが押し込まれて変位している状態Bとする。ここで、計測されたひずみより、第二の当接荷重Wbを求める。
【0093】
(4)第二の当接荷重Wbの値によって、第一の当接荷重Waの値は増減するが、第一および第二の当接荷重の大きさを比較して、第一のストッパ14aおよび/または第二のストッパ14bの押し付けの微調整を行い、第一および第二の受圧部17a、17bと第一および第二の当接部18a、18bとの当接荷重が略同一になるように設定する。
【0094】
(5)ローラ4と回転テーブル3との間に設定したスペーサ等を撤去する。
【0095】
以上の方法により、一対のストッパ(第一および第二のストッパ14a、14b)のそれぞれの受圧部(第一および第二の受圧部17a、17b)を揺動アーム7のそれぞれ対応する当接部(第一および第二の当接部18a、18b)に均等な荷重で当接させることができる。
【0096】
上述した各実施形態によれば、加圧していない状態においては、当接荷重取得手段によってローラ自重を計測することができるので、ミル機内に入らずにローラの摩耗量を推測することができる。また、ローラ4が摩耗してくると、初期隙間が広がり、摩耗していなければ、通常の原料粉砕時の状態(図6(a))となるべき条件でも、受圧部17a、17bと板状部材25a、25bが当接し、皿ばね19a、19bを圧縮するように押し込む状態(図6(b))となる頻度が増えるため、当接荷重取得手段20により、ローラ4の摩耗が進行していることを予測することもできる。なお、このローラ摩耗量をミル機内に入らずに推測できるという効果については、ストッパの受圧部が複数設けられている場合に限らず、ストッパの受圧部が1つだけ設けられている場合でも奏することができる。
【0097】
また、ストッパの受圧部が複数(2つ或いは3つ以上)設けられている場合でも、複数の受圧部を揺動アームのそれぞれ対応する当接部に均等な当接荷重で当接させることができる。
【符号の説明】
【0098】
2 ケーシング
3 回転テーブル
4 ローラ
5 間隙調整手段
6 油圧シリンダ
7 揺動アーム
9 保持部
10 支軸
14 ストッパ機構
14a 第一のストッパ
14b 第二のストッパ
15 雌ネジ部
15a 第一の雌ネジ
15b 第二の雌ネジ
16 調整ボルト部
16a 第一の調整ボルト
16b 第二の調整ボルト
17 受圧手段
17a 第一の受圧部
17b 第二の受圧部
18 当接手段
18a 第一の当接部
18b 第二の当接部
19 緩衝手段
19a 第一の皿ばね
19b 第二の皿ばね
20 当接荷重取得手段
20a 第一のリニアスケール
20b 第二のリニアスケール
21 スペーサ部材
21a 第一のスペーサ
21b 第二のスペーサ
22 留め部材
22a 第一の留め具
22b 第二の留め具
23 緩衝手段
23a 第一の緩衝装置
23b 第二の緩衝装置
24 ナット部
24a 第一のナット
24b 第二のナット
25 板状部材
25a 第一の板状部材
25b 第二の板状部材
26 第当接荷重取得手段
26a 第一の歪みゲージ
26b 第二の歪みゲージ
30 カバー
51 竪型ミル
52 ケーシング
53 回転テーブル
54 ローラ
55 加圧機構
56 支軸
57、57a、57b ストッパ
58、58a、58b 調整ボルト
59 ローラ支持部材
60、60a、60b 当接部
61 揺動アーム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9