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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】放送用設備
(51)【国際特許分類】
   G08B 27/00 20060101AFI20240507BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G08B27/00 B
G08B17/00 F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019122623
(22)【出願日】2019-07-01
(65)【公開番号】P2021009529
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000003403
【氏名又は名称】ホーチキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079359
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 進
(72)【発明者】
【氏名】石田 憲
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴久
【審査官】田畑 利幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-132748(JP,A)
【文献】特開2002-170167(JP,A)
【文献】特開2004-126827(JP,A)
【文献】特開平07-230585(JP,A)
【文献】特開2010-061614(JP,A)
【文献】特開2014-016684(JP,A)
【文献】特開平07-105466(JP,A)
【文献】特開2017-146702(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00-17/12
G08B 19/00-31/00
H04M 9/00- 9/10
A62C 2/00-99/00
G11B 5/33- 5/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送制御盤と複数ある放送地区毎に設置された放送用報知装置を備えた放送用設備に於いて、
放送制御線を介して前記放送制御盤から受信した制御信号に基づき、前記放送制御線とは異なる放送音声信号線を介して前記放送制御盤から受信した放送音声信号を前記放送用報知装置に送信して音声出力させる中継器を複数備え、
前記制御信号には、前記複数ある放送地区のうち、放送の対象とする放送地区を指定した情報が含まれ、
前記中継器の各々は、前記複数ある放送地区の中から所定の複数の放送地区に設置された放送用報知装置のうち、前記指定された放送地区の放送用報知装置に対して前記放送音声信号を送信することを特徴とする放送用設備。
【請求項2】
放送制御盤と複数ある放送地区毎に設置された放送用報知装置を備えた放送用設備に於いて、
放送制御線を介して放送制御盤から受信した制御信号に基づき、自身の記憶部に記憶している放送音声信号を前記放送用報知装置に送信して音声出力させる中継器を複数備え、
前記制御信号には、前記複数ある放送地区のうち、放送の対象とする放送地区を指定した情報が含まれ、
前記中継器の各々は、前記複数ある放送地区の中から所定の複数の放送地区に設置された放送用報知装置のうち、前記指定された放送地区の放送用報知装置に対して前記放送音声信号を送信することを特徴とする放送用設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送用設備関する。
【背景技術】
【0002】
従来、受信機から引き出された信号回線に火災感知器を接続して火災を監視する火災報知設備等の防災設備が知られている。また、従来の非常放送用設備は、防災設備と連動し、火災が発生した場合に、火災の発生を知らせ、避難誘導放送を行う。
【0003】
防災設備に設けた火災受信機は、警戒区域の火災を検知して発報した火災感知器からの発報信号を受信した場合に火災警報を出力すると共に、発報区域を示す発報区域識別信号としての階別信号を非常放送装置に送信し、これを受信した非常放送装置は火災発生階及び直上階に設置しているスピーカーから感知器発報放送として「ただいま○○階の火災報知器が作動しました。確認しておりますので、次の放送にご注意ください。」を出力する。
【0004】
この感知器発報に対し所定の時間が経過した場合、または防災センターの係員等が現場に出向いて火災を確認した場合には、例えば発信機の押しスイッチ操作等の火災確認操作に基づき火災受信機から火災確認信号を非常放送装置へ送信し、それまでの感知器発報放送から火災放送に切替え、「火事です。火事です。○○階の火災が発生しました。落ち着いて避難してください。」を出力する。また火災放送から所定の設定時間が経過すると、非常放送装置は全館一斉放送に切替える。
【0005】
一方、現場に出向いて非火災を確認した場合には、非常放送装置に設けた非火災放送スイッチの操作により、それまでの発報放送から非火災放送に切替え、「さきほどの火災感知器の作動は、確認の結果、異常がありませんでした。ご安心下さい。」を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-233984号公報
【文献】特開平6-314385号公報
【文献】特開2007-219870号公報
【文献】特開2017-191418号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような従来の非常放送用設備にあっては、防災センター等に設置された非常放送装置のアンプ装置から所定の放送エリア例えば階ごとにスピーカーに接続するスピーカー信号線を引かなければならず、放送エリア(階)が多くなると配線数が多くなり、全体としての配線量が増加し、大きな配線スペースを必要とし、設置工事に工数がかかり、設備コストが嵩んでいる。
【0008】
また、連携関係にある従来の防災設備と非常放送用設備は、受信機と非常放送盤を別々に設置していることから設置スペースが増加し、火災表示や出火階表示等の表示内容が重複するが、設備毎に表示するために設備構成が複雑となり、また、防災担当者等は受信機と非常放送盤をそれぞれ操作しなければならず、火災発生という緊急時の操作や対処に手間と時間がかる場合があり、この問題を解決するため本願発明者は防災設備の受信機に非常放送用設備の機能を組み込むことにより、設定スペースの低減、火災発生時の重複表示の回避、及び火災対処と非常放送の操作性を向上する防災設備を提案しているが、この防災設備にあっても、従来の放送用設備と同様に、スピーカー信号線の配線量が増加し、大きな配線スペースを必要とし、設置工事に工数がかかり、設備コストが嵩んでいる。
【0009】
本発明は、スピーカー信号線の配線量を低減することで設備構成を簡単にしてコストの低減を可能とする放送用設備提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第1発明及び第2発明の放送用設備)
本発明は、放送制御盤と放送用報知装置(スピーカー)を備えた放送用設備に於いて、
放送制御線を介して放送制御盤から受信した制御信号に基づき、放送制御線とは異なる放送音声信号線を介して放送制御盤から受信した放送音声信号放送用報知装置に送信して音声出力させる中継器を備えることを特徴とする。
また、本発明の他の形態にあっては、放送制御盤と放送用報知装置を備えた放送用設備に於いて
放送制御線を介して放送制御盤から受信した制御信号に基づき、自身の記憶部に記憶している放送音声信号を放送用報知装置に送信して音声出力させる中継器を備えることを特徴とする。
【0011】
(第発明の防災設備)
本発明の他の形態にあっては、
放送制御盤が一体に形成された受信機と、
受信機から警戒区域毎に引き出された伝送線に接続され、固有のアドレスを有する複数の火災感知器と、
警戒区域と同じ区域で分けられた放送地区毎に配置され、受信機から引き出された自己の放送地区と同じ区域となる警戒区域の伝送線及び伝送線とは別に引き出された放送音声信号線に接続された複数の放送用中継器と、
放送地区毎に配置され、同じ放送地区の放送用中継器に接続される複数の放送用報知装置と、
を備え、
警戒区域が共通する複数の火災感知器及び同じ区域となる放送地区の放送用中継器は、同一の伝送線により接続され、
放送音声信号線は、受信機からの幹線を有し、幹線から放送地区毎に分岐し、分岐した先で放送用中継器の各々に接続され、
火災感知器が火災を検出したときには、
受信機は、当該火災を検出した火災感知器が接続された伝送線を介して、当該伝送線に接続された放送用中継器に制御信号を送信すると共に、放送音声信号線を介して放送音声信号を送信し、
放送用中継器は、受信した制御信号に基づき、受信した放送音声信号を増幅して、同じ放送地区に配置された放送用報知装置に送信し、
放送用報知装置は、受信した放送音声信号に基づき放送を行うことを特徴とする。
【0013】
(受信機と一体かつ制御線を兼用)
放送制御盤は、少なくとも通信経路の一部に伝送線を用いて火災感知器と接続する受信機と一体の盤に形成され、
放送制御線は、少なくとも一部が伝送線を兼ねる。
【0014】
(中継器の電源部と試験)
中継器に、
バッテリーを予備電源として備えた商用交流電源で動作する電源部と、
放送制御部から受信した電源試験指示信号に基づき電源部を試験して試験結果を放送制御盤に送信して報知させる電源試験部と、
が設けられる。
【0015】
(1の中継器で複数の放送地区をカバー)
放送用報知装置は複数ある放送地区毎に設置され、中継器を複数備えた放送用設備であって、
制御信号には、複数ある放送地区のうち、放送の対象とする放送地区を指定した情報が含まれ、
中継器の各々は、複数ある放送地区の中から所定の複数の放送地区に設置された放送用報知装置のうち、指定された放送地区の放送用報知装置に対して放送音声信号を送信する
【0016】
(中継器での点検モニタ)
中継器に、所定の点検に係る操作を判定したときに、放送用報知装置への放送音声信号を出力する点検モニタ部が設けられる。
【0017】
(分散システム)
受信機に対しネットワーク回線を介して1又は複数の中継盤が接続され、中継盤から引き出された信号回線に火災感知器が接続され、中継盤で火災を検出した場合に受信機に通知して火災警報を出力させる分散システムが構成されており、
中継盤からの伝送線及び放送音声信号線に所定の放送地区に分けて設置された中継器が接続され、
中継器からの放送音声信号線に放送地区に設置された放送用報知装置が接続され、
中継盤に、火災の発生に係る所定の判定をしたときに、受信機から伝送された所定の放送音声信号及び放送制御指示信号を中継器に送信する放送制御部が設けられ、
中継器に、放送制御部から受信した放送制御指示信号に基づき放送音声信号を増幅し、当該増幅した放送音声信号を放送用報知装置に送信して放送する中継器制御部が設けられる。
【発明の効果】
【0018】
(第1発明の効果)
本発明は、放送制御盤と放送用報知装置を備えた放送用設備に於いて、放送制御線を介して放送制御盤から送信される制御信号に基づき、放送制御線とは異なる放送音声信号線を介して放送制御盤から送信される放送音声信号を、放送用報知装置に送信して音声出力させる中継器を備えたため、放送制御盤と放送地区ごと例えば階ごとに設置された放送用報知装置として機能するスピーカーとの間の配線は、放送制御盤から各階に設置された中継器に接続する放送音声信号線と放送制御線、各階の中継器と同じ階に設置したスピーカーを接続するスピーカー信号線となり、従来、個別に行っていた放送制御盤と各階との間を結ぶ信号線ケーブルが、各階に中継器を設置することで、各階に設置された中継器を共通に接続する放送音声信号線と個別に接続する放送制御線の2本の信号線ケーブルを配線するだけで済み、配線量を低減することで設備構成を簡単にしてコストの低減を可能とする。ここで、配線量とは配線した信号線ケーブルの重量を意味する。
【0019】
また、放送制御盤と中継器の間の放送音声信号線は、中継器で増幅する前の音声信号を送ることから電流容量の小さい細い信号線ケーブルで済み、これにより放送制御線が加わっても、配線量を更に低減できる。
【0020】
また、放送音声信号を増幅してスピーカーに供給する音声増幅部(パワーアンプ)は、階ごとに設置された中継器に設けられているため、受信機に多数の音声増幅部(パワーアンプ)を設ける必要がなく、放送制御盤側の構成が簡単で小型化でき、配線数の低減と合わせて設置スペースを大幅に低減できる。
【0021】
(第2発明の効果:放送データを中継器に記憶して再生する方式の効果)
本発明の別の形態は、放送制御盤と放送用報知装置を備えた放送用設備に於いて、放送制御線を介して放送制御盤から送信される制御信号に基づき、自身の記憶部に記憶している放送音声信号を放送用報知装置に送信して音声出力させる中継器を備えたため、第1発明の配線量の低減と設置スペース低減の効果に加え、受信機からの制御指示により中継器ごとに異なった内容の放送音声信号を再生して放送することができる。例えば、火災発生階とその上下階は避難を促す放送内容とし、それ以外の階は火災発生を示す放送内容とし、火災の危険度合に合わせた避難誘導等を可能とする。
【0022】
(放送音声線を介した音声信号の記憶の効果)
また、中継器は、放送制御線とは異なる放送音声信号線を介して放送制御盤から送信される音声信号を、放送音声信号として記憶するようにしたため、放送データを予め中継器に記憶して、火災の発生を判定したときに放送データを読み出し放送音声信号に変換してスピーカーから出力させることで、受信機から放送時に必ずしも放送音声信号を送信する必要がなくなり、中継器側で簡単に非常放送を行うことができる。
【0023】
また、放送音声信号線を介して放送音声信号を送信できるため、例えば火災発生階に対しては放送制御盤から放送音声信号を送信することで生放送を行い、それ以外の階に対しては定型の火災発生を示す放送内容とすることで、より細やかな避難誘導などの放送が可能となる。
【0024】
(受信機と一体且つ制御線を兼用する効果)
また、放送制御盤は、少なくとも通信経路の一部に伝送線を用いて火災感知器と接続する受信機と一体の盤に形成され、放送制御線は、少なくとも一部が伝送線を兼ねるようにしたため、防災設備の受信機に放送制御盤の機能を組み込むことにより、設定スペースの低減、火災発生時の重複表示の回避、及び火災対処と非常放送の操作性を向上することができる。さらに、受信機におけるアドレス等の端末を特定する手段により中継器を特定することが可能となり、中継器専用の制御アルゴリズムが不要となる。また、放送制御線が伝送線を兼ねるため、省線化を図ることができる。
【0025】
(中継器の電源部と試験による効果)
また、中継器に、バッテリーを予備電源として備えた商用交流電源で動作する電源部と、放送制御部から受信した電源試験指示信号(電源試験コマンド)に基づき電源部を試験して試験結果を受信機に送信して報知させる電源試験部とが設けられたため、例えば定期的に電源試験指示信号を送って中継器の電源試験を行うことで、中継器電源に異常があった場合に迅速に対処可能として設備の信頼性を確保することできる。
【0026】
(1中継器で複数放送地区をカバーする効果)
また、中継器から複数の放送地区に分けてスピーカー信号線が引き出されて各放送地区に設置した放送用報知装置が接続され、受信機の放送制御部は、中継器に1又は複数の放送地区を指定した放送制御指示信号を送信し、中継器の中継器制御部は、放送制御指示で指定された1又は複数の放送地区へのスピーカー信号線を選択して増幅した放送音声信号を送信するようにしたため、放送地区に設置する中継器の数を低減し、設備構成を簡単にして設備コストを低減可能とする。
【0027】
(中継器での点検モニタによる効果)
また、中継器に、所定の点検に係る操作を判定したときに、放送用報知装置への放送音声信号を出力する点検モニタ部が設けられたため、例えば中継器の点検操作時に放送音声信号が点検モニタ部のジャック端子に送られ、ジャック端子にイヤホンを接続することで、正常に放送が行われるか否かを簡単に確認する試験ができる。
【0028】
(分散システムの効果)
受信機に対しネットワーク回線を介して1又は複数の中継盤が接続され、中継盤から引き出された信号回線に火災感知器が接続され、中継盤で火災を検出した場合に受信機に通知して火災警報を出力させる分散システムが構成されており、中継盤からの伝送線及び放送音声信号線に所定の放送地区に分けて設置された中継器が接続され、中継器からの放送音声信号線に放送地区に設置された放送用報知装置が接続され、中継盤に、火災の発生に係る所定の判定をしたときに、受信機から伝送された所定の放送音声信号及び放送制御指示信号を中継器に送信する放送制御部が設けられ、中継器に、放送制御部から受信した放送制御指示信号に基づき放送音声信号を増幅し、当該増幅した放送音声信号を放送用報知装置に送信して放送する中継器制御部が設けられたため、中継盤と各階に設置された中継器との間の配線は放送音声信号線と放送制御線の2本の信号線ケーブルを配線するだけで済み、配線量を低減することで設備構成を簡単にしてコストの低減を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】受信機に放送制御盤の機能が設けられた放送用設備の第1発明に係る実施形態を示した説明図
図2図1の受信機の機能構成を示した説明図
図3図1の中継器の機能構成を示した説明図
図4】3階毎に中継器を設けた実施形態を示した説明図
図5図4の中継器の機能構成を示した説明図
図6】第2発明の放送用設備に係る中継器の機能構成を示した説明図
図7】受信機と中継盤で構成された分散システムの概要を示した説明図
図8】放送制御盤を独立して設けた放送用設備の実施形態を示した説明図
図9図8の放送制御盤の機能構成を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0030】
[放送用設備]
図1は受信機に放送制御盤の機能が設けられた放送用設備の第1発明に係る実施形態を示した説明図である。
【0031】
(実施形態の基本的概念)
本実施形態による放送用設備は、放送制御盤の機能が設けられた受信機10から所定の警戒系統区域例えば階ごとに引き出された伝送線12-1~12-9に接続されたアナログ火災感知器22により建物11の火災を監視する防災設備であって、受信機10から伝送線12及び放送音声信号線14に所定の放送地区例えば階ごとに分けて設置された中継器16が接続され、中継器16からのスピーカー信号線(放送音声信号線)18に階ごとに設置された放送用報知装置として機能するスピーカー20が接続される。
【0032】
より望ましい形態としては、所定の警戒系統区域と所定の放送地区を同じくするものとし、伝送線12-1~12-9にそれぞれ中継器16が接続される。また、放送音声信号線14は階ごとに分けて分岐する前の幹線を有し、幹線から分岐した先にそれぞれ中継器16が接続される。これにより、非常放送用の伝送線を用意する必要がなくなるため、省線化の効果をさらに奏することができる。
【0033】
放送制御盤の機能が設けられた受信機10は、火災の発生に係る所定の判定をしたときに、所定の非常放送の放送音声信号を放送音声信号線14により中継器16に送信すると共に放送制御線として機能する伝送線12-1~12-9により開始及び所定の放送制御指示信号(放送制御コマンド)を中継器16へ送信する。中継器16は、受信機10から受信した放送制御指示信号に基づき放送音声信号線14により送られてくる放送音声信号を増幅し、増幅した放送音声信号をスピーカー信号線18に出力してスピーカー20から非常放送を行う、というものである。
【0034】
このため、受信機10と放送地区ごと例えば階ごとに設置されたスピーカー20との間の配線は、受信機10から火災報知設備として必要な伝送線(放送制御線)12-1~12-9と、各階に設置された中継器16を共通に接続する放送音声信号線14の幹線と、幹線から分岐してからそれぞれの中継器16に接続するまでの放送音声信号線14の分岐線と、各階の中継器16と同じ階に設置したスピーカー20を接続するスピーカー信号線18となり、従来、個別に行っていた受信機10と各階との間を結ぶ信号線ケーブルが、各階に中継器16を設置することで、各階に設置された中継器16を共通に接続する放送音声信号線(幹線と分岐線)14と、個別に接続する伝送線(放送制御線)12-1~12-9の各々との2本の信号線ケーブルを配線するだけで済み、配線量を低減することで設備構成を簡単にしてコストの低減を可能とする。
【0035】
また、伝送線は受信機10から各階に設置された中継器16まで火災報知設備として必要であるため、放送設備を追加するものとしてみた場合、放送音声信号線のみが幹線として追加となる。ここで、配線量とは例えば配線した信号線ケーブルの長さ・本数又は重量を意味する。
【0036】
また、受信機10と中継器16の間の放送音声信号線は、中継器16で増幅する前の音声信号を送ることから許容電流値の小さい細い信号線ケーブルで済み、配線量を更に低減できる。
【0037】
また、放送音声信号を増幅してスピーカーに供給する音声増幅器は、階ごとに設置された中継器16に設けられており、受信機10側に多数の音声増幅器を設ける必要がないことから、受信機10に非常放送用設備の機能が設けられても、構成を簡単にして小型化でき、配線量の低減と合わせて受信機10側の設置スペースを大幅に低減できる。以下、具体的に説明する。
【0038】
[放送用設備の第1実施形態:第1発明]
(防災設備の概要)
図1に示すように、監視対象とする建物11は例えば9階建てのビルであり、1Fの防災監視センター等に受信機10が設置されている。受信機10からは階ごとに分けて伝送線12-1~12-9が引き出され、各階に設置したアナログ火災感知器22を接続して火災を監視している。
【0039】
また、放送地区となる各階には中継器16が設置されている。受信機10からは放送音声信号線14が引き出され、各階に設置した中継器16が放送制御線として機能する伝送線12-1~12-9と、幹線と分岐線からなる放送音声信号線14に接続されている。なお、放送地区は階に限定されず、同じ階であっても複数の放送地区に分ける場合もあり、また、複数階をまとめて1つの放送地区とする場合もあり、任意である。
【0040】
中継器16からはスピーカー信号線18が引き出され、同じ階に設置したスピーカー20が共通に(並列に)接続されている。中継器16は火災を判定した受信機10からの放送指示信号として機能する所定の放送制御コマンドに基づき、受信機10から送られてくる火災警報と所定の補助放送として機能する避難誘導のための非常放送の放送音声信号を増幅し、スピーカー20から非常放送を出力させる。
【0041】
ここで、受信機10から中継器16に送信する放送制御コマンドには、少なくとも放送起動コマンドと放送停止コマンドが含まれる。また非常放送は、その内容により感知器発報放送、火災放送、非火災放送に分けられる。
【0042】
また、放送音声信号線14により送る放送音声信号は中継器16で増幅する前の例えば0~5ボルトの音声信号であることから、放送音声信号線14に使用する信号線ケーブルの許容電流値は例えば1アンペア以下で良く、細い信号線ケーブルを使用する。
【0043】
また、伝送線12-1~12-9は、0~30ボルトの電圧パルスや1アンペア以下の電流パルスを用いて各種のデータ信号をシリアル伝送することから、これに使用する信号線ケーブルの電流容量も例えば1アンペア以下で良く、細い信号線ケーブルを使用することができる。
【0044】
これに対し中継器16からのスピーカー信号線18は中継器16で増幅した例えば0~100ボルトといった音声信号を放送音声信号として送ることから、これ見合った十分に大きな許容電流値と耐圧特性が必要となり、伝送線12-1~12-9や放送音声信号線14に比べると、より太目の信号線ケーブルを使用している。
【0045】
(受信機の機能構成)
図2図1の受信機の機能構成を示した説明図である。図2に示すように、本実施形態はR型(Record-type)の防災設備を例にとっており、R型の受信機10から警戒区域に対し例えば階別の系統毎に分けて伝送線12-1、12-2・・・12-9が引き出されている。なお、以下の説明では、伝送線12-1~12-9を区別する必要がない場合は、伝送線12という場合がある。
【0046】
伝送線12-1には固有のアドレスが設定された伝送機能を有する複数のアナログ火災感知器22が接続され、また、固有のアドレスが設定された伝送機能を有する火報用中継器24から引き出された感知器回線25にオンオフ火災感知器26及び発信機27が接続されている。
【0047】
伝送線12-2には複数のアナログ火災感知器22の接続に加え、固有のアドレスが設定された伝送機能を有するアドレッサブル発信機28が接続されている。更に、他の伝送線には固有のアドレスが設定された伝送機能を有する中継器を介して防排煙機器が接続されるが、図示を省略している。
【0048】
伝送線12-1~12-9には階ごとに設置した中継器16が接続され、中継器16には固有のアドレスが設定され、伝送機能を有する。
【0049】
また、受信機10から放送音声信号線14が図1に示したように建物11の階方向(高さ方向)に引き出され、放送音声信号線14に中継器16が共通に接続されている。
【0050】
ここで、例えば伝送線12-1に接続されるアナログ火災感知器22、火報用中継器24等の端末機器に設定される最大アドレス数は例えば255としており、伝送線12-1には最大255台のアナログ火災感知器22を含む端末機器が接続できる。他の伝送線12-2~12-9も同様である。
【0051】
受信機10には、メインCPU30と複数のサブCPU基板32-1~32-9が設けられ、サブCPU基板32-1~32-9にはサブCPU34-1~34-9と伝送部36-1~36-9が設けられている。伝送部36-1~36-9のデータ伝送速度は例えば1200bps又は2400bpsとする。メインCPU30とサブCPU34は、シリアル転送バス35で接続されており、相互にデータを送受信する。
【0052】
メインCPU30には、液晶表示パネル等を用いたタッチパネル付きのディスプレイ38が接続され、ディスプレイ38には受信機10による火災監視に必要な情報がそのときの受信機10の状況に応じて表示される。ディスプレイ38による火災監視に必要な情報には、通常監視時及び火災時に発生したイベント、運用管理に必要な情報、対処操作に必要な情報等の全ての情報、更に、受信機10の保守点検モードでの運用管理や操作に必要な情報も含まれる。
【0053】
また、ディスプレイ38には火災発生時に非常放送の運用操作に必要な情報を示す非常放送画面が表示され、画面操作により放送制御や各種の設定を可能としている。
【0054】
メインCPU30に対して表示部として機能するディスプレイ38に加え、LED等の表示灯を用いた表示部40が設けられる。表示部40には火災代表灯、ガス漏れ代表灯等が設けられる。
【0055】
また、メインCPU30に対しては操作部42が接続され、操作部42には火災監視に必要な火災断定スイッチ、主音響停止スイッチ、地区音響一時停止スイッチ等の各種スイッチ等が設けられる。更に、メインCPU30にはスピーカーが設けられた音響警報部44、及び、移報部46が接続されている。
【0056】
メインCPU30にはプログラムの実行により機能する受信制御部50と放送制御部60が設けられる。
【0057】
更に、受信機10には、放送制御盤としての機能を実現するため、放送音源部56、アナウンスマイク54、非常放送スピーカー52、放送音声信号送受信部58が設けられるが、その詳細は後の説明で明らかにする。
【0058】
(受信機の火災監視制御)
図2に示すように、サブCPU基板32-1のサブCPU34-1を例にとると、伝送部36-1に指示してアナログ火災感知器22との間で所定の通信プロトコルに従って信号を送受信することで、火災監視制御を行っている。伝送部36-1からアナログ火災感知器22に対する下り信号は電圧モードで伝送している。この電圧モードの信号は、伝送線12-1の線路電圧を例えば18ボルトと30ボルトの間で変化させる電圧パルスとして伝送される。
【0059】
これに対しアナログ火災感知器22から伝送部36-1に対する上り信号は電流モードで伝送される。この電流モードにあっては、伝送線12-1に伝送データのビット1のタイミングで信号電流を流し、いわゆる電流パルス列として上り信号が受信機10に伝送される。
【0060】
サブCPU34-1による火災監視制御は、通常の監視中にあっては、一定周期毎に、伝送部36-1に指示して、一括AD変換コマンドを含むブロードキャストの一括AD変換信号を送信しており、この一括AD変換信号を受信したアナログ火災感知器22は、煙濃度又は温度をセンサデータとして検出して保持する。続いて、サブCPU34-1は、端末アドレスを順次指定したポーリングコマンドを含む呼出信号を送信している。
【0061】
アナログ火災感知器22は自己アドレスに一致するアドレスを持つ呼出信号を受信すると、そのとき保持しているセンサデータを含む応答信号を伝送部36-1に送信する。また、アナログ火災感知器22は煙濃度又は温度が所定の火災注意レベルを超えると受信機10の伝送部36-1に対し火災割込み信号を送信する。
【0062】
サブCPU34-1は伝送部36-1を介して火災割込み信号を受信すると、グループ検索コマンド信号を送信して火災を検出しているアナログ火災感知器22を含むグループを特定し、続いて、グループ内検索コマンド信号を送信して火災を検出しているアナログ火災感知器22のアドレスを特定してセンサのアナログデータを集中的に収集し、シリアル転送バス35を介してメインCPU30に送信する。
【0063】
メインCPU30はサブCPU34-1から受信したアナログデータを所定の火災判定レベルと比較しており、アナログデータが火災判定レベルに達した場合に火災と判定し、表示部40の火災代表灯を点灯し、音響警報部44のスピーカーから火災発生を示す所定の主音響警報を出力させ、ディスプレイ38に火災が検出された感知器アドレスに基づき火災発生場所を含む火災警報情報を表示させ、更に、移報部46により火災移報信号を外部に出力して所定の移報制御等を行わせる。
【0064】
サブCPU基板32-2に設けられたサブCPU34-2と伝送部36-2による火災監視制御も、前述したサブCPU基板32-1の場合と同じになる。
【0065】
[非常放送用設備機能]
(受信機の放送制御盤機能と構成)
図2の受信機10のメインCPU30に設けられた放送制御部60に対応して受信機10には、放送音源部56、アナウンスマイク54、非常放送スピーカー52、放送音声信号送受信部58が設けられる。
【0066】
放送音源部56には感知器発報放送、火災放送、非火災放送、地震や盗難等の緊急放送、訓練放送等を含む非常放送の放送データ(放送メッセージ情報)を記憶しており、放送制御部60から指示を受けた放送データを読み出しアナログの放送音声信号(音声信号)に変換して放送音声信号送受信部58に出力する。
【0067】
放送音声信号送受信部58は放送音源部56の放送データから変換された放送音声信号を入力し放送音声信号線14により放送地区となる各階に設置された中継器16に放送音声信号を出力する。また、別の実施形態で示すように、放送音声信号送受信部58は放送地区に設置した中継器16から送られてきた放送地区での非常放送を示す放送モニタ信号を受信し、非常放送スピーカー52へ出力する。
【0068】
アナウンスマイク54は受信機10の盤面に設けており、必要に応じて防災管理者等が避難誘導などを指示する放送入力を行うことを可能とする。非常放送スピーカー52は受信機10から行う非常放送を出力すると共に、別の実施形態で示すように、中継器16から送られてくる放送地区の非常放送を示す放送モニタ信号を受けてモニタした非常放送を出力する。
【0069】
(非常放送用の中継器)
図3図1の中継器の機能構成を示した説明図である。図3に示すように、非常放送用の中継器16には、CPU62、伝送部64、音声増幅部66、電源部68、バッテリー70、電源試験部72、表示部74、放送試験スイッチ76、モニタスピーカー78及びモニタジャック80が設けられ、また、CPU62にはプログラムの実行により実現される中継器制御部65の機能が設けられ、また、固有のアドレスが設定されている。
【0070】
音声増幅部66は放送音声信号線14により受信機10から送信された放送音声信号を入力し、CPU62に設けた中継器制御部65の制御指示を受けて動作し、入力した放送音声信号をスピーカー20から所定音圧以上の出力が得られるように増幅し、増幅した放送音声信号をスピーカー信号線18に出力する。なお、音声増幅部66は放送音声信号の入力のない通常時は、例えば電源供給を停止するか、増幅利得を抑制する等して動作を停止しており、中継器制御部65からの制御信号を受けて動作状態となる。なお、音声増幅部66を常に動作状態とし、中継器制御部65による制御を不要にしても良い。
【0071】
音声増幅部66はスピーカー信号線18に多数のスピーカー20を接続していることから、ハイインピーダンス型のパワーアンプを使用して出力電流値を低減しており、また、使用するパワーアンプは50ワットを超える大型のものを使用することでL級、M級、S級に対応した92dB/1m、87dB/1m、82dB/1m以上の音圧を確保している。
【0072】
伝送部64は伝送線12を介して図2に示した受信機10との間で各種の放送制御コマンドや放送データのやり取りを行う。伝送部64は受信機10から電圧モードで送信された放送制御コマンド及び放送データを受信してCPU62に出力する。また、CPU62の指示に基づき受信した放送制御コマンドに対する応答コマンドやデータを電流モードで受信機10に送信する。
【0073】
CPU62に設けられた中継器制御部65は、伝送部64を介して受信した放送制御コマンドに基づき、音声増幅部66の動作を制御する。中継器制御部65は受信機10から自己アドレスを指定した放送起動コマンドを受信すると音声増幅部66を動作する制御を行い、そのとき放送音声信号線14を介して送られてくる放送音声信号を増幅してスピーカー信号線18に出力させる。また、中継器制御部65は放送起動コマンドを受信した後に受信機10から自己アドレスを指定した放送停止コマンドを受信すると、音声増幅部66の動作を停止させる制御を行う。
【0074】
電源部68は中継器16の設置場所で得られた商用交流電源AC100Vを入力して直流電源に変換し、中継器各部に所定の電源電圧を供給する。また、電源部68には予備電源としてバッテリー70が設けられている。電源部68は商用交流電源AC100ボルトが得られる通常時にはバッテリー70を充電しており、商用交流電源AC100ボルトが停電すると自動的にバッテリー70からの電源供給に切り替わり、例えば10分以上の動作時間を保証している。
【0075】
電源試験部72は中継器制御部65が受信機10から電源試験コマンドを受信したときに動作し、電源部68に対し所定の試験を行い、正常又は異常の試験結果を得て中継器制御部65に出力し、中継器制御部65は電源試験コマンドに対する応答コマンドとして試験結果を伝送部64に指示して受信機10へ送信し、試験異常であれば受信機10側で中継器16の電源異常が例えば図2に示したディスプレイ38の表示により報知される。受信機10からの電源試験コマンドの送信は例えば1日1回となる24時間周期で定期的に行われる。電源部68に対する所定の試験は、例えばバッテリーの蓄電量等のバッテリーの状態を確認するための試験を含む概念である。
【0076】
放送試験スイッチ76は中継器16の点検時に非常放送が正常に行われることを点検するために使用する。点検時に放送試験スイッチ76を操作すると、中継器制御部65が放送試験操作を判定し、伝送部64に指示して自己アドレスを含む放送試験コマンドを受信機10に送信する。図2に示した受信機10の放送制御部60は、中継器16からの放送試験コマンドを受信すると放送音源部56から所定の放送データを読み出して放送音声信号に変換し、放送音声信号送受信部58から放送音声信号線14に出力して中継器16に送る。
【0077】
このとき音声増幅部66は、スピーカー20からの音量を十分に絞るために、非常放送時よりは十分に小さい所定の増幅利得に設定されており、モニタスピーカー78から試験放送を出力して確認するか、また、モニタジャック80にイヤホーンを接続して試験放送を確認する。なお、モニタジャック80にイヤホーンを接続するとモニタスピーカー78は切り離される。
【0078】
また、放送試験時に音声増幅部66の増幅利得を下げてスピーカー20からの音量を絞っているが、これに代えて音声増幅部66の出力ラインに対するモニタスピーカ78とモニタジャック80の接続点より先にスイッチ回路を設け、放送試験時にスイッチ回路をオフしてスピーカー20から放送音が出ないようにしても良い。
【0079】
また、放送試験時に火災感知器の発報等で非常放送を行う場合はスピーカー20から放送音を出力するものとし、モニタジャック80に接続したイヤホーンやモニタスピーカー78からの音量は放送音が聞き取り可能な音量へ自動的に調整されるようにしても良い。
【0080】
[受信機の非常放送の制御動作]
(感知器発報放送)
図2に示したアナログ火災感知器22からの火災信号に基づき受信機10の受信制御部50で感知器発報を判定した火災発生時には、ディスプレイ38に、火災発生地区例えば「2階 南地区 発生時刻 12:07」を第1報の火災発生表示として火災警報画面が表示される。
【0081】
このような火災警報表示に連動して放送制御部60は、火災発生階2Fの中継器16のアドレスを指定した放送起動コマンドを中継器16に接続する伝送線12-2に送信し、同時に、放送音源部56に記憶されている感知器発報放送の放送データを読み出して感知器発報放送音声信号に変換し、放送音声信号線14に出力して中継器16へ送信する。
【0082】
このため火災発生階となる2Fに設置された図3に示した中継器16の中継器制御部65は、自己アドレスを指定した放送起動コマンドを受信して音声増幅部66を動作し、受信機10から放送音声信号線14により送られてきた感知器発報放送音声信号を増幅してスピーカー信号線18に出力し、2階に設置しているスピーカー20から例えば「ただいま2階南地区の火災報知器が作動しました。確認しておりますので、次の放送にご注意ください。」とする感知発報放送が出力される。
【0083】
(火災放送)
図2の受信機10における第1報の火災発生表示に対し、防災管理者は現場確認を行い、火災であった場合には、受信機10の火災断定スイッチを操作し、これにより地区音響鳴動停止解除、連動制御、移報制御が行われる。
【0084】
また、防災管理者は、ディスプレイ38に表示されている非常放送画面を使用して例えば直上階3F及び直下階1Fの階選択操作を行なうと、放送制御部60は直上階3F及び直下階1Fの中継器16のアドレスを順次指定した放送起動コマンドを伝送線12-1、12-3に出力し、同時に、放送音源部56から火災放送データを読み出して火災放送音声信号に変換して放送音声信号線14に出力して中継器16へ送信する。
【0085】
火災発生階2Fに対する直上階3F及び直下階1Fに設置された中継器16の中継器制御部65は、自己アドレスを指定した放送起動コマンドを受信して音声増幅部66を動作し、受信機10から放送音声信号線14により送られてきた火災放送音声信号を増幅してスピーカー信号線18に出力し、また火災発生階2Fの中継器16の音声増幅部66は既に動作していることから、火災発生階2F、直上階3F及び直下階1F設置されたスピーカー20から例えば「火事です。火事です。2階南地区で火災が発生しました。落ち着いて避難してください。」とする火災放送が出力される。
【0086】
また、火災放送の放送中に火災が更に拡大した場合には、防災管理者は、ディスプレイ38に表示されている非常放送画面を使用して一斉放送操作を行うと、放送制御部60は全ての階の中継器16を指定する放送起動コマンドを伝送線12-1~12-9に出力し、火災発生階2F、直上階3F及び直下階1F以外の階に設置された中継器16の中継器制御部65は、放送起動コマンドを受信して音声増幅部66を動作し、受信機10から放送音声信号線14により送られてきた火災放送音声信号を増幅してスピーカー信号線18に出力し、これにより全ての階のスピーカー20から火災放送が出力される一斉放送となる。
【0087】
(非火災放送)
受信機10による第1報の火災発生表示に対し、防災管理者は現場確認を行い、火災でなかった場合には、非常放送画面の中の非火災放送スイッチを操作し、これに基づき放送制御部60は、放送音源部56からの非火災放送データを読み出して非火災放送音声信号に変換して放送音声信号線14に出力して中継器16に送る。
【0088】
このため火災発生階となる2Fに設置された図3に示した中継器16の音声増幅部66は、受信機10から放送音声信号線14により送られてきた非火災放送音声信号を増幅してスピーカー信号線18に出力し、2階に設置しているスピーカー20から例えば「ただいまの火災報知器の作動は、確認の結果、問題ありませんでした」とする非火災放送が出力される。
【0089】
更に、防災管理者は非火災放送を行った後に、非常放送画面の中の非火災放送スイッチを操作すると、放送制御部60は全ての階の中継器16を指定した放送停止コマンドを伝送線12-1~12-9に出力し、これにより放送中の階に設置された中継器16の中継器制御部65は音声増幅部66の動作を停止し、非常放送を終了させる。この放送停止コマンドによる非常放送の終了は、火災放送後に火災が鎮火が確認された場合も同様にして行う。
【0090】
[複数の放送地区ごとに中継器を設置する放送用設備の実施形態]
図4は建物の3階ごとに中継器を設けた実施形態を示した説明図、図5図4の中継器の機能構成を示した説明図である。
【0091】
図4に示すように、本実施形態の防災システムは、建物11の3階ごと、例えば図示の1階乃至3階(1F乃至3F)ごとに中継器16を設け、中継器16からスピーカー信号線18-1~18-3を1F、2F、3Fに分けて引出し、それぞれの階に設置したスピーカー20を接続している。中継器16と接続する伝送線12は、1階乃至3階のうちのいずれかでよく、例えば伝送線12-2が接続される。それ以外の構成は図1の実施形態と同じである。また、受信機10の構成も、放送制御コマンドに階を指定する情報が追加される点以外は、図2に示したと基本的に同じになる。
【0092】
図4の中継器16は、図5に示すように、音声増幅部66の出力側に回線選択部86が設けられ、回線選択部86からスピーカー信号線18-1~18-3がスピーカー20側に引き出されている。回線選択部86はCPU62に設けた中継器制御部65の制御指示により音声増幅部66からの放送音声信号を、スピーカー信号線18-1~18-3の何れか1つ、何れか2つ、又は全てに出力する選択動作を行う。
【0093】
例えば回線選択部86は音声増幅部66からの入力ラインを3つの出力ラインに分岐し、分岐した出力ラインの各々に中継器制御部65の指示でオン、オフするスイッチ回路を設けることで実現される。
【0094】
図2に示した受信機10の放送制御部60は、図4の建物11で火災が発生した場合、3階ごとに設けられた中継器16に対し、中継器アドレスと放送階を指定する情報(1F 2F 3F)を含む放送起動コマンドを送信する。ここで、放送階の指定をビット1、指定なしをビット0とすると、例えば建物の2Fで火災が発生し、火災発生階2Fで非常放送を行う場合、受信機10の放送制御部60は、2階の中継器16のアドレスを指定するとともに放送階の指定情報(1F 2F 3F)を(0 1 0)とした放送起動コマンドを伝送線12-2に出力して中継器16へ送信する。
【0095】
図5に示した中継器16の中継器制御部65は、伝送部64を介して受信した自己アドレスを指定した放送制御コマンドから放送階の指定情報(0 1 0)を抽出し、放送階が2Fであることを認識し、音声増幅部66を動作すると共に回線選択部86により指定された放送階2Fに対応したスピーカー信号線18-2を選択し、音声増幅部66からの放送音声信号を選択したスピーカー信号線18-2に出力し、火災発生階となる2Fのスピーカー20から非常放送を出力させる。
【0096】
また、火災発生階2F、直上階3F及び直下階1Fから非常放送を行う場合には、放送起動コマンドの放送階の指定情報(1F 2F 3F)を(1 1 1)として送信することとなり、この放送起動コマンドに基づき図5に示した中継器16は回線選択部86によるスピーカー信号線18-1~18-3の全てに音声増幅部66からの放送音声信号を出力し、火災発生階2F、直上階3F及び直下階1Fのスピーカー20から非常放送を出力させる。
【0097】
また、火災発生階が3Fであり、直上階が4F及び直下階が2Fであった場合には、1F~3Fを対象に設置した中継器16には放送階を示す情報(1F 2F 3F)を(0 1 1)として放送起動コマンドを送信し、4F~6Fを対象に設置した別の中継器16には放送階を示す情報(4F 5F 6F)を(1 0 0)とした放送起動コマンドを送信し、火災発生階3F、直上階4F及び直下階2Fのスピーカー20から非常放送を出力させる。
【0098】
なお、中継器16を設置する階の数(放送地区の数)は任意であるが、火災発生階、直上階及び直下階は同時に非常放送の対象となることから、3階ごとに中継器16をもうけることが望ましい。
【0099】
[放送データを中継器に記憶して再生する放送用設備の実施形態:第2発明]
(放送データの記憶と再生)
図6は第2発明の放送用設備に係る中継器の機能構成を示した説明図である。本実施形態は、図6に示すように、中継器16のCPU62のメモリに放送データ記憶部88を設けたことを特徴とする。
【0100】
本実施形態に対応した受信機10は図2の実施形態と同じであるが、受信機10の放送制御部60は、設備の立上げ時に、放送音声信号書込みコマンドを伝送線12-1~12-9により中継器16に送信すると共に、放送音源部56に記憶されている全ての放送データを読み出してアナログの放送音声信号に変換して放送音声信号線14に出力し、これに対し中継器16の中継器制御部65は、受信機10からの放送音声信号書込みコマンドに基づき、そのとき放送音声信号線14からの放送音声信号を放送音声信号送受信部84で受信し、CPU62に読み込んで放送データに変換して放送データ記憶部88に記憶する。
【0101】
中継器16に放送データを記憶した後の運用中の制御動作は、受信機10の放送制御部60は放送制御コマンドを送信するが、放送音声信号は送信せず、放送制御コマンドに基づいて放送データ記憶部88から放送データを読み出して放送音声信号に変換して音声増幅部66に出力する点で相違するが、それ以外の構成及び機能は図2の第1実施形態の中継器16と同様となる。
【0102】
このように本実施形態は、放送データを予め中継器16に記憶し、火災の発生を判定したときに中継器16に放送制御コマンドを送信し、放送データを読み出し放送音声信号に変換してスピーカー20から出力させることで、受信機10側から放送音声信号を送信する必要がなくなり、中継器16側で簡単に非常放送を行うことができる。
【0103】
また、中継器16ごとに放送制御コマンドによる放送種別の指示を異ならせることが可能となり、異なった種別の非常放送を放送地区単位に行うことができる。例えば、火災発生階とその上下階は避難を促す放送内容とし、それ以外の階は火災発生を示す放送内容とし、火災の危険度合に合わせた避難誘導等を可能とするといった運用ができる。
【0104】
なお、中継器16に対する放送データの記憶は、受信機10から非常放送の放送音声信号を送信して記憶する以外に、着脱自在な不揮発性のメモリに音声データを記憶し、これを中継器16に装着して使用するようにしても良い。
【0105】
また、中継器16への放送データの記憶は設備の立上げ時だけでなく、通常運用時に受信機10から中継器16に対する書き込み命令により行うようにしても良い。
【0106】
(中継器での放送モニタ)
また、本実施形態の中継器16は、放送データ記憶部88で記憶している放送データに基づく放送音声信号を再生してモニタスピーカー及び又はモニタジャックから音声出力させてモニタする機能が設けられる。
【0107】
[分散システムの放送用設備]
図7は受信機と中継盤で構成された分散システムの概要を示した説明図である。監視対象とする施設が複数の住棟に分かれる等して大規模になる場合には、図7に示すように、防災センター等に設置した受信機10に対し例えば住棟毎に分けて中継盤100が設置され、受信機10と中継盤100の間をイーサネット(登録商標)等のネットワーク回線104により通信接続している。
【0108】
受信機10は図2に示したと同じであり、これに対し中継盤100は図2の受信機10からディスプレイ38、表示部40、操作部42及び音響警報部44を含む操作表示機能並びに非常放送に必要な放送音源部56、非常放送スピーカー52及びアナウンスマイク54を除いた構成となり、それ以外は、受信機10と基本的に同じとなり、警戒区域に引き出された伝送線102にアナログ火災感知器22を含む端末機器が受信機10と同様に接続されている。また受信機10の受信制御部50及び放送制御部60に対応して中継盤100には中継盤制御部106及び放送制御部108の機能が設けられている。
【0109】
中継盤100の中継盤制御部106はアナログ火災感知器22の検知データから火災を判定すると火災発生地区を示す情報を含む火災発生情報をネットワーク回線104を介して受信機10に送信し、受信機10でディスプレイ38の画面表示を含む火災警報動作が行われる。
【0110】
このとき受信機10の放送制御部60は火災放送に必要な放送データを読み出し、ネットワーク回線104を介して火災を判定した中継盤100に送信する。火災を判定した中継盤100の放送制御部108は、受信機10から送信された放送データを保持し、火災発生階の中継器アドレスを指定した放送起動コマンドを伝送線102-nへ送信すると共に、保持している音声データを放送音声信号に変換して放送音声信号線14に送信する。
【0111】
火災発生階に設置された中継器16は、自己アドレスを指定した中継盤100からの放送起動コマンドを受信し、放送音声信号線14によりそのとき送られてくる放送音声信号を増幅してスピーカー信号線18に出力し、スピーカー20から非常放送を出力させる。
【0112】
本実施形態における受信機10の放送制御部60と中継盤100の放送制御部108、更に中継器16の構成と機能は、図1乃至図6の実施形態に示したものが適用される。
【0113】
[放送制御盤を独立して設けた放送用設備の実施形態]
(放送用設備の概要)
図8は放送制御盤を独立して設けた放送用設備の実施形態を示した説明図である。図8に示す放送用設備は、図1に示した防災設備に設けられた非常放送用設備の機能を放送用設備として独立に取り出したものであり、図1の実施形態から火災報知設備の機能を取り除いて放送用設備としたことに相当する。
【0114】
図8に示すように、本実施形態の放送用設備は、放送対象とする建物11は例えば9階建てのビルであり、1Fの防災監視センター等に放送制御盤110が火災報知設備の受信機10と共に設置されている。また、建物11の各階には放送用の中継器16が設置されている。
【0115】
放送制御盤110から建物11の階方向に伝送線12と放送音声信号線14が引き出され、各階に設置された中継器16が伝送線12と放送音声信号線14に共通に(並列に)接続されている。各階に設置した中継器16からはスピーカー信号線18が引き出され、同じ階に設置したスピーカー20が共通に(並列に)接続されている。
【0116】
放送制御盤110は、火災報知設備の受信機10から火災発生地区を示す情報を含む火災発生移報信号を受信した場合、少なくとも火災発生階の中継器16を含む所定の中継器アドレスを指定した放送制御コマンドを伝送線12に出力すると共に火災警報と所定の補助放送として機能する避難誘導のための非常放送の放送音声信号を放送音声信号線14に出力する。
【0117】
中継器16は放送制御盤110からの所定の放送制御コマンドに基づき、放送制御盤110から送られてくる非常放送の放送音声信号を増幅し、スピーカー20から非常放送を出力させる。
【0118】
ここで、火災警報と所定の補助放送として機能する避難誘導のための非常放送の放送音声信号から中継器16に送信する放送制御コマンドには、少なくとも放送起動コマンドと放送停止コマンドが含まれる。
【0119】
(放送制御盤)
図9図8の放送制御盤の機能構成を示した説明図である。図9に示すように、放送制御盤110には、メインCPU30とサブCPU基板32が設けられ、サブCPU基板32にはサブCPU34と伝送部36が設けられている。メインCPU30とサブCPU34はシリアル転送バスで接続されており、相互にデータを送受信する。メインCPU30にはプログラムの実行により実現される放送制御部60の機能が設けられる。
【0120】
メインCPU30には、液晶表示パネル等を用いたタッチパネル付きのディスプレイ38が接続され、ディスプレイ38には非常放送の運用操作に必要な情報が表示され、画面操作により放送制御や各種の設定を可能としている。
【0121】
メインCPU30に対して表示部として機能するディスプレイ38に加え、非常放送の運用操作に必要な各種の表示灯を備えた表示部112が設けられる。また、メインCPU30に対しては操作部114が接続され、操作部114には非常放送の運用操作に必要な各種のスイッチを設けている。
【0122】
更に、メインCPU30には放送音源部56、アナウンスマイク54、非常放送スピーカー52、放送音声信号送受信部58及び移報受信部116が設けられる。
【0123】
サブCPU基板32は、伝送部36に指示して中継器16との間で所定の通信プロトコルに従って信号を送受信することで、放送制御を行っている。伝送部36から中継器16に対する下り信号は電圧モードで伝送している。これに対し中継器16から伝送部36に対する上り信号は電流モードで伝送される。
【0124】
放送音源部56には感知器発報放送、火災放送、非火災放送、地震や盗難等の緊急放送、訓練放送等を含む非常放送の放送データ(放送メッセージ情報)を記憶しており、放送制御部60から指示を受けた放送データを読み出しアナログの放送音声信号に変換して放送音声信号送受信部58に出力する。
【0125】
放送音声信号送受信部58は放送音源部56の放送データから変換された放送音声信号を入力し、放送音声信号線14により放送地区となる各階に設置された中継器16に放送音声信号を送信する。
【0126】
アナウンスマイク54は放送制御盤110の盤面に設けており、必要に応じて防災管理者等が避難誘導などを指示する放送入力を行うことを可能とする。非常放送スピーカー52は放送制御盤110から行う非常放送を出力する。
【0127】
(中継器)
図8及び図9の放送用設備に示した中継器16は、図3に示した放送用設備の中継器16と同じであり、伝送線12により放送制御盤110から送信された自己アドレスを指定した放送制御コマンドを受信したときに、放送音声信号線14により放送制御盤110から送られている放送音声信号を増幅し、増幅した放送音声信号をスピーカー信号線18に出力してスピーカー20から非常放送を出力させることを基本とする。
【0128】
(非常放送用設備の制御動作)
図8に示すように、火災報知設備の受信機10が火災発生を判定(確定)して火災警報を出力すると、放送制御盤110に火災発生階を示す情報を含む火災発生移報信号を出力する。
【0129】
受信機10からの火災発生移報信号を移報受信部116を介して受信した放送制御盤110の放送制御部60は、火災発生階の中継器16のアドレスを指定した放送起動コマンドを伝送線12に送信し、同時に、放送音源部56に記憶されている感知器発報放送の放送データを読み出して感知器発報放送音声信号に変換し、放送音声信号線14に出力して中継器16に送信する。
【0130】
このため火災発生階に設置された図3に示したと同じ中継器16の中継器制御部65は、自己アドレスを指定した放送起動コマンドを受信して音声増幅部66を動作し、受信機10から放送音声信号線14により送られてきた感知器発報放送音声信号を増幅してスピーカー信号線18に出力し、火災発生階に設置しているスピーカー20から所定の感知発報放送を出力させる。
【0131】
続いて、防災管理者が現場確認を行い、火災であった場合には、ディスプレイ38の非常放送画面の操作により火災発生階に対する直上階及び直下階の階選択操作を行なうと、放送制御部60は直上階及び直下階の中継器16のアドレスを順次指定した放送起動コマンドを伝送線12に出力し、同時に、放送音源部56から火災放送データを読み出して火災放送音声信号に変換して放送音声信号線14に出力して中継器16に送る。
【0132】
火災発生階に対する直上階及び直下階に設置された中継器16の中継器制御部65は、自己アドレスを指定した放送起動コマンドを受信して音声増幅部66を動作し、受信機10から放送音声信号線14により送られてきた火災放送音声信号を増幅してスピーカー信号線18に出力する。このとき火災発生階の中継器16の音声増幅部66は既に動作していることから、火災発生階、直上階及び直下階に設置されたスピーカー20から所定の火災放送が出力される。
【0133】
また、火災放送の放送中に火災が更に拡大した場合には、防災管理者は、ディスプレイ38に表示されている非常放送画面を使用して一斉放送スイッチを操作すると、放送制御部60は全ての階の中継器16を指定する共通アドレスを含む放送起動コマンドが伝送線12に出力し、火災発生階、直上階及び直下階以外の階に設置された中継器16の中継器制御部65は、共通アドレスを指定した放送起動コマンドを受信して音声増幅部66を動作し、受信機10から放送音声信号線14により送られてきた火災放送音声信号を増幅してスピーカー信号線18に出力し、これにより全ての階のスピーカー20から火災放送が出力される一斉放送となる。
【0134】
一方、火災警報に対し防災管理者が現場確認を行い、火災でなかった場合には、ディスプレイ38に表示されている非常放送画面を使用して非火災放送スイッチを操作すると、これに基づき放送制御部60は、放送音源部56からの非火災放送データを読み出して非火災放送音声信号に変換して放送音声信号線14に出力して中継器16に送る。
【0135】
このため火災発生階に設置された中継器16の音声増幅部66は、放送制御盤110から放送音声信号線14により送られてきた非火災放送音声信号を増幅してスピーカー信号線18に出力し、火災発生階のスピーカー20から所定の非火災放送が出力される。
【0136】
[複数の放送地区ごとに中継器を設置する放送用設備の実施形態]
(放送制御盤と中継器)
図8に示す放送用設備の他の実施形態として、図4に示した放送用設備と同様に、建物11の例えば3階ごとに中継器16を設け、中継器16から各階ごとにスピーカー信号線18を引き出して各階のスピーカー20を接続するようにしてもよい。この場合、3階ごとに設置される中継器16は図5に示した中継器16と同じになる。
【0137】
[放送データを中継器に記憶して再生する放送用設備の実施形態]
本実施形態に対応した放送制御盤110は図9の実施形態と同じであるが、中継器16は図6に示した放送用設備の中継器16と同じになり、CPU62に放送データ記憶部88を設けた点を特徴とする。
【0138】
本実施形態にあっては、放送制御盤110の放送制御部60は、設備の立上げ時に、放送音声信号書込みコマンドを伝送線12により中継器16に送信すると共に、放送音源部56に記憶されている全ての放送データを読み出してアナログの放送音声信号に変換して放送音声信号線14に出力し、これに対し中継器16の中継器制御部65は、受信機10からの放送音声信号書込みコマンドに基づき、そのとき放送音声信号線14から受信される放送音声信号を放送音声信号送受信部84で受信し、CPU62に読み込んで放送データに変換して放送データ記憶部88に記憶する。
【0139】
中継器16に放送データを記憶した後の運用中の制御動作は、受信機10から放送制御コマンドを送信するが、放送音声信号は送信せず、放送制御コマンドに基づいて放送データ記憶部88から放送データを読み出してアナログの放送音声信号に変換して放送制御部60に出力する点で相違するが、それ以外の構成及び機能は図5に示したと同じ中継器16と同様となる。
【0140】
このように本実施形態は、放送データを予め中継器16に記憶したことで、火災の発生を判定したときに放送制御盤110は少なくとも火災発生階の中継器アドレスを指定した放送制御コマンドを中継器16へ送信し、自己アドレスを指定した放送制御コマンドを受信した中継器16は予め記憶した放送データを読み出し放送音声信号に変換してスピーカー20から出力させることで、放送制御盤110から放送音声信号を送信することなく、中継器16側で簡単に非常放送を行うことができる。
【0141】
また、中継器16ごとに放送制御コマンドによる放送種別の指示を異ならせることが可能となり、異なった種別の非常放送を放送地区単位に行うことができる。例えば、火災発生階とその上下階は避難を促す放送内容とし、それ以外の階は火災発生を示す放送内容とし、火災の危険度合に合わせた避難誘導等を可能とする、といった運用ができる。
【0142】
なお、中継器16に対する放送データの記憶は、受信機10から非常放送の放送音声信号を送信して記憶する以外に、着脱自在な不揮発性のメモリに音声データを記憶し、これを中継器16に装着して使用するようにしても良い。
【0143】
[本発明の変形例]
(伝送線)
上記の実施形態では、所定の警戒系統区域と所定の放送地区を同じくするものとし、伝送線(放送制御線)12-1~12-9にそれぞれ中継器16が接続されるものとしたが、所定の警戒系統区域と所定の放送地区を異ならせるようにしても良い。
【0144】
例えば、1の警戒系統区域が複数の放送地区となる場合は、警戒系統区域に対応する伝送線に対して複数の中継器を放送地区ごとに接続されるものとしても良いし、回線選択部を有する中継器16を用いても良い。
【0145】
例えば、警戒系統区域と関係なく任意に放送地区を設定したい場合は、受信機10から複数の中継器に接続する伝送線12-nが引き出され、放送音声信号線と並列に接続されるようにしても良い。この場合、全ての階の中継器16を指定する共通アドレスを含む放送起動コマンドを用いて一斉放送させるようにしても良い。
【0146】
(中継器による分岐)
上記の実施形態では、放送音声信号線14は階ごとに分けて分岐する前の幹線を有し、幹線から分岐した先にそれぞれ中継器16が接続されるが、中継器は分岐器を兼ね、中継器内で放送音声信号線14を分岐するとともに分岐した先をスピーカー信号線18と接続しても良い。また、分岐後の幹線についても出力を増幅するようにしても良い。このような形態とすることで、分岐回路部と中継器を一体に構成できるため、それぞれ別体に構成するよりも省スペース化が可能となる。
【0147】
(放送用設備)
また、放送用設備の実施形態にあっては、受信機で放送中の内容を聞けるようにしても良い。
【0148】
(放送制御部)
上記の実施形態の放送制御部は非常放送を行うものとしたが、非常放送以外の一般放送等を行うようにしても良い。
【0149】
(無線感知器)
上記の放送用設備の実施形態は、受信機から施設の警戒区域に引き出された伝送線に火災感知器を接続する通信形態を例にとっているが、火災感知器を無線式の火災感知器とし、受信機と火災感知器の通信の一部または全部を無線通信しても良い。
【0150】
(火災情報信号)
上記の実施形態は、アナログ火災感知器のセンサデータを含む応答信号を所定の火災情報信号としているが、所定の火災情報信号は中継器からの応答信号やオンオフ火災感知器の火災感知信号であっても良い。
【0151】
(P型受信機)
上記の放送用設備の実施形態は、R型の受信機からの伝送線を介してR型の火災感知器を接続した防災設備を例にとっているが、P型(Proprietary-type)の受信機から引き出した感知器回線にアドレスを設定すると共に伝送機能を備えたアドレッサブル火災感知器を接続した防災設備についても、同様に、受信機の盤面に設けられたディスプレイに火災発生時に火災警報画面と非常放送画面を表示することで、専用の非常放送盤を別に設置する必要がなく、防災設備と非常放送用設備の設置スペースが低減し、非常放送用設備の操作に必要な火災表示や出火階表示等は受信機のディスプレイによる表示をそのまま利用することで重複した表示が不要となり、また、防災担当者等は受信機で非常放送の操作ができることから、火災発生という緊急時の火災対処と連携した非常放送の操作や対処を迅速且つ適切に行うことができ、高い操作性が確保されることになる。
【0152】
(自動放送機能)
また、上記の実施形態の放送制御部は、火災発生時に、画面操作により放送地区を選択して感知器発報放送を行っているが、火災発生地区に基づき、自動的に火災発生階と直上階を選択して感知器発報放送を行うようにしても良い。また、非常放送制御部は、感知器発報放送中に火災を現場確認して非常放送を行った場合、所定時間が経過したときに一斉放送に切り替えるようにしても良い。
【0153】
(その他)
また、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に上記の実施形態に示した数値による限定は受けない。
【符号の説明】
【0154】
10:受信機
11:建物
12,12-1~12-9:伝送線
14:放送音声信号線
16:中継器
18,18-1~18-3:スピーカー信号線
20:スピーカー
22:アナログ火災感知器
24:火報用中継器
26:オンオフ火災感知器
27:発信機
28:アドレッサブル発信機
30:メインCPU
32,32-1~32-9:サブCPU基板
34,34-1~34-9:サブCPU
36,36-1~36-9:伝送部
35:シリアル転送バス
38:ディスプレイ
40:表示部
42:操作部
44:音響警報部
46:移報部
50:受信制御部
52:非常放送スピーカー
54:アナウンスマイク
56:放送音源部
58,84:放送音声信号送受信部
60:放送制御部
62:CPU
64:伝送部
65:中継器制御部
66:音声増幅部
68:電源部
70:バッテリー
72:電源試験部
100:中継盤
102-1,102-n:伝送線
104:ネットワーク回線
106:中継盤制御部
108:放送制御部
110:放送制御盤
112:表示部
114:操作部
116:移報受信部

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9