(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】検査装置、検査システム、及び検査方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/28 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
G01R31/28 H
G01R31/28 G
(21)【出願番号】P 2019206188
(22)【出願日】2019-11-14
【審査請求日】2022-01-13
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000108797
【氏名又は名称】エスペック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】岡本 学
(72)【発明者】
【氏名】今堀 翔也
【合議体】
【審判長】岡田 吉美
【審判官】九鬼 一慶
【審判官】田邉 英治
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-55411(JP,A)
【文献】特開2006-170923(JP,A)
【文献】特開2007-241572(JP,A)
【文献】特開2008-147245(JP,A)
【文献】特開昭62-10738(JP,A)
【文献】特開平11-83957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/26-31/27
G01R 31/28-31/3193
G01N 17/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象である回路基板を収容可能な環境形成装置に対して通信可能に接続される検査装置であって、
前記回路基板を対象とするバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、
主制御部と、
を備え、
前記主制御部は、
前記環境形成装置が前記回路基板に対して所定の環境ストレスを印加した状態で、前記回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に所定の実行間隔で実行させることにより、前記回路基板に対して前記バウンダリスキャンテストを複数回実行し、
前記環境ストレスを印加した時間の経過とともに不良が発生しやすくなる経過時間の領域において、前記環境ストレスを印加した経過時間に応じて前記所定の実行間隔を短くする、検査装置。
【請求項2】
前記環境形成装置には前記回路基板として複数の回路基板が収容され、
前記テスト制御部は、前記複数の回路基板の各々を対象として前記バウンダリスキャンテストを制御し、
前記複数の回路基板のうちの一の回路基板が前記テスト制御部に接続されるように、前記テスト制御部と前記環境形成装置に収容されている前記複数の回路基板との接続を切り替え可能な接続切替部をさらに備え、
前記主制御部は、
前記環境形成装置が前記複数の回路基板に対して前記環境ストレスを印加した状態で、
前記一の回路基板を前記テスト制御部に順に接続させる接続処理を前記接続切替部に繰り返し実行させ、
前記接続処理に連動して前記一の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に実行させることにより、前記複数の回路基板の各々に対して前記バウンダリスキャンテストを複数回実行する、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記主制御部は、前記バウンダリスキャンテストの不合格のテスト結果の累積値が所定のしきい値以上となった場合、前記環境形成装置に前記環境ストレスを印加停止又は低下させる、請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記主制御部は、前記複数の回路基板のうちのある回路基板に関する前記バウンダリスキャンテストのテスト結果が不合格であった場合、前記接続切替部による切替対象から当該回路基板を除外して、他の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを継続する、請求項2に記載の検査装置。
【請求項5】
前記回路基板に対して前記バウンダリスキャンテストが実行される毎に、前記バウンダリスキャンテストの実行時刻情報と、前記環境ストレスの印加条件と、前記バウンダリスキャンテストのテスト結果とを関連付けて記憶する記憶部をさらに備える、請求項1~4のいずれか一つに記載の検査装置。
【請求項6】
検査対象である回路基板を収容可能な環境形成装置と、
前記環境形成装置に対して通信可能に接続された検査装置と、
を備え、
前記検査装置は、
前記回路基板を対象とするバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、
主制御部と、
を有し、
前記主制御部は、
前記環境形成装置が前記回路基板に対して所定の環境ストレスを印加した状態で、前記回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に所定の実行間隔で実行させることにより、前記回路基板に対して前記バウンダリスキャンテストを複数回実行し、
前記環境ストレスを印加した時間の経過とともに不良が発生しやすくなる経過時間の領域において、前記環境ストレスを印加した経過時間に応じて前記所定の実行間隔を短くする、検査システム。
【請求項7】
(A)環境形成装置に収容された回路基板に対して、前記環境形成装置によって所定の環境ストレスを印加するステップと、
(B)前記ステップ(A)によって前記回路基板に対して前記環境ストレスが印加された状態で、前記回路基板に対してバウンダリスキャンテストを所定の実行間隔で複数回実行するステップと、
を備え、
前記ステップ(B)において、
前記環境ストレスを印加した時間の経過とともに不良が発生しやすくなる経過時間の領域において、前記環境ストレスを印加した経過時間に応じて前記所定の実行間隔を短くする、検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、検査システム、及び検査方法に関し、特に、検査対象に対してバウンダリスキャンテストを実行するための、検査装置、検査システム、及び検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
JTAG(Joint Test Action Group)に準拠した半導体デバイスが実装された回路基板を対象とする検査の一つとして、バウンダリスキャンテストが知られている。バウンダリスキャンテストでは、主に、回路基板上に実装された半導体デバイスの半田接合不良や、複数の半導体デバイス間の配線のオープン不良又はショート不良等が検査される。
【0003】
下記特許文献1には、バウンダリスキャンテストを実行するテストシステムが開示されている。当該テストシステムは、ホストコンピュータと、マスタコントローラと、プログラマブルスイッチとを備えている。プログラマブルスイッチには、複数のスレイブターゲット装置が接続されている。スレイブターゲット装置は、JTAGに準拠した複数の集積回路が実装された回路基板である。プログラマブルスイッチは、いずれかのスレイブターゲット装置に含まれている任意の集積回路を選択して、当該集積回路をマスタコントローラに接続する。ホストコンピュータ及びマスタコントローラは、当該集積回路を対象としてバウンダリスキャンテストを実行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されたテストシステムによると、プログラマブルスイッチに接続されている複数のスレイブターゲット装置のうち、プログラマブルスイッチによって選択されたいずれかのスレイブターゲット装置に含まれている任意の集積回路を対象として、バウンダリスキャンテストを実行することができる。
【0006】
ここで、量産工程を経て出荷された実製品は、温度、湿度、振動等の様々な環境要因に晒された過酷な状況で使用される可能性がある。ところが上記特許文献1に開示されたテストシステムによると、バウンダリスキャンテストを実行する際に実製品の使用状況が想定されていないため、実製品の信頼性が低いという課題がある。
【0007】
また、複数の回路基板を対象としてバウンダリスキャンテストを実行する手法としては、下記の(1)~(3)の手法が考えられる。
【0008】
(1)の手法は、
図13に示すように、バックプレーンボード上の複数のコネクタに複数の回路基板を挿入し、テストクロックポート(TCK)、テストモードセレクトポート(TMS)、及びテストリセットポート(TRST)を複数の回路基板に対して並列に接続するとともに、テストデータ入力ポート(TDI)及びテストデータ出力ポート(TDO)を複数の回路基板間で直列に接続する手法である。
【0009】
(2)の手法は、アドレス識別機能を有するシステムレベルデバイスが各回路基板に実装されている場合に採用でき、
図14に示すように、バックプレーンボード上の複数のコネクタに複数の回路基板を挿入し、テストクロックポート(TCK)、テストモードセレクトポート(TMS)、テストリセットポート(TRST)、テストデータ入力ポート(TDI)、及びテストデータ出力ポート(TDO)の全てを複数の回路基板に対して並列に接続する手法である。
【0010】
(3)の手法は、
図15に示すように、複数の回路基板と同数の複数のテストコントローラを用意し、回路基板とテストコントローラとを一対一で接続して、各テストコントローラによって各回路基板に対するバウンダリスキャンテストを実行する手法である。
【0011】
しかし、上記(1)の手法では、テストデータ入力ポート(TDI)及びテストデータ出力ポート(TDO)が複数の回路基板間で直列に接続されているため、いずれかの回路基板においてテストデータの配線にオープン不良又はショート不良等が発生した場合には、残り全ての回路基板に対してバウンダリスキャンテストを実行できなくなる。このように、上記(1)の手法には、複数の回路基板に対する連続的なバウンダリスキャンテストの実行を妨げる要因があるため、テスト効率が悪くテストコストが増大するという課題がある。
【0012】
また、上記(2)の手法を採用するためには、アドレス識別機能を有するシステムレベルデバイスを回路基板に実装する必要があるため、テストコストが増大するという課題がある。また、半田接合不良等に起因して、アドレス識別機能を有するシステムレベルデバイス自体に動作不良が生じた場合には、その回路基板に対してバウンダリスキャンテストを実行できなくなる。従って、上記(2)の手法には、バウンダリスキャンテストの実行を妨げる要因があるため、テスト効率が悪くテストコストが増大するという課題がある。
【0013】
また、上記(3)の手法では、複数の回路基板と同数の複数のテストコントローラを用意する必要があるため、テストコストが増大するという課題がある。
【0014】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、実製品の信頼性を向上することが可能な、検査装置、検査システム、及び検査方法を得ることを第1の目的とする。また、テストコストを削減することが可能な、検査装置、検査システム、及び検査方法を得ることを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様に係る検査装置は、検査対象である回路基板を収容可能な環境形成装置に対して通信可能に接続される検査装置であって、前記回路基板を対象とするバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、主制御部と、を備え、前記主制御部は、前記環境形成装置が前記回路基板に対して所定の環境ストレスを印加した状態で、前記回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に所定の実行間隔で実行させることにより、前記回路基板に対して前記バウンダリスキャンテストを複数回実行し、所定の条件を満たしたと判断した場合、前記所定の実行間隔を異ならせることを特徴とするものである。
【0016】
本態様によれば、検査対象である回路基板は環境形成装置に収容されており、主制御部は、環境形成装置が回路基板に対して所定の環境ストレスを印加した状態で、回路基板に対するバウンダリスキャンテストをテスト制御部に実行させることにより、回路基板に対してバウンダリスキャンテストを複数回実行する。このように、実製品の使用状況として想定される所定の環境ストレスを印加した状態で、回路基板に対してバウンダリスキャンテストを複数回実行することによって、その状況下での不良の発生の有無を高精度に評価できるため、実製品の信頼性を向上することが可能となる。
【0018】
また、本態様によれば、主制御部は、所定の条件を満たしたと判断した場合、回路基板に対するバウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。従って、不良が発生しやすい条件を満たしたと判断した場合には実行間隔を短く設定することによって、不良の発生を早期に発見することができ、一方、不良が発生しにくい条件を満たしたと判断した場合には実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0019】
上記態様において、前記環境形成装置は前記環境ストレスとして温度ストレスを印加し、前記主制御部は、前記温度ストレスが一定である第1の期間内においては第1の実行間隔で前記バウンダリスキャンテストを実行し、前記温度ストレスが遷移している第2の期間内においては前記第1の実行間隔よりも短い第2の実行間隔で前記バウンダリスキャンテストを実行しても良い。
【0020】
本態様によれば、主制御部は、温度ストレスが一定である第1の期間内においては第1の実行間隔でバウンダリスキャンテストを実行し、温度ストレスが遷移している第2の期間内においては第1の実行間隔よりも短い第2の実行間隔でバウンダリスキャンテストを実行する。第1の期間は第2の期間と比較して不良が発生しにくいため、バウンダリスキャンテストの実行間隔として比較的長い第1の実行間隔を設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。一方、第2の期間は第1の期間と比較して不良が発生しやすいため、バウンダリスキャンテストの実行間隔として比較的短い第2の実行間隔を設定することによって、不良の発生を早期に発見することができる。
【0021】
上記態様において、前記環境形成装置は前記環境ストレスとして振動ストレスを印加し、前記主制御部は、前記回路基板の共振周波数とは異なる周波数の前記振動ストレスが印加されている第1の期間内においては第1の実行間隔で前記バウンダリスキャンテストを実行し、前記共振周波数に相当する周波数の前記振動ストレスが印加されている第2の期間内においては前記第1の実行間隔よりも短い第2の実行間隔で前記バウンダリスキャンテストを実行しても良い。
【0022】
本態様によれば、主制御部は、回路基板の共振周波数とは異なる周波数の振動ストレスが印加されている第1の期間内においては第1の実行間隔でバウンダリスキャンテストを実行し、当該共振周波数に相当する周波数の振動ストレスが印加されている第2の期間内においては第1の実行間隔よりも短い第2の実行間隔でバウンダリスキャンテストを実行する。第1の期間は第2の期間と比較して不良が発生しにくいため、バウンダリスキャンテストの実行間隔として比較的長い第1の実行間隔を設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。一方、第2の期間は第1の期間と比較して不良が発生しやすいため、バウンダリスキャンテストの実行間隔として比較的短い第2の実行間隔を設定することによって、不良の発生を早期に発見することができる。
【0023】
上記態様において、前記環境形成装置には前記回路基板として複数の回路基板が収容され、前記テスト制御部は、前記複数の回路基板の各々を対象として前記バウンダリスキャンテストを制御し、前記複数の回路基板のうちの一の回路基板が前記テスト制御部に接続されるように、前記テスト制御部と前記環境形成装置に収容されている前記複数の回路基板との接続を切り替え可能な接続切替部をさらに備え、前記主制御部は、前記環境形成装置が前記複数の回路基板に対して前記環境ストレスを印加した状態で、前記一の回路基板を前記テスト制御部に順に接続させる接続処理を前記接続切替部に繰り返し実行させ、前記接続処理に連動して前記一の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に実行させることにより、前記複数の回路基板の各々に対して前記バウンダリスキャンテストを複数回実行しても良い。
【0024】
本態様によれば、接続切替部は、一の回路基板をテスト制御部に順に接続させる接続処理を繰り返し実行し、テスト制御部は、当該接続処理に連動して一の回路基板に対するバウンダリスキャンテストを実行する。その結果、一のテスト制御部を用いて複数の回路基板の各々に対するバウンダリスキャンテストが連続的に実行されるため、複数の回路基板に対するバウンダリスキャンテストを効率的に実行することができ、テストコストを削減することが可能となる。
【0025】
上記態様において、前記主制御部は、前記バウンダリスキャンテストの不合格のテスト結果の累積値が所定のしきい値以上となった場合、前記環境形成装置に前記環境ストレスを印加停止又は低下させても良い。
【0026】
本態様によれば、主制御部は、バウンダリスキャンテストの不合格のテスト結果の累積値が所定のしきい値以上となった場合、環境形成装置に環境ストレスを印加停止又は低下させる。これにより、不良が発生していない回路基板に対して余分な環境ストレスが印加され続けることを防止できる。
【0027】
上記態様において、前記主制御部は、前記複数の回路基板のうちのある回路基板に関する前記バウンダリスキャンテストのテスト結果が不合格であった場合、前記接続切替部による切替対象から当該回路基板を除外して、他の回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを継続しても良い。
【0028】
本態様によれば、主制御部は、複数の回路基板のうちある回路基板に関するバウンダリスキャンテストのテスト結果が不合格であった場合、接続切替部による切替対象から当該回路基板を除外して、他の回路基板に対するバウンダリスキャンテストを継続する。これにより、不良が発生しない回路基板に対しては、予め設定された所望時間又は所望回数等のバウンダリスキャンテストを実行することができる。また、不良が発生した回路基板に対しては、接続切替部による切替対象から当該回路基板を除外することによって、それ以降は当該回路基板に対するバウンダリスキャンテストは実行されない。従って、不良が発生した回路基板に対する無駄なテストが実行されることを回避できる。
【0029】
上記態様において、前記回路基板に対して前記バウンダリスキャンテストが実行される毎に、前記バウンダリスキャンテストの実行時刻情報と、前記環境ストレスの印加条件と、前記バウンダリスキャンテストのテスト結果とを関連付けて記憶する記憶部をさらに備えても良い。
【0030】
本態様によれば、回路基板に対してバウンダリスキャンテストが実行される毎に、バウンダリスキャンテストの実行時刻情報と、環境ストレスの印加条件と、バウンダリスキャンテストのテスト結果とが関連付けられて記憶される。従って、ある回路基板に不良が発生してバウンダリスキャンテストのテスト結果が不合格となった場合には、その不良が発生した時点でのバウンダリスキャンテストの実行回数や環境ストレスの印加条件を容易に入手できるため、不良の発生原因の解析を容易化することができる。
【0031】
本発明の一態様に係る検査システムは、検査対象である回路基板を収容可能な環境形成装置と、前記環境形成装置に対して通信可能に接続された検査装置と、を備え、前記検査装置は、前記回路基板を対象とするバウンダリスキャンテストを制御するテスト制御部と、主制御部と、を有し、前記主制御部は、前記環境形成装置が前記回路基板に対して所定の環境ストレスを印加した状態で、前記回路基板に対する前記バウンダリスキャンテストを前記テスト制御部に所定の実行間隔で実行させることにより、前記回路基板に対して前記バウンダリスキャンテストを複数回実行し、所定の条件を満たしたと判断した場合、前記所定の実行間隔を異ならせることを特徴とするものである。
【0032】
本態様によれば、検査対象である回路基板は環境形成装置に収容されており、主制御部は、環境形成装置が回路基板に対して所定の環境ストレスを印加した状態で、回路基板に対するバウンダリスキャンテストをテスト制御部に実行させることにより、回路基板に対してバウンダリスキャンテストを複数回実行する。このように、実製品の使用状況として想定される所定の環境ストレスを印加した状態で、回路基板に対してバウンダリスキャンテストを複数回実行することによって、その状況下での不良の発生の有無を高精度に評価できるため、実製品の信頼性を向上することが可能となる。
また、本態様によれば、主制御部は、所定の条件を満たしたと判断した場合、回路基板に対するバウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。従って、不良が発生しやすい条件を満たしたと判断した場合には実行間隔を短く設定することによって、不良の発生を早期に発見することができ、一方、不良が発生しにくい条件を満たしたと判断した場合には実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【0033】
本発明の一態様に係る検査方法は、(A)環境形成装置に収容された回路基板に対して、前記環境形成装置によって所定の環境ストレスを印加するステップと、(B)前記ステップ(A)によって前記回路基板に対して前記環境ストレスが印加された状態で、前記回路基板に対してバウンダリスキャンテストを所定の実行間隔で複数回実行するステップと、を備え、前記ステップ(B)において、所定の条件を満たしたと判断した場合、前記所定の実行間隔を異ならせることを特徴とするものである。
【0034】
本態様によれば、検査対象である回路基板は環境形成装置に収容され、ステップ(B)では、回路基板に対して所定の環境ストレスが印加された状態で、回路基板に対してバウンダリスキャンテストが複数回実行される。このように、実製品の使用状況として想定される所定の環境ストレスを印加した状態で、回路基板に対してバウンダリスキャンテストを複数回実行することによって、その状況下での不良の発生の有無を高精度に評価できるため、実製品の信頼性を向上することが可能となる。
また、本態様によれば、ステップ(B)において、所定の条件を満たしたと判断した場合、回路基板に対するバウンダリスキャンテストの実行間隔を異ならせる。従って、不良が発生しやすい条件を満たしたと判断した場合には実行間隔を短く設定することによって、不良の発生を早期に発見することができ、一方、不良が発生しにくい条件を満たしたと判断した場合には実行間隔を長く設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、実製品の信頼性を向上することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の実施の形態に係る検査システムの構成を簡略化して示す図である。
【
図2】検査装置の構成を簡略化して示すブロック図である。
【
図3】環境形成装置の構成を簡略化して示すブロック図である。
【
図4】スキャナユニットの構成を簡略化して示す図である。
【
図5】テストコントローラ及び回路基板の構成を示す図である。
【
図6】環境形成装置による温度サイクルの一例を部分的に示す図である。
【
図7】バウンダリスキャンテストにおいてシステムコントローラが実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図8】記憶部に保存されたテスト結果の一部を抜き出して示す図である。
【
図9】環境形成装置による温度サイクルの一例を部分的に示す図である。
【
図10】環境形成装置による振動サイクルの一例を部分的に示す図である。
【
図11】バウンダリスキャンテストにおいてシステムコントローラが実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】バウンダリスキャンテストにおいてシステムコントローラが実行する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】複数の回路基板を対象としてバウンダリスキャンテストを実行する手法を示す図である。
【
図14】複数の回路基板を対象としてバウンダリスキャンテストを実行する手法を示す図である。
【
図15】複数の回路基板を対象としてバウンダリスキャンテストを実行する手法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0038】
図1は、本発明の実施の形態に係る検査システム1の構成を簡略化して示す図である。
図1に示すように検査システム1は、検査装置2と環境形成装置3とを備えている。環境形成装置3には、製品の設計開発段階で試作品を対象として環境試験を実行するための環境試験装置、恒温器、恒湿器、及び、製品の出荷前テストにおいて実製品を対象としてスクリーニング試験を実行するためのバーンイン装置が含まれる。検査装置2は、環境形成装置3の動作を制御する制御装置であり、環境形成装置3に対して通信可能に接続されている。
【0039】
図2は、検査装置2の構成を簡略化して示すブロック図である。
図2の接続関係で示すように、検査装置2は、システムコントローラ11(主制御部)、チャンバモニタ12、テストコントローラ13(テスト制御部)、スキャナユニット14(接続切替部)、記憶部15、表示部16、及び通信部17を備えている。また、図示は省略するが、検査装置2は瞬断対策として無停電電源を備えている。
【0040】
テストコントローラ13は、検査対象である複数の回路基板X(詳細は後述する)に対して実行されるバウンダリスキャンテストを制御するためのコントローラである。テストコントローラ13は、バウンダリスキャンテストにおいて、テストデータ(テストパターン)の生成、及びテストクロックの生成等の処理を行う。
【0041】
スキャナユニット14は、複数の回路基板Xのうちの一の回路基板がテストコントローラ13に接続されるように、テストコントローラ13と複数の回路基板Xとの接続を切り替える。
【0042】
システムコントローラ11は、CPU等のプロセッサとROM及びRAM等のメモリとを備えており、システム全体の動作を統括して制御する。システムコントローラ11は、環境形成装置3が複数の回路基板Xに対して所定の環境ストレスを印加した状態で、一の回路基板をテストコントローラ13に順に接続させる接続処理をスキャナユニット14に繰り返し実行させる。また、システムコントローラ11は、当該接続処理に連動して、一の回路基板に対するバウンダリスキャンテストをテストコントローラ13に実行させることにより、複数の回路基板Xの各々に対してバウンダリスキャンテストを複数回実行する。ここで、「連動して」とは、スキャナユニット14による接続の切り替えと、テストコントローラ13によるバウンダリスキャンテストの実行とが、互いに同期していることを意味する。
【0043】
記憶部15は、半導体メモリ又はハードディスク等の任意の記憶装置である。表示部16は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等の任意の表示装置である。システムコントローラ11とチャンバモニタ12とは、例えばRS-232Cケーブルによって互いに接続されている。システムコントローラ11とテストコントローラ13とは、例えばUSBケーブルによって互いに接続されている。システムコントローラ11とスキャナユニット14とは、例えばパラレルI/Oケーブルによって互いに接続されている。通信部17と環境形成装置3の通信部25(詳細は後述する)とは、例えばRS-485ケーブルによって互いに接続されている。
【0044】
図3は、環境形成装置3の構成を簡略化して示すブロック図である。
図3に示すように環境形成装置3は、環境コントローラ21、チャンバ22、温度センサ23、温度調整器24、及び通信部25を備えている。チャンバ22内には、検査対象である複数の回路基板X(X1~XN)が収容されている。複数の回路基板X1~XNは、中継ユニット26(
図2参照)に対して並列に接続されている。
図3中の「(N)」の表記は、回路基板X1~XNと中継ユニット26との間のN本の並列配線をまとめていることを意味している。図示は省略するが、各回路基板Xにおいては、JTAG(Joint Test Action Group)に準拠したFPGA(Field Programmable Gate Array)等の半導体デバイスが、BGA(Ball Grid Array)等の接続方式による半田付け等によって、プリント配線板上に実装されている。
【0045】
環境形成装置3は、検査対象である複数の回路基板X1~XNに対して、温度、湿度、振動等の所定の環境ストレスを印加するための装置である。本実施の形態では、環境形成装置3として、環境試験装置の一つである冷熱衝撃装置を用いる例について説明する。冷熱衝撃装置は、チャンバ22内の温度を高温に設定する期間(高温さらし期間)と低温に設定する期間(低温さらし期間)とを周期的に繰り返すことにより、環境ストレスとしての冷熱衝撃を、チャンバ22内に収容されている検査対象に対して印加する。
【0046】
環境コントローラ21は、CPU等のプロセッサとROM及びRAM等のメモリとを備えて構成されている。環境コントローラ21は、チャンバ22内の温度を調整するための温度調整器24(加熱器及び冷却器)の動作を制御する。温度センサ23はチャンバ22内の温度を測定し、その温度情報を環境コントローラ21に入力する。当該温度情報(又はチャンバ22の状態を示す状態情報)が環境コントローラ21から通信部25を介して検査装置2に送信されることにより、チャンバ22内の温度(又はチャンバ22の状態)を検査装置2のチャンバモニタ12(
図2参照)によってモニタリングすることができる。検査装置2のスキャナユニット14とチャンバ22内に収容されている回路基板X1~XNとは、中継ユニット26を介して互いに接続される。
【0047】
図4は、スキャナユニット14の構成を簡略化して示す図である。スキャナユニット14は、検査対象である複数の回路基板X1~XNと同数(又はそれ以上)の複数のチャンネルC(C1~CN)を有している。チャンネル数(N)は、例えば256である。各チャンネルCは、常開接点方式のスイッチS(S1~SN)を含んでいる。各スイッチSの一方の端子はテストコントローラ13に接続され、他方の端子は中継ユニット26を介して回路基板Xに接続される。各スイッチSは、後述のテストアクセスポートG0の各ポートと後述のテストアクセスポートG1の各ポートとを接続する複数のスイッチから成るスイッチ群で構成されてもよい。
【0048】
システムコントローラ11のスイッチング制御によってスイッチS1~SNのうちの一のスイッチSが閉じられることにより、そのスイッチSに接続されている一の回路基板Xがテストコントローラ13に接続される。つまり、スイッチS1~SNの切替制御とチャンネルC1~CNの選択制御とは等価であり、一のスイッチSを閉じることによって、対応する一のチャンネルCが選択される。
図4には、スイッチS1が閉じられてチャンネルC1が選択されることにより、回路基板X1がテストコントローラ13に接続されている状況が示されている。
【0049】
図5は、
図4に示した構成のうち、テストコントローラ13と回路基板X1との接続構成を抜き出して示す図である。テストコントローラ13はテストアクセスポートG0を有しており、回路基板X1はテストアクセスポートG1を有している。テストアクセスポートG0,G1は、テストデータ入力ポート(TDI)、テストクロックポート(TCK)、テストモードセレクトポート(TMS)、テストリセットポート(TRST)、及びテストデータ出力ポート(TDO)を有している。テストコントローラ13のテストアクセスポートG0と回路基板X1のテストアクセスポートG1とが、スイッチS1を介して一対一に接続されている。
【0050】
なお、各テストアクセスポートG0,G1が有する5つのポートの全てがスイッチS1によって切替可能な上記の構成に代えて、5つのポートのうちの所望のポートだけがスイッチS1によって切替可能な構成が採用されても良い。例えば、テストデータ入力ポート(TDI)及びテストデータ出力ポート(TDO)の2つのポートだけがスイッチS1によって切替可能な構成が、採用されても良い。
【0051】
図6は、環境形成装置3による温度サイクルの一例を部分的に示す図である。時刻T0において常温状態からスタートし、時刻T1において常温状態から高温状態に向けての加熱制御が開始され、時刻T2において高温状態への遷移が完了している。高温状態でのチャンバ22内の温度は、例えば85℃である。時刻T2から時刻T3までは高温状態が維持されており、この期間が高温さらし期間となる。高温さらし期間は、例えば30分である。時刻T3において高温状態から低温状態に向けての冷却制御が開始され、時刻T4において低温状態への遷移が完了している。低温状態でのチャンバ22内の温度は、例えば-40℃である。時刻T4から時刻T5までは低温状態が維持されており、この期間が低温さらし期間となる。低温さらし期間は、例えば30分である。時刻T5において低温状態から高温状態に向けての加熱制御が開始され、時刻T6において高温状態への遷移が完了している。時刻T2から時刻T6までの一連のサイクルが温度サイクルの単位サイクルとなり、この単位サイクルが所望のサイクル数(例えば1000サイクル)繰り返される。
【0052】
図6に示した矢印Pは、回路基板X1~XNに対する一通りのバウンダリスキャンテストの実行開始タイミングを示している。一つの矢印Pにつき、回路基板X1~XNの各々に対してバウンダリスキャンテストが1回ずつ実行される。この「回路基板X1~XNに対する一通りのバウンダリスキャンテスト」を「バウンダリスキャンテストの1セット」と捉えると、バウンダリスキャンテストのセット間の実行間隔(つまり連続する矢印P間の時間間隔)は、高温さらし期間(T2~T3)、高温から低温への遷移期間(T3~T4)、低温さらし期間(T4~T5)、及び低温から高温への遷移期間(T5~T6)の全てにおいて、時間間隔W0で共通している。時間間隔W0は、例えば8分である。
【0053】
図7は、回路基板X1~XNに対するバウンダリスキャンテストにおいて、システムコントローラ11が実行する処理の流れを示すフローチャートである。検査の準備段階として、検査対象である複数の回路基板X1~XNが環境形成装置3のチャンバ22内に収容され、ケーブル及び中継ユニット26(
図2参照)によって、複数の回路基板X1~XNとスキャナユニット14とが相互に接続される。
【0054】
検査の準備が完了すると、まずステップSP101においてシステムコントローラ11は、検査対象である回路基板Xの枚数、環境形成装置3による温度サイクルの制御シーケンス、バウンダリスキャンテストのセット間の実行間隔、及び検査終了条件等の、各種の検査条件を設定する。検査終了条件は、バウンダリスキャンテストの所望のセット数、又は温度サイクルの所望のサイクル数等である。
【0055】
次にステップSP102においてシステムコントローラ11は、検査開始コマンドを発行することによって検査を開始する。環境コントローラ21は、検査開始コマンドを取得することにより、システムコントローラ11によって設定された温度サイクルの制御シーケンスに従ってチャンバ22の温度制御を開始する。
【0056】
次にステップSP103においてシステムコントローラ11は、バウンダリスキャンテストのテスト開始条件が満たされたか否かを判定する。テスト開始条件としては、例えば、1セット目のテスト開始条件は、初回の高温さらし期間への遷移が完了したことであり、2セット目以降のテスト開始条件は、前回のテスト開始時刻から所定の時間間隔W0が経過したことである。システムコントローラ11は、チャンバ22内の温度を示す温度情報をチャンバモニタ12から取得し、初回の高温さらし期間への遷移が完了したことを当該温度情報に基づいて検出することにより、1セット目のバウンダリスキャンテストのテスト開始条件が満たされたと判定する。
【0057】
ステップSP103による判定の結果、バウンダリスキャンテストのテスト開始条件が満たされていない場合(つまりステップSP103による判定結果が「NO」である場合)は、システムコントローラ11は、テスト開始条件が満たされるまで待機する。
【0058】
一方、バウンダリスキャンテストのテスト開始条件が満たされた場合(つまりステップSP103による判定結果が「YES」である場合)は、次にステップSP104においてシステムコントローラ11は、スキャナユニット14にスイッチ切替命令を入力することにより、先頭のチャンネルC1を選択する。これにより、チャンネルC1に対応する回路基板X1がテストコントローラ13に接続される。
【0059】
次にステップSP105においてシステムコントローラ11は、テストコントローラ13にテスト実行命令を入力することにより、回路基板X1を対象とするバウンダリスキャンテストをテストコントローラ13に実行させる。テストコントローラ13は、例えば、回路基板X1に設けられているテストアクセスポートG1が正常に機能しているか否かを検査するためのインフラストラクチャテストを実行し、その後、回路基板X1上に実装されているJTAG対応デバイスの半田接合不良や、複数のJTAG対応デバイス間の配線のオープン不良又はショート不良等を検査するためのインターコネクトテストを実行する。
【0060】
なお、テストコントローラ13は、上記のインフラストラクチャテスト及びインターコネクトテスト以外にも、テストアクセスポートG1からJTAG対応デバイスを介して回路基板X1上の各種の半導体デバイス等にアクセスすることによって、様々なオプションテストを追加して実行することも可能である。オプションテストとしては、下記に示すメモリテスト、クラスタテスト、コネクタテスト、スイッチテスト、及びプルアップ・プルダウンテスト等がある。
【0061】
メモリテストは、JTAG対応デバイスからJTAG非対応のメモリデバイスにアクセスすることによって、メモリデバイスの接続不良や動作不良を検査するテストである。
【0062】
クラスタテストは、JTAG対応デバイスからJTAG非対応のロジックデバイスにアクセスすることによって、ロジックデバイスの接続不良や動作不良を検査するテストである。
【0063】
コネクタテストは、JTAG対応デバイスと外部入出力用のコネクタとの間の接続不良を検査するテストである。
【0064】
スイッチテストは、JTAG対応デバイスのスイッチの状態(High又はLow)を評価するテストである。
【0065】
プルアップ・プルダウンテストは、JTAG対応デバイスに接続されているプルアップ抵抗又はプルダウン抵抗の実装評価を行うテストである。
【0066】
次にステップSP106においてシステムコントローラ11は、回路基板X1を対象とするバウンダリスキャンテストのテスト結果(例えば合格又は不合格)を、テストコントローラ13から取得する。また、システムコントローラ11は、温度センサ23によって測定された、テスト実行時のチャンバ22内の温度を示す温度情報を、環境コントローラ21から通信部25,17を介して取得する。そして、システムコントローラ11は、回路基板X1を対象とするバウンダリスキャンテストを実行した時刻を示す時刻情報と、上記温度情報と、上記テスト結果とをチャンネル名(C1)に関連付けて、記憶部15に保存する。
【0067】
図8は、記憶部15に保存されたテスト結果の一部を抜き出して示す図である。
図8には、各チャンネルCに関して5回のバウンダリスキャンテストが実行された時点での、チャンネルC1,C2のテスト結果が示されている。この例では、テスト結果はいずれも合格(OK)である。
図8に示したテスト結果は、検査装置2が備える表示部16(
図2参照)に表示させることが可能である。
【0068】
次にステップSP107においてシステムコントローラ11は、スキャナユニット14が現在選択しているチャンネルが末尾のチャンネルCNであるか否かを判定する。
【0069】
ステップSP107による判定の結果、チャンネルCNが選択されていない場合(つまりステップSP107による判定結果が「NO」である場合)は、次にステップSP108においてシステムコントローラ11は、スイッチ切替命令をスキャナユニット14に入力する。これにより、選択チャンネルが次のチャンネルに更新される。システムコントローラ11は、ステップSP107による判定結果が「YES」となるまで、ステップSP105からステップSP108までの処理を繰り返す。
【0070】
一方、ステップSP107においてチャンネルCNが選択されている場合(つまりステップSP107による判定結果が「YES」である場合)は、次にステップSP109においてシステムコントローラ11は、検査終了条件が満たされているか否かを判定する。例えば、検査終了条件としてバウンダリスキャンテストの所定セット数が設定されている場合には、システムコントローラ11は以下の処理を行う。すなわち、システムコントローラ11は、これまでに実行が完了したバウンダリスキャンテストのセット数(累積セット数)が上記所定セット数未満である場合には、検査終了条件は満たされていないと判定する。一方、上記累積セット数が上記所定セット数に到達した場合は、システムコントローラ11は、検査終了条件が満たされたと判定する。
【0071】
ステップSP109による判定の結果、検査終了条件が満たされていない場合(つまりステップSP109による判定結果が「NO」である場合)は、システムコントローラ11は、検査終了条件が満たされるまで、ステップSP103からステップSP109までの処理を繰り返す。
【0072】
一方、検査終了条件が満たされた場合(つまりステップSP109による判定結果が「YES」である場合)は、システムコントローラ11は、検査終了コマンドを発行することによって検査を終了する。環境形成装置3は、検査終了コマンドを取得することにより、回路基板X1~XNへの環境ストレスの印加を終了する。
【0073】
なお、以上の説明では環境形成装置3内に複数の回路基板X1~XNが収容されたが、この例に限定されるものではなく、1枚以上の回路基板Xが収容されれば良い。また、以上の説明では環境ストレスとして高温及び低温の温度サイクルによる冷熱衝撃が印加されたが、この例に限定されるものではなく、高温又は低温の一定温度による温度ストレス、湿度ストレス、温湿度ストレス、又はこれらと振動ストレスとの組合せであっても良い。
【0074】
このように本実施の形態に係る検査システム1によれば、検査対象である回路基板Xは環境形成装置3に収容されている。そして、システムコントローラ11は、環境形成装置3が回路基板Xに対して所定の環境ストレスを印加した状態で、回路基板Xに対するバウンダリスキャンテストをテストコントローラ13に実行させることにより、回路基板Xに対してバウンダリスキャンテストを複数回実行する。このように、実製品の使用状況として想定される所定の環境ストレスを印加した状態で、回路基板Xに対してバウンダリスキャンテストを複数回実行することによって、その状況下での不良の発生の有無を高精度に評価できるため、実製品の信頼性を向上することが可能となる。
【0075】
また、本実施の形態に係る検査システム1によれば、スキャナユニット14は、複数の回路基板X1~XNのうちの一の回路基板Xをテストコントローラ13に順に接続させる接続処理を繰り返し実行し、テストコントローラ13は、当該接続処理に連動して一の回路基板Xに対するバウンダリスキャンテストを実行する。その結果、一のテストコントローラ13を用いて複数の回路基板X1~XNの各々に対するバウンダリスキャンテストが連続的に実行されるため、複数の回路基板X1~XNに対するバウンダリスキャンテストを効率的に実行することができ、テストコストを削減することが可能となる。
【0076】
また、本実施の形態に係る検査システム1によれば、
図8に示すように、複数の回路基板X1~XNの各々に対してバウンダリスキャンテストが実行される毎に、バウンダリスキャンテストの実行時刻情報と、環境ストレスの印加条件と、バウンダリスキャンテストのテスト結果とが関連付けられて記憶される。従って、ある回路基板Xに不良が発生してバウンダリスキャンテストのテスト結果が不合格となった場合には、その不良が発生した時点でのバウンダリスキャンテストの実行回数や環境ストレスの印加条件を容易に入手できるため、不良の発生原因の解析を容易化することができる。
【0077】
<第1の変形例>
上記実施の形態では、
図6に示したように、バウンダリスキャンテストのセット間の実行間隔は、温度ストレスが一定である温度一定期間に関しても、温度ストレスが遷移している温度遷移期間に関しても、同一の時間間隔W0に設定されたが、温度一定期間と温度遷移期間とで異なる時間間隔が設定されても良い。
【0078】
図9は、環境形成装置3による温度サイクルの一例を部分的に示す図である。バウンダリスキャンテストのセット間の実行間隔(つまり連続する矢印P間の時間間隔)は、温度一定期間(T2~T3,T4~T5,T6~T7)に関しては時間間隔W1に設定されており、温度遷移期間(T3~T4,T5~T6,T7~T8)に関しては時間間隔W2に設定されている。時間間隔W1は時間間隔W0よりも長く、例えば10分である。時間間隔W2は時間間隔W0よりも短く、例えば6分である。なお、この例では時間間隔W1は時間間隔W2より長く設定されているが、この条件には限定されず、例えば時間間隔W1は時間間隔W2より短く設定されても良い。
【0079】
システムコントローラ11は、環境形成装置3のチャンバ22内の温度を示す温度情報をチャンバモニタ12から取得する。そして、システムコントローラ11は、例えば、チャンバ22内の温度が高温設定温度(例えば85℃)又は低温設定温度(例えば-40℃)であれば、現在は温度一定期間であると判定し、実行間隔を時間間隔W1に設定する。一方、システムコントローラ11は、例えば、チャンバ22内の温度が低温設定温度より高くかつ高温設定温度より低ければ、現在は温度遷移期間であると判定し、実行間隔を時間間隔W2に設定する。
【0080】
なお、システムコントローラ11は、チャンバ22内の温度を示す温度情報を環境コントローラ21から取得することにより、あるいは、チャンバ22の状態(温度一定状態又は温度遷移状態)を示す状態情報を環境コントローラ21から取得することにより、現在が温度一定期間であるか温度遷移期間であるかを判定することもできる。また、システムコントローラ11は、予め設定した温度サイクルの制御シーケンスに基づいて現在のチャンバ22の状態を推定することにより、現在が温度一定期間であるか温度遷移期間であるかを判定することもできる。
【0081】
本変形例によれば、テストコントローラ13は、システムコントローラ11からの制御によって、温度ストレスが一定である温度一定期間(第1の期間)においては時間間隔W1(第1の実行間隔)でバウンダリスキャンテストを実行し、温度ストレスが遷移している温度遷移期間(第2の期間)においては時間間隔W1よりも短い時間間隔W2(第2の実行間隔)でバウンダリスキャンテストを実行する。温度一定期間は温度遷移期間と比較して不良が発生しにくいため、バウンダリスキャンテストの実行間隔として比較的長い時間間隔W1を設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。一方、半導体デバイスは線膨張係数が異なる複数種類の材質から成るため、温度遷移期間は温度一定期間と比較して不良が発生しやすい。そのため、温度遷移期間に関してはバウンダリスキャンテストの実行間隔として比較的短い時間間隔W2を設定することによって、不良の発生を早期に発見することができる。
【0082】
なお、条件に応じてバウンダリスキャンテストの実行間隔を変化させる他の例として、検査の経過時間に応じて実行間隔を短くする構成、又は、不良発生率が急増するストレス印加時間が既知である場合に、そのストレス印加時間の経過後に実行間隔を短くする構成が採用されても良い。
【0083】
<第2の変形例>
上記第1の変形例では、回路基板Xに温度ストレスを印加する検査において、バウンダリスキャンテストの実行間隔として比較的長い時間間隔W1と比較的短い時間間隔W2とが設定されたが、回路基板Xに振動ストレスを印加する検査において同様の設定が行われても良い。
【0084】
図10は、環境形成装置3による振動サイクルの一例を部分的に示す図である。検査対象である回路基板Xの共振周波数Kは、回路基板Xを対象とする共振点探査試験によって予め求められている。
【0085】
環境形成装置3は、所定の周波数範囲内で連続的に変化する様々な周波数の振動ストレスを回路基板Xに対して印加する。テストコントローラ13は、システムコントローラ11からの制御によって、回路基板Xの共振周波数Kとは異なる周波数の振動ストレスが印加されている第1の期間(T0~T1,T2~T3,T4~T5)においては、比較的長い時間間隔W1でバウンダリスキャンテストを実行する。一方、回路基板Xの共振周波数Kと同一又は近似する周波数の振動ストレスが印加されている第2の期間(T1~T2,T3~T4)においては、比較的短い時間間隔W2でバウンダリスキャンテストを実行する。なお、この例では時間間隔W1は時間間隔W2より長く設定されているが、この条件には限定されず、例えば時間間隔W1は時間間隔W2より短く設定されても良い。
【0086】
本変形例によれば、第1の期間は第2の期間と比較して不良が発生しにくいため、バウンダリスキャンテストの実行間隔として比較的長い時間間隔W1を設定することによって、テスト結果のデータ量が増大することを回避できる。一方、第2の期間は第1の期間と比較して不良が発生しやすいため、バウンダリスキャンテストの実行間隔として比較的短い時間間隔W2を設定することによって、不良の発生を早期に発見することができる。
【0087】
<第3の変形例>
上記実施の形態では、
図7のステップSP109で示したように、予め規定された検査終了条件(バウンダリスキャンテストの所望のセット数等)が満たされるまで検査が継続されたが、所定の条件に従って検査が強制終了されても良い。
【0088】
図11は、回路基板X1~XNに対するバウンダリスキャンテストにおいて、システムコントローラ11が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示したフローチャートを基礎として、ステップSP107とステップSP109との間にステップSP201が追加されている。
【0089】
ステップSP201においてシステムコントローラ11は、所定の検査強制終了条件が満たされているか否かを判定する。検査強制終了条件は、検査条件の一部としてステップSP101で設定される。検査強制終了条件は、例えば、バウンダリスキャンテストのテスト結果が不合格(NG)となった回路基板Xの枚数(累積値)が所定のしきい値Z以上となったこと、である。但し、回路基板Xが異なるか同一であるかに関わらず、バウンダリスキャンテストの不合格(NG)のテスト結果の数(累積値)がしきい値Z以上となったこと、を検査終了条件とすれば良い。しきい値Zとしては、1以上の任意の自然数が設定される。
【0090】
ステップSP201による判定の結果、検査強制終了条件が満たされていない場合(つまりステップSP201による判定結果が「NO」である場合)は、ステップSP109に移行する。
【0091】
一方、検査強制終了条件が満たされている場合(つまりステップSP201による判定結果が「YES」である場合)は、システムコントローラ11は、検査終了コマンドを発行することによって検査を終了する。環境形成装置3は、検査終了コマンドを取得することにより、回路基板X1~XNへの環境ストレスの印加を終了する。なお、検査が強制終了される上記の構成に代えて、検査は継続しつつ、環境形成装置3によって印加される環境ストレスが低下される構成が採用されても良い。例えば、高温及び低温の温度ストレスが印加されている場合に、高温及び低温の少なくとも一方の設定温度を常温に近付けることにより、温度ストレスが低下される。
【0092】
本変形例によれば、システムコントローラ11は、バウンダリスキャンテストの不合格(NG)のテスト結果の数(累積値)が所定のしきい値Z以上となった場合、環境形成装置3に環境ストレスを印加停止(強制終了)又は低下させる。これにより、不良が発生していない回路基板Xに対して余分な環境ストレスが印加され続けることを防止できる。
【0093】
<第4の変形例>
上記第3の変形例では、バウンダリスキャンテストの不合格(NG)のテスト結果の数(累積値)がしきい値Z以上となった場合には検査が強制終了されたが、テスト結果が不合格である回路基板Xを次回以降のバウンダリスキャンテストの検査対象から除外して、検査が継続されても良い。
【0094】
図12は、回路基板X1~XNに対するバウンダリスキャンテストにおいて、システムコントローラ11が実行する処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示したフローチャートを基礎として、ステップSP106とステップSP107との間にステップSP301,SP302が追加されている。
【0095】
ステップSP301においてシステムコントローラ11は、ステップSP106で取得したチャンネルCに関するバウンダリスキャンテストのテスト結果が不合格(NG)であるか否かを判定する。
【0096】
ステップSP301による判定の結果、テスト結果が不合格でない場合(つまりステップSP301による判定結果が「NO」である場合)は、ステップSP107に移行する。
【0097】
一方、テスト結果が不合格である場合(つまりステップSP301による判定結果が「YES」である場合)は、次にステップSP302においてシステムコントローラ11は、当該チャンネルCを、次回以降のバウンダリスキャンテストの検査対象から除外する。例えば、システムコントローラ11から参照可能なメモリに除外チャンネルのリスト情報が保存されており、そのリスト情報に当該チャンネルCを追加する。
【0098】
次回以降のバウンダリスキャンテストにおいては、ステップSP108でのチャンネル更新対象から当該チャンネルCが除外されることにより、スキャナユニット14による切替対象から当該チャンネルCが除外される。その結果、当該チャンネルCを飛ばして残りのチャンネルを対象とするバウンダリスキャンテストが実行される。
【0099】
本変形例によれば、システムコントローラ11は、複数の回路基板X1~XNのうちある回路基板に関するバウンダリスキャンテストのテスト結果が不合格であった場合、スキャナユニット14による切替対象から当該回路基板を除外して、他の回路基板に対するバウンダリスキャンテストを継続する。これにより、不良が発生しない回路基板に対しては、予め設定された所望時間又は所望回数等のバウンダリスキャンテストを実行することができる。また、不良が発生した回路基板に対しては、スキャナユニット14による切替対象から当該回路基板を除外することによって、それ以降は当該回路基板に対するバウンダリスキャンテストは実行されない。従って、不良が発生した回路基板に対する無駄なテストが実行されることを回避できる。
【符号の説明】
【0100】
1 検査システム
2 検査装置
3 環境形成装置
11 システムコントローラ
13 テストコントローラ
14 スキャナユニット
15 記憶部