(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 13/02 20060101AFI20240507BHJP
B60C 13/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B60C13/02
B60C13/00 D
(21)【出願番号】P 2019221430
(22)【出願日】2019-12-06
【審査請求日】2022-10-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】松原 圭佑
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-068761(JP,A)
【文献】特開2019-104300(JP,A)
【文献】特開2011-168219(JP,A)
【文献】特開2003-025813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
サイドウォール部に設けられ、タイヤ幅方向外側に突出すると共にタイヤ周方向全体に亘ってタイヤ周方向に延びる第1陸部と、
前記第1陸部のタイヤ径方向中央部に設けられ、タイヤ幅方向外側に突出すると共にタイヤ周方向に延び、タイヤ周方向に離間して配置される複数の第2陸部とを備え、
前記第2陸部は、タイヤ径方向外側端部及びタイヤ径方向内側端部が前記第1陸部のタイヤ径方向外側端部及びタイヤ径方向内側端部からそれぞれタイヤ径方向に離間して配置され
、
前記第1陸部からタイヤ幅方向外側に突出すると共にタイヤ周方向に延び、タイヤ周方向に隣接する2つの前記第2陸部を連結する連結部を備えている空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1陸部は、タイヤ接地面の最外径端位置からタイヤ径方向内側にタイヤ断面高さの50%以下の範囲に配置されている請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記第1陸部のタイヤ径方向寸法は、タイヤ断面高さの20%以上40%以下である請求項1又は請求項2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記第1陸部のタイヤ径方向寸法に対する個々の前記第2陸部のタイヤ径方向寸法の割合は、50%以上80%以下である請求項1から請求項3の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1陸部の突出高さに対する個々の前記第2陸部の突出高さの割合は、100%以上400%以下である請求項1から請求項4の何れか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
耐外傷性を高めるために、サイドウォール部に、タイヤ幅方向外側に突出するプロテクタを備えた空気入りタイヤが知られている。例えば特許文献1には、サイドウォール部にタイヤ幅方向外側に突出するプロテクタを備えると共に、プロテクタに複数の溝部が形成された空気入りタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された空気入りタイヤは、サイドウォール部に設けられたプロテクタに複数の溝部を設けることでプロテクタの損傷を抑制することを意図しているが、トラクション性能について考慮されていない。
【0005】
本発明は、空気入りタイヤにおいて、サイドウォール部の耐外傷性及びトラクション性能を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、サイドウォール部に設けられ、タイヤ幅方向外側に突出すると共にタイヤ周方向全体に亘ってタイヤ周方向に延びる第1陸部と、前記第1陸部のタイヤ径方向中央部に設けられ、タイヤ幅方向外側に突出すると共にタイヤ周方向に延び、タイヤ周方向に離間して配置される複数の第2陸部とを備え、前記第2陸部は、タイヤ径方向外側端部及びタイヤ径方向内側端部が前記第1陸部のタイヤ径方向外側端部及びタイヤ径方向内側端部からそれぞれタイヤ径方向に離間して配置され、前記第1陸部からタイヤ幅方向外側に突出すると共にタイヤ周方向に延び、タイヤ周方向に隣接する2つの前記第2陸部を連結する連結部を備えている空気入りタイヤを提供する。
【0007】
本構成により、サイドウォール部にタイヤ周方向全体に亘って第1陸部が設けられるので、サイドウォール部を第1陸部によって補強してサイドウォール部の耐外傷性を向上させることができる。第1陸部のタイヤ径方向中央部にタイヤ周方向に離間して複数の第2陸部が設けられるので、サイドウォール部を第2陸部によって補強してサイドウォール部の耐外傷性を向上させることができると共に、第2陸部によってトラクション性能を向上させることができる。したがって、第1陸部及び第2陸部によってサイドウォール部の耐外傷性及びトラクション性能を向上させることができる。
タイヤ周方向に隣接する2つの第2陸部が連結部によって連結されるので、第2陸部を補強して第2陸部の周縁部に割れなどの損傷が発生することを抑制することができる。
【0008】
前記第1陸部は、タイヤ接地面の最外径端位置からタイヤ径方向内側にタイヤ断面高さの50%以下の範囲に配置されている。
【0009】
本構成により、第1陸部及び第2陸部がサイドウォール部のタイヤ径方向外側に配置されるので、第1陸部及び第2陸部によってサイドウォール部の耐外傷性及びトラクション性能を向上させることができる。
【0010】
前記第1陸部のタイヤ径方向寸法は、タイヤ断面高さの20%以上40%以下であることが好ましい。
【0011】
本構成により、第1陸部のタイヤ径方向寸法が適度に設定されるので、サイドウォール部の耐外傷性の向上効果を有効に得ることができる。第1陸部のタイヤ径方向寸法がタイヤ断面高さの20%未満である場合、第1陸部のタイヤ径方向寸法が小さく、第1陸部によるサイドウォール部の耐外傷性の向上効果が得られにくい。第1陸部のタイヤ径方向寸法がタイヤ断面高さの40%より大きい場合、サイドウォール部の変形が大きくなる最大幅位置付近に第1陸部のタイヤ径方向内側端部が配置されることから、第1陸部のタイヤ径方向内側端部に割れなどの損傷が発生し易く、第1陸部によるサイドウォール部の耐外傷性の向上効果が得られにくい。
【0012】
前記第1陸部のタイヤ径方向寸法に対する個々の前記第2陸部のタイヤ径方向寸法の割合は、50%以上80%以下であることが好ましい。
【0013】
本構成により、第1陸部のタイヤ径方向寸法に対する個々の第2陸部のタイヤ径方向寸法の割合が適度に設定されるので、第2陸部によるサイドウォール部の耐外傷性及びトラクション性能の向上効果を有効に得ることができる。前記割合が50%未満である場合、第2陸部のタイヤ径方向寸法が小さく、第2陸部によるサイドウォール部の耐外傷性の向上効果が得られにくい。前記割合が80%より大きい場合、第2陸部のタイヤ径方向両端部が第1陸部のタイヤ径方向両端部近傍に配置され、第2陸部によるトラクション性能の向上効果が得られにくい。
【0014】
前記第1陸部の突出高さに対する個々の前記第2陸部の突出高さの割合は、100%以上400%以下であることが好ましい。
【0015】
本構成により、第1陸部の突出高さに対する個々の第2陸部の突出高さの割合が適度に設定されるので、第2陸部によるサイドウォール部の耐外傷性及びトラクション性能の向上効果を有効に得ることができる。前記割合が100%未満である場合、第2陸部の突出高さが小さく、第2陸部によるサイドウォール部の耐外傷性及びトラクション性能の向上効果が得られにくい。前記割合が400%より大きい場合、第2陸部の突出高さが大きく、第2陸部のタイヤ径方向両端部に割れなどの損傷が発生し易く、第2陸部によるサイドウォール部の耐外傷性の向上効果が得られにくい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る空気入りタイヤによれば、サイドウォール部の耐外傷性及びトラクション性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの子午線半断面図。
【
図3】空気入りタイヤのトレッド部及びサイドウォール部の要部展開図。
【
図4】
図3のY4-Y4線に沿ったサイドウォール部の断面図。
【
図5】
図3のY5-Y5線に沿ったサイドウォール部の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る空気入りタイヤの子午線半断面図、
図2は、空気入りタイヤの一部を示す側面図、
図3は、空気入りタイヤのトレッド部及びサイドウォール部の要部展開図である。本発明の実施形態に係る空気入りタイヤ(以下、「タイヤ」ともいう)1は、非舗装路などの悪路を走行するためのSUV等の車両に装着されるオフロード用のタイヤである。
【0022】
図1から
図3に示すように、空気入りタイヤ1は、路面に接するタイヤ接地面を有するトレッド部2と、トレッド部2のタイヤ幅方向外側からタイヤ径方向内側に延びて空気入りタイヤ1の側面を構成する両側のサイドウォール部3と、両側のサイドウォール部3のタイヤ径方向内側にそれぞれ位置すると共に図示しないホイールのリムに固定される両側のビード部4とを備えている。
【0023】
ビード部4は、ビードコア5とビードコア5のタイヤ径方向外側に配置されるビードフィラー6とを有している。ビードコア5は、複数のビードワイヤを束ねて環状に形成されている。ビードフィラー6は、ビードコア5を補強するものであり、ゴム材料から断面略三角形状に環状に形成されている。
【0024】
タイヤ1は、両側のビード部4の間に、具体的には両側のビードコア5の間にトロイダル状に掛け渡されたカーカスプライ10を備えている。カーカスプライ10は、第1、第2、第3カーカスプライ11,12,13から構成されている。第1、第2、第3カーカスプライ11,12,13はそれぞれ、複数のワイヤを並設してゴムで被覆して帯状に形成されている。
【0025】
第1カーカスプライ11は、両側のビードコア5の間に掛け渡され、第1カーカスプライ11の外端部11aは、ビードコア5に対して巻き上げられてビードフィラー6よりタイヤ径方向外側にサイドウォール部3の最大幅位置M近傍に位置している。第2カーカスプライ12は、第1カーカスプライ11のタイヤ径方向外側に重ねて配置され、第2カーカスプライ12の外端部12aは、ビードコア5に対して巻き上げられることなくビードコア5よりタイヤ径方向外側に位置している。第3カーカスプライ13は、第2カーカスプライ12のタイヤ径方向外側に重ねて配置され、第3カーカスプライ13の外端部13aは、ビードコア5に対して巻き上げられてビードフィラー6のタイヤ径方向外側端部近傍に位置している。
【0026】
カーカスプライ10のタイヤ径方向内側には、タイヤ内面を構成して空気圧を保持するためのインナライナ7が配置されている。インナライナ7は、トレッド部2、両側のサイドウォール部3及び両側のビード部4に亘って設けられ、空気の透過を防ぐゴム材料で形成されている。
【0027】
トレッド部2におけるカーカスプライ10のタイヤ径方向外側には、無端状のベルトプライ20が配置されている。ベルトプライ20は、第1、第2ベルトプライ21,22から構成されている。第1ベルトプライ21は、カーカスプライ10のタイヤ径方向外側に重ねて配置され、第2ベルトプライ22は、第1ベルトプライ21のタイヤ径方向外側に重ねて配置されている。
【0028】
第2ベルトプライ22のタイヤ幅方向外側は、第1ベルトプライ21のタイヤ幅方向外側よりタイヤ幅方向内側(タイヤ赤道線CL側)に設けられている。第1、第2ベルトプライ21,22はそれぞれ、複数のワイヤを並設してゴムで被覆して帯状に形成されている。
【0029】
ベルトプライ20のタイヤ径方向外側には、無端状のキャッププライ30が配置されている。キャッププライ30は、ベルトプライ20を補強するためのものであり、ベルトプライ20を覆っている。キャッププライ30は、第1、第2キャッププライ31,32から構成されている。第1キャッププライ31は、ベルトプライ20のタイヤ径方向外側に重ねて配置され、第2キャッププライ32は、第1キャッププライ31のタイヤ径方向外側に重ねて配置されている。第1、第2キャッププライ31,32はそれぞれ、複数のワイヤを並設してゴムで被覆して帯状に形成されている。
【0030】
ベルトプライ20のタイヤ幅方向外側端部とカーカスプライ10との間には、ゴム製の無端状のパッド40が配置されている。第1、第2ベルトプライ21,22のタイヤ幅方向外側端部と第1、第2キャッププライ31,32のタイヤ径方向外側端部とはそれぞれ、パッド40とタイヤ幅方向にオーバーラップする位置に配置されている。
【0031】
タイヤ1は、トレッド部2におけるキャッププライ30のタイヤ径方向外側に設けられてトレッド部2の外表面を形成するトレッドゴム14と、ビード部4におけるカーカスプライ10のタイヤ径方向内側及びタイヤ幅方向両側に設けられてビード部4の外表面を形成するリムストリップゴム15と、サイドウォール部3におけるカーカスプライ10のタイヤ幅方向外側に設けられてサイドウォール部3の外表面を形成するサイドウォールゴム16とを備えている。
【0032】
トレッド部2には、タイヤ周方向TCに延びる主溝24とタイヤ幅方向TWに延びる複数の横溝25とによって画定される複数のブロック26,27が設けられている。トレッド部2には、タイヤ幅方向中央側に配置されるセンタブロック26とタイヤ幅方向外側に配置されるショルダブロック27とが設けられている。ショルダブロック27は、トレッド部2のタイヤ幅方向外側に配置され、タイヤ幅方向TWに延びている。トレッド部2には、タイヤ周方向TCに沿って複数のショルダブロック27が等間隔に設けられている。
【0033】
サイドウォール部3には、タイヤ幅方向外側に突出してタイヤ周方向TCに延びる第1陸部50と、第1陸部50からタイヤ幅方向外側に突出してタイヤ周方向TCに延びる複数の第2陸部60が設けられている。第1陸部50は、サイドウォール部3のタイヤ径方向外側に配置され、タイヤ周方向全体に亘って連続して環状に設けられている。複数の第2陸部60は、タイヤ周方向TCに離間してタイヤ周方向全体に分散して配置されている。
【0034】
図4は、
図3のY4-Y4線に沿ったサイドウォール部の断面図、
図5は、
図3のY5-Y5線に沿ったサイドウォール部の断面図である。
図4に示すように、第1陸部50は、サイドウォール部3のタイヤ幅方向外側のプロファイル面(基準面)17からタイヤ幅方向外側に突出し、例えば2mmなどの所定突出高さT1を有している。
【0035】
第1陸部50は、タイヤ幅方向外側に突出する上面部51と、上面部51のタイヤ径方向外側端部からタイヤ径方向内側に延びる第1側面部52と、上面部51のタイヤ径方向内側端部からタイヤ径方向内側に延びる第2側面部53とを備え、タイヤ子午線断面において略台形状に形成されている。
【0036】
複数の第2陸部60は、同一形状に形成され、第1陸部50のタイヤ径方向中央部に配置されている。第2陸部60は、第1陸部50からタイヤ幅方向外側に突出し、例えば4mmなどの所定突出高さT2を有している。
【0037】
第2陸部60は、タイヤ幅方向外側に突出する上面部61と、上面部61のタイヤ径方向外側端部からタイヤ径方向内側に延びる第1側面部62と、上面部61のタイヤ径方向内側端部からタイヤ径方向内側に延びる第2側面部63と、上面部61のタイヤ周方向一方側端部からタイヤ径方向内側に延びる第3側面部64と、上面部61のタイヤ周方向他方側端部からタイヤ径方向内側に延びる第4側面部65とを備え、タイヤ子午線断面において略台形状に形成されている。
【0038】
図2に示すように、第2陸部60の第1側面部62及び第2側面部63はそれぞれ、タイヤ周方向TCに沿って略円弧状に延び、第2陸部60の第3側面部64及び第4側面部65はそれぞれ、タイヤ径方向TRに傾斜して延び、第2陸部60の上面部61は、側面視で略矩形状に形成されている。
【0039】
第2陸部60の第2側面部63には、タイヤ周方向中央側にタイヤ径方向外側に略矩形状に窪む凹部66が形成されている。第2陸部60は、タイヤ周方向両側部分に比してタイヤ周方向中央側部分のタイヤ径方向寸法が小さく形成されている。第2陸部60のタイヤ周方向両側部分は、タイヤ幅方向TWにショルダブロック27に対向して設けられている。
【0040】
サイドウォール部3には、
図2及び
図3に示すように、タイヤ周方向TCに隣接する2つの第2陸部60を連結する少なくとも1つの連結部70が設けられている。連結部70は、第1陸部50からタイヤ幅方向外側に突出し、例えば4mmなどの所定突出高さT3を有している。
【0041】
連結部70は、
図5に示すように、タイヤ子午線断面において略台形状に形成されている。連結部70は、タイヤ周方向TCに沿って略円弧状に形成され、タイヤ周方向TCに隣接する2つの第2陸部60の対向する第3側面部64及び第4側面部65に亘ってタイヤ周方向TCに延びている。
【0042】
タイヤ1では、タイヤ周方向TCに隣接する2つの第2陸部60を連結する2つの連結部70が設けられ、2つの連結部70は、タイヤ径方向TRに離間して配置されている。2つの連結部70の一方は、タイヤ周方向TCに隣接する2つの第2陸部60のタイヤ径方向外側どうしを連結し、2つの連結部70の他方は、タイヤ周方向TCに隣接する2つの第2陸部60のタイヤ径方向中央側どうしを連結している。
【0043】
サイドウォール部3に設けられる第1陸部50は、
図1及び
図4に示すように、タイヤ接地面の最外径端位置からタイヤ径方向内側にタイヤ断面高さH0の50%以下の範囲に配置される。第1陸部50はまた、タイヤ径方向寸法H1がタイヤ断面高さH0の20%以上40%以下であるように設定される。第1陸部50のタイヤ径方向寸法H1がタイヤ断面高さH0の20%未満又は40%より大きい場合、第1陸部50によるサイドウォール部3の耐外傷性の向上効果が得られにくい。
【0044】
第2陸部60は、第1陸部50のタイヤ径方向中央側に設けられる。第2陸部60は好ましくは、第1陸部50のタイヤ径方向寸法H1に対する個々の第2陸部60のタイヤ径方向寸法H2の割合(H2/H1)が50%以上80%以下であるように設定される。前記割合(H2/H1)が50%未満である場合、第2陸部60によるサイドウォール部3の耐外傷性の向上効果が得られにくい。前記割合(H2/H1)が80%より大きい場合、第2陸部60によるトラクション性能の向上効果が得られにくい。
【0045】
第2陸部60は好ましくは、タイヤ径方向外側端部及びタイヤ径方向内側端部が第1陸部50のタイヤ径方向外側端部及びタイヤ径方向内側端部からそれぞれタイヤ径方向TRにタイヤ断面高さH0の10%以上に離間して配置される。これにより、第2陸部60による耐外傷性及びトラクション性能の向上効果を有効に得ることができる。
【0046】
第1陸部50及び第2陸部60は好ましくは、第1陸部50の突出高さT1に対する個々の第2陸部60の突出高さT2の割合(T2/T1)が100%以上400%以下になるように形成される。前記割合(T2/T1)が100%未満である場合、第2陸部60によるサイドウォール部3の耐外傷性及びトラクション性能の向上効果が得られにくい。前記割合(T2/T1)が400%より大きい場合、第2陸部60によるサイドウォール部3の耐外傷性の向上効果が得られにくい。
【0047】
タイヤ1では、連結部70は好ましくは、第2陸部60の突出高さT2と同一の突出高さH3を有するように形成される。連結部70は、第2陸部60の突出高さT2より低い突出高さT3を有するように形成することも可能である。
【0048】
タイヤ1に関連する各寸法は、タイヤ1を標準リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の状態で測定した寸法である。標準リムは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば“標準リム”、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”を用いる。
【0049】
タイヤ1では、サイドウォール部3に設けられる第1陸部50、第2陸部60及び連結部70は、両側のサイドウォール部3のうち少なくとも一方のサイドウォール部3に設けられるが、好ましくは両側のサイドウォール部3に設けられる。
【0050】
タイヤ1では、第1陸部50上に第2陸部60及び連結部70が設けられているが、第1陸部50からタイヤ幅方向外側に突出すると共にタイヤ径方向に延び、第2陸部60のタイヤ周方向両側部分と対向するショルダブロック27とをそれぞれ連結する補強部などを設けることも可能である。
【0051】
このように、本実施形態に係る空気入りタイヤ1は、サイドウォール部3に設けられ、タイヤ幅方向外側に突出すると共にタイヤ周方向全体に亘ってタイヤ周方向TCに延びる第1陸部50と、第1陸部50のタイヤ径方向中央部に設けられ、タイヤ幅方向外側に突出すると共にタイヤ周方向TCに延び、タイヤ周方向TCに離間して配置される複数の第2陸部60とを備える。
【0052】
これにより、サイドウォール部3にタイヤ周方向全体に亘って第1陸部50が設けられるので、サイドウォール部3を第1陸部50によって補強してサイドウォール部3の耐外傷性を向上させることができる。第1陸部50のタイヤ径方向中央部にタイヤ周方向TCに離間して複数の第2陸部60が設けられるので、サイドウォール部3を第2陸部60によって補強してサイドウォール部3の耐外傷性を向上させることができると共に、第2陸部60によってトラクション性能を向上させることができる。したがって、第1陸部50及び第2陸部60によってサイドウォール部3の耐外傷性及びトラクション性能を向上させることができる。
【0053】
また、第1陸部50は、タイヤ接地面の最外径端位置からタイヤ径方向内側にタイヤ断面高さH0の50%以下の範囲に配置されている。これにより、第1陸部50及び第2陸部60がサイドウォール部3のタイヤ径方向外側に配置されるので、第1陸部50及び第2陸部60によってサイドウォール部3の耐外傷性及びトラクション性能を向上させることができる。
【0054】
また、第1陸部50のタイヤ径方向寸法H1は、タイヤ断面高さH0の20%以上40%以下である。これにより、第1陸部50のタイヤ径方向寸法H1が適度に設定されるので、サイドウォール部3の耐外傷性の向上効果を有効に得ることができる。第1陸部50のタイヤ径方向寸法H1がタイヤ断面高さH0の20%未満である場合、第1陸部50のタイヤ径方向寸法H1が小さく、第1陸部50によるサイドウォール部3の耐外傷性の向上効果が得られにくい。第1陸部50のタイヤ径方向寸法H1がタイヤ断面高さH0の40%より大きい場合、サイドウォール部3の変形が大きくなる最大幅位置M付近に第1陸部50のタイヤ径方向内側端部が配置されることから、第1陸部50のタイヤ径方向内側端部に割れなどの損傷が発生し易く、第1陸部50によるサイドウォール部3の耐外傷性の向上効果が得られにくい。
【0055】
また、第1陸部50のタイヤ径方向寸法H1に対する個々の第2陸部60のタイヤ径方向寸法H2の割合(H2/H1)は、50%以上80%以下である。これにより、第1陸部50のタイヤ径方向寸法H1に対する個々の第2陸部60のタイヤ径方向寸法H2の割合(H2/H1)が適度に設定されるので、第2陸部60によるサイドウォール部3の耐外傷性の向上効果及びトラクション性能の向上効果を有効に得ることができる。前記割合(H2/H1)が50%未満である場合、第2陸部60のタイヤ径方向寸法H2が小さく、第2陸部60によるサイドウォール部3の耐外傷性の向上効果が得られにくい。前記割合(H2/H1)が80%より大きい場合、第2陸部60のタイヤ径方向両端部が第1陸部50のタイヤ径方向両端部近傍に配置され、第2陸部60によるトラクション性能の向上効果が得られにくい。
【0056】
また、第1陸部50の突出高さT1に対する個々の第2陸部60の突出高さT2の割合(T2/T1)は、100%以上400%以下である。これにより、第1陸部50の突出高さT1に対する個々の第2陸部60の突出高さT2の割合(T2/T1)が適度に設定されるので、第2陸部60によるサイドウォール部3の耐外傷性及びトラクション性能の向上効果を有効に得ることができる。前記割合(T2/T1)が100%未満である場合、第2陸部60の突出高さT2が小さく、第2陸部60によるサイドウォール部3の耐外傷性及びトラクション性能の向上効果が得られにくい。前記割合(T2/T1)が400%より大きい場合、第2陸部60の突出高さT2が大きく、第2陸部60のタイヤ径方向両端部に割れなどの損傷が発生し易く、第2陸部60によるサイドウォール部3の耐外傷性の向上効果が得られにくい。
【0057】
また、第1陸部50からタイヤ幅方向外側に突出すると共にタイヤ周方向TCに延び、タイヤ周方向TCに隣接する2つの第2陸部60を連結する連結部70が備えられる。これにより、タイヤ周方向TCに隣接する2つの第2陸部60が連結部70によって連結されるので、第2陸部60を補強して第2陸部60の周縁部に割れなどの損傷が発生することを抑制することができる。
【0058】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【符号の説明】
【0059】
1 空気入りタイヤ
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
50 第1陸部
60 第2陸部
70 連結部