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特許7482623油汚損防止剤および/または抗アスファルテン塊状凝集プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】油汚損防止剤および/または抗アスファルテン塊状凝集プロセス
(51)【国際特許分類】
   C10G 75/04 20060101AFI20240507BHJP
   C10L 10/04 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C10G75/04
C10L10/04
【請求項の数】 14
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019221807
(22)【出願日】2019-12-09
(65)【公開番号】P2020114912
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】18214517.7
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500010875
【氏名又は名称】インフィニューム インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100137626
【弁理士】
【氏名又は名称】田代 玄
(72)【発明者】
【氏名】ポール カービー
(72)【発明者】
【氏名】クシシュトフ マランスキ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ストコウスキ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ カイル
【審査官】上坊寺 宏枝
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0218468(US,A1)
【文献】特表2010-522812(JP,A)
【文献】特表2007-537346(JP,A)
【文献】特表2001-502389(JP,A)
【文献】特開2016-108565(JP,A)
【文献】特開2014-091834(JP,A)
【文献】特開2019-011469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
C10L 1/00-1/32、10/00-10/18
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯蔵およびブレンディングを含む、原油の中流プロセスおよび輸送ならびに上流輸送における汚損および/またはアスファルテン塊状凝集または綿状凝集を低減するための方法であって、
(A)ポリアルケニル置換カルボン酸または無水物、および
(B)ヒドロカルビル置換ヒドロキシンゾエート金属塩、またはヒドロカルビル置換スルホネート金属塩または両方の塩の混合物またはそれらの複合体を含む金属清浄剤システム、
を含む添加剤の組み合わせを原油に提供することを含み、
ここで、(A)対(B)の質量:質量比は、20:1~1:20の範囲であり、(A)及び(B)の添加剤の組み合わせの原油に対する処理比は、5~10000質量ppmの範囲である、方法。
【請求項2】
(A)及び(B)の添加剤の組み合わせの原油に対する処理比が100~5000質量ppmの範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(A)対(B)の質量:質量比が、1:1~1:6の範囲である、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(A)において、ポリアルケニル置換基が、8~400個の炭素原子を有する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
(A)において、ポリアルケニル置換基の数平均分子量が350~2000である、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
(A)がコハク酸無水物である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
(A)がポリイソブテンコハク酸無水物である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(B)において、金属がカルシウムである、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
(B)において、ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾエートがサリチレートである、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
(B)において、ヒドロカルビル基が8~100個の炭素原子を有する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
(B)において、清浄剤または各清浄剤が、下限が150および上限が500の範囲でTBNを有する、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
(B)において、清浄剤または各清浄剤が、過塩基性清浄剤として存在する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
添加剤(A)および(B)が、解乳化用乳化破壊剤、腐食防止剤、水和物抑制剤、スケール抑制剤、流動性向上剤、ワックス沈殿抑制剤もしくはパラフィン抑制剤、流動点降下剤、粘度向上剤および/または他の添加剤と共に使用される、請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
原油の中流プロセスおよび輸送ならびに上流輸送における汚損および/またはアスファルテン塊状凝集または綿状凝集を低減するための、原油における請求項1から13までのいずれか1項に記載の添加剤の組み合わせの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素油、特に原油の中流プロセスおよび輸送ならびに上流輸送における汚損および/またはアスファルテン塊状凝集(または綿状凝集)を低減するための添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
アスファルテンには、ヘテロ原子を有する高分子量縮合芳香族化合物などの多数の構造が含まれ;それらは、主として炭素および水素の複素環不飽和高分子であるが、硫黄、酸素、窒素および種々の重金属などの微量成分も含有している。それらは、炭化水素油中にかなりの量で存在している可能性があり、悪影響のある油の中流プロセスおよび輸送中、ならびに上流輸送において沈殿して堆積し得る。
この技術は、この問題を解決するための添加剤の使用による処理について説明している。例えば、米国特許出願公開第2017/0306215号(「’215」)は、少なくとも1個のポリオールと共に、アルキル(アルケニル)基当たりのコハク酸基の平均数が2.0未満であるアルキル(アルケニル)置換無水コハク酸を反応させることによって得られる有効量のポリエステルアスファルテン分散剤を炭化水素に添加することにより、炭化水素中のアスファルテン沈殿および/または堆積を抑制することについて記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】米国特許出願公開第2017/0306215号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、’215とは異なる方法で上述の問題に対処する。それは、例えば、未反応の無水コハク酸を使用し、金属清浄剤と組み合わせており、その有効性は、本明細書の実施例の項で実証されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様では、本発明は、貯蔵およびブレンディングを含む、原油などの炭化水素油の中流プロセスおよび輸送ならびに上流輸送における汚損(fouling)および/またはアスファルテン塊状凝集(agglomeration)(または綿状凝集(flocculation))を低減するための方法を提供し、この方法は、
(A)ポリアルケニル置換カルボン酸または無水物、および
(B)ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾエート金属塩、またはヒドロカルビル置換スルホネート金属塩または両方の塩の混合物またはその複合体を含む金属清浄剤システム、
を含む添加剤の組み合わせを油に提供することを含み、
ここで、(A)対(B)の質量:質量比は、20:1~1:20、例えば10:1~1:10、好ましくは3:1~1:3の範囲であり、添加剤の組み合わせの処理比は、5、10、100または500~1000、5000または10000、好ましくは100~5000、例えば500~1000、質量ppmの範囲である。
第2の態様では、本発明は、油の中流プロセスおよび輸送ならびに上流輸送中の汚損および/またはアスファルテン塊状凝集もしくは綿状凝集を低減するための、炭化水素油中での上に定義した添加剤の組み合わせの使用を提供する。したがって、どちらの態様でも、汚損および/またはアスファルテン塊状凝集もしくは綿状凝集は、中流プロセスおよび輸送ならびに/または上流輸送にかけられた原油などの炭化水素油から生じることを理解されよう。
【0006】
定義
以下の定義は、限定ではなく例示の目的で提供されている。
「下流(downstream)」は、精製された生成物の輸送および利用を含む、製油所内の炭化水素油を伴う任意の操作、またはその後を意味する。
「中流(midstream)」は、通常油田またはその近くに置かれている上流の貯蔵所から製油所へ、例えば炭化水素油が製油所に入る直前の貯蔵および配管までの炭化水素油、通常原油の移動を伴う任意の操作を意味する。
「上流(upstream)」は、製油所への炭化水素油のさらなる移動に備えて、通常井戸から、通常油田またはその近くに置かれている貯蔵コンポーネントへの炭化水素油、通常原油の抽出(生成)を伴う任意の操作を意味する。
【0007】
「原油」は、油精製所における石油精製操作で抽出、輸送、続いて精製される、もともと地中にある炭化水素化石燃料油を意味する。用語「原油」は、単一タイプの原油または2つ以上の異なるタイプの原油を含む原油ブレンドを包含する。原油は、中間(軽質)原油、中質原油、重質原油およびシェール油を包含する;
「アルキル」は、二重または三重結合を含有せず、分枝または直鎖に配置された、一価の炭化水素基を意味する。
「アルキレン」は、二重または三重結合を含有せず、分枝または直鎖に配置された、二価の炭化水素基を意味する。
「アルケニル」は、1個または複数の二重結合を含有し、分枝または直鎖に配置された、一価の炭化水素基を意味する。
【0008】
「PIB」は、ポリイソブチレンを意味し、普通または「従来」のポリイソブチレンと高反応性ポリイソブチレン(HRPIB)の両方を含む。
特定のポリマー(例えば、ポリプロピレン、ポリ(エチレン-co-プロピレン)またはPIB)である基への言及は、ポリマー鎖に沿って無視できる量の他の置換および/または中断と共に主にそれぞれのモノマーを含有するポリマーを包含する。言い換えれば、ポリプロピレン基である基への言及は、その基が任意の連結基、置換、不純物または他の置換基(例えばアルキレンまたはアルケニレン置換基)を含まない100%プロピレンモノマーで構成されることを必要としない。このような不純物または他の置換基は、それぞれのポリマー置換基を100%純度で含有する同じ添加剤と比較して、添加剤の工業的な性能に影響を与えないという条件で比較的少量で存在することができる。
「ヒドロカルビル」は、炭素および水素原子を含有し、炭素原子を介して分子の残部に結合している基またはラジカルを表す。それは、本質的に炭化水素の性質および基の特徴を変えないという条件で、ヘテロ原子、すなわち炭素および水素以外の原子を含有していてもよい。
【0009】
また、以下の用語および表現は、使用される場合、以下に基づく意味を有する:
「有効成分」または「(a.i.)」は、希釈剤または溶媒ではない添加剤物質を意味し;
「含む(comprising)」または任意の同源の用語は、定められた特徴、ステップ、または完全体もしくは成分の存在を特定するが、1種または複数の他の特徴、ステップ、完全体、成分またはその基の存在または添加を妨げない;表現「からなる(consists of)」または「から本質的になる(consists essentially of)」または同源語は、「含む(comprises)」または同源語に包含されることがあり、その「本質的にからなる」は、それを適用する組成物の特徴に実質的に影響を与えない物質の包含を可能にし;
「多量」は、組成物の50質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらにより好ましくは80質量%以上を表し;
「少量」は、組成物の50質量%未満、好ましくは40質量%未満、より好ましくは30質量%未満、さらにより好ましくは20質量%未満を表し;
「TBN」は、ASTM D2896によって測定された通りの全塩基価を表す。
【0010】
その上、本明細書では、使用される場合、
「カルシウム含有量」は、ASTM 4951によって測定された通りであり;
「リン含有量」は、ASTM D5185によって測定された通りであり;
「硫酸灰含有量」は、ASTM D874によって測定された通りであり;
「硫黄含有量」は、ASTM D2622によって測定された通りであり;
「KV100」は、ASTM D445によって測定された通りの100℃における動粘度を表す。
また、使用する種々の成分は、必須ならびに最適および慣習的であり、製剤、貯蔵または使用の条件下で反応することがあり、本発明はまた、任意のそのような反応の結果として得られるまたは得られた生成物を提供することを理解されたい。
さらに、本明細書に記載されている任意の量、範囲および比率の上限および下限は、それぞれ独立に組み合わせることができることを理解されよう。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ポリアルケニル置換カルボン酸または無水物(A)
これは、モノまたはポリカルボン酸、好ましくはジカルボン酸であってもよい。ポリアルケニル基は、好ましくは8~400個、例えば12~100個の炭素原子を有する。
(A)内の例示的な無水物の一般式は、以下のように示すことができ、
【化1】
式中、R1は、C8-C100の分枝状または直鎖状ポリアルケニル基を表す。
ポリアルケニル部分は、数平均分子量が200~10000、例えば350~2000、好ましくは500~1000であってよい。
【0012】
ポリアルケニル部分を生成するために本発明で使用した無水物の形成で用いた適当な炭化水素またはポリマーには、ホモポリマー、インターポリマーまたは低分子量炭化水素が含まれる。そのようなポリマーの1つのファミリーは、エチレンおよび/または式H2C=CHR1を有する少なくとも1個のC3-C28α-オレフィンのポリマーを含み、式中、R1は、1~26個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖アルキルラジカルであり、ポリマーは、炭素間不飽和、好ましくは高度の末端エテニリデン不飽和を含有する。好ましくは、そのようなポリマーは、上記の式のエチレンと少なくとも1個のα-オレフィンのインターポリマーを含み、式中、R1は、1~18個、より好ましくは1~8個、より好ましくは依然として1~2個の炭素原子からなるアルキルである。したがって、有用なα-オレフィンモノマーおよびコモノマーには、例えば、プロピレン、ブテン-1、ヘキセン-1、オクテン-1、4-メチルペンテン-1、デセン-1、ドデセン-1、トリデセン-1、テトラデセン-1、ペンタデセン-1、ヘキサデセン-1、ヘプタデセン-1、オクタデセン-1、ノナデセン-1、およびその混合物(例えば、プロピレンとブテン-1の混合物)が含まれる。このようなポリマーの例は、プロピレンホモポリマー、ブテン-1ホモポリマー、エチレン-プロピレンコポリマー、エチレン-ブテン-1コポリマー、およびプロピレン-ブテンコポリマーであり、そのポリマーは、少なくともいくつかの末端および/または内部不飽和を含有する。好ましいポリマーは、エチレンとプロピレンならびにエチレンとブテン-1の不飽和コポリマーである。インターポリマーは、少量、例えば0.5~5モル%のC4-C18非共役ジオレフィンコモノマーを含有していてよい。しかしながら、ポリマーは、α-オレフィンホモポリマー、α-オレフィンコモノマーのインターポリマーならびにエチレンとα-オレフィンコモノマーのインターポリマーのみを含むことが好ましい。使用したポリマーのモルエチレン含有量は、好ましくは0~80、より好ましくは0~60%の範囲である。プロピレンおよび/またはブテン-1がエチレンとのコモノマーとして使用される場合、そのようなコポリマーのエチレン含有量は、最も好ましくは15~50%であるが、より高いまたはより低いエチレン含有量が存在している可能性がある。
【0013】
これらのポリマーは、少なくとも1個のメタロセン(例えば、シクロペンタジエニル-遷移金属化合物)とアルモキサン化合物を含む触媒系の存在下で、α-オレフィンモノマー、またはα-オレフィンモノマーの混合物、またはエチレンと少なくとも1個のC3-C28α-オレフィンモノマーを含む混合物を重合することによって調製することができる。このプロセスを使用することで、ポリマー鎖の95%以上が末端エテニリデン型不飽和を有するポリマーをもたらすことができる。末端エテニリデン不飽和を示すポリマー鎖のパーセント値は、FTIR分光分析、滴定、またはC13 NMRによって決定することができる。この後者のタイプのインターポリマーは、式POLY-C(R1)=CH2によって特徴付けることができ、式中、R1は、C1-C26、好ましくはC1-C18、より好ましくはC1-C8、最も好ましくはC1-C2、アルキル(例えば、メチルまたはエチル)であり、POLYはポリマー鎖を表す。R1アルキル基の鎖長は、重合で使用するために選択されたコモノマーに応じて変わることになる。少量のポリマー鎖は、末端エテニル、すなわち、ビニル、不飽和、すなわちPOLY-CH=CH2を含有していてよく、一部のポリマーは、内部一不飽和、例えばPOLY-CH=CH(R1)を含有していてよく、式中、R1は、上に定義した通りである。これらの末端不飽和インターポリマーは、既知のメタロセン化学によって調製することができ、また米国特許第5,498,809号;第5,663,130号;第5,705,577号;第5,814,715号;第6,022,929号および第6,030,930号に記載されているように調製することができる。
【0014】
別の有用なポリマーのクラスは、イソブテンとスチレンのカチオン重合によって調製されたポリマーのクラスである。このクラスの一般的なポリマーには、三塩化アルミニウムまたは三フッ化ホウ素などのルイス酸触媒の存在下で、35~75質量%のブテン含有量、および30~60質量%のイソブテン含有量を有するC4精製流の重合によって得られるポリイソブテンが含まれる。ポリ-n-ブテンを作製するためのモノマーの好ましい供給源は、Raffinate IIなどの石油供給流である。これらの供給原料は、米国特許第4,952,739号などの技術分野で開示されている。ポリイソブチレンは、ブテン流からのカチオン重合によって容易に入手できるため(例えば、AlCl3またはBF3触媒を用いて)、最も好ましい主鎖である。このようなポリイソブチレンは一般に、鎖に沿って配置された、ポリマー鎖当たり1つのエチレン性二重結合の量で残留不飽和を含有する。好ましい実施形態は、純粋なイソブチレン流またはRaffinate I流から調製したポリイソブチレンを利用して、末端ビニリデンオレフィンを有する反応性イソブチレンポリマーを調製する。好ましくは、これらのポリマーは、高反応性ポリイソブチレン(HR-PIB)と呼ばれ、末端ビニリデン含有量が、少なくとも65、例えば、70、より好ましくは少なくとも80、最も好ましくは少なくとも85%である。このようなポリマーの調製は、例えば、米国特許第4,152,499号に記載されている。HR-PIBは、既知であり、HR-PIBは、商品名Glissopal(商標)(BASF製)およびUltravis(商標)(BP-Amoco製)で、市販されている。
【0015】
使用できるポリイソブチレンポリマーは一般に400~3000の炭化水素鎖に基づいている。ポリイソブチレンを作製するための方法は既知である。ポリイソブチレンは、後述のように、ハロゲン化(例えば塩素化)、熱的「エン」反応によって、または触媒(例えば過酸化物)を使用したフリーラジカルグラフトによって官能化することができる。
炭化水素またはポリマー主鎖は、ポリマーまたは炭化水素鎖上の炭素間不飽和の部位で選択的に、または上記3つのプロセスのいずれかまたはその組み合わせを任意の順序で使用して、鎖に沿ってランダムに、カルボン酸無水物-生成部分で官能化することができる。
【0016】
ポリマー炭化水素を不飽和カルボン酸無水物と反応させるプロセスおよびそのような化合物からの誘導体の調製は、米国特許第3,087,936号;第3,172,892号;第3,215,707号;第3,231,587号;第3,272,746号;第3,275,554号;第3,381,022号;第3,442,808号;第3,565,804号;第3,912,764号;第4,110,349号;第4,234,435号;第5,777,025号;第5,891,953号;ならびにEP 0 382 450 B1;CA-1,335,895およびGB-A-1,440,219に開示されている。主に炭素間不飽和(エチレン性またはオレフィン性不飽和とも呼ばれる)の部位でポリマーまたは炭化水素鎖上への官能部分または因子、すなわち、酸無水物の添加という結果になる条件下で、ハロゲン補助官能化(例えば塩素化)プロセスまたは熱的「エン」反応を利用してポリマーまたは炭化水素を反応させることによってカルボン酸無水物部分でポリマーまたは炭化水素を官能化することができる。
【0017】
60~250、好ましくは110~160、例えば、120~140℃の温度で、0.5~10、好ましくは1~7時間、塩素または臭素をポリマーに通すことにより、ポリマーまたは炭化水素の質量に基づいて、1~8、好ましくは3~7質量%の塩素、または臭素まで不飽和α-オレフィンポリマーをハロゲン化、例えば、塩素化または臭素化することによって、選択的官能化を達成することができる。次いでハロゲン化されたポリマーまたは炭化水素(以下主鎖)は、主鎖に必要とされる数の官能部分を付加できる十分な一不飽和反応体、例えば、一不飽和カルボン酸反応体と、得られる生成物がハロゲン化主鎖1モル当たり所望のモル数の一不飽和カルボン酸反応体を含有するように、100~250、通常180~235℃で、0.5~10、例えば、3~8時間反応させる。あるいは、主鎖および一不飽和カルボン酸反応体は、混合し、加熱しながら、熱い材料に塩素を添加する。
【0018】
塩素化は一般的に出発オレフィンポリマーと一不飽和官能化反応体の反応性を高めるのに役立つが、それは、本発明での使用が企図されるポリマーまたは炭化水素のいくつか、特に高い末端結合含量および反応性を有するそれらの好ましいポリマーまたは炭化水素では、必要ないこともある。したがって、好ましくは、主鎖および一不飽和官能性反応体(カルボン酸反応体)は、高温で接触させて、最初の熱的「エン」反応を生じさせる。エン反応は既知である。
種々の方法によるポリマー鎖に沿った官能部分のランダム付加によって、炭化水素またはポリマー主鎖は、官能化することができる。例えば、上述したように、フリーラジカル開始剤の存在下で溶液または固形形態のポリマーは、一不飽和カルボン酸反応体とグラフトすることができる。溶液中で行う場合、グラフト化は、100~260、好ましくは120~240℃の範囲の高温で起こる。好ましくは、フリーラジカル開始グラフト化は、例えば、最初の総油溶液に基づいて1~50、好ましくは5~30質量%のポリマーを含有する鉱物潤滑油溶液中で達成されるだろう。
【0019】
使用できるフリーラジカル開始剤は、過酸化物、ヒドロ過酸化物、およびアゾ化合物、好ましくは100℃より高い沸点を有し、グラフト化温度範囲内で熱的に分解してフリーラジカルをもたらすものである。これらのフリーラジカル開始剤の代表は、アゾブチロニトリル、2,5-ジメチルヘキサ-3-エン-2,5-ビス-tert-ブチルペルオキシドおよびジクメン過酸化物である。開始剤を用いる場合、通常反応混合物溶液の質量に基づいて0.005~1質量%の量で使用する。通常、上記一不飽和カルボン酸反応体材料およびフリーラジカル開始剤は、1.0:1~30:1、好ましくは3:1~6:1の質量比範囲で使用する。グラフトは、好ましくは不活性雰囲気中、例えば窒素ブランケッティング下で実施される。得られたグラフト化ポリマーは、ポリマー鎖に沿ってランダムに付加したカルボン酸(または誘導体)部分を有することによって特徴付けられ、いくつかの未グラフト化のままのポリマー鎖があることを理解されたい。上記フリーラジカルグラフト化は、本発明で使用される他のポリマーおよび炭化水素に使用することができる。
【0020】
主鎖を官能化するために使用される好ましい一不飽和反応体は、モノおよびジカルボン酸材料、すなわち、酸、または酸誘導体材料を含み、(i)(a)カルボキシル基が近接しており(すなわち、隣接炭素原子にあり)、(b)隣接炭素原子の少なくとも1つ、好ましくは両方が一不飽和の一部である、一不飽和C4-C10ジカルボン酸;(ii)(i)の誘導体、例えば(i)の無水物またはC1-C5アルコール誘導モノもしくはジエステル;(iii)炭素-炭素二重結合がカルボキシ基と共役している、すなわち、構造-C=C-CO-の一不飽和C3-C10モノカルボン酸;および(iv)(iii)の誘導体、例えば(iii)のC1-C5アルコール誘導モノまたはジエステルが含まれる。一不飽和カルボン酸材料(i)~(iv)の混合物も使用することができる。主鎖と反応すると、一不飽和カルボン酸反応体の一不飽和は、飽和になる。したがって、例えば、無水マレイン酸は、主鎖置換無水コハク酸になり、アクリル酸は、主鎖置換プロピオン酸になる。このような一不飽和カルボン酸反応体の例は、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、クロロマレイン酸、クロロ無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、ならびに前述の低級アルキル(例えば、C1-C4アルキル)酸エステル、例えば、マレイン酸塩メチル、フマル酸塩エチル、およびフマル酸塩メチルである。
必要とされる官能性をもたらすため、一不飽和カルボン酸反応体、好ましくは無水マレイン酸は、ポリマーまたは炭化水素のモルに基づいて、通常等モル量~100、好ましくは5~50質量%過剰の範囲の量で使用されるだろう。未反応の過剰な一不飽和カルボン酸反応体は、必要な場合、例えば、通常真空下でストリッピングによって、最終分散剤生成物から除去することができる。
【0021】
金属清浄剤(B)
金属清浄剤は、いわゆる金属「セッケン」に基づく添加剤、すなわち酸性有機化合物の金属塩であり、時々界面活性剤と呼ばれる。使用できる清浄剤には、油溶性の中性および過塩基性サリチレート、ならびに金属、特にアルカリまたはアルカリ土類金属、例えばナトリウム、カリウム、リチウム、カルシウム、およびマグネシウムのスルホネートが含まれる。最も一般的に使用される金属は、カルシウムおよびマグネシウムであり、それらは両方とも本発明の任意の態様による船用燃料組成物に使用される清浄剤中に存在していてよい。過塩基性または中性または両方であっても、清浄剤の組み合わせを使用してもよい。それらは一般に極性頭部と長い疎水性尾部とを含む。金属塩基(例えば炭酸塩)ミセルの外層として中和した金属清浄剤を含む過塩基性金属清浄剤は、過剰の金属塩基、例えば酸化物または水酸化物などを二酸化炭素などの酸性ガスと反応させることによって大量の金属塩基を含むことにより与えることができる。
【0022】
本発明では、金属清浄剤(B)は、金属ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾエート、より好ましくはヒドロカルビル置換サリチレート清浄剤であってもよい。金属は、アルカリ金属(例えばLi、Na、K)またはアルカリ土類金属(例えばMg、Ca)であってもよい。
ヒドロカルビルの例として、アルキルおよびアルケニルに言及することができる。好ましい過塩基性金属ヒドロカルビル置換ヒドロキシベンゾエートは、アルキル置換サリチル酸カルシウムであり、以下に示した構造を有しており:
【化2】
式中、Rは、直鎖状アルキル基である。ベンゼン環に2個以上のR基が結合していてもよい。COO-基は、ヒドロキシル基に対してオルト、メタまたはパラ位にあってよく;オルト位が好ましい。R基は、ヒドロキシル基に対してオルト、メタまたはパラ位にあってよい。
【0023】
サリチル酸は、通常フェノキシドのコルベ-シュミット法によるカルボキシル化によって調製され、その場合には、一般に非カルボキシル化フェノールとの混合物(普通は希釈剤中)で得られるはずである。サリチル酸は、非硫化または硫化されていてもよく、化学的に修飾され、かつ/または追加の置換基を含有していてもよい。アルキルサリチル酸を硫化するためのプロセスは、当業者によく知られており、例えば、米国特許出願公開第2007/0027057号に記載されている。
アルキル基は、8~100個、有利には8~24個、例えば14~20個の炭素原子を含有することができる。
【0024】
本発明のスルホネートは、石油の分留から、または芳香族炭化水素のアルキル化によって得られるものように、通常アルキル置換芳香族炭化水素のスルホン化によって得られるスルホン酸から調製することができる。例には、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレン、ジフェニルまたはクロロベンゼン、クロロトルエンおよびクロロナフタレンなどのそれらのハロゲン誘導体をアルキル化することによって得られるものが含まれる。アルキル化は、触媒の存在下で、3~70個超の炭素原子を有するアルキル化剤を用いて実施することができる。アルカリルスルホネートは、通常アルキル置換芳香族部分当たり9~80個以上の炭素原子、好ましくは16~60個の炭素原子を含有する。油溶性のスルホネートまたはアルカリルスルホン酸は、金属の酸化物、水酸化物、アルコキシド、炭酸塩、カルボン酸塩、硫化物、水硫化物、硝酸塩、ホウ酸塩およびエーテルで中和することができる。金属化合物の量は、最終生成物の所望のTBNを考慮して選択されるが、通常、化学量論的に必要とされる100~220質量%(好ましくは少なくとも125質量%)の範囲である。
用語「過塩基性」は、一般に金属部分の当量数対酸部分の当量数の比が1より大きい金属清浄剤を説明するために使用される。用語「低塩基性」は、金属部分対酸部分の当量比が1より大きく、約2までである金属清浄剤を説明するために使用される。
【0025】
「界面活性剤の過塩基性カルシウム塩」とは、油不溶性金属塩の金属カチオンが本質的にカルシウムカチオンである過塩基性清浄剤を意味する。少量の他のカチオンは油不溶性金属塩中に存在していてよいが、通常油不溶性金属塩中の少なくとも80、さらに通常少なくとも90、例えば少なくとも95モル%のカチオンは、カルシウムイオンである。カルシウム以外のカチオンは、例えば、カチオンがカルシウム以外の金属である界面活性剤塩の過塩基性清浄剤の製造における使用により誘導され得る。好ましくは、界面活性剤の金属塩もカルシウムである。
炭酸塩化した過塩基性金属清浄剤は、通常非晶質ナノ粒子を含む。さらに、当技術分野は、結晶性カルサイトおよびバテライト形態の炭酸塩を含むナノ粒子材料を開示している。
【0026】
清浄剤の塩基度は、全塩基価(TBN)として表すことができ、時々塩基価(BN)と呼ばれる。全塩基価は過塩基性材料の全ての塩基度を中和するのに必要な酸の量である。TBNは、ASTM標準D2896または同等の手順を用いて測定することができる。清浄剤は、低TBN(すなわち50未満のTBN)、中TBN(すなわち50~150のTBN)または高TBN(すなわち150より大きい、例えば150~500のTBN)を有していてよい。塩基度は、塩基度指数(BI)として表すこともでき、それは過塩基性清浄剤中の全塩基対全セッケンのモル比である。
【0027】
本発明の実施形態
中流および上流操作は、ISO20815 2018に基づいて実施することができる。
要約すると、広く理解されているように、中流操作には、石油産業の処理および輸送部門が関与しており、例は輸送パイプラインおよびターミナルであり;上流操作には、原油の生産/抽出操作の非限定的な例として含む原油の輸送が関与していてよい。したがって、一般に、上流輸送および中流処理および輸送における炭化水素油は、原油である。
【0028】
生産/抽出操作では、油輸送(フロー)は、通常地面から出て、水を除去する処理/分離ユニットへ、次いで操作場から取り除くために貯蔵へと行われる。アスファルテン沈殿は、例えば複数の坑井から貯蔵タンクへの油の混合で、ライザーまたは地上で発生する可能性がある。上流輸送は、例えば中流または製油所の仕様を満たすため、製油所への輸送より前に粘度を下げるために、生産現場近くで、処理ステップ、例えば水分離、ガス分離、固体分離または改質所を使用して熱的もしくは触媒的に油を分解、または油を溶媒洗浄することを含み得る。したがって、品質向上は、後続の操作のために原油の特性を改善するものと見なすことができ、結果的に、精製された製品をもたらすのではなく、改質された原油をもたらす。上流処理ステップは、追加的または代替的に、水分離、ガス分離、ワックス沈殿防止、アスファルテン沈殿防止、スケール防止および腐食防止などのために他の添加剤の使用を含んでもよい。上記の全ての処理ステップは、中流操作中にも行うことができる。上流および中流操作の両方とも、それぞれの活動に関連して貯蔵およびブレンディングを含んでもよい。上流輸送は通常パイプライン経由で起こるが(追加的または代替的に他の輸送方法を含めることができるが)、中流処理および輸送には、それだけには限らないが、トラック、鉄道、船舶(オイルタンカー)、はしけおよびパイプラインの使用を含む種々の輸送方法ならびに輸送ステップ間の複数の貯蔵場所および製油所外のさらなる貯蔵所が関与し得る。
【0029】
他方では、下流操作は、一般に、精製活動(の時点)から始まり、例えば潤滑油ベースストック、完成潤滑油、石油化学製品およびガソリン、ディーゼルまたは重油などの燃料として得られた精製された製品のその後の利用が含まれると理解されている。したがって、いくつかの実施形態では、本開示の下流プロセスは、原油などの炭化水素油が製油所に入る、製油所プロセスに入る、または製油所の脱塩ユニットの前に加熱ユニットに入る点から発生するが、中流プロセスおよび輸送ならびに上流輸送は、この時点より前に行われる。したがって、本開示における中流プロセスおよび輸送ならびに上流輸送は、炭化水素油(例えば原油)が製油所もしくは粗製炭化水素精製用構成部品に入る、または入った前に一緒に起こり得る。本明細書では、「粗製炭化水素精製用構成部品」は、一般に製油所プロセスなど、粗炭化水素を精製するプロセスの装置または手段を意味する。粗製炭化水素精製用構成部品は製油所内に配置され、精製された製品を作製するために実施されるプロセスを含む。典型的な粗製炭化水素精製用構成部品には、熱交換器、炉、粗原料予熱器、粗原料蒸留塔、真空蒸留塔、コーカー予熱器、または任意の他のヒーターなどの熱伝達用構成部品、FCCスラリーボトム、脱ブタン交換器/塔、製油所設備におけるその他の供給/排液交換器および炉内空気予熱器、製油所設備におけるフレアコンプレッサー構成部品および石油化学設備におけるスチームクラッカー/改質装置チューブを含むが、それだけには限定されない。粗製炭化水素精製用構成部品はまた、熱伝達が起こり得る他の設備、例えば分留または蒸留塔、スクラバー、反応器、液体ジャケット付きタンク、パイプスチル、コーカーおよびビスブレーカーなどを含むことができる。
【0030】
本発明は、添加剤(A)および(B)を含む、からなる、またはから本質的になるかもしれない添加剤の組み合わせを企図している。したがって、本明細書で言及する添加剤の組み合わせの処理比が、有効成分(A)および(B)の炭化水素油(原油など)に対する組み合わせた処理比を想定しているが、添加剤の組み合わせは、溶媒、希釈剤、または他の添加剤、例えば乳化破壊剤(解乳化用)、腐食防止剤(好ましくは水溶性)、水和物抑制剤、スケール抑制剤、流動性向上剤、ワックス沈殿抑制剤(またはパラフィン抑制剤)、流動点降下剤、粘度向上剤および/またはその他の流体などと組み合わせて、または同時に、炭化水素油に存在し得るか、または炭化水素油に導入され得ることを理解されたい。上記に列挙されたようなさらなる成分は、例えば添加剤を組み合わせる前または後に、本発明で言及される添加剤の組み合わせとは別々に炭化水素油と追加的または代替的に添加またはブレンドされてもよい。言い換えると、添加剤の組み合わせが添加剤(A)および(B)からなることを本明細書に示したことは、一般的な原油などの炭化水素油へのさらなる添加剤の添加を妨げす、添加剤の組み合わせ(添加剤(A)および(B)を別々に組み合わせることを意味することがある)をさらなる添加剤と組み合わせて炭化水素油用の添加剤パッケージを形成することによる非限定的な例を含む。
【0031】
(A)対(B)の質量:質量比は、1:1~1:6、例えば1:1~1:3の範囲であってよい。
これらの比の中で以下を言及することができる:
1(PIBSA):3(サリチレート);
1(PIBSA):3(サリチレート):3(スルホネート);
1(PIBSA):2(サリチレート):2(スルホネート);および
1(PIBSA):1(サリチレート):1(スルホネート)。
(B)では、清浄剤または各清浄剤は、下限が0、50、100または150、および上限が300、350、400、450または500の範囲でTBNを有することができる。
(B)では、清浄剤または各成分の清浄剤は、過塩基性清浄剤として存在していてよい。
添加剤(A)および(B)は、乳化破壊剤(解乳化用)、腐食防止剤(好ましくは水溶性)、水和物抑制剤、スケール抑制剤、流動性向上剤、ワックス沈殿抑制剤(またはパラフィン抑制剤)、流動点降下剤、粘度向上剤および/または他の流体と共に、もしくはそれらとして使用することができる。
【実施例
【0032】
以下の非制限的な例は、本発明を例示している。
原油
以下のものを使用した:
【表1】
【0033】
添加剤成分
以下のものを使用した:
(A)数平均分子量が950のポリイソブテンから誘導された80%ポリイソブテン無水コハク酸(「PIBSA」)およびグループI油のSN150の形態の20%希釈剤
(B1)TBNが225の過塩基性サリチル酸カルシウム清浄剤
(B2)TBNが302の過塩基性スルホン酸カルシウム清浄剤。
【0034】
試験方法
以下のものを適用した:
原油アスファルテン安定性(「抑制」をカバーする)。
試験は、ASTM D7157の機器の修正版で実施し、ヘプタンの添加時に原油が不安定化に耐える能力を示している。結果を「S」値、アスファルテンの沈殿に関する油の本質的な安定性として記録する。より高い「S」値は、油がアスファルテンの綿状凝集に関してより安定していることを示す。
アスファルテン分散性
試験は、容器(チューブ)の底に沈降するアスファルテン塊状凝集体に関する沈降速度を観察しており、綿状凝集したアスファルテンを分散させる添加剤の能力を測定する。試験は、周囲温度および圧力で実施し、結果を沈降物のmL/時として表現する。この手順は、添加剤の有無にかかわらず、アスファルテン原油0.5gを取り、トルエン約0.5mLで希釈することを含む。過剰なパラフィン液(100mLまで)、通常ヘプタンを添加し、容器を完全に振盪させる。次いでチューブを静置し、そこでカメラがアスファルテン塊状凝集体/粒子の沈降速度を経時的にモニターし、速度値がより低いと、優れた結果を示す。
【0035】
沈殿制御
この試験は、加熱面に沈殿したアスファルテンの減少を測定する。
試験は、添加剤を含有しない(対照として)、また以下の表の結果に示されているように、カットバックとしてブレンドに添加して1000または500質量ppmの添加剤成分を含有する、原油ブレンドの試料150mlを用いて実施した。従来技術との比較として、PIBSA(1000MW)およびテトラエチレンペンタミン(42%aiおよびKOH/gでの塩基価44(以下の表の結果でPIBSAPAMと称す)の反応生成物を含むスクシンイミド添加剤を用いて試験を実施した。
試験は、製油装置の防汚性能(refinery antifoulant performance)をシミュレートすることを目的とした特注のリグ試験を使用した。リグは、5つのそれぞれ独立に加熱される試験セクションを連続して有する機器である。各試験セクションは、外側のスチールジャケットに包まれた電気抵抗加熱されたスチールロッドを含み、それはロッドから電気的に絶縁されている。試験の原料試料は、ロッドとジャケットの間の空隙に流れる。ロッド温度は、ロッドの中心点で制御され、試験全体を通して一定に維持される。
【0036】
原料が熱いロッド上を流れるにつれて、ロッドから熱を吸収し;試験セクションを離れる燃料の温度を記録している。
ロッド表面に沈殿物が蓄積した場合、それらはロッドから原料への熱伝達効率を低下させ、したがって試験セクションを離れる原料の温度の低下を引き起こす。
試験の開始から終了までの原料の出口温度の差は、5つのロッド全てについて計算され、合計される。より大きな数は、より大きな温度差、したがってよりひどい汚損を示す。
試験は、それぞれのロッド温度が125、195、235、275および315℃で6時間実施し;それぞれのロッド温度が120、160、200、240および280℃で5時間実施した。
結果は、沈殿物をmg単位で表す。
【0037】
実験手順および結果
添加剤処理の有無にかかわらず、上記の3つの試験を用いて原油を試験した。結果を以下の表にまとめて示す。
【表2】
【0038】
本発明の実施例1~14は、一般的に、対照よりも良好に機能し、比較例1~3よりも良好に機能することがわかる。