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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】医療情報処理システム
(51)【国際特許分類】
   G16H 10/40 20180101AFI20240507BHJP
【FI】
G16H10/40
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019232078
(22)【出願日】2019-12-23
(65)【公開番号】P2021099745
(43)【公開日】2021-07-01
【審査請求日】2022-12-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 武蔵
(72)【発明者】
【氏名】松岡 秀之
(72)【発明者】
【氏名】河村 正和
(72)【発明者】
【氏名】村上 諒
(72)【発明者】
【氏名】杉本 聖
(72)【発明者】
【氏名】小出石 達樹
(72)【発明者】
【氏名】雪田 拓巳
【審査官】吉田 誠
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-024542(JP,A)
【文献】特開2013-058087(JP,A)
【文献】特開2011-253464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断情報と、次回の検査までの期間を示すフォローアップ期間を含む実績情報を、医師を特定する医師識別情報に対応付けて記憶する記憶部と、
前記記憶部に記憶された複数検査の実績情報から、フォローアップ期間の基準値を導出する導出部と、
診断情報およびフォローアップ期間を入力するための入力画面を生成する画面生成部と、
診断情報およびフォローアップ期間の入力を受け付ける受付部と、
入力されたフォローアップ期間が、フォローアップ期間の前記基準値と異なる場合に、フォローアップ期間に関する情報を前記入力画面に表示する入力支援部と、
を備えることを特徴とする医療情報処理システム。
【請求項2】
前記導出部は、フォローアップ期間の最頻値を導出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療情報処理システム。
【請求項3】
前記入力支援部は、フォローアップ期間の前記基準値と異なることを示す情報を前記入力画面に表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療情報処理システム。
【請求項4】
前記入力支援部は、前記受付部が受け付けた診断情報を含む実績情報のリストを表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療情報処理システム。
【請求項5】
前記導出部は、前記受付部が受け付けた診断情報に対して指定された医師識別情報に対応付けられた複数検査の実績情報から、フォローアップ期間の前記基準値を導出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の医療情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次回の検査までの期間を示すフォローアップ期間の入力を支援するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、要検査者の検査結果記録に記述される異常部位の状態に基づいて、標準期間参照テーブルを参照して、要検査者に対して推奨される次の検査までの間隔を読み出し、読み出した間隔を検査日に加えることにより、推奨される次回の検査時期を算出する技術を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-113543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検査により異常が見つかり経過観察が必要になると、フォローアップ検査がスケジューリングされることが望ましい。そのため医師は、今回の検査の診断情報をデータベースに登録する際に、あわせて次回の検査までの期間を示すフォローアップ期間を決定してデータベースに登録する。フォローアップ期間を登録することで、病院は、前回検査日からフォローアップ期間が経過する時期に案内状を被検者に送付し、来院を促すことができる。適切なタイミングで案内状を送付するためには、適切なフォローアップ期間が登録されている必要がある。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、フォローアップ期間の入力を支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の医療情報処理システムは、診断情報と、次回の検査までの期間を示すフォローアップ期間を含む実績情報を、医師を特定する医師識別情報に対応付けて記憶する記憶部と、記憶部に記憶された複数検査の実績情報から、フォローアップ期間の基準値を導出する導出部と、診断情報およびフォローアップ期間を入力するための入力画面を生成する画面生成部と、診断情報およびフォローアップ期間の入力を受け付ける受付部と、入力されたフォローアップ期間が、フォローアップ期間の基準値と異なる場合に、フォローアップ期間に関する情報を入力画面に表示する入力支援部と、を備える。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、フォローアップ期間の入力を支援する技術を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】医療情報処理システムの機能ブロックを示す図である。
図2】レポート入力画面の一例を示す図である。
図3】レポート入力画面の診断情報入力領域の例を示す図である。
図4】レポート入力画面の診断情報入力領域の別の例を示す図である。
図5】検査後指示/偶発症/各種コメントの入力画面の例を示す図である。
図6】診断情報とフォローアップ期間との対応を抜粋した図である。
図7】基準となるフォローアップ期間を導出する処理の例を示す図である。
図8】レポート入力画面を示す図である。
図9】検査後指示/偶発症/各種コメントの入力画面の例を示す図である。
図10】フォローアップ期間に関する情報の例を示す図である。
図11】フォローアップ期間に関する情報の別の例を示す図である。
図12】フォローアップ期間の実績を表現するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、実施例にかかる医療情報処理システム1の機能ブロックを示す。実施例の医療情報処理システム1は病院などの医療施設に設けられ、医師による内視鏡検査のレポート作成業務を補助する。医療情報処理システム1は、管理サーバ10および複数の情報処理装置30を備え、管理サーバ10と情報処理装置30はLAN(ローカルエリアネットワーク)などのネットワーク2によって接続される。
【0011】
管理サーバ10は、登録部12、記憶部14、導出部16および提供部18を備える。記憶部14は、内視鏡検査で撮影された画像データを内視鏡観測装置(図示せず)から受信して、検査を特定する検査IDに対応付けて記録する。なお医療施設において、画像データを記録する記憶部14は、管理サーバ10とは別に設けられてもよい。
【0012】
情報処理装置30はパーソナルコンピュータなどの端末装置であって、キーボードやマウスなどのユーザインタフェースを接続されて、画面出力可能に表示装置80と接続される。情報処理装置30は表示装置と一体となったラップトップコンピュータであってもよく、また携帯型タブレットであってもよい。実施例の情報処理装置30は、医師が検査の診断情報および次回の検査までの期間を示すフォローアップ期間を入力するための入力画面を表示装置80に表示する。
【0013】
情報処理装置30は、管理サーバ10にアクセスして、記憶部14に記録された複数の検査画像を表示装置80に表示する。医師が内視鏡検査レポートを作成するとき、情報処理装置30は、検査IDに対応付けて記憶部14に記録されている全ての検査画像のサムネイル画像を読み出し、表示装置80に表示する。医師は、ユーザインタフェースを操作して、表示されたサムネイル一覧からレポートに添付する検査画像を選択する。また医師はユーザインタフェースを操作して、入力画面に診断情報およびフォローアップ期間を含む医療情報を入力する。
【0014】
管理サーバ10において登録部12は、レポート入力画面に入力された診断情報、レポート添付画像、フォローアップ期間を含む医療情報を、入力した医師を特定する医師識別情報(医師ID)に対応付けてレポート情報として記憶部14に記憶する。
【0015】
情報処理装置30は、受付部40、画面生成部50、画像取得部52、入力支援部54、メモリ56および登録処理部58を備える。受付部40は、医師によるユーザインタフェースの操作入力を受け付ける機能を有し、表示要求受付部42、医療情報受付部44および指定情報受付部46を有する。
【0016】
これらの構成はハードウエア的には、任意のプロセッサ、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。情報処理装置30は端末装置であるが、情報処理装置30の機能として示した機能ブロックの一部は、管理サーバ10側に設けられてもよく、また管理サーバ10の機能として示した機能ブロックの一部は、情報処理装置30側に設けられてもよい。
【0017】
内視鏡検査の終了後、医師は内視鏡検査レポートを作成するために、情報処理装置30にユーザIDおよびパスワードを入力して、ログインする。医師がログインすると、検査レポートを作成するアプリケーションが自動起動して、表示装置80に、実施済み検査の一覧が表示される。この実施済み検査一覧には、患者名、患者ID、検査日時、検査種別などの検査情報がリスト表示され、医師は、レポート作成の対象となる検査を選択する。医師が実施済みの検査一覧のなかから、検査レポートを作成する検査を選択すると、表示要求受付部42が、レポート入力画面の表示要求を受け付け、画像取得部52が、記憶部14から、選択された検査の検査IDに紐付けられている検査画像のサムネイルを取得する。
【0018】
図2は、レポート入力画面の一例を示す。表示要求受付部42がレポート入力画面の表示要求を受け付けると、画面生成部50が、医師が診断情報を入力するためのレポート入力画面を生成して、表示装置80に表示させる。レポート入力画面の表示中、レポートタブ100bが選択された状態となる。
【0019】
レポート入力画面の上段には、患者氏名、患者ID、生年月日、検査種別、検査日、実施医の情報が表示される。レポート入力画面は、複数の領域から構成され、左側には検査画像のサムネイルを表示する検査画像表示領域102が設けられる。右側には、医師が診断内容等の検査結果を入力するための診断情報入力領域110と、「総合診断」の内容を入力する画面を表示するための選択領域112と、「検査後指示/偶発症/各種コメント」の内容を入力する画面を表示するための選択領域114と、「実施者情報」の内容を入力する画面を表示するための選択領域116とが設けられる。
【0020】
画面生成部50は、画像取得部52が記憶部14から取得した検査画像のサムネイル104a~104lを、検査画像表示領域102に並べて表示する。検査画像表示領域102の右側にはスクロールバーが設けられ、医師はスクロールバーを操作して画像一覧をスクロールすることで、検査画像の全てのサムネイルを観察できる。医師がユーザインタフェースを操作してレポートに添付する検査画像を選択すると、医療情報受付部44が、選択された検査画像を特定する情報を受け付け、メモリ56に記憶する。なお記録画像タブ100aが選択されると、画面生成部50は、検査画像のサムネイルの一覧を、画面全体に表示する。サムネイルの一覧が大きく表示されることで、医師は内視鏡検査の概要を把握できる。
【0021】
診断情報入力領域110は、医師が検査結果となる診断情報を入力するための領域であり、図示の例では、上部内視鏡検査における観察範囲である「食道」、「胃」、「十二指腸」の診断情報を入力するための領域が設けられている。診断情報入力領域110は、診断内容の項目の複数の選択肢を表示して、医師がチェックボックスを選択することで診断情報を入力するフォーマットを有する。医師が診断情報を入力すると、医療情報受付部44が、診断情報の入力を受け付け、メモリ56に記憶する。
【0022】
図3は、レポート入力画面の診断情報入力領域110の例を示す。この例では、観察臓器として「胃」、診断項目として「質的診断」が選択されており、そのため診断情報入力領域110には、胃の質的診断の項目が選択可能に表示されている。各項目にマウスカーソルが当てられると、その一階層下の詳細項目が選択可能に表示される。図3には、「萎縮性胃炎」の項目にマウスカーソルが当てられ、萎縮性胃炎の萎縮分類の選択肢が萎縮分類ウィンドウ120に表示されている様子が示される。
【0023】
図4は、レポート入力画面の診断情報入力領域110の別の例を示す。この例でも、観察臓器として「胃」、診断項目として「質的診断」が選択されており、診断情報入力領域110には、胃の質的診断の項目が選択可能に表示されている。図4には、「腺腫」の項目にマウスカーソルが当てられ、その一階層下の腺腫の分類の選択肢がウィンドウ表示されている様子が示される。
【0024】
レポート入力画面において、医師は、検査画像表示領域102からレポートに添付する検査画像を選択し、診断情報入力領域110に診断情報を入力する。なお選択した検査画像、また診断情報には、近傍に配置されたチェックボックスに、選択したことを示すマークが表示されてよい。医療情報受付部44は、検査画像の選択情報および診断情報を受け付け、メモリ56に記憶する。医師は、診断情報入力領域110における診断情報の入力を完了すると、選択領域112、114、116(図2参照)を適宜選択して、必要な情報を入力する。以下、医師が選択領域114を選択した場合について説明する。
【0025】
医師が選択領域114を選択すると、表示要求受付部42は、「検査後指示/偶発症/各種コメント」の内容を入力する画面の表示要求を受け付け、画面生成部50が、「検査後指示/偶発症/各種コメント」の入力画面を生成して、表示装置80に表示させる。この入力画面は、レポート入力画面上に重畳表示されてよい。
【0026】
図5は、検査後指示/偶発症/各種コメントの入力画面の例を示す。医師は、この入力画面から、診断情報以外の様々な医療情報を入力する。この入力画面のフォローアップ期間入力欄122において、医師は、今回の検査から次の検査までの期間を示すフォローアップ期間を入力する。内視鏡検査の結果、異常が認められなければ、フォローアップ期間は長い期間(たとえば2年)に設定され、一方で、胃炎や腺腫などの何らかの異常が認められると、フォローアップ期間は短い期間に設定される。このときフォローアップ期間は、異常の程度に応じて決定される。医師はフォローアップ期間を設定し、OKボタン92を押すと、医療情報受付部44が、設定されたフォローアップ期間を受け付け、メモリ56に記憶する。
【0027】
医師が検査に関する情報を入力後、登録ボタン90を操作すると、登録処理部58が、メモリ56に記憶された情報を管理サーバ10に送信する。メモリ56には、レポート入力画面に入力された診断情報、レポート添付画像として選択された検査画像の識別情報、フォローアップ期間を含む医療情報に加え、患者氏名、患者ID、生年月日、検査種別、検査日、実施医などの検査情報が記憶されている。登録処理部58は、医療情報および検査情報を記憶部14に登録することを、管理サーバ10に指示する。
【0028】
管理サーバ10において、登録部12は、登録処理部58からの指示にもとづいて、医療情報および検査情報を、医師IDに対応付けて記憶部14にレポート情報として登録する。記憶部14に記憶されたレポート情報は、所定のフォーマットで印刷されて、検査レポートとして利用される。医師は、検査が終わる度にレポートを作成し、入力されたレポート情報は、記憶部14に蓄積される。
【0029】
以下、記憶部14に蓄積されたレポート情報を「実績情報」と呼ぶ。記憶部14には、検査の診断情報とフォローアップ期間を含む実績情報が、医師IDに対応付けて記憶されている。フォローアップ期間が診断情報にもとづいて決定されていることを利用して、実施例の医療情報処理システム1は、実績情報における診断情報とフォローアップ期間との対応関係にもとづいて、医師によるレポート作成時に、適切なフォローアップ期間の入力を支援する。
【0030】
管理サーバ10において、導出部16は、記憶部14に記憶された複数検査の実績情報から、フォローアップ期間の基準値を導出する。以下、基準値として「最頻値」を導出する例を示すが、他の統計値、たとえば平均値や中央値を導出してもよい。
【0031】
図6は、実績情報における診断情報とフォローアップ期間との対応を抜粋したものである。この実績情報は、医師Bにより作成されている。ここで「萎縮性胃炎」は、質的診断における第一階層項目、「萎縮分類」は、「萎縮性胃炎」の下層である第二階層項目を示す。この例では、図3の萎縮分類ウィンドウ120に示した萎縮分類のうち、医師BがO-I、O-II、O-IIIのいずれかと診断したときに設定したフォローアップ期間が示されている。以下、導出部16が、萎縮性胃炎に対して、フォローアップ期間の基準値を導出する処理について説明する。
【0032】
図7は、基準となるフォローアップ期間を導出する処理の例を示す。導出部16は、記憶部14から、医師Bが萎縮性胃炎を診断したときの複数検査の実績情報を取得する(S10)。この実績情報は、図6に示すものであり、該当検査数は26件、第二階層項目の内訳は、O-IIIが11件、O-IIが7件、O-Iが8件である。
【0033】
導出部16は、第一階層項目の最頻値を特定して、特定した最頻値の割合を導出する(S12)。
<第一階層項目:萎縮性胃炎>
26件のフォローアップ期間の統計をとると、
・6ヶ月 11件
・ 1年 13件
・ 2年 2件
である。そのため最頻値は「1年」であり、全体における最頻値の割合は50%(13件/26件)であることが導出される。導出部16は、最頻値である「1年」が、全体における最頻値の占める割合にもとづいて、萎縮性胃炎の被検者に対するフォローアップ期間として最頻値が適切であるか判断する。
【0034】
ここで導出部16は、最頻値の割合が所定の閾値以上であるか判定する(S14)。所定の閾値は、最頻値がフォローアップ期間の基準値として適切であると判断するための比較値であり、医療施設によって定められる。たとえば最頻値の全体に占める割合が30%であるとき、この最頻値がフォローアップ期間の基準値として適切であるとは言い難い。このような観点から所定の閾値は適宜定められてよく、実施例では80%に設定されている。
【0035】
最頻値の割合が閾値以上である場合(S14のY)、導出部16は、最頻値である「1年」を、フォローアップ期間の基準値に設定する(S20)。この基準値は、医師Bにより同じ診断情報が入力された場合に、フォローアップ期間の目安となる値である。つまり医師Bが「萎縮性胃炎」を診断すると、基準値であるフォローアップ期間が、過去の多くの検査レポートにおいて入力されてきたことを意味する。なお基準値は、あくまでも目安であり、医師Bが、基準値と異なるフォローアップ期間を設定しても、それが直ちに入力エラーとはなるわけではない。被検者個別の事情(たとえば問診情報による事情)により基準値と異なるフォローアップ期間が適切なこともある。
【0036】
なお、上記した例で最頻値である「1年」の割合は50%であって、閾値未満であるため(S14のN)、導出部16は、第二階層項目の最頻値を特定して、特定した最頻値の割合を導出する(S16)。導出部16は、第一階層項目の最頻値をフォローアップ期間の基準値として利用できない場合、さらに条件を絞ることで、フォローアップ期間の基準値を導出できるか試行する。図6に示す例で、導出部16は、O-I、O-II、O-IIIのそれぞれの萎縮分類について最頻値を特定し、最頻値の割合を導出する。
【0037】
<第一階層項目:萎縮性胃炎、第二階層項目:O-III>
・6ヶ月 10件
・ 1年 1件
O-IIIについて、最頻値は「6ヶ月」であり、最頻値の割合は91%(10件/11件)である。導出部16は、最頻値である「6ヶ月」の割合が閾値(80%)以上であることを判定し(S18のY)、最頻値である「6ヶ月」を、「萎縮性胃炎」および「O-III」を診断された患者のフォローアップ期間の基準値に設定する(S20)。
【0038】
<第一階層項目:萎縮性胃炎、第二階層項目:O-II>
・6ヶ月 1件
・ 1年 6件
O-IIについて、最頻値は「1年」であり、最頻値の割合は86%(6件/7件)である。導出部16は、最頻値である「1年」の割合が閾値(80%)以上であることを判定し(S18のY)、最頻値である「1年」を、「萎縮性胃炎」および「O-II」を診断された患者のフォローアップ期間の基準値に設定する(S20)。
【0039】
<第一階層項目:萎縮性胃炎、第二階層項目:O-I>
・1年 6件
・2年 2件
O-Iについて、最頻値は「1年」であり、最頻値の割合は75%(6件/8件)である。導出部16は、最頻値である「1年」の割合が閾値(80%)未満であることを判定し(S18のN)、「萎縮性胃炎」および「O-I」を診断された患者のフォローアップ期間の基準値を設定しない。
【0040】
以上の基準値の導出処理を、導出部16は、医師Bによるレポート作成開始前に実施してよく、また医師Bによるレポート作成中に、医師Bが入力した診断情報に応じて実施してもよい。
【0041】
以下、医師Bによるレポート作成処理について説明する。
図3に示すレポート入力画面において、医師Bが、萎縮分類ウィンドウ120に含まれる「O-III」を選択する。
図8は、「O-III」が選択されたときのレポート入力画面を示す。医療情報受付部44は、「O-III」の選択情報を受け付けると、入力支援部54に、入力された診断情報を通知する。入力支援部54は、医師Bにより入力された診断情報を管理サーバ10に送信し、診断情報に対応するフォローアップ期間の基準値を要求する。
【0042】
導出部16は、萎縮性胃炎およびO-IIIの診断情報を受け付けて、医師Bの過去の実績情報から、萎縮性胃炎およびO-IIIの診断情報に対応するフォローアップ期間の基準値を導出する。導出部16は、入力支援部54から要求があったときに、当該診断情報に関する実績情報を用いてフォローアップ期間の基準値を導出するが、定期的に(たとえば一週間の一回の周期で)各診断情報に対応するフォローアップ期間の基準値を導出してもよい。提供部18は、情報処理装置30に、萎縮性胃炎およびO-IIIの診断情報に対応するフォローアップ期間の基準値を提供する。上記した例で、萎縮性胃炎およびO-IIIの診断情報に対応するフォローアップ期間の基準値は「6ヶ月」である。入力支援部54は、フォローアップ期間の基準値を取得する。
【0043】
その後、医師Bが診断情報入力領域110における診断情報の入力を完了し、選択領域114を選択して、「検査後指示/偶発症/各種コメント」の入力画面を表示装置80に表示させる。
図9は、検査後指示/偶発症/各種コメントの入力画面の例を示す。医師Bは、フォローアップ期間入力欄122にフォローアップ期間を設定する。この例では、「1年」と設定している。ここで医師BがOKボタン92を押すと、医療情報受付部44が、フォローアップ期間の入力を受け付け、入力支援部54に通知する。
【0044】
入力支援部54は、医師Bにより入力されたフォローアップ期間と、管理サーバ10から取得したフォローアップ期間の基準値とを比較する。入力支援部54は、両者が一致していれば、フォローアップ期間入力欄122に入力されたフォローアップ期間が適切であることを判定する。一方、入力支援部54は、両者が一致しなければ、フォローアップ期間入力欄122に入力されたフォローアップ期間が不適切な可能性があることを判定する。このとき入力支援部54は、フォローアップ期間に関する情報を入力画面に表示する。
【0045】
図10は、フォローアップ期間に関する情報の例を示す。医師Bにより入力されたフォローアップ期間が基準値と異なる場合、入力支援部54は、入力されたフォローアップ期間が基準値と異なることを示す情報として、アラートメッセージ124を表示する。なおフォローアップ期間は、被検者個別の事情等も加味して決定されるため、入力されたフォローアップ期間が基準値から外れていたとしても、そのことで不適切であると判定される訳ではない。アラートメッセージ124は、医師Bに対してあくまでも参考情報として表示され、アラートメッセージ124の表示後、医師Bは、フォローアップ期間入力欄122の設定期間を修正しても、修正しなくてもよい。
【0046】
アラートメッセージ124が表示された状態で医師BがOKボタン92を押すと、医療情報受付部44が、「1年」のフォローアップ期間の入力を受け付け、メモリ56に記憶する。アラートメッセージ124が一度表示された後は、医療情報受付部44は、受け付けたフォローアップ期間を入力支援部54に通知しなくてよい。
【0047】
図11は、フォローアップ期間に関する情報の別の例を示す。入力支援部54は、医師Bにより入力されたフォローアップ期間が基準値と異なる場合に、過去の実績を閲覧可能とするために、リスト表示ボタン126を表示する。医師Bがリスト表示ボタン126を押すと、医師Bが過去に萎縮性胃炎およびO-IIIと診断した実績情報のリストが表示されてよい。この実績情報のリストには、各検査において設定したフォローアップ期間が対応付けられて表示される。
【0048】
医師Bは、過去の10件の検査で「6ヶ月」のフォローアップ期間を、1件の検査で「1年」のフォローアップ期間を設定しており、過去に「1年」を設定した検査のレポートを参照して、今回「1年」と設定したフォローアップ期間が適切であったかを確認してよい。なおリスト表示にあたり、明らかにフォローアップ期間が誤入力である実績情報(たとえば、フォローアップ期間が「1日」と設定されている)については、入力支援部54は、表示リストから除外してよい。
【0049】
以上の実施例では、導出部16が、レポートを作成する医師Bの実績情報から、診断情報に対応するフォローアップ期間の基準値を導出した。これにより医師Bは、過去の自分のフォローアップ期間についての考え方を確認できる。
【0050】
一方、医師Bが経験の少ない医師(たとえば研修医)である場合、入力したフォローアップ期間を、自分の過去の実績と比較するよりも、検査数の多い熟練医の過去の実績と比較することが好ましい。そこで医師Bは、比較参照する実績情報の医師を任意に選択できてよい。このとき、1人の医師のみを選択できてもよいが、診断内容ごとに選択できることが好ましい。特に大規模な医療施設には、症例ごとに専門医が存在するため、医師Bは、専門医がどのようにフォローアップ期間を設定するかを、症例ごとに勉強できることが好ましい。そこで医師Bは、フォローアップ期間を参照する医師を診断情報に応じて指定し、指定情報受付部46が、フォローアップ期間を参照する医師IDを受け付けて、入力支援部54に通知する。
【0051】
医師Bによるレポート作成中、入力支援部54は、医師Bにより診断情報が入力されると、入力された診断情報とともに、当該診断情報に対して指定された医師IDを管理サーバ10に送信し、指定医師によるフォローアップ期間の基準値を要求する。導出部16は、診断情報および指定医師IDを受け付けて、指定された医師IDに対応付けられた複数検査の実績情報から、当該診断情報に対応するフォローアップ期間の基準値を導出する。これにより医師Bは、指定した医師によるフォローアップ期間の基準値を参考にできる。
【0052】
なお医療情報処理システム1が、他の医療施設におけるシステムと連携している場合、医師Bは、同じ医療施設内における医師のみならず、他施設の医師を指定できてもよい。なお、この場合、医師Bが、患者情報などの個人情報を閲覧できない制限をかけることが好ましい。
【0053】
また導出部16は、特定の医師の実績情報ではなく、施設における全医師の実績情報から、フォローアップ期間の基準値を導出してもよい。なおフォローアップ期間の設定基準は、医師ごとに異なることがあるため、ある特定の診断情報に対して、全医師の80%が同じフォローアップ期間を選択する可能性は高いとは言えない。そこで、そのような場合には、入力支援部54が、過去の実績の分布を把握できるフォローアップ期間に関する情報を表示してよい。
【0054】
たとえば図11に示すリスト表示ボタン126を医師Bが選択すると、入力支援部54は、過去実績のグラフを表示してよい。
図12は、医療施設におけるフォローアップ期間の実績を表現するグラフを示す。入力支援部54が、過去の実績をグラフ形式で表現することで、医師Bは、過去のフォローアップ期間の分散の程度を直観的に把握できる。医師Bが棒グラフにカーソルを当てると、その棒グラフを構成する実績情報のリストが表示され、いずれかの実績情報を選択することで、当該実績情報の内容が表示されてもよい。また入力支援部54は、グラフ中に示されるフォローアップ期間を、所定の操作によりフォローアップ期間入力欄122に反映させてもよい。また医療情報処理システム1が他の医療システムと連携している場合には、入力支援部54は、各施設ごとのフォローアップ期間を比較可能にグラフ形式で表現してもよい。
【0055】
以上、本発明を実施例をもとに説明した。この実施例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0056】
実施例では、フォローアップ期間の基準値の導出に用いる診断情報として、萎縮性胃炎および萎縮分類を用いたが、他の診断情報が用いられてよい。たとえば図4において腺腫の診断項目を示したが、腺腫および分類の組合せによる診断情報が、フォローアップ期間の基準値の導出に用いられてもよい。なお実施例では、図7に示すように、導出部16が、基準値に導出に用いる診断項目を閾値を用いて自動的に決定したが、医師Bが、どの診断項目をフォローアップ期間の基準値の導出に用いるか、手動で選択してよい。なお基準値の導出に用いる診断項目が設定されている場合に、当該診断項目の入力がなければ、入力漏れがある旨が医師に通知されてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1・・・医療情報処理システム、10・・・管理サーバ、12・・・登録部、14・・・記憶部、16・・・導出部、18・・・提供部、30・・・情報処理装置、40・・・受付部、42・・・表示要求受付部、44・・・医療情報受付部、46・・・指定情報受付部、50・・・画面生成部、52・・・画像取得部、54・・・入力支援部、56・・・メモリ、58・・・登録処理部、80・・・表示装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12