(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】レーザ加工用ノズル及びレーザ加工装置
(51)【国際特許分類】
B23K 26/142 20140101AFI20240507BHJP
【FI】
B23K26/142
(21)【出願番号】P 2020030666
(22)【出願日】2020-02-26
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 和弘
(72)【発明者】
【氏名】東 慧
(72)【発明者】
【氏名】奥田 剛久
(72)【発明者】
【氏名】赤羽 崇
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-122349(JP,A)
【文献】実開昭54-065499(JP,U)
【文献】特表2014-531984(JP,A)
【文献】特開昭60-054293(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体と、
前記ノズル本体に軸方向に沿って設けられ、レーザ光及びアシストガスを前記軸方向に沿って通過させ、前記レーザ光を通過させかつ前記アシストガスを噴射する主開口部を前記軸方向の一端に有する通路と、
前記通路のうち前記主開口部を含む部分に配置され、
前記主開口部において前記通路の径を縮小することで前記主開口部から噴射される前記アシストガスの噴流径が前記主開口部の径よりも小さくなるオリフィス絞りと
を備えるレーザ加工用ノズル。
【請求項2】
前記
オリフィス絞りは、前記通路内における前記アシストガスの流路断面積を急峻に縮小させる通路側端面を有する
請求項1に記載のレーザ加工用ノズル。
【請求項3】
前記通路側端面は、前記通路の中心軸に垂直に配置される
請求項2に記載のレーザ加工用ノズル。
【請求項4】
前記
オリフィス絞りは、前記通路側端面の内周部に角部を有する
請求項2又は請求項3に記載のレーザ加工用ノズル。
【請求項5】
前記
オリフィス絞りは、前記通路の一端において前記通路の一部を覆うように板状に形成される
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のレーザ加工用ノズル。
【請求項6】
前記ノズル本体は、前記通路に沿って設けられ前記アシストガスを通過させるガス通路と、前記ガス通路の一端かつ前記主開口部の近傍に設けられ前記アシストガスを噴射するサブ開口部とを有し、
前記
オリフィス絞りは、前記通路の中心軸が前記主開口部の中心軸に対して前記サブ開口部とは反対側にずれるように設けられる
請求項5に記載のレーザ加工用ノズル。
【請求項7】
前記
オリフィス絞りは、前記通路の中心軸と前記主開口部の中心軸とが一致するように設けられる
請求項5に記載のレーザ加工用ノズル。
【請求項8】
請求項1から請求項
7のいずれか一項に記載のレーザ加工用ノズルと、
前記通路にレーザ光を供給するレーザ光照射装置と、
前記通路にアシストガスを供給するアシストガス供給装置と
を備えるレーザ加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーザ加工用ノズル及びレーザ加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ加工用ノズルから被加工部材にレーザを照射して切断するレーザ加工装置が知られている。このようなレーザ加工装置として、例えばレーザ照射によって溶融した部材が冷えて固まる前に、レーザ加工用ノズルからアシストガスを噴射して溶融部材を吹き飛ばす構成が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のレーザ加工装置では、レーザ光及びアシストガスを通過させる共通の通路及び開口部がレーザ加工用ノズルに設けられる。レーザ光がレーザ加工用ノズルの通路及び開口部に干渉すると、つまり、レーザ光がレーザ加工用ノズルの通路の内壁及び開口部の内周に当たると、当該通路の内壁及び開口部の内周が溶融することがある。したがって、上記の通路及び開口部は、レーザ光が干渉することを防ぐため、レーザ光の有効径よりも径が大きくなっている。この構成では、開口部において、アシストガスがレーザ光の有効径よりも大きい噴流径で噴射される。そのため、開口部から噴射されるアシストガスの一部が、レーザ光の照射領域の周囲に広がってしまい、切断に寄与しないことになる。したがって、アシストガスを効率的に使用することが求められる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであり、アシストガスを効率的に使用することが可能なレーザ加工用ノズル及びレーザ加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るレーザ加工用ノズルは、ノズル本体と、前記ノズル本体に軸方向に沿って設けられ、レーザ光及びアシストガスを前記軸方向に沿って通過させ、前記レーザ光を通過させかつ前記アシストガスを噴射する主開口部を前記軸方向の一端に有する通路と、前記通路のうち前記主開口部を含む部分に配置され、前記主開口部に向けて前記通路の径を縮小しかつ前記主開口部から噴射される前記アシストガスの噴流径が前記主開口部の径よりも小さくなるように前記軸方向の単位寸法あたりの前記通路の径の縮小量が設定される絞り部とを備える。
【0007】
本開示に係るレーザ加工装置は、上記のレーザ加工用ノズルと、前記通路にレーザ光を供給するレーザ光照射装置と、前記通路にアシストガスを供給するアシストガス供給装置とを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、アシストガスを効率的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係るレーザ加工装置の一例を示す概略構成図(概略斜視図)である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係るレーザ加工装置の一例を示す概略構成図(概略断面図)である。
【
図3】
図3は、
図1におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3において矢印Q1方向から見た構成を示す図である。
【
図5】
図5は、本実施形態に係るレーザ加工装置を用いて被加工部材を切断する様子を示す図である。
【
図6】
図6は、変形例に係るノズルの構成を示す断面図である。
【
図7】
図7は、変形例に係るノズルの構成を示す断面図である。
【
図8】
図8は、第2実施形態に係るレーザ加工装置のノズルの一例を示す概略構成図である。
【
図9】
図9は、
図8における矢印Q2方向から見た状態を示す図である。
【
図10】
図10は、変形例に係るノズルの構成を示す断面図である。
【
図11】
図11は、変形例に係るノズルの構成を示す断面図である。
【
図12】
図12は、第3実施形態に係るレーザ加工装置のノズルの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示に係るレーザ加工用ノズル及びレーザ加工装置の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[第1実施形態]
図1及び
図2は、第1実施形態に係るレーザ加工装置の一例を示す概略構成図である。
図1は概略斜視図、
図2は概略断面図である。
図1及び
図2に示すように、レーザ加工装置100は、レーザ光により被加工部材W(
図2等参照)を切断する装置である。レーザ加工装置100は、ノズル(レーザ加工用ノズル)10と、レーザ光照射装置20と、アシストガス供給装置30、40とを備えている。なお、以下の説明において、レーザ加工装置100の構成を説明するにあたり、X方向、Y方向及びZ方向を設定して説明する。この場合、ノズル10の移動方向(矢印T方向)をX方向とし、後述するノズル本体11の中心軸の軸方向をZ方向とし、X方向及びZ方向にそれぞれ直交する方向をY方向とする。
【0012】
ノズル10は、被加工部材Wに対してレーザ光を通過させ、かつアシストガスを噴射する。ノズル10は、不図示の加工ヘッドに装着される。レーザ光照射装置20は、ノズル10の主通路12にレーザ光Lを照射可能である。アシストガス供給装置30は、ノズル10の主通路12にアシストガスG1を供給可能である。アシストガス供給装置40は、ノズル10のガス通路14に対してアシストガスG2を供給する。なお、アシストガス供給装置30及びアシストガス供給装置40は、一つのアシストガス供給装置とし、兼用してもよい。
【0013】
また、
図1及び
図2における矢印T方向は、被加工部材Wに対して加工を行う際にノズル10を移動させる施工方向である。加工時において、レーザ光照射装置20は、ノズル10の主通路12及び主開口部13を通して被切断部材Wの表面W1に向けてレーザ光Lを照射する。また、アシストガス供給装置30は、ノズル10の主通路12及び主開口部13を通して被切断部材Wの表面W1におけるレーザ光Lの照射位置の周囲にアシストガスG1を噴出する。また、アシストガス供給装置40は、ノズル10のガス通路14及びサブ開口部15を通して被切断部材Wの表面W1におけるレーザ光Lの照射位置の隣接位置にアシストガスG2を噴出する。
【0014】
図3は、
図1におけるA-A断面に沿った構成を示す図である。
図3は、ノズル10の一例を示している。
図4は、
図3において矢印Q1方向から見た構成を示している。
図1から
図4に示すように、ノズル10は、ノズル本体11と、主通路(通路)12と、主開口部13と、ガス通路14と、サブ開口部15と、絞り部16とを備える。
【0015】
ノズル本体11は、中心軸を有する柱状に形成される。ノズル本体11は、中心軸の軸方向(Z方向)の一端に噴射側端面11aを有し、Z方向の他端に供給側端面11bを有する。噴射側端面11aは、Z方向に垂直であり、レーザ光L及びアシストガスG1、G2が噴射される側の端面である。供給側端面11bは、レーザ光L及びアシストガスG1、G2が供給される側の端面である。
【0016】
主通路12は、ノズル本体11の内部にZ方向に沿って設けられる。主通路12は、中心軸AX1が例えばZ方向に対して傾いて配置される。この構成により、主通路12を流れるアシストガスG1と後述するガス通路14を流れるアシストガスG2とが合流しやすくなっている。なお、主通路12は、中心軸AX1がZ方向に平行に配置されてもよい。主通路12は、ノズル本体11の噴射側端面11aと供給側端面11bとの間を連通する。主通路12のうち供給側端面11b側の開口部は、レーザ光照射装置20からのレーザ光L1が通過し、アシストガス供給装置30からのアシストガスG1が通過する。主通路12には、レーザ光照射装置20から供給されるレーザ光Lが通過し、アシストガス供給装置30からのアシストガスG1が通過する。主通路12は、供給側端面11b側から噴射側端面11a側に向けて、レーザ光L及びアシストガスG1をZ方向に沿って通過させる。レーザ光Lからノズル本体11を保護するため、主通路12の径は、レーザ光Lの径(有効径)よりも大きくなっている。
【0017】
主開口部13は、ノズル本体11の噴射側端面11a、すなわち主通路12の一端に設けられる。主開口部13は、レーザ光L及びアシストガスG1を噴射する。レーザ光からノズル本体11を保護するため、主開口部13の径は、レーザ光Lの径よりも大きくなっている。主開口部13は、Z方向視において例えば円形状であるが、これに限定されず、他の形状であってもよい。
【0018】
ガス通路14は、ノズル本体11の内部にZ方向に沿って設けられる。ガス通路14は、主通路12と並列にノズル本体11の噴射側端面11aと供給側端面11bとの間を連通する。ガス通路14のうち供給側端面11b側の開口部には、アシストガス供給装置40が接続される。ガス通路14には、アシストガス供給装置40からアシストガスG2が供給される。ガス通路14は、供給側端面11b側から噴射側端面11a側に向けて、アシストガスG2をZ方向に沿って通過させる。
【0019】
サブ開口部15は、ノズル本体11の噴射側端面11a、すなわちガス通路14の一端に設けられる。サブ開口部15は、アシストガスG2を噴射する。サブ開口部15は、主開口部13に対して例えばX方向にずれた位置に配置される。サブ開口部15は、Z方向視において例えば矩形形状であるが、これに限定されず、他の形状であってもよい。サブ開口部15は、Y方向の長さがレーザ光L1の溶融径に対応するように設定することが好ましい。
【0020】
絞り部16は、主開口部13に向けて主通路12の径を縮小する。本実施形態において、絞り部16は、主通路12における流路断面積の変化が急峻な部位である。つまり、絞り部16は、主通路12における流路断面積が主開口部13に向けて急峻に縮小される部位である。絞り部16は、主通路12のうち主開口部13を含む部分に配置される。絞り部16は、主通路12の一端において主通路12の一部を覆うように板状に形成される。絞り部16は、ノズル本体11の噴射側端面11aの一部を構成する。
【0021】
絞り部16は、主開口部13から噴射されるアシストガスG1の噴流径r2が主開口部13の径r1よりも小さくなるように構成される。つまり、絞り部16によってアシストガスG1の流れが急激に変化させられることにより、後述するように、アシストガスG1の流れが剥離し、有効な流路断面積が縮小する。これにより、アシストガスG1の流量が同一の場合、流路断面積が縮小された分だけ流速が増加するため、アシストガスG1の流体力を増強することができる。例えば、絞り部16は、主開口部13から噴射されるアシストガスG1の噴流径r2が主開口部13の径r1よりも小さくなるようにZ方向について単位寸法あたりの主通路12の径の変化量が設定される。本実施形態では、絞り部16により、Z方向の寸法t(絞り部16のZ方向の寸法)に対して、主通路12の径が変化量dで縮小されている。すなわち、軸方向の単位寸法あたりの主通路12の径の変化量は、d/tで表すことができる。
【0022】
絞り部16は、主通路12に面する通路側端面16aと、中心軸AX1の方向に形成された貫通孔16bとを有する。通路側端面16aは、後述する角部16dにおいてアシストガスG1の流れに剥離が生じるように、アシストガスG1の流れを急激に変化させる。
【0023】
通路側端面16aは、主通路12の中心軸AX1に垂直に配置される。つまり、通路側端面16aと中心軸AX1との成す角度θ1(
図3参照)は、90°又はほぼ90°である。なお、角度θ1の値は、90°又はほぼ90°に限定されない。角度θ1の値は、アシストガスの流れに剥離を生じさせることが可能な範囲で設定することができる。本実施形態では、中心軸AX1がZ方向に対して傾いて配置されるため、通路側端面16aと噴射側端面11aとが傾いた状態となっている。つまり、絞り部16の厚さ(Z方向の寸法)がX方向について変化している。なお、中心軸AX1がZ方向に平行に配置される構成では、通路側端面16aと噴射側端面11aとが平行な状態、つまり絞り部16の厚さがZ方向に均一な状態となる。なお、絞り部16の厚さは、主開口部13の径r1の1倍未満とすることができる。例えば、絞り部16の厚さは、主開口部13の径r1の0.5倍未満とすることが好ましい。
【0024】
貫通孔16bは、通路側端面16aとノズル本体11の噴射側端面11aとを連通する貫通孔16bとを有する。貫通孔16bは、例えば通路側端面16a側から噴射側端面11a側に向けて広がるようにテーパ状に形成される。本実施形態では、貫通孔16bの内周面16cにおいて噴射方向の手前側(図中左側)の端部が主開口部13となっている。通路側端面16aと内周面16cとの間には、角部16dが形成される。角部16dは、
図3の断面視において鋭角状である。角部16dを断面視において鋭角状とすることにより、アシストガスG1の剥離位置を安定的に形成することができる。
【0025】
また、絞り部16は、
図4に示すように、主通路12の中心軸AX1が主開口部13の中心軸P1に対してサブ開口部15とは反対側にずれるように設けられる。
【0026】
主通路12を流れるアシストガスG1は、通路側端面16aにおいて流れが急激に変化し、角部16dにおいて流れが剥離する。これにより、貫通孔16bにおいて、アシストガスG1の噴流径の径方向の内側に向けた流れが生じる。この流れにより、主開口部13から噴射されるアシストガスG1の噴流径r2は、主開口部13の径r1よりも小さくなる。このように、絞り部16は、アシストガスG1の流れに剥離を生じさせることにより、主開口部13から噴射されるアシストガスG1の噴流径r2を主開口部13の径r1よりも小さくする。
【0027】
アシストガスG1の剥離は、主通路12における流路断面積の変化が急であるほど生じやすい。本実施形態では、絞り部16によって流路断面積が急激に変化するため、剥離を生じやすくすることができる。また、通路側端面16aが中心軸AX1に垂直に配置されるため、流路断面積を急激に変化させることができる。また、絞り部16が主通路12の中心位置ではなく、ガス通路14に偏った位置に配置されるため、主開口部13から噴射されるアシストガスG1をサブ開口部15から噴射されるアシストガスG2に容易に合流させることができる(
図3参照)。
【0028】
図5は、本実施形態に係るレーザ加工装置100を用いて被加工部材Wを切断する様子を示す図である。
図5に示すように、レーザ加工装置100は、ノズル10の噴射側端面11aを被加工部材Wに対向させた状態とし、主開口部13からレーザ光Lを照射すると共にアシストガスG1を噴射し、サブ開口部15からアシストガスG2を噴射する。
【0029】
レーザ光Lが照射されることにより、被加工部材Wが表面側から溶融する。アシストガスG1が噴射されることにより、被加工部材Wのうちレーザ光Lの照射範囲及びその周囲に存在する溶融部材が吹き飛ばされて除去される。アシストガスG2が噴射されることにより、ノズル10の移動方向の下流側に存在する溶融部材が吹き飛ばされて除去される。この状態でノズル10を矢印T方向に移動させることにより、ノズル10の噴射側端面11aに溶融部材が付着することを抑制しつつ、被加工部材Wに切断カーフWaを形成することができる。
【0030】
本実施形態では、主開口部13から噴射されるアシストガスG1の噴流径r2(
図3参照)が主開口部13の径r1(
図3参照)よりも小さくなる。このため、主開口部13から噴射されるアシストガスG1は、レーザ光Lによる溶融範囲に沿って切断カーフWa内に噴射される。したがって、切断カーフWaからはみ出して被加工部材Wの表面に広がるアシストガスG1が低減されるため、アシストガスG1を無駄なく効率的に利用可能となる。
【0031】
図6及び
図7は、変形例に係るノズルの構成を示す断面図である。
図6及び
図7で示すノズルの断面は、
図3に示すノズル10の断面に対応している。
図6に示すノズル10Aのノズル本体11Aでは、絞り部16の貫通孔16bの内周面16cが、通路側端面16aとの間で鈍角を形成している。また、
図7に示すノズル10Bのノズル本体11Bでは、絞り部16の貫通孔16bの内周面16cが、通路側端面16aとの間で直角を形成している。
図6及び
図7に示す構成では、内周面16cのうち噴射方向の先端側(図中右側)の端部が主開口部13となる。このように、通路側端面16aと貫通孔16bの内周面16cとの間の角度は、鋭角に限定されず、鈍角または直角であってもよい。
【0032】
以上のように、本開示に係るノズル10は、ノズル本体11と、ノズル本体11に軸方向に沿って設けられ、レーザ光及びアシストガスを軸方向に沿って通過させ、レーザ光を通過させかつアシストガスを噴射する主開口部13を軸方向の一端に有する主通路12と、主通路12のうち主開口部13を含む部分に配置され、主開口部13に向けて主通路12の径を縮小しかつ主開口部13から噴射されるアシストガスG1の噴流径r2が主開口部13の径r1よりも小さくなるように軸方向の単位寸法あたりの主通路12の径の縮小量が設定される絞り部16とを備える。
【0033】
従って、主開口部13から噴射されるアシストガスの噴流径がレーザ光の有効径に近づくように縮小される。これにより、アシストガスがレーザ光の照射領域の周囲に広がることを抑制できるため、アシストガスを効率的に使用することが可能となる。
【0034】
また、絞り部16は、主通路12内におけるアシストガスG1の流路断面積を急峻に縮小させる通路側端面16aを有する。アシストガスG1の流路断面積を急峻に縮小することにより、アシストガスG1の流れに剥離を生じさせることができる。また、剥離により、主開口部13から噴射されるアシストガスG2の噴流の流速を増加させることができる。
【0035】
また、通路側端面16aは、主通路12の中心軸AX1に垂直に配置される。従って、アシストガスの流れにより確実に剥離を生じさせることができる。
【0036】
また、絞り部は、通路側端面16aの内周部に角部16dを有する。従って、角部16dにおいて、剥離を確実に発生させることができる。
【0037】
また、絞り部16は、主通路12の一端において主通路12の一部を覆うように板状に形成される。従って、簡単な構成によりアシストガスG1の流れに効率的に剥離を生じさせることができる。
【0038】
また、ノズル本体11は、主通路12に沿って設けられアシストガスG2を通過させるガス通路14と、ガス通路14の一端かつ主開口部13の近傍に設けられアシストガスG2を噴射するサブ開口部15とを有し、絞り部16は、主通路12の中心軸が主開口部13の中心軸に対してサブ開口部15とは反対側にずれるように設けられる。絞り部16が主通路12の中心位置ではなく、ガス通路14に偏った位置に配置されるため、主開口部13から噴射されるアシストガスG1は、サブ開口部15側に向けて噴流径が縮小される。これにより、主開口部13から噴射されるアシストガスG1と、サブ開口部15から噴射されるアシストガスG2とが合流しやすくなる。
【0039】
本開示に係るレーザ加工装置100は、上記のノズル10と、主通路12にレーザ光を供給するレーザ光照射装置20と、主通路12にアシストガスG1を供給するアシストガス供給装置30とを備える。従って、アシストガスG1を効率的に使用することが可能なノズル10が用いられるため、アシストガスの消費量を抑えつつ、被加工部材Wを加工することができる。
【0040】
[第2実施形態]
図8は、第2実施形態に係るレーザ加工装置200のノズル110の一例を示す概略構成図である。
図8に示すように、レーザ加工装置200に設けられるノズル(レーザ加工用ノズル)110は、第1実施形態におけるガス通路14及びサブ開口部15に対応する部分が設けられない構成となっている。つまり、ノズル110は、ノズル本体111と、主通路112と、主噴射口113と、絞り部116とを備える構成である。
【0041】
主通路112は、ノズル本体111の内部にZ方向に沿って設けられる。主通路112は、中心軸AX2が例えばZ方向に平行に配置される。主通路112の供給側端面(不図示)側の開口部には、第1実施形態と同様のレーザ光照射装置20及びアシストガス供給装置30が接続される。主通路112には、レーザ光照射装置20からレーザ光Lが供給され、アシストガス供給装置30からアシストガスG1が供給される。主通路112は、供給側端面側から噴射側端面111a側に向けて、レーザ光L及びアシストガスG1をZ方向に沿って通過させる。レーザ光Lからノズル本体111を保護するため、主通路112の径は、レーザ光Lの径よりも大きくなっている。
【0042】
主噴射口113は、ノズル本体111の噴射側端面111a、すなわち主通路112の一端に設けられる。主噴射口113は、レーザ光L及びアシストガスG1を噴射する。レーザ光Lからノズル本体111を保護するため、主噴射口113の径r3は、レーザ光Lの径よりも大きくなっている。
【0043】
絞り部116は、主噴射口113に向けて主通路112の径を縮小する。絞り部116は、主通路112のうち主噴射口113を含む部分に配置される。絞り部116は、主通路112の一端において主通路112の一部を覆うように板状に形成される。絞り部116は、ノズル本体111の噴射側端面111aの一部を構成する。絞り部116は、主通路112に面する通路側端面116aと、中心軸AX2の方向に形成された貫通孔116bとを有する。本実施形態では、第1実施形態と同様に、絞り部116は、アシストガスG1の流れに剥離を生じさせることにより、主噴射口113から噴射されるアシストガスG1の噴流径r4を主噴射口113の径r3よりも小さくする。なお、絞り部116の厚さ(Z方向の寸法)は、主噴射口113の径r3の1倍未満とすることができる。例えば、絞り部116の厚さは、主噴射口113の径r3の0.5倍未満とすることが好ましい。
【0044】
図9は、
図8における矢印Q2方向から見た状態を示す図である。
図9に示すように、主噴射口113は、Z方向視において例えば円形状であるが、これに限定されず、他の形状であってもよい。また、
図9に示すように、絞り部116は、主通路112の中心軸AX2と主噴射口113の中心軸P2とが一致するように設けられる。本実施形態では、主噴射口113を構成する貫通孔116bの内周面116cと、絞り部116の外周部分とが同心円となるように配置される。
【0045】
図10及び
図11は、変形例に係るノズルの構成を示す断面図である。
図10及び
図11で示すノズルの断面は、
図8に示すノズル110の断面に対応している。
図10に示すノズル110Aのノズル本体111Aでは、絞り部116の貫通孔116bの内周面116cが、通路側端面116aとの間で鈍角を形成している。また、
図11に示すノズル110Bのノズル本体111Bでは、絞り部116の貫通孔116bの内周面116cが、通路側端面116aとの間で直角を形成している。
図10及び
図11に示す構成では、内周面116cのうち噴射方向の先端側(図中右側)の端部が主噴射口113となる。このように、通路側端面116aと貫通孔116bの内周面116cとの間の角度は、鋭角に限定されず、鈍角または直角であってもよい。
【0046】
以上のように、第2実施形態に係るノズル110において、絞り部116は、主通路112の中心軸AX2と噴射口113の中心軸P2とが一致するように設けられる。従って、主噴射口113から噴射されるアシストガスG1は、主噴射口113のP2中心に向けて噴流径が縮小される。これにより、レーザ光Lの照射領域の中心に向けてアシストガスG1を噴射することができる。また、主通路112の中心軸AX2の軸回り方向の一周に亘ってアシストガスG1の流れに剥離を生じさせることができるため、主噴射口113から噴射されるアシストガスG1の噴流径r4をより小さくすることができる。
【0047】
[第3実施形態]
図12は、第3実施形態に係るレーザ加工装置300のノズル210の一例を示す概略構成図である。
図12では、第1実施形態におけるガス通路14及びサブ開口部15に対応する構成を省略している。
図12に示すように、レーザ加工装置300に設けられるノズル(レーザ加工用ノズル)210は、絞り部216の傾斜面216aが、主通路212の径方向の外側に至るにつれて、主通路212の中心軸AX3に対して90°未満の角度θ3で噴射方向の手前側(図中左側)に傾いた構成となっている。なお、他の構成については、第1実施形態と同様とすることができる。
【0048】
この場合、絞り部216は、主噴射口213から噴射されるアシストガスG1の噴流径r6が主噴射口213の径r5と同一又はほぼ同一となるようにZ方向について単位寸法あたりの主通路212の径の変化量が設定される。本実施形態では、絞り部216により、Z方向の寸法t3(絞り部216のZ方向の寸法)に対して、主通路212の径が変化量d3で縮小されている。すなわち、軸方向の単位寸法あたりの主通路12の径の変化量は、d3/t3で表すことができる。
【0049】
この構成により、主通路212を流れるアシストガスG1は、傾斜面216aにより貫通孔216b側に流れの方向が変化する。このため、貫通孔216bにおいては、アシストガスG1の噴流径の径方向の内側に向けた流れが生じる。この流れにより、主開口部13から噴射されるアシストガスG1は、X方向について流速の分布Gdが形成される。つまり、流速の分布Gdは、X方向について主噴射口213の傾斜面216aに近接するほど(図中の上側ほど)流速が遅く、主噴射口213の傾斜面216aから離れるほど(図中の下側ほど)流速が速くなる。このように、絞り部216は、アシストガスG1の流れの方向を変化させ、主噴射口213から噴射されるアシストガスG1の流速に分布を形成する。
【0050】
以上のように、第3実施形態に係るノズル210において、絞り部216は、主通路12を流れるアシストガスG1の流れを主開口部13に向かう方向に変化させる傾斜面216aを有し、主開口部13から噴射されるアシストガスG1において、主噴射口213の傾斜面216aに近接するほど流速が遅く、傾斜面216aから離れるほど流速が速くなるように傾斜面216aの角度θ3が設定される。従って、主開口部13から噴射されるアシストガスG1の流速について、傾斜面216aからの距離が離れるほど流速が速くなるように分布を形成することができる。
【0051】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。例えば、上記実施形態では、レーザ光Lの有効径がアシストガスG1の噴流径よりも大きい場合を例に挙げて説明したが、これに限定されない。レーザ光Lの有効径がアシストガスG1の噴流径よりも小さくてもよい。レーザ光Lの周辺はエネルギー密度が低いため、実質的に加工に寄与しないのであれば、例えばレーザ光Lの有効径がアシストガスG1の噴流径よりも大きくなるようにし、レーザ光LをアシストガスG1の噴流で遮蔽してもよい。
【符号の説明】
【0052】
θ1,θ3 角度
G1,G2 アシストガス
L,L1 レーザ光
P1,P2,AX1,AX2,AX3 中心軸
W 被加工部材
d,d3 変化量
r1,r3,r5 径
r2,r4,r6 噴流径
t,t3 寸法
Gd 分布
Wa 切断カーフ
10,10A,10B,110,110A,110B,210 ノズル
11,11A,11B,111,111A,111B ノズル本体
11a,111a 噴射側端面
11b 供給側端面
12,112,212 主通路
13,113,213 主噴射口
14 ガス通路
15 ガス噴射口
16,116,216 絞り部
16a,116a 通路側端面
16b,116b,216b 貫通孔
16c,116c 内周面
16d 角部
20 レーザ光照射装置
30,40 アシストガス供給装置
100,200,300 レーザ加工装置
113 噴射口
216a 傾斜面