(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】情報処理装置、監視方法、プログラムおよび物品製造方法
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
G05B23/02 302R
(21)【出願番号】P 2020037158
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2023-03-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 亮彦
(72)【発明者】
【氏名】古賀 慎一郎
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-159786(JP,A)
【文献】特開2012-150721(JP,A)
【文献】特開2016-218636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサを有する監視対象から前記複数のセンサのそれぞれの出力値の変化を示す複数の時系列データを取得する取得部と、
前記複数の時系列データ
の相互の関係を示す
、複数の期間にそれぞれ対応する複数のモデルを生成するモデル生成部と、
前記
複数のセンサのそれぞれの出力値の変化を示す複数の時系列データと
、前記複数のモデルのうちの一部のモデルとに基づいて前記監視対象の異常を検出する検出部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記監視対象からエラーの発生を示すエラー情報を取得し、
前記モデル生成部は、エラーが発生していない期間において前記複数の期間を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前
記複数の期間は、互いに部分的に重複する2つの期間を含む、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記複数のモデル
のうち前記監視対象の異常を検出するために使用しないモデルを
決定する除外部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記除外部は、前記モデル生成部によるモデルの生成時からの経過時間に基づいて、
使用しないモデルを決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記除外部は、前記複数のセンサのそれぞれの出力値の経時変化に基づいて、
使用しないモデルを決定する、
ことを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記検出部は、前記複数のセンサの各々について、センサの出力値とモデルが発生した出力値との差分を計算する、
ことを特徴とする請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記検出部は、前記差分を処理して得られる値が所定値を超える場合に、前記監視対象における異常の発生を検出する、
ことを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記除外部は、前記異常の発生が検出された出力値を発生した頻度が所定頻度を超えるモデルを、
使用しないモデルとして決定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記除外部は、前記複数の期間のうち時間経過順に並んだ少なくとも3つの期間にそれぞれ対応する少なくとも3つのモデルを使って前記異常の発生が検出された頻度に基づいて、前記少なくとも3つのモデル
のうち、使用しないモデルを決定する、
ことを特徴とする請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記除外部は、既に存在するモデルのそれぞれを使って計算される前記差分を処理して得られる値に基づいて決定される閾値に基づいて、以後に前記モデル生成部によって生成されるモデルを除外すべきかどうかを決定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記検出部は、前記複数のモデルのそれぞれを使って計算される複数の前記差分に対して重み付けを行いながら評価値を計算し、前記評価値に基づいて前記監視対象の状態を検出する、
ことを特徴とする請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記検出部は、前記モデル生成部によるモデルの生成時からの経過時間に基づいて前記重み付けを行う、
ことを特徴とする請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記検出部は、前記経過時間が長いモデルほど重みを小さくする、
ことを特徴とする請求項13に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記検出部は、前記経過時間が短いモデルほど重みを小さくする、
ことを特徴とする請求項13に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記検出部が前記監視対象の異常を検出したことを報知する報知部を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至15のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項17】
複数のセンサを有する監視対象から前記複数のセンサのそれぞれの出力値の変化を示す複数の時系列データを取得する取得部と、
前記複数の時系列データにおける複数の期間の各々から前記複数の時系列データの相互の関係を示す1つのモデルを生成することにより、前記複数の期間にそれぞれ対応する複数のモデルを生成するモデル生成部と、
前記複数のモデルと前記複数の時系列データとに基づいて前記監視対象の異常を検出する検出部と、
前記複数のモデルから、前記監視対象の異常を検出するために使用しないモデルを除外する除外部と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項18】
複数のセンサを有する基板処理装置と、
前記監視対象の状態を検出するように構成された請求項1乃至
17のいずれか1項に記載の情報処理装置と、
を備えることを特徴とする製造装置。
【請求項19】
複数のセンサを有する基板処理装置から前記複数のセンサのそれぞれの出力値の変化を示す複数の時系列データを取得する取得工程と、
前記複数の時系列データ
の相互の関係を示す
、複数の期間にそれぞれ対応する複数のモデルを生成するモデル生成工程と、
前記複数のセンサのそれぞれの出力値の変化を示す複数の時系列データと
、前記複数のモデルのうちの一部のモデルとに基づいて前記基板処理装置の状態を検出する検出工程と、
を含むことを特徴とする監視方法。
【請求項20】
請求項19に記載の監視方法をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項21】
複数のセンサを有する露光装置を使って基板を露光する露光工程と、
前記露光工程で露光された基板を現像する現像工程と、
前記現像工程で現像された基板を処理して物品を得る処理工程と、
前記露光装置から前記複数のセンサのそれぞれの出力値の変化を示す複数の時系列データを取得する取得工程と、
前記複数の時系列データ
の相互の関係を示す
、複数の期間にそれぞれ対応する複数のモデルを生成するモデル生成工程と、
前記複数のセンサのそれぞれの出力値の変化を示す複数の時系列データと
、前記複数のモデルのうちの一部のモデルとに基づいて前記露光装置の状態を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出された前記露光装置の状態に基づいて前記露光装置を保守する保守工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、監視方法、プログラムおよび物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、プラントに配置された機器の故障予兆を監視する方法が記載されている。この方法では、プラント内に配置された各機器の挙動を計測するセンサにより測定された測定データに基づいて該機器の故障予兆を監視する故障予兆監視装置が使用される。故障予兆監視装置は、プラントの起動工程における運転内容に基づいて、起動工程内を複数の期間に区切っておき、測定データに基づいて、各期間が終了する毎に挙動状態の妥当性について確認することにより、各機器の故障予兆箇所を表示する。また、故障予兆監視装置は、各期間における挙動状態が妥当であると確認した場合に、次の期間に移行する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
故障予兆の監視するために、ある期間における複数のセンサのそれぞれの出力値の変化を示す複数の時系列データに基づいて、複数の時系列データの相互の関係を示すモデルが生成されうる。該モデルの出力値と該モデルに対応するセンサの出力値との差分が閾値を超えることは、異常(故障の兆候、または、故障)の発生を示唆する。
【0005】
上記のようなモデルが何らかの理由によって不適切である場合、実際には異常が発生していても、該不適切なモデルの出力値とセンサの出力値とが近似していれば、異常の発生を検出することができない。しかし、モデルが不適切であるかどうかを検証することは容易ではない。また、異常が検出された場合においても、そのモデルが適切である保証はない。
【0006】
本発明は、監視対象の異常の発生をより高い精度で検出するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの側面は、情報処理装置に係り、前記情報処理装置は、複数のセンサを有する監視対象から前記複数のセンサのそれぞれの出力値の変化を示す複数の時系列データを取得する取得部と、前記複数の時系列データの相互の関係を示す、複数の期間にそれぞれ対応する複数のモデルを生成するモデル生成部と、前記複数のセンサのそれぞれの出力値の変化を示す複数の時系列データと、前記複数のモデルのうちの一部のモデルとに基づいて前記監視対象の異常を検出する検出部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、監視対象の異常の発生をより高い精度で検出するために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の情報処理装置の構成を例示する図。
【
図2】監視対象と情報処理装置との関係を例示する図。
【
図3】実施形態の情報処理装置の構成を例示する図。
【
図4】監視対象としての基板処理装置の構成を例示する図。
【
図5】監視対象としての温調システムを例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
図1には、実施形態の情報処理装置100の構成例が示されている。情報処理装置100は、監視対象150の状態を監視する監視装置として、あるいは、監視対象150の状態を監視する監視方法を実行する装置として動作しうる。情報処理装置100は、プログラムを格納するメモリと、該プログラムに基づいて動作するプロセッサとを備えるコンピュータによって構成されうる。プログラムは、メモリ媒体に格納して運搬されうる。あるいは、プログラムは、ネットワーク等の通信路を介して転送されうる。情報処理装置100は、単一のコンピュータによって構成されてもよいし、ネットワーク等の通信路を介して相互に接続された複数のコンピュータによって構成されてもよいし、他の形態により構成されてもよい。一例において、情報処理装置100は、CPU101と、ROM102と、RAM103と、補助記憶装置104と、入力装置105と、表示装置106と、通信装置107と、バス108とを含みうる。
【0012】
CPU101は、ROM102に格納されたプログラムに基づいて動作し、情報処理装置100の機能を規定しうる。CPU101は、バス108を介してROM102、RAM103、補助記憶装置104、入力装置105、表示装置106および通信装置107と通信し、および、これらのデバイスを制御しうる。RAM103は、例えば、データの一時的な記憶に利用されうる。補助記憶装置104は、1または複数のメモリデバイスによって構成される不揮発性の記憶装置でありうる。CPU101を制御するプログラムは、補助記憶装置104に格納されてもよい。メモリデバイスは、例えば、HDD(ハードディスクドライブ)、メモリディスクおよび/またはメモリカードを含みうる。
【0013】
入力装置105は、キーボード、ポインティングデバイス、スキャナ等を含みうる。表示装置106は、液晶モニタ、有機ELモニタ等を含みうる。通信装置107は、外部装置と通信する機能を有する。通信装置107は、ネットワーク等の通信路を介して監視対象150と通信しうる。通信装置107は、例えば、監視対象150が有する複数のセンサ151のそれぞれの出力値の変化を示す複数の時系列データを監視対象150から取得あるいは受信しうる。監視対象150は、物品を製造するための製造装置、例えば、基板処理装置でありうる。該基板処理装置は、例えば、露光装置、インプリント装置等のパターン形成装置あるいはリソグラフィー装置でありうる。
【0014】
図2(a)に例示されるように、1つの監視対象150に対して、それを監視する1つの情報処理装置100が設けられうる。あるいは、
図2(b)に示されるように、複数の監視対象150に対して、それらを監視する1つの情報処理装置100が設けられうる。あるいは、図示されていないが、監視対象150に対して情報処理装置100が組み込まれてもよい。
【0015】
図3には、情報処理装置100の他の観点での構成例が記載されている。情報処理装置100は、取得部121、モデル生成部122および検出部123を備えうる。取得部121は、複数のセンサ151を有する監視対象150から複数のセンサ151のそれぞれの出力値の変化を示す複数の時系列データを取得するように構成されうる。モデル生成部122は、該複数の時系列データにおける複数の期間の各々から、該複数の時系列データの相互の関係を示す1つのモデルを生成することにより、該複数の期間に対応する複数のモデルを生成しうる。検出部123は、該複数のモデルと該複数の時系列データとに基づいて監視対象150の異常を検出しうる。情報処理装置100は、該複数のモデルから、監視対象150の異常を検出するために使用しないモデルを除外する除外部124を更に備えてもよい。情報処理装置100は、検出部123が監視対象150の異常を検出したことを報知する報知部125を更に備えてもよい。
【0016】
取得部121は、監視対象150からエラーの発生を示すエラー情報を取得し、モデル生成部122は、エラーが発生していない期間において上記の複数の期間を決定しうる。監視対象150は、エラーの発生を検出するエラー検出機能を有することができ、エラー情報は、該エラー検出機能によって提供されうる。エラーが発生していない期間において上記の複数の期間を決定することによって、不適切な時系列データに基づいてモデルが生成されることを防止することができる。
【0017】
モデル生成部122は、互いに部分的に重複する期間を有するように上記の複数の期間を決定してもよい。これは、複数のモデルを生成するための要する期間を短くするために有利である。
【0018】
除外部124は、複数のモデルから、監視対象150の異常を検出するために使用しないモデルを除外するように構成されうる。除外部124は、例えば、モデル生成部122によるモデルの生成時からの経過時間に基づいて、除外すべきモデルを決定しうる。例えば、除外部124は、モデル生成部122によるモデルの生成時からの経過時間が所定時間を超えたモデルを、除外すべきモデルとして決定しうる。除外部124がない場合、モデルの個数は増大し続ける。また、除外部124がない場合、古いモデルが異常の検出に影響を与えるので、監視対象150および/またはセンサの経時変化に対する敏感性が低下しうる。
【0019】
検出部123は、複数のセンサの各々について、センサの出力値とモデルによって与えられる出力値との差分を計算しうる。この場合において、検出部123は、該差分を処理して得られる値が所定値を超える場合に、監視対象150における異常の発生を検出しうる。
【0020】
除外部124は、例えば、異常の発生が検出された出力値を発生した頻度が所定頻度を超えるモデルを、除外すべきモデルとして決定することができる。除外部124は、例えば、複数の期間のうち時間経過順に並んだ少なくとも3つの期間にそれぞれ対応する少なくとも3つのモデルを使って異常の発生が検出された頻度に基づいて、該少なくとも3つのモデルから、除外すべきモデルを決定してもよい。例えば、除外部124は、少なくとも3つのモデルを使って異常の発生が検出された頻度に基づいて閾値を決定することができる。そして、除外部124は、該少なくとも3つのモデルを使って異常の発生が検出された頻度のうち該閾値を超える頻度を発生したモデルを、除外すべきモデルとして決定しうる。
【0021】
除外部124は、既に存在するモデルのそれぞれを使って計算される異常値に基づいて決定される閾値に基づいて、以後にモデル生成部122によって生成されるモデルを除外すべきかどうかを決定してもよい。
【0022】
検出部123は、複数のモデルのそれぞれを使って計算される複数の差分(センサの出力値とモデルが発生した出力値との差分)に対して重み付けを行いながら評価値を計算し、該評価値に基づいて監視対象150の状態を検出してもよい。検出部123は、モデル生成部122によるモデルの生成時からの経過時間に基づいて重み付けを行ってもよい。検出部123は、該経過時間が長いモデルほど重みを小さくしうる。あるいは、検出部123は、該経過時間が短いモデルほど重みを小さくしうる。
【0023】
報知部125は、検出部123が監視対象150の異常を検出したことを報知するように構成されうる。このような報知は、監視対象150の迅速な保守に有利である。
【0024】
情報処理装置100は、取得部121、モデル生成部122および検出部123にそれぞれ対応する取得工程、モデル生成工程および検出工程を含む方法を実行する装置として理解することができる。該方法は、除外部124に対応する除外方法および/または報知部125に対応する報知工程を更に含んでもよい。
【0025】
図4には、基板処理装置、より具体的には露光装置10として構成された監視対象150が例示的に示されている。露光装置10は、光源を含む光源ユニット1を備えうる。光源は、例えば、高圧水銀ランプまたはエキシマレーザ等でありうる。光源がエキシマレーザの場合は、光源ユニット1は、露光装置10のチャンバの外に配置される場合があるが、該チャンバの内部に配置されてもよい。
【0026】
露光装置10は、照明系2、原版ステージ3、投影光学系5、基板ステージ6を備えうる。照明系2は、光源ユニット1からの光を使って、原版ステージ3によって保持された原版Rを照明しうる。照明系2は、照明された原版Rのパターンを基板Sに投影しうる。基板ステージ6は、基板Sを保持する基板チャック7を有しうる。基板ステージ6は、基板チャック7によって基板Sが保持された状態で移動することによって基板Sを位置決めしうる。露光装置10は、ステップアンドリピート方式で基板Sを露光するように構成されてもよいし、ステップアンドスキャン方式で基板Sを露光するように構成されてもよい。
【0027】
露光装置10には、例えば、複数の基板Sを保持した基板カセット12が提供されうる。露光装置10は、プリアライナ9を備えることができる。露光装置10は、不図示のロボットを備えることができ、該ロボットは、基板カセット12から基板Sを取り出して、プリアライナ9に搬送しうる。プリアライナ9は、基板Sのプリアライメント(方向および位置のアライメント)を実施しうる。プリアライナ9によってプリアライメントされた基板Sは、該ロボットによって基板ステージ6の基板チャック7に搬送されうる。
【0028】
露光装置10には、他の装置が接続されてもよい。他の装置は、塗布現像装置でありうる。塗布現像装置によってレジストが塗布された基板Sが露光装置10に搬入され、露光装置10によって露光された基板Sが塗布現像装置に搬出され、塗布現像装置によって現像されうる。
【0029】
露光装置10は、その動作を制御する制御部11を備えうる。制御部11は、光源ユニット、照明系2、原版ステージ3、投影光学系5、基板ステージ6、プリアライナ9等を制御しうる。制御部11は、情報処理装置100(の通信装置107)と通信しうる。
図4には、示されていないが、露光装置10は、複数のセンサを備えていて、制御部11は、複数のセンサのそれぞれの出力値の変化を示す複数の時系列データを情報処理装置100(の通信装置107)に送信あるいは提供しうる。該複数の時系列データは、他の装置を介して情報処理装置100(の通信装置107)に送信あるいは提供されてもよい。
【0030】
図5には、
図4の露光装置10に組み込まれた温調システム300の構成が例示されている。温調システム300は、監視対象の150の一例である。
図5において、太線の矢印は冷媒の流れを示し、細線の矢印は情報の流れを示している。温調システム300は、例えば、第1ブロック301と、第2ブロック302とを含みうる。第2ブロック302には、複数の温調対象416~419が配置されうる。複数の温調対象416~419は、例えば、光源1、照明
系2、原版ステージ3、投影光学系5、基板ステージ6を含みうる。第1ブロック301は、冷媒を温調して、温調された冷媒を第2ブロック302に供給しうる。第1ブロック301において温調された冷媒は、第2ブロック302において1又は複数のユニットから熱を奪いながら該1又は複数のユニットを温調し、その後、第1ブロック301に戻りうる。
【0031】
第1ブロック301は、例えば、温調ユニット401、温調ユニット402、温度センサ401S、温度センサ402、制御ユニット401Cおよび制御ユニット402Cを含みうる。温調ユニット401は、冷媒の温度を目標温度まで低下させて温調ユニット402に供給しうる。制御ユニット401Cは、温度センサ401Sによって測定された温度に応じて、冷媒の温度が目標温度に一致するように制御量を決定し、該制御量に応じて温調ユニット401を動作させうる。温調ユニット402は、冷媒の温度を第2ブロック302が許容する温度範囲内に調整して第2ブロック302に供給しうる。制御ユニット402Cは、温度センサ402Sによって測定された温度に応じて、冷媒の温度を第2ブロック302が許容する温度範囲内に収まるように制御量を決定し、該制御量に応じて温調ユニット402を動作させうる。
【0032】
第2ブロック302では、温調対象416~419のそれぞれが目標温度範囲内に収まるように温調ユニット412~415によって冷媒の温度が調整されうる。制御ユニット412Cは、温度センサ412S1および412S2で測定された温度に応じて温調対象416が目標温度範囲内に収まるように制御量を決定し、該制御量に応じて温調ユニット412を動作させうる。制御ユニット413Cは、温度センサ413S1および413S2で測定された温度に応じて温調対象417が目標温度範囲内に収まるように制御量を決定し、該制御量に応じて温調ユニット413を動作させうる。
【0033】
制御ユニット411Cは、温度センサ411Sで測定された温度、および、制御ユニット414C、415Cからの情報に応じて、冷媒の温度が目標温度範囲内に収まるように制御量を決定し、該制御量に応じて温調ユニット411を動作させうる。制御ユニット414Cは、温度センサ414S1および414S2で測定された温度に応じて温調対象418が目標温度範囲内に収まるように制御量を決定し、該制御量に応じて温調ユニット414を動作させうる。制御ユニット415Cは、温度センサ415S1および415S2で測定された温度に応じて温調対象419が目標温度範囲内に収まるように制御量を決定し、該制御量に応じて温調ユニット415を動作させうる。
【0034】
温調ユニット401、402、412~415、熱交換による加熱・冷却ユニットであってもよい。他の観点において、温調ユニット401は、冷却ユニットであり、温調ユニット402、412~415は、加熱ユニットでありうる。冷媒は、液体であってもよいし、気体であってもよい。
【0035】
図5に示された温調システム300では、温調対象の温度が制御され、センサとして温度センサ401S、402S、411S~415S2が設けられている。しかし、温調システム300は、温度以外の情報を測定するセンサ(例えば、流量センサ、圧力センサ、加速度センサ、位置センサ)を含んでもよい。また、露光装置10には、温度以外のパラメータに関して制御対象を制御する制御システムが組み込まれてもよい。
【0036】
ここで、モデル生成部122によって生成されるモデルを例示的に説明する。ここでは、簡単化のために、
図5に例示された温調システムにおいて、時刻tにおける2つの温度センサ(例えば、温度センサ401S、402S)の出力値をa
t、b
tとする。該2つの温度センサの出力値a
t、b
tの関係は、(1)式で与えられるモデル(関数)で定義されうる。
【0037】
bt=f(at)
・・・(1)式
モデルfは、例えば、2つの温度センサによって測定された測定データに基づいて、最小二乗法等によって決定される回帰式でありうる。あるいは、モデルfは、例えば、機械学習を用いて生成される学習モデルであってもよい。例えば、モデルfは、ニューラルネットワークを含むモデルでありうる。ニューラルネットワークとは、入力層、中間層、出力層といった多層のネットワーク構造を有するモデルである。入力データとしてのatと教師データとしてのbtとの関係を示す学習データを用いて、誤差逆伝播法等のアルゴリズムに従ってニューラルネットワーク内部の結合重み付け係数等が最適化されることにより、学習モデルを取得することができる。誤差逆伝播法は、出力データと教師データとの差が小さくなるように、各ニューラルネットワークのノード間の結合重み付け係数等を調整する手法である。また、モデルfは、ニューラルネットワークを含むモデルではなく、例えば、SVM(サポートベクタマシーン)を含む学習モデルであってもよい。
【0038】
センサSiの出力値(以下、予測出力値)xijを与えるモデルfij(xj)は、センサSjの出力値(以下、測定出力値)xjの関数として、(2)式で与えられうる。ここで、iは1~Nの整数であり、Nはセンサの個数である。jは、1~Nのうちi以外の整数である。
【0039】
xij=fij(xj) ・・・(2)式
ここで、(2)式は、以下のような数式群を意味しうる。
【0040】
x
12=f
12(x
2)
x
13=f
13(x
3)
x
14=f
14(x
4)
・
・
・
x
1N=f
1N(x
N)
x
21=f
21(x
1)
x
23=f
23(x
3)
x
24=f
24(x
4)
・
・
・
図6には、モデルの生成に関する情報処理装置100の動作が例示的に示されている。ステップS301では、情報処理装置100は、取得部121により、複数のセンサを有する監視対象150から該複数のセンサのそれぞれの出力値を示す複数のデータを取得する。ステップS302では、情報処理装置100は、ステップS301で取得された複数のデータを補助記憶装置104の保存領域に保存する。ここで、ステップS301およびS302で構成される処理単位が複数回にわたって実行されることによって、補助記憶装置104の保存領域には、複数のセンサの出力値の変化を示す複数の時系列データが保存されることになる。各時系列データは、1つのセンサの出力値を時系列に並べたデータで構成される。ステップS303では、情報処理装置100は、補助記憶装置104の保存領域に保存された時系列データがモデルの作成のために必要な量に達したかどうかを判断する。そして、情報処理装置100は、補助記憶装置104の保存領域に保存された時系列データがモデルの作成のために必要な量に達した場合にはステップS304に進み、そうでなければステップS301に戻る。
【0041】
ステップS304では、情報処理装置100は、モデル生成部122により、補助記憶装置104の保存領域に保存された時系列データに基づいて複数のモデルfij(xj)を生成する。ここで、モデル生成部122は、複数の時系列データにおける複数の期間の各々から該複数の時系列データの相互の関係を示す1つのモデルを生成することにより、該複数の期間にそれぞれ対応する複数のモデルfij(xj)を生成する。ステップS305では、情報処理装置100は、ステップS304においてモデル生成部122によって生成された複数のモデルfij(xj)を補助記憶装置104の保存領域に保存する。
【0042】
図7(a)には、温度センサ401Sの出力値の変化が例示されている。
図7(b)には、温度センサ402Sの出力値の変化が例示されている。
図7(a)、(b)において、横軸は時刻を示し、縦軸は温度センサ401S、402Sの出力値(温度を示す値)を示している。期間P
1~P
5は、複数のモデルを生成するための期間である。1つの期間P
1は、1つのモデルを生成するための期間であり、1つの期間P
2は、1つのモデルを生成するための期間であり、1つの期間P
3は、1つのモデルを生成するための期間である。また、1つの期間P
4は、1つのモデルを生成するための期間であり、1つの期間P
5は、1つのモデルを生成するための期間である。
【0043】
一例において、1つのモデルを生成するために必要な出力値(データ)は、5秒間隔で測定された5日分の出力値である。この例では、期間P1~P5は、それぞれ5日間の期間である。期間P1~P5は、互いに部分的に重複する期間を有するように決定されてもよい。例えば、各モデルを生成するために必要な出力値(データ)が5日分の出力値であるとすれば、期間P1~P5を互いに重複させなければ25日分の計測データが必要になるが、1日分の出力値を互いに重複させれば、21日分の出力値で足りる。
【0044】
図8には、モデルを使った予測に関する情報処理装置100の動作が例示的に示されている。
図8に示す処理は、検出部123によって実行されうる。ステップS401では、情報処理装置100は、
図7に例示される処理によって生成されたモデルが1個以上存在するかどうかを判断し、該モデルが1個以上存在する場合はステップS402に進み、そうでなければ
図8に示す処理を終了する。
【0045】
ステップS402では、取得部121によって新たに取得されたセンサの出力値に適用していないモデル(未適用のモデル)が存在するかどうかを判断し、該モデルが存在する場合はステップS403に進み、そうでなければ
図8に示す処理を終了する。ここで、取得部121によって新たに取得されたセンサの出力値は、モデルの生成後に取得部121によって取得されたセンサの出力値である。また、取得部121によって新たに取得されたセンサの出力値に適用していないモデルが存在しないことは、該出力値に対して適用可能な全てのモデルが既に該出力値に対して適用されたことを意味する。
【0046】
ステップS404では、情報処理装置100は、補助記憶装置104の保存領域から未適用のモデルを読み出して、その未適用のモデルが有効であるかどうかを判断する。そして、情報処理装置100は、その未適用のモデルが有効である場合にはステップS405に進み、そうでなければ
図8に示す処理を終了する。この判断は、例えば、モデルが生成されてからの経過時間に基づいて行うことができ、例えば、モデルが生成されてからの経過時間が所定時間を超えた場合に該モデルは有効でないと判断することができる。
【0047】
ステップS405では、情報処理装置100は、ステップS403で読み出したモデルfij(xj)を使って予測出力値xijを計算する。次いで、ステップS406では、情報処理装置100は、ステップS405で計算した予測出力値xijが有効であるかどうかを判断する。具体的には、情報処理装置100は、例えば、予測出力値xijと測定出力値xiとの差分または比率が閾値を超えている場合に予測出力値xijが有効ではないと判断することができる。ステップS405で計算した予測出力値xijが有効ではない場合、情報処理装置100は、ステップS402に戻る。一方、ステップS405で計算した予測出力値xijが有効である場合は、情報処理装置100は、ステップS405で計算した予測出力値xijを補助記憶装置104の保存領域に保存する。
【0048】
図9には、モデルを使って異常の発生を検出する処理に関する情報処理装置100の動作が例示的に示されている。
図9に示す処理は、検出部123によって実行される。ステップS501では、情報処理装置100は、補助記憶装置104の保存領域に保存された予測出力値が1個以上存在するかどうかを判断し、該予測出力値が1個以上存在する場合はステップS502に進み、そうでなければ
図9に示す処理を終了する。
【0049】
ステップS502では、情報処理装置100は、補助記憶装置104の保存領域に保存された予測出力値を読み出す。ステップS503では、情報処理装置100は、ステップS502で読み出した予測出力値に基づいて評価値を計算する。評価値は、例えば、複数の予測出力値xijの各々とそれに対応する測定出力値xiとの差分を処理した値、例えば、該差分を合計した合計値を複数のモデルの数で正規化した値でありうる。ステップS504では、情報処理装置100は、ステップS503で計算した評価値を補助記憶装置104の保存領域に保存する。ステップS504では、情報処理装置100は、ステップS503で計算した評価値に基づいて、異常の発生を検出する。情報処理装置100は、例えば、評価値が所定値を超えている場合に、異常の発生を検出することができる。ステップS505では、情報処理装置100は、ステップS504の検出結果を補助記憶装置104の保存領域に保存する。
【0050】
図10には、本実施形態によって計算される評価値の変化が例示されている。
図11には、比較例における評価値の変化が例示されている。
図10および
図11において、横軸は時刻を示し、縦軸は評価値を示している。
図10に示された本実施形態では、複数の時系列データにおける複数の期間の各々から、該複数の時系列データの相互の関係を示す1つのモデルを生成することにより、該複数の期間に対応する複数のモデルを生成され該複数のモデルを使って評価値が計算されている。このような複数のモデルを用いた評価は、個々のモデルが適切であるかどうかに関する不確かさを低減するように機能しうる。一方、
図11に示された比較では、複数の時系列データにおける1つの期間から、該複数の時系列データの相互の関係を示す1つのモデルを生成し、そのモデルを使って評価値が計算されている。
【0051】
図10に示された本実施形態では、時刻t1において異常の発生が検出されているが、
図11に示された比較例では、時刻t1の後の時刻t2にならなければ異常が検出されない。このように、本実施形態によれば、異常の発生を早期に検出することができる。
【0052】
また、比較例においては、1つの期間から生成されたモデルが何らかの理由によって不適切である場合、実際には異常が発生していても、該不適切なモデルの出力値とセンサの出力値とが近似していれば、異常の発生を検出することができない。しかし、モデルが適切であるかどうかを検証することは容易ではない。また、異常が検出された場合においても、そのモデルが適切である保証はない。
【0053】
実施形態の物品製造方法は、複数のセンサを有する露光装置を監視対象としながら該露光装置を使って基板を露光する露光工程と、該露光工程で露光された基板を現像する現像工程と、該現像工程で現像された基板を処理して物品を得る処理工程と、を含みうる。該物品製造方法は、更に、上記の取得工程および上記のモデル生成工程を含みうる。該物品製造方法は、複数のモデルと複数の時系列データとに基づいて該監視対象としての該露光装置の状態を検出する検出工程と、該検出工程で検出された該露光装置の状態に基づいて該露光装置を保守する保守工程と、を含みうる。
【0054】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。