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特許7482664複数のエネルギービームのためのゾーン間のシームを最適化する三次元プリントシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】複数のエネルギービームのためのゾーン間のシームを最適化する三次元プリントシステム
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20240507BHJP
   B29C 64/153 20170101ALI20240507BHJP
   B29C 64/268 20170101ALI20240507BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240507BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240507BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240507BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/153
B29C64/268
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 11
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020055950
(22)【出願日】2020-03-26
(65)【公開番号】P2020172104
(43)【公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】19167790
(32)【優先日】2019-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520106345
【氏名又は名称】レイヤーワイズ エヌヴェ
【氏名又は名称原語表記】LayerWise NV
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(72)【発明者】
【氏名】ヤン プラス
(72)【発明者】
【氏名】ナチカタ レイ
【審査官】神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-526098(JP,A)
【文献】特表2016-527101(JP,A)
【文献】特表2016-527386(JP,A)
【文献】特表2017-503683(JP,A)
【文献】特表2019-533594(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108016034(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 10/00-12/90
B33Y
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元物体(4)を作製するシステムであって、
個々の粉末層(15)を連続的に分配する粉末ディスペンサ(14);
第1のビームおよび第2のビームを含む複数のエネルギービームを生成および走査し、前記粉末層(15)を選択的に溶融する溶融装置(16);および
コントローラ(20)
を備え、前記コントローラ(20)は、
前記粉末ディスペンサ(14)および前記溶融装置(16)を作動し、rの選択的に溶融された粉末層の配列を形成するよう構成され、rは少なくとも3であり、前記層はそれぞれ複合ハッチ領域を含み、該複合ハッチ領域は、第1のエネルギービームによって画定される第1のハッチ領域(26)および第2のエネルギービームによって画定される第2のハッチ領域(28)を含み、前記第1および第2のハッチ領域は、側方オーバーラップ距離(x)だけシーム(30)に沿ってオーバーラップし、前記シーム(30)の横方向位置は層ごとに変化し、r層の前記配列について、前記シーム(30)は、vの横幅を有するゾーンの上で横方向位置に変化し、u未満のシーム(30)間の横距離を有する2つの層は前記配列(38)中に存在せず、uは、前記側方オーバーラップ距離(x)の2倍に少なくとも等しく、
前記側方オーバーラップ距離(x)は、前記シーム(30)に対して横方向の横軸に沿った前記第2のビームに関する前記第1のビームの位置合わせ不確実性に基づき、該位置合わせ不確実性は、前記2つのビーム間の横方向位置合わせの2以上の標準偏差によって画定され、前記側方オーバーラップ距離(x)は、記位置合わせ不確実性に少なくとも等しいことを特徴とする、
システム。
【請求項2】
前記複数のビームが第3のビーム(18)を含み、前記コントローラ(20)が、前記第3のビーム(18)を作動して、前記複合ハッチ領域の周りの輪郭の少なくとも一部を画定するように構成されることを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記複数のビームが、外側輪郭(46)および内側輪郭(42、44)を含む前記複合ハッチ領域の周りの複数の輪郭を画定し、前記外側輪郭(46)は前記第3のビーム(18)により形成され、前記内側輪郭(42、44)は前記第1のビームおよび前記第2のビームの組合せにより形成されることを特徴とする、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記rが少なくとも5であることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
前記粉末ディスペンサ(14)が金属粉末を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
三次元物体(4)を作製する方法であって、
粉末ディスペンサ(14)を作動して第1の粉末層を分配する工程;
第1のビームおよび第2のビームを含む複数のエネルギービームを同時に作動して、前記粉末層を選択的に溶融する工程であって、
前記第1のビームを作動して第1のハッチ領域(26)を溶融する工程;および
前記第2のビームを作動して第2のハッチ領域(28)を溶融する工程であって、前記第1および第2のハッチ領域が側方オーバーラップ距離(X)だけ第1のシーム(30)に沿ってオーバーラップする、工程
を含む、工程;
前記粉末ディスペンサ(14)を作動して、前記第1の粉末層の上に第2の粉末層を分配する工程;
前記複数のエネルギービームを同時に作動して、前記第2の粉末層を選択的に溶融する工程であって、
前記第1のビームを作動して第3のハッチ領域(32)を溶融する工程;および
前記第2のビームを作動して第4のハッチ領域(34)を溶融する工程であって、前記第3および第4のハッチ領域が第2のシーム(36)に沿ってオーバーラップし、前記第2のシーム(36)が少なくともuの値だけ前記第1のシームから平均横方向オフセットを有する、工程
を含む、工程;
前記粉末ディスペンサ(14)を作動して、前記第2の粉末層の上に第3の粉末層を分配する工程;
前記複数のエネルギービームを同時に作動して、前記第3の粉末層を選択的に溶融する工程であって、
前記第1のビームを作動して第5のハッチ領域を溶融する工程;および
前記第2のビームを作動して第6のハッチ領域を溶融する工程であって、前記第5および第6のハッチ領域が第3のシームに沿ってオーバーラップし、前記第3のシームが少なくともuの値だけ前記第1のシームおよび前記第2のシームから平均横方向オフセットを有し、uが前記側方オーバーラップ距離(x)の2倍に少なくとも等しく、前記側方オーバーラップ距離(x)が、前記第2のビームに関する前記第1のビームの位置合わせ不確実性に基づき、該位置合わせ不確実性は、前記2つのビーム間の横方向位置合わせの2以上の標準偏差によって画定され、前記側方オーバーラップ距離(x)が、記位置合わせ不確実性に少なくとも等しいことを特徴とする、工程
を含む、方法。
【請求項7】
第3のビームを作動して、前記第1および第2のハッチ領域の周りに輪郭を溶融する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1および第2のビームを作動して、前記第1および第2のハッチ領域の周りに少なくとも1つの内側輪郭(42、44)を画定する工程、および、前記第3のビームを作動して、前記内側輪郭(42、44)の周りに外側輪郭(46)を画定する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
三次元物体(4)を作製するコンピュータ可読の記憶装置であって、
該コンピュータ可読の記憶装置が、ソフトウェア命令を記憶する非一過性の記憶媒体を含み、プロセッサによる実行に応じて、前記ソフトウェア命令がシステムに、
粉末ディスペンサ(14)を作動して第1の粉末層を分配する工程;
第1のビームおよび第2のビームを含む複数のエネルギービームを作動して、前記粉末層を選択的に溶融する工程であって、
前記第1のビームを作動して第1のハッチ領域(26)を溶融する工程;および
前記第2のビームを作動して第2のハッチ領域(28)を溶融する工程であって、前記第1および第2のハッチ領域が側方オーバーラップ距離(X)だけ第1のシーム(30)に沿ってオーバーラップする、工程
を含む、工程;
前記粉末ディスペンサ(14)を作動して、前記第1の粉末層の上に第2の粉末層を分配する工程;
前記複数のエネルギービームを同時に作動して、前記第2の粉末層を選択的に溶融する工程であって、
前記第1のビームを作動して第3のハッチ領域(32)を溶融する工程;および
前記第2のビームを作動して第4のハッチ領域(34)を溶融する工程であって、前記第3および第4のハッチ領域が第2のシーム(36)に沿ってオーバーラップし、前記第2のシーム(36)が少なくともuの値だけ前記第1のシーム(30)から平均横方向オフセットを有する、工程
を含む、工程;
前記粉末ディスペンサを作動して、前記第2の粉末層の上に第3の粉末層を分配する工程;
前記複数のエネルギービームを同時に作動して、前記第3の粉末層を選択的に溶融する工程であって、
前記第1のビームを作動して第5のハッチ領域を溶融する工程;および
前記第2のビームを作動して第6のハッチ領域を溶融する工程であって、前記第5および第6のハッチ領域が第3のシームに沿ってオーバーラップし、前記第3のシームが少なくともuの値だけ前記第1のシームおよび前記第2のシームから平均横方向オフセットを有し、uが前記側方オーバーラップ距離(x)の2倍に少なくとも等しく、前記側方オーバーラップ距離(x)が、前記第2のビームに関する前記第1のビームの位置合わせ不確実性に基づき、該位置合わせ不確実性は、前記2つのビーム間の横方向位置合わせの2以上の標準偏差によって画定され、前記側方オーバーラップ距離(x)が、記位置合わせ不確実性に少なくとも等しいことを特徴とする、工程
を実行させる、コンピュータ可読の記憶装置。
【請求項10】
プロセッサによる実行に応じて、前記ソフトウェア命令がシステムに、第3のビームを作動させ、前記第1および第2のハッチ領域の周りに輪郭を溶融することを特徴とする、請求項9に記載のコンピュータ可読の記憶装置。
【請求項11】
プロセッサによる実行に応じて、前記ソフトウェア命令がシステムに、第1および第2のビームを作動させて前記第1および第2のハッチ領域の周りに少なくとも1つの内側輪郭(42、44)を画定し、前記第3のビームを作動させて前記内側輪郭(42、44)の周りに外側輪郭(46)を画定することを特徴とする、請求項10に記載のコンピュータ可読の記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、粉末材料を用いて三次元(3D)物体を作製する装置および方法に関する。より詳細には、本開示は、複数のエネルギービームが用いられる場合に物体の内部構造強度を改良する製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元(3D)プリンタシステムは、試作および製造の目的で使用が急速に増加している。三次元プリンタの1つの種類は、層ごとの(layer-by-layer)処理を用いて、粉末材料から製造対象の三次元物体を形成する。粉末材料の各層は、レーザ、電子、または粒子ビームのようなエネルギービームを用いて選択的に溶融される。より高い生産性のプリンタは、複数のエネルギービームを利用しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
複数のエネルギービームを用いる1つの課題は、1つのエネルギービームから別のエネルギービームへの移行である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の第1の態様において、三次元物体を作製するシステムは、粉末ディスペンサおよび溶融装置を備える。溶融装置は、第1のビームおよび第2のビームを含む構築平面に亘って複数のビームを生成および走査するよう構成される。コントローラは、粉末ディスペンサおよび溶融装置を作動し、rの選択的に溶融された粉末層の配列を形成するよう構成され、rは少なくとも3である。層はそれぞれ、複合ハッチ領域を含み、複合ハッチ領域は、第1のエネルギービームによって画定される第1のハッチ領域および第2のエネルギービームによって画定される第2のハッチ領域を含む。第1および第2のハッチ領域は、側方オーバーラップ距離(x)だけシームに沿ってオーバーラップする。シームの横方向位置は、層ごとに変化する。r層の配列について、シームは、vの横幅を有するゾーンの上で横方向位置に変化し、u未満のシーム間の横距離を有する2つの層は配列中に存在しない。距離uは、側方オーバーラップ距離(x)の2倍に少なくとも等しい。距離uは、側方オーバーラップ距離(x)の3倍に少なくとも等しくてもよい。距離vは、uの少なくとも2倍に等しい。
【0005】
第1の実装形態において、複数のビームは第3のビームを含む。コントローラは、第3のビームを作動して、複合ハッチ領域の周りの輪郭の少なくとも一部を画定するように構成される。
【0006】
別の実装形態において、複数のビームは第3のビームを含む。複数のビームは、外側輪郭および内側輪郭を含む複合ハッチ領域の周りの複数の輪郭を画定する。外側輪郭は第3のビームにより形成され、内側輪郭は第1のビームおよび第2のビームの組合せにより形成される。外側輪郭は複数のオフセット輪郭を含んでもよい。内側輪郭は複数のオフセット輪郭を含んでもよい。
【0007】
さらに別の実装形態において、側方オーバーラップ距離(x)は、シームに対して横方向の横軸に沿った第2のビームに関する第1のビームの位置合わせ不確実性に基づく。側方オーバーラップ距離(x)は、位置合わせ不確実性に少なくとも等しい。側方オーバーラップ距離(x)は、位置合わせ不確実性の2倍に少なくとも等しい、位置合わせ不確実性の3倍に少なくとも等しい、または位置合わせ不確実性の最大4倍に等しい。
【0008】
さらなる実装形態において、rは、少なくとも4、少なくとも5、または5よりも大きい。横方向シーム位置は、層ごとに無作為に変化してもよい。
【0009】
さらなる実装形態において、粉末は金属粉末である。層は、任意の実用的な厚さでよいが、通常の層厚は約200マイクロメートル未満または約150マイクロメートル未満である。より詳細には、層厚は10~100マイクロメートルの範囲内でもよい。さらに詳細には、層厚は20~50マイクロメートルの範囲内でもよい。金属粉末は、チタンまたは合金のような純粋な金属でもよい。合金は、アルミニウム、ニッケル、チタン、コバルト、鉄、銅、および他の金属をベースとしてもよい。金属粉末の一部は粉末混合物でもよい。
【0010】
別の実施形態において、vはuの少なくとも3倍である。他の実施形態において、vはuの少なくとも4倍、またはuの少なくとも5倍である。
【0011】
本発明の第2の態様において、三次元物体を作製する方法は、以下の工程を含む:(A)粉末ディスペンサを作動して第1の粉末層を分配する工程;(B)第1のビームおよび第2のビームを含む複数のエネルギービームを同時に作動して、粉末層を選択的に溶融する工程であって、(B1)第1のビームを作動して第1のハッチ領域を溶融する工程および(B2)第2のビームを作動して第2のハッチ領域を溶融する工程、を含み、第1および第2のハッチ領域が側方オーバーラップ距離(X)だけ第1のシームに沿ってオーバーラップする、工程;(C)粉末ディスペンサを作動して、第1の粉末層の上に第2の粉末層を分配する工程;(D)複数のエネルギービームを同時に作動して、第2の粉末層を選択的に溶融する工程であって、(D1)第1のビームを作動して第3のハッチ領域を溶融する工程および(D2)第2のビームを作動して第4のハッチ領域を溶融する工程、を含み、第3および第4のハッチ領域が第2のシームに沿ってオーバーラップし、第2のシームが少なくともuの値だけ第1のシームから平均横方向オフセットを有する、工程;(E)粉末ディスペンサを作動して、第2の粉末層の上に第3の粉末層を分配する工程;(F)複数のエネルギービームを同時に作動して、第3の粉末層を選択的に溶融する工程であって、(F1)第1のビームを作動して第5のハッチ領域を溶融し、第2のビームを作動して第6のハッチ領域を溶融する工程を含み、第5および第6のハッチ領域が第3のシームに沿ってオーバーラップし、第3のシームが少なくともuの値だけ第1のシームおよび第2のシームから平均横方向オフセットを有し、uが側方オーバーラップ距離(x)の2倍に少なくとも等しい、工程。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】三次元物体を作製するための三次元プリントシステムの概略図
図2】選択的に溶融された単一粉末層を示す略図
図3A】粉末ディスペンサにより分配される第1の粉末層を示す図
図3B】2つの異なるエネルギービームにより選択的に溶融された第1の粉末層を示す図
図3C】選択的に溶融された第1の層の上に分配された第2の粉末層を示す図
図3D】2つの異なるエネルギービームにより選択的に溶融された2つの粉末層を示す図
図4】選択的に溶融された連続する粉末層を示し、層が、第1の領域を溶融する第1のエネルギービーム、第2の領域を溶融する第2のエネルギービーム、および第1および第2の領域がそれに沿ってオーバーラップするシームを用いて個々に溶融され、シームは、最小オフセット距離uおよび横方向スパンvだけ層ごとに横方向にオフセットし、図示される実施形態においては連続する5層が存在する、図
図5】選択的に溶融された連続する粉末層を示し、層が、第1の領域を溶融する第1のエネルギービーム、第2の領域を溶融する第2のエネルギービーム、および第1および第2の領域がそれに沿ってオーバーラップするシームを用いて個々に溶融され、シームは、最小オフセット距離uおよび横方向スパンvだけ層ごとに横方向にオフセットし、図示される実施形態においては2つのそれぞれ連続する5層が存在する、図
図6】連続する5つの溶融層の横方向オーバーレイ表示を示す略図
図7】内側輪郭を形成するために2つの異なるエネルギービームが用いられる、選択的に溶融された粉末層の略図
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、三次元物体4を作製するための三次元プリントシステムの概略図である。システム2の説明において、互いに直交する軸X、Y、およびZを用いてもよい。軸XおよびYは横軸であり、概して水平方向である。さらに、互いに直交する横軸SおよびTを用いてもよい。軸Sは、シームのような境界に沿って変動する方向を説明するために使用される。軸Tは、Sを横切る。軸Zは垂直軸であり、概して重力参照(gravitational reference)と位置合わせされる。「概して」によって、量、寸法の比較、または方向の比較のような測定が、設計によるものでありかつ製作公差内であるが、したがって正確ではないかもしれないことが意味される。
【0014】
システム2は、電動プラットフォーム8を有する構築モジュール6を備える。電動プラットフォーム8は、支持表面10を有し、その上に三次元物体4が形成される。電動プラットフォーム8は、粉末ディスペンサ14が粉末層15を上面12上に分配させるのに最適な高さで、上面12(物体4または表面10のいずれかの上面)を垂直方向に配置するように構成される。例示的な実施形態において、電動プラットフォーム8は、粉末層15が分配される前または後に降下される。
【0015】
例示的な実施形態において、ディスペンサ14は、電動プラットフォーム8条に金属粉末層を分配する。層は、任意の実用的な厚さでよいが、通常の層厚は、約200マイクロメートル未満または約150マイクロメートル未満である。より詳細には、層厚は10~100マイクロメートルの範囲内でもよい。さらに詳細には、層厚は20~50マイクロメートルの範囲内でもよい。金属粉末は、チタンまたは合金のような純粋な金属でもよい。合金は、アルミニウム、ニッケル、チタン、コバルト、鉄、銅、および他の金属をベースとしてもよい。金属粉末の一部は、2つ以上の純粋な金属、2つ以上の合金、または合金および純粋な金属の混合物の粉末混合物でもよい。さらに別の粉末には、セラミックのような他の材料が含まれてもよい。
【0016】
溶融装置16は、複数のエネルギービーム18を、分配された粉末15の上面12の上に形成および走査し、粉末15を選択的に溶融するように形成される。エネルギービーム18は、高出力光ビーム、粒子ビーム、または電子ビームでもよい。金属粉末の溶融のためには、レーザは通常、100ワット超の出力レベルを有するビームを出力する。一部のレーザは、500ワット、1000ワット、または1キロワット超を出力しうる。溶融装置16はレーザ、形成光学系および走査光学系を備え、レーザビーム18を表面12上に形成および走査するしうる。
【0017】
ある実施形態において、複数のエネルギービーム18は、少なくとも第1のビームおよび第2のビームを含む。複数のエネルギービームはさらに、第3のビーム、または任意の数のビームを含んでもよい。複数のエネルギービーム18はそれぞれ、独立しておよび同時に制御および走査されてもよい。溶融装置16は、分配された粉末15の上面12に概して近接する横方向に伸長する「構築平面」19の上にエネルギービームを走査するよう構成される。構築平面19は、横方向の範囲を画定し、その上で複数のエネルギービーム18が処理または動作しうる。好ましい実施形態において、少なくとも1つのエネルギービーム18が構築平面19全体を処理しうる。いくつかの実施形態において、2つ以上のエネルギービーム18がそれぞれ構築平面19全体を処理してもよい。
【0018】
複数のエネルギービームは、横方向位置合わせ不確実性を有する。これは、2つのビームについて画定しうる。2つのビーム(重心により画定される)を用いて構築平面上の同じ位置を処理しようとする場合、1つのビームの他に対する横方向位置合わせ不確実性が存在する。この不確実性は、他の機械公差と共に操作メカニズムの動きの可変性によって変化しうる。位置合わせ不確実性は、標準偏差で定量化できる。横方向位置合わせ誤差は、2以上の標準偏差と等しいとして定義されうる。1つの実装形態において、位置合わせ不確実性は、3標準偏差と等しいとして定義されうる。より堅実な実装形態において、位置合わせ誤差は、4標準偏差と等しいとして定義されうる。
【0019】
電動プラットフォーム8、粉末ディスペンサ14、および溶融装置16は全て、コントローラ20の制御下である。コントローラ20は、コンピュータ可読の記憶装置に接続されるプロセッサを含む。コンピュータ可読の記憶装置は、ソフトウェア命令を記憶する非一過性または非揮発性記憶媒体を含む。プロセッサにより実行される際に、ソフトウェア命令は、電動プラットフォーム8、粉末ディスペンサ14、および溶融装置16を含むシステム2のさまざまの部分を制御する。ソフトウェア命令は、コンピュータ可読のコード部分とも称される。
【0020】
コントローラ20は、統合モジュールでもよく、互いに電気的にまたは無線で接続される複数のコンピュータを含んでもよい。特定の実施形態において、コントローラ20は、システム2の他の部分、ホストコンピュータ、および遠隔サーバと物理的に統合されたローカルコントローラを含む。したがって、コントローラ20が複数コンピュータ間に分配される場合、コントローラ20の動作中にアクセスされ利用されるプロセッサおよび情報記憶装置が分配されうる。
【0021】
コントローラ20は概して、以下の動作を実行するように構成される:(1)構築平面19に近接する上面12を有する電動サポートを配位置する、(2)ディスペンサ14を作動して、粉末層を分配する、(3)複数のレーザ18を作動して、分配された粉末層の部分を選択的に溶融する、および(4)(1)-(3)を繰り返し、三次元物体4の作製を完了する。
【0022】
図2は、選択的に溶融された単一の粉末層15の実施形態を図示する。選択的に溶融された領域は、輪郭24によって囲まれた複合ハッチパターン22を含む。複合ハッチパターン22は、シーム30によって連結される第1のハッチパターン26および第2のハッチパターン28を含む。第1のハッチパターン26および第2のハッチパターン28は個々に、第1および第2のレーザ18によってそれぞれ形成される。第1のハッチパターン26および第2のハッチパターン28は、シーム30において本質的に連続する。ハッチパターン26および28は、シーム30を横切る方向で第1および第2のレーザの位置合わせ不確実性に基づきオーバーラップしてもよい。図において、シーム30は軸Sに沿って伸長し、横軸Tはシーム30に垂直である。いくつかの構造について、シーム30は非線形でもよい。次いで、方向Sはシーム30に対して接線方向として画定され、TはSに垂直である。
【0023】
典型的な実施形態において、第1および第2のレーザは、横軸Tに沿って互いに対して位置合わせ不確実性を有する。第1のハッチパターン26および第2のハッチパターン28は、側方オーバーラップ距離(x)だけ横軸Tに沿ってオーバーラップする。側方オーバーラップ距離(x)は、位置合わせ不確実性に少なくとも等しい。好ましくは、側方オーバーラップ距離(x)は、位置合わせ不確実性の少なくとも2倍、位置合わせ不確実性の少なくとも3倍、または位置合わせ不確実性の最大4倍である。
【0024】
図3A-Dは、層ごとに変化する横位置を有するシーム30を有する粉末層の堆積および溶融シーケンスを示す図面である。電動プラットフォーム8、粉末ディスペンサ14、および溶融装置16は、コントローラ20によって作動されて、これらの工程を実行する。
【0025】
図3Aによれば、ディスペンサ14は、表面10(または12)上に第1の粉末層15を堆積する。図3Bによれば、第1のハッチパターン26および第2のハッチパターン28は、第1および第2のエネルギービーム18によってそれぞれ溶融される。第1のハッチパターン26および第2のハッチパターン28は、側方オーバーラップ距離(x)だけ第1のシーム30に沿ってオーバーラップすることが理解されるべきである。Tに沿った側方オーバーラップ距離(x)は、図3Bにおいてシーム30における垂直線として示される。
【0026】
図3Cによれば、ディスペンサ14は、第1の選択的に溶融された層の上に第2の粉末層15を分配する。図3Dによれば、第3のハッチパターン32および第4のハッチパターン34は、第1および第2のエネルギービーム18によってそれぞれ溶融される。第3のハッチパターン32および第4のハッチパターン34は、側方オーバーラップ距離(x)だけ第2のシーム36に沿ってオーバーラップする。シーム30および36は、最小距離uだけ互いにオフセットされる。
【0027】
粉末の分配および溶融は、図4に示されるように選択的に溶融された層の配列38があるまで、図3A-Dの図と同様の態様で続いてもよい。これは、5つの層の配列である。変数rは、配列中の層の数として定義される。図4について、r=5である。層は、形成の順序でL1~L5と指定される。
【0028】
シーム30は、横軸Tに沿って層ごとに側方位置で変化する。配列38内の任意の2つのシーム30間に最小横方向距離uが存在する。シーム30は、幅vを有する「シームゾーン」40を定義し、これは任意の2つのシーム30間の最大横方向距離である。
【0029】
幅vは、uの少なくとも2倍である。さまざまの実施形態において、vは、uの少なくとも3倍、少なくとも4倍、少なくとも5倍、または5倍超である。
【0030】
図5は、r=5について配列38が二度繰り返されたものを示す。配列38は、任意の数の回数繰り返されてもよい。より一般的に、配列は3以上のr値を有しうる。r=4、r=5、r>5、r>10についての配列が可能である。また、配列38は全く同じである必要はない。例えば、r=10についての配列の上にr=5についての配列があってもよい。いくつかの実施形態において、軸Tに沿ったシーム位置は、配列中の任意の2つの層が最小横方向距離uだけ少なくともオフセットされたシームを有するという限定で、層ごとに無作為に変化しうる。
【0031】
いくつかの実施形態において、シームの方向は、1つの配列38から次の配列へ垂直軸Zの周りに回転されうる。いくつかの実施形態において、この回転によって物体4の強度が増強される。
【0032】
図6は、5つの溶融層(r=5)の配列30の横方向オーバーレイ表示を示す図である。図の上部は、第1のエネルギービーム18によって形成されるハッチ領域26を示す。図の下部は、第2のエネルギービーム18によって形成されるハッチ領域28を示す。ハッチ領域は、層1~5について図の右側で標識されるシーム30によって分離される。したがって、図6図4についての側面図である。
【0033】
典型的な実施形態において、ハッチ領域26および28は、シーム30に亘ってオーバーラップする。オーバーラップは、第2のビーム18に対する第1のビーム18の軸に沿った横方向位置合わせ不確実性に関する。1つの実施形態において、Tに沿ったオーバーラップは、位置合わせ不確実性に少なくとも等しい。位置合わせ不確実性は、2つのビーム間の横方向位置合わせの3標準偏差によって画定される。
【0034】
uの値は、側方オーバーラップ距離(x)の2倍に少なくとも等しい。いくつかの実施形態において、uの値は、xの3倍またはxの3倍超でもよい。
【0035】
図7は、選択的に溶融された粉末層の図である。この実施例において、シーム30の概念は輪郭まで伸長する。図示される実施形態において、第1のエネルギービーム18は、上部ハッチ領域26、および、上部および内側輪郭42を画定する。第2のエネルギービームは、下部ハッチ領域28、および、下部および内側輪郭44を画定する。内側輪郭42および44は、シーム30に沿ってオーバーラップする。いくつかの実施形態において、シーム30は不連続であってもよい-すなわち、内側輪郭42および44およびハッチ領域26および28についてのシーム間に横方向オフセットが存在しうる。
【0036】
外側輪郭46が、内側輪郭42および44を囲む。外側輪郭46は、第3のエネルギービーム18によって形成される。内側および外側輪郭の数は、第1および第2のエネルギービーム間の位置合わせ不確実性に一部基づいて選択できる。
【0037】
上記で説明した具体的な実施形態およびそのアプリケーションは、専ら説明目的のためのものであり、以下の特許請求の範囲により包含される変更形態およびバリエーションを、除外するものではない。
他の実施形態
1. 三次元物体を作製するシステムであって、
個々の粉末層を連続的に分配する粉末ディスペンサ;
第1のビームおよび第2のビームを含む複数のエネルギービームを生成および走査し、前記粉末層を選択的に溶融する溶融装置;および
コントローラ
を備え、前記コントローラは、
前記粉末ディスペンサおよび前記溶融装置を作動し、rの選択的に溶融された粉末層の配列を形成するよう構成され、rは少なくとも3であり、前記層はそれぞれ複合ハッチ領域を含み、該複合ハッチ領域は、第1のエネルギービームによって画定される第1のハッチ領域および第2のエネルギービームによって画定される第2のハッチ領域を含み、前記第1および第2のハッチ領域は、側方オーバーラップ距離(x)だけシームに沿ってオーバーラップし、前記シームの横方向位置は層ごとに変化し、r層の前記配列について、前記シームは、vの横幅を有するゾーンの上で横方向位置に変化し、u未満のシーム間の横距離を有する2つの層は前記配列中に存在せず、uは、前記側方オーバーラップ距離(x)の2倍に少なくとも等しい、
システム。
2. 前記複数のビームが第3のビームを含み、前記コントローラが、前記第3のビームを作動して、前記複合ハッチ領域の周りの輪郭の少なくとも一部を画定するように構成されることを特徴とする、実施形態1のシステム。
3. 前記複数のビームが、外側輪郭および内側輪郭を含む前記複合ハッチ領域の周りの複数の輪郭を画定し、前記外側輪郭は前記第3のビームにより形成され、前記内側輪郭は前記第1のビームおよび前記第2のビームの組合せにより形成されることを特徴とする、実施形態2のシステム。
4. 前記側方オーバーラップ距離(x)は、前記シームに対して横方向の横軸に沿った前記第2のビームに関する前記第1のビームの位置合わせ不確実性に基づき、前記側方オーバーラップ距離(x)は、好ましくは前記位置合わせ不確実性に少なくとも等しいことを特徴とする、実施形態1~3のいずれかのシステム。
5. 前記rが少なくとも5であることを特徴とする、実施形態1~4のいずれかのシステム。
6. 前記粉末ディスペンサが金属粉末を含むことを特徴とする、実施形態1~5のいずれかのシステム。
7. 三次元物体を作製する方法であって、
粉末ディスペンサを作動して第1の粉末層を分配する工程;
第1のビームおよび第2のビームを含む複数のエネルギービームを同時に作動して、前記粉末層を選択的に溶融する工程であって、
前記第1のビームを作動して第1のハッチ領域を溶融する工程;および
前記第2のビームを作動して第2のハッチ領域を溶融する工程であって、前記第1および第2のハッチ領域が側方オーバーラップ距離(X)だけ第1のシームに沿ってオーバーラップする、工程
を含む、工程;
前記粉末ディスペンサを作動して、前記第1の粉末層の上に第2の粉末層を分配する工程;
前記複数のエネルギービームを同時に作動して、前記第2の粉末層を選択的に溶融する工程であって、
前記第1のビームを作動して第3のハッチ領域を溶融する工程;および
前記第2のビームを作動して第4のハッチ領域を溶融する工程であって、前記第3および第4のハッチ領域が第2のシームに沿ってオーバーラップし、前記第2のシームが少なくともuの値だけ前記第1のシームから平均横方向オフセットを有する、工程
を含む、工程;
前記粉末ディスペンサを作動して、前記第2の粉末層の上に第3の粉末層を分配する工程;
前記複数のエネルギービームを同時に作動して、前記第3の粉末層を選択的に溶融する工程であって、
前記第1のビームを作動して第5のハッチ領域を溶融する工程;および
前記第2のビームを作動して第6のハッチ領域を溶融する工程であって、前記第5および第6のハッチ領域が第3のシームに沿ってオーバーラップし、前記第3のシームが少なくともuの値だけ前記第1のシームおよび前記第2のシームから平均横方向オフセットを有し、uが前記側方オーバーラップ距離(x)の2倍に少なくとも等しい、
工程
を含む、方法。
8. 第3のビームを作動して、前記第1および第2のハッチ領域の周りに輪郭を溶融する工程をさらに含むことを特徴とする、実施形態7の方法。
9. 前記第1および第2のビームを作動して、前記第1および第2のハッチ領域の周りに少なくとも1つの内側輪郭を画定する工程、および、前記第3のビームを作動して、前記内側輪郭の周りに外側輪郭を画定する工程をさらに含むことを特徴とする、実施形態8の方法。
10. 前記側方オーバーラップ距離(x)が、前記第2のビームに関する前記第1のビームの位置合わせ不確実性に基づき、前記側方オーバーラップ距離(x)が、好ましくは前記位置合わせ不確実性に少なくとも等しいことを特徴とする、実施形態7~9のいずれかの方法。
11. 三次元物体を作製するコンピュータ可読の記憶装置であって、
該コンピュータ可読の記憶装置が、ソフトウェア命令を記憶する非一過性の記憶媒体を含み、プロセッサによる実行に応じて、前記ソフトウェア命令がシステムに、
粉末ディスペンサを作動して第1の粉末層を分配する工程;
第1のビームおよび第2のビームを含む複数のエネルギービームを作動して、前記粉末層を選択的に溶融する工程であって、
前記第1のビームを作動して第1のハッチ領域を溶融する工程;および
前記第2のビームを作動して第2のハッチ領域を溶融する工程であって、前記第1および第2のハッチ領域が側方オーバーラップ距離(X)だけ第1のシームに沿ってオーバーラップする、工程
を含む、工程;
前記粉末ディスペンサを作動して、前記第1の粉末層の上に第2の粉末層を分配する工程;
前記複数のエネルギービームを同時に作動して、前記第2の粉末層を選択的に溶融する工程であって、
前記第1のビームを作動して第3のハッチ領域を溶融する工程;および
前記第2のビームを作動して第4のハッチ領域を溶融する工程であって、前記第3および第4のハッチ領域が第2のシームに沿ってオーバーラップし、前記第2のシームが少なくともuの値だけ前記第1のシームから平均横方向オフセットを有する、工程
を含む、工程;
前記粉末ディスペンサを作動して、前記第2の粉末層の上に第3の粉末層を分配する工程;
前記複数のエネルギービームを同時に作動して、前記第3の粉末層を選択的に溶融する工程であって、
前記第1のビームを作動して第5のハッチ領域を溶融する工程;および
前記第2のビームを作動して第6のハッチ領域を溶融する工程であって、前記第5および第6のハッチ領域が第3のシームに沿ってオーバーラップし、前記第3のシームが少なくともuの値だけ前記第1のシームおよび前記第2のシームから平均横方向オフセットを有し、uが前記側方オーバーラップ距離(x)の2倍に少なくとも等しい、
工程
を実行させる、コンピュータ可読の記憶装置。
12. プロセッサによる実行に応じて、前記ソフトウェア命令がシステムに、第3のビームを作動させ、前記第1および第2のハッチ領域の周りに輪郭を溶融することを特徴とする、実施形態11のコンピュータ可読の記憶装置。
13. プロセッサによる実行に応じて、前記ソフトウェア命令がシステムに、第1および第2のビームを作動させて前記第1および第2のハッチ領域の周りに少なくとも1つの内側輪郭を画定し、前記第3のビームを作動させて前記内側輪郭の周りに外側輪郭を画定することを特徴とする、実施形態12のコンピュータ可読の記憶装置。
14. 前記側方オーバーラップ距離(x)が、前記第2のビームに関する前記第1のビームの位置合わせ不確実性に基づき、前記側方オーバーラップ距離(x)が、好ましくは前記位置合わせ不確実性に少なくとも等しいことを特徴とする、実施形態11~13のいずれかのコンピュータ可読の記憶装置。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7