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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】アーク溶接回路のリアルタイム抵抗監視
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/095 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B23K9/095 510Z
【請求項の数】 30
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020057242
(22)【出願日】2020-03-27
(65)【公開番号】P2020163471
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2023-03-09
(31)【優先権主張番号】62/826,323
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/585,776
(32)【優先日】2019-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510202156
【氏名又は名称】リンカーン グローバル,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル ピー.フレミング
(72)【発明者】
【氏名】ユダ ビー.ヘンリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョナソン シー.ケルム
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ディー.ヒレン
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-187595(JP,A)
【文献】特開2006-026718(JP,A)
【文献】特開平04-309465(JP,A)
【文献】特開2019-025547(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 9/095
B23K 9/073
B23K 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接又は積層造形用電力供給装置であって、
溶接波形を生成するよう構成される出力回路と、
前記出力回路によって生成された溶接電流を測定するための電流センサと、
前記溶接波形の出力電圧を測定するための電圧センサと、
前記出力回路に動作可能に接続されて前記溶接波形を制御し、前記電流センサ及び前記電圧センサに動作可能に接続されて前記溶接電流及び前記出力電圧を監視するコントローラと、を備え、
溶接波形の一部は、第1のレベルから前記第1のレベルとは異なる第2のレベルへの電流の制御された変化を含み、前記コントローラは、前記出力電圧及び前記電流の制御された変化から回路インダクタンスを特定し、更に、前記回路インダクタンスに基づいて、消耗電極の抵抗の変化をリアルタイムで特定するよう構成される、
溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記溶接電流及び前記出力電圧からリアルタイムで回路インピーダンスを特定するよう構成される、請求項1に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項3】
前記電流の制御された変化は、前記溶接波形の電流ランプ部分中に生じる、請求項1に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項4】
前記コントローラは、前記消耗電極の前記抵抗の変化に基づいて短絡事象の間隔を特定するよう構成される、請求項1に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項5】
前記コントローラは、前記消耗電極の前記抵抗の変化に基づいて電極突き出し距離の変化を特定するよう構成される、請求項1に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項6】
更に、
出力スイッチと、
前記出力スイッチと並列に接続される抵抗器と、を備え、
前記溶接波形は、最小電流部分、前記消耗電極と母材との間の短絡事象中のピンチ電流部分、プラズマブーストパルス部分、及び前記プラズマブーストパルス部分からバックグラウンド電流レベルへのテールアウトを含み、
前記コントローラは、前記出力スイッチに動作可能に接続され、前記消耗電極の前記抵抗の変化に基づいて前記出力スイッチを停止させて前記溶接波形の前記最小電流部分を実施するよう構成される、
請求項1に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項7】
前記コントローラは、前記消耗電極の前記抵抗の変化を閾値と比較し、前記消耗電極の前記抵抗の変化が前記閾値を満たすか又はそれを超える場合、前記出力スイッチを停止するよう構成される、請求項6に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項8】
前記コントローラは、前記回路インダクタンスを閾値と比較し、前記回路インダクタンスを前記閾値と比較した結果に基づいて前記出力スイッチの再起動を制御するよう構成される、請求項6に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項9】
前記ピンチ電流部分は、前記コントローラがベースライン回路抵抗を特定する定電流部分を含む、請求項6に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項10】
前記コントローラは、前記回路インダクタンスに基づいて溶接電流ランプ速度を調整するよう構成される、請求項1に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項11】
溶接又は積層造形システムであって、
消耗電極と、
トーチと、
溶着作業中に前記トーチを通して前記消耗電極を前進させるワイヤ送給装置と、
少なくとも1本のケーブルを介して前記ワイヤ送給装置及び前記トーチに動作可能に接続される電力供給装置と、を備え、
前記電力供給装置は、前記トーチに一連の溶接波形を提供して前記消耗電極内に溶接電流を生成するよう構成され、前記一連の溶接波形の個々の溶接波形の一部は、第1のレベルから前記第1のレベルとは異なる第2のレベルへの電流の制御された変化を含み、前記電力供給装置は、前記電流の制御された変化中に行われた電圧及び電流測定に基づいて回路インダクタンスを特定するよう構成され、
前記電力供給装置は、更に、前記回路インダクタンスに基づいてリアルタイムで前記消耗電極の抵抗の変化を特定するよう構成される、
溶接又は積層造形システム。
【請求項12】
前記電力供給装置は、前記溶接電流を測定するための電流センサと、前記電力供給装置の出力電圧を測定するための電圧センサとを含み、前記電力供給装置は、前記溶接電流及び前記出力電圧からリアルタイムで回路インピーダンスを特定するよう構成される、請求項11に記載の溶接又は積層造形システム。
【請求項13】
前記電流の制御された変化は、前記個々の溶接波形の電流ランプ部分中に生じる、請求項11に記載の溶接又は積層造形システム。
【請求項14】
前記電力供給装置は、前記消耗電極の前記抵抗の変化に基づいて短絡事象の間隔を特定するよう構成される、請求項11に記載の溶接又は積層造形システム。
【請求項15】
前記電力供給装置は、前記消耗電極の前記抵抗の変化に基づいて電極突き出し距離の変化を特定するよう構成される、請求項11に記載の溶接又は積層造形システム。
【請求項16】
前記電力供給装置は、
出力スイッチと、
前記出力スイッチと並列に接続される抵抗器と、を備え、
前記個々の溶接波形は、最小電流部分、前記消耗電極と母材との間の短絡事象中のピンチ電流部分、プラズマブーストパルス部分、及び前記プラズマブーストパルス部分からバックグラウンド電流レベルへのテールアウトを含み、前記電力供給装置は、前記消耗電極の抵抗の変化に基づいて前記出力スイッチを停止させるよう構成される、
請求項11に記載の溶接又は積層造形システム。
【請求項17】
前記電力供給装置は、前記消耗電極の前記抵抗の変化を閾値と比較し、前記消耗電極の前記抵抗の変化が前記閾値を満たすか又はそれを超える場合、前記出力スイッチを停止するよう構成される、請求項16に記載の溶接又は積層造形システム。
【請求項18】
前記電力供給装置は、前記回路インダクタンスを閾値と比較し、前記回路インダクタンスを前記閾値と比較した結果に基づいて前記出力スイッチの再起動を制御するよう構成される、請求項16に記載の溶接又は積層造形システム。
【請求項19】
前記ピンチ電流部分は、前記電力供給装置がベースライン回路抵抗を特定する定電流部分を含む、請求項16に記載の溶接又は積層造形システム。
【請求項20】
前記電力供給装置は、前記回路インダクタンスに基づいて溶接電流ランプ速度を調整するよう構成される、請求項11に記載の溶接又は積層造形システム。
【請求項21】
溶接又は積層造形用電力供給装置であって、
溶接波形を生成するよう構成される出力回路と、
前記出力回路によって生成された溶接電流を測定するための電流センサと、
前記溶接波形の出力電圧を測定するための電圧センサと、
前記出力回路に動作可能に接続されて前記溶接波形を制御し、前記電流センサ及び前記電圧センサに動作可能に接続されて前記溶接電流及び前記出力電圧を監視するコントローラと、を備え、
溶接波形の一部は、第1のレベルから前記第1のレベルとは異なる第2のレベルへの電流の制御された変化を含み、前記コントローラは、少なくとも前記電流の制御された変化から溶着作業中にリアルタイムで回路インダクタンスを特定し、更に、前記回路インダクタンスに基づいて、消耗電極の抵抗の変化をリアルタイムで特定するよう構成される、
溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項22】
前記コントローラは、前記溶接電流及び前記出力電圧からリアルタイムで回路インピーダンスを特定するよう構成される、請求項21に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項23】
前記電流の制御された変化は、前記溶接波形の電流ランプ部分中に生じる、請求項21に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項24】
前記コントローラは、前記消耗電極の前記抵抗の変化に基づいて短絡事象の間隔を特定するよう構成される、請求項21に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項25】
前記コントローラは、前記消耗電極の前記抵抗の変化に基づいて電極突き出し距離の変化を特定するよう構成される、請求項21に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項26】
更に、
出力スイッチと、
前記出力スイッチと並列に接続される抵抗器と、を備え、
前記溶接波形は、最小電流部分、前記消耗電極と母材との間の短絡事象中のピンチ電流部分、プラズマブーストパルス部分、及び前記プラズマブーストパルス部分からバックグラウンド電流レベルへのテールアウトを含み、
前記コントローラは、前記出力スイッチに動作可能に接続され、前記消耗電極の前記抵抗の変化に基づいて前記出力スイッチを停止させて前記溶接波形の前記最小電流部分を実施するよう構成される、
請求項21に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項27】
前記コントローラは、前記消耗電極の前記抵抗の変化を閾値と比較し、前記消耗電極の前記抵抗の変化が前記閾値を満たすか又はそれを超える場合、前記出力スイッチを停止するよう構成される、請求項26に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項28】
前記コントローラは、前記回路インダクタンスを閾値と比較し、前記回路インダクタンスを前記閾値と比較した結果に基づいて前記出力スイッチの再起動を制御するよう構成される、請求項26に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項29】
前記ピンチ電流部分は、前記コントローラがベースライン回路抵抗を特定する定電流部分を含む、請求項26に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【請求項30】
前記コントローラは、前記回路インダクタンスに基づいて溶接電流ランプ速度を調整するよう構成される、請求項21に記載の溶接又は積層造形用電力供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2019年3月29日出願の米国仮特許出願第62/826,323号明細書に対する優先権を主張するものであり、その開示を参照して本明細書中に組み込む。
【背景技術】
【0002】
本発明は、金属積層造形等の溶接又は溶接式プロセスにおいて用いられる電気アークを生成するための電力供給装置に関する。
【0003】
溶接用電力供給装置は、極めて高速な出力電流変化を伴う複雑な溶接波形を生成することができる。かかる複雑な溶接波形は、通常、電圧及び/又は電流フィードバック測定に基づいて制御される。フィードバック測定は、溶接用電力供給装置によって、又は溶接される母材に対して局所的であるが溶接用電力供給装置からより遠隔の溶接ワイヤ送給装置によって行うことができる。電力供給装置から延在する長い溶接ケーブルは、溶接回路に大きなインダクタンス、及び従ってインピーダンスを加えることができる。長い溶接ケーブルを用いると、電力供給装置の性能が制限される恐れがあり、正確なフィードバック測定がより困難になる。溶接用電力供給装置は、母材へ延在する専用の感知リード線により遠隔フィードバック測定を行うことができるが、しかし、かかる感知リード線はシステムの複雑さ及びコストを増加させ、脆弱及び壊れやすい傾向がある。従って、感知リード線の使用は一般に望ましくない。溶接ワイヤ送給装置は遠隔フィードバック測定を行うことができるが、しかし、測定データを用いるには、それを溶接用電力供給装置に迅速に通信し戻さなくてはならない。かかるフィードバック通信は、追加の回路、及び場合によっては電力供給装置とワイヤ送給装置との間の追加の制御配線を必要とする。フィードバック通信は溶接ケーブルによって行われてもよいが、溶接ケーブルに沿って相当量のノイズが存在する傾向があり、対処する必要がある。溶接用電力供給装置にとって、専用の感知リード線又は溶接ワイヤ送給装置からの電圧/電流フィードバックデータを必要とせずに、溶接回路が長いケーブル長による相当量のインダクタンスを含む場合でも、母材において遠隔で発生する溶接条件をリアルタイムで正確に特定することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以下の概要は、本明細書中で検討する装置、システム、及び/又は方法の幾つかの態様の基本的な理解を提供するために、簡易化した概要を呈示する。この概要は、本明細書中で検討する装置、システム、及び/又は方法の広範な概略ではない。それは、かかる装置、システム、及び/又は方法の重要な構成要素を特定し或いはそれらの適用範囲を詳細に描写する意図はない。その唯一の目的は、後半で提示するより詳細な説明への前置きとして、簡略化した形態で幾つかの概念を提示することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、溶接又は積層造形用電力供給装置が提供される。電力供給装置は、溶接波形を生成するように構成される出力回路と、出力回路によって生成された溶接電流を測定するための電流センサと、溶接波形の出力電圧を測定するための電圧センサと、出力回路に動作可能に接続されて溶接波形を制御し、電流センサ及び電圧センサに動作可能に接続されて溶接電流及び出力電圧を監視するコントローラと、を含む。溶接波形の一部は、第1レベルから第1レベルとは異なる第2レベルへの電流の制御された変化を含む。コントローラは、出力電圧及び電流の制御された変化から回路インダクタンスを特定し、更に、回路インダクタンスに基づいて、消耗電極の抵抗の変化をリアルタイムで特定するように構成される。
【0006】
本発明の別の態様によれば、溶接又は積層造形システムが提供される。システムは、消耗電極と、トーチと、溶着作業中にトーチを通して消耗電極を前進させるワイヤ送給装置と、少なくとも1本のケーブルを介してワイヤ送給装置及びトーチに動作可能に接続される電力供給装置と、を含む。電力供給装置は、トーチに一連の溶接波形を提供して消耗電極内に溶接電流を生成するよう構成される。前記一連の溶接波形の個々の溶接波形の一部は、第1のレベルから第1のレベルとは異なる第2のレベルへの電流の制御された変化を含む。電力供給装置は、電流の制御された変化中に行われた電圧及び電流測定に基づいて回路インダクタンスを特定するよう構成される。電力供給装置は、更に、回路インダクタンスに基づいてリアルタイムで消耗電極の抵抗の変化を特定するよう構成される。
【0007】
本発明の別の態様によれば、溶接又は積層造形用電力供給装置が提供される。電力供給装置は、溶接波形を生成するように構成される出力回路と、出力回路によって生成された溶接電流を測定するための電流センサと、溶接波形の出力電圧を測定するための電圧センサと、出力回路に動作可能に接続されて溶接波形を制御し、電流センサ及び電圧センサに動作可能に接続されて溶接電流及び出力電圧を監視するコントローラと、を含む。溶接波形の一部は、第1レベルから第1レベルとは異なる第2レベルへの電流の制御された変化を含む。コントローラは、少なくとも電流の制御された変化から溶着作業中にリアルタイムで回路インダクタンスを特定し、更に、回路インダクタンスに基づいて、消耗電極の抵抗の変化をリアルタイムで特定するよう構成される。
【0008】
電力供給装置又はコントローラは、溶接電流及び出力電圧からリアルタイムで回路インピーダンスを特定するよう構成することができる。電流の制御された変化は、溶接波形の電流ランプ部分中に生じる可能性がある。電力供給装置又はコントローラは、消耗電極の抵抗の変化に基づいて短絡事象の間隔を特定するよう構成することができる。電力供給装置又はコントローラは、消耗電極の抵抗の変化に基づいて電極突き出し距離の変化を特定するよう構成することができる。電力供給装置は、出力スイッチと、出力スイッチと並列に接続される抵抗器と、を含むことができ、溶接波形は、最小電流部分、消耗電極と母材との間の短絡事象中のピンチ電流部分、プラズマブーストパルス部分、及びプラズマブーストパルス部分からバックグラウンド電流レベルへのテールアウトを含むことができ、電力供給装置/コントローラは、消耗電極の抵抗の変化に基づいて出力スイッチを停止させて溶接波形の最小電流部分を実施するよう構成することができる。電力供給装置/コントローラは、消耗電極の抵抗の変化を閾値と比較し、消耗電極の抵抗の変化が閾値を満たすか又はそれを超える場合、出力スイッチを停止するよう構成することができる。電力供給装置/コントローラは、回路インダクタンスを閾値と比較し、回路インダクタンスを閾値と比較した結果に基づいて出力スイッチの再起動を制御するよう構成することができる。ある特定の実施形態において、溶接波形のピンチ電流部分は、電力供給装置/コントローラがベースライン回路抵抗を特定する定電流部分を含むことができる。電力供給装置/コントローラは、回路インダクタンス又はベースライン回路抵抗に基づいて溶接波形パラメータを調整するよう構成することができる。溶接波形パラメータは、溶接電流ランプ速度及び/又は平均溶接電圧であってもよい。
【0009】
発明の前記及び他の態様は、添付図面を参照して以下の説明を読み取った上で発明に関係する当業者にとって明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は溶接システムの斜視図である。
図2図2は溶接システムの略図である。
図3図3は溶接システムの略図である。
図4図4は溶接回路の略図である。
図5図5は溶接電極及び母材を示す。
図6図6は溶接波形を示す。
図7図7は溶接回路インピーダンスのグラフである。
図8図8は誘導リアクタンスのグラフである。
図9図9は補償抵抗のグラフである。
図10図10は溶接波形を示す。
図11図11はフロー図である。
図12図12はコントローラの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
発明の例示的な実施形態を、ここで、添付図面を参照して以下で説明する。説明する例示的な実施形態は、発明の理解を支援することを目的としており、どのような形でも発明の適用範囲を限定することを意図していない。全体を通して同様の参照符号は同様の構成要素を指している。
【0012】
本明細書中で用いるように、「少なくとも1つ」、「1つ以上」、並びに「及び/又は」は、動作において接続的及び離接的の両方である幅広い解釈ができる表現である。例えば、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、又はCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、及びCのうちの1つ以上」、「A、B、又はCのうちの1つ以上」、並びに「A、B、及び/又はC」という表現のそれぞれは、A単体、B単体、C単体、AとBと共に、AとCと共に、BとCと共に、或いは、A、B、及びCと共に、を意味する。2つ以上の代替用語を呈する任意の離接語又は句は、実施形態、特許請求の範囲、又は図面内であろうとなかろうと、その用語のうちの含まれる1つ、用語のどちらか一方、又は両方の用語の可能性を考慮するよう理解するべきである。例えば、「A又はB」という句は「A」或いは「B」若しくは「A及びB」の可能性を含むよう理解するべきである。
【0013】
本明細書中に記載される本発明の実施形態はGMAW型溶接の文脈の中で検討されるが、本発明の他の実施形態はそれらに限定しない。例えば、実施形態は、SAW及びFCAW型溶接作業、並びに他の同様の種類の溶着作業において利用することができる。更に、本発明の実施形態は、手動、半自動、及びロボット溶接作業で用いることができる。本発明の実施形態は、また、積層造形、硬化肉盛、及びクラッド等の溶接に類似した金属溶着作業で用いることができる。本明細書中で用いるように、用語「溶接」は、これら全ての技術が母材を接合又は構築のどちらか一方を行う材料溶着に関与するように、これら全ての技術を包含することを意図している。従って、効率のために、用語「溶接」を以下で例示的な実施形態の説明において用いるが、複数の母材の接合が生じるかどうかに関わらず、これら全ての材料溶着作業を含むことを意図している。
【0014】
図1は、アーク溶接システム100の例示的な実施形態を示している。システム100は、溶接用電力供給装置110、溶接ワイヤ送給装置140、溶接ワイヤ源160、ガス源120、及び溶接トーチ又はガン130を含んでいる。ワイヤ送給装置140はコントローラ150及びワイヤ把持装置170を含んでいる。コントローラ150は、ワイヤ把持装置170を駆動して、溶接ワイヤ源160(例えば、スプール、ドラム等)からワイヤ把持装置170を通して、溶接ケーブル135を介して溶接ガン130へ溶接ワイヤ電極を引っ張るモータ(図示せず)を含んでいてもよい。かかる溶接システムは当該技術において周知である。溶接用電力供給装置110の第1の電気端子又は出力スタッドは、溶接用電力供給装置の第2の電気端子又は出力スタッドに電気的に接続される溶接ワイヤ電極が溶接ガン130を介して母材Wに適用されてアーク溶接作業において溶接を生じるように、母材Wに接続されてもよい。
【0015】
図2は、アーク溶接システム100の略図を提供している。電力供給装置110は、溶接リード線103及び105を介して母材Wに溶接信号又は溶接波形を供給する。溶接信号は、電流及び電圧を有し、1つのレベルから別へ電流の変化を必要とする種類の溶接信号であってもよい。例えば、信号は、溶接中にバックグラウンドからピークレベルに変化するパルス溶接信号、又は一方の極性から他方の極性に既知の速度で変化する交互極性波形であってもよい。電力供給装置110からの電流は、コンタクトチップ109を介して電極111に送られて電極111と母材Wとの間にアーク114を生成する。GMAW溶接作業で一般的であるように、正極リード線103はワイヤ送給装置140に結合することができ、次いで、溶接電流を、溶接ケーブル135を通してコンタクトチップ109に流す。かかる構成において、正極リード線103の全長は、電力供給装置110からワイヤ送給装置140への接続とワイヤ送給装置からコンタクトチップ109への接続の組み合わせである。無論、リード線103はコンタクトチップ109に直接結合することができる。電力供給装置110は、溶接リード線103、105を電力供給装置の電気出力に接続する端子又は出力スタッド115、116を含むことができる。
【0016】
図3は、電力供給装置110の追加の詳細を示すアーク溶接システム100の別の略図を提供している。電力供給装置110は、商用電源又は発電機等の電源172からアーク114を生成するための電気エネルギーを受け取る。電源172は単相又は三相電源であってもよい。ある特定の実施形態において、アーク溶接システム100は、溶接用電力供給装置110にもエネルギーを供給する1つ以上のバッテリ(図示せず)を含むハイブリッドシステムであってもよい。電力供給装置110は、溶接波形をコンタクトチップ109及び電極111に供給するための出力回路を含んでいる。出力回路は、所望の溶接波形に従ってアーク114を生成するためのインバータ174等の切換式電力変換器を含むことができる。代替又は追加として、溶接用電力供給装置は、溶接波形を生成するためのDCチョッパ(図示せず)又はブーストコンバータ(図示せず)を含んでいてもよい。電源172からのAC電力は入力整流器176によって整流される。整流器176からのDC出力はインバータ174に供給される。インバータ174は高周波AC電力を変圧器178に供給し、変圧器の出力は出力整流器180によって直流に再変換される。
【0017】
出力回路からの電流は、コンタクトチップ109並びに電極111及び母材Wに流れてアーク114を生成する。出力整流器180からの溶接電流は、制御可能な出力スイッチ182又は抵抗器170のどちらか一方を流れることができる。出力スイッチ182を停止状態にすることにより、溶接電流を強制的に抵抗器170に通過させることによって、溶接電流が急速に減少する。出力スイッチ182及び抵抗器170を用いて、溶接電流を急速に低減させることにより、溶接中の特定の点におけるスパッタを低減することができる。例えば、表面張力移行STT又はショートアーク溶接作業を実施する場合、溶接電極111と母材Wとの間の短絡事象が発生するか及び/又は破断間近になると、出力スイッチ182を選択的に停止状態にすることにより、溶接電流を急速に低電流レベルにすることができる。抵抗器170は出力スイッチ182と並列に接続されていることを見て取ることができる。出力スイッチ182がオン又は作動状態にある場合、溶接電流は出力スイッチを通ってトーチ130及び電極111に流れる。オン状態の場合、出力スイッチ182は抵抗器170を効果的に短絡させる。出力スイッチ182がオフ又は停止状態にある場合、抵抗器170はトーチ130及び電極111と直列に接続され、溶接電流は抵抗器を流れる。ある特定の実施形態において、抵抗器170は低電流レベルの大きさを制御するよう調整可能であってもよい。
【0018】
溶接トーチ130は電力供給装置110に動作可能に接続されている。電力供給装置110は、溶接出力電気エネルギーを溶接トーチ130に供給してアーク114を生成し、溶着作業(例えば、溶接、積層造形、硬化肉盛等)を実行する。トーチ130は、電力供給装置110によって電極111に供給される電気エネルギーを伝達するためのコンタクトチップ109を有することができる。電極111は、中実、フラックス入り、又はメタル入りの消耗ワイヤ溶接電極とすることができる。電極111は、溶接作業中に溶接パドルに向けて電極を前進させるワイヤ送給装置140によって溶接ワイヤ源160から供給することができる。図3に略図で示すように、ワイヤ送給装置140は、電極111をトーチ130に向けて駆動するための電動ピンチローラを含むことができる。
【0019】
アーク溶接システム100は、直流電極プラス(DC+)又は「逆」極性用に構成することができ、コンタクトチップ109及び電極111は電力供給装置110からの正極リード線に接続され、母材Wは負極リード線に接続される。代替として、アーク溶接システム100は、直流電極マイナス(DC-)又は「正」極性用に構成することができ、母材Wは正極リード線に接続され、コンタクトチップ109及び電極111は負極リード線に接続される。更に、アーク溶接システム100は、AC波形がコンタクトチップ109、電極111、及び母材Wに供給されるAC溶接用に構成することができる。
【0020】
電力供給装置110は、電力供給装置によって生成される溶接波形を制御するための、インバータ174等の出力回路に動作可能に接続されるコントローラ184を含む。コントローラ184は、インバータ174に波形制御信号を供給してその出力を制御することができる。コントローラ184は、波形制御信号を介してインバータ174の出力を制御して、所望の溶接波形、溶接電圧、溶接電流等を達成する。波形制御信号は、インバータ174内の様々なスイッチ(例えば、トランジスタスイッチ)の動作を制御するための複数の別々の制御信号を備えることができる。コントローラ184は、また、出力スイッチ182に動作可能に接続されてオンの作動状態とオフの停止状態との間のそのスイッチング動作を制御する。コントローラ184は、フィードバック信号を介して溶接プロセスの態様を監視する。例えば、変流器(CT)又はシャント等の電流センサ186は溶接電流フィードバック信号をコントローラ184に供給することが、電圧センサ188は溶接電圧フィードバック信号をコントローラに供給することができる。電流センサ186及び電圧センサ188は電力供給装置110に位置しており、それは母材W及びアーク114から離れていてもよい。しかし、以下で更に検討するように、コントローラ184は、電圧及び電流センサによって、電力供給装置110の出力スタッド115、116において行われる電圧及び電流測定から、溶接プロセスの状態、特に、母材Wで遠く離れて生じる状態を監視することができる。
【0021】
コントローラ184は、電子コントローラであってもよく、プロセッサを含んでいてもよい。コントローラ184は、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ディスクリート論理回路等のうちの1つ以上を含むことができる。コントローラ184は、コントローラにそれに割り当てられた機能を提供させるプログラム命令を格納するメモリ部(例えば、RAM又はROM)を含むことができる。コントローラ184は、別個のコンパレータ、論理回路等と組み合わせるプロセッサ等の複数の物理的に別々の回路又は電子デバイスを含むことができる。しかし、説明を簡単にするため、コントローラ184をモノリシックデバイスとして示す。
【0022】
図2及び3を参照すると、溶接リード線103及び105は、母材Wを電力供給装置110から遠く離れて位置決めすることができるため、かなり長くすることができる。例えば、場合によっては、リード線103/105は100フィート以上の長さを有することができる。かかる長いケーブル長さは、溶接回路のインダクタンスを大幅に増加させ、アーク電圧、コンタクトチップからの電極「突き出し」長さ、アーク長、短絡が解消されようとしているかどうか等の母材における状態を特定する電力供給装置110の能力に悪影響を及ぼす。母材における状態は、溶接波形又は他の溶接パラメータに対して行うべき調整を必要とする可能性があり、かかる調整を適宜且つ正しく行う電力供給装置の能力は長いケーブル長によって損なわれる可能性がある。例えば、大きなケーブルインダクタンス(例えば、35μH以上)は、電極111と母材Wとの間の短絡が解消されようとしているかどうかを特定すること、電極「突き出し」に対する変化を特定すること、スルーアークシームトラッキング(TAST)中の溶接経路調整を特定すること等の電力供給装置110の能力に悪影響を及ぼす可能性がある。更に、溶接回路のインダクタンス及び/又は抵抗が大きい場合、幾つかの溶接パラメータを調整することが望ましい可能性がある。かかるパラメータの例には、溶接用電力供給装置110上の平均出力電圧若しくは「トリム」設定、又は溶接電流波形のランプ速度を含む。溶接ケーブルが長い場合、溶接回路におけるインダクタンス及び抵抗の対応する増加は、溶接に供給される適切なアーク長及びエネルギーレベルを維持するよう平均溶接電圧を増加させる(例えば、トリム設定を増加させる)ことによって適応又は相殺されてもよい。溶接電流のランプ速度は、溶接ケーブルが長い場合に低下させることができる。より極端な状況において、ケーブルが長くコイル状になっている場合等の、溶接ケーブルが長すぎるか、溶接回路により多くのインダクタンスを加えすぎる場合、警報を介して是正措置を取るよう作業者に指示することが望ましい可能性がある。本明細書中で検討する電力供給装置110は、溶接回路のインダクタンスを考慮に入れて、電力供給装置において遠隔で行われる測定から母材における状態を特定することができる。ある特定の実施形態において、電力供給装置110は、溶接前又は溶接中にケーブルインダクタンスを特定し、リアルタイムで溶接回路の全インピーダンス及び誘導リアクタンスを特定することができる。この情報を用いて、電力供給装置110は、溶接回路の全インピーダンスを、母材における溶接電極の抵抗を含む補償抵抗に変換することができる。電力供給装置110は、次いで、補償抵抗を用いて、電極と母材との間の短絡が解消されようとしている時点等のリアルタイムで母材における状態を特定し、かかる状態に対応することができる(例えば、スパッタを最小限にするよう溶接電流を低下させることによって)。更に、電力供給装置110は、測定又は推定されたケーブルインダクタンス及び/又は補償抵抗を用いて、とりわけ、パラメータ調整を行い、シームトラッキングを実行し、アークに供給される電力量を特定し、溶接品質の分類を支援し、様々な警報を生じる等を行うことができる。
【0023】
図4は、溶接回路200の略図を示している。溶接回路200は、電力供給装置110の出力スタッド115、116からトーチ及び母材(図示せず)まで延在する。電力供給装置110は、電力供給装置内の電流及び電圧センサを用いて、溶接回路200内の溶接電流I、及び出力スタッド115、116間の溶接波形Vの出力電圧を測定することができる。抵抗Rはトーチ及び母材における抵抗であり、電圧Vはトーチと母材との間の電圧である。アーク状態の間、Vは比較的高い。しかし、ワイヤ電極と母材との間の短絡状態中、Vは略0Vであり、母材に対して短絡しているワイヤ電極間の電圧降下にすぎない。
【0024】
インダクタンスLは溶接回路のインダクタンスであり、可変ケーブルインダクタンス及び電力供給装置におけるインダクタンスも含んでいる。抵抗Rは、主に溶接ケーブルの抵抗、及び溶接ケーブル又は別の帰還路(例えば、接地)を介するものであってもよい帰還又は接地経路の抵抗である。インダクタンスL及び抵抗Rはケーブル長と共に増加し、Lはケーブルの向き(コイル状、非コイル状等)により変化する可能性がある。回路静電容量又は容量性リアクタンスは、概して、回路全体のインピーダンスへの小さな一因として無視することができる。ケーブル長が短い場合、電力供給装置110におけるVの測定は、溶接電極と母材との間の短絡が発生するか又は解消されようとしているかどうか等の母材における状態に関する有用な情報を提供することができる。しかし、長いケーブル長及び高いケーブルインダクタンス(例えば、35μH以上)により、ケーブルのインピーダンスが溶接回路で優位を占め、母材におけるある特定の条件は、従来、V及び/又はIから正確に導き出すことができなかった。従って、専用の感知リード線がVをより直接的に監視するために電力供給装置110によって用いられてきたが、感知リード線の使用は上で検討した様々な理由で概して望ましくない。
【0025】
電力供給装置110、特に、そのコントローラは、出力スタッド115、116間の溶接電流I及び電圧Vを監視することによって、母材における状態を遠隔で特定するよう構成される。コントローラは、式Z=V/Iから、溶接作業中にリアルタイムで溶接回路のインピーダンスZを計算することができる。Zは、ケーブルインダクタンスL、ケーブル抵抗R、及びトーチ/母材における抵抗Rによる誘導リアクタンスXを含む溶接回路内の個々のインピーダンスの合計である。従って、Z=X+R+Rである。誘導リアクタンスXは、ケーブルインダクタンスに溶接電流Iの変化率を掛け、Iで割った値に等しく、すなわち、X=(L)(dI/dt)/Iである。溶接回路インピーダンス式のXに代入すると、Z=(L)(dI/dt)/I+R+Rとなる。従って、トーチ/母材における抵抗Rは、以下の式を用いて計算することができる。R=Z-(L)(dI/dt)/I-R。更に、ZをV/Iで置き換えると、以下が得られる。R=V/I-(L)(dI/dt)/I-R。トーチ/母材における計算された抵抗Rは、ケーブルインピーダンスの影響が補償されるため、「補償抵抗」と見なすことができる。
【0026】
トーチ/母材における抵抗Rをリアルタイムで知ること及び/又は溶接中にリアルタイムでその変化を監視することにより、溶接電極で何が起こっているかに関する重要なフィードバック情報を溶接用電力供給装置110に提供することができる。例えば、溶接電極111と母材Wとの間の短絡が解消又は遮断しようとするにつれて、電極は溶融溶接パドル202(図5)においてネッキング又は狭まりを示す。電極の狭まりは、結果として抵抗Rを増加させる。Rの変化(例えば、ΔR)を監視することにより、電力供給装置110は、短絡が解消されようとする場合を特定し、溶接電流を低下させて(例えば、出力スイッチ182(図3)を停止することによって)、短い遮断及びアークが再燃する場合にスパッタを最小化することが可能となる。R及び/又はΔRを監視することにより、溶接用電力供給装置110に電極突き出しに対する変化に関する情報を提供することもでき、これはスルーアークシームトラッキングを実行する場合に有用であってもよい。R及び/又はΔRを監視することにより、溶接用電力供給装置110に、母材に供給される電力又はエネルギー量に関する情報を提供することができ、そこから溶接品質を特定してもよい。
【0027】
上記のように、Rは以下の式を用いて計算又は推定することができる。R=V/I-(L)(dI/dt)/I-R。電力供給装置110は、V及びIをリアルタイムで監視することができる。回路のインダクタンスLを推定するため、電力供給装置はVを監視することができる一方で、電流は第1のレベルから第1のレベルとは異なる第2のレベルに制御された方法で変化する。制御される電流変化は、概して、線形ランプ、又は非線形変化(例えば、指数関数的電流変化)であってもよい。第1のレベルから第2のレベルへの制御された電流変化は、正(例えば、電流増加)又は負(例えば、電流減少)のどちらか一方であり得る。更に、第1のレベルから第2のレベルへの制御された電流変化は、電極111が母材Wに対して短絡している間に発生する可能性がある。線形又は非線形電流ランプは、上向きランプ又は下方の減衰ランプであることができ、アクティブ溶接中又は溶接前の溶接ケーブルテスト中に発生する可能性がある。ある特定の実施形態において、インダクタンスLは、溶接中に(例えば、リアルタイムで)繰り返し特定されて、例えば、溶接ケーブルがコイル状になることにより、回路インダクタンスの経時的変化を考慮に入れることができる。ケーブル抵抗Rは、また、電流Iが一定の場合(例えば、リアクタンスインピーダンスを最小化にするdI/dt=0)に、電極111を母材に対して短絡させて、アクティブ溶接中又は溶接ケーブルテスト中にも測定することができる。回路インダクタンスL及び抵抗RCは、電極111が固相短絡中にネッキング又は狭まりではないことがわかっている場合に測定されて、ベースライン回路インピーダンスを提供するのが好ましい。回路インダクタンスL及び抵抗Rは、母材における電気アーク間の電圧降下が解消されるように、電極111を母材Wに対して短絡させて測定することができる。しかし、短絡が解消され、溶接電流が意図的に急速に低下してスパッタを最小限に抑える場合、又はパルス電流が印加されて、短絡事象の後でアークを再確立する場合等の溶接中の他の時点で、かかる測定を行うことができることは、正しく認識するべきである。これらの事象(例えば、電流の急速な低下又は電流パルスの印加)のいずれかは、回路インダクタンスLの計算に都合の良い大きなdI/dtを含んでいる。回路インダクタンスL及び/又は抵抗Rは、以前の溶着作業中に測定し、後続の溶着作業中に用いるためにメモリに格納することができ、L及びRの値は必要に応じて随時更新することができる。
【0028】
ある特定の実施形態において、Rの計算に対するケーブル抵抗Rの影響は、較正変数CVによって近似することができる。較正変数は実験により特定することができ、電力供給装置110のメモリに格納することができる。較正変数を用いる場合、Rの計算式は以下の通りである。R=Z-X-CV=V/I-(L)(dI/dt)/I-CV。
【0029】
補償抵抗Rの計算例及び使用例については、STT溶接作業の文脈において検討する。STT溶接に適した波形を図6に示し、図3に示すシステムコンポーネントに関して検討する。波形は、バックグラウンド電流部分300、ピンチ電流部分302、及びプラズマブーストパルス304を含み、その後に別のバックグラウンド電流部分300へのテールアウト306が続く。バックグラウンド電流部分300とピンチ電流部分302との間、及びピンチ電流部分302とプラズマブーストパルス304との間には、最小電流部分308a、308bがある。バックグラウンド電流部分300は、最小電流部分308a、308bよりも大きいが、ピンチ電流部分302及びプラズマブーストパルス304よりも小さいことを見て取ることができる。出力スイッチ182は、溶接波形のバックグラウンド電流300、ピンチ電流302及びプラズマブーストパルス304部分の間、オン状態にあり、溶接電流はこれらの部分の間に出力スイッチを通って流れる。出力スイッチ182は、最小電流部分308a、308bの間、オフ状態にあり、溶接電流は最小電流部分の間に抵抗器170を通って流れる。最小電流部分308a、308bの大きさは、抵抗器170の抵抗レベルによって特定される。バックグラウンド電流部分300の電流範囲例は15A~150Aである。ピンチ電流部分302及びプラズマブーストパルス304の電流範囲例は150A~500Aである。最小電流部分308a、308bの電流範囲例は20A~125Aである。
【0030】
バックグラウンド電流部分300の間、溶融ボールが電極111の端部に形成され、電極は母材W上の溶接パドルに対して短絡することができる。コントローラ184は、溶接電圧Vを監視することにより短絡の存在を認識することができる。短絡が検出されると、コントローラは最初に最小電流部分308aを実施し、出力スイッチ182をオフにすることによって溶接電流を最小電流レベル308aへ急速に低下させる。溶接電流を低下させることにより、確実に固相短絡することに役立ち、ヒューズのように電極が吹き飛ばされることを防ぐ。第1の最小電流部分308aの後、電極と母材との間の固相短絡中に、ピンチ電流302が出力スイッチ182を介して印加されて、溶接パドルへ分離するために電極111の端部にネックダウンを形成する。短絡が解消される直前に、波形上の点Cにおいて、コントローラは再度出力スイッチ182をオフにして第2の最小電流部分308bを実施し、溶接電流を低電流レベルへ急速に低下させて、溶融ボールが電極からピンチオフする場合のスパッタを防止する。アークが再確立されると、コントローラ184は出力スイッチ182を介してピーク電流又はプラズマブーストパルス304を印加して適切なアーク長を設定し、溶接パドルをワイヤ電極111から押し離す。プラズマブーストパルス304は、次いで、コントローラ184によってテールアウト306にされて、溶接電流をバックグラウンド電流300レベルに戻す。
【0031】
波形上の点Cにおいて、溶融ボールは電極111からピンチオフしようとしており、電極は図5に示すようにネッキングを形成している。ネッキングにより電極111間の断面積が減少すると、トーチにおける抵抗Rが増加する。Rの値の変化(例えば、ΔR)を、電極111のネッキング前の時点から点Cまでリアルタイムで監視することにより、コントローラ184は、ピンチオフがいつ発生しようとし、いつ短絡事象が解消されるかを特定することができる。コントローラ184は、Rの増加した抵抗に基づいてピンチオフが発生しようとしていることを特定すると、出力スイッチ182を停止状態にして電流を最小電流レベル308bに低下させる。ある特定の実施形態において、Rの値の変化ΔRを閾値と比較して、ΔRが閾値を満たすか又はそれを超えると、コントローラ184が出力スイッチ182を停止させるように、ピンチオフがいつ発生しようとするかを特定することができる。ΔRの閾値は、溶融ボールが電極111からピンチオフしようとしていることを示しており、実験により特定することができ、電力供給装置110のメモリに格納することができる。ΔRの閾値の範囲例は1~10mohm、2~5mohm等であるが、他の範囲も可能であり、実験により特定することができる。
【0032】
従来のSTT溶接において、溶接波形のピンチ電流部分は、第1の電流レベルから第2の電流レベルへの略線形電流ランプである。しかし、図6の波形のピンチ電流部分302は、溶接電極が母材に対して固相短絡している間に行われる電圧及び/又は電流測定に基づいて、回路インダクタンスL及びベースライン回路抵抗Rを溶接中にリアルタイムで特定することが可能となるように構成される。リアルタイムの回路インダクタンスL及び抵抗R測定は、次いで、電極がネックダウンを形成している間にピンチ電流部分302の最終電流ランプ中に母材における電極の補償抵抗Rを計算するために用いることができる。ピンチ電流部分302は、電流の一定変化率(dI/dt)において電流レベルの制御された変化(例えば、第1レベルから第2レベル)を提供する第1の線形ランプ309(期間A)を有している。回路インダクタンスLは、電力供給装置で測定された溶接波形の出力電圧と電流の変化とから第1の線形ランプ309の間に計算することができる。第1の線形ランプ309の後には定電流部分310が続き、その間に回路インダクタンスによるリアクタンスインピーダンスが最小化される。ケーブル又はベースライン回路抵抗Rは、ピンチ電流302の定電流部分310の間に(例えば、期間Bの間に)計算することができる。第1の線形ランプ309及びピンチ電流302の定電流部分310の間、電極は加熱されるが、まだ大幅にピンチオフ又はネックダウンされていない。ピンチングは、第1の線形ランプ309と同じ勾配又は異なる勾配を有することができる第2のランプ312中に生じる。コントローラ184は、定電流部分310中に測定されたベースライン又はオフセット抵抗Rから、第2のランプ312中のRの値の変化(ΔR)を監視して、出力スイッチ182の停止タイミングを適切に設定し、溶接電流Iを急速に低下させるために、溶融ボールがいつピンチオフしようとするかを予測する。従来、出力スイッチ182の操作は、感知リード線を用いて特定されるか、ワイヤ送給装置によって通信される母材における電圧の変化率に基づいていた。しかし、上で説明したように補償抵抗Rの変化を監視し、それに基づいて出力スイッチ182を操作することにより、追加の感知リード線及びワイヤ送給装置からの通信の必要性が排除される。回路インダクタンスLは、ピンチ電流部分302以外の溶接波形の一部から特定することができることを正しく認識するべきである。例えば、回路インダクタンスLは、ピンチ電流部分の端部(点C)から最小電流部分308bまでの電流の低下から、又は最小電流部分308bの端部からプラズマブーストパルス304までの電流の増加から特定することができる。更に、回路インダクタンスLは、溶接中に印加されるエネルギーと溶接電流から特定することができる一方で、電流は線形又は非線形に増減する。
【0033】
図7~9は、溶接用電力供給装置で測定されたような溶接回路のインピーダンスZ、溶接回路の誘導リアクタンスX、及び補償抵抗Rが、ピンチオフ中に電極がネッキングを形成している間にどのように動作するかをグラフで示している。動作は、電力供給装置がΔRを監視して電極からの溶融ボールの差し迫ったピンチオフを特定するように、図6に示す電流波形例の第2のランプ312部分中に生じる。図7において、インピーダンスZは比較的安定したままである一方で、電流Iは上昇して溶融ボールをピンチオフすることが見て取ることができる。従って、Z単体は溶融ボールの差し迫った分離を良好に示さない。誘導リアクタンスX図8)は、電流Iが上昇するにつれて線形下向きに傾斜する。X=(L)(dI/dt)/Iであるため、Iが第2のランプ312部分中に上昇すると、誘導リアクタンスXは線形に減少する。図9に示すように、電極がネッキングを形成している間、補償抵抗Rは概して線形に増加する。Rの変化を監視することによって、電力供給装置は、溶融ボールがいつピンチオフするかを予測し、それに応じて溶接電流を低下させることで対応することができる。
【0034】
図10は、図6と同様の溶接波形例を示している。溶接回路の溶接ケーブル長及びインダクタンスレベルが増加するにつれて、溶融ボールが電極からピンチオフする時を正確に特定する電力供給装置の能力が低下する可能性がある。すなわち、補償抵抗Rの電力供給装置の特定は、ケーブル長/インダクタンスが増加すると精度が低下する可能性がある。補償抵抗Rを正確に特定することができる通常の状態において、電力供給装置は一定期間出力スイッチ182(図3)を停止させてアークが再確立することを可能にする。しかし、溶融ボールが分離する準備が整う前に、出力スイッチ182が(例えば、Rの不正確な計算のために)早期に停止される場合、溶融ボールは適切に分離せず、結果として電極スタブが生じる可能性がある。電力供給装置は、補償抵抗Rの特定の精度が低いため、ケーブルインダクタンス及び回路インダクタンスLが大きい場合、出力スイッチ182をかなり早期に停止させる可能性が高い。Rの計算が正確ではなく、溶融ボールがピンチオフする準備が整う前に出力スイッチ182がかなり早期に停止する可能性を考慮するために、電力供給装置は通常よりも早く出力スイッチ182を再起動又はオンにすることができる。これにより、ピンチオフ中の溶接電流が増加し、結果としてより多くのスパッタを生じる可能性があるが、溶融ボールの分離を確実にし、電極のスタブを防ぐことに役立つ。例示的な実施形態において、電力供給装置は、測定又は推定した回路インダクタンスLを閾値レベル又は値(例えば、35μH、40μH、50μH、50μH超、等)と比較する。回路インダクタンスLが閾値を満たすか又はそれを超える場合、電力供給装置は、出力スイッチを点Cにおいて停止させた後、ピンチ電流を下回る所定の電流レベルDに達すると、出力スイッチ182を再起動させる。所定の電流レベルDは、通常、短絡が解消されている間に溶接電極に送られる最小電流部分308bのレベルよりも高い。所定の電流レベルDの電流範囲例は40A~125Aである。溶接電流が所定の電流レベルDまで降下すると、電力供給装置は出力スイッチ182を再起動し、溶接電流を制御する。所定の電流レベルDは、短絡を解消するのに十分なレベルであってもよく、実験により特定することができる。電力供給装置は、プラズマブーストパルス304を印加する前に、溶接電流を制御して一定レベル(例えば、レベルD)を維持するか、又はランプ(例えば、下方にランプ)させることができる。
【0035】
場合によっては、テールアウト306中に、電極と母材との間に極めて短時間の短絡が発生する可能性があり、これはすぐに解消される。電力供給装置は、短絡の存在を認識し、出力スイッチ182を不適切に停止させて電流を低下させる可能性がある。これは図10の点Eに示しており、出力スイッチは停止され、電流レベルが低下している。バックグラウンド電流部分300までテールアウト306中に短絡が発生したため、出力スイッチが再起動された後、電力供給装置はバックグラウンドレベル300まで電流を制御する傾向がある。しかし、かかるシナリオにおいて、テールアウトの一部が除去されているため、テールアウト306及びバックグラウンド電流300部分中に、所望されるよりも少ないエネルギー及び熱が電極に加えられる(結果として不十分な液滴分離を生じる可能性がある)。この問題に対処するため、電力供給装置(例えば、コントローラ)は、電流レベルの実行中メモリを格納するバッファを含むことができる。実行中メモリは、例えば、1秒未満から数分等の必要に応じた任意の長さの時間にすることができる。電力供給装置は、次いで、図10に示すように、出力スイッチが再起動された後、実行中メモリに格納された以前の電流レベルに戻ることができる。出力スイッチの停止前に到達した電流レベルに戻ることにより、結果として、波形の1周期でテールアウト306及びバックグラウンド部分300の長さを僅かに延長させることができる。電圧、電力、インピーダンス、補償抵抗、等のような様々なパラメータを電力供給装置の実行中メモリに格納することができる。
【0036】
電極ネッキング及び溶融ボールのピンチオフの特定は、溶接回路のインピーダンスに関する上で検討した測定及び計算の適用例の1つにすぎない。補償抵抗Rは、また、溶接中に自動的にシームトラッキングを行う場合等、電極の突き出し変化を判断するためにも用いることができる。溶接電極は、溶接ケーブルよりも実質的に小さい断面を有し、より高い抵抗を有することができる。溶接電極の抵抗は、突き出しが減少するにつれて減少する。補償抵抗Rを用いて電極の突き出しに対する変化を監視することにより、シームトラッキングの精度、又は突き出しに基づくか若しくは突き出しが監視されている間の他の任意のプロセスの精度を向上させることに役立たせることができる。補償抵抗Rを分析することにより、母材に供給される電力又はエネルギー量に関する情報も提供することができ、そこから溶接品質を特定してもよい。溶接品質は、溶接中に用いられるシールドガス混合物に従って更に分類されてもよい。例えば、溶接回路の抵抗又はインピーダンスが所定の電極、ガス、及びコンタクトチップ母材間距離(CTWD)の許容範囲外にある場合、適切な警報を生成するか、又は溶接に仕様外であるフラグを立ててもよい。測定された回路インダクタンス及び抵抗(例えば、ベースライン回路抵抗及び/又は補償抵抗)を用いて、溶接電圧等の溶接パラメータを自動的に調整するか又は警報若しくは他の警告を生成してもよい。上記のように、電力供給装置の「トリム」設定はケーブル抵抗に基づいて調整することができる。トリム設定は、アーク長を制御するための全体的な電圧調整である。溶接ケーブルの抵抗が高い場合、電力供給装置はトリムを増加させて、溶接ケーブル間の電圧降下の増加に対応することができる。溶接用電力供給装置は、ケーブル抵抗及び溶接電流をトリム値に関連させて、トリム設定を現在の溶接システムのセットアップに適した値に自動的に調整するルックアップテーブルを含んでいてもよい。
【0037】
図11は、溶接用電力供給装置によって実行されるプロセス例のフロー図である。ステップ350において、電力供給装置は一連の溶接波形を消耗電極に提供する。電極への溶接波形の提供前又は提供中に得られるデータから、電力供給装置は溶接回路の回路インダクタンスを特定する(ステップ352)。回路インダクタンスの特定は、電極を通る電流レベルが制御された方法で変更されている間に行われる電圧及び電流の測定に基づいて行うことができる。電力供給装置は、更に、溶接回路のベースライン抵抗を特定する(ステップ354)。抵抗の特定は、電極を通る電流レベルを一定に保ち、電極を母材に対して短絡させている間に行われる電圧及び電流の測定に基づいて行うことができる。インダクタンス又は抵抗の測定は、溶接又は他の溶着作業中にリアルタイムで行うことができる。電力供給装置は、更に、溶着作業中に行われる電圧及び電流の測定からリアルタイムで溶接回路のインピーダンスを特定することができる(ステップ356)。溶接回路のインピーダンス、リアルタイムの電圧及び電流の測定、回路のインダクタンス、及びベースライン抵抗から、電力供給装置は溶接回路内の補償抵抗の変化(例えば、電極ネッキングによる)をリアルタイムで特定することができる(ステップ358)。例えば、電力供給装置は溶接回路の全インピーダンスを補償抵抗に変換することができる。補償抵抗の変化に基づいて、電力供給装置は、短絡状態が解消されようとしていることを認識し、出力スイッチの動作を制御して、溶接電流を低下/最小化させ、溶着作業中のスパッタを最小化することができる(ステップ360)。
【0038】
図12は、溶接用電力供給装置の例示のコントローラ184の一実施形態を示している。コントローラ184は、バスサブシステム412を介して多数の周辺装置と通信する少なくとも1つのプロセッサ414を含んでいる。これらの周辺装置は、例えば、メモリサブシステム428及びファイルストレージサブシステム426を含むストレージサブシステム424、ユーザインターフェース入力デバイス422、ユーザインターフェース出力デバイス420、及びネットワークインターフェースサブシステム416を含んでいてもよい。入出力デバイスはコントローラ184とのユーザの対話を可能にする。ネットワークインターフェースサブシステム416は外部ネットワークとのインターフェースを提供し、他のコンピュータシステム内の対応するインターフェースデバイスに接続される。
【0039】
ユーザインターフェース入力デバイス422は、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、又はグラフィックスタブレット等のポインティングデバイス、スキャナ、ディスプレイに組み込まれるタッチスクリーン、音声認識システム等のオーディオ入力デバイス、マイクロフォン、及び/又は他の種類の入力デバイスを含んでいてもよい。一般に、用語「入力デバイス」の使用は、情報をコントローラ184又は通信ネットワークに入力するための可能性のある全ての種類のデバイス及び方法を含むことを意図している。
【0040】
ユーザインターフェース出力デバイス420は、ディスプレイサブシステム、プリンタ、ファックス機、又はオーディオ出力デバイス等の非視覚的表示を含んでいてもよい。ディスプレイサブシステムは、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)等のフラットパネル装置、プロジェクション装置、又は可視画像を作成するための他の幾つかの機構を含んでいてもよい。ディスプレイサブシステムは、また、オーディオ出力デバイスを介するもの等の非視覚的表示を提供してもよい。一般に、用語「出力デバイス」の使用は、情報をコントローラ184からユーザ又は別の機械若しくはコンピュータシステムに出力する可能な全ての種類のデバイス及び方法を含むことを意図している。
【0041】
ストレージサブシステム424は、本明細書中で説明する制御アルゴリズム及びソフトウェアモジュールの一部又は全ての機能を提供するプログラミング及びデータ構造を格納する非一時的なコンピュータ読取可能ストレージ媒体を提供する。これらのソフトウェアモジュールはプロセッサ414単体又は他のプロセッサと組み合わせることによって概して実行される。ストレージサブシステム内で用いられるメモリ428は、プログラム実行中に命令及びデータを格納するためのメインランダムアクセスメモリ(RAM)430及び固定命令が格納される読出し専用メモリ(ROM)432を含む多数のメモリを含むことができる。ファイルストレージサブシステム426は、プログラム及びデータファイルのための持続性ストレージを提供することができ、ハードディスクドライブ、関連するリムーバブルメディアに加えてフロッピーディスクドライブ、CD-ROMドライブ、光学式ドライブ、又はリムーバブルメディアカートリッジを含んでいてもよい。ある特定の実施形態の機能を実装するモジュールは、ストレージサブシステム424内のファイルストレージサブシステム426によって、又は、プロセッサ414によってアクセス可能な他の機械内に格納されてもよい。
【0042】
バスサブシステム412はコントローラ184の種々のコンポーネント及びサブシステムに意図したような互いとの通信を行わせるための機構を提供する。バスサブシステム412を単一バスとして略図的に示しているが、バスサブシステムの代替実施形態は多重バスを用いてもよい。
【0043】
図12に示すコントローラよりも多くの又は少ないコンポーネントを有するコントローラ184の他の多くの構成も可能である。
【0044】
本開示は一例であり、本開示に含まれる教示の公正な適用範囲から逸脱することなく、詳細を追加、修正、又は削除することによって、様々な変更が行われてもよいことは明らかであろう。本発明は、従って、以下の特許請求の範囲がやむを得ずそのように限定する場合を除き、本開示の特定の詳細に限定されない。
【符号の説明】
【0045】
100 アーク溶接システム
110 溶接用電力供給装置
111 溶接電極
114 アーク
130 溶接トーチ
140 溶接ワイヤ送給装置
150 コントローラ
170 抵抗器
172 電源
182 出力スイッチ
184 コントローラ
186 電流センサ
188 電圧センサ
200 溶接回路
300 バックグラウンド電流部分
302 ピンチ電流部分
304 プラズマブーストパルス
306 テールアウト
309 第1の線形ランプ
310 定電流部分
312 第2のランプ
308a 第1の最小電流部分
308b 第2の最小電流部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12