(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】動作玩具
(51)【国際特許分類】
A63H 3/04 20060101AFI20240507BHJP
A63H 3/00 20060101ALI20240507BHJP
A63H 33/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A63H3/04 Z
A63H3/00 K
A63H33/00 J
(21)【出願番号】P 2020071205
(22)【出願日】2020-04-10
【審査請求日】2023-01-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】城▲崎▼ 恭平
(72)【発明者】
【氏名】五島 安芸子
【審査官】柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-205087(JP,A)
【文献】特表2004-504901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00-37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の溶媒により溶質を溶かすことを利用して形態を変化させる動作玩具であって、
外部から視認可能で所定の付勢力で第1位置から第2位置まで動作される動作部品と、
溶ける前の状態で、前記動作部品を
前記所定の付勢力に抗して前記第1位置に留まらせる固形状の
前記溶質と、を備え、
前記動作部品に連係され所定の圧力で前記所定の付勢力に抗して前記溶質に当接するよう付勢された当接部材を備え、
前記溶媒により前記溶質を
溶かし、前記溶質が溶けた分だけ前記当接部材を進入させつつ前記動作部品を
前記所定の付勢力で前記第1
位置から前記第2位置まで動作させるようにしたことを特徴とする動作玩具。
【請求項2】
前記溶質を積層して収容するシリンダを備え、前記当接部材は、前記シリンダに挿入され前記溶質と当接するピストンを有することを特徴とする請求項1に記載の動作玩具。
【請求項3】
前記当接部材と前記動作部品とを結ぶ紐体を備えることを特徴とする請求項2に記載の動作玩具。
【請求項4】
前記溶質は水溶性の物質であることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の動作玩具。
【請求項5】
前記溶媒を外部から注入する注入口が形成されていることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の動作玩具。
【請求項6】
前記動作部品は、テレスコピック式に伸縮可能に構成されるとともに、縮んだ状態の
前記第1位置と伸長した状態の
前記第2位置とを取り得、
前記所定の付勢力によって前記第2位置に向けて付勢され、
前記溶質は、前記動作部品を前記第1位置に係止し、
前記溶媒によって前記溶質を溶かして前記動作部品を前記第1位置から前記第2位置まで動作させるようにしたことを特徴とする請求項1~請求項5のいずれか一項に記載の動作玩具。
【請求項7】
前記動作玩具は、腕及び脚を有する人形又はロボット玩具であり、前記動作部品は、腕及び脚であることを特徴とする請求項6に記載の動作玩具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は動作玩具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浴湯により入浴剤を溶かすことを利用して浮遊体を浴槽内で推進させる動作玩具が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この動作玩具は、浴湯により入浴剤を溶かすことによって発生する反応ガスを放出することによって玩具自体を推進させるものであった。
本発明は、溶媒により溶質を溶かして動作部材を動作させるようにした新規な動作玩具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の手段は、
所定の溶媒により溶質を溶かすことを利用して形態を変化させる動作玩具であって、
外部から視認可能で所定の付勢力で第1位置から第2位置まで動作される動作部品と、
溶ける前の状態で、前記動作部品を前記所定の付勢力に抗して前記第1位置に留まらせる固形状の前記溶質と、を備え、
前記動作部品に連係され所定の圧力で前記所定の付勢力に抗して前記溶質に当接するよう付勢された当接部材を備え、
前記溶媒により前記溶質を溶かし、前記溶質が溶けた分だけ前記当接部材を進入させつつ前記動作部品を前記所定の付勢力で前記第1位置から前記第2位置まで動作させるようにしたことを特徴とする。
【0007】
第2の手段は、第1の手段であって、前記溶質を積層して収容するシリンダを備え、前記当接部材は、前記シリンダに挿入され前記溶質と当接するピストンを有することを特徴とする。
【0008】
第3の手段は、第2の手段であって、前記当接部材と前記動作部品とを結ぶ紐体を備えることを特徴とする。
【0009】
第4の手段は、第1~第3のいずれかの手段であって、前記溶質は水溶性の物質であることを特徴とする。
【0010】
第5の手段は、第1~第4のいずれかの手段であって、前記溶媒を外部から注入する注入口が形成されていることを特徴とする。
【0011】
第6の手段は、第1~第5のいずれかの手段であって、
前記動作部品は、テレスコピック式に伸縮可能に構成されるとともに、縮んだ状態の前記第1位置と伸長した状態の前記第2位置とを取り得、前記所定の付勢力によって前記第2位置に向けて付勢され、
前記溶質は、前記動作部品を前記第1位置に係止し、
前記溶媒によって前記溶質を溶かして前記動作部品を前記第1位置から前記第2位置まで動作させるようにしたことを特徴とする。
【0012】
第7の手段は、第6の手段であって、前記動作玩具は、腕及び脚を有する人形又はロボット玩具であり、前記動作部品は、腕及び脚であることを特徴とする請求項6に記載の動作玩具。
【発明の効果】
【0013】
第1の手段によれば、溶媒により溶質を溶かして動作部品を動作させる目新しい動作玩具が実現できる。
【0014】
第2の手段によれば、シリンダに溶質を積層することで動作ストロークや動作時間を調整することができる。また、異なる質の溶質を複数入れることにより、伸長スピードを変えることが可能である。
【0015】
第3の手段によれば、紐体を用いるので、設計の自由度が高くなる。
【0016】
第4の手段によれば、溶質が水溶性なので、簡単に溶媒を入手できる。
【0017】
第5の手段によれば、注入口を利用して溶媒を外部から注入することで、エネルギ補給又は水やり等のイメージが醸し出され、興趣性の高い動作玩具が実現できる。
【0018】
第6の手段によれば、動作部品が伸長されるので、より形態変化を楽しめることになる。
【0019】
第7の手段によれば、腕及び脚が伸長されるので、例えば、人形玩具の成長の様子を表現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】人形玩具の動作前の状態を示した正面図である。
【
図2】人形玩具の動作後の状態を示した正面図である。
【
図3】人形玩具の動作前の状態の内部構造を示した正面図である。
【
図4】人形玩具の動作前の状態の内部構造を示した正面図である。
【
図5】人形玩具の動作前の状態の内部構造を示した側面図である。
【
図6】人形玩具の動作前の状態の内部構造を示した側面図である。
【
図7】人形玩具の瞼を閉じた状態の頭部を示した側面図である。
【
図8】人形玩具の瞼を開いた状態の頭部を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を説明する。
【0022】
図1は、人形玩具100の動作前の状態を示した正面図、
図2は、人形玩具100の動作後の状態を示した正面図である。
この実施形態の動作玩具は人形玩具100として構成されている。この人形玩具100は外部からの刺激によって成長する。そして、この人形玩具100は、最初は、乳児の姿態だったものが、哺乳瓶玩具40(
図6)に入れた水を飲ませることによって幼児の姿態まで変化する。
【0023】
図3は、人形玩具100の動作前の状態の内部構造を示した正面図、
図4は、人形玩具100の動作前の状態の内部構造を示した正面図である。
【0024】
胴体10の上部左には左腕11が前後方向に延びる軸11aを介して回動可能に取り付けられ、先端には左手11bが設けられている。また、胴体10の上部右には右腕12が前後方向に延びる軸12aを介して回動可能に取り付けられ、先端には右手12bが設けられている。
【0025】
左腕11は、大径,中径,小径の3つの筒体11c,11d,11eから構成されている。このうち大径の筒体11cには有底で軸11aが付設され、小径の筒体11dの先には左手11bが取り付けられている。そして、大径の筒体11cに、中径の筒体11dと,小径の筒体11eが入れ子式に抜止めされた形で嵌合され、左腕11は、テレスコピック式に伸縮可能となっている。また、左腕11の内部には筒体11cと左手11bとの間にコイルばね11fが設けられ、このコイルばね11fによって左腕11は伸長する方向に付勢されている。
【0026】
右腕12は、大径,中径,小径の3つの筒体12c,12d,12eから構成されている。このうち大径の筒体12cには有底で軸12aが付設され、小径の筒体12dの先には右手12bが取り付けられている。そして、大径の筒体12cに、中径の筒体12dと,小径の筒体12eが入れ子式に抜止めされた形で嵌合され、右腕12は、テレスコピック式に伸縮可能となっている。また、右腕12の内部には筒体12cと右手12bとの間にコイルばね12fが設けられ、このコイルばね12fによって右腕12は伸長する方向に付勢されている。
【0027】
胴体10の下部左には左脚13が左右方向に延びる軸13aを介して回動可能に取り付けられ、下端には左足13bが設けられている。また、胴体10の下部右には右脚14が左右方向に延びる軸14aを介して回動可能に取り付けられ、先端には右足14bが設けられている。
【0028】
左脚13は、大径,中径,小径の3つの筒体13c,13d,13eから構成されている。このうち大径の筒体13cには有底で軸13aが付設され、小径の筒体13dの先には左足13bが取り付けられている。そして、大径の筒体13cに、中径の筒体13dと,小径の筒体13eが入れ子式に抜止めされた形で嵌合され、左脚13は、テレスコピック式に伸縮可能となっている。また、左脚13の内部には筒体13cと左足13bとの間にコイルばね13fが設けられ、このコイルばね13fによって左脚13は伸長する方向に付勢されている。
【0029】
右脚14は、大径,中径,小径の3つの筒体14c,14d,14eから構成されている。このうち大径の筒体14cには有底で軸14aが付設され、小径の筒体14dの先には右足14bが取り付けられている。そして、大径の筒体14cに、中径の筒体14dと,小径の筒体14eが入れ子式に抜止めされた形で嵌合され、右脚14は、テレスコピック式に伸縮可能となっている。また、右脚14の内部には筒体14cと右足14bとの間にコイルばね14fが設けられ、このコイルばね14fによって右脚14は伸長する方向に付勢されている。
【0030】
図5は、人形玩具100の動作前の状態の内部構造を示した側面図、
図6は、人形玩具100の瞼を閉じた状態の頭部を示した側面図である。
胴体10には有底で上端に開口を持つシリンダ15が設けられている。シリンダ15の下端部は人形玩具100の口42とチューブ43を介して連通されている。シリンダ15の底には排出口15bが設けられている。
シリンダ15の直上には、ピストン16aを持つ当接部材16が設けられている。
このように構成されたシリンダ15内には入浴剤ブロック21が積層されてセットされる。
【0031】
当接部材16は筒状に構成され、中央にピストン16aが形成されている。ピストン16aの下端はねシリンダ15内の入浴剤ブロック21にコイルばね11f,12f,13f,14fによる付勢、或いは人形玩具100を立てた際には、それに加えて重力による付勢によって当接している。また、当接部材16のうちピストン16aを取り囲む部分はシリンダ15の外側に嵌まっている。
【0032】
当接部材16の上下方向中間部左にはテグス(紐体の1つ)17が、また、上下方向中間部右にはテグス18の一端がそれぞれ結合されている。テグス17,18は、乳児の状態(
図1の状態)で、当接部材16に沿って下方に延在している。そして、左側のテグス17は左腕11の付け根部分から左腕11内に導かれ、他端は左手11bに結合されている。また、右側のテグス18は右腕12の付け根部分から右腕12内に導かれ、他端は右手12bに結合されている。
【0033】
また、当接部材16の下端左にはテグス19が、また、下端右にはテグス20の一端がそれぞれ結合されている。テグス19,20は、乳児の状態(
図1の状態)で、シリンダ15に沿って下方に延在している。そして、左側のテグス19は左脚13の付け根部分から左脚13内に導かれ、他端は左足13bに結合されている。また、右側のテグス20は右脚14の付け根部分から右脚14内に導かれ、他端は右足14bに結合されている。
【0034】
人形玩具100の目部には眼球22と、瞼23とが設けられている(
図1及び
図2)。眼球22には瞳孔が表示されている。
図7は、人形玩具100の瞼を閉じた状態の頭部を示した側面図、
図8は、人形玩具100の瞼を開いた状態の頭部を示した側面図である。
眼球22は人形玩具100の頭部30に固定されている。また、瞼23は軸23aを中心に回動可能となっていて、図示しないトーションばねの付勢力によって眼球22に覆いかぶさる方向に付勢されている。この瞼23の基端部には突片23bが設けられている。そして、おしゃぶり24を口42から抜き取った際に突片23bによってストッパ25が押されて瞼23が開かれるようになっている。ストッパ25は、おしゃぶり24を口42に挿入した際に瞼23の回動を阻止する。このストッパ23は特になくてもよく、おしゃぶり24によって直接に突片23bを係止してもよい。
【0035】
続いて、哺乳瓶玩具40(
図5)について説明する。哺乳瓶玩具40は例えば軟性樹脂で形成され、注水の際には乳首40aを人形玩具100の口42に差し込むことができるように構成されている。これによって、人形玩具100にミルクをやっている様子が表現できる。なお、哺乳瓶玩具40の乳首40aは短いので、乳首40aを人形玩具100の口42に差し込んでも、ストッパ25によって瞼23は閉じた状態に係止されない。
【0036】
(動作)
本実施形態の人形玩具100は、予め、入浴剤ブロック21が複数個、積層状態でシリンダ15に入れられている。その結果、ピストン16aは押し上げられ、当接部材16は上昇位置にある。このときには、テグス17,18,19,20は上方に引っ張られ、左腕11,右腕12,左脚13,右脚14は縮んだ状態にある。このとき、人形玩具100は乳幼児の姿態となる。人形玩具100は寝せた状態又は立てた状態いずれでも使用できる。
【0037】
この状態から、人形玩具100に哺乳瓶玩具30で水をあげると、少しずつシリンダ15内の最下にある入浴剤ブロック21が溶ける。そして、入浴剤が溶けた溶液は排出口15bから排出される。人形玩具100におむつを履かせておけば、おむつで当該溶液は吸収される。そして、入浴剤ブロック21が溶けると、当接部材16は所定の付勢力でその空きスペースに進入する。また、当接部材16の進入に連れて、テグス17,18,19,20が緩もうとするが、その分、コイルばね11f,12f,13f,14fの付勢力によって左腕11、右腕12、左脚13及び右脚14が伸長される。
【0038】
そうして、シリンダ15内の入浴剤ブロック21が全て溶けると、左腕11及び右腕12は水平近くまで持ち上がり最大限伸長される。また、入浴剤ブロック21が全て溶けると、左脚13及び右脚14も伸長される。
図2には、この状態が示され、人形玩具100は女児の姿態となる。
【0039】
(実施形態の効果)
以上のように構成された人形玩具100によれば、次のような主たる効果を奏する。
すなわち、水により入浴剤を溶かして左腕11、右腕12、左脚13及び右脚14を伸長させる目新しい人形玩具100が実現できる。
また、シリンダ15に入浴剤ブロック21を積層しているので動作ストロークや動作時間を長くすることができる。
また、左腕11、右腕12、左脚13及び右脚14が伸長されるので、例えば、人形玩具100の成長の様子を表現することができる。
【0040】
(変形例)
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、かかる実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、ピストン16aを止める固形物として入浴剤ブロック21を用いたが、代わりに、水溶性カプセルや角砂糖等を使用してもよい。また、固形物として発泡スチロールを用い、水の代わりにリモネンを使用してもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、動作玩具として人形玩具100を説明したが、人形玩具100に限定されない。腕及び脚を動作させるロボット玩具であってもよいし、帆を上げるような動作をする帆船玩具であっても、植物を動作させる鉢植えの植物玩具等の動作部分を持つ動作玩具一般に使用できる。
【0042】
なお、入浴剤ブロック21等の溶質は補充できるように構成されていてもよい。
【0043】
さらに、テグス17,18,19,20の代わりに溶質から構成される紐を用い、紐を溶媒によって溶かすことにより動作部品を動作させるようにしてもよい。この場合には、シリンダ15、ピストン16a及び入浴剤ブロック21は不要である。
【符号の説明】
【0044】
100 人形玩具
10 胴体
11 左腕
12 右腕
13 左脚
14 右脚
15 シリンダ
16 当接部材
16a ピストン
21 入浴剤ブロック