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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 9/18 20060101AFI20240507BHJP
   B60C 3/00 20060101ALI20240507BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240507BHJP
   B60C 9/20 20060101ALI20240507BHJP
   B60C 9/22 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B60C9/18 N
B60C3/00 Z
B60C1/00 C
B60C9/18 G
B60C9/20 B
B60C9/20 F
B60C9/22 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020071779
(22)【出願日】2020-04-13
(65)【公開番号】P2021167172
(43)【公開日】2021-10-21
【審査請求日】2022-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】有馬 正之
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-217957(JP,A)
【文献】特開2019-209755(JP,A)
【文献】特開2017-043202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C1/00-19/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面と接するトレッドのタイヤ径方向内側にベルト層を備える空気入りタイヤであって、
前記空気入りタイヤの外径ODは、350mm以上、600mm以下であり、
前記空気入りタイヤのタイヤ幅SWは、125mm以上、255mm以下であり、
前記空気入りタイヤの偏平率は、40%以上、75%以下であり、
前記空気入りタイヤに組み付けられるリムホイールのリム径RDは、10インチ以上、
22インチ以下であり、
前記リムホイールのリム幅RWは、3.8インチ以上、8インチ以下であり、
0.78≦RW/SW≦0.99、及び
0.56≦RD/OD≦0.75
の関係を満たし、
前記ベルト層は、所定方向に沿って設けられた複数のベルトコードを有する一つまたは複数のベルトによって構成され、
前記ベルトの少なくとも何れかは、前記ベルトコードが樹脂材料によって被覆された樹脂被覆ベルトであり、
前記トレッドのショルダー領域における単位幅当たりの前記ベルトコードの断面積の合計は、前記トレッドのセンター領域における単位幅当たりの前記ベルトコードの断面積の合計と同一、または前記センター領域における単位幅当たりの前記ベルトコードの断面積の合計よりも広く
前記ショルダー領域は、前記トレッドのうち、前記トレッドに形成されるタイヤ幅方向において最も外側に形成される周方向主溝からタイヤ幅方向外側の領域であり、
前記センター領域は、タイヤ赤道線を含み、タイヤ幅方向における前記ショルダー領域以外の領域であり、
前記ショルダー領域における前記ベルトコードの直径は、前記センター領域における前記ベルトコードの直径よりも大きい空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記ショルダー領域における前記ベルトコードは、タイヤ周方向に沿って設けられる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記センター領域における前記ベルトコードは、タイヤ周方向に沿って設けられる請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記センター領域における前記ベルトコードは、タイヤ周方向に対して傾斜して設けられる請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記ショルダー領域における前記ベルトコードの間隔は、前記センター領域における前記ベルトコードの間隔よりも狭い請求項1乃至3の何れか一項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、耐荷重能力を高めた小径の空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐荷重能力(最大負荷能力)を高めつつ小径化された空気入りタイヤが知られている(特許文献1参照)。このような空気入りタイヤによれば、特に、小型車両の省スペース化が図れ、広い乗車スペースが確保できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-138435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、都市内での人や物などの輸送に主眼を置いた新たな小型シャトルバスが提案されている。このような小型シャトルバスは、全長5m、全幅2m程度であり、車両総重量も3tを超える場合も想定されている。このような小型シャトルバスに装着される空気入りタイヤに対しても、省スペース化が求められている。
【0005】
また、このような小型シャトルバスに装着される空気入りタイヤは、高い内圧が設定されることが想定されており、高い内圧に対する十分な耐久性が求められる。
【0006】
特に、このような空気入りタイヤでは、ベルト層が設けられていないトレッドのショルダー部分が高い内圧によってタイヤ径方向に成長し易い問題がある。
【0007】
そこで、以下の開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、高い耐荷重能力及び省スペース化を達成しつつ、高い内圧に対する耐久性を高めた空気入りタイヤの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、路面と接するトレッド(トレッド20)のタイヤ径方向内側にベルト層(例えば、ベルト層50)を備える空気入りタイヤ(空気入りタイヤ10)であって、前記空気入りタイヤの外径ODは、350mm以上、600mm以下であり、前記空気入りタイヤのタイヤ幅SWは、125mm以上、255mm以下であり、前記空気入りタイヤの偏平率は、40%以上、75%以下であり、前記空気入りタイヤに組み付けられるリムホイール(リムホイール100)のリム径RDは、10インチ以上、22インチ以下であり、前記リムホイールのリム幅RWは、3.8インチ以上、8インチ以下であり、0.78≦RW/SW≦0.99、及び0.56≦RD/OD≦0.75の関係を満たし、前記ベルト層は、所定方向に沿って設けられた複数のベルトコード(ベルトコード51a)を有する一つまたは複数のベルト(ベルト51)によって構成され、前記ベルトの少なくとも何れかは、前記ベルトコードが樹脂材料によって被覆された樹脂被覆ベルトであり、前記トレッドのショルダー領域における単位幅当たりの前記ベルトコードの断面積の合計は、前記トレッドのセンター領域における単位幅当たりの前記ベルトコードの断面積の合計と同一、または前記センター領域における単位幅当たりの前記ベルトコードの断面積の合計よりも広い。
【発明の効果】
【0009】
上述した空気入りタイヤによれば、高い耐荷重能力及び省スペース化を達成しつつ、高い内圧に対する耐久性を高め得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、空気入りタイヤ10が装着される車両1の全体概略側面図である。
図2図2は、空気入りタイヤ10及びリムホイール100の断面図である。
図3図3は、空気入りタイヤ10の断面図である。
図4図4は、ベルト層50の一部拡大断面図である。
図5図5は、カーカス40及びベルト層50の一部分解平面図である。
図6図6は、変更例1に係る空気入りタイヤ10Aのカーカス40及びベルト層50Aの一部分解平面図である。
図7図7は、変更例2に係る空気入りタイヤ10Bのカーカス40及びベルト層50Bの一部分解平面図である。
図8図8は、変更例3に係る空気入りタイヤ10Cのベルト層50Cの一部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。なお、同一の機能や構成には、同一または類似の符号を付して、その説明を適宜省略する。
【0012】
(1)空気入りタイヤが装着される車両の概略構成
図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤ10が装着される車両1の全体概略側面図である。図1に示すように、本実施形態では、車両1は、4輪自動車である。なお、車両1は、4輪に限定されず、6輪構成或いは8輪構成などであってもよい。
【0013】
車両1は、車輪構成に応じて、所定数の空気入りタイヤ10が装着される。具体的には、車両1には、リムホイール100に組み付けられた空気入りタイヤ10が所定位置に装着される。
【0014】
車両1は、都市内での人や物などの輸送に主眼を置いた新たな小型シャトルバスに属する。本実施形態では、新たな小型シャトルバスとは、全長が4m~7m、全幅2m程度であり、車両総重量が3t前後である車両を想定する。但し、サイズ及び車両総重量は、必ずしも当該範囲に限定されず、多少であれば、当該範囲から外れても構わない。
【0015】
また、小型シャトルバスは、必ずしも人の輸送に限らず、物の輸送、移動店舗、移動オフィスなどとして用いられてもよい。
【0016】
さらに、小型シャトルバスは、都市内での人や物などの輸送に主眼が置かれているため、比較的低い走行速度レンジ(最高速度70km/h以下、平均速度50km/h程度)を想定する。このため、ハイドロプレーニング対策は重視されなくても構わない。但し、小型シャトルバスは、都市間の輸送などに用いられてもよく、速度走行レンジも高く(例えば、最高速度100km/h)なっても構わない。
【0017】
本実施形態では、車両1は、自動運転機能(レベル4以上を想定)を備えた電気自動車であることを前提とするが、自動運転機能は必須ではなく、また、電気自動車でなくても構わない。
【0018】
車両1が電気自動車である場合、インホイールモーター(不図示)をパワーユニットとして用いられることが好ましい。インホイールモーターは、ユニット全体がリムホイール100の内側空間に設けられてもよいし、ユニットの一部がリムホイール100の内側空間に設けられてもよい。
【0019】
また、インホイールモーターを用いる場合、車両1は、各車輪が独立して操舵が可能な独立操舵機能を備えることが好ましい。これにより、その場での転回、及び横方向への移動が可能となるとともに、動力伝達機構が不要となるため、車両1のスペース効率を向上し得る。
【0020】
このように、車両1では、高いスペース効率が要求される。このため、空気入りタイヤ10は、極力小径であることが好ましい。
【0021】
一方、車両サイズ及び用途に応じた相応の車両総重量となる車両1に装着されるため、高い耐荷重能力(最大負荷能力)が要求される。
【0022】
空気入りタイヤ10は、このような要件を満たすべく、外径OD(図1において不図示、図2参照)を小さくしつつ、車両1の車両総重量に対応した耐荷重能力を有する。
【0023】
また、車両1がインホイールモーター及び独立操舵機能を備える場合、応答性向上の観点からは空気入りタイヤ10の偏平率は低いことが好ましく、インホイールモーターなどの収容スペースを考慮すると、空気入りタイヤ10のリム径RD(図1において不図示、図2参照)は、大きいことが好ましい。
【0024】
(2)空気入りタイヤの構成
図2は、空気入りタイヤ10及びリムホイール100の断面図である。具体的には、図2は、リムホイール100に組み付けられた空気入りタイヤ10のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。なお、図2では、断面のハッチング表示は、省略されている(図3以降も同様)。
【0025】
空気入りタイヤ10は、比較的小径である一方、幅広である。具体的には、空気入りタイヤ10に組み付けられるリムホイール100の径であるリム径RDは、10インチ以上、22インチ以下である。なお、リム径RDは、他の数値範囲を考慮すると、12インチ以上、17.5インチ以下としてもよい。
【0026】
図2に示すように、リム径RDは、リムホイール100のリム本体部分の外径であり、リムフランジ110の部分は含まない。
【0027】
また、空気入りタイヤ10のタイヤ幅SWは、125mm以上、255mm以下である。図2に示すように、タイヤ幅SWは、空気入りタイヤ10の断面幅を意味し、空気入りタイヤ10がリムガード(不図示)を備える場合、リムガード部分は含まれない。
【0028】
さらに、空気入りタイヤ10の偏平率は、40%以上、75%以下である。なお、偏平率は、式1を用いて算出される。
【0029】
偏平率(%)=タイヤ断面高さH/タイヤ幅SW(断面幅)×100 …(式1)
空気入りタイヤ10の外径である外径ODは、350mm以上、600mm以下である。なお、外径ODは、500mm以下であることが好ましい。
【0030】
外径ODがこのようなサイズであって、空気入りタイヤ10に組み付けられるリムホイール100のリム幅をRWとした場合、空気入りタイヤ10は、(式2)及び(式3)の関係を満たす。リム幅RWは、3.8インチ以上、8インチ以下である。
【0031】
0.78≦RW/SW≦0.99 …(式2)
0.56≦RD/OD≦0.75 …(式3)
なお、空気入りタイヤ10は、0.78≦RW/SW≦0.98を満たすことが好ましく、0.78≦RW/SW≦0.95を満たすことがより好ましい。また、空気入りタイヤ10は、0.56≦RD/OD≦0.72を満たすことが好ましく、0.56≦RD/OD≦0.71を満たすことがより好ましい。
【0032】
このような関係を満たす空気入りタイヤ10は、小径でありながら、車両1の車両総重量を支持するために必要なエアボリュームを確保し得る。具体的には、エアボリュームは、荷重支持性能を考慮すると20,000cm以上必要である。また、省スペース化を考慮すると80,000cm以下であることが必要である。
【0033】
なお、上述の関係を満たすのであれば、リム幅RWは、特に限定されないが、エアボリュームを確保する観点からは、なるべく広いことが好ましい。例えば、リム幅は、3.8~7.8Jとすることができる。
【0034】
また、同じくエアボリュームを確保する観点からは、外径ODに対するリム径RDの比率が小さい、つまり、偏平率が高いことが好ましい。但し、上述したように、応答性の観点からは偏平率が低いことが好ましく、また、インホイールモーターなどの収容スペースを考慮すると、リム径RDは大きいことが好ましいため、偏平率及びリム径RDは、エアボリュームと、応答性及びインホイールモーターなどの収容スペースとにおいてトレードオフの関係となる。
【0035】
空気入りタイヤ10としての好適なサイズの一例としては、205/40R15が挙げられる。また適合リム幅は、7.5J程度である。なお、好適なサイズの他の例としては、215/45R12が挙げられる。この場合、適合リム幅は、7.0J程度である。
【0036】
さらに、特に限定されないが、空気入りタイヤ10の設定内圧(正規内圧)は、400~1,100kPa、現実的には、500~900kPaを想定する。なお、正規内圧とは、例えば、日本ではJATMA(日本自動車タイヤ協会)のYearBookにおける最大負荷能力に対応する空気圧であり、正規荷重とは、JATMA YearBookにおける最大負荷能力に対応する最大負荷能力(最大荷重)である。欧州ではETRTO、米国ではTRA、その他各国のタイヤ規格が対応する。
【0037】
また、空気入りタイヤ10が負担する荷重は、500~1,500kgf、現実的には、900kgf程度を想定する。
【0038】
図3は、空気入りタイヤ10の断面図である。具体的には、図3は、空気入りタイヤ10及びリムホイール100のタイヤ幅方向及びタイヤ径方向に沿った断面図である。
【0039】
図3に示すように、空気入りタイヤ10は、トレッド20、タイヤサイド部30、カーカス40、ベルト層50及びビード部60を備える。図3に示すように、空気入りタイヤ10の断面形状は、タイヤ赤道線CLと基準として対称である。
【0040】
トレッド20は、路面と接する部分である。トレッド20には、空気入りタイヤ10の使用環境や装着される車両の種別に応じたパターン(不図示)が形成される。
【0041】
トレッド20に形成されるパターンは、特に限定されないが、本実施形態では、トレッド20には、複数の周方向溝が形成される。具体的には、トレッド20には、複数の周方向主溝21及び周方向主溝22が形成されている。なお、トレッド20には、図示しない幅方向溝(ラグ溝)が形成されてもよい。
【0042】
周方向主溝21は、タイヤ幅方向において最も外側に形成される。周方向主溝22は、周方向主溝21よりもタイヤ幅方向内側、つまり、タイヤ赤道線CL側に形成される。
【0043】
タイヤサイド部30は、トレッド20に連なり、トレッド20のタイヤ径方向内側に位置する。タイヤサイド部30は、トレッド20のタイヤ幅方向外側端からビード部60の上端までの領域である。タイヤサイド部30は、サイドウォールなどと呼ばれることもある。
【0044】
カーカス40は、空気入りタイヤ10の骨格(タイヤ骨格)を形成する環状の部材である。カーカス40は、タイヤ径方向に沿って放射状に配置されたカーカスコード41(図3において不図示、図5参照)がゴム材料によって被覆されたラジアル構造である。但し、ラジアル構造に限定されず、カーカスコード41がタイヤ径方向に交錯するように配置されたバイアス構造でも構わない。
【0045】
カーカスコード41の材質は、特に限定されないが、上述したような空気入りタイヤ10の用途を考慮すると、芳香族ポリアミド繊維、炭素繊維またはスチールの何れかによって形成されることが好ましい。
【0046】
ベルト層50は、トレッド20のタイヤ径方向内側に設けられる。具体的には、ベルト層50は、トレッド20とカーカス40との間に設けられ、タイヤ周方向に沿って延びる円環状である。
【0047】
ベルト層50は、一つまたは複数のベルトによって構成されてよい。ベルト層50の構成については、後述する。
【0048】
ビード部60は、タイヤサイド部30に連なり、タイヤサイド部30のタイヤ径方向内側に位置する。ビード部60は、タイヤ周方向に延びる円環状であり、ビード部60を介してカーカス40がタイヤ幅方向内側からタイヤ幅方向外側に折り返されている。
【0049】
(3)ベルト層50の構成
次に、ベルト層50の具体的な構成について説明する。図4は、ベルト層50の一部拡大断面図である。図5は、カーカス40及びベルト層50の一部分解平面図である。
本実施形態では、ベルト層50は、一つのベルト51によって構成される。図4及び図5に示すように、ベルト51は、所定方向に沿って設けられた複数のベルトコード51aを有する。
【0050】
また、本実施形態では、ベルト51は、ベルトコード51aが樹脂材料によって被覆された樹脂被覆ベルトである。具体的には、ベルト51は、樹脂材料によって被覆されたベルトコード51aをタイヤ周方向に沿って巻き回すことによって形成された単層のスパイラルベルトである。なお、スパイラルベルトの具体的な構成は、例えば、特開2018-65426号公報に記載されている。
【0051】
当該樹脂材料には、タイヤサイド部30を構成するゴム材料、及びトレッド20を構成するゴム材料よりも引張弾性率の高い樹脂材料が用いられる。当該樹脂材料としては、弾性を有する熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー(TPE)、及び熱硬化性樹脂等を用いることができる。走行時の弾性と製造時の成形性を考慮すると、熱可塑性エラストマーを用いることが望ましい。
【0052】
熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、ポリアミド系熱可塑性エラストマー(TPA)、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー(TPU)、ポリエステル系熱可塑性エラストマー(TPC)、動的架橋型熱可塑性エラストマー(TPV)などが挙げられる。
【0053】
また、熱可塑性樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂等が挙げられる。さらに、熱可塑性樹脂材料としては、例えば、ISO 75-2またはASTM D648に規定されている荷重たわみ温度(0.45MPa荷重時)が78°C以上、JIS K7113に規定される引張降伏強さが10MPa以上、同じくJIS K7113に規定される引張破壊伸びが50%以上、JIS K7206に規定されるビカット軟化温度(A法)が130°C以上であるものを用いることができる。
【0054】
また、ベルトコード51aのコード自体は、芳香族ポリアミド繊維、炭素繊維またはスチールの何れかによって形成されることが好ましい。
【0055】
ショルダー領域S1に設けられるベルトコード51aの間隔G1は、センター領域S2に設けられるベルトコード51aの間隔G2よりも密になっている。つまり、ショルダー領域S1におけるベルトコード51aの間隔G1は、センター領域S2におけるベルトコード51aの間隔G2よりも狭い。ここで、間隔G1及び間隔G2は、タイヤ幅方向において隣接するベルトコード51aの中心を基準とした隣接ベルトコード51a間の距離と解釈されてよい。
【0056】
なお、ショルダー領域S1とは、トレッド20のうち、トレッド20に形成されるタイヤ幅方向において最も外側に形成される周方向主溝21からタイヤ幅方向外側の領域を意味してよい。本実施形態では、ショルダー領域S1は、周方向主溝21のタイヤ幅方向における中心からタイヤ幅方向外側の領域と解釈されてよい。
【0057】
また、センター領域S2は、トレッド20のうち、ショルダー領域S1よりもタイヤ幅方向内側の領域、つまり、タイヤ赤道線CLを含むタイヤ幅方向におけるショルダー領域S1以外の領域を意味してよい。
【0058】
本実施形態では、ショルダー領域S1に設けられているベルトコード51aは、タイヤ周方向に沿って設けられる。同様に、センター領域S2に設けられているベルトコード51aは、タイヤ周方向に沿って設けられる。
【0059】
なお、「タイヤ周方向に沿って」とは、タイヤ周方向と平行であること意味してよいが、タイヤ周方向に対して多少傾斜していても構わない。
【0060】
上述したように、ショルダー領域S1のベルトコード51aの間隔G1は、センター領域S2のベルトコード51aの間隔G2よりも密である。一方、ベルトコード51aのコード径(直径と呼んでもよい)は、ショルダー領域S1及びセンター領域S2において変わらず同一である。
【0061】
このため、ショルダー領域S1における単位幅W当たりのベルトコード51aの断面積の合計は、センター領域S2における単位幅W当たりのベルトコード51aの断面積の合計よりも広い。
【0062】
単位幅Wの値は、特に限定されないが、図4に示すように、少なくとも2,3本のベルトコード51aを含むような値(タイヤサイズによるが、例えば、5mm程度)よりも大きい値とすることが好ましい。
【0063】
なお、ショルダー領域S1における単位幅W当たりのベルトコード51aの断面積の合計は、センター領域S2における単位幅W当たりのベルトコード51aの断面積の合計と同一
であってもよい。この場合、後述するように、ベルトコード51aのコード径は、ショルダー領域S1とセンター領域S2とにおいて異なっていてもよい。また、この場合、ショルダー領域S1とセンター領域S2とは、別体のベルトによって構成されてもよい。つまり、ベルト層50は、複数のベルトによって構成されてもよい。
【0064】
(4)作用・効果
上述した実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。空気入りタイヤ10は、上述した車両1のように、都市内での人や物などの輸送に主眼を置いた新小型シャトルバス用として用いることができる。
【0065】
具体的には、空気入りタイヤ10の外径ODは、350mm以上、600mm以下であり、タイヤ幅SWは、125mm以上、255mm以下である。また、空気入りタイヤ10の偏平率は、40%以上、75%以下である。
【0066】
空気入りタイヤ10に組み付けられるリムホイール100のリム径RDは、10インチ以上、22インチ以下であり、リム幅RWは、3.8インチ以上、8インチ以下である。
【0067】
このようなサイズを有する空気入りタイヤ10は、さらに、以下の関係を満たす。
【0068】
0.78≦RW/SW≦0.99、及び
0.56≦RD/OD≦0.75
このため、車両1のサイズと比較して十分に小径であり、車両1の省スペース化に貢献し得る。
【0069】
また、空気入りタイヤ10によれば、0.78≦RW/SW≦0.99の関係を満たすため、タイヤ幅SWに対するリム幅RWが広く、つまり、幅広のタイヤを構成でき、高い耐荷重能力を発揮するために必要なエアボリュームを確保し易い。なお、リム幅RWが広くなり過ぎると、タイヤ幅SWも広がりスペース効率が低下するとともに、ビード部60がリムホイール100から外れやすくなる。
【0070】
さらに、空気入りタイヤ10によれば、0.56≦RD/OD≦0.75の関係を満たすため、外径ODに対するリム径RDが大きく、インホイールモーターなどの収容スペースを確保し易い。なお、リム径RDが小さくなり過ぎると、ディスクブレーキまたはドラムブレーキの径サイズが小さくなる。このため、有効なブレーキの接触面積が小さくなり、必要な制動性能の確保が難しくなる。
【0071】
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、新たな小型シャトルバスなどに装着される場合において、さらに高い耐荷重能力を有しつつ、高いスペース効率を達成し得る。
【0072】
また、空気入りタイヤ10のリム径RDは、10インチ以上、22インチ以下であるため、小径を維持しつつ、必要十分なエアボリューム及びインホイールモーターなどの収容スペースを確保し得る。また、制動性能及び駆動性能も確保できる。
【0073】
さらに、空気入りタイヤ10のタイヤ幅SWは、125mm以上、255mm以下であり、空気入りタイヤ10の偏平率は、40%以上、75%以下であるため、必要十分なエアボリューム及びインホイールモーターなどの収容スペースを確保し得る。
【0074】
本実施形態では、ベルト51は、ベルトコード51aが樹脂材料によって被覆された樹脂被覆ベルトである。また、ショルダー領域S1における単位幅W当たりのベルトコード51aの断面積の合計は、センター領域S2における単位幅W当たりのベルトコード51aの断面積の合計よりも広い。
【0075】
空気入りタイヤ10は、上述したようなサイズを有するため、リムホイール100に組み付けられた空気入りタイヤ10の内部空間に充填されるエアボリュームが少なくなり、高い荷重を支持するために、高い内圧に設定される。
【0076】
このため、特に、ベルト層50が設けられていないトレッド20のショルダー部分が高い内圧によってタイヤ径方向に成長し易くなるが、ショルダー領域S1のベルトコード51aの間隔G1は、センター領域S2のベルトコード51aの間隔G2よりも密とすることによって、ショルダー領域S1における単位幅W当たりのベルトコード51aの断面積を、センター領域S2における単位幅W当たりのベルトコード51aの断面積の合計よりも大きくし、特に、ショルダー領域S1におけるタイヤ径方向における成長(径成長)を抑制することができる。
【0077】
すなわち、空気入りタイヤ10によれば、高い耐荷重能力及び省スペース化を達成しつつ、高い内圧に対する耐久性を高めることができる。
【0078】
本実施形態では、上述したように、ショルダー領域S1のベルトコード51aの間隔G1が、センター領域S2のベルトコード51aの間隔G2よりも狭く密となっている。このため、特に、ショルダー領域S1における径成長をより効果的に抑制し得る。
【0079】
本実施形態では、ショルダー領域S1におけるベルトコード51aは、タイヤ周方向に沿って設けられる。また、センター領域S2におけるベルトコード51aも、タイヤ周方向に沿って設けられる。
【0080】
このため、タイヤ周方向に沿って設けられた複数のベルトコード51aを有するベルト51によって、空気入りタイヤ10が高い内圧に設定された場合でも効果的に径成長を抑制できる。
【0081】
(5)その他の実施形態
以上、実施形態について説明したが、当該実施形態の記載に限定されるものではなく、種々の変形及び改良が可能であることは、当業者には自明である。
【0082】
図6は、変更例1に係る空気入りタイヤ10Aのカーカス40及びベルト層50Aの一部分解平面図である。以下、上述した空気入りタイヤ10と異なる部分について主に説明し、同様の部分については、その説明を適宜省略する。
【0083】
図6に示すように、空気入りタイヤ10Aは、ベルト層50Aを備える。ベルト層50Aは、複数のベルト、具体的には、一対のベルト52と、ベルト53とによって構成される。
【0084】
ベルト52は、複数のベルトコード52aを有する。ベルト52は、ショルダー領域S1に設けられる。ベルトコード52aは、タイヤ周方向に沿って設けられる。
【0085】
ベルト53は、複数のベルトコード53aを有する。ベルト53は、センター領域S2に設けられる。
【0086】
ベルトコード53aは、タイヤ周方向に対して傾斜して設けられる。具体的には、ベルト53は、いわゆる交錯ベルトを構成し、複数のベルトコード53aは、タイヤ周方向を基準として一方側に傾斜するベルトコードと、タイヤ周方向を基準として他方側に傾斜するベルトコードとを含む。
【0087】
ベルト52は、上述したベルト51と同様に樹脂被覆ベルトでよい。また、ベルト53は、樹脂被覆ベルトでもよいし、ゴム材料によって被覆されたゴム被覆ベルトでもよい。或いは、ベルト52をゴム被覆ベルトととし、ベルト53を樹脂被覆ベルトとしてもよい。
【0088】
つまり、ベルト52またはベルト53の少なくとも何れかが樹脂被覆ベルトであればよい。また、ベルト52及びベルト53の両方が樹脂被覆ベルトであってもよい。
【0089】
図7は、変更例2に係る空気入りタイヤ10Bのカーカス40及びベルト層50Bの一部分解平面図である。
【0090】
図7に示すように、空気入りタイヤ10Bは、ベルト層50Bを備える。ベルト層50Bは、ベルト51とベルト55との二層によって構成される。
【0091】
ベルト51は、空気入りタイヤ10に備えられていたベルト51と同様である。ベルト55は、ベルト51よりもタイヤ径方向内側に設けられる。具体的には、ベルト55は、カーカス40とベルト51との間に設けられる。
【0092】
ベルト55は、複数のベルトコード55aを有する。ベルト55は、少なくともセンター領域S2に設けられることが好ましい。但し、図7に示すように、ベルト55は、さらに、ショルダー領域S1まで設けられても構わない。
【0093】
ベルトコード55aは、タイヤ周方向に対して傾斜して設けられる。具体的には、ベルト55は、変更例1に係るベルト53と同様に、いわゆる交錯ベルトを構成し、複数のベルトコード53aは、タイヤ周方向を基準として一方側に傾斜するベルトコードと、タイヤ周方向を基準として他方側に傾斜するベルトコードとを含む。
【0094】
ベルト55は、樹脂被覆ベルトでもよいし、ゴム材料によって被覆されたゴム被覆ベルトでもよい。
【0095】
図8は、変更例3に係る空気入りタイヤ10Cのベルト層50Cの一部拡大断面図である。図8に示すように、空気入りタイヤ10Cは、ベルト層50Cを備える。
【0096】
ベルト層50Cは、上述したベルト層50と類似した構成を有するが、直径の異なる複数の種類のベルトコードを含む。具体的には、ベルト層50Cは、複数のベルトコード51cと、複数のベルトコード51dとを含む。
【0097】
ベルトコード51cのコード径(直径φ1)は、ベルトコード51dのコード径(直径φ2)よりも大きい。ベルトコード51cは、ショルダー領域S1に設けられ、ベルトコード51dは、センター領域S2に設けられる。
【0098】
つまり、ショルダー領域S1におけるベルトコード51cの直径は、センター領域S2におけるベルトコード51dの直径よりも大きい。これにより、ベルト51と同様に、ショルダー領域S1における単位幅W当たりのベルトコード51cの断面積の合計は、センター領域S2における単位幅W当たりのベルトコード51dの断面積の合計よりも広くなっている。
【0099】
このような変更例1~3に係る空気入りタイヤ10A、空気入りタイヤ10B及び空気入りタイヤ10Cによっても、空気入りタイヤ10と同様に、高い耐荷重能力及び省スペース化を達成しつつ、高い内圧に対する耐久性を高めることができる。
【0100】
また、上述した実施形態及び変更例では、ショルダー領域S1におけるベルトコードは、タイヤ周方向に沿って設けられていたが、ショルダー領域S1においても、ベルトコードは、タイヤ周方向に対して大きく傾斜していても構わない。
【0101】
以上、本開示について詳細に説明したが、当業者にとっては、本開示が本開示中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本開示は、請求の範囲の記載により定まる本開示の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本開示の記載は、例示説明を目的とするものであり、本開示に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0102】
1 車両
10,10A,10B,10C 空気入りタイヤ
20 トレッド
21,22 周方向主溝
30 タイヤサイド部
30 タイヤサイド部
40 カーカス
41 カーカスコード
50,50A,50B,50C ベルト層
51,52,53,55 ベルト
51a,51c,51d,52a,53a,55a ベルトコード
100 リムホイール
110 リムフランジ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8