(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】摩擦攪拌接合アタッチメント、摩擦攪拌接合ヘッド、摩擦攪拌接合装置、および摩擦攪拌接合方法
(51)【国際特許分類】
B23K 20/12 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B23K20/12 340
B23K20/12 342
(21)【出願番号】P 2020075490
(22)【出願日】2020-04-21
【審査請求日】2023-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000003458
【氏名又は名称】芝浦機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 孝一
(72)【発明者】
【氏名】松▲崎▼ 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 稔尚
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-135575(JP,A)
【文献】特開2006-068855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械の
主軸ヘッドに回転自在に支持された主軸に装着される本体と、
前記本体に回転自在に支持されかつ接合ツールを装着可能な加工軸と、
前記加工軸を回転駆動する回転駆動部と、
前記本体の外側に前記主軸と同軸で回転可能に装着されかつ前記主軸ヘッドに接続可能な固定部と、
前記固定部に形成されて前記主軸ヘッドから供給されるエアを前記回転駆動部に供給するエア通路と、を有し、
前記回転駆動部は、前記エア通路から供給されるエアで回転するエアモータであることを特徴とする摩擦攪拌接合アタッチメント。
【請求項2】
請求項
1に記載した摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、
前記加工軸は、前記主軸の軸線上に同軸配置されていることを特徴とする摩擦攪拌接合アタッチメント。
【請求項3】
請求項
1に記載した摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、
前記加工軸は、前記主軸の軸線と交差方向に配置されていることを特徴とする摩擦攪拌接合アタッチメント。
【請求項4】
請求項
3に記載した摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、
前記加工軸は、前記主軸の軸線と交差方向の配置が、前記加工軸に前記接合ツールを装着した際に前記接合ツールの加工部位が前記主軸の軸線上となる位置とされていることを特徴とする摩擦攪拌接合アタッチメント。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載した摩擦攪拌接合アタッチメントと、
前記摩擦攪拌接合アタッチメントに装着された前記接合ツールと、を有することを特徴とする摩擦攪拌接合ヘッド。
【請求項6】
請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載した摩擦攪拌接合アタッチメントと、
前記摩擦攪拌接合アタッチメントに装着された前記接合ツールと、
前記摩擦攪拌接合アタッチメントが装着された工作機械と、を有することを特徴とする摩擦攪拌接合装置。
【請求項7】
請求項
6に記載した摩擦攪拌接合装置を用い、
前記回転駆動部により前記接合ツールを回転させてワークに対する摩擦攪拌接合を行うとともに、
前記主軸の回転により前記接合ツールの向きを変更することを特徴とする摩擦攪拌接合方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦攪拌接合アタッチメント、摩擦攪拌接合ヘッド、摩擦攪拌接合装置、および摩擦攪拌接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
材料の接合手法として摩擦攪拌接合が用いられている。
摩擦攪拌接合においては、十分な摩擦熱を得るために、接合ツールの回転に高トルクが必要であり、従来は専用の摩擦攪拌接合装置が用いられてきた。一方、高トルクが得られるものであれば、汎用の工作機械を摩擦攪拌接合装置として用いることができる(特許文献1参照)。
前述した特許文献1では、接合するワークの表面に対して接合ツールの回転軸が垂直に配置されていた。これに対し、接合ツールの回転軸を傾斜させ、その先端側が移動方向の前側に変位するような姿勢とすることにより、ワークへの進入性および軟化した材料の抑え込み性を高めることがなされている。
このような接合ツールの回転軸の傾斜姿勢は、接合ツールを含む摩擦攪拌接合ヘッドや接合ツールを装着可能な摩擦攪拌接合アタッチメントに屈曲ジョイントを含む傾斜機構を設けて実現されるほか、工作機械の主軸を傾斜状態に調整することで実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述した特許文献1では、摩擦攪拌接合を行う材料の接合線は直線であり、この接合線に沿って回転する接合ツールを移動させていた。
これに対し、より複雑な形状に対する摩擦攪拌接合が求められている。例えば、途中で屈曲する接合線や、曲線状の接合線などに対して、摩擦攪拌接合の適用が望まれている。
しかし、屈曲する接合線や曲線状の接合線に対する摩擦攪拌接合では、前述した接合ツールを傾斜姿勢とする方式がそのまま適用できないという問題がある。
【0005】
すなわち、屈曲する接合線や曲線状の接合線に対して摩擦攪拌接合を行う場合、当然ながら回転する接合ツールを接合線に沿って移動させる。例えば、X軸方向の接合線に沿って摩擦攪拌接合を行う場合、接合ツールの回転軸をX軸方向に傾斜させた状態で、接合ツールをX軸方向へ移動させる。
ここで、接合線が直角に折れ曲がっていたとすると、接合ツールの移動方向は動作プログラムによって容易に変更できるが、接合ツールの回転軸の傾斜姿勢は変更できない。その結果、接合ツールは、X軸と直交方向へ移動する際に、回転軸がX軸方向に傾斜した姿勢のままになるという不都合が生じる。
このような不都合を回避するために、接合ツールの移動方向だけでなく、接合ツールの傾斜方向についても容易に変更できることが求められていた。
【0006】
さらに、ワークの上面に対する摩擦攪拌接合とは別に、ワークの側面に対する摩擦攪拌接合が要望されている。このような側面への摩擦攪拌接合には、主軸を側面に正対させる手法のほか、垂直な主軸にアングルヘッドおよび接合ツールを装着し、側面の向きに応じて接合ツールの向きを変える手法が用いられる。しかし、主軸の向きやアングルヘッドの向きを変更するために、工作機械の位置制御が煩雑になる等の不都合がある。
このようなワーク側面の摩擦攪拌接合においても、アングルヘッドの向きを容易に変更できることが求められていた。
【0007】
本発明の目的は、向きの変更が容易に行える摩擦攪拌接合アタッチメント、摩擦攪拌接合ヘッド、摩擦攪拌接合装置、および摩擦攪拌接合方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントは、
工作機械の主軸に装着される本体と、
前記本体に回転自在に支持されかつ接合ツールを装着可能な加工軸と、
前記加工軸を回転駆動する回転駆動部と、を有することを特徴とする。
【0009】
このような本発明では、加工軸に接合ツールを装着するとともに、工作機械の主軸に本体を装着する。本体において、回転駆動部で加工軸および接合ツールを回転させ、回転する接合ツールをワークに接触させることで、ワークの摩擦攪拌接合を行うことができる。この際、回転駆動部は、主軸からのセンタースルーエアで駆動されるエアモータ等とすることができ、主軸の回転には依存しない。
一方、主軸を回転させることで、主軸とともに本体が回転し、本体における加工軸および接合ツールの向きを変更できる。
これにより、主軸を回転させる動作により、接合ツールの傾斜方向などの向きを容易に変更することができる。
【0010】
本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントにおいて、
前記回転駆動部は、前記主軸の軸心を通して供給されるエアで回転するエアモータであることが好ましい。
このような本発明では、主軸からのエアを用いることで、外部動力の供給などが必要なく、動力源を容易に確保できる。
なお、回転駆動部の動力としては、主軸ヘッドから固定部を経て電力供給される電動モータなどとしてもよい。
【0011】
本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントは、
前記加工軸は、前記主軸の軸線上に同軸配置されていることが好ましい。
この際、加工軸は、主軸の軸線と完全に同軸ではなく、主軸の軸線に対して所定の傾斜角度とすることができる。
このような本発明では、主軸により本体の向きを変えることで、加工軸および接合ツールの向き、例えば接合ツールが傾斜した向きを、任意の向きに変更することができる。
さらに、加工軸が主軸の軸線と同軸上にあれば、主軸に直接接合ツールを装着した場合と比べて、接合ツールの軸線方向の位置のみが異なり、ワーク表面に対する位置は同じである。従って、主軸に直接接合ツールを装着した場合の制御プログラムを基にして、軸線方向の数値修正など最小限の変更だけで転用することができる。
【0012】
本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントは、
前記加工軸は、前記主軸の軸線と交差方向に配置されていることが好ましい。
このような本発明では、例えば垂直方向の主軸に装着することで、加工軸および接合ツールを水平方向に支持することができ、ワーク側面の摩擦攪拌接合を行うことができる。そして、主軸により本体の向きを変えることで、加工軸および接合ツールの向きを変更することができる。
【0013】
本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントは、
前記加工軸は、前記主軸の軸線と交差方向の配置が、前記加工軸に前記接合ツールを装着した際に前記接合ツールの加工部位が前記主軸の軸線上となる位置とされていることが好ましい。
このような本発明では、主軸ないし接合ツールがどの向きであっても、接合ツールの加工部位が主軸の軸線上となる。従って、接合ツールの向きに関わりなく、ワークに対する加工位置の指定が容易に行え、制御プログラムの作成なども容易にできる。
【0014】
本発明の摩擦攪拌接合ヘッドは、
前述した本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントと、
前記摩擦攪拌接合アタッチメントに装着された前記接合ツールと、を有することを特徴とする。
このような本発明では、前述した本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントと同様な効果を得ることができる。
【0015】
本発明の摩擦攪拌接合装置は、
前述した本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントと、
前記摩擦攪拌接合アタッチメントに装着された前記接合ツールと、
前記摩擦攪拌接合アタッチメントが装着された工作機械と、を有することを特徴とする。
このような本発明では、前述した本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントと同様な効果を得ることができる。
【0016】
本発明の摩擦攪拌接合方法は、
前述した本発明の摩擦攪拌接合装置を用い、
前記回転駆動部により前記接合ツールを回転させてワークに対する摩擦攪拌接合を行うとともに、
前記主軸の回転により前記接合ツールの向きを変更することを特徴とする。
このような本発明では、前述した本発明の摩擦攪拌接合アタッチメントと同様な効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、向きの変更が容易に行える摩擦攪拌接合アタッチメント、摩擦攪拌接合ヘッド、摩擦攪拌接合装置、および摩擦攪拌接合方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1実施形態の摩擦攪拌接合装置を示す斜視図。
【
図2】前記第1実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメントを示す側面図。
【
図3】前記第1実施形態の向き変え動作を示す模式図。
【
図4】本発明の第2実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメントを示す側面図。
【
図5】前記第2実施形態の向き変え動作を示す模式図。
【
図6】本発明の第3実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメントを示す側面図。
【
図7】本発明の第4実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメントを示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1において、本実施形態の摩擦攪拌接合装置1は、縦型主軸を有する汎用の工作機械2に、本発明に基づく摩擦攪拌接合アタッチメント10と、摩擦攪拌接合用の汎用の接合ツール20と、を装着して構成される。
【0020】
工作機械2は、ワーク9が固定されるテーブル3と、先端に工具を装着可能な主軸4と、主軸4を回転自在に支持する主軸ヘッド5と、主軸ヘッド5を任意位置へ移動させる移動機構6と、を備えている。
移動機構6は、水平なガイドバー61に支持されたスライダ62を有し、主軸ヘッド5はスライダ62から下向きに支持されている。従って、スライダ62に対して主軸ヘッド5を昇降させることで、主軸4の先端をZ軸方向の指定された位置に移動可能である。また、ガイドバー61に沿ってスライダ62を移動させることで、主軸4の先端をX軸方向の指定された位置に移動可能である。
【0021】
主軸4は、軸線Rが垂直(Z軸方向)とされ、主軸ヘッド5内の駆動モータにより軸線R廻り(C軸方向)に回転可能かつ指定された角度位置に停止可能である。
テーブル3は、ベッド7に設置された駆動機構により、垂直な軸線廻り(C軸方向)に回転可能、かつ指定された角度位置に停止可能である。
これらのテーブル3、主軸4、主軸ヘッド5および移動機構6は、それぞれベッド7の上面に設置され、全体を開閉自在なカバー8で囲うことができる。
【0022】
主軸4には、本発明に基づく摩擦攪拌接合アタッチメント10を介して接合ツール20が装着されている。ここで、摩擦攪拌接合アタッチメント10に接合ツール20を装着することで、本発明の摩擦攪拌接合ヘッド19が構成される。
【0023】
図2において、摩擦攪拌接合アタッチメント10は、工作機械2の主軸4に装着される本体11と、本体11に回転自在に支持されて先端に接合ツール20を装着可能な加工軸14と、加工軸14を回転駆動する回転駆動部15と、を有する。
【0024】
本体11は、規格に基づくテーパーシャンク111で主軸4に装着可能であるとともに、軸心に沿ってセンタースルーホール112を有し、センタースルーホール112には主軸4からセンタースルーエアが供給可能である。
回転駆動部15は、高圧空気により回転するエアモータで構成され、センタースルーホール112を通して主軸4から供給されるセンタースルーエアにより回転可能である。
【0025】
本体11において、加工軸14および回転駆動部15は、主軸4の軸線Rに対して傾斜して設置されている。
加工軸14および回転駆動部15の回転軸線Ccは、本体11に対して0~5度程度の角度Atに傾けられ、回転軸線Ccの先端側が傾斜した側が、摩擦攪拌接合アタッチメント10の前側Dcとされている。
加工軸14の先端(図中下端)は、本体11の端面から露出され、その先端に接合ツール20が装着される。
【0026】
従って、本実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメント10においては、主軸4からセンタースルーホール112を通して回転駆動部15にセンタースルーエアを供給することで、回転駆動部15により加工軸14および接合ツール20が回転駆動され(回転動作Rc)、接合ツール20によるワーク9の摩擦攪拌接合を行うことができる。
一方、主軸4により本体11を回転駆動すること(回転動作Rs)で、接合ツール20の移動方向に応じて摩擦攪拌接合アタッチメント10の前側Dcの向き変えを行うことができる。
【0027】
図3において、例えばワーク9が屈曲した接合線91,92を有する場合には、その交差位置で摩擦攪拌接合アタッチメント10の前側Dcの向き変えを行う。
先ず、接合ツール20を回転(回転動作Rc)させながら接合線91に沿って接合方向D1へ移動させる。このとき、摩擦攪拌接合アタッチメント10は、その前側Dcを接合方向D1に向けておく。この状態で、接合ツール20の回転軸線Ccは、主軸4の軸線Rに対して角度Atだけ傾斜し、接合ツール20の先端は前側Dcである接合方向D1に傾斜した姿勢となっている。
【0028】
接合ツール20が接合線91と接合線92との交差位置に達したら、主軸4により摩擦攪拌接合アタッチメント10を回転(回転動作Rs)させ、角度Arの方向変更により、前側Dcが接合線92の接合方向D2に向かうように向き変えを行う。
これにより、接合ツール20の回転軸線Ccは、主軸4の軸線Rに対して角度Atだけ傾斜した状態のまま、接合ツール20の先端が接合方向D2に傾斜した姿勢とされる。従って、接合方向D1が接合方向D2に変わっても、接合ツール20の傾斜方向である前側Dcを常に移動方向に向けておくことができ、ワーク9に対する摩擦攪拌接合を適切に行うことができる。
【0029】
このような本実施形態によれば、以下のような効果が得られる。
本実施形態では、摩擦攪拌接合アタッチメント10の加工軸14に接合ツール20を装着するとともに、工作機械2の主軸4に本体11を装着する。本体11において、回転駆動部15で加工軸14および接合ツール20を回転させ、回転する接合ツール20をワーク9に接触させることで、ワーク9の摩擦攪拌接合を行うことができる。この際、回転駆動部15は、主軸4からのセンタースルーエアで駆動されるエアモータ等とすることができ、主軸4の回転には依存しない。
一方、主軸4を回転させることで、主軸4とともに本体11が回転し、本体11における加工軸14および接合ツール20の向き(回転軸線Ccが傾斜した向き)を、任意の向きに変更することができる。
これにより、主軸4を回転させる動作により、接合ツール20の傾斜方向(前側Dc)を容易に変更することができる。
【0030】
本実施形態では、回転駆動部15としてエアモータを用い、主軸4からのセンタースルーエアを用いることで、外部動力の供給などが必要なく、動力源を容易に確保できる。
本実施形態では、加工軸14が主軸4の軸線Rと同軸上であるので、主軸4に直接接合ツール20を装着した場合と比べて、接合ツール20の軸線R方向の位置のみが異なり、ワーク9の表面に対する位置は同じである。従って、主軸4に直接接合ツール20を装着した場合の制御プログラムを基にして、軸線R方向の数値修正など最小限の変更だけでこれを転用することができる。
【0031】
次に、
図4および
図5により、本発明の第2実施形態について説明する。
本実施形態は、基本構成については前述した第1実施形態と同様であり、重複する説明は省略する。
前述した第1実施形態では、加工軸14および接合ツール20が主軸4の軸線Rと同軸配置され、主軸4の回転により、本体11における加工軸14および接合ツール20の前側Dcの向き変えを行った。
これに対し、本実施形態では、加工軸14および接合ツール20が主軸4の軸線Rに対して交差方向に配置され、主軸4の回転により、加工軸14および接合ツール20の回転軸線Ccの向き変えを行う。
【0032】
図4において、摩擦攪拌接合アタッチメント10Aは、工作機械2の主軸4に装着される本体11Aを有する。
本体11Aは、主軸4側の端部に、第1実施形態と同様なテーパーシャンク111およびセンタースルーホール112を有する。一方、主軸4と反対側の端部には、拡張部113が形成され、拡張部113にはセンタースルーホール112に連通するエア通路114が形成されている。
【0033】
拡張部113には、先端に接合ツール20を装着可能な加工軸14と、加工軸14を回転駆動する回転駆動部15と、が設置されている。
加工軸14および回転駆動部15の回転軸線Ccは、主軸4の軸線Rと交差方向に配置されている。
回転駆動部15は、第1実施形態と同様にエアモータで構成され、エア通路114およびセンタースルーホール112を通して供給される主軸4からのセンタースルーエアを動力源として加工軸14を回転駆動可能である。
【0034】
加工軸14の先端は、拡張部113の表面から露出され、その先端に接合ツール20が装着される。
加工軸14は、回転軸線Ccつまり主軸4の軸線Rと交差方向の配置が、加工軸14に接合ツール20を装着した際に、接合ツール20の加工部位(先端位置)が主軸4の軸線R上となる位置とされている。
【0035】
従って、本実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメント10Aにおいては、主軸4からセンタースルーホール112およびエア通路114を通して回転駆動部15にセンタースルーエアを供給することで、回転駆動部15により加工軸14および接合ツール20が回転駆動(回転動作Rc)され、
図5に示すような円柱状のワーク9Aに対しても接合ツール20による摩擦攪拌接合を行うことができる。
この際、接合ツール20は、回転軸線Ccが軸線Rと交差する水平な向きDiとされており、ワーク9Aの垂直な側面の摩擦攪拌接合を行うことができる。摩擦攪拌接合は、接合ツール20を回転させつつ、その先端を
図4に交差する方向(前側Dc)へ水平に移動させることで行う。
一方、主軸4により本体11Aを回転駆動(回転動作Rs)することで、接合ツール20の向きDiの向き変えを行うことができる。
【0036】
図5において、円柱状のワーク9Aに対し、その周面93の開始位置94から終了位置95までの摩擦攪拌接合を行う場合、接合動作の進行に従って摩擦攪拌接合アタッチメント10Aの向きDiおよび前側Dcの向き変えを行う。
先ず、接合ツール20を回転(回転動作Rc)させながら、向きDiへ移動させ、開始位置94でワーク9Aに押込んで接合動作を開始する。そして、接合ツール20を前側Dcへと移動させ、終了位置95に至る摩擦攪拌接合を行う。
この際、周面93の表面に向きDiが直交するように、主軸4により本体11Aを回転駆動(回転動作Rs)する。これにより、摩擦攪拌接合アタッチメント10Aの前側Dcについても、周面93に沿うように向き変えが行われる。
これにより、接合ツール20は、周面93に対して常に直交方向とされ、円柱状のワーク9Aの周面93に対しても適切な摩擦攪拌接合を行うことができる。
【0037】
次に、
図6により、本発明の第3実施形態について説明する。
本実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメント10Bは、基本構成については前述した第1実施形態と同様であり、重複する説明は省略する。
前述した第1実施形態では、回転駆動部15は、センタースルーホール112を通して供給される主軸4からのセンタースルーエアを動力源として、加工軸14を回転駆動していた。
これに対し、本実施形態では、本体11の外側に回転自在に装着された固定部16を通して供給される主軸ヘッド5からのエアを用いている。
【0038】
固定部16は、本体11に対して図示しない軸受を介して装着され、本体11と主軸4とは軸線Rまわりに相対回転可能である。
固定部16は一部が径方向外向きに延長され、その先端にサブシャンク161が形成されている。
サブシャンク161は、テーパーシャンク111を主軸4に装着した際に、主軸ヘッド5の受部に嵌合され、サブシャンク161を通して本体11から主軸ヘッド5に至るエア通路162が形成される。
本体11と固定部16との間には、回転状態でもエア受け渡しが可能な図示しないカップリングが形成されている。
【0039】
このような摩擦攪拌接合アタッチメント10Bにおいても、前述した第1実施形態と同様な効果を得ることができる。
さらに、回転駆動部15へのエアは、固定部16のサブシャンク161を用いて主軸ヘッド5から供給でき、センタースルーでない主軸4を有する工作機械2においても容易に実施することができる。
【0040】
次に、
図7により、本発明の第4実施形態について説明する。
本実施形態の摩擦攪拌接合アタッチメント10Cは、基本構成については前述した第2実施形態と同様であり、重複する説明は省略する。
前述した第2実施形態では、回転駆動部15は、センタースルーホール112およびエア通路114を通して供給される主軸4からのセンタースルーエアを動力源として、加工軸14を回転駆動していた。
これに対し、本実施形態では、本体11の外側に回転自在に装着された固定部16を通して供給される主軸ヘッド5からのエアを用いている。
【0041】
固定部16は、前述した第3実施形態と同様であり、重複する説明は省略する。
このような摩擦攪拌接合アタッチメント10Cにおいても、前述した第2実施形態と同様な効果を得ることができる。
さらに、回転駆動部15へのエアは、固定部16のサブシャンク161を用いて主軸ヘッド5から供給でき、センタースルーでない主軸4を有する工作機械2においても容易に実施することができる。
【0042】
なお、本発明は前述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形などは本発明に含まれる。
前記各実施形態では、回転駆動部15をエアモータとしたが、回転駆動部15としては、主軸ヘッド5から外部ケーブルを経て電力供給される電動モータなどとしてもよい。
前記第1実施形態および第3実施形態では、回転駆動部15および加工軸14の回転軸線Ccを、主軸4の軸線Rに対して角度At(0~5度)傾けたが、この角度は適宜選択することができる。また、回転駆動部15と加工軸14とをユニバーサルジョイントなどで接続し、回転駆動部15の回転中心は軸線Rとしつつ、加工軸14の回転軸線Ccを傾けるようにしてもよい。
前記各実施形態では、加工軸14および接合ツール20の回転軸線Ccを、主軸4の軸線Rに沿った方向(
図2および
図6参照)、または直交する方向(
図4および
図7参照)としたが、その中間の任意の角度、例えば45度などとしてもよく、拡張部113に回動機構を追加して角度を選択可能としてもよい。
第2実施形態および第4実施形態では、加工軸14の位置を、接合ツール20の先端が主軸4の軸線Rにくるように設定したが、軸線Rからずれた位置であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、摩擦攪拌接合アタッチメント、摩擦攪拌接合ヘッド、摩擦攪拌接合装置、および摩擦攪拌接合方法に利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1…摩擦攪拌接合装置、2…工作機械、3…テーブル、4…主軸、5…主軸ヘッド、6…移動機構、61…ガイドバー、62…スライダ、7…ベッド、8…カバー、9,9A…ワーク、91…接合線、92…接合線、93…周面、94…開始位置、95…終了位置、10,10A…摩擦攪拌接合アタッチメント、11,11A…本体、111…テーパーシャンク、112…センタースルーホール、113…拡張部、114…エア通路、14…加工軸、15…回転駆動部、16…固定部、161…サブシャンク、162…エア通路、19…摩擦攪拌接合ヘッド、20…接合ツール、Ar…傾斜角度、At…向き変え角度、Cc…回転軸線、D1…接合方向、D2…接合方向、Dc…アタッチメントの前側、Di…向き、R…主軸の軸線、Rc…接合ツールの回転動作、Rs…主軸の回転動作。