(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】自動ドア装置、調整装置、開閉制御調整方法および自動ドアの開閉制御方法
(51)【国際特許分類】
E05F 15/73 20150101AFI20240507BHJP
【FI】
E05F15/73
(21)【出願番号】P 2020078299
(22)【出願日】2020-04-27
【審査請求日】2023-04-03
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100103263
【氏名又は名称】川崎 康
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 吉彦
(72)【発明者】
【氏名】田口 直樹
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-003490(JP,A)
【文献】特開2011-019342(JP,A)
【文献】特開2005-307613(JP,A)
【文献】特開平03-208979(JP,A)
【文献】国際公開第2020/249454(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/70、15/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドアを開閉制御する開閉制御装置と、
前記開閉制御装置に電力供給をするバッテリーの状態を監視する監視部と、
前記バッテリーの状態に基づいて前記開閉制御装置の制御設定を変更する調整部とを備え
、
前記調整部は、前記ドアを制御するための制御パラメータの変更、前記開閉制御装置が制御する対象への電力供給の停止の少なくともいずれか一つによる前記開閉制御装置の制御設定の変更を行い、
前記監視部は、前記バッテリーの残量と前記バッテリーが電力供給を開始してからの経過時間とを取得し、
前記調整部は、前記監視部が取得した前記残量が所定の値より大きく、かつ、前記監視部が取得した前記経過時間が所定の時間より大きいときに前記制御設定を変更する、
自動ドア装置。
【請求項2】
ドアを開閉制御する開閉制御装置と、
前記開閉制御装置に電力供給をするバッテリーの状態を監視する監視部と、
前記バッテリーの状態に基づいて前記開閉制御装置の制御設定を変更する調整部と
、
前記バッテリーの状態と前記開閉制御装置の制御情報とに基づいて、前記開閉制御装置の時間あたりの電力消費量、および、前記バッテリーの残量で前記開閉制御装置が実行可能な開閉動作の残回数のうちの少なくとも一方を推定する推定部と、を備える、
自動ドア装置。
【請求項3】
前記バッテリーの状態は、前記バッテリーが電力供給を開始してからの経過時間およびバッテリーの残量の少なくともいずれか一方を含む
請求項1
又は2に記載の自動ドア装置。
【請求項4】
前記調整部は、前記ドアを制御するための制御パラメータの変更、前記開閉制御装置が制御する対象への電力供給の停止の少なくともいずれか一つによる前記開閉制御装置の制御設定の変更を行う
請求項
2に記載の自動ドア装置。
【請求項5】
前記監視部は、前記バッテリーの残量を取得し、
前記調整部は、前記監視部が取得した前記バッテリーの残量が所定の値より小さいときに前記制御設定を変更する、
請求項
1又は4に記載の自動ドア装置。
【請求項6】
前記監視部は、前記バッテリーの残量と前記バッテリーが電力供給を開始してからの経過時間とを取得し、
前記調整部は、前記監視部が取得した前記残量が所定の値より大きく、かつ、前記監視部が取得した前記経過時間が所定の時間より大きいときに前記制御設定を変更する、
請求項
4に記載の自動ドア装置。
【請求項7】
前記バッテリーの状態と前記開閉制御装置の制御情報とに基づいて、前記開閉制御装置の時間あたりの電力消費量、および、前記バッテリーの残量で前記開閉制御装置が実行可能な開閉動作の残回数のうちの少なくとも一方を推定する推定部とを備える、
請求項
1に記載の自動ドア装置。
【請求項8】
前記調整部は、前記推定部が推定した前記残回数が所定の値より小さい場合には、前記制御設定を変更する、
請求項
2又は7に記載の自動ドア装置。
【請求項9】
前記監視部は、前記
バッテリーが電力供給を開始してからの経過時間と前記バッテリーの残量と前記バッテリーが電力供給を開始してから行った開閉動作の回数とを取得し、
前記推定部は前記バッテリーの前記残量の時間あたりの減少量に基づき前記制御設定の変更による電力消費の削減量を推定する、
請求項
2、7または8に記載の自動ドア装置。
【請求項10】
前記制御設定は、前記ドアを制御するための複数の制御パラメータを含み、
前記調整部は、前記推定部が推定した前記削減量に基づき前記制御設定において変更する前記制御パラメータを選択し、変更後の前記制御パラメータの値を決定する、
請求項
9に記載の自動ドア装置。
【請求項11】
前記調整部は、前記監視部が取得した情報に基づいて前記制御設定を複数回変更する、 請求項1ないし
10のいずれか一項に記載の自動ドア装置。
【請求項12】
前記調整部は、前記ドアの全開時間をより長くする前記制御設定の変更を行う、
請求項1ないし
11のいずれか一項に記載の自動ドア装置。
【請求項13】
前記調整部は、前記監視部が取得した前記バッテリーの残量が所定の値より小さいときに前記ドアを全開状態で停止させる前記制御設定の変更を行う、
請求項1ないし
12のいずれか一項に記載の自動ドア装置。
【請求項14】
ドアの開閉制御装置に電力供給をするバッテリーの状態を監視する監視部と、
前記バッテリーの状態に基づいて前記開閉制御装置の制御設定を変更する調整部とを備え
、
前記調整部は、前記ドアを制御するための制御パラメータの変更、前記開閉制御装置が制御する対象への電力供給の停止の少なくともいずれか一つによる前記開閉制御装置の制御設定の変更を行い、
前記監視部は、前記バッテリーの残量と前記バッテリーが電力供給を開始してからの経過時間とを取得し、
前記調整部は、前記監視部が取得した前記残量が所定の値より大きく、かつ、前記監視部が取得した前記経過時間が所定の時間より大きいときに前記制御設定を変更する、
調整装置。
【請求項15】
ドアの開閉制御装置に電力供給をするバッテリーの状態を監視する監視部と、
前記バッテリーの状態に基づいて前記開閉制御装置の制御設定を変更する調整部と、
前記バッテリーの状態と前記開閉制御装置の制御情報とに基づいて、前記開閉制御装置の時間あたりの電力消費量、および、前記バッテリーの残量で前記開閉制御装置が実行可能な開閉動作の残回数のうちの少なくとも一方を推定する推定部と、を備える、
調整装置。
【請求項16】
ドアの開閉制御装置に電力供給をするバッテリーの状態を監視するステップと、
前記バッテリーの状態に基づいて前記開閉制御装置の制御設定を変更するステップとを含
み、
前記開閉制御装置の制御設定を変更するステップは、前記ドアを制御するための制御パラメータの変更、前記開閉制御装置が制御する対象への電力供給の停止の少なくともいずれか一つによる前記開閉制御装置の制御設定の変更を行い、
前記バッテリーの状態を監視するステップは、前記バッテリーの残量と前記バッテリーが電力供給を開始してからの経過時間とを取得し、
前記開閉制御装置の制御設定を変更するステップは、前記取得した前記残量が所定の値より大きく、かつ、前記取得した前記経過時間が所定の時間より大きいときに前記制御設定を変更する、
開閉制御調整方法。
【請求項17】
ドアの開閉制御装置に電力供給をするバッテリーの状態を監視するステップと、
前記バッテリーの状態に基づいて前記開閉制御装置の制御設定を変更するステップと
、
前記バッテリーの状態と前記開閉制御装置の制御情報とに基づいて、前記開閉制御装置の時間あたりの電力消費量、および、前記バッテリーの残量で前記開閉制御装置が実行可能な開閉動作の残回数のうちの少なくとも一方を推定するステップと、を含む、
開閉制御調整方法。
【請求項18】
ドアの開閉制御装置に電力供給をするバッテリーの状態を監視するステップと、
前記バッテリーの状態に基づいて前記開閉制御装置の制御設定を変更するステップとを含
み、
前記開閉制御装置の制御設定を変更するステップは、前記ドアを制御するための制御パラメータの変更、前記開閉制御装置が制御する対象への電力供給の停止の少なくともいずれか一つによる前記開閉制御装置の制御設定の変更を行い、
前記バッテリーの状態を監視するステップは、前記バッテリーの残量と前記バッテリーが電力供給を開始してからの経過時間とを取得し、
前記開閉制御装置の制御設定を変更するステップは、前記取得した前記残量が所定の値より大きく、かつ、前記取得した前記経過時間が所定の時間より大きいときに前記制御設定を変更する、
自動ドアの開閉制御方法。
【請求項19】
ドアの開閉制御装置に電力供給をするバッテリーの状態を監視するステップと、
前記バッテリーの状態に基づいて前記開閉制御装置の制御設定を変更するステップと
、
前記バッテリーの状態と前記開閉制御装置の制御情報とに基づいて、前記開閉制御装置の時間あたりの電力消費量、および、前記バッテリーの残量で前記開閉制御装置が実行可能な開閉動作の残回数のうちの少なくとも一方を推定するステップと、を含む、
自動ドアの開閉制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ドア装置、調整装置、開閉制御調整方法および自動ドアの開閉制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
停電発生時に自動ドアの機能を維持するための装置として、非常電源装置と、無停電電源装置(UPS)が存在する。例えば、特許文献1には、バッテリーの残量を表示する自動ドア用電源装置が開示されている。特許文献2には、非常時または停電時に、バッテリー電源と、モータ駆動回路への切り替えを行う自動ドアの非常電源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-19342号公報
【文献】特開平5-300783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、自動ドア装置側で停電発生などの非常時に常時開放または常時開放される設定になっていると、施設の利用者の利便性および安全性が損なわれる可能性がある。
また、非常電源装置が使われた場合であっても、ドアの開速度と閉速度が大幅に低下し、センサを含む周辺機器に電力が供給されなくなり、自動ドアの機能が著しく損なわれる場合があった。また、一部の無停電電源装置では、ドアの動作設定が維持されるものの、停電時間または自家発電設備の稼働時間が長くなると、バッテリーの残量が減少する。このため、ドアが開閉動作中に停止する可能性がある。
【0005】
本発明の一態様は、上述の課題を鑑みてなされたものであり、自動ドアのバッテリー動作時に、通行性および安全性を維持しながらバッテリーの給電時間を延ばすことができる自動ドア装置、調整装置、開閉制御調整方法および自動ドアの開閉制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様では、ドアを開閉制御する開閉制御装置と、
前記開閉制御装置に電力供給をするバッテリーの状態を監視する監視部と、
前記バッテリーの状態に基づいて前記開閉制御装置の制御設定を変更する調整部とを備える、
自動ドア装置が提供される。
【0007】
前記バッテリーの状態は、前記バッテリーが電力供給を開始してからの経過時間およびバッテリーの残量の少なくともいずれか一方を含んでもよい。
【0008】
前記調整部は、前記ドアを制御するための制御パラメータの変更、前記開閉制御装置が制御する対象への電力供給の停止の少なくともいずれか一つによる前記開閉制御装置の制御設定の変更を行ってもよい。
【0009】
前記監視部は、前記バッテリーの残量を取得し、
前記調整部は、前記監視部が取得した前記バッテリーの残量が所定の値より小さいときに前記制御設定を変更してもよい。
【0010】
前記監視部は、前記バッテリーの残量と前記バッテリーが電力供給を開始してからの経過時間とを取得し、
前記調整部は、前記監視部が取得した前記残量が所定の値より大きく、かつ、前記監視部が取得した前記経過時間が所定の時間より大きいときに前記制御設定を変更してもよい。
【0011】
前記バッテリーの状態と前記開閉制御装置の制御情報とに基づいて、前記開閉制御装置の時間あたりの電力消費量、および、前記バッテリーの残量で前記開閉制御装置が実行可能な開閉動作の残回数のうちの少なくとも一方を推定する推定部とを備えてもよい。
【0012】
前記調整部は、前記推定部が推定した前記残回数が所定の値より小さい場合には、前記制御設定を変更してもよい。
【0013】
前記監視部は、前記経過時間と前記バッテリーの残量と前記バッテリーが電力供給を開始してから行った開閉動作の回数とを取得し、
前記推定部は前記バッテリーの前記残量の時間あたりの減少量に基づき前記制御設定の変更による電力消費の削減量を推定してもよい。
【0014】
前記制御設定は、前記ドアを制御するための複数の制御パラメータを含み、
前記調整部は、前記推定部が推定した前記削減量に基づき前記制御設定において変更する前記制御パラメータを選択し、変更後の前記制御パラメータの値を決定してもよい。
【0015】
前記調整部は、前記監視部が取得した情報に基づいて前記制御設定を複数回変更してもよい。
【0016】
前記調整部は、前記ドアの全開時間をより長くする前記制御設定の変更を行ってもよい。
【0017】
前記調整部は、前記監視部が取得した前記バッテリーの残量が所定の値より小さいときに前記ドアを全開状態で停止させる前記制御設定の変更を行ってもよい。
【0018】
本開示の一態様では、開閉制御装置に電力供給をするバッテリーの状態を監視する監視部と、
前記バッテリーの状態に基づいて前記開閉制御装置の制御設定を変更する調整部とを備える、
調整装置が提供される。
【0019】
本開示の一態様では、開閉制御装置に電力供給をするバッテリーの状態を監視するステップと、
前記バッテリーの状態に基づいて前記開閉制御装置の制御設定を変更するステップとを含む、
開閉制御調整方法が提供される。
【0020】
本開示の一態様では、ドアの開閉制御装置に電力供給をするバッテリーの状態を監視するステップと、
前記バッテリーの状態に基づいて前記開閉制御装置の制御設定を変更するステップとを含む、
自動ドアの開閉制御方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態による自動ドア装置の例を概略的に示したブロック図。
【
図2】一実施形態による自動ドアシステムの例を示した正面図。
【
図3】自動ドア装置のより詳細な構成の例を示すブロック図。
【
図4】開閉制御装置の制御設定の例を示したテーブル。
【
図5】モードAにおけるドアの動作の例を示したグラフ。
【
図6】モードBにおけるドアの動作の例を示したグラフ。
【
図7】モードCにおけるドアの動作の例を示したグラフ。
【
図8】モードDにおけるドアの動作の例を示したグラフ。
【
図9】バッテリー残量に応じたモード切り替えの第1の例を示したグラフ。
【
図10】バッテリー残量に応じたモード切り替えの第2の例を示したグラフ。
【
図11】調整装置によって実行される処理の例を示したフローチャート。
【
図12】調整装置によって実行される処理の例を示したフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態は、本発明の実施形態の一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。また、本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、図面の寸法比率は、説明の都合上、実際の比率とは異なる場合があり、また、構成の一部が図面から省略される場合がある。
【0023】
図1は、一実施形態による自動ドア装置の例を概略的に示したブロック図である。
図1の自動ドア装置1は、AC電源2と、モータ110と、電気錠18と、コントローラ20と、無停電電源装置30(UPS:Uninterruptable Power Supply)と、周辺機器40とを備えている。AC電源2の例としては、交流電力を供給する電力系統、自家発電設備が挙げられる。周辺機器40の例として、通行人などの検出を行うセンサ41が挙げられる。
【0024】
図2は、自動ドア装置の例を示した正面図である。
図2の自動ドアシステム100は、自動ドア装置1を引分けタイプの引き戸に据え付けた例を示している。ここでは、y軸正方向を上方向、x軸正方向を右方向とそれぞれよぶものとする。ドア10は、引き分けタイプの引き戸であり、第1ドア10Lと、第2ドア10Rとを含む。第1ドア10Lは、ドアハンガー11Lおよび12Lによってレール13に架けられている。また、第2ドア10Rは、ドアハンガー11Rおよび12Rによってレール13に架けられている。ドアハンガー11L、11R、12Lおよび12Rは、いずれも戸車を備えている。戸車がレール13上を回転移動するため、ドアハンガー11L、11R、12Lおよび12Rは、左右に移動することが可能である。レール13の両端には、それぞれドアストッパー14Lおよび14Rが設けられている。ドアストッパー14Lおよび14Rは、第1ドア10Lと、第2ドア10Rが移動できるレール13上の範囲を制限する。
【0025】
また、レール13の上方向には、駆動プーリ16Rおよび従動プーリ16Lの両方に巻き付けられたベルト15が設けられている。モータ110は、駆動プーリ16Rを回転させることによって、ベルト15を時計回りまたは反時計回りに動かすことができる。このとき、従動プーリ16Lは、駆動プーリ16Rおよびベルト15の動きにしたがって回転する。ベルト15の上側には、ドアハンガー12Lが連結されている。また、ベルト15の下側には、ドアハンガー12Rが連結されている。このため、第1ドア10Lと、第2ドア10Rは、ベルト15の動きに応じ、左右に移動する。例えば、
図2のように、ドア10が閉じている場合、ベルト15を反時計周りに動かすことによって、ドア10を開くことができる。また、ドア10が開いている場合、ベルト15を時計周りに動かすことによって、ドア10を閉じることができる。
【0026】
コントローラ20は、自動ドアシステム100の各構成要素を制御する。例えば、コントローラ20は、センサ41による検出結果に応じて、モータ110を駆動し、ドア10を開くことができる。なお、自動ドアシステム100は、センサ41に加えて、タッチスイッチを備えていてもよい。また、自動ドアシステム100は、センサ41の代わりにタッチスイッチを備えていてもよい。これらの場合、コントローラ20は、タッチスイッチ対して行われた操作に応じて、モータ110を駆動し、ドア10を開くことができる。
【0027】
また、コントローラ20は、タイマによってドア10が開いた状態になってから経過した時間を計測することができる。コントローラ20は、計測された時間が一定以上となったら、モータ110を駆動し、ドア10を閉じることができる。また、コントローラ20は、ドア10が閉じた状態となったとき、電気錠18を使って従動プーリ16Lを固定し、ベルト15が動くのを防ぐことができる。なお、自動ドアシステムは、必ず電気錠18を備えていなくてもよい。コントローラ20は、UPS30を介して供給された電力によって動作する。後述するように、コントローラ20は、ドア10の開速度、閉速度、開いた状態になってから閉動作を開始するまでの時間(オープンタイマの時間)などを、調整することが可能である。
【0028】
自動ドアシステム100は、スイッチ17を備えていてもよい。例えば、
図2のように、ドア10が閉じている場合、利用者がスイッチ17をタッチすると、コントローラ20は、モータ110を駆動し、ドア10を開くことができる。また、同一のスイッチ17を利用者がタッチした場合に、ドア10の閉動作が行われるようにしてもよい。なお、ドア10の閉動作を行う別個のスイッチを用意してもよい。スイッチ17は、センサ41がOFFであるときに、利用者がドア10の開動作を行う手段を提供することができる。スイッチ17として、例えば、機械式のスイッチ、静電式のスイッチ、タッチセンサ、画像認識装置、音声認識装置、生体認証装置、パスワード認証装置などを用いることができる。ただし、スイッチ17の方式については、特に問わない。スイッチ17は、利用者が操作するものであってもよいし、コントロールセンターなどの管理者が操作するものであってもよい。また、スイッチ17の配置については、特に限定しない。
【0029】
なお、
図2に示したドア10の構成は一例にしかすぎない。例えば、片引きタイプの引き戸、開き戸、折り戸、グライドドアなどその他の種類のドアを使ってもよい。また、片引きタイプのドアが使われる場合、引き戸は1枚であってもよい。また、自動ドアシステムは、複数のセンサを備えていてもよいし、使われるセンサの種類と配置については、特に問わない。さらに、開閉動作の対象は、ドアに限定されない。例えば、ドアの代わりにシャッター、ゲートなど電力で駆動される装置を開閉動作の対象としてもよい。以降では、自動ドアシステムへの適用を例に、本開示の実施形態の説明を行う。
【0030】
図3は、自動ドア装置のより詳細な構成の例を示したブロック図である。以下では、
図3を参照しながら、本開示による自動ドアシステムを説明する。なお、
図3の自動ドア装置1は、自動ドアシステム100の一部の構成要素に相当する。
【0031】
UPS30は、バッテリー31と、制御部32と、通信部33とを備えている。UPS30の制御部32は、バッテリー31の状態を監視し、バッテリー31の充電/放電を制御する。また、制御部32は、AC電源2からの交流電力の供給の有無を監視する。AC電源2から交流電力の供給がある場合、UPS30は、整流回路(図示せず)によって供給された電力の一部を直流に変換する。そして、制御部32は、直流電力でバッテリー31を充電する。バッテリー31は、例えば、リチウムイオン電池などの2次電池である。ただし、バッテリー31は、その他の種類の電池であってもよい。また、バッテリー31は、複数のバッテリーまたは、複数のバッテリーセルを含んでいてもよい。UPS30は、AC電源2の電力の一部をコントローラ20と、センサ41に供給する。UPS30が供給する電力は、交流と直流のいずれであってもよい。
【0032】
AC電源2から交流電力の供給が停止した場合、UPS30の制御部32は、バッテリー31の放電を開始する。したがって、AC電源2の電力に代わって、バッテリー31の電力がコントローラ20の開閉制御装置21と、センサ41に供給される。この場合、制御部32は、通信部33を介してバッテリー31の状態に関する情報をコントローラ20に転送することができる。ここで、バッテリー31の状態の例としては、バッテリー31が電力供給(放電)を開始してからの経過時間、バッテリー31の残量、バッテリー31の出力電圧などが挙げられる。ただし、バッテリー31の状態に関する情報は、その他の内容を含んでいてもよい。通信部33は、データの送信および受信が可能な通信回路である。通信部33は、例えば、CAN(Controller Area Network)に基づく通信を行う。ただし、通信部33で使われる通信方式については、特に問わない。通信は、有線の接続を介して行われてもよいし、無線によって行われてもよい。
【0033】
図3に示すように、自動ドア装置1はコントローラ20を備えている。コントローラ20は、開閉制御装置21と、監視部23と、記憶部24と、調整部25と、推定部26とを備えている。開閉制御装置21は、ドア10を開閉制御する。監視部23は、開閉制御装置21に電力供給をするバッテリーの状態を監視する。調整部25はバッテリーの状態に基づいて前記開閉制御装置の制御設定を変更する。また、コントローラ20の監視部23は、通信部22に接続されていてもよい。
図3の例では、監視部23と、記憶部24と、調整部25と、推定部26とを含む調整装置27は、開閉制御装置21を含むコントローラ20の一部となっている。ただし、この構成は一例にしかすぎない。例えば、調整装置27は、コントローラ20にオプションとして追加される拡張カード、拡張モジュールなどであってもよいし、コントローラ20の外部に設けられた装置であってもよい。この場合、コントローラ20と、調整装置27との間における通信を行う通信回路が必要となる。開閉制御装置21は、電力をモータ110と、電気錠18に供給する。また、開閉制御装置21は、モータ110と、電気錠18とを制御する。モータ110の挙動、電気錠18の動作、センサ41の使用の有無は、開閉制御装置21の制御設定によって、変更することが可能である。
【0034】
図4は、開閉制御装置21の制御設定の例を示したテーブルである。
図4のテーブルに示されているように、制御設定は、開速度vo、閉速度vc、起動トルクst、オープンタイマot、開押付け力、閉押付け力、電気錠制御の有無、周辺機器への電力供給の有無などの複数の制御パラメータを含んでいてもよい。自動ドア装置1が据え付けられる場所や、使用条件に応じて、各制御パラメータの設定値を個別に調整することが可能である。
【0035】
また、制御設定について、
図4のテーブルのように、複数のモード(例えば、モードA~モードD)が定義されていてもよい。
図4では、モードごとに、異なる組み合わせの設定値が使われている。
図4のテーブルでは、右側の列に行くほど、時間あたりの電力消費量が少ないモードが配置されている。例えば、モードB~モードDにおける開速度voおよび閉速度vcは、モードAにおける設定値を1としたときの百分率で表されている。右側の列に行くほど、小さい開速度voおよび閉速度vcが使われていることがわかる。なお、制御設定において、開速度voおよび閉速度vcは、百分率または比ではなく、具体的な値(例えば、ミリメートル毎秒の速度)で規定されていてもよい。同様に、起動トルクst、開押付け力、閉押付け力などの制御パラメータについても、テーブルの右側の列に行くほど、小さい値が設定されている。
【0036】
停電のため、バッテリー31から供給された電力で自動ドアシステム100が動作している場合、テーブルの右側の列に配置されたモードほど、バッテリー31の電力消費が少なくなるため、動作時間を長く確保することができる。ただし、テーブルの右側の列に配置されたモードほど、機能性(例えば、利便性および快適性)が低下する。例えば、モードDが使われている場合には、センサ41がOFFになっているため、自動ドアシステム100は、利用者を自動的に検出して、ドア10を開かず、利用者は、スイッチ17をタッチしなくてはならない。なお、各モードにおけるドア10の開動作および閉動作の例については、後述する。
【0037】
図4のテーブルに示した制御パラメータの種類、制御パラメータの設定値、モードの定義は、いずれも例にしかすぎない。したがって、開閉制御装置21の制御設定は、必ずこれらのすべての制御パラメータを含んでいなくてもよい。また、開閉制御装置21の制御設定は、その他の制御パラメータを含んでいてもよい。制御パラメータの設定値は、
図4のテーブルとは異なっていてもよい。また、
図4のテーブルとは異なる数のモードが定義されていてもよい。また、各モードにおける設定値は、
図4のテーブルと異なっていてもよい。ただし、以下では、制御設定について、4つのモード(モードA~モードD)が定義されている場合を例に、自動ドアシステム100を説明する。
【0038】
コントローラ20の通信部22は、スイッチ17と、UPS30の通信部33と、センサ41と、電気的に接続されている。例えば、通信部22は、スイッチ17とセンサ41の検出信号を受信し、開閉制御装置21に検出信号を転送する。当該検出信号に基づいて、開閉制御装置21は、ドア10の開動作を行うことができる。また、通信部22は、UPS30の制御部32よりバッテリー31の状態に関する情報を受信することができる。バッテリー31の状態に関する情報は、監視部23に転送されてもよいし、記憶部24に保存されてもよい。
【0039】
監視部23は、開閉制御装置21に電力を供給するバッテリー31の状態を監視する。ここで、バッテリー31の状態は、バッテリー31が電力供給を開始してから経過した時間またはバッテリー31の残量の少なくともいずれかを含んでいてもよい。また、監視部23は、開閉制御装置21の稼働情報を取得してもよい。ここで、開閉制御装置21の稼働情報の例として、ドア10の開動作の回数、ドア10の閉動作の回数、モータ110の駆動回数、モータ110の駆動時間、モータ110の回転数、モータ110の使用電力、モータ110の負荷トルク、電気錠18の施錠回数、および電気錠18の解錠回数が挙げられる。ただし、開閉制御装置21の稼働情報は、その他の情報を含んでいてもよい。
【0040】
記憶部24は、データを保存可能な記憶領域を提供する。記憶部24として、揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ストレージまたは、これらの組み合わせのいずれを使ってもよい。揮発性メモリの例としては、SRAM、DRAMなどが挙げられる。不揮発性メモリの例としては、NORフラッシュメモリ、NANDフラッシュメモリなどが挙げられる。ストレージの例としては、ハードディスク、磁気テープなどが挙げられる。ただし、ここで挙げた以外の種類の揮発性メモリ、不揮発性メモリ、ストレージを使ってもよい。記憶部24には、例えば、開閉制御装置21の制御設定、バッテリー31の状態に関する情報、開閉制御装置21の稼働情報が保存することができる。また、記憶部24に、プログラムおよびプログラムの実行に必要なデータが保存されていてもよい。
【0041】
調整部25は、バッテリー31の状態に基づいて開閉制御装置21の制御設定を変更する。例えば、調整部25は、監視部23が取得したバッテリー31の残量が所定の値より小さいときに制御設定を変更してもよい。また、調整部25は、監視部23が取得したバッテリー31の残量が所定の値より大きくなおかつバッテリー31が電力供給を開始してからの経過時間が所定の時間より大きいときに制御設定を変更してもよい。調整部25による開閉制御装置21の制御設定の変更は、制御パラメータの変更を含んでいてもよい。さらに、調整部25による開閉制御装置21の制御設定の変更は、開閉制御装置21が制御する対象への電力供給の停止を含んでいてもよい。調整部25は、監視部23が取得した情報に基づいて開閉制御装置21の制御設定を複数回変更してもよい。なお、調整部25は、監視部23より情報を取得してもよいし、記憶部24を参照してもよい。
【0042】
推定部26は、バッテリー31の状態と開閉制御装置21の稼働情報に基づいて開閉制御装置21の時間あたりの電力消費または開閉制御装置21が実行可能な開閉動作の回数の少なくともいずれかを推定することができる。例えば、監視部23がバッテリー31の残量とバッテリー31が電力供給を開始してから行った開閉動作の回数とを取得したものとする。このとき、推定部26は開閉動作の回数とバッテリー31の残量とに基づき、開閉制御装置21が制御設定において実行できる開閉動作の合計回数を推定することができる。そして、上述の調整部25は、推定部26が推定した開閉動作の合計回数が所定の値より小さい場合に、制御設定を変更してもよい。
【0043】
また、監視部23は、バッテリー31が電力供給を開始してからの経過時間とバッテリー31の残量とバッテリー31が電力供給を開始してから行った開閉動作の回数とを取得してもよい。この場合、推定部26は、バッテリー31の残量の時間あたりの減少量に基づき開閉制御装置21の制御設定を変更することによる電力消費の削減量を推定する。そして、上述の調整部25は、推定部26が推定した削減量に基づき開閉制御装置21の制御設定において変更する開閉制御装置21の制御パラメータを選択し、変更後の制御パラメータの値を決定することができる。
【0044】
なお、必ずコントローラ20がバッテリー31の残量に関する情報を取得できるとは限らない。例えば、UPS30がバッテリー31の残量を計測する手段を備えていない場合がありうる。また、UPS30がバッテリー31の残量を計測していても、バッテリー31の残量に関する情報を外部に伝達する通信手段およびインタフェースが存在しない場合もありうる。
【0045】
このような場合、監視部23は、開閉制御装置21の稼働情報またはバッテリー31が電力供給を開始してからの経過時間の少なくともいずれかに基づいてバッテリー31の残量を推定してもよい。そして、調整部25は、推定されたバッテリー31の残量が所定の値より小さいときに開閉制御装置21の制御設定の変更を行ってもよい。
【0046】
AC電源2から自動ドアシステム100への交流電力の供給が再開すると、UPS30は、バッテリー31の電力に代わり、AC電源2から供給された電力をコントローラ20の開閉制御装置21と、センサ41に供給する。また、UPS30の制御部32は、バッテリー31の放電を停止し、バッテリー31の充電を再開する。調整部25は、バッテリー31の充電が開始されたとき、開閉制御装置21の制御設定を、バッテリー31が電力供給を開始する前の内容に戻してもよい。例えば、制御設定が
図4のモードB、モードC、モードDのいずれかとなっている場合、制御設定は、モードAに変更される。これにより、自動ドアシステム100の利便性および快適性を高めることができる。また、各制御パラメータの設定値が個別に変更された場合、調整部25は、バッテリー31の充電が開始されたとき、記憶部24に保存されたデフォルト設定の制御パラメータに復旧させてもよい。
【0047】
電力系統が停電から復旧した場合、自動ドアシステム100への交流電力の供給が再開される。また、電力系統が停電中であっても、自家発電設備が始動すると、自動ドアシステム100への交流電力の供給が再開される。AC電源2からの交流電力の供給の再開が、電力系統の停電からの復旧によるものなのか、あるいは、自家発電設備が始動したことによるものなのかが、判別できる場合、調整部25は、異なる制御設定を使うことができる。例えば、電力系統が停電から復旧したと判定される場合、調整部25は、開閉制御装置21をモードAの制御設定に変更する。また、自家発電設備が始動したと判定される場合、調整部25は、開閉制御装置21をモードBの制御設定に変更することができる。すなわち、調整部25は、自家発電設備が始動したと判定した場合には、電力系統が停電から復旧したと判定された場合と比べて、消費電力の抑制を優先した制御設定に変更することができる。例えば、コントロールセンターなどの管理者が、端末などを用いて交流電力の供給再開の原因を入力してもよい。
【0048】
本開示による自動ドア装置は、自動ドアと、監視部23と、調整部25とを備えていてもよい。この場合、監視部23は、自動ドアの開閉制御装置21に電力供給をするバッテリー31の状態を監視する。そして、調整部25は、バッテリー31の状態に基づいて開閉制御装置21の制御設定を変更する。また、監視部23は、自動ドアの開閉制御装置21の稼働情報を取得してもよい。この場合、調整部25は、バッテリー31の状態と開閉制御装置21の稼働情報に基づいて制御設定を変更してもよい。調整部25による開閉制御装置21の制御設定の変更は、自動ドアの全開時間をより長くする処理を含んでいてもよい。
【0049】
さらに、調整部25は、バッテリー31の残量が所定の値より小さいとき、または、バッテリー31が電力供給を開始してからの経過時間が所定の時間より大きくなったときに自動ドアを全開状態で停止させてもよい。例えば、火災、地震、台風、水害などの災害時に停電が発生した場合、自動ドアを全開状態に維持することによって、避難経路を確保することが可能となる。また、調整部25は、バッテリー31の残量が所定の値より小さいとき、または、バッテリー31が電力供給を開始してからの経過時間が所定の時間より大きくなったときに自動ドアを全閉状態で停止させてもよい。例えば、自動ドアを全閉状態に維持することにより、防火機能および/または気密性の確保を行うことができる。
【0050】
本開示による開閉制御調整方法は、開閉制御装置21に電力供給をするバッテリー31の状態を監視するステップと、バッテリー31の状態に基づいて開閉制御装置21の制御設定を変更するステップとを含んでいてもよい。また、自動ドアの開閉制御方法は、ドア10の開閉制御装置21に電力供給をするバッテリー31の状態を監視するステップと、バッテリー31の状態に基づいて開閉制御装置21の制御設定を変更するステップとを含んでいてもよい。
【0051】
UPS30の制御部32、コントローラ20の開閉制御装置21、監視部23、調整部25、推定部26は、FPGA、ASICなどのハードウェア回路、CPU上で動作するプログラム、または、これらの組み合わせによって実装されていてもよい。
【0052】
図5は、モードAにおけるドア10の動作の例を示したグラフである。モードAは、自動ドアシステム100の機能性(例えば、利便性および快適性)を追求した制御設定である(
図4参照)。
図5のグラフ50では、縦軸がドアの位置に、横軸が時刻tにそれぞれ対応している。また、縦軸の下側が、全閉状態、縦軸の上側が全開状態にそれぞれ対応している。
【0053】
全閉状態にあるドア10は、時刻t=0に電気錠18が解錠され、開動作を開始している。モードAでは、センサ41がONとなっているため、自動ドアシステム100は、通行人などの検出を契機に、開動作を開始することができる。このため、起動トルクが大きいほど、ドア10が移動を開始したときから、ドア10が所定の速度に達するまでの時間が短くなる。モードAの起動トルクstAは他のモードより大きい値に設定されているため、ドア10は、比較的短時間で開速度voAに達する。そして、ドア10は、時刻t=t1Aに全開状態となる。モードAでは、ドア10が全開状態にあるとき、第1ドア10Lに対して左方向の押付け力、第2ドア10Rに対して右方向の押付け力が加えられる。
【0054】
ドア10は、時刻t=t1Aから時刻t=t2Aまで全開状態を維持する。ドア10が全開状態を維持する期間(t2A-t1A)は、オープンタイマの設定秒数otAに等しくなる。そして、ドア10は、時刻t=t2Aに閉動作を開始する。起動トルクが充分に大きいため、ドア10は、比較的短時間で閉速度vcAに達している。そして、ドア10は、時刻t3Aに再び全閉状態となる。モードAでは、ドア10が全閉状態にあるとき、第1ドア10Lに対して右方向の押付け力、第2ドア10Rに対して左方向の押付け力が加えられる。また、ドア10は、電気錠18によって全閉状態で施錠される。
【0055】
図6は、モードBにおけるドア10の動作の例を示したグラフである。モードBは、モードAと比べて、自動ドアシステム100の時間あたりの消費電力を低減した制御設定となっている(
図4参照)。
図6のグラフ51では、縦軸がドアの位置に、横軸が時刻tにそれぞれ対応している。また、縦軸の下側が、全閉状態、縦軸の上側が全開状態にそれぞれ対応している。グラフ51では、比較のため、モードBにおけるドア10の動作が実線で、モードAにおけるドア10の動作が破線で、それぞれ示されている。
【0056】
全閉状態にあるドア10は、時刻t=0に電気錠18が解錠され、開動作を開始している。モードBでは、センサ41がONとなっているため、自動ドアシステム100は、通行人などの検出を契機に、開動作を開始することができる。モードBの起動トルクstBはモードAより小さい値に設定されているため、ドア10が所定の開速度(ここでは、voAより小さいvoB)に達するまでに必要な時間がモードAより長くなっている。そして、ドア10は、時刻t=t1Aより遅れた時刻t=t1Bに全開状態となる。モードBでは、ドア10が全開状態にあるとき、第1ドア10Lおよび第2ドア10Rに対して押付け力が加えられない。
【0057】
ドア10は、時刻t=t1Bから時刻t=t2Bまで全開状態を維持する。モードBでは、ドア10が全開状態を維持する期間otB=t2B-t1Bが、モードAより長くなっている。そして、ドア10は、時刻t=t2Bに閉動作を開始する。起動トルクにより、ドア10は、加速し、閉速度vcBに達する。なお、閉速度について、vcA>vcBとなっている。そして、ドア10は、時刻t3Bに再び全閉状態となる。モードBでも、ドア10が全閉状態にあるとき、第1ドア10Lに対して右方向の押付け力、第2ドア10Rに対して左方向の押付け力が加えられる。また、ドア10は、電気錠18によって全閉状態で施錠される。モードBでは、ドア10の開動作、全開状態維持、閉動作に要する合計時間が、モードAより長くなっている。
【0058】
図7は、モードCにおけるドア10の動作の例を示したグラフである。モードCは、モードBと比べて、自動ドアシステム100の時間あたりの消費電力をさらに低減した制御設定となっている(
図4参照)。
図7のグラフ52では、縦軸がドアの位置に、横軸が時刻tにそれぞれ対応している。また、縦軸の下側が、全閉状態、縦軸の上側が全開状態にそれぞれ対応している。グラフ52では、比較のため、モードCにおけるドア10の動作が実線で、モードAおよびBにおけるドア10の動作が破線で、それぞれ示されている。
【0059】
全閉状態にあるドア10は、時刻t=0に電気錠18が解錠され、開動作を開始している。モードCでは、センサ41がONとなっているため、自動ドアシステム100は、通行人などの検出を条件に、開動作を開始することができる。モードCの起動トルクstBはモードBよりさらに小さい値に設定されているため、ドア10が所定の開速度(ここでは、voBより小さいvoC)に達するまでに必要な時間がモードBより長くなっている。そして、ドア10は、時刻t=t1Bより遅れた時刻t=t1Cに全開状態となる。モードCでは、ドア10が全開状態にあるとき、第1ドア10Lおよび第2ドア10Rに対して押付け力が加えられない。
【0060】
ドア10は、時刻t=t1
Cから時刻t=t2
Cまで全開状態を維持する。モードCでは、ドア10が全開状態を維持する期間ot
C=t2
C-t1
Cが、モードBよりさらに長くなっている。そして、ドア10は、時刻t=t2
Cに閉動作を開始する。起動トルクにより、ドア10は、加速し、閉速度vc
Cに達する。なお、閉速度について、vc
B>vc
Cとなっている。そして、ドア10は、時刻t3
Cに再び全閉状態となる。モードCでも、ドア10が全閉状態にあるとき、第1ドア10Lに対して右方向の押付け力、第2ドア10Rに対して左方向の押付け力が加えられる。ただし、モードCにおける押し付け力は、モードBと比べて弱くなっている(
図4参照)。また、ドア10は、電気錠18によって全閉状態で施錠される。モードCでは、ドア10の開動作、全開状態維持、閉動作に要する合計時間が、モードBよりさらに長くなっている。
【0061】
図8は、モードDにおけるドア10の動作の例を示したグラフである。モードDは、モードCと比べて、自動ドアシステム100の時間あたりの消費電力をさらに低減した制御設定となっている(
図4参照)。
図8のグラフ53では、縦軸がドアの位置に、横軸が時刻tにそれぞれ対応している。また、縦軸の下側が、全閉状態、縦軸の上側が全開状態にそれぞれ対応している。グラフ53では、比較のため、モードDにおけるドア10の動作が実線で、モードA~Cにおけるドア10の動作が破線で、それぞれ示されている。
【0062】
全閉状態にあるドア10は、時刻t=0に開動作を開始している。モードDでは、電気錠18が施錠されないため、開動作の開始時に電気錠18の解錠が行われない。また、モードDでは、センサ41がOFFとなっているため、自動ドアシステム100は、通行人などの検出を契機に、開動作を開始することができない。このため、自動ドアシステム100は、代わりに、スイッチ17におけるタッチ操作の検出を契機に、開動作を開始する。また、自動ドアシステム100は、スイッチ17におけるタッチ操作の検出以外の条件で、開動作を開始してもよい。なお、自動ドアシステムが複数のセンサを備えている場合、一部のセンサをOFFにし、消費電力を抑制してもよい。
【0063】
モードDの起動トルクstCはモードCよりさらに小さい値に設定されているため、ドア10が所定の開速度(ここでは、voCより小さいvoD)に達するまでに必要な時間がモードCより長くなっている。そして、ドア10は、時刻t=t2Cより遅れた時刻t=t1Dに全開状態となる。モードDでは、ドア10が全開状態にあるとき、第1ドア10Lおよび第2ドア10Rに対して押付け力が加えられない。
【0064】
グラフ53において、ドア10は、時刻t=t1D以降全開状態となっている。ここでは、例えば、バッテリー31の残量が所定の値より小さくなったか、バッテリー31が電力供給を開始してからの経過時間が所定の時間より大きくなったため、調整部25がバッテリー31から全開状態で停止させたものとする。この場合、ドア10が少なくとも1回の閉動作または、開動作を行うのに足りる残量がバッテリー31で確保されるよう、上述の値(しきい値)を決めることができる。このような動作は、バッテリー31の残量低下によって、自動ドアシステム100に充分な電力が供給されなくなり、自動ドアが望まれない状態で停止(例えば、開動作中または、閉動作中に停止)してしまうことを防ぐ。自動ドアシステム100が設置された場所や、使用条件によって、自動ドアを全開状態で停止させるのか、自動ドアを全閉状態で停止させるのかを決めることができる。
【0065】
なお、
図8に示されていないものの、モードDにおいても、バッテリー31の残量が充分であったり、バッテリー31が電力供給を開始してからの経過時間が少なかったりする場合、時刻t=t1
Dからオープンタイマの設定秒数ot
Dに等しい時間が経過した後、ドア10の閉動作を開始してもよい。
【0066】
図9は、バッテリーの残量に応じたモード切り替えの第1の例を示している。
図9のグラフ54では、縦軸がバッテリー31の残量に、横軸が時刻tにそれぞれ対応している。
【0067】
時刻t1に、電力系統で停電が発生し、UPS30への交流電力の供給が途絶える。このため、制御部32は、バッテリー31からの放電を開始する。このため、バッテリー31は、時刻t1で開閉制御装置21およびセンサ41への電力供給を開始し、自動ドアシステム100は、バッテリー31の電力を使って動作するようになる。グラフ54において、時刻t1後も、開閉制御装置21は、モードAの制御設定による動作を継続する。このため、自動ドアシステム100は、停電後も、もともとの機能(例えば、利便性および快適性)を維持することができる。時刻t1において、100%あったバッテリー31の残量は、時間の経過に応じて、減少する。
【0068】
時刻t2に、監視部23は、バッテリー31の残量が40%となったことを検出する。例えば、バッテリー31の残量が40%となったことを、モードの変更が必要だと判定される第1の条件(しきい値)にすることができる。例えば、自家発電設備の稼働が始まるタイミングにおいて予想されるバッテリー31の残量をしきい値に設定し、モードの切り替えを行うことができる。なお、調整部25がバッテリー31からの電力供給が開始したときからの経過時間に基づき、開閉制御装置21の制御設定の変更を行う場合、自家発電設備が稼働すると予想される時刻に、制御設定の変更(例えば、モードの切り替え)を行ってもよい。これにより、自家発電設備が稼働できない場合に、開閉制御装置21は、消費電力の抑制を優先した制御設定に移行することができる。
【0069】
時刻t2で、調整部25は、開閉制御装置21の制御設定をモードBまたはモードCに変更する。これにより、自動ドアシステム100の動作を継続しつつ、モードAと比べて時間あたりの電力消費を抑えることができる。グラフ54に示されているように、時刻t2以降は、バッテリー31の残量の時間あたりの減少率が緩やかになる。したがって、時刻t2以降も、モードAによる動作を行っていた場合に、バッテリー31の残量が0%となる時刻teにおいても、自動ドアシステム100の動作を継続することができる。
【0070】
なお、ここでは、時刻t2と時刻t3の間で、モードBまたはモードCのいずれかの制御設定が使われている場合を例に説明する。ただし、時刻t2でモードAからモードBへの切り替えを行い、バッテリー31の残量について、別のしきい値を設け、残量が当該しきい値より小さくなったタイミングでモードBからモードCへの切り替えを行ってもよい。
【0071】
時刻t3に、監視部23は、バッテリー31の残量が10%となったことを検出する。例えば、バッテリー31の残量が10%となったことを、モードの変更が必要だと判定される第2の条件(しきい値)にすることができる。時刻t3で、調整部25は、開閉制御装置21の制御設定をモードDに変更する。これにより、自動ドアシステム100の動作を継続しつつ、モードBまたはモードCと比べて時間あたりの電力消費を抑えることができる。グラフ54に示されているように、時刻t3以降は、バッテリー31の残量の時間あたりの減少率がさらに緩やかになる。
【0072】
時刻t4に、監視部23は、バッテリー31の残量が5%となったことを検出する。例えば、バッテリー31の残量が5%となることを、ドア10(自動ドア)の動作を停止させる条件(しきい値)にすることができる。時刻t4で、調整部25は、ドア10を全開状態で停止させている。上述のように、自動ドアシステム100の設置場所や、使用条件によっては、代わりにドア10を全閉状態で停止させてもよい。また、自動ドアシステム100が動作を停止する際における、ドア10の状態を指定しなくてもよい。
【0073】
図10は、バッテリー残量に応じたモード切り替えの第2の例を示したグラフである。
図10のグラフ55では、縦軸がバッテリー31の残量に、横軸が時刻tにそれぞれ対応している。
【0074】
図10のグラフ55では、停電後の各時間帯において使われている制御設定のモードが
図9のグラフ54と異なっている。時刻t1に、自動ドアシステム100がバッテリー31の電力を使って動作するようになったタイミングで、開閉制御装置21の制御設定をモードAからモードBに変更してもよい。そして、時刻t2で、バッテリー31の残量が40%となったときに、開閉制御装置21の制御設定をモードBからモードCに変更してもよい。さらに、時刻t3で、バッテリー31の残量が10%となったときに、開閉制御装置21の制御設定をモードCからモードDに変更してもよい。このように、バッテリー31からの電力供給が始まったタイミングで、消費電力の抑制を優先した制御設定を使い始めることにより、バッテリー31の電力による自動ドアシステム100の動作時間をさらに長くすることができる。
【0075】
図9および
図10の例では、バッテリー31の残量を異なるしきい値と比較し、モードの切り替えを複数回行っていた。ただし、上述とは異なる条件に基づいて、モードの切り替えを行ってもよい。例えば、
図9および
図10とは異なるしきい値を用いてモードの切り替えを行ってもよい。また、バッテリー31の出力電圧をしきい値と比較してもよい。また、バッテリー31が電力供給を開始したときからの経過時間がしきい値より大きいと判定されたときにモードを切り替えてもよい。また、推定部26によって推定された現在のモード(制御設定)において実行できる開閉動作の合計回数がしきい値より小さくなったと判定されたときにモードを切り替えてもよい。また、モードの切り替えが行われる回数については、限定しない。
【0076】
図11は、調整装置27によって実行される処理の例を示したフローチャートである。以下では、
図11のフローチャートを参照しながら、処理を説明する。
【0077】
自動ドアシステム100は、AC電源2の電力で動作している。そして、UPS30の制御部32は、AC電源2から交流電力の供給が停止しているか否かを判定する(ステップS101)。AC電源2から交流電力の供給が停止していない場合(ステップS101のNO)、UPS30は、AC電源2から供給される交流電力を用いてバッテリー31を充電する(ステップS102)。ステップS101の判定は、例えば、周期的に実行されてもよいし、検出器による通知などを契機に実行されてもよい。
【0078】
AC電源2から交流電力の供給が停止した場合(ステップS101のYES)、バッテリー31の放電が開始され、自動ドアシステム100は、バッテリー31の電力で駆動される(ステップS103)。そして、コントローラ20の監視部23は、バッテリー31の状態の監視タイミングであるか否かを判定する(ステップS104)。バッテリー31の状態の監視タイミングである場合(ステップS104のYES)、監視部23は、バッテリー31の残量が所定の値未満であるか否かを判定する(ステップS105)。一方、バッテリー31の状態の監視タイミングでない場合(ステップS104のNO)、監視部23は、待機後、再びステップS104を実行する。ステップS104の判定は、例えば、周期的に実行されてもよいし、ユーザが指定した日時において実行されてもよい。なお、ステップS105のタイミングで、監視部23は、開閉制御装置21の稼働情報を取得してもよい。
【0079】
バッテリー31の残量が所定の値未満である場合(ステップS105のYES)、調整部25は、開閉制御装置21の制御設定を変更する(ステップS106)。その後、所定のタイミングで、再度ステップS101以降の処理が行われる。ステップS105において、バッテリー31の残量は、複数のしきい値と比較されてもよい。そして、複数のしきい値との比較結果に応じて、変更後の制御設定を選択してもよい。ステップS106における制御設定の変更は、上述のように、開閉制御装置21のモード(制御パラメータの設定値の組み合わせ)の変更であってもよい。また、調整部25は、ステップS106で、個別の制御パラメータの調整を行ってもよい。すなわち、ステップS106で、調整部25は、変更対象とする制御パラメータの選択と、変更後の設定値の決定の処理を併せて実行してもよい。バッテリー31の残量が所定の値未満でない場合(ステップS105のNO)、監視部23は、待機後、再びステップS104を実行する。
【0080】
図11のフローチャートによる処理の説明は、以上である。
図11のフローチャートでは、バッテリー31の残量に基づき、開閉制御装置21の制御設定を変更するか否かの判定を行っていた。バッテリー31の残量は、判定に用いることができるバッテリー31の状態の一例にしかすぎない。したがって、バッテリー31の出力電圧などその他の基準に基づき、開閉制御装置21の制御設定を変更するか否かの判定を行ってもよい。以下(
図11)では、バッテリー31が放電を開始してからの経過時間に基づき、開閉制御装置21の制御設定を変更するか否かが判定される場合における処理の例について述べる。
【0081】
図12は、調整装置27によって実行される処理の例を示したフローチャートである。以下では、
図12フローチャートを参照しながら、処理を説明する。
【0082】
自動ドアシステム100は、AC電源2の電力で動作している。そして、UPS30の制御部32は、AC電源2から交流電力の供給が停止しているか否かを判定する(ステップS111)。AC電源2から交流電力の供給が停止していない場合(ステップS111のNO)、UPS30は、AC電源2から供給される交流電力を用いてバッテリー31を充電する(ステップS112)。ステップS112の判定は、例えば、周期的に実行されてもよいし、検出器による通知などを契機に実行されてもよい。
【0083】
AC電源2から交流電力の供給が停止した場合(ステップS111のYES)、コントローラ20の監視部23は、バッテリー31の放電が開始された時刻を取得する(ステップS113)。バッテリー31の放電により、自動ドアシステム100は、バッテリー31の電力で駆動される(ステップS114)。そして、監視部23は、バッテリー31の放電が開始された時刻から所定の時間が経過したか否かを判定する(ステップS115)。バッテリー31の放電が開始された時刻から所定の時間が経過した場合(ステップS115のYES)、調整部25は、開閉制御装置21の制御設定を変更する(ステップS116)。その後、所定のタイミングで、再度ステップS111以降の処理が行われる。
【0084】
一方、バッテリー31の放電が開始された時刻から所定の時間が経過していない場合、ステップS115およびステップ116の処理が再び実行される。ステップS115の判定は、例えば、周期的に実行される。ただし、ユーザが指定した日時にステップS115の判定を行ってもよい。ステップS116における制御設定の変更が、モードの変更であってもよいし、個別の制御パラメータの調整であってもよい点は、上述のステップS106と同様である。
【0085】
図12のフローチャートによる処理の説明は、以上である。なお、複数の条件を組み合わせて、開閉制御装置21の制御設定を変更するか否かの判定を行ってもよい。例えば、バッテリー31の残量がしきい値未満であるという条件または、バッテリー31の放電が開始したときから経過した時間がしきい値より大きいという条件の少なくともいずれかが満たされたときに、開閉制御装置21の制御設定を変更してもよい。ここで、バッテリー31の残量に代わり、バッテリー31の出力電圧を使ってもよい。
【0086】
上述では、主に、開閉制御装置21の制御設定の変更が、制御パラメータの設定値の組み合わせである、モードの切り替えである場合を例に、説明を行った。この方法では、複数の制御パラメータの設定値が同時に、あらかじめ規定された値に変更されるため、処理内容および実装の簡略化と、コストの削減を実現することができる。ただし、これとは異なる方法で開閉制御装置21の制御設定の変更を行ってもよい。
【0087】
例えば、調整部25は、利用者の利便性および快適性に対する“影響度”に基づいて、変更対象とする制御パラメータの選択を行ってもよい。また、調整部25は、利用者の利便性および快適性に対する影響度に基づいて、制御パラメータの変更後の設定値を決定してもよい。影響度の値は、製造時に設定されたものであってもよいし、自動ドアシステム100の据え付け後に調整されたものであってもよい。例えば、早足で歩く通行人が多い環境であるため、ドア10の開速度および閉速度が低下することが望まれない場合、開速度および閉速度の影響度を大きい値に設定することができる。また、ゆっくり歩く通行人が多い環境である場合には、開速度および閉速度の影響度の値を小さい値に設定してもよい。調整部25は、影響度の小さい制御パラメータを優先して変更することができる。また、調整部25は、影響度の小さい制御パラメータの設定値の変更量を大きくし、影響度の大きい制御パラメータの設定値の変更量を小さくすることができる。
【0088】
また、自動ドアシステム100が設置される環境および使用状況に応じて、最も効果的に時間あたりの消費電力の削減に寄与する制御パラメータを推定し、当該制御パラメータの設定値を調整してもよい。例えば、自動ドアシステム100の使用環境(例えば、通行者が多い、または通行者の通過速度が速いなど)を機械学習によって推定し、利便性、安全性などの機能面に影響が少ないモードを選択することができる。機械学習の例としては、各種の回帰手法、ニューラルネットワークが挙げられる。ただし、推定部26は、どのような機械学習手法を使ってもよい。例えば、自動ドアシステム100の開発時に制御パラメータの設定値ごとに消費電力への寄与度の係数を計算することができる。そして、自動ドアシステム100は、判定された使用環境と当該係数に基づいて、使用する制御パラメータの設定値を変更することができる。
【0089】
この場合、調整部25は、推定部26が計算した寄与度に基づき、変更対象とする制御パラメータを選択することができる。また、調整部25は、寄与度に基づいて、制御パラメータの設定値の変更量を決定してもよい。例えば、寄与度の大きい制御パラメータの変更量を大きくし、寄与度の小さい制御パラメータの変更量を小さくすることができる。
【0090】
調整部25は、バッテリー31の残量に応じて、上述の影響度と、寄与度を使い分けて、変更対象とする制御パラメータの選択および/または変更後の制御パラメータの設定値の決定を行ってもよい。例えば、バッテリー31の残量が比較的多いとき、調整部25は、影響度の小さい制御パラメータを優先して変更対象として選択することができる。そして、バッテリー31の残量が少なくなった場合、調整部25は、寄与度の大きい制御パラメータを優先して変更対象として選択することができる。ここで、バッテリー31の残量に代わって、バッテリー31の出力電圧または、バッテリー31が電力供給を開始したときからの経過時間を使ってもよい点は、上述と同様である。
【0091】
また、調整部25は、上述の影響度と、寄与度とをそれぞれ重み付けすることによって計算した指標を用いて、変更対象とする制御パラメータの選択および/または変更後の制御パラメータの設定値の決定を行ってもよい。影響度を重み付けする第1係数の値と、寄与度を重み付けする第2係数の値は、利用者の方針に基づいて調整することができる。例えば、自動ドアシステム100の利便性および快適性を重視する場合には、第1係数の値を大きくすることができる。一方、バッテリー31の電力による自動ドアシステム100の動作時間を長く確保する必要がある場合には、第2係数の値を大きくすることができる。
【0092】
本開示による調整装置27、自動ドア装置1、開閉制御調整方法および自動ドア10の開閉制御方法を使うことにより、電力系統で停電が発生した場合においても、センサを含む周辺機器への電力供給を継続しつつ、ドアの開速度/閉速度の大幅に低下させることなく、時間あたりの消費電力の抑制をはかることができる。このため、バッテリー動作時に、通行性および安全性を維持しながらバッテリーの給電時間を延ばすことが可能となる。シンプルな実装によって、低コストで開閉制御装置21の制御設定の変更を行うことができる。また、動的に変更対象となる制御パラメータの選択および/または制御パラメータの設定値の変更量の決定を行うことにより、設置環境や、使用状況を柔軟に反映することができる。
【0093】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【0094】
また、上述した変形例を含む実施の形態で説明した構成の一部を組み合わせたり、置き換えたりすることも可能である。更に、上述した変形例を含む実施の形態で説明した構成の一部のみを適用することも可能である。これらの場合、本明細書に明示されたものの他、それぞれの構成から導かれる特有の構成を有する。
【符号の説明】
【0095】
1 自動ドア装置
2 AC電源
10 ドア
10L 第1ドア
10R 第2ドア
11L、11R、12L、12R ドアハンガー
11 モータ
13 レール
14L、14R ドアストッパー
15 ベルト
16L 従動プーリ
16R 駆動プーリ
17 スイッチ
18 電気錠
20 コントローラ
21 開閉制御装置
22、33 通信部
23 監視部
24 記憶部
25 調整部
26 推定部
30 UPS(無停電電源装置)
31 バッテリー
32 制御部
40 周辺機器
41 センサ
50、51、52、53、54 グラフ
100 自動ドアシステム