(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】ラミネートチューブ用積層体
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240507BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240507BHJP
B32B 27/20 20060101ALI20240507BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20240507BHJP
B65D 35/10 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B27/00 H
B32B27/30 A
B32B27/20 A
B65D65/40 D
B65D35/10 B
(21)【出願番号】P 2020084091
(22)【出願日】2020-05-12
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100193404
【氏名又は名称】倉田 佳貴
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 将
(72)【発明者】
【氏名】永野 陽子
(72)【発明者】
【氏名】山本 光
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/178403(WO,A1)
【文献】特開平10-017812(JP,A)
【文献】特開平04-259586(JP,A)
【文献】特開2012-096393(JP,A)
【文献】特開2015-066720(JP,A)
【文献】特開平09-314723(JP,A)
【文献】特開2019-059070(JP,A)
【文献】特開2017-136700(JP,A)
【文献】特開2017-136697(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
B65D 35/00-35/42、35/56-37/00
B65D 65/00-65/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層、印刷積層体及び基材が積層されているラミネートチューブ用積層体であって、
前記印刷積層体が、少なくとも部分的に互いに積層されている複数の印刷層を有し、
前記印刷層が、硬化性樹脂、及び色材を含有しており、
前記印刷層が、脂肪族系ポリウレタンアクリレート及びベンゼン環の数が3個未満であり、かつアミノ基を有さない光重合開始剤を含有しており、
前記複数の印刷層のうちの、最表層以外の少なくとも1つの印刷層において、前記硬化性樹脂のガラス転移温度が、80℃以下であり、かつ
前記複数の印刷層のうちの、最表層以外の少なくとも1つの印刷層は、ポリイソシアネートを含有していない、ラミネートチューブ用積層体。
【請求項2】
前記複数の印刷層のうちの、最表層の印刷層は、ポリイソシアネートを含有している、請求項1に記載のラミネートチューブ用積層体。
【請求項3】
前記印刷積層体の厚さが、10~40μmである、請求項1
又は2に記載のラミネートチューブ用積層体。
【請求項4】
前記印刷積層体が、2~20層の印刷層を有している、請求項1
~3のいずれか一項に記載のラミネートチューブ用積層体。
【請求項5】
前記複数の印刷層のそれぞれが、1~5μmの厚さを有する、請求項1~
4のいずれか一項に記載のラミネートチューブ用積層体。
【請求項6】
前記印刷層の、JIS K 5600-5-4に準拠する引っかき硬度(鉛筆法)での硬度が、HB又はFである、請求項1~
5のいずれか一項に記載のラミネートチューブ用積層体。
【請求項7】
前記印刷層の色材が、光輝性顔料である、請求項1~
6のいずれか一項に記載のラミネートチューブ用積層体。
【請求項8】
前記基材は、有色下地層及びシーラント層を有している、請求項1~7のいずれか一項に記載のラミネートチューブ用積層体。
【請求項9】
前記表層と、前記印刷層との間に、エステル部分を有するポリオールとポリイソシアネートとの2液型接着剤で形成されている接着層を更に有し、かつ前記表層の前記接着層と接している面が、ポリオレフィン系樹脂で構成されている、請求項1~
8のいずれか一項に記載のラミネートチューブ用積層体。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか一項に記載のラミネートチューブ用積層体で形成された胴部を有する、ラミネートチューブ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラミネートチューブ用積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ラミネートチューブ容器は種々の方法で製造されており、例えば、積層シートを製造し、その両端部の最外層と最内層とをヒートシールして筒状胴部を製造し、その後に、その筒状胴部の一方の開口部に口部、肩部等からなる頭部を形成し、その口部にキャップを螺合させてなるラミネートチューブ容器がある。上記で製造されたラミネートチューブ容器は、その筒状胴部の開放端から、例えば、練り歯磨きなどの半流動性の内容物を充填し、その開放端を密閉シールして底部シール部を形成して、チューブ状の包装製品とすることができる。
【0003】
また、ラミネートチューブ容器の識別性又は外観を向上させるために、チューブの胴部に基材及び印刷層を組み込むことが知られている。
【0004】
特許文献1では、積層フィルムの最内層がラミネートチューブ容器の胴部内周面層となるようにして筒状体に成形されるラミネートチューブ容器胴部形成用積層シートにおいて、前記積層フィルムは、最内層から順に、ヒートシール性フィルム(I)と、バリア性層と、乳白ポリエチレン系樹脂フィルムと、片面に有色印刷インキ層を形成した透明基材フィルムと、透明ヒートシール性フィルム(II)とが、接着層を介して積層されることを特徴とするラミネートチューブ容器胴部形成用積層シートが開示されている。
【0005】
印刷層を有するラミネートチューブ容器に関しては、サイドシーム部を含めて全面に印刷することが提案されている。例えば、特許文献2では、積層されている表層、接着剤層、UVインキ層及び基材積層体を含むチューブ用積層体であって、前記表層は、ポリオレフィンを含み、前記接着剤層は、エステル部分を有するポリオールとポリイソシアネートとの2液型接着剤で形成されており、前記基材積層体の前記UVインキ層と接する面は、ポリオレフィンで形成されており、かつ前記UVインキ層は、前記基材積層体の表面のシール部に対応する箇所に配置されている、チューブ用積層体が開示されている。特許文献2では、このUVインキ層にポリイソシアネートを含有させることにより、基材に対するUVインキ層の密着性を向上させることができるとしている。
【0006】
なお、高級感のあるプラスチック容器を提供するための印刷に関しては、パールインキを用いることが知られている。特許文献3では、パールインキで直接スクリーン印刷することを特徴とするプラスチック容器の印刷方法が開示されている。また、特許文献4では、予め印刷された印刷面の上にパールインキで印刷することを特徴とする印刷されたプラスチック容器の印刷方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2013-223934号公報
【文献】特許第5791851号公報
【文献】特開2002-036707号公報
【文献】特開2002-036708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
意匠性の高い積層体を提供するにあたり、印刷層を単純に重ね刷りした場合に、印刷層間の十分な密着性が得られず、その結果、ラミネートチューブに用いたときに印刷層にかかる外力に耐えられず、本来の意匠性が維持できないことがあった。
【0009】
また、重ね刷りする印刷層の全てにイソシアネートを含めようとすると、インキが経時で硬化することがあり、取扱いが困難となることがあった。
【0010】
そこで、重ね刷りによる高い意匠性を得つつ、繰り返し積層体をしごくといった、チューブにおける使用に耐えることができる塗膜を有する、ラミネートチューブ用積層体を提供する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討したところ、以下の手段により上記課題を解決できることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、下記のとおりである:
〈態様1〉表層、印刷積層体及び基材が積層されているラミネートチューブ用積層体であって、
前記印刷積層体が、少なくとも部分的に互いに積層されている複数の印刷層を有し、
前記印刷層が、硬化性樹脂、及び色材を含有しており、かつ
前記複数の印刷層のうちの、最表層以外の少なくとも1つの印刷層において、前記硬化性樹脂のガラス転移温度が、80℃以下である、
ラミネートチューブ用積層体。
〈態様2〉前記印刷積層体の厚さが、10~40μmである、態様1に記載のラミネートチューブ用積層体。
〈態様3〉前記印刷積層体が、2~20層の印刷層を有している、態様1又は2に記載のラミネートチューブ用積層体。
〈態様4〉前記複数の印刷層のそれぞれが、1~5μmの厚さを有する、態様1~3のいずれか一項に記載のラミネートチューブ用積層体。
〈態様5〉前記印刷層の、JIS K 5600-5-4に準拠する引っかき硬度(鉛筆法)での硬度が、HB又はFである、態様1~4のいずれか一項に記載のラミネートチューブ用積層体。
〈態様6〉前記印刷層の色材が、光輝性顔料である、態様1~5のいずれか一項に記載のラミネートチューブ用積層体。
〈態様7〉前記印刷層が、脂肪族系ポリウレタンアクリレート及びベンゼン環の数が3個未満であり、かつアミノ基を有さない光重合開始剤を含有している、態様1~6のいずれか一項に記載のラミネートチューブ用積層体。
〈態様8〉前記表層と、前記印刷層との間に、エステル部分を有するポリオールとポリイソシアネートとの2液型接着剤で形成されている接着層を更に有し、かつ前記表層の前記接着層と接している面が、ポリオレフィン系樹脂で構成されている、態様1~7のいずれか一項に記載のラミネートチューブ用積層体。
〈態様9〉態様1~8のいずれか一項に記載のラミネートチューブ用積層体で形成された胴部を有する、ラミネートチューブ容器。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、重ね刷りによる高い意匠性を得つつ、チューブにおける使用に耐えることができる塗膜を有する、ラミネートチューブ用積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明のラミネートチューブ用積層体の一態様を示す概略断面図である。
【
図2】
図2(a)は、本発明のラミネートチューブ用積層体の一態様を示す概略断面図であり、
図2(b)は、これを用いて得たラミネートチューブ容器の胴部を示す概略断面図である。
【
図3】
図3(a)は、本発明のラミネートチューブ用積層体の一態様を示す概略断面図であり、
図3(b)は、これを用いて得たラミネートチューブ容器の胴部を示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、印刷積層体を示す概略断面図である。
【
図5】
図5は、積層体である基材の種々の態様を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
《ラミネートチューブ用積層体》
図1(a)に示すように、本発明のラミネートチューブ用積層体10は、表層12、印刷積層体14及び基材16が積層されており、
印刷積層体14が、少なくとも部分的に互いに積層されている複数の印刷層を有し、
印刷層が、硬化性樹脂、及び色材を含有しており、かつ
複数の印刷層のうちの、最表層以外の少なくとも1つの印刷層において、硬化性樹脂のガラス転移温度が、80℃以下である。
【0015】
印刷積層体14は、
図1(a)に示すように、基材16の一部に積層されていてもよく、又は
図1(b)に示すように、基材16の全体に積層されていてもよい。
【0016】
一態様においては、表層12は、
図2(a)に示すように、基材16の全体に積層されていてよい。この場合、
図2(b)に示すように、表層と基材とを対向させて接着、例えばヒートシールすることにより、ラミネートチューブ容器の胴部10Xを作製することができる。
【0017】
別の態様においては、
図3(a)に示すように、特にラミネートチューブ容器のシーム部の接着面に対応する部分において、基材16の一部16aが暴露されるようにして、表層12及び印刷積層体14が基材16の一部に積層されていてよい。この場合、
図3(b)に示すように、基材16の暴露されている部分16aと、基材16の他の面とを対向させて接着することにより、特にシーム部の接着面が基材同士で構成されている、ラミネートチューブ容器の胴部10Xを作製することができる。この場合、シーム部の接着面に対応する位置にある表面の部分においても、基材16の一部16a’が暴露されるようにして、表層12及び印刷積層体14が基材16の一部に積層されていていることが、外観上の観点から好ましい。
【0018】
以下では、本発明の各構成要素について説明する。
【0019】
〈表層〉
表層は、概して、ラミネートチューブ用積層体からラミネートチューブ容器を作製した際に最も外側に位置する層である。表層は、単層であっても積層体であってもよい。
【0020】
表層としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を単独で、又は2種類以上組み合わせて複層で使用することができる。かかる熱可塑性樹脂を、フィルム又は押出し樹脂の態様で用いることができる。また、フィルムは、延伸フィルムであっても、無延伸フィルムであってもよい。また、表層は、印刷層を保護するための保護層を有していてもよい。保護層としては、例えばOPニスを用いることができる。
【0021】
特に、
図2に示すように、表層12と基材16とを対向させて接着させて、ラミネートチューブ容器の胴部10Xを得る場合には、表層のうち、少なくとも最も外側に位置する部分は、ポリオレフィン系樹脂で構成されていることが、ラミネートチューブを作製する際のヒートシール性の観点から好ましい。
【0022】
一方、
図3に示すように、基材16の一部16aと基材16の他の部分とを対向させて接着させて、ラミネートチューブ容器の胴部10Xを得る場合には、表層は、熱可塑性樹脂で構成されていなくてもよく、特に単層の保護層で構成されていてもよい。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂を用いることができる。
【0024】
なお、本明細書において、ポリエチレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にエチレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン-メタクリル酸共重合体(EMAA)、エチレン-エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン-メチルアクリレート共重合体(EMA)、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物からなる群より選択される。
【0025】
本明細書において、ポリプロピレン系樹脂とは、ポリマーの主鎖にプロピレン基の繰返し単位を、50mol%超、60mol%以上、70mol%以上、又は80mol%以上含む樹脂であり、例えば、ポリプロピレン(PP)ホモポリマー、ランダムポリプロピレン(ランダムPP)、ブロックポリプロピレン(ブロックPP)、塩素化ポリプロピレン、酸変性ポリプロピレン、及びこれらの誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
ビニル系ポリマーとしては、例えばポリ塩化ビニル(PVC)等が挙げられる。
【0027】
ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート等が挙げられる。
【0028】
ポリアミドとしては、例えばナイロン(登録商標)6、ナイロンMXD6等のナイロン等が挙げられる。
【0029】
〈印刷積層体〉
図4に示すように、印刷積層体14は、少なくとも部分的に互いに積層されている複数の印刷層14a、14b、14c、14dを有する。ここで、本発明において、「互いに積層されている」とは、他の層を介することなく積層されていることを意味する。
【0030】
複数の印刷層14a、14b、14c、14dのうちの、最表層14a以外の少なくとも1つの印刷層14b、14c、14dは、ガラス転移温度が80℃以下である硬化性樹脂を含有している。ここで、複数の印刷層のうちの「最表層」とは、最も表層側に存在している印刷層を意味するものである。なお、最表層の印刷層を構成する硬化性樹脂のガラス転移温度は、80℃以下であることに限定されない。
【0031】
かかる印刷積層体は、フレキソ印刷等の印刷手段により、印刷層を基材に重ね刷りすることにより得ることができる。
【0032】
ラミネートチューブ容器のシーム部を含む領域に印刷積層体を配置する場合、特に基材の表面の全てに連続的に印刷積層体を配置する場合、
図4で示す印刷積層体14を構成する印刷層14a、14b、14c、14dのうちの表層側の印刷層14aは、ポリイソシアネートを含有していることが好ましい。
【0033】
印刷積層体を構成する印刷層は、硬化性樹脂、及び色材を含有していてよい。特に、印刷層は、紫外線硬化性樹脂及び無機光輝性顔料を含有している光輝性印刷層であってよい。
【0034】
印刷積層体の厚さは、10μm以上、15μm以上、20μm以上、又は25μm以上であることが、意匠性の観点から好ましく、また40μm以下、35μm以下、又は30μm以下であることが、剥離の抑制の観点から好ましい。
【0035】
印刷積層体は、2層以上、3層以上、4層以上、5層以上、又は6層以上の印刷層を有することが、意匠性の観点から好ましく、また20層以下、18層以下、15層以下、12層以下、又は10層以下の印刷層を有することが、密着性を過度に損なわない観点から好ましい。
【0036】
印刷積層体のJIS K 5600-5-4に準拠する引っかき硬度(鉛筆法)での硬度は、HB又はFであることができる。
【0037】
印刷積層体を構成する最表層以外の印刷層は、互いに異種の印刷層であってもよく、又は全て同種の印刷層であってもよい。また、最表層は、最表層以外の印刷層と異種の印刷層であってもよく、又は最表層以外の印刷層と同種の印刷層であってもよい。すなわち、印刷積層体を構成する印刷層は、最表層のみが異種の印刷層であってもよく、又は全て同種の印刷層であってもよい。ここで、「異種の印刷層」とは、印刷層を構成する成分の種類及び含有率が相違している印刷層を意味するものである。
【0038】
(硬化性樹脂)
複数の印刷層のうちの、最表層以外の少なくとも1つの印刷層において、硬化性樹脂は、ガラス転移温度が80℃以下である硬化性樹脂である。このガラス転移温度は、80℃以下、又は75℃以下であってよく、また0℃以上、10℃以上、20℃以上、30℃以上、40℃以上、50℃以上、60℃以上、65℃以上、又は70℃以上であってよい。
【0039】
また、最表層においては、硬化性樹脂のガラス転移温度は、上記の範囲内にあってもよく、又は上記の範囲外にあってもよい。すなわち、最表層の印刷層を構成する硬化性樹脂のガラス転移温度は、80℃超、90℃以上、又は100℃以上であってよく、また200℃以下、180℃以下、150℃以下、又は120℃以下であってよい。
【0040】
ここで、ガラス転移温度は、JIS K7121(1987年)に準拠して、加熱速度10℃/minの昇温条件で熱流束示差走査熱量測定(熱流束DSC)により求めた中間点ガラス転移温度(℃)をいい、試験片の状態調節についてはJIS K7121の『一定の熱処理を行なった後、ガラス転移温度を測定する場合』を採用するものとする。
【0041】
硬化性樹脂の上記のガラス転移温度によれば、印刷積層体を構成する印刷層間の密着性がもたらされ、その結果、チューブ容器としての使用に耐えることができる塗膜をもたらすことができる。
【0042】
硬化性樹脂は、例えば紫外線硬化性樹脂であってよい。
【0043】
紫外線硬化性樹脂は、紫外線硬化性成分及び光重合開始剤を有する混合物に、紫外線を照射することにより形成される樹脂である。
【0044】
紫外線硬化性成分としては、上記のガラス転移温度を満足する限り、随意の成分を用いることができ、例えばポリエステルアクリレート、ポリウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の(メタ)アクリレート、ビニルエーテル等のモノマー又はオリゴマー等を用いることができる。紫外線硬化性成分としては、中でも、(メタ)アクリレート、特に脂肪族系(メタ)アクリレートを用いることが、外観の観点から好ましい。ここで、「脂肪族系(メタ)アクリレート」とは、ベンゼン環を有さない(メタ)アクリレートを指す。
【0045】
光重合開始剤としては、これに限られないが、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、アントラキノン、チオキサントン等の芳香族系光重合開始剤、ホスフィンオキシド、アセタール等の脂肪族系光重合開始剤、及びこれらの誘導体等が挙げられ、特に、ベンゼン環の数が3個未満であり、かつアミノ基を有さない光重合開始剤が好ましい。
【0046】
ベンゼン環の数が3個未満であり、かつアミノ基を有さない光重合開始剤としては、具体的には、オキシフェニル酢酸2-[2-オキソ-2-フェニルアセトキシエトキシ]エチルエステル及びオキシフェニル酢酸2-(2-ヒドロキシエトキシ)エチルエステルの混合物、ビス(2-フェニル-2-オキソ酢酸)オキシビスエチレ(イルガキュア754)、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(イルガキュア184)、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(ダロキュア1173)等が挙げられる。
【0047】
光重合開始剤の含有量は、紫外線硬化性成分100質量部に対して、2質量部以上、3質量部以上、4質量部以上、又は5質量部以上であってよく、また10質量部以下、9質量部以下、8質量部以下、7質量部以下、又は6質量部以下であってよい。
【0048】
(色材)
色材としては、顔料又は染料を用いることができる。
【0049】
顔料としては、例えば光輝性顔料又は非光輝性顔料を用いることができる。
【0050】
光輝性顔料としては、例えば鱗片状金属顔料、パール顔料等を用いることができる。
【0051】
鱗片状金属顔料としては、例えばアルミニウム粉末、特にアルミフレーク等を用いることができる。
【0052】
パール顔料は、合成雲母、天然雲母、又は合成雲母、天然雲母、ガラス、アルミナフレークに酸化チタンやシリカを被覆した顔料であることができる。
【0053】
非光輝性顔料としては、例えばカーボンブラック、グラファイト等の無機顔科、タルク、シリカ、アルミナ、マイカ、アルミナシリケート等の体質顔科、アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、アンスラキノン顔料、キナクドリン顔料、イソインドリノン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、各種レーキ顔料等の有機顔料等を用いることができる。
【0054】
染料としては、直接染料、酸性染料、塩基性染料、媒染・酸性媒染染料、酒精溶性染料、アゾイック染料、硫化・硫化建染染料、建染染料、分散染料、油溶染料、食用染料、金属錯塩染料、造塩染料等を用いることができる。
【0055】
印刷層における色材の含有率は、印刷層の質量全体を基準として、1質量%以上、3質量%以上、5質量%以上、7質量%以上、又は9質量%以上であってよく、又は25質量%以下、22質量%以下、20質量%以下、17質量%以下、15質量%以下、又は12質量%以下であってよい。
【0056】
〈基材〉
基材は、インキが印刷される非浸透性の基材である。基材は、単層であってもよく、又は複数の層が積層されている積層体でよく、複数の同じ種類の層を含んでもよい。
【0057】
基材は、例えば、透明樹脂層、有色下地層、バリア層、補強層及びシーラント層から成る群から選択される少なくとも1つを含む層を含んでよい。また、これらの層は、接着層を介して接着されていてよい。
【0058】
基材は、有色下地層を有することが、意匠性の観点から好ましい。有色下地層がバリア層を更に有する場合には、有色下地層は、バリア層についてシーラント層と反対側に存在していることが、意匠性の観点から好ましい。
【0059】
第一の態様では、
図5(a)に示すように、有色下地層161、透明樹脂層162、バリア層163、及びシーラント層164をこの順で有していてよい。
【0060】
第二の態様では、
図5(b)に示すように、透明樹脂層162、有色下地層161、透明樹脂層162、バリア層163、及びシーラント層164をこの順で有していてよい。
【0061】
第三の態様では、
図5(c)に示すように、透明樹脂層162、有色下地層161、補強層165、バリア層163、及びシーラント層164をこの順で有していてよい。
【0062】
いずれの態様においても、基材は、複数の透明樹脂層を有していてもよい。
【0063】
ラミネートチューブ容器のシーム部となる部分を含む領域に印刷積層体を配置する場合、特に基材の表面の全てに連続的に印刷積層体を配置する場合には、基材の印刷積層体と接する面は、ポリオレフィン系樹脂で形成されていることが、基材と印刷層との密着性を向上させる観点から好ましい。このような態様では、表層と印刷積層体の間において、ラミネート強度が向上するため、ラミネートチューブのシーム部に強く発生する応力によって引き起こされる表層のラミネート浮きを防止することができ、その結果、ラミネートチューブ容器の意匠性を確保することができる。
【0064】
また、例えば
図5(b)及び(c)に示すように、透明樹脂層162及びシーラント層164が基材の最も外側に位置しており、かつ
図3(a)に示したように、基材16の一部16aが暴露するようにして、表層12及び印刷積層体14が、基材16の一部に積層されている場合には、透明樹脂層162は、ヒートシール性を有する樹脂、例えばポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。この場合には、透明樹脂層の暴露されている部分と、シーラント層とを対向させて接着することにより、
図3(b)に示すようにしてラミネートチューブ容器の胴部を作製することができる。
【0065】
かかる基材としては、例えば以下の層構成を有する基材を用いることができる:
・LDPE(75μm)/乳白LDPE(160μm)/LDPE(50μm)/PET(12μm)/LLDPE(100μm)
・LLDPE(55)/透明LDPE(80)/EAA(20)/AL(12)/EMAA(25)/PET(12)/LLDPE(100)
【0066】
(透明樹脂層)
透明樹脂層は、透明な樹脂層である。ここで、「透明」とは、この層を通して物体を視認するのに十分に透明であることを意味するものであり、例えば全光線透過率が、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上、又は100%であり、かつヘイズ値が25%以下、20%以下、15%以下、又は10%以下であることを意味する。
【0067】
透明樹脂層としては、例えば、ポリオレフィン系樹脂、ビニル系ポリマー、ポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂を単独で、又は2種類以上組み合わせて複層で使用することができる。かかる熱可塑性樹脂を、フィルム又は押出し樹脂の態様で用いることができる。また、フィルムは、延伸フィルムであっても、無延伸フィルムであってもよい。
【0068】
(有色下地層)
有色下地層は、黒色下地層、赤色下地層、青色下地層、白色下地層であってよい。有色下地層のうち、白色下地層としては、透明樹脂層に関して挙げた樹脂に酸化チタン等の白色顔料を分散させた層であってもよく、又は白色印刷層であってもよい。この場合、有色下地層と印刷層との間には、透明な層以外の層、例えば金属箔層が存在していないことが、意匠性の観点から好ましい。
【0069】
(バリア層)
バリア層としては、例えば無機物蒸着層、金属箔層、有機物コート層等を用いることができる。
【0070】
無機物蒸着層としては、例えばシリカ蒸着膜、アルミニウム蒸着膜、アルミナ蒸着膜、シリカ・アルミナ蒸着膜を用いることができる。
【0071】
金属箔層としては、例えばアルミニウム箔、銅箔、チタン箔等の単体金属箔、アルミニウム合金箔、ステンレス箔等の合金箔を用いることができる。
【0072】
有機物コート層としては、例えば塩化ビニリデンコート層、ポリフッ化ビニリデンコート層を用いることができる。
【0073】
バリア層として無機物蒸着膜又は有機物コート層を用いる場合、バリア層の厚さは、100nm以上、200nm以上、300nm以上、500nm以上、700nm以上、又は1μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また5μm以下、4μm以下、3μm以下、又は2μm以下であることが、チューブ用積層体としての取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0074】
バリア層として金属箔層を用いる場合、バリア層の厚さは、3μm以上、5μm以上、7μm以上、10μm以上、又は15μm以上であることが、強度及びバリア性を確保する観点から好ましく、また100μm以下、80μm以下、60μm以下、55μm以下、50μm以下、45μm以下、40μm以下、又は35μm以下であることが、チューブ用積層体としての取り扱い性を向上させる観点から好ましい。
【0075】
(補強層)
補強層は、延伸フィルムから構成されている層であってよい。
【0076】
補強層は、例えばポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリプロピレン系樹脂等で構成されている延伸フィルムであってよい。
【0077】
補強層が延伸フィルムで構成されている場合、補強層を構成する延伸フィルムは、例えばフラット法延伸によって得られる延伸フィルムであってよく、1軸延伸フィルムであっても2軸延伸フィルムであってもよい。2軸延伸フィルムは、逐次2軸延伸フィルムであっても同時2軸延伸フィルムであってもよく、又はこれらの延伸操作を複数回行って得られる延伸フィルムであってもよい。
【0078】
補強層の厚みは、5μm以上、7μm以上、10μm以上、12μm以上、又は25μm以上であることが、ラミネートチューブに実用的な経時復元性を付与する観点から好ましい。一方で、補強層の厚みは、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下、15μm以下、又は12μm以下であることが、短期形状保持性を損なわず、かつ、ラミネートチューブ原反の総厚みを過度に大きくしない観点から好ましい。
【0079】
(シーラント層)
シーラント層としては、例えば上記のポリオレフィン系樹脂を用いることができる。ポリオレフィン系樹脂を、例えば、延伸又は無延伸フィルム、押出積層用の溶融樹脂、ホットメルト用の塗料等の形態で与えることができる。シーラント層は、表層のうちの最も外側に位置する部分と同じ樹脂で構成されていることが好ましく、特に表層と同じ層であってよい。
【0080】
(基材接着層)
基材接着層は、基材を構成する上記の層の間に存在することができる随意の接着層である。かかる基材接着層としては、例えばドライラミネート接着剤、ホットメルト接着剤、水溶性接着剤、エマルション接着剤、ノンソルベントラミネート接着剤、及び押出ラミネート用の熱可塑性樹脂等であってよい。
【0081】
〈接着層〉
印刷層と表層との間、及び表層と基材との間には、接着層が存在していてよい。接着層としては、例えば基材接着層として挙げた接着層を用いることができる。
【0082】
また、チューブのシーム部となる部分を含む領域に印刷積層体を配置する場合、特に基材の表面の全てに連続的に印刷積層体を配置する場合には、接着層は、ドライラミネート接着剤、特にエステル部分を有するポリオールとポリイソシアネートとの2液型接着剤で形成されていることが、表層と印刷層との密着性を向上させる観点から好ましい。
【0083】
《ラミネートチューブ容器》
ラミネートチューブ容器は、上記のラミネートチューブ用積層体で形成された胴部を有する容器である。
【0084】
ラミネートチューブ容器には、薬品、化粧品、食品などの内容物を充填することができる。内容物としては、例えば、練り歯磨き、保湿クリーム、日焼け止めなどが挙げられる。
【0085】
ラミネートチューブ容器は、例えば以下の工程を含む方法により製造されることができる:
ラミネートチューブ用積層体を、基材、特に基材のシーラント層が内側となるように丸めながら、積層体の端部同士を重ね合せてシールして、胴部を得る工程;及び
胴部の開口部の周縁に、肩部及びキャップ部を有する頭部を結合させて、ラミネートチューブ容器を得る工程。
【実施例】
【0086】
実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0087】
《評価用積層体の作製》
〈実施例〉
以下の層構成を有する積層体を準備した:
LDPE(75μm)/乳白LDPE(160μm)/LDPE(50μm)/PET(12μm)/LLDPE(100μm)
【0088】
脂肪族系ポリウレタンアクリレート系樹脂(P-5880SC、大同化成工業社、Tg:75℃)85質量部、パール顔料(Pyrisma、メルク社)10質量部、及びベンゼン環の数が3個未満であり、かつアミノ基を有さない光重合開始剤(:イルガキュア7184、IGM Resins B.V.)5質量部を混合させ、印刷層用のインキを準備した。脂肪族系ポリウレタンアクリレート100質量部に対する光重合開始剤の含有量は、6質量部であった。
【0089】
上記の積層体のLDPE層側に、作製した上記のインキを以下の条件で、フレキソ印刷により印刷して、紫外線(UV)を照射して硬化させることにより印刷層を形成し、同様にしてこの印刷層の上に同じ印刷層を更に7層積層させることにより、印刷積層体を形成して、実施例の評価用積層体を作製した。得られた印刷積層体の厚さは、28μmであった。
印刷機:フレキシプルーフ
アニロックスロール:180線/inch
UV照射条件:160W
【0090】
〈比較例1〉
上記の樹脂の代わりに、脂肪族系ポリウレタンアクリレート樹脂(UVフレキュアーパール、女神インキ工業社、Tg:100℃)を用いたことを除き、実施例と同様にして、比較例1の積層体を作製した。得られた印刷積層体の厚さは、28.0μmであった。
【0091】
〈比較例2〉
印刷層を単層で積層させたことを除き、実施例と同様にして、比較例2の評価用積層体を作製した。得られた印刷積層体の厚さは、3.5μmであった。
【0092】
《評価》
〈密着性〉
評価用積層体の印刷積層体にセロテープ(登録商標)を貼付し、これを剥がした際の印刷積層体の剥離を目視により観察した。
【0093】
評価基準は以下のとおりである:
〇:剥離が生じた。
×:剥離が生じなかった。
【0094】
〈塗膜割れ〉
評価用積層体を円筒状に丸めて扱き、印刷積層体の割れの有無を目視により観察した。
【0095】
評価基準は以下のとおりである:
〇:割れが生じた。
×:割れが生じなかった。
【0096】
〈耐薬品性〉
評価用積層体を、練り歯磨き粉(クリアクリーン エクストラクール、花王社)に1週間浸漬した後、塗膜の剥離の有無を目視により観察した。別の評価用積層体を用い、UVクリーム(ビオレUVアクアリッチ、花王社)、トリートメント(HIMAWARI、クラシエ社)にも1週間それぞれ浸漬させて、同様の試験を行った。
【0097】
評価基準は以下のとおりである:
〇:全ての試験で剥離が生じなかった。
△:一部の試験で剥離が生じた。
×:全ての試験で剥離が生じた。
【0098】
〈鉛筆硬度〉
印刷積層体のJIS K 5600-5-4に準拠する引っかき硬度(鉛筆法)での硬度を評価した。
【0099】
〈パール光沢感〉
作製した評価用積層体のパール光沢感を、目視により評価した。
【0100】
評価基準は以下のとおりである:
〇:強いパール光沢感があった。
△:パール光沢感がやや弱かった。
×:パール光沢感が殆どなかった。
【0101】
実施例及び比較例の構成及び評価結果を表1に示す。
【0102】
【0103】
表1から、表層、印刷積層体及び基材を有し、かつ印刷積層体が、80℃以下のガラス転移温度を有する硬化性樹脂を含有している複数の印刷層を有する実施例の積層体は、重ね刷りによる高い意匠性を得つつ、チューブにおける使用に耐えることができる塗膜を有する積層体であることが理解できよう。
【符号の説明】
【0104】
10 ラミネートチューブ用積層体
10X ラミネートチューブ容器の胴部
12 表層
14 印刷積層体
14a、14b、14c、14d 印刷層
16 基材
16a、16a’ 基材の暴露されている部分
161 有色下地層
162 透明樹脂層
163 バリア層
164 シーラント層
165 補強層