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特許7482681カバーをパワーステアリングシステムのオリフィスに固定するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】カバーをパワーステアリングシステムのオリフィスに固定するための方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 5/04 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B62D5/04
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020084977
(22)【出願日】2020-05-14
(65)【公開番号】P2020203671
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】1905425
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】511110625
【氏名又は名称】ジェイテクト ユーロップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲラン ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】グロッソ シルバン
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-043527(JP,A)
【文献】特開2015-147514(JP,A)
【文献】国際公開第2005/085039(WO,A1)
【文献】特開2017-143608(JP,A)
【文献】特開2019-202596(JP,A)
【文献】特開2013-141969(JP,A)
【文献】特開平11-280720(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カバー(6’、6’’、6’’’)をパワーステアリングシステムのオリフィス(4)に固定するための、前記カバー(6’、6’’、6’’’)を前記オリフィス(4)に接近させる工程を包含する方法であって、
前記カバー(6’、6’’、6’’’)の少なくとも1つの延長部(64’、64’’、64’’’)を、前記少なくとも1つの延長部(64’、64’’、64’’’)が、前記オリフィス(4)の隣に位置する少なくとも1つの貫通凹部(9’、9’’、9’’’)を貫通するように、前記少なくとも1つの貫通凹部(9’、9’’、9’’’)に挿入する工程と、
前記カバー(6’、6’’、6’’’)の前記少なくとも1つの延長部(64’、64’’、64’’’)を変形させる工程とを包含することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記変形工程は、前記カバー(6’)の前記延長部(64’)の少なくとも部分溶融段階を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記変形工程は、位置決め段階を包含し、前記位置決め段階において、アンビルが前記少なくとも1つの延長部(64’)の第1端部に対向する前記カバー(6’)の保護壁(
61)の縁部(62)に接触するように配置され、そして、変形要素が前記少なくとも1つの延長部(64’)の第2端部に実質的に接触するように配置される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記変形工程は、前記少なくとも1つの延長部(64’’、64’’’)を曲げる段階を包含し、当該段階は、前記挿入工程の前に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の方法を実施することによってパワーステアリングシステムのオリフィス(4)に固定されるように意図されるカバー(6’、6’’、6’’’)であって、
前記カバー(6’、6’’、6’’’)は、縁部(62)によって少なくとも部分的に囲まれた保護壁(61)と、前記縁部(62)に不可逆的に接続された少なくとも1つの延長部(64’、64’’、64’’’)とを備え
前記少なくとも1つの延長部(64’、64’’、64’’’)は、前記少なくとも1つの延長部(64’、64’’、64’’’)が挿入されるように意図される前記貫通凹部(9’、9’’、9’’’)の長さよりも大きな長さを有する、カバー(6’、6’’、6’’’)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの延長部(64’、64’’、64’’’)は、前記保護壁(61)が伸びる平面に直交する軸に実質的に沿って伸びる、請求項5に記載のカバー(6’、6’’、6’’’)。
【請求項7】
前記カバー(6’、6’’、6’’’)は、ポリ(ブチレンテレフタレート)またはポリプロピレンからの材料で製造される、請求項5または6に記載のカバー(6’、6’’、6’’’)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの延長部(64’’)は、互いに平行な2つの要素(66、67)を備える、請求項5~のいずれか1項に記載のカバー(6’’)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの延長部(64’’)の一端部は、突起(65’’)を備える、請求項5~のいずれか1項に記載のカバー(6’’)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの延長部(64’’’)は、ロッド(69)の自由端に接続された少なくとも2つの脚部(68)を備える、請求項5~のいずれか1項に記載のカバー(6’’’)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車のパワーステアリングシステムのハウジングの分野、より詳細には、当該ハウジングのオリフィスのカバーおよびカバーをオリフィスに固定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車は、ステアリングコラムを駆動するステアリングホイールを備えたステアリングシステムを含む。当該ステアリングコラムは、車両の長軸(elongation axis)に対して横向きの軸に沿って伸びるラックを備えたステアリングボックスに接続される。ラックによって、車両の操向車輪の回転が実行可能になる。
【0003】
パワーステアリングシステムはまた、ドライバーがステアリングホイールに与えた力に応じた補助力をラックに送達する補助デバイスを含む。このようにして、ドライバーがステアリングホイールを回転させるために必要な力が低減される。
【0004】
ある種の公知の電気補助デバイスは、ハウジング1に接続された電気モータを含む。図1に示すように、ハウジング1は、リダクションホイールおよびウォームねじを備える。これらは、ラックのピニオンの接続されたシャフトに固定された歯車を駆動する。
【0005】
そのようなハウジング1は、概して、当該ハウジングの外壁5を通り抜ける、1つ以上のアクセスオリフィス2、3、4を備える。これらにより、ハウジング1の要素の全てまたは一部の導入および組立が可能になる。
【0006】
これらのアクセスオリフィス2、3、4は、ハウジング1に液体、または砂利、埃などの異物が侵入することを防止し、したがってハウジング1によって保護された要素が長期間にわたり正確に動作することを保証するために、例えば、Oリング7を備えたカバー6によって閉塞されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以下に、ハウジング1のリダクションホイール上に位置するカバー6に特に注目するが、本発明は、パワーステアリングシステムのいずれの他のカバーにも適用可能である。
【0008】
カバー6は、2つのタッピングねじ(self-shaping screw)8、すなわち、挿入時にハウジング1にねじピッチ(pitch)を形成するねじによって、ハウジング1に固定される。そのようなタッピングねじ8を使用することの欠点は、カバー6から独立した要素を構成することである。したがって、タッピングねじ8は、特別な基準にしたがって供給されなければいけなく、適切なタッピングねじ8を使用するためには他のねじに対して締め付けが管理され、そして、カバー6を設置する際にタッピングねじ8が落下したり、紛失したりすることがある。
【0009】
さらに、そのようなタッピングねじ8を使用することの別の欠点は、当該タッピングねじ8を締め付けるトルクを規定および制御することである。実際に、タッピングねじを挿入する際に、ねじの挿入軸に対して横向きの力がカバーに生じ、それによりカバーが劣化し得る。このような横向きの力が存在すると、カバー6を製造するために使用される材料の選択を制限する制約が生じる。
【0010】
実際に、カバー6の材料は、当該横向きの力に対して耐えるのに十分な機械的特性を有さなければならない。
【0011】
リダクションホイール上に位置するハウジング1のカバー6を、50%ガラスファイバ(PA66-GF50)を充填された環状ポリアミド6.6を含む材料で製造することが知られている。
【0012】
この材料の欠点は、材料が湿潤な環境にある場合に変形することである。したがって、自動車が使用される際に、カバーは、高温で湿潤な環境にさらされ、双曲的放物面の形態を取るまで変形する。この変形は、Oリング7が露出し、封止が失われる程度にまで進行し得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の目的は、以下の方法を提案することによって上記欠点の全てまたは一部を改善することである。当該方法は、カバーをパワーステアリングシステムのオリフィスに固定するための方法であって、カバーをオリフィスに接近させる工程を包含し、カバーの少なくとも1つの延長部をオリフィスの隣に位置する少なくとも1つの凹部に挿入する工程と、カバーの少なくとも1つの延長部を変形させる工程とを含むことを特徴とする方法である。
【0014】
接近工程中、カバーは、オリフィスに対向するように配置される。
【0015】
挿入工程中、カバーの少なくとも1つの延長部は、凹部に導入される。当該凹部は、オリフィスに対して独立し、オリフィスの隣に位置する。当該凹部は、貫通凹部である。
【0016】
変形工程によって、延長部に対応するカバーの一部を凹部内でブロックすることによってカバーをオリフィスに固定することが可能になる。言い換えると、カバーを固定した後、カバーは、オリフィス上にその形状(すなわち、幾何形状)によって保持される。
【0017】
固定は、最終であり得る、すなわち、カバーは、劣化させずにオリフィスから取り外すことができない。あるいは、固定は、一時的であり得る、すなわち、カバーは、取り外し中にその初期形状を保持し、再利用できる。
【0018】
変形工程中、少なくとも1つの延長部は、少なくとも1つの延長部の変形を生じさせる力(可塑力または弾性力であり得る)を受ける。
【0019】
当該力は、延長部の長軸に沿って、またはそれの横方向に加えられる。
【0020】
当該力の印加点は、カバーの延長部に位置する。
【0021】
本発明にかかる方法は、カバーの延長部(印加点)だけに力を加える。したがって、カバーは、当該技術水準と比較して、機械的特性の重要性がより低くてよい。このように、カバーの製造のために多くの材料が利用可能である。
【0022】
本発明にかかる方法によって、高温で湿潤な環境において変形しない材料でカバーを製造することが可能になる、すなわち、材料は、湿度および熱に対して良好な抵抗性を有する。
【0023】
本発明にかかる方法は、当該技術水準の固定方法と比較して、カバーのオリフィスに対する封止をより長く維持することを最終的に可能にする。
【0024】
さらに、本発明にかかるカバーを固定するための方法は、例えば、ねじなどの追加の接続部材を使用する必要がない。このように、タッピングねじの供給に関連した問題や他のねじに関する偏り(polarization)に関連した問題が一切解消される。
【0025】
本発明の第1の変形例によると、変形工程は、カバーの延長部の少なくとも部分溶融段階(phase)を包含する。
【0026】
融着段階は、挿入工程の後に行われる。
【0027】
溶融段階は、カバーの延長部に可塑変形を生じさせる。
【0028】
実際に、カバーの形状、すなわち、幾何形状は、溶融段階によって最終的に(definitively)変更される。
【0029】
溶融段階後に、延長部は、一端部において頭部を有する。当該頭部は、凹部の断面よりも大きな断面を有するので、頭部は、凹部を通過できない。
【0030】
溶融段階は、カバーのオリフィスへの最終固定を生成する。
【0031】
本発明の第1変形例の特徴によると、変形工程は、位置決め段階を包含する。位置決め段階において、アンビルが少なくとも1つの延長部の第1端部に対向するカバーの保護壁の縁部に接触するように配置され、そして、変形要素が少なくとも1つの延長部の第2端部に実質的に接触するように配置される。
【0032】
アンビルは、変形要素の作用下に第2端部が液状化されている間、延長部の第1端部を所定位置に保持することを可能にするツールである。
【0033】
変形要素は、延長部を溶融させるために延長部の内部エネルギーを増大させることを可能にする。このために、変形要素は、熱源または超音波源を備える。
【0034】
変形要素を延長部から遠ざかるように移動させると、第2端部は、頭部を形成することによって固体化される。
【0035】
このように、頭部は、オリフィスの壁に接触し、そして軸方向のバックラッシュがない、すなわち、カバーとオリフィスの壁の間に延長部の長軸方向の隙間がない。
【0036】
本発明の第2変形例によると、変形工程は、少なくとも1つの延長部を曲げる段階を包含し、当該段階は、挿入工程の前に行われる。
【0037】
曲げ段階は、挿入工程の前に行われる。
【0038】
曲げ段階によって、カバーの形状を一時的に変更することができる、すなわち、これは、カバーの弾性変形である。
【0039】
曲げ段階によって、延長部を凹部に挿入することが可能になる。
【0040】
曲げ段階の後、挿入工程が行われる。
【0041】
延長部が凹部に挿入されると、延長部は、元の形状に戻る。次いで、延長部は、凹部においてブロックされる。
【0042】
カバーのオリフィスへの固定は、一時的である、すなわち、再度曲げ段階を行うことによって、延長部、およびしたがって、カバーは、凹部から取り外すことができる。
【0043】
本発明はまた、本発明にかかる方法を実施することによってパワーステアリングシステムのオリフィスに固定されるように意図されるカバーに関する。当該カバーは、縁部によって少なくとも部分的に囲まれた保護壁と、縁部に不可逆的に接続された少なくとも1つの延長部とを備える。
【0044】
保護壁は、オリフィスの一部または全部を覆うように構成される。
【0045】
用語「不可逆的に接続される」は、延長部がカバーを劣化させずにカバーから分離させることができないことを意味する。延長部およびカバーは、1つの部品を形成する。
【0046】
したがって、延長部は、カバーをオリフィスに固定するためのカバー上のインサートに対応しない。
【0047】
本発明の一特徴によると、保護壁および縁部は、同一平面において伸びる。
【0048】
本発明の一特徴によると、縁部は、保護壁を囲む。
【0049】
本発明の一特徴によると、カバーは、複数の延長部を備える。
【0050】
本発明の一特徴によると、少なくとも1つの延長部は、保護壁が伸びる平面に直交する軸に実質的に沿って伸びる。
【0051】
したがって、延長部は、閉塞されるべきオリフィスの隣に位置する凹部に導入されるように適合される。凹部は、オリフィスの長軸とほぼ同じ(similar)軸に沿って伸びる。
【0052】
一特徴によると、カバーの少なくとも1つの延長部を備える面に対して反対の面は、実質的に平坦である。
【0053】
延長部が凹部に挿入されると、カバーは、突出する要素を有さない。
【0054】
本発明の一特徴によると、カバーは、ポリ(ブチレンテレフタレート)またはポリプロピレンからの材料で製造される。
【0055】
ポリ(ブチレンテレフタレート)またはPBTは、ポリエステル系に属する熱可塑性ポリマーである。この半結晶性ポリマーは、テレフタル酸およびブタン-1,4-ジオールの重縮合によって得られる。
【0056】
ポリプロピレンは、半結晶性熱可塑性ポリマーである。
【0057】
ポリ(ブチレンテレフタレート)およびポリプロピレンは、良好な機械的特性、高い耐湿性、および良好な温度安定性を有する二材料である。さらに、これらの材料は、熱融着性である。
【0058】
本発明の一特徴によると、少なくとも1つの延長部は、少なくとも1つの延長部が挿入されるように意図される凹部の長さよりも大きな長さを有する。
【0059】
したがって、延長部は、貫通凹部を突き抜ける寸法を有する。
【0060】
本発明の一特徴によると、少なくとも1つの延長部は、互いに平行な2つの要素を備える。
【0061】
したがって、曲げ段階中、2つの要素は、変形する。この変形は、延長部が単一の要素から形成される場合よりも大きくない。このように、2つの要素によって、劣化する恐れのある過度な変形を避けることができる。
【0062】
本発明の一特徴によると、少なくとも1つの延長部の一端部は、突起を備える。
【0063】
突起は、凹部の内部を通過するような寸法を有する。突起は、カバーが凹部から引き抜かれることを阻止するため、凹部の縁部に支持されるように構成される。
【0064】
本発明の一特徴によると、突起は、逃げ角、すなわち、延長部の長軸に対して横向きの軸と突起の縁部との間の角度を有する。
【0065】
本発明の一特徴によると、逃げ角は、1~30°、より詳細には5~15°である。
【0066】
逃げ角によって、パワーステアリングシステムのカバーおよびオリフィスの異なるばらつきおよび許容を克服することによって、軸方向のバックラッシュ、すなわち、カバーとオリフィスの壁との間に延長部の長軸方向の隙間を生むことなく、カバーをオリフィスに載せた組立体を構成できる。
【0067】
本発明の一特徴によると、少なくとも1つの延長部は、ロッドの自由端に接続された少なくとも2つの脚部を備える。
【0068】
ロッドは、実質的に直線状である。
【0069】
ロッドの第1端部は、保護壁の縁部に接続され、2つのタブがロッドの第2端部に接続される。
【0070】
2つの脚部は、実質的に対称かつ可撓である。2つの脚部は、鋭角を形成する。
【0071】
2つの脚部によって、延長部は、より大きく変形することが可能になる。このように、凹部の寸法が大きくばらついても、延長部は容易に適合可能となる。
【0072】
本発明はまた、自動車のパワーステアリングシステムのステアリングハウジングに関し、当該ハウジングは、本発明にかかるカバーを備える。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1図1は、当該技術水準にかかるパワーステアリングシステムのハウジングを示す図である。
図2図2は、第1の実施形態にかかるカバーをステアリングシステムのハウジングのオリフィスに接近させる工程の斜視図である。
図3図3は、第1の実施形態にかかるカバーを挿入する工程を行った後のステアリングシステムのハウジングの断面図である。
図4図4は、第1の実施形態にかかるカバーを変形させる工程を行った後のステアリングシステムのハウジングの断面図である。
図5図5は、第2の実施形態にかかるカバーをステアリングシステムのハウジングのオリフィスに接近させる工程の斜視図である。
図6図6は、第2の実施形態にかかるカバーを挿入する工程を行った後のステアリングシステムのハウジングの断面図である。
図7図7は、第3の実施形態にかかるカバーをステアリングシステムのハウジングのオリフィスに接近させる工程の斜視図である。
図8図8は、第3の実施形態にかかるカバーを挿入する工程を行った後のステアリングシステムのハウジングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
本発明は、以下の記載からより良く理解され得る。以下の記載は、非限定の例によって与えられ、添付の模式図を参照して説明される、本発明にかかるいくつかの実施形態に関する。
【0075】
本発明は、概して、自動車のパワーステアリングシステムのハウジング1’、1’’に関する。
【0076】
ハウジング1’、1’’は、外壁5’、5’’を含む。外壁5’、5’’は、金属製または硬質なプラスチック材料製であり得る。ハウジング1’、1’’は、ギア機構(図示せず)を収容する。
【0077】
上記機構は、好ましくは、リダクションホイールとウォームねじとを備える減速機である。減速機は、ステアリング補助モータと、ラックまたはステアリングコラムなどの可動部材との間の機械的伝達を確実にする。ステアリングコラムは、車両の操向車輪のヨー方向(ステアリング角度)の変更を可能にする。
【0078】
ハウジング1’、1’’は、複数のアクセスオリフィス2、3、4を備える。アクセスオリフィス2、3、4は、当該ハウジング1’、1’’の外壁5’、5’’を通り抜け、それにより、ハウジング1’、1’’要素の全てまたは一部の導入および組立が可能になる。オリフィス2、3、4は、実質的に円形の形状を有する。
【0079】
以下、リダクションホイール上に位置するオリフィス4を閉塞可能なカバー6’、6’’に特に注目する。
【0080】
本発明の第1の実施形態を図2、3、および4においてより詳細に例示する。
【0081】
この実施形態において、ハウジング1’は、実質的に円形の断面を有する2つの凹部9’を備える。2つの凹部9’は、オリフィス4の隣に、直径方向に互いに対向して位置する。凹部9’は、オリフィス4と組み合わされていない。凹部9’は、ハウジング1’の外壁5’の厚みを通過する。したがって、凹部9’は、貫通凹部である。
【0082】
第1の実施形態にかかるカバー6’は、オリフィス4の直径に実質的に等しい直径を有する、実質的に円形の保護壁61を備える。保護壁61は、縁部62まで平面状に伸びる。
【0083】
縁部62は、保護壁61を囲み、そして保護壁61に対して直径方向に反対側に位置する2つの部分63を備える。各部分63は、延長部64’を備える。
【0084】
延長部64’は、部分63に不可逆的に固定される。より詳細には、保護壁61と、縁部62と、延長部64’とを備えるカバー6’は、1回の材料注入操作で製造される。延長部64’は、延長部64’が挿入されるように意図される凹部9’の直径に実質的に等しい直径を有する、実質的に円筒な形状を有する。延長部64’は、保護壁61が伸びる平面に直交する軸に沿って伸びる。延長部64’は、延長部64’が挿入されるように意図される凹部9’の長さよりも大きな長さを有する。
【0085】
2つの延長部64’は、カバー1’の同じ面に位置する。以下、その面を内面と称す。したがって、2つの延長部64’は、対応する凹部9’に挿入できる。
【0086】
本発明にかかるカバー6’をオリフィス4に固定する方法は、図2に示すように、カバー6’をオリフィス4に接近させる工程を包含する。この工程において、カバー6’は、オリフィス4に対向した状態で、ハウジング1’から離れた位置にある。より詳細には、カバー6’の内面がオリフィス4に対向する位置にあるので、延長部64’がそれぞれ凹部9’に対向する。
【0087】
次いで、カバー6’の延長部64’を凹部9’に挿入する工程が行われる。挿入工程が完了すると、保護壁61は、オリフィス4を覆い、そして縁部62は、ハウジング1’の外壁5’に接触する。
【0088】
さらに、各延長部64’は、図3に示すように、凹部9’内に位置する。各延長部64’は、対応する凹部9’から突き出る。
【0089】
次いで、固定方法は、延長部64’を変形させる工程、より詳細には、位置決め段階および次いで溶融段階を包含する。
【0090】
位置決め段階中、アンビルがカバー6’の部分63に接触するように配置される。したがって、アンビルは、カバー1’の内面とは反対の面に位置する。
【0091】
さらに、変形要素が延長部64’の自由端、すなわち、凹部9’を通過した端部に接触するように位置する。
【0092】
溶融段階中、変形要素は一方で、延長部64’が液体状になるように延長部64’の内部エネルギーを増加させ、他方で延長部64’にアンビルの方向の圧力を加えて、延長部64’の長さを低減し、そして頭部65’が延長部64’に形成される。
【0093】
頭部65’は、実質的に円形の形状を有し、その直径は、凹部9’の直径よりも大きい。頭部65’は、ハウジング1’の外壁5’に接触する。
【0094】
冷却後、頭部65’は、硬化し、もはや凹部9’を通過できない。したがって、頭部65’は、延長部64’が凹部9’から引き抜かれることを防止し、したがって、カバー6’がオリフィス4から引き抜かれることを防止する。
【0095】
変形工程は、2つの延長部64’に対して同時に、または反対に順次に行われる。
【0096】
本発明の第2の実施形態を図5および6により詳細に例示する。
【0097】
この実施形態において、ハウジング1’’は、実質的に正方形または円形の断面を有する2つの凹部9’’を備える。2つの凹部9’’は、オリフィス4の隣に、直径方向に互いに対向して位置する。凹部9’’は、オリフィス4と統合(merge)されていない。凹部9’’は、ハウジング1’’の外壁5’’の厚みを通過する。したがって、凹部9’’は、貫通凹部である。
【0098】
第2の実施形態にかかるカバー6’’は、オリフィス4の直径に実質的に等しい直径を有する、実質的に円形の保護壁61を備える。保護壁61は、縁部62まで平面状に伸びる。
【0099】
縁部62は、保護壁61を囲み、そして保護壁61に対して直径方向に反対側に位置する2つの部分63を備える。各部分63は、延長部64’’を備える。
【0100】
延長部64’’は、部分63に不可逆的に固定される。より詳細には、保護壁61と、縁部62と、延長部64’’とを備えるカバー6’’は、1回の材料注入操作で製造される。延長部64’’は、保護壁61が伸びる平面に直交する軸に沿って伸びる。延長部64’’は、延長部64’’が挿入されるように意図される凹部9’’の長さよりも若干大きな長さを有する。延長部64’’は、互いに平行に伸びる第1要素67および第2要素66を備える。第1要素67は、平滑な表面を有する。第2要素66は、自由端、すなわち、縁部62に接触する端部に対向する端部において、突起65’’を備える。
【0101】
突起65’’は、逃げ角α、すなわち、延長部の長軸に対して横方向の軸Xと突起65’’の縁部との間の角度を有する。逃げ角αは、5~15°である。
【0102】
2つの延長部64’’は、カバー1’’の同じ面に位置する。以下、その面を内面と称す。したがって、2つの延長部64’’は、対応する凹部9’’に挿入できる。
【0103】
本発明にかかるカバー6’’をオリフィス4に固定する方法は、図5に示すように、カバー6’’をオリフィス4に接近させる工程を包含する。この工程において、カバー6’’は、オリフィス4に対向した状態で、ハウジング1’’から離れた位置にある。より詳細には、カバー6’’の内面がオリフィス4に対向する位置にあるので、延長部64’’がそれぞれ凹部9’’に対向する。
【0104】
次いで、延長部64’’を変形させる工程が行われる、より詳細には、曲げ段階である。当該曲げ段階において、各延長部64’’の2つの要素66、67は、弾性的に一緒に曲げられる。この曲げ工程を行うために、各延長部64’’の2つの要素66、67に力が加えられる。変形工程は、2つの延長部64’’に対して同時に行われる。
【0105】
変形工程の後、カバー6’’の延長部64’’を凹部9’’に挿入する工程が行われる。挿入工程が完了すると、保護壁61は、オリフィス4を覆い、そして縁部62は、ハウジング1’’の外壁5’’に接触する。さらに、各延長部64’’は、図6に示すように、凹部9’’内に位置する。各延長部64’’は、対応する凹部9’’から突き出る。
【0106】
2つの要素66、67に力が加わっていない状態で、2つの要素66、67は、保持姿勢を取る。第2要素66の突起65’’は、ハウジング1’’の外壁5’’に接触する。逃げ角αによって、軸方向のバックラッシュ、すなわち、カバーとオリフィスの壁との間に延長部の長軸方向の隙間を生むことなく、カバーをオリフィスに載せた組立体を構成できる。
【0107】
突起65’’は、凹部9’’の軸内に位置しない。突起65’’は、凹部9’’の軸に対してずれる。したがって、突起65’’は、もはや凹部9’’に進入できない。突起65’’は、延長部64’’が凹部9’’から引き抜かれることを防止し、したがって、カバー6’’がオリフィス4から引き抜かれることを防止する。
【0108】
本発明の第3の実施形態を図7および8により詳細に例示する。
【0109】
この実施形態において、ハウジング1’’’は、実質的に長方形の断面を有する2つの凹部9’’’を備える。2つの凹部9’’’は、オリフィス4の隣に、直径方向に互いに対向して位置する。凹部9’’’は、オリフィス4と統合されていない。凹部9’’’は、ハウジング1’’’の外壁5’’’の厚みを通過する。したがって、凹部9’’’は、貫通凹部である。
【0110】
第3の実施形態にかかるカバー6’’’は、オリフィス4の直径に実質的に等しい直径を有する、実質的に円形の保護壁61を備える。保護壁61は、縁部62まで平面状に伸びる。
【0111】
縁部62は、保護壁61を囲み、そして保護壁61に対して直径方向に反対側に位置する2つの部分63を備える。各部分63は、延長部64’’’を備える。
【0112】
延長部64’’’は、部分63に不可逆的に固定される。より詳細には、保護壁61と、縁部62と、延長部64’’’とを備えるカバー6’’’は、1回の材料注入操作で製造される。延長部64’’’は、保護壁61が伸びる平面に直交する軸に沿って伸びる。延長部64’’’は、延長部64’’’が挿入されるように意図される凹部9’’’の長さよりも大きな長さを有する。延長部64’’’は、ロッド69の自由端に接続された2つの脚部68を備える。
【0113】
ロッド69、実質的に直線状である。ロッドの第1端部は、保護壁61の縁部62に固定され、2つの脚部68は、ロッド69の第2端部に固定される。
【0114】
2つの脚部68は、実質的に対称かつ可撓である。2つの脚部68は、ロッド69の両側で伸びている。脚部668は、ロッド69と鋭角をなす。
【0115】
2つの延長部64’’’は、カバー1’’’の同じ面に位置する。以下、その面を内面と称す。したがって、2つの延長部64’’’は、対応する凹部9’’’に挿入できる。
【0116】
本発明にかかるカバー6’’’をオリフィス4に固定する方法は、図7に示すように、カバー6’’をオリフィス4に接近させる工程を包含する。
【0117】
この工程において、カバー6’’’は、オリフィス4に対向した状態で、ハウジング1’’’から離れた位置にある。より詳細には、カバー6’’’の内面がオリフィス4に対向する位置にあるので、延長部64’’’がそれぞれ凹部9’’’に対向する。
【0118】
次いで、延長部64’’’を変形させる工程が行われる、より詳細には、曲げ段階である。当該曲げ段階において、各延長部64’’’の2つの脚部68は、弾性的に一緒に曲げられて、ロッド69により近づく。この曲げ工程を行うために、各延長部64’’’の2つの脚部68に力が加えられる。変形工程は、2つの延長部64’’’に対して同時に行われる。
【0119】
変形工程の後、カバー6’’’の延長部64’’’を凹部9’’’に挿入する工程が行われる。挿入工程が完了すると、保護壁61は、オリフィス4を覆い、そして縁部62は、ハウジング1’’’の外壁5’’’に接触する。さらに、各延長部64’’’は、図8に示すように、凹部9’’’内に位置する。各延長部64’’’は、対応する凹部9’’’から突き出る。
【0120】
2つの脚部68に力が加わっていない状態で、2つの脚部68は、保持姿勢を取り、延長部64’’’が凹部9’’’から引き抜かれることを防止し、したがって、カバー6’’’がオリフィス4から引き抜かれることを防止する。
【0121】
当然ながら、本発明は、添付の図面に示した上記の実施形態に限定されない。特に、種々の要素の構成の観点から、あるいは技術的な均等物の置き換えによって、本発明の保護の範囲から逸脱せずに、変更が可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8