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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】乗降地提示装置及び乗降地提示方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/123 20060101AFI20240507BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20240507BHJP
   G09B 29/10 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G08G1/123 A
G08G1/09 F
G09B29/10 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020089523
(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公開番号】P2021184186
(43)【公開日】2021-12-02
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(73)【特許権者】
【識別番号】599115217
【氏名又は名称】株式会社 ディー・エヌ・エー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】立川 浩幹
(72)【発明者】
【氏名】富張 金剛
(72)【発明者】
【氏名】増谷 修
(72)【発明者】
【氏名】平林 知己
(72)【発明者】
【氏名】町川 高明
【審査官】宮本 礼子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/220206(WO,A1)
【文献】特開平10-208195(JP,A)
【文献】特開2019-211279(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
G01C 21/00-25/00
G09B 29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザが車両へ乗降する乗降地を、予め定めた乗降地候補の中から抽出して、前記ユーザに提示する乗降地提示装置であって、
受信部と、演算部と、送信部とを備え、
前記乗降地を前記乗降地候補の中から抽出するための複数の評価項目が設定され、
前記複数の評価項目には、乗降地候補を単位時間あたりに通過する他車両の数と、他車両の平均速度と、乗降地候補の路肩に停車又は駐車している他車両の密度とが含まれ、
前記受信部は、
経時的に変化する動的データであって、前記乗降地候補の各々の交通状況を示す前記動的データを受信し、
前記ユーザが前記車両の配車を要求する配車リクエストであって、前記ユーザが乗降を希望する希望時刻を含む前記配車リクエストを示すデータを受信し、
前記演算部は、
受信した前記動的データに含まれる前記交通状況の経時変化の周期及び位相を特定し、
前記経時変化の周期及び位相に基づいて、前記希望時刻から算出される前記乗降地候補の各々へ前記車両が到着する到着予定時刻における前記乗降地候補の各々の交通状況を示すデータを算出し、
算出した前記交通状況を示すデータに基づいて、前記乗降地を前記乗降地候補の中から抽出し、
前記送信部は、抽出された前記乗降地を示すデータを前記ユーザが保持する通信機器へ送信する
ことを特徴とする乗降地提示装置。
【請求項2】
前記乗降地候補の周囲に、道路に面する施設と道路との間での車両の出入り口が有る場合、前記複数の評価項目には、前記出入り口から出入りする他車両の数が含まれることを特徴とする請求項1に記載の乗降地提示装置。
【請求項3】
前記乗降地候補の周囲に、対向車線を跨いで右又は左に曲がる右左折レーンが、直進する直進レーンから分岐して形成されている交差点が有る場合、前記複数の評価項目には、前記右左折レーンの渋滞が前記直進レーンまで伸びているか否かが含まれることを特徴とする請求項1又は2に記載の乗降地提示装置。
【請求項4】
前記受信部は、経時的に変化しない静的データであって、前記乗降地候補の各々の道路構造を示す前記静的データを更に受信し、
予め定めた採点基準に従って前記動的データ及び前記静的データの各々を採点し、
前記動的データ及び前記静的データに係る採点結果を集計した集計値に基づいて前記乗降地を前記乗降地候補の中から抽出する
ことを特徴とする請求項~3のいずれか一項に記載の乗降地提示装置。
【請求項5】
前記動的データ及び前記静的データに係る採点結果の各々に対して、前記ユーザが乗降する際の安全性、及び前記車両の停め易さの観点から前記動的データ及び前記静的データの各々に定まる係数を乗算し、前記係数を乗算した後の採点結果を集計した集計値の平均値に基づいて前記乗降地を抽出する
ことを特徴とする請求項に記載の乗降地提示装置。
【請求項6】
ユーザが車両へ乗降する乗降地を、予め定めた乗降地候補の中から抽出して、前記ユーザに提示する乗降地提示方法であって、
前記乗降地を前記乗降地候補の中から抽出するための複数の評価項目が設定され、
前記複数の評価項目には、乗降地候補を単位時間あたりに通過する他車両の数と、他車両の平均速度と、乗降地候補の路肩に停車又は駐車している他車両の密度とが含まれ、
経時的に変化する動的データであって、前記乗降地候補の各々の交通状況を示す前記動的データを受信し、
前記ユーザが前記車両の配車を要求する配車リクエストであって、前記ユーザが乗降を希望する希望時刻を含む前記配車リクエストを示すデータを受信し、
受信した前記動的データに含まれる前記交通状況の経時変化の周期及び位相を特定し、
前記経時変化の周期及び位相に基づいて、前記希望時刻から算出される前記乗降地候補の各々へ前記車両が到着する到着予定時刻における前記乗降地候補の各々の交通状況を示すデータを算出し、
算出した前記交通状況を示すデータに基づいて、前記乗降地を前記乗降地候補の中から抽出し、
抽出された前記乗降地を示すデータを前記ユーザが保持する通信機器へ送信する
ことを特徴とする降地提示方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗降地提示装置及び乗降地提示方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数の車両から得られるプローブ情報に基づいて交通情報を生成し、管理するシステムが知られている(特許文献1参照)。特許文献1では、ユーザからの配車要求に応じて、記憶装置に蓄積されたプローブ情報から算出される、各停車地点間の移動所要時間に基づいて、ユーザが指定した乗車地から降車地及び乗車地までの移動所要時間を推定し、配車計画及び走行計画を作成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-20928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されたシステムは、配車要求における乗降車地点に車両を停車させることが可能であるか否かの判断はしていない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて成されたものであり、その目的は、ユーザの乗降時の安全性を損なうことなく車両を停車させることが可能な乗降地を抽出し、ユーザに提示する乗降地提示装置及び乗降地提示方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係わる乗降地提示装置は、受信した動的データに含まれる交通状況の経時変化の周期及び位相を特定する。経時変化の周期及び位相に基づいて、ユーザが乗降を希望する希望時刻から算出される、乗降地候補の各々へ車両が到着する到着予定時刻における、乗降地候補の各々の交通状況を示すデータを算出する。算出した交通状況を示すデータに基づいて、乗降地を乗降地候補の中から抽出し、抽出された乗降地を示すデータをユーザが保持する通信機器へ送信する。
【発明の効果】
【0007】
ユーザの乗降時の安全性を損なうことなく車両を停車させることが可能な乗降地を抽出しユーザに提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、乗降地提示装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示した乗降地提示装置の周期・位相特定部32の詳細な構成を示すブロック図である。
図3A図3Aは、平日の乗降地候補(A点)を単位時間あたりに通過する他車両の数の経時変化の周期及び位相を表す波形を示す。
図3B図3Bは、曜日別の乗降地候補(A点)を単位時間あたりに通過する他車両の数の経時変化の曜日別の周期及び位相の波形を示す。
図4図4は、第1実施形態に係る乗降地提示装置が乗降地を乗降地候補の中から抽出する処理を示している。
図5図5は、乗降地候補の各々に設定された複数の評価項目に対応する評価データが取り得る値と、評価データが取り得る値への配点を示している。
図6図6は、第2実施形態に係る乗降地提示装置が乗降地を乗降地候補の中から抽出する処理を示している。
図7図7は、乗降地提示装置を用いた乗降地提示方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図面を参照して、実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0010】
(第1実施形態)
[乗降地提示装置の構成]
図1を参照して、実施形態に係わる乗降地提示装置の全体構成を説明する。乗降地提示装置は、ユーザが車両へ乗降する乗降地を、予め定めた乗降地候補の中から抽出して、ユーザに提示する装置である。乗降地提示装置は、ユーザから要求された配車リクエストを示すデータ及び交通状況を示す動的データを受信する受信部10と、予め定められた乗降地候補を記憶する記憶部20と、乗降地を抽出する演算部30と、ユーザが保持する通信機器へ乗降地を示すデータを送信する送信部40とを備える。
【0011】
受信部10は、配車リクエストを示すデータを受信する配車リクエスト受信部11と、交通状況を示す動的データを受信する動的データ受信部12とを備える。
【0012】
配車リクエスト受信部11は、ユーザが保持する通信機器を含む配車リクエストを送信する送信器から送信された配車リクエストを示すデータを受信する。配車リクエストを示すデータには、少なくとも乗降を希望する希望時刻が含まれる。配車リクエストを示すデータには、更に、ユーザが乗降を希望する乗降地が含まれていてもよい。ここで、「乗降」とは、ユーザが車両に乗車すること、及びユーザが車両から降車することの少なくとも一方を示す用語である。よって、「乗降を希望する希望時刻」とは、乗車を希望する時刻、及び降車を希望する時刻の少なくとも一方を示す。「乗降地」とは、ユーザが車両に乗車する乗車地及びユーザが車両から降車する降車地の少なくとも一方を示す。
【0013】
動的データ受信部12は、道路交通情報通信システム(VICS)を含む道路の交通状況を配信するシステムから配信された乗降地候補の各々の経時的に変化する交通状況を示す動的データ(以後「動的データ」という)を受信する。前記したVICSは登録商標である。動的データには、VICSから配信されるデータのみならず、乗降地候補の周囲を走行する他車両が計測した他車データも含まれる。具体的に、動的データには、他車両に搭載されたカメラ、ライダー(LiDAR)、及びその他のレーダーを用いて計測された測定データ、及びこれらの測定データの各々又は複数の測定データの組み合わせに基づいて演算された統計的なデータが、含まれる。
【0014】
記憶部20は、予め乗降地として使用可能と判断された乗降地候補をリスト化した乗降地リストを記憶するデータベースであって、記憶部20は、データベースサーバを含む情報記憶装置で構成される。
【0015】
演算部30は、受信部10が受信した動的データ及び配車リクエストを示すデータを取得し、ユーザが車両へ乗降する乗降地を、記憶部20に記憶された乗降地候補の中から抽出し、抽出された乗降地を送信部40へと転送する。演算部30は、例えば、CPU、メモリ、及び入出力部を備えるサーバ又はマイクロコントローラを含むコンピューディングデバイスであり、予めインストールされたコンピュータプログラムを実行することにより、乗降地提示装置が備える複数の情報処理部を構成する。
【0016】
演算部30により構成される複数の情報処理部には、乗降地候補抽出部31と、周期・位相特定部32と、交通状況算出部33と、乗降地抽出部34とが含まれる。
【0017】
乗降地候補抽出部31は、配車リクエスト受信部11から取得した配車リクエストを示すデータに含まれるユーザが乗降を希望する乗降地に基づいて、記憶部20に記憶された乗降地リストの中から乗降地候補を抽出する。乗降地候補抽出部31が乗降地リストの中から乗降地候補を抽出する具体的な処理としては、ユーザが乗降を希望する乗降地を中心に、半径が所定の距離に設定された円状の範囲内に存在する乗降地候補を検索することにより、乗降地候補を抽出することができる。前記した所定の距離は、ユーザが任意に設定することが可能である。また、乗降地候補抽出部31が周囲に存在する乗降地候補の数に基づいて、自動で所定の距離を調整するように設定することも可能である。さらに、配車リクエストを示すデータにユーザが乗車を希望する乗車地が含まれていない場合、ユーザが保持する通信機器が有するGPS信号の受信機能を用いたユーザの自己位置に基づいて、記憶部20に記憶された乗降地リストの中から乗降地候補を抽出しても構わない。
【0018】
周期・位相特定部32は、動的データ受信部12から抽出された乗降地候補の各々の動的データを取得する。そして、乗降地候補の各々の動的データに含まれる交通状況の経時変化の周期及び位相を特定する。
【0019】
具体的には、周期・位相特定部32は、抽出された乗降地候補の各々に設定された、乗降地を乗降地候補の中から抽出するための複数の評価項目を、乗降地候補を示す各々のデータの中から取得する。そして、取得した複数の評価項目に対応する各々の交通状況を乗降地候補の各々の動的データの中から抽出する。周期・位相特定部32は、抽出された交通状況の各々を、曜日別(平日/休日)、月別(季節)のデータに並び替え、並び替えられた各々のデータについてフーリエ変換、又は最小二乗法を含むデータ解析手法を用いて交通状況の経時変化の周期及び位相を特定する。周期・位相特定部32の具体的な構成、及び周期・位相特定部32が交通状況の経時変化の周期・位相を特定するための具体的な処理内容は、図2図3A、及び図3Bを用いて後述する。
【0020】
交通状況算出部33は、周期・位相特定部32が特定した交通状況の経時変化の周期及び位相を取得する。そして、交通状況算出部33は、交通状況の経時変化の周期及び位相に基づいて、配車リクエスト受信部11から取得したユーザが乗降を希望する希望時刻から算出される、乗降地候補の各々へ車両が到着する到着予定時刻における乗降地候補の各々の交通状況を示すデータを算出する。すなわち、交通状況算出部33は、先ず、配車リクエスト受信部11から取得したユーザが乗降を希望する希望時刻から乗降地候補の各々へ車両が到着する到着予定時刻を算出する。そして、交通状況算出部33は、交通状況の経時変化の周期及び位相に基づいて、乗降地候補の各々へ車両が到着する到着予定時刻における乗降地候補の各々の交通状況を示すデータを算出する。乗降地候補の各々の交通状況を示すデータを算出するための具体的な処理内容は、図3A用いて後述する。
【0021】
前記したユーザが乗降を希望する希望時刻から算出される、乗降地候補の各々へ車両が到着する到着予定時刻を算出する具体的な手段としては、カーナビゲーション装置を用いることができる。カーナビゲーション装置は、ユーザが入力した目的地を取得し、現在地から目的地までの走行経路を抽出する。そして、抽出された走行経路を走行するのに要する所要時間を、出発時刻を考慮して算出することにより、目的地へ到着する到着予定時刻を算出することができる。カーナビゲーション装置は、目的地までの複数の走行経路から、到着予定時刻が希望時刻を過ぎず且つ希望時刻に最も近くなる走行経路を選択してもよい。抽出された走行経路を走行するのに要する所要時間は、道路交通情報通信システム(VICS)から配信される交通状況を取得することにより、走行経路の交通状況が考慮された所要時間を算出することができる。当該カーナビゲーション装置は、例えば、乗降地提示装置内の交通状況算出部33内に搭載されていてもよいし、外部に配置され、通信により算出された到着予定時刻を受信して使用するようにしてもよい。
【0022】
乗降地抽出部34は、交通状況算出部33により算出された車両が到着する到着予定時刻における乗降地候補の各々の交通状況に基づいて、乗降地を乗降地候補の中から抽出し、抽出された乗降地を示すデータを送信部40へと転送する。乗降地を乗降地候補の中から抽出するための具体的な処理内容は、図4及び図5を用いて後述する。
【0023】
送信部40は、乗降地抽出部34によって抽出された乗降地を示すデータをユーザが保持する通信機器へ送信する。
【0024】
受信部10は、ユーザが選択した乗降地を受信する。そして、送信部40は、ユーザが選択した乗降地をユーザが乗降する車両へ送信する。
【0025】
(周期・位相特定部32の構成)
図2を参照して、周期・位相特定部32の具体的な構成について説明する。周期・位相特定部32は、評価項目取得部321と、交通状況抽出部322と、データ解析部323とを備える。
【0026】
評価項目取得部321は、乗降地候補抽出部31により抽出された乗降地候補の各々に設定された複数の評価項目を、乗降地候補を示すデータの各々から取得する。複数の評価項目には、全ての乗降地候補に共通して設定される共通の評価項目と、乗降地候補の各々の周囲の道路構造に応じて設定される評価項目とが含まれる。
【0027】
全ての乗降地候補に共通して設定される共通の評価項目には、乗降地候補を単位時間あたりに通過する他車両の数と、他車両の平均速度と、乗降地候補の路肩に停車又は駐車している他車両の密度とが含まれる。
【0028】
道路構造に応じて設定される評価項目として、乗降地候補の周囲に、道路に面する施設と道路との間での車両の出入り口が有る場合、複数の評価項目には、出入り口から出入りする他車両の数が含まれる。乗降地候補の周囲とは、例えば、乗降地候補を中心とする半径50mの円の中を示す。
【0029】
また、乗降地候補の周囲に、対向車線を跨いで右又は左に曲がる右左折レーンが、直進する直進レーンから分岐して形成されている交差点が有る場合、複数の評価項目には、対向車線を跨いで右又は左に曲がる右左折レーンの渋滞が直進レーンまで伸びているか否かが含まれる。
【0030】
交通状況抽出部322は、動的データ受信部12が受信した動的データを取得し、評価項目取得部321が取得した乗降地候補の各々に設定された複数の評価項目に該当する交通状況を、動的データの中から抽出する。
【0031】
データ解析部323は、交通状況抽出部322が抽出した乗降地候補の各々に設定された複数の評価項目に該当する交通状況を、曜日別(平日/休日)、月別(季節)の時系列データに並び替える。そして、各々のデータについてフーリエ変換、又は最小二乗法を含むデータ解析手法を適用して交通状況の経時変化の周期及び位相を特定する。
【0032】
(交通状況の経時変化の周期及び位相を特定する処理)
図3A及び図3Bを参照して、データ解析部323が、交通状況の経時変化の周期及び位相を特定する具体的な処理について説明する。図3Aは、乗降地候補抽出部31により抽出された乗降地候補(A点)を単位時間あたりに通過する他車両の数を曜日別に示したプロットと、平日の乗降地候補(A点)を単位時間あたりに通過する他車両の数の経時変化の周期及び位相を表す波形とを示している。図3Bは、乗降地候補(A点)を単位時間あたりに通過する他車両の数の経時変化の周期及び位相を表す波形を曜日別に示している。
【0033】
データ解析部323は、交通状況抽出部322により抽出された乗降地候補(A点)を単位時間あたりに通過する他車両の数を、曜日別(平日)の0時から23時59分までのデータとして並び替え、曜日別の時系列データを作成する。そして、作成された曜日別の時系列データの各々から0時から23時までの1時間刻みの時刻におけるデータを抽出する。図3Aに示すプロットは、抽出された曜日別の0時から23時までの1時間刻みの時刻における単位時間あたりに通過する他車両の数を示している。データ解析部323は、抽出された曜日別の0時から23時までの1時間刻みの時系列データに対して、曜日別にフーリエ変換を用いたデジタルフィルタ処理を施すことにより、図3Bに示す曜日別の経時変化の周期及び位相を特定する。
【0034】
図3Aに示す、平日全体の単位時間あたりに通過する他車両の経時変化の周期及び位相を表す波形は、図3Bに示す曜日別の各々の経時変化の周期及び位相に基づいて算出される。データ解析部323は、曜日別の各々の経時変化の周期及び位相から、曜日別の各々の0時から23時までの1時間刻みの時刻における単位時間あたりに通過する他車両の数を算出する。そして、算出された月~金までの同時刻における単位時間あたりに通過する他車両の数の平均値を算出する。算出された平均値に対してフーリエ変換を用いたデジタルフィルタ処理を施すことにより、図3Aに示す、平日の乗降地候補(A点)を単位時間あたりに通過する他車両の経時変化の周期及び位相を特定することができる。
【0035】
以上、図3A及び図3Bを用いて、データ解析部323が、交通状況の経時変化の周期及び位相を特定する例として、乗降地候補(A点)における平日の乗降地候補(A点)を単位時間あたりに通過する他車両の経時変化の周期及び位相を特定する方法を説明した。データ解析部323は、同様な方法により休日(土日)における経時変化の周期及び位相を特定することができる。データ解析部323は、抽出された乗降地候補の各々に設定された複数の評価項目に該当する交通状況について同様に処理を実施し、各々の交通状況の経時変化の周期及び位相を特定する。
【0036】
交通状況の経時変化の周期及び位相を特定する方法は、例示した方法に限定されず、他の例としては、前記した曜日別のデータに対して、最小二乗法を用いることにより交通状況の経時変化の周期及び位相を特定することができる。
【0037】
(交通状況を示すデータを算出する処理)
図3Aを参照して、交通状況算出部33が、乗降地候補の各々へ車両が到着する到着予定時刻における乗降地候補の各々の交通状況を示すデータを算出する具体的な処理について説明する。例として、乗降地候補(A点)に車両が到着する到着予定時刻が16時と算出された場合の乗降地候補(A点)の16時における単位時間あたりに通過する他車両の数を算出する処理を説明する。
【0038】
交通状況算出部33は、データ解析部323により特定された平日の乗降地候補(A点)を単位時間あたりに通過する他車両の経時変化の周期及び位相を取得する。交通状況算出部33は、取得した周期及び位相から16時における単位時間あたりに通過する他車両の数を算出する。平日の乗降地候補(A点)を単位時間あたりに通過する他車両の数の経時変化の周期及び位相から、16時に乗降地候補(A点)を単位時間あたりに通過する他車両の数は790台と算出される。
【0039】
交通状況算出部33は、同様の処理を実施して、ユーザが乗降を希望する希望時刻から算出される乗降地候補の各々へ車両が到着する到着予定時刻における、乗降地候補の各々の交通状況を示すデータを算出する。
【0040】
(乗降地を乗降地候補の中から抽出する処理)
図4及び図5を参照して、乗降地抽出部34が乗降地を乗降地候補の中から抽出する具体的な処理について説明する。図4は、乗降地抽出部34が乗降地を乗降地候補(A点、B点、C点)の中から抽出する処理を示し、図5は、乗降地候補の各々に設定された複数の評価項目に対応する評価データが取り得る値と、評価データが取り得る値の各々への配点を示している。
【0041】
乗降地抽出部34は、図4に示す乗降地候補(A点、B点、C点)の各々へ車両が到着する到着予定時刻における乗降地候補の各々の交通状況を示す動的データと、乗降地候補の各々の道路構造を示す経時的に変化しない静的データとを取得する。乗降地抽出部34は、取得した動的データ及び静的データの各々を予め定めた採点基準に従って採点し、動的データ及び静的データに係る採点結果を集計した集計値に基づいて乗降地を乗降地候補の中から抽出する。
【0042】
受信部10が備える動的データ受信部12が、静的データの受信も兼ねるように構成することにより、静的データを取得することができる。または、記憶部20に記憶される乗降地候補を示すデータに、予め乗降地周辺の静的データを紐づけて格納しておくことで、乗降地候補を示すデータから静的データを取得することができる。
【0043】
乗降地抽出部34は、乗降地候補の各々に設定された複数の評価項目を、評価項目取得部321から取得し、静的データの中から乗降地候補の各々に設定された複数の評価項目に該当する道路構造を示すデータを抽出する。
【0044】
静的データの評価項目には、例えば、車線数、車線幅、車線の色、中央分離帯の有無、歩道と車道の間の障害物の有無、横断歩道の有無、バス停の有無、消火栓の有無、が含まれる。静的データの評価項目は、乗降地候補の各々に共通して設定される。
【0045】
乗降地候補の各々を評価する評価項目には、乗降地候補の各々の道路構造に関する静的データの評価項目と、乗降地候補の各々へ車両が到着する到着予定時刻における交通状況に関する動的データの評価項目とが含まれる。図4に示す静的データの評価項目には、車線幅と、歩道と車道の間の障害物の有無とが設定され、動的データの評価項目には、単位時間あたりに通過する他車両の数と、他車両の平均速度と、乗降地候補の路肩に停車又は駐車している他車両の密度とが設定される。さらに、動的データの評価項目であって、道路構造に応じて設定される評価項目には、道路に面する施設と道路との間での車両の出入り口から出入りする他車両の数と、直進レーンから分岐して形成された対向車線を跨いで右又は左に曲がる右左折レーンの渋滞の有無とが設定される。
【0046】
乗降地抽出部34は、各々の評価項目に該当する道路構造を示すデータ及び乗降地の各々に車両が到着する到着予定時刻における交通状況を示すデータ(以後、「評価データ」という)を取得し、評価データの各々に対応する点数に従って各々の評価項目を採点する。
【0047】
乗降地抽出部34は、各々の評価項目に該当する評価データを、図5に示す評価データの各々に対応する点数に従って採点する。図5に示す評価データは、各々の評価項目で実際に取得し得る範囲の値を示し、点数は、ユーザの乗降時の安全性の高さ、及び車両の停車し易さの観点から定められ、評価データの各々が取得し得る範囲の値に対応して予め配点された値を示している。配点は、各々の評価項目において、標準的な状態として設定した評価データを0.9点(標準値)とし、標準的な状態より優れている評価データに対しては高い点数を配点し、標準的な状態より劣っている評価データに対しては低い点数を配点する。以下にて、各々の評価項目の評価データに対する具体的な配点について説明する。
【0048】
静的データの評価項目である車線幅に対する配点は、ユーザが不便を感じずに車両に乗降できる車両のドアの開口角度における車幅に基づいて決定される。前記した車幅は、予め、ユーザの車両への乗降を模擬した乗降試験を実施し、ユーザが不便を感じずに車両に乗降できる、車両のドアの開口角度における車幅を測定することにより決定される。本実施例ではユーザが不便を感じずに車両に乗降できる標準的な車線幅を「3m」と設定し、「0.9点」を配点する。なお、車両により、ユーザが不便を感じずに車両に乗降できる車両のドアの開口角度における車幅は異なるため、ユーザが使用する代表的な車両に合わせて標準値とする車線幅を設定してもよい。または、ユーザが使用する車両の各々の、ユーザが不便を感じずに車両に乗降できる車両のドアの開口角度における車幅を、前記した乗降試験により予め測定し、ユーザが使用する車両に応じて標準値とする車線幅を乗降地抽出部34が変更するようにしてもよい。
【0049】
歩道と車道の間の障害物の有無に対する配点は、障害物が「有り」を標準値として設定し、障害物が「無し」の場合には、標準的な状態より優れている状態を示す「0.95点」を配点する。
【0050】
動的データの評価項目である単位時間あたりに通過する他車両の数に対する配点は、乗降地候補の道路の交通容量の比率に基づいて決定される。例えば、乗降地候補(A点)における道路の交通容量が800台/時である場合、乗降地候補(A点)を単位時間あたりに通過する他車両の数が800台である場合の評価データを100%とし、標準値として0.9点を配点する。標準値を基準として、道路の交通容量に対する単位時間あたりに通過する他車両の数の比率が低い場合には、標準値よりも高い点を配点し、道路の交通容量に対する単位時間あたりに通過する他車両の数の比率が高い場合には、低い点数を配点する。
【0051】
他車両の平均速度に対する配点は、乗降地候補の道路の法定速度に基づいて決定される。例えば、乗降地候補(A点)における道路の法定速度が60km/時である場合、乗降地候補(A点)を走行する他車両の平均速度が60km/時である場合の評価データを100%とし、標準値として0.9点を配点する。標準値を基準として、道路の法定速度に対する他車両の平均速度が低い場合には、標準値よりも高い点を配点し、道路の法定速度に対する他車両の平均速度が高い場合には、低い点数を配点する。
【0052】
路肩に停車又は駐車している他車両の密度は、乗降地候補の路肩の面積に対して停車又は駐車している他車両が占有している面積の比率に基づいて決定される。例えば、乗降地候補の路肩の面積の50%を停車又は駐車車両によって占有されている場合、乗降地候補の路肩に停車又は駐車している車両の密度の評価データを100%とし、標準値として0.9点を配点する。標準値を基準として、停車又は駐車車両によって占有されている面積の比率が低い場合には標準値よりも高い点を配点し、比率が高い場合には低い点を配点する。
【0053】
道路構造に応じて設定される評価項目である、道路に面する施設と道路との間での車両の出入り口から出入りする他車両の数は、単位時間あたりに出入りする他車両の数に基づいて決定される。例えば、乗降地候補の周囲に存在する前記した出入り口から、10分あたりに出入りする他車両の数が1台以上ある場合、評価データは「多い」となり、0点と採点する。10分あたりに出入りする他車両の数が1台以下である場合、評価データは「少ない」となり採点はされず「-」が示される。また、乗降地候補が該当する道路構造となっていない場合、評価データは「該当無し」となり、採点はされず「-」が示される。
【0054】
道路構造に応じて設定される評価項目である、直進レーンから分岐して形成された対向車線を跨いで右又は左に曲がる右左折レーンの渋滞の有無は、右左折レーンの渋滞が直進レーンまで伸びているか否によって決定される。例えば、直進レーンから分岐して形成された右折レーンの渋滞が直進レーンまで伸びている場合、評価データは「渋滞有り」となり、0点と採点する。渋滞が直進レーンまで伸びていない場合、評価データは「渋滞無し」となり、採点はされず「-」が示される。また、乗降地候補が該当する道路構造となっていない場合、評価データ「該当無し」となり、採点はされず「-」が示される。
【0055】
道路構造に応じて設定される評価項目は、ユーザに提示する乗降地から乗降地候補を除外するための評価項目である。道路構造に応じて設定される評価項目のうちのいずれかの評価項目において0点が採点された場合、乗降地抽出部34は、0点が採点された乗降地候補を乗降地として抽出しない、即ち、当該乗降地候補を除外する。
【0056】
図4を参照して、乗降地抽出部34が、乗降地候補に設定された複数の評価項目を採点する処理、及び採点結果に基づいて乗降地として乗降地候補を抽出するか否かを判断する処理について説明する。
【0057】
乗降地候補(A点)の評価項目には、道路構造に応じて設定される評価項目である、道路に面する施設と道路との間での車両の出入り口から出入りする他車両の数と、直進レーンから分岐して形成された対向車線を跨いで右又は左に曲がる右左折レーンの渋滞の有無とが含まれる。乗降地候補(A点)へ車両が到着する到着予定時刻(16:00)における、出入り口から出入りする他車両の数を示す評価データは「少ない」となっており、右左折レーンの渋滞の有無を示す評価データは「渋滞無し」となっている。従って、道路構造に応じて設定される評価項目のうちのいずれの評価項目においても0点が採点されていないため、乗降地候補(A点)は、ユーザに提示する乗降地から除外される除外条件には該当していない。
【0058】
先ず、乗降地抽出部34は、乗降地候補(A点)に設定された複数の評価項目に該当する評価データの各々を、評価データの各々が取得し得る範囲の値に対応して予め配点された点数に基づいて採点する。
【0059】
次に、乗降地抽出部34は、ユーザに提示する乗降地から乗降地候補(A点)を除外するか否かを、「除外条件該当フラグ」の状態によって判断する。道路構造に応じて設定される評価項目の各々に設定された除外条件該当フラグは、「0点」が採点された場合に「TRUE」となり、それ以外は「FALSE」となる。乗降地抽出部34は、除外条件該当フラグが設定された、道路構造に応じて設定される評価項目のうちのいずれかの評価項目において、除外条件該当フラグが「TRUE」となっている場合に、ユーザに提示する乗降地から乗降地候補を除外する。
【0060】
乗降地候補(A点)では、道路構造に応じて設定される評価項目のいずれにも「0点」は採点されておらず、除外条件該当フラグは「FALSE」となっている。従って、乗降地抽出部34は、乗降地候補(A点)をユーザに提示する乗降地から除外しない。
【0061】
図4に示す例では、動的データの評価項目である「乗降地候補を単位時間あたりに通過する他車両の数」と、「他車両の平均速度」と、「乗降地候補の路肩に停車又は駐車している他車両の密度」とにも除外条件該当フラグが設定されている。このように、他の動的データの評価項目にも除外条件該当フラグを設定し、予め定めた値以上となり、交通状況が悪化した場合に、ユーザに提示する乗降地から乗降地候補を除外するようにしてもよい。
【0062】
最後に、乗降地抽出部34は、乗降地候補(A点)に設定された複数の評価項目に該当する、評価データの各々の採点結果を集計し、採点結果の集計値に基づいて、乗降地候補(A点)をユーザに提示する乗降地として抽出するか否かを判断する。具体的には、乗降地抽出部34は、乗降地候補(A点)の採点結果の集計値が予め定められた閾値以上となっているか否かを判断し、乗降地候補(A点)を抽出するか否かを決定する。
【0063】
前記した閾値には、ユーザの乗降時の安全性を損なうことなく車両を停車させることが可能な状態を示す値が設定される。閾値は、乗降地候補の各々に共通して設定されることが好ましい。しかし、共通の閾値にした場合に、ユーザの乗降時の安全性を損なうことなく車両を停車させることが可能であるにも関わらず、乗降地として抽出される頻度が低くなってしまう乗降地候補が発生した場合には、個別に閾値を設定してもよい。
【0064】
閾値の具体的な設定方法としては、例えば、ユーザの乗降時の安全性を損なうことなく車両を停車させることができる、最低限の道路構造及び交通状況を把握することにより、閾値を設定することができる。または、既に実績がある、安全性を損なうことなく車両を停車させることが可能な乗降地において、安全性を損なうことなく車両を停車させることが可能な時刻における評価データを取得し、評価データに基づいて閾値を設定することもできる。図4に示す例では、採点結果を集計する評価項目は5項目であり、閾値は、「4.4点」と設定されている。
【0065】
乗降地抽出部34は、乗降地候補(A点)の各々の評価項目の採点結果を集計し、採点結果の集計値を「4.45点」と算出する。乗降地候補(A点)の集計値は、閾値「4.4点」よりも高い値となっており、乗降地抽出部34は、乗降地候補(A点)をユーザに提示する乗降地として乗降地候補の中から抽出する。
【0066】
乗降地抽出部34は、乗降地候補(B点)及び乗降地候補(C点)にも同様の処理を実施して、乗降地候補(B点)及び乗降地候補(C点)について、ユーザに提示する乗降地として抽出するか否かを判断する。
【0067】
乗降地候補(B点)は、「直進レーンから分岐して形成された対向車線を跨いで右又は左に曲がる右左折レーンの渋滞の有無」が「渋滞有り」となっており、除外条件該当フラグが「TRUE」となっている。従って、乗降地抽出部34は、除外条件該当フラグが「TRUE」であることを検出し、乗降地候補(B点)をユーザに提示する乗降地から除外する。
【0068】
乗降地候補(C点)は、除外条件該当フラグが「TRUE」となっている評価項目はない。しかし、動的データの評価項目である「乗降地候補を単位時間あたりに通過する他車両の数」と、「他車両の平均速度」と、「乗降地候補の路肩に停車又は駐車している他車両の密度」とが、共に標準値である「0.9点」以下となっている。さらに静的データの評価項目である「車線幅」は、2.75mであり標準値を下回っている。そのため、乗降地候補(C点)における各評価項目の採点結果の集計値は、「4.35点」となっている。従って、乗降地抽出部34は、乗降地候補(C点)における各評価項目の採点結果の集計値が閾値「4.4点」以下であるため、乗降地候補(C点)をユーザに提示する乗降地として抽出しない。
【0069】
乗降地抽出部34は、ユーザに提示する乗降地として乗降地候補(A点)を抽出し、抽出された乗降地を送信部40へと転送する。
【0070】
[乗降地提示方法]
次に、図7を参照して、図1に示した乗降地提示装置を用いた乗降地提示方法を説明する。図7のフローチャートに示す乗降地提示装置の動作は、ユーザからの配車リクエストを示すデータを受信すると同時に開始され、ユーザが選択した乗降地をユーザが乗降する車両に搭載される通信機器へ送信して終了する。
【0071】
ステップS10において、乗降地候補抽出部31は、受信部10が備える配車リクエスト受信部11から配車リクエストを示すデータを取得する。ステップS20に進み、乗降地候補抽出部31は、配車リクエストを示すデータに含まれるユーザが乗降を希望する乗降地に基づいて、記憶部20に記憶された乗降地リストの中から乗降地候補を抽出する。
【0072】
ステップS30に進み、評価項目取得部321は、乗降地候補抽出部31により抽出された乗降地候補の各々に設定された複数の評価項目を、各々の乗降地候補を示すデータから取得する。
【0073】
ステップS40に進み、交通状況抽出部322は、抽出された乗降地候補の各々の動的データを動的データ受信部12から取得する。ステップS50に進み、交通状況抽出部322は、乗降地候補の各々に設定された複数の評価項目に該当する交通状況を、動的データの中から抽出する。
【0074】
ステップS60に進み、データ解析部323は、乗降地候補の各々に設定された複数の評価項目に該当する交通状況を曜日別(平日/休日)、月別(季節)のデータに並び替える。そして、各々のデータについてフーリエ変換、又は最小二乗法を含むデータ解析手法を適用して交通状況の経時変化の周期及び位相を特定する。
【0075】
ステップS70に進み、交通状況算出部33は、配車リクエスト受信部11からユーザが乗降を希望する希望時刻を取得する。そして、現在の車両の位置から乗降地候補の各々までの交通情報を考慮した、希望時刻に最も近い到着予定時刻となる走行経路を走行した場合の乗降地候補の各々へ車両が到着する到着予定時刻を、カーナビゲーション装置を利用して算出する。交通状況算出部33は、データ解析部323により特定された乗降地候補の各々に設定された、複数の評価項目に該当する交通状況の経時変化の周期及び位相に基づいて、乗降地候補の各々へ車両が到着する到着予定時刻における乗降地候補の各々の交通状況を示すデータを算出する。
【0076】
ステップS80に進み、乗降地抽出部34は、交通状況算出部33が算出した乗降地候補の各々の交通状況を示すデータに基づいて、乗降地を乗降地候補の中から抽出する。図4及び図5を参照して説明した、第1実施形態の乗降地を乗降地候補の中から抽出する処理を用いて、乗降地を乗降地候補の中から抽出する方法について言及する。
【0077】
先ず、乗降地抽出部34は、乗降地候補の各々の評価項目に該当する道路構造を示すデータ及び乗降地の各々に車両が到着する到着予定時刻における交通状況を示すデータである、評価データを取得する。そして、乗降地抽出部34は、図5に示す評価データの各々に対応する点数に従って、各々の評価項目の評価データを採点する。
【0078】
次に、乗降地抽出部34は、乗降地候補の各々に設定された除外条件該当フラグの状態を参照する。そして、乗降地抽出部34は、除外条件該当フラグが設定された評価項目のうちのいずれかの評価項目において、除外条件該当フラグが「TRUE」となっている乗降地候補をユーザに提示する乗降地から除外する。
【0079】
最後に、乗降地抽出部34は、乗降地候補の各々に設定された複数の評価項目に該当する、評価データの各々の採点結果を集計し、採点結果の集計値が予め定められた閾値以上となっている乗降地候補を、ユーザに提示する乗降地として抽出する。
【0080】
ステップS90に進み、送信部40は、抽出された乗降地を示すデータをユーザの保持する通信機器へ送信する。
【0081】
ステップS100に進み、乗降地抽出部34は、ユーザが乗降地を選択したか否かを判断する。ユーザが乗降地を選択した場合(S100でYES)、ステップS110に進み、ユーザが選択した乗降地をユーザが乗降する車両へ送信して処理を終了する。
【0082】
ユーザが乗降地を選択していない場合(S100でNO)、ステップS120に進む。ユーザが乗降地提示装置による乗降地提示をキャンセルするキャンセル操作をせずに乗降地を選択していない状態(S120でNO)は、ユーザが提示された乗降地の中から乗降地をどこにすべきかを検討している状態であると予想できる。そのため、乗降地提示装置は、ユーザが乗降地を選択するために必要な所定の時間を設定して、S70に戻り処理を継続する。所定の時間は、例えば10分程度である。
【0083】
ユーザが乗降地をどこにすべきかを検討している間においても、乗降地候補の各々の交通状況、及び乗降地候補の各々へ車両が到着する到着予定時刻は経時的に変化する。そのため、乗降地提示装置は、継続してS70からの処理を実施することにより、最新の交通状況、及び乗降地候補の各々へ車両が到着する到着予定時刻を用いて乗降地を抽出し続けることができる。
【0084】
ユーザが、提示された乗降地、及び乗降地への到着予定時刻に対して満足できず、乗降地提示装置による乗降地提示をキャンセルするキャンセル操作をした場合(S120でYES)、処理を終了する。
【0085】
また、ユーザが、前記したキャンセル操作をすることなく乗降地の選択を放置した場合(S120でYES)、設定された所定時間が経過した時点で処理を終了する。
【0086】
[乗降地提示方法の変形例]
続いて、乗降地提示方法の変形例について説明する。上記にて説明した乗降地提示方法との相違点は、ステップS30からステップS60までの処理を、ユーザからの配車リクエストを示すデータを受信する前に予め実施する点である。
【0087】
また、前記したステップS30からステップS60までの処理順序の変更に伴って、ステップS30及びステップS40の処理内容が上記にて説明した乗降地提示方法と相違する。よって、ステップS30及びステップS40の処理内容についてのみ説明し、その他の共通する処理については説明を省略する。
【0088】
ステップS30では、評価項目取得部321は、乗降地候補を示すデータを記憶部20から取得する。そして、評価項目取得部321は、記憶部20から取得した乗降地候補の各々に設定された複数の評価項目を、各々の乗降地候補を示すデータから取得する。
【0089】
ステップS40に進み、交通状況抽出部322は、乗降地候補の各々の動的データを、記憶部20から取得する。記憶部20から取得した動的データは、ユーザからの配車リクエストを示すデータを受信する前に、予め動的データ受信部12が受信し、記憶部20に記憶されていた動的データである。
【0090】
以上説明したように、乗降地提示方法の変形例では、ステップS30からS60までの処理を、ユーザからの配車リクエストを示すデータを受信する前に、予め実施しておいてもよい。変形例では、ステップS40にて取得する交通状況を示す動的データは、上記にて説明した乗降地提示方法に対して取得時刻が古いデータとなる。しかし、交通状況を示す動的データは、週単位で大きく変動するものではなく、交通状況を示す動的データに基づいて特定される交通状況の経時変化の周期及び位相へ与える影響は少ない。
【0091】
従って、乗降地提示方法の変形例では、交通状況の経時変化の周期及び位相をユーザからの配車リクエストを示すデータを受信する度に計算する必要が無く、ユーザからの配車リクエストを示すデータを受信してからの処理負荷をより低減することができる。
【0092】
以上説明したように、第1実施形態によれば以下の作用効果が得られる。
【0093】
周期・位相特定部32が、動的データに含まれる交通状況の経時変化の周期及び位相を特定することにより、交通状況算出部33が、ユーザが乗降を希望する希望時刻から算出される乗降地候補の各々へ車両が到着する到着予定時刻における乗降地候補の各々の交通状況を示すデータを算出することができる。乗降地抽出部34が、到着予定時刻における乗降地候補の各々の交通状況に基づいて、乗降地を乗降地候補の中から抽出することにより、ユーザの乗降時の安全性を損なうことなく車両を停車させることが可能な乗降地をユーザに提示することができる。
【0094】
乗降地候補を単位時間あたりに通過する他車両の数と、他車両の平均速度と、乗降地候補の路肩に停車又は駐車している他車両の密度は、平日と休日、昼間と夜、季節等に応じて経時的に変化する交通状況であり、且つユーザの乗降時の安全性を損なうことなく車両を停車させることが可能か否かを判断するための判断要素として有効に機能する。従って、これらの交通状況を示す動的データに基づいて乗降地を抽出することにより、ユーザの乗降時の安全性を損なうことなく車両を停車させることが可能な乗降地を抽出することができる。
【0095】
出入り口から出入りする他車両の数は、平日と休日、昼間と夜、季節等に応じて経時的に変化する交通状況であり、且つユーザの乗降時の安全性を損なうことなく車両を停車させることが可能か否かを判断するための判断要素として有効に機能する。従って、この交通状況を示す動的データに基づいて乗降地を抽出することにより、ユーザの乗降時の安全性を損なうことなく車両を停車させることが可能な乗降地を抽出することができる。
【0096】
右左折レーンの渋滞が直進レーンまで伸びているか否かは、平日と休日、昼間と夜、季節等に応じて経時的に変化する交通状況であり、且つユーザの乗降時の安全性を損なうことなく車両を停車させることが可能か否かを判断するための判断要素として有効に機能する。従って、この交通状況を示す動的データに基づいて乗降地を抽出することにより、ユーザの乗降時の安全性を損なうことなく車両を停車させることが可能な乗降地を抽出することができる。
【0097】
交通状況及び道路構造を複数の評価項目に分け、それぞれの評価項目について予め定めた採点基準に従って乗降地候補の各々を採点し、各々の評価項目の採点結果の集計値に基づいて乗降地を乗降地候補の中から抽出する。これにより、ユーザの乗降時の安全性を損なうことなく車両を停車させることができる乗降地をより精度良く抽出することができる。
【0098】
(第2実施形態)
[乗降地提示装置の構成]
第2実施形態に係る乗降地提示装置について説明する。第1実施形態との相違点は乗降地抽出部34の処理のみである。よって、乗降地抽出部34の処理についてのみ説明し、その他の共通する処理については説明を省略する。
【0099】
(乗降地を乗降地候補の中から抽出する処理)
図6を参照して、乗降地抽出部34が乗降地を乗降地候補の中から抽出する処理について説明する。図6に示す、乗降地候補、乗降地候補の評価項目、評価項目の各々に該当する評価データの数値、及び評価データの採点結果は、図4と同じである。また、第2実施形態においても、乗降地抽出部34が、除外条件該当フラグの状態を参照して、ユーザに提示する乗降地から乗降地候補を除外するまでの処理は、第1実施形態と同じである。よって、当該処理以降の処理について説明する。
【0100】
乗降地抽出部34は、動的データ及び静的データに係る採点結果の各々に対して、ユーザが乗降する際の安全性、及び車両の停め易さの観点から、動的データ及び静的データの各々に定まる係数を乗算し、係数を乗算した後の採点結果を集計した集計値の平均値に基づいて乗降地を抽出する。
【0101】
前記した、ユーザが乗降する際の安全性、及び車両の停め易さの観点から定まる、動的データ及び静的データの各々の係数は、図6の処理項目に示すウェイト(以後「ウェイト」という)に該当する。以下にて、ウェイトの設定方法について具体的に説明する。
【0102】
ウェイトは、静的データのウェイトと、動的データのウェイトとに大別され、ウェイトの合計値が1となるように設定される。静的データ及び動的データに対して同等のウェイトを設定する場合には、各々のデータに0.5のウェイトが設定される。ウェイトは、乗降地候補の道路構造と、交通状況との関係から、ユーザが乗降する際の安全性と、車両の停め易さとの関係を勘案して決定される。
【0103】
例えば、乗降地候補(A点)の場合、車線幅が広く(3.25m)、ユーザの乗降時の安全性は高い。しかし、乗降地候補(A点)は、幹線道路であるため、道路の交通容量は大きく、法定速度(60km/h)は高い。従って、乗降地候補(A点)に車両は停めづらいといえる。このような道路構造、及び交通状況においては、車両の停め易さに関する評価項目に対する重要度が高い。そのため、乗降地候補(A点)では、静的データに対して、動的データのウェイトを高く設定する。
【0104】
乗降地候補(B点)の場合、車線幅は標準値であり(3m)、ユーザの乗降時の安全性は標準的であるといえる。また、道路の交通容量は乗降地候補(A点)より小さく、法定速度(50km/h)も低い。従って、乗降地候補(B点)への車両の停め易さは標準的であるといえる。このような道路構造、及び交通状況においては、ユーザが乗降する際の安全性、及び車両の停め易さのいずれかを重視して評価する必要はない。そのため、乗降地候補(B点)では、静的データ及び動的データの各々に同等のウェイトを設定する。
【0105】
乗降地候補(C点)の場合、車線幅は狭く(2.75)、ユーザの安全性は最低限の基準を満たしている。しかし、道路の交通容量は乗降地候補(B点)より低く、法定速度(30km/h)も低い。従って、乗降地候補(C点)に車両は停め易いといえる。このような道路構造、及び交通状況においては、交通状況の変化が車両の停め易さに及ぼす影響の度合いが低いといえる。そのため、乗降地候補(C点)では、静的データに対して動的データのウェイトを低く設定する。
【0106】
乗降地抽出部34は、乗降地候補の各々のユーザが乗降する際の安全性、及び車両の停め易さの観点に基づいて決定されたウェイトを、動的データ及び静的データに係る採点結果の各々に対して乗算し、ウェイトを乗算した後の採点結果の集計値の平均値を算出する。そして、乗降地抽出部34は、乗降地候補の各々のウェイトを乗算した後の採点結果の集計値の平均値が、予め定められた閾値以上となっているか否かを判断し、ユーザに提示する乗降地として、乗降地候補を抽出するか否かを決定する。
【0107】
閾値は、第1実施形態で設定された閾値(4.4点)を、採点結果を集計する評価項目数で除算した値を使用する。図6に示す例では、採点結果を集計する評価項目は5項目であり、閾値は、「0.88点」と設定されている。
【0108】
乗降地候補(A点)のウェイトを乗算した後の採点結果の集計値の平均値は「0.88点」であり、閾値以上の値となっている。従って、乗降地抽出部34は、乗降地候補(A点)をユーザに提示する乗降地として乗降地候補の中から抽出する。
【0109】
乗降地候補(C点)のウェイトを乗算した後の採点結果の集計値の平均値は「0.88点」であり、閾値以上の値となっている。従って、乗降地抽出部34は、乗降地候補(C点)をユーザに提示する乗降地として乗降地候補の中から抽出する。
【0110】
乗降地候補(C点)は第1実施形態において、評価項目の採点結果の集計値が閾値以下となり、ユーザに提示する乗降地として抽出されなかった乗降地候補である。しかし、第2実施形態では、ユーザが乗降する際の安全性と、車両の停め易さとの関係を勘案して、動的データ及び静的データの各々にウェイトを設定することができるため、第1実施形態に対して、より柔軟に乗降地候補を抽出することができる。
【0111】
乗降地抽出部34は、ユーザに提示する乗降地として乗降地候補(A点)及び乗降地候補(C点)を抽出し、抽出された乗降地を送信部40へと転送する。
【0112】
[乗降地提示方法]
第2実施形態に係る乗降地提示装置を用いた乗降地提示方法を説明する。第1実施形態との相違点は、図7のフローチャートに示すステップS80の乗降地を乗降地候補の中から抽出する処理のみである。よって、ステップS80での処理についてのみ説明し、その他の共通する処理については説明を省略する。
【0113】
ステップS80では、乗降地抽出部34は、交通状況算出部33が算出した乗降地候補の各々の交通状況を示すデータに基づいて、乗降地を乗降地候補の中から抽出する。図6を参照して説明した、第2実施形態の乗降地を乗降地候補の中から抽出する処理を用いて、乗降地を乗降地候補の中から抽出する方法について言及する。
【0114】
なお、ステップS80にて、乗降地抽出部34が、除外条件該当フラグが設定されたいずれかの評価項目において、除外条件該当フラグが「TRUE」となっている乗降地候補を、ユーザに提示する乗降地から除外する処理までは、第1実施形態と同じである。よって、当該処理以降の処理について説明する。
【0115】
乗降地抽出部34は、乗降地候補の各々のユーザが乗降する際の安全性、及び車両の停め易さの観点から定まる係数(ウェイト)を、動的データ及び静的データに係る採点結果の各々に対して乗算し、係数を乗算した後の採点結果の集計値の平均値を算出する。
【0116】
そして、乗降地抽出部34は、乗降地候補の各々の採点結果の集計値の平均値が、予め定められた閾値以上となっている乗降地候補を、ユーザに提示する乗降地として抽出する。
【0117】
以上説明したように、第2実施形態によれば以下の作用効果が得られる。
【0118】
評価項目の各々に係る採点結果に対して、ユーザの乗降時の安全性を損なうことなく車両を停車させるために考慮するべき観点から定まる係数を乗算し、係数を乗算した後の採点結果の集計値の平均値に基づいて乗降地を抽出する。これにより、考慮すべき観点に重み付けすることができるので、様々な要因を考慮して柔軟に乗降地を抽出することができる。
【0119】
上記のように、本発明の実施形態を記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0120】
10 受信部
11 配車リクエスト受信部
12 動的データ受信部
20 記憶部
30 演算部
31 乗降地候補抽出部
32 周期・位相特定部
33 交通状況算出部
34 乗降地抽出部
40 送信部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7