(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】X線画像診断装置、および、その運転方法
(51)【国際特許分類】
A61B 6/40 20240101AFI20240507BHJP
A61B 6/00 20240101ALI20240507BHJP
【FI】
A61B6/40 500G
A61B6/00 520Z
(21)【出願番号】P 2020100389
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2023-05-09
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000888
【氏名又は名称】弁理士法人山王坂特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 耕平
(72)【発明者】
【氏名】坂井 友治
【審査官】遠藤 直恵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2005/068019(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107132239(CN,A)
【文献】実開平03-085006(JP,U)
【文献】実開平05-091703(JP,U)
【文献】実開昭59-030707(JP,U)
【文献】特表平04-500711(JP,A)
【文献】米国特許第05146886(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0168831(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00-6/58
G01N 23/00-23/2276
G01T 1/00-1/16、1/167-7/12
G21K 1/00-3/00、5/00-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を搭載するための天板と、前記被検体に向かってX線を照射するX線源と、前記X線源と前記被検体の間に配置されたX線絞り装置と、制御部とを有し、
前記X線絞り装置は、前記X線の一部を遮る1以上の絞り羽根と、前記1以上の絞り羽根を移動させる駆動部と、前記1以上の絞り羽根それぞれの移動に伴い出力電圧が変化する1以上のポテンショメータとを備え、
前記制御部は、前記絞り羽根の移動に伴う前記ポテンショメータの出力電圧の変化量が予め定めた値よりも大きいかどうかを判定し、前記変化量が前記予め定めた値よりも大きいポテンショメータがある場合、そのポテンショメータに対して予め定めたメンテナンスモードを実行させ、
前記制御部は、前記メンテナンスモードとして、前記駆動部を動作させて、前記絞り羽根を所定の範囲で所定回数繰り返し、移動させることを特徴とするX線画像診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載のX線画像診断装置であって、前記制御部は、前記変化量が予め定めた値よりも大きい場合、前記メンテナンスモードの前に、前記X線源に対してX線照射を禁止することを特徴とするX線画像診断装置。
【請求項3】
被検体を搭載するための天板と、前記被検体に向かってX線を照射するX線源と、前記X線源と前記被検体の間に配置されたX線絞り装置と、制御部とを有し、
前記X線絞り装置は、前記X線の一部を遮る1以上の絞り羽根と、前記1以上の絞り羽根を移動させる駆動部と、前記1以上の絞り羽根それぞれの移動に伴い出力電圧が変化する1以上のポテンショメータとを備え、
前記制御部は、前記絞り羽根の移動に伴う前記ポテンショメータの出力電圧の変化量が予め定めた値よりも大きいかどうかを判定し、前記変化量が前記予め定めた値よりも大きいポテンショメータがある場合、そのポテンショメータに対して予め定めたメンテナンスモードを実行させ、
前記ポテンショメータは、抵抗と、前記絞り羽根の移動に伴って前記抵抗に接触しながら移動する可変端子とを有し、
前記制御部は、前記駆動部が前記絞り羽根を移動させる前に、前記ポテンショメータの連続不使用時間が予め定めた時間を超えているかどうかを判定し、前記超えている場合、前記メンテナンスモードを実行させるよう操作者に促す表示を表示させることを特徴とするX線画像診断装置。
【請求項4】
被検体を搭載するための天板と、前記被検体に向かってX線を照射するX線源と、前記X線源と前記被検体の間に配置されたX線絞り装置と、制御部とを有し、
前記X線絞り装置は、前記X線の一部を遮る1以上の絞り羽根と、前記1以上の絞り羽根を移動させる駆動部と、前記1以上の絞り羽根それぞれの移動に伴い出力電圧が変化する1以上のポテンショメータとを備え、
前記制御部は、前記絞り羽根の移動に伴う前記ポテンショメータの出力電圧の変化量が予め定めた値よりも大きいかどうかを判定し、前記変化量が前記予め定めた値よりも大きいポテンショメータがある場合、そのポテンショメータに対して予め定めたメンテナンスモードを実行させ、
前記ポテンショメータは、抵抗と、前記絞り羽根の移動に伴って前記抵抗に接触しながら移動する可変端子とを有し、
前記制御部は、前記駆動部が前記絞り羽根を移動させる前に、予め定めた期間にわたって前記抵抗に前記可変端子が接触していない区間があるかどうかを判定し、前記区間がある場合、前記メンテナンスモードを実行させるよう操作者に促す表示を表示させることを特徴とするX線画像診断装置。
【請求項5】
被検体を搭載するための天板と、前記被検体に向かってX線を照射するX線源と、前記X線源と前記被検体の間に配置されたX線絞り装置と、制御部とを有し、
前記X線絞り装置は、前記X線の一部を遮る1以上の絞り羽根と、前記1以上の絞り羽根を移動させる駆動部と、前記1以上の絞り羽根それぞれの移動に伴い出力電圧が変化する1以上のポテンショメータとを備え、
前記制御部は、前記絞り羽根の移動に伴う前記ポテンショメータの出力電圧の変化量が予め定めた値よりも大きいかどうかを判定し、前記変化量が前記予め定めた値よりも大きいポテンショメータがある場合、そのポテンショメータに対して予め定めたメンテナンスモードを実行させ、
前記制御部は、前記変化量が予め定めた値よりも大きい場合、前記メンテナンスモードを実行させる前に、緊急使用モードに移行し、
前記制御部は、前記緊急使用モードとして、操作者が前記駆動部を手動で操作することにより前記絞り羽根の位置を変化させる動作を許容し、設定された前記絞り羽根の位置で前記X線源からX線を照射させて撮像を実行させることを特徴とするX線画像診断装置。
【請求項6】
被検体を搭載するための天板と、前記被検体に向かってX線を照射するX線源と、前記X線源と前記被検体の間に配置されたX線絞り装置と、制御部とを有し、
前記X線絞り装置は、前記X線の一部を遮る1以上の絞り羽根と、前記1以上の絞り羽根を移動させる駆動部と、前記1以上の絞り羽根それぞれの移動に伴い出力電圧が変化する1以上のポテンショメータと、
操作者から前記絞り羽根の位置の設定を受け付ける操作部と
を備え、
前記制御部は、前記絞り羽根の移動に伴う前記ポテンショメータの出力電圧の変化量が予め定めた値よりも大きいかどうかを判定し、前記変化量が前記予め定めた値よりも大きいポテンショメータがある場合、そのポテンショメータに対して予め定めたメンテナンスモードを実行させ、
前記制御部は、前記変化量が予め定めた値よりも大きい場合、前記メンテナンスモードを実行させる前に、緊急使用モードに移行し、
前記制御部は、前記緊急使用モードとして、前記変化量が予め定めた値よりも大きいと判定した時点の前記絞り羽根の位置を除いた範囲を、使用可能範囲として操作者に表示するとともに、前記操作部を介して操作者から受け付け可能な前記絞り羽根の位置の範囲を前記使用可能範囲に制限することを特徴とするX線画像診断装置。
【請求項7】
X線源と、被検体を搭載するための天板との間に
、X線の一部を遮る1以上の絞り羽根と、前記1以上の絞り羽根を移動させる駆動部と、前記1以上の絞り羽根の移動に伴い出力電圧が変化するポテンショメータとが配置されたX線画像診断装置の運転方法であって、
前記絞り羽根の移動に伴う前記ポテンショメータの出力電圧の変化量が、予め定めた値よりも大きいかどうか判定し
前記変化量が予め定めた値よりも大きいポテンショメータがある場合、そのポテンショメータに対して予め定めたメンテナンスモード
として、前記駆動部を動作させて、前記絞り羽根を所定の範囲で所定回数繰り返し、移動させる
ことを特徴とするX線画像診断装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線画像診断装置に関し、特にX線照射絞りに関する。
【背景技術】
【0002】
X線画像診断装置は、X線源から被写体に向けて照射されたX線の一部をX線絞りの移動可能な複数枚の絞り羽根によって遮ることにより、被写体に照射するX線の照射領域を所望の領域に制御可能な構成になっている。
【0003】
特許文献1には、絞り羽根のそれぞれの位置情報を、ポテンショメータなどの位置検出用センサを用いて検出し、絞り羽根の開き度合いを算出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
X線画像診断装置のX線絞りは、注目領域にのみX線を照射することによって画像の視野サイズを調節することができるとともに、被検体の無効被爆を低減できる。操作者は、視野サイズを設定する際には、操作部のスイッチにより注目する範囲を選択する。これにより、X線絞りの絞り羽根の駆動機構が動作し、絞り羽根を移動させる。駆動機構には、絞り羽根の移動にともなって出力電圧が変化するポテンショメータが配置されている。ポテンショメータは、巻き線等の形状の抵抗に接するように可変端子が配置され、可変端子が絞り羽根の移動に伴って移動することにより、出力電圧が変化する。駆動機構は、ポテンショメータが出力する電圧が、操作部のスイッチに設定された注目範囲の絞り羽根位置に対応する電圧値に一致するまで絞り羽根を移動させる。これにより、視野サイズが操作者の所望の範囲に設定される。
【0006】
ポテンショメータは、長時間未使用であると抵抗の巻き線の表面に酸化膜が生じ、酸化膜が可変端子との電気的導通を妨げるため、ポテンショメータの出力電圧にノイズが発生する。このため、ポテンショメータによって絞り羽根の正確な位置を検知することが困難になり、X線絞りの制御に支障きたすことがある。
【0007】
本発明の目的は、ポテンショメータの抵抗に酸化膜が発生することに起因してX線絞りの制御に支障を生じるのを回避することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のX線画像診断装置は、被検体を搭載するための天板と、被検体に向かってX線を照射するX線源と、X線源と被検体の間に配置されたX線絞り装置と、制御部とを有する。X線絞り装置は、X線の一部を遮る1以上の絞り羽根と、1以上の絞り羽根を移動させる駆動部と、1以上の絞り羽根それぞれの移動に伴い出力電圧が変化する1以上のポテンショメータとを備える。制御部は、絞り羽根の移動に伴うポテンショメータの出力電圧の変化量が予め定めた値よりも大きいかどうかを判定し、変化量が前記予め定めた値よりも大きいポテンショメータがある場合、そのポテンショメータに対して予め定めたメンテナンスモードを実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ポテンショメータに酸化膜が発生したことを、ポテンショメータの出力電圧の変化量により判断することができるため、メンテナンスモードを実行することにより、X線絞りの制御に支障が生じるのを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態のX線画像診断装置の全体構成を示すブロック図。
【
図2】実施形態のX線画像診断装置のX線絞り装置の一部の構成を示すブロック図。
【
図3】実施形態1のポテンショメータの構成を示す等価回路図。
【
図4】実施形態1の絞り羽根の位置Lとポテンショメータの電圧値Vとの関係と、ピークノイズ41を示すグラフ。
【
図5】実施形態1のX線画像診断装置の動作を説明するフローチャート。
【
図6】実施形態1のX線画像診断装置の動作を説明するフローチャート。
【
図7】実施形態2のX線画像診断装置の動作を説明するフローチャート。
【
図8】実施形態3のX線画像診断装置の動作を説明するフローチャート。
【
図9】実施形態3のポテンショメータの回路構成と、連続不使用の区間91を示す等価回路図。
【
図10】実施形態4のX線画像診断装置の動作を説明するフローチャート。
【
図11】実施形態4の絞り羽根の位置Lとポテンショメータの電圧値Vとの関係と、使用可能範囲を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面に従って本発明の一実施形態のX線画像診断装置ついて詳説する。
【0012】
なお、全ての図面において、同一機能を有するものは同一符号を付け、その繰り返しの説明は省略する。
【0013】
図1は、本実施形態のX線画像診断装置の全体の構成例を示す図である。
図2は、X線絞り装置104の詳しい構成を示すブロック図である。
【0014】
図1に示すX線画像診断装置は、被検体101を載せる天板102と、被検体101にX線を照射するX線源103と、被検体101に対するX線照射領域を設定するX線絞り装置104と、被検体101を透過したX線を検出するX線検出器112とを備えている。これらに加えて、X線画像診断装置には、X線源103に対して電力供給を行なう高電圧発生器106と、X線検出器112が出力したX線信号に対して画像処理を行なう画像処理部107と、演算部108と、制御部109と、画像処理部107によって画像処理されたX線画像等を表示する表示装置109と、操作者からの指示を受け付け、制御部110に対して出力する操作部111とをさらに備えている。
【0015】
X線源103は、高電圧発生器109から電力供給を受けてX線を発生させるX線管球を有する。また、X線源103は、特定のエネルギーのX線を選択的に透過させるX線フィルタなどを備えていてもよい。
【0016】
X線絞り装置104は、
図1に示すように、しぼり121と、駆動部122と、しぼり121の開き度合いを検出する絞り位置検出部105とを備えている。
【0017】
しぼり121は、
図2に示したように、X線の光軸103を取り囲むように配置された複数(ここでは4枚)の絞り羽根113~116を含む。絞り羽根113~116は、X線の光軸103の周囲にX線絞り開口形状を形成し、被検体101に対するX線照射領域を決定する。絞り羽根113~116は、鉛板により構成されている。
【0018】
駆動部122は、絞り羽根113~116を移動させるための駆動機構とモータとを含む。絞り羽根113~116は、X線の光軸103の周囲にX線絞り開口形状を形成し、被検体101に対するX線照射領域を決定する。駆動部122により、絞り羽根113~116をそれぞれ移動させることにより、被検体101に対するX線照射領域を変化させることができる。
【0019】
位置検出部105は、絞り羽根113~116ごとにそれぞれ配置されたポテンショメータ117~120を備え、絞り羽根113~116の移動に伴い出力電圧が変化する。ポテンショメータ117~120は、
図3に示すように、抵抗307と、抵抗307に並列に接続された電源301と、抵抗307に接触しながら移動可能な可動端子303と、可動端子303の電圧を検出する電圧検出器306とを備えて構成される。可動端子303は、それぞれ絞り羽根113~116、または、駆動機構内の絞り羽根113~116とともに移動する部材に接続されている。これにより、駆動機構により絞り羽根113~116を移動させると、その移動に伴い可動端子303と抵抗307との接触位置302が移動し、位置302と抵抗307の両端304、305との距離の割合いが変化するため、電圧検出器306で検出される電圧値が変化する。
【0020】
制御部110は、絞り羽根113~116の位置を元に制御の駆動部122に制御の指示を出し、所望の位置まで絞り羽根113~116を移動させる。これにより、X線絞り開口形状を、所望の形状に設定する。
【0021】
表示部109は撮像したデータや各種メッセージの表示を行う部分である。
【0022】
<<実施形態1>>
次に、本発明の実施形態1について
図1~
図6を用いて説明する。
【0023】
実施形態1では、制御部110は、絞り羽根113~116の移動に伴うポテンショメータ117~120の出力電圧の変化量が予め定めた値よりも大きいかどうかを判定する。変化量が予め定めた値よりも大きいポテンショメータが1つでもある場合、制御部110は、そのポテンショメータに対して予め定めたメンテナンスモードを実行させる。
【0024】
例えば、制御部110は、メンテナンスモードとして、駆動部を動作させて、電圧の変化量が予め定めた値よりも大きいポテンショメータが取り付けられている絞り羽根を、所定の範囲で所定回数繰り返し移動させる。なお、絞り羽根を繰り返し移動させ、他のポテンシオメータについもメンテナンスモードを実行してもよい。
【0025】
以下、さらに詳しく説明する。
【0026】
図5は、本実施形態のX線画像診断装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0027】
本実施形態のX線画像診断装置は、操作者が操作部111の絞り操作レバー(特に図示しない)を操作することで、絞り羽根113~116の位置(視野範囲)を設定する。制御部110は、絞り位置検出部105のポテンショメータ117~120の値を用いて、実際の視野範囲が、操作者が設定した視野範囲と一致しているかを判定する。
【0028】
X線絞り装置104内に設置された絞り位置検出部105は、
図2に用いて説明したように、X線絞り装置104内に設置された絞り羽根113~116にそれぞれ個別に設けられたポテンショメータ117~120で構成されている。
【0029】
ポテンショメータ117~120は、絞り羽根113~116ごとに配置されている。
図3を用いて説明したように、直流電源301と、これに並列に接続された抵抗302と、抵抗302上をスライドする可動端子303と、抵抗302とを備えている。
【0030】
可動端子303は、絞り羽根113~116または絞り羽根113~116に連動して移動する駆動機構の部材に接続されている。電圧検出部306は、抵抗302の両端の端子304、305と、端子303との距離に応じた電圧を検出する。
【0031】
端子303が抵抗302上をスライドするすることで、出力電圧が変化する。端子303は、絞り羽根の移動に連動し抵抗302上をスライドするため、絞り羽根の移動位置は、端子303の出力電圧(以降、検出電圧)をモニターすることで検出することができる。なお、抵抗302は巻き線等で構成される。
【0032】
図4には、横軸に、絞り羽根113~116の位置Lを取った時の、ポテンショメータ117~120の電圧検出器306の出力電圧値Vの変化を示している。通常は、端子303の端子305から端子304への移動に伴い、線形に検出電圧値も増加するが、ポテンショメータを構成する抵抗302の一部に酸化被膜が形成されていると、局所的に検出電圧値の降下が見られ、ノイズ(ピークノイズ41)が発生する。
【0033】
ピークノイズ41が発生すると、
図4のように電圧値Vが位置Lに対して線形に変化しない。演算部108は、電圧値の変化量が予め定めた値よりも大きいかどうかを算出することにより、ピークノイズ41かどうかを判定する。
【0034】
制御部110では、演算部108の判定結果が、正常である場合には絞り操作を続行させる。逆に異常(ピークノイズ41)であると判定した場合には表示装置109により、操作者にメンテナンスモードを開始するように指示し、操作部111によりメンテナンスモードに移行させる。メンテナンスモードに移行すると、駆動部122を回転させ、絞り羽根113~116を数十回程度開閉(往復移動)させることによって、抵抗307の酸化被膜を除去する。酸化被膜の除去が確認できたら、通常の検査を再開できる。まだメンテナンス後に皮膜が取り切れているかどうかを再び判定し、取り切れていない場合は、再度メンテナンスモードでの処理を実行するしてもよい。
【0035】
なお、制御部110内のメモリ123には、絞り羽根の位置Lとポテンショメータ117~120の電圧値Vとの関係が、テーブル等の形式により予め格納されている。
【0036】
次に、本実施形態の各部の動作を
図5、
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0037】
ステップS201では、操作部111で絞りレバーを操作し、目的の視野サイズを設定する。操作部111は、設定された視野サイズを実現するための絞り羽根113~116の位置LTをそれぞれ設定する(
図4参照)。
【0038】
ステップS202では、制御部110は、絞り羽根113~116を所定量a(誤差許容範囲以下の微小量)だけ移動させるよう駆動部に指示する(
図4参照)。駆動部122は、絞り羽根113~116をそれぞれ所定量aだけ移動させる。
【0039】
ステップS203では、ポテンショメータ117~120の電圧検出部306は、絞り羽根113~116の位置に応じた電圧値Vnをそれぞれ出力する。
【0040】
ステップS204では、制御部110は、ポテンショメータ117~120の出力した電圧値Vnを制御部110内のメモリ123に格納する。
【0041】
ステップS205では、演算部108は、電圧値Vnと、前回(今回の移動前)のステップ203においてメモリ123に格納されている電圧値Vn-1との変化量|Vn-Vn-1|をポテンショメータ117~120ごとに求め、変化量|Vn-Vn-1|が予め定めおいた値Bよりも大きい(異常値)かどうか判定する。ポテンショメータ117~120のそれぞれの出力電圧の変化量|Vn-Vn-1|がいずれも値B以下(正常値)である場合、ステップS206へ進む。
【0042】
ステップS206では、制御部110は、ステップS201において操作部111の設定した絞り羽根の位置LTに対応する電圧値VTを内蔵するメモリ123から読み出し、ポテンショメータ117~120の電圧値Vnが、電圧値VTに一致しているか判定する。一致していない場合、ステップS202に戻り、操作部111で受け付けた位置LTに対応する電圧値VTと一致するまでステップS202~S206を繰り返す。ポテンショメータ117~120の電圧値Vnが位置LTに対応する電圧値VTに一致したとき、すなわち、操作者の所望の位置まで絞り羽根113~116が移動した場合、ステップS207へ進む。
【0043】
ステップS207では、制御部110は、X線源103からX線を照射して透視や撮影を行う。
【0044】
一方、ステップS205において、ポテンショメータ117~120のなかで電圧値Vnの変化量が、所定値B以上のものがある場合、その電圧値はピークノイズ41(異常値)であることを示しているので、ステップS208へ進む。
【0045】
ステップS208では、制御部110は、操作者に、ポテンショメータ117~120の1以上に酸化被膜に起因するピークノイズ41があることを報知する表示を表示装置109に表示させる。
【0046】
ステップS209に進み、制御部110は、メンテナンスモードを少なくともピークノイズ41(異常値)を示したポテンショメータ117~120に実行させる。すべてのポテンショメータ117~120にメンテナンスモードを実行させてもよい。
【0047】
メンテナンスモードとしては、ここでは、
図6のステップS601を実行する。ステップS601において、制御部110は、駆動部122のモーターを回転させることで、絞り羽根113~116を所定回数(例えば、数十回)開閉させる。これにともない、ポテンショメータ117~120の可動端子303が抵抗307の表面を、所定回数(数十回)摺動(接触しながらの往復または回転)する。これにより、抵抗307の表面の酸化被膜を除去することができる。所定回数の摺動が終了するとS204に戻る。
【0048】
以上、本実施形態のX線画像診断装置によれば、ポテンショメータ117~120の酸化被膜に由来するピークノイズを検知し、それを操作者に知らせることができるとともに、メンテナンスモードを実行して、酸化被膜を除去できるため、常に正常な状態での検査を行うことができる。
【0049】
<<実施形態2>>
次に、本発明の実施形態2について、
図7を用いて説明する。なお、実施形態2において、実施形態1と同様の構成および動作については説明を省略し、異なる点について説明する。
図7は、本実施形態の動作を説明するために示したフローチャートである。
【0050】
実施形態1では、
図5のステップS205においてポテンショメータ117~120の電圧値の変化量が所定値Bを超えている(ピークノイズ41の異常値)場合、制御部110は、ステップS208に進み、操作者にピークノイズ41があることを奉仕する構成であったが、本実施形態では、
図7のステップ308に示すようにX線の照射を制御部110が不可に設定する。
【0051】
すなわち、ステップS308では、制御部110は、X線源103にX線の照射を禁止し、S309のメンテナンスモードへ移行する。メンテナンスモードでは、実施形態1と同様に
図6のステップS601において駆動部122により、絞り羽根113~116およびポテンショメータ117~120を動かす。所定の回数の摺動が終了するとS204に戻る。
【0052】
以上、本実施形態2のX線画像診断装置によれば、酸化被膜に由来する誤った検出値による誤った照射条件で起こる無効被爆を避けることができる。
【0053】
<<実施形態3>>
次に本発明の実施形態3について
図8~
図9を用いて説明する。また、実施形態1,2と異なる点について説明する。
図8は、本実施形態の動作を説明するために示したフローチャートである。
図9は、ポテンショメータ117~120の不使用領域を示す。
【0054】
ポテンショメータ117~120の巻き線状等の抵抗307には時間経過とともに酸化被膜が発生する。ポテンショメータ117~120が常に摺動している状態では、この酸化被膜は、成長する前に摩擦によりとれてしまうが、一定時間以上放置すると、ポテンショメータの抵抗値に影響を与えるようになる。そこで、制御部110は、ポテンショメータ117~120の連続不使用時間が、予め定めた所定の時間を超えているかどうかを判定し、超えている場合、酸化被膜が与える抵抗値の影響の大小に関わらず、装置の起動後すぐに、ポテンショメータ117~120に対してメンテナンスモードを実行させるように操作者に促す表示を表示装置109に表示する。
【0055】
また、ポテンショメータ117~120を使用してはいるが、
図9の点線部の間の区間91のように1部だけ連続不使用箇所があり、連続不使用時間が所定の時間を超過している場合においても、メンテナンスモードをポテンショメータ117~120に実行させるように操作者に促す表示を表示装置109に表示する。
【0056】
メンテナンスモードでは、実施形態1、2と同様に、制御部110によりポテンショメータ117~120を制御し、自動でポテンショメータ117~120の可動端子303を抵抗307上で摺動させることで、巻き線状等の抵抗307に摩擦を生じさせ、酸化膜を除去する。なお、可動端子303の抵抗307上の摺動範囲は、酸化膜が形成されている異常個所のみでもいいし、全体を通して摺動させてもいい。
【0057】
メンテナンスモードによって予め決めておいた回数の摺動を終えた場合には、ピークノイズがあるかないかを全体に渡って調べてもよい。異常がない場合には検査を開始し、異常がある場合には制御部110によって、再び表示装置109によって操作者にメンテナンスモードの継続を促す。
【0058】
次に、本実施形態の動作一例を
図8のフローチャートを用いて説明する。なお、本実施形態の処理動作は、実施形態1、2の処理動作に対する付加的なものであり、運転時には、
図5または
図7のフローを実行していることが前提である。
【0059】
ステップS401では、装置全体の電源が操作者によってONにされると、ステップ402では、制御部110は、実施形態1の
図5のステップS204により制御部110内のメモリ123内を探索し、格納されている電圧値Vnが記録された日時で、最も新しいもの(最後に記録されたもの)を選択する。制御部110は、最後に記録された日時から現在までの時間(連続不使用時間)を算出し、連続不使用時間が一定値Tを超えた場合、ステップS404に進む。
【0060】
ステップ404では、制御部110は、メンテナンスモードを実行するように促す表示装置を表示装置109に表示させる。
【0061】
ステップS402において、連続不使用時間が所定時間Tを超えていない場合には次のステップS403へ進む。
【0062】
ステップS403では、制御部110は、ポテンショメータ117~120の抵抗307を予め定めた微小区間に分け、区間ごとに、メモリ123内を探索し、格納されている電圧値Vnが記録された日時で、最も新しいもの(最後に記録されたもの)を選択し、所定時間Tを超える連続不使用区間がないかを判定する。連続不使用区間がある場合、ステップS404に進み、制御部110は、メンテナンスモードを実行するように促す表示装置を表示装置109に表示させる。
【0063】
ステップS403で、いずれのポテンショメータ117~120においても連続不使用区間がない場合、
図8のフローの開始に進む。
【0064】
以上、本実施形態のX線画像診断装置によれば、装置の電源がオンになった時点で、ポテンショメータに酸化被膜が形成されていると推測される場合には、ポテンショメータにメンテナンスモードを実行させることができるため、酸化被膜を取り除いた状態で透視や撮影に動作を行うことができる。
【0065】
<<実施形態4>>
次に本発明の実施形態4の医用画像診断装置について説明する。
【0066】
実施形態4の装置において、実施形態1,2,3と同様の構成および動作について説明を省略し、異なる点について説明する。
【0067】
図10は、本実施形態の動作を説明するために示したフローチャートである。
【0068】
実施形態1,2,3ともに演算部108が、ポテンショメータ117~120の電圧値の変化量が所定量Bより大きい場合、ならびに、長時間未使用の区間がある場合、制御部110はピークノイズ41を取り除くためにメンテナンスモードに移行するが、医療の現場ではメンテナンスする時間なく緊急で装置の使用が必要な状況が考えられる。
【0069】
その際には、ポテンショメータ117~120の電圧値Vnの変化量が所定量Bよりも大きい(異常)と判断された時点の絞り羽根113~116の位置や、長時間未使用の区間を除き、他の範囲は使用可能とする緊急使用モードに移行する。緊急使用モードでは、制御部110は、絞り羽根113~116の位置の使用可能範囲(設定可能範囲)を表示装置109により操作者に通知するとともに、操作部111を介して操作者から受け付け可能な絞り羽根113~116の位置の範囲(視野範囲)を使用可能範囲に制限する。
【0070】
また、制御部110は、操作者が絞り113~116を手動で絞り羽根の位置(視野範囲)を設定することを許容する。この場合には、使用可能範囲外に絞り羽根113~116の位置を設定することも許容する。これにより、操作者は、視野サイズを決定し、緊急時にも使用可能な状態にする。
【0071】
次に、本実施形態の動作の一例を
図10のフローチャートを用いて説明する。
【0072】
図10のフローは、
図5のステップS205においてポテンショメータ117~120の電圧値Vnの変化量が所定量B以上であった場合、または、
図8のステップS403において、ポテンショメータ117~120が長時間未使用の区間であった場合、ステップS502に遷移するフローである。
【0073】
ステップS502において、制御部110は、メンテナンスモードに移行するように操作者に促す表示を表示装置109に表示させる。
【0074】
ステップS503では、制御部110は、緊急に装置を使用するかどうかを、操作者から受け付ける。
【0075】
ステップS503において、操作者が緊急に装置を使用しない場合は、ステップS509へ進みメンテナンスモードに移行する。
【0076】
ステップ503において、操作者が緊急で使用することを操作部111から入力した場合場合は、ステップS504の緊急使用モードに移行する。
【0077】
ステップS504において、制御部110は、
図5のステップS205でポテンショメータ117~120の電圧値Vnの変化量が所定量Bよりも大きい(異常)と判定された時点の絞り羽根113~116の位置、または、
図8のステップS403において判定された長時間未使用の区間を除き、使用可能範囲を設定する。制御部110は、使用可能領域を例えば
図11のように表示装置109に表示させる。また、使用可能範囲を視野範囲に変換して操作者に表示してもよい。
【0078】
ステップS505で、操作者から手動で絞り羽根113~116を移動させるかどうかを受け付け、手動を操作者が選択した場合には、ステップS508に進み、操作者が手動で設定した絞り羽根113~116の位置で透視や撮影開始する。
【0079】
ステップS505で、操作者が自動で羽根113~116を移動させることを選択した場合には、ステップS509に進む。
【0080】
ステップS509で、制御部は操作者から絞り羽根113~116の位置の設定を受け付け、それがステップ504で設定した、使用可能範囲外かどうかを判定する。使用可能範囲内である場合、ステップS508に進み、その位置まで駆動部1222により絞り羽根113~116を移動させ、透視や撮影開始する。一方、使用可能範囲外である場合、ステップS507に進み、制御部110は、X線源103にX線照射を禁止する。
【0081】
以上、本実施形態のX線画像診断装置によれば、ポテンショメータ117~120の抵抗307の一部が酸化している場合であっても、緊急例外的に使用可能である。
【符号の説明】
【0082】
101:被検体
102:天板
103:X線源
104:X線絞り装置
105:絞り位置検出部
106:高電圧発生器
107:画像処理部
108:演算部
109:表示装置
110:制御部
111:操作部
112:X線検出器
113~116:絞り羽根
117~120:ポテンショメータ
121:しぼり
122:駆動部
123:メモリ