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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】塗装具
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/02 20060101AFI20240507BHJP
   B05C 17/10 20060101ALI20240507BHJP
   B05C 21/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B05C1/02 101
B05C17/10
B05C21/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020103792
(22)【出願日】2020-06-16
(65)【公開番号】P2021194607
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2022-12-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509338994
【氏名又は名称】株式会社IHIインフラシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110001863
【氏名又は名称】弁理士法人アテンダ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井合 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中村 善彦
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-102725(JP,A)
【文献】特開2001-046150(JP,A)
【文献】特開2011-218242(JP,A)
【文献】特開2014-117686(JP,A)
【文献】特開2004-016305(JP,A)
【文献】実開平05-063662(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00-3/20
7/00-21/00
B05B 3/00-3/18
A46B 1/00-17/08
A46D 1/00-99/00
A61C 17/22-17/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
突起状の塗装対象物に被せられる塗装具本体と、塗装具本体の内側に設けられた複数の刷毛とを備え、刷毛に塗料を付着させて塗装具本体を前記塗装対象物に被せ、塗装具本体を前記塗装対象物の周方向に回動することにより、刷毛の塗料を前記塗装対象物に塗布する塗装具であって、
刷毛を前記塗装具本体の周方向に間隔をおいて配置し、
各刷毛のうち塗装具本体の周方向位置が異なる複数の刷毛を互いに前記塗装具本体の軸方向及び径方向の少なくとも一方に位置がずれるように配置
前記塗装具本体の周方向位置が異なる前記複数の刷毛を刷毛の一部が互いに前記塗装具本体の周方向に間隔をおいて重なり合うように配置するとともに、前記塗装具本体の周方向における刷毛の投影面同士が互いに連続するように配置した
ことを特徴とする塗装具。
【請求項2】
前記塗装具本体に前記刷毛を支持する複数の刷毛支持部を設け、
各刷毛支持部を互いに前記塗装具本体の周方向に間隔をおいて配置するとともに、
各刷毛支持部の間に前記塗装具本体の内側と外側とを連通する隙間を設けた
ことを特徴とする請求項1記載の塗装具。
【請求項3】
前記塗装具本体を外側から覆うカバー部材を備えた
ことを特徴とする請求項2記載の塗装具。
【請求項4】
前記カバー部材を前記塗装具本体の軸方向に移動自在に設けた
ことを特徴とする請求項3記載の塗装具。
【請求項5】
前記塗装具本体を周方向に回動させる駆動手段を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項記載の塗装具。
【請求項6】
前記塗装具本体内に塗料を供給する塗料供給手段を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至5の何れか一項記載の塗装具。
【請求項7】
前記各刷毛を前記塗装具本体の周方向4箇所、5箇所、7箇所、8箇所、9箇所、10箇所または11箇所に等間隔で設けた
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項記載の塗装具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば各種部材を締結するボルト及びナット等、突起状の塗装対象物の塗装に用いられる塗装具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、例えば橋梁、水門等の鋼構造物の部材を締結するボルト及びナットの露出部分には防食用の塗装が施される。
【0003】
従来、このようなボルト及びナットの塗装方法の一つとして、エアレススプレー塗装が知られている。エアレススプレー塗装は、プランジャポンプやダイヤフラムポンプを用いて塗料に高い圧力を与えて霧化することにより塗装対象物に塗料を噴霧する方法であり、鋼構造物等の大面積を有する箇所の塗装に広く用いられている。しかしながら、ボルト及びナットは複雑な形状であるため、スプレー塗装ではボルトやナットの角部に十分な厚さの塗膜を確保することができず、耐用年数に満たないうちに腐食を生ずる場合があるという問題点がある。
【0004】
また、塗り替え塗装等の比較的小面積においては刷毛塗り塗装が行われる。刷毛塗り塗装はスプレー塗装と併用して行われる場合もある。しかしながら、刷毛塗り塗装では、作業者によって塗りムラや塗膜厚のバラツキを生じやすいため、塗り残し部分や薄膜部分において耐食性の低下を生ずるという問題点がある。
【0005】
そこで、このような問題点を解決するために、円筒状のカップをボルト及びナットに被せるとともに、カップの内面とボルト及びナットとの間に塗料を注入することにより、均一で十分な厚さの塗膜を形成するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5606183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記カップ式のものでは、ボルト及びナットの塗装部分全体を覆うカップ内に塗料を充填するようにしているため、塗料の使用量が過剰になり、塗料に要するコストが高くなるとともに、塗装部分から塗料が垂れて美観を損なうという問題点があった。
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、均一で十分な厚さの塗膜を確保することができるとともに、過剰な塗料を使用することなく容易に塗装作業を行うことのできる塗装具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的を達成するために、突起状の塗装対象物に被せられる塗装具本体と、塗装具本体の内側に設けられた複数の刷毛とを備え、刷毛に塗料を付着させて塗装具本体を前記塗装対象物に被せ、塗装具本体を前記塗装対象物の周方向に回動することにより、刷毛の塗料を前記塗装対象物に塗布する塗装具であって、刷毛を前記塗装具本体の周方向に間隔をおいて配置し、各刷毛のうち塗装具本体の周方向位置が異なる複数の刷毛を互いに前記塗装具本体の軸方向及び径方向の少なくとも一方に位置がずれるように配置前記塗装具本体の周方向位置が異なる前記複数の刷毛を刷毛の一部が互いに前記塗装具本体の周方向に間隔をおいて重なり合うように配置するとともに、前記塗装具本体の周方向における刷毛の投影面同士が互いに連続するように配置している。
【0010】
これにより、刷毛に塗料を付着して塗装具本体を塗装対象物に被せ、塗装具本体を塗装対象物の周方向に回動することにより、塗装具本体の周方向複数箇所の刷毛で同時に塗料が塗装対象物に塗布される。その際、塗装具本体の周方向の位置の異なる複数の刷毛が互いに塗装具本体の軸方向及び径方向の少なくとも一方に位置がずれるように配置されるとともに、互いに刷毛の一部が塗装具本体の周方向に間隔をおいて重なり合うように配置されることから、塗装具本体の周方向各位置の刷毛による塗布部分に隙間が生ずることがない。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、刷毛塗りによる厚膜塗装によって塗装対象物に十分な厚さの塗膜を確保することができるとともに、従来のカップ注入式の塗装に比べ、過剰な塗料を使用することがないという利点がある。また、塗装対象物に被せた塗装具本体10を回動する操作のみで塗装を行うことができるので、塗装作業を極めて容易に行うことができるとともに、作業者が直接刷毛塗りを行う場合に比べ、塗りムラや塗膜厚のバラツキのない均一な塗膜を形成することができる。更に、塗装具本体の周方向複数箇所の刷毛で同時に塗装を行うことができるので、塗装対象物の全体に効率よく塗装することができる。その際、塗装具本体の周方向各位置の刷毛による塗布部分に隙間を生ずることがないので、塗りムラを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態を示す塗装具の斜視図
図2】塗装具本体の平面図
図3】塗装具本体の概略側面断面図
図4】刷毛の第1の配置例を示す塗装具本体の側面断面図
図5】塗装工程を示す斜視図
図6】塗装工程を示す塗装具の側面断面図
図7】塗装工程を示す塗装具の側面断面図
図8】刷毛の第2の配置例を示す塗装具本体の側面断面図
図9】刷毛の第3の配置例を示す塗装具本体の側面断面図
図10】本発明の第2の実施形態を示す塗装具の一部断面側面図
図11】塗装具の動作を示す一部断面側面図
図12】本発明の第3の実施形態を示す塗装具の一部断面側面図
図13】本発明の第4の実施形態を示す塗装具の一部断面側面図
図14】塗装具の一部断面側面図
図15】本発明の第5の実施形態を示す塗装具本体の平面図
図16】刷毛の第1の配置例を示す塗装具本体の一部断面側面
図17】刷毛の第1の配置例を示す塗装具本体の一部断面側面
図18】刷毛の第1の配置例を示す塗装具本体の一部断面側面
図19】刷毛の第2の配置例を示す塗装具本体の一部断面側面
図20】刷毛の第2の配置例を示す塗装具本体の一部断面側面
図21】刷毛の第2の配置例を示す塗装具本体の一部断面側面
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1乃至図9は本発明の第1の実施形態を示すもので、突起状の塗装対象物としてのボルト及びナットの塗装に用いられる塗装具を示すものである。
【0014】
同図に示すボルト1及びナット2は、例えば橋梁、水門等の鋼構造物用の鋼板からなる締結対象部材3を締結するもので、締結対象部材3の表面に突出するボルト1のネジ部にはナット2が螺合し、ナット2と締結対象部材3との間にはワッシャ4が設けられている。
【0015】
本実施形態の塗装具は、ボルト1及びナット2に被せられる塗装具本体10と、塗装具本体10の内側に設けられた複数の刷毛20と、塗装具本体10に取り付けられた把持部30とを備えている。
【0016】
塗装具本体10は、刷毛20を支持する8つの刷毛支持部11と、各刷毛支持部11に固定された環状部材12とからなる。
【0017】
各刷毛支持部11は、互いに塗装具本体10の周方向に間隔をおいて配置され、塗装具本体10の中心側からそれぞれ放射状に延びるように形成されている。この場合、各刷毛支持部11の一端側は塗装具本体10の軸方向に垂直に延びるように形成され、塗装具本体10の中心側で互いに結合されている。各刷毛支持部11の他端側は塗装具本体10の軸方向に対して平行に延びるように形成され、各刷毛支持部11の中央側は塗装具本体10の中心軸に対して斜めに延びるように形成されている。このように形成されることにより、各刷毛支持部11の間には塗装具本体10の内側及び外側を連通する隙間が設けられている。
【0018】
環状部材12は、各刷毛支持部11の長手方向略中央部を結ぶ円に沿って延びる板状の部材からなり、その一方の面には各刷毛支持部11の他端がそれぞれ接合されている。
【0019】
刷毛20は、柄を有しない平刷毛からなり、先端側(毛側)が塗装具本体10の内側に向かって延びるように基端側を刷毛支持部11に固定されている。この場合、塗装具本体10の周方向の位置が異なる刷毛支持部11ごとに刷毛20が塗装具本体10の軸方向及び径方向の少なくとも一方に位置が異なるように配置されている。この場合、互いに塗装具本体10の径方向に対をなす両側の刷毛支持部11が、塗装具本体10の周方向に45゜ずつ位置が異なる第1乃至第4の位置A~Dに配置されている。
【0020】
図4は塗装具本体10に設けられる刷毛20の第1の配置例を示すもので、刷毛20の本数は14本である。尚、図2において、塗装具本体10の軸芯を中心とする円周方向が塗装具本体10の周方向、塗装具本体10の軸芯を通る直線の方向が塗装具本体10の径方向である。また、図3及び図4において、上下方向が塗装具本体10の軸方向、塗装具本体10の軸芯を通る直線の左右方向が塗装具本体10の径方向である。
【0021】
第1の位置A(図2のA-A線位置)においては、図4に示すように両側の刷毛支持部11に刷毛20が図中上下方向に間隔をおいて2つずつ設けられており、上方の刷毛20は刷毛支持部11の中央側の上部から塗装具本体10の中心軸に向かって図中斜め下方(例えば、塗装具本体10の中心軸に対して45゜をなす方向)に延びるように配置され、下方の刷毛20は刷毛支持部11の他端側の上部から塗装具本体10の中心軸に向かって垂直に延びるように配置されている。この場合、上方の刷毛20同士は一部が交わるように近接して配置されている。
【0022】
第2の位置B及び第4の位置D(図2のB-B線及びD-D線位置)においては、図4に示すように両側の刷毛支持部11に刷毛20が図中上下方向に間隔をおいて2つずつ設けられており、上方の刷毛20は刷毛支持部11の長手方向中央側の中央部から塗装具本体10の中心軸に向かって図中斜め下方(例えば、塗装具本体10の中心軸に対して45゜をなす方向)に延びるように配置され、下方の刷毛20は刷毛支持部11の他端側の下部から塗装具本体10の中心軸に向かってやや図中斜め下方(例えば、塗装具本体10の中心軸に対して85゜をなす方向)に延びるように配置されている。
【0023】
第3の位置C(図2のC-C線位置)においては、図4に示すように両側の刷毛支持部11に刷毛20が1つずつ設けられており、これらの刷毛20は刷毛支持部11の他端側の上部から塗装具本体10の中心軸に向かって垂直に延びるように配置されている。
【0024】
また、第1乃至第4の位置A~Dにおいては、塗装具本体10の周方向の位置が異なる複数の刷毛20を互いに一部同士が塗装具本体10の周方向に間隔をおいて重なり合うように塗装具本体10の軸方向及び径方向の少なくとも一方にずらして配置されている。即ち、図3に示すように、第1の位置Aの刷毛20(図中実線)と、第2及び第4の位置B,Dの刷毛20(図中破線)とを塗装具本体10の周方向に重ねると、これらの刷毛20の一部の位置が互いに塗装具本体10の軸方向及び径方向の少なくとも一方にずれるとともに、これらの刷毛20同士が塗装具本体10の周方向の投影面において連続するように配置されている。
【0025】
把持部30は手指で把持可能な円柱状の部材からなり、軸方向に延びる連結軸31を介して塗装具本体10の中心部分(各刷毛支持部11の一端側)に連結されている。
【0026】
以上のように構成された塗装具を用いてボルト1及びナット2の塗装を行う場合は、まず、図5(a) に示すように塗装具本体10を塗料容器5内に挿入し、図5(b) に示すように塗装具本体10を塗料容器5内の塗料Pに浸けて各刷毛20に塗料Pを付着させる。その際、塗料Pに浸けた塗装具本体10の各刷毛支持部11間の隙間を塗料Pが通過することから、無用な塗料Pが塗装具本体10に付着することがない。
【0027】
次に、図6に示すように各刷毛20に塗料の付着した塗装具本体10をボルト1及びナット2に被せるとともに、図7に示すように把持部30を把持しながら塗装具本体10を周方向に回動する。これにより、各刷毛20がボルト1及びナット2の表面に接しながら塗装具本体10の周方向に移動し、各刷毛20の塗料がボルト1及びナット2に塗布される。その際、第1乃至第4の位置A~Dの刷毛20は塗装具本体10の周方向の投影面において互いに連続するように配置されていることから、ボルト1及びナット2の表面に各刷毛20がムラなく接触し、ボルト1及びナット2の表面全体に塗料が満遍なく塗布される。
【0028】
即ち、図4に示すように、第1の位置Aにおいては、図中上方の刷毛20によって主にボルト1の上面及び側面に塗料が塗布され、図中下方の刷毛20によって主にナット2の側面上部に塗料が塗布される。また、第2及び第4の位置B,Dにおいては、図中上方の刷毛20によって主にボルト1の側面及びナット2の上面に塗料が塗布され、図中下方の刷毛20によって主にナット2の側面下部及びワッシャ4に塗料が塗布される。更に、第3の位置Cにおいては、第1の位置Aの図中上方の刷毛20と同様、第3の位置Cの刷毛20によって主にナット2の側面上部に塗料が塗布される。
【0029】
ところで、ナット2は六角形であるため、中心から周面までの距離が周方向の位置によって異なる。即ち、ナット2は角部から中心までの距離が最も長く、平面部の中央から中心までの距離が最も短い。このため、塗装具本体10を回動する際、ナット2に接触する刷毛20がナット2の角部を乗り越えるときが最も接触圧が高く、平面部の中央を通過するときが最も接触圧が低くなる。即ち、例えば刷毛20を塗装具本体10の周方向6箇所に配置した場合、塗装具本体10を回動する際に塗装具本体10の周方向各位置の刷毛20が同時にナット2の角部を乗り越えようとするため、刷毛20とナット2との接触圧による塗装具本体10の回動負荷が大きくなるが、本実施形態では、各刷毛20が塗装具本体10の周方向8箇所に等間隔で設けられていることから、図2に示すようにナット2の角部の数(6つ)と各刷毛20の塗装具本体10の周方向の配置数(8つ)とが不一致になり、塗装具本体10の周方向各位置の刷毛20が同時にナット2の角部を乗り越えることがなく、刷毛20を塗装具本体10の周方向6箇所に配置した場合に比べて塗装具本体10の回動負荷が小さくなる。
【0030】
このように、本実施形態の塗装具によれば、突起状の塗装対象物(ボルト1及びナット2)に被せられる塗装具本体10と、塗装具本体10の内側に設けられた複数の刷毛20とを備え、刷毛20に塗料を付着させて塗装具本体10を塗装対象物に被せ、塗装具本体10を塗装対象物の周方向に回動することにより、各刷毛20の塗料を塗装対象物に塗布するようにしたので、刷毛塗りによる厚膜塗装によってボルト1やナット2の角部にも十分な厚さの塗膜を確保することができるとともに、従来のカップ注入式の塗装に比べ、過剰な塗料を使用することがないという利点がある。更に、塗装対象物に被せた塗装具本体10を回動する操作のみで塗装を行うことができるので、塗装作業を容易に行うことができるとともに、作業者が直接刷毛塗りを行う場合に比べ、塗りムラや塗膜厚のバラツキのない均一な塗膜を形成することができる。
【0031】
また、各刷毛20を塗装具本体10の周方向に間隔をおいて配置したので、塗装具本体10の周方向複数箇所の刷毛20で同時に塗装を行うことができ、塗装対象物の全体に効率よく塗装することができる。この場合、塗装具本体10の周方向の位置が異なる複数の刷毛20を互いに塗装具本体10の軸方向及び径方向の少なくとも一方に位置がずれるように配置するとともに、互いに刷毛20の一部が塗装具本体10の周方向に間隔をおいて重なり合うように配置したので、塗装具本体10の周方向各位置の刷毛20による塗布部分に隙間が生ずることがなく、塗りムラを確実に防止することができる。この場合、刷毛20は塗料を含むと幅方向に広がるため、各刷毛の重なり量をより多くすることができる。
【0032】
更に、塗装具本体10に刷毛20を支持する複数の刷毛支持部11を設け、各刷毛支持部11を互いに塗装具本体10の周方向に間隔をおいて配置し、各刷毛支持部11の間に塗装具本体10の内側と外側とを連通する隙間を設けたので、塗装具本体10を塗料に浸けた際、塗装具本体10の各刷毛支持部11間の隙間を塗料が通過し、無用な塗料が塗装具本体10に付着することがないという利点がある。
【0033】
また、各刷毛20を塗装具本体10の周方向8箇所に等間隔で設けることにより、ナット2の角部の数(6つ)と塗装具本体10の周方向における各刷毛20の配置数(8つ)とが不一致になるようにしたので、塗装具本体10の周方向各位置の刷毛20が同時にナット2の角部を乗り越えることがなく、塗装具本体10の回動負荷を小さくすることができる。これにより、塗装具本体10を容易に回動させることができ、多数のボルト1及びナット2に塗装する場合でも塗装作業の労力を軽減することができる。
【0034】
尚、前記実施形態では、各刷毛20を塗装具本体10の周方向8箇所に設けたものを示したが、「3」及び「6の倍数」以外の箇所、即ち4箇所、5箇所、7箇所、8箇所、9箇所、10箇所または11箇所に各刷毛20を等間隔で設けるようにしてもよい。
【0035】
図8は塗装具本体10に設けられる刷毛20の第2の配置例を示すもので、刷毛20の本数は10本である。
【0036】
第1の位置A(図2のA-A線位置)においては、図8に示すように両側の刷毛支持部11に刷毛20が図中上下方向に間隔をおいて2つずつ設けられており、上方の刷毛20は刷毛支持部11の中央側の上部から塗装具本体10の中心軸に向かって図中斜め下方(例えば、塗装具本体10の中心軸に対して45゜をなす方向)に延びるように配置され、下方の刷毛20は刷毛支持部11の他端側の上部から塗装具本体10の中心軸に向かって垂直に延びるように配置されている。この場合、上方の刷毛20同士は一部が交わるように近接して配置されている。
【0037】
第2の位置B(図2のB-B線位置)においては、図8に示すように両側の刷毛支持部11に刷毛20が1つずつ設けられており、これらの刷毛20は刷毛支持部11の他端側の下部から塗装具本体10の中心軸に向かってやや図中斜め下方(例えば、塗装具本体10の中心軸に対して85゜をなす方向)に延びるように配置されている。
【0038】
第3の位置C(図2のC-C線位置)においては、図8に示すように両側の刷毛支持部11に刷毛20が1つずつ設けられており、これらの刷毛20は刷毛支持部11の他端側の上部から塗装具本体10の中心軸に向かって垂直に延びるように配置されている。
【0039】
第4の位置D(図2のD-D線位置)においては、図8に示すように両側の刷毛支持部11に刷毛20が1つずつ設けられており、これらの刷毛20は刷毛支持部11の長手方向中央側の中央部から塗装具本体10の中心軸に向かって図中斜め下方(例えば、塗装具本体10の中心軸に対して45゜をなす方向)に延びるように配置されている。
【0040】
図9は塗装具本体10に設けられる刷毛20の第3の配置例を示すもので、刷毛20の本数は12本である。
【0041】
第1の位置A(図2のA-A線位置)においては、図9に示すように両側の刷毛支持部11に刷毛20が図中上下方向に間隔をおいて2つずつ設けられており、上方の刷毛20は刷毛支持部11の中央側の上部から塗装具本体10の中心軸に向かって図中斜め下方(例えば、塗装具本体10の中心軸に対して45゜をなす方向)に延びるように配置され、下方の刷毛20は刷毛支持部11の他端側の上部から塗装具本体10の中心軸に向かって垂直に延びるように配置されている。この場合、上方の刷毛20同士は一部が交わるように近接して配置されている。
【0042】
第2の位置B(図2のB-B線位置)においては、図9に示すように両側の刷毛支持部11に刷毛20が図中上下方向に間隔をおいて2つずつ設けられており、上方の刷毛20は刷毛支持部11の長手方向中央側の中央部から塗装具本体10の中心軸に向かって図中斜め下方(例えば、塗装具本体10の中心軸に対して45゜をなす方向)に延びるように配置され、下方の刷毛20は刷毛支持部11の他端側の下部から塗装具本体10の中心軸に向かってやや図中斜め下方(例えば、塗装具本体10の中心軸に対して85゜をなす方向)に延びるように配置されている。
【0043】
第3の位置C(図2のC-C線位置)においては、図9に示すように両側の刷毛支持部11に刷毛20が1つずつ設けられており、これらの刷毛20は刷毛支持部11の他端側の上部から塗装具本体10の中心軸に向かって垂直に延びるように配置されている。
第4の位置D(図2のD-D線位置)においては、図9に示すように両側の刷毛支持部11に刷毛20が1つずつ設けられており、これらの刷毛20は刷毛支持部11の他端側の下部から塗装具本体10の中心軸に向かってやや図中斜め下方(例えば、塗装具本体10の中心軸に対して85゜をなす方向)に延びるように配置されている。
【0044】
図10及び図11は本発明の第2の実施形態を示すもので、第1の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0045】
本実施形態の塗装具は、第1の実施形態の構成に加えて、塗装具本体10を外側から覆うカバー部材40を備え、カバー部材40は塗装具本体10の軸方向に移動自在に設けられている。カバー部材40はカップ状の中空の部材からなり、その頂部には把持部30の連結軸31が摺動自在に挿通する挿通部41が設けられている。また、カバー部材40と把持部30との間には、カバー部材40を塗装具本体10側に付勢するスプリング42が設けられている。
【0046】
本実施形態では、塗装具本体10がカバー部材40によって覆われているので、塗装具本体10及び各刷毛20に付着した塗料がカバー部材40の外部に垂れることがない。これにより、横向きまたは下向きの塗装対象物に塗装する際、カバー部材40によって作業場所の周囲や作業者への塗料の飛散を防止することができる。
【0047】
また、各刷毛20に塗料を付着させる際、図11に示すように塗料容器内の塗料Pに塗装具本体10を上方から浸けると、カバー部材40が内部空気の浮力により塗料P内に沈降せずに塗料Pの液面上に留まり、塗装具本体10の下降に対して連結軸31を摺動して把持部30側に相対的に移動する。この後、塗装具本体10を塗料Pから引き上げると、カバー部材40がスプリング42によって塗装具本体10を覆う位置まで戻る。これにより、塗料容器内の塗料Pに塗装具本体10を浸ける際、カバー部材40の内面及び外面に塗料が付着することがなく、カバー部材40から塗料が垂れ落ちることがないという利点がある。
【0048】
図12は本発明の第3の実施形態を示すもので、第1の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0049】
本実施形態の塗装具は、第1の実施形態の把持部30に代えて、塗装具本体10を回転させる駆動部50を備え、駆動部50は内部のモータ(図示せず)の回転軸51によって回転する回転軸51を塗装具本体10の頂部に連結されている。駆動部50には手指で把持するための把持部52が設けられている。また、把持部52にはモータを作動させるスイッチ53が設けられ、スイッチ53は把持部52を把持しながら指で押圧操作するとモータを回転させ、押圧を解除するとモータの回転を停止させるようになっている。
【0050】
本実施形態では、塗装具本体10の各刷毛20に塗料を付着させた後、塗装具本体10を塗装対象物に被せるとともに、スイッチ53を操作してモータを作動させることにより、塗装具本体10を電動で回転させるようにしたので、塗装具本体10を手動で回動する場合に比べて迅速に塗装対象物に塗料を塗布することができ、塗装作業を効率よく行うことができる。
【0051】
尚、本実施形態においても第2の実施形態と同様のカバー部材を設けるようにしてもよい。
【0052】
図13及び図14は本発明の第4の実施形態を示すもので、第1乃至第3の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0053】
本実施形態の塗装具は、第3の実施形態の構成に加えて、第2の実施形態と同様のカバー部材40と、塗装具本体10内に塗料を供給する塗料供給装置60とを備えている。
【0054】
カバー部材40は塗装具本体10を覆った状態で駆動部50の回転軸51に固定され、塗装具本体10と一体に回転するようになっている。
【0055】
塗料供給装置60は、塗料供給用のホース61を介して塗装具本体10に接続された塗料タンク62と、ホース61を介して塗料タンク62の塗料を塗装具本体10に供給するポンプ63とを備え、ホース61は駆動部50及び回転軸51内を通じて塗装具本体10内の頂部まで延びるように設けられている。塗装具本体10内の頂部には塗料を吐出するノズル64が設けられ、ノズル64は塗装具本体10内の各刷毛20に向かって塗料を散布するように、例えば複数の孔から塗料を噴出するように形成されている。
【0056】
また、駆動部50には、塗料供給装置60のポンプ63を作動させる第1のスイッチ54と、第3の実施形態と同様に駆動部50のモータを作動させる第2のスイッチ55がそれぞれ設けられ、各スイッチ54,55は、把持部52を把持しながら指で押圧操作ができるようになっている。
【0057】
本実施形態では、まず塗装具本体10をボルト1及びナット2に被せた後、図13に示すように第1のスイッチ54を操作して塗料供給装置60から塗料を塗装具本体10内に供給し、塗装具本体10の各刷毛20に塗料を付着させる。その際、ノズル64から塗装具本体10内の各刷毛20に向かって塗料が散布されるとともに、カバー部材40によって外部への塗料の飛散が防止される。次に、図14に示すように第2のスイッチ55を操作して塗装具本体10を回転させ、塗装具本体10の各刷毛20によってボルト1及びナット2に塗料を塗布する。
【0058】
このように、本実施形態によれば、第3の実施形態と同様、塗装具本体10を電動で回転させるようにしたので、迅速に塗装対象物に塗料を塗布することができる。また、塗料供給装置60によって塗装具本体10内に塗料を供給するようにしたので、塗装具本体10を塗料容器の塗料に浸けて各刷毛20に塗料を付着させる作業を行う必要がなく、作業効率をより一層向上させることができる。この場合、第1のスイッチ54の一回の押圧操作により所定量の塗料のみを供給するようにポンプ63の動作を制御するようにすれば、作業者によって塗料の供給量に毎回バラツキを生ずることがなく、常に一定の塗膜になるように塗装を行うことができる。
【0059】
尚、前記第4の実施形態では、塗装具本体10を電動で回転させるようにしたものを示したが、塗装具本体10を手動で回動させるものに塗料供給装置60を設けるようにしてもよい。
【0060】
図15乃至図18は本発明の第5の実施形態を示すもので、第1の実施形態と同等の構成部分には同一の符号を付して示す。
【0061】
前記第1乃至第4の実施形態では、ボルト1及びナット2に塗装する塗装具を示したが、本実施形態では塗装対象物としてのスタッドに防食用の塗料を塗布する塗装具を示す。
【0062】
同図に示すスタッド6は、丸棒状の本体部6aの上端に円形の頭部6bを有する略ボルト状に形成され、例えば本体部6aの下端側を橋梁の鋼桁の上フランジに溶接されるとともに、本体部6a及び頭部6bを床版に埋設されることによりで鋼桁に対する床版のずれ止め部材として機能するものである。
【0063】
本実施形態の塗装具は、スタッド6に被せられる塗装具本体70を備え、塗装具本体70には前記実施形態と同様の複数の刷毛20及び把持部30が設けられている。
【0064】
塗装具本体70は、刷毛20を支持する第1、第2及び第3の刷毛支持部71,72,73と、各刷毛支持部71,72,73に固定された環状部材74とからなる。
【0065】
各刷毛支持部71,72,73は、互いに塗装具本体70の周方向に間隔をおいて配置され、塗装具本体70の中心側からそれぞれ放射状に延びるように形成されている。この場合、各刷毛支持部71,72,73の一端側は塗装具本体70の中心軸に向かって延びるように形成され、各刷毛支持部71,72,73の他端側は塗装具本体70の軸方向に対して平行に長く延びるように形成されている。
【0066】
第1の刷毛支持部71は、一端側が斜め下方に向かって傾斜するように形成され、その他端側は第2及び第3の刷毛支持部72,73の他端側よりも短く形成されている。第2の刷毛支持部72は一端側が塗装具本体70の軸方向に直角に延びるように形成されている。第3の刷毛支持部73は一端側が塗装具本体70の軸方向に直角に延びるとともに、一端側と他端側との間部分が斜めに形成されている。また、各刷毛支持部71,72,73の間には塗装具本体70の内側及び外側を連通する隙間が設けられている。
【0067】
環状部材74は、図15に示すように各刷毛支持部71,72,73の長手方向略中央部を結ぶように略六角形状に形成され、その周方向一部はスタッド6を挿通するために切り欠かれている。
【0068】
各刷毛20は、先端側(毛側)が塗装具本体70の内側に向かって延びるように基端側を各刷毛支持部71,72,73に固定されている。この場合、塗装具本体70の周方向の位置が異なる刷毛支持部71,72,73ごとに刷毛20が塗装具本体70の軸方向及び径方向に位置が異なるように配置されている。また、互いに塗装具本体70の径方向に対をなす一対の第1の刷毛支持部71、一対の第2の刷毛支持部72及び一対の第3の刷毛支持部73がそれぞれ塗装具本体70の周方向に60゜ずつ位置が異なる第1乃至第3の位置A~Cに配置されている。
【0069】
ここで、本実施形態における刷毛20の第1の配置例を図16乃至図18に示す。尚、刷毛20の本数は20本である。
【0070】
第1の位置A(図15のA-A線位置)においては、図16に示すように各第1の刷毛支持部71に刷毛20が1つずつ設けられており、これらの刷毛20は第1の刷毛支持部71の一端側から塗装具本体70の中心軸に向かって図中斜め上方に向かって延びるように配置されている。また、各第1の刷毛支持部71の一端側は互いに塗装具本体70の径方向に間隔をおいて設けられ、その間をスタッド6が塗装具本体70の軸方向(図中上下方向)に挿通可能になっている。
【0071】
第2の位置B(図15のB-B線位置)においては、図17に示すように各第2の刷毛支持部72の一端側に刷毛20が配置され、刷毛20は塗装具本体70の径方向に互いに間隔をおかずに1つずつ図中下方に向かって塗装具本体70の軸方向に延びるように設けられている。また、各第2の刷毛支持部72の他端側(塗装具本体70の軸方向に延びる部分)には刷毛20が塗装具本体70の軸方向に間隔をおかずに7つずつ配置され、これらの刷毛20は塗装具本体70の中心軸に向かって塗装具本体70の径方向に延びるように設けられている。各第2の刷毛支持部72の一端側は塗装具本体70の中心側で互いに結合されている。
【0072】
第3の位置C(図15のC-C線位置)においては、図18に示すように各第3の刷毛支持部73に刷毛20が1つずつ設けられており、これらの刷毛20は第3の刷毛支持部73の一端側と他端側の間の傾斜部分から塗装具本体70の中心軸に向かって図中斜め下方に向かって延びるように配置されている。各第3の刷毛支持部73の一端側は塗装具本体70の中心側で互いに結合されている。
【0073】
また、第1乃至第3の位置A~Cにおいては、前記実施形態と同様、塗装具本体70の周方向の位置が異なる複数の刷毛20が互いに一部同士が塗装具本体70の周方向に間隔をおいて重なり合うように塗装具本体70の中心軸方向にずらして配置されている。即ち、第1乃至第3の位置A~Cを互いに塗装具本体70の周方向に重ねると、各刷毛支持部71,72,73の刷毛20の位置が互いに塗装具本体70の軸方向及び径方向の少なくとも一方にずれるとともに、これらの刷毛20同士が塗装具本体70の周方向の投影面において連続するように配置されている。
【0074】
以上のように構成された塗装具を用いてスタッド6の塗装を行う場合は、第1の実施形態と同様、塗装具本体70を塗料に浸けて各刷毛20に塗料を付着させる。その際、塗料に浸けた塗装具本体70の各刷毛支持部71,72,73間の隙間を塗料が通過することから、無用な塗料が塗装具本体70に付着することがない。
【0075】
次に、各刷毛20に塗料の付着した塗装具本体70をスタッド6に被せる。その際、環状部材74の切り欠き部分を通じてスタッド6を塗装具本体70の側方から挿入する。次に、把持部30を把持しながら塗装具本体70を周方向に回動する。これにより、各刷毛70がスタッド6の表面に接しながら塗装具本体70の周方向に移動し、各刷毛20の塗料がスタッド6に塗布される。その際、第1乃至第3の位置A~Cの刷毛20は塗装具本体70の周方向の投影面において互いに連続するように配置されていることから、スタッド6の表面に各刷毛20がムラなく接触し、スタッド6の表面全体に塗料が満遍なく塗布される。
【0076】
この場合、第1の位置Aにおいては、図16に示すように刷毛20によって主にスタッド6の頭部6bの側面と下面に塗料が塗布される。また、第2の位置Bにおいては、図17に示すように図中上方の刷毛20によってスタッド6の上面に塗料が塗布され、図中側方の刷毛20によってスタッド6の側面に塗料が塗布される。更に、第3の位置Cにおいては、図18に示すように各刷毛20によって主にスタッド6の頭部6bの側面と上面との角部に塗料が塗布される。
【0077】
このように、本実施形態によれば、スタッド6に塗料を容易に塗布することができ、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態の塗装具本体70を第2乃至第4の実施形態に用いることも可能である。
【0078】
図19乃至図21は前記第5の実施形態における刷毛20の第2の配置例を示すもので、刷毛20の本数は20本である。本配置例では、第1の配置例において各第2の刷毛支持部72の他端側(塗装具本体70の軸方向に延びる部分)のみに配置していた刷毛20を第1乃至第3の刷毛支持部71,72,73に分散して配置している。
【0079】
第1の位置A(図15のA-A線位置)においては、図19に示すように各第1の刷毛支持部71に刷毛20が1つずつ設けられており、これらの刷毛20は第1の刷毛支持部71の一端側から塗装具本体70の中心軸に向かって図中斜め上方に向かって延びるように配置されている。また、各第1の刷毛支持部71の他端側(塗装具本体70の軸方向に延びる部分)には刷毛20が塗装具本体70の軸方向に間隔をおいて2つずつ配置され、これらの刷毛20は塗装具本体70の中心軸に向かって塗装具本体70の径方向に延びるように設けられている。この場合、各第1の刷毛支持部71の他端側は、刷毛20をスタッド6に接触するように位置させるために、第1の配置例よりも互いに塗装具本体70の径方向の間隔が狭くなるように形成されている。
【0080】
第2の位置B(図15のB-B線位置)においては、図20に示すように各第2の刷毛支持部72の一端側に刷毛20が塗装具本体70の径方向に互いに間隔をおかずに1つずつ配置され、これらの刷毛20は図中下方に向かって塗装具本体70の軸方向に延びるように設けられている。また、各第2の刷毛支持部72の他端側には刷毛20が塗装具本体70の軸方向に間隔をおいて3つずつ配置され、これらの刷毛20は塗装具本体70の中心軸に向かって塗装具本体70の径方向に延びるように設けられている。
【0081】
第3の位置C(図15のC-C線位置)においては、図21に示すように各第3の刷毛支持部73に刷毛20が1つずつ設けられており、これらの刷毛20は第3の刷毛支持部73の一端側と他端側の間の傾斜部分から塗装具本体70の中心軸に向かって図中斜め下方に向かって延びるように配置されている。また、各第3の刷毛支持部73の他端側には刷毛20が塗装具本体70の軸方向に間隔をおいて2つずつ配置され、これらの刷毛20は塗装具本体70の中心軸に向かって塗装具本体70の径方向に延びるように設けられている。この場合、各第3の刷毛支持部73の他端側は、刷毛20をスタッド6に接触するように位置させるために、第1の配置例よりも互いに塗装具本体70の径方向の間隔が狭くなるように形成されている。
【0082】
また、第1乃至第3の位置A~Cにおいては、第1の配置例と同様、塗装具本体70の周方向の位置が異なる複数の刷毛20が互いに一部同士が塗装具本体70の周方向に間隔をおいて重なり合うように塗装具本体70の中心軸方向にずらして配置されている。即ち、第1乃至第3の位置A~Cを互いに塗装具本体70の周方向に重ねると、各刷毛支持部71,72,73の刷毛20の位置が互いに塗装具本体70の軸方向及び径方向の少なくとも一方にずれるとともに、これらの刷毛20同士が塗装具本体70の周方向の投影面において連続するように配置されている。特に、本配置例では、各刷毛支持部71の他端側(塗装具本体70の軸方向に延びる部分)に配置される刷毛20が、図19に示すように第1乃至第3の位置A~Cにおいて互いに塗装具本体70の軸方向に位置が異なるように配置されるとともに、互いに刷毛20の一部が塗装具本体70の周方向に間隔をおいて重なり合うように配置されている。
【0083】
尚、前記各実施形態では、ボルト1及びナット2、スタッド6に塗装する場合を示したが、これらの塗装対象物以外にも、突起状の塗装対象物でれば本発明を適用することができる。
【0084】
また、前記各実施形態は本発明の実施例であり、本発明は前記各実施形態に記載されたものに限定されない。
【符号の説明】
【0085】
1…ボルト、2…ナット、6…スタッド、10…塗装具本体、11…刷毛支持部、20…刷毛、30…把持部、40…カバー部材、50…駆動部、60…塗料供給装置、70…塗装具本体、71…第1の刷毛支持部、72…第2の刷毛支持部、73…第3の刷毛支持部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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図15
図16
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