(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】異形シリカ粒子分散液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/154 20060101AFI20240507BHJP
C09K 3/14 20060101ALN20240507BHJP
【FI】
C01B33/154
C09K3/14 550D
(21)【出願番号】P 2020111744
(22)【出願日】2020-06-29
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】弁理士法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 和洋
(72)【発明者】
【氏名】向井 達也
(72)【発明者】
【氏名】山田 大輔
【審査官】▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-149493(JP,A)
【文献】特開2011-104694(JP,A)
【文献】特開2013-032276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/154
C09K 3/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記工程1~下記工程3を含み、かつ、下記条件1を満たすことを特徴とする異形シリカ粒子分散液の製造方法。
工程1:少なくともNaまたはKを有するアルカリ性化合物を含むアルカリ水溶液に第一酸性珪酸液を混合して、
更に温度50℃以上100℃未満の範囲で加熱熟成することにより、SiO
2濃度が3質量%以上20質量%以下であり、かつ下記数式(F1-1)で示す条件を満たす前駆体分散液を得る工程
2≦SiO
2/A
2O≦15・・・(F1-1)
(ここで、SiO
2は、前駆体分散液中のシリカのモル数を表し、A
2Oは、前駆体分散液中のNa
2OおよびK
2Oの合計のモル数を表す。)
工程2:前記工程1で得られた前記前駆体分散液に、第二酸性珪酸液を、下記数式(F2-1)で示す第二添加速度比が、0.1[kg/hr・kg]以上0.6[kg/hr・kg]以下の範囲となるように添加し、更に温度50℃以上100℃未満の範囲で加熱熟成することによりシード粒子分散液を得る工程
第二添加速度比[kg/hr・kg]=(第二酸性珪酸液中のシリカ含有量[kg])/(第二酸性珪酸液の添加時間[hr])/(前駆体分散液中のシリカ含有量[kg])・・・(F2-1)
工程3:前記工程2で得られたシード粒子分散液に、第三酸性珪酸液を、下記数式(F3-1)で示す第三添加速度比が、1.1[kg/hr・kg]以上10[kg/hr・kg]以下の範囲となるように添加し、更に温度50℃以上100℃未満の範囲で加熱熟成することにより異形シリカ粒子分散液を得る工程
第三添加速度比[kg/hr・kg]=(第三酸性珪酸液中のシリカ含有量[kg])/(第三酸性珪酸液の添加時間[hr])/(前駆体分散液中のシリカ含有量[kg])・・・(F3-1)
条件1:下記数式(F0-1)で示す条件を満たすこと。
1.9≦[前記第三添加速度比]/[前記第二添加速度比]≦40・・・(F0-1)
【請求項2】
前記工程3に続いて、下記工程4を含むことを特徴とする請求項1に記載の異形シリカ粒子分散液の製造方法。
工程4:前記工程3で得られた異形シリカ粒子分散液を濃縮する工程
【請求項3】
更に下記条件2を満たすことを特徴とする請求項1または2に記載の異形シリカ粒子分散液の製造方法。
条件2:前記前駆体分散液中において、シリカ1モルあたりに換算したハロゲン元素のモル数(モル/モル比)が0.5%以下であり、かつシリカ1モルあたりに換算したアルカリ土類金属のモル数(モル/モル比)が1000ppm以下であること。
【請求項4】
更に下記条件3を満たすことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の異形シリカ粒子分散液の製造方法。
条件3:下記数式(F0-2)で示すシリカ含有量比が、10以上100以下の範囲にあること。
シリカ含有量比={(第二酸性珪酸液中のシリカ含有量[kg])+(第三酸性珪酸液中のシリカ含有量[kg])}/(前駆体分散液中のシリカ含有量[kg])・・・(F0-2)
【請求項5】
更に下記条件4を満たすことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の異形シリカ粒子分散液の製造方法。
条件4:前記異形シリカ粒子分散液におけるSiO
2/A
2Oモル比が、60以上140以下の範囲にあること。(ここで、SiO
2は異形シリカ粒子分散液中のシリカのモル数を表し、A
2Oは異形シリカ粒子分散液中のNa
2OおよびK
2Oの合計モル数を表す。)
【請求項6】
前記工程1の前記アルカリ水溶液が、珪酸カリウム水溶液である請求項1から5のいずれか一項に記載の異形シリカ粒子分散液の製造方法。
【請求項7】
前記工程1の前記アルカリ性化合物が、水酸化カリウムである請求項1から5のいずれか一項に記載の異形シリカ
粒子分散液の製造方法。
【請求項8】
得られる異形シリカ粒子が、比表面積換算粒子径(D1)10nm以上200nm以下の範囲であり、動的光散乱法で測定された平均粒子径(D2)が20nm以上300nm以下の範囲であり、かつ(D2)/(D1)の値が1.2以上20以下の範囲にあることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の異形シリカ粒子分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異形シリカ粒子分散液の製造方法および異形シリカ粒子分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
研磨用粒子としては、従来、シリカゾルやヒュームドシリカおよびヒュームドアルミナ等が用いられている。半導体の集積回路付基板の製造においては、シリコンウェハー上にアルミニウムの配線を形成し、この上に絶縁膜としてシリカ等の酸化膜を設ける。この場合に配線による凹凸が生じるので、この酸化膜を研磨して平坦化することが行われている。このような基板の研磨において、研磨後の表面は段差や凹凸がなく平坦で、さらにミクロな傷等もなく平滑であること、および高い研磨速度が求められている。
【0003】
化学的機械的研磨(CMP)で使用される研磨材は、通常、研磨用粒子、酸化剤、有機酸等の添加剤および純水等の溶媒から構成されている。研磨用粒子は、シリカおよびアルミナ等の金属酸化物からなる平均粒子径が200nm程度の球状である。酸化剤は、配線・回路用金属の研磨速度を早める。
被研磨材の表面には配線用の溝パターンに起因した段差(凹凸)が存在する場合、主に凸部を研磨除去しながら共面まで研磨し、平坦な研磨面とすることが求められている。しかし、従来の球状の研磨用粒子では共面より上の部分を研磨した際に、凹部の下部にあった配線溝内の回路用金属が共面以下まで研磨される問題(ディッシングと呼ばれている。)があった。このようなディッシング(過研磨)が起きると配線の厚みが減少して配線抵抗が増加したり、また、この上に形成される絶縁膜の平坦性が低下する等の問題が生じる。このため、ディッシングを抑制することが求められている。
近年、研磨用粒子として、従来の球状粒子に代わり、非球状の粒子が提案されている。
【0004】
異形粒子を含むシリカゾルの製造方法としては、特許文献1にSiO2として0.05~5.0重量%のアルカリ金属珪酸塩水溶液に、珪酸液を添加して混合液のSiO2/M2O(モル比、Mはアルカリ金属または第4級アンモニウム)を30~60とした後に、Ca、Mg、Al、In、Ti、Zr、Sn、Si、Sb、Fe、Cuおよび希土類金属からなる群から選ばれた1種または2種以上の金属の化合物を添加し(添加時期は、前記珪酸液添加の前または添加中でも良い)、この混合液を60℃以上の任意の温度で一定時間維持し、更に珪酸液を添加して反応液中のSiO2/M2O(モル比)を60~100としてなる実質的に異形形状のシリカ粒子が分散したゾルの製法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、活性珪酸のコロイド水溶液に、水溶性のカルシウム塩、マグネシウム塩またはこれらの混合物の水溶液を添加し、得られた水溶液にアルカリ性物質を加え、得られた混合物の一部を60℃以上に加熱してヒール液とし、残部をフィード液として、当該ヒール液に当該フィード液を添加し、当該添加の間に、水を蒸発させることによりSiO2濃度6~30重量%まで濃縮することよりなる細長い形状のシリカゾルの製造法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、SiO2として0.5~10重量%を含有し、かつ、pHが2~6である活性珪酸のコロイド水溶液に、水溶性のII価またはIII価の金属の塩を単独または混合して含有する水溶液を、同活性珪酸のコロイド水溶液のSiO2に対して、金属酸化物(II価の金属の塩の場合はMOとし、III価の金属の塩の場合はM2O3とする。但し、MはII価またはIII価の金属原子を表し、Oは酸素原子を表す。) として1~10重量%となる量を加えて混合し、得られた混合液(1)に、平均粒子径10~120nm、pH2~6の酸性球状シリカゾルを、この酸性球状シリカゾルに由来するシリカ含量(A)とこの混合液(1)に由来するシリカ含量(B)の比A/B(重量比)が5~100、かつ、この酸性球状シリカゾルとこの混合液(1)との混合により得られる混合液(2)の全シリカ含量(A+B)が混合液(2)においてSiO2濃度5~40重量%となるように加えて混合し混合液(2)にアルカリ金属水酸化物等をpHが7~11となるように加えて混合し、得られた混合液(3)を100~200℃で0.5~50時間加熱してなる数珠状のシリカゾルの製造方法が記載されている。
【0007】
特許文献4には、SiO2濃度1~8モル/リットル、酸濃度0.0018~0.18モル/リットルで水濃度2~30モル/リットルの範囲の組成で、溶剤を使用しないでアルキルシリケートを酸触媒で加水分解した後、SiO2濃度が0.2~1.5モル/リットルの範囲となるように水で希釈し、次いでpHが7以上となるようにアルカリ触媒を加え加熱して珪酸の重合を進行させて、電子顕微鏡観察による太さ方向の平均直径が5~100nmであり、長さがその1.5~50倍の長さの細長い形状の非晶質シリカ粒子が液状分散体中に分散されているシリカゾルの製造方法が記載されている。
【0008】
特許文献5には、水ガラス等のアルカリ金属珪酸塩の水溶液を脱陽イオン処理することにより得られるSiO2濃度2~6質量%程度の活性珪酸の酸性水溶液に、アルカリ土類金属、例えば、Ca、Mg、Ba等の塩をその酸化物換算で上記活性珪酸のSiO2に対し100~1500ppmの重量比に添加し、更にこの液中SiO2/M2O(Mは、アルカリ金属原子、NH4または第4級アンモニウム基を表す。)モル比が20~150となる量の同アルカリ物質を添加することにより得られる液を当初ヒール液とし、同様にして得られる2~6質量%のSiO2濃度と20~150のSiO2/M2O(Mは、上記と同じ。)モル比を有する活性珪酸水溶液をチャージ液として、60~150℃で前記当初ヒール液に前記チャージ液を、1時間当たり、チャージ液SiO2/当初ヒール液SiO2の重量比として0.05~1.0の速度で、液から水を蒸発除去しながら(またはせずに)、添加してなる歪な形状を有するシリカゾルの製造方法が記載されている。
【0009】
特許文献6には、(1)珪酸アルカリ水溶液を鉱酸で中和しアルカリ性物質を添加して加熱熟成する方法、(2)珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換処理して得られる活性珪酸にアルカリ性物質を添加して加熱熟成する方法、(3)エチルシリケート等のアルコキシシランを加水分解して得られる活性珪酸を加熱熟成する方法、または、(4)シリカ微粉末を水性媒体中で直接に分散する方法等によって製造されるコロイダルシリカ水溶液は、通常、4~1,000nm(ナノメートル)、好ましくは7~500nmの粒子径を有するコロイド状シリカ粒子が水性媒体に分散したものであり、SiO2として0.5~50質量%、好ましくは0.5~30質量%の濃度を有する。上記シリカ粒子の粒子形状は、球状、いびつ状、偏平状、板状、細長い形状および繊維状等が挙げられることが記載されている。
【0010】
特許文献7には、互いにボンドによって連結していない球形の、分離したシリカ粒子を含む研磨剤であって、A)寸法5-50nmのシリカ粒子5-95質量%、およびb)寸法50-200nmのシリカ粒子95-5質量%を含む、但し粒子の全体がバイモーダルな粒径分布を有する研磨剤が高い研磨速度を与えることを報告している。
【0011】
また、特許文献8には、異形度が1.55~4の範囲にあり、動的光散乱法による粒子径分布において30~70nmの粒子径範囲と71~150nmの粒子径範囲に粒子径分布のピークがあり、両ピークの粒子径差が50~100nmの範囲にある研磨用シリカゾルを用いると優れた研磨レートが達成されることを開示している。
【0012】
さらに、特許文献9には、真球度が0.9以上の球状粒子とこの球状粒子に該当しない非球状粒子を所定重量比で含む研磨用組成物は被研磨面が凹凸を有していても研磨後の表面が平坦性に優れ、長時間の研磨に供しても研磨性能の低下が抑制できることを開示している。
【0013】
また、特許文献10には、電子材料用研磨剤等に有用なコロイダルシリカとして、ケイ酸アルカリ水溶液をカチオン交換樹脂に接触させて活性珪酸を調製し、これにカリウムイオンの供給源となる化合物とアルカリ剤として水酸化アルカリ金属あるいは水酸化第4級アンモニウム等を添加してアルカリ性にした後、加熱してシリカ粒子を形成し、続いて加熱下に、アルカリ性を維持しながら、活性珪酸水溶液とアルカリ剤とカリウムイオンの供給源となる化合物を添加してシリカ粒子を成長させ、透過型電子顕微鏡写真観察による長径/短径比が1.2~10のカリウムイオンを含む異形シリカ粒子群が開示されている。
【0014】
特許文献11には、平均一次粒子径(D1)が20~100nmの範囲にあるシリカ一次粒子が少なくとも4個以上クラスター化し、平均粒子径(DCL)が40~300nmの範囲にあり、アスペクト比(DL)/(DS)が1.5~5の範囲にあることを特徴とするシリカ粒子の製造方法として、珪酸アルカリ水溶液に酸性珪酸液とハロゲン化アルカリとを、所定のモル比範囲となるように混合して、シリカ粒子の種粒子前駆体分散液とし、続いて加熱熟成させた後、下記式(1)で表されるレイノルズ数(Re)が2000~1,000,000の範囲で撹拌しながら酸性珪酸液を添加してなる製造方法を開示している。
Re=nd2ρ/μ・・・・・・・(1)
(但し、nは撹拌翼の回転数[S-1]、dは撹拌翼径[m]、ρは分散液の密度[kg/m3]、μは分散液の粘度[Pa・s]である)
【0015】
一般に、比較的大きな粒子径の異形シリカ粒子の製造方法としては、次の様な製造方法が知られている。
1)異形形状の種粒子にシリカ源となる成分を添加し、粒子成長させて異形シリカ粒子を得る方法
2)球状粒子どうしを結合させて粒子連結型シリカ系粒子またはそれに準じた異形シリカ粒子を得る方法
3)シリカ粒子を破砕して異形シリカ粒子を得る方法
ここで、1)の製造方法は、異形度の高い粒子は調製できるものの、比表面積換算粒子径が小さい粒子しか得られないため、研磨用途に適用した場合、研磨速度が低いという課題がある。比表面積換算粒子径の小さな粒子に珪酸等のシリカ源を添加して、大きなサイズに成長させると、粒子成長に従って異形度が低下し、球状に近づくため、所望の異形度の異形シリカ粒子を得ることは容易ではなかった。また、このような異形度の低い粒子を研磨用途に用いた場合、研磨速度が低いという課題がある。
2)の製造方法では、粒子どうしの連結のためにシリカ系以外の成分を必要としており(例えば、特許文献2では酸化カルシウム、酸化マグネシウム、特許文献4ではアルカリ触媒、特許文献5ではアルカリ土類金属、特許文献11では塩化カリウム等)、それらの成分を含んだ異形シリカ粒子を半導体用途の研磨等に適用した場合、汚染の原因となることが懸念される。また、これらのシリカ以外の成分はシリカ粒子の凝集促進剤として機能することで異形化が生じるが、一方でサイズが大きく異形度の高いシリカ粒子を調製しようとした場合、凝集促進剤が多量に必要であるため、凝集反応が進み過ぎ、一部に粗大な凝集体が生じる。このようなシリカゾルを研磨用途に適用した場合、粗大粒子数が多いため、スクラッチが発生し易く、沈降性によって研磨性能が安定しない傾向にある。
3)の製造方法では、粒子径、粒子形状とも均一な異形シリカ粒子を得ることは容易ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】特開平4-187512号公報
【文献】特開平7-118008号公報
【文献】特開2001-11433号公報
【文献】特開2001-48520号公報
【文献】特開2001-150334号公報
【文献】特開平8-279480号公報
【文献】特表2003-529662号公報
【文献】特開2007-137972号公報
【文献】特開2006-80406号公報
【文献】特開2011-98859号公報
【文献】特開2015-86102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、優れた研磨特性を有する比較的粒子径の大きい異形シリカ粒子を含む異形シリカ粒子分散液の製造において、珪酸ナトリウム等の原料に由来するアルカリ土類金属やハロゲン以外にこれらの元素を使用せずに製造する方法を提供することを課題とする。また、本発明は、優れた研磨特性を有する比較的粒子径の大きい異形シリカ粒子を含む異形シリカ粒子分散液を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の一態様によれば、下記工程1~下記工程3を含み、かつ、下記条件1を満たすことを特徴とする異形シリカ粒子分散液の製造方法が提供される。
工程1:少なくともNaまたはKを有するアルカリ性化合物を含むアルカリ水溶液に第一酸性珪酸液を混合して、
更に温度50℃以上100℃未満の範囲で加熱熟成することにより、SiO2濃度が3質量%以上20質量%以下であり、かつ下記数式(F1-1)で示す条件を満たす前駆体分散液を得る工程
2≦SiO2/A2O≦15・・・(F1-1)
(ここで、SiO2は、前駆体分散液中のシリカのモル数を表し、A2Oは、前駆体分散液中のNa2OおよびK2Oの合計のモル数を表す。)
工程2:前記工程1で得られた前記前駆体分散液に、第二酸性珪酸液を、下記数式(F2-1)で示す第二添加速度比が、0.1[kg/hr・kg]以上0.6[kg/hr・kg]以下の範囲となるように添加し、更に温度50℃以上100℃未満の範囲で加熱熟成することによりシード粒子分散液を得る工程
第二添加速度比[kg/hr・kg]=(第二酸性珪酸液中のシリカ含有量[kg])/(第二酸性珪酸液の添加時間[hr])/(前駆体分散液中のシリカ含有量[kg])・・・(F2-1)
工程3:前記工程2で得られたシード粒子分散液に、第三酸性珪酸液を、下記数式(F3-1)で示す第三添加速度比が、1.1[kg/hr・kg]以上10[kg/hr・kg]以下の範囲となるように添加し、更に温度50℃以上100℃未満の範囲で加熱熟成することにより異形シリカ粒子分散液を得る工程
第三添加速度比[kg/hr・kg] =(第三酸性珪酸液中のシリカ含有量[kg])/(第三酸性珪酸液の添加時間[hr])/(前駆体分散液中のシリカ含有量[kg]) ・・・(F3-1)
条件1:下記数式(F0-1)で示す条件を満たすこと。
1.9≦[前記第三添加速度比]/[前記第二添加速度比]≦40・・・(F0-1)
【0019】
本発明の一態様にかかる異形シリカ粒子分散液の製造方法において、前記工程3に続いて、下記工程4を含むことが好ましい。
工程4:前記工程3で得られた異形シリカ粒子分散液を濃縮する工程
【0020】
本発明の一態様にかかる異形シリカ粒子分散液の製造方法において、更に下記条件2を満たすことが好ましい。
条件2:前記前駆体分散液中において、シリカ1モルあたりに換算したハロゲン元素のモル数(モル/モル比)が0.5%以下であり、かつシリカ1モルあたりに換算したアルカリ土類金属のモル数(モル/モル比)が1000ppm以下であること。
【0021】
本発明の一態様にかかる異形シリカ粒子分散液の製造方法において、更に下記条件3を満たすことが好ましい。
条件3:下記数式(F0-2)で示すシリカ含有量比が、10以上100以下の範囲にあること。
シリカ含有量比={(第二酸性珪酸液中のシリカ含有量[kg])+(第三酸性珪酸液中のシリカ含有量[kg])}/(前駆体分散液中のシリカ含有量[kg])・・・(F0-2)
【0022】
本発明の一態様にかかる異形シリカ粒子分散液の製造方法において、更に下記条件4を満たすことが好ましい。
条件4:前記異形シリカ粒子分散液におけるSiO2/A2Oモル比が、60以上140以下の範囲にあること。
(ここで、SiO2は異形シリカ粒子分散液中のシリカのモル数を表し、A2Oは異形シリカ粒子分散液中のNa2OおよびK2Oの合計モル数を表す。)
【0023】
本発明の一態様にかかる異形シリカ粒子分散液の製造方法において、前記工程1の前記アルカリ水溶液が、珪酸カリウム水溶液であることが好ましい。
【0024】
本発明の一態様にかかる異形シリカ粒子分散液の製造方法において、前記工程1の前記アルカリ性化合物が、水酸化カリウムであることが好ましい。
【0025】
本発明の一態様にかかる異形シリカ粒子分散液の製造方法において、得られる異形シリカ粒子が、比表面積換算粒子径(D1)10nm以上200nm以下の範囲であり、動的光散乱法で測定された平均粒子径(D2)が20nm以上300nm以下の範囲であり、かつ(D2)/(D1)の値が1.2以上20以下の範囲にあることが好ましい。
【0026】
本発明の一態様によれば、比表面積換算粒子径(D1)10nm以上200nm以下の範囲であり、動的光散乱法で測定された平均粒子径(D2)が20nm以上300nm以下の範囲であり、かつ(D2)/(D1)の値が1.2以上20以下の範囲にあることを特徴とする異形シリカ粒子を含む異形シリカ粒子分散液が提供される。
【0027】
本発明の一態様にかかる異形シリカ粒子分散液において、カリウム化合物を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、優れた研磨特性を有する比較的粒子径の大きい異形シリカ粒子を含む異形シリカ粒子分散液の製造方法を提供することができ、さらに珪酸ナトリウム等の原料に由来するアルカリ土類金属やハロゲン以外にこれらの元素を使用せずに製造する方法を提供することができる。また、本発明によれば、優れた研磨特性を有する比較的粒子径の大きい異形シリカ粒子分散液を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[異形シリカ粒子分散液の製造方法]
以下、本発明に係る異形シリカ粒子分散液の製造方法について説明する。
本発明に係る異形シリカ粒子分散液の製造方法は、下記の工程1~工程3を含み、かつ、下記条件1を満たすことを特徴としている。
【0030】
<工程1>
工程1においては、アルカリ水溶液に第一酸性珪酸液を、以下説明する条件を満たすように添加し、混合して、以下説明する条件を満たす前駆体分散液を得る。
この前駆体分散液の調製にあたっては、例えば、次のように製造することが好ましい。
すなわち、超純水にアルカリ水溶液を添加して均一になるまで撹拌した後、第一酸性珪酸液を添加し、十分に混合する。このアルカリ溶液と第一酸性珪酸液の混合物を50℃以上100℃未満の範囲に昇温し、その温度範囲で15分間以上2時間以下の時間、保持し、前駆体分散液を製造する。第一酸性珪酸液の添加にあたっては、第一酸性珪酸液を連続的に添加することが過度の凝集を防ぐうえで好ましい。
【0031】
・アルカリ水溶液
アルカリ水溶液は、少なくともNaまたはKを有するアルカリ性化合物を含む。少なくともNaまたはKを有するアルカリ性化合物としては、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、水酸化カリウムおよび水酸化ナトリウム等が挙げられる。珪酸アルカリ化合物としては、1号水ガラス、2号水ガラス、3号水ガラス等の名称で市販されている珪酸ナトリウムまたは珪酸カリウム等が好ましい。また、テトラエチルオルソシリケート(TEOS)、テトラメチルオルソシリケート(TMOS)等の加水分解性有機化合物を過剰のNaOHまたはKOH等を用いて加水分解して得られる珪酸アルカリ水溶液等も好適である。
また、アルカリ水溶液に任意に含まれるアルカリ性化合物としては、珪酸リチウムおよび第4級アンモニウムシリケート、アンモニア、アミン類およびこれらの塩等があげられる。
アルカリ水溶液としては珪酸カリウム水溶液または水酸化カリウム水溶液が好ましい。一般に、電子材用途では、イオン半径が小さいナトリウムイオンは基板等に拡散し易く、不良の原因となりうる。そのため、比較的イオン半径の大きいカリウムイオンが望ましいからである。
アルカリ水溶液のアルカリ性化合物成分の濃度は、特に制限されない。アルカリ性化合物成分の濃度としては、1質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。
アルカリ水溶液は、ハロゲン化物イオン(塩素イオン等)およびアルカリ土類金属(カルシウムおよびマグネシウム等)を含まないことが好ましい。アルカリ水溶液に含まれるハロゲンイオンは1000ppm以下であり、アルカリ土類金属(マグネシウム等)は100ppm以下であることが好ましい。
【0032】
・酸性珪酸液
酸性珪酸液としては、珪酸アルカリ(珪酸アルカリ金属および珪酸アンモニウム等)の水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリし、得られる酸性珪酸液を使用することが好ましい。酸性珪酸液のSiO2濃度は、概ね0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、さらには1質量%以上7質量%以下の範囲がより好ましい。pHが概ね1以上5以下のものが好適に使用される。
【0033】
工程1は、所望の異形シード粒子の前駆体分散液を調製する工程である。工程1においては、珪酸アルカリ水溶液を超純水に加え、均一になるまで攪拌した後、第一酸性珪酸液を連続的または断続的に添加し、混合する。混合後は、50℃以上100℃未満に昇温し、15分間以上2時間以下に保持して、加熱熟成することにより、前駆体粒子分散液を得ることができる。混合する際の温度が前記範囲にあれば、工程2、工程3および必要に応じて工程4の後、研磨性能に優れた本発明の異形シリカ粒子分散液を得ることができる。
【0034】
得られる前駆体分散液のSiO2濃度は、異形シード粒子の異形度を制御するパラメーターであり、SiO2として3質量%以上20質量%以下であり、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましい。前駆体分散液のSiO2濃度が3質量%未満の場合は、高い異形度の異形シード粒子が得られにくい傾向にある。前駆体分散液のSiO2濃度が20質量%超の場合は、凝集や沈殿が生じ易く、仮に凝集や沈殿が生じない場合でも、反応槽内部にシリカが大量に沈着し、所望サイズの異形シード粒子を得ることができない。前駆体分散液のSiO2濃度が前記範囲にあれば、工程2、工程3および必要に応じて工程4の後、研磨性能に優れた本発明の異形シリカ粒子およびその分散液を得ることができる。
【0035】
得られる前駆体分散液は、下記数式(F1-1)で示す条件を満たす。
2≦SiO2/A2O≦15・・・(F1-1)
ここで、SiO2は、前駆体分散液中のシリカのモル数を表し、A2Oは、前駆体分散液中のNa2OおよびK2Oの合計のモル数を表す。
前駆体分散液におけるSiO2/A2O(モル比)は、2以上5以下であることが好ましい。SiO2/A2O(モル比)がこの範囲にある場合、工程2で凝集や沈殿が生じない分散したシード粒子生成に好適である。
A2OにおけるK2OおよびNa2Oは、各々、前駆体分散液中に存在するKおよびNaの量を、酸化物に換算したことを意味する。
SiO2/A2O(モル比)が2未満の前駆体分散液は、前駆体分散液中のアルカリ量が過剰であるため、工程2において、シード粒子分散液を生成させるには、分散液中でのシリカの溶解度が過大となり、適さない。他方、SiO2/A2O(モル比)が15を超える前駆体分散液を工程2に適用すると、シード粒子が過剰に生成するため、却って所望する粒子成長が生じ難くなる傾向がある。
【0036】
前駆体分散液のpHは、9以上12.5以下、さらには10以上12以下の範囲にあることが好ましい。
前駆体分散液のpHが9未満の場合は、pHが低すぎるため、工程2において異形シード粒子が生成しないことがある。あるいはシード粒子が生成したとしても、安定性が保たれず凝集したり、工程2で添加する酸性珪酸液が溶解、沈着せずに、凝集やゲル化が生じる場合がある。
他方、前駆体分散液のpHが12.5を超えると、分散液中でのシリカの溶解度が著しく高まり、更にイオン強度も著しく高くなる。このため、工程2において生成するシード粒子が凝集し、凝集により沈殿が生じる場合がある。
【0037】
<工程2>
本発明の異形シリカ粒子分散液の製造方法は、異形シリカ粒子分散液を、酸性珪酸液の添加速度が異なる2段階(工程2および工程3)に分けて調製することを特徴とする。
工程2は、工程1で調製した前駆体を所望のサイズおよび異形度を備える異形シード粒子を調製する工程である。工程2においては、工程1で得られた前駆体分散液に、第二酸性珪酸液を、以下説明する条件を満たすように添加し、更に加熱熟成することによりシード粒子分散液を得る。
ここで、前駆体分散液は、SiO2濃度が3質量%以上20質量%以下であり、SiO2/A2O(モル比)が2以上15以下(SiO2は、前駆体分散液中のシリカのモル数を表し、A2Oは、前駆体分散液中のK2OおよびNa2Oの合計のモル数を表す。)である。
【0038】
第二酸性珪酸液は、工程1で用いた第一酸性珪酸液と同様に、珪酸アルカリ水溶液を陽イオン交換樹脂で脱アルカリして得られる酸性珪酸液を使用することが好ましい。酸性珪酸液としてはSiO2濃度が概ね0.1質量%以上10質量%以下が好ましく、1質量%以上7質量%以下の範囲がより好ましい。酸性珪酸液のpHは、概ね1以上5以下が好ましい。
【0039】
工程2においては、前駆体分散液に酸性珪酸液を連続的または断続的に、下記数式(F2-1)で示す第二添加速度比が、0.1[kg/hr・kg]以上0.6以下[kg/hr・kg]の範囲となるように添加し、混合する。そして、温度50℃以上100℃未満で、加熱熟成することにより、シード粒子分散液を調製する。
第二添加速度比[kg/hr・kg]=(第二酸性珪酸液中のシリカ含有量[kg])/(第二酸性珪酸液の添加時間[hr])/(前駆体分散液中のシリカ含有量[kg])・・・(F2-1)
【0040】
第二添加速度比は、前駆体分散液中のシリカ含有量に対する第二酸性珪酸液中のシリカの添加速度を意味し、異形シード粒子のサイズおよび異形度を制御するパラメーターである。第二添加速度比が0.1以上0.6以下の範囲にある場合、生成する核粒子が適度に凝集あるいは会合し平均粒子径の大きな異形シード粒子を得ることができる。さらに核粒子が大きくなるため、シード粒子の比表面積換算径が大きくなるため、好ましい。第二添加速度比が0.1未満の場合は、生成する核サイズはより大きくなるものの、核粒子の凝集あるいは会合が進み過ぎ、粗大な凝集塊が生じ、沈殿物が発生する傾向にある。また、第二添加速度比が0.6を超える場合は、生成した核粒子の凝集あるいは会合が進みにくく、異形シード粒子が得られ難い。仮に異形シード粒子が得られたとしても異形度の低い粒子となる。第二添加速度比は、0.1以上0.5以下であることが好ましい。
【0041】
前記のとおり、前駆体分散液に、第二酸性珪酸液を添加した後、更に温度50℃以上100℃未満の範囲で加熱熟成する。この温度範囲で熟成することにより、反応液中に残存する未反応な酸性珪酸液等を溶解させ、粒子表面に沈着させ、反応を完結させることができる。その結果、適切なサイズに成長し、分散した異形シード粒子を得ることができる。
前記加熱熟成の温度は50℃以上99℃以下がより好ましく、60℃以上98℃以下の範囲にあることがさらに好ましい。
かかる温度が50℃未満の場合は、反応液中に残存する未反応な酸性珪酸液が十分に溶解せず、反応液中に残存し、後工程において粒子の凝集を生じる場合がある。
加熱熟成時の温度が100℃以上の場合、反応溶液の沸点であるため、溶媒が蒸発しやすく濃度が上昇し反応の制御が難しく、仮に反応させることができたとしても、核粒子の凝集が進み過ぎ、沈殿が生じやすい。
前記加熱熟成は、保持温度および酸性珪酸液のSiO2濃度等によっても異なるが、概ね24時間以内であることが好ましい。
【0042】
<工程3>
工程3は、工程2で得た異形シード粒子を所望のサイズに粒子成長させる工程である。工程3においては、工程2で得られたシード粒子分散液に第三酸性珪酸液を、下記数式(F3-1)で示す第三添加速度比が、1.1[kg/hr・kg]以上10[kg/hr・kg]以下の範囲となるように添加し、更に温度50℃以上100℃未満で加熱熟成することにより異形シリカ粒子分散液を得る。
第三添加速度比[kg/hr・kg]=(第三酸性珪酸液中のシリカ含有量[kg])/(第三酸性珪酸液の添加時間[hr])/(前駆体分散液中のシリカ含有量[kg])・・・(F3-1)
ここで第三添加速度比は、前駆体分散液中のシリカ含有量に対する第三酸性珪酸液中のシリカの添加速度を意味する。第三添加速度比が1.1[kg/hr・kg]以上10[kg/hr・kg]以下の範囲にある場合、適切な反応速度とすることができる。このため、添加した酸性珪酸液の溶解と、溶解したシリカの異形シード粒子への沈着が生じ、工程2で得られた異形シード粒子を所望のサイズに粒子成長させることができるため、好ましい。第三添加速度比が1.1[kg/hr・kg]未満の場合は、酸性珪酸の添加速度が著しく遅くなる。このため、異形シード粒子の粒子成長させることができるものの、生産効率が悪く、経済性が悪い。第三添加速度比が10[kg/hr・kg]を超える場合は、酸性珪酸液の添加速度が著しく高いため、酸性珪酸液の自己核生成が生じ易い。第三添加速度比は、2以上6以下であることが好ましい。
【0043】
工程3においては、前記のとおり、シード粒子分散液を50℃以上100℃未満に昇温し、第三酸性珪酸液を添加し、その温度で15分間以上24時間以下に保持することにより加熱熟成する。この様な加熱熟成をすることにより、反応液中に残存した未反応の珪酸が粒子表面に沈着し、反応を完結させることができる。
前記加熱熟成温度は60℃以上98℃以下の範囲にあることが好ましい。
加熱熟成温度が50℃未満の場合は、添加した酸性珪酸液が十分に溶解しないため、珪酸による自己核生成が生じ易い。
前記保持時間は、保持温度または酸性珪酸液のSiO2濃度等によっても異なるが、概ね24時間以内であることが好ましい。
第三酸性珪酸液としては、前記した第一酸性珪酸液と同様な酸性珪酸液を使用する。
【0044】
<条件1>
本発明の異形シリカ粒子分散液の製造方法においては、更に下記条件1を満たすことが必要である。
条件1は、下記数式(F0-1)で示す条件を満たすことである。
1.9≦[第三添加速度比]/[第二添加速度比]≦40・・・(F0-1)
[第三添加速度比]/[第二添加速度比]の値は、効率よく異形でかつ粒子サイズの大きなシリカ粒子を得るための指標である。その値が1.9以上40以下の範囲にあるとハロゲンやアルカリ土類金属等の汚染源となる元素を使用せずに、サイズの大きな異形シリカ粒子を得ることができる。
[第三添加速度比]/[第二添加速度比]の値が、1.9未満の場合は、異形シリカ粒子が得られにくくなり、サイズの大きな粒子が得られにくい。
[第三添加速度比]/[第二添加速度比]の値が40を超える場合は、異形シリカ粒子は得やすいものの、珪酸が自己核生成し易い傾向にあり、所望の粒子径分布、サイズのシリカ粒子が得られにくくなる傾向にある。
[第三添加速度比]/[第二添加速度比]の値は、5以上20以下であることがより好ましい。
【0045】
<工程4>
本発明の異形シリカ粒子分散液の製造方法は、次の工程4を更に含んでいてもよい。
工程4は、工程3で得られた異形シリカ粒子分散液を濃縮する工程である。
工程4においては、前記工程3で得られた異形シリカ粒子分散液をそのまま研磨用途または研磨用スラリーの原料として用いることもできる。所望により、工程3で得られた異形シリカ粒子分散液を濃縮してから各種用途に適用してもよい。
具体的には、例えば、工程3で得られた異形シリカ粒子分散液を室温以上40℃以下程度に冷却する。その後、限外ろ過膜等を用いて濃縮し、エバポレータ等を用いてさらに濃縮し、残った異形シリカ粒子を回収すればよい。さらに粗大な粒子を除去するために、遠心分離を用いてもよい。
【0046】
本発明のシリカ粒子の製造方法では、工程3あるいは工程4を経て異形シリカ粒子分散液として得られ、そのまま研磨剤等に使用することができる。さらに必要に応じて常法により乾燥して用いることもでき、さらに必要に応じて常法により焼成して用いることもできる。
【0047】
<条件2>
本発明の異形シリカ粒子分散液の製造方法は、更に下記条件2を満たすことが好ましい。
条件2は、前駆体分散液中において、シリカ1モルあたりに換算したハロゲン元素のモル数(モル/モル比)が0.5%以下であり、かつシリカ単位モルあたりに換算したアルカリ土類金属のモル数(モル/モル比)が1000ppm以下であること。
ハロゲン元素やアルカリ土類金属は、天然の原料である珪砂に微量含まれており、さらにカレットや珪酸ナトリウムを製造する際の原料等に微量含まれている。そのため、珪酸ナトリウムを原料としてシリカゾルを製造した場合、原料に由来するこれら元素の含有量は、シリカ1モルあたりに換算したハロゲン元素として0.5%以下を含み、シリカ1モルあたりに換算したアルカリ土類金属として、1000ppm以下を含む。しかし、原料に由来するこれら元素の含有量は微量であるため、核粒子の生成や粒子成長あるいは粒子の形状への影響は小さい。そのため、従来の異形粒子の製造方法では、粒子合成時にこれら元素を添加し、例えば、シード成分のシリカ粒子とシリカ粒子とをアルカリ土類金属(例えば、MgO、CaO等)を介して結合させて異形化させる方法(シード粒子分散液にアルカリ土類金属を添加し、シード成分のシリカ粒子とシリカ粒子とをアルカリ土類金属を介して結合させる方法)、あるいは、シード粒子分散液にハロゲン化アルカリ(KCl等)を加えてイオン強度を調製することによってシード粒子を異形化させる方法が行われている。しかし、これらアルカリ土類金属やハロゲン化アルカリなどの異種物質は、異形シリカ粒子分散液を研磨用途に適用する場合、用途によっては基板への汚染等の悪影響を与えることがあるので、本来存在しないことが好ましい。
本発明の異形シリカ粒子分散液の製造方法は、粒子合成時にハロゲン元素やアルカリ土類金属などの異種物質を使用することなく、異形シリカ粒子分散液を製造する方法であり、具体的にはシード粒子に酸性珪酸液を加えて行う粒子成長を、酸性珪酸液の添加速度の異なる2段階にて行うことを特徴とする製造方法である。このため、従来行われていた異形化手法に必要な異種物質を必要としない。
【0048】
<条件3>
本発明の異形シリカ粒子分散液の製造方法は、更に下記条件3を満たすことが好ましい。
条件3は、下記数式(F0-2)で示すシリカ含有量比が10以上100以下の範囲にあることである。
シリカ含有量比={(第二酸性珪酸液中のシリカ含有量[kg])+(第三酸性珪酸液中のシリカ含有量[kg])}/(前駆体分散液中のシリカ含有量[kg])・・・(F0-2)
数式(F0-2)で示すシリカ含有量比は、シードとなる前駆体に対して、粒子成長させる珪酸の重量比であり、シード粒子を効率良く所望の粒子サイズに成長させる指標である。その値が10以上100以下の範囲にあると効率よく所望のサイズに粒子成長させることができる。
数式(F0-2)で示すシリカ含有量比が、10未満の場合は、生成したシード粒子を成長させる珪酸量が不足することになり、サイズの大きな異形シリカ粒子を得ることができない。
数式(F0-2)で示すシリカ含有量比が、100を超える場合は、核生成した異形シリカシードを成長させる珪酸の量が過剰となる。このため、粒子の形状が球形に近づき、所望の異形度の異形シリカ粒子を得ることができない。また過剰な珪酸により自己核生成が生じる場合もある。
数式(F0-2)で示すシリカ含有量比は、20以上80以下であることがより好ましい。
【0049】
<条件4>
本発明の異形シリカ粒子分散液の製造方法は、更に下記条件4を満たすことが好ましい。
条件4は、工程3終了時の異形シリカ粒子分散液におけるSiO2/A2Oモル比が、60以上140以下の範囲にあること。(ここで、SiO2は工程3終了時の異形シリカ粒子分散液中のシリカのモル数を表し、A2Oは工程3終了時の異形シリカ粒子分散液中のNa2OおよびK2Oの合計モル数を表す。)
ここで、A2OにおけるK2OおよびNa2Oは、各々、異形シリカ粒子分散液中に存在するKおよびNaの量を、酸化物に換算したことを意味する。
工程3終了時の異形シリカ粒子分散液におけるSiO2/A2Oモル比は、粒子成長時のpHの指標である。目標とするサイズによって変わるが、概ねこの範囲であれば、粒子成長に用いる珪酸が十分に溶解し、異形シード粒子表面に沈着させることができ、所望の粒子径に成長させることができる。
異形シリカ粒子分散液におけるSiO2/A2Oモル比が、60未満の場合は、反応中のpHが高いため、反応中に粒子の凝集が生じる場合がある。また仮に凝集せずに粒子成長が行われたとしても、反応終了後の分散液のイオン強度が高いため、後工程で濃縮する際に、凝集が生じやすい。凝集を防ぎ粒子の安定性を保つためにはイオン強度を下げる必要があり、イオン強度を下げる方法としてイオン交換や洗浄等の手段が適用可能だが、経済性が低下する。
異形シリカ粒子分散液におけるSiO2/A2Oモル比が、140を超える場合は、反応中のpHが低いため、粒子成長のために加えた珪酸が十分に溶解せずに、自己核生成する傾向にある。
異形シリカ粒子分散液におけるSiO2/A2Oモル比は、80以上120以下であることがより好ましい。
【0050】
[異形シリカ粒子]
本発明の異形シリカ粒子分散液の製造方法においては、得られる異形シリカ粒子が、比表面積換算粒子径(D1)が、10nm以上200nm以下の範囲であり、動的光散乱法で測定された平均粒子径(D2)が20nm以上300nm以下の範囲であり、(D2)/(D1)の値が1.2以上20以下の範囲にあることが好ましい。このような異形シリカ粒子であれば、優れた研磨特性を有する比較的粒子径の大きいものとなる。
【0051】
[異形シリカ粒子分散液]
本発明の製造方法で得られる異形シリカ粒子分散液は、比表面積換算粒子径(D1)が、10nm以上200nm以下の範囲であり、動的光散乱法で測定された平均粒子径(D2)が20nm以上300nm以下の範囲であり、異形度[(D2)/(D1)]の値が1.2以上20以下の範囲にある異形シリカ粒子が水に分散してなることが好ましい。
異形度[(D2)/(D1)]が1.2以上20以下の範囲にあると、研磨用砥粒として用いた場合、高い研磨速度を示し、かつディフェクトも少なく、表面粗さも低い研磨面を得ることができる。異形度[(D2)/(D1)]が1.2未満の場合、球状粒子に近くなり、そのような異形シリカ粒子分散液を研磨用途に適用した場合、研磨速度が低下する傾向がある。異形度[(D2)/(D1)]が20を超える場合、そのような異形シリカ粒子分散液を研磨用途に適用すると、被研磨基板にスクラッチ等のディフェクトが発生し易くなり、研磨基板の表面粗さも悪化する傾向がある。
動的光散乱法で測定された平均粒子径(D2)が、20nm以上300nm以下の範囲にあると高い研磨速度が得られるため、好ましい。平均粒子径(D2)が20nm未満の異形シリカ粒子分散液を研磨用途に適用した場合、実用上の研磨速度が充分ではない。また、平均粒子径(D2)が300nmを超える異形シリカ粒子分散液を研磨用途に適用した場合、研磨速度が低下し、さらに、被研磨基板にスクラッチが発生しやすくなる傾向がある。
【0052】
比表面積換算粒子径(D1)は、10nm以上200nm以下の範囲にあることが好ましい。
比表面積換算粒子径(D1)が10nm未満の場合は、サイズが小さいため粒子の数は増えるが、個々の粒子の研磨速度が低いため、研磨用途として用いた場合、研磨速度が著しく低くなる。比表面積換算粒子径(D1)が200nmを超えると、サイズが大き過ぎるため、粒子個数が著しく減少する。そのため研磨用途に適用した場合、研磨速度が低下する傾向にある。また、サイズが大き過ぎ、分散液中でシリカ粒子の沈殿が生じ、使用する際に再分散の手間がかかったり、充分に分散できず研磨性能が安定しない可能性がある。
比表面積換算粒子径(D1)は、20以上150以下であることがより好ましい。
【0053】
異形度[(D2)/(D1)]の値は、1.5以上15以下であることがより好ましく、1.5以上5以下であることが特に好ましい。
動的光散乱法で測定された平均粒子径(D2)の値は、30nm以上250nm以下であることがより好ましい。
【0054】
異形シリカ粒子分散液のSiO2濃度は、10質量%以上50質量%以下であることが好ましく、20質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。
異形シリカ粒子分散液の分散溶媒としては、水または水と親水性の有機溶媒との混合溶媒を使用することができる。
【0055】
本発明の異形シリカ粒子分散液は、カリウム化合物を含むことが好ましい。カリウム化合物を含むことによって、分散液をアルカリ性に保つことができ、異形シリカ粒子の表面シラノール基の乖離が進み、異形シリカ粒子が凝集することなく安定に保つことができる。
カリウム化合物としては、水酸化カリウムや水酸化カリウムの塩、珪酸カリウム等を例示することができる。カリウム化合物は、1種または2種以上を併用してもよい。
異形シリカ粒子分散液におけるカリウム化合物の濃度は、SiO2/K2Oモル比として、50以上400以下が好ましく、60以上300以下がより好ましい。
【0056】
本発明では、異形シリカ粒子分散液に含まれる粒子径が、0.51μm以上の粒子を粗大粒子という。粗大粒子の割合は、SiO2濃度1質量%のシリカ粒子分散液中の粗大粒子の個数とした場合、500千個/cc以下が好ましく、120千個/cc以下がより好ましい。
粗大粒子の個数が500千個/ccを超えると、研磨時に研磨傷が発生し易い傾向にある。
【0057】
[1]SiO2の定量方法
シリカ微粒子分散液中のSiO2含有量は、シリカ微粒子分散液に1000℃で灼熱減量を行い、固形分の質量を求めた後、後述するNa、Kの含有率を測定する場合と同様に、原子吸光分光分析装置(日立製作所社製、Z-2310)を用いて、検量線法によりNa、Kの質量%を算出し、Na、KをNa2O、K2Oに換算し、Na2O、K2O以外の固形分の成分はSiO2であるとして、SiO2の含有量を求めた。
【0058】
[2]NaおよびKの定量方法
1.測定試料の調製
(1)約1gの異形シリカ粒子分散液を白金皿に精秤する。
(2)上記(1)に、リン酸3mL、硝酸5mLおよび弗化水素酸10mLを加えて、サンドバス上で加熱する。
(3)乾固したら、少量の水と硝酸50mLを加え溶解させて、100mLのメスフラスコにおさめ、水を加えて、100mLにし、測定試料する。
2.NaおよびKの含有割合の測定方法
上記1.で得られた測定試料を、原子吸光分光分析装置(日立製作所社製、Z-2310)で測定し、検量線法により算出した。
【0059】
[3]アルカリ土類金属の定量方法
(1)上記[2]NaおよびKの定量方法で調製した測定試料を20mLのメスフラスコに10mL採取する操作を5回繰り返し、分液10mLを5個得る。
(2)これを用いて、ICPプラズマ発光分析装置(SII製、品番SPS5520)にて、標準添加法で測定を行う。
(3)同様の方法でブランクを測定し、ブランク分を差し引いて調整し、各元素における測定値とする。
【0060】
[4]ハロゲンの定量方法
1.試料の調製
(1)異形シリカ粒子分散液からなる試料5gを水で希釈して全量を100mlとする。
(2)遠心分離機(日立製HIMAC CT06E)にて4000rpmで20分遠心分離して、沈降成分を除去して得た液を測定試料とする。
2.ハロゲンの含有割合の測定方法
上記1.で得られた水溶液を、イオンクロマトグラフを用いて測定し、検量線法により算出した。
システム:DIONEX社製ICS-1100
【0061】
[5]動的光散乱法による平均粒子径D2の測定方法
異形シリカ粒子分散液を0.58%アンモニア水にて希釈して、シリカ濃度1質量%に調整し、レーザーパーティクルアナライザーを用いて測定する。
[レーザーパーティクルアナライザー]
大塚電子株式会社製、型番「ゼータ電位・粒径測定システム ELSZ-1000S」(測定原理:動的光散乱法、光源波長:665.70nm、セル:10mm角のプラスチックセル)
【0062】
[6]比表面積換算粒子径D1の測定方法
異形シリカ粒子分散液50mLをHNO3でpH3.5に調整し、1-プロパノール40mLを加え、110℃で16時間乾燥した試料について、乳鉢で粉砕後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成し、測定用試料とする。そして、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を用いて窒素吸着法(BET法)を用いて、窒素の吸着量から、BET1点法により比表面積を算出する。
具体的には、試料0.5gを測定セルに取り、窒素30v%とヘリウム70v%との混合ガス気流中、300℃で20分間脱ガス処理を行い、その上で試料を上記混合ガス気流中で液体窒素温度に保ち、窒素を試料に平衡吸着させる。次に、上記混合ガスを流しながら試料温度を徐々に室温まで上昇させ、その間に脱離した窒素の量を検出し、予め作成した検量線により、異形シリカ粒子の比表面積を算出する。また、得られた比表面積(SA)を下記式に代入して比表面積換算粒子径D1を求める。
比表面積換算粒子径D1(nm)=6000/(ρ×SA)
(ここで、ρはシリカ粒子の密度2.2[g/cm3]を表す。)
【0063】
[7]粗大粒子の測定方法
1.測定試料の調製
シリカ粒子分散液を水で1質量%に希釈し、測定試料とした。
2.
測定試料5mLを測定装置(パーティクルサイジングシステム社(Particle sizing system Inc.)製アキュサイザー780APS(Accusizer 780APS))に注入して測定する。0.51μm以上の粗大粒子数を測定試料の粗大粒子数とする。測定条件は以下の通り。
<System Setup>
・Stir Speed Control / Low Speed Factor 1600 / High Speed Factor 2500
<System Menu>
・Data Collection Time 120 sec.
・Syringe Volume 2.5mL
・Sample Line Number :Sum Mode
・Initial 2nd-Stage Dilution Factor 30
・Vessel Fast Flush Time 60 sec.
・System Flush Time / Before Measurement 100 sec. / After Measurement 100 sec.
・Sample Equilibration Time 25 sec./ Sample Flow Time 10 sec.
【0064】
[実施例1]
・珪酸カリウム溶液の製造
超純水3.699kgに水酸化カリウム水溶液(KOH濃度48.7質量%)2.766kgを添加し、均一になるまで攪拌した。この水酸化カリウム水溶液にシリカ粉末(含水率20質量%)2.82kgを添加して混合した。この混合液を95℃に昇温し、4時間保持し、珪酸カリウム溶液を得た。
得られた珪酸カリウム溶液において、SiO2濃度は24.5質量%であり、K2O濃度は12.4質量%であり、SiO2/K2O(モル比)は3.10であり、Clイオン濃度は8ppmであった(以下、この珪酸カリウム溶液ないしそれと同等の珪酸カリウム溶液を「珪酸カリウム溶液(1)」と記す。)。
【0065】
・酸性珪酸液の製造
SiO2濃度5質量%の珪酸カリウム水溶液15kgを、強酸性陽イオン交換樹脂(SK1BH(三菱ケミカル社製))6Lに空間速度2.75(1/hr)で通液して酸性珪酸液15kgを得た。得られた酸性珪酸液において、SiO2濃度は4.6質量%であった(以下、この酸性珪酸液ないしそれと同等の酸性珪酸液を「酸性珪酸液」と記す。)。
【0066】
<前駆体分散液の調製>
超純水2.344kgに珪酸カリウム溶液(1)0.88kgを添加して均一になるまで撹拌し、アルカリ水溶液を得た。このアルカリ水溶液に、酸性珪酸液0.15kgを添加して混合した。
この混合液を98.5℃に昇温し、1.3時間保持し、前駆体分散液を得た。
前駆体分散液は、SiO2濃度6.6質量%であり、SiO2/A2O(モル比)は3.2であった。
【0067】
<シード粒子分散液の調製>
この前駆体粒子分散液全量に酸性珪酸液6.97kgを、98.5℃で、4.9時間かけて添加した(第二添加速度比=0.29)。添加終了後も98.5℃で0.5時間放置し、シード粒子分散液を得た。
このシード粒子分散液のSiO2濃度は5.2質量%、およびK2O濃度は1.1質量%であった。また、動的光散乱粒子径測定装置で測定したシード粒子の平均粒子径は105nmであった。
【0068】
<異形シリカ粒子分散液の製造>
超純水0.113kgに珪酸カリウム溶液(1)0.006kgを添加した。これにシード粒子分散液10.34kgを添加して混合した。ついで、これを97.5℃に昇温し、0.5時間保持した。
その後、97.5℃で、酸性珪酸液142.94kgを12時間かけて添加した(第三添加速度比=2.5)。添加終了後も97.5℃で1時間放置し、続いて室温まで冷却し、異形シリカ粒子分散液を得た。
得られた異形シリカ粒子分散液において、SiO2濃度は4.6質量%であり、K2O濃度は0.07質量%であった。動的光散乱粒子径測定装置で測定した異形シリカ粒子の平均粒子径D2は131nmであった。また、反応終了後の反応容器を確認したところ、容器底部には沈殿などは確認されなかった。
【0069】
続いて限外モジュールを用いて濃縮してSiO2濃度11.7質量%のシリカ粒子分散液を調製した。
得られたシリカ粒子の比表面積換算粒子径D1は41nmであった。また、得られたシリカ粒子を電子顕微鏡で粒子の形状を観察したところ、粒子の形状は、複数個の粒子が結合したような異形粒子を含む粒子であった。
【0070】
[実施例2]
・珪酸カリウム溶液
この実施例では、実施例1と同様に調製した珪酸カリウム溶液を使用した。
・酸性珪酸液
この実施例では、実施例1と同様に調整した酸性珪酸液使用した。
【0071】
<前駆体分散液の調製>
超純水1.989kgに珪酸カリウム溶液(1)0.88kgを添加して均一になるまで撹拌し、アルカリ水溶液を得た。このアルカリ水溶液に酸性珪酸液0.137kgを添加して混合した。
この混合液を、87.0℃に昇温し、1.3時間保持し、前駆体分散液を得た。
前駆体分散液において、SiO2濃度は7.4質量%であり、SiO2/A2O(モル比)は3.2であった。
【0072】
<シード粒子分散液の製造>
この前駆体分散液に、酸性珪酸液6.993kgを、87.0℃で4.9時間かけて添加した(第二添加速度比=0.30)。添加終了後も87.0℃で0.5時間放置し、シード粒子分散液を得た。
このシード粒子分散液のSiO2濃度は5.4質量%、およびK2O濃度は1.1質量%であった。動的光散乱粒子径測定装置で測定したシード粒子の平均粒子径は64nmであった。
【0073】
<異形シリカ粒子分散液の製造>
超純水0.461kgに珪酸カリウム溶液(1)0.003kgを添加した。これにシード粒子分散液10.00kgを添加して混合した。ついで、これを87.0℃に昇温し、0.5時間保持した。
その後、87.0℃で、酸性珪酸液142.29kgを12時間かけて添加した(第三添加速度比=2.5)。添加終了後も87.0℃で1時間放置し、続いて室温まで冷却し、異形シリカ粒子分散液を得た。
得られた異形シリカ粒子分散液において、SiO2濃度は4.6質量%であり、K2O濃度は0.07質量%であった。動的光散乱粒子径測定装置で測定したシリカ粒子の平均粒子径D2は91nmであった。また、反応終了後の反応容器を確認したところ、容器底部には沈殿などは確認されなかった。
【0074】
続いて限外モジュールを用いて濃縮してSiO2濃度11.8質量%の異形シリカ粒子分散液を調製した。
得られた異形シリカ粒子の比表面積換算粒子径D1は41nmであった。また、得られたシリカ粒子を電子顕微鏡で粒子の形状を観察したところ、粒子の形状は、複数個の粒子が結合したような異形粒子を含む粒子であった。
【0075】
[実施例3]
・珪酸カリウム溶液
この実施例では、実施例1と同様に調製した珪酸カリウム溶液を使用した。
・酸性珪酸液
この実施例では、実施例1と同様に調整した酸性珪酸液使用した。
【0076】
<前駆体分散液の製造>
超純水1.609kgに珪酸カリウム溶液(1)0.88kgを添加して均一になるまで撹拌し、アルカリ水溶液を得た。このアルカリ水溶液に酸性珪酸液0.137kgを添加して混合した。
この混合液を87.0℃に昇温し、1.3時間保持し前駆体分散液を得た。
前駆体分散液において、SiO2濃度は8.5質量であり、SiO2/A2O(モル比)は3.2であった。
【0077】
<シード粒子分散液の製造>
この前駆体分散液に、酸性珪酸液7.041kgを87.0℃で4.9時間かけて添加した(第二添加速度比=0.30)。添加終了後も87.0℃で0.5時間放置し、シード粒子分散液を得た。
このシード粒子分散液において、SiO2濃度は5.7質量%であり、K2O濃度は1.1質量%であった。動的光散乱粒子径測定装置で測定したシード粒子の平均粒子径は73nmであった。
【0078】
<異形シリカ粒子分散液の製造>
超純水0.870kgに珪酸カリウム溶液(1)0.008kgを添加した。これにシード粒子分散液9.67kgを添加して混合した。ついで、これを87.0℃に昇温し、0.5時間保持した。
その後、87.0℃で、酸性珪酸液143.07kgを12時間かけて添加した(第三添加速度比=2.5)。添加終了後も87.0℃で1時間放置した。続いて室温まで冷却し、異形シリカ粒子分散液を得た。
得られたシリカ粒子分散液において、SiO2濃度は4.6質量%であり、K2O濃度は0.07質量%であった。動的光散乱粒子径測定装置で測定した異形シリカ粒子の平均粒子径D2は98nmであった。また、反応終了後の反応容器を確認したところ、容器底部には沈殿などは確認されなかった。
【0079】
続いて限外モジュールを用いて濃縮してSiO2濃度11.6質量%の異形シリカ粒子分散液を調製した。
得られた異形シリカ粒子の比表面積換算粒子径D1は41nmであった。また、得られたシリカ粒子を電子顕微鏡で粒子の形状を観察したところ、粒子の形状は、複数個の粒子が結合したような異形粒子を含む粒子であった。
【0080】
[実施例4]
・珪酸カリウム溶液
この実施例では、実施例1と同様に調製した珪酸カリウム溶液を使用した。
・酸性珪酸液
この実施例では、実施例1と同様に調整した酸性珪酸液使用した。
【0081】
実施例3と同様にしてシード粒子分散液を得た(SiO2濃度は5.7質量%、およびK2O濃度は1.1質量%であり、シード粒子の平均粒子径は73nmであった。)。
【0082】
<異形シリカ粒子分散液の製造>
超純水0.335kgにシード粒子分散液9.67kgを添加して混合した。ついで、これを97.5℃に昇温し、0.5時間保持した。
その後、97.5℃で、酸性珪酸液147.57kgを12時間かけて添加した(第三添加速度比=2.4)。添加終了後も97.5℃で1時間放置し、続いて室温まで冷却し、異形シリカ粒子分散液を得た。
得られた異形シリカ粒子分散液において、SiO2濃度は4.7質量%であり、K2O濃度は0.07質量%であった。動的光散乱粒子径測定装置で測定した異形シリカ粒子の平均粒子径D2は104nmであった。また、反応終了後の反応容器を確認したところ、容器底部には沈殿などは確認されなかった。
【0083】
続いて限外モジュールを用いて濃縮してSiO2濃度11.9質量%の異形シリカ粒子分散液を調製した。
得られた異形シリカ粒子の比表面積換算粒子径D1は47nmであった。また、得られたシリカ粒子を電子顕微鏡で粒子の形状を観察したところ、粒子の形状は、複数個の粒子が結合したような異形粒子を含む粒子であった。
【0084】
[実施例5]
・珪酸カリウム溶液の製造
超純水4.757kgに水酸化カリウム水溶液(KOH濃度48.7質量%)3.556kgを添加して均一になるまで攪拌した。この水酸化カリウム水溶液にシリカ粉末(含水量含水率20.0%)3.62kgを添加して混合した。
この混合液を95℃に昇温し、4時間保持し、珪酸カリウム溶液を得た。
得られた珪酸カリウム溶液において、SiO2濃度は24.5質量%であり、K2O濃度は12.3質量%であり、SiO2/K2O(モル比)は3.12であり、Clイオン濃度4ppmであった(以下、この珪酸カリウム溶液ないしそれと同等の珪酸カリウム溶液を「珪酸カリウム溶液(2)」と記す。)。
・酸性珪酸液
この実施例では、実施例1と同様に調整した酸性珪酸液使用した。
【0085】
<前駆体分散液の製造>
超純水0.672kgに珪酸カリウム溶液(2)0.99kgを添加して均一になるまで撹拌し、アルカリ水溶液を得た。このアルカリ水溶液に、酸性珪酸液0.132kgを添加して混合した。
この混合液を80.0℃に昇温し、1.3時間保持し、前駆体分散液を得た。
前駆体分散液において、SiO2濃度は13.8質量%であり、SiO2/A2O(モル比)は3.2であった。
【0086】
<シード粒子分散液の製造>
この前駆体分散液に、酸性珪酸液7.840kgを80.0℃で4.9時間かけて添加した(第二添加速度比=0.30)。添加終了後も80.0℃で0.5時間放置した。シード粒子分散液を得た。
得られたシード粒子分散液において、SiO2濃度は6.3質量%であり、K2O濃度は1.3質量%であった。動的光散乱粒子径測定装置で測定したシード粒子の平均粒子径は71nmであった。
【0087】
<異形シリカ粒子分散液の製造>
超純水1.970kgに珪酸カリウム溶液(2)0.001kgを添加した。これにシード粒子分散液9.63kgを添加して混合した。ついで、これを97.5℃に昇温し、0.5時間保持した。
その後、酸性珪酸液160.06kgを12時間かけて添加した(第三添加速度比=2.5)。添加終了後も97.5℃で1時間放置した。続いて室温まで冷却し、異形シリカ粒子分散液を得た。
得られたシリカ粒子分散液において、SiO2濃度は4.6質量%であり、K2O濃度は0.07質量%であった。動的光散乱粒子径測定装置で測定した異形シリカ粒子の平均粒子径D2は102nmであった。また、反応終了後の反応容器を確認したところ、容器底部には沈殿などは確認されなかった。
【0088】
続いて限外モジュールを用いて濃縮してSiO2濃度11.7質量%の異形シリカ粒子分散液を調製した。
得られた異形シリカ粒子の比表面積換算粒子径D1は45nmであった。また、得られたシリカ粒子を電子顕微鏡で粒子の形状を観察したところ、粒子の形状は、複数個の粒子が結合したような異形粒子を含む粒子であった。
【0089】
[比較例1]
珪酸ナトリウム(SiO2濃度24.28質量%、Na2O濃度8.0質量%)67.2gに純水839.5gを添加して、シリカ濃度1.8質量%の珪酸ナトリウム水溶液を906.7g調製した。この珪酸ナトリウム水溶液に実施例1と同様にして得られた酸性珪酸液264.1g(SiO2濃度4.7質量%)を添加し、攪拌した後に、79℃に昇温し、79℃にて、30分間保持し前駆体分散液とした。
次に、酸性珪酸液6,122.2gを9時間かけて連続的に添加した。続いて、酸性珪酸液2,040.6gを2時間かけて連続的に添加した。添加終了後、79℃にて1時間保った後、室温まで冷却した。動的光散乱法粒子径D2は15nmであった。また、反応終了後の反応容器を確認したところ、容器底部には沈殿などは確認されなかった。
得られたシリカゾルを限外ろ過膜(商品名:SIP-1013、旭化成株式会社製)を用いてシリカ濃度が12質量%になるまで濃縮した。ついでロータリーエバポレーターで20質量%まで濃縮した。
得られたシリカゾルにおける比表面積換算粒子径D1は11nmであった。電子顕微鏡で粒子の形状を観察したところ、粒子の形状は、ほぼ球状であり異形粒子を得ることができなかった。
【0090】
[比較例2]
珪酸カリウム(SiO2濃度20.5質量%、K2O濃度9.37質量%)87.84gに純水1,126.6gを添加し、水酸化カリウム水溶液(KOH濃度3質量%)31.42gを添加し、攪拌した後に83℃に昇温し、83℃にて30分保持して前駆体分散液とした。
次に、酸性珪酸液1,493.8gを3時間かけて連続的に添加した。続いて、酸性珪酸液8,962.8gを12時間かけて連続的に添加した。添加終了後、83℃にて1時間保った後、室温まで冷却した。動的光散乱粒子径D2は35nmであった。また、反応終了後の反応容器を確認したところ、容器底部には沈殿などは確認されなかった。
得られたシリカゾルを限外ろ過膜(商品名:SIP-1013、旭化成株式会社製)を用いてシリカ濃度が12質量%になるまで濃縮した。ついでロータリーエバポレーターで20質量%まで濃縮した。
得られたシリカゾルにおける比表面積換算粒子径D1は25nmであった。電子顕微鏡で粒子の形状を観察したところ、粒子の形状はほぼ球状であり異形粒子を得ることができなかった。
【0091】
[比較例3]
珪酸ナトリウム(SiO2濃度24.3質量%、Na2O濃度8質量%)3,294gに純水9,483gを添加し、実施例1と同様にして得られた酸性珪酸液(SiO2濃度4.6質量%)347gを添加し、塩化カリウム水溶液(KCl濃度20質量%)254gを添加し、攪拌した後に、97℃に昇温し、97℃にて、30分保持し、前駆体分散液とした。
次に酸性珪酸液281.8kgを15時間かけて連続的に添加した。添加終了後、97℃にて1時間保った後、室温まで冷却した。動的光散乱粒子径D2は155nmであった。また反応容器を確認すると、反応容器の一部に粗大なシリカの凝集体による沈殿が確認された。
得られたシリカゾルを限外ろ過膜(商品名:SIP-1013、旭化成株式会社製)を用いてシリカ濃度が12質量%になるまで濃縮した。ついでロータリーエバポレーターで20質量%まで濃縮した。
得られたシリカゾルにおける比表面積換算粒子径D1は65nmであった。電子顕微鏡で粒子の形状を観察したところ、異形粒子であった。しかし、下記表2に示すように粗大粒子数が多く、一部に粗大な凝集物や沈殿が確認された。
【0092】
[比較例4]
酸性珪酸液3,804g(4.6質量%)に純水1,196gを添加し、さらにフッ化カリウム水溶液(KF濃度10質量%)を42.34g添加し、水酸化ナトリウム水溶液(NaOH濃度3.0質量%)を用いてpHを8.0に調整し、98℃で1h保持することで、前駆体分散液を得た。
次に、酸性珪酸液7,609gを2時間かけて添加し、添加中はNaOHでpH9~10を維持し、添加終了後、98℃で1時間熟成を行った。得られたシリカゾルにおける比表面積換算粒子径D1が9nmで、動的光散乱粒子径D2は54nmであった。また、反応終了後の反応容器を確認したところ、容器底部には沈殿などは確認されなかった。電子顕微鏡で粒子の形状を観察したところ、異形粒子であったが、一次径および二次径のサイズが小さな異形粒子しか得ることができなかった。
【0093】
[比較例5]
酸性珪酸液782.6gに純水を加えて、SiO2濃度3.6質量%に希釈し、攪拌しながら10質量%の硝酸カルシウム水溶液を5.8g添加し、引き続き、10質量%の水酸化ナトリウムを6.0g添加し、さらに純水188.2gを添加し、前駆体分散液を調製した。得られた前駆体分散液をオートクレーブに投入し、攪拌しながら120℃で6時間加熱した。加熱後は、室温まで冷却してシリカゾルを取り出した。また、反応終了後の反応容器を確認したところ、容器底部には沈殿などは確認されなかった。
得られたシリカゾルを限外ろ過膜を用いて12質量%になるまで濃縮した。得られたシリカゾルにおける比表面積換算粒子径D1が9nmで、動的光散乱粒子径D2は30nmであった。電子顕微鏡で粒子の形状を観察したところ、異形粒子であったが、一次径および二次径のサイズが小さな異形粒子しか得ることができなかった。
【0094】
表1には、異形シリカ粒子分散液の製造方法における各値を記載した。表2には、得られた異形シリカ粒子分散液に含まれる異形シリカ粒子の平均粒子径等を記載した。
【0095】
【0096】
【0097】
本発明の製造方法によれば、シリカ系成分以外の成分、例えば、アルカリ土類金属系原料(例えば、CaOおよびMgO等)あるいはハロゲン元素を含む原料(例えば、KClおよびKF等)を添加することなく、異形シリカ粒子を得ることができる。
このため、本発明の製造方法により得られた異形シリカ粒子分散液は、半導体デバイスのSiO2酸化膜あるいは珪素半導体ウェハー用途において、研磨対象の基板を汚染するおそれがない。
したがって、シリカ系成分以外の成分を含まず半導体関係の研磨用途に好適な異形シリカ粒子分散液を効率的に製造することができる。
また、本発明の製造方法によれば、所望の異形度を有したシリカ粒子が溶媒に分散してなる異形シリカ粒子分散液を得ることができる。このため、ガラスハードディスク、石英ガラス、水晶、アルミニウムハードディスク、半導体デバイスのSiO2酸化膜、珪素半導体ウェハーおよび化合物半導体ウェハー等に対して、優れた研磨特性を発揮するシリカ粒子を含む分散液を製造できる。