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特許7482710レーダカバー及びレーダカバーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】レーダカバー及びレーダカバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 7/03 20060101AFI20240507BHJP
   B60R 13/00 20060101ALI20240507BHJP
   B29C 45/14 20060101ALI20240507BHJP
   H01Q 1/42 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G01S7/03 246
B60R13/00
B29C45/14
H01Q1/42
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020128202
(22)【出願日】2020-07-29
(65)【公開番号】P2022025403
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2023-07-19
(73)【特許権者】
【識別番号】504136889
【氏名又は名称】株式会社ファルテック
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 祐一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 勇貴
(72)【発明者】
【氏名】大竹 新一
【審査官】梶田 真也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-007776(JP,A)
【文献】特開2018-159584(JP,A)
【文献】特許第4888732(JP,B2)
【文献】特開2000-159039(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00 - 7/42
G01S 13/00 - 13/95
B60R 13/00
B29C 45/14
H01Q 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の周囲状況を検知するレーダユニットを覆うレーダカバーであって、
背面に凹部が設けられた透明部材と、
前記凹部に収容される光輝性有色部材と、
前記光輝性有色部材と前記凹部の内壁面との間に設けられると共に封入ガスによって形成されたクッションガス層と、
前記透明部材と前記光輝性有色部材とを背面側から支持する支持部材と
を備えることを特徴とするレーダカバー。
【請求項2】
前記封入ガスは圧縮空気であることを特徴とする請求項1記載のレーダカバー。
【請求項3】
前記光輝性有色部材は、
樹脂からなる基部と、
前記基部の前記凹部の内壁面側の表面に設けられた電波透過性を有する金属光沢層と
を有することを特徴とする請求項1または2記載のレーダカバー。
【請求項4】
前記支持部材は、樹脂によって形成されると共に前記透明部材の背面と前記光輝性有色部材の背面とに溶着されていることを特徴とする請求項1~3いずれか一項に記載のレーダカバー。
【請求項5】
車両の周囲状況を検知するレーダユニットを覆うレーダカバーの製造方法であって、
背面に凹部が設けられた透明部材を形成する透明部材形成工程と、
前記凹部に光輝性有色部材を配置する光輝性有色部材配置工程と、
前記光輝性有色部材と前記凹部の内壁面との間に封入ガスを供給しながら、前記透明部材と前記光輝性有色部材とを背面側から支持する支持部材を形成する支持部材形成工程と
を有することを特徴とするレーダカバーの製造方法。
【請求項6】
前記支持部材形成工程にて、前記封入ガスとして圧縮空気を供給することを特徴とする請求項5記載のレーダカバーの製造方法。
【請求項7】
前記光輝性有色部材配置工程にて、
樹脂からなる基部と、前記基部の前記凹部の内壁面側の表面に設けられた電波透過性を有する金属光沢層とを有する前記光輝性有色部材を前記凹部に配置する
ことを特徴とする請求項5または6記載のレーダカバーの製造方法。
【請求項8】
前記支持部材形成工程にて、
前記封入ガスを供給しながら前記光輝性有色部材が前記凹部に配置された前記透明部材の背面側に前記支持部材を射出成形により形成する
ことを特徴とする請求項5~7いずれか一項に記載のレーダカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーダカバー及びレーダカバーの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ミリ波等の電波を用いて車両の周囲の障害物等を検知するレーダユニットが車両に搭載されている。このようなレーダユニットは、車両の前面に設けられるラジエータグリルやエンブレムの内側に配置されており、ラジエータグリル等を透過する電波の送受信を行う。このため、上述のようなレーダユニットを備える車両においては、ラジエータグリルやエンブレムは、電波の減衰を抑制しつつ当該電波を透過可能に形成する必要がある。
【0003】
一方で、ラジエータグリルやエンブレムは、車両の前面に配置されることから、車両の意匠上、極めて重要な部分であり、高級感や質感を向上させるために光輝性を付与することが多い。従来は、このような光輝性を付与するため、めっき処理を施すことが一般的であったが、めっき層は電波を透過しない。このため、近年、光輝性を付与しかつ電波を透過可能とするため、電波が透過可能な光輝性膜を形成する技術が用いられている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-46183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のように、光沢を有するインナコア等の光輝性有色部材を透明部材と支持部材との間に別体として設ける場合には、光輝性有色部材が透明部材に対して強く押圧等されることで光輝領域に圧着痕が生じる場合がある。
【0006】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、透明部材と支持部材との間に光輝性有色部材が配置されたレーダカバーにおいて、光輝領域に圧着痕が生じることを防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための手段として、以下の構成を有する。
【0008】
第1の発明は、車両の周囲状況を検知するレーダユニットを覆うレーダカバーであって、背面に凹部が設けられた透明部材と、上記凹部に収容される光輝性有色部材と、上記光輝性有色部材と上記凹部の内壁面との間に設けられると共に封入ガスによって形成されたクッションガス層と、上記透明部材と上記光輝性有色部材とを背面側から支持する支持部材とを備えるという構成を有する。
【0009】
第2の発明は、上記第1の発明において、上記封入ガスは圧縮空気であるという構成を有する。
【0010】
第3の発明は、上記第1または第2の発明において、上記光輝性有色部材が、樹脂からなる基部と、上記基部の上記凹部の内壁面側の表面に設けられた電波透過性を有する金属光沢層とを有するという構成を有する。
【0011】
第4の発明は、上記第1~第3いずれかの発明において、上記支持部材が、樹脂によって形成されると共に上記透明部材の背面と上記光輝性有色部材の背面とに溶着されているという構成を有する。
【0012】
第5の発明は、車両の周囲状況を検知するレーダユニットを覆うレーダカバーの製造方法であって、背面に凹部が設けられた透明部材を形成する透明部材形成工程と、上記凹部に光輝性有色部材を配置する光輝性有色部材配置工程と、上記光輝性有色部材と上記凹部の内壁面との間に封入ガスを供給しながら、上記透明部材と上記光輝性有色部材とを背面側から支持する支持部材を形成する支持部材形成工程とを有するという構成を有する。
【0013】
第6の発明は、上記第5の発明において、上記支持部材形成工程にて、上記封入ガスとして圧縮空気を供給するという構成を有する。
【0014】
第7の発明は、上記第5または第6の発明において、上記光輝性有色部材配置工程にて、樹脂からなる基部と、上記基部の上記凹部の内壁面側の表面に設けられた電波透過性を有する金属光沢層とを有する上記光輝性有色部材を上記凹部に配置するという構成を有する。
【0015】
第8の発明は、上記第5~第7いずれかの発明において、上記支持部材形成工程にて、上記封入ガスを供給しながら上記光輝性有色部材が上記凹部に配置された上記透明部材の背面側に上記支持部材を射出成形により形成するという構成を有する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、透明部材に設けられた凹部の内壁面と光輝性有色部材と間に、封入ガスによって形成されるクッションガス層が設けられる。このため、クッションガス層によって光輝性有色部材が凹部の内壁面に強く押し当てられることを抑制することができる。したがって、本発明によれば、透明部材と支持部材との間に光輝性有色部材が配置されたレーダカバーにおいて、光輝領域に圧着痕が生じることを防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態におけるレーダカバーを備えるラジエータグリルの正面図である。
図2】本発明の一実施形態におけるレーダカバーの拡大正面図である。
図3】本発明の一実施形態におけるレーダカバーの断面図である。
図4】本発明の一実施形態におけるレーダカバーの製造方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明に係るレーダカバー及びレーダカバーの製造方法の一実施形態について説明する。
【0019】
図1(a)は、本実施形態のレーダカバー10を備えるラジエータグリル1の正面図である。また、図1(b)は、本実施形態のレーダカバー10の拡大正面図である。また、図2は、本実施形態のレーダカバー10の断面図である。
【0020】
ラジエータグリル1は、車両のエンジンルームに通じる開口を塞ぐように車両の前面に設けられており、エンジンルームへの通気を確保しかつエンジンルームへの異物の進入を防止している。ラジエータグリル1の中央には、エンジンルーム内に配置されるレーダユニットR(図2参照)に対向するようにしてレーダカバー10が設けられている。レーダユニットRは、例えばミリ波を発信する発信部、反射波を受信する受信部、及び、演算処理を行う演算部等を有している。このレーダユニットRは、レーダカバー10を透過する電波の送受信を行い、受信した電波に基づいて車両の周囲状況を検知する。例えば、レーダユニットRは、障害物までの距離や障害物の相対速度等を算出して出力する。
【0021】
レーダカバー10は、レーダユニットRを車両の正面側から見て覆うように配置されている。つまり、レーダカバー10は、背面をレーダユニットRに向けて配置されている。このレーダカバー10は、図1(b)に示すように、車両の正面側から見て、車両メーカのエンブレムを示す図形や文字等を表す光輝領域10Aと、当該光輝領域10Aの視認性を向上させる黒色領域10Bを有する部品である。このようなレーダカバー10は、図2(a)に示すように、透明部材11と、インナコア12(光輝性有色部材)と、ベース部材13(支持部材)と、封入ガス層14(クッションガス層)とを備えている。
【0022】
透明部材11は、最も車両の外側に配置される略矩形状の透明材料(着色透明を含む)により形成される部位である。この透明部材11は、車両の外部からのインナコア12の視認性を高めるため、表側の面が円滑面とされている。また、透明部材11の背面には、インナコア12が配置される凹部11aが形成されている。
【0023】
凹部11aは、インナコア12が嵌合される部位であり、収容されたインナコア12を車両の前方側から立体的に視認可能とする。この凹部11aは、車両メーカのエンブレム等の図形や文字等の形状に沿って設けられている。このような凹部11aにインナコア12が収容されることによって、上述の光輝領域10Aが形成される。
【0024】
このような透明部材11は、例えば、無色のPC(ポリカーボネート)やPMMA(ポリメタクリル酸メチル樹脂)等の透明合成樹脂によって形成されており、1.5mm~10mm程度の厚さとされている。また、透明部材11の表側の面には、必要に応じて、傷付き防止のためのハードコート処理、又はウレタン系塗料のクリヤコート処理が施される。なお、耐傷性を備える透明合成樹脂であれば、これらの傷付き防止処理は不要である。
【0025】
インナコア12は、基部12aと、光輝性膜12bとを備えている。基部12aは、インナコア12の骨格となる強度部材であり、光輝性膜12bを支持している。この基部12aは、射出成形等によって成形されており、例えばABS、PC又はPET等の合成樹脂によって形成されている。この基部12aは、透明部材11の凹部11aの少なくとも一部を埋設する凸状の形状とされている。
【0026】
光輝性膜12bは、基部12aの表面を覆うように形成されおり、金属光沢(金属色)を有しかつ電波透過性を有する薄膜からなる光沢層である。この光輝性膜12bは、例えば真空蒸着やスパッタリングによって形成されるインジウム(In)からなる金属製の薄膜であり、多数の微細な隙間を有する不連続膜とされている。また、光輝性膜12bは、半導体と金属とを含む合金によって形成された薄膜とすることもできる。具体的には、シリコン(Si)やゲルマニウム(Ge)等の半導体と、アルミニウム(Al)やクロム(Cr)等の金属との合金によって光輝性膜12bを形成することができる。このような合金によって形成された光輝性膜12bは、金属と比較して自由電子の少ない半導体を含んでおり、電磁波を透過する性質を有している。
【0027】
また、光輝性膜12bと基部12aとの間には不図示のベースコート層が設けられ、光輝性膜12bの表面には不図示のトップコート層が設けられている。ベースコート層は、基部12aと光輝性膜12bとの間に形成されており、基部12aと光輝性膜12bとの密着性を向上させるためのものである。このベースコート層は、例えば、透明(着色透明を含む)な合成樹脂を用いたクリヤー塗装によって形成されている。なお、密着性の高い光輝性膜を用いる場合には、ベースコート層を省略することも可能である。
【0028】
トップコート層は、光輝性膜12bを覆うように光輝性膜12b上に形成されており、光輝性膜12bを保護するためのものである。このトップコート層も、ベースコート層と同様に、透明(着色透明を含む)な合成樹脂を用いたクリヤー塗装によって形成されている。
【0029】
なお、ベースコート層及びトップコート層は、酸化ケイ素(SiOx)からなる透明セラミックコート層とすることもできる。この場合には、クリヤー塗装等によって形成される樹脂からなるベースコート層やトップコート層と比較して高い耐熱性を有すると共に、高い電波透過性を有する。
【0030】
インナコア12は、基部12aがベース部材13の表面に対して溶着することによって固着されている。透明部材11の凹部11aの内壁面とインナコア12と間には、封入ガス層14が設けられている。つまり、インナコア12は、ベース部材13の表面に対しては溶着することによって固着されているが、透明部材11の凹部11aの内壁面には固着されていない。
【0031】
ベース部材13は、透明部材11の背面側に固着される部位であり、黒色の樹脂材料から形成されている。このベース部材13は、透明部材11と固定されると共にインナコア12を透明部材11と反対側から支持する支持部材として機能する。また、ベース部材13は、エンジンルーム側に突出する係合部13aを有している。この係合部13aは、先端部が爪状に成形されており、当該先端部が例えばラジエータグリル本体に係止される。このように透明部材11の裏側の面に対して固着されたベース部材13は、透明部材11の外側から視認可能とされており、上述の黒色領域10Bを形成している。このベース部材13は、光輝領域10A以外の領域を黒色に視認させ、相対的に光輝領域10Aの視認性を向上させる。
【0032】
このようなベース部材13は、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合合成樹脂)、AES(アクリロニトリル・エチレン・スチレン共重合合成樹脂)、ASA(アクリロニトリル・スチレン・アクリレート)、PBT(ポリブチレンテレフタレート)、有色のPC、PET(ポリエチレンテレフタレート)等の合成樹脂、又はこれらの複合樹脂からなり、0.5mm~10mm程度の厚さとされている。
【0033】
封入ガス層14は、透明部材11の凹部11aの内壁面とインナコア12との間に封入された封入ガスによって形成された層である。この封入ガス層14は、例えば空気や窒素ガスによって形成されており、インナコア12が透明部材11の凹部11aに接触することを防止する。封入ガス層14が設けられる空間は、図2に示すように、密閉空間とされている。このため、インナコア12やインナコア12が固着されたベース部材13が熱変形等によって封入ガス層14を潰すように変形しようとすると、封入ガス層14の内圧が上昇する。このような封入ガス層14の内圧の上昇によって、インナコア12が透明部材11の凹部11aの内壁面に近づくことを防止することができる。つまり、封入ガスが圧縮された際に生じる復元力(弾性力)によってインナコア12が透明部材11の凹部11aの内壁面に近づくことを防止することができる。特に、後述するレーダカバー10の製造工程において、封入ガス層14によってインナコア12が透明部材11の凹部11aの内壁面と接触することを防止することができる。
【0034】
例えば、封入ガス層14の内部の圧力は、大気圧よりも高くすることができる。封入ガス層14の内部の圧力が大気圧よりも高くなることによって、封入ガスが圧縮された際に生じる復元力をより高めることができる。したがって、封入ガス層14によってインナコア12が透明部材11の凹部11aの内壁面と接触することをより確実に防止することができる。
【0035】
このような封入ガス層14は、図2に示すように、透明部材11側から見て、インナコア12の全域を覆うように設けられている。これによって、インナコア12の全域が透明部材11の凹部11aの内壁面と接触することを防止することができる。
【0036】
続いて、本実施形態のレーダカバー10の製造方法について、図3及び図4を参照して説明する。図3は、本実施形態のレーダカバー10の製造方法について説明するための概略図である。まず、図3(a)に示すように、透明部材11を形成する。例えば、透明部材11は、射出成形により形成される。この射出成形により、凹部11aを有する透明部材11を形成することができるため、後工程により凹部11aを形成する必要はない。なお、必要に応じて、透明部材11の表面側(車両外側に向く面)あるいは全面には、耐久性等を向上させるためのハードコート処理を施しても良い。このような図3(a)に示す工程は、透明部材形成工程である。
【0037】
続いて、図3(b)に示すように、インナコア12を形成する。例えば、基部は、射出成形により形成される。また、基部に対してクリヤー塗装を行い、その後乾燥させることによりベースコート層を形成する。また、スパッタリングあるいは真空蒸着によってベースコート層上に光輝性膜を形成する。また、光輝性膜の表面に対してクリヤー塗装を行い、その後乾燥させることにより、トップコート層を形成する。なお、インナコア12の形成は、図3(a)で示した透明部材11の形成を待って行う必要はない。図3(a)で示した透明部材11の形成工程と並行して、インナコア12を形成することによって、レーダカバー10の製造時間を短縮することができる。
【0038】
続いて、図3(c)に示すように、インナコア12を透明部材11の凹部11aに配置する。ここでは、例えば、インナコア12を凹部11aの底部に当接させた状態で配置する。このような図3(c)に示す工程は、凹部11aにインナコア12を配置するインナコア配置工程(光輝性有色部材配置工程)である。
【0039】
次に、図3(d)に示すように、ベース部材13を形成する。ここでは、凹部11aにインナコア12が設置された透明部材11を、射出成形用の金型の内部に配置し、透明部材11の背面側に溶融した樹脂を射出するインサート成形(射出成形)を行うことで、ベース部材13を形成する。
【0040】
図4は、ベース部材13を形成する工程をより詳細に説明するための拡大模式図である。図4(a)に示すように、凹部11aにインナコア12が配置された透明部材11を金型の内部に配置した後、金型のキャビティに対して圧縮空気G(封入ガス)を供給し、透明部材11の背面に対して圧縮空気Gを噴き付ける。このような圧縮空気Gを金型のキャビティに供給する場合には、例えばキャビティの空気を外部に抜くために設けられた空気抜き用の流路を圧縮空気Gの供給用に用いることができる。このように、既に空気抜き用の流路が設けられた金型であれば、空気抜き用の流路を圧縮空気Gの供給流路として転用することによって、新たな流路を形成する必要がない。
【0041】
続いて、図4(b)に示すように、透明部材11の背面への圧縮空気Gの噴き付けを継続しつつキャビティ内に溶融樹脂20を供給する。このような溶融樹脂20がキャビティ内に供給されることによって、圧縮空気Gの逃げ場が減少し、圧縮空気Gがインナコア12と透明部材11の凹部11aの内壁面との間に押し込まれる。このようにして、インナコア12と透明部材11の凹部11aの内壁面との間に押し込まれた圧縮空気Gが密封されることによって、封入ガス層14が形成される。
【0042】
溶融樹脂20が冷却されることによってベース部材13となる。このとき、ベース部材13は、インサート成形時の熱により透明部材11と溶着され、インナコア12を覆うように配置される。また、インナコア12の背面も、ベース部材13に溶着される。これによって、インナコア12がベース部材13により支持される。
【0043】
溶融樹脂20が冷却される場合に、溶融樹脂20に固着された透明部材11がベース部材13側に引き寄せられるが、封入ガス層14によって透明部材11がインナコア12の表面に接触することは防止される。
【0044】
このような図3(d)、図4(a)及び図4(b)に示す工程は、インナコア12と凹部11aの内壁面との間に封入ガス(圧縮空気G)を供給しながら、透明部材11とインナコア12とを背面側から支持するベース部材13を形成するベース部材形成工程(支持部材形成工程)である。
【0045】
以上のような工程で本実施形態のレーダカバー10が製造される。このような本実施形態のレーダカバー10は、車両の周囲状況を検知するレーダユニットRを覆って配置されている。また、本実施形態のレーダカバー10は、背面に凹部11aが設けられた透明部材11と、凹部11aに収容されるインナコア12と、インナコア12と凹部11aの内壁面との間に設けられると共に封入ガスによって形成された封入ガス層14と、透明部材11とインナコア12とを背面側から支持するベース部材13とを備えている。
【0046】
このような本実施形態のレーダカバー10によれば、透明部材11に設けられた凹部11aの内壁面とインナコア12と間に、封入ガスによって形成される封入ガス層14が設けられる。このため、封入ガス層14によってインナコア12が凹部11aの内壁面に強く押し当てられることを抑制することができる。したがって、本実施形態のレーダカバー10によれば、透明部材11とベース部材13との間にインナコア12が配置されたレーダカバー10において、光輝領域10Aに圧着痕が生じることを防止することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態のレーダカバー10の製造方法は、車両の周囲状況を検知するレーダユニットRを覆うレーダカバー10の製造方法である。このような本実施形態のレーダカバー10の製造方法は、背面に凹部11aが設けられた透明部材11を形成する透明部材形成工程と、凹部11aにインナコア12を配置するインナコア配置工程と、インナコア12と凹部11aの内壁面との間に封入ガス(圧縮空気G)を供給しながら、透明部材11とインナコア12とを背面側から支持するベース部材13を形成するベース部材形成工程とを有している。このため、封入ガス(圧縮空気G)によってインナコア12と凹部11aの内壁面との間に形成された封入ガス層14にて、インナコア12が凹部11aの内壁面に強く押し当てられることを抑制することができる。したがって、本実施形態のレーダカバー10によれば、透明部材11とベース部材13との間にインナコア12が配置されたレーダカバー10において、光輝領域10Aに圧着痕が生じることを防止することが可能となる。
【0048】
また、本実施形態のレーダカバー10及びレーダカバー10の製造方法においては、封入ガスとして圧縮空気Gが用いられている。このため、廉価なガスを用いて封入ガス層14を形成することが可能である。ただし、不活性ガス等を封入ガスとして用いることも可能である。
【0049】
また、本実施形態のレーダカバー10及びレーダカバー10の製造方法において、インナコア12は、樹脂からなる基部12aと、基部12aの凹部11aの内壁面側の表面に設けられた電波透過性を有する金属製の光輝性膜12bとを有している。このような本実施形態のレーダカバー10によれば、金属によって光輝領域10Aが形成されるため、光輝領域10Aの外観印象をより向上させることが可能となる。
【0050】
また、本実施形態のレーダカバー10及びレーダカバー10の製造方法において、ベース部材13は、樹脂によって形成されると共に透明部材11の背面とインナコア12の背面とに溶着されている。このため、接着剤等によってベース部材13に対して透明部材11やインナコア12を接着する場合と比較して、ベース部材13に対して透明部材11及びインナコア12を強固に固着することが可能となる。このため、封入ガス層14の密閉性をより向上させることが可能となる。
【0051】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の趣旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0052】
例えば、上記実施形態においては、光輝性膜12bが金属製の金属光沢層である構成について説明した。しかし、光輝性膜12bは、光沢を有する層であればよく、金属(インジウム)や半導体合金に限定されない。光輝性膜12bは、光沢を有する塗料が塗布された薄膜とすることも可能である。
【0053】
また、上記実施形態においては、光輝性有色部材として、基部12aと光輝性膜12bとを備えるインナコア12を用いる例について説明した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、表面に光輝性を有する部材であれば光輝性有色部材として用いることが可能である。
【0054】
また、上記実施形態においては、光輝性有色部材として、ブロック状のインナコア12を用いる構成について説明した。しかしながら、本発明において光輝性有色部材は、必ずしもブロック状の部材である必要はない。例えば、光輝性を有するフィルム状の部材を光輝性有色部材として用いることも可能である。
【符号の説明】
【0055】
1……ラジエータグリル、10……レーダカバー、10A……光輝領域、10B……黒色領域、11……透明部材、11a……凹部、12……インナコア(光輝性有色部材)、12a……基部、12b……光輝性膜、13……ベース部材、13a……係合部、14……封入ガス層、20……溶融樹脂、G……圧縮空気(封入ガス)、R……レーダユニット
図1
図2
図3
図4