(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】樹脂製容器の製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 49/78 20060101AFI20240507BHJP
B29C 49/06 20060101ALI20240507BHJP
B29C 49/64 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B29C49/78
B29C49/06
B29C49/64
(21)【出願番号】P 2020159284
(22)【出願日】2020-09-24
(62)【分割の表示】P 2020542474の分割
【原出願日】2020-01-31
【審査請求日】2023-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2019015971
(32)【優先日】2019-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019027545
(32)【優先日】2019-02-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019178433
(32)【優先日】2019-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100093089
【氏名又は名称】佐久間 滋
(72)【発明者】
【氏名】土屋 要一
(72)【発明者】
【氏名】荻原 学
(72)【発明者】
【氏名】長崎 淳
(72)【発明者】
【氏名】堀内 一宏
【審査官】北澤 健一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/158920(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/158917(WO,A1)
【文献】特開昭52-091067(JP,A)
【文献】特開平04-062028(JP,A)
【文献】特開平04-062027(JP,A)
【文献】特開2016-199053(JP,A)
【文献】国際公開第97/039874(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0277840(US,A1)
【文献】特開平04-065216(JP,A)
【文献】特開平05-185493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォームを射出成形する射出成形部と、前記射出成形部で成形した前記プリフォームを温度調整する温度調整部と、温度調整した前記プリフォームを容器にブロー成形するブロー成形部と、前記容器を機外に取り出す取出部と、ネック型で固定されて前記ネック型により前記プリフォームを保持して前記射出成形部、前記温度調整部、前記ブロー成形部、及び前記取出部に搬送する回転盤と、を備えた樹脂製容器の製造装置において、
前記温度調整部は、前記プリフォームが挿入され前記プリフォームを外表面から冷却する第1の温度調整
用型と、前記プリフォームに挿入され前記プリフォームを内表面から冷却する第2の温度調整
用型と、を有しており、
前記プリフォームの外形を維持できる程度までしか冷却されていない高温状態で前記プリフォームを前記射出成形部から離型し、
前記プリフォームを4.0秒から8.0秒の移送時間で前記射出成形部から前記温度調整部へ搬送し、
前記温度調整部にて前記プリフォームの胴部の少なくとも外側表面温度が前記温度調整部に搬入された時点と比較して10℃以上50℃以下の温度範囲だけ低下するように冷却させる、
樹脂製容器の製造装置。
【請求項2】
前記第1の温度調整
用型は、前記プリフォームの前記胴部および底部の外表面と接触可能な空間と、温調媒体が流通可能な流路と、が形成されている温調キャビティ型である、
請求項1に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項3】
前記第2の温度調整
用型は、前記プリフォームの前記胴部および底部の内表面に圧縮空気を接触させて対流させるエア導入出部材である、
請求項1に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項4】
前記エア導入出部材は、前記プリフォームのネック部に気密可能に当接する嵌合コアと、前記胴部に挿入されるロッド部材と、を有し、
前記ロッド部材の内部には、圧縮空気の供給または排出が可能な内方流通口が形成されており、
前記嵌合コアの先端の内周面と前記ロッド部材の外周面との隙間には、圧縮空気の供給または排出が可能な外方流通口が形成されている、
請求項3に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項5】
前記第2の温度調整
用型は、前記プリフォームの前記胴部および底部の内表面と接触可能であり内部に温調媒体用の流路が形成されている温調コア型である、
請求項1に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項6】
前記エア導入出部材は、圧縮空気で前記プリフォームの前記胴部および前記底部を膨らまして前記
第1の温度調整用型の内壁に密着させる予備ブローを行った後、圧縮空気を流し続けて前記胴部および前記底部を冷却させる冷却ブローを行う、
請求項3に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項7】
前記温度調整部の搬入時点と比べて冷却された前記プリフォームを前記温度調整部から取出して前記ブロー成形部に搬送している間、前記プリフォームの保有熱を放冷する処理を行う、
請求項
1に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項8】
プリフォームを
射出成形部で射出成形し、射出成形した前記プリフォームを温度調整部で温度調整し、温度調整した前記プリフォームをブロー成形する、樹脂製容器の製造方法において、
前記プリフォームの外形を維持できる程度までしか冷却されていない高温状態で前記プリフォームを前記射出成形部から離型し、
前記プリフォームを4.0秒から8.0秒の移送時間で前記射出成形部から前記温度調整部へ搬送し、
前記温度調整部は、第1の温度調整
用型により前記プリフォームの胴部および底部を外表面から冷却し、さらに、第2の温度調整
用型により前記プリフォームの前記胴部および前記底部を内表面から冷却し、
前記温度調整部にて前記プリフォームの少なくとも外表面温度が前記温度調整部に搬入された時点と比較して10℃以上50℃以下の温度範囲だけ低下するように冷却させる、
樹脂製容器の製造方法。
【請求項9】
前記温度調整部は、前記プリフォームの外表面に所定温度に設定された温調キャビティ型を接触させ、前記プリフォームを外表面から冷却する、
請求項1に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項10】
前記温度調整部は、前記プリフォームの内表面に圧縮空気を接触および対流させ、前記プリフォームを内表面から冷却する、
請求項
9に記載の樹脂製容器の製造装置。
【請求項11】
前記温度調整部は、前記プリフォームの内表面に所定温度に設定された温調コア型を接触させ、前記プリフォームを前記温調キャビティ型と前記温調コア型とで挟んで圧縮変形させて冷却する、
請求項
9に記載の樹脂製容器の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットパリソン式ブロー成形法による樹脂製容器の製造装置および製造方法に関する。具体的には、製造時間を短縮させても外観や物性が良質な樹脂製容器の製造を可能にする、ホットパリソン式ブロー成形法による樹脂製容器の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プリフォームを射出成形する射出成形部と、射出成形部で成形したプリフォームを温度調整する温度調整部と、温度調整部で温度調整したプリフォームをブロー成形するブロー成形部とを備えたブロー成形装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。この種のブロー成形装置は、射出成形部及びブロー成形部のみを主に備えた従来のブロー成形装置(例えば、特許文献2参照)に温度調節部を追加したものである。射出成形部で成形された直後のプリフォームは、ブロー成形に適した温度分布を備えていないため、射出成形部とブロー成形部との間により積極的にプリフォームの温度調整が可能な温度調整部を設けることにより、プリフォームをブロー成形に適した温度まで温度調整することを可能にしていた。なお、この温度調整部は、加熱ポット型(加熱ブロック)や加熱ロッドを用い、プリフォームを非接触で加熱して、温度調整する方式になっている。
【0003】
また、プリフォームの底部のみを短時間かつ局所的に冷却して、底部が肉厚である容器が良好に成形できる温度調整方法も存在する。具体的には、プリフォームの底部及び底部に連続する胴部の下部の外周面を冷却ポットで機械的に密着して確実に冷却し、底部に連続する胴部の下部を除く胴部を加熱ブロックにより所定の温度に昇温させることにより、ブロー成形を行った際に所望の厚さを有する底部と、均一で薄肉に延伸された壁部を有する胴部とを備えた、容器を製造するためのブロー成形装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0004】
さらに、プリフォームを射出成形部に加えて温度調整部でも冷却し、成形サイクル時間を決定づける射出成形時間(具体的には冷却時間)の短縮を図ったブロー成形装置も提案されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-315973号公報
【文献】国際公開第2017/098673号
【文献】国際公開第2013/012067号
【文献】特開平05-185493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の技術によるブロー成形装置では、射出成形後の冷却時間を短く設定した場合、温度調整部で偏温除去や均温度化を十分に行うことができなかった。そのため、プリフォームの材料としてブロー成形の温度帯で結晶化し易い熱可塑性樹脂(PET(ポリエチレンテレフタレート)等)を用いた場合、偏肉や白化(白濁化)を良好に抑制して肉厚分布が整った高品質な容器を製造する方法は、未だ確立できていなかった。
【0007】
本発明は、成形サイクル時間が短縮化されたホットパリソン式ブロー成形法であっても良好な品質の容器を製造することのできる樹脂製容器の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、プリフォームを射出成形する射出成形部と、前記射出成形部で成形した前記プリフォームを温度調整する温度調整部とを備え、前記温度調整部で温度調整した前記プリフォームをブロー成形する、樹脂製容器の製造装置において、前記射出成形部で成形した前記プリフォームの外側表面温度が内側表面温度より高くなる前に前記プリフォームを前記温度調整部に搬入し、前記温度調整部にて前記プリフォームを10℃以上50℃以下の範囲だけ低下するように冷却させる、ことを特徴とする。
【0009】
この場合において、前記プリフォームを形成する樹脂材料のガラス転移温度が50℃以上150℃以下、肉厚が1.5mm以上5.0mm以下である場合に、前記プリフォームの外側表面温度が110℃以上150℃以下の状態で前記プリフォームを前記温度調整部に搬入してもよい。前記プリフォームを形成する樹脂材料のガラス転移温度が50℃以上150℃以下、肉厚が2.0mm以上10.0mm以下である場合に、前記プリフォームの外側表面温度が100℃以上140℃以下である状態で前記プリフォームを前記温度調整部に搬入してもよい。前記温度調整部は、温調コア型と温調キャビティ型とで前記プリフォームを挟んで圧縮変形させてもよい。前記温度調整部は、前記プリフォームの内側に空気を循環させてもよい。
【0010】
また、本発明は、プリフォームを射出成形し、射出成形した前記プリフォームを温度調整部で温度調整し、温度調整した前記プリフォームをブロー成形する、樹脂製容器の製造方法において、射出成形した前記プリフォームの外側表面温度が内側表面温度より高くなる前に前記プリフォームを前記温度調整部に搬入し、前記温度調整部にて前記プリフォームを10℃以上50℃以下だけ冷却させることを特徴とする。
【0011】
この場合において、前記プリフォームのガラス転移温度が50℃以上150℃以下、肉厚が1.5mm以上5.0mm以下である場合に、前記プリフォームの外側表面温度が110℃以上150℃以下の状態で前記プリフォームを前記温度調整部に搬入されてもよい。前記プリフォームのガラス転移温度が50℃以上150℃以下、肉厚が2.0mm以上10.0mm以下である場合に、前記プリフォームの外側表面温度が100℃以上140℃以下である状態で前記プリフォームを前記温度調整部に搬入されてもよい。前記温度調整部は、温調コア型と温調キャビティ型とで前記プリフォームを挟んで圧縮変形させてもよい。前記温度調整部は、前記プリフォームの内側に空気を循環させてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、成形サイクル時間が短縮化されたホットパリソン式ブロー成形法であっても良好な品質の容器を製造することのできる樹脂製容器の製造装置および製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るブロー成形装置(射出成形部、温度調整部、ブロー成形部、取出し部を有する)の斜視図を示す。
【
図2】前記射出成形部で射出成形されているプリフォームの正面から見た拡大断面図を示す。
【
図5】プリフォームがブロー成形部でブロー成形されている様子の断面図を示す。
【
図6】肉厚2.85mmのプリフォームを温度調整したときの温度分布のグラフを示す。
【
図7】肉厚3.85mmのプリフォームを温度調整したときの温度分布のグラフを示す。
【
図8】プリフォームの第一の均温化工程を含む全工程のフローチャート図を示す。
【
図9】プリフォームの第一及び第二の均温化工程を含む全工程のフローチャート
【
図10】本発明の第2実施形態に係るブロー成形装置の模式図を示す。
【
図12】全行程におけるプリフォームの温度変化を示す。
【
図13】ネック型及びプリフォームの例を示す図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るブロー成形装置(射出成形部、温度調整部、ブロー成形部、取出し部を有する)の斜視図を示し、
図2は、射出成形部で射出成形されているプリフォームの正面から見た拡大断面図を示し、
図3は、温度調整部でプリフォームを温調コアと温調ポットにより冷却する状態を示す断面図を示し、
図4は、温度調整部でプリフォームを空気により冷却する状態を示す拡大断面図を示し、
図5は、プリフォームがブロー成形部でブロー成形されている様子の断面図を示している。
【0015】
ブロー成形装置100は、
図1に示すように、射出成形部10と、温度調整部20と、ブロー成形部30と、取出部40とを備えており、プリフォーム1を射出成形した後に、ブロー成形して容器1aを製造するための装置である。
【0016】
射出成形部10、温度調整部20、ブロー成形部30、及び取出部40は、上から見たときに正方形の4つの辺を形成するような配列で配置されている。これらの上方には、射出成形部10で成形されたプリフォーム1のネック部3(
図2参照)を保持するネック型50(
図3参照)が設けられた不図示の回転盤が設けられている。この回転盤は、上方から見たときに正方形の4つの辺を形成するような配列で4組のネック型50が配置されている。これにより、回転盤が射出成形部10、温度調整部20、ブロー成形部30、及び取出部40上で垂直軸を中心に反時計回りに90度ずつ回転することにより、4組のネック型50の各々は、射出成形部10、温度調整部20、ブロー成形部30、及び取出部40を等しい時間で順次移動して、ネック型50に保持されたプリフォーム1に対して各工程が等しい時間だけ実施されるようになっている。
【0017】
射出成形部10は、射出コア型11、射出キャビティ型12、及び不図示の射出装置を備え、プリフォーム1を射出成形するように設けられている。射出コア型11および射出キャビティ型12には図示しない冷却回路が設けられ、5~20℃程度の冷却媒体が流されている。
【0018】
プリフォーム1は熱可塑性の合成樹脂を材料として、
図2に示すように、解放側のネック部3及び閉鎖側の貯留部(本体部)2を備えた有底状(有底筒状)に形成されている。貯留部2は、解放側のネック部3に連なる胴部2aと、閉鎖側に位置して胴部2aに連なる底部2bとから構成されている。プリフォーム1は、ブロー成形されることにより容器1a(
図5参照)となるものであり、ブロー成形後の容器1aを図中上下方向および左右方向に縮めて厚肉にしたような形状を有している。
【0019】
プリフォーム1を射出成形する際には、射出コア型11、射出キャビティ型12、及びネック型50が組み合わされてプリフォーム1に対応する空間を規定する。このとき、射出コア型11でプリフォーム1の貯留部2及びネック部3の内面形状を成形し、射出キャビティ型12で貯留部2の外面形状を成形するとともに、ネック型50でネック部3の外面形状を成形する。
【0020】
射出成形部10は、熱可塑性の合成樹脂(例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル系樹脂)の材料を高温で加熱して溶かし、溶かした材料を不図示の射出装置により射出コア型11と射出キャビティ型12及びネック型50とで画定される成形空間(キャビティ)の間に射出(充填)し、射出した材料のうち型面(キャビティ面)に近い部分の材料を融点(例えばPETの場合は約255℃)よりも低い温度、例えば、20℃程度まで冷やして固めることにより貯留部2に表面層(適宜、外部層、外層、又はスキン層とも呼ぶ)を形成し、プリフォーム1を成形するようになっている。このとき、プリフォーム1の貯留部2は、その内部層(適宜、内層、又はコア層とも呼ぶ)が融点以下かつガラス転移点温度以上の温度に設定され(例えば150~200℃)、ブロー成形部30で延伸可能な熱量を有するように調整する。なお、本実施形態では成形サイクル時間、つまり、プリフォーム1の成形時間を従来よりも短縮化させている。具体的には、プリフォームの射出成形時間に関する射出時間(充填時間)と冷却時間のうち、冷却時間を従来法より著しく短く設定している。例えば、冷却時間は、射出時間の2/3以下、好ましくは1/2以下、更に好ましくは1/3以下に設定される。
【0021】
射出コア型11は、プリフォーム1の貯留部2(より具体的には胴部2a)に対応する部分の横方向断面がネック部3に対応する部分の横方向断面よりも小さく形成されている。これにより、射出成形されたプリフォーム1の内側は、ネック部3よりも貯留部2の方がプリフォーム1の軸心Zに垂直な方向の内部空間面積が小さく形成されている。
【0022】
また、射出コア型11は、プリフォーム1の底部2bと対応する型面(キャビティ面)上の位置に近付く程、横方向断面が漸次的に小さく形成されている。これにより、射出成形されたプリフォーム1の内側は、プリフォーム1の軸心Zに垂直な方向に広がる内部空間面積は、プリフォーム1の底部2bに近付く程、漸次的に小さくなるように形成されている。
【0023】
射出成形部10で射出成形された後にある程度固まった(貯留部2の内外表面にスキン層が形成されて外形が維持できる程度の)プリフォーム1は、ネック型50に保持されたまま射出コア型11および射出キャビティ型12から引き抜かれ(離型され)、
図1に示すように、回転盤が上面視で反時計回りに90度回転することにより温度調整部20に搬送される。このプリフォーム1は従来法よりも高温の状態で射出成形部10にて離型されるため、貯留部2の外層(スキン層)は薄く形成される一方、内層(コア層)は厚く形成されて従来法よりも高い保有熱が維持されている。
【0024】
温度調整部20は、射出成形部10の隣に配置されており、
図3および
図4に示すように、温調キャビティ型22と温調コア型21またはエア導入出部材61の何れか一方を備えている。
【0025】
射出成形部10から搬送されてきたプリフォーム1は、温調キャビティ型22上に取り付けられた芯出しリング60にネック型50が当接するまで回転盤と共に下がって温調キャビティ型22内に差し込まれる。プリフォーム1が温調キャビティ型22内に差し込まれると、プリフォーム1のネック部3に形成された上側開口を通して温調コア型21またはエア導入出部材61がプリフォーム1内に差し込まれる。なお、温調コア型21を用いる場合は、温調コア型21がプリフォーム1内に差し込まれた後に、温調コア型21と共にプリフォーム1が温調キャビティ型22に差し込まれてもよい。
【0026】
温調コア型21及び温調キャビティ型22は、内部に形成された流路内を冷媒(温調媒体)が流れていることにより、10℃以上90℃以下、好ましくは60℃以上80℃以下に冷却されている。エア導入出部材61は所定温度の冷却用圧縮空気を貯留部2に流通させる。温度調整部20に搬送されたプリフォーム1は、ブロー成形するには温度が高過ぎ、放冷中に解消しきれなかった偏温も有する。貯留部2の内外表面を温調コア型21と温調キャビティ型22への接触、または、外表面を温調キャビティ型22に接触させつつ内表面にエア導入出部材61からのエアを吹き当てることで、冷却されてブロー成形に適した温度に温度調整される。
【0027】
図3は、プリフォーム1の貯留部2を、温調キャビティ型22と温調コア型21で冷却する例である。温調コア型21は、温調コア型21を温調キャビティ型22に挿入した際にネック部3に接触しないようにくびれ部23aが形成されている。
【0028】
また、本実施形態に係る温調コア型21は、射出成形部10のテーパー形状に形成された射出コア型11よりも小さな角度のテーパー形状を有している。これにより、プリフォーム1を射出成形部10から取り外し(離型)または成形し易い形状からブロー成形し易い所望形状へ圧縮変形させることができる。
【0029】
温度調整部20は、
図3に示すように、温調コア型21がプリフォーム1の貯留部2の内表面の略全体に接して押圧すると共に、温調キャビティ型22がプリフォーム1の貯留部2の外表面の略全体に接して押圧するように設けられている。これにより、プリフォーム1が射出成形部10で離型された後に不規則的に収縮変形していても、温調コア型21と温調キャビティ型22との間にプリフォーム1の貯留部2を挟んでプリフォーム1を冷却すると共に形状を修正することができる。また、プリフォーム1を温調コア型21と温調キャビティ型22とで圧力をかけながら挟むと共に冷却させることで、射出成形時の一次形状のプリフォーム1から最終的な容器1aへのブロー成形に適した二次形状のプリフォーム1へと強制的に圧縮変形させながら内外同時に温度調整を行っても良い。
【0030】
図4は、プリフォーム1の貯留部2を、温調キャビティ型22とエア導入出部材61で冷却する例である。同図中、エア導入部材61は、中空で内部にエア流通孔が設けられたロッド部材62と、嵌合コア(温調用ブローコア部材)63とから構成されている。ロッド部材62は嵌合コア63の内部に上下動可能に収容されている。ロッド部材62の先端にはエアを噴出または吸引可能な内方流通口62aが設けられている。エアの温度はプリフォーム1や容器1aの肉厚に応じ、例えば約0℃~約20℃(常温)の範囲内で適宜設定される。嵌合コア63は、エア導入部材61がプリフォーム1に挿入されると(気密可能に当接されると)、ネック部3に嵌る(密接する)ように構成されている。これにより、プリフォーム1の内部のエアがネック部3から嵌合コア63の外側に漏れることを防止できる。ロッド部材62と嵌合コア63との間の隙間は、プリフォーム1に対しエアを給排するためのエア流通経路である。嵌合コア63の先端とロッド部材62とが形成する隙間が、エアを噴出または吸引可能な第一の外方流通口64を構成する。内方流通口62aおよび外方流通口64は、それぞれ送風口および排出口となり得る。
【0031】
その操作としては、
図4中、まず、プリフォーム1を温調キャビティ型22のプリフォーム形状の空間内に収容する。続いて、キャビティ型22に収容されたプリフォーム1の内部にエア導入部材61を挿入する(気密可能に当接する)。そして、第一の内方流通口62aを閉栓した状態でエア導入部材61の外方流通口64からプリフォーム1の内部にエアを送り、プリフォーム1の貯留部2をキャビティ型22の内壁に密着させる予備ブローを行う。次いで、内方流通口62aを開栓し、該内方流通口62aからエアを導入しつつ、外方流通口64を介してプリフォーム1の外部にエアを排出する冷却ブロー(クーリングブロー)を行う。このように、予備ブローと冷却ブローでは、エアの流れる方向を逆に設定するのが好ましい。この時、内方流通口62aからエアが噴出し続けているため、プリフォーム1は内部を流れるエアの対流により、内側から冷却される。また、プリフォーム1はキャビティ型22と接触し続けるため、外側からブロー成形に適した温度以下にならないように温度調整され、さらに、射出成形時に生じた偏温も低減される。なお、キャビティ型22がプリフォーム形状の空間を有しているため、プリフォーム1の形状は大きく変化しない。一定時間の冷却の後に、冷却されたプリフォーム1をブロー成形部30へ移動させる。
【0032】
なお、エア導入部材61のエアの流通方向は適宜変えることができる。例えば、
図4に示すように、冷却ブローにおいて、外方流通口64からエアを送り、内方流通口62aからロッド部材62の内部を通って排出するようにしてもよい。この際の予備ブローは、外方流通口64を閉栓させた状態で、内方流通口62aからプリフォーム1の内部にエアを送るのが好ましい。プリフォーム1の下方側(貯留部2の底部側)の冷却強度を上げたい場合は、内方流通口62aから外方流通口64の方向へエアを流す。プリフォーム1
の上方側(貯留部2の上側)の冷却強度を上げたい場合は、外方流通口64から内方流通口62aの方向にエアを流す。なお、プリフォーム1の特定部分を強く冷却し容器1aの特定部分の肉厚を大きくさせたい場合等には、予備ブローと冷却ブローとのエアの送風方向を同じに設定しても構わない。
【0033】
次に、PET材料は120℃から200℃程度の温度帯で徐冷すると結晶化による白化や白濁が生じてしまうので、射出成形部10にて高温状態で離型されたプリフォーム1から透明度の高い容器1a(
図5参照)を製造するためには、プリフォーム1を結晶化する温度帯以下まで急冷する必要がある。このとき、厚肉な壁部5(貯留部2、特に胴部2a)を有するプリフォーム1の場合は、壁部5の中央まで十分に冷却するのは従来困難であった。しかし、
図3や
図4のような温度調整方法では、プリフォーム1の壁部5が厚肉であっても、変温除去や均温化および冷却化の効率を大幅に高められる。また、全体的にブロー成形に適した温度分布になるため、最終的な形態である容器1aの肉厚の偏りを防止することができる。なお、プリフォーム1の壁部5は、ネック部3に連接して略円筒状に形成された胴部に対応する第1の壁部と、胴部に連接して閉塞領域を備えた底部に対応する第2の壁部、とから構成される。
【0034】
温度調整部20で温度調整されたプリフォーム1は、ネック型50に保持されたまま温調キャビティ型22から引き抜かれ、
図1に示すように、回転盤がさらに反時計回りに90度回転してブロー成形部30に搬送される。
【0035】
ブロー成形部30は、
図1に示すように、温度調整部20の隣に配置されており、ブロー型31と不図示のエアー吹込部とを備えている。
【0036】
ブロー型31は、容器1aの形状に対応する型面が内側に形成されており、温度調整部20の温調キャビティ型22よりもかなり大きな型面になっている。
【0037】
エアー吹込部は、ブロー型31内に差し込まれたプリフォーム1内に空気を充填するように設けられている。
【0038】
ブロー成形部30に搬送されたプリフォーム1は、ブロー型31内に差し込まれ、エアー吹込部がプリフォーム1のネック部3の開口に接続され、エアー吹込部がプリフォーム1内に空気を吹き込ませると、
図5に示すように、貯留部2の外面全体がブロー型31の型面に密着して押し付けられるまでプリフォーム1の貯留部2が膨らまされ、容器1aが成形されるようになっている。
【0039】
ブロー成形部30でブロー成形されたプリフォーム1(容器1a)は、ネック型50に保持されたままブロー型31から引き抜かれ、
図1に示すように、回転盤がさらに反時計回りに90度回転して取出部40に搬送される。
【0040】
取出部40は、
図1に示すように、ブロー成形部30と射出成形部10との間に配置されている。取出部40では、ネック型50が開いて容器1aを保持しなくなることにより容器1aが落下し、ブロー成形装置100から容器1aが取り出されるようになっている。
【0041】
本実施形態に係るブロー成形装置100は、プリフォーム1の外形を維持できる程度までしか冷却されていない高温状態でプリフォーム1を射出キャビティ型12から離型するようになっている。すなわち、射出成形部10で離型されたプリフォーム1の胴部2aの外側表面温度(胴部2aの外周面における表面層の温度)が胴部2aの内側表面温度(胴部2aの内周面における表面層の温度)より高くなる前に、例えば外側表面温度がプリフォーム1のガラス転移温度より30℃以上60℃以下だけ高い温度で、プリフォーム1を温度調整部20に挿入(搬入)している。温度調整部20は、プリフォーム1を温度調整部20に挿入(搬入)された時点の温度から10℃以上50℃以下だけ外側表面温度を低下させるように、内外表面層を介して内部層を冷却させるようになっている。なお、PET製のプリフォーム1のガラス転移温度は例えば約75℃である。
【0042】
通常、射出成形部10で十分な冷却時間が与えられ成形されたプリフォーム1は、樹脂の収縮により射出コア型11に強く接触する一方で射出キャビティ型12から離れる傾向があり、温度調整部に搬送されてきたときには、外側表面温度が内側表面温度より高くなっている。また、プリフォーム1の内層と外層との温度勾配(熱勾配)は比較的小さい状態になっている。一方、本実施形態に係るブロー成形装置100は、従来技術のものに比べてプリフォーム1が非常に高温のまま温度調整部20に搬送されるようになっている。射出成形部10で内層の保有熱が従来のものよりも高い状態でプリフォーム1を射出コア型11及び射出キャビティ型12から離型しているため、内層と外層との温度勾配は従来よりも大きくなる。そのため、プリフォーム1の内層と外層との熱伝達による熱交換を活発化させている。これにより、温度調整部20への搬送中に戻り熱(内部層から外部層への熱量の移動)によりプリフォーム1の外表面温度を一旦上昇させて射出成形部10と温度調整部20との間の短い移送時間(射出成形部10の型開閉動作時間と射出成形部10から温度調整部20への搬送時間)を利用して内外層間の温度差の解消や均温化及び偏温除去を促進させている。つまり、高温離型により、この移送時間(例えば、4.0秒から12.0秒、より好ましくは4.0秒から8.0秒)の間に、プリフォーム1の外層(スキン層)の温度が、射出成形型に近い温度(例えば、5.0℃から20.0℃)から110℃以上130℃以下の温度まで急上昇する程度に熱量の移動を促進させ、プリフォーム1の均温化や偏温除去の効果を高めている。同時に、この移送時間において、プリフォーム1の放冷を行い、高温離型により生じたプリフォーム1の余分な熱量を外気に放出させて、温度調整部20において必要となる内層の冷却時間を短縮させている。このため、温度調整部20におけるプリフォーム1の内層の冷却効率や内外層の温度調整効率を高めて短時間で結晶化温度帯域より低下させることができ、短時間で延伸配向に適した温度分布状態のプリフォームの調整が可能になり、透明性や物性の高い容器を短時間で製造可能になっている。さらに、射出成形部10で高温離型することで、プリフォーム1が次工程までに外層が高温化して軟化するため、プリフォーム1の表面層に転写された射出コア型や射出キャビティ型に由来する粗さが低減または解消できる。これにより、従来技術よりもブロー成形直前におけるプリフォーム1の表面層の粗さを小さくさせることができ、表面粗さが小さく表面光沢に優れた容器1aを製造することができる。
【0043】
温度調整部20では、プリフォーム1の壁部5(より具体的には胴部2a)の厚さと反比例させるように温度調整(冷却)し、プリフォーム1の少なくとも外側表面温度が所定の温度範囲内に収まるように調整している。無論、内側表面温度も所定の温度範囲内に収まるように調整されても良い。例えば、壁部5の厚さが1.5mm以上3.0mm以下の場合は外側表面温度が約87℃以上93℃以下に、3.0mm以上5.0mm以下の場合は外表面温度が77℃以上83℃以下になるよう温度調整部20でプリフォーム1が温度調整(冷却)されており、壁部5が厚いプリフォーム1ほど温度調整部20の温度調整時に温度を下げるようになっている。プリフォーム1の壁部5の厚さに応じてブロー成形前のプリフォーム1の温度を従来より低下させることで、ブロー成形時に良好な配向延伸を生じさせ、透明性や物性の高い容器を製造可能になっている。
【0044】
例えば、ガラス転移温度が50℃以上150℃以下、肉厚が1.5mm以上4.0mm以下、より好ましくは1.5mm以上3.5mm以下である熱可塑性樹脂(例えばPET)を主たる材料とするプリフォーム1を用いる場合は、プリフォーム1の外側表面温度が110℃以上150℃、より好ましくは100℃から135℃以下の状態でプリフォーム1を温度調整部20の温調キャビティ型22に挿入するようになっている。
【0045】
また、ガラス転移温度が50℃以上150℃以下、肉厚が3.0mm以上10.0mm以下、より好ましくは3.5mm以上7.0mm以下である熱可塑性樹脂(例えばPET製)を主たる材料とするプリフォーム1を用いる場合は、プリフォーム1の外側表面温度が100℃以上140℃以下、より好ましくは85℃から130℃の状態でプリフォーム1を温度調整部20の温調キャビティ型22に挿入するようになっている。
【0046】
このとき、射出成形部10でのプリフォーム1の成形時間、すなわち、ネック型50が射出成形部10で待機(静止)している時間は短く設定され、射出成形部10での冷却時間を短くし、温度調整部20で不足分の冷却時間を確保している。例えば、PET製の肉厚2.85mmのプリフォーム1を用いて容器1aを製造する際には、射出成形部10での射出成形から取出部40での容器1aの取出しまでの一連の工程からなる1サイクルに要するサイクル時間は約5.0~約10.0秒、すなわち各工程の処理時間は約10.0秒以下であり、PET製の肉厚3.85mmのプリフォーム1を用いて容器1aを製造する際には、サイクル時間は約10.0~約16.4秒、すなわち各工程の処理時間は約16.4秒以下である。
【0047】
以下、射出成形部10で射出成形されたプリフォーム1の温度調整部20における温度調整について具体的に説明する。
【0048】
図6は、壁部5(胴部2a)の肉厚が1.0mmから4.0mmのとき(より好ましくは1.5mmから3.5mmのとき)、具体的には、肉厚2.85mmのプリフォームを温度調整したときの温度分布のグラフを示し、
図7は、壁部5(胴部2a)の肉厚が3.0mmから10.0mmのとき(より好ましくは3.5mmから7.0mmのとき)、具体的には、肉厚3.85mmのプリフォームを温度調整したときの温度分布のグラフを示す。
図6(a)及び
図7(a)は、従来技術によりプリフォームを温度調整したときのグラフを示し、
図6(b)及び
図7(b)は、本実施形態によりプリフォームを温度調整したときのグラフを示す。
【0049】
図6(a)において、横軸は肉厚方向の位置を示し、縦軸は温度を示し、温度分布曲線C1は温度調整前の温度分布を示し、温度分布曲線C2は温度調整後の温度分布を示し、直線L1は温度分布曲線C1の近似直線を示し、直線L2は温度分布曲線C2の近似直線を示している。
図6(b)において、横軸は肉厚方向の位置を示し、縦軸は温度を示し、温度分布曲線C3は温度調整前の温度分布を示し、温度分布曲線C4は温度調整後の温度分布を示し、直線L3は温度分布曲線C3の近似直線を示し、直線L4は温度分布曲線C4の近似直線を示している。
図7(a)において、横軸は肉厚方向の位置を示し、縦軸は温度を示し、温度分布曲線C5は温度調整前の温度分布を示し、温度分布曲線C6は温度調整後の温度分布を示し、直線L5は温度分布曲線C5の近似曲線を示し、直線L6は温度分布曲線C6の近似曲線を示している。
図7(b)において、横軸は肉厚方向の位置を示し、縦軸は温度を示し、温度分布曲線C7は温度調整前の温度分布を示し、温度分布曲線C8は温度調整後の温度分布を示し、直線L7は温度分布曲線C7の近似曲線を示し、直線L8は温度分布曲線C8の近似曲線を示している。なお、温度分布曲線C1~C8の温度は、その肉厚位置における壁部5(より具体的には胴部2a)の平均温度を示している。
【0050】
肉厚2.85mmのプリフォーム1を従来技術により温度調整する際には、射出成形されたプリフォーム1を射出成形部10で事前に十分に冷却する必要があるため、射出成形工程に要する時間、すなわち、ネック型が射出成形部に待機している時間は約12.9秒以下となっている(射出成形部10の型開閉動作およびプリフォーム1の搬送にかかる機械動作時間(移送時間)が約4.0秒の場合、プリフォーム1の射出成形時間は約8.9秒となる。以下の例でも、機械動作時間を約4.0と仮定する)。
【0051】
プリフォーム1は、射出成形部にて十分に冷却された後に温度調整部に搬送されており、
図6(a)に示すように、温度調整部に搬送されたときの温度分布曲線C1は外側表面温度が内側表面温度より高くなっている。このとき、直線L1は外側表面温度が最も高くなるように、プリフォーム1の内側から外側に向かって右上がりになっており、外側表面温度は約99℃(胴部2aの平均温度は約98℃)である。
【0052】
温度調整部で温調(冷却を行わずに偏温解消や均温化、温度低下の抑止を主目的とした温度調整処理(加熱処理))された後の温度分布曲線C2も外側表面温度が内側表面温度より高くなっている。このとき、直線L2は外側表面温度が最も高くなるようにプリフォーム1の内側から外側に向かって右上がりになっており、外側表面温度は約95℃(胴部2aの平均温度は約93℃)である。
【0053】
一方、本実施形態に係る温度調整部20により温度調整する際には、射出成形されたプリフォーム1は射出成形部でほとんど冷却されないため、射出成形工程に要する時間、すなわち、ネック型50が射出成形部10に待機している時間はたったの約10.0秒以下となっている(プリフォーム1の射出成形時間は射出時間の約4.0秒と冷却時間の約2.0秒の合計で約6.0秒となる)。
【0054】
プリフォーム1は、射出成形部10にてほとんど冷却されずに温度調整部20に搬送されており、
図6(b)に示すように、温度調整部20に搬送されたときの温度分布曲線C3は外側表面温度が内側表面温度より低くなっている。このとき、直線L3は外側表面温度が最も低くなるように、プリフォーム1の内側から外側に向かって右下がりになっており、外側表面温度は約120℃(100℃から135℃の温度範囲(胴部2aの平均温度は約125℃))である。
【0055】
温度調整部20で冷却された後の温度分布曲線C4は外側表面温度が内側表面温度と略同じ高さになっている。このとき、直線L4は外側表面温度が最も高くなるようにプリフォーム1の内側から外側に向かって右上がりになっており、外側表面温度は約90℃(85℃から105℃の温度範囲(胴部2aの平均温度は約90℃))である。
【0056】
本実施形態に係るブロー成形装置100は、温度調整部20に搬送されたときのプリフォーム1の壁部5(胴部2a)の肉厚方向において、内側から外側に向けて温度が概ね下がっていく状態になっている。
【0057】
一方、温度調整部20で冷却されたプリフォーム1は、温度調整部20に挿入(搬送)された時点の温度から外側表面温度が15℃以上温度低下するように内外表面層を介して内部層が冷却され、十分に冷却されたプリフォーム1の壁部5(胴部2a)の肉厚方向において、内側から外側に向けて温度が概ね上がっていく状態になっている。上記から分かるように、温度調整部20では、プリフォーム1の内側表面の冷却強度の方が外側表面の冷却強度よりも高く設定されている。
【0058】
次に、肉厚3.85mmのプリフォームの温度調整について
図7を参照して説明する。
肉厚3.85mmのプリフォームを従来技術により温度調整する際には、肉厚2.85mmのプリフォーム1を用いた場合と同様に、射出成形されたプリフォーム1を射出成形部で十分に冷却する必要があるため、射出成形工程に要する時間、すなわち、ネック型が射出成形部に待機している時間は約20.9秒以下となっている(プリフォーム1の射出成形時間は約14.9秒となる)。
【0059】
プリフォーム1は、射出成形部にて十分に冷却された後に温度調整部に搬送されており、
図7(a)に示すように、温度調整部に搬送されたときの温度分布曲線C5は外側表面温度が内側表面温度より高くなっている。このとき、直線L5は外側表面温度が最も高くなるようにプリフォーム1の内側から外側に向かって右上がりになっており、外側表面温度は約94℃(胴部2aの平均温度は約102℃)である。
【0060】
温度調整部で温調(加熱処理)された後の温度分布曲線C6も外側表面温度が内側表面温度より高くなっている。このとき、直線L6は外側表面温度が最も高くなるように、プリフォーム1の内側から外側に向かって右上がりになっており、外側表面温度は約103℃(胴部2aの平均温度は約100℃)である。
【0061】
一方、本実施形態に係る温度調整部20により温度調整する際には、射出成形されたプリフォーム1は射出成形部10でほとんど冷却されないため、射出成形工程に要する時間、すなわち、ネック型50が射出成形部10に待機している時間はたったの約16.4秒以下となっている(プリフォーム1の射出成形時間は約12.9秒となる)。
【0062】
プリフォーム1は、射出成形部10にてほとんど冷却されずに温度調整部20に搬送されており、
図7(b)に示すように、温度調整部20に搬送されたときの温度分布曲線C7は外側表面温度が内側表面温度より低くなっている。このとき、直線L7は外側表面温度が最も低くなるように、プリフォーム1の内側から外側に向かって右下がりになっており、外側表面温度は約115℃(85℃から130℃の温度範囲(胴部2aの平均温度は約126℃)である。
【0063】
温度調整部20で冷却された後の温度分布曲線C8は外側表面温度が内側表面温度と略同じ高さになっている。このとき、直線L8は外側表面温度が最も高くなるようにプリフォーム1の内側から外側に向かって右上がりになっており、外側表面温度は約90℃(75℃から100℃の温度範囲(胴部2aの平均温度は約94℃))である。
【0064】
以上により、温度調整部20に搬送されたときのプリフォーム1の壁部5(胴部2a)の肉厚方向において、内側から外側に向けて温度が概ね下がっていく状態になっている。
【0065】
一方、温度調整部20で冷却されたプリフォーム1は、温度調整部20に挿入(搬送)された時点の温度から外側表面温度が15℃以上温度低下するように内外表面層を介して内部層が冷却され、十分に冷却されたプリフォーム1の壁部5(胴部2a)の肉厚方向において、内側から外側に向けて温度が概ね上がっていく状態になっている。
【0066】
本実施形態に係るブロー成形装置100は、射出成形部10で成形したプリフォーム1の外側表面温度が内側表面温度より高くなる前にプリフォーム1を温度調整部20に挿入し、温度調整部20にてプリフォーム1の少なくとも外側表面温度が温度調整部20に搬送された時点と比較して10℃から50℃の温度範囲で低下するように、プリフォーム1を内外同時に冷却させる。これにより、射出成形工程を短時間で行うことができて成形サイクル時間が短縮化されるとともに、温度調整部20で十分に冷却されるため、ホットパリソン式射出ブロー成形法であっても良好な品質の容器を製造することができる。
【0067】
また、
図6や
図7で示されているように、ブロー成形部30に搬送されるプリフォーム1の温度、つまり、ブロー成形される直前のプリフォーム1の温度は従来の方法よりも低温に設定されている。これにより、ブロー成形時にプリフォームを従来の方法より良好に配向延伸(略均等な二軸延伸)させることができ、製造される容器の透明性や物性を向上させ、さらに、容器にフィッシュアイ(涙模様)、リング模様(伸びムラ)およびオレンジピール(梨地状態の表面荒れ)といった成形不良(外観不良)低減させることが可能になる。
【0068】
上述した如く、
図1に示した4ステーションタイプの実施形態において、プリフォーム1を射出成形部10から温度調整部20へ搬送する時間を利用してプリフォーム内外層間の均温化(以下、第一の均温化という)を行っていたが、更にプリフォーム1を温度調整部20からブロー成形部30へ搬送する間の時間を利用して第二の均温化を行ってもよく、以下これらについて詳しく述べる。
【0069】
まず
図8のフローチャートにより、第一の均温化工程について再度説明する。同図中、プリフォームから最終的に容器を得るために、4ステーションタイプの射出成形工程101、温調工程103、ブロー成形工程104及び容器の取り出し工程105が連続的に設けられるが、射出成形工程101と温調工程103との間に、第一の均温化工程102が設けられている。これにより、上述した如く、射出成形工程101と温調工程103との間の短いプリフォームの搬送時間(移送時間)を利用してプリフォーム内外層間の温度差を解消して内外層間の温度分布を均温化させる。従って、温調工程103における温度調整作業を効率化することができる。
【0070】
次に、
図9のフローチャートにより、第二の均温化工程について説明するが、同図中、
図8と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。これによれば、上記第一の均温化工程に加えて、温調工程103とブロー成形工程104との間に、第二の均温化工程106が更に設けられるが、その理由は以下の通りである。
【0071】
温調工程103でプリフォームを温調・冷却する場合、多段式温調キャビティ型(
図4に示す温調キャビティ型22が上下方向に複数段分割して積み重なった形状のもの)の隣接段どうしの分割面(エアベント)に対応する部位(壁部5)が空気層に接触して低温になったり、冷却ブロー法においては温調工程時のプリフォーム1への冷却空気の当て方(流し方)によりプリフォーム1が局所的に低温になったりする現象(均温化の不足、偏温の残存)が発生して、これが引き続いてのブロー成形工程における容器の成形不良(外観不良)、例えば容器表面のリング模様、涙模様等の発生を誘発するおそれがある。また、温調工程103の各部材を最適に調整しても、プリフォーム1の偏温が解消しきれない場合も多く、温調工程103の後もプリフォーム1の温度分布を微調節したい場合がある。しかしながら、第二の均温化工程106により温調済みプリフォーム1をブロー成形直前に所定時間、例えば2-4秒間だけ放置(待機)させることにより、プリフォーム1の局所的な低温が緩和されて全体的な均温化が進み、上記成形不良の発生が防止される。また、第二の均温化工程106において当初の射出成形工程101に由来するプリフォーム1の保有熱と自然放冷を活用してプリフォーム1の温度分布を自然に微調整させて偏温を解消でき、当該第二の均温化工程106が無い場合と比べて外観や肉厚分布、物性がより良い容器が成形できる。
【0072】
また、第一の均温化工程102は、射出成形部101から温度調節部20への搬送時間のみを利用して行われるのに比して、第二の均温化工程106では、実際には、温度調節部20からブロー成形部30への搬送時間と、ブロー型31の型閉じ動作の遅延時間(待機時間)とを加えた時間を利用して行う。即ち、プリフォーム1を、ブロー型31の型開き状態の一対のブロー割型の間に放置(待機)させながら、後続(後の成形サイクル分)のプリフォームの射出成形及び温調工程を平行して行う。これにより、第二の均温化によるサイクル時間の伸長は最小限で済み、時間的効率が良い。従って、第二の均温化の時間は第一の均温化の時間より長くなるように設定するのが望ましい。
また場合によっては、第一の均温化工程のみ又は第二の均温化工程のみを採用しても良いことは勿論である。
【0073】
(第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係るブロー成形装置の模式図を示し、
図11は、全行程の工程図を示している。なお、第2実施形態では第1実施形態と異なる部分について説明し、図中の第1実施形態と略同一の構成に対しては同一の符号を用いている。
【0074】
図10において、工程1はプリフォーム成形工程を示し、工程2はプリフォーム後冷却工程(強制冷却工程)を示し、工程3及び4はプリフォーム温度平衡工程(自然放冷工程)を示し、工程5は再加熱工程を示し、工程6は均温化工程を示し、工程7は延伸ブロー成形工程を示し、工程8は容器取出し工程を示している。なお、工程1のプリフォーム成形工程は第1実施形態の射出成形部10による射出成形工程に相当し、工程2乃至6のプリフォーム後冷却工程、プリフォーム温度平衡工程、再加熱工程、及び均温化工程は、第1実施形態の温度調整部20による温度調整工程に相当し、工程7の延伸ブロー成形工程は第1実施形態のブロー成形部30によるブロー成形工程に相当し、工程8の容器取出し工程は第1実施形態の取出部40による取出し工程に相当する。
【0075】
上述の第1実施形態に係るブロー成形装置100では、回転盤が射出成形部10、温度調整部20、ブロー成形部30、及び取出部40上で垂直軸を中心に反時計回りに90度ずつ回転するように設けられている(
図1参照)。これにより、ブロー成形装置100は、4組のネック型50の各々は、射出成形部10、温度調整部20、ブロー成形部30、及び取出部40を等しい時間で順次移動して、ネック型50に保持されたプリフォーム1に対して各工程が等しい時間だけ実施されるようになっている。
【0076】
これに対して、第2実施形態に係るブロー成形装置200は、
図10に示すように、レール(搬送路)6上をプリフォーム1が順次搬送されて射出成形ステーション110、後冷却ステーション115、温度調整ステーション(再加熱ステーション)120、ブロー成形ステーション130、及び取出しステーションによる各工程を経るようになっている。これにより、ブロー成形装置200は、搬送されるプリフォーム1に対して順次、冷却や温度調節が行われるようになっている。なお、後冷却ステーション115は、広義的には温度調整ステーション120の一部に含まれ、特にプリフォーム1の強制冷却を担うステーションである。
【0077】
ブロー成形装置200は、射出成形ステーション110で射出成形されたプリフォーム1を一度にまとめて温度調整やブロー成形を行わずに、複数回に分けてブロー成形を行っている。すなわち、射出成形ステーション110では一度に複数のM個(例えば12個×3列=36個)のプリフォーム1が射出成形されるが、レール6によりM個より小さいN個(例えば12個:同時ブロー成形個数)ずつ温度調整ステーション120に搬送されて温度調整された後に、N個(例えば12個)ずつブロー成形ステーション130でブロー成形されるように設けられている。射出成形ステーション110で射出成形されたプリフォーム1は工程2乃至4で冷却されるため、後冷却工程の後の温度調節ステーション120にて加熱ヒータを用いて加熱する構造になっている。なお、ブロー成形装置200の1成形サイクル時間は、プリフォーム1の射出成形時間(射出成形工程の時間)とほぼ同じと看做すことができる。また、1成形サイクル時間あたりのブロー成形回数はM/Nで規定される。M/Nは2回、3回または4回の整数が望ましいが、これに限定されない。つまり、射出成形された1バッチ分のプリフォームを複数回に分けてブロー成形する様態であれば何回でも良い。
【0078】
本実施形態に係るブロー成形装置200においても、第1実施形態と同様に、射出成形されるプリフォーム1は、熱可塑性の合成樹脂材料(例えばPET樹脂)のガラス転移点より高い温度の熱を有した柔らかい状態のまま(離型後にプリフォーム1の外形が維持できる程度に外層(スキン層)の材料が固化して、内部層(コア層)の材料が融点近傍の高温状態で)射出成形ステーション110から離型される。すなわち、ブロー成形装置200は、射出成形ステーション110で成形したプリフォーム1の外側表面温度が内側表面温度より高くなる前にプリフォーム1を射出成形ステーション110の射出成形キャビティ型12から取り出し、工程2のプリフォーム後冷却工程で急冷し、次いで、工程3及び4の自然放冷工程(プリフォーム温度平衡工程)をして、射出成形工程の離型直後からプリフォーム1の胴部2bの平均温度を10℃以上50℃以下だけ冷却させている。これにより、射出成形時に熱を蓄えたプリフォーム1は、内部層の保有熱を活かしながらブロー成形ステーション130で最終的な容器1aに成形される。
【0079】
ブロー成形装置200は、
図11に示すように、射出成形工程を短くするのとともに温度調整工程の温調ポット型を用いた後冷却機能により、プリフォーム成形サイクル(射出成形サイクル)を短くしている。このとき、プリフォーム1を成形する射出成形ステーション110にて、冷却時間は射出時間(充填時間)の2/3以下、1/2以下、1/3以下、好ましくは略0(ゼロ)秒になるように設けられている。
【0080】
以下、各工程について説明する。
先ず、射出成形工程にて、ブロー成形装置200は、
図11に示すように、所定の射出時間をかけて5℃~20℃に設定された射出成形型(第1実施形態の射出成形型11、12、50と同様の構成)の成形空間に材料を射出(充填)し、限りなく0(ゼロ)秒に近い短い所定の冷却時間を挟んだ後に、プリフォーム1の射出成形を完了させる。次いで、ブロー成形装置200は、所定の機械動作時間をかけて、プリフォーム1を射出成形ステーション110からや受け取りポット型(不図示)に取り出す(離型する、
図10の工程1、
図11の射出成形工程)。例えば、射出時間(充填時間)は3.0秒から3.5秒、冷却時間は0.5秒から1.0秒に、各々設定される。
【0081】
射出成形ステーション110(
図10)における機械動作時間は射出成形型の型開閉時間でありプリフォーム1を射出成形型から受け取りポット型に転送する時間である。機械動作時間は、例えば、3.5秒から4.0秒に設定される。射出型開閉機構(不図示)や受け取りポット型の機械的動作によりプリフォーム1が取り出されて搬送される際に周囲空気や受取ポット型との接触により冷却されるため、温調工程におけるプリフォーム1の受け取り及び強制冷却を実質的に兼ねている(
図11の第1の温調工程(受取冷却工程))。このとき、本実施形態の射出成形時間(射出時間、冷却時間、及び機械動作時間の合計)は、従来技術(WO2012-057016A)の射出成形時間(在来射出成形サイクル)よりも短い時間に設定されている。
【0082】
受取冷却工程を行うと、ブロー成形装置200(
図10)は、プリフォーム1を受取ポット型に入れられたまま射出成形ステーション110から退避移動して、搬送部材(不図示)によりプリフォーム1を温度調整ステーション120へと転送する。この機械動作時間を利用して、プリフォーム1の均温化処理を行う。このとき、プリフォーム1の外層(スキン層)は、内層(コア層)からの熱移動により、射出成形ステーション110の離型直後の温度と比較して、80℃以上上昇する。
【0083】
第1の温調工程が完了すると、ブロー成形装置200は、温度調整ステーション120、より正確には後冷却ステーション115の温調キャビティ型22(冷却ポット型)に搬入されたプリフォーム1に対して、強制冷却工程(後冷却工程)を行う(
図10の工程2、
図11の第2の温調工程(強制冷却工程))。プリフォーム1は、材料のガラス転移点温度以下(例えば60℃以下)に設定された温調キャビティ型22と外表面側で接触し、強制冷却される。
【0084】
第2の温調工程が完了すると、ブロー成形装置200(
図10)は、温調キャビティ型22の反転・下降といった機械動作により、プリフォーム1をレール6に待機された搬送部材(不図示)に転送する(
図10の工程3)。次いで、電動モータやスプロケット等による機械動作で、プリフォーム1を搬送部材とともにレール6に沿って温度調整ステーション120に移送する(
図10の工程4)。この機械動作時間中(例えば、3.5秒から4.0秒)に、ブロー成形装置200は、温度調整ステーション120において、後冷却工程の終了直後から再加熱工程の開始直前まで、プリフォーム1を自然冷却及び均温化させる(
図11の第3の温調工程(自然冷却工程))。
【0085】
プリフォーム1が第3の温調工程で冷却及び均温化されると、ブロー成形装置200は、温度調整ステーション120の再加熱工程にて、プリフォーム1に対して再加熱、均温化、及び再加熱の順に加熱と均温化を行う(
図10の工程5、
図11の第4の温調工程(再加熱工程))。
【0086】
プリフォーム1が再加熱、均温化、及び再加熱の順による加熱及び均温化されると、ブロー成形装置200は、レール6に沿って大気中で搬送されることによりプリフォーム1を均温化させた後、プリフォーム1をブロー成形ステーション130内に搬入する(
図10の工程6、
図11の第5の温調工程(均温化工程))。ブロー成形直前に、プリフォーム1の内外層間(スキン層-コア層間)または胴部2bの肉厚方向で熱移動を生ぜしめて内外層間の温度差を低減させ、プリフォーム1の温度分布の平衡安定化が行えるため、ブロー成形直前のプリフォーム1の温度条件の最適化が図れる。なお、この工程の時間は、例えば、約1.0秒から2.0秒に設定される。
【0087】
ブロー成形ステーション130内にプリフォーム1が搬入されると、ブロー成形装置200は、ブロー工程にて、プリフォーム1をブロー成形して容器1aを成形する(
図10の工程7、
図11のブロー成形工程)。
【0088】
プロフォーム1をブロー成形して容器1aを成形すると、ブロー成形装置200は、機械動作により搬出し、容器1aを取り出す(
図10の工程8、
図11の取り出し工程)。なお、本実施形態では、射出工程にて1度に射出したM個(例えば36個)のプリフォーム1に対して、M個より小さいN個(12個)ずつ温調工程、自然冷却工程、再加熱工程、及びブロー工程を行っている。このとき、温調工程、自然冷却工程、及び再加熱工程は、プリフォーム1がレール6に沿って搬送されて連続的に実施されるが、ブロー工程では3回に分けて12個ずつブロー成形を行うようになっている。
【0089】
以上の工程により、ブロー成形装置200によるサイクルを短縮させた全行程に要する時間は、在来の装置による全行程に要する時間よりも短くなっている。
【0090】
図12は、全行程におけるプリフォーム1の胴部2bにおける平均温度の変化を示している。この図において、横軸は時間を示し、縦軸はプリフォーム1の温度を示している。ここで、射出成形工程は
図10の工程1(
図11の射出成形工程)に対応し、温度平衡工程1は
図10の工程1(
図11の第1の温調工程)に対応し、後冷却工程は
図10の工程2(
図11の第2の温調工程)に対応し、温度平衡工程2は
図10の工程4(
図11の第3の温調工程)に対応し、加熱1工程、均温工程、及び加熱2工程は
図10の工程5(
図11の第4の温調工程)に対応し、温度平衡安定化工程は
図10の工程6(
図11の第5の温調工程)に対応している。
【0091】
射出成形工程にて同時に射出成形されたプリフォーム1は、
図12に示すように、温度平衡工程までは同じ条件で各工程が行われているが、加熱1工程以降は3回にわけて各工程が行われていることが分かる。すなわち、射出成形工程にて1度に射出成形された36個のプリフォーム1の内、12個はルートR1に示すように温度変化し、別の12個はルートR2に示すように温度変化し、さらに別の12個はルートR3に示すように温度変化している。ここで、温度平衡工程2にてプリフォーム間の温度差がほとんど無い状態まで落ち着いてから各ルートR1,R2,R3に分けている。温度調整ステーション120の後冷却工程においてプリフォーム1をブロー適温以下まで急冷することで、プリフォーム1間の射出成形工程に由来する偏温(熱履歴)の差異を効率的に(積極的に)低減させることができる。また、射出成形ステーション110から温度調整ステーション120の再加熱工程に至るまでに、プリフォーム1は偏温が除去されて均温化され、さらに、ガラス転移点近傍または以下の温度にまで十分に冷却されている。これにより、プリフォーム1の時間軸に対する温度減少率(温度勾配)が緩くなるため、再加熱工程にて異なった時間で搬入出される各ルートR1,R2,R3のプリフォーム1の温度履歴を略同一に設定することができる。つまり、いずれのルートR1,R2,R3を経たプリフォーム1を略同一の温度に調整できるため、最終的な製品1aは略同じ品質になるようになっている。なお、プリフォーム1は従来よりも低温かつ延伸可能な状態でブロー成形ステーション130に搬入させるのが望ましい。よって、本実施形態に係るブロー成形装置200では、再加熱工程におけるヒータの消費電力を従来の装置よりも低減させることができる。
【0092】
図13は、ネック型及びプリフォームの例を示している。
ブロー成形装置200のネック型は、
図13に示すように、リップ金型デザインが適用されていることにより、小型サイズの型締め装置で最大の取数、最大のネックサイズを可能にしている。なお、
図13において、
図13(a)は、プリフォーム1のサポートリングを射出キャビティ型との分割面(PL:パーティングライン)に設定した第一のリップ金型(標準リップ金型)を示し、
図13(b)は、サポートリング下方の胴部上方を逆テーパデザインにして大きなサイズ(容量)の容器に適したプリフォーム1の形成を可能にする第二のリップ金型(シングルリップ金型)を示し、
図13(c)は、リップ金型のサイズを小さくして上下端に二つの縮径部(テーパー部と逆テーパー部)を配してプリフォーム1の射出成形時の型締め力を軽減させることができる第三のリップ金型(ダブルリップ金型)を示している。
【0093】
本実施形態によるブロー成形装置200は、在来の薄肉プリフォームを用いる際のサイクル時間を短縮させる概念を変えるものである。ブロー成形装置200では、高延伸倍率の(従来よりも胴部が肉厚で短い)プリフォームデザインを採用していることにより配向度を向上させる効果を有している。すなわち、高倍率延伸時に賦形温度が下がる低温延伸ブロー特性利用することで合成樹脂材料の配向度を向上させて、物性(剛性)の高い容器を製造することができる。また、温調ステーション120に再加熱工程を有しているため、プリフォーム1の胴部上方がブロー適温以下まで冷却されてしまう逆テーパー型デザインの第二のリップ金型や、型締め力を削減させるデザインの第三のリップ金型(ダブルテーパリップ等)に対応している。
【0094】
さらにまた、ブロー成形装置200は、射出成形工程1回中にブロー成形工程を複数回(例えば3回)実施できるため、ボトル容器1aの生産量を増加させるほど、ボトル容器1aの1本当たりの製造に伴う消費電力を削減させることができる。例えば、射出成形ステーション110における冷却時間を短縮化してプリフォーム1を肉厚で短い形状に設計した本実施形態では、成形サイクル時間を従来の約11秒から約7秒へと短縮させることができる。これにより、単位時間当たりのボトル容器1aの生産量を約13000本から約18000本まで増加させることができる。単位時間あたりのブロー成形装置200の消費電力は略同一であるのに対し生産量を約38%も増加させることできるため、ボトル容器1aの1本当たりの製造に伴う消費電力は従来よりも約38%も削減させることができる。
【0095】
さらに、ブロー成形装置200は、射出成形工程とブロー成形工程の間に、多段階からなる温度調整工程(後冷却工程、複数の均温化工程、再加熱工程および温度平衡安定化工程)と機械動作時間を利用した複数の均温化工程を備えているため、ネック型(リップ型)のデザインによらないプリフォーム1の形状が選択でき、さらに温度分布を調整可能な十分な加熱時間を確保することができる。
【0096】
また、プリフォーム1を形成する合成樹脂材料はPETに限定されない。例えば、PET以外の合成樹脂材料として、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PC(ポリカーボネート)、Tritan(トライタン)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PCLA(ポリシクロへキシレンジメチレンテレフタレート)、等が利用可能である。
【符号の説明】
【0097】
1…プリフォーム
1a…容器
2…貯留部
2a…胴部
2b…底部
3…ネック部
4…ゲート
5…壁部
6…レール
10…射出成形部
11…射出コア型
12…射出キャビティ型
20…温度調整部
21…温調コア型
22…温調キャビティ型
30…ブロー成形部
31…ブロー型
40…取出部
50…ネック型
61…エア導入部材
62…ロッド部材
62a…内方流通口
63…嵌合コア
64…外方流通口
100…ブロー成形装置
101…射出成形工程
102…第一の均温化工程
103…温調工程
104…ブロー成形工程
105…取り出し工程
106…第二の均温化工程
110…射出成形ステーション
115…後冷却ステーション
120…温度調整ステーション
130…ブロー成形ステーション
200…ブロー成形装置
Z…軸心