(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】診断目的のためのデータの収集および解析
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20240507BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20240507BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G01N21/64 F
G01N21/64 E
G01N21/27 A
A61B10/00 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020159809
(22)【出願日】2020-09-24
(62)【分割の表示】P 2017503917の分割
【原出願日】2015-07-24
【審査請求日】2020-10-20
(32)【優先日】2014-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507148294
【氏名又は名称】ユニバーシティー ヘルス ネットワーク
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ダコスタ,ラルフ
【審査官】横尾 雅一
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-521237(JP,A)
【文献】特開2011-103118(JP,A)
【文献】米国特許第06678398(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2010/0228183(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0118608(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/74
C12Q 1/00 - C12Q 3/00
A61B 5/00 - A61B 5/01
A61B 9/00 - A61B 10/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスプレイ、
画像センサー、および
プロセッサを有するモバイル通信デバイスと、
前記モバイル通信デバイス上に設置されるように構成されたハウジングを含むアダプターとを含む、組織における創傷部に関するデータを取得するためのシステムであって、
前記アダプターは、
組織における創傷部に励起光を照射するように構成された1つ以上の励起光源であって、ここにおいて第1の励起光源は、組織における創傷部における1つ以上のバイオマーカーが蛍光を発することを引き起こす、400nm~450nmの間の第1の波長を有する励起光を発するように構成されている、励起光源と、
組織における創傷部への、第1の励起光源により発せられた励起光の照射に応答性であり、細菌の自己蛍光および細菌蛍光に対応する波長を有する光信号が通過可能であるように構成された1つ以上のフィルターであって、ここにおいて1つ以上のフィルターは、第1の波長に対応する波長を有する光信号の通過をブロックするようにさらに構成されている、フィルターと、
組織における創傷部に関する熱情報を検出するように構成されたサーマルセンサーとを有し、
ここにおいて、前記アダプターが設置位置にある場合、前記画像センサーがフィルタリングされた光信号を検出できる位置となるように、少なくとも1つのフィルターのうちの1つのフィルターが前記モバイル通信デバイスの前記画像センサーと一直線上に配置されており、
ここにおいて前記プロセッサは、検出され、フィルタリングされた信号を受信し、
検出され、フィルタリングされた信号をピクセル強度を用いて解析し、検出された熱情報を受信し、検出され、フィルタリングされた信号および検出された熱情報に基づき、組織における創傷部に関するデータを出力するように構成されており、ここにおいて出力データは、2つ以上の組織における創傷部のサイズ、組織における創傷部の細菌量、および組織における創傷部の温度に関するものであ
り、前記プロセッサは検出された熱情報を細菌量のデータと相関させるように構成されている、手持ち式の携帯型システム。
【請求項2】
出力データが前記モバイル通信デバイスのディスプレイ上に表示される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
出力データが組織における創傷部の少なくとも1つの画像を含む、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
生物学的、組織性、細胞性、および分子性成分、バイオマーカーの1以上の蛍光、吸光度、および反射率のスペクトルデータ、ならびに、創傷部においてまたは創傷部の周囲で検出された蛍光、吸光度または反射率と比較するための非生物学的材料の所定のルックアップテーブルを保存するメモリーをさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記プロセッサが、さらに、創傷部清拭プロトコル、創傷部デブリードマンプロトコル、創傷部サンプリングプロトコル、創傷部処置プロトコルおよび他の創傷部介入ストラテジーのうちの少なくとも1つが、少なくとも一部において前記出力データに基づいて特定されるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記プロセッサは、出力データの少なくとも一部に基づいた組織における創傷部についての抗生物質の処置を出力するようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
第1の励起光源が405nm±10nmの波長を有する励起光を発するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
少なくとも1つのフィルターが405nm±10nmの波長を有する光信号の通過をブロックするようにさらに構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
少なくとも1つのフィルターが、前記アダプターが設置位置にあるときに、500~550nmの波長を有する光信号および/または600~660nmの波長を有する光信号を、前記画像センサーへと通過させることを許容するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
白色光を組織における創傷部に照射するように構成された白色光源をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記アダプターが白色光源をさらに備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記モバイル通信デバイスが、スマートフォン、携帯電話、
またはタブレッ
トを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
1つ以上の励起光源が、紫外、可視光、近赤外および赤外の範囲の2以上に波長を有する光源の組み合わせを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記画像センサーが300~900nmの波長範囲に対して感受性のものである、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記システムが、マルチスペクトルイメージングおよび/またはハイパースペクトルイメージングのために構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
白色光イメージングのための白色光源をさらに含み、ここにおいて前記出力データは蛍光画像データおよび白色光画像データを含む、請求項13に記載のシステム。
【請求項17】
前記出力データは組織における創傷部の少なくとも1つの画像を含み、前記画像は蛍光画像データおよび白色光画像データを共に記録する、請求項16に記載のシステム。
【請求項18】
組織における創傷部に関するデータを取得するために手持ち式の携帯型デバイスを使用する方法であって、
モバイル通信デバイスに設置されたアダプターで、アダプターに組み合わせられた第1の励起光源により発せられた励起光を組織における創傷部に照射するステップであって、前記励起光は、照射された組織における創傷部中および/または組織における創傷部上において少なくとも1つのバイオマーカーが蛍光を発することを引き起こす第1の波長または400nm~450nmの範囲の波長帯域を含む、ステップと、
前記アダプターと組み合わせられた少なくとも1つのフィルターで、第1の励起光源により発せられた励起光で組織における創傷部の照射に応じて発せられた光信号をフィルタリングするステップであって、ここにおいて少なくとも1つのフィルターは細菌の自己蛍光および細菌の蛍光に応じた波長を有する光信号をモバイル通信デバイスへと通過させることができるように構成されたものである、ステップと、
モバイル通信デバイスの光学センサーで組織における創傷部に関する細菌の自己蛍光データおよび細菌の蛍光データを収集するステップであって、ここにおいて前記光学センサーはフィルタリングされた信号を検出するように構成されたものである、ステップと、
手持ち式の携帯型デバイスのサーマルセンサーで組織における創傷部に関する熱データを収集するステップと、
モバイル通信デバイスのプロセッサで収集された細菌の自己蛍光データ、細菌の蛍光データおよび熱データを受信し、
収集された細菌の自己蛍光データおよび細菌の蛍光データをピクセル強度を用いて解析し、収集された細菌の自己蛍光データ、細菌の蛍光データおよび熱データに基づき、2つ以上の組織における創傷部のサイズ、組織における創傷部の細菌量、および組織における創傷部の温度に関するデータ
、熱データと相関される細菌量のデータを出力するステップとを含む、方法。
【請求項19】
前記モバイル通信デバイスが、スマートフォン、携帯電話、
またはタブレッ
トを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
2つ以上の組織における創傷部のサイズ、組織における創傷部の細菌量、および組織における創傷部の温度に関するデータを出力するステップが、前記モバイル通信デバイスのディスプレイのスクリーンにデータを出力することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
収集された細菌の自己蛍光データおよび細菌の蛍光データの少なくとも一部に基づき、プロセッサで組織における創傷部中および/または組織における創傷部上の細菌の蛍光サインを特定するステップと、細菌の蛍光サインを、所定のルックアップテーブル中に保存されたスペクトルデータと比較するステップとをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
1つ以上のフィルターが、組織自己蛍光および組織蛍光に応じた波長を有する光信号を通過させることができるようにさらに構成されたものであり、光学センサーで創傷部に関する組織自己蛍光データおよび組織蛍光データを収集するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
組織における創傷部に関する熱データを収集するステップが、創傷部に関する熱画像データを収集することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
創傷部の感染状態を提供するために、自己蛍光データ、蛍光データ、および熱画像データを相関させるステップをさらに含み、ここにおいて自己蛍光データおよび蛍光データが細菌負荷データ、創汚染データ、創傷部コロニー形成データ、創傷部危機的コロニー形成データ、創感染データおよび細菌種データのうちの少なくとも1つを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
相関させたデータの少なくとも一部に基づき創傷部介入ストラテジーを決定するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
相関させたデータに基づき組織における創傷部について抗生物質処置を出力するステップをさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
収集された細菌の自己蛍光データおよび細菌の蛍光データの少なくとも一部に基づき、プロセッサで組織における創傷部中および/または組織における創傷部上の細菌の蛍光サインを特定するステップと、細菌の蛍光サインに基づき少なくとも1つの細菌株を特定するステップとをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項28】
細菌の蛍光サインに基づき2以上の細菌株の存在および/または位置を特定するステップと、2以上の細菌株を区別するステップとをさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
2以上の細菌株を区別するステップが、異なる色で示される各細菌株と共にモバイル通信デバイスのディスプレイに組織における創傷部の画像を表示するステップをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
収集された細菌の自己蛍光データおよび細菌の蛍光データの少なくとも一部に基づき組織における創傷部中または組織における創傷部上の複数の細菌蛍光サインを特定するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
細菌蛍光サインに基づき組織における創傷部中および/または組織における創傷部上の細菌株を区別するステップをさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
白色光源で組織における創傷部を照射するステップと、光学センサーで組織における創傷部に関する白色光データを収集するステップとをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項33】
励起光で組織における創傷部を照射するステップが、405nm±10nmの波長を有する励起光で組織における創傷部を照射することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項34】
第1の励起光源により発せられた励起光で組織における創傷部の照射に応じて発せられた光信号をフィルタリングするステップが、500~550nmの波長を有する光信号を光学センサーへと通過させることを許容することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項35】
第1の励起光源により発せられた励起光で組織における創傷部の照射に応じて発せられた光信号をフィルタリングするステップが、600~660nmの波長を有する光信号を前記モバイル通信デバイスの光学センサーへと通過させることを許容することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項36】
第1の励起光源により発せられた励起光で組織における創傷部の照射に応じて発せられた光信号をフィルタリングするステップが、500~550nmの波長を有する光信号および600~660nmの波長を有する光信号を前記モバイル通信デバイスの光学センサーへと通過させることを許容することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項37】
紫外、可視光、近赤外および赤外の範囲の2以上に波長を有する光源の組み合わせにより発せられた励起光で組織における創傷部を照射するステップをさらに含む、請求項18に記載の方法。
【請求項38】
前記光学センサーが300~900nmの波長範囲に対して感受性のものである、請求項18に記載の方法。
【請求項39】
収集された細菌の自己蛍光データおよび細菌の蛍光データの少なくとも一部に基づき、プロセッサで組織における創傷部中および/または組織における創傷部上の細菌の蛍光サインを特定するステップと、モバイル通信デバイスのディスプレイに細菌の蛍光サインに関するデータを出力するステップとをさらに含み、ここにおいて蛍光サインに関するデータを出力するステップは組織における創傷部のマルチスペクトル画像または組織における創傷部のハイパースペクトル画像を出力することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項40】
白色光源で組織における創傷部を照射するステップと、光学センサーで組織における創傷部に関する白色光データを収集するステップをさらに含み、ここにおいて2つ以上の組織における創傷部のサイズ、組織における創傷部の細菌量、および組織における創傷部の温度に関するデータを出力するステップが蛍光画像データおよび白色光画像データを出力することを含む、請求項18または37に記載の方法。
【請求項41】
蛍光画像データおよび白色光画像データを出力することが、蛍光画像データおよび白色光画像データを共に記録する、組織における創傷部の少なくとも1つの画像を出力することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
アダプターがさらに1つ以上の励起光源に電力を供給するためのバッテリーをさらに含む、請求項1または13に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2014年7月24日に出願された米国特許仮出願第62/028,386号の恩典を主張する。この仮出願の全内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0002】
診断目的のためのデータを収集するためのデバイスおよび方法を開示する。特に、本出願のデバイスおよび方法は、創傷部内の細菌量の経時的な評価および追跡に適したものであり得る。
【背景技術】
【0003】
背景
創傷ケアは大きな臨床的課題である。治癒する創傷および治癒しない慢性的な創傷は、いくつかの生物学的組織変化、例えば、炎症、増殖、結合組織のリモデリングおよび、共通する主要な問題である細菌感染と関連している。創傷部の感染の割合は臨床的に明らかでなく、特に高齢者集団において、創傷ケアと関連する経済的負担の増大の一因となる。現在、創傷部評価のゴールドスタンダードとしては、白色光下での創傷部位の直接目視検査を細菌スワブの無差別収集および組織生検と併用することが挙げられるが、時間を要し、費用がかかり、多くの場合、非感受性の細菌学的結果がもたらされる。これは処置のタイミングと有効性に影響を及ぼし得、定性的で主観的な目視評価では創傷部位の巨視的見識が得られるだけで、組織レベルおよび細胞レベルで起こっている根本的な生物学的および分子的変化に関する情報は得られない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
「生物学的および分子的」情報をリアルタイムで収集して解析し、かかる潜在的変化の早期特定およびその処置に関する手引きをもたらす比較的シンプルで補完的な方法が臨床的創傷部マネージメントにおいて望ましい。ハイリスク創傷部の早期認識により治療的介入が手引きされ、経時的な応答のモニタリングがもたらされ、したがって、特に慢性創傷による疾病率と死亡率の両方が大きく低減され得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
種々の例示的な実施形態により、標的の細菌量を該標的の蛍光画像データから測定する方法を提供する。該方法は、標的の蛍光画像において関心領域を特定すること、RGB画像を個々のチャネルに分離すること、該RGB画像の個々の緑色画像チャネルおよび赤色画像チャネルをグレースケールに変換すること、ならびにグレースケール強度が所与の閾値より上であったピクセルを計数することを含むものである。
【0006】
本教示の別の態様により、標的に関する診断用データを得る方法を提供する。該方法は、標的の少なくとも一部分に、手持ち式デバイスのハウジングと接続された少なくとも1つの光源によって放射される均一な励起光場を直接照射することを含むものであり、該ハウジングは、デジタルカメラを有する無線通信デバイスを受容するための収容部を含むものである。該少なくとも1つの光源は、標的の照射対象の該一部分内の少なくとも1種類のバイオマーカーが蛍光を発することを引き起こす少なくとも1つの波長または波長帯域を放射するものである。該方法は、さらに、標的の照射対象の該一部分に関する細菌の自己蛍光データを、無線通信デバイスのデジタルカメラの画像センサーで収集することを含むものである。無線通信デバイスはハウジング内に固定される。また、該方法は、収集された細菌の自己蛍光データをピクセル強度を用いて解析して、標的の照射対象の該一部分
の細菌量を測定することも含むものである。
【0007】
本開示のさらなる一態様により、組織内の創傷部に関するデータを取得するためのシステムを開示する。該システムは、標的表面に均一な励起光場が直接照射されるように構成された少なくとも1つの光源を備えている。標的表面は、創傷部の少なくとも一部分と創傷部の周囲領域を含むものである。光学センサーは、創傷部の照射対象の該一部分および創傷部の該周囲領域の照射に応答性の信号を検出するように構成されている。検出された各信号は、創傷部の照射対象の該一部分および創傷部の該周囲領域における内因性蛍光、外因性蛍光、吸光度および反射率のうちの少なくとも1つを示す。プロセッサは、検出された信号を受信し、検出された該信号のデータをピクセル強度を用いて解析し、創傷部の照射対象の該一部分および創傷部の該周囲領域の細菌量に関するデータを出力するように構成されている。該システムは、さらに、プロセッサによって出力された創傷部の照射対象の該一部分および創傷部の該周囲領域に関する該出力データを表示するためのディスプレイを備えている。
【0008】
本開示のまた別の態様により、組織内の創傷部に関するイメージングおよびデータの収集のための手持ち式の携帯型デバイスを開示する。該デバイスは、モバイル通信デバイスを受容するように構成された収容部を含むハウジングと、該ハウジングと連結されており、創傷部の少なくとも一部分と創傷部の周囲領域に均一な光場が直接照射されるように構成された少なくとも1つの光源とを備えている。モバイル通信デバイスはハウジングの該収容部内に固定され、モバイル通信デバイスは、内蔵型デジタルカメラを備えており、該デバイスの第1の面に配置されたタッチスクリーンディスプレイと該デバイスの第1の面と反対側の第2の面に配置されたカメラのレンズとを有する。モバイル通信デバイスはハウジング内に、デジタルカメラの画像センサーが、創傷部の該一部分および創傷部の該周囲領域への均一な光場の照射に応答性の光信号を検出するようにポジショニングされるように受容され、光信号の各々は、創傷部の照射対象の該一部分および創傷部の該周囲領域における内因性蛍光、外因性蛍光、反射率および吸光度のうちの少なくとも1つを示す。モバイル通信デバイスが該収容部内に固定されているとき、タッチスクリーンディスプレイの少なくとも一部分はユーザーが利用可能かつ視聴可能である。該デバイスは、さらに、検出された光信号を受信し、検出された該信号データをピクセル強度を用いて解析し、創傷部の照射対象の該一部分および創傷部の該周囲領域の細菌量に関するデータを出力するように構成されたプロセッサを備えている。
【0009】
本開示の別の態様により、標的に関する診断用データを得る方法を提供する。該方法は、標的の少なくとも一部分および該標的の周囲領域に、手持ち式デバイスのハウジングと接続された少なくとも1つの光源によって放射される均一な励起光場を直接照射することを含むものである。ハウジングは、デジタルカメラを有する無線通信デバイスを受容するための収容部を含むものである。該少なくとも1つの光源は、標的の照射対象の該一部分および標的の該周囲領域内の少なくとも1種類のバイオマーカーが蛍光を発することを引き起こす少なくとも1つの波長または波長帯域を放射するものである。該方法は、さらに、標的の照射対象の該一部分および標的の該周囲領域に関する細菌の自己蛍光データを、無線通信デバイスの該デジタルカメラの画像センサーにより収集することを含むものである。無線通信デバイスはハウジング内に固定される。該方法は、さらに、収集された細菌の自己蛍光データを解析して、標的の照射対象の該一部分および標的の該周囲領域の細菌量を測定すること、ならびに該標的の細菌量の変化を経時的に追跡することを含むものである。
【0010】
本開示のさらなる目的および利点は、一部を以下の説明において示し、一部は、以下の説明から自明となるか、または本開示の実施によって学習され得る。本発明の目的および利点は、添付の特許請求の範囲において特に指摘した要素および組合せによって実現およ
び達成される。
【0011】
前述の一般説明および以下の詳細説明はどちらも、例示的および説明的なものにすぎず、本開示を請求項に記載のとおりに限定するものではないことを理解されたい。
【0012】
添付の図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成し、本開示の実施形態の実例を示すものであり、本説明とともに本開示の原理を説明するために提供したものである。
【0013】
図面の簡単な説明
少なくともいくつかの特色および利点は、整合する諸実施形態の以下の詳細説明から明らかであり、詳細説明は添付の図面を参照して検討されたい。図において:
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの模式図である。
【
図2】
図2は、蛍光ベースモニタリングのためのデバイスが使用される創傷ケアの臨床施設の一例を示す。
【
図3】
図3は、ブタ肉試料の筋肉表面の画像を示し、結合組織および細菌の自己蛍光検出のための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用を示す。
【
図4】
図4は、手持ち式の蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの一実施形態の画像を示す。
【
図5】
図5は、標的の白色光データおよび蛍光データを得るための手持ち式デバイスの択一的な一実施形態を示す。
【
図6A】
図6Aは、標的に関するデータを得るための手持ち式デバイスの別の択一的な実施形態を示し、この手持ち式デバイスにはiPhone(登録商標)が組み込まれる。
【
図6B】
図6Bは、標的に関するデータを得るための手持ち式デバイスの別の択一的な実施形態を示し、この手持ち式デバイスにはiPhoneが組み込まれる。
【
図8】
図8は、10日間にわたって追跡した1匹のマウスの代表的な白色光(WL)画像および蛍光(FL)画像を示す。
【
図9】
図9は、病原性細菌の自己蛍光(AF)強度がインビボ細菌量と相関していることを示す前臨床的データを示す。
【
図10】
図10は、蛍光ベースモニタリングのためのデバイスを用いて読み取った生菌培養物の画像を示す。
【
図11】
図11は、蛍光ベースモニタリングのためのデバイスを用いた細菌モニタリングの一例を示す。
【
図12】
図12は、模擬動物創傷部モデルの画像を示し、蛍光ベースモニタリングのためのデバイスを用いた細菌の自己蛍光の非侵襲的検出を示す。
【
図14】
図14は、臨床患者の創傷部および病状のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図15】
図15は、臨床患者の創傷部および病状のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図16】
図16は、臨床患者の創傷部および病状のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図17】
図17は、臨床患者の創傷部および病状のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図18】
図18は、臨床患者の創傷部および病状のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図19】
図19は、臨床患者の創傷部および病状のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図20】
図20は、臨床患者の創傷部および病状のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図21】
図21は、臨床患者の創傷部および病状のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図22】
図22は、臨床患者の創傷部および病状のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図23】
図23は、臨床患者の創傷部および病状のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図24】
図24は、臨床患者の創傷部および病状のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図25】
図25は、臨床患者の創傷部および病状のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図26】
図26は、臨床患者の創傷部および病状のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図27】
図27は、臨床患者の創傷部および病状のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図28】
図28は、臨床患者の創傷部および病状のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図29】
図29は、ブタ肉試料の皮膚表面の画像を示し、蛍光ベースモニタリングのためのデバイスを用いたコラーゲンおよび種々の細菌種の自己蛍光の非侵襲的検出を示す。
【
図30】
図30は、寒天プレートで培養している細菌およびブタ肉上の模擬創傷部の表面上の細菌による蛍光を検出するための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用を示す画像およびスペクトルプロットを示す。
【
図31】
図31は、血液および微細血管系のイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用を示す画像を示す。
【
図32】
図32は、蛍光ベースモニタリングのためのデバイスを用いた慢性創傷のマネージメントを示すフローチャートである。
【
図34】
図34は、創傷治癒と関連していることが知られている組織バイオマーカー、細胞バイオマーカーおよび分子バイオマーカーの例を示す表である。
【
図35】
図35は、健常な創傷部と慢性創傷部を比較した図解である。
【
図36】
図36は、マウスモデルのイメージングにおける蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用を示す画像を示す。
【
図37】
図37は、小動物モデルのイメージングのための蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの使用の一例を示す。
【
図38】
図38は、蛍光ベースモニタリングのためのデバイスを含むキットの一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細説明は実例の実施形態について言及したものであるが、その多くの択一例、修正例および変形例は当業者に明らかであろう。したがって、請求項に記載の主題は広く考慮されることを意図する。
【0016】
詳細説明
次に、種々の実施形態について詳細に言及し、種々の実施形態の例を添付の図面に図示する。種々の例示的な実施形態は、本開示を限定することを意図するものではない。それとは反対に、本開示は、択一例、修正例および均等物を包含していることを意図する。
【0017】
急性および慢性の創傷の慣用的な臨床的評価方法は最適下限の状態が継続している。かかる評価方法は、通常、環境白色光および「肉眼」を用いた単純な目視評価による患者全史の定性的で主観的な臨床的評価に基づいたものであり、場合によっては、白色光照射下での創傷部の全体的な外観を捉えるためにカラー写真撮影の使用を伴うことがあり得る。また、治癒に向かう経過の定期的な再評価および介入の適切な修正も必要である。創傷部評価の専門用語は統一されておらず、創傷部評価を取り巻く多くの疑問は未解決のままであり、臨床実務において測定するための鍵となる創傷パラメータに関して、まだ意見の一致に達しておらず、利用可能な創傷部評価手法の精度および信頼性は様々である。
【0018】
目視評価は、多くの場合、診断用の細菌学的培養のためのスワブ採取および/または組織生検と併用される。細菌スワブは創傷部検査時に収集され、具体的な細菌種/微生物種の特定がもたらされるという認められた利点を有する。しかしながら、多くの場合、多数のスワブおよび/または生検が創傷部位から無作為に収集され、一部のスワブ採取手法では、実際、収集プロセス中に微生物が創傷部の周囲に拡延されることで患者の治癒期間および疾病率に影響を及ぼす場合があり得る。これは、特に、現行のスワブ採取と生検プロトコルを用いた細菌の存在の検出成績が、多くのスワブが収集されるにもかかわらず最適下限(診断的に非感受性)である大きな慢性(非治癒)創傷部では問題となり得る。
【0019】
したがって、後で細菌学的培養を行なうために創傷部位からスワブまたは組織生検を得るための現行の方法は、非標的化もしくは「盲目的」スワブ採取またはパンチ生検アプローチに基づいたものであり、創傷部に対する外傷が最小限となるように、または細菌学的試験の診断成績が最大化されるように最適化されたものではなかった。また、細菌学的培養の結果は、多くの場合、検査室から戻ってくるまでに約2~3日間かかり、確定的でない場合があり得、したがって、正確な診断および処置が遅れる。したがって、細菌スワブを得る慣用的な方法は、創傷部に関する適切なデータが必ずしも得られるものではなく、創傷部の感染状態のリアルタイム検出がもたらされ得るものではない。創傷部の修復を生物学的レベルで客観的に迅速に評価するため(これは、単に外観または形態構造に基づいたものよりもかなり詳細であり得る)、ならびに細菌学的検査のためのスワブおよび組織生検試料の収集の標的化を補助するための非侵襲的な方法がないことは、創傷部の臨床評価および処置において大きな障害である。別の方法が非常に望ましい。
【0020】
創傷部(慢性および急性)が治癒するにつれて、いくつかの鍵となる生物学的変化が創傷部位において組織レベルおよび細胞レベルで起こる。創傷治癒は、創傷治癒の病理生理学に影響を及ぼす重複する4つの相(止血、炎症、細胞増殖、および結合組織の成熟またはリモデリング)に分けられる生物学的プロセスの複雑な動的相互作用を伴う。創傷治癒過程(これは数日間~数ヶ月間の範囲であり得る)において生じる共通する大きな合併症は、細菌および他の微生物によって引き起こされる感染症である。これは、治癒過程の深刻な妨げとなり得、有意な合併症をもたらし得る。すべての創傷部には、汚染からコロニー形成、危機的コロニー形成、感染までに及ぶ範囲のレベルで細菌が含まれており、細菌感染の診断は、臨床症状および徴候(例えば、見た目および臭いによる手がかり)に基づいたものである。
【0021】
創感染に対して最も一般的に使用されている用語には、創汚染、創傷部コロニー形成、創感染および、つい最近では危機的コロニー形成が包含されている。創汚染は、なんら宿主反応を伴わない創傷部内の細菌の存在をいい;創傷部コロニー形成は、増殖する、または宿主反応を開始させる細菌が創傷部内に存在することをいい;危機的コロニー形成は、創傷治癒の遅延を引き起こしており、通常、これまで報告されていなかった痛みの増悪を伴うが顕在的宿主反応はまだない細菌の増殖をいう。創感染は、宿主反応を伴う組織内の細菌の集積および増殖をいう。実際面では、用語「危機的コロニー形成」は、コロニー形
成から局所感染に移行しているとみなされる創傷部を示すために使用され得る。しかしながら、臨床場面における課題は、この状況が、信頼性を伴って、できれば局所用抗菌薬の使用によって細菌バイオバーデンができるだけ早く低減されるように速やかに認識されることを確実にすることである。創傷部に潜在する病原体は、その構造および代謝能に応じて細菌、真菌、芽胞菌、原虫およびウイルスなどの種々の群に分類され得る。ウイルスは一般的には創感染を引き起こさないが、特定のウイルス性疾患の過程で形成された皮膚病変部に細菌が感染し得る。かかる感染は、いくつかの場面、例えば、保険医療の場面(病院、クリニック)および在宅医療または慢性疾患医療施設では起こり得る。創感染の防除は次第に複雑になってきているが、微生物学的診断によって常に処置が手引きされるというものではない。微生物の多様性ならびにほとんどの慢性および急性の創傷部における多微生物叢の高い発生率は、創傷部の培養物から1種類以上の細菌病原体が特定されることの重要性に信憑性を与える。創感染の原因因子の早期認識により、創傷ケア実務者が適切な措置を講じることが補助され得る。さらに、欠陥性コラーゲン形成が細菌負荷の増大によって起こり、過剰血管新生されたもろい疎性肉芽組織が生じ、これは通常、創傷部崩壊に至る。
【0022】
正確で臨床的に適切な創傷部評価は重要な臨床ツールであるが、この方法は、現在、依然として大きな課題が残っている。臨床実務における現行の目視評価では、創傷部位の巨視的見識(例えば、化膿性物質および痂皮形成の存在)が得られるだけである。現行の最良の臨床実務でも、組織レベルおよび細胞レベルで起こっている鍵となる根本的な生物学的変化(例えば、汚染、コロニー形成、感染、マトリックスリモデリング、炎症、細菌感染/微生物感染および壊死)に関する決定的に重要な客観的情報を充分に使用することができない。それは、かかる指標が、i)創傷部検査時に容易に入手可能でない、ii)現状では慣用的な創傷部マネージメントプロセスに統合されないためである。白色光を用いた健常な創傷部の状態の直接目視評価は、創傷部内および創傷部周囲の発色およびトポグラフィー的/組織構造的変化の検出に依存するものであり、したがって、組織リモデリングの微妙な変化の検出においては無能で信頼性がない場合があり得、より重要なことには、創傷部の直接目視評価は、多くの場合、細菌が白色光照射下で隠れてしまうため細菌感染の存在を検出することができない。感染は、生物体およびその抗生物質感受性を特定するために使用される微生物学的試験により臨床診断される。細菌感染の物理的指標は、ほとんどの創傷部で白色光を用いて容易に観察され得るが(例えば、化膿性滲出物、痂皮形成、腫脹、紅斑)、これは、多くの場合、有意に遅く、患者は既に、疾病状態(および感染と関連している他の合併症)ならびに致死の高いリスクがある状態である。したがって、標準的な白色光での直接可視化では、細菌自体の存在を早期に検出すること、または創傷部内の細菌の型を特定することができない。
【0023】
創傷部の経過は、現在、手作業でモニタリングされている。National Pressure Ulcer Advisory Panel(NPUAP)により、褥瘡を特性評価する5段階方法の概略が示されたPressure Ulcer Scale for Healing(PUSH)ツールが開発され、このツールでは3つのパラメータを用いて定量的スコアを求め、次いで、このスコアを用いて褥瘡を経時的にモニタリングする。定性的パラメータとしては、創傷部の寸法、組織型および滲出物または分泌物の量、ならびに包帯を外した後に存在する熱的示度が挙げられる。創傷部はさらに、その臭いと色によって特性評価され得る。創傷部のかかる評価には、現在、創傷部に関する極めて重要な生物学的および分子的情報は含まれていない。したがって、創傷部の記述はすべて、いくぶん主観的であり、担当医師または看護師のいずれかにより、手作業によって記録される。
【0024】
望ましいものは、創傷部データを収集し、リアルタイムで解析をもたらすための確固たる費用効果の高い非侵襲的で迅速なイメージング基づいた方法またはデバイスである。デ
ータおよび解析は、創傷部を生物学的レベル、生化学的レベルおよび細胞レベルでの変化について客観的に評価するため、ならびに創傷部内の細菌/微生物の最も早期の存在を迅速に感度よく非侵襲的に検出するために使用され得る。創傷部における極めて重要な生物学的組織変化の検出のためのかかる方法またはデバイスは、患者のケアにおいて鍵となる臨床病理学的判断の手引きとするために、慣用的な臨床的創傷部マネージメント法の補助的役割を果たし得る。かかるデバイスは、コンパクトで携帯型であり、安全で簡便な様式での創傷部のリアルタイムの非侵襲的および/または非接触的インテロゲーションが可能なものであり得、これにより、該デバイスを常套的な創傷部マネージメント実務にスムーズに適合させること、ならびに医師、看護師および創傷専門医にが使用しやすいデバイスにすることが可能となり得る。また、これには、在宅医療環境(例えば、患者による自己使用)ならびに軍事的戦場環境でのこのデバイスの使用も包含され得る。また、かかる画像ベースのデバイスでは、有益な「生物学的情報を有する」画像支援が創傷部の臨床評価プロセスに組み込まれることにより、リアルタイムでの創傷部の処置応答および治癒のモニタリング能が得られ得る。これにより最終的には、個々の患者レベルでの創傷部治癒応答の向上が可能となり得る新しい診断、処置計画、処置応答モニタリング、したがって「適応的」介入ストラテジーの可能性がもたらされ得る。個々の患者における創傷治癒問題の根本的な全身性因子、局所因子および分子性因子の厳密な特定により、より良好な個別調整処置が可能となり得る。
【0025】
本教示により、創傷部から収集したデータの解析方法を提供する。例えば、蛍光画像データの収集は、創傷部の臨床評価およびマネージメントの改善のために有望であると思われる。短波長の光(例えば、紫外光波長または可視光の短波長)によって励起した場合、組織のほとんどの内因性生物学的成分(例えば、結合組織のコラーゲンおよびエラスチン、代謝補酵素、タンパク質など)は、紫外、可視光、近赤外および赤外の波長範囲において長波長の蛍光を生じる。
【0026】
組織の自己蛍光イメージングにより、正常組織および罹病組織の生物学的に重要な情報がリアルタイムで得られる独自の手段がもたらされ、したがって、正常組織状態と罹病組織状態間の識別が可能になる。これは、一部において、大きな組織レベルおよび細胞レベルで起こる、本質的に異なる光-組織相互作用(例えば、光の吸収および散乱)、組織の形態構造の変化ならびに組織の血中含有量の改変に基づいている。組織において、血液は主要な光吸収組織成分(すなわち、発色団)である。この型の技術は、中空器官(例えば、GI管、口腔、肺、膀胱)または露出組織表面(例えば、皮膚)における疾患のイメージングに適している。本教示による自己蛍光イメージングデバイスは、創傷部データを収集し、創傷部ならびにその組成および成分の迅速で非侵襲的および非接触的なリアルタイム解析を提供/可能にし、創傷部の豊富な生物学的情報を検出および利用して臨床的ケアおよびマネージメントを改善し得るものである。
【0027】
本開示によるデバイスにより、1)組織のサンプリング、臨床的に有意なレベルの病原性細菌の検出および慣用的なサンプリングによる別の方法では見逃される創感染の検出のための画像支援がもたらされ、2)創傷部処置、慣用的な治療法と比べたときの創傷部閉鎖の加速ならびに創傷部における細菌バイオバーデンおよび分布の長期間の変化の定量的追跡のための画像支援がもたらされる。
【0028】
DaCosta et al.に対する米国特許第9,042,967B2号(発明の名称「創傷部のイメージングおよびモニタリングのためのデバイスおよび方法」,2015年5月26日発行)には、創傷部を生物学的レベル、生化学的レベルおよび細胞レベルでの変化について客観的に評価するため、ならびに創傷部内の細菌/微生物の最も早期の存在を迅速に感度よく、非侵襲的に検出するためのデータが収集されるように構成されたデバイスの少なくともいくつかの態様が開示されている。この特許は、PCT出願番号P
CT/CA2009/000680(2009年5月20日に出願)および米国特許仮出願第61/054,780号(2008年5月20日に出願)の優先権を主張したものである。上記のこれらの特許、特許出願および特許出願公開公報の各々の全内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0029】
本教示の一態様により、皮膚および創傷部をリアルタイムで検査するための手持ち式の携帯型デバイスを提供する。該デバイスは、細菌および組織の組成を瞬時に検出し、可視化し、解析するものである。該デバイスは、非接触的および非侵襲的イメージングのためのコンパクトな手持ち式のデバイスである。これは、組織成分および細菌によってもたらされる白色光(WL)信号および自己蛍光(AF)信号の両方を、造影剤の使用なしで読み取る。造影剤の使用なしでAF信号を検出することができるが、当業者には、本明細書に開示のデバイスを所望により造影剤を伴って使用してもよいことが理解されよう。白色光および蛍光に加えて、該デバイスにより、イメージング関心領域から熱データもまた読み取られ得る。該デバイスは、さらに、白色光、蛍光および熱データが解析され、かかるデータを相関させ、データの相関に基づいて、例えば、創傷部の状態、創傷治癒、創感染、細菌量の指標、または介入ストラテジーの根拠となり得る他の診断用情報などの出力がもたらされるように構成され得る。
【0030】
該デバイスは、皮膚の内因性結合組織(例えば、コラーゲン、エラスチン)によってもたらされる緑色AF、および黄色ブドウ球菌などの臨床的に重要な細菌の内因性ポルフィリンによってもたらされる赤色AFを含む合成画像が作出および/または表示されるように構成され得る。緑膿菌などの他の種のシデロホア/ピオベルジンは、インビボAFイメージングでの色は青緑色に見える。該デバイスにより、創傷部内および創傷部周囲の細菌の存在、型、分布、量の可視化、ならびに周辺組織の組成の鍵となる情報(コラーゲン、組織バイアビリティ、血中酸素飽和度)がもたらされ得る。例えば、該デバイスにより、(AFイメージングにより)リアルタイムでの皮膚内および皮膚周囲のコラーゲンの組成イメージングがもたらされ得る。
【0031】
本開示によれば、該デバイスは、創傷部の細菌量がリアルタイムで正確に検出および測定され、処置判断が手引きされ、抗菌処置過程において創傷治癒が追跡されるように構成され得る。さらに、この手持ち式デバイスを用いて得られたFL信号を絶対細菌量と相関させるために、生物発光イメージング(BLI)を使用してもよい。
【0032】
該デバイスは独立した内蔵型であってもよい。これはコンピュータ、プリンターおよびEMRシステムとインターフェース接続され得る。
【0033】
本開示の例示的な一実施形態によれば、該デバイスは、(例えば、蛍光イメージングによって)細菌がリアルタイムでイメージングされ、細菌型、その位置、分布および認められた測定単位での量の容易な特定が可能であり、異なるいくつかの細菌種間の特定および区別が可能であるように構成されている。例えば、自己蛍光イメージングは、緑膿菌(aruginosa)(これは、該デバイスからの405nmの光によって励起した場合、緑色がか
った青色の蛍光を発する)と、同じ励起波長で主に赤/オレンジ色の蛍光を発する他の細菌(例えば、黄色ブドウ球菌)とを可視化して識別するために使用され得る。例示的な一実施形態では、該デバイスのカメラセンサーと内蔵型蛍光用マルチバンドパス吸収フィルターにより細菌(創傷部または正常皮膚内の)の蛍光画像が作成され、緑膿菌は緑色がかった青色に見えるが、他の細菌は赤/オレンジ色を放射する。該デバイスは、異なる細菌間の異なる内因性分子(フルオロフォアと称される)の自己蛍光発光の違いを検出する。
【0034】
本開示の別の例示的な実施形態によれば、該デバイスは、組織バイアビリティの指標がリアルタイムで特定するか、または提供されるように構成されている(蛍光イメージング
によって)。例えば、血液は、他の可視光波長と比べて405nmの光を優先的に吸収する。血液が潅流している組織はバイアブルとみなされ、蛍光イメージングを用いて失活(潅流が不充分な)組織と識別することができる。創傷部に照射するために本教示によるデバイスからの405nmの光を使用するので、該デバイスを、組織が吸収または反射する405nmの光の量を検出するためのマルチバンドパス吸収フィルターを有するように構成してもよい。バイアブル組織には血液が含まれており、これは405nmの光を多く吸収し、低レベルの405nmの光を有する画像をもたらすが、バイアブルでない(失活した)組織には充分な血液が含まれておらず、405nmはあまり吸収されない。したがって、バイアブルな組織とバイアブルでない組織が存在する創傷部の画像において、ユーザーにより、バイアブル組織は(バイアブルでない組織から)、バイアブル組織がバイアブルでない組織と比べて暗く見える画像の405nmの光の相対量に基づいて認識される。また、合成画像の(創傷部の)緑色蛍光「チャネル」では、バイアブル組織は、バイアブルでない組織と比べて緑色蛍光が少なく見える。これは、バイアブル組織が、血液がより多く存在するために、バイアブルでない組織と比べてより多くの405nmの励起光を優先的に吸収するためである。したがって、該デバイスによって得られた合成画像のバイアブルな組織とバイアブルでない組織はどちらも、同様の量の緑色蛍光結合組織(すなわち、コラーゲン)を含有したものであり得るが、バイアブル組織が有する結合組織の自己蛍光を刺激するための405nmの励起光は、バイアブルでない組織よりも少ない。この結果は、同じ画像において、バイアブル組織が有する結合組織の緑色蛍光はバイアブルでない組織よりも少ないということである。ユーザーには、この違いが該デバイスでのイメージング中に目視により認識される。
【0035】
本開示の別の態様によれば、該デバイスは、ユーザー選択パラメータが読み取られ、該パラメータのマップまたは他のビジュアル表示をもたらす画像およびビデオが作成されるように構成されている。かかるマップまたは表示は、該デバイスによって1つ以上のデバイスセンサーからの入力に基づいて得られたデータと、相関させるか、オーバーレイさせるか、重ね合わせるか、または別の様式で組み合わされ得る。かかるセンサーとしては、例えば、白色光および/または蛍光画像が検出されるように構成されたカメラセンサー、ならびに標的の熱サインが検出されるように構成されたサーマルセンサーが挙げられ得る。例えば、該デバイスは、ユーザー選択パラメータ、例えば、細菌の位置および/または体内分布、コラーゲンの位置、生組織と死組織の位置および識別、細菌種間の識別、血液、骨、滲出物の位置および程度、温度ならびに創傷部の面積/サイズなどのカラー画像、画像マップまたは他のマップが表示されるように構成され得る。このようなマップまたは表示は該デバイスにより、受信した信号に基づいて出力され得、数量表示を伴う、または伴わない単一の画像に作成され得る。マップ上に示されたユーザー選択パラメータは、1つ以上の創傷パラメータ、例えば、創傷部の形状、サイズ、トポグラフィー、容積、深さおよび面積と相関され得る。例えば、例示的な一実施形態によれば、細菌の蛍光(ある色)と結合組織(別の色)を色分けするなどのために創傷部の蛍光画像/ビデオの「疑似カラー」表示を使用することが可能である。これは、例えば、合成RGB画像の青色チャネル、緑色チャネルの結合組織の緑色蛍光および赤色チャネルの細菌の赤色蛍光の405nmの光の相対量に基づいたピクセル毎の色付けを使用することによって行なわれ得る。付加的および/または択一的に、これを、それぞれ、組織中の血液の量、結合組織の量および細菌の量を表すものであり得る所与の画像における青色チャネル、緑色チャネルおよび赤色チャネルの各々のピクセル数を表示することによって行なってもよい。
【0036】
本開示の一態様によれば、該デバイスは、収集されたデータに関するレポートが作成および出力されるように構成され得る。例えば、例示的な一実施形態によれば、該デバイスのユーザーによって創傷部の状態のレポートが作成され得、該レポートとしては、例えば、日付/時間、患者ID、画像などが挙げられ得る。ユーザーにより、画像は、選択されたネットワーク、コンピュータ、プリンター(クレードルと接続されている場合)に、お
よび/またはUSBによってコンピュータにエクスポートまたはプリントされ得る。レポートは、該手持ち式デバイスによって、データをコンピュータにエクスポートして情報処理およびレポート作成させることによって、またはこの2つの組合せによって作成され得る。さらに、かかるレポートまたはそれに含まれたデータは、推奨される介入または処置ストラテジーの根拠を構成し得る。レポートとしては、例えば、医療レポート、デジタルレポート、医師の手書き入力(例えば、タブレットからの入力など)を含むレポートが挙げられ得る。レポートは、種々の型のデータ、例えば、創傷パラメータの特定およびこれらのパラメータの経時的な追跡などを含むものであり得る。例えば、レポートは、創傷部サイズ、創傷部の形状、創傷部のトポグラフィー、創傷部容積、創傷部面積、創傷部の細菌量、創傷部内の細菌の位置、曝露された骨、血液、結合組織および他の組織の存在、創傷部の温度、患者の創傷部の位置、患者の創傷部の数、創傷部の検査日、患者の特定、患者に投与された投薬物、施与される、および創傷パラメータの変更に応答して経時的に変更される介入的ストラテジーおよび治療などを特定する、およびその変化追跡するものであり得る。例えば、該デバイスにより、患者の創傷部および皮膚状態の変化、例えば、創傷部サイズおよび細菌負荷などを経時的に追跡するレポートが作成され得る。さらに、収集されたデータは、創傷パラメータおよび種々の創傷部介入/処置ストラテジーの有効性に関する臨床的データを提供するデータベースを作成するために使用され得る。さらに、該デバイスは、収集されたデータ/画像/ビデオがレポートに統合され、択一的または付加的に、かかるレポートおよびデータ/画像/ビデオが患者の電子医療記録(EMR)に含まれるように構成され得る。このプロセスは、ワイヤレスであってもよく、トランスファーケーブルの使用によるものであってもよく、また、システムが、レポートが自動的にアップロードされるように構成されていてもよい。
【0037】
該デバイスは、いくつかの画像/ビデオが保存されるのに充分なメモリを有するものである。内部メモリに加えて、該デバイスに、さらなる保存およびファームウェア展開のためのマイクロSDカードインターフェースを含めてもよい。該デバイスは、ユーザーにメモリ容量が少ないことを知らせるものであってもよい。また、該デバイスに、利用可能なメモリが少ない場合にユーザーにファイルをエクスポートすることを指示するデータ保護手段を含めてもよい。
【0038】
本開示の一態様により、蛍光ベースイメージングおよびモニタリングための方法およびデバイスを開示する。該デバイスの例示的な一実施形態は、携帯型光学デジタルイメージングデバイスである。該デバイスは、白色光、組織蛍光および反射率イメージングならびにサーマルイメージングの組合せを使用するものであり得、リアルタイムでの創傷部のイメージング、評価、記録/文書化、モニタリングおよび/またはケアマネージメントをもたらすものであり得る。該デバイスは手持ち式、コンパクトおよび/または軽量であり得る。このデバイスおよび方法は、ヒトおよび動物における創傷部のモニタリングに適したものであり得る。
【0039】
該デバイスは、一般的には:i)1つ以上の励起/照射光源と、ii)1つ以上の光学的吸収フィルター、またはスペクトルフィルタリング機構と組み合わされ得、ビュー/コントロール画面(例えば、タッチセンス画面)、画像読み取りおよびズームコントロールを有するものであり得る検出器デバイス(例えば、デジタルイメージング検出器デバイス)とを備えたものであり得る。また、該デバイスは:iii)有線および/または無線データ転送ポート/モジュール、iv)電源および電源/制御スイッチ、および/またはv)収容部(これは、コンパクトおよび/または軽量であり得、検出器デバイスの取り付けのための機構および/または持ち手を有するものであり得る)も有するものであってもよい。励起/照射光源は、約405nm(例えば、+/-5nm)の光を放射するLEDアレイであり得、自身の光学フィルターによるイメージング検出器への光漏れが引き起こされないように、LEDアレイ出力部からのスペクトル側波帯の光を除外/最小限にするた
めの約405nmのみを通すさらなるバンドパスフィルターと連結させてもよい。デジタルイメージング検出器デバイスは、例えば、少なくともISO800の感度であるが、より好ましくはISO3200の感度を有するデジタルカメラであり得、1つ以上の光学的吸収フィルター、または他の同等に効果的な(例えば、小型化された)機械化スペクトルフィルタリング機構(例えば、音響光学チューナブルフィルターまたは液晶チューナブルフィルター)と組み合わせてもよい。デジタルイメージング検出器デバイスは、タッチセンスのビューおよび/またはコントロール画面、画像読み取りおよびズームコントロールを有するものであり得る。収容部は、外側が硬質のプラスチックまたはポリマーシェルであり、デジタルイメージング検出器デバイスを収容し、必要なすべてのデバイスコントロールがユーザーによって容易にアクセスされ、操作され得るようなボタンを有するものであり得る。所望により、過剰の熱が励起光源から除去されることを可能にするために、小型のヒートシンクもしくは小さなメカニカルファンまたは他の放熱デバイスを該デバイスに内蔵してもよい。そのすべての内蔵付属品およびアタッチメントを含む完全型デバイスは、標準的なAC/DC電源を用いて、および/または充電式バッテリーパックによって電力供給され得る。また、完全型デバイスを外部機械装置(例えば、三脚、または回動アームを有する可動式スタンド)に取り付けるか、または設置し、臨床室内でハンドフリーの操作での該デバイスの可動が可能になるようにしてもよい。あるいはまた、該デバイスを、携帯型となるようなモバイルフレームとともに提供してもよい。該デバイスは、水で湿らせた湿潤ガーゼを用いて清拭され得るが、ハンドルは、アルコールで湿らせた湿潤ガーゼで清浄にするのがよい。さらなる適切な清拭方法は当業者に明らかであろう。該デバイスに、ユーザーが該デバイスをコントロールすることを可能にする、例えば、イメージングパラメータ、画像の可視化、画像データおよびユーザー情報の保存、画像および/または関連データの転送および/または重要な画像解析(例えば、診断用アルゴリズム)のコントロールを可能にするソフトウェアを含めてもよい。
【0040】
該デバイスの一例の模式図を
図1に示す。該デバイスは、標的対象部10すなわち標的表面をイメージングするようにポジショニングされた状態で示されている。図示した例では、該デバイスは、デジタル画像取得デバイス1、例えば、デジタルカメラ、ビデオレコーダー、カムコーダー、デジタルカメラ内蔵の携帯電話、デジタルカメラ付き「スマート」フォン、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、デジタルカメラ付きラップトップ/PC、またはウェブカメラを有する。デジタル画像取得デバイス1はレンズ2を有し、これは、標的対象部10に向けて一直線上に配置され得、対象部10すなわち表面から発せられる光信号を検出し得る。該デバイスは光学フィルターホルダー3を有し、これには1つ以上の光学フィルター4が収容され得る。各光学フィルター4は異なる不連続のスペクトル帯域幅を有するものであり得、バンドパスフィルターであり得る。このような光学フィルター4は、光の波長に基づいて特定の光信号が選択的に検出されるように、選択され、デジタルカメラのレンズから移動し得る。該デバイスは光源5を含むものであり得、該光源は、例えば、青色光(例えば、400~450nm)または単一波長もしくは複数波長(例えば、紫外/可視光/近赤外/赤外範囲の波長)の任意の他の組合せによりイメージングされる光信号(例えば、蛍光)を誘起するために対象部10に照射するための励起光を発する。光源5は、LEDアレイ、レーザーダイオードおよび/またはさまざまな幾何構造に構成されたフィルター処理光を含むものであり得る。該デバイスは、熱を放散させて照射光源5を冷却するためのメソッドまたは装置6(例えば、ヒートシンクまたは冷却ファン)を含むものであり得る。該デバイスは、イメージングする対象部10に照射するために使用される光源5から望ましくない波長の光を除外するためのメソッドまたは装置7(例えば、光学バンドパスフィルター)を含むものであり得る。該デバイスは、イメージングデバイスと対象部10間の距離を計測および測定するために光学的手段を使用するための方法または装置8(例えば、コリメート光ビームを放射するコンパクトな小型レーザーダイオードの使用)を含むものであり得る。例えば、該デバイスは、該デバイスと対象部10間の一定距離を維持するために、三角測量装置の一部として2つの光源、
例えば2つのレーザーダイオードを使用するものであってもよい。他の光源も可能であり得る。また、該デバイスは、維持する一定距離を測定するために、ルーラーなどの超音波または物理的手段を使用するものであってもよい。別の例示的な実施形態によれば、該デバイスは、イメージングする創傷部に対して適切な該デバイスのポジションを決定するために距離計を使用するものであり得る。また、該デバイスは、種々の距離で対象部10に当たる光の照射角を変えるためにこれらの光源5,8が操作されるように、励起光源5,8の操作および方向決めを可能にするためのメソッドまたは装置9(例えば、ピボット)を含むものであり得る。
【0041】
標的対象部10に、該対象部の複数画像を撮像し、次いで解析のために重ね合わせることを可能にするためにマーク11で印を付けてもよい。マーク11は、例えば、異なる色の外因性蛍光色素の使用を伴うものであり得(これにより、光源5によって照射された場合に複数の相違する光信号がもたらされ得、これらは対象部10の画像内で検出可能であり得る)、したがって、これらの異なる色および相互の距離を重ね合わせることにより同じ関心領域の複数画像(例えば、経時的に撮像)の方向決めが可能となり得る。デジタル画像取得デバイス1は:ヘッドマウントディスプレイのインターフェース12;外部プリンターのインターフェース13;タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、デスクトップコンピュータまたは他のコンピュータデバイスのインターフェース14;リモートサイトまたは別のデバイスへのイメージングデータの有線または無線転送を可能にするデバイスのインターフェース15;グローバルポジショニングシステム(GPS)デバイスのインターフェース16;増設メモリの使用を可能にするデバイスのインターフェース17;およびマイクロホンのインターフェース18のうちの1つ以上を含むものであり得る。
【0042】
該デバイスは、電源19、例えば、AC/DC電源、コンパクトなバッテリーバンクまたは充電式バッテリーパックを含むものであり得る。あるいは、該デバイスは、外部電源との接続に適合させたものであってもよい。該デバイスは、すべての構成要素を1つの実体で収容するハウジング20を有するものであってもよい。ハウジング20は、任意のデジタルイメージングデバイスをその内部に固定する手段を備えたものであり得る。ハウジング20は、手持ち式、コンパクトおよび/または携帯型となるように設計され得る。ハウジング20は1つ以上の収容部であってもよい。
【0043】
図2は、典型的な創傷ケア施設における該デバイスの一例を示す。インセットa)は、検査用イスおよび付属のテーブルを示す典型的な創傷ケアの臨床施設を示す。インセットb~c)は、ハードケースコンテナにおける該デバイスの一例を示す。該デバイスは常套的な創傷ケア実務に統合され、患者のリアルタイムイメージングが可能であり得る。インセットd)は、該デバイスのサイズを示すために「創傷ケアカート」に置かれた該デバイス(矢印)の一例を示す。インセットe)該デバイスは白色光照射下でイメージングする使用され得るが、インセットf)は、うす暗い室内光で創傷部の蛍光画像の撮像のために使用されている該デバイスを示す。インセットg)該デバイスは、遠隔医療(telemedicine/telehealth)インフラにおいて使用され得る、例えば、患者の創傷部の蛍光画像は、電子メールにより創傷ケア専門医に無線通信デバイスによって、例えば、スマートフォンで別の病院に無線/WiFiインターネット接続を用いて送られ得る。このデバイスを使用すると、高解像度蛍光画像が電子メールの添付書類として、創傷ケア専門医に遠隔の創傷ケアの場所から、臨床的創傷ケアマネージメントの専門施設に居る臨床専門医、微生物学者などに、直接相談のために送られ得る。
【0044】
実施例
蛍光ベースモニタリングのためのデバイスの一例を以下に説明する。すべての実施例は、実例を示す目的で示したものにすぎず、限定を意図するものではない。実施例に記載の
波長、寸法およびインキュベーション時間などのパラメータは近似値であり得、一例として示したものにすぎない。
【0045】
この実施例において、デバイスは、各々がイメージング検出器アセンブリのそれぞれの側面に励起光源または照射光源として配置される2つの紫(violet)/青色光(例えば、405nm+/-10nm発光,狭い発光スペクトル)LEDアレイ(Opto Diode Corporation,Newbury Park,California)を使用したものである。これらのアレイは、各々、およそ1ワットの出力を有し、2.5×2.5cm2から70度の照射ビーム角で放射する。これらのLEDアレイは、約10cmの距離から(これは、皮膚表面における総光学出力密度が約0.08W/cm2であることを意味する)組織表面に照射するために使用され得る。かかる低出力では、標的の創傷部もしくは皮膚表面または目のいずれに対しても励起光による潜在的影響は知られていない。しかしながら、イメージング手順中に、いずれかの個体の目に光が直接当たることはよろしくなかろう。また、国際電気標準会議(IEC)に定められた国際基準によれば、405nmの光は健康に対してリスクを有するものではないことに注意されたい(ウェブサイト:http://www.iec.ch/online_news/etech/arch_2006/etech_0906/focus.htmにさらに詳述されている)。
【0046】
該1つ以上の光源は、例えば内蔵型ピボットの使用によりイメージング対象表面上の照射角およびスポットサイズ変更されるため、明示される場合があり得(例えば、手動で)、例えば、壁コンセントおよび/または別個の携帯型充電式バッテリーパックとの電気的接続によって電力供給される。励起/照射光は、電源、例えば限定されないが、単一もしくは複数の発光ダイオード(LED)(任意の構成、例えば、円環もしくはアレイ形式)、波長フィルター処理光電球またはレーザーによって生成され得る。また、紫外(UV)、可視光(VIS)、遠赤外、近赤外(NIR)および赤外(IR)範囲の特定の波長特性を有する選択された単一および複数の励起/照射光源が使用され得、LEDアレイ、有機LED、レーザーダイオード、またはさまざまな幾何構造に構成されたフィルター処理光で構成されたものであり得る。励起/照射光源は、該デバイスから発せられる光強度イメージング中に調整可能であるように「チューニング」され得る。光強度は可変的であり得る。LEDアレイは、動作中に発生する熱を放散させるために個々の冷却ファンまたはヒートシンクに取り付けてもよい。LEDアレイは狭い405nmの光を放射するものであり得、この光は、検出光学系内への放射光の「漏れ」の可能性を低減させるために市販のバンドパスフィルター(Chroma Technology Corp,Rockingham,VT,USA)を用いてスペクトルフィルター処理されたものであり得る。該デバイスがイメージング対象の組織表面(例えば、創傷部)の上部に保持されているときに、照射光源から狭帯域幅または広帯域幅の紫/青色波長または他の波長もしくは波長帯域の光が組織/創傷部表面上に照射され得、それにより、関心領域内にフラットで均一な場がもたらされ得る。また、該光は、組織の一定の浅層部まで照射または励起するものであってもよい。この励起/照射光は、正常組織および罹病組織と相互作用し、該組織内で生成する光信号(例えば、吸収、蛍光および/または反射率)をもたらし得るものである。
【0047】
励起波長および発光波長を相応に変更することにより、イメージングデバイスによって、組織(例えば、創傷部)の表面および一定の深部の組織成分(例えば、創傷部内の結合組織および細菌)がインテロゲーションされ得る。例えば、紫/青色(約400~500nm)波長を緑色(約500~540nm)波長の光に変更することにより、例えば創傷部において深部組織/細菌の蛍光源の励起がなされ得る。同様に、長波長を検出することにより、組織深部の組織および/または細菌の光源からの蛍光発光が組織表面で検出され得る。創傷部評価では、表面および/または表面下層の蛍光のインテロゲーション能は、
例えば、創傷部(例えば、非治癒性慢性創傷部)の表面および多くの場合、その深部に存在し得る細菌の汚染、コロニー形成、危機的コロニー形成および/または感染の検出およびその可能性の特定において有用であり得る。一例において、
図3を参照すると、インセットc)は、創傷部清拭後の皮膚表面下(すなわち、深部)における細菌の検出を示す。創傷部および周辺組織の表面および深部の細菌を検出するための該デバイスのこの使用は、創傷ケア施設で慣用的に使用される他の臨床的徴候および症状の状況において評価され得る。
【0048】
該デバイスの一例を
図4に示す。該デバイスは、画像取得デバイスとして任意の標準的なコンパクトなデジタルイメージングデバイス(例えば、電荷結合素子(CCD)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS)センサー)とともに使用され得る。a)に示したデバイス例は、外部電源、イメージングする対象部/表面に照射するための2つのLEDアレイ、およびイメージングのための簡便なハンドルを備えた軽量金属フレームにしっかり固定された市販のデジタルカメラを有する。イメージングする対象部/表面から発せられる検出対象の光信号の波長のフィルタリングを可能にするためのマルチバンドフィルターがデジタルカメラの前面に保持されている。カメラのビデオ/USB出力ケーブルにより、保存およびその後の解析のためにコンピュータにイメージングデータを転送することが可能である。この例には市販の8.1メガピクセルのSony製デジタルカメラ(Sony Cybershot DSC-T200 Digital Camera,Sony
Corporation,North America)が使用されている。このカメラは、i)該収容部フレーム内に統合されやすい、そのスリムな縦型のデザイン、ii)コントロールが容易な、その大きな3.5インチのタッチパネル式LCDワイド画面、iii)そのカールツァイス5倍光学ズームレンズ、およびiv)その微小光での使用(例えば、ISO3200)のため好適であり得る。該デバイスは、標準的な白色光イメージングを可能にする内蔵フラッシュを有するものであってもよい(例えば、音声記録出力部を有する高画質スチルまたはビデオ)。カメラインターフェースポートは、有線(例えば、USB)または無線(例えば、Bluetooth(登録商標),WiFiおよび同様のモダリティ)のどちらでも、さまざまな外部デバイス、例えば;ヘッドマウントディスプレイ、外部プリンター、タブレットコンピュータ、ラップトップコンピュータ、パーソナルデスクトップコンピュータ、リモートサイト/他のデバイスへのイメージングデータの転送を可能にする無線デバイス、グローバルポジショニングシステム(GPS)デバイス、増設メモリの使用を可能にするデバイスおよびマイクロホンへのデータ転送またはサードパーティアドオンモジュールをサポートするものであり得る。デジタルカメラは、充電式バッテリーまたはAC/DC電源によって電力供給される。デジタルイメージングデバイスとしては、限定されないが、デジタルカメラ、ウェブカメラ、デジタルSLRカメラ、カムコーダー/ビデオレコーダー、デジタルカメラ内蔵の携帯電話、スマートフォン(商標)、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、およびラップトップコンピュータ/タブレットPC、またはパーソナルデスクトップコンピュータが挙げられ得、これらはすべて、デジタルイメージング検出器/センサーを含むもの/または該検出器/センサーと接続されるものである。
【0049】
励起/照射光源によってもたらされるこの光信号はイメージングデバイスにより、励起光は拒絶するが検出対象の組織からの選択された波長の放射光は許容し、したがってディスプレイ上に画像が形成される光学フィルター(1つまたは複数)(例えば、Chroma Technology Corp,Rockingham,VT,USAから入手可能なもの)を用いて検出され得る。光学フィルターホルダーがデジタルカメラのレンズの前面の収容部フレームに取り付けられ、これには、異なる不連続のスペクトル帯域幅を有する1つ以上の光学フィルターが収容され得る(
図4のインセットb)およびc)に示したとおり)。インセットb)は、LEDアレイのスイッチがオンで明るい紫/青色光を放射しており、単一の吸収フィルターを所定の位置に有する該デバイスを示す。インセット
c)は、所望の波長特異的イメージングに適切なフィルターを選択するために使用されるマルチプル光学フィルターホルダーが使用された該デバイスを示す。インセットd)は、足の皮膚表面のイメージングをしながら片手で保持された該デバイスを示す。
【0050】
このようなバンドパスフィルターは、所望の光の波長に基づいて組織/創傷部表面からの特定の光信号が選択的に検出されるように選択され、デジタルカメラのレンズの前面に一直線上に配置され得る。また、検出された光信号(例えば、吸収、蛍光、反射率)のスペクトルフィルタリングが、例えば、固体電子式チューナブルスペクトルバンドパスフィルターである、液晶チューナブルフィルター(LCTF)、または音響光学チューナブルフィルター(AOTF)を用いて行なわれ得る。また、スペクトルフィルタリングは、連続可変フィルターおよび/または手動式バンドパス光学フィルターの使用を伴うものであってもよい。このようなデバイスは、組織のマルチスペクトル、ハイパースペクトルおよび/または波長選択的イメージングがもたらされるようにイメージング検出器の前面に配置され得る。
【0051】
該デバイスを、妥当な様式で励起/照射光源およびイメージング検出器デバイスに取り付けられた光学的または方向可変偏光フィルター(例えば、線形または円環状と光学波長板の使用とを組み合わせる)を使用することにより改良してもよい。このようにして、該デバイスは、組織表面を、偏光照射と非偏光検出もしくはその逆、または偏光照射と偏光検出により、白色光反射率および/または蛍光イメージングのいずれかでイメージングするために使用され得る。これにより、最小限の正反射(例えば、白色光イメージングによるグレア)で創傷部のイメージングが可能になり得るとともに、創傷部および周囲の正常組織内の結合組織(例えば、コラーゲンおよびエラスチン)の蛍光偏光および/または異方性依存性変化のイメージングが可能になり得る。これにより、治癒中の創傷部リモデリングと関連している結合組織線維の空間的方向および構成に関する有用な情報が得られ得る。
【0052】
イメージングデバイスのすべての構成要素を単一の構造体、例えば、片手または両手で楽に保持することを可能にするハンドルを有する人間工学的に設計された封入型構造体に統合してもよい。また、該デバイスを、ハンドルなしで提供してもよい。該デバイスは、軽量の携帯型であり得、白色光、蛍光および/または反射率イメージングモードを用いて任意の標的表面(例えば、皮膚および/または口腔、これもアクセス可能である)のリアルタイムデジタルイメージング(例えば、スチルおよび/またはビデオ)が可能なものであり得る。該デバイスは、イメージングのために体表面に沿って、該表面から可変的な距離で保持することによりスキャンされ得、明るい環境/室内で白色光反射率/蛍光をイメージングするために使用され得る。組織蛍光信号を最適化し、室内光によるバックグラウンド信号を最小限にするために該デバイスを薄暗い、または暗い環境/室内で使用してもよい。該デバイスは、創傷部および周囲の正常組織の直接(例えば、肉眼での)可視化に使用してもよく、間接(例えば、デジタルイメージングデバイスのビュー画面での)可視化に使用してもよい。
【0053】
また、該デバイスを手持ち式または携帯型でない実施形態にしてもよい、例えば、対象物、物質および表面(例えば、身体)の白色光、蛍光および反射率イメージングの比較的定置型の光学イメージングデバイスとしての使用のために、マウント機構(例えば、三脚またはスタンド)に取り付けられるようにしてもよい。これにより、該デバイスを、机もしくはテーブルの上で、または対象物、物質および表面の「流れ作業」イメージングに使用することが可能となり得る。一部の実施形態では、マウント機構はモバイル式であり得る。
【0054】
このデバイスの他の特色としては、デジタル画像およびビデオ記録(場合によっては音
声とともに)、文書化メソッド(例えば、画像の保存および解析ソフトウェアにより)、ならびに遠隔医療ニーズのための遠隔地への有線または無線データ伝送が挙げられ得る。例えば、
図4のインセットe)およびf)は、画像取得デバイスが携帯電話などのモバイル通信デバイスである該デバイスの一実施形態を示す。この例で使用されている携帯電話はSamsung Model A-900であり、これは、1.3メガピクセルデジタルカメラを備えている。該電話は、簡便なイメージングのための保持フレーム内に取り付けられている。インセットe)は、「創傷部」という単語が蛍光インクで書かれた紙切れをイメージングするための該デバイスの使用を示す。インセットf)は、蛍光インクを塗った指のイメージングおよび一般的な皮膚細菌P.Acnesの検出を示す。携帯電話による画像は無線で別の携帯電話に、または無線で(例えば、Bluetooth接続によって)画像の保存および解析用のパーソナルコンピュータに送られ得る。これにより、該デバイスがリアルタイムの手持ち式蛍光イメージングおよび遠隔医療創傷ケアインフラの一部としてリモートサイト/遠隔地の人間への無線伝送を行なうことができる能力が実証される。
【0055】
創傷ケアおよび他の該当する用途におけるイメージングデバイスの能力を実証するため、記載の具体例を用いていくつかの実現可能な実験を実施した。蛍光イメージングの全実験中、Sony製カメラ(Sony Cybershot DSC-T200 Digital Camera,Sony Corporation,North America)の設定は、画像がフラッシュなしで読み取られるように設定し、「マクロ」イメージングモード設定にしたことを認識されたい。画像は8メガピクセルで読み取った。白色光反射率画像の読み取りにはフラッシュを使用した。画像はすべて、長期保存および画像解析用のパーソナルコンピュータに後で転送するためにxDメモリーカードに保存した。
【0056】
例示的な一実施形態では、該デバイスで読み取られた白色光反射率画像および蛍光画像/ムービーは、画像解析のためのAdobe Photoshopにインポートした。しかしながら、画像解析ソフトウェアは、さまざまな画像ベーススペクトルアルゴリズム(例えば、赤対緑色蛍光比など)を用いて定量的検出/診断価値のための適切な画像データ(例えば、空間的スペクトルデータ)が抽出されること可能にするためにMatLab(商標)(Mathworks)を用いて設計されたものであった。また、画像の後加工には、画像の数学的編集を含めた。
【0057】
別の例示的な実施形態によれば、創傷部のデータの収集のための手持ち式デバイスは、プラスチック製の本体に収容された35~140mm相当の4倍ズームレンズを有し、充電式バッテリーによって電力供給される低コストで消費者向け製品級のSuper HAD(商標)電荷結合素子(CCD)センサーベースのカメラ(Model DSC-T900,ソニー株式会社,日本)を含むものである(
図5)。プロトタイプの手持ち式イメージングデバイスを
図5に示す。インセット(a)は、リアルタイムで液晶ディスプレイ画面上に高画質で表示される創傷部の蛍光(FL)画像を示すこのプロトタイプの前面図である。インセット(b)は、創傷部の照射をもたらす白色光(WL)および405-nm LEDアレイを示すこのプロトタイプの背面図であるが、FL吸収フィルターはCCDセンサーの前面に配置されている。該デバイスは、高解像度12.1MピクセルカラーWLおよびAF画像(またはビデオ)がリアルタイム(<1秒)で収集されるように構成されており、画像は赤-緑-青色(RGB)形式で、該デバイスの3.5インチタッチセンスカラー液晶ディスプレイ(LCD)画面上に表示される(
図5)。該デバイスは、広帯域幅の白色発光ダイオード(LED)を含み、標準的なAC125V電源によって電力供給され、WLイメージング中に照射をもたらすように構成されたものである。該デバイスは、さらに、FLイメージング中に4-W励起光出力をもたらすための2つの単色の紫-青(λexc=405_20nm)LEDアレイ(Model LZ4,LedEngin,San Jose,California)を含むものである(皮膚表面から10
cmの距離で明るい均一な照射面積は約700cm2)。WLおよびFL画像は、デュアルバンドFLフィルター(λemiss=500~550および590~690nm)(Chroma Technologies Corp.,Vermont)に、皮膚表面で反射される励起光をブロックするためにカメラのレンズの前面に設置された高感度CCDセンサーによって検出される。該デバイスは、組織と細菌のAFがスペクトルによって分けられるように構成された吸収フィルターを含むものである。該デバイスは、スペクトルによって分けられた組織と細菌のAFが画像加工または色補正なしで合成RGB画像として表示され、したがって、ユーザーが創傷部および身体部位のこの解剖学的状況において細菌分布を確認することが可能であるように構成されている。CCD画像センサーは、外因性造影剤なしで、紫外(<400nm)、可視光(400~700nm)および近赤外(700~900nm)波長において組織および細菌のAFに対して感受性のものである。
【0058】
別の例示的な実施形態では、手持ち式デバイスは、白色光画像と蛍光画像の両方が撮像され、モバイル通信デバイス、例えば、スマートフォン、携帯電話、iPod(登録商標)、iPhone、またはCCDセンサーなどの既存の画像読み取り能を有する他のかかるデバイスが組み込まれるように構成されている。本明細書ではiPodタッチまたはiPhoneでの使用に関して記載しているが、他のプラットフォーム(例えば、Androidなど)も使用され得ることは理解されよう。例えば、
図6Aに示すように、該デバイスにはiPhone 4Sが組み込まれる。モバイル式イメージングデバイスのプロトタイプを
図6Aに示す。インセット(a)は、光学部品および付属アダプターのバッテリーホルダーを示す該デバイスの前面図を示し、これは、標準的なiPhone 4Sスマートフォンに設置されている。インセット(b)は、オン/オフスイッチおよびLCSビュー画面を示す該デバイスの背面図を示し、ビュー画面上のWLおよびFL画像をユーザーが見る。白光イメージングにより、ユーザーは患者の創傷部の画像を読み取ることが可能であり、蛍光により、ユーザーは、画像上の細菌の存在が強調された対応画像を読み取ることが可能である。ディスプレイ画面は約4インチ(対角線)~約7インチ(対角線)のワイド画面ディスプレイの範囲で、マルチタッチIPS技術を有するものであり得る。ユーザーのニーズに基づいて他のサイズのディスプレイを使用してもよい。一例では、ディスプレイの画質設定は、326ピクセル/インチの1136×640ピクセル解像度;800:1のコントラスト比;および500cd/m2の最大輝度である。ディスプレイは、耐指紋性撥油コーティングを有するものであってもよい。カメラの解像度は約5メガピクセルであり得、利用可能性、利用可能な保存量などに応じて5メガピクセルより高い、例えば、約24メガピクセルまでもの解像度を有するものであってもよい。レンズ設計の選択により、特に赤色および緑色のスペクトルにおいて高品質の画像を得ることが可能である。例示的な一実施形態では、5-エレメントレンズが使用される(iPodタッチ設計)。ユーザーがビデオおよび/またはスチル画像をタップするとフォーカスされ得る。カメラは、暗所でも最適な性能を有するものである。カメラはLEDフラッシュを有し、シャッタースピードは高速である。
【0059】
図6Aおよび6Bに示すように、この例示的な実施形態の手持ち式デバイスには、消費者向け製品級の携帯電話のカメラがカスタム光学プラットフォームによって統合されている。画像取得は携帯電話のカメラで行なわれ、デバイスハウジング、電子装置および光学素子とは独立して機能する。画像は、該電話のLCDタッチ画面上に表示され、該電話自体に保存される。このカスタマイズされた光学設計は、ダイクロイックミラー(これはカメラセンサーの前面に固定されている)に対して45度の角度でポジショニングされた1つの405nm紫LEDを含むものである。ダイクロイックミラーは、紫の光を反射するがそれより長いすべての波長は透過し、カメラセンサーと同軸の蛍光励起照射をもたらす。マクロレンズは、創傷部(<10cm)の集光クローズアップイメージングが可能となるようにカメラセンサーの前面に設置される。特定の組合せの励起フィルターと吸収フィ
ルターが、赤色および緑色の蛍光データ(これらは、それぞれ、細菌および結合組織を示す)の読み取りに使用される。紫LEDは、ユーザーが外部電源スイッチからトリガーする標準的な9Vバッテリーによって電力供給される。ヒートシンクがLEDプリント回路基板の裏側に、5W紫LEDによって生成する熱を効果的に伝達および放散させるためのサーマルペーストにより取り付けられる。
【0060】
この例示的な実施形態によれば、該デバイスハウジングは3Dプリンティングによって作製されたものであり得る。他の型の好適な構造も本明細書に開示しており、その変形例は本教示に基づいて当業者に理解されよう。ハウジングは、光学部品を消費者向け製品級のカメラと一直線上に配置し、LEDを駆動させるために使用される電気部品とサーマルペーストの両方を収容する手段を提供するとともに、ユーザーが使用しやすく、軽量の手持ち式設計を創出するものである。アダプターは、iPhone 4sの上部を摺動し、イメージング中は所定の位置に固定されたままであるように該電話の周囲にぴったりと嵌合されるように設計される。アダプターは、白色光イメージングのための該電話から着脱可能である。別の例示的な実施形態によれば、アダプターは、iPhone 4sなどのモバイル通信デバイスに永続的に固定され得る。かかる実施形態では、
図1および2で論考した手持ち式デバイスの実施形態に関して記載したものと同様の様式での白色光イメージングと蛍光イメージングの切換えのために可動式フィルターが設けられ得る。
【0061】
該デバイスを用いて蛍光イメージングを行なうためには、ユーザーは、該デバイスの裏側にあるトグルスイッチを用いて紫LEDのスイッチをオンにする(
図6A)。スイッチが「オン」ポジションに移動すると、9Vバッテリーが、紫LEDを駆動するための電流を変調させるLEDドライブに電力を送る。この広帯域幅の紫LEDは、iPhoneカメラセンサーに対して垂直に位置しており、45度のダイクロイックミラーに対して405nmの光を放射する。ダイクロイックミラーは、405nm波長の光のほぼ100%を反射して標的に向かう。組織および細菌は紫LEDからの405nm光子を吸収し、長波長の光子は次いで、この細菌と組織によって放射され、蛍光が生じる。カメラセンサーに達し得る光子の波長を制御し、励起光を効果的にブロックするための特定の吸収フィルターをiPhoneカメラセンサーの前面に配置する。iPhoneカメラセンサーによって放射された光子のRGB画像が読み取られ、この画像では、細菌は赤色(例えば、黄色ブドウ球菌)または非常に明るい青っぽい緑色(例えば、緑膿菌)で表示され、皮膚または創傷部の健常な結合組織は緑色蛍光信号によって読み取られる。ユーザーは次いで、iPhoneなどのモバイル通信デバイスに保存された蛍光画像(またはビデオ)を用いて、創傷部内および創傷部周囲のどこに細菌が存在しているかを調べる。
【0062】
例示的な一実施形態では、本明細書に記載の手持ち式デバイスを用いた試験により、患者の創傷部を経時的に追跡した。この試験では、各来院時に創傷部毎に高解像度WL PRODIGI画像を撮像した。WLおよびFLイメージング中、使い捨ての長さ換算表(ステッカー)を創傷部付近に置き、患者IDおよび日付を追跡した。医師が、プリントされたWL画像上の臨床的に有意な細菌量が疑われる位置に印を付けた。組織上における細菌の特性を保存するため、その後のFLイメージングが終了するまでスワブは採取しなかった。このプロセスは1つの創傷部につき1~2分かかり、その後のFLイメージングは1つの創傷部につき1~2分かかった。プリントされた画像上の陽性の赤色および/または緑色AFの位置(1つまたは複数)に印を付けた。医師は、印を付けた疑わしい領域の各々でLevineサンプリング法を用いてスワブ採取し、スワブを盲検的微生物学試験のために送った。患者は、標準的なプロトコルに従って処置し、退院させた。一部の症例では、FL分光法を用いて創傷部内/周囲のAF領域を特性評価した。スペクトルを、位置に基づいて微生物学試験結果と比較した。各患者の来院の完全データファイル(CSS、WLおよびFL画像、分光学および微生物学)を、Good Clinical Practiceガイドラインに従って電子データベースに保存した。
【0063】
試験の第2部では、3つの連続した2ヶ月処置群:非支援処置(対照)、FL支援処置および非支援処置(対照)を使用した。最初の2ヶ月相では、創傷部をCSSによって毎週評価し、次いで、臨床チームの自由裁量で最良の実務方法(超音波および/または外科用メスでの創傷部デブリードマン、局所/全身性抗生物質、生理食塩水での洗浄、乾燥包帯もしくは抗菌包帯、またはヨードチンキ)を用いて処置した。処置前および処置後の各創傷部の対応するWLおよびFL画像を、先に記載のようにして撮像した。2ヵ月の評価期間は、治癒の予測インジケータとして、創傷部領域の信頼性があり意味のある変化を検出するのに充分であることを示す静脈下腿潰瘍について確立された臨床的データに基づいて選択した。創傷部スワブはFL支援によって収集した。この第1(対照)相の間、医師にはFL画像を伏せた。続く2ヵ月相では、創傷部評価が標準的に行なわれたが、処置時に、医師に創傷部のFL画像が示された。
【0064】
最後の2ヵ月相では、WLおよびFLイメージングが行なわれ、処置の施術時に医師にFL結果を伏せてスワブが収集された。重要なことに、医師は、赤色蛍光信号および緑色蛍光信号のそれぞれの意味および特性を理解し、思い出すことができたが、各創傷部検査および各患者の蛍光結果が異なるため、対照期間の処置の施術時に医師に伏せることは可能であった。したがって、創傷部処置時にリアルタイム蛍光支援がない場合、蛍光による特徴の予備知識は対照期間における処置判断に実質的に影響しなかった。また、WLおよびFL画像は、創傷部領域を解析するために各処置後にも撮像した。
【0065】
4名の訓練された臨床および/または研究スタッフメンバーが独立して、盲検的に、WL画像上の平均創傷部サイズをデジタル追跡(MATLAB(登録商標)v.7.9.0,The MathWorks,Massachusetts,USA)を用いて測定した。観測者らは、記憶効果を最小限にするために次の施術期間まで最低7日間あけて離れた施術期間で創傷部を測定した。イメージング中に創傷部に隣接して置いた接着性スケールバーにより、+0.5mm以内の正確な長さのキャリブレーションがもたらされた。WLイメージング中では室内光は依然としてあったが、FLイメージング中は消した。WLおよびFL画像を、創傷部から10~15cmのところで保持/ポジショニングした手持ち式デバイスにより収集した。すべてのイメージングパラメータ(距離、露光時間、ISO設定、ホワイトバランスなど)は来院間で一定に維持した。創傷部(小さい直径の創傷部)から5cm未満の距離では、カメラの内蔵マクロモードを使用した。オートフォーカスにより迅速な(約1秒)画像取得が可能であった。画像(またはビデオ)をリアルタイムで読み取り、カメラのメモリーカードに保存した。WLモードとFLモード間の切換えは、内蔵「トグルスイッチ」を用いて実質的に瞬時であった。使用毎にデバイスを70%エチルアルコールで汚染除去した。
【0066】
WLおよびAF画像をラップトップに転送した。クリニック来院毎に、各創傷部の個々の1024×1024ピクセルFL画像から関心領域(ROI)を特定した。RGB画像を個々のチャネルに分離した。RGB画像の緑色チャネルおよび赤色チャネルは、インビボで検出された組織および細菌の真のAF信号の代表的なものであった。個々のFL画像から細菌レベルを定量するため、以下の画像処理手順を使用した。簡単には、各RGB画像の個々の緑色画像チャネルおよび赤色画像チャネルをグレースケールに変換し(青色チャネルは使用しなかった)、グレースケール強度が所与のヒストグラム閾値(未加工画像のバックグラウンドノイズが低減されるように選択)より上であるピクセルを計数した。赤色FL細菌のための赤色カラーマスクを、グレースケールで100~255の色の範囲における極大を見出すことにより作出した。次いで、反転緑色カラーマスクを用いて緑色FLを除外した。赤色FL(ヒストグラム閾値より上)を有するすべてのピクセルを2値化し、すべての「1」ピクセルの合計を計算した。これを、各画像の緑色チャネルについても繰り返した。このデータにより、各画像における赤色(または緑色)細菌の量の推定
量を得た。FLピクセル数を、接着性長さキャリブレーションステッカーを用いて、より有用なピクセル面積測定値(cmz)に変換し、それにより蛍光細菌の総量を面積測定値として得た。
【0067】
皮膚の内因性コラーゲンまたはエラスチンによってもたらされた組織AFは緑色FLとして現れ、臨床的に適切な細菌コロニー(例えば、黄色ブドウ球菌)は赤色FLとして現れた(内因性ポルフィリンによって引き起こされる。一部の細菌(例えば、緑膿菌(Pseudomonus aeruginosa))は、シデロホア/ピオベルジンにより青緑色信号を発生し、これは、画像解析ソフトウェアを用いてスペクトルにより組織構造的に皮膚AFと識別された。WLおよびFL画像は、デュアルバンドFLフィルター(λemiss=500~550および590~690nm)(Chroma Technologies Corp,VT,USA)とともに設置した高感度CCDセンサーにより1秒未満で収集した。CCD画像センサーは約300~800nmの広い波長範囲にわたって感受性であった。PRODIGIは、ルーチン的な臨床作業フローに容易に統合された。組織FLを細菌FLと単一の合成画像に合わせることにより、医師は、創傷部および身体部位の解剖学的状況における細菌量の分布および程度を瞬時に視認した。典型的には、FLイメージングは、創傷部の数およびFL支援スワブ採取時間にもよるが、創傷部評価ルーチンに対しておよそ1~3分間/患者の追加であった。
【0068】
AFイメージングにより、慣用的な方法では見逃される創傷周縁部の85%において臨床的に有意な細菌量が検出された。したがって、スワブ採取のためのLevine法だけでは創面環境は不充分であり得、おそらく、処置が不適切に差し控えられることになり得る。しかしながら、全創傷部の創傷周縁部のスワブ採取を含める標準的なサンプリング実務の修正は非現実的であり、費用がかかることとなり得よう。AFイメージングにより、医師が、創傷部マージンのサンプリングが必要であるかどうか、およびどこの創傷部マージンのサンプリングが必要であるかを判断することが補助されることとなり得よう。また、この手持ち式イメージングデバイスにより、潜在的再感染部位であり、従来の方法では検査またはスワブ採取されない、創傷部付近の周囲箇所における臨床的に有意なバイオバーデンが特定される。
【0069】
創傷部の細菌負荷を特定および定量することは、感染および治癒の重要な決定因子である。細菌量の可視化および定量的追跡に関するデータにより、画像支援デブリードマンならびに抗生物質および化膿止めの局所適用のための新しいシンプルな方法の特定がもたらされ、これにより、創傷周縁部に対する不必要な外傷が最小限となり、細菌負荷の低減に対するデブリードマンの寄与が最大化される。どの創傷部も感染の可能性を有するが、最良の実務方法によって真の感染を危機的コロニー形成と識別することは、依然として課題であり自由裁量であり、過剰処置および処置不足をもたらし得る。
【0070】
複数の可変量、例えば、宿主の応答、局所および全身性の因子、灌流、免疫抑制、糖尿病および投薬物が感染のリスクに影響を及ぼす。危機的コロニー形成創傷部は、感染の古典的徴候または明白に高レベルのバイオバーデンを常に示しているとは限らないため、診断することが困難であり得る。実際、危機的コロニー形成創傷部を感染創傷部と区別することの臨床的重要性は、依然として議論を呼んでいる。感染が起こる前の無症状の患者の患者において、AFイメージングを用いて高い細菌量が特定されることは、積極的な処置を迅速に行なうことによって感染を予防する一助となり得る。細菌感染が疑われる場合、確立された臨床方針と、重細菌負荷のAFによる特定およびグラム陰性の緑膿菌とグラム陽性の黄色ブドウ球菌の識別とによって抗生物質の選択が手引きされ得よう。
【0071】
別の例示的な実施形態では、画像解析は手持ち式デバイスで行なわれ得るか、またはWLおよびFL画像が画像処理用のラップトップに転送され得る。画像解析および画像デー
タ処理は、手持ち式デバイスのプロセッサを用いて行なわれ得、かかる解析の結果は手持ち式デバイスのディスプレイ上に表示され得る。
【0072】
以下の2つのプログラムが画像処理(例えば、Super HAD(商標)電荷結合素子(CCD)センサーベースのカメラ(Model DSC-T900)を用いて例示的な本デバイスによって収集されたデータの解析)に使用され得、このようなプロセスの一部を
図7Aおよび7Bに示す:MATLABソフトウェア(バージョン7.9.0,The MathWorks,Massachusetts)はカスタム書き込みプログラムおよびImageJ Software(バージョン1.45n)を使用。MATLABプログラムにおいて、関心領域(ROI)を各創傷部の個々の1024×1024ピクセルFL画像から特定する。RGB画像を個々のチャネルに分離する。CCDセンサーによって検出されたそれぞれ組織成分および細菌からの緑色(500~550nm発光)および赤色AF(>590nm)は、Sony CCD画像センサーの赤色フィルターおよび緑色フィルターとスペクトルが自然に一直線上に配置される。したがって、手持ち式デバイスのLCD画面上に表示されるRGB画像の緑色チャネルおよび赤色チャネルは、インビボで検出された組織および細菌の真のAF信号の代表的なものである。個々のFL画像から細菌レベルを定量するためには以下の画像処理手順が使用され得る。簡単には、各RGB画像の個々の緑色画像チャネルおよび赤色画像チャネルをグレースケールに変換し(青色チャネルは使用しない)、グレースケール強度が所与のヒストグラム閾値(未加工画像のバックグラウンドノイズが低減されるように選択)より上であるピクセルを計数する。一部の特定の実施形態では、例えば、組織の血管系/灌流をイメージングする場合に組織/血液によって吸収された405nmの励起光の量をイメージングする場合、青色チャネルが使用され得ようことが考えられ得る。
【0073】
赤色FL細菌のための赤色カラーマスクは、グレースケールで100~255の色の範囲における極大を見出すことにより作出される。次いで、反転緑色カラーマスクを用いて緑色FLを除外する。赤色FL(ヒストグラム閾値より上)を有するすべてのピクセルを2値化し、すべての「1」ピクセルの合計を計算する。これを各画像の緑色チャネルについて繰り返す。このデータにより、各画像における赤色細菌の量の推定量を得る。FLピクセル数を、ピクセル画像上にルーラーを適用することによって、より有用なピクセル面積測定値(cm2)に変換し、それにより蛍光細菌の総量を面積測定値として得る(cm2)。創傷部のサイズが追跡され得、WL画像上の丸で囲んだ創傷部領域のピクセル面積をcm2に変換することにより同様に測定され得る。FL画像の解像度は、FLの領域に基づいて細菌を位置特定するのに充分である。ImageJソフトウェアは、カメラの画像メニューおよび色サブメニューに存在する内蔵バッチ処理機能「Split Channels」を用いてFL画像を赤色チャネル、緑色チャネルおよび青色チャネルに分離するために使用され得る。得られた各チャネルは表示され、グレースケールで保存される。さらなる解析のため、対応する赤色、緑色および青色の各チャネル画像においてROIを特定してもよい。内蔵解析メニューの「Set Measurement」機能は、各色チャネル画像についての以下の測定パラメータ:ピクセル面積、最小および最大グレースケール強度値、ならびに平均グレー強度値を選択および測定するために使用され得る。平均赤色チャネル強度値は、各赤色チャネル画像における(細菌)FL強度/正方形ピクセルとして求められ得、次いで、データの解析および比較に使用され得る。
【0074】
例示的な一実施形態では、マウス皮膚創傷部モデルを使用し、創傷部の状態を細菌感染の経過を相関させた(n=5;8~12週齢;NCRNU-F)。相関は、Super HAD(商標)電荷結合素子(CCD)センサーベースのカメラ(Model DSC-T900)が組み込まれた上記の例示的な手持ち式デバイスを用いて得られたデータに基づいて行なった。経時的に感染状態になっているときの創傷部のWLおよびFL画像を毎日撮像した。赤色FL強度がピークになったとき抗菌処置(1日3回の局所ムピロシンを
合計1日)を創傷部位に適用した。この処置の抗微生物効果を、手持ち式デバイスを用いて経時的にモニタリングし、処置後の創傷部のWLおよびFL画像を毎日取得した。創傷部を合計10日間モニタリングし(
図8参照)、その後、マウスを致死させた。FL画像からの細菌量およびWL画像からの創傷部サイズを、上記のMATLABプログラムを用いて定量し、経時的に比較して創傷治癒状態を調べた。
【0075】
図8は、10日間にわたって追跡した1匹のマウスの代表的なWLおよびFL画像を示す。インセット(a)は、プロトタイプのデバイスで撮像され、脊柱の両側の等しいサイズの2つの創傷部を示す画像を示す。右の創傷部には黄色ブドウ球菌(PBS中)を接種し、左の創傷部にはPBSのみ(対照)を接種した。上列はWL画像を示し、中列はFL画像を示し、下列は、細菌領域および強度に対応するMATLAB定量画像を示す。FLイメージングデータにより、黄色ブドウ球菌を接種した創傷部では対照創傷部と比べて細菌FL強度の有意な増大が示された(ピークは6日目)。ムピロシン(7日目,赤色矢印)により、細菌FLは8日目にほぼゼロまで有意に低減され、処置の効果が示された。細菌は9日目と10日目に再度増加した。インセット(b)は、インセット(a)で得られたFL画像での細菌量の定量的変化を示すグラフを示す。
【0076】
別の例示的な実施形態によれば、BLIが、細菌量の測定のための最も感受性で信頼性のあるスクリーニングツールの1つであるため、インビボで細菌の絶対量を測定するために使用され得る。BLIにより、ルシフェラーゼとルシフェリンの酵素反応によって放射された光が収集され、したがって励起光は必要でない。手持ち式デバイス(いずれの外因性FL造影剤の投入は無し)を用いたFLイメージングおよび接種した黄色ブドウ球菌のBLIイメージングを経時的に追跡し、FL強度とBLI強度を比較した(
図9参照)(n=7)。細菌のBLI信号は、手持ち式デバイスの消費者向け製品級-CCDカメラによって検出されたFL信号に寄与しなかった。生物発光性のグラム陽性黄色ブドウ球菌-Xen8.1(親株の黄色ブドウ球菌8325-4(Caliper)由来)を、病原体を接種する前日に対数増殖期中期まで培養した。BLIカセットを有する細菌はルシフェラーゼ酵素とその基質(ルシフェリン)を産生し、それにより、代謝活性である場合、440~490nmの生物発光信号を放射する(
図9)。細菌(1010CFU)を0.5mLのPBS中に懸濁させ、雌の無胸腺ヌードマウス(n=7;8~12週齢;NCRNU-Fホモ接合型)の創傷部に注射した。黄色ブドウ球菌の生物発光を検出するため、創傷部のBLI画像を、接種前、接種直後ならびに接種後1、2、3、4、5、6および7日目に、Xenogen IVIS Spectrum Imaging System
100(Caliper,Massachusetts)の暗室内部で10秒間の露光時間を用いて取得した。BLI画像は、Living Image In Vivo Imagingソフトウェア(Caliper,Massachusetts)を用いて読み取った。ROIを創傷部でデジタル的に囲み、イメージングした各時点のROI内における総発光強度計数を測定した。BLI信号から測定された細菌の絶対量を、手持ち式デバイスを用いて(上記のとおり)同じ創傷部を経時的に撮像したFL画像上の対応するFL信号との相関について試験した。
【0077】
図9は、病原性細菌の自己蛍光(AF)強度がインビボ細菌量と相関していることを示す前臨床的データを示す。インセット(a)は、生物発光性黄色ブドウ球菌-Xen8.1(30μLのPBS中10
10CFU)の接種前および接種後のマウスの皮膚創傷部のモバイル式プロトタイプデバイスによる画像の時間的推移を示す。創傷を有するマウスの接種後7日目までの各時点の代表的なWL(上列)、AF(中列)および生物発光(下列)画像を示す。BLIイメージングによりインビボで細菌の絶対量が得られる。赤色矢印は、テガダーム絆創膏を交換し、表面からのいくらかの細菌の除去が引き起こされたときを示す。インセット(b)は、時間の関数として示した黄色ブドウ球菌-Xen8.1(n=7匹のヌードマウス)からの平均赤色FLを示し、黄色ブドウ球菌FL(RGB画像
の赤色チャネルからImageJソフトウェアを用いて計算)の毎日の増加を示す。2日目と7日目、動物プロトコルのとおりにテガダーム絆創膏を交換した。平均細菌FLは接種後4日目にピークになった。インセット(c)は、対応する生物発光の時間的推移のデータ(ROIから計算)を示し、創傷部における総細菌量の同様の増加および4日目のピークを示す。データは、創傷部における総細菌AFとインビボ細菌量間の強い正の相関を示す(ピアソン相関係数r=0.6889)。標準誤差を示す。スケールバー:(a)WL 1.5cmおよびAF,BLI 1cm。
【0078】
微生物学的試料のイメージング
本イメージングデバイスは、微生物学臨床検査室におけるイメージングおよび/またはモニタリングに有用であり得る。該デバイスは、細菌コロニーの定量的イメージングおよび一般的な微生物学アッセイにおけるコロニー増殖の定量のために使用され得る。細菌コロニーの蛍光イメージングは増殖速度論を調べるために使用され得る。細菌コロニーの自動計数をもたらすソフトウェアが使用され得る。
【0079】
細菌学/培養ラボラトリーにおける本デバイスの有用性を実証するため、生菌培養物をヒツジの血液寒天プレート上で培養した。細菌種には、化膿連鎖球菌、霊菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、大腸菌および緑膿菌を含めた(American Type Culture Collection,ATCC)。これらを培養し、37℃の標準的なインキュベーション条件下で維持し、「対数増殖期」の間であるときに実験に使用した。プレート内にコロニーが検出されたら(接種の約24時間後)、該デバイスを用いて、個々の細菌種を含有している寒天プレートを暗室内でイメージングした。紫/青色(約405nm)励起光を使用し、該デバイスを用いて、各寒天プレートの緑色自己蛍光と赤色自己蛍光の併存(約490~550nmおよび約610~640nm発光)と、赤色自己蛍光のみ(約635+/-10nm,蛍光性内因性ポルフィリンのピーク発光波長)の両方をイメージングした。各細菌種の蛍光画像を、比較のため、およびコロニー増殖のモニタリングのために経時的に撮像した。
【0080】
次に、
図10を参照されたい。インセットa)は、ヒツジの血液寒天プレート上で培養している生菌培養物をイメージングして細菌の自己蛍光を検出するために使用されている該デバイスを示す。インセットb)は、緑膿菌によって放射された自己蛍光の画像を示す。また、該デバイスは、細菌のコロニー増殖を経時的に蛍光を用いて、接種後24時間目の寒天プレート上の自己蛍光性黄色ブドウ球菌の増殖の蛍光イメージングであるインセットc)に示すように、検出、定量および/またはモニタリングするためにも使用され得る。下側の画像において、明確な単独細菌コロニーが存在していることに注目のこと。紫/青色(例えば、405nm)励起光を使用し、該デバイスを用いて、インセットd)に示した化膿連鎖球菌;インセットe)に示した霊菌;インセットf)に示した黄色ブドウ球菌;インセットg)に示した表皮ブドウ球菌;インセットh)に示した大腸菌;およびインセットi)に示した緑膿菌を含むいくつかの生菌種による緑色と赤色の併存(例えば、490~550nm+610~640nm)と、赤色のみ(例えば、635+/-10nm,蛍光性内因性ポルフィリンのピーク発光波長)の両方の自己蛍光発光を検出した。該デバイスによって得られた細菌コロニーの自己蛍光画像により、細菌コロニー形成および増殖速度論のシンプルで長期的な定量的測定のための有用な画像対比ならびに一例として抗生物質、光線力学療法(PDT)、低反応レベル光治療、高気圧酸素療法(HOT)、または最新の創傷ケア製品を用いた治療的介入に対する応答が場合によってはモニタリングされる手段がもたらされ得ることに注目のこと。
【0081】
カメラ検出器の高空間解像度を、該デバイスによるノイズに対して有意な細菌自己蛍光信号のイメージングと組み合わせることにより、非常に小さい(例えば、<1mmの直径)コロニーの検出が可能になった。該デバイスにより、標準的な寒天プレート中で培養し
ている個々の細菌コロニーをイメージングする携帯型で感度のよい手段がもたらされた。これにより、インセットc)にみられるような細菌のコロニー増殖速度論を定量およびモニタリングするための手段、ならびに場合によっては、一例として抗生物質または光線力学療法(PDT)を用いた治療的介入に対する応答を経時的に蛍光を用いてモニタリングするための手段がもたらされた。したがって、該デバイスは、微生物学ラボラトリーにおける有用なツールとしての機能を果たし得る。
【0082】
図11は、インセットa)標準的な細菌学ラボラトリー実務における本イメージングデバイスの使用の一例を示す。インセットb)ここでは、黄色ブドウ球菌の入ったペトリ皿の蛍光イメージングを、カスタムプロプライエタリ画像解析ソフトウェアと組み合わせることにより、細菌コロニーが迅速に計数されること可能になっており、ここで、培養皿の蛍光画像は、寒天上で37℃にて培養中の約182(+/-3)個のコロニー(明るい青っぽい緑色のスポット)を示す(約405nm励起,約500~550nm発光(緑色),約>600nm発光(赤色))。
【0083】
細菌種の検出がもたらされることに加えて、該デバイスは、例えば、創傷部および周辺組織において異なる細菌種(例えば、黄色ブドウ球菌または緑膿菌(Pseudomonas aeguginosa))の存在および/または位置を区別するためにも使用され得る。これは、異なる細菌種の異なる自己蛍光発光サイン(例えば、405nm前後の光などの紫/青色光によって励起したとき、490~550nm発光波長帯域のものと、610~640nm発光波長帯域のもの)に基づいたものであり得る。画像上で他の種間を識別するために他の波長の組合せを使用してもよい。この情報は、抗生物質の選択などの適切な処置を選択するために使用され得る。
【0084】
細菌学試料のかかるイメージングは創傷ケアのモニタリングに応用可能であり得る。
創傷治癒のモニタリングにおける使用
該デバイスは、任意の創傷部(例えば、体表面上)の上部で、励起光が創傷部領域に照射され得るようにスキャンされ得る。次いで、創傷部は該デバイスを用いて、作業者により創傷部がリアルタイムで、例えば、イメージングデバイス上の表示部またはデバイス上の外部ディスプレイ(例えば、ヘッドアップディスプレイ、テレビジョンディスプレイ、コンピュータのモニター、LCDプロジェクターまたはヘッドマウントディスプレイ)によって視認され得るように検査され得る。また、該デバイスで得られた画像をリアルタイムで(例えば、無線通信によって)、例えば、遠隔医療目的のために遠隔視診地に伝送すること、または画像を直接、プリンターもしくはコンピュータ記憶装置に送ることも可能であり得る。イメージングは、創傷部を有する患者のルーチン的な臨床的評価において行なってもよい。
【0085】
イメージングの前に、信用目印(例えば、消えない蛍光インクペンを使用する)を創傷の縁部または周囲の付近の皮膚表面に付けてもよい。例えば、4つのスポットに、キットとして臨床作業者に提供してもよい、別々の消えない蛍光インクペンによる異なる蛍光インクカラーの各々を、正常皮膚表面上の創傷部マージンまたは境界部の付近に付けてもよい。このような色は、該デバイスにより、励起光と、この4つのインクスポットの発光波長にマッチさせたマルチスペクトルバンドフィルターとを用いてイメージングされ得る。次いで、画像間アラインメントのために信用目印同士を重ね合わせることにより画像解析が行なわれ得る。したがって、ユーザーは、異なるイメージング施術期間同士でイメージングデバイスを一直線上に配置しなくてもよくなり得る。この手法により創傷部の長期(すなわち、経時的)イメージングが容易になり得、したがって、臨床作業者は、画像取得時ごとにイメージングデバイスを一直線上に配置する必要なく、創傷部を経時的にをイメージングすることが可能になり得る。
【0086】
また、蛍光画像の強度キャリブレーションを補助するため、創傷部のイメージング中に、(例えば、ストリップを皮膚に一時的に貼り付ける弱い接着剤を使用することにより)使い捨てのシンプルな蛍光性の標準的な「ストリップ」を視野内に置いてもよい。ストリップに、励起光源が照射されると所定キャリブレーションされた蛍光強度がもたらされ得る種々の濃度の1種類または数種類の異なる蛍光色素を含浸させてもよく、励起光源は、画像強度キャリブレーションのための単一(例えば、405nm)または複数の蛍光発光波長または波長帯域を有するものであり得る。また、使い捨てストリップは、別々の消えない蛍光インクペンによる上記の4つのスポット(例えば、各々は異なる直径またはサイズであり、各々は、異なる蛍光インクカラーであり、その近くに固有の黒点が付いている)を有するものであり得る。正常皮膚表面上に創傷部マージンまたは境界部の付近にストリップを置いて、該デバイスが、白色光および蛍光画像を撮像するために使用され得る。ストリップは、所与の創傷部の複数画像を経時的に撮像し、次いでこれらの画像を画像解析を用いて一直線に配置する簡便な様式をもたらすものであり得る。また、この蛍光性「強度キャリブレーション」ストリップは、付加的な線形測定装置、例えば、創傷部の空間的距離の測定を補助するための固定の長さのルーラーもまた含むものであってもよい。かかるストリップは、画像パラメータ(例えば、創傷部サイズ、蛍光強度など)のキャリブレーションまたは測定を補助するために該デバイスとともに使用され得るキャリブレーションターゲットの一例であり得、他の同様のキャリブレーションターゲットを使用してもよい。
【0087】
イメージングの結果の一貫性を高めること、および該デバイスと創傷部表面間の距離を再現することが望ましい場合があり得る。それは、複数のイメージング施術期間中においてこの距離が変化した場合、組織の蛍光強度がわずかにばらつくことがあり得るためである。したがって、一実施形態では、該デバイスは、該デバイスと創傷部表面間の一定距離または可変距離を測定するために、個々のビームを皮膚の表面上にトライアンギュレーションするために使用され得る2つの光源(低出力レーザービームなど)を有するものであり得る。これは、両レーザー光源間に単純な幾何学的構成を使用して行なわれ得、臨床作業者が、皮膚表面上のレーザー標的スポットを容易に視認し、複数のイメージング施術期間中において創傷部からの該デバイスの距離を調整することが可能になり得る。一定の距離を維持する他の方法としては、超音波の使用、またはルーラーなどの物理的手段の使用、または距離計機構が挙げられ得る。
【0088】
白色光イメージングにおける使用
該デバイスは、正常な周囲の正常組織を伴う全創傷部の白色光画像を、イメージング視野内に置いた測定装置(例えば、ルーラー)を用いて撮像するために使用され得る。これにより、創傷部の目視評価ならびに定量パラメータ、例えば、創傷部面積、円周、直径およびトポグラフィープロフィールの計算/測定が可能になり得る。創傷治癒は、創傷治癒までの複数の時点(例えば、臨床来院時)での創傷部領域の面積測定によって評価され得る。創傷治癒の時間的推移は、式R=√A/π(R,半径;A,創傷部領域の測定面積;π,定数3.14)を用いて、複数の測定時点での創傷部の半径縮小よって計算される予測治癒期間と比較され得る。創傷部に関するこの定量的情報は、自然治癒または任意の治療的介入によってもたらされる創傷治癒の度合を評価および測定するために、創傷部の外観の変化を経時的に追跡およびモニタリングするために使用され得る。このデータは、今後の参考のために患者の健康記録に電子的に保存され得る。白色光イメージングは、患者の初期の臨床的評価の際に作業者によって行なわれ得る。
【0089】
自己蛍光イメージングにおける使用
該デバイスは、組織の自己蛍光(AF)のすべてまたはほとんどが検出されるように設計され得る。例えば、マルチスペクトルバンドフィルターを使用し、該デバイスにより、以下の組織内生体分子ならびに血液関連光吸収(例えば、405nm励起下)、コラーゲ
ン(I、II、III、IV、V型およびその他)(これは緑色に見える)、エラスチン(これは緑色がかった黄色-オレンジ色に見える)、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)(これらは青緑色自己蛍光信号を放射する)、ならびに細菌/微生物(これらのほとんどは、広い(例えば、緑色および赤色)自己蛍光発光を有すると思われる)から発せられる組織の自己蛍光がイメージングされる。
【0090】
画像解析には、画像内の赤対緑のAF比を計算することが包含され得る。強度の計算値は、創傷部の画像内の関心領域から得られ得る。疑似カラー画像を創傷部の白色光画像上にマッピングしてもよい。
【0091】
創傷治癒における例
次に、
図12を参照されたい。該デバイスを、細菌で汚染させた創傷部モデルにおいて試験した。このため、ブタ肉を皮膚付きで肉屋から購入した。創傷をシミュレーションするため、外科用メスを用いて、皮膚内にサイズが1.5cm
2~4cm
2の範囲で筋肉層が見えるのに充分深い切開部を作った。該デバイスを用いて、模擬創傷部に(外因的に)細菌を加えていないいくつかの肉試料をイメージングした。このため、肉の上で細菌を増殖させるために肉試料を室温で24時間放置し、次いで該デバイスにより、比較のため、白色光反射率と自己蛍光の両方を用いてイメージングを行なった。
【0092】
該デバイスが結合組織と、典型的な創傷部に存在するいくつかの一般的な細菌とを検出できる能力を試験するため、6種類の細菌種:化膿連鎖球菌、霊菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、大腸菌および緑膿菌を皮膚表面上の6つの小さい1.5cm2の創傷切開部位の各々に塗布することにより、模擬創傷部を有するブタ肉試料を調製した。肉の皮膚にさらなる小さい切開部を作り、ここには細菌を加えず、対照として供した。しかしながら、その他の6つの切開部位からの細菌が、おそらく、そのうちこの部位を汚染するであろうことが予測された。該デバイスを使用し、細菌を負荷した肉試料を、白色光反射率および紫/青色光誘導性の組織の自己蛍光発光を用いて、デュアル発光バンド(450~505nmおよび590~650nm)吸収フィルターとシングルバンド(635+/-10nm)吸収フィルターの両方、および左側にシングルバンドフィルターを用いて、3日間にわたって24時間間隔でイメージングし、この間、肉試料は37℃で維持した。また、この3日間に、肉試料を保存した発泡スチレン容器においてもイメージングを行なった。
【0093】
図12は、模擬動物創傷部モデルにおける細菌の自己蛍光の非侵襲的検出のために該デバイスを使用した結果を示す。標準的な白色光イメージング下では、細菌は、インセットa)に示し、インセットb)に拡大したように創傷部位内において見えなかった。しかしながら、紫/青色励起光下では、該デバイスにより、インセットc)にみられ、インセットd)に拡大したように、結合組織(例えば、コラーゲンおよびエラスチン)による明るい緑色バックグラウンド蛍光に対して細菌のポルフィリンによる赤色蛍光が劇的に強いことに基づいて、創傷部位内の細菌の存在の特定を可能にすることができた。インセットb)とインセットd)の比較は、結合組織(例えば、コラーゲンおよびエラスチン)による明るい緑色バックグラウンド蛍光に対して細菌のポルフィリンによる赤色蛍光が劇的に強いことを示す。自己蛍光により、細菌コロニーもまた皮膚表面上で、個々のコロニーが皮膚上に点状の緑色のスポットとして現れることを引き起こすその緑色蛍光発光に基づいて検出されることが認められた。これらは白色光での検査では見えなかった。結合組織の蛍光イメージングにより、インセットe)およびインセットf)に見られるように創傷部マージンの測定が補助され、皮膚の一部の領域(cで「*」の印を付けている)は、他の領域よりも赤色蛍光が強く見え、おそらくポルフィリン産生菌の皮下感染を示す。また、インセットe)およびf)は、該デバイスによる外科的創傷部内の赤色蛍光細菌の検出を示
し、これは、白色光イメージング下では見えない。
【0094】
該デバイスにより、創傷部位内および周囲の皮膚上における細菌の体内分布がマッピングされた。したがって、微生物学的試験のためのスワブ採取または生検を必要とする特定の組織領域の標的化が補助され得る。さらに、イメージングデバイスの使用により、さまざまな医療処置、例えば、抗生物質および他の治療薬(抗生物質など)の使用、創傷部デブリードマン、創傷部清拭、光線力学療法(PDT)、高気圧酸素療法(HOT)、低反応レベル光治療または抗マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)に対する細菌感染組織の応答をモニタリングすることが可能になり得る。該デバイスは、創傷部の表面ならびに組織深部内の細菌の体内分布の可視化に、また、周囲の正常組織の可視化にも有用であり得る。したがって、該デバイスは感染の空間的分布を示すために有用であり得る。
【0095】
実施例
次に、
図13を参照されたい。一例として、イメージングデバイスは、慢性創傷の治癒状態および創傷部デブリードマンの奏功を調べるために臨床的に使用され得る。例えば、糖尿病を有する人の典型的な側部潰瘍を図に示す。(i)治癒していないことを示す分子マーカーを有する潰瘍形成性細胞を含む非治癒縁部(すなわち、カルス)、および(ii)表現型的に正常だが生理学的障害細胞、これは、刺激すると治癒し得る。デブリードマン後の創傷部の外観にもかかわらず、これは、治癒しているのではないのかもしれず、阻害および/または過角化組織(例えば、c-mycおよびβ-カテニン)の特異的分子マーカーの存在について評価する必要があり得る。イメージングデバイスと、かかる分子標的に対する外因的蛍光標識分子プローブとの組合せを使用し、医師は、分子バイオマーカーのインサイチュ発現を測定することが可能になり得る。該デバイスにより、創傷部をデブリードマン処置したら、創傷部領域の蛍光イメージングおよび画像解析によって、その後の免疫組織化学検査を目的とした生検が可能となり得、これにより、デブリードマンの程度が充分であったかどうかが判定され得る。デブリードマンの程度が不充分であった場合、左下の図に示すように、c-myc(これは緑色に見える)および核内β-カテニン(これは紫色に見える)について陽性の細胞が、潰瘍形成性細胞(これは、創傷部が適正に治癒することを妨げ得、さらなるデブリードマンが必要であることを示すものであり得る)の存在を示すそれらの蛍光に基づいて見出され得る。また、治癒していない箇所が厚くなった表皮、厚くなった角質層、および角質層内の核存在によって境界画定され得る。デブリードマンが奏功的であった場合、下の右下の図に示すように、c-mycまたはβ-カテニンに対する染色は見られ得ず、潰瘍形成性細胞の非存在およびデブリードマンの奏功を示す。阻害のこのようなマーカーは有用であり得るが、目標は、新しい上皮の出現、創傷部面積の減少および無排膿によって規定される実際の治癒である。この情報は、蛍光イメージングデバイスを用いて収集され、患者の医療記録(これは、病理学および微生物学レポートと対で客観的解析をもたらすものであり得る)に電子的に保存され得る。予測治癒期間を実際の治癒(すなわち、治癒経過)時間と、イメージングデバイスを用いて比較することにより、適応的処置ストラテジーが個々の患者ベースで実施され得る。
【0096】
図14は、褥瘡の創傷治癒のイメージングのための該デバイスの使用の一例を示す。インセットa)該デバイスで撮像した褥瘡を有する糖尿病患者の右足の白色光画像を示す。インセットb)対応する蛍光画像は、標準的な白色光での検査では見えない細菌(細菌学検査結果により黄色ブドウ球菌の深刻な増殖の存在が確認された)の明るい赤色蛍光を示す(黄色矢印)。非治癒性創傷部の周縁部周囲の黄色ブドウ球菌の深刻な増殖に注意のこと(長い黄色矢印)。インセットc~d)は、インセットb)における未加工蛍光画像のスペクトル分離した(非混合)赤-緑-青色画像を示し、これが、数学的アルゴリズムを用いて計算された緑色(例えば、コラーゲン)と赤色(例えば、細菌)の蛍光強度のスペクトルコード画像マップを作成し、カラースケールにより疑似カラーで表示するために使用される。インセットf~g)は、赤/緑色蛍光強度比を計算することによって内因性細
菌の自己蛍光信号のコントラストを強調し、開口創傷部内およびその周囲の細菌の存在および体内分布(赤色-オレンジ色-黄色)を明らかにするために使用される画像処理方法の一例を示す。このデータは、該デバイスによって得られた蛍光画像を数学的に解析し、これらを意味のある様式で臨床的使用のために表示するためにカスタムまたは市販の画像解析ソフトウェアを使用することができる能力を示し、これはリアルタイムで行なわれ得る(スケールバー1cm)。
【0097】
図15は、慢性の非治癒性創傷部のイメージングのための該デバイスの使用の一例を示す。インセットa)該デバイスで撮像した壊疽性膿皮症を有する女性患者の左乳房の白色光画像は、慢性の非治癒性創傷部(青色矢印)および治癒した創傷部(赤色矢印)を示す。細菌は、典型的には、創傷部の慣用的な臨床検査で使用される標準的な白色光での可視化では可視化され得ない。インセットb)同じ創傷部(この例では、405nm励起,500~550nm発光(緑色),>600nm発光(赤色)を使用)の対応する蛍光画像を示す。治癒していない創傷部は蛍光下では暗い色に見える(主に、血液による励起光および蛍光発光の吸収のため)が、治癒した創傷部において細菌が点状の明るい赤色のスポットとして見られる(赤色矢印)ことに注目のこと。蛍光下では、周囲の正常皮膚は、内因性コラーゲン蛍光(405nm励起)のためシアン-緑色に見える。対照的に、治癒していない創傷部(青色矢印)は創傷部境界部周囲に非常に明るい赤色蛍光の帯を有するように見え、スワブ培養物(細菌学)により、黄色ブドウ球菌の深刻な増殖が含まれていることが確認された(少量のグラム陽性桿菌および稀にグラム陽性球菌も顕微鏡検査によった確認された)。インセットc)インセットa、b)の治癒した創傷部の白色光画像およびd)白色光下では見えない細菌(ピンクの矢印)による明るい赤色蛍光を示す対応する蛍光画像。インセットe)治癒していない乳房創傷部の白色光およびインセットf)対応する蛍光画像。細菌(黄色ブドウ球菌)は主に創傷部の縁部/境界部あたりに局在しているようである(黄色矢印)が、創傷部内(X)に存在している細菌は少ない(蛍光イメージングを用いて直接可視化した細菌の体内分布によって測定)が、白色光下では見分けられない(黒矢印,e)ことに注目のこと(スケールバー(単位:cm))。
【0098】
図16は、一例のイメージングデバイスを用いた慢性の非治癒性創傷部のイメージングをさらに示す。インセットa)慢性の非治癒性創傷部(青色矢印)および治癒した創傷部(青色矢印)を示す、該デバイスで撮像した壊疽性膿皮症を有する女性患者の左乳房の白色光画像。細菌は、創傷部の臨床検査で使用される標準的な白色光での可視化では可視化され得ない。インセットb)同じ創傷部の対応する蛍光画像(405nm励起,500~550nm発光(緑色),>600nm発光(赤色))。乳頭は、白色光下では明白な細菌汚染がなく、正常のようであるが、蛍光イメージングは、乳頭部乳管発せられる細菌の存在を示す。乳頭のスワブにより、細菌は表皮ブドウ球菌(培養すると偶発的増殖がみられる)であることが示された(スケールバー(単位:cm))。
【0099】
図17は、イメージングデバイスを用いてイメージングした慢性の非治癒性創傷部の中央領域と境界部を示す。a)該デバイスで撮像した、慢性の非治癒性創傷部の中央領域と境界部を示す壊疽性膿皮症を有する女性患者の左乳房の白色光画像。インセットa)治癒していない乳房創傷部の白色光およびインセットb)対応する蛍光画像(405nm励起,500~550nm発光(緑色)、>600nm発光(赤色))。細菌(黄色ブドウ球菌;細菌のスワブ採取によって示された)は主に創傷部の縁部/境界部あたりに局在しているようであるが、創傷部内(X)に存在している細菌は少ない(蛍光イメージングを用いて直接可視化した細菌の体内分布によって測定)、だが、白色光下では見分けられないことに注目のこと(スケールバー(単位:cm))。
【0100】
図18は、イメージングデバイスを使用した慢性の非治癒性創傷部のさらなる画像を示す。インセットa)該デバイスで撮像した、慢性の非治癒性創傷部を示す壊疽性膿皮症を
有する女性患者の左乳房の白色光画像。細菌は、創傷部の臨床検査で使用される標準的な白色光での可視化では可視化され得ない。インセットb)同じ創傷部の対応する蛍光画像(405nm励起,500~550nm発光(緑色),>600nm発光(赤色))。蛍光イメージングは、インセット(b)清拭前およびインセット(c)清拭後の創傷部の縁部/境界部あたりの細菌の存在を示す。この例では、清拭は、創傷部の表面(内外)を5分間拭くために標準的なガーゼおよびリン酸緩衝生理食塩水の使用を伴った。清拭後、細菌の赤色蛍光が認識可能に低減され、いくらかの赤色蛍光細菌が、創傷部の縁部あたりの組織表面下に存在している可能性があることを示す。清拭後、少量の細菌(赤色蛍光)が創傷部の中央部内に残存していた。これは、創傷部清拭の効果をリアルタイムでモニタリングするためのイメージングデバイスの使用を示す。さらなる一例として、インセットd)は、左ふくらはぎに存在する同じ患者の慢性の非治癒性創傷部の白色光画像を示す。インセットe)は、インセット(e)清拭前およびインセット(f)清拭後の対応する蛍光画像を示す。創傷部の中央領域のスワブ採取により、縁部に黄色ブドウ球菌の深刻な増殖を伴う黄色ブドウ球菌の偶発的増殖が示された(黄色矢印)。清拭により創傷部表面上において蛍光細菌(黄色ブドウ球菌)の低減がもたらされ、これは手持ち式光学イメージングデバイスを用いて測定された。イメージングデバイスの使用により、白色光では見えない細菌のリアルタイム検出がもたらされ、これにより、患者を処置する様式を、蛍光イメージング後に創傷部および周囲部(細菌汚染させている)を充分に再清拭するか、または細菌のあらたな検出のため初めて清拭するかのいずれかとするように変更することができた。また、イメージング焦点合わせを補助するための使い捨て接着性測定キャリブレーション「ストリップ」の使用に注目のこと。この「ストリップ」は体表面の任意の部分(例えば、創傷部付近)に接着されて創傷部の空間的測定を可能にするものであり得る。また、キャリブレーションストリップは、別個に蛍光性のものであってもよく、患者指定の情報を画像に負荷するために使用され得る(例えば、「バーコード表示」目的のための複数の外因性蛍光色素の使用-その情報は直接、創傷部の蛍光画像に統合され得る)(スケールバー(単位:cm))。
【0101】
図19は、創傷治癒を経時的にモニタリングするためのイメージングデバイスの使用を示す。イメージングデバイスは、壊疽性膿皮症を有する女性患者の左乳房の非治癒性慢性創傷の治癒状態および細菌の体内分布(例えば、汚染)の変化を追跡するために使用される。6週間にわたる経過の白色光画像(インセットa~mを示す列を参照)ならびに治癒した創傷部(インセットb~nを示す列を参照)および慢性の非治癒性創傷部(インセットc~oを示す列を参照)の対応する蛍光画像を示す(405nm励起,500~550nm発光(緑色),>600nm発光(赤色))(イメージングデバイスを白色光モードおよび蛍光モードの両方で用いて撮像)。インセットb~n)の列では、明るい赤色蛍光の小さい細菌コロニーの存在が検出されており(黄色矢印)、その局在は、治癒した創傷部内で経時的に変化している。細菌スワブにより、顕微鏡検査で細菌は検出されず、培養中、細菌の増殖は観察されないことが確認された。インセットc~o)の列では、対照的に、治癒していない創傷部は創傷部境界部周囲に非常に明るい赤色蛍光の帯を有し、スワブ培養物(細菌学)により、黄色ブドウ球菌の深刻な増殖が含まれていることが確認され(少量のグラム陽性桿菌および稀にグラム陽性球菌も顕微鏡検査によった確認された)、これは体内分布が経時的に変化する(すなわち、インセットc~oの列を参照)。このデータにより、イメージングデバイスによってリアルタイムの生物学的および分子的情報がもたらされるとともに、創傷部の形体構造的および分子的変化を経時的にモニタリングするために使用され得ることが実証される。
【0102】
図20は、創傷部の状態を経時的にモニタリングするための該デバイスの使用の別の例を示す。イメージングデバイスは、壊疽性膿皮症を有する21歳の女性患者の左ふくらはぎの創傷部の治癒状態および細菌の体内分布(例えば、汚染)の変化を追跡するために使用される。高気圧酸素療法(HOT)を用いて処置した創傷部の6週間にわたる経過の白
色光画像(インセットa~iの列を参照)および対応する蛍光画像(インセットb~jの列を参照)を示す(蛍光パラメータ:405nm励起,500~550nm発光(緑色),>600nm発光(赤色))。インセットa~iの列)白色光画像は、1週目(約2cm長直径直径)から6週目(約0.75cm長径)までの経時的なサイズの縮小(例えば、閉鎖)によって示される、治癒している創傷部の明確な巨視的変化を示す。インセットb~j)の列では、創傷部内および創傷部周囲の内因性細菌蛍光(自己蛍光)のリアルタイム蛍光イメージングが経時的に追跡され、白色光画像および創傷部閉鎖の測定(インセットa~iの列)と相関され得る。インセットb)は、創傷部の境界近接部に明確な緑色蛍光の帯を示し(黄色矢印;黄色ブドウ球菌の深刻な増殖で汚染されていることを示す)、この帯は創傷部が治癒するにつれて経時的に変化する。また、赤色蛍光細菌は、創傷部からさらに離れた箇所にもみられ(オレンジの矢印)、その体内分布は経時的に変化する(インセットb~jの列を参照)。創傷部と創傷部周囲と正常組織の境界部が、インセットj)の画像の蛍光によってはっきりわかる。正常皮膚の結合組織(この例では、コラーゲン)には薄い緑色蛍光が現れ(インセットj)、慢性創傷の種々の創傷部処置(例えば、この場合では高気圧酸素療法)中、創傷治癒中の結合組織リモデリングが経時的にモニタリングされ得る。
【0103】
図21は、クリニックでのルーチン的な創傷部評価において細菌スワブを標的化するためのイメージングデバイスの使用を示す。蛍光イメージング下で、スワブは、蛍光画像支援を用いてリアルタイムで特定の細菌汚染/感染領域に指向または標的化され得る。これにより、ルーチン的なスワブ採取手順において細菌の拡延(これは、慣用的な創傷部スワブ採取法における問題であり得る)が低減されることによって、非感染組織の汚染の可能性が低減され得る。この試料のスワブの結果により黄色ブドウ球菌であると測定された(少量のグラム陽性桿菌および稀にグラム陽性球菌も顕微鏡検査によった確認された)。
【0104】
図22は、糖尿病関連の非治癒性側部潰瘍を有する患者におけるa)白色光と、b)イメージングデバイスを用いて作成した対応する蛍光画像の重ね合わせの一例を示す。非接触的温度測定プローブ(インセットa)をクロスレーザー観測とともに使用し、正常皮膚(黄色「3と4」)および側部潰瘍内(黄色「1と2」)(緑膿菌に感染,細菌学的培養によって確認)において直接温度測定を行ない、臨床検査中に温度ベースの情報を創傷部評価に追加できることが示された。感染創傷部は、感染創傷部で平均34.45℃がみられたように高い温度を有するのに対して正常皮膚表面では30.75℃であり、このデータは、リアルタイムでの創傷部の健常性/感染の評価のための、白色光、蛍光および熱情報を含むマルチモダリティ測定の可能性を示す。この患者の右足の両方の非治癒性創傷部には緑膿菌の深刻な増殖含まれており(グラム陽性球菌およびグラム陰性桿菌に加えて)、これは、この例では、創傷部において明るい緑色蛍光領域に見えることに注目のこと(インセットb)。
【0105】
図23は、褥瘡をモニタリングするためのイメージングデバイスの使用の一例を示す。インセットa)イメージングデバイスで撮像した、褥瘡を有する白人糖尿病患者の右足の白色光画像を示す。インセットb)対応する蛍光画像は、標準的な白色光での検査では見えない細菌(細菌学検査結果により黄色ブドウ球菌の深刻な増殖の存在が確認された)の明るい赤色蛍光を示す(黄色矢印)。死んだ皮膚は白色/明るい薄緑色に見える(白矢印)。非治癒性開口創傷部の周縁部周囲の黄色ブドウ球菌の深刻な増殖に注意のこと(黄色矢印)。インセットc)は、局所適用した銀抗菌性包帯の蛍光イメージングを示す。イメージングデバイスは、最新の創傷ケア製品(例えば、ハイドロゲル、創傷包帯など)からの内因性蛍光信号またはかかる製品(これは、該デバイスのイメージング検出器の検出感度範囲内の発光波長を有する蛍光色素を用いて調製されている)からの蛍光信号を検出するために使用され得る。該デバイスは、最新の創傷ケア処置製品の画像支援送達/適用のため、ならびに続いて、その分布および排出を経時的にモニタリングするために使用され
得る。
【0106】
図24は、褥瘡をモニタリングするための該デバイスの使用の一例を示す。インセットa)該デバイスで撮像した、褥瘡を有する白人糖尿病患者の右足の白色光画像。インセットb)対応する蛍光画像は、細菌(細菌学検査結果により黄色ブドウ球菌,SAの深刻な増殖の存在が確認された)の明るい赤色蛍光領域を創傷縁部に、および明るい緑色蛍光細菌(細菌学検査結果により緑膿菌,PAの深刻な増殖の存在が確認された)を示し、これらはどちらも、標準的な白色光での検査では見分けられない。インセットc)創傷部で行なった蛍光分光法により、これらの2つの細菌種間に固有のスペクトルの違いが明らかになった:SAは、赤色(約630nm)の自己蛍光発光特性ピークを有し、一方、PAには赤色蛍光はないが、480nmあたりに強い緑色自己蛍光ピークを有する。
【0107】
手持ち式デバイスによるスペクトルにより、細菌が結合組織と血液からインビボで識別される。λexc=405_20nmおよびλemiss=500~550nm,590~690nmを使用し、該デバイスにより、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、緑膿菌、カンジダ菌、霊菌、緑色連鎖球菌(α-溶血連鎖球菌)、化膿連鎖球菌(β-溶血連鎖球菌)、ジフテリア菌、エンテロバクター属菌、エンテロコッカス属菌、およびメシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のAF信号が検出され、微生物学的スワブ培養物によって確認される(今度の論文で公表される予定の本発明者らのグループによるヒト臨床試験でのデータ)。これは、感染創傷部に一般的にみられる主な型の病原性細菌の代表例である。臨床微生物学試験により、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、カンジダ菌、霊菌、緑色連鎖球菌、ジフテリア菌、化膿連鎖球菌、エンテロバクター属菌およびエンテロコッカス属菌は、赤色FL(ポルフィリンによる)を生成するが、緑膿菌は青っぽい緑色FL(ピオベルジンによる)を生成することが確認された(手持ち式デバイスによって検出)。このようなスペクトル特性は、それぞれ緑色および暗赤色に見える結合組織(コラーゲン、エラスチン)および血液と有意に異なる。このようなスペクトル特性の代表的な画像を
図24に示す。
【0108】
図25は、慢性の非治癒性創傷部をモニタリングするための該デバイスの使用の一例を示す。インセットa)イメージングデバイスで撮像した、II型糖尿病を有する44歳の黒人男性患者の慢性の非治癒性創傷部の白色光画像を示す。創傷部の慣用的な臨床検査で使用される標準的な白色光での可視化では細菌は可視化され得ない(インセットa~gの列を参照)。インセットb~hの列)同じ創傷部の対応する蛍光画像(405nm励起,500~550nm発光(緑色),>600nm発光(赤色))。この患者には複数の非治癒性開放創があった。蛍光画像支援を用いて各創傷部領域から採取したスワブ培養物により、緑膿菌の深刻な増殖が明らかになり(黄色矢印)、これは明るい緑色蛍光に見え、霊菌(丸印)は赤色蛍光に見える(スケールバー(単位:cm))。
【0109】
図26は「キャリブレーション」ターゲットの使用の一例を示す模式図であり、これは、イメージングデバイスでの創傷部のイメージング中における使用のためのカスタム設計された多目的および/または使い捨て式であり得る。ストリップ(これは、この例では接着性である)は:空間的測定ツール(例えば、長さスケール)、患者指定の医療情報に統合するための情報バーコードおよびイメージング中のリアルタイム蛍光画像キャリブレーションのための含浸型濃度勾配の蛍光色素のうちの1つ以上の組合せを含むものであり得る。後者では、複数の濃度の種々の外因性蛍光色素または他の蛍光剤(例えば、量子ドット)が、例えば、1種類より多くの外因性蛍光標識プローブが創傷部の組織/細胞/分子標的化分子のインビボイメージングに使用される場合に、マルチプレックス蛍光強度キャリブレーションに使用され得る。
【0110】
図27は、例えば、処置応答をモニタリングするために細菌をモニタリングするための
一実施形態のイメージングデバイスの使用の一例を示す。インセットa)Invitrogen Corp.によって販売されている生菌/死菌株(すなわち、製品BacLight)の蛍光顕微鏡画像。インセットb)Invitrogen Corp.によって販売されているグラム染色細菌標識菌株の蛍光顕微鏡画像。イメージングデバイスをかかる製品とともに使用し(インセット(c))、生菌(緑色)および死菌(赤色)がリアルタイムで、エキソビボにて(例えば、スワブもしくは組織生検で)(創傷部の細菌スワブ採取後)または他の体表面で(例えば、インセットd)の場合のように、頬の内側の口腔内のスワブ採取で)識別され得る(インセット(e))。このリアルタイムの細菌グラム染色または生/死画像ベース評価は、リアルタイムまたは比較的迅速な細菌学検査結果に有用であり得、これは、処置の絞り込み(例えば、抗生物質もしくは他の消毒処置)または処置応答のモニタリングに使用され得る。
【0111】
図28は、足指の爪の感染のイメージングのために使用される該デバイスの使用の一例を示す。白色光での可視化と比較して蛍光イメージングによって示された感染のコントラストの強調を示す被験体の右の足指のインセットa)白色光およびインセットb)対応する自己蛍光(405nm励起,500~550nm発光(緑色),>600nm発光(赤色))。
【0112】
実施例
図29は、ブタ肉試料の皮膚表面上のコラーゲンおよび種々の細菌種の自己蛍光の非侵襲的検出のために使用されている該デバイスの一例を示す。白色光イメージングとは対照的に、自己蛍光イメージングでは、皮膚に作った小さい切開部にいくつかの細菌種を局所塗布してから24時間後、これらの存在を検出することができた(すなわち、化膿連鎖球菌、霊菌、黄色ブドウ球菌、表皮ブドウ球菌、大腸菌および緑膿菌)。インセットa)は、試験に使用したブタ肉の白色光画像を示す。皮膚に作った小さい切開部に、いくつかの細菌種を0日目に塗布し、以下のとおりに表示した:1)化膿連鎖球菌、2)霊菌、3)黄色ブドウ球菌、4)表皮ブドウ球菌、5)大腸菌および6)緑膿菌。イメージングデバイスを使用し、コラーゲンおよび細菌の自己蛍光を経時的に検出した。結合組織の蛍光は強く、また容易に検出された。一部の細菌種(例えば、緑膿菌)は、有意な緑色自己蛍光(450~505nm)を生成し、これは該デバイスのカメラを飽和させた。インセットb)は、0日目の自己蛍光画像を示し、インセットc)に拡大している。
【0113】
また、該デバイスにより、肉の表面全体への細菌の拡延を経時的に検出することもできた。インセットd)は、肉試料を37℃で維持したときの1日目の画像を示し、インセットf)は3日目の画像を示す。赤色蛍光が、インセットc)のいくつかの創傷部位(5,6)においてみられ得る。インセットd)に示し、インセットe)に拡大したように、24時間後、該デバイスにより、創傷部位5)大腸菌および6)緑膿菌による細菌自己蛍光の劇的な増大が検出され、後者は有意な緑色および赤色自己蛍光を生成している。インセットc)およびe)は、デュアルバンド(450~505nm緑色および590~650nm)(左側)およびシングルバンドフィルター(635+/-10nm)(右側)を用いて創傷部表面の蛍光を検出する該デバイスを示す。インセットf)に示すように、3日目までに、該デバイスにより、他の創傷部位からの細菌の自己蛍光(緑色および赤色)の有意な増大、ならびに肉試料を維持していた発泡スチレン容器上の細菌汚染(インセットfにおいて矢印で表示)が検出される。また、該デバイスにより、肉の表面全体への細菌の拡延を検出することもできた。これは、模擬創傷部における細菌種のリアルタイム検出、該細菌の経時的な増殖、および該デバイスが創傷部における細菌の増殖の長期モニタリングをもたらすことができる能力を実証している。該デバイスにより、細菌スワブ採取および組織生検の標的化に有用であり得る創傷部表面上の細菌の体内分布に関する極めて重要な情報が得られ得る。インセットd)およびf)において、ブタ肉試料の縁部における内因性コラーゲンによる強い緑色蛍光信号に注意のこと。
【0114】
この例は、自己蛍光単独に基づいた結合組織および細菌の増殖における生物学的変化のリアルタイム検出ためのデバイスの使用を示し、該デバイスが創傷部における細菌の増殖の長期モニタリングをもたらすことができる実用的な能力を示唆する。
【0115】
再度、
図3を参照されたい。画像は、ブタ肉試料の筋肉表面上の結合組織(例えば、コラーゲン、エラスチン)および細菌の自己蛍光検出のために使用される該デバイスの一例を示す。インセットa)は、試験に使用したブタ肉の白色光画像には細菌/微生物汚染または損傷の明白な徴候が示されていないことを示す。しかしながら、インセットb)に見られるように、青色/紫光励起下での該デバイスでの同じ領域のイメージングにより、筋肉の明るい赤色蛍光領域が示され、隣辺の筋肉と比べて細菌汚染の可能性が示された。また、コラーゲンの極めて明るい緑色自己蛍光が皮膚の縁部にみられ得る。インセットc)では、該デバイスを、疑わしい赤色蛍光を外科的にインテロゲーションし、さらに、その後の病理学または細菌学検査のための標的化生検をもたらすために使用した。また、該デバイスが蛍光によって、外科処置中の外科用器具(例えば、鉗子)の汚染(矢印)を検出できる能力にも注目のこと。インセットd)では、該デバイスを、細菌による感染が疑われる領域の光ファイバープローブを用いた蛍光分光法の収集を標的化するために使用した(インセットは、分光法プローブをインセットb)、c)の赤色蛍光筋肉の同じ領域内に標的化するために使用されている該デバイスを示す。e)は、肉試料を維持したスタイロフォーム(登録商標)容器の表面上の種々の細菌薄膜による汚染を検出するために使用されている該デバイスの一例を示す。細菌の自己蛍光は、紫/青色励起光下において、先に肉に塗布した種々の細菌種による緑色および赤色の蛍光の筋として現れる。したがって、該デバイスにより、標準的な白色光下で見ると見えない(インセットaの場合)非生物学的表面上の細菌を検出することができる。
【0116】
創傷部および皮膚表面上における細菌の検出に加えて、該デバイスではまた、筋肉組織の疑わしい領域を特定することもでき、次いで、これは、病理学的確認のために外科処置もしくは標的化生検によって、または他の光学的手段(光ファイバープローブを用いる蛍光分光法など)さらにインテロゲーションされ得る。また、肉試料を維持したスタイロフォーム容器の表面上の種々の細菌による汚染も検出された。細菌の自己蛍光は、紫/青色励起光下において、先に肉に塗布した種々の細菌種による緑色および赤色の蛍光の筋として現れる。
【0117】
培養で増殖させ、模擬皮膚創傷部における細菌の自己蛍光特性を調べるため、ハイパースペクトル/マルチスペクトル蛍光イメージングを用いて、紫/青色光励起下での細菌による蛍光強度スペクトルを定量的に測定した。次に、
図30を参照されたい。
図30では、該デバイスを用いて、寒天プレートで培養している細菌およびブタ肉上の模擬創傷部の表面上の細菌による蛍光を、
図12および29について上記に論考したとおりに検出した。細菌の自己蛍光は、緑色波長範囲および赤色波長範囲で該デバイスを用いて、インセット(a)培養物およびインセット(d)肉試料において検出した。ハイパースペクトル/マルチスペクトルイメージングを用いて、インセット(b)内の培養状態の細菌(大腸菌)をイメージングし、細菌による定量的蛍光強度スペクトルを測定した(赤線-ポルフィリン,緑色-細胞質,青色-寒天バックグラウンド)(インセット(c))。赤色矢印は、細菌において検出されたポルフィリンによる蛍光の635mnピークを示す。また、ハイパースペクトル/マルチスペクトルイメージングにより、緑膿菌による強い緑色蛍光(
*,インセットdの右の四角)(ポルフィリンによる蛍光はほとんどない,インセットfの黄色の線)が確認され、大腸菌(インセットdの左の四角)(この場合、有意なポルフィリンによる赤色蛍光が検出された)と比較した。インセットe)およびg)は、2日間の増殖(37℃でインキュベーション)後の肉表面のそれぞれ緑膿菌および大腸菌に対応するカラーコードによるハイパースペクトル/マルチスペクトルの画像を示し;インセッ
トf)およびh)は、対応するカラーコードによる蛍光分光法を示す。また、インセットi)では、励起発光マトリックス(EEM)も種々の細菌種(溶液状)について測定し、イメージングデバイスの光学フィルターでの使用のための至適励起および発光波長帯域幅を選択できることが示された。大腸菌のEEMは、強い緑色蛍光ならびに内因性細菌のポルフィリンによる有意な赤色蛍光を示す(矢印)。
【0118】
この例は、細菌が緑色自己蛍光および赤色自己蛍光を放射し、一部の種(例えば、緑膿菌)は前者をより多く生成することを示す。大腸菌は、内因性ポルフィリンによる有意な赤色自己蛍光を生成した。細菌種間のかかる内因的なスペクトルの違いは、自己蛍光だけを用いて異なる細菌種を区別する手段をもたらし得るため意義深い。また、励起発光マトリックス(EEM)も、このパイロット試験で使用した各細菌種について測定し、紫/青色光励起下では、すべての種が有意な緑色および/または赤色の蛍光を生成し、後者はポルフィリンによってもたらされることが確認された。励起発光マトリックスから得られるスペクトル情報は、イメージングデバイスの光学フィルターでの使用のための励起および発光波長帯域幅の選択の最適化を補助して、エキソビボおよびインビボでの細菌種間区別を可能にし得る。このようにして、該デバイスは、創傷部および周囲の正常組織内の内因性結合組織(例えば、コラーゲンおよびエラスチン)ならびに細菌および/または他の微生物(酵母、真菌およびカビなど)の存在および量の微妙な変化を、このような生物学的成分の固有の自己蛍光サインに基づいて検出するために使用され得る。
【0119】
このデバイスは、臨床的微生物学検査におけるイメージングデバイスおよび/またはモニタリングデバイスとして使用され得る。例えば、該デバイスは、一般的な微生物学アッセイにおける細菌コロニーの定量的イメージングおよびコロニー増殖の定量のために使用され得る。細菌コロニーの蛍光イメージングは、増殖速度論を調べるために使用され得る。
【0120】
創傷部の血液のイメージング
新しい血管の増殖である血管新生は、怪我または傷害後の創傷部の治癒および組織への血流の回復に必要とされる重要な自然過程である。血管新生療法は、新しい毛細血管の増殖の「スイッチがオンになる」ように設計されるものであり、破滅的で生命を脅かす病状を処置するための統一アプローチを提供することによる革命的な医療である。血管新生は、創傷治癒に必要とされる生理学的過程である。怪我の直後に、血管新生は、複数の分子性信号、例えば、止血因子、炎症、サイトカイン増殖因子、および細胞-マトリックス間相互作用によって開始される。新たな毛細血管は、創面環境において肉芽組織を形成するための生物学的事象カスケードによって増殖する。このプロセスは、増殖因子レベルの減少、炎症の消散、組織マトリックスの安定化および血管新生の内因性阻害因子によって血管新生が終了する治癒の最終段階まで持続され得る。血管新生経路の欠陥は肉芽形成を障害して治癒を遅延させ、これは慢性創傷において明白である。組織表面に、選択した狭い波長帯域(例えば、青色、緑色および赤色成分)の光を照射すること、または可視光スペクトルのいくつかの狭帯域幅内の白色光(例えば、血液による白色光の吸収スペクトルからの選択した波長のピーク吸収)の反射率を検出することにより、該デバイスはまた、創傷部内および創傷部周囲(周囲の正常組織を含む)における血液および微小血管網の存在をイメージングし、したがって、また、紅斑および炎症の領域を明らかにするためにも使用され得る。
【0121】
次に、
図31を参照されたい。該デバイスには、創傷部における血液および微細血管系のイメージングの可能性を示すために個々の光学フィルター(例えば、405nm,546nm,600nm(各々、+/-25nm))が使用され得る。創傷部の白色光画像が該デバイスにより収集され得、次いで、イメージング検出器の前面に配置されたトリプルバンドパスフィルター(例えば、405nm,546nm,600nm(各々、+/-2
5nm))を備えた該デバイスにより、創傷部からの個々の狭帯域幅の青色(B)、緑色(G)および赤色(R)反射光成分がイメージングされ得る。このような波長帯域は、血液(酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビン両方を含む)の可視光波長範囲内のピーク吸収波長に基づいて選択され得る。得られる画像により、視野内の血液による可視光の相対吸収、したがって反射率がもたらされ得る。得られる「血液吸収」画像は、創傷部および周囲の正常組織内の血液および/または微小血管網の存在の高コントラスト画像をもたらす。医師により、創傷部における血液および/または微小血管の分布の画像を得るために該デバイスでの使用のための適切な光学フィルターセットが選択され得、この情報は、自己蛍光イメージングおよび外因性造影剤を用いたイメージングの一方または両方と組み合わされる。これにより、形体構造的、トポグラフィー的、解剖学的、生理学的、生物学的および分子的レベルでの創傷部および周囲の正常組織の一組の包括的情報がもたらされ得、これは、現在では、慣用的な創傷ケア実務範囲内で可能ではあり得ない。
【0122】
図31は、創傷部内の血液および微細血管系のイメージングために使用される該デバイスの一例を示す。該デバイスを用いて、インセット(a)血液で染色した濾紙片およびインセット(b)外科処置中のマウスの耳をイメージングした。各検体の白色光画像を、イメージングデバイスを非蛍光モードで用いて収集し、次いで、イメージング検出器(405nm,546nm,600nm(各々、+/-25nm))の前面に配置されるトリプルバンドパスフィルターを該デバイスに備え付け、検体からの個々の狭帯域幅の青色(B)、緑色(G)および赤色(R)反射光成分をイメージングした。このような波長帯域は、血液の可視光波長範囲内のピーク吸収波長に基づいて選択した。(インセットa)は、血液中の酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビンの吸収スペクトルプロフィールを示す。これは、シンプルなマルチバンド伝送フィルター使用し、B、G、Rの3つの画像を、視野内の血液による光の相対吸収を測定する単一の「白色光相当」画像に併合することが可能であることを示す。得られる「血液吸収」画像は、酸素化ヘモグロビンおよび脱酸素化ヘモグロビンの両方を含む血液の存在の高コントラスト画像をもたらす。該デバイスは、例えば、創傷部における血液による吸収の高コントラスト画像を得るために狭帯域幅フィルターとともに使用され得る。
【0123】
創傷部の修復中のインビボでの経時的な血管新生の調節は、血管内の事象の観察が困難なため、大きくは探索されていなかった。本イメージングデバイスの最初の試験は探索的であったが、既存のプロトタイプデバイスの簡単な改良により、創傷治癒過程におけるインビボでの血液供給および微小血管網の動的変化の長期的なイメージングが可能になり得る。
【0124】
一般に、該デバイスは、被験体の皮膚標的、口標的、耳-鼻-喉標的、眼標的、生殖器標的、肛門標的などの標的および任意の他の適当な標的をイメージングおよび/またはモニタリングするために使用され得る。
【0125】
臨床的ケアにおける使用
現行の創傷部マネージメント実務は、患者の創傷による疾病率および死亡率を低下させることを目的としたものであるが、制限は保険医療手段の利用可能性である。遠隔医療の技術を創傷ケアニーズに組み込むことの可能性は、現在、探索されつつある。創傷ケアは、長期の特化されたケアが必要とされる慢性で衰弱性の病状のケアの代表である。生活環境の改善の大きな効果および世界規模での保険医療の進歩により人々は長く生きられるようになっている。したがって、医療手当が必要とされ得る世界中の高齢者および慢性疾病状態を有する人の割合は高くなってきている。保険医療費の上昇および外来患者のケアに対する企業の圧力に伴い、これは、応急手当が求められている保険医療の危機の一部である。
【0126】
本発明のデバイスにより、創傷部に関する生物学的に適切な情報がもたらされ得、新たに登場している遠隔医療(例えば、E-ヘルス(E-health))インフラを利用して、モバイル式創傷ケア技術の解決策をもたらし得、創傷部保険医療処置に大きく影響を及ぼし得る。創傷ケアは、看護師および保険医療従事者によって行なわれる往診の大量数の割合を占めている。最良の実務にもかかわらず、一部の創傷は予測どおりに治癒せず、臨床専門医による医療が必要とされる。本明細書に記載のデバイスは、患者の家または慢性ケア施設での簡便な創傷部の処置を補助するための特化された臨床的手段の利用を可能にするものであり得、これにより、創傷臨床専門医にとってクライアントのための移動時間が削減され、空き時間が増え、また、該デバイスは保険医療システムに対する削減するものであり得る。
【0127】
創傷部の評価、モニタリングおよびケアマネージメントのためのイメージングデバイスの種々の使用が論考されている。該デバイスは、創傷治癒過程における結合組織(例えば、コラーゲン、エラスチン)および血液/血管供給における変化を検出およびモニタリングするため、創傷部における組織の壊死および滲出物を蛍光に基づいてモニタリングするため、創傷部の表面および深部における創感染、例えば、おそらく極めて重要であることを示す「臨床的に有意な」カテゴリーの細菌または微生物の存在を検出および診断するため(例えば、汚染、コロニー形成、危機的コロニー形成および感染を検出するため)、創傷部のトポグラフィー情報を得るため、ならびに創傷部マージンおよび周囲の正常組織を特定するために使用され得る。組織の蛍光および反射率のイメージングデータは、創傷部の白色光画像上に「マッピング」され、それにより、創傷部および周囲の正常組織における必要不可欠な創傷部の生化学的および光生物学的(例えば、蛍光)情報の可視化が可能になり得、これは、これまで可能でなかった。創傷部のリアルタイムイメージングは、創傷治癒における変化をモニタリングするため、ならびに場合によっては、組織レベル/細胞レベルで起こっている根本的な生物学的変化(例えば、マトリックスリモデリング、炎症、感染および壊死)に関する有用な情報を得ることにより処置の有効性をモニタリングするために経時的に行なわれ得る。これにより、患者における検出、診断および処置モニタリングのための定量的で客観的な創傷部情報が得られ得、特に、該デバイスは、治療の有効性を生物学的レベル(例えば、細菌レベル)でモニタリングおよび/または追跡するために使用され得、これにより、白色光を用いて巨視的/形体構造的外観だけをモニタリングするよりも多くの情報が得られ得る。
【0128】
該デバイスにより、リアルタイムでの非侵襲的な画像支援生検材料標的化、臨床処置の手引き、組織の特性評価がもたらされ得、慣用的なモダリティおよび新たに登場しているモダリティ(例えば、PDT)を用いた画像支援処置が可能となり得る。また、イメージングデバイスの使用は、蛍光(例えば、組織の内因性自己蛍光および/または外因性の分子バイオマーカー標的化蛍光造影剤の投与)によって得られた極めて重要な生物学的および分子的創傷部情報を、既存の、および新たに登場している臨床的創傷ケア評価および処置手引き、例えば、NERDSおよびSTONESのガイドライン(Sibbald et al.によって提案(Sibbald et al.Increased Bacterial Burden and Infection:The Story of NERDS and STONES.ADV SKIN WOUND CARE 2006;19:447-61)と相関させるために使用され得る。該デバイスにより得られた蛍光イメージングデータは、創傷部の表面レベルおよび深部レベルで細菌のバランスおよび負荷を空間的に、およびスペクトルにより特性評価するために使用され得る。該デバイスにより、リアルタイムでの非侵襲的な画像支援生検材料標的化、臨床処置の手引き、組織の特性評価がもたらされ得、慣用的な処置モダリティおよび新たに登場している処置モダリティ(例えば、光線力学療法,PDT)を用いた画像支援処置が可能となり得る。該デバイスは、臨床場面において使用され、慣用的な臨床的創傷ケアレジメンに統合され得、感染性疾患の分野において明確な役割を有するものであり得る。同様に、このデバイス
は、動物およびペットの慢性および急性創傷部のリアルタイム解析、モニタリングおよびケアのためにもまた、慣用的な獣医学的ケアによって使用され得ることを認識されたい。
【0129】
このデバイスにより、大型の患者コホートベースのためのリアルタイムでの創傷治癒の評価が可能になり得る。特に、高齢者、糖尿病患者、免疫抑制された個体および不動状態の個体は、血行不良および不動状態、例えば、褥瘡、例えば、床擦れ、静脈鬱滞性潰瘍および糖尿病性潰瘍に起因する慢性創傷および他の皮膚の罹病状態が発生する率が高い。このような慢性の病状は医療費を大きく増大させ、患者の生活の質を低下させる。このような群の数が多くなるにつれて、最新の創傷ケア製品に対する必要性が高まる。このデバイスは、慢性および急性創傷部をモニタリングする費用効果の高い手段を可能にすることにより、いくつかの場面、例えば、病院、外来診療所、慢性ケア施設、在宅往診保険医療、救急処置室および保険医療施設内の他の極めて重要なエリアにおいて、患者のケアに衝撃を与え得る。さらに、かかる「手持ち式」の携帯型イメージングデバイスは、看護スタッフおよび救急スタッフによって容易に持ち運びされ、使用され得る。瘢痕化(これは、創傷部の結合組織の生成およびリモデリングと関連している)の早期特定ならびに細菌感染が検出されて適切に処置され得、これは、現在困難なことである。また、最新の創傷部ケア製品、例えば、多くの型の包帯(例えば、フィルム状、ハイドロコロイド状、フォーム状、抗微生物性、アルギン酸塩型、非接着性、含浸型)、ハイドロゲル、創傷部洗浄剤およびデブリードマン用薬剤、組織工学的生産品(例えば、代用皮膚、代替物、ならびに合成ポリマーベースの生物学的組織および増殖因子などの組織工学的生産品)、創傷部洗浄剤、薬理学的製剤品、ならびに理学療法における最新の開発もまた、本明細書において開発したデバイスの恩恵を被り得、それは、該デバイスにより、かかる処置の有効性の画像ベースの長期モニタリングが可能となり得るためである。理学療法としては、水治療法、電気刺激、電磁気刺激装置、紫外線療法、高気圧酸素療法、超音波装置、レーザー/発光ダイオード(LED)装置、および創傷部のイメージング/文書化が挙げられ得る。さらなる治療法としては、例えば、抗生物質、創傷部デブリードマン、創傷包帯の適用、および創傷部清拭が挙げられ得る。
【0130】
創傷部組織の解析は典型的には、皮膚創傷部の治癒の評価のために必要とされる。創傷部における肉芽組織、フィブリンおよび壊死の割合ならびに処置中のその変化は、創傷部処置が手引きされ得る有用な情報をもたらし得る。画像解析に、創傷部および周囲の正常組織の光学的情報に基づいて該デバイスにより収集した創傷部の蛍光画像内の個々のピクセルを特定するための高度な統計学的パターン認識分類アルゴリズムを含めてもよい。したがって、画像解析により、創傷部の画像を、創傷部の種々の構成要素、例えば、全創傷部領域、上皮形成、肉芽形成、かさぶた、壊死部、過剰肉芽形成、感染部、穿掘性および周辺組織マージンにマッピングすることが可能になり得る。これは、創傷治癒速度の比較的迅速な測定がもたらされる、ならびに患者マネージメントの判断を手引きする情報がえられる、という付加的な利点を有する。
【0131】
図32は、臨床的創傷ケア場面におけるイメージングデバイスのための計画的マネージメントワークフローを示す。該デバイスは、ルーチン的な創傷部評価、診断、処置および応答の長期モニタリングに容易に統合され得、適応的介入の際に迅速な判断を行なうための創傷部の極めて重要な生物学的および分子的情報がリアルタイムで得られ得る。
【0132】
このデバイスは、既存の保険医療コンピュータインフラ(例えば、増え続けている医師または他の保険医療専門家によって使用されるデスクトップPCおよびポケットPC)に、慣用的な臨床環境における患者の創傷部マネージメントのための長期的な画像カタロギングのために容易に統合され得る。該デバイスのデータ無線受信/伝送能により、既存および今後の無線遠隔医療インフラによって遠隔地からの創傷ケアおよび治癒のモニタリングが可能になり得る。該デバイスは、必要不可欠な医療データ(例えば、健常な創傷部の
状態)を、インターネットによって、または無線使用(携帯電話、PDAもしくはスマートフォンの使用など)でリモートサイトに転送するために使用され得、これにより遠隔医療介入が可能になり得、さらに、軍事医学的用途において戦場での創傷部マネージメントに有用であり得る。該デバイスにより、創傷部位のリアルタイムでの表面イメージングが可能になり得、臨床場面でポイントオブケア担当者によって容易に持ち運びされ得る。費用効果の高い高度な感受性の市販のデジタルイメージングデバイス、例えば、デジタルカメラ、携帯電話、PDA、ラップトップコンピュータ、タブレットPC、ウェブカメラ、およびスマートフォンなどを画像読み取り要素または記録要素として使用し、該デバイスにより、創傷治癒の画像ベースの文書化および処置の有効性の追跡がもたらされ得る。また、この技術は、場合によっては市販の携帯電話に内蔵された高解像度デジタルカメラとの使用のために適合させることによって遠隔医療介入を可能にするために「無線」モードでも機能するように適合され得る。
【0133】
ウェブベースの遠隔医療および遠隔医療モニタリングインフラを使用することにより、該イメージングデバイスは、創傷部評価システムの「ストアアンドフォワード」コンセプトに統合され得る。デジタル画像が得られることに加え、かかるシステムにより、臨床実務ガイドラインの推奨を満たす包括的な一組の臨床的データが提示され得る。本開示のデバイスは、既存の臨床的データベースを強調するため、および根拠に基づく実務ガイドラインの実施をサポートするために保険医療施設によって使用されるコンピュータベースの創傷部評価システム(例えば、画像解析ソフトウェアを有する)に統合され得る。かかる統合された遠隔医療インフラは、資格を有する医師によるルーチン的なモニタリングの恩恵を被り得るが現在はこのケアの利用手段を有していない患者を在宅または長期ケア施設でモニタリングするために使用され得る。このデバイスは、さらに、携帯型の手持ち式ポイントオブケア診断システムに開発され得、これは、先進国世界および発展途上国世界における感染性疾患の検出、モニタリング、処置および蔓延の予防における大きな進歩であり得る。この知識により、定量的培養物が利用可能でない場面で慢性創傷を処置する実務者が利用可能な診断用ツールが有意に改善され得る。
【0134】
該デバイスにより、光学的デジタルズーム能(例えば、一般的に入手可能なデジタルイメージングデバイスに内蔵されたもの)を伴うデジタルイメージングが可能になり得る。スチルまたはビデオ画像の品質は「高画質」形式であり、組織表面の高空間解像度イメージングが得られ得る。画像は、スチル/フリーズフレームおよび/またはビデオ/ムービー形式として記録され、パーソナルコンピュータを必要とする(例えば、USBによって接続)または必要としない(例えば、PictBridge)標準的なイメージングプリントプロトコルを用いてプリントされ得る。画像/ビデオデータは、データのアーカイブ保存のため、および/または画像を見るため、および/または解析/編集のためにパーソナルコンピュータに転送され得る。また、該デバイスによりデータは、有線または無線能(例えば、Bluetooth)を用いてプリンターまたはパーソナルコンピュータに転送され得る。可視化は、手持ち式デバイスの画面上で、および/またはビデオ画面/モニター(例えば、ヘッドマウントディスプレイおよびガラス)で同時に見ることに加えて標準的な出力ビデオケーブルを用いて行なわれ得る。このデバイスには、イメージングした現場の光学波長および蛍光/反射率強度の情報が空間的寸法とともにが組合せで、または別々に表示され、距離の経時的な定量的測定(例えば、組織の形態構造/トポグラフィー変化のモニタリング)が可能になり得る。また、該デバイスにより、例えば、イメージング解析能および/または診断アルゴリズムを有する専用ソフトウェアを用いて画像および関連する患者の医療データのデジタル画像/ビデオ保存/カタロギングが可能になり得る。
【0135】
画像解析
画像解析は、創傷部および周囲の正常組織における外因性光学的分子標的化プローブの
複数の蛍光スペクトル(例えば、マルチプレックスイメージング)の蛍光強度および相対的変化を定量的に測定するために、該デバイスとともに使用され得る。蛍光性プローブの体内分布は、収集した蛍光画像に基づいて測定され得、これは、個々の臨床的創傷部イメージング施術期間同士で変化について経時的にモニタリングされ得る。スペクトル固有蛍光性プローブの各々および全部の存在および存在度の相対的変化が該デバイスを用いて定量的に測定されることにより、臨床作業者によって、所与の創傷部の健常状態および/または治癒状態ならびに処置に対する応答が経時的にリアルタイムまたはほぼリアルタイムで、例えば、ルックアップテーブル(これには、具体的な組織性、細胞性および分子性信号が、創傷部の健常状態、治癒状態および応答状態と相関させて表示されており、その一例を
図33に示す)を使用することにより測定され得る。これにより、医師が、創傷部が治癒するかどうかを生物学的および分子的情報に基づいて判定することが可能となり得、これは、既存の技術を用いた他の方法では可能ではあり得ない。さらに、細菌/微生物の存在および存在度ならびにその処置に対する応答により、創傷部の培養物の慣用的な細菌学的試験による応答評価の遅れを招くことなく、治療をリアルタイムで適合させるための手段がもたらされ得る。
【0136】
画像解析手法は、該デバイスでのイメージング中に、創傷部の初期または最初の画像を、視野内に置いた携帯型蛍光標準を用いてキャリブレーションするために使用され得る。また、画像解析により、創傷部および周囲の正常組織の異なる生物学的(例えば、組織性、細胞性および分子性)成分、例えば、自己蛍光によって特定されるバイオマーカーと、外因性の標的化もしくは非標的化蛍光/吸収造影剤の使用によって特定されるものとを区別するために、モニター上での偽または疑似カラー表示が可能になり得る。
【0137】
かかるバイオマーカーの例を
図34に列挙し、
図35に図示する。
図35において、この図は、健常な人と糖尿病性創傷部を有する人における創傷治癒の機構を示す。健常個体(左)では、ケラチノサイト、線維芽細胞、内皮細胞、マクロファージおよび血小板によって放出される複数の分子性信号(例えば、サイトカインおよびケモカインの形態)の統合によって急性創傷治癒過程が誘導され、維持される。創傷誘導性低酸素状態の間、マクロファージ、線維芽細胞および上皮細胞によって放出される血管内皮増殖因子(VEGF)により骨髄中でeNOSのリン酸化と活性化が誘導され、NOレベルの増大がもたらされ、これにより循環系への骨髄EPCの動員が誘発される。例えば、ケモカインSDF-1αは、怪我の部位へのこのようなEPCのホーミングを促進させ、該部位においてEPCは新血管形成に関与する。糖尿病のマウスモデル(右)では、骨髄におけるeNOSのリン酸化が障害されており、これが、骨髄から循環系へのEPC動員を直接的に制限する。SDF-Iα発現は、糖尿病性創傷部の上皮細胞および筋線維芽細胞において低下しており、これにより創傷部へのEPCホーミングが妨げられ、したがって創傷治癒が制限される。創傷部組織における高酸素状態の確立により(例えば、HBO療法によって)多くのNOSアイソフォームが活性化され、NOレベルが増大し、循環系へのEPC動員が向上したことが示されている。しかしながら、このような細胞の創傷部位へのホーミングを誘発するためにはSDF-1αの局所投与が必要とされた。この結果は、HBO療法とSDF-1αの投与との併用が、単独または既存の臨床プロトコルとの組合せで糖尿病性創傷治癒を加速させるための有望な治療選択肢になり得ることを示唆する。
【0138】
事前に割り付けしたカラーマップは、結合組織、血液、微小血管系、細菌、微生物などならびに蛍光標識された薬物/薬理学的薬剤を含む創傷部および周囲の正常組織の生物学的成分を同時に表示するために使用され得る。これにより、創傷部領域の健常状態、治癒状態および感染状態のリアルタイムまたはほぼリアルタイム(例えば、1分未満)での可視化が可能となり得る。
【0139】
画像解析アルゴリズムは、以下の特色のうちの1つ以上をもたらすものであり得る:
患者のデジタル画像マネージメント
・さまざまな画像取得デバイスの統合
・あらゆる外因性蛍光造影剤を含むすべてのイメージングパラメータの記録
・複数のスケールおよびキャリブレーション場面
・組織/細菌の自己蛍光および外因性薬剤の蛍光信号の定量的測定のための内蔵型スペクトル画像アンミックス計算アルゴリズム
・簡便なアノテーションツール
・デジタルアーカイブ作成
・ウェブパブリッシング
基本的な画像処理および解析
・画像処理と定量的解析が完全に揃って機能する
画像切換えアルゴリズムにより、創傷部のパノラマ式または一部オーバーラップした一連の画像を自動または手動いずれかのモードで単一の画像に切り換えることが可能である。
【0140】
・測定ツールの使用が簡単
・処理パラメータの直感的セットアップ
・簡便なマニュアルエディター
レポート作成
・既存の臨床レポートインフラ、または遠隔医療患者医療データインフラに統合され得る専門のテンプレートを有するパワフル画像レポート作成部。レポートは、例えば、PDF、Word、Excelにエクスポートされ得る。
【0141】
自動化ソリューションのラージライブラリ
・定量的画像解析を含む種々の領域の創傷部評価のためのカスタム自動化ソリューション
画像解析アルゴリズム、手法またはソフトウェアについて説明したが、この説明は、この画像解析を行なうためのコンピューティングデバイス、システムおよび方法にもまた拡張される。
【0142】
画像支援
該デバイスはまた、例えば外科処置において、色素またはマーカーの使用を伴わなくても蛍光画像支援を得るのにも有用であり得る。特定の組織および/または器官は、該イメージングデバイスまたは特定の励起光条件下での例を用いて見たとき、異なる蛍光スペクトル(例えば、内因性蛍光)を有し得る。
【0143】
図36は、蛍光イメージング支援外科処置に対する該デバイスの有用性を実証するものである。該デバイスを用いた蛍光イメージングの補助により、マウスモデルの異なる器官が白色光下よりもはっきりと識別可能になり得る。インセットb、cおよびgは、白色光下でのマウスモデルを示す。インセットa、d~fおよびh~jは、該デバイスでイメージングしたマウスモデルを示す。
【0144】
図37は、小動物モデルのイメージングのための該デバイスの使用の一例を示す。ここでは、背側の皮膚をウィンドウチャンバに折りたたんだマウスを白色光(インセットa,c)および蛍光(インセットb,d)下でイメージングしている。高解像度の白色光および蛍光画像が該デバイスによって得られていることに注目のこと。足と顔は、ケージ床剤および飼料屑物質による内因性自己蛍光のため明るい赤色蛍光性に見える(405nm励起;490~550nmおよび>600nm発光チャネル)。
【0145】
生物工学的皮膚
いくつかの生物工学的生産皮膚または皮膚等価物が、急性および慢性の創傷ならびに火傷の創傷の処置のために市販品として入手可能になってきている。このようなものは、開発されてヒト創傷部において試験されている。皮膚等価物は、生細胞、例えば、線維芽細胞またはケラチノサイトまたは両方含有しているものであり得、一方、他のものは、生細胞の細胞材料または抽出物で作製されたものである。このような構築物の臨床効果は慣用的な「コントロール」セラピーよりも15~20%良好であるが、どのようなものが適切なコントロールを構成するかに関しては議論されている。生物工学的皮膚は、その環境に対して適合能を有するため「スマート材料」として知られている生細胞を送達することにより機能を果たし得る。一部のこのような生体物質含有構築物は、増殖因子およびサイトカインを放出し得るという証拠がある。生着の完全性ならびに治療に対する創傷部の生物学的応答を調べるため、外因性の蛍光性分子薬剤が、かかる皮膚代替物とともに使用され得る。皮膚の全層欠損の治癒には、皮膚成分および表皮成分の高度な合成とリモデリングが必要とされ得る。線維芽細胞は、このプロセスに重要な役割を果たしており、最新の人工皮膚代替物の作製において組み込まれている。
【0146】
本明細書に記載のイメージングデバイスは、皮膚代替物に播種した線維芽細胞の最終結果を調べるために使用され得、創傷部位への移植後、細胞遊走および皮膚代替物の分解に対する播種線維芽細胞の影響が調べられ得る。創傷部は、自系線維芽細胞を播種した皮膚代替物または細胞性代替物のいずれかで処置され得る。蛍光性細胞マーカーで標識した播種線維芽細胞は、次いで、創傷部内で蛍光イメージングデバイスにより検出され得、次いで、例えば上記のような画像解析を用いて定量的に評価され得る。
【0147】
ポリマーベース治療用薬剤
創傷ケア用に作製された多くの市販の医療用ポリマー製品がある。例えば、Rimon
Therapeutics社によりTheramers(商標)(www.rimontherapeutics.com)が生産しており、これは、薬物の使用を伴わずに、それ自体が単独で生物学的活性を有する医療用ポリマーである。Rimon Therapeuticsにより以下の創傷ケア製品が生産されており、これらは、405nmの励起光によって励起した場合、固有の蛍光を発するように作製されたものであり得る:Angiogenic Theramer(商標)、これは、創傷部または他の虚血性組織において新しい血管の発生(すなわち、血管新生)を誘導する;MI Theramer(商標)、これは、組織が衰弱または破壊される多くの病状に関与しているユビキタスな一群の酵素であるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)の活性を阻害する;AM Theramer(商標)、哺乳動物細胞を害することなくグラム陽性菌およびグラム陰性菌を死滅させる熱可塑性樹脂;およびThermaGel(商標)、体温付近で液状物から強いゲルに可逆的に変化するポリマー。これらは各々、例えば、405nmの光で長波長蛍光発光を伴って励起されるように選択された蛍光色素または蛍光性ナノ粒子の添加によって蛍光性となるように作製されたものであり得る。
【0148】
該イメージングデバイスを使用することにより、かかる蛍光性ポリマー薬剤の適用が蛍光イメージングによってリアルタイムで支援され得る。これにより、Theramer薬剤を創傷部位に正確に送達/適用(例えば、局所に)することが可能となり得る。創傷部への該薬剤の適用後、次いで、蛍光イメージングデバイスを用いて、創傷部に対するTheramerの治療効果が定量的に測定され得るとともに、その創傷部内における体内分布が経時的にインビボで非侵襲的に追跡され得る。また、場合によっては別の蛍光発光波長を有する分子ビーコンを、創傷部酵素(例えば、MMP)の存在下で蛍光を発し得るMI Theramer(商標)に付加ことも可能であり得、これにより、MI Theramer(商標)に対する創傷部の応答がリアルタイムでが示され得る。画像支援Theramer適用のために創傷部位に、ある蛍光発光を使用し、治療応答のモニタリングのために別の異なる蛍光発光を使用し、他の測定のために他の蛍光発光を使用することも可
能であり得る。MMP阻害の相対的有効性および抗菌処置が同時に経時的に測定され得る。画像解析を使用し、創傷部におけるこれらの信号の蛍光の変化のリアルタイム比較が可能となり得る。これにより該デバイスに定量的態様が付加され、その臨床的有用性に付加される。
【0149】
他のバイオセーフティーなカスタム蛍光剤を、現在、創傷ケアに使用されている以下の材料に添加してもよいことは認識されよう。この蛍光性物質は次いで、該デバイスを用いてイメージングおよびモニタリングされ得る。
【0150】
・含湿創傷部包帯:これは、従来の包帯と比べてより良好な治癒速度のための湿分伝導性環境をもたらす。製造業者がこのような包帯の対象とする主な消費者基盤は、年齢が65歳より上で、褥瘡および静脈鬱滞性潰瘍などの慢性創傷に苦しんでいる人である。糖尿病およびその結果、潰瘍の発生に苦しんでいる人も対象集団の一部を構成する。
【0151】
・ハイドロゲル:これは、乾燥創傷部に水分を与え、より速い治癒のための好適な環境をもたらす。その付加的特長は感染創傷部に使用され得ることである。また、これは、乾燥ないし軽度に滲出性の創傷部に対して設計されたものでもある。
【0152】
・ハイドロコロイド包帯:ハイドロコロイドは創面環境を密封して水分減少を抑制する。これは、滲出物を吸収するとゲルを形成し、含湿治癒環境をもたらす。これは、感染のない軽度から中等度に滲出性の創傷部に対して使用される。
【0153】
・アルギン酸塩包帯:これは、創傷部の滲出物を吸収して、治癒のための含湿環境をもたらすゲルを形成する。これは主に、高度に滲出性の創傷部に対して使用される。
【0154】
・フォーム包帯:これは、創傷部の排膿を吸収して含湿創傷部表面を維持し、創傷治癒誘導性の環境を可能にする。これは、中等度に滲出性の創傷部に対して使用される。
【0155】
・透明フィルム包帯:これは非吸収性であるが水蒸気の透過を許容し、それにより含湿創傷部表面を確保する。これは、乾燥ないし軽度の滲出性の創傷部が意図されている。例としては、アルギン酸塩フォーム透明フィルム包帯が挙げられる。
【0156】
・抗菌薬:これは、創傷部を消毒するための抗菌作用をもたらす。ナノ結晶性銀包帯の使用が特に重要である。バイオバーデン、特に、細菌によって放出されて蓄積された、治癒を妨げ、痛みおよび滲出性を引き起こすプロテアーゼおよび毒素が、銀の長期放出によってが有意に低減される。
【0157】
・活性創傷部包帯:これは、高度に発展した組織工学的生産品を含むものである。バイオマテリアルおよび皮膚代替物がこのカテゴリーに含まれる;これは、完全にバイオポリマー(ヒアルロン酸およびコラーゲンなど)で構成されているか、または合成ポリマー(ナイロンなど)と一緒のバイオポリマーで構成されている。このような包帯は、直接または間接的のいずれかで創傷部組織と相互作用することにより積極的に創傷治癒を促進させる。皮膚代替物は、皮膚の構造および機能を模倣する生物工学的デバイスである。
【0158】
・ヒアルロン酸:これは、細胞外マトリックスの天然成分であり、肉芽組織の形成、上皮再形成およびリモデリングに大きな役割を果たしている。これは皮膚に含水状態をもたらし、吸水剤として作用する。
【0159】
本開示のデバイスを用いてイメージングされ得る他の創傷ケア製品としては、Theramer、銀含有ゲル(例えば、ハイドロゲル)、人工皮膚、ADD幹細胞、抗マトリッ
クスメタロプロテイナーゼ、およびヒアルロン酸が挙げられる。該デバイスを用いたイメージングを可能にするために、蛍光性薬剤を他の製品に添加してもよい。一部の場合において、該製品は既に発光性であり得、蛍光性薬剤の添加を必要としないものであり得る。
【0160】
また、該デバイスは、かかる処置の効果を経時的にモニタリングするためにも使用され得る。
【0161】
デバイスのキット
該イメージングデバイスは、例えば該デバイスと蛍光性造影剤を含むキットで提供してもよい。造影剤は、上記のもののうちの任意の1種類以上であり得る。例えば、造影剤は、創傷部におけるバイオマーカーを標識するためのものであり得、その場合、キットは創傷部モニタリング用途ためのものである。
【0162】
図38は、該イメージングデバイスを含むキットの一例を示す。インセットa)は、ハンドルおよびタッチセンスビュー画面を示し、インセットb)は、外部ハウジングおよび励起光源を示す。該イメージングデバイスは、画像ベースの創傷部評価のため、または非創傷部イメージング用途のために、ヒト患者および獣医学的患者のどちらの体表面をスキャンするためにも使用され得る。該デバイスおよび任意の付属品(例えば、電気的/バッテリー電源)、場合によっては外因性蛍光造影剤など)は、臨床環境および非臨床環境(例えば、リモートサイト、在宅ケアおよび研究ラボラトリー場面)における持ち運びのためにハードケースコンテナ内に簡便に収容され得る。
【0163】
該イメージングデバイスは、このような処置の施術を改善するため、ならびにその有効性を経時的に非侵襲的に定量的にモニタリングするために白色光モードおよび蛍光モード使用され得る。該デバイスを他のイメージングモダリティと、とりわけ例えばサーマルイメージング法と併用して使用してもよい。
【0164】
本開示を、本開示のよりよい理解を助長するために例示的な実施形態に関して開示したが、本開示は、本開示の原理を逸脱することなく種々の様式で具体化され得ることは認識されよう。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲に示される本開示の原理を逸脱することなく具体化され得る考えられ得るすべての実施形態を包含していると理解されたい。さらに、本開示を創傷部のイメージング、モニタリングおよび解析に関して論考したが、当業者には、種々の他の用途、例えば、小型および大型の(例えば、獣医学的)動物の臨床ベースおよび研究ベースのイメージング;食用肉、鶏肉、乳製品、水産物、農業の業界における食品/動物製品調製物の汚染(例えば、細菌汚染)の検出およびモニタリング;公共(例えば、保険医療)およびプライベート場面における「表面汚染」(例えば、細菌汚染または生物学的汚染)の検出;ヒトおよび/または獣医学的患者のがんのマルチスペクトルイメージングおよび検出;ヒト疾患の実験動物モデルのがん(例えば、創傷部およびがん)のマルチスペクトルイメージングおよびモニタリングのための研究ツールとして;例えば、非生物学的表面上の潜在指紋および生体の法医学的検出、歯垢、虫歯および口腔内のがんのイメージングおよびモニタリング;臨床微生物学検査におけるイメージングおよびモニタリング用デバイス;ならびに抗菌剤(例えば、抗生物質)消毒剤の試験などにおいても、開示した本教示と同様に充分に機能を果たし得ることが理解され得よう。かかる環境における蛍光イメージングデバイスの使用は、DaCosta et alに対する米国特許第9,042,967B2号(発明の名称「創傷部のイメージングおよびモニタリングのためのデバイスおよび方法」,2015年5月26日発行)に開示しており、これは引用により本明細書に組み込まれる。付加的または択一的に、該デバイスは、汚染が感染の主原因となり得る病院、長期ケア施設、高齢者ホームおよび他の保険医療場面において、さまざまな表面、物質、器具(例えば、外科用器具)上の細菌または微生物および他の病原体の存在の検出およびイメージングために使用され得る。該デバイスを
、インジケータ生物体の標準的な検出、特定および計数ならびに病原体ストラテジーと一緒に使用してもよい。
【0165】
本明細書および添付の特許請求の範囲の解釈上、特に記載のない限り、本明細書および特許請求の範囲で用いている量、パーセンテージまたは割合および他の数値はすべて、すべての場合において用語「約」によって修飾されていると理解されたい。したがって、そうでないことを記載していない限り、記載の説明および特許請求の範囲に示した数値パラメータは、本開示によって得ようとする所望の特性に応じて異なり得る近似値である。少なくとも、均等論の適用を特許請求の範囲の範囲に限定する試みとしてではなく、各数値パラメータは少なくとも、報告した有効数字の数値に鑑みて通常の丸め手法を適用することにより解釈されたい。
【0166】
本明細書および添付の特許請求の範囲で用いる場合、単数形「a」、「an」および「the」は、1つの指示対象物に限定されることが明示的および明白でない限り、複数の指示対象物を包含していると認識されたい。したがって、例えば、「a sensor(センサー:単数)」に対する言及は、2つ以上の異なるセンサー(複数)を包含している。本明細書で用いる場合、用語「include(~を含む)」およびその文法的変化形は、リストに記載の要素が、該記載の要素と置換され得るか、または該記載の要素に付加され得る他の同様の要素を除外しないように非限定的であることを意図する。
【0167】
本開示のシステムおよび方法に対して教示の範囲から逸脱することなく種々の修正および変形が行なわれ得ることは当業者に明らかであろう。本開示の他の実施形態は、本明細書の検討および本明細書に開示した教示の実施により当業者に明らかとなろう。本明細書および本明細書に記載の実施形態は例示的なものにすぎないとみなされることを意図する。