(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
F02D 29/00 20060101AFI20240507BHJP
F02D 29/02 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
F02D29/00 B
F02D29/02 J
F02D29/02 301C
(21)【出願番号】P 2020207671
(22)【出願日】2020-12-15
【審査請求日】2022-12-29
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】高橋 圭司
(72)【発明者】
【氏名】坂井 達也
(72)【発明者】
【氏名】岡本 尚也
(72)【発明者】
【氏名】北川 隆二
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-144628(JP,A)
【文献】特開2009-040409(JP,A)
【文献】国際公開第2012/124767(WO,A1)
【文献】特開2019-073910(JP,A)
【文献】特開2009-287469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 29/00
F02D 29/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、
入力された回転力を、所期の車速に応じた変速比に変速して出力する変速装置と、
前記エンジンの回転数と共に前記変速装置の減速率を変更する第1操作具と、
前記第1操作具への入力に基づいて前記エンジンの回転数を制御する回転数制御部と、
前記エンジンの回転数を一定に保持する保持指示が入力される第2操作具と、を備え、
前記回転数制御部は、前記第2操作具に前記保持指示が入力された場合に、前記第1操作具への前記入力に基づく前記エンジンの回転数の制御を無効とし、前記保持指示に応じて前記エンジンの回転数を一定に
し、
前記回転数制御部による前記エンジンの回転数の制御は、前記保持指示に基づいて前記エンジンの回転数を制御する第1モードと、前記第1操作具に対する前記入力に応じた前記エンジンの回転数及び前記保持指示に応じた前記エンジンの回転数のうちの高い方の回転数となるように制御する第2モードとのいずれか一方に切り替え可能である作業車。
【請求項2】
前記第2操作具による前記保持指示の受け付けが可能か否かを設定する設定部を更に備え、
前記設定部により前記受け付けが可能でないと設定された場合に、前記回転数制御部は、前記第1操作具に対する前記入力に基づいて前記エンジンの回転数を制御する請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記保持指示が入力されている場合において、前記第1操作具に対して前記入力があったことを報知する報知部を更に備える請求項1又は2に記載の作業車。
【請求項4】
前記回転数制御部が前記第1モードで前記エンジンの回転数を制御しているときは、前記第1モードから前記第2モードへの切り替えが規制される請求項
1から3のいずれか一項に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンを備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンを備えた作業車が利用されてきた。このようなエンジンを備えた作業車に関する技術として、例えば下記に出典を示す特許文献1に記載のものがある。
【0003】
特許文献1には、作業車のアクセル制御構造について記載されている。特許文献1に記載される作業車は、アクセルペダルの操作により設定されるエンジン回転数(ペダル設定回転数)と、アクセルレバーの操作により設定されるエンジン回転数(レバー設定回転数)と、上限設定器により設定されたエンジン回転数の上限である上限回転数とが目標回転数設定手段により選定される。目標回転数設定手段は、選定したこれらの回転数を比較し、ペダル設定回転数及びレバー設定回転数が上限回転数よりも低い場合は、ペダル設定回転数とレバー設定回転数のうちの高い側の回転数を目標回転数に設定し、ペダル設定回転数及びレバー設定回転数のうちのいずれか一方が上限回転数よりも高い場合は、上限回転数を目標回転数に設定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
作業車によっては、エンジンの回転力を利用して駆動する作業ユニットが搭載されているものがある。このような作業車において、特許文献1に記載の技術を適用した場合、車速を増速したいときにアクセルペダルを操作することで、車速と共に作業ユニットに入力される回転力の回転数も増大してしまう。これにより、作業によってはムラが生じる(作業の仕上がりを均一なものにできない)ことがあり、特許文献1に記載の技術は改良の余地がある。
【0006】
そこで、エンジンの回転数を増大させた場合に、車速のみ増大させることが可能な作業車が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る作業車の特徴構成は、エンジンと、入力された回転力を、所期の車速に応じた変速比に変速して出力する変速装置と、前記エンジンの回転数と共に前記変速装置の減速率を変更する第1操作具と、前記第1操作具への入力に基づいて前記エンジンの回転数を制御する回転数制御部と、前記エンジンの回転数を一定に保持する保持指示が入力される第2操作具と、を備え、前記回転数制御部は、前記第2操作具に前記保持指示が入力された場合に、前記第1操作具への前記入力に基づく前記エンジンの回転数の制御を無効とし、前記保持指示に応じて前記エンジンの回転数を一定にし、前記回転数制御部による前記エンジンの回転数の制御は、前記保持指示に基づいて前記エンジンの回転数を制御する第1モードと、前記第1操作具に対する前記入力に応じた前記エンジンの回転数及び前記保持指示に応じた前記エンジンの回転数のうちの高い方の回転数となるように制御する第2モードとのいずれか一方に切り替え可能である点にある。
【0008】
このような特徴構成とすれば、エンジンの回転数の変更操作をするための操作具と変速装置の減速率の変更操作をするための操作具とを兼ねている第1操作具を備えた作業機において、第1操作具を操作した場合であっても車速に関わらずエンジンの回転数を一定回転にして走行することが可能となる。したがって、エンジンの回転数を増大させた場合に、車速のみ増大させることができる。また、これにより、エンジンの回転を利用する装置(例えば作業ユニット)の回転数は一定にできるので、作業の仕上がりを均一なものとすることが可能となる。また、オペレータは、エンジンの回転数を気にせずに作業に注力できるので、エンジンの回転数の設定に係る手間を低減できる。したがって、作業の軽労化に寄与することが可能となる。
また、本特徴構成とすれば、エンジンの回転数の制御に、バリエーションを持たせることができるので、作業状況に応じたエンジンの回転数を設定し易くできる。したがって、例えばエンジンの回転力を各装置に伝達する機構に影響を受けることなく、第1操作具に対する入力に応じて最適なエンジンの回転数の制御を行うことが可能となる。
【0009】
また、前記第2操作具による前記保持指示の受け付けが可能か否かを設定する設定部を更に備え、前記設定部により前記受け付けが可能でないと設定された場合に、前記回転数制御部は、前記第1操作具に対する前記入力に基づいて前記エンジンの回転数を制御すると好適である。
【0010】
このような構成とすれば、第2操作具による保持指示を受け付けない状態である場合には、他の設定をすることなく自動的に第1操作具に対する入力に応じてエンジンの回転数を制御することが可能となる。
【0011】
また、前記保持指示が入力されている場合において、前記第1操作具に対して前記入力があったことを報知する報知部を更に備えると好適である。
【0012】
このような構成とすれば、第1操作具に対して入力があったことをオペレータに知らしめることが可能となる。したがって、例えば誤って第1操作具を操作してしまった場合等の誤操作を明示することが可能となる。
【0015】
また、前記回転数制御部が前記第1モードで前記エンジンの回転数を制御しているときは、前記第1モードから前記第2モードへの切り替えが規制されると好適である。
【0016】
このような構成とすれば、第1モードでのエンジンの回転数の制御中において、急なエンジンの回転数の変更を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】エンジンの回転数の制御に係る機能部を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る作業車は、エンジンの回転数を増大させた場合に、車速のみ増大させることができるように構成される。以下、本実施形態の作業車について説明する。なお、以下では作業車として、トラクタ1を例に挙げて説明する。
【0019】
図1はトラクタ1の側面図であり、
図2はトラクタ1の平面図である。なお、以下の説明では、トラクタ1に関し、
図1及び
図2に示される矢印Fの方向を「前方向」、矢印Bの方向を「後方向」、矢印Uの方向を「上方向」、矢印Dの方向を「下方向」、矢印Lの方向を「左方向」、矢印Rの方向を「右方向」とする。
【0020】
トラクタ1は、機体Aに左右一対の前車輪2と左右一対の後車輪3とを備え、機体Aの前部のエンジンボンネット4の内部にエンジンEを備え、機体Aの後部位置に運転部Cが配置されている。
【0021】
トラクタ1は、エンジンEの駆動力を変速するミッションケース5が機体Aの中央から機体Aの後端に亘る領域に配置される。また、ミッションケース5の後端には、例えばロータリ耕耘装置(図示せず)等に駆動力を伝達するための外部動力取出軸8(PTO軸)が後方に突出する形態で備えられている。
【0022】
運転部Cには、上面にレバーガイド10を有する左右の後輪フェンダー10aの中間位置に、作業者(オペレータ)が着座する運転座席11が備えられ、当該運転座席11の前方に、機体Aを操舵するステアリングホイール12が備えられる。運転座席11の下側にはフロアー13が設けられ、フロアー13には主に道路走行時にエンジンEの回転数を変更する際に利用する主変速ペダル19が備えられる。主変速ペダル19は、前方向側と後方向側との夫々に踏み込むことができるように構成されている。前方向側を踏み込むとエンジンEの回転数が上がると共に、後述する主変速装置31から出力される回転数が増速するように構成される。後方向側を踏み込むと、エンジンEの回転数は所定の回転数(アイドル回転数)で維持され、機体Aが後進するように構成される。主変速ペダル19から足を離すと後述するアクセルレバー18で設定されたエンジンEの回転数になるように構成される。
図2に示されるように、運転座席11の左側の後輪フェンダー10aの上面のレバーガイド10には、レバーガイド10から上方に突出する主変速レバー21と副変速レバー23とが横並びで配置されている。
【0023】
ステアリングホイール12の基端部側に設けられるステアリングポスト12Bの右側から右外方に突出するように、主に圃場作業時にエンジンEの回転数を変更する際に利用するアクセルレバー18が備えられる。アクセルレバー18は、手前に引くとエンジンEの回転数が上がり、前側に押すとエンジンEの回転数が下がるように構成される。また、アクセルレバー18から手を離した場合には、その位置でのエンジンEの回転数に設定される。なお、上述した主変速ペダル19によりエンジンEの回転数の設定も可能であるが、エンジンEの回転数はアクセルレバー18及び主変速ペダル19のうち、早い方の回転数が採用される。
【0024】
運転座席11の右側の後輪フェンダー10aの上面のレバーガイド10には、外部動力取出軸8の回転速度を変更可能なPTO変速レバー41がレバーガイド10から上方に突出して配置されている。このPTO変速レバー41により、外部動力取出軸8の回転速度だけでなく、回転方向も変更可能に構成しても良い。PTO変速レバー41は、レバー式以外の構成(例えばスイッチ等)であっても良い。また、フロアー13には、前方向を見て横並びの状態で(機体Aの幅方向に沿って)、機体Aを停止させることが可能な2つのブレーキペダル20が設けられる。この2つのブレーキペダル20は、左右夫々が独立してあり、左側のブレーキペダル20を踏み込むことでトラクタ1の左側の駆動輪(本実施形態では後車輪3)にブレーキをかけることができ、右側のブレーキペダル20を踏み込むことでトラクタ1の右側の駆動輪にブレーキをかけることができるように構成されている。また、例えば連結装置(図示せず)で2つのブレーキペダル20を繋ぐと、左右両側の駆動輪のブレーキが同時に働くように構成されている。もちろん、駆動輪として前車輪2を利用する場合には、ブレーキペダル20が前車輪2にブレーキが働くように構成することも可能である。
【0025】
以下、エンジンEの回転数の制御について説明する。
図3は、エンジンEの回転数の制御に係る機能部を示すブロック図である。
図3に示されるように、トラクタ1は主変速装置31(「変速装置」の一例)、副変速装置32、及び作業変速装置33を備える。
【0026】
主変速装置31は、入力された回転力を、所期の車速に応じた変速比に変速して出力する。本実施形態では、主変速装置31にはエンジンEから回転力が入力される。所期の車速とは、トラクタ1を走行させるための車速であって、例えばオペレータが設定する。もちろん、自動制御等のように自動で設定しても良い。変速比は、入力された回転数を出力する回転数に変速する比率である。したがって、主変速装置31は、エンジンEから入力される回転力を、トラクタ1を走行させるための車速に応じた変速比に変速して出力する。このような主変速装置31としては、例えば静油圧式無段変速機(HST:Hydro-Static Transmission)を用いることが可能である。
【0027】
副変速装置32は、主変速装置31の上流側又は下流側に設けられ、入力された回転力を作業モードに応じた変速比で変速して出力する。主変速装置31の上流側とは主変速装置31において、エンジンEからの回転力が入力される側であって、主変速装置31の下流側とは、主変速装置31において、主変速装置31に入力されたエンジンEからの回転力が出力される側が相当する。本実施形態では、
図3に示されるように副変速装置32は主変速装置31の下流側に設けられ、主変速装置31から出力された回転力が副変速装置32に入力される。作業モードとは、トラクタ1が走行する形態に応じたモードであって、例えば圃場作業での走行に適したモードや、圃場への移動に適したモードなどが相当する。すなわち、トラクタ1の走行速度に応じてモードを設定すると良い。したがって、副変速装置32は主変速装置31の下流側に設けられ、主変速装置31からの回転力を、トラクタ1が走行する形態に応じた変速比で変速して回転力を出力する。
【0028】
副変速装置32の出力は、トラクタ1の駆動輪の駆動力を制御する走行装置39に伝達される。もちろん、駆動輪として前車輪2を利用する場合には、走行装置39が前車輪2の駆動力を制御するように構成することも可能である。
【0029】
主変速装置31は、上述した主変速レバー21の操作に応じて変速比が制御される。副変速装置32は、上述した副変速レバー23の操作に応じて変速比が制御される。
【0030】
また、エンジンEの出力は、作業変速装置33に入力される。作業変速装置33は、エンジンEからの回転力を変速してPTO軸ユニット51に伝達する。したがって、PTO軸ユニット51にはエンジンEの出力が入力される。PTO軸ユニット51は、上述した外部動力取出軸8を備え、この外部動力取出軸8に連結された作業ユニット71に外部出力用回転動力を伝達する。
【0031】
受付部61は、エンジンEの回転数と共に主変速装置31の減速率を変更する変更情報を受け付ける。エンジンEの回転数と共に主変速装置31の減速率を変更する変更情報とは、エンジンEに要求される回転数や主変速装置31に要求される減速率を示す情報である。このようなエンジンEに要求される回転数や主変速装置31に要求される減速率は、上述したようにオペレータによるアクセルレバー18の操作や主変速ペダル19の操作により設定可能である。このため、アクセルレバー18や主変速ペダル19は、エンジンEの回転数と共に主変速装置31の減速率を変更する第1操作具に相当する。受付部61が受け付けた変更情報は後述する回転数制御部63及び主変速装置31に伝達される。なお、アクセルレバー18や主変速ペダル19による操作入力は、ワイヤ(所謂バイワイヤ形式)で主変速装置31に伝達しても良い。
【0032】
回転数制御部63は、アクセルレバー18や主変速ペダル19への入力に基づいてエンジンEの回転数を制御する。回転数制御部63には、受付部61を介してアクセルレバー18や主変速ペダル19への入力に応じた情報が伝達される。この情報により、回転数制御部63が、所期の車速に基づく作業変速装置33の変速比に応じたエンジンEの回転数になるように制御し、エンジンEの回転数を、PTO軸ユニット51から出力される外部出力用回転動力の回転数に応じたものに設定することが可能となる。
【0033】
本実施形態では、操作スイッチ22(「第2操作具」の一例)に、エンジンEの回転数を一定に保持する保持指示が入力されるように構成されている。エンジンEの回転数を一定に保持するとは、上述したアクセルレバー18や主変速ペダル19に対する入力に係るエンジンEの回転数とは異なり、エンジンEの回転数を一定回転数に保持することをいう。このような一定回転数は、予め記憶部(図示しない)に記憶しておくと良い。本実施形態では、このようなエンジンEの回転数を一定に保持する指示は保持指示として扱われる。したがって、操作スイッチ22は、予め設定されたエンジンEの回転数を一定回転数に保持する指示が入力可能に構成される。
【0034】
回転数制御部63は、操作スイッチ22に保持指示が入力された場合に、アクセルレバー18や主変速ペダル19への入力に基づくエンジンEの回転数の制御を無効とし、保持指示に応じてエンジンEの回転数を一定にする。保持指示が入力された場合とは、操作スイッチ22を介してエンジンEの回転数を一定に保持する保持指示が入力された場合である。アクセルレバー18や主変速ペダル19への入力とは、アクセルレバー18や主変速ペダル19を介して入力されたエンジンEの回転数と共に主変速装置31の減速率を変更するための入力である。したがって、回転数制御部63は、操作スイッチ22を介してエンジンEの回転数を一定に保持する保持指示が入力された場合に、アクセルレバー18や主変速ペダル19を介して入力されたエンジンEの回転数と共に主変速装置31の減速率を変更するための入力のうち、エンジンEの回転数の制御を無効とする。更に、回転数制御部63は、操作スイッチ22を介して入力されたエンジンEの回転数を一定に保持する保持指示に基づき、エンジンEの回転数を一定に保持するように制御する。
【0035】
なお、この時、アクセルレバー18や主変速ペダル19を介して行われたエンジンEの回転数と共に主変速装置31の減速率を変更するための入力のうち、主変速装置31の減速率を変更するための入力は有効であるので、主変速装置31の減速率は当該入力に応じて変更されるように構成することが可能である。
【0036】
ここで、設定部65が操作スイッチ22による保持指示の受け付けが可能か否かを設定するように構成することも可能である。「操作スイッチ22による保持指示の受け付けが可能か否か」とは、操作スイッチ22を介して入力された保持指示が有効か否かとすることや、操作スイッチ22自体に対して保持指示を入力することが可能か否かとすることが含まれる。すなわち、設定部65は、操作スイッチ22によるエンジンEの回転数の保持指示機能を人為的にON,OFFするものである。このような設定部65による設定は、例えばオペレータが設定スイッチ(図示せず)を操作することで行えるように構成することが可能である。設定部65により保持指示の受け付けが可能か否かを設定するように構成している場合には、設定部65による設定状況を受付部61に伝達し、受付部61を介して回転数制御部63に伝達するように構成すると良い。あるいは、直接、設定部65から回転数制御部63に伝達するように構成しても良い。このような設定部65により受け付けが可能でないと設定された場合には、回転数制御部63はアクセルレバー18や主変速ペダル19に対する入力に基づいてエンジンEの回転数を制御する。これにより、エンジンEの回転を所期の回転数に維持することが可能となる。
【0037】
また、設定部65により保持指示の受け付けが可能であると設定されている場合には、アクセルレバー18や主変速ペダル19に対して入力があったことを、報知部66が報知するように構成すると好適である。これにより、オペレータに対して、アクセルレバー18や主変速ペダル19を介して入力した際、エンジンEの回転数を変更は有効でなく、主変速装置31の減速率のみ変更可能であることを認識させることが可能となる。この報知部66による報知は、表示装置80に文字や画像を表示して行うようにしても良いし、メータパネル82の表示を利用して行っても良い。
【0038】
図4には、運転席の前方に設けられるフロントパネル81に組み込まれたメータパネル82(表示装置80の一部)の表示例が示される。メータパネル82における回転数表示領域83の上段には現在のエンジンEの回転数が表示され、下段には操作スイッチ22による保持指示に応じたエンジンEの回転数を一定にするための回転数(予め設定された回転数)が表示される。
図4の例では、操作スイッチ22による回転数で制御されている状況が示され、1分間当たりの現在のエンジンEの回転数として「2500」が表示され、操作スイッチ22に応じた1分間当たりの回転数として「2500」が表示されている。このような操作スイッチ22による回転数でエンジンEが制御されている時には、現在の回転数「2500」が強調表示(例えば、点灯して表示したり、他の表示よりも明るく表示したり、太字で表示したりする)するように構成される。
図4の例では、回転数表示領域83の上段に示される回転数を点灯して表示した例が示される。これによりオペレータが、エンジンEの回転数が操作スイッチ22に応じて制御されていることを把握することが可能となる。また、オペレータは、このような表示をみることで、アクセルレバー18や主変速ペダル19が操作されていないことを把握することが可能となる。
【0039】
また、
図4の状態から、アクセルレバー18や主変速ペダル19によりエンジンEの回転数を変更するための入力が行われ、操作スイッチ22により設定されている回転数(一定とする回転数)を超えた場合には、
図5に示されるように、回転数表示領域83の上段に表示される現在のエンジンEの回転数を点滅させると良い。これによりオペレータが、アクセルレバー18や主変速ペダル19を操作した結果、操作スイッチ22により設定されている回転数を超えたことを把握することが可能となる。
【0040】
更に、
図5の状態で、操作スイッチ22に応じた回転数の制御を解除すべく、操作スイッチ22が押下されると、
図6に示されるように、アクセルレバー18や主変速ペダル19を介して入力されたエンジンEの回転数が回転数表示領域83の下段に表示され、上段に現在のエンジンEの回転数が表示される。
図6の例では、アクセルレバー18や主変速ペダル19を介して入力されたエンジンEの回転数として「2630」が表示され、現在のエンジンEの回転数として「2550」が表示される。なお、エンジンEの回転数はアクセルレバー18や主変速ペダル19による入力に追従するように制御され、エンジンEの回転数が「2630」となった場合には上段に「2630」が表示される。
【0041】
本実施形態では、回転数制御部63によるエンジンEの回転数の制御は第1モードと第2モードとのいずれか一方に切り替えて行うことができるように構成されている。このような切り替えを行う機能部として例えばモード設定部62を備えておくと良い。モード設定部62は、保持指示に基づいてエンジンEの回転数を制御する第1モードと、アクセルレバー18や主変速ペダル19に対する入力に応じたエンジンEの回転数のうちの高い方の回転数となるように制御する第2モードとのいずれか一方に切り替える。
【0042】
第1モードは、設定部65が備えられている場合において保持指示の受け付けが可能であると設定され、且つ、操作スイッチ22により保持指示が入力されたときに実行される制御形態である。
【0043】
また、第2モードは、設定部65が備えられている場合において保持指示の受け付けが可能であると設定された際に、操作スイッチ22により入力された保持指示によるエンジンEの回転数と、アクセルレバー18や主変速ペダル19を介して行われた入力に応じたエンジンEの回転数のうちの高い方の回転数となるように実行される制御形態である。
【0044】
このような第1モード及び第2モードの切り替えは、オペレータが設定部65を操作して設定することが可能である。このため、設定部65として、スイッチ等を設けると好適である。
【0045】
また、例えば回転数制御部63が第1モードでエンジンEの回転数を制御しているときは、第1モードから第2モードへの切り替えが規制されるように構成することも可能である。これにより、エンジンEの回転数を一定に保持するように制御している際に、誤って設定部65を操作した場合に、アクセルレバー18や主変速ペダル19による変更指示に応じた回転数に変更されることを防止できる。
【0046】
〔その他の実施形態〕
上記実施形態では、第1操作具としてアクセルレバー18及び主変速ペダル19を例示して説明したが、第1操作具はアクセルレバー18及び主変速ペダル19のうちの何れか一方でも良い。また、第2操作具として操作スイッチ22を例示して説明したが、第2操作具は操作スイッチ22とは異なるデバイス(例えばレバー等)を用いて構成しても良い。
【0047】
上記実施形態では、設定部65を備えているとして説明したが、設定部65を備えずに構成することも可能である。係る場合、例えば第2操作具による入力があった場合には、第2操作具の入力が有効であるとして制御すると良い。また、設定部65を備えずに構成した際に、操作スイッチ22を介してエンジンEの回転数を一定に保持する保持指示が入力されている場合において、第1操作具の操作があったときに当該第1操作部に対して入力があったことを報知部66が報知するように構成することも可能である。
【0048】
上記実施形態では、報知部66を備えるとして説明したが、報知部66を備えずに構成することも可能である。
【0049】
上記実施形態では、回転数制御部63によるエンジンEの回転数の制御は、保持指示に基づいてエンジンEの回転数を制御する第1モードと、アクセルレバー18や主変速ペダル19に対する入力に応じたエンジンEの回転数及び保持指示に応じたエンジンEの回転数のうちの高い方の回転数となるように制御する第2モードとのいずれか一方に切り替え可能であるとして説明したが、回転数制御部63によるエンジンEの回転数の制御は、第1モードと第2モードとが切替できないように構成する、すなわち、第2モードに係る制御のみで構成することも可能である。
【0050】
上記実施形態では、回転数制御部63が第1モードでエンジンEの回転数を制御しているときは、第1モードから第2モードへの切り替えが規制されるとして説明したが、回転数制御部63は第1モードでエンジンEの回転数を制御しているときであっても、第2モードへの切り替えが行えるように構成することも可能である。
【0051】
上記実施形態では、エンジンEの出力が入力され、PTO軸ユニット51にエンジンEの出力を変速して伝達する作業変速装置33を備えているとして説明したが、作業変速装置33は備えていなくても良い。
【0052】
上記実施形態では、作業機としてトラクタ1を例に挙げて説明したが、作業機はトラクタ1以外の作業機、すなわち田植機、コンバイン、建設機械、芝刈り機、土木作業や森林作業や除雪作業等を行う作業機などであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、本発明は、エンジンを備えた作業機に用いることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:トラクタ(作業車)
18:アクセルレバー(第1操作具)
19:主変速ペダル(第1操作具)
22:操作スイッチ(第2操作具)
31:主変速装置(変速装置)
63:回転数制御部
65:設定部
66:報知部
E:エンジン