(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】電磁超音波検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/24 20060101AFI20240507BHJP
G01N 29/06 20060101ALI20240507BHJP
G01N 29/07 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G01N29/24
G01N29/06
G01N29/07
(21)【出願番号】P 2020218706
(22)【出願日】2020-12-28
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】大島 佑己
(72)【発明者】
【氏名】成重 将史
(72)【発明者】
【氏名】沖田 俊介
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第4232557(US,A)
【文献】特開平01-262464(JP,A)
【文献】特開平10-318990(JP,A)
【文献】特開2020-106410(JP,A)
【文献】特開2019-162664(JP,A)
【文献】特開昭59-054958(JP,A)
【文献】特開昭62-277558(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の表面に沿う一方向に配列され、前記被検体の前記表面に垂直な方向の一方側がN極となるかS極となるよう交互に配置された複数の磁石を有する磁石アレイ、及び前記被検体の前記表面に沿い且つ前記一方向に垂直な他の方向を中心軸として前記磁石アレイの周囲に巻き回され、前記他の方向に互いに離間された複数のコイルを備えた電磁超音波探触子と、
前記複数のコイルのうちの送信コイルと受信コイルの組合せを選択して、前記送信コイルに送信信号を印加して前記送信コイルが対向する前記被検体の表層部に超音波を発生させると共に、前記被検体の内部で反射されて前記受信コイルが対向する前記被検体の表層部に戻ってきた超音波によって前記受信コイルに発生した受信信号を取得することにより、前記送信コイルと前記受信コイルの組合せに対応する複数の受信信号を収録する探傷装置と、
前記被検体の内部の位置毎に、前記位置で超音波が反射されたと仮定した場合の前記送信コイルと前記受信コイルの組合せに応じた超音波の伝播時間に基づき、前記位置に対応する前記複数の受信信号の強度を抽出して合算し、合算した強度の分布を示す探傷画像を生成する計算装置とを備えたことを特徴とする電磁超音波検査装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁超音波検査装置において、
前記探傷装置は、前記送信コイルに印加する送信信号の周波数を可変することを特徴とする電磁超音波検査装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電磁超音波検査装置において、
前記探傷装置は、前記複数のコイルのうちのいずれかを前記送信コイルとして選択するデマルチプレクサと、前記デマルチプレクサで選択された前記送信コイルに送信信号を印加するパルサと、前記複数のコイルのうちのいずれかを前記受信コイルとして選択するマルチプレクサと、前記マルチプレクサで選択された前記受信コイルの受信信号を取得するレシーバとを備えたことを特徴とする電磁超音波検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁超音波探触子を備えた電磁超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波による被検体の探傷検査を行う方法として、超音波探触子を用いる方法と、電磁超音波探触子を用いる方法(例えば特許文献1参照)がある。
【0003】
超音波探触子は、電気信号と超音波の変換を行う圧電素子を備え、接触媒質を介し被検体の表面に接触する。超音波探触子は、接触媒質を介し被検体へ超音波を送信し、被検体の内部の欠陥(詳細には、亀裂など)で反射された超音波を接触媒質を介し受信する。
【0004】
特許文献1の電磁超音波探触子は、複数の磁石を有する磁石アレイと、磁石アレイの周囲に巻き回された1つのコイルとを備える。
【0005】
複数の磁石は、被検体の表面に沿う一方向に且つ二列に配列されている。詳しく説明すると、第一列の磁石は、被検体の表面に垂直な方向の一方側がN極、反対側がS極となるように配置されている。第二列の磁石は、被検体の表面に垂直な方向の一方側がS極、反対側がN極となるように配置されている。第1列の磁石と第2列の磁石は、前記一方向にて交互となるように配置されている。したがって、複数の磁石は、被検体の表面に垂直な方向の一方側がN極となるかS極となるよう交互に配置されている。これにより、被検体の表面に垂直な方向における磁場の向きが交互に変化する静磁場(周期磁界)を発生させる。
【0006】
コイルは、被検体の表面に沿い且つ前記一方向(言い換えれば、磁石の配列方向)に垂直な他の方向を中心軸として、磁石アレイの周囲に巻き回されている。
【0007】
探傷装置は、電磁超音波探触子のコイルに送信信号(パルス信号)を印加して、コイルが対向する被検体の表層部に渦電流を発生させる。そして、この渦電流と複数の磁石による静磁場との相互作用により、被検体の表層部に超音波を発生させる。この超音波は、磁石の配列方向に向けて送信角(詳細には、被検体の厚さ方向に対して斜めの角度)で伝播され、被検体の内部の欠陥で反射され、被検体の表層部に戻ってくる。探傷装置は、前述した作用とは逆の作用により、戻ってきた超音波によってコイルに発生した受信信号(波形信号)を取得する。これにより、被検体の欠陥を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電磁超音波探触子は、例えば、配管の周囲に固定されて、運転中(詳細には、例えば高温流体が流れているとき)の配管の探傷検査を行うことが期待されている。超音波探触子を用いる場合は、例えば接触媒質として接着剤を用いて、配管の表面と探触子の接触状態を維持する必要があるものの、電磁超音波探触子を用いる場合は、その必要がない。また、電磁超音波探触子の磁石として耐熱性の高いもの(詳細には、例えばサマリウムコバルト磁石等)を用いれば、200~300℃の高温環境でも探触子を配置することが可能である。
【0010】
特許文献1の電磁超音波探触子では、コイルに印加する送信信号の周波数を可変して超音波の送信角を可変することにより、探触子の一方向(言い換えれば、磁石の配列方向)における被検体の探傷走査を行うことが可能である。しかし、探触子の他の方向(言い換えれば、磁石の配列方向に垂直な方向)における被検体の探傷走査を行うことができない。そのため、探触子の位置を固定していれば、探触子の検査範囲が限られてしまう。
【0011】
本発明の目的は、電磁超音波探触子の磁石の配列方向に垂直な方向における被検体の探傷走査を行うことができる電磁超音波検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明は、被検体の表面に沿う一方向に配列され、前記被検体の前記表面に垂直な方向の一方側がN極となるかS極となるよう交互に配置された複数の磁石を有する磁石アレイ、及び前記被検体の前記表面に沿い且つ前記一方向に垂直な他の方向を中心軸として前記磁石アレイの周囲に巻き回され、前記他の方向に互いに離間された複数のコイルを備えた電磁超音波探触子と、前記複数のコイルのうちの送信コイルと受信コイルの組合せを選択して、前記送信コイルに送信信号を印加して前記送信コイルが対向する前記被検体の表層部に超音波を発生させると共に、前記被検体の内部で反射されて前記受信コイルが対向する前記被検体の表層部に戻ってきた超音波によって前記受信コイルに発生した受信信号を取得することにより、前記送信コイルと前記受信コイルの組合せに対応する複数の受信信号を収録する探傷装置と、前記被検体の内部の位置毎に、前記位置で超音波が反射されたと仮定した場合の前記送信コイルと前記受信コイルの組合せに応じた超音波の伝播時間に基づき、前記位置に対応する前記複数の受信信号の強度を抽出して合算し、合算した強度の分布を示す探傷画像を生成する計算装置とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電磁超音波探触子の磁石の配列方向に垂直な方向における被検体の探傷走査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態における電磁超音波検査装置の構成を表すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態における電磁超音波探触子の構造を、配管の一部と共に表す図である。
【
図3】
図2の矢視III-IIIによる垂直断面図である。
【
図4】
図2の矢視IV-IVによる垂直断面図である。
【
図5】
図2のxz座標系による傾斜断面図であって、本実施形態における超音波の伝播経路の一例を表す。
【
図6】本発明の一実施形態における送信コイルと受信コイルの組合せに対応する受信信号のデータを表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態を、図面を参照しつつ説明する。本実施形態では、配管(詳細には、例えば、配管の周方向に延在する溶接部)の探傷検査を行う場合を例にとって説明する。
【0016】
図1は、本実施形態における電磁超音波検査装置の構成を表すブロック図である。
図2は、本実施形態における電磁超音波探触子の構造を、配管の一部と共に表す図である。
図3は、
図2の矢視III-IIIによる垂直断面図である。
図4は、
図2の矢視IV-IVによる垂直断面図である。
図5は、
図2のxz座標系による傾斜断面図であって、本実施形態における超音波の伝播経路の一例を表す。
図6は、本実施形態における送信コイルと受信コイルの組合せに対応する複数の受信信号を表す図である。なお、
図2、
図4、及び
図5において、配管の表面は、実際には曲面であるものの、便宜上、平面で示されている。
【0017】
本実施形態の電磁超音波検査装置は、配管1(被検体)の周囲に固定された電磁超音波探触子10と、電磁超音波探触子10を制御して複数の受信信号を収録する探傷装置20と、探傷装置20で収録された複数の受信信号に基づいて探傷画像を生成する計算装置30と、計算装置30で生成された探傷画像を表示する表示装置40(詳細には、例えばディスプレイ)と、計算装置30に接続された入力装置50(詳細には、例えばキーボードやマウス)とを備える。計算装置30は、プログラムを記憶するROMと、プログラムに従って処理を実行するCPUと、処理結果を記憶するRAMとを有する。
【0018】
電磁超音波探触子10は、複数の磁石11及びそれらの配管1に対向する部分以外の大部分を覆う樹脂カバー12を有する磁石アレイ13と、磁石アレイ13の周囲に巻き回された複数(本実施形態では4つ)のコイル14A~14Dと、磁石アレイ13及びコイル14A~14Dを収納するケーシング15とを備える。
【0019】
複数の磁石11は、配管1の軸方向(言い換えれば、配管1の表面に沿う一方向)に且つ一列に配列され、配管1の半径方向(言い換えれば、配管1の表面に垂直な方向)の外側がN極となるかS極となるよう交互に配置されている。これにより、配管1の半径方向における磁場の向きが交互に変化する静磁場(周期磁界)を発生させる。なお、磁石11のピッチW(間隔)は、磁石11の幅と同じである。
【0020】
コイル14A~14Dは、配管1の周方向(言い換えれば、配管1の表面に沿い且つ前記一方向に垂直な他の方向)を中心軸として磁石アレイ13の周囲に巻き回され、配管1の周方向に互いに離間されている。なお、コイルのピッチp(間隔)は、コイルの幅eより大きい。
【0021】
本実施形態の探傷装置20及び計算装置30は、フルマトリクスキャプチャー(Full Matrix Capture:FMC)/トータルフォーカンシングメソッド(Total Focusing Method:TFM)又は開口合成法(Synthetic Aperture Focusing Technique:SAFT)と呼ばれる手法を利用して、配管1の周方向(言い換えれば、電磁超音波探触子10の磁石11の配列方向に垂直な方向)における配管1の探傷走査を行うものである。
【0022】
探傷装置20は、電磁超音波探触子10のコイル14A~14Dのうちの送信コイルと受信コイルの組合せを選択して制御することにより、送信コイルと受信コイルの組合せに対応する複数の受信信号を収録するようになっている。その詳細を説明する。
【0023】
探傷装置20は、コイル14A~14Dのうちのいずれかを送信コイルとして選択するデマルチプレクサ21と、デマルチプレクサ21で選択された送信コイルに送信信号(パルス信号)を印加するパルサ22と、コイル14A~14Dのうちのいずれかを受信コイルとして選択するマルチプレクサ23と、マルチプレクサ23で選択された受信コイルの受信信号(波形信号)を取得するレシーバ24と、送信コイルと受信コイルの組合せの情報と関連付けて複数の受信信号を収録するデータ収録部25とを備える。なお、データ収録部25は、例えばハードディスクまたはメモリで構成されている。
【0024】
まず、デマルチプレクサ21は、送信コイルとしてコイル14Aを選択する。パルサ22は、デマルチプレクサ21を介しコイル14Aに送信信号を印加して、コイル14Aが対向する配管1の表層部に渦電流を発生させる。そして、この渦電流と各磁石11による磁場との相互作用により、各磁石11が対向する配管1の表層部にローレンツ力が生じ、このローレンツ力による配管1の表層部の変位によって素元波を発生させる。なお、
図3において、素元波の振動方向は、実際には紙面に対して垂直な方向であるものの、便宜上、紙面に対して平行な方向で示されている。
【0025】
隣り合う磁石11による磁場の方向が180度反転しているため、隣り合う素元波の位相も180度ずれる。コイル14Aが対向する(言い換えれば、複数の磁石11が対向する)配管1の表層部に発生した複数の素元波は、下記の式(1)で表された送信角θの方向における位相が一致することから、送信角θの合成波(詳細には、SH波。以降、単に、超音波という)を形成する。式中のλは超音波の波長、Vは音速、fは超音波の周波数である。式(1)から明らかなように、超音波の送信角θは、超音波の周波数f(すなわち、コイル14Aに印加する送信信号の周波数)によって設定可能である。例えば超音波の周波数f=V/Wに設定すれば、超音波の送信角θ=30°となる。
【0026】
【0027】
マルチプレクサ23は、受信コイルとしてコイル14A~14Dを順次選択する。受信コイルとしてのコイル14Aは、送信コイルとしてのコイル14Aが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Aが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波により、受信信号を発生する。受信コイルとしてのコイル14Bは、送信コイルとしてのコイル14Aが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Bが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波により、受信信号を発生する。受信コイルとしてのコイル14Cは、送信コイルとしてのコイル14Aが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Cが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波(
図5参照)により、受信信号を発生する。受信コイルとしてのコイル14Dは、送信コイルとしてのコイル14Aが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Dが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波により、受信信号を発生する。
【0028】
レシーバ24は、送信コイルとしてコイル14Aが選択された場合のコイル14Aの受信信号W11、コイル14Bの受信信号W12、コイル14Cの受信信号W13、及びコイル14Dの受信信号W14を、マルチプレクサ23を介し取得してデータ収録部25に出力する。
【0029】
次に、デマルチプレクサ21は、送信コイルとしてコイル14Bを選択する。パルサ22は、デマルチプレクサ21を介しコイル14Bに送信信号を印加して、コイル14Bが対向する配管1の表層部に超音波を発生させる。
【0030】
マルチプレクサ23は、受信コイルとしてコイル14A~14Dを順次選択する。受信コイルとしてのコイル14Aは、送信コイルとしてのコイル14Bが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Aが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波により、受信信号を発生する。受信コイルとしてのコイル14Bは、送信コイルとしてのコイル14Bが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Bが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波により、受信信号を発生する。受信コイルとしてのコイル14Cは、送信コイルとしてのコイル14Bが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Cが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波により、受信信号を発生する。受信コイルとしてのコイル14Dは、送信コイルとしてのコイル14Bが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Dが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波により、受信信号を発生する。
【0031】
レシーバ24は、送信コイルとしてコイル14Bが選択された場合のコイル14Aの受信信号W21、コイル14Bの受信信号W22、コイル14Cの受信信号W23、及びコイル14Dの受信信号W24を、マルチプレクサ23を介し取得してデータ収録部25に出力する。
【0032】
次に、デマルチプレクサ21は、送信コイルとしてコイル14Cを選択する。パルサ22は、デマルチプレクサ21を介しコイル14Cに送信信号を印加して、コイル14Cが対向する配管1の表層部に超音波を発生させる。
【0033】
マルチプレクサ23は、受信コイルとしてコイル14A~14Dを順次選択する。受信コイルとしてのコイル14Aは、送信コイルとしてのコイル14Cが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Aが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波により、受信信号を発生する。受信コイルとしてのコイル14Bは、送信コイルとしてのコイル14Cが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Bが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波により、受信信号を発生する。受信コイルとしてのコイル14Cは、送信コイルとしてのコイル14Cが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Cが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波により、受信信号を発生する。受信コイルとしてのコイル14Dは、送信コイルとしてのコイル14Cが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Dが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波により、受信信号を発生する。
【0034】
レシーバ24は、送信コイルとしてコイル14Cが選択された場合のコイル14Aの受信信号W31、コイル14Bの受信信号W32、コイル14Cの受信信号W33、及びコイル14Dの受信信号W34を、マルチプレクサ23を介し取得してデータ収録部25に出力する。
【0035】
次に、デマルチプレクサ21は、送信コイルとしてコイル14Dを選択する。パルサ22は、デマルチプレクサ21を介しコイル14Dに送信信号を印加して、コイル14Dが対向する配管1の表層部に超音波を発生させる。
【0036】
マルチプレクサ23は、受信コイルとしてコイル14A~14Dを順次選択する。受信コイルとしてのコイル14Aは、送信コイルとしてのコイル14Dが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Aが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波により、受信信号を発生する。受信コイルとしてのコイル14Bは、送信コイルとしてのコイル14Dが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Bが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波により、受信信号を発生する。受信コイルとしてのコイル14Cは、送信コイルとしてのコイル14Dが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Cが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波により、受信信号を発生する。受信コイルとしてのコイル14Dは、送信コイルとしてのコイル14Dが対向する配管1の表層部から伝播されて配管1の内部の欠陥2で反射されて受信コイルとしてのコイル14Dが対向する配管1の表層部に戻ってきた超音波により、受信信号を発生する。
【0037】
レシーバ24は、送信コイルとしてコイル14Dが選択された場合のコイル14Aの受信信号W41、コイル14Bの受信信号W42、コイル14Cの受信信号W43、及びコイル14Dの受信信号W44を、マルチプレクサ23を介し取得してデータ収録部25に出力する。
【0038】
データ収録部25は、上述した受信信号を、対応する送信コイルと受信コイルの組合せの情報と共に収録する。但し、例えば検査領域を限定したい場合や不良なコイルが存在する場合など、必要に応じて、送信コイルと受信コイルの組合せを変更してもよい。
【0039】
計算装置30は、配管1の内部の位置毎に、その位置で超音波が反射されたと仮定した場合の送信コイルと受信コイルの組合せに応じた超音波の伝播時間に基づき、その位置に対応する複数の受信信号の強度(振幅)を抽出して合算し、合算した強度の分布を示す探傷画像を生成する。その詳細を説明する。
【0040】
例えば
図5で示すように配管1の内部の位置(xi,zi)に欠陥2が存在すると仮定すれば、送信コイルが対向する配管1の表層部で発生した超音波が伝播経路F1に沿って伝播し、欠陥2で反射された超音波が伝播経路F2に沿って伝播し、受信コイルが対向する配管1の表層部に戻ってくる。送信コイルが対向する配管1の表層部の位置(xm,zm)とすれば、伝播経路F1における超音波の伝播時間τmiは、下記の式(2)で与えられる。また、受信コイルが対向する配管1の表層部の位置(xn,zn)とすれば、伝播経路F2における超音波の伝播時間τniは、下記の式(3)で与えられる。したがって、伝播経路(F1+F2)における超音波の伝播時間は(τmi+τni)で与えられる。
【0041】
【0042】
【0043】
【0044】
計算装置30は、配管1の内部の位置(xi,zi)毎に、送信コイルと受信コイルの組合せに応じた超音波の伝播時間(τmi+τni)に基づき、位置(xi,zi)に対応する複数の受信信号の強度Wnm(τmi+τni)を抽出して合算する。すなわち、上記の式(4)(但し、本実施形態では、N=4)を用いて、配管1の内部の位置(xi,zi)に対応する強度(合算値)Siを算出する。そして、強度Siを画素値に変換して、強度Siの分布を示す探傷画像を生成する。計算装置30は、生成した探傷画像を表示装置40に出力して表示させる。
【0045】
以上のように本実施形態においては、配管1の周方向(言い換えれば、電磁超音波探触子10の磁石11の配列方向に垂直な方向)における配管1の探傷走査を行うことができる。そのため、電磁超音波探触子10の位置を固定しても、広範囲の検査を行うことができる。また、複数の電磁超音波探触子10を配管1の周方向に配置する場合に、それらの間隔を大きくすることができる。
【0046】
なお、電磁超音波探触子10のコイルのピッチpに関し、下記の式(5)の条件を満たすことが好ましい。式中のσは、xz座標系における超音波の代表偏向角である(
図5参照)。これにより、所謂グレーティングローブによるアーチファクトを抑えることができる。
【0047】
【0048】
また、本実施形態の探傷装置20は、探触子10のコイル14A~14Dを選択的にパルサ22と接続するデマルチプレクサ21と、探触子10のコイル14A~14Dを選択的にレシーバ24と接続するマルチプレクサ23とを備える。そのため、デマルチプレクサ21を備えず、コイル14A~14Dにそれぞれ接続する複数のパルサを備える場合や、マルチプレクサ23を備えず、コイル14A~14Dにそれぞれ接続する複数のレシーバを備える場合と比べ、探傷装置20の小型化及びコスト低減を図ることができる。
【0049】
なお、上記一実施形態において、特に説明しなかったが、探傷装置20は、送信コイルに印加する送信信号の周波数を可変して、超音波の送信角θを可変してもよい。すなわち、配管1の軸方向(言い換えれば、磁石11の配列方向)における配管1の探傷走査を行ってもよい。
【0050】
また、上記一実施形態において、計算装置30は、探傷画像を表示装置40に出力して表示させる場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えば、印刷機に出力して印刷させてもよいし、あるいは、記憶媒体に出力して記憶させてもよい。
【0051】
また、上記一実施形態において、電磁超音波探触子10は、4つのコイル14A~14Dを備えた場合を例にとって説明したが、これに限られない。電磁超音波探触子10は、2つ、3つ、又は5つ以上のコイルを備えてもよい。コイルの数にかかわらず、コイルと配管1の表面の間の距離を維持することが可能であるから、感度を維持することが可能である。
【0052】
また、上記一実施形態において、複数の磁石11は、配管1の軸方向に且つ一列に配列された場合を例にとって説明したが、これに限られず、配管1の軸方向に且つ複数列に配列されてもよい。また、上記一実施形態において、被検体は、配管1である場合を例にとって説明したが、これに限られず、例えば平板であってもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 配管(被検体)
10 電磁超音波探触子
11 磁石
13 磁石アレイ
14A~14D コイル
20 探傷装置
30 計算装置