(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】喫煙物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A24C 5/52 20060101AFI20240507BHJP
A24D 1/20 20200101ALI20240507BHJP
【FI】
A24C5/52
A24D1/20
(21)【出願番号】P 2020551048
(86)(22)【出願日】2018-10-05
(86)【国際出願番号】 JP2018037334
(87)【国際公開番号】W WO2020070871
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-04-02
【審判番号】
【審判請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100129311
【氏名又は名称】新井 規之
(72)【発明者】
【氏名】山本 法生
(72)【発明者】
【氏名】奥山 哲也
(72)【発明者】
【氏名】井上 洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】岸 誠
【合議体】
【審判長】水野 治彦
【審判官】岩▲崎▼ 則昌
【審判官】槙原 進
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-165(JP,A)
【文献】特表2010-508864(JP,A)
【文献】国際公開第2016/143128(WO,A1)
【文献】特開2002-176965(JP,A)
【文献】英国特許出願公開第2259847(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24C 5/00-5/60
A24D 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこロッドおよび冷却セグメントを含むたばこセグメント、ならびにフィルターセグメントを備える喫煙物品の製造方法であって、
(A)前記たばこロッドの2倍の長さを有しその長手方向中央部で分離可能な倍長たばこロッド、およびその両端に当接する2つの冷却セグメントを含む
、長手方向中央部で分離可能な倍長たばこセグメントを準備する工程、
(B)前記倍長たばこセグメントを前記中央部で分離して分離された1対のたばこセグメントを調製し、これらを反転して、両者の長手方向軸が同一でありかつ前記冷却セグメント同士が対向するように離間して配置する工程、
(C)前記フィルターセグメントの2倍の長さを有する倍長フィルターセグメントを準備し、前記1対のたばこセグメントの冷却セグメントとの間に、その両端が前記たばこセグメントの冷却セグメント側の端と当接するように配置して複合セグメントを調製する工程、
(D)前記複合セグメントを1枚のチップペーパーでラップして一体化して、前記喫煙物品の2倍の長さを有する倍長喫煙物品を製造する工程、ならびに
(E)前記倍長喫煙物品を、その長手方向における中央部で切断して、喫煙物品とする工程、を含み、
前記たばこロッドと隣接する
冷却セグメントの剛性が、当該たばこロッドの剛性よりも大きく、かつ
前記たばこロッドの直径が、隣接する冷却セグメントの直径よりも大きい、
製造方法。
【請求項2】
前記工程(A)が、前記倍長たばこロッドに香料を添加する工程をさらに備える、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(A)が、前記倍長たばこロッドを、ラッパーでラップする工程をさらに備える、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ラッパーが香料を含有するペーパーである、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記工程(A)が、前記たばこロッドの2倍の長さを有する倍長たばこロッド、およびその両端に当接する2つの冷却セグメントを含む倍長たばこセグメントを準備して、当該倍長たばこセグメントを、その長手方向の中央部で切断することによって、
長手方向中央部で分離可能な倍長たばこセグメントを準備する工程である、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記フィルターセグメントが、アセテートフィルターおよびセンターホールフィルターを備える、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記喫煙物品が
、たばこロッド、冷却セグメント、およびフィルターセグメントをこの順に備える、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記たばこロッドの直径が、隣接する
冷却セグメントの直径より0.05~0.15mm大きい、請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記たばこロッドの直径が、隣接する
冷却セグメントの直径より0.5~2.5%大きい、請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記冷却セグメントが円周方向に複数の開孔を有する紙管を備える、請求項1~9のいずれかに記載の製造方法。
【請求項11】
前記冷却セグメントが紙管を備え、当該紙管の円周方向にレーザー加工によって複数の開孔を設ける工程をさらに備える、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記
工程(D)が、前記チップペーパーの一部を前記複合セグメントの円周面に接着した前駆体を準備し、当該前駆体をローリングドラムとその円周面に対向して設けられたローリングハンドの間に配置して、当該前駆体を当該ローリングドラムの円周面上で回転させることによって実施される工程であり、
前記ローリングドラムまたはローリングハンドの前記たばこロッ
ドと対向する部分が、当該たばこロッ
ドとの間に空隙を形成するための凹部を備える、請求項1~11のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は喫煙物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
たばこロッド、冷却セグメント、およびフィルターセグメントを備えるたばこ等の喫煙物品は、従来、複数のチップペーパーを使用して製造されてきた。例えば、特許文献1には、複数の部材を複数のチップペーパーで巻装することによる喫煙物品の製造方法が開示されている。具体的に特許文献1は、ポリ乳酸フィルター、中空フィルター、およびたばこロッドをこの順に隣接して配置してこれらを第2のチップペーパーで巻装し、次いでこの巻装された部材のポリ乳酸フィルター端にマウスピースフィルタを隣接して配置してこれらを第1のチップペーパーで巻装する方法を開示する。ただし、当該方法は、部材同士の継ぎ目にギャップが生じると空気漏れ等が生じるため、第2のチップペーパーで完全にポリ乳酸フィルターをカバーせずに、ポリ乳酸フィルターの先端部に非カバー部を設けることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の方法はチップペーパーのサイズを精緻に制御する必要があり、製造上の制約があった。特に発明者らは、特許文献1の方法において、第2のチップペーパーで巻装された部材を、反転させる工程を経て喫煙物品を製造する場合にチップペーパーのサイズがかなり厳密に制御されていないと製造が極めて困難になることを見出した。さらに、チップペーパーで接続する工程を複数含むと、ロッドを損傷する可能性もある。かかる事情を鑑み、本発明は効率よく喫煙物品を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
発明者らは、チップペーパーで接続する工程を1回とすることで前記課題を解決した。すなわち、前記課題は以下の本発明によって解決される。
[態様1]たばこロッドおよび冷却セグメントを含むたばこセグメント、ならびにフィルターセグメントを備える喫煙物品の製造方法であって、
(A)前記たばこロッドの2倍の長さを有しその長手方向中央部で分離可能な倍長たばこロッド、およびその両端に当接する2つの冷却セグメントを含む倍長たばこセグメントを準備する工程、
(B)前記倍長たばこセグメントを前記中央部で分離して分離された1対のたばこセグメントを調製し、これらを反転して、両者の長手方向軸が同一でありかつ前記冷却セグメント同士が対向するように離間して配置する工程、
(C)前記フィルターセグメントの2倍の長さを有する倍長フィルターセグメントを準備し、前記離間部に、その両端が前記たばこセグメントの冷却セグメント側の端と当接するように配置して複合セグメントを調製する工程、
(D)前記複合セグメントを1枚のチップペーパーでラップして一体化して、前記喫煙物品の2倍の長さを有する倍長喫煙物品を製造する工程、ならびに
(E)前記倍長喫煙物品を、その長手方向における中央部で切断して、喫煙物品とする工程、を含む、製造方法。
[態様2]前記工程(A)が、前記倍長たばこロッドに香料を添加する工程をさらに備える、態様1に記載の製造方法。
[態様3]前記工程(A)が、前記倍長たばこロッドを、ラッパーでラップする工程をさらに備える、態様1または2に記載の製造方法。
[態様4]前記ラッパーが香料を含有するペーパーである、態様1~3のいずれかに記載の製造方法。
[態様5]前記工程(A)が、前記たばこロッドの2倍の長さを有する倍長たばこロッド、およびその両端に当接する2つの冷却セグメントを含む倍長たばこセグメントを準備して、当該倍長たばこセグメントを、その長手方向の中央部で切断することによって、倍長たばこセグメントを準備する工程である、態様1~4のいずれかに記載の製造方法。
[態様6]前記フィルターセグメントが、アセテートフィルターおよびセンターホールフィルターを備える、態様1~5のいずれかに記載の製造方法。
[態様7]前記喫煙物品が、下流方向に、たばこロッド、冷却セグメント、およびフィルターセグメントをこの順に備える、態様1~6のいずれかに記載の製造方法。
[態様8]前記たばこロッドの直径が、隣接する部材の直径よりも大きい、態様1~7のいずれかに記載の製造方法。
[態様9]前記たばこロッドの直径が、隣接する部材の直径より0.05~0.15mm大きい、態様8に記載の製造方法。
[態様10]前記たばこロッドの直径が、隣接する部材の直径より0.5~2.5%大きい、態様8に記載の製造方法。
[態様11]前記たばこロッドと隣接する部材の剛性が、当該たばこロッドの剛性よりも大きい、態様1~10のいずれかに記載の製造方法。
[態様12]前記冷却セグメントが円周方向に複数の開孔を有する紙管を備える、態様1~11のいずれかに記載の製造方法。
[態様13]前記冷却セグメントが紙管を備え、当該紙管の円周方向にレーザー加工によって複数の開孔を設ける工程をさらに備える、態様12に記載の製造方法。
[態様14]前記(D)工程が、前記チップペーパーの一部を前記複合セグメントの円周面に接着した前駆体を準備し、当該前駆体をローリングドラムとその円周面に対向して設けられたローリングハンドの間に配置して、当該前駆体を当該ローリングドラムの円周面上で回転させることによって実施される工程であり、
前記ローリングドラムまたはローリングハンドの前記たばこロッド部と対向する部分が、当該たばこロッド部との間に空隙を形成するための凹部を備える、態様1~13のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によって効率よく喫煙物品を製造する方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図3】本発明の製造方法の工程(A)の一態様を示す図である。
【
図5】本発明の製造方法を実施する装置の一態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、たばこロッド、冷却セグメント、およびフィルターセグメントを備える喫煙物品の製造方法に関する。以下、本発明を詳細に説明する。本発明においてX~Yはその端値であるXおよびYを含む。
【0009】
1.喫煙物品
本発明の喫煙物品は、たばこロッド、冷却セグメント、およびフィルターセグメントを備える。
図1(i)は本発明の喫煙物品の一態様を示す。図中、100は喫煙物品、1はたばこロッド、3は冷却セグメント、5はフィルターセグメント、7はチップペーパーである。
【0010】
(1)たばこロッド
たばこロッドとは、たばこ原料に含まれる香喫味成分を発生するための略円柱状の部材であり、たばこ充填材とその周囲を巻装する巻紙を備える。たばこ充填材としては限定されず、例えばたばこ刻、たばこシート等を使用できる。具体的には、乾燥したたばこ葉を幅0.8~1.2mmに裁刻したたばこ刻を巻紙内に充填してよい。また乾燥したたばこ葉を平均粒径が20~200μm程度になるように粉砕して均一化したものをシート加工し、それを幅0.8~1.2mmに裁刻したものを巻紙内に充填してもよい。当該シートを裁刻せずにギャザー加工、折り畳み、あるいは渦巻き状にして巻紙内に充填してもよい。当該シートを短冊状に裁断してこれらを巻紙内に、同心円状にあるいは短冊の長手方向がたばこロッドの長手方向と平行になるように充填してもよい。
【0011】
たばこロッド1は、加熱に伴ってエアロゾルを発生してもよい。エアロゾルの発生を促進するためにたばこ充填材にグリセリン、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール等のポリオール等のエアロゾル源を添加することが好ましい。エアロゾル源の添加量は、たばこ充填剤の乾燥重量に対して5~50重量%が好ましく、10~30重量%がより好ましい。この他、たばこロッドはメントール等の香料を含んでいてもよい。たばこロッド1の長さは限定されないが15~25mmであることが好ましい。その直径も限定されないが6.5~7.5mmであることが好ましい。ただし、隣接する部材の剛性が、当該たばこロッドの剛性よりも高い場合は、たばこロッドの直径は、隣接する部材の直径より大きいことが好ましい。たばこロッドの変形を低減できるからである。この観点から、たばこロッドの直径は隣接する部材の直径より0.5~2.5%大きいことが好ましく、1.0~2.0%大きいことがより好ましい。実寸法では、たばこロッドの直径は、隣接する部材の直径より0.05~0.15mm程度大きいことが好ましい。隣接する部材としては冷却セグメントおよびフィルターセグメントが挙げられる。
【0012】
本発明における「剛性」は、特表2016-523565号公報明細書段落0010~0014に開示されているとおり、部材が変形するときの抵抗を意味する。たばこロッドの側面に負荷Fをかける前と後での直径の変化から剛性を求めることができる。
図4において負荷Fがかけられる前のたばこロッドの直径をDs、負荷をかけた後の直径をDdとするとき、押し下げ量はd=Ds-Ddであり、剛性は以下の式で定義される。他の部材についても同様である。
剛性(%)=Dd/Ds×100
【0013】
(2)冷却セグメント
冷却セグメントは、たばこロッド1で発生した香喫味成分やエアロゾルを冷却するための部材である。冷却セグメント3は中空の紙管であってよい。紙管は巻紙やチップペーパーよりも剛性の高いカードボードで構成されることが好ましい。当該紙管には、開孔(ベンチレーション)を設けてもよい。開孔は紙管の円周に沿って複数設けられることが好ましい。作業効率の観点から、開孔は、完成した喫煙物品にレーザー加工を施して設けることが好ましい。また冷却セグメント3内には、熱交換効率を高めるためにギャザー付けされたシートを充填してもよい。冷却セグメント3の寸法は限定されないが、長さは15~25mmであることが好ましく、直径は5.5~7.5mmであることが好ましい。ただし、冷却セグメント3に隣接する部材の剛性が、冷却セグメント3の剛性よりも低い場合、冷却セグメント3の直径は、隣接する部材の直径に対して0.5~2.5%小さいことが好ましく、1.0~2.0%小さいことが好ましい。一般に、冷却セグメント3がカードボードで構成される紙管を備える場合、当該セグメントの剛性はたばこロッドの剛性よりも高い。
【0014】
(3)フィルターセグメント
フィルターセグメントはフィルターを備える部材である。フィルターとしてはアセテートフィルターやペーパーフィルター等の公知のフィルター部材を使用できる。ペーパーフィルターとは、紙をクレープローラ等で加工して皺を付けこれをプラグ巻取紙で巻上げて調製される、紙が充填されたフィルターである。アセテートフィルターとはセルロースアセテート繊維が充填されたフィルターである。
図1(ii)に示すとおり、フィルターセグメント5はフィルター51とセンターホール
フィルター53を備えることが好ましい。センターホール
フィルターとしては、例えばアセテートフィルターの中央部に空間を設けたものを使用できる。フィルターセグメント5の長さは限定されないが10~20mmであることが好ましい。フィルターセグメントとしてセンターホール
フィルターとアセテートフィルターの両方を配置する場合、その順番は限定されない。また個々の部材がフィルター巻紙(フィルターインナーラッパー)によって巻装され、それらがフィルター成型紙(フィルターアウターラッパー)によって接続されていてもよい。フィルターセグメントの直径は限定されないが、たばこロッド以外の他のセグメントとほぼ同じ直径を有することが好ましい。チップペーパーの破れや皺の発生が抑制できるからである。
【0015】
(4)チップペーパー
チップペーパーは、たばこロッド、冷却セグメント、フィルターセグメントのうち2つ以上を接続するために用いる紙をいう。一方、巻紙は、たばこロッド、冷却セグメント、またはフィルターセグメントを構成する個々の部材を巻装するための紙をいう。例えば、前述のとおり、フィルターセグメントがセンターホールフィルターとアセテートフィルターを備える場合、センターホールフィルターを巻装する紙、アセテートフィルターを巻装する紙はそれぞれ巻紙である。
【0016】
チップペーパーおよび巻紙に用いられる原紙は、限定されず、セルロース繊維を用いたものを挙げることができる。そのようなセルロース繊維としては、植物由来のもの、化学合成されたもののいずれを用いてもよく、これらの混合物であってもよい。植物由来の繊維としては、亜麻繊維や木材繊維、種子繊維等のパルプが挙げられ、漂白していない有色の未晒パルプとしてもよいが、白く清潔感のある外観とするために、酸化剤、還元剤等の漂白剤を用いて漂白した晒パルプの使用が好ましい。
【0017】
通常のシガレット用の巻紙の場合、巻紙の自然燃焼速度に影響を及ぼし得る通常の燃焼調節剤(助燃剤等)としてクエン酸アルカリ金属塩等が使用される。本発明では燃焼式ではなく加熱式喫煙物品とすることが好ましく、この場合は巻紙を燃焼させる必要がないため、巻紙は燃焼調節剤を含まなくてもよい。
【0018】
巻紙の坪量の下限は、好ましくは30g/m2以上であり、より好ましくは35g/m2以上であり、さらに好ましくは40g/m2以上である。上限は、好ましくは65g/m2以下、より好ましくは50g/m2以下である。また、チップペーパーの坪量の下限は、好ましくは20g/m2以上であり、より好ましくは25g/m2以上であり、さらに好ましくは30g/m2以上である。上限は、好ましくは50g/m2以下、より好ましくは45g/m2以下、さらに好ましくは40g/m2以下である。坪量は、JIS P8124に規定される方法で測定することができる。
【0019】
2.製造方法
本工程の概要を
図2に示す。図中、「w」は倍長であることを示す。例えば5wは倍長フィルターセグメントを示す。本発明の製造方法は任意の装置を用いて実施できるが、例えば
図5のような複数のドラムを備え、各部材を上方から供給する装置を用いて実施することが好ましい。1つのドラムは複数の機能を有するのではなく、1つの機能を有することが好ましい。高速での製造において不良の発生を低減できるからである。以下、当該装置を用いる場合を例にして、各工程を説明する。供給、受取、移送、または分離機能を有するドラムは、各ユニットにおいて1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0020】
(1)工程A
本工程では、たばこロッド1の2倍の長さを有しその長手方向中央部で分離可能な倍長たばこロッド1w’、およびその両端に当接する2つの冷却セグメント3を含む倍長たばこセグメント10wを準備する。当該工程は、たばこロッドの2倍の長さを有する倍長たばこロッド1w、およびその両端に当接する2つの冷却セグメント3を含む倍長たばこセグメントを準備して、当該倍長たばこセグメントを、その長手方向の中央部で切断することによって実施してもよい。例えば、この工程は
図5の第1ユニット81~第3ユニット83において実施できる。81fは冷却セグメント3の供給装置、81pは取出ドラム、81sは分離ドラムである。供給装置81fから供給された1対の冷却セグメント3は、取出ドラム81pの円周面に設けられた保持部に受け渡される。次いで当該1対の
冷却セグメント3は分離ドラム81sに受け渡され、移送されるとともに保持部において離間される。
【0021】
第2ユニット82において、82fは倍長たばこロッド1wの供給装置、82tは移送ドラム、82pは取出ドラム、82aは引取ドラムである。離間されて配置された1対の冷却セグメント3はそのまま移送ドラム82tに受け渡される。一方、供給装置82fから供給された倍長たばこロッド1wは、取出ドラム82pの円周面に設けられた保持部に受け渡され、次いで引取ドラム82aに受け渡される。その際、離間して配置された1対の冷却セグメント3の離間部分に、倍長たばこロッド1wの両端が冷却セグメント3の端に当接するように配置される。
【0022】
第3ユニット83において、83cはカッタードラム、83c’はカッター、83sは分離ドラムである。倍長たばこロッド1wの両端に1対の冷却セグメント3を備えるセグメントはカッタードラム83cに受け渡され、倍長たばこロッド1wの長手方向における中央部においてカッター83c’によって切断される。
【0023】
本工程においては、倍長たばこロッド1wまたは分離可能な倍長たばこロッド1w’をラッパーでラップしてもよい。ラッパーとは、シート状部材であり、ペーパー、ポリマーシート等が挙げられる。ペーパーとしては例えばチップペーパー等の公知のものが挙げられ、ポリマーシートとしてはポリ乳酸シート等の生分解性ポリマーシートが挙げられる。例えば、装飾を施したラッパーでラップすれば、上流部に装飾が施された喫煙物品を提供できる(
図3(2)参照)。また、倍長たばこロッド1wまたは分離可能な倍長たばこロッド1w’に香料を添加してもよい。例えば香料を含むラッパーで倍長たばこロッド1w等をラップすれば、上流部に香料を含む喫煙物品を提供できる(
図3(1)参照)。香料としては限定されず、メントール等の公知の香料を使用できる。添加する量も限定されず、公知の量としてよい。
図3において、Fは香料が添加された部分、F’は香料を含有するペーパーである。このように、本工程によって、喫煙物品とした場合に上流部に機能を持たせることが可能となる。
【0024】
(2)工程B
本工程では倍長たばこセグメント1wを中央部で分離して分離された1対のたばこセグメント10とし、これらを反転して、たばこロッド1部分が外側に位置しかつ両者の長手方向軸が同一であり、かつ冷却セグメント3同士が対向するように離間して配置する。本工程は
図5の第4ユニット84において実施できる。84iおよび84i’は反転ドラムである。
図6を参照して反転の機構を説明する。反転ドラム84i上のガイドGは、たばこセグメント10を保持する保持部であり、一つの角を中心としてドラム上で回動可能に設置されている。点線で示したガイドGに保持されたたばこセグメント10は、反転ドラム84iが回転するとともにガイドGが回動して実線で表す位置に移動する。次いで、たばこセグメント10は反転ドラム84i’の点線で示したガイドG’に受け渡される。ガイドG’は、反転ドラム84i’の上をスライドして、1対のたばこセグメント10の離間距離が所望の値となる実線で示した位置まで移動する。このようにして1対のたばこセグメント10が反転される。
【0025】
(3)工程C
本工程では、フィルターセグメント5の2倍の長さを有する倍長フィルターセグメント5wを準備し、前記離間部に、その両端がたばこセグメント10の冷却セグメント3側の端と当接するように配置して複合セグメントを調製する。本工程は
図5の第5ユニット85で実施できる。図中、85fは倍長フィルターセグメント5wの供給装置、85pは取出ドラム、85aは引取ドラムである。前工程で調製されたセグメントは、引取ドラム85aに受け渡される。一方、供給装置85fから供給された倍長フィルターセグメント5wは、取出ドラム85pの円周面に設けられた保持部に受け渡され、次いで引取ドラム85aに受け渡される。その際、離間して配置された1対のたばこセグメント10の離間部分に、倍長フィルターセグメント5wの両端がたばこセグメント10の端に当接するように配置され、複合セグメント90が形成される。
【0026】
(4)工程D
本工程では、複合セグメントを1枚のチップペーパー7でラップして一体化して、倍長喫煙物品100wを得る。チップペーパーとしては当該分野で通常使用される紙を用いることができる。チップペーパーは公知の接着剤が塗布されていてよく、これによって分離可能な状態にあった複合セグメントが一体化されて分離不可能な状態となる。この際、チップペーパー7はたばこロッド1の全範囲を覆う必要はない。チップペーパー7の覆う領域は、たばこロッド1の長さをXとするときに、たばこロッド1と冷却セグメント3の接合面を始点とし、たばこロッド1の長手方向に0.2X~0.4Xの位置を終点とする領域であることが好ましい。チップペーパー7の覆う領域がこの範囲であると、たばこロッド1を外部から加熱する場合に、熱伝導性を高めることができるという利点がある。
【0027】
従来の方法では、複数の部材を組合せてセグメントを調製する毎にチップペーパーでラップしていたため、複数のチップペーパーが必要であった。しかし、本発明では1枚のチップペーパー複合セグメントをラップするので、複数のチップペーパーを用いることによって生じる製品上の段差を回避でき、製造上の不良品発生率を低減できる。
【0028】
本工程は
図5の第6ユニット86で実施できる。図中、86fはチップペーパー7の供給装置、86tは移送ドラム、86rはローリングドラム、86hはローリングハンドである。ローリングドラムとは、円周面上に部材を保持する保持部であって、セグメント等の部材がその長手方向中心軸を中心として自転できるような保持部を備えるドラムである。ローリングハンドとは、ローリングドラムの円周面に対向して配置され、当該面との間に一定の距離を有する隙間を形成するための手段である。複合セグメント90は移送ドラム86tに受け渡され、次いでローリングドラム86rに受け渡される。一方、ローリングドラム86r上のセグメントの円周面には供給装置86fから供給されたチップペーパー7の一部が接着され、前駆体92が形成される(
図7参照)。前駆体92は、複合セグメント90に、旗のように接着されたチップペーパー7を備える。すなわち、チップペーパー7の一部は複合セグメント90の円周面に接着されているが、他部は自由である。前駆体92はローリングドラム86rの円周面の保持部にサクション等によって固定され、ローリングドラム86rとローリングハンド
86hとの間に形成された隙間に移送される。この隙間を通過する際に前駆体92の円周面全面がチップペーパー7で巻装され、倍長喫煙物品100wが形成される(
図7参照)。
【0029】
前述のとおり、本発明においてたばこロッド1の直径はこれに隣接する冷却セグメント3の直径より大きいことが好ましい。この場合、ローリングドラム86rおよびローリングハンド86hの面が平坦であると、当該面とたばこロッド1とが過度に接触することとなるため(
図8(1))、たばこロッド1に衝撃が加わって充填物が落下するいわゆる先落ちの問題が生じる。さらに円周差による捻じれが発生し、製品に皺が発生する等の不良が生じる。そこで本発明においては、
図8(2)および(3)に示すように、ローリングドラム86rまたはローリングハンド86hのたばこロッド1と対向する面に凹部を設けて、たばこロッド1との間に空隙を形成することが好ましい。
図8(2)および(3)には、ローリングハンド86hに凹部を設ける態様を示したが、凹部はローリングドラム86rに設けてもよいし、双方に設けてもよい。凹部の深さ(
図8(2)および(3)でのT)は適宜調整されるが、0.05~0.15mmであることが好ましい。この凹部はたばこロッド1と対向する面の全面に設けられる必要はない。
図8に示すように凹部はたばこロッド1と対向する面の一部に設けられていればよい。ただし、たばこロッドと他の部材をチップペーパーで確実に接着するためには、2つの部材の境界近傍に凹部は存在しないことが好ましい。
【0030】
(4)工程E
本工程では、倍長喫煙物品100wを、その長手方向における中央部で切断する。この工程によって1対の喫煙物品100を製造できる。本工程は、一方の喫煙物品100を反転させて、2つの喫煙物品100の方向を揃える工程をさらに含んでいてもよい。
【0031】
本工程は
図5の第7ユニット87で実施できる。図中87cはカッタードラム、87c’はカッター、87aは引取ドラムである。倍長喫煙物品100wは、カッタードラム87cに受け渡され、その長手方向における中央部で切断され、喫煙物品100が形成される。喫煙物品100は引取ドラム87aに受け渡され、分離されて製品として単離される。
【0032】
本発明では、たばこロッドにこれよりも小さな直径を有する他の部材を隣接して配置した場合でも、ローリングジャム等の不良を回避できるので良好なローリング実施できる。また、1枚のチップペーパーを用いるのでコスト的にも有利である。さらに、複数のチップペーパーを用いる従来の方法では喫煙物品に段差が生じることからドラムに段差を設ける等の対応が必要であったが、本発明の製造方法ではそのような対応が不要である。
【0033】
[実施例1]
以下の部材を準備した。
直径7.0mm、長さ40.0mmの倍長たばこロッド(日本たばこ産業株式会社製)
冷却セグメントとして直径6.9mm、長さ20.0mmの紙管
直径6.9mmの、センターホールフィルター(8.0mm)/倍長アセテートフィルター(14.0mm)/センターホールフィルター(8.0mm)からなる倍長フィルターセグメント
24.0mm×80.0mmのチップペーパー
【0034】
長手方向中央部で分離可能な倍長たばこロッドを載置し、その両端に紙管をそれぞれ配置して分離可能な倍長たばこセグメントを得た(工程A)。当該分離可能な倍長たばこセグメントを前記中央部で分離して分離された1対のたばこセグメントを調製し、これらを反転して、離間して配置した(工程B)。この際、たばこロッド部分が外側に位置しかつ両者の長手方向軸が同一となるようにした。当該離間部に、倍長フィルターセグメントを、その両端がたばこセグメントの冷却セグメント側の端と当接するように配置して複合セグメントを得た(工程C)。複合セグメントを1枚のチップペーパーでラップして一体化して、喫煙物品の2倍の長さを有する倍長喫煙物品を得た(工程D)。倍長喫煙物品をその長手方向における中央部で切断して、2つの喫煙物品を得た(工程E)。
【符号の説明】
【0035】
1 たばこロッド
1w 倍長たばこロッド
1w’ 分離可能な倍長たばこロッド
3 冷却セグメント
5 フィルターセグメント
5w 倍長フィルターセグメント
51 アセテートフィルター
53 センターホールフィルター
7 チップペーパー
10 たばこセグメント
F 香料添加部分
F’ 香料を含有するペーパーでラップされた部分
80 製造装置
81 第1ユニット
81f 供給装置
81s 分離ドラム
82 第2ユニット
82f 供給装置
82t 移送ドラム
82p 取出ドラム
82a 引取ドラム
83 第3ユニット
83c カッタードラム
83C’ カッター
84 第4ユニット
84i 反転ドラム
84’i 反転ドラム
85 第5ユニット
85f 供給装置
85p 取出ドラム
85a 引取ドラム
86 第6ユニット
86f チップペーパー供給装置
86t 移送ドラム
86r ローリングドラム
86h ローリングハンド
87 第7ユニット
87c カッタードラム
87c’ カッター
87a 引取ドラム
90 複合セグメント
92 前駆体
100 喫煙物品
100w 倍長喫煙物品