(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】保護コーティングを有する光学アセンブリ
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240507BHJP
G02B 1/08 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
G02B5/30
G02B1/08
(21)【出願番号】P 2020568982
(86)(22)【出願日】2019-06-07
(86)【国際出願番号】 IB2019054778
(87)【国際公開番号】W WO2019239271
(87)【国際公開日】2019-12-19
【審査請求日】2022-06-06
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】アンバー,グレッグ エー.
(72)【発明者】
【氏名】ソネック,ベンジャミン ジー.
(72)【発明者】
【氏名】エター,ジョー エー.
(72)【発明者】
【氏名】ウォン,ティモシー エル.
(72)【発明者】
【氏名】クラン,トーマス ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ポコルニー,リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】クーンス,ベンジャミン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ダン,ダグラス エス.
(72)【発明者】
【氏名】コスタリク,ヘンリー エー.,フォース
(72)【発明者】
【氏名】デグロウ,クリストファー エス.
(72)【発明者】
【氏名】ジャコブソン,ジョン アール.
(72)【発明者】
【氏名】ザン,チュンジー
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ジュン-シェン
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-258604(JP,A)
【文献】国際公開第2017/192240(WO,A1)
【文献】特開2011-118190(JP,A)
【文献】特表2017-524161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 1/08
G02C 7/00
C09D 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲率及び/又はサグを有するように熱成形された光学スタック上に直接的にインサート成形された光学素子を含む光学アセンブリであって、前記光学スタックは、光学フィルム及びライナーを含み、前記光学フィルムは、前記光学素子と前記ライナーとの間に配置されており、
前記光学フィルムは、主に光干渉によって光を反射し又は透過する複数の交互ポリマー層を含み、前記光学フィルムの総面積の少なくとも80%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して約80%を超える反射率を有し、
前記ライナーは、前記光学フィルムを実質的に損傷することなく、前記光学フィルムから除去可能であり、
前記光学フィルムは、前記ライナーに面し30マイクロメートル以下の平均厚さを有する、保護コーティングを含み、
前記保護コーティングは、少なくとも部分的に硬化された組成物を含み、前記組成物は、
a)成分a)~d)の総重量に基づいて70重量%~96重量%の、2~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含まない、成分a)~d)の総重量に基づいて2重量%~20重量%の、1~2の(メタ)アクリレート官能価を有する(メタ)アクリレートモノマー、
c)成分a)~d)の総重量に基づいて、任意選択の0.5重量%~2重量%のシリコーン(メタ)アクリレート、
d)任意選択の有効量の光開始剤、
e)任意選択の無機ナノ粒子、及び
f)任意選択の溶媒を含む、光学アセンブリ。
【請求項2】
前記光学フィルムの総面積の少なくとも80%にわたる各位置について、前記ライナーが除去される前後の前記位置における前記光学フィルムの反射率の差は、約5%未満である、請求項1に記載の光学アセンブリ。
【請求項3】
前記光学素子の溶融温度は、前記光学フィルムのガラス転移温度よりも少なくとも50℃高い、請求項1に記載の光学アセンブリ。
【請求項4】
前記光学素子は、前記光学フィルム上に直接的にインサート成形され、前記光学フィルムは、前記光学素子に拡散接合されている、請求項1に記載の光学アセンブリ。
【請求項5】
前記光学素子は、第1の方向における最大横寸法に沿ってより大きく変化し、直交する第2の方向における最大横寸法に沿ってより小さく変化する光学リターダンスを有するレンズであって、前記レンズ上の各位置における前記光学リターダンスは、約10nm以下である、請求項1に記載の光学アセンブリ。
【請求項6】
光学アセンブリであって、
一体的に形成され
、曲率及び/又はサグを有するように熱成形された多層光学フィルムと、
前記光学フィルム上に直接的に射出インサート成形された第1の光学素子であって、前記光学フィルムは、主に光干渉によって光を反射し又は透過する複数の交互ポリマー層を含み、前記光学フィルムの総面積の少なくとも80%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して約80%を超える反射率を有する、光学素子と、を含み、
前記第1の光学素子の溶融温度は、前記光学フィルムのガラス転移温度よりも実質的に高く、
前記光学フィルムは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、前記保護コーティングは、前記第1の光学素子の反対側を向いており、
前記保護コーティングは、少なくとも部分的に硬化された組成物を含み、前記組成物は、
a)成分a)~d)の総重量に基づいて70重量%~96重量%の、2~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含まない、成分a)~d)の総重量に基づいて2重量%~20重量%の、1~2の(メタ)アクリレート官能価を有する(メタ)アクリレートモノマー、
c)成分a)~d)の総重量に基づいて、任意選択の0.5重量%~2重量%のシリコーン(メタ)アクリレート、
d)任意選択の有効量の光開始剤、
e)任意選択の無機ナノ粒子、及び
f)任意選択の溶媒を含む、光学アセンブリ。
【請求項7】
前記光学フィルムは、前記光学素子上に拡散接合されている、請求項6に記載の光学アセンブリ。
【請求項8】
光学アセンブリであって、
一体的に形成され
、曲率及び/又はサグを有するように熱成形された多層光学フィルムであって、前記光学フィルムは、主に光干渉によって光を反射し又は透過する複数の交互ポリマー層を含み、前記光学フィルムの総面積の少なくとも90%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して約90%を超える反射率を有する、多層光学フィルムと、
前記光学フィルム上に直接的にインサート成形された光学素子であって、前記光学フィルムは、前記光学素子に拡散接合されている、光学素子と、を含み、前記光学フィルムは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、前記保護コーティングは、前記光学素子の反対側を向いており、
前記保護コーティングは、少なくとも部分的に硬化された組成物を含み、前記組成物は、
a)成分a)~d)の総重量に基づいて70重量%~96重量%の、2~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含まない、成分a)~d)の総重量に基づいて2重量%~20重量%の、1~2の(メタ)アクリレート官能価を有する(メタ)アクリレートモノマー、
c)成分a)~d)の総重量に基づいて、任意選択の0.5重量%~2重量%のシリコーン(メタ)アクリレート、
d)任意選択の有効量の光開始剤、
e)任意選択の無機ナノ粒子、及び
f)任意選択の溶媒を含む、光学アセンブリ。
【請求項9】
光学アセンブリであって、
レンズと、
両側に第1の主表面及び第2の主表面を有
し、曲率及び/又はサグを有するように熱成形された多層光学フィルムであって、前記第1の主表面は、前記レンズの第1の側の第1の部分上に配置されており、前記多層光学フィルムの総面積の少なくとも80%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して約80%を超える反射率を有する、多層光学フィルムと、を含み、
前記レンズの前記第1の側の第2の部分は、前記多層光学フィルムの前記第2の主表面と実質的に同一平面にあり、
前記多層光学フィルムは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、前記保護コーティングは、前記レンズの反対側を向いており、
前記保護コーティングは、少なくとも部分的に硬化された組成物を含み、前記組成物は、
a)成分a)~d)の総重量に基づいて70重量%~96重量%の、2~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含まない、成分a)~d)の総重量に基づいて2重量%~20重量%の、1~2の(メタ)アクリレート官能価を有する(メタ)アクリレートモノマー、
c)成分a)~d)の総重量に基づいて、任意選択の0.5重量%~2重量%のシリコーン(メタ)アクリレート、
d)任意選択の有効量の光開始剤、
e)任意選択の無機ナノ粒子、及び
f)任意選択の溶媒を含む、光学アセンブリ。
【請求項10】
光学アセンブリであって、
レンズと、
前記レンズの主表面上に配置され
、曲率及び/又はサグを有するように熱成形された光学スタックと、を含み、
前記レンズは、前記光学スタックの縁部の周囲を少なくとも部分的に包み込み、
前記光学スタックは、光学フィルムおよび30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、前記保護コーティングは、前記レンズの反対側を向いており、
前記光学フィルムは、主に光干渉によって光を反射し又は透過する複数の交互ポリマー層を含み、前記光学フィルムの総面積の少なくとも80%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して約80%を超える反射率を有し、
前記保護コーティングは、少なくとも部分的に硬化された組成物を含み、前記組成物は、
a)成分a)~d)の総重量に基づいて70重量%~96重量%の、2~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含まない、成分a)~d)の総重量に基づいて2重量%~20重量%の、1~2の(メタ)アクリレート官能価を有する(メタ)アクリレートモノマー、
c)成分a)~d)の総重量に基づいて、任意選択の0.5重量%~2重量%のシリコーン(メタ)アクリレート、
d)任意選択の有効量の光開始剤、
e)任意選択の無機ナノ粒子、及び
f)任意選択の溶媒を含む、光学アセンブリ。
【請求項11】
光学アセンブリであって、
湾曲した凹部をその中に画定する第1の主表面を有するレンズと、
前記湾曲した凹部に接着して適合
し、曲率及び/又はサグを有するように熱成形された多層光学フィルムと、を含み、
前記多層光学フィルムは、主に光干渉によって光を反射し又は透過する複数の交互ポリマー層を含み、前記光学フィルムの総面積の少なくとも80%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して約80%を超える反射率を有し、
前記多層光学フィルムは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、前記保護コーティングは、前記レンズの反対側を向いており、
前記保護コーティングは、少なくとも部分的に硬化された組成物を含み、前記組成物は、
a)成分a)~d)の総重量に基づいて70重量%~96重量%の、2~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含まない、成分a)~d)の総重量に基づいて2重量%~20重量%の、1~2の(メタ)アクリレート官能価を有する(メタ)アクリレートモノマー、
c)成分a)~d)の総重量に基づいて、任意選択の0.5重量%~2重量%のシリコーン(メタ)アクリレート、
d)任意選択の有効量の光開始剤、
e)任意選択の無機ナノ粒子、及び
f)任意選択の溶媒を含む、光学アセンブリ。
【請求項12】
前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1100g/モル~2100g/モルの分子量、及び307g/当量~220g/当量のアクリレート当量を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の光学アセンブリ。
【請求項13】
前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1100g/モル~1300g/モルの分子量、及び307g/当量~275g/当量のアクリレート当量を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の光学アセンブリ。
【請求項14】
前記組成物は、80重量%~96重量%の前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物、及び2重量%~12.5重量%の前記(メタ)アクリレートモノマーを含み、前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物の前記平均(メタ)アクリレート官能価は、2~4.8であり、前記保護コーティングは、最良適合球面の曲率半径58mm~76mm、及び前記保護コーティングの中心で前記保護コーティングに接する平面からの最大変位13~20mmを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の光学アセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
様々な用途において、光学素子上に光学フィルムを配置する場合がある。
【発明の概要】
【0002】
本明細書のいくつかの態様では、光学スタック上に直接的にインサート成形された光学素子を含む光学アセンブリが提供される。光学スタックは、光学フィルム及びライナーを含み、光学フィルムは、光学素子とライナーとの間に配置されている。ライナーは、光学フィルムを実質的に損傷することなく、光学フィルムから除去可能である。光学フィルムは、ライナーに面し30マイクロメートル以下の平均厚さを有する、保護コーティングを含む。
【0003】
本明細書のいくつかの態様では、一体的に形成された多層光学フィルムと、光学フィルム上に直接的に射出インサート成形された第1の光学素子と、を含む光学アセンブリが提供される。光学フィルムは、主に光干渉によって光を反射し又は透過する複数の交互ポリマー層を含む。光学フィルムの総面積の少なくとも80%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して約80%を超える反射率を有する。第1の光学素子の溶融温度は、光学フィルムのガラス転移温度よりも実質的に高い。光学フィルムは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、保護コーティングは、第1の光学素子の反対側を向いている。
【0004】
本明細書のいくつかの態様では、一体的に形成された多層光学フィルムと、光学フィルム上に直接的にインサート成形された光学素子と、を含む光学アセンブリが提供される。光学フィルムは、主に光干渉によって光を反射し又は透過する複数の交互ポリマー層を含む。光学フィルムは、光学素子に拡散接合される。光学素子への光学フィルムの接合は、光学フィルム内の少なくとも1対の直接隣接する層の間の層間接合よりも強い。光学フィルムは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、保護コーティングは光学素子の反対側を向いている。
【0005】
本明細書のいくつかの態様では、一体的に形成された多層光学フィルムと、光学フィルム上に直接的にインサート成形された光学素子と、を含む光学アセンブリが提供される。光学フィルムは、光学素子に拡散接合される。光学フィルムは、主に光干渉によって光を反射し又は透過する複数の交互ポリマー層を含む。光学フィルムの総面積の少なくとも90%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して約90%を超える反射率を有する。光学フィルムは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、保護コーティングは光学素子の反対側を向いている。
【0006】
本明細書のいくつかの態様では、光学フィルムと、光学フィルム上に直接的にインサート成形されたレンズと、を含む光学アセンブリが提供される。光学フィルムは、主に光干渉によって光を反射し又は透過する複数の交互ポリマー層を含む。光学フィルムの総面積の少なくとも90%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して90%を超える反射率を有する。レンズは、第1の方向における最大横寸法に沿ってより大きく変化し、かつ、直交する第2の方向における最大横寸法に沿ってより小さく変化する光学リターダンスを有する。レンズ上の各位置における光学リターダンスは、約10nm以下である。光学フィルムは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、保護コーティングはレンズの反対側を向いている。
【0007】
本明細書のいくつかの態様では、レンズと、両側に第1の主表面及び第2の主表面を有する多層光学フィルムと、を含む光学アセンブリであって、第1の主表面はレンズの第1の側の第1の部分上に配置される、光学アセンブリが提供される。多層光学フィルムの総面積の少なくとも80%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して約80%を超える反射率を有する。レンズの第1の側の第2の部分は、多層光学フィルムの第2の主表面と実質的に同一平面にある。多層光学フィルムは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、保護コーティングはレンズの反対側を向いている。
【0008】
本明細書のいくつかの態様では、レンズと、レンズの主表面上に配置された光学スタックとを含む光学アセンブリが提供される。レンズは、光学スタックの縁部の周囲を少なくとも部分的に包み込む。光学スタックは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、保護コーティングはレンズの反対側を向いている。
【0009】
本明細書のいくつかの態様では、光学アセンブリは、湾曲した凹部をその中に画定する第1の主表面を有するレンズと、湾曲した凹部に接着して適合する多層光学フィルムと、含む。多層光学フィルムは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、保護コーティングはレンズの反対側を向いている。
【0010】
本明細書のいくつかの態様では、光学フィルムと、光学フィルム上に直接的に射出成形されたレンズと、を含む光学アセンブリが提供される。光学フィルムの総面積の少なくとも80%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して約80%を超える反射率を有する。レンズは、レンズの主表面の少なくとも80%にわたって、各位置において約10nm以下の光学リターダンスを有する。第1のレンズ位置におけるレンズ厚は、第2のレンズ位置におけるレンズ厚よりも少なくとも約20%大きい。光学フィルムは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、保護コーティングはレンズの反対側を向いている。
【0011】
上記光学アセンブリに含まれる保護コーティング、及び本明細書の他の光学アセンブリは、典型的には、少なくとも部分的に硬化された組成物を含み、この組成物は、
a)成分a)~d)の総重量に基づいて70重量%~96重量%の、2~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含まない、成分a)~d)の総重量に基づいて2重量%~20重量%の、1~2の(メタ)アクリレート官能価を有する(メタ)アクリレートモノマー、
c)成分a)~d)の総重量に基づいて、任意選択の0.5重量%~2重量%のシリコーン(メタ)アクリレート、
d)任意選択の有効量の光開始剤、
e)任意選択の無機ナノ粒子、及び
f)任意選択の溶媒を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図7A】光学フィルム上に光学素子を射出インサート成形するためのプロセスを示す。
【
図7B】光学フィルム上に光学素子を射出インサート成形するためのプロセスを示す。
【
図7C】光学フィルム上に光学素子を射出インサート成形するためのプロセスを示す。
【
図7D】光学フィルム上に光学素子を射出インサート成形するためのプロセスを示す。
【
図7E】光学フィルム上に光学素子を射出インサート成形するためのプロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下の説明では、本明細書の一部を構成し、様々な実施形態が実例として示される、添付図面が参照される。図面は、必ずしも正確な比率の縮尺ではない。本開示の範囲又は趣旨から逸脱することなく、他の実施形態が想到され、実施可能である点を理解されたい。したがって、以下の発明を実施するための形態は、限定的な意味では解釈されないものとする。
【0014】
光学素子上に光学フィルムを配置することが望ましい、多種多様な用途が存在する。例えば、ディスプレイは、光学フィルムがプリズムの斜辺上に配置された偏光ビームスプリッタ(PBS)を利用する場合がある。光学フィルムは、主に光干渉によって光を反射し又は透過する多層ポリマー光学フィルムであってもよい。別の例として、ディスプレイシステムは、例えば、米国特許第9,557,568号(Ouderkirkら)に記載されているように、部分反射体と、互いに隣接して離間配置された反射偏光子とを含む、屈曲光学系を利用することができる。いくつかの場合では、レンズの主表面上に反射偏光子を配置することが望ましい。
【0015】
本明細書の光学アセンブリは、典型的には、光学レンズなどの光学素子上に配置された、一体的に形成された多層光学フィルムなどの光学フィルムを含む。例えば、光学フィルムは、両凸レンズ、平凸レンズ、正メニスカスレンズ、負メニスカスレンズ、平凹レンズ、又は両凹レンズのうちのいずれかの主表面上に配置されてもよい。いくつかの実施形態では、光学素子は、光学フィルムと光学素子との間に拡散接合が形成されるように、光学フィルム上に射出成形される。いくつかの実施形態では、拡散接合は、光学フィルム内の隣接する層の間の層間接合よりも強い。いくつかの実施形態では、インサート成形プロセスから得られる光学素子は、10nm未満の光複屈折を有し、いくつかの実施形態では、光複屈折は、直交方向よりも1方向に沿って大きく変化する。関連する光学アセンブリは、「光学アセンブリ」と題する、2017年10月20日に出願された、米国特許仮出願第62/574921号に記載されている。
【0016】
光学フィルムは、典型的には、光学フィルムの最も外側の表面に配置され、光学素子の反対側を向いている、ハードコートなどの保護コーティングを含む。光学フィルムは、光学素子の凹面若しくは凸面又は実質的に平坦な表面上に配置され、光学素子の反対側の光学フィルムの主表面上に保護コーティングを有してもよい。保護コーティングは、取り扱い中及び使用中に生じる場合がある、削り取り及びすり減りなどの表面損傷から光学フィルムを保護する、耐磨耗層であってもよい。本明細書は、主に光干渉によって光を反射し及び透過させる交互ポリマー層を含む多層光学フィルムなどの光学フィルム上にコーティングすること、並びに硬化することができる、保護層組成物を提供する。保護層を含む光学フィルムは、対象となる光学フィルムの少なくとも一部分において、保護層のクラックがなく所望の形状に熱成形し、後で光学アセンブリに使用することができる(例えば、光学アセンブリに使用されない光学フィルムの縁部分のみに存在するクラックを全て除去した後、光学フィルム上に光学素子を成形することができる)。光学フィルムの熱成形は、雌型成形型を使用して実行してもよく、雄型成形型を使用して実行してもよい。用語「雄型成形型」は、所望の成形部品形状を形成する(すなわち、バリ抜き)ために使用される成形型の領域内で、外向きに凸状である成形型を指す。用語「雌型成形型」は、所望の成形部品形状を形成する(すなわち、バリ抜き)ために使用される成形型の領域内で、内向きに凹状である成形型を指す。雌型成形型を利用する熱成形システムとしては、Hy-Tech Forming Systems(USA),Inc.(Phoenix AZ)から入手可能なAccuForm熱成形システムが挙げられる。雄型成形型を利用する熱成形システムとしては、MAAC Machinery Corporation(Carol Stream,IL)製の真空成形システムが挙げられる。高曲率及び/又はサグ(最大変位)を有する雌型成形型を利用することにより、光学アセンブリに使用する対象の領域において、光学フィルムの中心付近で従来のハードコートにはクラックが生じることがある。本明細書のいくつかの態様では、良好な耐引っかき性及び良好な熱成形性(例えば、クラックなしに熱成形可能)をもたらす、保護コーティングのための組成物が提供される。いくつかの実施形態では、高曲率及び/又はサグ(最大変位)を有する雌型成形型を使用して熱成形すると、保護コーティングにクラックが実質的に存在しない。
【0017】
図1Aは、光学素子110及び光学スタック120を含む光学アセンブリ100の概略断面図である。いくつかの実施形態では、光学素子110は、光学スタック120上に直接的にインサート成形される。光学素子は、光学スタックを成形型内に挿入し、光学スタック上に光学素子を成形することによって、光学スタック上にインサート成形することができる。インサート成形は、射出インサート成形、圧縮インサート成形、又はいくつかの他の形態のインサート成形であり得る。典型的には、光学素子110を形成する材料は、光学スタック120と接触するときに溶融しており、それによって、材料が、任意の追加の接着剤層を含むことなく光学スタック120との好適な結合を形成することが好ましい。いくつかの実施形態では、光学素子110を形成する材料、及び光学スタック120の最も外側の表面を形成する材料は、光学スタック120と光学素子110との間に好適な拡散接合が形成されるように、互いに適合性があるように選択される。例えば、いくつかの実施形態では、光学素子110を形成する材料、及び光学素子110に面する光学スタック120の最も外側の表面を形成する材料には、同様のポリマー、又はそうでなければ適合性があるもの(例えば、部分的に混和性はあるもの)が使用される。同様の又は親和性があるポリマーは、例えば、ほぼ等しい(例えば、50℃以内、又は30℃以内、又は20℃以内、又は10℃以内の)融点を有し得る。いくつかの実施形態では、光学スタック120は、複数の交互ポリマー層を含む光学フィルムを含み、光学素子110に対する光学フィルムの接合は、光学フィルム内の少なくとも1対の直接隣接する層の間の層間接合よりも強い。
【0018】
いくつかの実施形態では、光学素子110はレンズである。いくつかの実施形態では、レンズは、少なくとも1つの方向に屈折力を有する。例えば、光学素子110は、1つの方向(例えば、x方向)に屈折力を有するシリンドリカルレンズ、又は2つの方向(例えば、x方向及びy方向)に屈折力を有する球面レンズ又は非球面レンズであってもよい。いくつかの実施形態では、他のタイプの光学素子を使用してもよい。例えば、光学素子はプリズムであってもよく、光学スタック120は、プリズムの面(例えば、湾曲した、又は実質的に平坦な斜辺)上に配置されてもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、光学スタック120は、光学素子110の湾曲した主表面上に配置され、いくつかの実施形態では、光学スタック120は、光学素子110の実質的に平坦な主表面上に配置される。光学素子110の第1の湾曲した主表面上の少なくとも1つの位置が、2つの相互に直交する方向(例えば、x方向及びy方向)のそれぞれにおいて約6mm~約1000mmの範囲の曲率半径を有するように、光学スタック120は、光学素子110の湾曲した主表面上に配置されてもよい。表面は、最良適合球面が約2000mmを超える半径を有する場合、実質的に平面として説明され得る。
【0020】
光学スタック120は、光学フィルムであってもよく、又は光学フィルムを含んでもよい。いくつかの実施形態では、光学フィルムはミラーフィルムであり、いくつかの実施形態では、光学フィルムは反射偏光子である。反射偏光子の例として、多層ポリマーフィルム反射偏光子、及び反射偏光子のブロック軸内に概ね延び、ポリマー基材であり得る基材上に配置されたワイヤを含み得る、ワイヤーグリッド偏光子が挙げられる。いくつかの実施形態では、光学スタック120は、主に光干渉によって光を反射し又は透過する複数の交互ポリマー層を含む、一体的に形成された多層光学フィルムである。いくつかの実施形態では、光学スタック120は、一体的に形成された多層光学フィルムと、多層光学フィルムと一体的ではない少なくとも1つの追加層と、を含む。本明細書で使用するとき、第2の要素と「一体的に形成された」第1の要素は、第1の要素と第2の要素が、別個に製造された後に接合されるのではなく、一緒に製造されることを意味する。一体的に形成されるとは、第1の要素を製造し、続いて第1の要素上に第2の要素を製造することを含む。複数の層を含む光学フィルム(例えば、反射偏光子)は、層が別個に製造されてその後接合されるのではなく、層が一緒に製造された場合には、一体的に形成される(例えば、溶融ストリームとして組み合わされ、次いでチルロール上にキャストされて各層を有するキャストフィルムを形成し、更にキャストフィルムを配向させる)。追加層が一体的に形成された多層光学フィルムと一体でないことは、追加層が多層光学フィルムと一体的に形成されていないことを意味する。例えば、追加層は、別個に形成された後に、続いて多層光学フィルムに付着されてもよい(例えば、光学的に透明な接着剤を用いてラミネート(laminated)されてもよい)。
【0021】
いくつかの実施形態では、光学スタック、又は光学スタックに含まれる光学フィルムは、ミラー(例えば、可視ミラー又は赤外線ミラー)フィルム又は反射偏光子フィルムである。
図1Aの光学スタック120は、反射偏光子として示されており、
図1Bの光学スタック120bはミラーとして示されている。いくつかの実施形態では、光学スタック120又は光学スタック120に含まれる光学フィルムの総面積の少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は全てにわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して、約80%を超える、又は約90%を超える、又は約95%を超える反射率を有する。所定の波長は、所定の波長範囲内の任意の又は全ての波長であってもよい。所定の波長範囲は、可視範囲(400nm~700nm)であってもよく、並びに/又は赤外波長及び/若しくは紫外波長を含んでもよい。いくつかの実施形態では、所定の波長は、約550nmである。
【0022】
いくつかの実施形態では、光学スタック120又は光学スタック120に含まれる光学フィルムの総面積の少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は少なくとも約95%、又は全てにわたる各位置は、同じ所定の波長、及び第1の偏光状態に直交する同じ第2の偏光状態を有する垂直入射光に対して、約80%を超える、又は約90%を超える、又は約95%を超える反射率を有する。
【0023】
偏光状態は、垂直入射光に関して光学フィルムに接する軸線を規定する電界ベクトルの方向によって特徴付けることができる。光学フィルム又は光学スタックに接し、光学フィルム上の2つの異なる位置における垂直入射光の電界に沿っている軸が、それぞれが湾曲に沿って光学フィルムと交差する平行平面内にある場合、偏光状態は同じであると考えることができる。光学フィルム又は光学スタックに接し、光学フィルム上の2つの異なる位置における垂直入射光の電界に垂直である軸が、それぞれが湾曲に沿って光学フィルムと交差する平行平面内にある場合、偏光状態は同じであると同様に考えることができる。例えば、マイナスz方向に平行に進み、光学スタック120の頂点(最大z座標を有する点)に入射する光は、y方向に沿った電界を伴う第1の偏光状態、及びx方向に沿った電界を伴う第2の偏光状態を有し得る。光線113の第1の偏光状態163は、どちらの場合も、入射点における電界ベクトルがy-z平面に平行な平面内にあるため、頂点に入射する光の第1の偏光状態と同じである。光線184の第2の偏光状態193は、どちらの場合も、入射点における電界ベクトルが光学フィルムに接し、y-z平面に平行な平面内にある軸(y軸に平行)に直交するため、頂点に入射する光の第2の偏光状態と同じである。
【0024】
いくつかの実施形態では、光学スタック120は光学フィルムを含み、光学フィルムは、所定の波長及びブロック偏光状態を有する垂直入射光を実質的に反射し、所定の波長及び直交する通過偏光状態を有する垂直入射光を実質的に透過する反射偏光子である。実質的に反射するとは、少なくとも60%の反射率を意味すると理解することができ、実質的に透過するとは、少なくとも60%の透過率を意味すると理解することができる。反射偏光子のブロック偏光状態は、反射偏光子を通る最低透過率を有する偏光状態として説明することができ、通過偏光状態は直交偏光状態である。反射偏光子の中心におけるブロック偏光状態は、第1の偏光状態であってもよい。ブロック偏光状態は、例えば、光学フィルムを湾曲した形状に熱成形することによって誘発される変化に起因して、中心位置から離れて第1の偏光状態から変化し得る(例えば、ブロック軸は、平面図において約5度未満、又は約2度未満だけ変化し得る)。
【0025】
所定の波長λを有する光線113は、第1の偏光状態163で光学スタック120にほぼ垂直に入射し、反射光線116として光学スタック120から反射する。図示を容易にするために、小さいゼロでない入射角が示される。この場合、光線116は、光学スタック120から完全に反射されるもの(100%の反射率及び0%の透過率)として概略的に図示されているが、光学スタック120は、100%未満の反射率を有してもよく、光学スタック120を透過した第1の偏光状態163の一部の光を有してもよい。所定の波長λを有する光線184は、第2の偏光状態193で光学スタック120にほぼ垂直に入射し、透過光線186として光学スタック120を透過する。この場合、光線184は、光学スタック120から完全に透過されるもの(透過率100%及び反射率0%)として概略的に図示されているが、光学スタック120は、100%未満の透過率を有してもよく、光学スタック120から反射された第2の偏光状態193(例えば、フレネル反射による)のいくらかの光を有してもよい。第1の偏光状態163は、光学スタック120内の反射偏光子のブロック偏光状態であってもよく、又はほぼそう(例えば、平面図における第1の偏光状態163の軸の2度内のブロック軸)であってもよい。第2の偏光状態193は、光学スタック120内の反射偏光子の通過偏光状態であってもよく、又はほぼそう(例えば、平面図における第2の偏光状態の軸の2度内の通過軸)であってもよい。
【0026】
他の実施形態では、光学スタック120は、第1の偏光状態163及び第2の偏光状態193の両方を実質的に反射するミラーフィルムを含む。これは、光学スタック120が光学スタック120bと置き換えられていることを除いて、光学アセンブリ100と同様の光学アセンブリ100bを示す
図1Bに示されている。光学アセンブリ100bは、第2の偏光状態193に対する反射特性及び透過特性を除いて、光学アセンブリ100について記載された特性を有し得る。
図1Bの場合、光線184は、光学スタック120bから完全に反射されるもの(100%の反射率及び0%の透過率)として概略的に図示されているが、光学スタック120bは、100%未満の反射率を有してもよく、光学スタック120bを透過した第2の偏光状態193の一部の光を有してもよい。光学スタック120及び120bは、それぞれの光学スタックの反射率及び透過率を実質的に決定する光学フィルムを含んでもよい。
【0027】
反射率及び/又は透過率は、光学スタック又は光学フィルムの総面積の一部の特定画分である領域Aにわたって指定されてもよい。例えば、領域Aは、総面積の少なくとも約80%であってもよく、例えば、光学スタックの周辺部付近の総面積の20パーセントを除外してもよい。いくつかの実施形態では、領域Aは、光学スタック120若しくは120bの総面積、又は光学スタックに含まれる光学フィルムの総面積である。
【0028】
光学アセンブリ100は、光学素子110の反対側の光学スタック120上に配置された第2の光学素子(
図1A~
図1Bには図示せず)を更に含んでもよい。例えば、光学素子110は第1のレンズであってもよく、第2の光学素子は第2のレンズであってもよい。
【0029】
図1Cは、最大厚さh1及び最小厚さh2を示す光学素子110の概略断面図である。光学素子の位置における厚さは、その位置を通り、光学素子の対向する主表面を通る最短距離として説明することができる。いくつかの実施形態では、光学素子110はレンズである。いくつかの実施形態では、レンズのレンズ厚は、約50%以下((H2-H1))/H1*100%が約50%以下である)、又は約30%以下、又は約20%以下、又は約10%以下だけ、位置によって変化する。いくつかの実施形態では、レンズのレンズ厚は、少なくとも約20%((H2-H1))/H1*100%が少なくとも約20%)、又は少なくとも約30%、又は少なくとも約40%、又は少なくとも約50%、又は少なくとも約60%、又は少なくとも約75%、又は少なくとも約100%、又は少なくとも約150%、又は少なくとも約200%だけ、位置によって変化する。少なくとも指定された割合だけ位置によって変化するレンズ厚は、少なくとも1つの第2のレンズ位置におけるレンズ厚よりも、少なくとも指定された割合だけ大きい少なくとも1つの第1のレンズ位置を有する。例えば、H2がH1の少なくとも1.5倍である場合、レンズ厚は、位置が少なくとも50%変化し、中心位置での厚さH2は、縁部位置での厚さH1よりも少なくとも50%厚い。
【0030】
図2は、一体的に形成された多層光学フィルム222と、追加フィルム又は層230と、層232とを含む、光学スタック220の概略断面図である。いくつかの実施形態では、層232は、多層光学フィルム222に適用される保護コーティングであり、追加のフィルム又は層230は、保護コーティングに剥離可能に取り付けられたライナーである。あるいは、保護コーティングは、多層光学フィルム222の層と見なすことができる。他の実施形態では、層232は、追加のフィルム又は層232を多層光学フィルム222に取り付けている接着剤層である。光学フィルム222は、複数の干渉層224、並びに非干渉層226a及び226bを含む。複数の干渉層224は、第1のポリマー層221と第2のポリマー層223とを交互に含む。
【0031】
複数の干渉層224は、主に光干渉によって光を反射し又は透過する。干渉層は、干渉層の反射率及び透過率が光干渉によって合理的に説明できるか、又は光干渉の結果として合理的に正確にモデル化できる場合、主に光干渉によって光を反射し又は透過するものとして説明することができる。このような干渉層は、例えば、米国特許第5,882,774号(Jonzaら)、及び米国特許第6,609,795号(Weberら)に記載されており、交互ポリマー層を有する溶融ストリームを共押出しし、溶融ストリームをキャスティングしてキャストフィルムを形成し、次いで当該技術分野において既知であるように、キャストフィルムを(ミラーフィルムの場合は二軸に、反射偏光フィルムの場合は実質的に一軸に)配向して複屈折層を生成することによって(例えば、干渉層内の全ての他の層は複屈折性であり得るが、他の全ての層は実質的に等方性のままである)、作製することができる。異なる屈折率を有する干渉層の隣接する対は、対が、光波長の1/2の組み合わせ光学厚(屈折率×物理厚)を有するときに、光を反射する。干渉層は典型的に、約200ナノメートル未満の物理的厚さを有する。非干渉層は、干渉によって可視光の反射に寄与するには大きすぎる光学的厚さを有する。典型的には、非干渉層は、少なくとも1マイクロメートル、又は所定の波長の少なくとも3倍、又は所定の範囲の最大波長の少なくとも3倍の物理厚を有する。いくつかの実施形態では、2つ以上の非干渉層が含まれる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの非干渉層(図示した実施形態では、非干渉層226a及び226b)は、複数の干渉層224と一体的に形成され、主に光干渉によって光を反射し又は透過しない。
【0032】
いくつかの実施形態では、追加層230は、光学フィルム222に剥離可能に接合されたライナーである。光学フィルムに接合されるが、光学フィルムを実質的に損傷することなく光学フィルムからきれいに除去できるライナーは、光学フィルムに剥離可能に接合されたものとして説明することができる。いくつかの実施形態では、光学フィルムに剥離可能に接着されたライナーを、光学フィルムに目視可能な損傷を伴わずに光学フィルムから取り外すことができる。いくつかの実施形態では、ライナーが、光学フィルムを実質的に損傷することなく光学フィルムから除去可能である場合、光学フィルムの総面積の少なくとも80%にわたる各位置に対して、ライナーが除去される前後間のその位置における光学フィルムの反射率の差は、約5%未満(例えば、ライナーが除去される前後間の反射率の差の絶対値を、ライナーが除去された後の反射率で除算した値に100%を掛けると、5%未満であり得る)、又は約2%未満、又は約1%未満である。例えば、いくつかの実施形態では、光学フィルムは、主に光干渉により光を反射し又は透過する複数の交互ポリマー層を含み、光学フィルムの総面積の少なくとも約80%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して、約80%を超える反射率を有し、ライナーは、ライナーが除去される前後間のその位置における光学フィルムの反射率の差が約5%未満、又は約2%未満、又は約1%未満であるように、光学フィルムに剥離可能に接合される。剥離可能に接合されたライナーが、基材に強く接着するが光学フィルムに弱く接着する接着剤層を有する基材を含んでもよい。例えば、ライナーが、接着剤との接着を増大させるために表面処理された基材に適用された低粘着性接着剤の薄層を含んでもよい。他の好適なライナーとしては、例えば、米国特許第6,991,695号(Taitら)に記載されるように、光学フィルムに静電接着するものが挙げられる。好適なライナーの一例は、Sun A Kaken Co,Ltdから入手できるOCPET NSA33Tである。
【0033】
いくつかの実施形態では、光学スタック220が湾曲した形状に形成され、次いで光学的構成要素が、追加層230の反対側の光学スタック上にインサート成形される。いくつかの実施形態では、追加層230は、光学スタック220を湾曲形状に形成する前に光学フィルム222に取り付けられたライナーであり、光学素子が光学フィルム222に対する実質的に損傷することなく、光学スタック220上にインサート成形された後、得られる光学アセンブリから除去可能である。
【0034】
いくつかの実施形態では、追加層230は、光学的に透明である。いくつかの実施形態では、追加層230は、光学的に透明な保護コーティング又は層であり得る、保護層コーティング又は層である。層(例えば、接着剤層又はハードコート層)は、透過率が10%未満のヘイズを有する場合、光学的に透明であると説明できる。ヘイズは、ASTM D1003-13試験標準に従って判定することができる。ヘイズを測定するのに好適な機器は、Haze-Gard Plusヘイズメータ(BYK Gardner(Columbia,Maryland))である。いくつかの実施形態では、光学フィルムは、3%未満、又は2%未満、又は1%未満のヘイズを有する保護コーティングを含む。
【0035】
図3は、光学スタックに(例えば、光学スタック220内の光学フィルム222の代わりに)任意選択的に使用できる光学フィルム322の概略図である。光学フィルム322は、非干渉層326bによって分離された干渉層の第1のパケット224-1及び第2のパケット224-2を含む。光学フィルム322は、外側非干渉層326a及び326cを更に含む。光学フィルム322は、一体的に形成されてもよい。第1のパケット224-1及び第2のパケット224-2は、例えば、高コントラスト比(通過状態透過率のブロック状態透過率に対する比)の反射偏光子、又は低リークのミラーを提供する、「High Contrast Optical Film and Devices Including the Same」と題する、2017年3月6日に出願された、米国仮特許出願第62/467712号に記載されているように、重なり合う厚さ範囲を利用することができる。いくつかの実施形態では、重なり合う厚さ範囲を有するパケットを利用する反射偏光子は、例えば、少なくとも99%、又は少なくとも99.5%、又は少なくとも99.8%のブロック状態反射率を有する。
【0036】
いくつかの実施形態では、光学フィルム222又は322は、所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して約80%を超える反射率を有する。いくつかの実施形態では、たとえ光学フィルム又は光学スタック(例えば、光学スタック220)が湾曲した形状に熱成形され、かつ、光学素子が光学フィルム又はスタック上に成形された後であっても、光学フィルム222若しくは322又は本明細書の他の光学フィルムは、なおも高い反射率を有する。例えば、いくつかの実施形態では、光学フィルムの総面積の少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は全てにわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して、約80%を超える、又は約90%を超える反射率を有する。光学フィルムはまた、たとえ形成された後であっても低リークであり、光学フィルム上に成形された光学素子を有してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、光学フィルムの総面積の少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は全てにわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して、約5%未満、又は約2%未満、又は約1%未満、又は約0.6%未満、又は約0.5%未満の透過率を有する。いくつかの実施形態では、光学フィルムは、所定の波長及びブロック偏光状態を有する垂直入射光を実質的に反射し、所定の波長及び直交する通過偏光状態を有する垂直入射光を実質的に透過する反射偏光子である。いくつかの実施形態では、反射偏光子の総面積の少なくとも約80%、又は少なくとも約90%、又は全てにわたる各位置は、所定の波長及びブロック偏光状態を有する垂直入射光に対して、約5%未満、又は約2%未満、又は約1%未満、又は約0.6%未満、又は約0.5%未満の透過率を有する。
【0037】
いくつかの実施形態では、光学スタックは、光学フィルムと、光学フィルムの周辺部を越えて延びている追加層とを含む。例えば、追加層は、光学フィルムの周辺部に沿って光学フィルムに接する全ての方向に延びていてもよい。
図4A~
図4Bは、光学フィルム422及び追加層430を含む光学スタック420の概略側面図及び底面図である。いくつかの実施形態では、光学フィルム422は、本明細書の他の箇所で更に説明されるように、一体的に形成された多層光学フィルムである(例えば、光学フィルム422は、光学フィルム222又は322に対応し得る)。いくつかの実施形態では、追加層430は、保護層(例えば、基材上の光学的に透明なハードコート)又はライナーである。いくつかの実施形態では、追加層430は、光学フィルム422に剥離可能に接合されたライナーである。光学フィルム422は周辺部425を有し、追加層430は光学フィルム422を完全に覆い、光学フィルム422の周辺部425を越えて延びている。いくつかの実施形態では、追加層430と光学フィルム422との間の境界面428は、光学的に平滑である。他の実施形態では、境界面428は、テクスチャ加工されている。表面粗さに起因する散乱が実質的にないほど十分に平滑である場合、表面は光学的に平滑である。例えば、表面粗さパラメータRaが可視光の波長(例えば、50nm未満)より著しく小さい場合、表面粗さからの光学効果は無視することができ、表面は光学的に平滑であると説明することができる。テクスチャ加工された表面は、典型的には、表面が光学的に平滑でないほどに十分に大きい振幅を有するテクスチャを含む。いくつかの実施形態では、保護コーティングは、境界面428において光学フィルム422上に配置される。
【0038】
図4Cは、光学スタック420cが光学フィルム422に加えて第1の層430c及び第2の層430bを含む、代替的な実施形態を示す。第1の層430cは、光学フィルム422の周辺部425を越えて延びているが、第2の層430bは延びていない。いくつかの実施形態では、第2の層430bは保護コーティング(例えば、ハードコート)であり、第1の層430cはライナーである。
【0039】
いくつかの実施形態では、光学スタックは、ライナーの第1の主表面と光学フィルムの最も外側の主表面との間に境界面を有する光学フィルムを含む。境界面は、光学的に平滑であってもよく、又はテクスチャ加工されてもよい。いくつかの用途では、境界面が光学的に平滑であることが望ましい場合があり(例えば、鏡面反射を提供するため)、他の用途では(例えば、そうでなければ鏡面反射に対してある程度の拡散特性を追加するために)非平滑であることが望ましい場合がある。
図4Dは、ライナー430d、光学フィルム422d、及びそれらの間のテクスチャ加工された境界面428d、を含む光学スタック420dの概略断面図である。光学フィルムは、光学的に平滑な表面で開始することが多いが、その後のフィルム加工において表面をテクスチャ加工することができる。境界面は、例えば、形成プロセスによりテクスチャ加工されてもよい。いくつかの実施形態では、光学フィルムは、例えば熱成形プロセスにおいて所望の形状に形成されてもよく、熱成形プロセスで使用される成形型からのテクスチャは、その後ライナーによって覆われる光学フィルムの外面に付与されてもよい。成形型内のテクスチャは、成形型内に合わせて設計されてもよく、又は、例えば、成形型がどのように作製されたかのアーチファクトであってもよい。他の実施形態では、ライナー(後でのインサート成形プロセスに使用される同じライナーであってもなくてもよい)は、熱成形前に光学フィルムに適用され、成形型からのテクスチャが光学フィルムに全く付与されない。
【0040】
いくつかの実施形態では、本明細書の他の箇所に記載されている層430b、又は他の追加層は、保護層(例えば、コーティングを硬化させることにより形成される層)、又は保護フィルム(例えば、保護コーティングを有するフィルム)である。光学素子(例えば、レンズ)上に配置された光学フィルムを含む、本明細書の光学アセンブリのいずれかの場合、光学フィルムは、光学素子の反対側を向いている保護コーティングを含んでもよく(例えば、保護コーティングは、光学フィルムの最も外側の主表面に配置されてもよく、光学フィルムの反対側の主表面は光学素子と接触してもよい)、及び/又は、ライナーが含まれる実施形態では、ライナーに面してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、少なくとも部分的に硬化された組成物を含み、この組成物は、
a)成分a)~d)の総重量に基づいて70重量%~96重量%の、2~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含まない、成分a)~d)の総重量に基づいて2重量%~20重量%の、1~2の(メタ)アクリレート官能価を有する(メタ)アクリレートモノマー、
c)成分a)~d)の総重量に基づいて、任意選択の0.5重量%~2重量%のシリコーン(メタ)アクリレート、並びに
d)任意選択の有効量の光開始剤、
e)任意選択の無機ナノ粒子、及び
f)任意選択の溶媒を含む。
【0042】
同様の保護コーティングは、「Infrared-Reflecting Optically Transparent Assembly and Method of Making the Same」と題する、2016年12月16日に出願された米国仮特許出願第62/549082号に、更に記載されており、その記載は、本明細書と矛盾しない範囲で、参照により本明細書に組み込まれる。この組成物を光学フィルム上にコーティングでき、次いで、光学フィルムを所望の形状に形成(例えば、熱成形)する前に硬化させることができる。成分a)~f)の組成は、少なくとも部分的に硬化される前の組成を指す。いくつかの実施形態では、保護コーティングは30マイクロメートル以下の平均厚さ(例えば、0.5マイクロメートル~30マイクロメートルの範囲、又は1マイクロメートル~20マイクロメートルの範囲内の厚さ)を有する。平均厚さは、保護コーティングの総面積にわたる平均(非加重平均)の厚さを指す。
【0043】
溶媒が存在する場合、硬化前の硬化性組成物と称され得る組成物を、任意選択的に(しかし典型的には)、少なくとも部分的に乾燥させて、少なくとも部分的に乾燥した硬化性組成物を提供する。次いで、硬化性組成物、又は少なくとも部分的に乾燥した硬化性組成物を、少なくとも部分的に硬化させて、成形された耐磨耗性多層光学フィルムを提供する。いくつかの実施形態では、少なくとも部分的に硬化された組成物を、完全に硬化又は実質的に完全に硬化させる。
【0044】
接頭語「(メタ)アクリル」は、メタクリル及び/又はアクリルを指す。「平均(メタ)アクリレート官能価」は、1分子当たりの(メタ)アクリレート基の平均数を指す。「ウレタン(メタ)アクリレート化合物」は、少なくとも1つ(好ましくは少なくとも2、3、4個以上)のカルバメート基(すなわち、-NHC(=O)O-)及び少なくとも1つの(メタ)アクリル基を有する化合物を意味する。定義により、組成物中の成分の重量%の合計は、100重量%に等しい。
【0045】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、硬化された組成物の適合性及び可撓性、ひいてはその硬化された組成物の熱成形に対する適性に寄与する。2~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有する例示的なウレタン(メタ)アクリレート化合物は、市販供給元から入手可能であり、かつ/又は既知の方法に従って調製することができる。いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、2~9.5、又は2~4.8、又は2~4.3、2.3~4.3、又は2.5~4.1、又は3~9.5、又は3~9、又は3~4.8の平均(メタ)アクリレート官能価を有する。ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、純粋な化合物であっても、純粋な化合物の混合物であってもよい。場合によっては、より高い、及びより低い平均(メタ)アクリレート官能価を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を組み合わせて、2~4.8、又は別の所望の値の平均(メタ)アクリレート官能価を得ることができる。平均(メタ)アクリレート官能価を選択して、所望の耐引っかき性及び熱成形性を同時に得ることができる。所望の平均(メタ)アクリレート官能価は、熱成形フィルムの所望の形状及び使用に応じて変わることがある。例えば、より低い平均(メタ)アクリレート官能価(例えば、2~4.8)を選択して、コーティングされたフィルムがより大きな曲率(例えば、ベース8以上)に熱成形されたときに、熱成形性(例えば、より少ないクラック傾向)を改善することができ、より高い平均(メタ)アクリレート官能価(例えば、3~9.5)を選択して、耐引っかき性を改善することができる。また、ウレタン(メタ)アクリレート化合物の分子量を選択して、所望の耐引っかき性及び熱成形性を同時に得ることができる。いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1100g/モル~2100g/モル、又は1100g/モル~1300g/モルの分子量を有する。より高いアクリレート当量を有する、より低い分子量範囲を選択して、熱成形性を改善することができ、より低いアクリレート当量を有する、より高い分子量範囲を選択して、耐引っかき性を改善することができる。
【0046】
有用な市販のウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、全てAllnex(Brussells,Belgium)製である、EBECRYL264脂肪族ウレタントリアクリレート、EBECRYL265脂肪族ウレタントリアクリレート、EBECRYL1258脂肪族ウレタントリアクリレート、EBECRYL4100脂肪族ウレタントリアクリレート、EBECRYL4101脂肪族ウレタントリアクリレート、EBECRYL8412脂肪族ウレタンアクリレート(3官能)、EBECRYL4654脂肪族ウレタントリアクリレート、EBECRYL4666脂肪族ウレタントリアクリレート、EBECRYL4738脂肪族アロファネートウレタントリアクリレート、EBECRYL4740脂肪族アロファネートウレタントリアクリレート、EBECRYL8405脂肪族ウレタンテトラアクリレート、EBECRYL8604脂肪族ウレタンテトラアクリレート、EBECRYL4500芳香族ウレタンテトラアクリレート、EBECRYL4501芳香族ウレタンテトラアクリレート、EBECRYL4200脂肪族ウレタンテトラアクリレート、EBECRYL4201脂肪族ウレタンテトラアクリレート、EBECRYL8702脂肪族ウレタンヘキサアクリレート、EBECRYL220芳香族ウレタンヘキサアクリレート、EBECRYL221芳香族ウレタンヘキサアクリレート、EBECRYL2221芳香族ウレタンヘキサアクリレート、EBECRYL2221芳香族ウレタンヘキサアクリレート、EBECRYL5129脂肪族ウレタンヘキサアクリレート、EBECRYL1290脂肪族ウレタンヘキサアクリレート、EBECRYL1291脂肪族ウレタンヘキサアクリレート、EBECRYL8301-R脂肪族ウレタンヘキサアクリレート、EBECRYL8602脂肪族ウレタンアクリレート(非官能性);Sartomer Co.(Exton,Pennsylvania)製であるCN929 3官能ウレタンアクリレート及びCN9006脂肪族ウレタンアクリレート(6官能)が挙げられる。
【0047】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ポリイソシアネート化合物をヒドロキシル官能性(メタ)アクリレート化合物と反応させることによって合成することができる。ウレタン(メタ)アクリレート化合物を調製する際には、様々なポリイソシアネートを使用することができる。本明細書で使用するとき、用語「ポリイソシアネート」は、例えば、ジイソシアネート、トリイソシアネート、テトライソシアネート、及びこれらの混合物など、単一分子中に2つ以上の反応性イソシアネート(-NCO)基を有する任意の有機化合物を意味する。耐候性の向上及び黄変の減少のために、本明細書で使用されるウレタン(メタ)アクリレート化合物は、好ましくは脂肪族であり、したがって脂肪族ポリイソシアネートから誘導される。
【0048】
いくつかの好ましい実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、好ましくは、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の反応生成物(Covestro LLC(Pittsburgh,Pennsylvania)からDESMODUR Hとして入手可能なものなど)、又はその誘導体である。これらの誘導体としては、例えば、Covestro LLCからDESMODUR N-100として入手可能なヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物などの、ビウレット基を含有するポリイソシアネート、Covestro LLCからDESMODUR N-3300として入手可能なものなどの1つ以上のイソシアヌレート環
【化1】
を含有するポリイソシアネート、並びにウレタン基、ウレトジオン基、カルボジイミド基、及び/又はアロファネート基を含有するポリイソシアネートが挙げられる。更に別の有用な誘導体は、Covestro LLCからDESMODUR N-3800として入手可能なヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)トリマーである。これらの誘導体はポリマーであり、非常に低い蒸気圧を示し、イソシアネートモノマーを実質的に含まないので好ましい。
【0049】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、少なくとも10重量%、少なくとも15重量%、又は更には少なくとも20重量%の-NCO(すなわち、イソシアネート基)含有量を有するヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)誘導体などのポリイソシアネートの反応生成物である。場合によっては、HDI又は他のポリイソシアネートを、ヒドロキシル官能性(メタ)アクリレート化合物及びポリオールと反応させることができる。ポリイソシアネートの-NCO含有量は、好ましくは、50重量%以下である。いくつかの実施形態では、ポリイソシアネートは、典型的には、-NCO基当たり少なくとも80、100、120、140、160、180、又は更に200グラム当量を有する。この当量は、典型的には、-NCO基当たり500、450、又は400グラム当量以下であり、いくつかの実施形態では、-NCO基当たり350、300、又は250グラム当量以下であるが、これは必須ではない。
【0050】
イソホロンジイソシアネート(IPDI)誘導体などの環状基を含む脂肪族ポリイソシアネートを使用する場合、結果的に得られる硬化された組成物は、可撓性が低く(例えば、熱成形性が乏しい)、耐摩耗性が乏しくなり得る。
【0051】
ポリイソシアネートを、式HOQ(A)p(式中、Qは二価の有機連結基であり、Aは(メタ)アクリル官能基-XC(=O)C(R2)=CH2であり、Xは、O、S、又はNRであり、Rは、H、又はC1~C4アルキルであり、R2は、炭素原子が1~4個の低級アルキル基、又はHであり、pは、1~6である)を有するヒドロキシル官能性アクリレート化合物と反応させる。-OH基は、イソシアネート基と反応してウレタン結合を形成する。
【0052】
いくつかの実施形態では、ポリイソシアネートは、式HOQ(A)Q1Q(A)OHからなる化合物などのジオールアクリレートと反応させることができる。この式中、Q1は2価の連結基であり、Aは、前述のような(メタ)アクリル官能基である。代表的な化合物としては、ヒダントインヘキサアクリレート(HHA)(例えば、米国特許第4,262,072号(Wendlingら)の例1を参照)、及びH2CH=C(CH3)C(=O)OCH2CH(OH)CH2O(CH2)4OCH2CH(OH)CH2OC(=O)C(CH3)=CH2が挙げられる。
【0053】
Q及びQ1は、独立的に直鎖若しくは分枝鎖又は環含有結合基である。Qは、例えば、共有結合、アルキレン、アリーレン、アラルキレン、又はアルカリーレンを含み得る。Qは、任意選択で、O、N、及びS、並びにこれらの組み合わせなどのヘテロ原子を含み得る。Qは、任意選択で、カルボニル又はスルホニル、及びこれらの組み合わせなどのヘテロ原子含有官能基を含み得る。一実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を調製するために使用されるヒドロキシル官能性アクリレート化合物は、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、及びSartomer Co.からSR-495として入手可能なカプロラクトンモノアクリレートの場合などでは、単官能性である。この実施形態では、pは1である。
【0054】
別の実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を調製するために使用されるヒドロキシル官能性アクリレート化合物は、グリセロールジメタクリレート、1-(アクリルオキシ)-3-(メタクリルオキシ)-2-プロパノール、及びペンタエリスリトールトリアクリレートの場合などでは、多官能性である。この実施形態では、pは、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、又は少なくとも6である。
【0055】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物の調製には、単官能性ヒドロキシル官能性アクリレート化合物のみが使用される。別の実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物の調製には、単官能性及び多官能性ヒドロキシル官能性アクリレート化合物の組み合わせが使用される。いくつかの実施形態では、単官能性ヒドロキシル官能性アクリレート化合物と多官能性ヒドロキシル官能性アクリレート化合物との重量比は、0.5:1~1:0.5の範囲である。ウレタン(メタ)アクリレート化合物が多官能性ヒドロキシル官能性アクリレート化合物のみから調製される場合、いくつかの実施形態では、結果的に得られる硬化された組成物は、可撓性が低くなり得る。
【0056】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物と、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、又はカプロラクトンモノアクリレートなどの単官能性ヒドロキシル官能性アクリレートとの反応生成物、及びこれらの混合物を含む。
【0057】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物と、グリセロールジメタクリレート、1-(アクリルオキシ)-3-(メタクリルオキシ)-2-プロパノールなどの二官能性ヒドロキシル官能性アクリレートとの反応生成物、及びこれらの混合物を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物と、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、又はカプロラクトンモノアクリレートから独立して選択される少なくとも1つの単官能性ヒドロキシル官能性アクリレート、及び任意選択的に、グリセロールジメタクリレート、1-(アクリルオキシ)-3-(メタクリルオキシ)-2-プロパノール、又はペンタエリスリトールトリアクリレートから独立して選択される少なくとも1つの多官能性ヒドロキシル官能性アクリレートとの反応生成物を含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物と、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、又はカプロラクトンモノアクリレートから独立して選択される少なくとも1つの単官能性ヒドロキシル官能性アクリレート、及び任意選択的に、グリセロールジメタクリレート、1-(アクリルオキシ)-3-(メタクリルオキシ)-2-プロパノール、又はペンタエリスリトールトリアクリレートから独立して選択される少なくとも1つの多官能性ヒドロキシル官能性アクリレートとの反応生成物を含み、少なくとも1つの単官能性ヒドロキシル官能性アクリレートとの、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物は、3.5~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有する。
【0060】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物と、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、又はカプロラクトンモノアクリレートから独立して選択される少なくとも1つの単官能性ヒドロキシル官能性アクリレート、及び任意選択的に、グリセロールジメタクリレート、1-(アクリルオキシ)-3-(メタクリルオキシ)-2-プロパノール、又はペンタエリスリトールトリアクリレートから独立して選択される少なくとも1つの多官能性ヒドロキシル官能性アクリレートとの反応生成物を含み、少なくとも1つの単官能性ヒドロキシル官能性アクリレートとの、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物は、3.5~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価、及び1100g/モル~2100g/モルの分子量を有する。
【0061】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物と、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、又はカプロラクトンモノアクリレートから独立して選択される少なくとも1つの単官能性ヒドロキシル官能性アクリレート、及び任意選択的に、グリセロールジメタクリレート、1-(アクリルオキシ)-3-(メタクリルオキシ)-2-プロパノール、又はペンタエリスリトールトリアクリレートから独立して選択される少なくとも1つの多官能性ヒドロキシル官能性アクリレートとの反応生成物を含み、少なくとも1つの単官能性ヒドロキシル官能性アクリレートとの、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物は、3.5~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価、及び1100g/モル~2100g/モルの分子量を有し、307g/当量~220g/当量のアクリレート当量を有する。
【0062】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物と、ヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートの組み合わせとの反応生成物を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物と、ヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートの組み合わせとの反応生成物を含み、3.5~9の平均(メタ)アクリレート官能価を有する。
【0064】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物と、ヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートの組み合わせとの反応生成物を含み、3.5~9の平均(メタ)アクリレート官能価、及び1100g/モル~2100g/モルの分子量を有する。
【0065】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物と、ヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートの組み合わせとの反応生成物を含み、3.5~9の平均(メタ)アクリレート官能価を有し、1100g/モル~2100g/モルの分子量を有し、及び307g/当量~220g/当量のアクリレート当量を有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物と、ヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートの組み合わせとの反応生成物を含み、3.5~4.8の平均(メタ)アクリレート官能価を有する。
【0067】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネー(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物と、ヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートの組み合わせとの反応生成物を含み、3.5~4.8の平均(メタ)アクリレート官能価、及び1100g/モル~1300g/モルの分子量を有する。
【0068】
いくつかの実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のビウレット付加物又はHDIのイソシアヌレート付加物と、ヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリスリトールトリアクリレートの組み合わせとの反応生成物を含み、3.5~4.8の平均(メタ)アクリレート官能価を有し、1100g/モル~1300g/モルの分子量を有し、及び307g/当量~275g/当量のアクリレート当量を有する。
【0069】
いくつかの実施形態では、ポリイソシアネートのイソシアネート基の一部は、例えば、Perstorp Holding AB(Sweden)からPolyol 4800として入手可能なアルコキシル化ポリオールなどのポリオールと反応させることができる。このようなポリオールは、500mg~1000mg KOH/gのヒドロキシル価、及び少なくとも200g/モル又は250g/モルから最大500g/モルの範囲の分子量を有することができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、ポリイソシアネートのイソシアネート基の一部は、1,6-ヘキサンジオールなどのポリオールと反応させることができる。
【0071】
ポリイソシアネートを(メタ)アクリル化アルコールと反応させるために使用する反応条件の選択、及び触媒がある場合のその選択は、当業者には明らかであろう。更なる例を以下の実施例の項に見出すことができる。
【0072】
有用な(メタ)アクリレートモノマー(好ましくは非ウレタンであり、好ましくは非シリコーンであるが、これは必須ではない)は、1~2の(メタ)アクリレート官能価を有する。これらのモノマーは、例えば、希釈剤又は溶媒として、粘度低下剤として、硬化時のバインダーとして、及び架橋剤として機能し得る。有用な(メタ)アクリレートの例としては、モノ(メタ)アクリレートであって、例えば、オクチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノールエトキシレート(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ベータカルボキシエチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、ステアリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ官能性カプロラクトンエステル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシイソブチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、上記(メタ)アクリレートモノマーのアルコキシル化バージョンであって、例えば、アルコキシル化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、及びこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートが好ましい。ジ(メタ)アクリレートは、例えば、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジ(メタ)アクリレート、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートと、上記ジ(メタ)アクリレートのアルコキシル化バージョン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらのうち、1,6-ヘキサンジオールジアクリレートが、いくつかの実施形態では好ましい。1又は2の官能価を有する(例えば上記のような)(メタ)アクリレートモノマーは、広く市販されている。
【0073】
例示的な有用なシリコーン(メタ)アクリレートとしては、単官能性及び多官能性シリコーン(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのうち、シリコーンポリ(メタ)アクリレートが好ましい場合があり、これは、硬化後のシリコーン(メタ)アクリレートの未結合の可能性が概して減少するためである。例示的なシリコーン(メタ)アクリレートとしては、Allnex製のEBECRYL 350シリコーンジアクリレート及びEBECRYL 1360シリコーンヘキサアクリレート、Sartomer Co.製のCN9800脂肪族シリコーンアクリレート及びCN990シリコーン化ウレタンアクリレート化合物、並びにEvonik Industries(Parsippany,New Jersey)製のTEGO RAD 2100、TEGO RAD 2250、及びTEGO RAD 2500シリコーンポリエーテルアクリレートが挙げられる。
【0074】
硬化性組成物は、任意選択的に、しかし好ましくは、有効量の光開始剤を更に含むことができる。用語「有効量」とは、周囲条件下で硬化性組成物の硬化を引き起こすのに少なくとも十分な量である量を意味する。典型的には、光開始剤の有効量としては、全硬化性組成物の10重量%未満、より典型的には7重量%未満、より典型的には3重量%未満が挙げられる。重合可能な(メタ)アクリレート基が残存していても硬化が完了し得ることが認識されるであろう。
【0075】
例示的な光開始剤としては、ベンゾインなどのα-開裂光開始剤及びその誘導体、例えば、α-メチルベンゾイン;α-フェニルベンゾイン;α-アリルベンゾイン;α-ベンジルベンゾイン;ベンゾインエーテル、例えば、ベンジルジメチルケタール(Ciba Specialty Chemicals(Tarrytown,New York)からIRGACURE 651として入手可能)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル;アセトフェノン及びその誘導体、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン(Ciba Specialty ChemicalsからDAROCUR 1173として入手可能)及び1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Ciba Specialty ChemicalsからIRGACURE 184として入手可能);2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン(Ciba Specialty ChemicalsからIRGACURE 907として入手可能);2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン(Ciba Specialty ChemicalsからIRGACURE 369として入手可能);チタン錯体、例えば、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)ビス[2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)フェニル]チタン(Ciba Specialty ChemicalsからCGI 784 DCとして入手可能);及びモノアシルホスフィン及びビスアシルホスフィン(Ciba Specialty ChemicalsからIRGACURE 1700,IRGACURE 1800,IRGACURE 1850,及びDAROCUR 4265として入手可能)が挙げられる。1つの有用な光開始剤、2官能α-ヒドロキシケトンは、LAMBERTI S.p.A(Albizzate,Italy)からESACURE ONEとして入手可能である。
【0076】
望ましくは、アシルホスフィン又はアシルホスフィンオキシド光開始剤が利用される場合、その光開始剤は、化学線の1つ以上の波長で高い吸光係数を有する光開始剤(例えば、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン)と組み合わされる。このような組み合わせは、典型的には、高価な光開始剤を低レベルに維持しながら、表面硬化を促進する。
【0077】
他の有用な光開始剤としては、アントラキノン(例えば、アントラキノン、2-エチルアントラキノン、1-クロロアントラキノン、1,4-ジメチルアントラキノン、1-メトキシアントラキノン)並びにベンゾフェノン及びその誘導体(例えば、フェノキシベンゾフェノン、フェニルベンゾフェノン)が挙げられる。
【0078】
硬化性組成物は、任意選択の溶媒、一般には有機溶媒を含有してもよいが、水/溶媒ブレンドを使用してもよい。例示的な任意選択の溶媒としては、炭化水素又はハロゲン化炭化水素(例えば、トルエン、シクロヘキサン、石油エーテル、低級アルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、及びイソプロパノール)、脂肪族酸エステル(例えば、酢酸エチル)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン)、及びケトン(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン)が挙げられる。これらの溶媒は、単独で又は混合して使用することができる。当業者は、どの溶媒を使用するか、及びその量を容易に決定することができる。
【0079】
硬化性組成物はまた、例えば、充填剤、増粘剤、強化剤、顔料、繊維、粘着付与剤、潤滑剤、湿潤剤、界面活性剤、消泡剤、染料、カップリング剤、可塑剤、及び懸濁剤などの1種以上の任意選択の添加剤を含有してもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、硬化性組成物は、硬化性組成物の総重量に基づいて、好ましくは0.2重量%~9重量%(より好ましくは、0.2重量%~3重量%)の量の、アルファアルミナナノ粒子などのナノ粒子を更に含む。
【0081】
好ましくは、アルファアルミナナノ粒子は、0.05マイクロメートル~1マイクロメートルのDv50(体積中央粒径)を有する、粒径分布を有する。いくつかの好ましい実施形態では、アルファアルミナナノ粒子は、0.05マイクロメートル~0.3マイクロメートル、又は0.05マイクロメートル~0.2マイクロメートル、又は0.06マイクロメートル~0.15マイクロメートルのDv50を有する、粒径分布を有する。いくつかの実施形態では、アルファアルミナナノ粒子は、多峰性分布を有する。
【0082】
アルファアルミナナノ粒子は、アルファ結晶形のアルミナを含むか又は、好ましくは本質的にそれからなり(例えば、少なくとも99重量%で)、又は更にはそれからなる。
【0083】
アルファアルミナナノ粒子は、例えばボールミル又はジェットミルを使用して、より大きいサイズのアルファアルミナを粉砕することによって作製することができる。ボールミルを使用する場合、粉砕用媒体は、好ましくはアルファアルミナを含み、又は更にはそれからなるが、例えば、アルミニウムジルコネート媒体などの他の粉砕用媒体を使用してもよい。
【0084】
アルファアルミナナノ粒子は、0.05マイクロメートル~1マイクロメートルのDv50を有する粒径分布を有する径範囲であってもよく、市販供給元から容易に入手することができる。供給元としては、US Research Nanomaterials,Inc.(Houston,Texas)、Sisco Research Laboratories Pvt.Ltd.(Mumbai,India)、及びBaikowski International Corp.(Charlotte,North Carolina)が挙げられる。
【0085】
硬化性組成物は、例えば、スプレーコーティング、ロールコーティング、グラビアコーティング、スロットコーティング、ナイフコーティング、バーコーティング、及びディップコーティングを含む任意の適した技術によって、光学フィルムの主表面上にコーティングすることができる。任意選択の溶媒が存在する場合には、典型的には、その溶媒の一部、又は全てを蒸発させることによって少なくとも部分的に乾燥させる(例えば、強制空気オーブン又は他の加熱手段を使用)。
【0086】
次に、任意選択で少なくとも部分的に乾燥した硬化性組成物は、少なくとも部分的に硬化され、好ましくは完全に硬化され、耐摩耗性光学フィルムを提供する。硬化は、硬化性組成物が熱開始剤(例えば、過酸化物開始剤)を含む場合には熱を使用して、粒子線(例えば、電子ビーム)を使用して、又は光硬化(例えば、紫外線及び/又は電磁放射線の可視波長を使用する)を使用して達成され得る。このような硬化技術の手法は、当該技術分野において周知であり、当業者の能力の範囲内である。
【0087】
耐磨耗性光学フィルムを調製してから、これを熱成形によって成形し、成形された耐磨耗性多層光学フィルムを作製する。熱成形は、雌型成形型を使用して実行してもよく、雄型成形型を使用して実行してもよい。本明細書のいくつかの態様では、保護層のための組成物が提供され、これにより、比較的高い曲率及び/又はサグ(最大変位)を有する雌型成形型を使用して熱成形する際に、保護層に実質的にクラックが生じない。例えば、いくつかの実施形態では、組成物は、80重量%~96重量%のウレタン(メタ)アクリレート化合物、及び2重量%~12.5重量%の(メタ)アクリレートモノマーを含み、ウレタン(メタ)アクリレート化合物の平均(メタ)アクリレート官能価は、2~4.8であり、保護コーティングは、最良適合球面の曲率半径58mm~76mm、及び保護コーティングの中心で保護コーティングに接する平面からの最大変位(サグ)13~20mmを有する。いくつかのこのような実施形態、又は他の実施形態では、ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1100g/モル~1300g/モルの範囲の分子量を有する。
【0088】
多くの場合、加熱されたシートを予備延伸した直後、それを成形型にて形成することは、熱成形において有利である。これについては、2つの主な理由がある。第1に、特に単純な真空形成が固相形成と組み合わされる場合、利用可能な力は、延伸してシートを効率的に形成するのに不十分なことがある。第2の理由は、いくつかの形状、例えば、比較的高いアスペクト比のカップ又は箱形では、予備延伸なしに形成されたときに、壁厚の過度の変動が生じることがあるというものである。これが生じるのは、シートが、成形型キャビティの縁部及び側壁上に最初に接地し、次いで、推測ではベースの中心に接地するためである。冷却及び摩擦を組み合わせた機構には、これらの位置にシートを固定する傾向があり、その結果、形成を完了するのに必要とされる全ての残りの変形に、シート領域のわずかな部分が寄与するようになる。この場合、救済策は、成形型の幾何学形状に関連する様式での選択的予備延伸であってもよい。
【0089】
選択的予備延伸は、成形型幾何学形状がもたらす薄化傾向を相殺するように計算された方法で、球形状プラグを加熱されたシートに機械的に前進させて、局所的延伸を生じさせることによって達成される。この技術は全般的に、プラグアシストと呼ばれる。プラグ形状は、壁厚の変動にかなりの影響を及ぼす。プラグ設計は、科学同然の技術である。ダルノーズプラグには、物品のベースを厚くし、側壁をより薄くする傾向がある。他方、先細りの缶様プラグによると、形成物の角部がより厚くより強くなる。プラグ設計は、個々の用途ごとに最適化される必要があるが、全般的な基準は、形状の急激な変遷のない、平滑な表面及び混合形状のためにある。加熱されたポリプロピレンシートでの摩擦係数は比較的高いので、プラグを、低摩擦材料から作製する必要がある。通常の選択肢は、ポリアミド、PTFE、又は充填エポキシ樹脂である。
【0090】
シート予備延伸を、個々の成形型特徴部の領域における局所的なものではなく、シート全体にわたって全般的なものとする場合、この効果は、部分真空又は正の空気圧のいずれかによって達成される。両方の場合で、過剰な薄化又は破裂を引き起こすことなく、シートを膨張させるために、低圧力差の制御された流量が用いられる。正の空気圧による予備延伸は、多くの場合、ビローと呼ばれる。空気圧は、場合により、成形型をシートに向かって前進させることによって生じる、ピストン効果によって発生する。この予備延伸技術は全般的に、エアスリップとして知られている。いくつかのプロセスでは、プラグ及びビローの予備延伸技術を組み合わせる。
【0091】
熱可塑性フィルム(例えば、多層光学フィルム)上のハードコートについて、例えば、8ベースレンズの形状(球面曲率半径66.25ミリメートル、及び最大深さ(サグ)18.5ミリメートル)を有する雌型成形型で、それを熱成形し、レンズ形状の中心からレンズ形状の縁部までのハードコートのクラックの量を決定することによって、熱成形性を評価することができる。好ましい実施形態は、レンズ形状のどこにもクラックを示さない。レンズ形状コーティングにクラックができる場合、クラックは通常、雌型成形型を使用するとき、中心で開始する。例えば、クラックが中心で開始し、レンズ形状の中心と端部との間の距離の20%にわたり継続する場合、クラックは、中心から20%として実施例にて報告される。一旦レンズ形状が熱成形されると、このレンズ形状が更なる成形作業に使用されるときに、全般的に、更なるクラックは生じない。
【0092】
図5Aは、両側に第1の主表面515及び第2の主表面517を有するレンズ、並びにレンズ510上に配置された光学スタック520を含む、光学アセンブリ500の概略断面図である。第1の主表面515は、第1の部分512及び第2の部分514を含む。光学スタックは、光学フィルム522と、任意選択の追加のフィルム又は層530と、を含む。追加層530はまた、第1の層と呼ばれ得る。2つ以上の追加層530が含まれてもよい。例えば、追加層は、光学フィルム522上に配置された第1の層と、レンズ510とは反対側の第1の層上に配置された第2の層とを含んでもよい(例えば、第1の層はハードコートであってもよく、第2の層はライナーであってもよい)。本明細書の他の箇所で更に説明される多層光学フィルムであり得る光学フィルム522は、第1の主表面527及び第2の主表面529を有する。光学フィルム522の第1の主表面527は、レンズ510の第1の主表面515の第1の部分512上に配置される。光学フィルム522は、レンズ510と、例えば、ライナー又は保護層であり得る追加層530との間に配置される。いくつかの実施形態では、光学フィルム522は一体的に形成された多層光学フィルムであり、追加層530は光学フィルム522と一体的ではない。いくつかの実施形態では、光学フィルム522は、主表面529上の保護コーティング(例えば、層430bに相当する)を含み、追加層530は剥離ライナーである。
【0093】
第2の主表面529は、第1の主表面515の第2の部分514と実質的に同一平面にある。主表面と他方の表面との間の分離がフィルム又は層の厚さの約30%以下である場合、フィルム又は層の主表面は、別の表面(又はフィルム若しくは層の主表面と実質的に同一平面である他の表面)と実質的に同一平面にあるものとして説明することができる。いくつかの実施形態では、フィルム又は層の主表面と他の表面との間の分離は、フィルム又は層の厚さの20%以下又は10%以下である。
【0094】
第1の主表面515の第2の部分514は、
図5Aに概略的に示されるように、第1の主表面515の第1の部分512から垂直に延びていてもよく、第2の部分514は、第1の部分512からある角度で延びていてもよい。精密な角度は、レンズが光学スタック520上にインサート成形されたときの光学フィルム522の縁部の形状によって判定することができる。縁部の形状は、より大きなフィルム(例えば、光学フィルムのロール)から光学フィルム522が切り出された方法に依存し得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、追加層530は含まれない。いくつかの実施形態では、光学アセンブリ500は、後に除去されるライナーである追加層530と共に形成される。
図5Bは、例えば、光学アセンブリ500から追加層530を除去することによって形成できる光学アセンブリ500bの概略図である。
【0096】
図5Cは、第1の主表面515上に光学フィルム(optical film(s))が配置されていないレンズ510の概略断面図であり、
図5Dは、レンズ510の概略上面図である。第1の主表面515は、湾曲した凹部519を画定するものとして説明されてもよい。図示された実施形態では、湾曲した凹部519は、第1の主表面515の第1の部分512の上方に延び、第1の主表面515の第2の部分514によって境界される。
【0097】
図5Aに例示される実施形態では、レンズ510は、光学スタック520の縁部の周囲を少なくとも部分的に包み込むものとして説明することができる。光学スタック520の縁部は、光学フィルム522の縁部551aと、追加層530の縁部551bとを含む。図示の実施形態では、レンズ510は、光学スタック520の光学フィルム522部分の縁部551aの周囲を少なくとも部分的に包み込んで、光学フィルム522と同一平面になる。例えばプリズムなどの他の光学素子は、光学フィルム上に成形されてもよく、光学フィルムの縁部の周囲を少なくとも部分的に包み込むことができ、任意選択的に光学フィルムと同一平面にあってもよい。
【0098】
他の実施形態では、レンズはまた、追加層の縁部の周囲を少なくとも部分的に包み込んでもよい。
図6Aは、レンズ610の第1の主表面615の第1の部分612上に配置された光学スタック620を含む光学アセンブリ600の概略断面図である。レンズ610は、第1の主表面615の反対側の第2の主表面617を有する。光学スタック620は、多層光学フィルム622と、多層光学フィルム622上に配置された追加の層又はフィルム630とを含む。レンズ610は、光学スタック620の縁部の周囲を少なくとも部分的に包み込む。図示された実施形態では、レンズ610は、光学フィルム622の縁部の周囲を包み込み、追加フィルム630の縁部の周囲を少なくとも部分的に包み込む。いくつかの実施形態では、レンズ610は、追加フィルム630の縁部の周囲を少なくとも部分的に包み込んで、追加フィルム630と同一平面になる。例えば、第1の部分612の反対側の追加フィルム630の最も外側の主表面は、第1の主表面615の第2の部分614と同一平面にあってもよい。
【0099】
多層光学フィルム622は、第1の部分612上に配置された第1の主表面627を含み、反対側の第2の主表面629を含む。いくつかの実施形態では、レンズは、多層光学フィルム622の縁部の周囲を完全に包み込み、レンズ610に対する法線653に平行な方向に多層光学フィルム622の第2の主表面629を越えて、レンズ610の第1の主表面615の中心にまで延びている。
【0100】
いくつかの実施形態では、追加のフィルム630は保護フィルム(例えば、ハードコート)であり、これは、多層光学フィルム622に、後で少なくとも部分的に硬化させる硬化性組成物のコーティングとして、適用されてもよい。いくつかの実施形態では、追加のフィルム630は、剥離可能に取り付けられたライナーであり、保護コーティング(例えば、層430bに相当する)が、主表面629において多層光学フィルム622内に含まれる。
図6Bは、追加層630が除去されていることを除いて光学アセンブリ600に対応する、光学アセンブリ600bの概略断面図である。
【0101】
いくつかの実施形態では、レンズは、湾曲した凹部をその中に画定する第1の主表面を有し、多層光学フィルムは、湾曲した凹部に接着して適合している。例えば、
図5A~
図5B及び
図6A~
図6Bに示す実施形態のうちのいずれかは、第1の主表面によって画定される湾曲した凹部に適合する光学フィルムを有するものとして説明することができる。光学フィルムは、例えば、本明細書の他の箇所で更に説明されるように、拡散接合を介してレンズに拡散接合されることによって、湾曲した凹部に接着され得る。あるいは、レンズを別個に形成し、例えば、任意選択的に光学的に透明な接着剤で光学フィルムを湾曲した凹部に接合することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、光学素子上に配置された光学フィルムは、光学素子に向かって凸状である。いくつかの実施形態では、光学素子上に配置された光学フィルムは、光学素子に向かって凹状である。いくつかの実施形態では、光学フィルムは、凸面(例えば、湾曲した凹部の凸面)に接着して適合する。いくつかの実施形態では、光学フィルムは、凹面(例えば、湾曲した凹部の凹面)に接着して適合する。いくつかの実施形態では、光学フィルムは、平面に接着して適合する。
【0103】
図7A~
図7Cは、光学アセンブリの製造方法を概略的に示す。この方法は、第1の湾曲した成形型表面462(
図7A)を有する第1の成形型460を提供することと、成形された光学フィルム又は光学スタック720を第1の湾曲した成形型表面462上に配置すること(
図7B~
図7C)とを含む。光学スタックは、好ましくは、(例えば、熱成形により)第1の湾曲した成形型表面462の形状と実質的に一致する所望の形状に成形される。フィルム又は光学スタックの熱成形は、例えば、米国特許第9,557,568号(Ouderkirkら)及び同第6,788,463号(Merrillら)によって概して記載されているように、フィルム又は光学スタックを加熱し、光学スタックを延伸しながら光学スタックを湾曲した成形型に接触させることによって、実行することができる。次に、第2の成形型470は、第2の成形型470の第2の成形型表面472が第1の湾曲した成形型表面462から離間して位置合わせされるように配置される。第2の成形型表面472は、図示されるように湾曲していてもよく、又は実質的に平面であってもよい。第1の成形型表面462及び第2の成形型表面472は、それらの間に成形型キャビティ480を画定する(
図7B)。次に、成形型キャビティ480は、流動性材料483(
図7C)で充填又は実質的に充填され、次いで固化されて、光学スタック720に接合された固体光学素子を形成する(例えば、光学アセンブリ100の光学素子110を参照)。流動性材料483は、ゲート481を介して成形型キャビティ480内に導入され得る。第1の成形型460及び第2の成形型470は除去され、過度の材料(例えば、ゲート481からのランナー材料)が除去され得る。成形型キャビティを実質的に充填することは、50体積パーセントを超えて成形型キャビティを充填することを意味すると理解できる。いくつかの実施形態では、成形型キャビティは、少なくとも80体積%まで、又は少なくとも90体積%まで、又は少なくとも95体積%まで充填される。いくつかの実施形態では、成形型キャビティ480は、光学スタック720が占める容積を除いて、流動性材料483で完全に充填される。
【0104】
いくつかの実施形態では、流動性材料483がキャビティ480内に流入するときに、流動性材料483は、光学スタック720のガラス転移温度よりも高い温度を有する。いくつかの実施形態では、第1の成形型460及び第2の成形型470は、流動性材料483を固体化するために、流動性材料483の融点より低い温度に保持される。いくつかの実施形態では、流動性材料483がキャビティ480内に流入するときに、第1の成形型460及び第2の成形型470の温度はまた、光学スタック720のガラス転移温度よりも低い。例えば、流動性材料483は、キャビティ480内に導入されるときに250℃~300℃の範囲の温度を有してもよく、第1及び第2の成形型は75℃~100℃の範囲の温度を有してもよく、光学スタック720は105℃~130℃の範囲のガラス転移温度を有してもよい。いくつかの実施形態では、光学スタック720は複数の層を有し、流動性材料483がキャビティ480内に流入するときに、流動性材料483は、光学スタック720の各層のガラス転移温度よりも高い温度を有する。いくつかの実施形態では、光学スタック720は複数の層を有し、流動性材料483がキャビティ480内に流入するときに、流動性材料483は、光学スタック720の少なくとも1つの層のガラス転移温度よりも高い温度を有する。いくつかの実施形態では、光学スタック720は複数の層を有し、流動性材料483がキャビティ480内に流入して光学スタック720に接触するときに、流動性材料483は、流動性材料483に直接隣接する光学スタック720の層のガラス転移温度よりも高い温度を有する。この層は、例えば、光学スタック720に含まれる一体的に形成された光学フィルムのスキン層であってもよい。いくつかの実施形態では、光学スタック720は、複屈折ポリマー層を含む複数の層を含み、流動性材料483がキャビティ480内に流入するときに、流動性材料483は、複屈折ポリマー層のガラス転移温度よりも高い温度を有する。
【0105】
いくつかの実施形態では、形成された光学素子の溶融温度は、光学フィルム又は光学スタックのガラス転移温度よりも実質的に高い(ガラス転移温度は、上述のガラス転移温度のうちのいずれかであり得る)。実質的により高い温度とは、別段の指示がない限り、10℃超高い温度を指す。いくつかの実施形態では、光学素子の溶融温度は、光学フィルムのガラス転移温度よりも少なくとも約50℃高く、又は少なくとも約80℃高い。いくつかの実施形態では、光学素子の溶融温度と光学フィルムの溶融温度との間の差の絶対値は、約50℃未満、又は約30℃未満、又は約20℃未満、又は約10℃未満である。いくつかの実施形態では、光学素子の溶融温度は、光学フィルムの溶融温度とおよそ同じである。およそ同じ温度とは、別段の指示がない限り、10℃未満の温度差を指す。光学フィルムの溶融温度は、ガラス転移温度について記載された層のうちのいずれかの溶融温度であり得る。例えば、溶融温度は、流動性材料483がキャビティ480内に流入して光学フィルムに接触するとき、流動性材料483に直接隣接する光学フィルムの層のものであってもよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、光学スタック720は、本明細書の他の箇所に記載されるライナーを含む。いくつかの実施形態では、ライナーは、約50℃超又は約80℃よりも高いガラス転移温度を有する。
【0107】
様々なフィルム又は層のガラス転移温度は、試験標準ASTM E1356-08(2014)の「Standard Test Method for Assignment of the Glass Transition Temperatures by Differential Scanning Calorimetry」に記載されている、示差走査熱量計によって判定することができる。
【0108】
いくつかの実施形態では、第1の成形型460は、モールドベース内に配置されるように構成された第1のモールドインサートである。同様に、いくつかの実施形態では、第2の成形型470は、モールドベース内に配置されるように構成された第2のモールドインサートである。
【0109】
第1の湾曲した成形型表面462は、いくつかの実施形態では約30mm~約1000mmの範囲にある、最良適合球面の第1の曲率半径Rを有する。第1の湾曲した成形型表面462は、サグSを有する。いくつかの実施形態では、サグSと最良適合球面の第1の曲率半径Rとの比は、約0.02~約0.4の範囲、又は約0.02~約0.3の範囲、又は約0.02~約0.25の範囲、又は約0.02~約0.2の範囲、又は約0.02~約0.15の範囲、又は約0.02~約0.12の範囲、又は約0.03~約0.12の範囲、又は約0.04~約0.12の範囲にある。いくつかの実施形態では、光学スタック720、又は光学スタック720に含まれる保護コーティングは、これらの範囲のうちのいずれで、サグと半径との比を有する。ある表面の最良適合球面の曲率半径とは、ある球体に対する法線に沿った、球体から表面への距離の二乗が最小になる、球体の半径である。最良適合球面の曲率半径は、従来の最小二乗適合技法を使用して決定することができる。最良適合球面の曲率半径を有するものとして説明される形状は、例えば、球面、非球面、楕円形であってもよく、又は何らかの他の形状を有してもよい。光学レンズの主表面の任意の形状は、例えば、ある最良適合球面の曲率半径を有する。第1の成形型表面462は、レンズベースの湾曲によって特徴付けられる形状(例えば、6ベースから10ベースまでのレンズ幾何学形状)を有してもよい。
【0110】
いくつかの実施形態では、光学スタック720は、本明細書の他の箇所で更に記載されているように、第1の成形型460に面する、保護コーティング(例えば、ハードコート)を有する光学フィルムを含む。保護コーティングは、第1の成形型460と同じ、最良適合球面の第1の曲率半径R及びサグSを有してもよい。保護コーティングのサグSは、保護コーティングの中心における保護コーティングに接する平面からの最大変位として説明することができる。例えば、
図11は、保護コーティング1130の中心1167における最良適合球面の第1の曲率半径R、及び保護コーティング1130に接する平面1166(x-y平面に平行)からの最大変位Sを有する、保護コーティング1130の形状を概略的に図示している。保護コーティング1130は、典型的には、光学フィルムの最も外側の主表面に配置される(
図11の概略図には示されていない)。いくつかの実施形態では、得られる光学アセンブリの光軸は、保護コーティング1130の中心1167を通る。
【0111】
いくつかの実施形態では、保護コーティングは、最良適合球面の曲率半径R30mm~1000mm、又は30mm~300mm、又は30mm~100mm、又は40mm~85mm、又は58mm~76mm、又は65mm~68mm、又は66mm~67mmを有する。いくつかの実施形態では、保護コーティングは、保護コーティングの中心における保護コーティングに接する平面からの最大変位(サグS)5mm~50mm、又は10mm~25mm、又は13mm~20mm、又は15mm~20mm、又は18mm~19mmを有する。いくつかの実施形態では、最大変位(サグS)と最良適合球面の曲率半径Rとの比は、0.02~0.4の範囲、又は第1の湾曲した成形型表面462について記載されている範囲のいずれかである。
【0112】
図7Dは、第1の成形型460の第1の湾曲した成形型表面462上に配置された代替的な光学スタック720dの概略断面図である。この場合、光学スタック720dは、第1の湾曲した成形型表面462の縁部まで延びていない。光学スタック720d上へのレンズの射出成形から得られる光学アセンブリは、例えば、光学アセンブリ600について説明したとおりであり得る。
【0113】
図7Eは、第1の成形型460の第1の湾曲した成形型表面462上に配置された代替的な光学スタック720eの概略断面図である。この場合、光学スタック720eは、第1の湾曲した成形型表面462の縁部まで延びていない光学フィルム722eと、追加層730e(例えば、光学フィルム722eに剥離可能に取り付けられたライナー)とを含む。光学スタック720e上へのレンズの射出成形から得られる光学アセンブリは、例えば、光学アセンブリ500について説明したとおりであり得る。光学フィルム722eは、複数の交互ポリマー層を含んでもよく、本明細書の他の箇所で更に説明されているように、複数の交互ポリマー層と追加層730eとの間に配置された保護コーティングを含んでもよい。
【0114】
インサート成形プロセスは、光学フィルム上に射出成形された第1の光学素子を、第1の光学素子とは反対側の光学フィルム上に第2の光学素子を形成する第2のインサート成形プロセス用のインサートとして使用して繰り返すことができる。
【0115】
図8Aは、光学スタック又は光学フィルム820と、光学フィルム820上に直接的に射出インサート成形され得る第1の光学素子810aと、第1の光学素子810aの反対側の光学フィルム820上に配置された第2の光学素子810bと、を含む光学アセンブリ800の概略断面図である。第2の光学素子810bは、第1の光学素子810aの反対側の光学フィルム820上に直接的に射出インサート成形されてもよい。いくつかの実施形態では、第1の光学素子810a及び第2の光学素子810bは、第1及び第2のレンズである。いくつかの実施形態では、第1及び第2のレンズのそれぞれ上の各位置は、約10nm以下の光学リターダンスを有する。
【0116】
いくつかの実施形態では、第2の光学素子810bの形状を有するレンズは、第1の光学素子810aを含むことなく光学フィルム820上に成形される。
図8Bは、光学フィルム820と、光学フィルム820上に直接的に射出インサート成形され得る光学素子810bと、を含む、光学アセンブリ800bの概略断面図である。
【0117】
別の実施形態が
図8Cに示され、
図8Cは、光学スタック又は光学フィルム820cと、光学スタック又は光学フィルム820c上にインサート成形された光学素子810cと、を含む、光学アセンブリ800cの概略断面図である。この場合、光学スタック又は光学フィルム820cは、光学素子810cの実質的に平坦な表面上に配置されている。
【0118】
レンズなどの光学素子上のある位置における光学リターダンスは、その位置を通過し、光学素子を通る最短経路を有する光学素子を透過した光の位相リターダンスである。例えば、
図9は、位置987において光学素子910に入射し、光学素子910を通って透過する2つの光線988及び989を概略的に示す。光線989が、位置987を通過する光線に対して光学素子910を通過する最短経路を有するため、光学リターダンスは、光線989に対して指定される。光学素子910の対向する主表面がおよそ平行である場合、ほぼ垂直の入射光は、光学素子を通過する最短経路を有する。対向する主表面が平行でない場合、最短経路は、非垂直入射光の場合であり得る。位相リターダンスは、その位置を通る2つの直交偏光光線に対する位相の最大差である。入射光線の波長は、別段の指定がない限り、約550nmである。光学素子の光学リターダンスは、光学素子の主表面上の位置によって特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、レンズなどの光学素子は、低光学リターダンスを有する。いくつかの実施形態では、光学リターダンスは、光学素子の主表面の(表面積の)少なくとも80%、又は少なくとも90%にわたる各位置において約10nm以下である。いくつかの実施形態では、光学素子上の各位置における光学リターダンスは、約10nm以下、又は約7nm以下である。いくつかの実施形態では、光学素子は、レンズの中心において約5nm以下の光学リターダンスを有するレンズである。
【0119】
いくつかの実施形態では、たとえレンズが実質的な厚さ変化を有する場合であっても、光学リターダンスは(例えば、上記範囲のいずれかで)低い。例えば、いくつかの実施形態では、レンズは、レンズの主表面の少なくとも80%にわたって、各位置において約10nm以下の光学リターダンスを有し、第1のレンズ位置において、第2のレンズ位置におけるレンズ厚よりも、少なくとも約20%大きい、又は少なくとも約30%大きい、又は少なくとも約40%大きい、又は少なくとも約50%大きい、又は少なくとも約75%大きい、又は少なくとも約100%大きい、又は少なくとも約150%大きい、又は少なくとも約200%大きい、レンズ厚を有する。
【0120】
光学素子を作製する際に流動性材料483として低リターダンス材料を使用することによって、及び/又は、成形型キャビティ480に流動性材料483を充填した後、複屈折が実質的に緩和するのに十分な時間、流動性材料483を高温に維持することによって、光学素子の光学リターダンスを低く(例えば、10nm未満)することができる。流動性材料483に使用できる好適な材料としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート、ポリスチレン、環状オレフィン、及びポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。低複屈折を提供する好適なPMMAは、例えば、Mitsubishi Gas Chemical Company,Inc.から入手可能なOptimas 7500である。複数の交互ポリマー層を有する光学フィルムは、レンズ又は光学素子が光学フィルムのガラス転移温度より高い融点を有するが、光学フィルムの溶融温度未満であるとき、たとえ光学素子が低複屈折に緩和できるときであっても、少なくとも1つの偏光状態に対して高い反射率をなおも提供することができることが見出された。
【0121】
たとえ複屈折がより低い値に緩和できるときであっても、残留複屈折及び光学リターダンスはなおも存在し得るが、光学リターダンスが低い場合がある(例えば、10nm以下)。いくつかの実施形態では、光学リターダンスは、約10nm以下のままでありながら、光学素子を通していくらかの空間的変化を示す。いくつかの実施形態では、レンズであり得る光学素子の光学リターダンスは、光学素子の縁部により近い少なくとも1つの位置において、光学素子の中心により近い少なくとも1つの位置における光学素子の光学リターダンスを超える。
【0122】
図10は、D1の第1の方向(x方向に平行)に沿った最大横寸法を有し、D2の直交する第2方向(y方向に平行)に沿った最大横寸法を有するレンズ1010の概略上面図である。D1は、D2より大きくても、小さくてもよく、又はD2とおよそ同じであってもよい。いくつかの実施形態では、レンズ1010は、直交する第2の方向D2における最大横寸法に沿ってより小さく、かつ、レンズ1010上の各位置において約10nm以下である、第1の方向D1における最大横寸法に沿ってより大きく変化する光学リターダンスを有する。いくつかの場合では、光学リターダンスの変化は、光学リターダンスがゲート付近でより高く、かつ、他の位置よりも低くなるレンズ1010を作成するために使用される射出インサート成形プロセスに起因するものである。例えば、第1の縁部位置1094は、ゲート付近の縁部位置であってもよく、中心位置1095よりも高い光学リターダンスを有してもよい。いくつかの実施形態では、第1の縁部位置1094は、中心位置1095における光学リターダンスよりも高く、第2の縁部位置1096における光学リターダンスよりも高い、光学リターダンスを有する。いくつかの実施形態では、第3の縁部位置1097及び第4の縁部位置1098は、中心位置1095における光学リターダンスのR1以内の光学リターダンスを有し、第1の縁部位置1094は、R2に中心位置1095における光学リターダンスを加えたものを超える光学リターダンスを有する(ここで、R2>R1)。例えば、R2は2.5nmであってもよく、R1は1.5nmであってもよく、中心位置1095における光学リターダンスは4nmであってもよく、第2の縁部位置1096、第3の縁部位置1097、及び第4の縁部位置1098のそれぞれにおける光学リターダンスはそれぞれ、約5nmであってもよく、第1の縁部位置1094における光学リターダンスは、約7nmであってもよい。いくつかの実施形態では、最も高い光学リターダンスは、第1の縁部位置1094(ゲート付近)で生じ、最も低い光学リターダンスは中心位置1095で生じる。
【0123】
縁部位置及び中心位置は、それぞれ、レンズ1010の縁部又は中心に近い位置を指す。レンズ1010の中心は、第1及び第2の方向が交差する平面図の中心を指し得る。いくつかの実施形態では、中心位置は、レンズ10の中心のD1及びD2のうちの小さい方の10%以内であり、縁部位置は、レンズ10の縁部のD1及びD2のうちの小さい方の10%以内である。
【0124】
いくつかの実施形態では、レンズ1010は、光学フィルム又は光学フィルムを含む光学スタック上に成形され、光学フィルムは反射偏光子であり、反射偏光子上の各位置は、所定の波長及びブロック偏光状態を有する垂直入射光を実質的に反射し、所定の波長及び直交する通過偏光状態を有する垂直入射光を実質的に透過する。いくつかの実施形態では、第1の方向は、反射偏光子の中心でブロック偏光状態に対して実質的に平行である。いくつかの実施形態では、第1の方向は、反射偏光子の中心で通過偏光状態に対して実質的に平行である。いくつかの実施形態では、第1の方向は、反射偏光子の中心でブロック偏光状態に対して斜角にある。例えば、反射偏光子の中心における反射偏光子のブロック軸は、D1に沿った第1の方向との角度αをなす軸1099に沿ってもよい。いくつかの実施形態では、角度αは10度未満である。
【0125】
「約、およそ(about)」又は「実質的に(substantially)」などの用語は、それらが本発明の記載に使用され記載されている文脈において、当業者によって理解されるであろう。特徴部の形状、量、及び物理的性質を表す量に適用される「約」の使用が、本発明の記載に使用され記載されている文脈において、当業者にとって明らかではない場合、「約」は、特定の値の10パーセント以内を意味すると理解されるであろう。特定の値の約として与えられる量は、正確に特定の値であり得る。例えば、本発明の記載に使用され記載されている文脈において、当業者にとって明らかではない場合、約1の値を有する量は、0.9~1.1の値を有する量かつその値が1であり得ることを意味する。
【実施例】
【0126】
【0127】
ポリウレタンアクリレート調製例、PUA9
DESN100-0.5、PETA-0.5、HEA
磁気攪拌棒を備えた250mLの広口瓶に、39.76g(0.2082当量)のDESN100、25gのMEK、12.33g(0.1062当量)のHEA、47.91g(0.1062当量)のPETA、NCO当量当たり合計1.01当量のOHに対して、0.025g(250ppm)のBHT、0.005g(50ppm)の4-ヒドロキシTEMPO、及び0.05g(500ppm)のDBTDLを入れた。広口瓶を室温の水浴に入れ、10分間撹拌した。10分後、55℃の浴に4時間入れた。その時間の終わりに、反応混合物をフーリエ変換赤外分光法(FTIR)によって監視し、2265cm-1におけるNCOピークがないことが分かった。結果的に得られた材料は、固形分80重量%であった。
【0128】
ポリウレタンアクリレート調製例、PUA1~PUA8及びPUA10~PUA19
PUA1~PUA8及びPUA10~PUA19を、表1に報告した調製物を反応させることによって上述のPUA9と同様に調製した。適切な大きさの広口瓶を使用して反応を実施した。表1に記載された調製物で使用された材料の量は、グラム(g)で報告し、特に断りのない限り、固形分に対して250ppmのBHT、50ppmのTEMPO、及び500ppmのDBTDLを更に含んだ。得られた生成物は、MEK中固形分80重量%であった。
【0129】
【0130】
ポリウレタンアクリレート(PUA)の平均((メタ)アクリレート)官能価を、以下のやり方で計算した。各化合物について添加されたアクリレートの官能価を最初に計算した。例えば、上記PUA6を、1.0 DESN100+0.25 HEA+0.75 PETAとして表記した。これは、この化合物が、1当量のイソシアネート基(DESN100として)と、0.25ヒドロキシル当量のヒドロキシエチルアクリレート及び0.75ヒドロキシル当量のPETAとの反応生成物であったことを意味する。HEAは、1ヒドロキシル基当たり1個のアクリレート基を有し、PETAは、1ヒドロキシル基当たり3個のアクリレート基を有する。その結果、この化合物について添加されたアクリレートの官能価は、(0.25×1)+(0.75×3)、すなわち2.5であった。平均(メタ)アクリレート官能価は、各化合物について添加されたアクリレートの官能価に、ポリイソシアネートの平均官能価を乗じることによって判明した。ベンダーのCovestroによれば、DESN100の平均官能価は3.6であり、そのため、この化合物の平均(メタ)アクリレート官能価は、2.5×3.6、すなわち9であった。平均((メタ)アクリレート)官能価の概要を、表1(上記)に報告する。
【0131】
PUAの分子量を、以下のやり方にてグラム/モル単位で計算した。PUA6の場合を例示する。DESN100の平均官能価は、3.6であった。これにDESN100の当量分率を乗じ、1.0×DESN100の平均官能価3.6とし、これに、DESN100の当量(重量基準、EW)190.9g/当量を乗じた。これが、DESN100の分子量に対する寄与度であった。本発明者らは、HEAの当量分率を乗じ、0.25×DESN100の平均官能価3.6とし、これに、HEAのEW116.12g/当量を乗じた。これが、HEAの分子量に対する寄与度であった。本発明者らは、PETAの当量分率を乗じ、0.75×DESN100の平均官能価3.6とし、これに、PETAのEW451.3g/当量を乗じた。これが、PETAの分子量に対する寄与度であった。DESN100、HEA、及びPETAの寄与度の合計が、分子量であった。全体的計算は、1.0×3.6×190.9+0.25×3.6×116.12+0.75×3.6×451.3=2010g/モルになる。これらの計算の概要を、以下の表Aに報告する。
【0132】
【0133】
PUAの、g/当量単位でのアクリレートEWは、ポリウレタンの分子量を平均((メタ)アクリレート)官能価で除算することによって計算される。PUA6の場合を例示すると、それはすなわち、2010/9=223.33g/当量、すなわち223g/当量になる。
【0134】
調製例1~18(PE1~PE18)及び比較例1~11(CE1~CE11)
それぞれのポリウレタンアクリレートPUA1~PUA19及びCN9039などのいくつかの市販のウレタンアクリレートのコーティング溶液を、調製用フィルムの実施例の作製用コーティング溶液を調製するための表2に報告されているように、成分を混合することによって調製した。次いで、各調製例又は比較例を調製するために、表2に示されたコーティング溶液組成物を、APETフィルム上に固形分32重量%でコーティングした。コーティングは、7番ワイヤ巻きロッド(RD Specialties(Webster,New York)から入手可能)を使用して行った。コーティングを、90℃で1.5分間、乾燥させた。次いで、乾燥したコーティングを、H型電球を装備した紫外線(UV)処理装置(500W、Heraeus Noblelight America(Fusion UV Systems),Gaithersburg,Marylandから入手可能)を使用して窒素下50フィート/分(15.2m /分)で100%の出力にて硬化させた。硬化後のコーティングは、約3.4マイクロメートルの推定厚さを有した。得られたフィルムについて、それらが下記の熱成形クラック試験に合格したか否かによって、表3に示すように、PE1~PE18及び比較フィルムCE1~CE11と表記した。
【0135】
【0136】
6及び8ベースレンズのフィルム熱成形及び成形
Hy-Tech Forming Systems(USA),Inc.から入手可能なAccuForm熱成形システムを使用して、耐磨耗性多層光学フィルムを形成した。システムは、加熱及び高圧を使用して、使用するツールの幾何学形状を形成するものである。6ベースレンズの幾何学形状(89.15mmの球面曲率半径及び11.68mmの最大深さに相当)、又は8ベースレンズの幾何学形状(66.25mmの球面曲率半径及び18.5mmの最大深さに相当)を有する、雌型成形型を使用した。保護フィルムライナー(OCPET NSA33T、Sun A Kaken Co,Ltd)を、フィルムの各主表面上に配置した。フィルムを、AccuFormシステムにて、フィルムのコーティング側が雌型成形型の湾曲成形型表面に面するようにクランプ固定し、350°F(177℃)まで加熱し、加圧空気をフィルムの上面に適用して、フィルムをレンズツールの幾何学形状に押し込んだ。フィルムを冷却し、形成フィルムをシステムから取り出した。
【0137】
形成されたフィルムを、フィルムハードコートにおけるクラックについて目視検査した。使用された方法では、クラックが生じた任意の箇所での半径のパーセントを記録することとし、そこでレンズの中心から半径の50%にわたって延びているクラックが存在した場合、その結果については、クラックの範囲が50%として記録した。
【0138】
形成されたフィルムを最終成形レンズサイズにトリミングし、フィルムのコーティング面の反対側のライナーを取り外し、射出成形プロセスを使用して、最終レンズ幾何学形状(6ベース及び8ベース)の片側(残りのライナーの反対側)でフィルムをインサート成形した。残りのライナーを、レンズをフィルム上に成形した後で取り外した。
【0139】
射出成形を、KraussMaffei Technologies GmbH製の65トンプレスによって行い、使用した成形用樹脂は、三菱ガス化学のOptimas7500(PMMA)樹脂であった。結果を以下の表3に報告する。
【0140】
【0141】
摩耗試験
Taber model 5750 Linear Abraser(Taber Industries(North Tonawanda,New York))を使用して、レンズ試料の摩耗を試験した。コレットは、40サイクル/分で振動した。この試験に使用した研磨材は、イレーサーインサート(EMS Acquisition Corp.(Hatfield,Pennsylvania)の一部門であるSummers Opticalから入手した)であった。イレーサーインサートの直径は6.5mmであり、MIL規格Mil-E-12397Bの要件を満たした。
【0142】
イレーサーインサートは、コレットによる試験の持続時間を通じて定位置に保持された。各例について、単一の試料を総重量1.1kgの重量かつ20サイクルで試験した。リニア摩耗試験機は、直線運動で往復する水平アームを有した。このアームの端部に取り付けられたボールベアリングスプライン軸は、水平方向の前後ストロークの間、コレットがレンズ輪郭をたどるように上下することができるように垂直移動を可能にする自由浮動システムを作り出した。摩耗暴露のために、レンズ試料を水平クランプに装着し、1分当たり40摩耗サイクルの速度に相当する速度で摩耗工具が51mmの総移動距離を、レンズ試料を横切って移動することができるようにした。研磨後、試料をレンズ洗浄タオル(Radnor Products,Radnor,Pennsylvania)で拭き取ることによって、試料の残留物を取り除いた。レンズ試料に対する摩耗サイクルの影響は、線形摩耗の前後の各試料のヘイズ率の測定によって決定された。ヘイズ率を、BYK Haze-Gard Plusヘイズメータ(BYK Gardner(Columbia,Maryland))を使用して測定した。光がレンズの凹状側に突き当たるように、レンズを位置決めした。摩耗後ヘイズ測定は、摩耗暴露を施された各レンズの面積に測定を制限するために、可撓性をもつ5mm×25mmの長方形の開口を通して行われた。試料の未試験領域のヘイズを減算することにより、各試料のΔヘイズ値を計算した。選択された耐クラック性調製例の熱成形フィルムPE1~PE18に対応する耐磨耗性成形6ベースレンズの実施例1~18(EX1~EX18)、及びPE19に対応する比較例12(CE12)の結果を表4に示す。
【0143】
【0144】
同様に、選択された耐クラック性調製例の熱成形フィルムPE12~PE18に対応する耐磨耗性成形8ベースレンズ実施例19~24(EX19~EX24)、及びPE19に対応する比較例13(CE13)の結果を表5に示す。
【0145】
【0146】
アルミナナノ粒子を含有する実施例のレンズの調製
アルファアルミナナノ粒子(NP)の調製
アルファアルミナナノ粒子分散液を、媒体粉砕プロセスによって作製した。メチルエチルケトン(MEK)(185グラム)、180グラムのBYK-W9012分散用添加剤(BYK USA(Wallingford,Connecticut))、及び181グラムの超高純度アルファアルミナNP(Inframat、26N-0811UPA)を、Dispermat CN-10実験室用高剪断分散機(BYK-Gardner USA(Columbia,Maryland))を使用して一緒に混合した。混合分散液を、MiniCer実験室用媒体ミル(Netzsch(Exton,Pennsylvania))にて、0.2mmのイットリウム安定化ジルコニア粉砕媒体を使用して8時間粉砕した。固形分含有量は、54.6重量%であった。アルファアルミナNP分散液をMEKで希釈して、所望の透過率を得た後、レーザー回折による粒径分析を、Horiba LA-950分析装置(堀場製作所(京都)から入手可能)で行った。中間及び平均粒径は、両方とも67nmであった。Dv90とは、累積90%の点の直径を意味し、この場合、80nmであった。
【0147】
配合物Aの調製
0.64gの光開始剤ESACURE ONE及び0.32gのTEG2100を34.80gのPUA9(MEK中80重量%)に添加し、続いて48gのエタノール及び6.0gの1-メトキシ-2-プロパノールで希釈することによって、配合物Aを調製した。得られた配合物Aは、固形分32.1重量%を有した。
【0148】
配合物Aを使用して、表6のコーティング配合物を作製した。表6では、SR611を、エタノール中で固形分32重量%まで希釈した。表6の配合物を、示された量の成分を室温で混合することによって作製した。12番ワイヤ巻きロッド(RD Specialtiesから入手可能、公称湿潤フィルム厚さ1.08ミル(27.4マイクロメートル))を使用して、配合物をAPFTフィルム上に手でコーティングした。コーティングされたPCフィルムを最初に室温で乾燥させ、次いで、オーブンにて80℃で1分間乾燥させた。乾燥した試料を、H型電球を装備したUV処理装置(500W、Heraeus Noblelight America/Fusion UV Systems(Gaithersburg,Maryland))を使用して、窒素パージ下50フィート/分(15.2m/分)で、100%の出力にて硬化させた。
【0149】
【0150】
配合物Bの調製
0.64gの光開始剤ESACURE ONE及び0.32gのTEG2100を34.80gのPUA15(MEK中80重量%)に添加し、続いて48gのエタノール及び6.0gの1-メトキシ-2-プロパノールで希釈することによって、配合物Bを調製した。得られた配合物Bは、固形分32.1重量%を有した。
【0151】
配合物Bを使用して、表7のコーティング配合物を作製した。表7では、SR611を、エタノール中で固形分32重量%まで希釈した。表7の配合物を、示された量の成分を室温で混合することによって作製した。12番ワイヤ巻きロッド(RD Specialtiesから入手可能、公称湿潤フィルム厚さ1.08mil(27.4マイクロメートル))を使用して、配合物をAPFTフィルム上に手でコーティングした。コーティングされたPCフィルムを最初に室温で乾燥させ、次いで、オーブンにて80℃で1分間、乾燥させた。乾燥した試料を、H型電球を装備したUV処理装置(500W、Heraeus Noblelight America/Fusion UV Systems(Gaithersburg,Maryland)から入手可能))を使用して、窒素パージ下50フィート/分(15.2m/分)で、100%の出力にて硬化させた。
【0152】
【0153】
実施例EX25~EX30に対応する調製例PE20~PE25の熱成形及びクラック試験結果を、以下の表8に示す。
【0154】
【0155】
実施例EX25~EX30のフィルムを使用して成形された6ベースレンズでの耐摩耗試験結果を、以下の表9に示す。
【0156】
【0157】
透過率試験
選択された試料でのブロック状態の透過率を、Lambda1050分光光度計(PerkinElmer(Waltham,MA)から入手可能)を使用して、波長の関数として垂直入射で測定した。550nmの波長で最小透過率をもたらすプレ偏光子の配向によって、ブロック状態を決定した。450nm~650nmの波長範囲にわたる平均(非加重平均)ブロック状態透過率を、決定した。実施例12の光学アセンブリについて、レンズの頂点でレンズに対する垂直入射光に対し、及び実施例12で使用したPE12の同じシートの一部分について、ブロック状態における透過率を測定した。平均透過率は、PE12のシートでは0.087%であり、実施例12では0.043%であった。実施例19の光学アセンブリについて、レンズの頂点でレンズに対する垂直入射光に対し、及び実施例19で使用したPE12の同じシートの一部分について、ブロック状態における透過率を測定した。平均透過率は、PE12のシートでは0.087%であり、実施例19では0.040%であった。
【0158】
ブロック状態の反射率は、吸収を無視することにより、100%から透過率を引き算したものとして推定することができる。これによると、試験した試料のそれぞれについて、450nm~650nmの波長範囲における平均反射率は99.9%超になる。
【0159】
接合試験1
多層光学フィルム反射偏光子(3M Company(St.Paul,MN)から入手可能な高度偏光フィルム(Advanced Polarizing film(APF)))を、米国特許第9,557,568号(Ouderkirkら)に概して記載されているように、8ベースレンズ形状に熱成形した。
【0160】
光学フィルムインサート成形を、8ベースレンズブランク射出成形型を使用して、Krauss Maffei 65トン射出成形機で行った。熱成形した光学フィルムを、射出成形ツールに適合するように正確サイズにトリミングし、次いで成形ツールの凸側に配置した。次に、99℃の成形ツールキャビティ内に、276℃の温度で射出された、PMMA成形材料(Optimas 7500,Mitsubishi Gas Chemical Company,Inc)を使用して、射出成形プロセスを実行した。得られた光学アセンブリは、総射出成形サイクル時間が66秒になった後、射出成形機から取り外された。熱成形及び成形プロセスの前後のフィルムの目視検査では、反射率の顕著な変化を示さなかった。
【0161】
クロスハッチテープ引張試験を使用して、レンズに対するフィルムの結合強度を試験した。これは、レンズ表面上のインサート成形フィルムにクロスハッチパターンで切り込みを入れ、切り込みの入ったクロスハッチフィルム表面上にテープを接着して、テープを表面から引き剥がすことによって行った。多層光学フィルムの一部がテープで除去されて、多層光学フィルムが分離され、別の部分がレンズ上に残ることが見出された。PMMA成形材料が、ポリカーボネートとコポリエステルとのブレンド(PC:coPET)であるAPFフィルムの外層に強く接合したと結論付けられた。比較のために、環状オレフィン樹脂を同様のプロセスで熱成形APFに射出成形し、上述のように接着性を試験した。レンズ上に光学フィルムを残さずに、APFがテープで完全に除去されたことが見出された。
【0162】
接合試験2
光学スタックは、米国特許第9,557,568号(Ouderkirkら)に概して記載されているように、8ベースレンズ形状に熱成形した。光学スタックは、APFの各主表面上に保護フィルムライナー(OCPET NSA33T、Sun A Kaken Co,Ltd)が配置された、多層光学フィルム反射偏光子(APF)であった。ライナーはAPFと位置合わせされ、APFの縁部を越えて延びていなかった。
【0163】
光学スタックインサート成形は、8ベースレンズブランク射出成形ツールを使用して、Krauss Maffei 65トン射出成形機で行った。熱成形した光学スタックを、射出成形ツールに適合するように正確なサイズにトリミングし、ライナーのうちの1つを除去した。次いで熱成形した光学スタックを、成形ツールの凸側上に配置し、残りのライナーを成形型キャビティの反対側を向けた。次に、82℃の成形ツールキャビティ内に、268℃の温度で射出された、PMMA成形材料(Optimas 7500、三菱ガス化学)を使用して、射出成形プロセスを実行した。得られた光学アセンブリは、総射出成形サイクル時間が66秒になった後、射出成形機から取り外された。
【0164】
レンズに対するフィルムの接合強度を、接合試験1と同様に試験した。多層光学フィルムの一部がテープで除去されて、多層光学フィルムが分離され、別の部分がレンズ上に残ることが見出された。
【0165】
リターダンス試験
射出成形によって作製されたレンズのリターダンスを判定するために、接合試験1に全般的に記載されているように光学フィルムなしでレンズを形成し、Axometrics AxoScan(商標)Mullerマトリクス偏光計(Axometrics,Inc.(Huntsville,AL)から入手可能)を使用して、リターダンスを測定した。レンズは、約2mmのほぼ一定の厚さ、36mmの曲率半径、及び70mmの直径を有した。極角と方位角との関数としてのnm単位のリターダンスを(レンズの頂点から測定した極角の球面座標を使用して)表10に示す。550nmの波長を使用し、その結果を20回のスキャンにわたって平均化した。結果の再現性を判定するために重複ポイントを測定した(例えば、48度の極角及び0度の方位角は、マイナス48度の極角及び180度の方位角に相当する)。リターダンスは、ゲート側(約-48度の偏光角及び約0度の方位角)からレンズの反対側への方向でより大きく変化し、直交方向ではあまり変化しなかった。リターダンスは、ゲート付近の小さい領域において10nmより高く、レンズの少なくとも80%にわたって10nm未満であった。アニール時間がより長くなると、ゲート付近のリターダンスを低下させ、それによってレンズ全体でリターダンスが10nm未満になると考えられる。
【0166】
【0167】
図中の要素の説明は、別段の指示がない限り、他の図中の対応する要素に等しく適用されるものと理解されたい。具体的な実施形態を本明細書において例示し記述したが、様々な代替及び/又は同等の実施により、図示及び記載した具体的な実施形態を、本開示の範囲を逸脱することなく置き換え可能であることが、当業者には理解されるであろう。本出願は、本明細書において説明した具体的な実施形態のあらゆる適合例又は変形例を包含することを意図する。したがって、本開示は、特許請求の範囲及びその同等物によってのみ限定されるものとする。
【0168】
前述の参照文献、特許、及び特許出願はいずれも一貫した方法でそれらの全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。組み込まれた参照文献の一部と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の記載における情報が優先するものとする。以下に例示的実施形態を示す。
[項目1]
光学スタック上に直接的にインサート成形された光学素子を含む光学アセンブリであって、前記光学スタックは、光学フィルム及びライナーを含み、前記光学フィルムは、前記光学素子と前記ライナーとの間に配置されており、
前記ライナーは、前記光学フィルムを実質的に損傷することなく、前記光学フィルムから除去可能であり、
前記光学フィルムは、前記ライナーに面し30マイクロメートル以下の平均厚さを有する、保護コーティングを含み、
前記保護コーティングは、少なくとも部分的に硬化された組成物を含み、前記組成物は、
a)成分a)~d)の総重量に基づいて70重量%~96重量%の、2~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含まない、成分a)~d)の総重量に基づいて2重量%~20重量%の、1~2の(メタ)アクリレート官能価を有する(メタ)アクリレートモノマー、
c)成分a)~d)の総重量に基づいて、任意選択の0.5重量%~2重量%のシリコーン(メタ)アクリレート、
d)任意選択の有効量の光開始剤、
e)任意選択の無機ナノ粒子、及び
f)任意選択の溶媒を含む、光学アセンブリ。
[項目2]
前記光学フィルムは、主に光干渉によって光を反射し又は透過する複数の交互ポリマー層を含み、前記光学フィルムの総面積の少なくとも80%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して約80%を超える反射率を有する、項目1に記載の光学アセンブリ。
[項目3]
前記光学フィルムの総面積の少なくとも80%にわたる各位置について、前記ライナーが除去される前後の前記位置における前記光学フィルムの反射率の差は、約5%未満である、項目1又は2に記載の光学アセンブリ。
[項目4]
前記光学素子の溶融温度は、前記光学フィルムのガラス転移温度よりも少なくとも50℃高い、項目1に記載の光学アセンブリ。
[項目5]
前記光学素子は、前記光学フィルム上に直接的にインサート成形され、前記光学フィルムは、前記光学素子に拡散接合されている、項目1に記載の光学アセンブリ。
[項目6]
前記光学素子は、第1の方向における最大横寸法に沿ってより大きく変化し、直交する第2の方向における最大横寸法に沿ってより小さく変化する光学リターダンスを有するレンズであって、前記レンズ上の各位置における前記光学リターダンスは、約10nm以下である、項目1に記載の光学アセンブリ。
[項目7]
光学アセンブリであって、
一体的に形成された多層光学フィルムと、
前記光学フィルム上に直接的に射出インサート成形された第1の光学素子であって、前記光学フィルムは、主に光干渉によって光を反射し又は透過する複数の交互ポリマー層を含み、前記光学フィルムの総面積の少なくとも80%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して約80%を超える反射率を有する、光学素子と、を含み、
前記第1の光学素子の溶融温度は、前記光学フィルムのガラス転移温度よりも実質的に高く、
前記光学フィルムは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、前記保護コーティングは、前記第1の光学素子の反対側を向いており、
前記保護コーティングは、少なくとも部分的に硬化された組成物を含み、前記組成物は、
a)成分a)~d)の総重量に基づいて70重量%~96重量%の、2~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含まない、成分a)~d)の総重量に基づいて2重量%~20重量%の、1~2の(メタ)アクリレート官能価を有する(メタ)アクリレートモノマー、
c)成分a)~d)の総重量に基づいて、任意選択の0.5重量%~2重量%のシリコーン(メタ)アクリレート、
d)任意選択の有効量の光開始剤、
e)任意選択の無機ナノ粒子、及び
f)任意選択の溶媒を含む、光学アセンブリ。
[項目8]
前記光学フィルムは、前記光学素子上に拡散接合されている、項目7に記載の光学アセンブリ。
[項目9]
光学アセンブリであって、
一体的に形成された多層光学フィルムであって、前記光学フィルムは、主に光干渉によって光を反射し又は透過する複数の交互ポリマー層を含み、前記光学フィルムの総面積の少なくとも90%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して約90%を超える反射率を有する、多層光学フィルムと、
前記光学フィルム上に直接的にインサート成形された光学素子であって、前記光学フィルムは、前記光学素子に拡散接合されている、光学素子と、を含み、前記光学フィルムは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、前記保護コーティングは、前記光学素子の反対側を向いており、
前記保護コーティングは、少なくとも部分的に硬化された組成物を含み、前記組成物は、
a)成分a)~d)の総重量に基づいて70重量%~96重量%の、2~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含まない、成分a)~d)の総重量に基づいて2重量%~20重量%の、1~2の(メタ)アクリレート官能価を有する(メタ)アクリレートモノマー、
c)成分a)~d)の総重量に基づいて、任意選択の0.5重量%~2重量%のシリコーン(メタ)アクリレート、
d)任意選択の有効量の光開始剤、
e)任意選択の無機ナノ粒子、及び
f)任意選択の溶媒を含む、光学アセンブリ。
[項目10]
光学アセンブリであって、
レンズと、
両側に第1の主表面及び第2の主表面を有する多層光学フィルムであって、前記第1の主表面は、前記レンズの第1の側の第1の部分上に配置されており、前記多層光学フィルムの総面積の少なくとも80%にわたる各位置は、同じ所定の波長及び同じ第1の偏光状態を有する垂直入射光に対して約80%を超える反射率を有する、多層光学フィルムと、を含み、
前記レンズの前記第1の側面の第2の部分は、前記多層光学フィルムの前記第2の主表面と実質的に同一平面にあり、
前記多層光学フィルムは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、前記保護コーティングは、前記レンズの反対側を向いており、
前記保護コーティングは、少なくとも部分的に硬化された組成物を含み、前記組成物は、
a)成分a)~d)の総重量に基づいて70重量%~96重量%の、2~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含まない、成分a)~d)の総重量に基づいて2重量%~20重量%の、1~2の(メタ)アクリレート官能価を有する(メタ)アクリレートモノマー、
c)成分a)~d)の総重量に基づいて、任意選択の0.5重量%~2重量%のシリコーン(メタ)アクリレート、
d)任意選択の有効量の光開始剤、
e)任意選択の無機ナノ粒子、及び
f)任意選択の溶媒を含む、光学アセンブリ。
[項目11]
光学アセンブリであって、
レンズと、
前記レンズの主表面上に配置された光学スタックと、を含み、
前記レンズは、前記光学スタックの縁部の周囲を少なくとも部分的に包み込み、
前記光学スタックは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、前記保護コーティングは、前記レンズの反対側を向いており、
前記保護コーティングは、少なくとも部分的に硬化された組成物を含み、前記組成物は、
a)成分a)~d)の総重量に基づいて70重量%~96重量%の、2~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含まない、成分a)~d)の総重量に基づいて2重量%~20重量%の、1~2の(メタ)アクリレート官能価を有する(メタ)アクリレートモノマー、
c)成分a)~d)の総重量に基づいて、任意選択の0.5重量%~2重量%のシリコーン(メタ)アクリレート、
d)任意選択の有効量の光開始剤、
e)任意選択の無機ナノ粒子、及び
f)任意選択の溶媒を含む、光学アセンブリ。
[項目12]
光学アセンブリであって、
湾曲した凹部をその中に画定する第1の主表面を有するレンズと、
前記湾曲した凹部に接着して適合する多層光学フィルムと、を含み、
前記多層光学フィルムは、30マイクロメートル以下の平均厚さを有する保護コーティングを含み、前記保護コーティングは、前記レンズの反対側を向いており、
前記保護コーティングは、少なくとも部分的に硬化された組成物を含み、前記組成物は、
a)成分a)~d)の総重量に基づいて70重量%~96重量%の、2~9.5の平均(メタ)アクリレート官能価を有するウレタン(メタ)アクリレート化合物、
b)ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含まない、成分a)~d)の総重量に基づいて2重量%~20重量%の、1~2の(メタ)アクリレート官能価を有する(メタ)アクリレートモノマー、
c)成分a)~d)の総重量に基づいて、任意選択の0.5重量%~2重量%のシリコーン(メタ)アクリレート、
d)任意選択の有効量の光開始剤、
e)任意選択の無機ナノ粒子、及び
f)任意選択の溶媒を含む、光学アセンブリ。
[項目13]
前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1100g/モル~2100g/モルの分子量、及び307g/当量~220g/当量のアクリレート当量を有する、項目1~12のいずれか一項に記載の光学アセンブリ。
[項目14]
前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1100g/モル~1300g/モルの分子量、及び307g/当量~275g/当量のアクリレート当量を有する、項目1~12のいずれか一項に記載の光学アセンブリ。
[項目15]
前記組成物は、80重量%~96重量%の前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物、及び2重量%~12.5重量%の前記(メタ)アクリレートモノマーを含み、前記ウレタン(メタ)アクリレート化合物の前記平均(メタ)アクリレート官能価は、2~4.8であり、前記保護コーティングは、最良適合球面の曲率半径58mm~76mm、及び前記保護コーティングの中心で前記保護コーティングに接する平面からの最大変位13~20mmを有する、項目1~12のいずれか一項に記載の光学アセンブリ。