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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】クラッチユニット
(51)【国際特許分類】
   F16D 41/10 20060101AFI20240507BHJP
   F16D 41/06 20060101ALI20240507BHJP
   F16D 41/067 20060101ALI20240507BHJP
   F16D 67/02 20060101ALI20240507BHJP
   F16D 65/16 20060101ALI20240507BHJP
   B60N 2/16 20060101ALI20240507BHJP
   B60N 2/90 20180101ALI20240507BHJP
   F16D 121/16 20120101ALN20240507BHJP
   F16D 127/10 20120101ALN20240507BHJP
   F16D 127/06 20120101ALN20240507BHJP
【FI】
F16D41/10
F16D41/06 Z
F16D41/067
F16D67/02 K
F16D65/16
B60N2/16
B60N2/90
F16D121:16
F16D127:10
F16D127:06
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021013325
(22)【出願日】2021-01-29
(65)【公開番号】P2022116904
(43)【公開日】2022-08-10
【審査請求日】2023-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】590001164
【氏名又は名称】アイシンシロキ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】三笠 訓寛
(72)【発明者】
【氏名】日比 康雅
(72)【発明者】
【氏名】笹沼 恭兵
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 謙悟
【審査官】中野 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-059596(JP,A)
【文献】国際公開第2019/230847(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 41/10
F16D 41/06
F16D 41/067
F16D 67/02
F16D 65/16
B60N 2/16
B60N 2/90
F16D 121/16
F16D 127/10
F16D 127/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートに用いられるクラッチユニットであって、
回転軸線回りに回転可能な操作レバーと、
前記回転軸線回りに回転可能であり、前記操作レバーに入力された操作力を車両用シートに出力する出力軸部材と、
前記操作レバーの回転とともに回転する操作部材と、
前記操作部材によって駆動される入力側クラッチと、
前記入力側クラッチの回転トルクを前記出力軸部材に伝達し、前記出力軸部材から前記入力側クラッチへの回転トルクの伝達を抑制する出力側クラッチと、
少なくとも前記入力側クラッチを収容する有底円筒状のハウジングと、を有し、
前記入力側クラッチは、
前記回転軸線回りに回転する入力側内輪部材と、
前記回転軸線回りに回転する入力側外輪部材と、
前記入力側内輪部材と前記入力側外輪部材との間に回転可能に設けられ、前記入力側外輪部材と前記入力側内輪部材との間で回転トルクを伝達する入力側中間伝達部材と、
前記操作部材と締結され、前記操作部材とともに前記回転軸線回りに回転する操作ブラケットと、を有し、
前記操作ブラケットは、
前記入力側内輪部材または前記入力側外輪部材と係合する係合部と、
前記ハウジングの底面と隙間を隔てて向かい合う対向部と、
前記対向部から前記操作部材に向かって延びて、前記ハウジングの前記底面に設けられた貫通孔を貫通して前記操作部材と締結される締結部と、
前記対向部から前記ハウジングの前記底面に向かって延びて、前記ハウジングの前記底面に摺接する摺接部と、を有し、
前記摺接部は、前記回転軸線の径方向の外側に延出する摺接面を有し、
前記操作レバーを最大可動範囲まで回動させた状態において、前記摺接面の一部が前記ハウジングの前記底面に形成された前記貫通孔と重なっている、クラッチユニット。
【請求項2】
前記摺接部は、前記対向部における前記回転軸線の径方向の外端部から前記ハウジングの前記底面側に延びている、請求項1に記載のクラッチユニット。
【請求項3】
前記摺接面は、前記貫通孔よりも径方向の外側で前記ハウジングの前記底面と摺接する、請求項に記載のクラッチユニット。
【請求項4】
複数の前記摺接部は、前記回転軸線の周方向に等間隔で設けられている、請求項1に記載のクラッチユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1などにより、クラッチユニットが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-69852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のクラッチユニットにおいては、インナ側操作ブラケットの締結部をハウジングの通し孔に貫通させ、アウタ側操作ブラケットに締結している。しかしこのような構成では、ハウジングと対向するインナ側操作ブラケットの対面部がハウジングと摺接しているため、接触面積が大きく、摺動抵抗が大きい。
【0005】
そこで本発明は、操作ブラケットとハウジングとの間の摺動抵抗の小さいクラッチユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかるクラッチユニットは、
車両用シートに用いられるクラッチユニットであって、
回転軸線回りに回転可能な操作レバーと、
前記回転軸線回りに回転可能であり、前記操作レバーに入力された操作力を車両用シートに出力する出力軸部材と、
前記操作レバーの回転とともに回転する操作部材と、
前記操作部材によって駆動される入力側クラッチと、
前記入力側クラッチの回転トルクを前記出力軸部材に伝達し、前記出力軸部材から前記入力側クラッチへの回転トルクの伝達を抑制する出力側クラッチと、
少なくとも前記入力側クラッチを収容する有底円筒状のハウジングと、を有し、
前記入力側クラッチは、
前記回転軸線回りに回転する入力側内輪部材と、
前記回転軸線回りに回転する入力側外輪部材と、
前記入力側内輪部材と前記入力側外輪部材との間に回転可能に設けられ、前記入力側外輪部材と前記入力側内輪部材との間で回転トルクを伝達する入力側中間伝達部材と、
前記操作部材と締結され、前記操作部材とともに前記回転軸線回りに回転する操作ブラケットと、を有し、
前記操作ブラケットは、
前記入力側内輪部材または前記入力側外輪部材と係合する係合部と、
前記ハウジングの底面と隙間を隔てて向かい合う対向部と、
前記対向部から前記操作部材に向かって延びて、前記ハウジングの前記底面に設けられた貫通孔を貫通して前記操作部材と締結される締結部と、
前記対向部から前記ハウジングの前記底面に向かって延びて、前記ハウジングの前記底面に摺接する摺接部と、を有する、クラッチユニット。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るクラッチユニットにおいて、操作ブラケットのうち、対向部はハウジングの底面と隙間を隔てて向かい合っているので、対向部は操作ブラケットとハウジングとの間の摩擦に寄与しない。この対向部から出力側クラッチ側に延びる締結部と摺動部のうち、締結部はハウジングの貫通孔を貫通しているので、この締結部も操作ブラケットとハウジングとの間の摩擦に寄与しない。摺動部のみがハウジングの底面と摺接するように構成されているため、ハウジングと操作ブラケットとの間の摺動抵抗が抑えられている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係るクラッチユニットを車両用シートリフタに適用した状態を示す側面図である。
図2】クラッチユニットの分解斜視図である。
図3】中立状態における入力側クラッチを示す図である。
図4】中立状態における出力側クラッチを示す図である。
図5】操作ブラケットを操作レバー側から見た図である。
図6】操作ブラケットを図5のVI方向から見た図である。
図7】クラッチユニットの断面図である。
図8】操作板、ハウジング、操作ブラケットの重なりを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係るクラッチユニットの実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
【0010】
図1は、本実施形態に係るクラッチユニットを車両用シートリフタに適用した状態を示す側面図である。図1に示すように、本実施形態に係るクラッチユニット100は、車両用シート40に用いられる。車両用シート40は、着座シート40aと、背もたれ40bと、シートフレーム40cと、を有している。クラッチユニット100は、着座シート40aのシートフレーム40cに固定される。車両用シート40には、車両用シートリフタ41が搭載されている。車両用シートリフタ41は、クラッチユニット100を備えている。
【0011】
車両用シートリフタ41は、セクターギヤ41fと、リンク機構と、を備えている。クラッチユニット100は、正逆に回転操作される操作レバー21を備えている。この操作レバー21によって正逆に回転駆動される出力軸部材30と一体のピニオンギヤ31が、車両用シートリフタ41のセクターギヤ41fと噛み合っている。
【0012】
リンク機構は、略上下方向に延びる第一リンク部材41cと、略上下方向に延びる第二リンク部材41dと、略横方向に延びる第三リンク部材41eと、を備えている。
【0013】
第一リンク部材41cの上部と第二リンク部材41dの上部は、それぞれシートフレーム40cにそれぞれ軸部材41c1,41d1で回転自在に連結されている。第一リンク部材41cの下部と第二リンク部材41dの下部は、それぞれシートスライドアジャスタ41bのスライド可動部材41b1にそれぞれ軸部材41c2,41d2で回転自在に連結されている。
【0014】
第三リンク部材41eの一端は、軸部材41c1よりも上方で軸部材41e1により第一リンク部材41cに連結されている。第三リンク部材41eの他端は、セクターギヤ41fに軸部材41e2で回転自在に連結されている。
【0015】
図1において、操作レバー21を反時計方向(上側)に回転させると、その回転方向の入力トルク(回転力)がピニオンギヤ31に伝達され、ピニオンギヤ31が反時計方向に回転する。すると、ピニオンギヤ31と噛合するセクターギヤ41fが時計方向に回転して、第三リンク部材41eが第一リンク部材41cの上部を上方に引っ張る。その結果、第一リンク部材41cと第二リンク部材41dが共に起立して、着座シート40aの座面が高くなる。着座シート40aの高さHを調整した後、操作レバー21に入力していた力を開放すると、操作レバー21が時計方向に回転して元の位置(以降の説明において、中立位置または中立状態と呼ぶ)に戻る。
【0016】
また、操作レバー21を時計方向(下側)に回転させた場合は、上記とは逆の動作によって、着座シート40aの座面が低くなる。また、高さ調整後に操作レバー21を開放すると、操作レバー21が反時計方向に回転して元の位置(中立位置、中立状態)に戻る。
そして、操作レバー21を開放した状態では、クラッチユニット100によって出力軸部材30(ピニオンギヤ31)の回転にブレーキが掛けられる。このため、着座シート40aに上下方向の力が加わっても着座シート40aの上下方向への移動が阻止される。
【0017】
<クラッチユニット>
次に、本実施形態に係るクラッチユニット100を説明する。以下に説明するクラッチユニット100の構成部品は、特に断らない限り基本的に金属製である。
【0018】
図2は、クラッチユニット100の分解斜視図である。図2に示すように、クラッチユニット100は、操作レバー21と、出力軸部材30と、入力側クラッチ50と、出力側クラッチ60と、ハウジング11と、を備えている。
【0019】
入力側クラッチ50は、操作レバー21によって駆動(作動)して、操作レバー21の回転を出力軸部材30に伝達する。出力側クラッチ60は、着座シート40aに上下方向の力が加わっても出力軸部材30の回転を阻止する。入力側クラッチ50と出力側クラッチ60は、ハウジング11に収容されている。ハウジング11は、操作レバー21の動作時に回転しない部材である。
【0020】
出力軸部材30は、図2の左下から右上に延びる軸部材である。出力軸部材30は、図2における左下から右上に延びる回転軸線X回りに回転可能である。以降の説明において、「回転軸線X方向」とは出力軸部材30の延びる方向を意味する。図2に示したように、出力軸部材30は、図2の左方から右方に向かって、出力側クラッチ60と入力側クラッチ50とをこの順に貫通している。以降の説明において、図2における左下側を出力側、図2における右上側を入力側と呼ぶことがある。また、以降の説明において特に断りがない限り、周方向や径方向とは、この回転軸線Xを中心として定義している。
【0021】
出力軸部材30には、ピニオンギヤ31と、大径円柱部32と、スプライン部33と、小径円柱部34とが、出力側から入力側に向かってこの順に設けられている。
【0022】
ピニオンギヤ31は、出力軸部材30の出力側の端部に設けられている。大径円柱部32は、後述する出力側クラッチ60のカバー部材14に固定されるメタルブッシュ13を貫通している。小径円柱部34は、後述する入力側クラッチ50の入力側内輪部材51および入力側外輪部材52と、ハウジング11とを貫通している。スプライン部33は、後述する出力側クラッチ60の出力側内輪部材61にスプライン結合されている。
【0023】
出力軸部材30の小径円柱部34には、ストッパリング36が装着されている。ストッパリング36は、円筒状の嵌合部36aと、嵌合部36aよりも出力側に位置する円板状のフランジ部36bとを有している。嵌合部36aに出力軸部材30の小径円柱部34が嵌め込まれる。フランジ部36bは、後述する操作板22、ハウジング11、入力側クラッチ50、および出力側クラッチ60が出力軸部材30から抜け出ることを防止する。
【0024】
ハウジング11は、カップ状(有底円筒状)の部材であり、底面11aと筒状部11bとを有している。筒状部11bの出力側の端部に、径方向に突出する2個の固定フランジ11cが形成されている。固定フランジ11cには、固定ボルト挿通孔11dが設けられている。この固定ボルト挿通孔11dに挿し込んだボルト(図示略)をシートフレーム40cのネジ孔にねじ込むことで、ハウジング11がシートフレーム40cに固定される。なお、ハウジング11にかしめ部を設けて、該かしめ部をシートフレーム40cにかしめることで、ハウジング11をシートフレーム40cに固定してもよい。
カップ状のハウジング11の開口はカバー部材14によって閉塞されている。本実施形態において、ハウジング11とカバー部材とによって形成される空間内には、入力側クラッチ50と、出力側クラッチ60とが収容されている。
【0025】
ハウジング11には、バネ係止片11kが設けられている。バネ係止片11kは、入力側へ延びている。
【0026】
底面11aの径方向における中心部には、バーリング加工によって、筒状の軸受11gが形成されている。軸受11gは、底面11aから入力側に向かって延びている。軸受11gは出力軸部材30をハウジング11に対して回転可能に支持している。また、底面11aには、円弧状の長孔からなる3つの窓部11hと、この窓部11hの縁部から出力側に向かって延びる3つの突出片11iとが形成されている。
【0027】
操作レバー21は、例えば、合成樹脂から成形されたもので、後述する操作板22に固定されている。操作レバー21は、操作板22に固定される固定部21aと、固定部21aから径方向における外方へ延びる棒状の把持部21bと、を有している。
【0028】
操作板22は、回転軸線X方向において、ハウジング11と操作レバー21の間に設けられている。操作板22は、操作者が操作レバー21の把持部21bを把持して操作レバー21を回転軸線Xの回りに正逆に回転操作すると、操作レバー21と一体に正逆に回転する。
【0029】
操作板22は、径方向における中央に挿通孔22aを有している。この挿通孔22aには、出力軸部材30の小径円柱部34が挿通されている。また、操作板22は、挿通孔22aの周りに、矩形状の3つの係合孔22bを有している。係合孔22bには後述する操作ブラケット54の爪部54cが挿入され、操作レバー21は操作板22を介して操作ブラケット54とともに回転する。
【0030】
操作板22の外周縁には、操作片部22dが設けられている。操作片部22dは出力側に向かって延びている。
【0031】
ハウジング11の外周には、戻しばね23が設けられている。戻しばね23は、操作レバー21に操作力が加わらないときに、操作レバー21および操作板22を中立位置に復帰させるばねである。戻しばね23は、例えば両自由端部23aを互いに接近させた円弧状をなすつるまきばねである。戻しばね23の両自由端部23aは、ハウジング11のバネ係止片11kと操作板22の操作片部22dとに係止されている。
【0032】
操作者が操作レバー21に操作力を加えない状態(中立状態)では、戻しばね23の一対の自由端部23aが共にバネ係止片11kおよび操作片部22dに当接しており、操作レバー21が中立位置に支持されている。操作者が操作レバー21を回転軸線Xの回りに正逆のいずれかに回転させると、操作レバー21と共に操作板22がハウジング11に対して回転する。すると、一対の自由端部23aのうちの一方の自由端部23aがハウジング11のバネ係止片11kとの係合状態を維持し、他方の自由端部23aが操作板22の操作片部22dに係合し、戻しばね23の弾性復元力に抗して一方の自由端部23aから離反する方向に移動する。したがって、戻しばね23が撓んで中立位置への復帰力が作用した状態となる。
【0033】
<入力側クラッチ>
入力側クラッチ50は、入力側内輪部材51と、入力側外輪部材52と、操作ブラケット54(操作部材の一例)と、入力側クラッチコロ55(入力側伝達部材の一例)と、入力側コロ付勢バネ56を備えている。
【0034】
入力側内輪部材51は、回転軸線X方向に延びる円柱状の部材である。入力側内輪部材51は、中心に出力軸部材30の小径円柱部34が挿通される挿通孔51aを有している。
入力側内輪部材51の外周縁には、外方へ膨出する3つの楔カム部51cが等間隔に設けられている。入力側内輪部材51の入力側の面には、3つの突起部51bが形成されている。
【0035】
操作ブラケット54は、板状の部材である。操作ブラケット54は、径方向における中心に出力軸部材30の小径円柱部34が挿通される挿通孔54aを有している。また、操作ブラケット54は、入力側内輪部材51の突起部51bが嵌合される3つの嵌合孔54b(図2参照)を有している。入力側内輪部材51の突起部51bと嵌合孔54bとの嵌合構造によって、それぞれ別体の入力側内輪部材51と操作ブラケット54とは、互いに一体的に回転するように、かつ、回転軸線X方向に相対移動可能に連結されている。
【0036】
操作ブラケット54の外周縁には、3つの爪部54cが設けられている。これらの爪部54cは、ハウジング11の底面11aに形成された窓部11hを貫通し、操作板22の係合孔22bに嵌合されている。これにより、操作ブラケット54は、操作板22と連結されて操作板22と一体的に回転するように構成されている。
【0037】
入力側外輪部材52は皿状の部材である。入力側外輪部材52は、底部52bと、外輪部52cと、固定部52dと、を有している。底部52bは、円板状の部位である。底部52bの径方向における中心に出力軸部材30の小径円柱部34が挿通される挿通孔52aが設けられている。外輪部52cは、底部52bの外縁部から入力側へ延びる円筒状の部位である。外輪部52cの出力側の端部に底部52bが設けられている。固定部52dは、底部52bから出力側へ突出する突起である。固定部52dは、後述する出力側クラッチ60の解除ブラケット64と結合する。
【0038】
図3は、中立状態における入力側クラッチ50を示している。
図3に示すように、入力側外輪部材52の内周面と入力側内輪部材51の外周面との間には、隙間が設けられている。入力側外輪部材52の内周面は円周面である一方で、入力側内輪部材51の外周面には外方へ膨出する3つの楔カム部51cが設けられている。このため、入力側外輪部材52の内周面と入力側内輪部材51の外周面との間の隙間には、
径方向の両端が楔状に先細りになった部分が形成されている。この隙間に、ハウジング11の突出片11iが突出している。操作レバー21によって入力側内輪部材51が回転されると、突出片11iが入力側クラッチコロ55の動きを規制する。
【0039】
入力側クラッチ50は、6個の入力側クラッチコロ55と、3個の入力側コロ付勢バネ56と、を有している。入力側クラッチコロ55および入力側コロ付勢バネ56は、入力側内輪部材51の外周面と、入力側外輪部材52の外輪部52cの内周面との間に配置されている。
【0040】
入力側コロ付勢バネ56は、周方向について、入力側内輪部材51の楔カム部51c同士の間に配置されている。また、入力側クラッチコロ55は、入力側内輪部材51の楔カム部51cの両側に一対ずつ配置されている。一対の入力側クラッチコロ55の間に、ハウジング11の突出片11iが配置されている。つまり入力側内輪部材51と入力側外輪部材52との間の隙間には、反時計回りに、入力側コロ付勢バネ56、入力側クラッチコロ55、突出片11i、入力側クラッチコロ55がこの順に設けられている。
【0041】
<入力側クラッチの動作>
図3に示すように、中立状態において、入力側クラッチ50では、入力側クラッチコロ55が入力側コロ付勢バネ56に接触しており、入力側クラッチコロ55が入力側コロ付勢バネ56によって楔カム部51cの頂部へ向かって付勢されている。このため、中立状態において、入力側クラッチコロ55が入力側内輪部材51と入力側外輪部材52とに食い込んでいる。
【0042】
この中立状態において、例えば操作レバー21が中立位置(無負荷状態の操作レバー21の位置)から操作者が操作レバー21を反時計方向に回転させようとすると、操作レバー21の回転が、操作板22および操作ブラケット54を介して入力側内輪部材51に伝達される。つまり、操作レバー21とともに入力側内輪部材51が反時計方向に回転しようとする。
【0043】
入力側内輪部材51と入力側外輪部材52との間の、時計方向に向かって幅狭となった楔状空間に、入力側クラッチコロ55が設けられている。入力側内輪部材51が反時計方向に回転しようとすると、入力側内輪部材51の外周面は、入力側クラッチコロ55を時計方向に向かって幅狭となった楔状空間に食い込ませようとする力を作用させる。このような力を受けると入力側クラッチコロ55は、入力側外輪部材52の内周面に、径方向の外側に押し付ける成分と反時計方向に押し付ける成分を有する力を作用させる。入力側クラッチコロ55は、入力側外輪部材52に反時計方向に押す力を作用させる。このようにして、入力側内輪部材51が反時計方向に回転すると、入力側クラッチコロ55とともに入力側外輪部材52が反時計方向に回転する。
【0044】
<出力側クラッチ>
図2に戻り、出力側クラッチ60は、出力側内輪部材61と、出力側外輪部材62と、解除ブラケット64と、出力側クラッチコロ65と、出力側コロ付勢バネ66と、を備えている。
【0045】
出力側外輪部材62は、略円筒状の部材である。出力側外輪部材62は、出力軸部材30と同軸に設けられ、出力側内輪部材61に対して相対回転可能である。出力側外輪部材62は、出力側内輪部材61の外周側に配置されている。
【0046】
出力側内輪部材61は、出力軸部材30と同軸に設けられ、出力軸部材30と一体に回転する。出力側内輪部材61は、出力側外輪部材62よりも小径の部材である。
【0047】
出力側内輪部材61の内周面には複数の溝部が設けられ、出力軸部材30のスプライン部33が結合されるスプライン部61aとされている。出力側内輪部材61の入力側の面には、6つの突起部61bが形成されている(図4参照)。なお、図2では突起部61bをプレス加工で形成した時の痕跡である凹みが出力側の面に見えている。出力側内輪部材61の外周部には、外方へ膨出する6つの楔カム部61cが等間隔に形成されている。
【0048】
解除ブラケット64は、略円板状の部材であり、出力側内輪部材61よりも入力側に配置されている。解除ブラケット64は、入力側クラッチ50から付与される力を出力側クラッチコロ65に伝達可能である。解除ブラケット64の外径は、出力側内輪部材61の外径より大きく、かつ、出力側外輪部材62の内径よりも小さく形成されている。解除ブラケット64は、出力側内輪部材61、出力側外輪部材62、入力側内輪部材51、および入力側外輪部材52とは別体の部材である。
【0049】
解除ブラケット64には、複数の第一係合穴64aが形成されている。第一係合穴64aには、入力側外輪部材52の固定部52dが挿入される。これにより、解除ブラケット64は、入力側外輪部材52と共に回転可能とされている。
【0050】
出力側内輪部材61には入力側へ突出する突起部61b(図4参照)が設けられている。解除ブラケット64は、これらの突起部61bがそれぞれ挿入される複数の長孔64bを有している。これらの長孔64bは、それぞれ周方向に延びる長孔である。この長孔64b内で突起部61bが周方向へ僅かに変位可能とされている。つまり、解除ブラケット64と出力側内輪部材61とは、長孔64b内で突起部61bが変位する範囲で相対的に回転可能とされている。
【0051】
解除ブラケット64の外周縁には、出力側に向かって延びる6つの爪部64cが設けられている。爪部64cは一対の出力側クラッチコロ65の間に設けられている。
【0052】
図4は、中立状態における出力側クラッチ60を示している。図4に示すように、出力側外輪部材62の内周面と出力側内輪部材61の外周面との間には、隙間が設けられている。出力側外輪部材62の内周面は円周面である一方で、出力側内輪部材61の外周面には外方へ膨出する楔カム部61cが設けられている。このため、出力側外輪部材62の内周面と出力側内輪部材61の外周面との間の隙間には、径方向の両端が楔状に先細りになった部分が形成されている。これらの部分の隙間に、解除ブラケット64の爪部64cが突出している。解除ブラケット64が回転されると、爪部64cが隙間の内部を移動する。
【0053】
出力側クラッチ60は、12個の出力側クラッチコロ65と、6個の出力側コロ付勢バネ66と、を有している。出力側クラッチコロ65および出力側コロ付勢バネ66は、出力側内輪部材61の外周面と、出力側外輪部材62の内周面との間の隙間に配置されている。出力側クラッチコロ65は、出力側内輪部材61の外周面と出力側外輪部材62の内周面との間に配置されて、出力側内輪部材61と出力側外輪部材62との間で回転力を伝達可能な部材である。円柱状の出力側クラッチコロ65の周面は、解除ブラケット64の爪部64cに当接する。
【0054】
出力側コロ付勢バネ66は、周方向について、出力側内輪部材61の楔カム部61c同士の間に配置されている。また、出力側クラッチコロ65は、出力側内輪部材61の楔カム部61cの両側に一対ずつ配置されている。これらの一対の出力側クラッチコロ65の間に、解除ブラケット64の爪部64cが配置されている。これらの出力側クラッチコロ65は、出力側コロ付勢バネ66によって楔カム部61cの頂部へ向かって付勢されている。出力側内輪部材61と出力側外輪部材62との間の隙間には、反時計回りに、爪部64c、出力側クラッチコロ65、出力側コロ付勢バネ66、出力側クラッチコロ65がこの順で設けられている。
【0055】
<出力側クラッチの動作>
図4は、中立状態における出力側クラッチ60を示している。図4に示すように、中立状態において、出力側クラッチ60では、出力側クラッチコロ65が出力側コロ付勢バネ66によって楔カム部61cの頂部へ向かって付勢されている。これにより、出力側クラッチコロ65が、出力側内輪部材61における楔カム部61cと出力側外輪部材62の内周面との間の楔状の隙間に食い込んでいる。
【0056】
より具体的に、第一出力側クラッチコロ65aと、第一出力側クラッチコロ65aと出力側コロ付勢バネ66を介して時計側に位置する第二出力側クラッチコロ65bを用いて説明する。
第一出力側クラッチコロ65aが位置している隙間は、反時計方向に向かって先細りの楔形状である。第一出力側クラッチコロ65aは、出力側コロ付勢バネ66によって反時計方向に付勢されている。このため、第一出力側クラッチコロ65aは、反時計方向に出力側内輪部材61と出力側外輪部材62とに食い込んでいる。
第二出力側クラッチコロ65bが位置している隙間は、時計方向に向かって先細りの楔形状である。第二出力側クラッチコロ65bは、出力側コロ付勢バネ66によって時計方向に付勢されている。このため、第二出力側クラッチコロ65bは、時計方向に出力側内輪部材61と出力側外輪部材62とに食い込んでいる。
【0057】
ここで出力側外輪部材62は、ハウジング11に対して移動不可能である。また、第一出力側クラッチコロ65aおよび第二出力側クラッチコロ65bは、出力側内輪部材61と出力側外輪部材62の両者に反時計方向および時計方向に食い込んでいる。このため、出力側内輪部材61および出力側外輪部材62は回転できない。この結果、出力側内輪部材61にスプライン結合されている出力軸部材30も回転できない。
【0058】
このように、中立状態では、出力側内輪部材61と出力側外輪部材62とが、回転不能な状態とされているので、車両用シート40側から出力軸部材30に回転力が付与されても出力軸部材30は回転することがない。これにより、車両用シート40は、その高さが保持された状態で固定される。
【0059】
次に出力側クラッチ60が出力軸部材30を回転させる場合を説明する。
操作レバー21が反時計方向に回転されると、上述したように入力側クラッチ50の入力側外輪部材52が反時計方向に回転する。入力側外輪部材52は解除ブラケット64とスプライン結合されている。このため、操作レバー21が反時計方向に回転されると、解除ブラケット64も反時計方向に回転する。
【0060】
解除ブラケット64は、長孔64bを介して出力側内輪部材61の突起部61bと結合されている。このため、解除ブラケット64は、(1)まず出力側内輪部材61が回転しない状態で反時計方向に回転し、(2)突起部61bが長孔64bの縁に当接した後に出力側内輪部材61とともに反時計方向に回転する。
【0061】
(1)出力側内輪部材61が回転しない状態で解除ブラケット64が反時計方向に回転すると、解除ブラケット64の爪部64cが出力側クラッチコロ65を反時計方向に押す。すると、出力側内輪部材61と出力側外輪部材62との間の時計方向に幅狭となる楔状空間に食い込んでいた出力側クラッチコロ65の出力側内輪部材61と出力側外輪部材62との当接状態が解除される。
また、出力側内輪部材61が反時計方向に回転しようとすると、出力側内輪部材61と出力側外輪部材62との間の反時計方向に幅狭となる楔状空間に食い込んでいた出力側クラッチコロ65は、出力側内輪部材61との間の摩擦力が作用しなくなり、出力側内輪部材61との当接状態が解除される。
このように、出力側クラッチコロ65の出力側内輪部材61と出力側外輪部材62との当接状態が解除された状態では、出力側内輪部材61は出力側外輪部材62に対して相対回転可能になる。
【0062】
出力側内輪部材61が出力側外輪部材62に対して相対回転可能な状態になった後、(2)出力側内輪部材61の突起部61bが解除ブラケット64の長孔64bの縁に当接する。すると、解除ブラケット64とともに出力側内輪部材61が反時計方向に回転する。
【0063】
このように出力側クラッチ60は、中立状態で操作レバー21に操作力が作用しない状態では出力軸部材30を回転させず、操作レバー21に操作力が作用した状態でのみ出力軸部材30を回転させるように構成されている。
【0064】
上述したように、本実施形態のクラッチユニット100は、
車両用シート40に用いられるクラッチユニット100であって、
回転軸線X回りに回転可能な操作レバー21と、
回転軸線X回りに回転可能であり、操作レバー21に入力された操作力を車両用シート40に出力する出力軸部材30と、
操作レバー21の回転とともに回転する操作板22(操作部材)と、
操作板22によって駆動される入力側クラッチ50と、
入力側クラッチ50の回転トルクを出力軸部材30に伝達し、出力軸部材30から入力側クラッチ50への回転トルクの伝達を抑制する出力側クラッチ60と、
少なくとも入力側クラッチ50を収容する有底円筒状のハウジング11と、を有する。
入力側クラッチ50は、
回転軸線X回りに回転する入力側内輪部材51と、
回転軸線X回りに回転する入力側外輪部材52と、
入力側内輪部材51と入力側外輪部材52との間に回転可能に設けられ、入力側外輪部材52と入力側内輪部材51との間で回転トルクを伝達する入力側クラッチコロ55(入力側中間伝達部材)と、
操作板22と締結され、操作板22とともに回転軸線X回りに回転する操作ブラケット54と、を有する。
【0065】
<操作ブラケット54、操作板22、ハウジング11>
図5は、操作ブラケット54を操作レバー21側から見た図である。図6は、操作ブラケット54を図5のVI方向から見た図である。
前述したように、操作ブラケット54は、板状の部材である。操作ブラケット54は、径方向における中心に出力軸部材30の小径円柱部34が挿通される挿通孔54aを有している。また、操作ブラケット54は、入力側内輪部材51の突起部が嵌合される3つの嵌合孔54b(係合部)を有している。入力側内輪部材51の突起部51bと嵌合孔54bとの嵌合構造によって、それぞれ別体の入力側内輪部材51と操作ブラケット54とは、互いに一体的に回転するように、かつ、回転軸線X方向に相対移動可能に連結されている。
【0066】
操作ブラケット54の外周縁には、3つの爪部54c(締結部)が設けられている。これらの爪部54cは、ハウジング11の底面11aに形成された窓部11hを貫通し、操作板22の係合孔22bに嵌合されている。これにより、操作ブラケット54は、操作板22と連結されて操作板22と一体的に回転するように構成されている。
【0067】
さらに操作ブラケット54は、対向部54dと、摺接部54eを有している。
対向部54dは、回転軸線Xの径方向に延びる板状の部位である。この対向部54dに嵌合孔54bが設けられている。対向部54dの径方向の外縁に爪部54cと摺接部54eが設けられている。図示の例では、3つの爪部54cおよび3つの摺接部54eが操作ブラケット54に設けられている。
図6に示すように爪部54cは、対向部54dの外縁から入力側に向かって延びている。図示の例では、爪部54cの先端は二股形状とされており、それらの先端は互いに離間する方向に延びている。
摺接部54eは対向部54dの外縁から入力側に向かって延び、その先で回転軸線Xの径方向に延びている。回転軸線X方向において、摺接部54eの先端部は対向部54dよりも入力側に位置している。
【0068】
図7は、クラッチユニット100の断面図である。図7に示したように、対向部54dは、ハウジング11の底面11aと隙間を隔てて向かい合っている。爪部54cは、対向部54dから操作レバー21に向かって延びて、ハウジング11の底面11aに設けられた窓部11h(貫通孔)を貫通して操作板22と締結されている。摺接部54eは、対向部54dからハウジング11の底面11aに向かって延びて、ハウジング11の底面11aに摺接している。
【0069】
このように本実施形態のクラッチユニット100によれば、操作ブラケット54のうち、対向部54dはハウジング11の底面11aと隙間を隔てて向かい合っているので、対向部54dは操作ブラケット54とハウジング11との間の摩擦に寄与しない。この対向部54dから操作レバー21側に延びる爪部54c(締結部)と摺接部54eのうち、爪部54cはハウジング11の窓部11h(貫通孔)を貫通しているので、この爪部54cも操作ブラケット54とハウジング11との間の摩擦に寄与しない。摺接部54eのみがハウジング11の底面11aと摺接するように構成されているため、ハウジング11と操作ブラケット54との間の摺動抵抗が抑えられている。
【0070】
本実施形態のクラッチユニット100において、摺接部54eは、対向部54dにおける回転軸線Xの径方向の外端部から操作レバー21側に延びている。
回転軸線Xから離れた位置に摺接部54eが設けられているため、操作レバー21をこじるような力が摺接部54eに作用したとき、摺接部54eに作用する荷重を低減することができる。
【0071】
図5に示したように、本実施形態のクラッチユニット100において、
摺接部54eは、回転軸線Xの径方向の外側に延出する摺接面部54fを有する。
図示の例では、摺接部54eは、摺接面部54fと、摺接面部54fと対向部54dとを接続する接続部54gとを有している。摺接面部54fは対向部54dよりも回転軸線X方向において操作レバー21側に位置している。摺接面部54fの操作レバー21側の面がハウジング11の底面11aに摺接する。
図8は、操作板22、ハウジング11、操作ブラケット54の重なりを示す図である。図8では、操作レバー21を最大可動範囲まで回転させた状態における3部材の重なり具合を示している。図8に示したように、摺接面部54fの一部54f1が、ハウジング11の底面11aに形成された窓部11hと重なっている。
【0072】
本実施形態のクラッチユニット100によれば、操作レバー21を最大可動範囲まで回動させた状態において摺接面部54fの一部54f1のみが窓部11hと重なっており、摺接面部54fの他の部分54f2は窓部11hと重ならずハウジング11の底面11aと重なっている。このハウジング11の底面11aと重なった部位54f2によって、摺接部54eが窓部11hから脱落することが防止されている。
また、図8に示した状態から操作レバー21から手を離し初期位置まで戻ると、窓部11hと重なっていた摺接面部54fの一部54f1は底面11aと摺接するようになる。本実施形態とは異なり、操作レバーを初期位置から最大可動範囲まで回転させる間中、常に、貫通孔に重ならない位置にのみ摺接面を設ける場合(窓部に摺接面部の一部を重ねるという技術思想がない場合)には、摺接面を小さくする、ハウジングを大きくする、窓部を小さくする、操作ブラケットの可動範囲を小さくする(摺接面部が各窓部の間でのみ回転)といった設計上の制約が生じる。このような場合はクラッチユニットが大型化したり、操作レバーの操作角が小さくなってしまうといった不都合が生じる。本実施形態のクラッチユニット100によれば、窓部11hと重なる位置にも摺接面部54f(54f1)が設けられているため、クラッチユニット100の大型化を抑制でき、また、大きな操作角を確保できている。
【0073】
また本実施形態のクラッチユニット100において、摺接面部54fは、窓部11hよりも径方向の外側でハウジング11の底面11aと摺接している。図示の例では、摺接面部54fは、部分54f1,54f2よりも径方向の外側に窓部11hよりも径方向の外側の部位54f3を有している。
部位54f3によって、回転軸線Xから遠い位置で摺接面部54fとハウジング11の底面11aとが接することができるため、操作レバー21の操作時に両者の接触面に作用する力を低減できる。また、摺接面部54fの部位54f3が窓部11hよりも径方向の外側でハウジング11の底面11aと接しているので、操作レバー21の操作に関わらず、常に摺接面部54fがハウジング11の底面11aに接することができる。これにより、操作ブラケット54が窓部11hからハウジング11の外に脱落することをより効果的に防止できる。
【0074】
また本実施形態のクラッチユニット100において、複数の摺接部54eが回転軸線Xの周方向に等間隔で設けられている。図示の例では、3つの摺接部54eが回転軸線Xの周方向に120度の間隔を隔てて設けられている。操作レバー21の操作時に操作ブラケット54とハウジング11の底面11aとの間に作用する力を3つの摺接部54eで分散して受けることができる。また、操作ブラケット54に方向性が生じないので、操作ブラケット54をハウジング11に組み込むときの作業性が高められている。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【0076】
例えば上述した実施形態においては、操作ブラケット54が入力側内輪部材51と係合する例を説明したが、操作ブラケット54が入力側外輪部材52と係合するように構成してもよい。この場合、入力側外輪部材52が入力側内輪部材51よりもハウジング11の底面11aに近い位置に配置される。
【符号の説明】
【0077】
11 ハウジング
11a 底面
13 メタルブッシュ
21 操作レバー
22 操作板(操作部材)
22b 係合孔
30 出力軸部材
31 ピニオンギヤ
32 大径円柱部
33 スプライン部
34 小径円柱部
36 ストッパリング
40 車両用シート
50 入力側クラッチ
51 入力側内輪部材
51b 突起部
52 入力側外輪部材
54 操作ブラケット
54a 挿通孔
54b 嵌合孔(係合部)
54c 爪部(締結部)
54d 対向部
54e 摺接部
54f 摺接面部
54g 接続部
55 入力側クラッチコロ(入力側中間伝達部材)
56 入力側コロ付勢バネ
60 出力側クラッチ
61 出力側内輪部材
62 出力側外輪部材
64 解除ブラケット
65 出力側クラッチコロ
66 出力側コロ付勢バネ
70 ロック部材
100 クラッチユニット
X 回転軸線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8