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特許7482806作業機械を制御するためのシステム、方法、および作業機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】作業機械を制御するためのシステム、方法、および作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 3/85 20060101AFI20240507BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
E02F3/85 D
E02F9/20 Q
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021014571
(22)【出願日】2021-02-01
(65)【公開番号】P2022117841
(43)【公開日】2022-08-12
【審査請求日】2023-12-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 裕輔
(72)【発明者】
【氏名】安藤 友起
(72)【発明者】
【氏名】津村 総一
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-105120(JP,A)
【文献】特開2019-173470(JP,A)
【文献】特開2019-214868(JP,A)
【文献】特開2020-033789(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0076223(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 3/85
E02F 9/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業機を含む作業機械を制御するためのシステムであって、
前記作業機械の現在位置を検出するセンサと、
前記センサと通信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記作業機械の現在位置を示す現在位置データを取得し、
現況地形を示す現況地形データを取得し、
前記作業機械の移動量に応じた目標変位を規定するデフォルト目標変位データを取得し、
前記作業機械による作業の前回の開始位置と、前記前回の開始位置よりも後方に位置する今回の開始位置との間の距離を示す作業間隔を取得し、
前記作業間隔に応じて前記デフォルト目標変位データを修正した修正データを生成し、
前記修正データを参照して、前記今回の開始位置からの前記作業機械の移動量に応じた前記目標変位を決定し、
前記現況地形データを、前記目標変位だけ鉛直方向下向きに変位させた地形データを、目標プロファイルとして決定し、
前記目標プロファイルに従って前記作業機を動作させる、
システム。
【請求項2】
前記コントローラは、前記作業間隔が所定の閾値を超えているときに、前記修正データを生成する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記作業間隔が第1閾値より小さいときに、前記修正データを生成する、
請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記作業間隔が第2閾値より大きいときに、前記修正データを生成する、
請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、
オペレータによる前記作業機の操作装置の操作を示す信号を受信し、
前記操作装置の操作に基づいて、前記前回の開始位置及び前記今回の開始位置を決定する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記作業機械による作業の第1開始位置を、前記前回の開始位置として取得し、
前記第1開始位置からの前記作業機械の移動量を前記現在位置データから取得し、
前記デフォルト目標変位データを参照して、前記第1開始位置からの前記移動量に応じた前記目標変位を第1目標変位として決定し、
前記現況地形データを、前記第1目標変位だけ鉛直方向下向きに変位させた地形データを、第1目標プロファイルとして決定し、
前記第1目標プロファイルに従って前記作業機を動作させ
前記第1開始位置よりも後方に位置する第2開始位置を、前記今回の開始位置として取得し、
前記第1開始位置と前記第2開始位置との間の距離を示す第1作業間隔に応じて前記デフォルト目標変位データを修正した前記修正データを生成し、
前記第2開始位置からの前記作業機械の移動量を前記現在位置データから取得し、
前記修正データを参照して、前記第2開始位置からの前記作業機械の移動量に応じた前記目標変位を第2目標変位として決定し、
前記現況地形データを、前記第2目標変位だけ鉛直方向下向きに変位させた地形データを、第2目標プロファイルとして決定し、
前記第2目標プロファイルに従って前記作業機を動作させる、
請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記デフォルト目標変位データは、
前記移動量の増大に応じて増大する前記目標変位を規定する掘削開始領域と、
前記掘削開始領域の前方に位置し、前記移動量の増大に対して一定の前記目標変位を規定する掘削領域と、
を含む、
請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記第2開始位置からの移動量が前記作業間隔である位置を、前記修正データにおける前記掘削開始領域の終端位置とするように、前記デフォルト目標変位データを修正する、
請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記作業間隔が第1閾値より小さいときには、前記第2開始位置からの移動量が前記作業間隔である位置を、前記修正データにおける前記掘削開始領域の終端位置とするように、前記デフォルト目標変位データを修正する、
請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
前記第1閾値は、前記デフォルト目標変位データにおける前記掘削開始領域の終端までの前記移動量に基づき決定される値である、
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記コントローラは、
前記作業間隔が第2閾値より大きいときには、前記第2開始位置からの移動量が前記作業間隔である位置を、前記修正データにおける前記掘削開始領域の終端位置とするように、前記デフォルト目標変位データを修正する、
請求項7に記載のシステム。
【請求項12】
前記第2閾値は、前記デフォルト目標変位データにおける前記掘削開始領域の終端までの前記移動量に基づき決定される値である、
請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記コントローラは、
前記作業間隔が第3閾値より大きいときには、前記デフォルト目標変位データを参照して、前記第2開始位置からの前記移動量に応じた前記目標変位を第2目標変位として決定し、
前記第3閾値は、前記掘削領域の終端までの前記移動量に基づき決定される値である、
請求項7に記載のシステム。
【請求項14】
前記コントローラは、前記修正データによる掘削土量が、前記デフォルト目標変位データによる掘削土量と同じになるように、前記デフォルト目標変位データを修正する、
請求項6に記載のシステム。
【請求項15】
作業機を含む作業機械を制御するための方法であって、
前記作業機械の現在位置を示す現在位置データを取得することと、
現況地形を示す現況地形データを取得することと、
前記作業機械の移動量に応じた目標変位を規定するデフォルト目標変位データを取得することと、
前記作業機械による作業の前回の開始位置と、前記前回の開始位置よりも後方に位置する今回の開始位置との間の距離を示す作業間隔を取得することと、
前記作業間隔に応じて前記デフォルト目標変位データを修正した修正データを生成することと、
前記修正データを参照して、前記今回の開始位置からの前記作業機械の移動量に応じた前記目標変位を決定することと、
前記現況地形データを、前記目標変位だけ鉛直方向下向きに変位データさせた地形を、目標プロファイルとして決定することと、
前記目標プロファイルに従って前記作業機を動作させること、
を備える方法。
【請求項16】
作業機と、
作業機械の現在位置を検出するセンサと、
前記センサと通信するコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、
前記作業機械の現在位置を示す現在位置データを取得し、
現況地形を示す現況地形データを取得し、
前記作業機械の移動量に応じた目標変位を規定するデフォルト目標変位データを取得し、
前記作業機械による作業の前回の開始位置と、前記前回の開始位置よりも後方に位置する今回の開始位置との間の距離を示す作業間隔を取得し、
前記作業間隔に応じて前記デフォルト目標変位データを修正した修正データを生成し、
前記修正データを参照して、前記今回の開始位置からの前記作業機械の移動量に応じた前記目標変位を決定し、
前記現況地形データを、前記目標変位だけ鉛直方向下向きに変位させた地形データを、目標プロファイルとして決定し、
前記目標プロファイルに従って前記作業機を動作させる、
作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械を制御するためのシステム、方法、および作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ブルドーザ、或いはグレーダ等の作業機械において、ブレードなどの作業機の位置を自動的に調整する制御が提案されている。例えば、特許文献1では、コントローラは、現況地形を示す現況地形データを取得する。コントローラは、現況地形を目標変位だけ鉛直方向に変位させた地形を、目標プロファイルとして決定する。コントローラは、目標プロファイルに従って、作業機を動作させる。それにより、現況地形が、目標プロファイルに従った形状に形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開WO2018/179383
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業機械は、前進して、所定の開始位置から作業機による作業を開始し、目標プロファイルに従って、作業機を動作させる。そして、作業機械が、所定の終了位置に到達すると、後進して次の開始位置に移動する。このようにして、作業機械は、一の作業パスにおける作業を実行する。作業パスは、所定の開始位置から所定の終了位置までの一連の作業工程を意味する。
【0005】
上述のように、現況地形を目標変位だけ鉛直方向に変位させた地形を、目標プロファイルとして決定する場合、目標プロファイルは、現況地形の影響を受ける。前回の作業パスに重ねて、次の作業パスの目標プロファイルを決定する場合、次の作業パスにおける目標プロファイルは、前回の作業パスによる現況地形の影響を受ける。従って、前回の作業パスによる現況地形に起因して、次の作業パスにおける目標プロファイルに、急な傾斜や凸凹が生じることがある。その場合、作業の品質、或いは作業効率が低下してしまう。例えば、切込み角が急に大きくなると、作業機の受ける負荷が急に増えて作業効率が低下する。また、凸凹を多く含む目標プロファイルに沿って作業機を制御すると、仕上りの地形も凸凹を多く含む地形となり、品質が低下する。本開示の目的は、作業機械の自動制御において、前回の作業パスによる地形の影響を抑えて、次の作業パスにおける作業の品質、或いは作業効率を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係るシステムは、作業機を含む作業機械を制御するためのシステムである。本態様に係るシステムは、センサとコントローラとを備える。センサは、作業機械の現在位置を検出する。コントローラは、センサと通信する。コントローラは、以下の処理を実行するようにプログラムされている。コントローラは、作業機械の現在位置を示す現在位置データを取得する。コントローラは、現況地形を示す現況地形データを取得する。コントローラは、デフォルト目標変位データを取得する。デフォルト目標変位データは、作業機械の移動量に応じた目標変位を規定する。コントローラは、作業間隔を取得する。作業間隔は、作業機械による作業の前回の開始位置と、前回の開始位置よりも後方に位置する今回の開始位置との間の距離を示す。コントローラは、作業間隔に応じてデフォルト目標変位データを修正した修正データを生成する。コントローラは、修正データを参照して、今回の開始位置からの作業機械の移動量に応じた目標変位を決定する。コントローラは、現況地形データを、目標変位だけ鉛直方向下向きに変位させた地形データを、目標プロファイルとして決定する。コントローラは、目標プロファイルに従って作業機を動作させる。
【0007】
本開示の第2の態様に係る方法は、作業機を含む作業機械を制御するための方法である。本態様に係る方法は、以下の処理を備える。第1の処理は、作業機械の現在位置を示す現在位置データを取得することである。第2の処理は、現況地形を示す現況地形データを取得することである。第3の処理は、デフォルト目標変位データを取得することである。デフォルト目標変位データは、作業機械の移動量に応じた目標変位を規定する。第4の処理は、作業間隔を取得することである。作業間隔は、作業機械による作業の前回の開始位置と、前回の開始位置よりも後方に位置する今回の開始位置との間の距離を示す。第5の処理は、作業間隔に応じてデフォルト目標変位データを修正した修正データを生成することである。第6の処理は、修正データを参照して、今回の開始位置からの作業機械の移動量に応じた目標変位を決定することである。第7の処理は、現況地形データを、目標変位だけ鉛直方向下向きに変位させた地形データを、目標プロファイルとして決定することである。第8の処理は、目標プロファイルに従って作業機を動作させることである。なお、各処理が実行される順番は、上記の順番に限らず、変更されてもよい。
【0008】
本開示の第3の態様に係る作業機械は、作業機と、センサと、コントローラとを備える。センサは、作業機械の現在位置を検出する。コントローラは、センサと通信する。コントローラは、以下の処理を実行するようにプログラムされている。コントローラは、作業機械の現在位置を示す現在位置データを取得する。コントローラは、現況地形を示す現況地形データを取得する。コントローラは、デフォルト目標変位データを取得する。デフォルト目標変位データは、作業機械の移動量に応じた目標変位を規定する。コントローラは、作業間隔を取得する。作業間隔は、作業機械による作業の前回の開始位置と、前回の開始位置よりも後方に位置する今回の開始位置との間の距離を示す。コントローラは、作業間隔に応じてデフォルト目標変位データを修正した修正データを生成する。コントローラは、修正データを参照して、今回の開始位置からの作業機械の移動量に応じた目標変位を決定する。コントローラは、現況地形データを、目標変位だけ鉛直方向下向きに変位させた地形データを、目標プロファイルとして決定する。コントローラは、目標プロファイルに従って作業機を動作させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、前回の開始位置と今回の開始位置との間の距離に応じてデフォルト目標変位データを修正した修正データが生成される。そして、修正データを参照して目標変位が決定され、目標変位だけ現況地形データを鉛直方向下向きに変位させた地形データが、目標プロファイルとして決定される。従って、前回の作業パスによる地形を考慮して、今回の作業パスにおける目標プロファイルが決定される。それにより、前回の作業パスによる地形の影響を抑えて、作業の品質、或いは作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る作業機械を示す側面図である。
図2】作業機械の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図3】作業機械の構成を示す模式図である。
図4】最終設計地形、現況地形、及び目標プロファイルの一例を示す図である。
図5】作業機の自動制御の処理を示すフローチャートである。
図6】目標変位データの一例を示す図である。
図7】目標変位データから生成された目標プロファイルを示す図である。
図8】目標変位データを修正するための処理を示すフローチャートである。
図9】第1修正データの一例を示す図である。
図10】第1修正データから生成された目標プロファイルを示す図である。
図11】第2修正データの一例を示す図である。
図12】第2修正データから生成された目標プロファイルを示す図である。
図13】変形例に係る作業機械の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図14】他の変形例に係る作業機械の駆動系と制御システムとの構成を示すブロック図である。
図15】変形例に係る第1修正データの一例を示す図である。
図16】変形例に係る第1修正データから生成された目標プロファイルを示す図である。
図17】変形例に係る第2修正データの一例を示す図である。
図18】変形例に係る第2修正データから生成された目標プロファイルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る作業機械について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る作業機械1を示す側面図である。本実施形態に係る作業機械1は、ブルドーザである。作業機械1は、車体11と、走行装置12と、作業機13と、を備えている。
【0012】
車体11は、運転室14とエンジン室15とを有する。運転室14には、図示しない運転席が配置されている。エンジン室15は、運転室14の前方に配置されている。走行装置12は、車体11の下部に取り付けられている。走行装置12は、左右一対の履帯16を有している。なお、図1では、左側の履帯16のみが図示されている。履帯16が回転することによって、作業機械1が走行する。作業機械1の走行は、自律走行、セミ自律走行、オペレータの操作による走行のいずれの形式であってもよい。
【0013】
作業機13は、車体11と走行装置12とに取り付けられている。作業機13は、リフトフレーム17と、ブレード18と、リフトシリンダ19と、を有する。走行装置12の左右の側部には、車幅方向に延びる軸線Xを中心軸としてトラニオン(円筒形の突起)が配置されている。リフトフレーム17は、トラニオンを介して、上下に動作可能に走行装置12に取付けられている。リフトフレーム17は、ブレード18を支持している。ブレード18は、車体11の前方に配置されている。ブレード18は、リフトフレーム17の上下動に伴って上下に移動する。リフトシリンダ19は、車体11とリフトフレーム17とに連結されている。リフトシリンダ19が伸縮することによって、リフトフレーム17は、軸線Xを中心として上下に回転する。リフトシリンダ19が伸びることによって、ブレード18が上昇する。リフトシリンダ19が縮むことによって、ブレード18が下降する。
【0014】
図2は、作業機械1の駆動系2と制御システム3との構成を示すブロック図である。図2に示すように、駆動系2は、エンジン22と、油圧ポンプ23と、動力伝達装置24と、を備えている。油圧ポンプ23は、エンジン22によって駆動され、作動油を吐出する。油圧ポンプ23から吐出された作動油は、リフトシリンダ19に供給される。なお、図2では、1つの油圧ポンプ23が図示されているが、複数の油圧ポンプが設けられてもよい。
【0015】
動力伝達装置24は、エンジン22の駆動力を走行装置12に伝達する。動力伝達装置24は、例えば、HST(Hydro Static Transmission)であってもよい。或いは、動力伝達装置24は、例えば、トルクコンバータ、或いは複数の変速ギアを有するトランスミッションであってもよい。
【0016】
制御システム3は、操作装置25aと、入力装置25bと、コントローラ26と、記憶装置28と、制御弁27とを備える。操作装置25aは、作業機13及び走行装置12を操作するための装置である。操作装置25aは、運転室14に配置されている。操作装置25aは、作業機13及び走行装置12を駆動するためのオペレータによる操作を受け付け、操作に応じた操作信号を出力する。操作装置25aは、例えば、操作レバー、ペダル、スイッチ等を含む。
【0017】
例えば、走行用の操作装置25aは、前進位置と後進位置と中立位置とに操作可能である。作業機13用の操作装置25aは、上げ位置と下げ位置とに操作可能である。操作装置25aの位置を示す操作信号は、コントローラ26に出力される。コントローラ26は、操作装置25aの操作位置が前進位置であるときには、作業機械1が前進するように、走行装置12、或いは動力伝達装置24を制御する。操作装置25aの操作位置が後進位置であるときには、コントローラ26は、作業機械1が後進するように、走行装置12、或いは動力伝達装置24を制御する。
【0018】
入力装置25bは、例えばタッチパネル式の入力装置である。ただし、入力装置25bは、スイッチ等の他の入力装置であってもよい。オペレータは、入力装置25bを用いて、後述する自動制御の設定を入力することができる。
【0019】
コントローラ26は、取得したデータに基づいて作業機械1を制御するようにプログラムされている。コントローラ26は、記憶装置28とプロセッサ30とを含む。プロセッサ30は、例えばCPUを含む。記憶装置28は、例えばメモリと補助記憶装置とを含む。記憶装置28は、例えば、RAM、或いはROMなどであってもよい。記憶装置28は、半導体メモリ、或いはハードディスクなどであってもよい。記憶装置28は、非一時的な(non-transitory)コンピュータで読み取り可能な記録媒体の一例である。記憶装置28は、プロセッサ30によって実行可能であり作業機械1を制御するためのコンピュータ指令を記録している。
【0020】
コントローラ26は、操作装置25aから操作信号を取得する。コントローラ26は、操作信号に基づいて、制御弁27を制御する。制御弁27は、比例制御弁であり、コントローラ26からの指令信号によって制御される。制御弁27は、リフトシリンダ19などの油圧アクチュエータと、油圧ポンプ23との間に配置される。制御弁27は、油圧ポンプ23からリフトシリンダ19に供給される作動油の流量を制御する。コントローラ26は、上述した操作装置25aの操作に応じてブレード18が動作するように、制御弁27への指令信号を生成する。これにより、リフトシリンダ19が、操作装置25aの操作量に応じて、制御される。
【0021】
例えば、操作装置25aの操作位置が上げ位置であるときには、コントローラ26は、作業機13が上昇するように、制御弁27を制御する。操作装置25aの操作位置が下げ位置であるときには、コントローラ26は、作業機13が下降するように、制御弁27を制御する。なお、制御弁27は、圧力比例制御弁であってもよい。或いは、制御弁27は、電磁比例制御弁であってもよい。
【0022】
制御システム3は、ストロークセンサ29を備える。ストロークセンサ29は、リフトシリンダ19のストローク長さ(以下、「リフトシリンダ長」という。)を検出する。コントローラ26は、リフトシリンダ長に基づいてブレード18のリフト角θliftを算出する。図3は、作業機械1の構成を示す模式図である。
【0023】
図3では、作業機13の原点位置が二点鎖線で示されている。作業機13の原点位置は、水平な地面上でブレード18の刃先が地面に接触した状態でのブレード18の位置である。リフト角θliftは、作業機械1を側面視したときの、原点位置におけるブレード18の下端(刃先位置P0)と、軸線Xと、ブレードを上下に動作させたときのブレード18の下端(刃先位置P0)とのなす角度である。
【0024】
図2に示すように、制御システム3は、位置センサ31を備えている。位置センサ31は、作業機械1の位置を測定する。位置センサ31は、GNSS(Global Navigation Satellite System)レシーバ32と、IMU 33と、アンテナ35とを備える。GNSSレシーバ32は、例えばGPS(Global Positioning System)用の受信機である。GNSSレシーバ32は、衛星より測位信号を受信し、測位信号によりアンテナ35の位置を演算して車体位置データを生成する。コントローラ26は、GNSSレシーバ32から車体位置データを取得する。
【0025】
IMU 33は、慣性計測装置(Inertial Measurement Unit)である。IMU 33は、車体傾斜角データと車体加速度データを取得する。車体傾斜角データは、車両前後方向の水平に対する角度(ピッチ角)、および車両横方向の水平に対する角度(ロール角)を含む。車体加速度データは、作業機械1の加速度を含む。コントローラ26は、車体加速度データにより、作業機械1の進行方向と車速とを得る。コントローラ26は、IMU 33から車体傾斜角データ及び車体加速度データを取得する。
【0026】
コントローラ26は、リフトシリンダ長と、車体位置データと、車体傾斜角データとから、刃先位置P0を演算する。コントローラ26は、車体位置データに基づいて、アンテナ35のグローバル座標を算出する。コントローラ26は、リフトシリンダ長と車体寸法データとに基づいて、リフト角θliftを算出する。車体寸法データは、記憶装置28に記憶されており、軸線Xに対する作業機13の位置を示すデータを含む。コントローラ26は、リフト角θliftと車体寸法データに基づいて、アンテナ35に対する刃先位置P0のローカル座標を算出する。コントローラ26は、車体加速度データから作業機械1の進行方向と車速とを算出する。車体寸法データは、アンテナ35に対する作業機13の位置を示すデータを含む。コントローラ26は、アンテナ35のグローバル座標と刃先位置P0のローカル座標と車体傾斜角データとに基づいて、刃先位置P0のグローバル座標を算出する。コントローラ26は、刃先位置P0のグローバル座標を刃先位置データとして取得する。
【0027】
記憶装置28は、作業現場データと設計地形データとを記憶している。作業現場データは、作業現場の現況の地形を示す。作業現場データは、例えば、三次元データ形式の現況地形測量図である。作業現場データは、例えば、航空レーザ測量で得ることができる。または、作業現場データは、作業現場で稼働する作業機械の作業結果に基づいて取得されても良い。
【0028】
コントローラ26は、現況地形データを取得する。現況地形データは、作業現場の現況地形50を示す。現況地形データは、作業機械1の進行方向に位置する地形を示す情報である。現況地形データは、作業現場データから取得されてもよい。あるいは、現況地形データは、前回作業パスの作業結果に基づいて取得されても良い。現況地形データは、前回作業パス作業後の後退時の作業機械の位置データに基づいて取得されても良い。図4は、現況地形50の断面を示す。なお、図4において、縦軸は、地形の高さを示しており、横軸は、作業機械1の進行方向における現在位置からの距離を示している。
【0029】
現況地形データは、作業現場データと、上述の位置センサ31から得られる作業機械1の位置と、作業機械1の進行方向とからコントローラ26で演算され、取得される。なお、現況地形データは、作業現場データと、位置センサ31から得られる作業機械1の位置と、作業機械1の進行方向とから取得されたデータを平滑化処理したデータであっても良い。
【0030】
詳細には、現況地形データは、作業機械1の進行方向において、現在位置から所定の地形認識距離dnまでの複数の参照点での現況地形50の高さZ0~Znを含む。本実施形態において、現在位置は、作業機械1の現在の刃先位置P0に基づいて定められる位置である。ただし、現在位置は、作業機械1の他の部分の現在位置に基づいて定められてもよい。現在位置は、作業機械の走行に応じて順次更新されても良い。複数の参照点は、所定間隔、例えば1mごとに並んでいる。
【0031】
設計地形データは、最終設計地形60を示す。最終設計地形60は、作業現場の表面の最終的な目標形状である。設計地形データは、例えば、三次元データ形式の土木施工図から演算され、取得される。図4に示すように、設計地形データは、作業機械1の進行方向において、複数の参照点での最終設計地形60の高さZdesignを含む。複数の参照点は、作業機械1の進行方向に沿う所定間隔ごとの複数地点を示す。なお、図4では、現況地形50と最終設計地形60とは、水平方向に平行な平坦な形状であるが、これと異なる形状であってもよい。
【0032】
コントローラ26は、現況地形データと、設計地形データと、刃先位置データとに基づいて、作業機13を自動的に制御する。以下、コントローラ26によって実行される、掘削における作業機13の自動制御について説明する。図5は、掘削作業における作業機13の自動制御の処理を示すフローチャートである。なお、図5は、掘削作業における一の作業パスにおける処理を示している、一の作業パスは、作業機械1が、開始位置から前進を開始したときから、一連の掘削作業を行い、次の開始位置まで移動するために後進を開始するまでの工程を意味する。
【0033】
図5に示すように、ステップS101では、コントローラ26は、現在位置データを取得する。ここでは、コントローラ26は、上述したように、ブレード18の現在の刃先位置データを現在位置データとして取得する。ステップS102では、コントローラ26は、上述した設計地形データを取得する。ステップS103では、コントローラ26は、上述した現況地形データを取得する。
【0034】
ステップS104では、コントローラ26は、作業の開始位置を取得する。例えば、コントローラ26は、刃先位置P0が、現況地形50の高さZ0を最初に下回ったときの位置を開始位置として取得する。これにより、ブレード18の刃先が下げられて現況地形50を掘削し始めた位置が開始位置として取得される。例えば、オペレータが操作装置25aを操作することにより作業機13が下降したときに、作業の開始位置を取得してもよい。或いは、コントローラ26が作業機13を自動制御することにより作業機13が下降したときに、作業の開始位置を取得してもよい。ただし、コントローラ26は、他の方法によって、開始位置を取得してもよい。例えば、コントローラ26は、ボタン、或いは、タッチパネルによる画面操作などの操作に基づいて、開始位置を取得してもよい。
【0035】
ステップS105では、コントローラ26は、作業機械1の移動量を取得する。コントローラ26は、作業機械1が開始位置から現在位置まで進んだ距離を、移動量として取得する。作業機械1の移動量は、車体11の移動量であってもよい。或いは、作業機械1の移動量は、ブレード18の刃先位置P0の移動量であってもよい。
【0036】
ステップS106では、コントローラ26は、目標プロファイル70を決定する。図4に示すように、目標プロファイル70は、作業におけるブレード18の刃先の望まれる軌跡を示す。目標プロファイル70は、作業対象である地形の目標形状であり、掘削作業の結果として望まれる形状を示す。
【0037】
なお、コントローラ26は、最終設計地形60を下方に越えないように、目標プロファイル70を決定する。従って、コントローラ26は、掘削作業時には、最終設計地形60より上方、及び、最終設計地形60を含む範囲、且つ、現況地形50より下方に位置する目標プロファイル70を決定する。
【0038】
図4に示すように、コントローラ26は、現況地形50から、目標変位dz、下方に変位した目標プロファイル70を決定する。目標変位dzは、各参照点での鉛直方向における目標深さである。或いは、目標変位dzは、現況地形50の垂直方向における目標深さであっても良い。コントローラ26は、目標変位データCを参照して、作業機械1の移動量に応じて目標変位dzを決定する。目標変位データCは、記憶装置28に記憶されている。図6は、目標変位データCの一例を示す図である。目標変位データCは、作業機械1の水平方向の移動量nに対する目標変位dzを規定する。コントローラ26は、図6に示す目標変位データCを参照して、作業機械1の移動量nから、目標変位dzを決定する。
【0039】
目標変位データCは、開始時データC1と、掘削時データC2と、移行時データC3と、運土時データC4とを含む。開始時データC1は、掘削開始領域での移動量nと目標変位dzとの関係を規定する。掘削開始領域は、移動量nが0から値b1までの領域である。開始時データC1で示されるように、掘削開始領域では、移動量nの増大に応じて徐々に増大する目標変位dzが規定される。開始時データC1は、移動量nに対して、第1目標値a1まで、線形増加する目標変位dzを規定する。開始時データC1は、傾きA1を有する。傾きA1は、開始時データC1における移動量nの変化量に対する目標変位dzの変化量の割合である。掘削開始領域において、移動量nが0の位置、すなわち作業の開始位置での目標変位dzは、開始値a0である。
【0040】
掘削時データC2は、掘削領域での移動量nと目標変位dzとの関係を規定する。掘削領域は、移動量nが値b1から値b2までの領域である。掘削時データC2で示されるように、掘削時データC2は、移動量nに対して一定の目標変位dzを規定する。掘削領域での目標変位dzは、第1目標値a1で一定である。
【0041】
移行時データC3は、運土移行領域での移動量nと目標変位dzとの関係を規定する。運土移行領域は、移動量nが値b2から値b3までの領域である。移行時データC3で示されるように、運土移行領域では、移動量nの増大に応じて徐々に減少する目標変位dzが規定される。移行時データC3は、移動量nに対して、第2目標値a2まで、線形減少する目標変位dzを規定する。移行時データC3は、傾きA2を有する。傾きA2は、移行時データC3における移動量nの変化量に対する目標変位dzの変化量の割合である。
【0042】
運土時データC4は、運土領域での移動量nと目標変位dzとの関係を規定する。運土領域は、移動量nが値b3以上の領域である。運土時データC4に示されるように、運土領域では、目標変位dzは一定値に規定される。運土領域での目標変位dzは、第2目標値a2で一定である。第2目標値a2は、第1目標値a1よりも小さい。従って、掘削領域では運土領域よりも大きな目標変位dzが規定される。
【0043】
開始値a0、第1目標値a1、及び第2目標値a2は、定数であり、記憶装置28に記憶されている。開始値a0は、掘削開始時にブレード18への負荷が過剰に大きくならない程度に小さな値であることが好ましい。第1目標値a1は、作業機械1の性能に応じて、効率よく掘削を行うことができると共に、走行抵抗が過剰に大きくならない程度の値であることが好ましい。第2目標値a2は、運土作業に適した値に設定されることが好ましい。
【0044】
傾きA1, A2は、定数であり、記憶装置28に記憶されている。開始時データC1の傾きA1は、掘削開始から掘削作業に迅速に移行可能であると共に、ブレード18への負荷が過剰に大きくならない程度の値であることが好ましい。移行時データC3の傾きA2は、掘削作業から運土作業に迅速に移行可能であると共に、ブレード18への負荷が過剰に大きくならない程度の値であることが好ましい。
【0045】
掘削領域が始まるときの移動量nの値b1は、傾きA1、開始値a0、及び第1目標値a1から演算により求められる。掘削領域が終了するときの移動量nの値b2は、ブレード18の現在の保持土量が、所定の閾値を越えるときの移動量である。従って、ブレード18の現在の保持土量が、所定の閾値を越えたときに、コントローラ26は、目標変位dzを第1目標値a1から低減させる。所定の閾値は、例えばブレード18の最大容量に基づいて決定される。例えば、ブレード18の現在の保持土量は、ブレード18への負荷が測定され、当該負荷から演算により決定されてもよい。或いは、ブレード18の画像がカメラによって取得され、当該画像を分析することによって、ブレード18の現在の保持土量が算出されてもよい。なお、値b2として、所定の初期値が設定される。ブレード18の保持土量が、値b2到達前に、所定の閾値を越えた場合は、上記の初期値に替えて、ブレード18の保持土量が所定の閾値を越えた時の移動量に基づいた値に、値b2が更新される。保持土量が所定の閾値を越えた時の移動量が、更新後の値b2とされても良い。保持土量が所定の閾値を越えた時の移動量よりも小さい値が、更新後の値b2とされても良い。
【0046】
運土領域が始まるときの移動量nの値b3は、移行時データC3の傾きA2、第1目標値a1、及び第2目標値a2から演算により求められる。値b1, b2, b3は、定数として記憶装置28に記憶されてもよい。b3は、b2+定数で定義されてもよい。b2が更新された場合には、b2に連動してb3が更新されても良い。
【0047】
コントローラ26は、目標変位データCから、移動量nに応じた目標変位dzを決定する。そして、コントローラ26は、現況地形50の高さZと目標変位dzとから、図4に示す目標プロファイル70(太破線)の高さZを決定する。
【0048】
図7は、目標プロファイル70の一例を示す図である。図7の目標プロファイル70は、図6の目標変位データと、現況地形データ50とに基づいて決定された目標プロファイルの例である。図7に示す例では、作業機械1は、開始位置Ps1から作業を開始し、終了位置Pe1において作業を終了する。図7に示すように、目標プロファイル70は、第1目標面71と、第2目標面72と、第3目標面73と、第4目標面74とを含む。
【0049】
第1目標面71は、掘削開始領域における目標プロファイルである。コントローラは、開始時データC1を参照して、移動量から第1目標面71における目標変位dzを決定する。第1目標面71は、作業機械1の前方へ向かって下り勾配である。第2目標面72は、掘削領域における目標プロファイルである。コントローラは、掘削時データC2を参照して、移動量から第2目標面72における目標変位dzを決定する。第2目標面72は、現況地形50と平行である。本実施形態では、第2目標面72は、水平方向に延びている。
【0050】
第3目標面73は、運土移行領域における目標プロファイルである。コントローラは、移行時データC3を参照して、移動量から第3目標面73における目標変位dzを決定する。第3目標面73は、作業機械1の前方へ向かって上り勾配である。第4目標面74は、運土領域における目標プロファイルである。コントローラは、運土時データC4を参照して、移動量から第4目標面74における目標変位dzを決定する。第4目標面74は、現況地形50と平行である。本実施形態では、第4目標面74は、水平方向に延びている。
【0051】
図5に示すステップS107では、コントローラ26は、目標プロファイル70に従ってブレード18を制御する。ここでは、コントローラ26は、ステップS106で作成した目標プロファイル70に従ってブレード18の刃先位置P0が移動するように、作業機13への指令信号を生成する。生成された指令信号は、制御弁27に入力される。それにより、作業機13の刃先位置P0が目標プロファイル70に沿って移動する。
【0052】
図7に示すように、掘削領域では、現況地形50と目標プロファイル70との間の目標変位dzが、他の領域と比べて大きい。これにより、掘削領域では、現況地形50の掘削作業が行われる。運土領域では、現況地形50と目標プロファイル70との間の目標変位dzが他の領域と比べて小さい。これにより、運土領域では、地面の掘削が控えられ、ブレード18に保持されている土砂が運搬される。
【0053】
ステップS108では、コントローラ26は、作業現場データを更新する。コントローラ26は、刃先位置P0の最新の実際の軌跡を示す位置データを、現況地形データとして取得し、取得した現況地形データによって作業現場データを更新する。或いは、コントローラ26は、車体位置データと車体寸法データとから履帯16の底面の位置を算出し、履帯16の底面の実際の軌跡を示す位置データを現況地形データとして取得してもよい。この場合、作業地形データの更新は即時に行うことができる。
【0054】
或いは、現況地形データは、作業機械1の外部の測量装置によって計測された測量データから生成されてもよい。外部の測量装置として、例えば、航空レーザ測量を用いてよい。或いは、カメラによって現況地形50を撮影し、カメラによって得られた画像データから現況地形データが生成されてもよい。例えば、UAV(Unmanned Aerial Vehicle)による空撮測量を用いてよい。外部の測量装置又はカメラの場合、作業現場データの更新は、所定周期ごと、あるいは随時に行われてもよい。
【0055】
ステップS109では、コントローラ26は、今回の作業パスが完了したかを判定する。コントローラ26は、作業機械1が所定の作業終了位置に到達したときに、今回の作業パスが完了したと判定する。例えば、コントローラ26は、現在位置データに基づいて、刃先位置P0が終了位置Pe1に到達したと判断したときに、今回の作業パスが完了したと判定する。或いは、コントローラ26は、オペレータが操作装置25aを操作することにより作業機13が上昇したときに、今回の作業パスが完了したと判定してもよい。或いは、コントローラ26は、作業機械1が前進から後進に切り換えられたときに、今回の作業パスが完了したと判定してもよい。今回の作業パスが完了していないときには、処理はステップS105に戻る。
【0056】
今回の作業パスが完了すると、作業機械1は、次の開始位置へ移動するために直進経路を後進する。そして、作業機械1は、再び前進して、次の作業パスを開始する。なお、作業機械1の前進と後進との切換は、オペレータが操作装置25aを操作することで行われてもよい。或いは、作業機械1の前進と後進との切換は、コントローラ26による自動制御によって行われてもよい。コントローラ26は、次の作業パスに対しても、上記の処理を実行する。このような処理が繰り返されることにより、現況地形50が最終設計地形60に近づくように、掘削が行われる。
【0057】
2回目以降の作業パスは、前回の作業パスによる地形の影響を受けることがある。そのため、コントローラ26は、前回の作業パスの開始位置と今回の作業パスの開始位置との間の距離(以下、「作業間隔」と呼ぶ)に応じて、目標変位dzを修正する。詳細には、コントローラ26は、作業間隔に応じて目標変位データCを修正することで、作業機械1の移動量に応じた目標変位dzを修正する。図8は、目標変位データCを修正するための処理を示すフローチャートである。
【0058】
図8に示すように、ステップS201では、コントローラ26は、第1条件が満たされているかを判定する。第1条件は、今回の作業パスが前回の作業パスによる地形の影響を受けない、或いは影響が少ないことを示す。第1条件は、今回の作業パスが最初の作業パスであることを含む。また、第1条件は、作業間隔が掘削領域終端の移動量である値b2より大きいことを含む。
【0059】
第1条件が満たされているときには、処理は、ステップS202に進む。ステップS202では、コントローラ26は、デフォルト目標変位データCを用いる。すなわち、コントローラ26は、上述した目標変位データCを参照して、作業機械1の移動量nから目標変位dzを決定する。
【0060】
ステップS201において、第1条件が満たされていないときには、処理はステップS203に進む。ステップS203では、コントローラ26は、第2条件が満たされているかを判定する。第2条件は、今回の開始位置が前回の開始位置に近いことで、今回の作業パスが、前回の作業パスによる地形の影響を受けることを示す。第2条件は、作業間隔が第1閾値より小さいことを含む。第1閾値は、例えば掘削開始領域終端の移動量である値b1と同じである。ただし、第1閾値は、値b1と異なってもよい。
【0061】
第2条件が満たされているときには、処理はステップS204に進む。ステップS204では、コントローラ26は、第1の修正処理により、目標変位データCを修正する。図9は、第1の修正処理により目標変位データCから生成されたデータ(以下、「第1修正データC’」と呼ぶ)の一例を示す図である。図10は、第1修正データC’から生成された目標プロファイル70を示す図である。
【0062】
図10に示すように、現況地形50は、前回の作業パス(以下、「第1の作業パス」と呼ぶ)によって形成された地形である。なお、第1の作業パスは、現況地形50に対して最初に行われる作業パスに限らない。第1の作業パスは、現況地形50に対して2回目以降に行われる作業パスであってもよい。
【0063】
第1の作業パスでは、第1開始位置Ps1から作業が開始され、第1終了位置Pe1で作業が終了されている。第1の作業パスでは、コントローラ26は、図7と同様に、現況地形50を目標変位データCから決定された目標変位dzだけ鉛直方向に変位させることで目標プロファイル70を決定している。その後、作業機械1はオペレータによる操作、或いは自動制御によって後退し、第2開始位置Ps2から第2の作業パスを開始する。コントローラ26は、第2開始位置Ps2を取得し、第1開始位置Ps1と第2開始位置Ps2との間の作業間隔b0を算出する。作業間隔b0が第1閾値より小さいときには、コントローラ26は、目標変位データCを修正して図9に示す第1修正データC’を生成する。
【0064】
コントローラ26は、図9に示すように、第2開始位置Ps2からの移動量nが作業間隔b0である位置を、第2の作業パスにおける掘削開始領域の終端位置とするように、目標変位データCを修正する。コントローラ26は、傾きA1を変更せずに、第1目標値を値a1から値a1’に変更する。修正された第1目標値a1’は、修正前の第1目標値a1よりも小さい。
【0065】
図9に示すように、第1修正データC’において、掘削開始領域は、移動量nが0から作業間隔b0までの領域である。第1修正データC’の開始時データC1’は、0から作業間隔b0までの移動量nに対して、目標変位データCと同じ目標変位dzを規定する。すなわち、開始時データC1’では、目標変位dz は、0から作業間隔b0までの移動量nに対して、修正された第1目標値a1’まで、傾きA1で線形増加する。コントローラ26は、開始値a0と、傾きA1と、作業間隔b0とから、修正された第1目標値a1’を算出する。コントローラ26は、開始時データC1’によって、図10に示すように、第2開始位置Ps2から第1開始位置Ps1までの領域において、下方に向かって傾斜した第1目標面71を生成する。
【0066】
第1修正データC’において、掘削領域は、移動量nが作業間隔b0から値b2+xまでの領域である。第1修正データC’の掘削時データC2’は、掘削領域において、移動量nに対して一定の目標変位dzを規定する。掘削時データC2’において、掘削領域での目標変位dzは、修正された第1目標値a1’で一定である。コントローラ26は、掘削時データC2’によって、図10の太破線に示すように、掘削領域において、第2目標面72を生成する。第2目標面72は、第1部分72aと、第2部分72bと、第3部分72cとを含む。第1部分72aは、第1目標面71の前方に位置している。第1部分72aは、下方に向かって傾斜している。第1部分72aの傾斜角度は、第1目標面71の傾斜角度と同じである。第2部分72bは、水平方向に延びている。第3部分72cは、第2部分72bの前方に位置している。第3部分72cは、上方に向かって傾斜している。
【0067】
図10において、80は、修正されていない目標変位データCによって決定された第2作業パスにおける目標プロファイルを示している。第2開始位置Ps2が第1開始位置Ps1に近すぎる場合には、移動量nが作業間隔b0である地点で、目標プロファイル80の傾斜が急に大きくなってしまう。それに対して、本実施形態に係る作業機械1の制御システム3によれば、第2開始位置Ps2が第1開始位置Ps1に近すぎる場合には、コントローラ26は、第1修正データC’によって目標プロファイル70を決定する。それにより、コントローラ26は、一定角度で傾斜した第1目標面71と、第2目標面72の第1部分72aとを生成することができる。その結果、掘削領域での切込み角の増大の発生が抑制されることにより、ブレード18が受ける負荷の急な増加を抑制できる。
【0068】
第1修正データC’において、運土移行領域は、移動量nが値b2+xから値b3+yまでの領域である。第1修正データC’の移行時データC3’は、値b2+xから値b3+yまでの移動量nに対して、傾きA2で線形減少する目標変位dzを規定する。
【0069】
コントローラ26は、移行時データC3’によって、図10に示すように、運土移行領域において、上方へ向かって傾斜した第3目標面73を生成する。なお、コントローラ26は、第1修正データC’による掘削土量が、目標変位データCによる掘削土量と同じになるように、値xと値yとを決定する。第1修正データC’による掘削土量は、図9の第1修正データC’の面積で示される。目標変位データCによる掘削土量は、図9の目標変位データCの面積で示される。従って、コントローラ26は、図9に示す第1修正データC’の面積と目標変位データCの面積とが同じになるようにしたいときは、値xと値yとを決定する。すなわち、コントローラ26は、図9においてハッチングを付した部分の面積B1と面積B2とが同じになるように、値xと値yとを決定する。また、コントローラ26は、値yの最大値を作業間隔b0に制限する。それにより、作業機械1が、第1の作業パスの運土移行領域よりも前方を掘削することが防止される。
【0070】
第1修正データC’において、運土領域は、移動量nが値b3+y以上の領域である。第1修正データC’の運土時データC4’は、運土領域において、移動量nに対して一定の目標変位dzを規定する。運土時データC4’において、運土領域での目標変位dzは、第2目標値a2で一定である。コントローラ26は、運土時データC4’によって、図10に示すように、運土領域において、現況地形50と平行な第4目標面74を生成する。
【0071】
ステップS203において、第2条件が満たされていないと判定されたときには、処理はステップS205に進む。第2条件が満たされていないことは、今回の開始位置が前回の開始位置から遠いことで、今回の作業パスが、前回の作業パスによる地形の影響を受けることを示す。なお、コントローラ26は、第3条件が満たされているときに、ステップS205の処理を実行してもよい。第3条件は、作業間隔が第2閾値以上であることを含んでもよい。第2閾値は、第1閾値と同じであってもよい。第2閾値は、第1閾値より大きくてもよい。第2閾値は、掘削開始領域終端の移動量である値b1以上、且つ、掘削領域終端の移動量である値b2より小さくてもよい。
【0072】
ステップS205では、コントローラ26は、第2の修正処理により、目標変位データC(一点鎖線)を修正する。図11は、第2の修正処理により目標変位データCから生成されたデータ(以下、「第2修正データC”」と呼ぶ)の一例を示す図である。図12は、第2修正データC”から生成された目標プロファイル70(太破線)を示す図である。
【0073】
コントローラ26は、図12に示すように、第2開始位置Ps2から第1開始位置Ps1まで、目標変位dzが徐々に増大するように、第2の作業パスにおける目標変位データCを修正する。
【0074】
図11に示すように、第2修正データC”において、掘削開始領域は、移動量nが0から作業間隔b0までの領域である。第2修正データC”の開始時データC1”は、0から作業間隔b0までの移動量nに対して、徐々に増加する目標変位dzを規定する。すなわち、開始時データC1”では、目標変位dz は、0から作業間隔b0までの移動量nに対して、修正された傾きA1”で、第1目標値a1まで線形増加する。修正された傾きA1”は、傾きA1より小さい。コントローラ26は、開始値a0と、第1目標値a1と、作業間隔b0とから、修正された傾きA1”を算出する。コントローラ26は、開始時データC1”によって、図12に示すように、第2開始位置Ps2から第1開始位置Ps1までの領域において、下方に向かって傾斜した第1目標面71を生成する。一点鎖線80はデフォルト目標変位データCから生成した場合の目標プロファイルである。目標プロファイル80で示されているように、第2開始位置Ps2が第1開始位置Ps1から遠すぎる場合には、移動量nが作業間隔b0に到達する前に、掘削開始領域が終わり、掘削領域が始まる。そのため、目標プロファイル80に凹凸が生じてしまう。それに対して、本実施形態に係る作業機械1の制御システム3によれば、第2開始位置Ps2が第1開始位置Ps1から遠すぎる場合には、コントローラ26は、第2修正データC”によって目標プロファイル70を決定する。それにより、コントローラ26は、第1目標面71と、第2目標面72の第1部分72aとの間の傾斜角度の変動を小さくすることができる。その結果、凹凸の発生が抑制されることで、ブレード18が受ける負荷の急な増加を抑制できる。
【0075】
第2修正データC”において、掘削領域は、移動量nが作業間隔b0から値b2+xまでの領域である。第2修正データC”の掘削時データC2”は、掘削領域において、移動量nに対して一定の目標変位dzを規定する。掘削時データC2”において、掘削領域での目標変位dzは、第1目標値a1で一定である。コントローラ26は、掘削時データC2”によって、図12に示すように、掘削領域において、第2目標面72を生成する。第2目標面72は、第1部分72aと第2部分72bとを含む。第1部分72aは、第1目標面71の前方に位置する。第1部分72aは、下方に向かって傾斜している。第1部分72aの傾斜角度は、第1作業パスによって形成された現況地形50の傾きに応じた角度であり、第1目標面71の傾斜角度は傾きA1”に応じた角度である。ただし、第1目標面71と、第2目標面72の第1部分72aとは、間に水平部分が形成されることなく、連続的に接続されている。
【0076】
第2修正データC”において、運土移行領域は、移動量nが値b2+xから値b3+yまでの領域である。第2修正データC”の移行時データC3”は、値b2+xから値b3+yまでの移動量nに対して、徐々に減少する目標変位dzを規定する。移行時データC3”では、目標変位dz は、値b2+xから値b3+yまでの移動量nに対して、第2目標値a2まで、傾きA2で線形減少する。
【0077】
コントローラ26は、移行時データC3”によって、図12に示すように、運土移行領域において、上方へ向かって傾斜した第3目標面73を生成する。なお、コントローラ26は、第1修正データC’と同様に、第2修正データC”による掘削土量が、目標変位データCによる掘削土量と同じにしたいときは、値xと値yとを決定する。すなわち、コントローラ26は、図11においてハッチングを付した部分の面積B3と面積B4とが同じになるように、値xと値yとを決定する。
【0078】
第2修正データC”において、運土領域は、移動量nが値b3+y以上の領域である。第2修正データC”の運土時データC4”は、運土領域において、移動量nに対して一定の目標変位dzを規定する。運土時データC4”において、運土領域での目標変位dzは、第2目標値a2で一定である。コントローラ26は、運土時データC4”によって、図12に示すように、運土領域において、現況地形50と平行な第4目標面74を生成する。なお、図12の運土移行領域の終端以降には、凸凹が形成されている。運土移行領域以降での凸凹の形成は、ブレードが受ける負荷の急な増加に繋がらないため、本実施形態では成り行きとしているが、凸凹を解消するように、値yを決定しても良い。
【0079】
なお、第3の作業パスにおいても、上述した図8に示す処理が繰り返される。第3の作業パスでは、第3の作業パスの第3開始位置と上述した第2開始位置との間の距離が、作業間隔として用いられる。コントローラ26は、作業間隔に応じて目標変位データCを修正して、第1修正データC’又は第2修正データC”を生成する。コントローラ26は、第1修正データC’又は第2修正データC”を参照して、第3開始位置からの移動量に応じた目標変位dzを決定する。コントローラ26は、目標変位dzだけ現況地形50を鉛直方向下向きに変位させた地形を、第3の作業パスにおける目標プロファイル70として決定する。第4の作業パス以降についても、コントローラ26は、同様の処理を繰り返す。
【0080】
以上説明した、本実施形態に係る作業機械1の制御システム3によれば、第1の作業パスでは、デフォルト目標変位データCを参照して、移動量に応じた目標変位dz(第1目標変位)が決定される。そして、目標変位dzだけ現況地形50を鉛直方向下向きに変位させた地形が、第1の作業パスにおける目標プロファイル70として決定される。また、第1の作業パスと第2の作業パスとの作業間隔が値b2以下であるときには、作業間隔に応じて、デフォルト目標変位データCを修正した第1修正データC’又は第2修正データC”が生成される。修正データC’, C”を参照して、目標変位dz(第2目標変位)が決定される。そして、目標変位dzだけ現況地形50を鉛直方向下向きに変位させた地形が、第2の作業パスにおける目標プロファイル70として決定される。従って、第1の作業パスによる地形を考慮して、第2の作業パスにおける目標プロファイル70が決定される。それにより、前回の作業パスによる地形の影響を抑えて、作業の品質、或いは作業効率を向上させることができる。
【0081】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0082】
作業機械1は、ブルドーザに限らず、ホイールローダ、モータグレーダ等の他の車両であってもよい。
【0083】
作業機械1は、遠隔操縦可能な車両であってもよい。その場合、制御システム3の一部は、作業機械1の外部に配置されてもよい。例えば、コントローラ26は、作業機械1の外部に配置されてもよい。コントローラ26は、作業現場から離れたコントロールセンタ内に配置されてもよい。
【0084】
コントローラ26は、互いに別体の複数のコントローラを有してもよい。例えば、図13に示すように、コントローラ26は、作業機械1の外部に配置されるリモートコントローラ261と、作業機械1に搭載される車載コントローラ262とを含んでもよい。リモートコントローラ261と車載コントローラ262とは通信装置38,39を介して無線により通信可能であってもよい。そして、上述したコントローラ26の機能の一部がリモートコントローラ261によって実行され、残りの機能が車載コントローラ262によって実行されてもよい。例えば、目標プロファイル70を決定する処理がリモートコントローラ261によって実行され、作業機13への指令信号を出力する処理が車載コントローラ262によって実行されてもよい。
【0085】
操作装置25a及び入力装置25bは、作業機械1の外部に配置されてもよい。その場合、運転室は、作業機械1から省略されてもよい。或いは、操作装置25a及び入力装置25bが作業機械1から省略されてもよい。操作装置25aによる操作無しで、コントローラ26による自動制御のみによって作業機械1が操作されてもよい。
【0086】
現況地形50は、上述した位置センサ31に限らず、他の装置によって取得されてもよい。例えば、図14に示すように、外部の装置からのデータを受け付けるインターフェ-ス装置37によって現況地形50が取得されてもよい。インターフェ-ス装置37は、外部の計測装置41が計測した現況地形データを無線によって受信してもよい。或いは、インターフェ-ス装置37は、記録媒体の読み取り装置であって、外部の計測装置41が計測した現況地形データを、記録媒体を介して受け付けてもよい。
【0087】
コントローラ26による処理は、上記の実施形態のものに限らず、変更されてもよい。上述した処理の一部が省略されてもよい。或いは、上述した処理の一部が変更されてもよい。例えば、目標プロファイル70を決定する処理が変更されてもよい。
【0088】
図15は、変形例に係る第1修正データCm’を示す図である。図15に示すように、変形例に係る第1修正データCm’において、掘削開始領域は、移動量nが0から作業間隔b0までの領域である。第1修正データCm’の開始時データCm1’は、0から作業間隔b0までの移動量nに対して、目標変位データCと同じ目標変位dzを規定する。すなわち、開始時データCm1’では、目標変位dz は、0から作業間隔b0までの移動量nに対して、修正された第1目標値a1’まで、傾きA1で線形増加する。
【0089】
第1修正データCm’において、掘削領域は、移動量nが作業間隔b0から値b2+xまでの領域である。第1修正データCm’の掘削時データCm2’は、作業間隔b0から値b1+b0までの移動量nに対して、修正された第1目標値a1’で一定の目標変位dzを規定する。また、掘削時データCm2’は、値b1+b0から値2b1までの移動量nに対して、第1目標値a1まで、傾きA1で線形増加する目標変位dzを規定する。掘削時データCm2’は、値2b1から値b2+xまでの移動量nに対して、第1目標値a1で一定の目標変位dzを規定する。コントローラ26は、開始時データCm1’によって、図16に示すように、第2開始位置Ps2から第1開始位置Ps1までの領域において、下方に向かって傾斜した第1目標面71を生成する。コントローラ26は、掘削時データCm2’によって、図16に示すように、掘削領域において、第2目標面72を生成する。第2目標面72は、第1部分72aと第2部分72bとを含む。第1部分72aは、第1目標面71の前方に位置している。第1部分72aは、下方に向かって傾斜している。第1部分72aの傾斜角度は、第1目標面71の傾斜角度と同じである。第2部分72bは、水平方向に延びている。
【0090】
第1修正データCm’において、運土移行領域は、移動量nが値b2+xから値b3+yまでの領域である。第1修正データCm’の移行時データCm3’は、値b2+xから値b3+yまでの移動量nに対して、傾きA2で線形減少する目標変位dzを規定する。
【0091】
コントローラ26は、移行時データCm3’によって、図16に示すように、運土移行領域において、上方へ向かって傾斜した第3目標面73を生成する。なお、コントローラ26は、第1修正データCm’による掘削土量が、目標変位データCによる掘削土量と同じになるように、値xと値yとを決定する。すなわち、コントローラ26は、図15においてハッチングを付した部分の面積B5と面積B6とが同じになるように、値xと値yとを決定する。
【0092】
第1修正データCm’において、運土領域は、移動量nが値b3+y以上の領域である。第1修正データCm’の運土時データCm4’は、運土領域において、移動量nに対して一定の目標変位dzを規定する。運土時データCm4’において、運土領域での目標変位dzは、第2目標値a2で一定である。コントローラ26は、運土時データCm4’によって、図16に示すように、運土領域において、現況地形50と平行な第4目標面74を生成する。
【0093】
図17は、変形例に係る第2修正データCm”を示す図である。図17に示すように、第2修正データCm”において、掘削開始領域は、移動量nが0から作業間隔b0までの領域である。第2修正データCm”の開始時データCm1”は、0から作業間隔b0までの移動量nに対して、徐々に増加する目標変位dzを規定する。すなわち、開始時データCm1”では、目標変位dz は、0から作業間隔b0までの移動量nに対して、修正された第1目標値a1”まで、傾きA1で線形増加する。
【0094】
修正された第1目標値a1”は、第1目標値a1より大きい。コントローラ26は、開始値a0と、傾きA1と、作業間隔b0とから、修正された第1目標値a1”を算出する。コントローラ26は、開始時データCm1”によって、図18に示すように、第2開始位置Ps2から第1開始位置Ps1までの領域において、下方に向かって傾斜した第1目標面71を生成する。
【0095】
第2修正データCm”において、掘削領域は、移動量nが値b0から値b2-xまでの領域である。第2修正データCm”の掘削時データCm2”は、掘削領域において、移動量nに対して一定の目標変位dzを規定する。掘削時データCm2”において、掘削領域での目標変位dzは、修正された第1目標値a1”で一定である。コントローラ26は、掘削時データCm2”によって、図18に示すように、掘削領域において、第2目標面72を生成する。第2目標面72は、第1部分72aと第2部分72bとを含む。第1部分72aは、第1目標面71の前方に位置する。第1部分72aは、下方に向かって傾斜している。第1部分72aの傾斜角度は、第1目標面71の傾斜角度と同じである。また、第1目標面71と、第2目標面72の第1部分72aとは、間に水平部分が形成されることなく、連続的に接続されている。
【0096】
第2修正データCm”において、運土移行領域は、移動量nが値b2-xから値b3-yまでの領域である。第2修正データCm”の移行時データCm3”は、値b2-xから値b3-yまでの移動量nに対して、徐々に減少する目標変位dzを規定する。移行時データCm3”では、目標変位dz は、値b2-xから値b3-yまでの移動量nに対して、傾きA2で線形減少する。
【0097】
コントローラ26は、移行時データCm3”によって、図18に示すように、運土移行領域において、上方へ向かって傾斜した第3目標面73を生成する。なお、コントローラ26は、第2修正データCm”による掘削土量が、目標変位データCによる掘削土量と同じになるように、値xと値yとを決定する。すなわち、コントローラ26は、図17においてハッチングを付した部分の面積B7と面積B8とが同じになるように、値xと値yとを決定する。
【0098】
第2修正データCm”において、運土領域は、移動量nが値b3-y以上の領域である。第2修正データCm”の運土時データCm4”は、運土領域において、移動量nに対して一定の目標変位dzを規定する。運土時データCm4”において、運土領域での目標変位dzは、第2目標値a2で一定である。コントローラ26は、運土時データCm4”によって、図18に示すように、運土領域において、現況地形50と平行な第4目標面74を生成する。
【0099】
値xと値yとを決定する方法は、上述したものと異なってもよい。第1修正データC’による掘削土量は、目標変位データCによる掘削土量と異なってもよい。第2修正データC”による掘削土量は、目標変位データCによる掘削土量と異なってもよい。目標変位データCの形状は、上記のものと異なってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示によれば、前回の作業パスによる地形の影響を抑えて、作業の品質、或いは作業効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0101】
1 作業機械
13 作業機
26 コントローラ
31 位置センサ
C 目標変位データ
dz 目標変位
Ps1 第1開始位置
Ps2 第2開始位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18