(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】量子ドット分散体及びこれを含む硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20240507BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240507BHJP
C08F 292/00 20060101ALI20240507BHJP
C08G 75/06 20060101ALI20240507BHJP
H10K 59/38 20230101ALI20240507BHJP
【FI】
G02B5/20
C08F2/44 Z
C08F292/00
C08G75/06
H10K59/38
G02B5/20 101
(21)【出願番号】P 2021019712
(22)【出願日】2021-02-10
【審査請求日】2023-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2020-0017189
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514217912
【氏名又は名称】東友ファインケム株式会社
【氏名又は名称原語表記】DONGWOO FINE-CHEM CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】132,Yakchon-ro,Iksan-si Jeollabuk-do 570-977,Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョング ジュ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ソ-ヒ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュホ
(72)【発明者】
【氏名】シン,キュ チョル
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ヒョンジョン
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-029380(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2011-0133757(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第105018092(CN,A)
【文献】Yunhui TANG et al.,“A novel high-refractive index episulfide-thiol polymer for nanoimprinting optical elements”,Journal of Materials Chemistry C,2018年,Vol. 6, No. 32,p.8823-8831,DOI: 10.1039/c8tc02029a
【文献】Carlos PINA-HERNANDEZ et al.,“Nanoimprinted High-Refractive Index Active Photonic Nanostructures Based on Quantum Dots for Visible Light”,Scientific Reports,2017年12月15日,Vol. 7, No. 1,DOI: :10.1038/s41598-017-17732-0
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C08F 2/44
C08F 292/00
C08G 75/06
H10K 59/38
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドット、及び3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物を含
み、
前記3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物は、下記の化学式1で表される化合物を含む、量子ドット分散体。
【化1】
前記式中、
Zは、
【化2】
又は
【化3】
であり、
R
1
及びR
2
は、それぞれ独立して、存在しないか、鎖炭素のうちの1つ以上が酸素で置換若しくは非置換のC
1
~C
6
のアルキレン基であり、
Aは、存在しないか、又はO、NR
4
又はSであり、
R
3
及びR
4
は、それぞれ独立して、水素又はC
1
~C
6
のアルキル基であり、
n及びmは、それぞれ独立して、1~4の整数であり、
pは、1~100の整数である。
【請求項2】
n及びmは、1である、請求項
1に記載の量子ドット分散体。
【請求項3】
硬化性モノマー及び溶剤の少なくとも一方を更に含む、請求項1に記載の量子ドット分散体。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか一項に記載の量子ドット分散体を含む硬化性組成物。
【請求項5】
当該硬化性組成物は、光変換インク組成物、光変換樹脂組成物、又は自発光感光性樹脂組成物である、請求項
4に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
請求項
4に記載の硬化性組成物を用いて形成される硬化膜。
【請求項7】
当該硬化膜は、カラーフィルタ又は光変換シートである、請求項
6に記載の硬化膜。
【請求項8】
請求項
6に記載の硬化膜を含む画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット分散体及びこれを含む硬化性組成物に係り、より詳しくは、量子ドットの耐光性に優れ且つ塗膜への適用時に塗膜の硬度を向上させることができる量子ドット分散体及びこれを含む硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラーフィルタを具現する方法の1つとして、顔料分散型の感光性樹脂を用いた顔料分散法が適用されている。しかし、このような顔料分散法では、光源から照射された光がカラーフィルタを透過する過程で光の一部がカラーフィルタに吸収されることで光効率が低下し、また、カラーフィルタに含まれている顔料の特性によって色再現が低下するという問題点が生じている。
【0003】
こうした問題を解決することができる方案として、量子ドット感光性樹脂組成物を用いたカラーフィルタが提示された。例えば、大韓民国特許公開第2009-0036373号では、既存のカラーフィルタを量子ドット蛍光体からなる発光層に置き換えることで発光効率を向上させ、表示装置の表示品質を改善することができることを開示している。
【0004】
このように量子ドットをカラーフィルタの発光物質として用いた場合、発光波形を狭めることができ且つ顔料では具現できない高い色再現性を有し、優れた輝度特性を有する。しかし、量子ドットカラーフィルタが装着された画像表示装置では、光源として青色光を用い、このとき、用いる青色光が量子ドットの光特性を低下させるという問題点があった。
【0005】
そのため、量子ドットの耐光性を向上させることができる技術に関する開発が要求されている。
【0006】
さらに、量子ドットを用いて塗膜を形成する場合、塗膜の物性を増加させることができる方案が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、耐光性及び塗膜の硬度を向上させることができる量子ドット分散体を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記量子ドット分散体を含む硬化性組成物を提供することである。
【0009】
本発明のまた他の目的は、前記硬化性組成物を用いて形成される硬化膜を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、前記硬化膜を含む画像表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
一方、本発明は、量子ドット、及び3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物を含む量子ドット分散体を提供する。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物は、下記の化学式1で表される化合物を含んでよい。
【0013】
【0014】
前記式中、
Zは、
【0015】
【0016】
又は
【0017】
【0018】
であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、存在しないか、鎖炭素のうちの1つ以上が酸素で置換若しくは非置換のC1~C6のアルキレン基であり、
Aは、存在しないか、又はO、NR4又はSであり、
R3及びR4は、それぞれ独立して、水素又はC1~C6のアルキル基であり、
n及びmは、それぞれ独立して、1~4の整数であり、
pは、1~100の整数である。
【0019】
本発明の一実施形態において、n及びmは1であってよい。
【0020】
本発明の一実施形態に係る量子ドット分散体は、硬化性モノマー及び溶剤の少なくとも一方を更に含んでよい。
【0021】
他の一方で、本発明は、前記量子ドット分散体を含む硬化性組成物を提供する。
【0022】
本発明の一実施形態において、前記硬化性組成物は、光変換インク組成物、光変換樹脂組成物、又は自発光感光性樹脂組成物であってよい。
【0023】
また他の一方で、本発明は、前記硬化性組成物を用いて形成される硬化膜を提供する。
【0024】
本発明の一実施形態において、前記硬化膜は、カラーフィルタ又は光変換シートであってよい。
【0025】
また他の一方で、本発明は、前記硬化膜を含む画像表示装置を提供する。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る量子ドット分散体は、量子ドットの耐光性に優れ且つ塗膜への適用時に塗膜の硬度などの物理的特性に優れる。このため、本発明に係る量子ドット分散体は、カラーフィルタ、光変換シートなどの多様な量子ドット活用分野に有効に適用でき、信頼性に優れる画像表示装置を具現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明をより詳しく説明する。
【0028】
本発明の一実施形態は、量子ドット(A)、及び3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物(B)を含む量子ドット分散体に関する。
【0029】
量子ドット(A)
本発明の一実施形態において、前記量子ドットとは、ナノ大きさの半導体物質を称するものである。原子が分子をなし、分子がクラスタという小さな分子の集合体を構成してナノ粒子をなすが、このようなナノ粒子が半導体特性を呈しているときにこれを量子ドットという。前記量子ドットは、外部からエネルギーを受けて励起状態になると、当該量子ドットの自ら該当するエネルギーバンドギャップに応じたエネルギーを放出するようになる。
【0030】
本発明の一実施形態において、前記量子ドットは、非カドミウム系量子ドットであってよい。
【0031】
前記非カドミウム系量子ドットは、光による刺激で発光し得る量子ドット粒子であれば特に限定されない。例えば、II-VI族半導体化合物;III-V族半導体化合物;IV-VI族半導体化合物;IV族元素又はこれを含む化合物;及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるものであってよく、これらは、単独で又は2種以上混合して用いてよい。
【0032】
具体的に、前記II-VI族半導体化合物は、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物;ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる三元素化合物;及びHgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる四元素化合物からなる群より選ばれるものであってよいが、これらに限定されるものではない。
【0033】
前記III-V族半導体化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物;GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる三元素化合物;及びGaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる四元素化合物からなる群より選ばれるものであってよいが、これらに限定されるものではない。
【0034】
前記IV-VI族半導体化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物;SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる三元素化合物;及びSnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる四元素化合物からなる群より選ばれる1種以上であってよいが、同様にこれらに限定されるものではない。
【0035】
これらに限定されるものではないが、前記IV族元素又はこれを含む化合物は、Si、Ge、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる元素;及びSiC、SiGe、及びこれらの混合物からなる群より選ばれる二元素化合物からなる群より選ばれるものであってよい。
【0036】
前記量子ドットは、均質な(homogeneous)単一構造;コア-シェル(core-shell)、グラディエント(gradient)構造などのような二重構造;又はこれらの混合構造を有するものであってよい。好ましくは、前記量子ドットは、コア及びコアを覆うシェルを含むコア-シェル構造を有するものであってよい。
【0037】
具体的に、前記コア-シェルの二重構造において、それぞれのコアとシェルをなす物質は、前述した互いに異なる半導体化合物からなるものであってよい。例えば、前記コアは、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、及びInAlPSbからなる群より選ばれる1種以上を含み、前記シェルは、ZnSe、ZnS、及びZnTeからなる群より選ばれる1種以上を含んでよいが、これらに限定されるものではない。
【0038】
好ましくは、コア-シェル構造の量子ドットは、InP/ZnS、InP/ZnSe、InP/GaP/ZnS、InP/ZnSe/ZnS、InP/ZnSeTe/ZnS、及びInP/MnSe/ZnSなどが挙げられる。
【0039】
前記量子ドットは、湿式化学工程(wet chemical process)、有機金属化学蒸着工程(MOCVD、metal organic chemical vapor deposition)、又は分子線エピタキシ工程(MBE、molecular beam epitaxy)によって合成されていてよいが、これらに限定されるものではなく、湿式化学工程(wet chemical process)によって合成したほうがより光特性に優れる量子ドットが得られるため、好ましい。
【0040】
前記湿式化学工程とは、有機溶剤に前駆体物質を入れて粒子を成長させる方法である。湿式化学工程では、結晶が成長するときに有機溶剤が自然に量子ドット結晶の表面に配位し、分散剤の役割をして結晶の成長を調節するようになるので、有機金属化学蒸着工程や分子線エピタキシのような気相蒸着法よりも容易且つ低廉な工程によってナノ粒子の成長を制御することができる。そのため、前記湿式化学工程を用いて前記量子ドットを製造したほうが好ましい。
【0041】
湿式化学工程によって量子ドットを製造する場合、量子ドットの凝集を抑え且つ量子ドットの粒子の大きさをナノレベルに制御するために有機配位子が用いられる。このような有機配位子としては、一般的にオレイン酸が用いられてよい。
【0042】
本発明の一実施形態において、前記量子ドットの製造過程で用いられたオレイン酸は、必要に応じて他の有機配位子によって配位子交換方法により置き換えられる。
【0043】
前記配位子交換は、本来の有機配位子、すなわちオレイン酸を有する量子ドットを含有する分散液に、交換したい有機配位子を添加し、これを常温~200℃で30分~3時間撹拌して行われてよい。必要に応じて前記配位子交換反応が完了した量子ドットを分離し精製する過程を更に行ってもよい。
【0044】
前記他の有機配位子としては、例えば、C5~C20のアルキルカルボン酸、C5~C20のアルケニルカルボン酸、C5~C20のアルキニルカルボン酸、チオール(thiol)、リン酸、ピリジン、メルカプトアルコール、ホスフィン、ホスフィン酸化物などを含んでよく、これらに限定されるものではない。
【0045】
前記量子ドット(A)は、量子ドット分散体の全体100重量%に対し、5~80重量%、好ましくは、10~70重量%の範囲で含まれてよい。前記量子ドットが前記範囲内で含まれる場合、分散安定性に優れる。
【0046】
3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物(B)
本発明の一実施形態において、前記3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物(B)は、量子ドットの耐光性を向上させ且つ塗膜への適用時に硬度などの物理的特性を強化するための添加剤として且つ量子ドットの分散媒としての役割をする。
【0047】
具体的に、前記3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物は、青色光源に影響され得る量子ドットの光保持率を向上させることができる。また、前記3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物は、量子ドットを硬化性組成物に適用して塗膜を形成する場合、塗膜の硬度などの物理的特性を向上させることができる。
【0048】
好ましくは、前記3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物は、下記の化学式1で表される化合物を含んでよい。
【0049】
【0050】
前記式中、
Zは、
【0051】
【0052】
又は
【0053】
【0054】
であり、
R1及びR2は、それぞれ独立して、存在しないか、鎖炭素のうちの1つ以上が酸素で置換若しくは非置換のC1~C6のアルキレン基であり、
Aは、存在しないか、又はO、NR4又はSであり、
R3及びR4は、それぞれ独立して、水素又はC1~C6のアルキル基であり、
n及びmは、それぞれ独立して、1~4の整数であり、
pは、1~100の整数である。
【0055】
本明細書において用いられる鎖炭素のうちの1つ以上が酸素で置換若しくは非置換のC1~C6のアルキレン基は、炭素数1~6個からなる直鎖状若しくは分岐状の2価炭化水素において鎖炭素のうちの1つ以上が酸素で置換若しくは非置換の官能基を意味し、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、ブチレン、オキシエチレンなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0056】
本明細書において用いられるC1~C6のアルキル基は、炭素数1~6個で構成された直鎖状若しくは分岐状の1価炭化水素を意味し、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、i-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシルなどが含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0057】
本発明の一実施形態において、n及びmは、1であってよい。
【0058】
前記3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物(B)は、量子ドット分散体の全体100重量%に対し、5~95重量%、好ましくは、5~90重量%の範囲で含まれてよい。前記3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物が、量子ドット分散体の全体100重量%に対し、5重量%未満の量で含まれると、量子ドットの分散性が低下することがあり、また95重量%超の量で含まれると、分散体の分散特性には優れるが、フィルム化した際に励起光の漏れ(leakage)によって色再現特性が低下することがある。
【0059】
本発明の一実施形態に係る量子ドット分散体は、硬化性モノマー(C)及び溶剤(D)の少なくとも一方を更に含んでよい。
【0060】
硬化性モノマー(C)
本発明の一実施形態において、前記硬化性モノマー(C)は、光や熱の作用による反応性を有し、量子ドットの分散媒として作用する。
【0061】
例えば、前記硬化性モノマー(C)は、単官能単量体、2官能単量体、その他の多官能単量体などが挙げられ、これらのうち2官能単量体が好ましく用いられる。
前記単官能単量体の種類は特に限定されず、例えば、ノニルフェニルカルビトールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、2-エチルヘキシルカルビトールアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、N-ビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0062】
前記2官能単量体の種類は特に限定されないが、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのビス(アクリロイルオキシエチル)エーテル、3-メチルペンタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0063】
前記多官能単量体の種類は特に限定されず、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシレイテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシレイテッドトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシレイテッドジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、プロポキシレイテッドジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0064】
前記硬化性モノマー(C)は、量子ドット分散体の全体100重量%に対し、5~80重量%、好ましくは、5~70重量%の範囲で含まれてよい。前記硬化性モノマーが、量子ドット分散体の全体100重量%に対し、5重量%未満の量で含まれると、分散性が低下したり塗膜の硬化密度が低下して金属保護膜の蒸着の際にシワやクラックのような問題が生じることがあり、また、80重量%超の量で含まれると、励起光の漏れによって色再現特性が低下することがある。
【0065】
溶剤(D)
本発明の一実施形態において、前記溶剤(D)は特に制限されず、当該技術分野において通常用いられる有機溶剤であってよい。
【0066】
例えば、前記溶剤としては、エーテル又はエステル系溶剤、脂肪族飽和炭化水素系溶剤、ハロゲン化炭化水素系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、アルコール系溶剤などを用いてよい。
【0067】
具体的に、前記エーテル又はエステル系溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート、n-ペンチルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、メトキシブチルアセテート、メトキシペンチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、γ-ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジプロピルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテルなどが挙げられる。
【0068】
前記脂肪族飽和炭化水素系溶剤としては、ヘキサン、ペンタン、ヘプタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、ケロシン(kerosene)などが挙げられる。
【0069】
前記ハロゲン化炭化水素系溶剤としては、クロロホルム、ジクロロメタン、4塩化炭素、ジクロロエタン、テトラクロロエタンなどが挙げられる。
【0070】
前記芳香族炭化水素系溶剤としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、ジクロロベンゼンなどが挙げられる。
【0071】
前記ケトン系溶剤としては、メチルエチルケトン、アセトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどが挙げられる。
【0072】
前記アルコール系溶剤としては、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、グリセリンなどが挙げられる。
【0073】
前記らの溶剤は、単独で又は2種以上混合して用いてよい。
【0074】
前記溶剤(D)は、量子ドット分散体の全体100重量%に対し、20~90重量%、好ましくは、25~85重量%の範囲で含まれてよい。前記溶剤が前記範囲内で含まれると、量子ドット分散体中での粒子の沈澱が抑制でき、分散安定性及び光学特性に優れるため分散体の保管安定性の面で有利である。
【0075】
<硬化性組成物>
本発明の一実施形態は、上述した量子ドット分散体を含む硬化性組成物に関する。
例えば、前記硬化性組成物は、光変換インク組成物、光変換樹脂組成物、又は自発光感光性樹脂組成物であってよい。
【0076】
本発明の一実施形態において、前記光変換インク組成物は、前記量子ドット分散体の他、光重合性モノマー及び光重合開始剤を更に含んでよい。
【0077】
前記光重合性モノマーは、光及び後述する光重合開始剤の作用で重合し得る化合物であれば、その種類は特に制限されずに用いてよく、上述した量子ドット分散体で用いられる硬化性モノマーと同一のものであってよい。
【0078】
前記光重合性モノマーは、前記光変換インク組成物の全体100重量%に対し、20~90重量%、好ましくは、30~80重量%の量で含まれてよい。前記光重合性モノマーが前記範囲内で含まれると、画素部の強度や平滑性の面で好ましいという利点がある。前記光重合性モノマーが前記範囲未満で含まれると、画素部の強度がやや低下することがあり、また、前記光重合性モノマーが前記範囲を超えて含まれると、平滑性がやや低下することがあるため、前記範囲内で含まれることが好ましい。
【0079】
前記光重合開始剤は、前記光重合性モノマーを重合させ得るものであれば、その種類は特に制限されずに用いてよい。特に、前記光重合開始剤は、重合特性、開始効率、吸収波長、入手性、価格などの観点から、アセトフェノン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、トリアジン系化合物、ビイミダゾール系化合物、オキシム系化合物、及びチオキサントン系化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物を用いることが好ましい。
【0080】
前記光重合開始剤は、前記光変換インク組成物の全体100重量%に対し、0.01~20重量%、好ましくは、0.5~15重量%の範囲で含まれてよい。前記光重合開始剤が前記範囲内で含まれると、前記光変換インク組成物が高感度化して露光時間が短縮することで生産性が向上するため好ましい。また、本発明に係る光変換インク組成物を用いて形成した画素部の強度と前記画素部の表面での平滑性が良好になるという利点がある。
【0081】
前記光重合開始剤は、本発明に係る光変換インク組成物の感度を向上させるために、光重合開始補助剤を更に含んでよい。前記光重合開始補助剤が含まれると、感度が一層高められて生産性が向上するという利点がある。
【0082】
前記光重合開始補助剤は、例えば、アミン化合物、カルボン酸化合物、チオール基を有する有機硫黄化合物からなる群より選ばれる1種以上の化合物が好ましく用いられてよいが、これらに限定されるものではない。
【0083】
前記光重合開始補助剤は、本発明の効果を損なわない範囲で適宜追加して用いてよい。
【0084】
本発明の一実施形態において、前記光変換インク組成物は、散乱粒子を更に含んでよい。
【0085】
前記散乱粒子は、量子ドットから放出された光の経路を増やして全体的な光効率を高める役割をする。
【0086】
前記散乱粒子としては、通常の無機材料を用いてよく、好ましくは、金属酸化物を用いてよい。
【0087】
前記金属酸化物は、Li、Be、B、Na、Mg、Al、Si、K、Ca、Sc、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Mo、Cs、Ba、La、Hf、W、Tl、Pb、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Ti、Sb、Sn、Zr、Nb、Ce、Ta、In、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれた1種以上の金属を含む酸化物であってよいが、これらに限定されるものではない。
【0088】
具体的に、Al2O3、SiO2、ZnO、ZrO2、BaTiO3、TiO2、Ta2O5、Ti3O5、ITO、IZO、ATO、ZnO-Al、Nb2O3、SnO、MgO、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれた1種であってよい。必要に応じて、アクリレートなどの不飽和結合を有する化合物で表面処理された材質も使用してよい。
【0089】
散乱粒子は、50~1000nmの平均粒径を有してよく、好ましくは、100~500nm、より好ましくは、150~300nmの範囲のものがよい。このとき、粒子の大きさが小さ過ぎると、量子ドットから放出された光の十分な散乱効果を期待することができず、これと逆に大き過ぎると、組成物中に沈んだりして均一な品質の光変換層表面を得ることができないため、前記範囲内で適宜調節して用いる。
【0090】
本発明において平均粒径とは、数平均粒径のことであってよく、例えば、電界放出型走査電子顕微鏡(FE-SEM)又は透過電子顕微鏡(TEM)によって観察した像から求めることができる。具体的に、FE-SEM又はTEMの観察画像から幾つかのサンプルを抽出し、これらのサンプルの径を測定して算術平均した値から得ることができる。
【0091】
前記散乱粒子は、前記光変換インク組成物の全体100重量%に対し、0.5~20重量%、好ましくは、1~15重量%の範囲で含んでよい。前記散乱粒子が前記範囲内で含まれると、発光強さの増加効果が極大化するため好ましい。前記散乱粒子が前記範囲未満で含まれると、得ようとする発光強さの確保が難しくなることがあり、また前記範囲を超えると、青色照射光の透過度が低下するため発光効率に問題が生じることがある。
【0092】
本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、前記した成分の他、塗膜平坦性や密着性を高めるために界面活性剤、密着促進剤といった添加剤を更に含んでよい。
【0093】
本発明の一実施形態に係る光変換インク組成物は、溶剤型又は無溶剤型のものであってよく、連続工程の面から、無溶剤型のものが好ましい。
【0094】
前記光変換インク組成物が、無溶剤型のものである場合、溶剤を実質的に含まず、含んでも光変換インク組成物の全体100重量%に対し、2重量%以下の量で含んでよい。
【0095】
前記光変換インク組成物が、溶剤型のものである場合、上述した量子ドット分散体で説明したのと同一の溶剤を用いてよい。
【0096】
本発明の一実施形態において、前記光変換樹脂組成物は、前記量子ドット分散体の他、硬化性樹脂を更に含む。
【0097】
前記硬化性樹脂は、量子ドットの分散媒として且つ結合剤樹脂として作用する。
【0098】
前記硬化性樹脂としては、光を透過する透明な高分子を用いてよく、特に、量子ドットの劣化防止の面から、低透湿、低透気特性を有する樹脂を用いてよい。
【0099】
例えば、前記硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル系樹脂、エポキシアクリレート樹脂、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルクロリドなどを単独で又は2種以上含んでよく、特にエポキシ樹脂を含んでよい。
【0100】
前記硬化性樹脂のゲル透過クロマトグラフィー(GPC;テトラヒドロフランを溶出溶剤とする)で測定したポリスチレン換算重量平均分子量(以下、略して「重量平均分子量」という)は、5000g/mol~50000g/mol、好ましくは、8000g/mol~40000g/molの範囲であることが好ましい。重量平均分子量が前記範囲内であると、塗膜の硬度が増加するという長所があるため好ましい。
【0101】
前記硬化性樹脂は、光変換樹脂組成物の固形分全体100重量%に対し、5~60重量%、好ましくは、10~50重量%の範囲の量で含まれてよい。前記硬化性樹脂が5重量%未満の量で含まれると、工程上、厚膜の硬化膜を得ることが難しくなり、また60重量%超の量で含まれると、均一な厚さの硬化膜の形成が難しくなることがある。
【0102】
本発明の一実施形態において、前記光変換樹脂組成物は、散乱粒子、溶剤、分散剤及び/又は硬化剤を更に含んでよい。
【0103】
前記散乱粒子は、上述した光変換インク組成物で用いるものと同一のものを用いてよい。
【0104】
前記散乱粒子は、光変換樹脂組成物の固形分全体100重量%に対し、0.5~30重量%の範囲の量で含まれてよい。前記散乱粒子が0.5重量%未満の量で含まれると、光散乱の効果が低すぎて塗膜で用いることができる適切な光出力が得られないことがあり、また30重量%超の量で含まれれると、散乱の効果が強すぎて量子ドットの発光した光が透過できず、塗膜を通り抜けることができないため光出力が低下することがある。
【0105】
前記溶剤としては、上述した量子ドット分散体で説明したのと同一の溶剤を用いてよい。
【0106】
前記分散剤は、量子ドットの脱凝集効果を奏する。前記分散剤としては、カルボン酸及び不飽和二重結合を含む化合物を用いてよい。
【0107】
前記硬化剤としては、エポキシ化合物、多官能イソシアネート化合物、オキセタン化合物などを用いてよい。
【0108】
本発明に係る光変換樹脂組成物は、必要に応じて界面活性剤、密着促進剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などの添加剤を更に含んでよい。
【0109】
本発明の一実施形態において、前記自発光感光性樹脂組成物は、前記量子ドット分散体の他、アルカリ可溶性樹脂、光重合性モノマー、及び光重合開始剤を更に含む。
【0110】
前記アルカリ可溶性樹脂は、前記自発光感光性樹脂組成物で製造するパターンの非露光部をアルカリ可溶性にして除去可能にし、露光領域を残留させる役割を遂行することができる。また、前記自発光感光性樹脂組成物が前記アルカリ可溶性樹脂を含む場合、前記量子ドットが組成物中に一様に分散できるようにし、且つ工程中に前記量子ドットを保護して輝度を保つようにする役割を遂行することができる。
【0111】
前記アルカリ可溶性樹脂は、50~200(KOHmg/g)の範囲の酸価を有するものを選定して用いてよい。前記「酸価」とは、重合体1gを中和するのに要する水酸化カリウムの量(mg)として測定される値であって溶解性に関与する。前記アルカリ可溶性樹脂の酸価が前記範囲未満であると、十分な現像速度を確保し難くなることがあり、また前記範囲を超えると、基板との密着性が減少してパターンの短絡が生じ易くなり、且つ組成物全体の保存安定性が低下して粘度が上昇するという問題が生じることがある。
【0112】
また、前記アルカリ可溶性樹脂の重量平均分子量は、3,000~30,000、好ましくは、5,000~20,000の範囲であってよく、分子量分布度は、1.5~6.0、好ましくは、1.8~4.0の範囲であってよい。
【0113】
前記アルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基含有不飽和単量体の重合体、又はこれと共重合可能な不飽和結合を有する単量体との共重合体、及びこれらの組み合わせであってよい。
【0114】
前記カルボキシル基含有不飽和単量体としては、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和トリカルボン酸などが挙げられる。具体的に、不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-クロロアクリル酸、桂皮酸などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸は酸無水物であってもよく、具体的には、マレイン酸無水物、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物などが挙げられる。また、不飽和ジカルボン酸は、そのモノ(2-(メタ)アクリロイルオキシアルキル)エステルであってもよく、例えば、コハク酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、コハク酸モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイルオキシエチル)、フタル酸モノ(2-メタクリロイルオキシエチル)などが挙げられる。不飽和ジカルボン酸は、その両末端ジカルボキシ重合体のモノ(メタ)アクリレートであってもよく、例えば、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノアクリレート、ω-カルボキシポリカプロラクトンモノメタクリレートなどが挙げられる。これらのカルボキシル基含有単量体は、それぞれ単独で又は2種以上を混合して用いていてよい。
また、カルボキシル基含有不飽和単量体と共重合が可能な単量体は、芳香族ビニル化合物、不飽和カルボン酸エステル化合物、不飽和カルボン酸アミノアルキルエステル化合物、不飽和カルボン酸グリシジルエステル化合物、カルボン酸ビニルエステル化合物、不飽和エーテル化合物、シアン化ビニル化合物、不飽和アミド化合物、不飽和イミド化合物、脂肪族共役ジエン化合物、分子鎖の末端にモノアクリロイル基又はモノメタクリロイル基を有する巨大単量体、バルキー性単量体、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれた1種であってよい。
【0115】
前記アルカリ可溶性樹脂は、自発光感光性樹脂組成物の固形分全体100重量%に対し、5~80重量%、具体的に、10~70重量%、より具体的に、15~60重量%の範囲で含まれてよい。
【0116】
前記光重合性モノマーは、光及び後述する光重合開始剤の作用で重合し得る化合物であれば、上述した量子ドット分散体で用いられる硬化性モノマーと同一のものであってよい。
【0117】
前記光重合性モノマーは、自発光感光性樹脂組成物の固形分全体100重量%に対し、5~70重量%、具体的に、10~60重量%、より具体的に、15~50重量%の範囲で含まれてよい。
【0118】
前記光重合開始剤は、上述した光変換インク組成物で用いるものと同一のものを用いてよく、必要に応じて光重合開始補助剤を更に含んでよい。
【0119】
前記光重合開始剤は、自発光感光性樹脂組成物の固形分全体100重量%に対し、0.1~20重量%、好ましくは、0.5~15重量%、より好ましくは、1~10重量%の範囲で含まれてよい。
【0120】
前記自発光感光性樹脂組成物は、溶剤を更に含んでよく、前記溶剤としては、上述した量子ドット分散体で説明したものと同一の溶剤を用いてよい。
【0121】
前記自発光感光性樹脂組成物中の溶剤の含量は、前記自発光感光性樹脂組成物の全体100重量%に対し、20~90重量%、好ましくは、25~85重量%、より好ましくは、30~80重量%の範囲であってよい。
【0122】
本発明に係る自発光感光性樹脂組成物は、必要に応じて密着促進剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、凝集防止剤などの添加剤を更に含んでよい。
【0123】
<硬化膜>
本発明の一実施形態は、上述した硬化性組成物を用いて形成される硬化膜に関する。
【0124】
本発明の一実施形態において、前記硬化膜は、カラーフィルタ又は光変換シートであってよい。
【0125】
本発明に係るカラーフィルタ及び光変換シートは、本発明に係る量子ドット分散体を含む硬化性組成物の硬化物を含むため、量子ドットの耐光性に優れ且つ塗膜の硬度に優れるという利点がある。
【0126】
前記カラーフィルタは、基板及び前記基板の上部に形成されたパターン層を含む。
【0127】
前記基板は、前記カラーフィルタそれ自体基板であってよく、又は、ディスプレイ装置などにカラーフィルタが位置する部位であってもよく、特に制限されない。前記基板は、ガラス、シリコン(Si)、シリコン酸化物(SiOx)、Al、GaAs又は高分子基板であってよく、前記高分子は、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミドなどであってよい。前記基板は、隔壁マトリックスが形成されていてもよい。
【0128】
前記パターン層は、本発明に係る硬化性組成物を含む層であって、インクジェット印刷パターニング方式にてパターン化され、又はフォトリソグラフィにてパターン化されたものであってよい。
【0129】
前記インクジェット印刷パターニング方式を用いたパターン形成方法は、上述した硬化性組成物をインクジェット方式にて所定の領域に塗布し、該塗布された硬化性組成物を硬化することで行われてよい。
【0130】
先ず、本発明に係る硬化性組成物をインクジェット噴射機に注入し基板の所定の領域をプリントする。
【0131】
インクジェット噴射機の一例であるピエゾインクジェットヘッドから噴射され基板の上で適切な相(phase)を形成するために、粘度、流動性、量子ドット粒子などの特性がインクジェットヘッドと釣り合う必要がある。本発明で用いられたピエゾインクジェットヘッドは制限されないが、約10~100pL、好ましくは、約20~40pLの液滴の大きさを有するインクを噴射する。
【0132】
インクジェット印刷パターニング方式を用いる場合、本発明に係る硬化性組成物の粘度は約3~30cPの範囲が適当であり、より好ましくは、7~20cPの範囲で調節される。
【0133】
前記フォトリソグラフィ方式を用いたパターン形成方法は、上述した硬化性組成物を塗布し所定のパターンに露光、現像、及び熱硬化することで行われてよい。前記フォトリソグラフィ方式を用いたパターン形成方法は、当該技術分野において通常的に知られた方法を行うことで形成してよい。
【0134】
前記カラーフィルタは、赤色パターン層、緑色パターン層、及び青色パターン層のうちの2種色相のパターン層のみを備えてもよいが、これに限定されない。なお、前記カラーフィルタが2種色相のパターン層のみを備える場合、前記パターン層は、前記量子ドット粒子を含有しない透明パターン層を更に備えてよい。
【0135】
前記カラーフィルタが前記2種色相のパターン層のみを備える場合は、前記2種色相以外の色相を呈する波長の光を放出する光源を用いてよい。例えば、前記カラーフィルタが赤色パターン層及び緑色パターン層を含む場合は、青色光を放出する光源を用いてよく、この場合、赤量子ドットは赤色光を、緑量子ドットは緑色光を放出し、前記透明パターン層は、前記光源による青色光が素通しすることによって青色を呈してよい。
【0136】
前記光変換シートは、発光素子が放出する光の波長を変換して放出するシートである。
【0137】
前記光変換シートは、基材を更に含んでよい。
【0138】
前記光変換シートは、基材上に上述した硬化性組成物を塗布し乾燥した後に硬化してなるものであってよい。
【0139】
前記基材は、必要に応じて離型処理が施されたものであってよい。
【0140】
前記基材としては、ガラス又はポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムなどを用いてよい。
【0141】
前記硬化は、熱硬化又は光硬化条件で行われてよい。
【0142】
<画像表示装置>
本発明の一実施形態は、上述した硬化膜を含む画像表示装置に関する。
【0143】
本発明の一実施形態に係る画像表示装置において上述した硬化膜は、カラーフィルタ又は光変換シートとして適用されてよく、これにより、カラーフィルタ基板やバックライトユニットの光源の製造の際に用いられ得る。
【0144】
本発明に係る硬化膜は、通常の液晶表示装置(LCD)だけでなく、電界発光表示装置(EL)、プラズマ表示装置(PDP)、電界放出表示装置(FED)、有機発光素子(OLED)、量子ドット発光ダイオード(Quantum Dot Light-Emitting Diode、QLED)などの各種の画像表示装置に適用可能である。
【0145】
本発明に係る画像表示装置は、上述した硬化膜を備えたことを除いては、当該技術分野において知られた構成を含む。
【0146】
また、本発明の一実施形態に係る量子ドットは、上述したディスプレイだけでなく、照明用光源、太陽電池、半導体レーザ/光増幅器、バイオイメージングなどの素材としても適用可能である。
【0147】
以下、実施例、比較例及び実験例によって本発明をより具体的に説明することにする。なお、これらの実施例、比較例及び実験例は、単に本発明を説明するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらに限定されるものではないことは当業者にとって自明である。
【0148】
合成例1:量子ドット(A-1)の合成
三つ口フラスコ(3-neck flask)にインジウムアセテート0.05839g、オレイン酸0.12019g、及び1-オクタデセン(ODE)10mLを入れた。前記フラスコを撹拌しながら110℃、100mTorr下で30分間の脱気(degassing)過程を経た後、溶液が透明になるまで不活性気体下、270℃の温度で加熱した。
【0149】
リン(P)前駆体としてトリス(トリメチルシリル)ホスフィンを0.025054g準備し、1-オクタデセン0.5mLとトリ-n-オクチルホスフィン0.5mLに入れて撹拌し、これを、不活性気体下、270℃で加熱された前記フラスコに素早く注入した。1時間反応させた後、素早く冷却させて反応を終結させた。次いで、フラスコの温度が100℃に達したとき、10mLのトルエンを注入してから50mL遠心分離チューブに移した。エタノール10mLを添加した後、沈澱及び再分散方法を活用して2回精製した。精製されたInPコアナノ粒子を1-オクタデセンに分散させた後に保存した。
【0150】
三つ口フラスコに酢酸亜鉛3.669g、オレイン酸20mL、及び1-オクタデセン20mLを入れ、撹拌しながら110℃、100mTorr下で30分間の脱気(degassing)過程を経た後、溶液が透明になるまで不活性気体下、270℃の温度で加熱してから60℃に冷却させて、透明なオレイン酸亜鉛形態の前駆体溶液を得た。
【0151】
三つ口フラスコに硫黄0.6412g及びトリ-n-オクチルホスフィン10mLを入れ、溶液が透明になるまで不活性気体雰囲気で撹拌しながら80℃の温度で加熱してから常温に冷却させて、TOP:S形態のS前駆体溶液を得た。
【0152】
別途の三つ口フラスコに予め準備したInPコアのナノ粒子溶液を入れ、フラスコの温度を300℃に調節してから予め準備した亜鉛前駆体溶液0.6mLを注射器を活用して素早く注入した。次いで、予め準備したS前駆体溶液0.3mLを注射器ポンプを活用して2mL/hrの速度でフラスコに注入した。注入が終わってから更に3時間反応を進め、素早く冷却させて反応を終結させた。フラスコの温度が100℃に達したとき、10mLのトルエンを注入した後、50mL遠心分離チューブに移した。エタノール10mLを添加した後、沈澱及び再分散方法を活用して2回精製した。精製されたInP/ZnSコア-シェル構造のナノ粒子をn-クロロホルムに分散させた後に保存した。固形分は25重量%に調整した。最大発光波長は525nmであった。
【0153】
合成例2:量子ドット(A-2)の合成
インジウムアセテート(Indium acetate)0.4mmol(0.058g)、パルミチン酸(palmitic acid)0.6mmol(0.15g)、及び1-オクタデセン(octadecene)20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に転換した。280℃で加熱した後、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(TMS3P)0.2mmol(58μl)及びトリオクチルホスフィン1.0mLの混合溶液を素早く注入し、0.5分間反応させた。
【0154】
次いで、亜鉛アセテート2.4mmoL(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、及びトリオクチルアミン20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に転換し、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInPコア溶液2mLを入れ、次いで、トリオクチルホスフィン中のセレニウム(Se/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温に素早く冷却させた反応溶液にエタノールを入れ、遠心分離して得た沈澱物を減圧ろ過後に減圧乾燥して、InP/ZnSeコア-シェルを形成させた。
【0155】
次いで、亜鉛アセテート2.4mmoL(0.448g)、オレイン酸4.8mmol、及びトリオクチルアミン20mLを反応器に入れ、真空下、120℃で加熱した。1時間後に反応器内の雰囲気を窒素に転換し、反応器を280℃に昇温させた。先に合成したInP/ZnSeコア-シェル溶液2mLを入れ、次いで、トリオクチルホスフィン中の硫黄(S/TOP)4.8mmolを入れた後、最終混合物を2時間反応させた。常温に素早く冷却させた反応溶液にエタノールを入れ、遠心分離して得た沈澱物を減圧ろ過後に減圧乾燥して、InP/ZnSe/ZnSコア-シェル構造の量子ドットを収得した後にクロロホルムに分散させた。固形分は25重量%に調整した。最大発光波長は520nmであった。
【0156】
実施例及び比較例:量子ドット分散体の製造
下記表1の組成でそれぞれの成分を混合して量子ドット分散体を製造した(重量%)。
【0157】
【0158】
実施例及び比較例:光変換インク組成物の製造
下記表2及び表3の組成でそれぞれの成分を混合して光変換インク組成物を製造した(重量%)。
【0159】
【0160】
【0161】
実験例1:
前記実施例及び比較例で製造された量子ドット分散体の粘度安定性、分散粒度、及び耐光性を下記のような方法にて測定し、その結果を下記表4に表した。
【0162】
(1)粘度安定性
実施例1~15及び比較例1~比較例4の量子ドット分散体に対し、R型粘度計(VISCOMETER MODEL RE120L SYSTEM、東機産業株式会社製)を用いて、回転数10rpm、温度30℃の条件で初期粘度及び低温5℃で1ヶ月保管後の粘度を測定した。粘度変化率から粘度安定性を下記の評価基準によって評価した。
【0163】
<評価基準>
○:粘度変化率105%以下
△:粘度変化率105%超~110%以下
×:粘度変化率110%超
(2)分散粒度
前記実施例1~15及び比較例1~比較例4の量子ドット分散体の分散粒度をELSZ-2000ZS(大塚電子社製)を用いて測定した。
【0164】
(3)耐光性(光保持率)
量子ドット分散体の製造初期の量子効率(QY%)と常温で15日放置後の量子効率(QY%)をPL分光光度計及びUV-Vis分光光度計を用いて測定した。
【0165】
量子ドットの表面が酸化すると、量子効率が低減するようになるので、量子効率の低減量を測定して耐光性(光保持率)を確認することができる。すなわち、ΔQY%を測定して耐光性を確認することができる。
【0166】
【0167】
前記表4に表したように、3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物を含む実施例の量子ドット分散体は、3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物を含まない比較例の量子ドット分散体に比べて、粘度安定性、分散粒度、及び耐光性が大きく向上することを確認することができた。
【0168】
実験例2:
前記実施例及び比較例で製造された光変換インク組成物を用いて下記のように光変換コーティング層を製造し、このときの光変換効率、耐光性(光保持率)、連続ジェッティング回数、及び塗膜の硬度を下記のような方法にて測定し、その結果を下記表5に表した。
【0169】
<光変換コーティング層の製造>
実施例及び比較例で製造されたそれぞれの光変換インク組成物をインクジェット方式で5cm×5cmガラス基板上に塗布した後、紫外線光源としてg、h、i線をいずれも含有する1kWの高圧水銀灯を用いて100mJ/cm2で照射後、180℃の加熱オーブンで30分間加熱して、光変換コーティング層を製造した。
【0170】
(1)光変換効率
製造された光変換コーティング層を青色(blue)光源(XLamp XR-E LED、Royal blue 450、Cree社製)の上部に位置させた後、輝度測定器(CAS140CT Spectrometer、Instrument systems社製)を用いて光変換効率を下記の数学式1にて測定した。
光変換効率(%)が高いほど優れた輝度を得ることができる。
【0171】
【0172】
(2)耐光性(光保持率)
製造された光変換コーティング層を青色(blue)光源(XLamp XR-E LED、Royal blue 450、Cree社製)の上部に位置させた後、輝度測定器(CAS140CT Spectrometer、Instrument systems社製)を用いて初期光変換効率を前記数学式1にて算出した。次いで、前記光変換コーティング層を80mW/cm2照度の450nm LEDで3日間照射してから前記のように光変換効率を測定し、該光変換効率から下記の数学式2にて光保持率を算出した。
【0173】
【0174】
(3)連続ジェッティング回数
前記実施例16~30及び比較例5~9の光変換インク組成物をユニジェット社製のインクジェットプリンティング設備に充填した後、ジェッティングヘッドの温度を40℃に固定してから1分間インクを吐出し、その後、30分間放置することを、ジェッティングヘッド部のノズル詰りにより吐出ができなくなるまで繰り返し行って連続ジェッティング回数を評価した。
【0175】
連続ジェッティング回数が増加するほど連続工程に優れるという特性を得ることができる。
【0176】
(4)塗膜の硬度
前記製造された光変換コーティング層の硬度を硬度計(HM500;Fischer社製)を用いて150℃の高温で測定し、その表面硬度を下記の評価基準で評価した。
【0177】
<評価基準>
○:表面硬度50N/mm2以上
△:表面硬度30N/mm2以上50N/mm2未満
×:表面硬度30N/mm2未満
【0178】
【0179】
前記表5に表したように、3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物を含む量子ドット分散体を用いた実施例の光変換インク組成物は、3~6員の硫黄含有脂環式炭化水素基を有する化合物を含まない量子ドット分散体を用いた比較例の光変換インク組成物に比べて、光変換効率、耐光性(光保持率)、連続ジェッティング回数、及び塗膜の硬度に優れることを確認することができた。
【0180】
以上、本発明の特定の部分について詳しく記述したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、このような具体的な記述は単に好適な具現例であるに過ぎず、これらによって本発明の範囲が制限されるものではないことは明らかである。本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者であれば、前記内容を基に本発明の範疇内で種々の応用および変形を行うことが可能であろう。
【0181】
したがって、本発明の実質的な範囲は、特許請求の範囲とその等価物によって定義されると言えよう。