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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】生体情報表示システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
A61B5/00 D
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021123243
(22)【出願日】2021-07-28
(65)【公開番号】P2023018883
(43)【公開日】2023-02-09
【審査請求日】2024-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(74)【代理人】
【識別番号】100179280
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 育郎
(72)【発明者】
【氏名】菅原 聡
(72)【発明者】
【氏名】飯田 徳仁
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 秀幸
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/097133(WO,A1)
【文献】特開2020-185020(JP,A)
【文献】特開2015-012948(JP,A)
【文献】特開2014-166568(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0302538(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/00- 5/113
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベッド上の被験者の生体情報を表示する生体情報表示システムであって、
前記被験者の生体信号を取得する生体信号取得部と、
前記生体信号に基づいて、前記被験者の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報を表示部に表示する表示制御部とを備え、
前記表示制御部が、前記生体情報取得部が前記生体情報を取得できない期間に、該期間よりも前に取得された前記生体情報である過去情報を、該過去情報が取得された時期を示す時間情報とともに前記表示部に表示する生体情報表示システム。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記時間情報の表示態様を、該時間情報が取得された時期からの経過時間に応じて変化させる請求項1に記載の生体情報表示システム。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記時間情報の表示を、前記過去情報の表示態様を変化させることにより行う請求項1に記載の生体情報表示システム。
【請求項4】
前記時間情報は前記過去情報が取得された時期からの経過時間である請求項1~3のいずれか一項に記載の生体情報表示システム。
【請求項5】
前記時間情報は前記過去情報が取得された日付及び/又は時刻である請求項1又は2に記載の生体情報表示システム。
【請求項6】
前記生体情報取得部が前記生体情報を取得できない期間は、非安静期間、前記被験者が前記ベッド上に存在しない離床期間、前記生体情報表示システムの起動後の所定期間、前記被験者が前記ベッドに着床した後の所定期間、前記被験者に体動が生じている期間、及びエラー期間の少なくとも1つを含む請求項1~5のいずれか一項に記載の生体情報表示システム。
【請求項7】
前記生体信号取得部が、前記被験者の呼吸及び/又は心拍に応じて変動する荷重信号を前記被験者の生体信号として取得する荷重検出器を含む請求項1~6のいずれか一項に記載の生体情報表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療や介護の分野において、ベッド上の被験者の生体情報を、被験者の身体に計測装置を取り付けることなく取得するシステムが提案されている。具体的には例えば、荷重検出器を介してベッド上の被験者の荷重を検出し、検出した荷重に基づいて被験者の呼吸数、心拍数を算出するシステムが知られている。
【0003】
このようなシステムにおいては、常に正確な生体情報を取得できるとは限らない。この点につき、特許文献1は、信頼性が低いと判定した生体情報について、これを出力しないか、或いは信頼性が低いことを示す識別情報とともに出力する生体情報出力装置を開示している。特許文献1によれば、生体情報を利用する利用者は、信頼性の高い生体情報のみを利用することが可能となり、或いは信頼性に応じた利用が可能となる(特許文献1、段落0012~段落0013)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6697985号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、医療や介護等の現場においては、生体情報の表示の途切れる期間の短いシステムが望まれている。一方で、信頼性の低い情報が表示されたとしても、医療や介護等の現場における利用価値は小さい。
【0006】
本発明は、正確な生体情報が取得できない期間中も、利用価値のある生体情報を使用者に表示することのできる生体情報表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に従えば、
ベッド上の被験者の生体情報を表示する生体情報表示システムであって、
前記被験者の生体信号を取得する生体信号取得部と、
前記生体信号に基づいて、前記被験者の生体情報を取得する生体情報取得部と、
前記生体情報を表示部に表示する表示制御部とを備え、
前記表示制御部が、前記生体情報取得部が前記生体情報を取得できない期間に、該期間よりも前に取得された前記生体情報である過去情報を、該過去情報が取得された時期を示す時間情報とともに前記表示部に表示する生体情報表示システムが提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の生体情報表示システムによれば、正確な生体情報が取得できない期間中も、利用価値のある生体情報を使用者に表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、生体情報表示システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、荷重検出器のベッドに対する配置を示す説明図である。
図3図3は、生体情報表示システムを用いた生体情報の表示方法を示すフローチャートである。
図4図4(a)は、被験者の重心が、被験者の呼吸に応じて被験者の体軸方向に振動する様子を概念的に示す説明図である。図4(b)は、被験者の呼吸に応じた被験者の重心の振動に基づいて描画される呼吸波形の一例を示すグラフである。
図5図5(a)は、現在呼吸数(現在情報)が表示部に表示されている様子を示す説明図であり、図5(b)は、過去呼吸数(過去情報)及び時間情報が表示部に表示されている様子を示す説明図である。
図6図6は、表示制御部の制御に応じて表示部に表示される情報の内容が変動する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態の生体情報表示システム100(図1)について、これをベッドBD(図2)と共に使用して、ベッドBD上の被験者Sの呼吸数を表示する場合を例として説明する。
【0011】
図1に示す通り、本実施形態の生体情報表示システム100は、荷重検出部(生体信号取得部)1、制御部3、記憶部4、表示部5を主に有する。荷重検出部1と制御部3とは、A/D変換部2を介して接続されている。制御部3には更に報知部6、入力部7が接続されている。
【0012】
荷重検出部1は、4つの荷重検出器11、12、13、14を備える。荷重検出器11、12、13、14のそれぞれは、例えばビーム形のロードセルを用いて荷重を検出する荷重検出器である。このような荷重検出器は例えば、特許第4829020号や特許第4002905号に記載されている。荷重検出器11、12、13、14はそれぞれ、配線又は無線によりA/D変換部2に接続されている。
【0013】
図2に示す通り、荷重検出部1の4つの荷重検出器11~14は、被験者Sが使用するベッドBDの四隅の脚BL、BL、BL、BLの下端部に取り付けられたキャスターC、C、C、Cの下にそれぞれ配置される。
【0014】
A/D変換部2は、荷重検出部1からのアナログ信号をデジタル信号に変換するA/D変換器を備え、荷重検出部1と制御部3にそれぞれ配線又は無線で接続されている。
【0015】
制御部3は、専用又は汎用のコンピュータであり、内部に生体情報取得部31及び表示制御部32が構築されている。
【0016】
記憶部4は、生体情報表示システム100において使用されるデータを記憶する記憶装置であり、例えばハードディスク(磁気ディスク)を用いることができる。
【0017】
表示部5は、生体情報取得部31において取得された被験者の生体情報を、表示制御部32の指示に基づいて生体情報表示システム100の使用者に表示する液晶モニター等のモニターである。
【0018】
報知部6は、表示制御部32の指示に基づいて所定の報知を聴覚的に行う装置、例えばスピーカを備える。
【0019】
入力部7は、制御部3に対して所定の入力を行うためのインターフェイスであり、キーボード及びマウスにし得る。
【0020】
生体情報表示システム100は、ベッド上の被験者の生体情報の表示を、図3のフローチャートに示す工程に従って行う。当該工程は、具体的には、ベッド上の被験者の荷重を検出する荷重検出工程S1と、検出された荷重に基づいて被験者の生体情報を取得する生体情報取得工程S2と、取得された生体情報を表示部5に表示する生体情報表示工程S3とを含む。
【0021】
図3のフローチャートの各工程について、生体情報がベッド上の被験者の呼吸数である場合を例として説明する。
【0022】
[荷重検出工程S1]
荷重検出工程S1では、荷重検出器11、12、13、14を用いてベッドBD上の被験者Sの荷重を検出する。ベッドBD上の被験者Sの荷重は、ベッドBDの四隅の脚BL~BLの下に配置された荷重検出器11~14に分散して付与され、これらによって分散して検出される。
【0023】
荷重検出器11~14はそれぞれ、荷重(荷重変化)を検出してアナログ信号としてA/D変換部2に出力する。A/D変換部2は、サンプリング周期を例えば5ミリ秒として、アナログ信号をデジタル信号に変換し、デジタル信号(以下「荷重信号」。生体信号の一例)として制御部3に出力する。以下では、荷重検出器11、12、13、14から出力されたアナログ信号をA/D変換部2においてデジタル変換して得られる荷重信号を、それぞれ荷重信号s、s、s、sと呼ぶ。
【0024】
[生体情報取得工程S2]
生体情報取得工程S2においては、生体情報取得部31が、荷重信号s~sを用いて被験者Sの呼吸数を算出(取得)する。
【0025】
生体情報取得部31は、様々な方法で被験者Sの呼吸数を算出し得る。
【0026】
具体的には例えば、荷重信号s~sに基づいてベッドBD上における被験者Sの重心Gの位置を算出し、重心Gの位置の時間的変動(軌跡)に基づいて被験者Sの呼吸数を算出し得る。
【0027】
重心Gの位置は、ベッドBDの幅方向、長手方向をそれぞれX方向、Y方向とし、ベッドBDの中心を中心Oとする座標(図2)における荷重検出器11~14の位置と、荷重信号s~sとに基づいて算出される。
【0028】
ここで、人間の呼吸は、胸郭及び横隔膜を移動させて、肺を膨張及び収縮させることにより行われる。そのため、本件の出願人に付与された特許第6105703号の明細書に記載されている通り、横隔膜の移動、及びこれに付随する内臓の移動に伴って人間の重心はわずかに移動し、その移動方向は背骨の延在方向(体軸方向)にほぼ沿っている。図4(a)に、被験者Sの重心Gが被験者Sの呼吸に応じて、被験者Sの体軸SAの方向に振動する様子を示す。
【0029】
生体情報取得部31は、体軸SAの方向を縦軸、時間軸を横軸として、各時刻における重心Gの位置を体軸SAに投影した位置と、重心Gの呼吸に応じた振動の振動中心との間の距離を縦軸にプロットすることにより、呼吸波形BW(図4(b))を取得する。そして、呼吸波形BWの連続する2つのピーク(図4(b)のピークpとピークpn―1)の間の距離T[s](呼吸の周期に等しい)を用いて、1分間の呼吸数の算出値R[回]を、次の(式1)により求める。
(式1)
R=60/T
【0030】
その他、生体情報取得部31は周波数解析により被験者Sの呼吸数を求めてもよい。具体的には例えば、所定のサンプリング期間における荷重信号s~sの少なくとも一つについてフーリエ解析を行い、呼吸に相当する周波数帯域(人間の呼吸は1分間に約12~20回程度行われるため、約0.2Hz~約0.33Hzである)に現れるピーク周波数を特定する。特定したピーク周波数より、その期間における被験者Sの呼吸数の算出値を求める。
【0031】
生体情報取得部31は、求めた呼吸数の算出値を、当該算出値を算出した時刻(算出時刻)とともに記憶部4に記憶させる。
【0032】
[生体情報表示工程S3]
生体情報表示工程S3では、表示制御部32が、表示する情報の内容を制御しながら、表示部5に被験者Sの呼吸数を表示する。
【0033】
表示制御部32は、生体情報取得部31が生体情報(ここでは呼吸数)を取得できる期間(以下、「情報取得可能期間P1」と呼ぶ。詳細後述)と、生体情報取得部31が生体情報を取得できない期間(以下、「情報取得不可期間P2」と呼ぶ。詳細後述)とで、表示部5に表示する呼吸数を次のように異ならせる。
【0034】
表示制御部32は、情報取得可能期間P1には、記憶部4に記憶された被験者Sの呼吸数の最新の算出値を表示部5に表示する。この場合、被験者Sの呼吸数として表示部5に表示される値は、被験者Sの現在の呼吸数(以下、「現在呼吸数(現在情報)PRE」と呼ぶ)となる(図5(a))。
【0035】
一方で、表示制御部32は、情報取得不可期間P2には、記憶部4に記憶された被験者Sの過去の呼吸数の算出値を表示部5に表示する。本実施形態では、直前の情報取得可能期間P1において最後に取得(記憶)された算出値を用いる。この場合、表示部5に被験者Sの呼吸数として表示される値は、被験者Sの過去の呼吸数(以下、「過去呼吸数(過去情報)PAS」と呼ぶ)となる(図5(b))。
【0036】
表示制御部32はまた、表示部5に表示された過去呼吸数PASの算出時刻に基づいて、当該過去呼吸数PASの算出からの経過時間を求める。そして、求めた経過時間(例えば、時間:分:秒)を、過去呼吸数PASの取得時期を示す時間情報(以下、「時間情報TI」と呼ぶ)として過去呼吸数PASとともに表示部5に表示する(図5(b))。時間情報TIは過去呼吸数PASを示す文字の近傍、一例として真下に表示される。表示される経過時間は、表示中、時間の経過に応じて更新される。
【0037】
このように、過去呼吸数PASとともに時間情報TIの表示を行うことで、生体情報表示システム100の使用者は、時間情報TIの表示の有無に基づいて、表示された呼吸数が現在呼吸数PREであるか過去呼吸数PASであるかを一見して判別することができる。また、時間情報TIに基づいて、過去呼吸数PASが示す呼吸数の取得時期を知ることができる。
【0038】
ここで、情報取得不可期間P2(生体情報取得部31が生体情報を取得できない期間)は、生体情報取得部31が生体情報の算出値を取得できない期間、及び生体情報取得部31は生体情報の算出値を取得しているものの当該算出値の精度が低い期間を含む。本実施形態では、情報取得不可期間P2において算出された算出値は、生体情報とはみなされない。
【0039】
表示制御部32は、様々な要因を考慮して、所定の時刻が情報取得不可期間P2内であるかを判定し得る。
【0040】
例えば、本実施形態では、生体情報取得部31は被験者Sの呼吸に応じた荷重信号s~sの変動に基づいて被験者Sの呼吸数を算出する。そのため、被験者Sがベッド上で安静状態にある期間(被験者Sがベッド上に存在しており且つ体動が生じていない期間)は、被験者Sの呼吸数(生体情報)を十分な精度で取得することができる。そのため表示制御部32は、被験者Sが安静状態ではない期間(非安静期間)を、情報取得不可期間P2であると判定し得る。
【0041】
表示制御部32は例えば、荷重信号s~sを用いてベッドBDに付加された総荷重を算出し、当該総荷重が所定の範囲内(一例として30kg~150kgの範囲内)にある場合は、被験者SがベッドBD上に在床していると判断し得る。表示制御部32はまた、荷重信号s~sの少なくとも1つについて信号のばらつきの大きさを示す標準偏差σを算出し、標準偏差σが所定の閾値を超えている場合に、被験者Sに体動が生じていると判断し得る。表示制御部32は、被験者SがベッドBD上に在床しており、且つ被験者Sに体動が生じていない場合に、被験者Sが安静状態にあると判断し、その他の非安静期間は情報取得不可期間P2であると判断し得る。
【0042】
情報取得不可能期間P2は、より具体的には例えば、次の期間を含み得る。したがって、表示制御部32は、次のいずれかの期間内であるか否かも考慮にいれて、所定の時刻が情報取得不可期間P2内であるかを判定してもよい。
【0043】
(1)離床期間
被験者SがベッドBDから離れている離床期間には、被験者Sの呼吸を反映した荷重信号s~sが生体情報取得部31に入力されないため、生体情報取得部31は被験者Sの呼吸数の算出値を取得できない。よって、被験者SがベッドBDから離れている離床期間は情報取得不可期間P2の一例である。
【0044】
表示制御部32は例えば、荷重信号s~sを用いてベッドBDに付加された総荷重を算出し、当該総荷重が所定値(一例として20[kg])以下である場合は離床期間内であると判断し得る。
【0045】
(2)システム起動後の所定期間
生体情報表示システム100が起動した直後には、立ち上げ後の処理が済み、システムが安定するまでは、荷重信号s~sの値や生体情報取得部31が取得する呼吸数の算出値の精度は高くない。よって、生体情報表示システム100が起動した後の所定期間は情報取得不可期間P2の一例である。
【0046】
表示制御部32は例えば、生体情報表示システム100の起動後に、起動からの経過時間を計測し、当該計測値が所定値(一例として30~60[s])以上となるまでは、システム起動後の所定期間内であると判断し得る。
【0047】
(3)着床後の所定期間
被験者SがベッドBDに着床(入床)した直後には、被験者Sの移動等により、荷重信号s~sが、被験者Sの呼吸に起因する変動よりも大きく変動し得る。そのため、被験者SがベッドBDに着床した後の所定期間においては、体動による荷重変動の影響により、生体情報取得部31が取得する呼吸数の算出値の精度が低下し得る。よって、被験者SがベッドBDに着床した後の所定期間は情報取得不可期間P2の一例である。
【0048】
表示制御部32は例えば、ベッドBDに付加された総荷重が所定値(一例として20~30[kg])を超えた後、所定時間(一例として30~60[s])が経過するまでは、着床後の所定期間内であると判断し得る。
【0049】
(4)体動発生期間
被験者Sに体動(例えば寝返り、起き上がり等)が生じている期間も、着床後の所定期間と同様に荷重信号s~sが大きく変動し得る。そのため、被験者Sに体動が発生している期間においても、体動による荷重変動の影響により、生体情報取得部31が取得する呼吸数の算出値の精度が低下し得る。よって、被験者Sに体動が生じている体動発生期間は情報取得不可期間P2の一例である。
【0050】
(5)エラー発生時
その他、生体状態表示システム100内の何らかのエラー(通信エラー等)により呼吸数の算出が行われない場合も生じ得る。よって、生体情報取得部31から呼吸数の算出値が出力されないエラー期間は情報取得不可期間P2の一例である。
【0051】
表示制御部32による表示制御は具体的には例えば、次のようになされる。表示制御部32は、現時点が情報取得不可期間P2内であるか否かを周期的に(一例として1[s]~180[s]ごとに)判断し、判断結果に基づいて、表示部5に表示する情報を周期的に更新する。表示制御部32は例えば、被験者Sが安静状態ではない場合、或いはシステム起動後の所定期間内である場合に情報取得不可期間P2内であると判定し、その他の場合に情報取得可能期間P1内であると判定する。
【0052】
表示制御部31は、現時点が情報取得不可期間P2内であると判断した場合は、直前の情報取得可能期間P1内に最後に取得されていた算出値を過去呼吸数PASとして表示部5に表示し、当該過去呼吸数PAS取得後の経過時間を時間情報TIとして表示部5に表示する。一方で、表示制御部32は、現時点が情報取得可能期間P1内であると判断した場合は、当該時点における最新の算出値を現在呼吸数PREとして表示部5に表示する。
【0053】
上記の制御により、各期間において表示部5に表示される情報は、一例として図6に示す通りである。
【0054】
表示制御部32は、システム起動後の所定期間T12、離床期間T34、着床後の所定期間T45、エラー期間T67、体動発生期間T89においては、被験者Sが安静状態ではないとの判定、或いはシステム起動後に所定時間が経過していないとの判定に基づいて、過去呼吸数PASと当該過去呼吸数PAS取得後の経過時間を示す時間情報TIを表示部5に表示している。
【0055】
表示制御部32は、例えば離床期間T34及び着床後の所定期間T45には、時刻tの直前、即ち先行する情報取得可能期間P1内の最後に取得された呼吸数を過去呼吸数PASとして表示している。同様に、エラー期間T67、体動発生期間T89にはそれぞれ、時刻t、時刻tの前の情報取得可能期間P1において最後に取得された呼吸数を過去呼吸数PASとして表示している。
【0056】
一方で表示制御部32は、時刻tから時刻tまで、時刻tから時刻tまで、時刻tから時刻tまで、及び時刻t以降の情報取得可能期間P1では、生体情報取得部31から出力された最新の算出値を用いて現在呼吸数PREを表示している。
【0057】
本実施形態の生体情報表示システム100の有利な効果を以下にまとめる。
【0058】
本実施形態の生体情報表示システム100では、情報取得不可期間P2、即ち、生体情報取得部31が呼吸数の算出値を取得できない期間及び取得された算出値の精度が低い期間には、表示制御部32は、過去に十分な精度で取得された呼吸数の算出値を、過去呼吸数PASとして、算出時点からの経過時間を示す時間情報TIとともに表示部5に表示する。これにより、表示部5への生体情報の表示が途切れることがない。
【0059】
また、表示される過去呼吸数PASは、最新の算出値ではないものの、外乱等の影響を受けて精度や信頼性が損なわれた情報ではない。したがって、これを算出時点からの経過時間とともに使用者に提示すれば、使用者は当該情報を有効に利用することができる。
【0060】
例えば利用者が医師や看護師であれば、被験者である患者の状態(例えばカルテ等に記載された情報)と、過去呼吸数PASの算出時刻からの経過時間とに基づいて、表示されている過去呼吸数PASをどのように扱うべきかを判断でき、場合によっては現在の呼吸数に等しい情報であると判断して過去呼吸数PASを活用することができる。
【0061】
このように、本実施形態の生体情報表示システム100は、現在の呼吸数が十分な精度で取得できない期間においても、過去に十分な精度で取得された呼吸数と当該呼吸数の取得時点からの経過時間という、利用価値のある生体情報を使用者に表示することができる。
【0062】
[変形例]
上記実施形態の生体状態表示システム100において、次の変形態様を採用することもできる。
【0063】
上記実施形態においては、過去呼吸数PASを算出した時刻からの経過時間を時間情報TIとして表示している。しかしながら、時間情報TIはこれには限られず、過去呼吸数PASの算出時期(取得時期)を示す任意の情報とし得る。
【0064】
具体的には例えば、表示している過去呼吸数PASを算出した時刻及び/又は日付を、時間情報TIとして表示してもよい。
【0065】
また、時間情報TIとして表示されている経過時間、算出時刻等の文字情報の表示態様を時間の経過とともに段階的に変化させてもよい。具体的には例えば、経過時間や算出時刻を示す文字の色を、1時間経過までは青色とし、1時間経過後に緑色とし、3時間経過後に赤色とする等の態様で変化させる。これにより使用者は、表示されている過去呼吸数PASがどの程度古いものであるかを、経過時間や算出時刻を示す文字の色に基づいて直観的に把握することができる。
【0066】
時間の経過とともに変化させる表示態様は色には限られない。例えば、文字のフォントやサイズ、文字の背景の網かけの有無や網かけのデザイン、文字の周囲の囲みの有無や囲みのデザイン等を時間の経過とともに変化させてもよい。
【0067】
また、時間情報TIは文字情報には限られない。例えば、カラーバー、アイコン等を用いて、カラーバーの色やアイコンのデザインを時間の経過に応じて変化させてもよい。この場合、使用者は、表示されている過去呼吸数PASの算出時期を、カラーバーの色やアイコンのデザインに基づいて直観的に把握することができる。
【0068】
時間情報TIは、必ずしも過去呼吸数PASを示す文字情報の周囲に、過去呼吸数PASとは別個に表示される必要はない。例えば、カラーバーにより時間情報を表示する場合は、カラーバーを過去呼吸数PASを示す文字情報(数字)の背後に表示してもよい。
【0069】
その他、過去呼吸数PAS自体の表示態様を時間の経過とともに変化させることにより時間情報TIを表示してもよい。具体的には例えば、過去呼吸数PASを示す文字(数字)の色を、時間の経過に従って青色、緑色、赤色等と変化させる。この場合は、数字(文字)が示す値により過去呼吸数(過去情報)PASが表示され、数字(文字)の色により時間情報TIが表示される。時間の経過とともに変化させる表示態様は色には限られず、文字のフォントやサイズ、文字の背景の網かけの有無や網かけのデザイン、文字の周囲の囲みの有無や囲みのデザイン等であってもよい。これにより、過去呼吸数PASと時間情報TIとをコンパクトに表示でき、表示部5を小さくすることができる。
【0070】
その他、過去呼吸数PASと時間情報TIの表示方法は様々であり、上記の各変形例を適宜組み合わせてもよい。
【0071】
上記実施形態の生体情報表示システム100では、情報取得不可期間P2に表示する過去呼吸数PASを、直前の情報取得可能期間P1において最後に取得された呼吸数の算出値としていたがこれには限られない。過去の任意の情報取得可能期間P1の任意のタイミングに取得された算出値(生体情報)を情報取得不可期間P2に表示する過去情報として使用し得る。
【0072】
上記実施形態では、生体情報として被験者Sの呼吸数を表示する場合を例として説明したが、これには限られない。生体情報は、呼吸数の他、心拍数等、任意の生体情報であり得る。また生体情報は、数値表示されるものに限らず、例えば時系列のグラフとして表示されるものであっても良い。この場合も、上記の説明が同様に適用される。
【0073】
例えば心拍数を表示する場合、生体情報取得部31は、所定のサンプリング期間における荷重信号s~sの少なくとも一つについてフーリエ解析を行い、心拍に相当する周波数帯域(約0.5Hz~約3.3Hz)に現れるピーク周波数を特定する。特定したピーク周波数より、その期間における被験者Sの心拍数の算出値を求める。
【0074】
上記実施形態において、表示制御部32による情報取得不可期間P2であるか否かの判定は、様々な態様で行い得る。例えば、被験者Sが安静状態であるか否かの判定に加えて、或いはこれに代えて、離床期間であるかの判定、システム起動後の所定期間であるかの判定、着床後の所定期間であるかの判定、体動発生期間であるかの判定、エラー期間であるかの判定の少なくとも1つを用いてもよい。多くの判定を組み合わせることで判定の精度を向上し得る。
【0075】
表示制御部32は、非安静期間、離床期間、システム起動後の所定期間、着床後の所定期間、体動発生期間、エラー期間の全てを情報取得不可期間P2とみなす必要はない。表示制御部32は、非安静期間、離床期間、システム起動後の所定期間、着床後の所定期間、体動発生期間、エラー期間の少なくとも1つを情報取得不可期間P2とみなし、当該期間において過去呼吸数PASを表示してもよい。
【0076】
表示制御部32は、表示部5に表示する生体情報が所定の値になった場合に、報知部6を用いて音声的な報知を行ってもよい。所定の値は例えば、生体情報表示システム100の使用者が入力部7を介して入力することにより設定される。
【0077】
上記実施形態の生体情報表示システム100において、荷重検出部1に代えて被験者Sの生体信号(被験者Sの生体活動に伴って変動する信号)を取得する任意の生体信号取得部を用いることができる。具体的には例えば、シーツの下にマトリックス状に配置された複数の感圧センサ(圧力センサ)により、被験者SがベッドBDに付与する圧力の変動を生体信号として取得し得る。この態様においては、複数の感圧センサの出力に基づいて、被験者の重心の位置、呼吸数、心拍数等を求めることができる。
【0078】
上記実施形態の生体情報表示システム100は、必ずしも荷重検出器11~14の全てを備える必要はなく、このいずれか一つを備えるのみでもよい。例えば荷重検出器が3つの場合には、これを一直線に配置しなければ、ベッドBD面上での被験者Sの重心の位置を検出できる。また、荷重検出器は、必ずしもベッドの四隅に配置される必要はなく、ベッド上の被験者の荷重及びその変動を検出しうるように、任意の位置に配置し得る。また、荷重検出器11~14は、ビーム形ロードセルを用いた荷重センサに限られず、例えばフォースセンサを使用することもできる。
【0079】
上記実施形態の生体情報表示システム100において、表示部5は、モニターに代えて、又はこれに加えて、生体状態(呼吸数、体動の有無等)を表わす情報を印字して出力するプリンタや、生体状態(呼吸数、体動の有無等)を表示するランプ等の簡易な視覚表示手段を備えてもよい。報知部6はスピーカに代えて、又はこれに加えて、振動により報知を行う振動発生部を備えてもよい。
【0080】
本発明の特徴を維持する限り、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の形態についても、本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0081】
1 荷重検出部; 11,12,13,14 荷重検出器; 2 A/D変換部; 3 制御部; 31 生体情報取得部; 32 表示制御部; 4 記憶部; 5 表示部; 6 報知部; 7 入力部; 100 生体状態表示システム; BD ベッド; S 被験者
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図6