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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】重ね合わせ品の作成装置
(51)【国際特許分類】
   A63H 33/00 20060101AFI20240507BHJP
   A44C 27/00 20060101ALI20240507BHJP
   A44C 25/00 20060101ALN20240507BHJP
【FI】
A63H33/00 Z
A44C27/00
A44C25/00 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021161025
(22)【出願日】2021-09-30
(65)【公開番号】P2023050753
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2023-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000003584
【氏名又は名称】株式会社タカラトミー
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 智
(72)【発明者】
【氏名】岡 透修
(72)【発明者】
【氏名】相馬 梨良
(72)【発明者】
【氏名】深野 桃子
(72)【発明者】
【氏名】中根 章
【審査官】柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-218906(JP,A)
【文献】特開2014-133033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 33/00
A44C 25/00
27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも裏面及び表面のパーツを有し、複数のパーツを重ね合わせ、加圧することによって前記裏面のパーツと前記表面のパーツとを結合させる重ね合わせ品の作成装置であって、
重ね合わせ品を構成する同形の複数のパーツを1つずつ載置可能な複数の個別パーツ載置部が形成され、装置本体に対して移動可能に構成された1つの載置部材を備え、
前記載置部材は、移動によって、前記複数の個別パーツ載置部を1つずつ順に前記装置本体の所定位置を通過させるように構成されるとともに、前記載置部材の上で隣り合う2つの個別パーツ載置部の境界部において、前記2つの個別パーツ載置部のうちで前記載置部材の移動の際に先に前記所定位置に至る一方の前記個別パーツ載置部の載置面の端部が他方の前記個別パーツ載置部の載置面の端部よりも高くなっており、
前記装置本体には、前記載置部材の移動中に、前記所定位置に至った前記個別パーツ載置部に載置された前記パーツの移動を阻止し、前記載置部材に載置された前記同形の複数のパーツを前記載置部材の上で重ね合わせるパーツ重ね合わせ手段が設けられている、
ことを特徴とする重ね合わせ品の作成装置。
【請求項2】
複数の前記個別パーツ載置部の載置面は、鋸歯状に連なって設けられていることを特徴とする請求項1に記載の重ね合わせ品の作成装置。
【請求項3】
前記載置部材には移動方向に沿って延在し載置面を縦断する溝が形成され、前記装置本体には、前記溝をなぞり前記パーツの移動を阻止するストッパが設けられている、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の重ね合わせ品の作成装置。
【請求項4】
前記載置部材には3つ以上のパーツが載置可能となっており、隣り合うパーツの載置間隔は一定であり、前記装置本体には、第1の操作子の操作毎に前記載置部材を前記載置間隔ずつ移動させる送り機構が設けられている、ことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の重ね合わせ品の作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重ね合わせ品の作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、重ね合わせ品の作成装置として、例えば特許文献1に記載のアクセサリー製造玩具が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3123077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このアクセサリー製造玩具にあっては、アクセサリーを構成する複数のパーツを手作業にて重ね合わせてセットし、プッシュノブを押すことで、アクセサリーを作成するようにしている。
このように、従来は、重ね合わせ品を作成するには、複数のパーツを手作業にて重ね合わせてセットするのが一般的であり、位置合わせを要するなど、その作業は煩雑であった。また、重ね合わせの時点で、どのような重ね合わせ品が出来上がるかの予測ができてしまっていた。
本発明は、斯かる実情に鑑み、意外性があり、興趣性の高い、重ね合わせ品の作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の手段は、
少なくとも裏面及び表面のパーツを有し、複数のパーツを重ね合わせ、加圧することによって前記裏面のパーツと前記表面のパーツとを結合させる重ね合わせ品の作成装置であって、
重ね合わせ品を構成する同形の複数のパーツを1つずつ載置可能な複数の個別パーツ載置部が形成され、装置本体に対して移動可能に構成された1つの載置部材を備え、
前記載置部材は、移動によって、前記複数の個別パーツ載置部を1つずつ順に前記装置本体の所定位置を通過させるように構成されるとともに、前記載置部材の上で隣り合う2つの個別パーツ載置部の境界部において、前記2つの個別パーツ載置部のうちで前記載置部材の移動の際に先に前記所定位置に至る一方の前記個別パーツ載置部の載置面の端部が他方の前記個別パーツ載置部の載置面の端部よりも高くなっており、
前記装置本体には、前記載置部材の移動中に、前記所定位置に至った前記個別パーツ載置部に載置された前記パーツの移動を阻止し、前記載置部材に載置された前記同形の複数のパーツを前記載置部材の上で重ね合わせるパーツ重ね合わせ手段が設けられている、
ことを特徴とする。
【0007】
第2の手段は、第1の手段であって、複数の前記個別パーツ載置部の載置面は、鋸歯状に連なって設けられていることを特徴とする。
【0008】
第3の手段は、第1又は第2の手段であって、前記載置部材には移動方向に沿って延在し載置面を縦断する溝が形成され、前記装置本体には、前記溝をなぞり前記パーツの移動を阻止するストッパが設けられている、ことを特徴とする。
【0009】
第4の手段は、第1~第3のいずれかの手段であって、前記載置部材には3つ以上のパーツが載置可能となっており、隣り合うパーツの載置間隔は一定であり、前記装置本体には、第1の操作子の操作毎に前記載置部材を前記載置間隔ずつ移動させる送り機構が設けられている、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1の手段によれば個別載置部に載置した重ね合わせ品の各パーツが載置部材を移動させると重ね合わせられるので、意外性が有り、興趣性の高い作成装置を実現できる。また、パーツが装置本体内で重なるので、出来上がりが予想しにくい。
【0012】
また、第1の手段によれば、隣り合う2つの個別パーツ載置部において、先に所定位置に至る一方の個別パーツ載置部の載置面の端部が他方の個別パーツ載置部の載置面の端部よりも高くなっているので、載置部材を横移動させるだけで、簡単に、パーツを重ねることができる。その結果、構造が簡素な作成装置を実現できる。
【0013】
第2の手段によれば、複数の前記個別パーツ載置部の載置面は、鋸歯状に連なって設けられているので、載置部材を横移動させるだけで、簡単に、パーツを重ねることができる。その結果、構造が簡素な作成装置を実現できる。
【0014】
第3の手段によれば、パーツの端にストッパを当てるだけで、パーツを隣のパーツに重ねることができるので、パーツ表面を傷付けたりすることなく、パーツを重ねることができる。
【0015】
第4の手段によれば、第1の操作子の操作毎に載置部材が送られるので、ライン生産を行っているかのイメージが醸し出される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施形態のペンダントの作成装置の斜視図である。
図2】ペンダントの分解斜視図である。
図3】パーツトレイの斜視図である。
図4】パーツトレイの分解斜視図である。
図5】装置本体である加圧装置の斜視図である。
図6】加圧装置のトレイ送り機構及びトレイ位置決め機構を示した平面図である。
図7】加圧装置のスライダの内部を示した平面図である。
図8】加圧装置の上部筐体を下側から見た斜視図である。
図9】加圧装置のパーツ加圧機構の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、実施形態のペンダント1の作成装置100の斜視図である。
この作成装置100は、ペンダント1を作成するものであって、ペンダント1を構成するパーツを載置するパーツトレイ2と、パーツトレイ2に載置されたパーツを加圧してペンダント1とする装置本体である加圧装置3とを備えている。
【0020】
《ペンダント1》
図2はペンダント1の分解斜視図である。
ここでは、重ね合わせ品は矩形のペンダント1である。
このペンダント1はベースパーツ10、背景シート11、イラストシート12、フレームシート13及び蓋パーツ14の5つのパーツから構成されている。
そして、ペンダント1は、ベースパーツ10と蓋パーツ14との間に、背景シート11、イラストシート12及びフレームシート13がこの順で挟まれた構造となっている。
【0021】
ベースパーツ10は、矩形でペンダント1の平面的外形を構成し、背景シート11、イラストシート12、フレームシート13及び蓋パーツ14よりも縁の分だけ大きい。
一方、背景シート11、イラストシート12及びフレームシート13及び蓋パーツ14の平面的外形はベースパーツ10と相似形で互いに同じ大きさとなっている。
【0022】
〈ベースパーツ10〉
ベースパーツ10は硬質プラスチックで構成されている。このベースパーツ10は透明であってもなくてもよい。
ベースパーツ10は、背景シート11、イラストシート12及びフレームシート13及び蓋パーツ14を収容する容器となるものである。
ベースパーツ10は、上面縁が厚く形成され、その内側部分は、浅い凹部10aとなっている。この凹部10aは、背景シート11、イラストシート12及びフレームシート13及び蓋パーツ14がちょうど収容できる大きさ及び深さとなっている。凹部10aの底面の各長辺近くには小さな矩形の孔もが所定間隔で2つ形成されている。この孔10bは、ペンダント1を分解する際にピン等を挿入するのに用いられる。また、各孔10bの上方には、嵌合した蓋パーツ14を係止するための爪10dが形成されている。
また、ベースパーツ10の短辺側の一の各隅部には係止リング10cが付設されている。この係止リング10cには鎖や紐が係止される。
【0023】
〈背景シート11〉
背景シート11は、特に限定はされないが、プラスチックシートで構成されている。この背景シート11は透明であってもなくてもよい。
背景シート11は、イラストシート12に担持される主要題材を引き立たせるための背景、例えば風景絵柄や風景写真などを担持している。
【0024】
〈イラストシート12〉
イラストシート12は、プラスチックシートで構成されている。このイラストシート12は透明となっている。
イラストシート12は、主要題材として、例えばキャラクタ絵柄や人物写真などを担持している。主要題材部分は光吸収性インクによって形成されている。主要題材部分はイラストシート12の一部を占め、後ろに背景シート11の背景が置かれることで奥行き感が醸し出される。
【0025】
〈フレームシート13〉
フレームシート13は、プラスチックシートで構成されている。このフレームシート13は透明となっている。
フレームシート13は、イラストシート12の絵柄等を飾るための縁取り絵柄を担持する。縁取り絵柄部分は光吸収性インクによって形成されている。
【0026】
〈蓋パーツ14〉
蓋パーツ14は、透明な硬質プラスチックで構成されている。
蓋パーツ14は、ベースパーツ10の凹部10aにきつく嵌合するもので、嵌合状態では、ベースパーツ10の凹部10aの底面との間で、背景シート11、イラストシート12及びフレームシート13を挟持する。
【0027】
≪パーツトレイ2≫
図3は、パーツトレイ2の斜視図、図4は、他方向から見たパーツトレイ2の分解斜視図である。このパーツトレイ2の説明においては、パーツトレイ2の移動方向を基準に、前後、左右及び上下は図3に示す方向を指すものとする。
パーツトレイ2は、プラスチック製で帯棒状に構成されている。パーツトレイ2の上面には、前端部及び後端部を除いた領域にパーツ載置部が設けられている。
パーツ載置部は、5つの個別パーツ載置部20,21,22,23,24と、1つの重畳パーツ載置部25とから構成されている。5つの個別パーツ載置部20,21,22,23,24は、蓋パーツ14、フレームシート13、イラストシート12、背景シート11及びベースパーツ10がこの順に個別に載置される部分である。また、重畳パーツ載置部25は、重畳されたベースパーツ10、背景シート11、イラストシート12、フレームシート13及び蓋パーツ14が載置される部分である。
【0028】
個別パーツ載置部20,21,22,23の載置面は、パーツトレイ2の後方に向けて上り勾配を有する傾斜面となっていて、側面視で鋸歯状に一列に並んで設けられている。
また、個別パーツ載置部24及び重畳パーツ載置部25の載置面は水平面となっている。さらに、重畳パーツ載置部25の載置面には矩形開口25aが形成されている。この矩形開口25aに対して後述の押出部材52が出没可能となっている。
【0029】
パーツトレイ2には、パーツトレイ2の長手方向に互いに平行して延在する2つの溝Gが形成されている。各溝Gは、溝底と同じ高さ位置に載置面がある個別パーツ載置部24及び重畳パーツ載置部25には形成されていない。
【0030】
また、個別パーツ載置部24は、他のパーツよりも縁の分だけ大きいベースパーツ20を載置する。そのため、ベースパーツ20は、個別パーツ載置部24の幅広部分に置いた後前方へ少しスライドさせることによって、載置するようになっている。その際、ベースパーツ20の縁部を左右側壁26L,26Rの上面及び個別パーツ載置部23の載置面の下に潜り込ませる。また、個別パーツ載置部24は、ベースパーツ20の係止リング10cを受容するための切欠き24aがベースパーツ20の左側壁26Lに形成されている。
【0031】
重畳パーツ載置部25には、左側壁26Lが設けられていない。重畳パーツ載置部25の載置面は、個別パーツ載置部24の載置面よりも僅かに低く、当該載置面の中央には矩形開口25aが形成されている。矩形開口25aに対して後述の押出部材52が出没可能となっている。また、矩形開口25aよりも左側の載置面25bは、出来上がったペンダント1を排出させるため、左方に向けて下り勾配を有している。
【0032】
パーツトレイ2の右面下部には、トレイ送り用の矩形凹部28aが形成されている。矩形凹部28aは、個別パーツ載置部の形成間隔でパーツトレイ2に複数形成されている。
また、パーツトレイ2の右面上部には、位置決め用の矩形凹部28bが形成されている。矩形凹部28bは、個別パーツ載置部の形成間隔でパーツトレイ2に複数形成されている。
【0033】
なお、パーツトレイ2は、第1のトレイ部分2aと、第2のトレイ部分2bとに分割可能となっている。第1のトレイ部分2aには第2のトレイ部分2bに向けて延びる矩形連結板29が設けられている。この矩形連結板29には柱状の嵌合突起29aが左右に1つずつ立設されている。そして、第1のトレイ部分2aの矩形連結板29が第2のトレイ部分2bの下に潜り込ませ、嵌合突起29aが、第2のトレイ部分2bの上面裏に垂設された円筒状のボス(図示せず)に着脱可能に嵌合することにより、第1のトレイ部分2aと第2のトレイ部分2bとが結合される。
【0034】
≪加圧装置3≫
図5は加圧装置3の斜視図である。
この加圧装置3の説明においては、前後、左右は図1及び図5に示す方向を指すものとする。
加圧装置3は全体として箱状に構成されている。加圧装置3の筐体30は上部筐体30aと、下部筐体30bとによって構成されている。
〈外部〉
筐体30の左側面には、図1に示すように、上下方向中央部に長方形で横長のトレイ差込口31が形成されている。このトレイ差込口31にはパーツトレイ2が差し込まれる。このトレイ差込口31は、ちょうどパーツトレイ2が差し込める程度の大きさとなっている。
また、筐体30の右側面には、図5に示すように、上下方向中央部に長方形で横長のトレイ導出口32が形成されている。このトレイ導出口32からパーツトレイ2が導出される。
トレイ導出口32は、幅寸法がトレイ差込口31の幅寸法と同じで、縦寸法がトレイ差込口31の縦寸法よりも大きくなっている。そして、トレイ導出口32は、上縁がトレイ差込口31の上縁と同じ高さ位置に、下縁がトレイ差込口31の下縁よりも低い位置となるように形成されている。これにより、ペンダント1の排出時にパーツトレイ2の下降を許容する。
【0035】
筐体30の上面手前側には、左右方向に往復動作可能なトレイ送り用摘み33が設けられている。このトレイ送り用摘み33は1回の操作(左から右への操作)毎にパーツトレイ2を所定ピッチ(個別パーツ載置部の形成間隔)ずつ右方に送るためのものである。このトレイ送り用摘み33は自動で元位置(左位置)に復帰する。なお、手動でトレイ送り用摘み33を元位置(左位置)に復帰させてもよい。
【0036】
筐体30の上面中央には押しボタン34が設けられている。この押しボタン34は、押し操作によって、パーツトレイ2の重畳パーツ載置部25に載置された重畳パーツを加圧してペンダント1にするとともに、さらなる押し操作によって、出来上がったペンダント1を排出する。この押しボタン34は、自動で元位置(上位置)に復帰する。
【0037】
筐体30の後面には、長方形で横長のペンダント排出口35が形成されている。このペンダント排出口35からは、出来上がったペンダント1が最終的に外部に排出される。
【0038】
〈内部〉
図6は、加圧装置3のトレイ送り機構36及びトレイ位置決め機構40を示した平面図、図7は、加圧装置3のスライダ37の内部を示した平面図である。
筐体30の内部には、上記トレイ送り用摘み33の操作によって作動し、パーツトレイ2を所定ピッチずつ右方に送るトレイ送り機構36が設けられている。このトレイ送り機構36は、トレイ送り用摘み33と一体的動作可能なスライダ37を備えている。スライダ37内には軸38aを中心に回動可能で先端の送り爪38bがスライダ37から出没可能な爪部材38が設けられている。この爪部材38は、送り爪38bがスライダ37から突出する方向にトーションばね(図示せず)によって付勢されている。
そして、トレイ送り用摘み33の操作によって、スライダ37が右方向に移動する際に、送り爪38bがスライダ37から突出してパーツトレイ2の矩形凹部28aの縁に係合し、パーツトレイ2を1ピッチ分(パーツ載置部の形成間隔分)右方に押し出す。その後、トレイ送り用摘み33から手を離すと、トーションばねの付勢力よりパーツトレイ2に摺接しながらスライダ37が自動的に元位置に復帰して次の矩形凹部28aに係合する。このとき、パーツトレイ2は戻らない。
【0039】
筐体30の内部には、パーツトレイ2の位置決めをするトレイ位置決め機構40が設けられている。このトレイ位置決め機構40は係止レバー41を備えている。係止レバー41は、軸41aを中心に回動可能に構成されている。係止レバー41の一端側のアーム41bには係止爪41cが形成されている。また、アーム41bと固定部42との間にはコイルばね43が掛けられている。このコイルばね43によって、係止レバー41の係止爪41cがパーツトレイ2に向けて付勢されている。
他端側のアーム41dにはスライダ37の一部に摺接する摺接部41eが形成されている。
そして、トレイ送り用摘み33の操作によって、スライダ37が右方向に移動する際に、スライダ37の一部と係止レバー41の摺接部41eとが摺接して、コイルばね43の付勢力に抗する方向に係止レバー41が動作し、係止爪41cがパーツトレイ2から離間させられる。その後、トレイ送り用摘み33から手を離すと、スライダ37が元位置に戻り、コイルばね43の付勢力によって係止爪41cがパーツトレイ2の矩形凹部28bに嵌り込む。
【0040】
図8は、加圧装置の上部筐体を下側から見た斜視図である。
筐体30内には、パーツトレイ2と協働してパーツトレイ2上でパーツを1つずつ順に重畳させるパーツ重畳機構45が設けられている。
パーツ重畳機構45は、パーツトレイ2に載置されたパーツの移動を阻止する板状の2つのストッパ46を備えている。2つのストッパ46は、上部筐体30aに固定された取付板47に垂設され、溝Gの底近くまで延びている。各ストッパ46は、パーツトレイ2の移動に伴って、対応する溝Gをなぞる。そして、パーツトレイ2上でパーツを1つずつ順に重畳させる。なお、各ストッパ46のパーツとの当接面46aには、蓋パーツ14、フレームシート13、イラストシート12、背景シート11及びベースパーツ10が重畳された後に、ベースパーツ10に当接するように切欠き46bが形成されている。
【0041】
筐体30の内部には、上記押しボタン34の操作によって、重畳パーツを加圧するパーツ加圧機構48が設けられている。このパーツ加圧機構48は、押しボタン34に連動して動作する押圧部材49を備える。
押圧部材49は、円板状の天板49aと、天板49aに垂設された押圧部49bとを備えている。天板49aは透明となっており、天板49aを通して内部を除くことができる。押圧部49bは、後壁49cと、後壁49cに連設された2つの側壁49dとを有し、横断面がコ字状となっている。また、後壁49cの下端と、2つの側壁49dの下端の後側部分は水平となっている。一方、2つの側壁49dの下端の前側部分は前方に向けて上り勾配となっている。
そして、押しボタン34を操作したとき、先ず、重畳パーツの最上部にある蓋パーツ14の奥側の短辺と、当該短辺と隣り合う2つの長辺の奥側部分とを押圧部49bによって押圧する。これにより、パーツトレイ2が後述の昇降台51に軽く押し付けられる。さらに、押しボタン34を深くまで操作すると、後述の昇降台51が下がり、2つの側壁49dの下端の前側部分で、重畳パーツが後述の押出部材52の上端に押し付けられ、蓋パーツ14がベースパーツ10に嵌り込み、ペンダント1が出来上がる。
【0042】
押圧部材49の下には、下部筐体30bに組み付けられた昇降台51を含むペンダント排出機構50が設置されている。昇降台51は床面を構成する。
昇降台51はコイルばね(図示せず)によって上方に向けて付勢され、昇降台51の中央には矩形開口51aが形成されている。
一方、下部筐体30bの固定部には、昇降台51の矩形開口51aの下側に、矩形筒状の押出部材52が立設されている。押出部材52の上端は後方に向けて下り勾配(前方に向けて上り勾配)を有している。この押出部材52の上部は、常態では、昇降台51の上面から没した状態にあり、押しボタン34を深くまで操作したとき、昇降台51が下がって昇降台51の矩形開口51aから上方に突出し、ペンダント1の前側を持ち上げてペンダント1をペンダント排出口35から外部に排出させる。
【0043】
≪遊び方≫
パーツトレイ2を本体から外した状態で、パーツトレイ2の前端に近い方のパーツ載置部から順に蓋パーツ14、フレームシート13、イラストシート12、背景シート11及びベースパーツ10を所定の向きで並ぶように載置する。
次に、パーツトレイ2の前部をトレイ差込口31に差し込む。この差込みは位置決め機構40の係止爪41cがパーツトレイ2の矩形凹部28bに嵌り込むまで行う。係止爪41cが矩形凹部28bに嵌り込むと「カチッ」と音がするので容易に、係止爪41cが矩形凹部28bに嵌り込んだことが分かる。
【0044】
この状態から、トレイ送り用摘み33を操作する。つまり、トレイ送り用摘み33を左から右に操作する。これにより、係止爪41cが矩形凹部28bから離れるとともに、送り爪38bが矩形凹部28aの縁に係合し、パーツトレイ2が1ピッチ送られる。このとき、ストッパ46によって蓋パーツ14の移動が阻止され、蓋パーツ14が次段のフレームシート13の上に乗る。その後、トレイ送り用摘み33から手を離すと、スライダ37ひいてはトレイ送り用摘み33が元の位置に戻る。このとき、係止爪41cが矩形凹部28bに嵌り込む。
【0045】
以上のようなトレイ送り用摘み33の操作を、全てのパーツが重畳され、且つ、重畳パーツが重畳パーツ載置部25に載置されるまで繰り返して行う。重畳パーツが重畳パーツ載置部25に載置されたことは、係止爪41cが矩形凹部28bに嵌り込むと「カチッ」と音がするのと、パーツトレイ2の後部が筐体30内に没するので容易に把握できる。そして、この位置では、パーツトレイ2が下降可能となる。
【0046】
次に、押しボタン34を押す。すると、重畳パーツの蓋パーツ14が押圧部材49によって押されてベースパーツ10に嵌まり込み、互いに結合される。これにより、フレームシート13、イラストシート12及び背景シート11が蓋パーツ14とベースパーツ10との間に挟み込まれる。
【0047】
さらに、押しボタン34を押し込むと、昇降台51がパーツトレイ2とともに下降し、昇降台51の上面から押出部材52が上方に突出し、押出部材52によって、出来上がったペンダント1が傾けられる。その後、押しボタン34から手を離すと、付勢力の調整によって押しボタン34よりも昇降台51がゆっくり元位置に復帰するように構成されているので、押出部材52の上面を滑ってペンダント1がペンダント排出口35から排出される。
なお、付勢力の調整によらず、ペンダント1自体の重さと押出部材52の勾配を多少急にすりことにより、押しボタン34から手を離すことにより滑り落ち、そのまま排出されるようにしてもよい。
【0048】
≪実施形態の効果≫
実施形態の作成装置によれば次のような主たる効果を得ることができる。
パーツトレイ2にパーツを順番に並べて置きさえすれば、パーツトレイ2の移動に伴ってパーツが重畳されるので、一々位置合わせしながらパーツの重畳作業を行わなくて済む。
また、隣り合うパーツの載置面の境界に段差が形成されるようにし、上段に一端部が位置するパーツの他端部を押すことで下段に一端部を有するパーツの上に載せるようにしたので、簡素な構成で簡単にパーツを重畳させることができる。この場合、側面から見たときにパーツ載置面が鋸歯状に並ぶように構成したので、パーツトレイ2を小型化することができる。
また、押しボタン34を押すことにより、出来上がったペンダント1を斜めにし、ペンダント排出口35から排出させるようにしたので、装置を開く等してペンダント1を取り出す必要がなく、簡単にペンダント1を取り出すことができる。
【0049】
《変形例》
上記実施形態では、5個のパーツ(部材)を重畳させて蓋パーツ(表面部材)とベースパーツ(裏面部材)とを加圧により結合させてペンダントを作成するように構成したが、加圧によって結合される少なくとも表面部材及び裏面部材があれば足りる。
【0050】
また、平板状又はシート状の複数のパーツ(部材)を重畳させて蓋パーツ(表面部材)とベースパーツ(裏面部材)とを加圧により結合させてペンダントを作成するように構成したが、パーツ載置部の装置本体に対する移動によって複数の物品が重ね合わせ可能な製品であれば、部材の中に立体的な部材を含んでいても本願発明を適用することができる。
例えば、部材にドーム形の部材が含まれていても、当該部材を表面部材又は裏面部材とすれば物品の重ね合わせが可能となる。この場合、表面部材と裏面部材との合わせ面が平面上にあることが好ましいが、それに限定されない。
【0051】
また、上記実施形態では、パーツトレイを手動で移動させるようにしたが、モータにより電動で移動させるようにしてもよい。また、パーツトレイを直接に手で移動させるようにしてもよい。
【0052】
さらに、上記実施形態では、帯状直線状のパーツトレイを用いたが、リング状のパーツ載置部とし、回転させることによりパーツを重ね合わせるようにしてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、表面部材と裏面部材とを篏合せせることにより結合させるようにしたが、加圧により結合できるものであれば足りる。例えば、カシメによって表面部材と裏面部材とを結合させるものであってもよい。
【0054】
また、排出機構について、傾動だけではなく、押しボタンの押圧操作で係止が解かれ、ペンダントが載置された部位(パーツトレイ又は装置本体の一部を含む)が飛び出すような構成としてもよい。
【0055】
また、上記実施形態では,全てのパーツをパーツトレイに並べるようにし、加圧位置で順次にパーツを重ねる。そして、パーツトレイの最下のパーツ位置でパーツが全て重ねられた後にパーツトレイを動かして重畳パーツ載置部に重畳パーツを移して、加圧することとしたが、全てのパーツが重ねられた最下のパーツ位置で加圧することとしてもよい。また、パーツトレイとは別に最下のパーツを加圧位置に予め設置し、他のパーツだけをパーツトレイに並べるようにし、パーツトレイ上で重ねた他のパーツを加圧位置で一度機に最下のパーツの上に重ねて加圧するようにしてもよい。
全てのパーツが重ねられる所定位置と加圧位置とが異なる場合、全てのパーツが重ね合わされた重ね合わせパーツを加圧位置まで移動させる必要があるが、パーツトレイを移動させるか、他の移動手段により重ね合わせパーツを加圧位置に移動させるようにする。
【符号の説明】
【0056】
1 ペンダント
2 パーツトレイ
3 加圧装置
10 ベースパーツ
11 背景シート
12 イラストシート
13 フレームシート
14 蓋パーツ
20 ベースパーツ
20,21,22,23,24 個別パーツ載置部
25 重畳パーツ載置部
30 筐体
40 トレイ位置決め機構
45 パーツ重畳機構
48 パーツ加圧機構
50 ペンダント排出機構
52 押出部材
100 作成装置
G 溝
図1
図2
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図9