(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】変速機用潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
C10M 145/14 20060101AFI20240507BHJP
C10M 101/02 20060101ALI20240507BHJP
C10M 133/16 20060101ALI20240507BHJP
C10M 135/10 20060101ALI20240507BHJP
C10M 137/04 20060101ALI20240507BHJP
C10M 137/10 20060101ALI20240507BHJP
C10M 145/16 20060101ALI20240507BHJP
C10M 159/24 20060101ALI20240507BHJP
C10N 10/04 20060101ALN20240507BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20240507BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20240507BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20240507BHJP
【FI】
C10M145/14
C10M101/02
C10M133/16
C10M135/10
C10M137/04
C10M137/10 Z
C10M145/16
C10M159/24
C10N10:04
C10N30:00 Z
C10N30:06
C10N40:04
(21)【出願番号】P 2021502159
(86)(22)【出願日】2020-02-20
(86)【国際出願番号】 JP2020006928
(87)【国際公開番号】W WO2020171188
(87)【国際公開日】2020-08-27
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】P 2019028665
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】増田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】長井 晴子
(72)【発明者】
【氏名】伊東 政朗
(72)【発明者】
【氏名】角谷 真夕子
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-522285(JP,A)
【文献】国際公開第2013/136582(WO,A1)
【文献】特開2016-216683(JP,A)
【文献】特表2018-507947(JP,A)
【文献】特開2018-070700(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)全基油に対して50質量%より多くのAPIグループIII基油を含み、鉱油系基油および/または合成系基油を含んでなる潤滑油基油と、
(B)重量平均分子量が8,000~12,000であり、分岐鎖アルキル基を側鎖に有し、潤滑油組成物全量基準で1~5質量%であるポリ(メタ)アクリレートとを含有し、
100℃における動粘度が2.5~4.9mm
2/sであることを特徴とする、
変速機用潤滑油組成物。
【請求項2】
前記(A)成分の100℃における動粘度が2.0~3.8mm
2/sである、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記(A)成分の%C
Aが1.0以下である、請求項1又は2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が非分散型ポリ(メタ)アクリレートである、請求項1~3のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
(C)カルシウムスルホネート清浄剤をさらに含有する、請求項1~4のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
前記(C)成分が、炭素数3以上のオレフィンのオリゴマーから誘導されたアルキル基を有するカルシウムスルホネート清浄剤である、請求項5に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
前記(B)成分が、それぞれ8,000~12,000の重量平均分子量を有する、1種以上のポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)であり、
前記(B2)成分の含有量が、組成物全量基準で1質量%以上であり、それぞれの前記ポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)は、炭素数8~18の分岐鎖アルキル基を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレート単量体単位(B2a)を、単量体単位全量基準で70mol%以上含み、
それぞれの前記ポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)は、メチル(メタ)アクリレート単量体単位(B2c)を、単量体単位全量基準で3mol%未満含有するか又は含有しない、請求項1~6のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
それぞれの前記ポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)は、炭素数2~18のα-オレフィン、及び、α,β-不飽和ジカルボン酸ジエステルから選ばれる1種以上のコモノマーに対応する1種以上の単量体単位(B2h)を、単量体単位全量基準で10mol%未満含有するか又は含有しない、請求項
7に記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
(D)リン含有添加剤を、組成物全量基準でリン量として50~800質量ppmと、
(E)コハク酸イミド無灰分散剤を、組成物全量基準で0.2~8質量%とをさらに含む、請求項1~
8のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項10】
(F)アミン系摩擦調整剤を潤滑油組成物全量基準で50質量ppm以下含有するか、又は含有しない、請求項1~
9のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は変速機用潤滑油組成物(変速機油組成物)に関し、より詳しくは、例えば湿式多板クラッチ等の湿式クラッチを有する変速機に好適な変速機用潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
変速機および終減速機等の歯車装置における省エネルギー化手段のひとつとして、潤滑油の低粘度化が挙げられる。例えば変速機や終減速機等は歯車軸受機構を有しており、これらに使用される潤滑油を低粘度化することにより、潤滑油の粘性抵抗に起因する攪拌抵抗および引きずりトルクが低減されて動力の伝達効率が向上し、その結果省燃費性の向上が可能になると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-052047号公報
【文献】国際公開2010/087398号パンフレット
【文献】国際公開2016/158999号パンフレット
【文献】国際公開2009/125551号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これら歯車装置に使用される潤滑油を低粘度化すると、潤滑面において油膜厚さを維持することが難しくなるため、ベアリングの疲労寿命が低下する傾向にある。
【0005】
さらに、湿式多板クラッチ等の湿式クラッチを有する変速機に用いられる潤滑油には、変速ショック防止性の向上も要求される。
【0006】
本発明は、省燃費性を高めつつ、変速機油に求められるベアリング疲労寿命、および変速ショック防止性を満足する、変速機用潤滑油組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記[1]~[16]の実施形態を包含する。
[1] (A)鉱油系基油および/または合成系基油を含んでなる潤滑油基油と、
(B)重量平均分子量25,000以下のポリ(メタ)アクリレートとを含有し、
100℃における動粘度が2.5~4.9mm2/sであることを特徴とする、変速機用潤滑油組成物。
【0008】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味する。
【0009】
[2] 前記(A)成分の100℃における動粘度が2.0~3.8mm2/sである、[1]に記載の潤滑油組成物。
【0010】
[3] 前記(A)成分の%CAが1.0以下である、[1]又は[2]に記載の潤滑油組成物。
【0011】
[4] 前記(B)成分が非分散型ポリ(メタ)アクリレートである、[1]~[3]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0012】
[5] 前記(B)成分の含有量が、潤滑油組成物全量基準で0.01~5質量%である、[1]~[4]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0013】
[6] 前記(B)成分が、分岐鎖アルキル基を側鎖に有するポリ(メタ)アクリレートである、[1]~[5]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0014】
[7] (C)カルシウムスルホネート清浄剤をさらに含有する、[1]~[6]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0015】
[8] 前記(C)成分が、炭素数3以上のオレフィンのオリゴマーから誘導されたアルキル基を有するカルシウムスルホネート清浄剤である、[7]に記載の潤滑油組成物。
【0016】
[9] 前記(B)成分が、それぞれ20,000以下の重量平均分子量を有する、1種以上のポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)であり、
前記(B2)成分の含有量が、組成物全量基準で0.2質量%以上であり、
それぞれの前記ポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)は、炭素数8~18の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレート単量体単位(B2a)を、単量体単位全量基準で70mol%以上含み、
それぞれの前記ポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)は、メチル(メタ)アクリレート単量体単位(B2c)を、単量体単位全量基準で3mol%未満含有するか又は含有しない、[1]~[8]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0017】
[10] それぞれの前記ポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)は、炭素数1~3の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレート単量体単位(B2d)を、単量体単位全量基準で3mol%未満含有するか又は含有しない、[9]に記載の潤滑油組成物。
【0018】
[11] それぞれの前記ポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)は、炭素数4~7の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレート単量体単位(B2e)を、単量体単位全量基準で20mol%以下含有するか又は含有しない、[9]又は[10]に記載の潤滑油組成物。
【0019】
[12] それぞれの前記ポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)は、炭素数37以上の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレート単量体単位(B2f)を、単量体単位全量基準で3mol%未満含有するか又は含有しない、[9]~[11]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0020】
[13] それぞれの前記ポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)は、炭素数19~36の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレート単量体単位(B2g)を、単量体単位全量基準で10mol%以下含有するか又は含有しない、[9]~[12]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0021】
[14] それぞれの前記ポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)は、炭素数2~18のα-オレフィン、及び、α,β-不飽和ジカルボン酸ジエステルから選ばれる1種以上のコモノマーに対応する1種以上の単量体単位(B2h)を、単量体単位全量基準で10mol%未満含有するか又は含有しない、[9]~[13]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0022】
[15] (D)リン含有添加剤を、組成物全量基準でリン量として50~800質量ppmと、
(E)コハク酸イミド無灰分散剤を、組成物全量基準で0.2~8質量%とをさらに含む、[1]~[14]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【0023】
[16] (F)アミン系摩擦調整剤を潤滑油組成物全量基準で50質量ppm以下含有するか、又は含有しない、[1]~[15]のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、省燃費性を高めつつ、変速機油に求められるベアリング疲労寿命、および変速ショック防止性を満足する、変速機用潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明について詳述する。なお、特に断らない限り、数値A及びBについて「A~B」という表記は「A以上B以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Bのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Aにも適用されるものとする。また「又は」及び「若しくは」の語は、特に断りのない限り論理和を意味するものとする。本明細書において、要素E1及びE2について「E1及び/又はE2」という表記は「E1、若しくはE2、又はそれらの組み合わせ」と等価であり、N個の要素E1、…、EN(Nは3以上の整数である。)について「E1、…、EN-1、及び/又はEN」という表記は「E1、…、若しくはEN、又はそれらの組み合わせ」と等価である。
【0026】
なお本明細書において、別途指定のない限り、油中のカルシウム、マグネシウム、亜鉛、リン、硫黄、ホウ素、バリウム、及びモリブデンの各元素の含有量は、JPI-5S-38-2003に準拠して誘導結合プラズマ発光分光分析法(強度比法)により測定されるものとする。また油中の窒素元素の含有量は、JIS K2609に準拠して化学発光法により測定されるものとする。また本明細書において「重量平均分子量」とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される標準ポリスチレン換算での重量平均分子量を意味する。GPCの測定条件は次の通りである。
[GPC測定条件]
装置:Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC UV RIシステム
カラム:上流側から順に、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT125A(ゲル粒径2.5μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)1本、及び、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT45A(ゲル粒径1.7μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)2本を直列に接続
カラム温度:40℃
試料溶液:試料濃度1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:20.0μL
検出装置:示差屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(Agilent Technologies社製Agilent EasiCal(登録商標) PS-1)10点(分子量:30230、9590、2970、890、786、682、578、474、370、266)
【0027】
<(A)潤滑油基油>
本発明の変速機用潤滑油組成物(以下において「変速機油」または「潤滑油組成物」ということがある。)において、潤滑油基油としては、鉱油系基油および合成系基油から選ばれる1種以上からなる基油を特に制限なく用いることができる。
【0028】
鉱油系基油としては、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分に対して、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、水素化異性化、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製等の精製処理を1つ以上行うことにより得られるパラフィン系またはナフテン系の鉱油系基油、および、ワックス異性化鉱油、GTL WAX(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される基油等を例示できる。
【0029】
鉱油系基油としては、水素化分解鉱油系基油、および/または、石油系ワックスもしくはGTLワックス(例えばフィッシャートロプシュ合成油等。)を50質量%以上含む原料を異性化して得られるワックス異性化イソパラフィン系基油を好ましく用いることができる。
【0030】
合成系基油としては、例えば、ポリα-オレフィン(例えばエチレン-プロピレン共重合体、ポリブテン、1-オクテンオリゴマー、1-デセンオリゴマー等。)又はその水素化物;モノエステル(例えばブチルステアレート、オクチルラウレート、2-エチルヘキシルオレート等。);ジエステル(例えばジトリデシルグルタレート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート等);ポリエステル(例えばトリメリット酸エステル等。);ポリオールエステル(例えばトリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、ペンタエリスリトール-2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等。);芳香族系合成油(例えばアルキルベンゼン、アルキルナフタレン、芳香族エステル等。);及びこれらの混合物等を例示できる。
【0031】
鉱油系基油の%CPは、粘度-温度特性、熱・酸化安定性および摩擦特性を向上させる観点から、好ましくは70以上、より好ましくは80以上であり、また添加剤の溶解性を高める観点から、通常99以下、好ましくは95以下である。
【0032】
鉱油系基油の%CAは、粘度-温度特性、熱・酸化安定性を高めるとともに、ベアリング疲労寿命および省燃費性をさらに高める観点から、好ましくは1.0以下、より好ましくは0.8以下、特に好ましくは0.5以下であり、0であってもよい。
【0033】
鉱油系基油の%CNは、粘度-温度特性、熱・酸化安定性および摩擦特性を高める観点から、好ましくは35以下、より好ましくは30以下であり、また添加剤の溶解性を高める観点から、好ましくは1以上、より好ましくは4以上である。
【0034】
本明細書において%CP、%CNおよび%CAとは、それぞれASTM D 3238-85に準拠した方法(n-d-M環分析)により求められる、パラフィン炭素数の全炭素数に対する百分率、ナフテン炭素数の全炭素数に対する百分率、および芳香族炭素数の全炭素数に対する百分率を意味する。つまり、上述した%CP、%CNおよび%CAの好ましい範囲は上記方法により求められる値に基づくものであり、例えばナフテン分を含まない鉱油系基油であっても、上記方法により求められる%CNは0を超える値を示し得る。
【0035】
潤滑油基油(全基油)の100℃における動粘度は、潤滑油組成物の低温粘度特性を良好にし、省燃費性をさらに高める観点から、好ましくは3.8mm2/s以下であり、また潤滑箇所での油膜形成を十分にして潤滑性を高める観点から、好ましくは2.0mm2/s以上である。なお本明細書において、「100℃における動粘度」とは、JIS K 2283-1993に規定される100℃での動粘度を意味する。
【0036】
潤滑油基油(全基油)の40℃における動粘度は、潤滑油組成物の低温粘度特性を良好にし、省燃費性をさらに高める観点から、好ましくは40mm2/s以下、より好ましくは30mm2/s以下、さらに好ましくは20mm2/s以下、特に好ましくは15mm2/s以下であり、また潤滑箇所での油膜形成を十分にして潤滑性を高める観点から、好ましくは7.0mm2/s以上、より好ましくは7.5mm2/s以上、特に好ましくは8.0mm2/s以上である。なお本明細書において「40℃における動粘度」とは、JIS K 2283-1993に規定される40℃での動粘度を意味する。
【0037】
潤滑油基油(全基油)の粘度指数は、潤滑油組成物の粘度-温度特性、熱・酸化安定性、及び摩耗防止性を向上させる観点から、好ましくは90以上、より好ましくは100以上、さらに好ましくは110以上であり、ベアリング疲労寿命をさらに高める観点から、特に好ましくは120以上である。なお、本明細書において粘度指数とは、JIS K 2283-1993に準拠して測定された粘度指数を意味する。
【0038】
潤滑油基油(全基油)の流動点は、潤滑油組成物全体の低温流動性を向上させる観点から、好ましくは-10℃以下、より好ましくは-12.5℃以下、更に好ましくは-15℃以下、特に好ましくは-17.5℃以下、最も好ましくは-20℃以下である。なお、本明細書において流動点とは、JIS K 2269-1987に準拠して測定された流動点を意味する。
【0039】
潤滑油基油(全基油)中の硫黄分の含有量は、酸化安定性を高めるとともに、ベアリング疲労寿命をさらに高める観点から、好ましくは0.03質量%以下、より好ましくは50質量ppm以下であり、10質量ppm以下であってもよい。ここで「潤滑油基油(全基油)中の硫黄分の含有量」は、JIS K 2541-2003に準拠して測定されるものとする。
【0040】
一の実施形態において、ベアリング疲労寿命をさらに高める観点から、潤滑油基油(全基油)は、(A1)API基油分類グループII基油(以下において「APIグループII基油」又は単に「グループII基油」ということがある。)もしくはAPI基油分類グループIII基油(以下において「APIグループIII基油」又は単に「グループIII基油」ということがある。)もしくはAPI基油分類グループIV基油(以下において「APIグループIV基油」又は単に「グループIV基油」ということがある。)、又はそれらの混合物を、潤滑油基油全量(全基油)基準で70質量%以上含むことが好ましい。ベアリング疲労寿命をさらに高める観点から、潤滑油基油(全基油)中の基油(A1)の含有量は、より好ましくは80質量%以上であり、一の実施形態において90質量%以上であり得る。グループII基油は、硫黄分0.03質量%以下、飽和分90質量%以上、かつ粘度指数80以上120未満の鉱油系基油である。グループIII基油は、硫黄分0.03質量%以下、飽和分90質量%以上、かつ粘度指数120以上の鉱油系基油である。グループIV基油はポリα-オレフィン基油である。
【0041】
潤滑油基油(全基油)が基油(A1)を含有する上記実施形態において、グループII基油もしくはグループIII基油またはそれらの混合物の含有量は、ベアリング疲労寿命をさらに高める観点から、潤滑油基油全量(全基油)基準で好ましくは40~100質量%であり、一の実施形態において50~100質量%であり得る。
【0042】
潤滑油基油(全基油)が基油(A1)を含有する上記実施形態において、グループIII基油の含有量は、ベアリング疲労寿命をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、潤滑油基油全量(全基油)基準で好ましくは40~100質量%、より好ましくは50~100質量%であり、一の実施形態において80~100質量%であり得る。ベーンポンプは潤滑油の循環ポンプとして用いられることがある。一般にベーンポンプの潤滑条件においては金属間の摺動速度が高いため、ベーンポンプを用いた潤滑システムにおいてはギヤポンプを用いた潤滑システムにおいて潤滑油に求められる潤滑特性とは異なる潤滑特性が求められ得る。
【0043】
潤滑油基油(全基油)が基油(A1)を含有する上記実施形態において、潤滑油基油(全基油)は、API基油分類グループI基油(以下において「APIグループI基油」又は単に「グループI基油」ということがある。)をさらに含有してもよい。APIグループI基油は粘度指数80以上120未満の鉱油系基油であって、硫黄分が0.03質量%超かつ/または飽和分90質量%未満である。潤滑油基油(全基油)中のAPIグループI基油の含有量は、ベアリング疲労寿命をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、潤滑油基油全量(全基油)基準で好ましくは10質量%未満であり、一の実施形態において8質量%以下、他の一の実施形態において5質量%未満であり得る。
【0044】
潤滑油基油(全基油)が基油(A1)を含有する上記実施形態において、潤滑油基油(全基油)は、API基油分類グループV基油(以下において「APIグループV基油」又は単に「グループV基油」ということがある。)をさらに含有してもよい。APIグループV基油はAPI基油分類グループI~グループIV以外の基油であり、好ましくはエステル系基油である。APIグループV基油の好ましい例としては、合成系基油の例として上記説明したモノエステル基油、ジエステル基油、及びポリエステル基油を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種以上のエステル系基油を好ましく用いることができる。潤滑油基油(全基油)中のAPIグループV基油の含有量は、ベアリング疲労寿命をさらに高める観点から、一の実施形態において0.1~20質量%であり、他の一の実施形態において0.1~10質量%であり得る。
【0045】
一の実施形態において、ベアリング疲労寿命をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、潤滑油基油(全基油)は、APIグループII基油もしくはAPIグループIII基油またはそれらの組み合わせを基油全量基準で50~100質量%と、任意的にAPIグループIV基油を基油全量基準で0~50質量%と、任意的にAPIグループI基油を基油全量基準で10質量%未満と、任意的にAPIグループV基油を基油全量基準で10質量%以下とからなることが好ましい。
【0046】
一の実施形態において、潤滑油組成物中の潤滑油基油(全基油)の含有量は、潤滑油組成物全量基準で好ましくは70~98質量%、より好ましくは80~98質量%である。
【0047】
一の実施形態において、潤滑油組成物中の基油(A1)の含有量は、潤滑油組成物全量基準で好ましくは28~98質量%、より好ましくは40~98質量%である。
【0048】
<(B)ポリ(メタ)アクリレート>
本発明の潤滑油組成物は、重量平均分子量25,000以下のポリ(メタ)アクリレート(以下において「(B)成分」ということがある。)を含有する。なお本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート及び/又はメタクリレート」を意味する。(B)成分としてポリ(メタ)アクリレートを用いることにより、同一の重量平均分子量を有する他のポリマーを用いた組成物よりも変速ショック防止性およびベアリング疲労寿命を高めることが可能になる。
【0049】
(B)成分としては、分散型のポリ(メタ)アクリレート及び非分散型のポリ(メタ)アクリレートのいずれを用いてもよいが、ベアリング疲労寿命を高める観点、及び、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、非分散型のポリ(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。また、側鎖に直鎖アルキル基を有するポリ(メタ)アクリレート及び側鎖に分岐鎖アルキル基を有するポリ(メタ)アクリレートのいずれを用いてもよいが、ベアリング疲労寿命を高める観点から、側鎖に分岐鎖アルキル基を有するポリ(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。一の実施形態において分岐鎖アルキル基を側鎖に有する非分散型ポリ(メタ)アクリレートを好ましく用いることができる。分岐鎖アルキル基を側鎖に有する非分散型ポリ(メタ)アクリレートは、分岐鎖アルキル基および直鎖アルキル基の両方を側鎖に有していてもよい。
【0050】
本明細書において、「分散型ポリ(メタ)アクリレート」とは窒素原子を含む官能基を有するポリ(メタ)アクリレート化合物を意味し、「非分散型ポリ(メタ)アクリレート」とは窒素原子を含む官能基を有しないポリ(メタ)アクリレート化合物を意味する。
【0051】
(B)成分を構成するポリ(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ポリマー中の全単量体単位に占める下記一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構造単位の割合が10~100mol%であるポリ(メタ)アクリレート化合物(以下において「ポリ(メタ)アクリレート(B1)」ということがある。)を好ましく採用できる。
【0052】
【化1】
(式(1)中、R
1は水素又はメチル基を表し、R
2は炭素数1~24の直鎖状又は分岐状の炭化水素基を表す。)
【0053】
ポリ(メタ)アクリレート(B1)において、ポリマー中の一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構造単位の割合は、基油への溶解性を向上させる観点から、好ましくは10~100mol%であり、より好ましくは20~100mol%であり、さらに好ましくは30~100mol%であり、最も好ましくは40~100mol%である。
【0054】
一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構造単位は、下記一般式(2)で表されるモノマー(以下、「モノマー(M-1)」という。)の重合により与えられる。1種のモノマー(M-1)の単独重合または2種以上のモノマー(M-1)からなるモノマー混合物の共重合により得られるポリマーは、非分散型ポリ(メタ)アクリレート化合物である。
【0055】
【化2】
(式(2)中、R
1及びR
2の定義は上記一般式(1)と同様である。)
【0056】
ポリ(メタ)アクリレート(B1)は、一般式(1)で表される(メタ)アクリレート構造単位に加えて、他の(メタ)アクリレート構造単位を有する共重合体であってもよい。このような共重合体は、モノマー(M-1)の1種または2種以上と、モノマー(M-1)以外のモノマーとを共重合させることによって得ることができる。
【0057】
共重合体は、1種以上のモノマー(M-1)と、下記一般式(3)で表されるモノマー(以下、「モノマー(M-2)」という。)及び下記一般式(4)で表されるモノマー(以下、「モノマー(M-3)」という。)から選ばれる1種以上のモノマーとの共重合体であってもよい。モノマー(M-1)とモノマー(M-2)及び/又は(M-3)との共重合体は、分散型ポリ(メタ)アクリレート化合物である。
【0058】
【化3】
(式(3)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、R
4は炭素数1~18のアルキレン基を表し、E
1は窒素原子を1~2個、酸素原子を0~2個含有する、アミン残基又は複素環残基を表し、xは0又は1を表す。)
【0059】
R4で表される炭素数1~18のアルキレン基の例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、及びオクタデシレン基(これらアルキレン基は直鎖状でも分岐状でもよい。)等を挙げることができる。
【0060】
E1で表される基の例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペリジノ基、キノリル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、及びピラジニル基等を挙げることができる。
【0061】
【化4】
(式(4)中、R
5は水素原子又はメチル基を表し、E
2は窒素原子を1~2個、酸素原子を0~2個含有する、アミン残基または複素環残基を表す。)
【0062】
E2で表される基の例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、アニリノ基、トルイジノ基、キシリジノ基、アセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、モルホリノ基、ピロリル基、ピロリノ基、ピリジル基、メチルピリジル基、ピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペリジノ基、キノリル基、ピロリドニル基、ピロリドノ基、イミダゾリノ基、及びピラジニル基等を挙げることができる。
【0063】
モノマー(M-2)および(M-3)の好ましい例としては、ジメチルアミノメチルメタクリレート、ジエチルアミノメチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、2-メチル-5-ビニルピリジン、モルホリノメチルメタクリレート、モルホリノエチルメタクリレート、N-ビニルピロリドン及びこれらの混合物等を挙げることができる。
【0064】
モノマー(M-1)とモノマー(M-2)~(M-3)との共重合体の共重合モル比については特に制限はないが、モノマー(M-1):モノマー(M-2)~(M-3)=20:80~90:10程度が好ましく、より好ましくは30:70~80:20、さらに好ましくは40:60~70:30である。
【0065】
ポリ(メタ)アクリレート(B1)の製造法は特に制限されない。例えば、重合開始剤(例えばベンゾイルパーオキシド等。)の存在下で、モノマー(M-1)又はモノマー(M-1)を含むモノマー混合物をラジカル溶液重合させることにより、ポリ(メタ)アクリレート(B1)を容易に得ることができる。
【0066】
(B)成分の重量平均分子量は、変速ショック防止性およびベアリング疲労寿命を高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、25,000以下、好ましくは20,000以下、より好ましくは15,000以下であり、潤滑油組成物の粘度指数をさらに高める観点から、一の実施形態において5,000以上であり、一の実施形態において5,000~12,000であり得る。
【0067】
一の好ましい実施形態において、(B)成分としては、それぞれ分子量20,000以下の重量平均分子量を有する、1種以上のポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)(以下において「ポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)」もしくは「ポリマー(B2)」又は単に「(B2)成分」ということがある。)を好ましく用いることができる。各ポリマー(B2)は、炭素数8~18の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレート単量体単位(B2a)(以下において単に「単量体単位(B2a)」ということがある。)を、各ポリマー(B2)の単量体単位全量基準で好ましくは70mol%以上含む。単量体単位(B2a)は、上記一般式(1)においてR1が水素又はメチル基であり、R2が炭素数8~18の直鎖または分岐鎖アルキル基である(メタ)アクリレート単量体単位として表される。各ポリマー(B2)中、単量体単位(B2a)は1種の単量体単位からなっていてもよく、2種以上の単量体単位の組み合わせであってもよい。ベアリング疲労寿命をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、各ポリマー(B2)中の単量体単位(B2a)の含有量(単量体単位(B2a)が2種以上の単量体単位の組み合わせである場合には合計の含有量。)は、好ましくは70mol%以上、より好ましくは75mol%以上、さらに好ましくは80mol%以上であり、一の実施形態において85mol%以上であってもよい。
【0068】
一の好ましい実施形態において、各ポリマー(B2)は、炭素数12~15の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレート単量体単位(B2b)(以下において単に「単量体単位(B2b)」ということがある。)を、各ポリマー(B2)の単量体単位全量基準で好ましくは70mol%以上含む。単量体単位(B2b)は、上記一般式(1)においてR1が水素又はメチル基であり、R2が炭素数12~15の直鎖または分岐鎖アルキル基である(メタ)アクリレート単量体単位として表される。すなわち単量体単位(B2a)は単量体単位(B2b)を包含する。各ポリマー(B2)中、単量体単位(B2b)は1種の単量体単位からなっていてもよく、2種以上の単量体単位の組み合わせであってもよい。ベアリング疲労寿命をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、各ポリマー(B2)中の単量体単位(B2b)の含有量(単量体単位(B2b)が2種以上の単量体単位の組み合わせである場合には合計の含有量。)は、好ましくは70mol%以上、より好ましくは75mol%以上、さらに好ましくは80mol%以上である。
【0069】
各ポリマー(B2)は、メチル(メタ)アクリレート単量体単位(B2c)(以下において単に「単量体単位(B2c)」ということがある。)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。ベアリング疲労寿命をさらに高めるともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、各ポリマー(B2)中の単量体単位(B2c)の含有量(単量体単位(B2c)がメチルアクリレートとメチルメタクリレートとの組み合わせである場合には合計の含有量。)は、各ポリマー(B2)の単量体単位全量基準で3mol%未満、好ましくは1mol%未満であり、0mol%であってもよい。単量体単位(B2c)は、上記一般式(1)においてR1が水素又はメチル基であり、R2がメチル基である(メタ)アクリレート単量体単位として表される。
【0070】
各ポリマー(B2)は、炭素数1~3の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレート単量体単位(B2d)(以下において単に「単量体単位(B2d)」ということがある。)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。ベアリング疲労寿命をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、各ポリマー(B2)中の単量体単位(B2d)の含有量(2種以上の単量体単位(B2d)を含む場合には合計の含有量。)は、各ポリマー(B2)の単量体単位全量基準で好ましくは3mol%未満、より好ましくは1mol%未満であり、0mol%であってもよい。単量体単位(B2d)は、上記一般式(1)においてR1が水素又はメチル基であり、R2が炭素数1~3の直鎖または分岐鎖アルキル基である(メタ)アクリレート単量体単位として表される。すなわち単量体単位(B2d)は単量体単位(B2c)を包含する。
【0071】
各ポリマー(B2)は、炭素数4~7の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレート単量体単位(B2e)(以下において単に「単量体単位(B2e)」ということがある。)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。ベアリング疲労寿命をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、各ポリマー(B2)中の単量体単位(B2e)の含有量(2種以上の単量体単位(B2e)を含む場合には合計の含有量。)は、各ポリマー(B2)の単量体単位全量基準で好ましくは30mol%以下、より好ましくは20mol%以下であり、一の実施形態において15mol%以下であり得る。単量体単位(B2e)は、上記一般式(1)においてR1が水素又はメチル基であり、R2が炭素数4~7の直鎖または分岐鎖アルキル基である(メタ)アクリレート単量体単位として表される。
【0072】
各ポリマー(B2)は、炭素数37以上の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレート単量体単位(B2f)(以下において単に「単量体単位(B2f)」ということがある。)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。ベアリング疲労寿命をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、各ポリマー(B2)中の単量体単位(B2f)の含有量(2種以上の単量体単位(B2f)を含む場合には合計の含有量。)は、各ポリマー(B2)の単量体単位全量基準で好ましくは3mol%未満、より好ましくは1mol%未満であり、0mol%であってもよい。単量体単位(B2f)は、上記一般式(1)においてR1が水素又はメチル基であり、R2が炭素数37以上の直鎖または分岐鎖アルキル基である(メタ)アクリレート単量体単位として表される。
【0073】
各ポリマー(B2)は、炭素数19~36の直鎖または分岐鎖アルキル基を有する1種以上のアルキル(メタ)アクリレート単量体単位(B2g)(以下において単に「単量体単位(B2g)」ということがある。)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。ベアリング疲労寿命をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、各ポリマー(B2)中の単量体単位(B2g)の含有量(2種以上の単量体単位(B2g)を含む場合には合計の含有量。)は、各ポリマー(B2)の単量体単位全量基準で好ましくは10mol%以下、より好ましくは5mol%以下である。単量体単位(B2g)は、上記一般式(1)においてR1が水素又はメチル基であり、R2が炭素数19~36の直鎖または分岐鎖アルキル基である(メタ)アクリレート単量体単位として表される。
【0074】
各ポリマー(B2)は、(メタ)アクリレート単量体単位以外の1種以上の単量体単位(B2h)(以下において単に「単量体単位(B2h)」ということがある。)を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。単量体単位(B2h)を与えるラジカル重合性コモノマーの好ましい例としては、α-オレフィン、及びα,β-不飽和ジカルボン酸ジエステルを挙げることができ、これらの中から選ばれる1種以上のモノマーを好ましく用いることができる。ベアリング疲労寿命をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、各ポリマー(B2)中の単量体単位(B2h)の含有量(2種以上の単量体単位(B2h)を含む場合には合計の含有量。)は、各ポリマー(B2)の単量体単位全量基準で好ましくは10mol%未満、より好ましくは5mol%未満である。単量体単位(B2h)を与えるα-オレフィンは直鎖α-オレフィンであってもよく、分岐鎖α-オレフィンであってもよい。単量体単位(B2h)を与えるα-オレフィンの炭素数は好ましくは2~18、より好ましくは2~10である。本明細書において、「α,β-不飽和ジカルボン酸」とは、不飽和ジカルボン酸であって、少なくとも一方のカルボキシ基のα炭素とβ炭素とがエチレン性不飽和結合(すなわちC=C二重結合)をなしている化合物を意味する。すなわち、「α,β-不飽和ジカルボン酸」とは、両方のカルボキシ基についてα炭素とβ炭素とがエチレン性不飽和結合をなしており且つα,β-エチレン性不飽和結合が主鎖中に存在するジカルボン酸(例えばマレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、及びメサコン酸等。)だけでなく、一方のカルボキシ基のみについてα炭素とβ炭素とがエチレン性不飽和結合をなしているジカルボン酸(例えばグルタコン酸等、)、及び、α,β-エチレン性不飽和結合が側鎖に見出されるジカルボン酸(例えばイタコン酸等。)をも包含する概念である。単量体単位(B2h)を与えるα,β-不飽和ジカルボン酸ジエステルを構成するα,β-不飽和ジカルボン酸の好ましい例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、及びメサコン酸を挙げることができる。単量体単位(B2h)を与えるα,β-不飽和ジカルボン酸ジエステルを構成するアルコールとしては、直鎖又は分岐鎖のアルキルアルコールが好ましく、その炭素数は好ましくは1~36、より好ましくは4~18である。単量体単位(B2h)を与えるα,β-不飽和ジカルボン酸ジエステルの好ましい例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、及びメサコン酸から選ばれる1種以上のα,β-不飽和ジカルボン酸と、炭素数1~36の直鎖又は分岐鎖アルキルアルコールとのジエステルを挙げることができる。本明細書において、単量体単位(B2h)を単量体単位全量基準で10mol%未満含むポリマーは、当該ポリマーがポリマー(B2)の他の要件を満たす限りにおいて、依然としてポリマー(B2)に該当するものとする。
【0075】
各ポリマー(B2)の重量平均分子量は、変速ショック防止性およびベアリング疲労寿命を高めるとともに、ベーンポンプの摩耗を低減する観点から、20,000以下、より好ましくは15,000以下であり、潤滑油組成物の粘度指数をさらに高める観点から、一の実施形態において5,000以上であり、一の実施形態において5,000~12,000であり得る。
【0076】
ポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)の製造法は特に制限されない。例えば、重合開始剤(例えばベンゾイルパーオキシド等。)の存在下で、単量体単位(B2a)に対応するモノマー(M-1)を含む原料モノマーをラジカル溶液重合させることにより、ポリアルキル(メタ)アクリレート(B2)を容易に得ることができる。
【0077】
(B)成分は粘度指数向上剤として作用する。潤滑油組成物中の(B)成分の含有量は、潤滑油組成物の100℃における動粘度が後述の範囲内になる量とすることができる。一の実施形態において、潤滑油組成物中の(B)成分の含有量は、変速ショック防止性、ベアリング疲労寿命、及びクラッチトルク容量をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、潤滑油組成物全量を基準(100質量%)として好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上、一の実施形態において0.5質量%以上であり、クラッチトルク容量を高める観点から、好ましくは5質量%以下、一の実施形態において3質量%以下であり、一の実施形態において0.01~5質量%、他の一の実施形態において0.2~5質量%、他の一の実施形態において0.2~3質量%、他の一の実施形態において0.5~3質量%であり得る。
【0078】
同一の重量平均分子量を有する他のポリマーを用いた組成物よりも変速ショック防止性およびベアリング疲労寿命をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗を低減する観点からは、(B)成分としてポリマー(B2)を用いることが好ましい。(B)成分としてポリマー(B2)を用いる場合、ポリマー(B2)の含有量(2種以上のポリマー(B2)を含む場合には合計の含有量。)は、変速ショック防止性、ベアリング疲労寿命、及びクラッチトルク容量をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、組成物全量基準で好ましくは0.2質量%以上、一の実施形態において0.5質量%以上であり、クラッチトルク容量をさらに高める観点から好ましくは5質量%以下、一の実施形態において3質量%以下であり、一の実施形態において0.2~5質量%、他の一の実施形態において0.2~3質量%、他の一の実施形態において0.5~3質量%であり得る。
【0079】
<(C)カルシウムスルホネート清浄剤>
一の実施形態において、潤滑油組成物は、カルシウムスルホネート清浄剤(以下において「(C)成分」ということがある。)をさらに含み得る。(C)成分としては1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
カルシウムスルホネート清浄剤の好ましい例としては、アルキル芳香族化合物をスルホン化することによって得られるアルキル芳香族スルホン酸のカルシウム塩またはその塩基性塩もしくは過塩基性塩を挙げることができる。アルキル芳香族化合物の重量平均分子量は好ましくは140~1500であり、より好ましくは230~800である。
アルキル芳香族スルホン酸の例としては、いわゆる石油スルホン酸や合成スルホン酸が挙げられる。ここでいう石油スルホン酸の例としては、鉱油の潤滑油留分のアルキル芳香族化合物をスルホン化したものや、ホワイトオイル製造時に副生する、いわゆるマホガニー酸等が挙げられる。また、合成スルホン酸の一例としては、洗剤の原料となるアルキルベンゼン製造プラントにおける副生成物を回収すること、もしくは、ベンゼンをポリオレフィンでアルキル化することにより得られる、直鎖状または分枝状のアルキル基を有するアルキルベンゼンをスルホン化したものを挙げることができる。合成スルホン酸の他の一例としては、ジノニルナフタレン等のアルキルナフタレンをスルホン化したものを挙げることができる。また、これらアルキル芳香族化合物をスルホン化する際のスルホン化剤としては、特に制限はなく、例えば発煙硫酸や無水硫酸を用いることができる。
【0081】
一の実施形態において、アルキル芳香族スルホン酸は、直鎖α-オレフィンでベンゼンをアルキル化することにより得られるアルキルベンゼンをスルホン化することにより得られるアルキルベンゼンスルホン酸であり得る。該アルキルベンゼンスルホン酸において、アルキル基は、α-位(ベンゼン環に直接結合した炭素原子)にのみ分岐を有する分岐鎖アルキル基である。そのようなアルキルベンゼンスルホン酸は下記一般式(5)で表される。
【0082】
【化5】
一般式(5)中、スルホ基の置換位置はR
6に対してo-位又はp-位であり、R
6は下記一般式(6)で表される。
【0083】
【化6】
一般式(6)中、R
7及びR
8はそれぞれ独立に炭素数1以上の直鎖アルキル基である。R
7及びR
8の合計の炭素数は(R
6の炭素数-1)と等しく、R
6の炭素数は直鎖α-オレフィンの炭素数に等しい。直鎖α-オレフィンの炭素数は好ましくは5~36である。アルキル化反応において、直鎖α-オレフィンのC=C二重結合の位置は異性化により移動し得る。一般に、オレフィンでベンゼンをアルキル化すると、オレフィンのC=C二重結合の一方の炭素原子に芳香環が結合し、他方の炭素原子に水素原子が結合した構造を有するアルキルベンゼンが得られる。一の実施形態において、R
7は直鎖α-オレフィンの1-位(α-位)の炭素を含む炭素数1~4の直鎖アルキル基、R
8は直鎖α-オレフィンのω-位の炭素を含む炭素数1以上の直鎖アルキル基である。
【0084】
一の好ましい実施形態において、アルキル芳香族スルホン酸は、炭素数3以上のオレフィンのオリゴマー(オレフィンオリゴマー)でベンゼンをアルキル化することにより得られるアルキルベンゼンをスルホン化することにより得られるアルキルベンゼンスルホン酸であり得る。該アルキルベンゼンスルホン酸において、アルキル基は、α-位(ベンゼン環に直接結合した炭素原子)だけでなく、α-位以外の位置にも分岐を有する分岐鎖アルキル基である。オレフィンオリゴマーは好ましくは炭素数3又は4のオレフィン(例えばプロペン、1-ブテン、2-ブテン、イソブテン)のオリゴマーである。オレフィンオリゴマーは2種以上のオレフィンのコオリゴマーであってもよい。そのようなアルキルベンゼンスルホン酸は下記一般式(7)で表される。
【0085】
【化7】
一般式(7)中、スルホ基の置換位置はR
9に対してo-位又はp-位であり、R
9は下記一般式(8)で表される。
【0086】
【化8】
一般式(8)中、R
10~R
12はそれぞれ独立に炭素数1以上の直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、又は水素原子である。R
10~R
12のうち少なくとも2つはアルキル基であり、R
10~R
12のうち少なくとも1つは分岐鎖アルキル基である。R
10~R
12の合計の炭素数は(R
9の炭素数-1)と等しく、R
9の炭素数はオレフィンオリゴマーの炭素数に等しい。オレフィンオリゴマーの重合度は好ましくは2~20、より好ましくは3~12である。
【0087】
ベアリング疲労寿命およびクラッチトルク容量をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、(C)成分として炭素数3以上のオレフィンのオリゴマーから誘導されたアルキル基を有するカルシウムスルホネート清浄剤を用いることが好ましい。一般に、オレフィンオリゴマーはC=C二重結合を有し、その位置は主鎖末端又はその近傍である。ただしアルキル化反応において、オレフィンオリゴマーのC=C二重結合の位置は異性化により移動し得る。一般に、オレフィンオリゴマーでベンゼンをアルキル化すると、オレフィンオリゴマーのC=C二重結合の一方の炭素原子に芳香環が結合し、他方の炭素原子に水素原子が結合した構造を有するアルキルベンゼンが得られる。一の実施形態において、R10はオレフィンオリゴマーの一方の主鎖末端を含む分岐鎖アルキル基であり、R11はオレフィンオリゴマーの他方の主鎖末端を含む直鎖もしくは分岐鎖アルキル基、又はオレフィンオリゴマーの側鎖アルキル基であり、R12は水素原子又はオレフィンオリゴマーの側鎖アルキル基である。
【0088】
(C)成分の塩基価は特に制限されるものではないが、好ましくは50~500mgKOH/g、より好ましくは100~400mgKOH/g、特に好ましくは200~400mgKOH/gである。なお本明細書において塩基価とは、ASTM D 2896に準拠して過塩素酸法により測定される塩基価を意味する。
【0089】
潤滑油組成物は(C)成分を含有してもよく、含有しなくてもよい。潤滑油組成物が(C)成分を含有する場合、その含有量は、変速ショック防止性、ベアリング疲労寿命、及びクラッチトルク容量をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、潤滑油組成物全量基準でカルシウム分として好ましくは10~1000質量ppm、より好ましくは40~600質量ppmであり、一の実施形態において50~500質量ppmであり得る。
【0090】
<(D)リン含有添加剤>
一の好ましい実施形態において、潤滑油組成物は、リン含有添加剤(以下において「(D)成分」ということがある。)を含有し得る。(D)成分は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
(D)成分としては、潤滑油に通常用いられるリン含有摩耗防止剤を特に制限なく用いることができる。そのようなリン含有摩耗防止剤としては例えば、下記一般式(9)で表される化合物、下記一般式(10)で表される化合物、並びにそれらの金属塩およびアンモニウム塩を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種以上の化合物を(D)成分として好ましく用いることができる。
【0092】
【化9】
(一般式(9)中、X
1、X
2、及びX
3は、それぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し;R
13は硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1~30の炭化水素基を表し;R
14及びR
15はそれぞれ独立に硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1~30の炭化水素基または水素原子を表し;R
13、R
14、及びR
15は同一でも相互に異なっていてもよい。R
14及び/又はR
15が水素原子である場合、一般式(9)の化合物は通常、互変異性を有する。本明細書においては、一般式(9)の化合物のいかなる互変異性体(タウトマー)も、(D)成分に該当するものとする。)
【0093】
【化10】
(一般式(10)中、X
4、X
5、X
6、及びX
7は、それぞれ独立に酸素原子または硫黄原子を表し;R
16は硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1~30の炭化水素基を表し;R
17及びR
18はそれぞれ独立に硫黄原子を含んでいてもよい炭素数1~30の炭化水素基または水素原子を表し;R
16、R
17、及びR
18は同一でも相互に異なっていてもよい。)
【0094】
一般式(9)及び(10)における炭素数1~30の炭化水素基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキル置換シクロアルキル基、アリール基、アルキル置換アリール基、及びアリールアルキル基等を挙げることができる。炭化水素基は好ましくは、炭素数1~30のアルキル基又は炭素数6~24のアリール基であり、一の実施形態において炭素数3~18、さらに好ましくは炭素数4~12のアルキル基、アリール基、又はアルキルアリール基である。
【0095】
一般式(9)及び(10)における炭素数1~30の炭化水素基は、硫黄原子を含む炭化水素基であってもよく、硫黄原子を含まない炭化水素基であってもよい。
【0096】
一の実施形態において、硫黄原子を含まない炭化水素基の好ましい例としては、炭素数4~18の直鎖アルキル基を挙げることができる。直鎖アルキル基の例としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基を挙げることができる。
【0097】
硫黄原子を含む炭化水素基の例としては、スルフィド結合で官能基化された炭化水素基を挙げることができる。スルフィド結合で官能基化された炭化水素基の好ましい例としては、下記一般式(11)で表される炭素数4~20の基を挙げることができる。
【0098】
【化11】
一般式(11)において、R
19は炭素数2~17の直鎖炭化水素基であり、好ましくはエチレン基またはプロピレン基であり、一の実施形態においてエチレン基である。R
20は炭素数2~17の直鎖炭化水素基であり、好ましくは炭素数2~16の直鎖炭化水素基であり、特に好ましくは炭素数6~10の直鎖炭化水素基である。
【0099】
一般式(11)で表される基の好ましい例としては、3-チアペンチル基、3-チアヘキシル基、3-チアヘプチル基、3-チアオクチル基、3-チアノニル基、3-チアデシル基、3-チアウンデシル基、4-チアヘキシル基、等を挙げることができる。
【0100】
一般式(9)又は(10)で表されるリン化合物と金属塩を形成する金属の例としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等のアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、バリウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、銅、鉄、鉛、ニッケル、銀、マンガン等の重金属等が挙げられる。これらの中ではカルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属、もしくは亜鉛、又はそれらの組み合わせが好ましい。
【0101】
一般式(9)又は(10)で表されるリン化合物とアンモニウム塩を形成する含窒素化合物の例としては、アンモニア、モノアミン、ジアミン、ポリアミン、及びアルカノールアミンを挙げることができる。そのような含窒素化合物のより具体的な例としては、下記一般式(12)で表される含窒素化合物;メチレンジアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、及びブチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン等のポリアミン;及びこれらの組み合わせ、等を挙げることができる。
【0102】
【化12】
(一般式(12)中、R
21~R
23はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~8のヒドロカルビル基、又は水酸基を有する炭素数1~8のヒドロカルビル基を表し;R
21~R
23のうち少なくとも1つは炭素数1~8のヒドロカルビル基、又は水酸基を有する炭素数1~8のヒドロカルビル基である。)
【0103】
上記一般式(9)で表される化合物の好ましい例としては、上記一般式(9)においてX1~X3が酸素原子であり、R13~R15がそれぞれ独立に硫黄原子を含んでいてもよい炭素数3~18(好ましくは4~12)のアルキル基、アリール基(例えばフェニル基等。)、又はアルキルアリール基(例えばクレジル基等のアルキルフェニル基等。)である亜リン酸エステル化合物;上記一般式(9)においてX1~X3が酸素原子であり、R13及びR14がそれぞれ独立に硫黄原子を含んでいてもよい炭素数3~18(好ましくは4~12)のアルキル基、アリール基(例えばフェニル基等。)、又はアルキルアリール基(例えばクレジル基等のアルキルフェニル基等。)であり、R15が水素であるハイドロジェンホスファイト化合物;上記一般式(9)においてX1~X3のうち2つが酸素原子、残り1つが硫黄原子であり、R13及びR14がそれぞれ独立に硫黄原子を含んでいてもよい炭素数3~18(好ましくは4~12)のアルキル基、アリール基(例えばフェニル基等。)、又はアルキルアリール基(例えばクレジル基等のアルキルフェニル基等。)であり、R15が水素であるハイドロジェンチオホスファイト化合物;及び上記一般式(9)においてX1~X3のうち1つが酸素原子、残り2つが硫黄原子であり、R13及びR14がそれぞれ独立に硫黄原子を含んでいてもよい炭素数3~18(好ましくは4~12)のアルキル基、アリール基(例えばフェニル基等。)、又はアルキルアリール基(例えばクレジル基等のアルキルフェニル基等。)であり、R15が水素であるハイドロジェンジチオホスファイト化合物、等を挙げることができる。
上記一般式(10)で表される化合物の好ましい例としては、上記一般式(10)においてX4~X7のうち2つが硫黄原子、残り2つが酸素原子であり、R16~R18がそれぞれ独立に硫黄原子を含んでいてもよい炭素数3~18(好ましくは4~12)のアルキル基、アリール基(例えばフェニル基等。)、又はアルキルアリール基(例えばクレジル基等。)であるジチオホスフェート化合物を挙げることができる。
これらの化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0104】
潤滑油組成物中が(D)成分を含有する場合、その含有量は、耐摩耗性、耐焼き付き性、ベアリング疲労寿命、および変速ショック防止性をさらに高めるとともに、ベーンポンプの摩耗をさらに低減する観点から、潤滑油組成物全量基準でリン分として好ましくは50~800質量ppm、より好ましくは50~600質量ppmであり、一の実施形態において50~500質量ppmであり得る。
【0105】
<(E)コハク酸イミド無灰分散剤>
一の好ましい実施形態において、潤滑油組成物は、コハク酸イミド無灰分散剤(以下において「(E)成分」ということがある。)をさらに含み得る。
【0106】
(E)成分の好ましい例としては、アルキル基もしくはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミド、及び/又はその誘導体(変性化合物)を挙げることができる。
【0107】
アルキル基もしくはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドの例としては、下記一般式(13)又は(14)で表される化合物を挙げることができる。
【0108】
【0109】
式(13)中、R24は炭素数40~400のアルキル基またはアルケニル基を示し、aは1~5、好ましくは2~4の整数を示す。R24の炭素数は、添加剤の溶解性を高める観点から好ましくは40以上、より好ましくは60以上であり、また潤滑油組成物の低温流動性を高める観点から、好ましくは400以下、より好ましくは350以下である。R24は特に好ましくはポリブテニル基である。
【0110】
式(14)中、R25及びR26は、それぞれ独立に炭素数40~400のアルキル基又はアルケニル基を示し、異なる基の組み合わせであってもよい。また、bは0~4、好ましくは1~4、より好ましくは1~3の整数を示す。R25及びR26の炭素数は、添加剤の溶解性を高める観点から、好ましくは40以上、より好ましくは60以上であり、また潤滑油組成物の低温流動性を高める観点から、好ましくは400以下、より好ましくは350以下である。R25及びR26は特に好ましくはポリブテニル基である。
【0111】
式(13)及び式(14)におけるアルキル基またはアルケニル基(R24~R26)は直鎖状でも分枝状でもよい。その好ましい例としては、プロピレン、1-ブテン、イソブテン等のオレフィンのオリゴマーや、エチレンとプロピレンとのコオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基や分枝状アルケニル基を挙げることができる。なかでも慣用的にポリイソブチレンと呼ばれるイソブテンのオリゴマーから誘導される分枝状アルキル基またはアルケニル基や、ポリブテニル基が最も好ましい。
式(13)及び式(14)におけるアルキル基またはアルケニル基(R24~R26)の好適な数平均分子量は800~3500、より好ましくは1000~3500である。
【0112】
アルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドには、ポリアミン鎖の一方の末端のみに無水コハク酸が付加した、式(13)で表される、いわゆるモノタイプのコハク酸イミドと、ポリアミン鎖の両末端に無水コハク酸が付加した、式(14)で表される、いわゆるビスタイプのコハク酸イミドとが包含される。潤滑油組成物には、モノタイプのコハク酸イミド及びビスタイプのコハク酸イミドのいずれが含まれていてもよく、それらの両方が混合物として含まれていてもよい。(E)成分中のビスタイプのコハク酸イミド又はその誘導体の含有量は、(E)成分の全量を基準(100質量%)として好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
【0113】
アルキル基またはアルケニル基を分子中に少なくとも1個有するコハク酸イミドの製法は、特に制限されるものではない。例えば、炭素数40~400のアルキル基又はアルケニル基を有するアルキル若しくはアルケニルコハク酸又はその無水物と、原料ポリアミンとの反応により、対応するコハク酸イミドを縮合反応生成物(縮合生成物)として得ることができる。なおアルキル若しくはアルケニルコハク酸又はその無水物は、炭素数40~400のアルキル基又はアルケニル基を有する化合物を無水マレイン酸と100~200℃で反応させることにより得ることができる。(E)成分としては、上記縮合生成物をそのまま用いてもよく、上記縮合生成物を後述する誘導体に変換して用いてもよい。アルキル若しくはアルケニルコハク酸又はその無水物とポリアミンとの縮合生成物は、ポリアミン鎖の両末端がイミド化された、ビスタイプのコハク酸イミド(一般式(14)参照。)であってもよく、ポリアミン鎖の一方の末端のみがイミド化された、モノタイプのコハク酸イミド(一般式(13)参照。)であってもよく、それらの混合物であってもよい。ここで、ポリアミンの例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、及びペンタエチレンヘキサミン並びにそれらの混合物を挙げることができ、これらの中から選ばれる1種以上を含む原料ポリアミンを好ましく用いることができる。原料ポリアミンはエチレンジアミンをさらに含有してもよく、含有しなくてもよいが、縮合生成物またはその誘導体の分散剤としての性能を高める観点からは、原料ポリアミン中のエチレンジアミンの含有量は、ポリアミン全量基準で好ましくは0~10質量%、より好ましくは0~5質量%である。炭素数40~400のアルキル若しくはアルケニル基を有するアルキル若しくはアルケニルコハク酸又はそれらの無水物と、2種以上のポリアミンの混合物との縮合反応生成物として得られるコハク酸イミドは、一般式(13)又は(14)において異なるa又はbを有する化合物の混合物である。
【0114】
上記コハク酸イミドの誘導体(変性化合物)の例としては、(i)上記コハク酸イミドに、脂肪酸等の炭素数1~30のモノカルボン酸、炭素数2~30のポリカルボン酸(例えばシュウ酸、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等。)、これらの無水物もしくはエステル化合物、炭素数2~6のアルキレンオキサイド、又はヒドロキシ(ポリ)オキシアルキレンカーボネートを作用させたことにより、残存するアミノ基および/またはイミノ基の一部又は全部が中和またはアミド化されている、含酸素有機化合物による変性化合物;(ii)上記コハク酸イミドにホウ酸を作用させることにより、残存するアミノ基および/またはイミノ基の一部又は全部が中和またはアミド化されている、ホウ素変性化合物;(iii)上記コハク酸イミドにリン酸を作用させることにより、残存するアミノ基および/またはイミノ基の一部又は全部が中和またはアミド化されている、リン酸変性化合物;(iv)上記コハク酸イミドに硫黄化合物を作用させることにより得られる、硫黄変性化合物;及び、(v)上記コハク酸イミドに、含酸素有機化合物による変性、ホウ素変性、リン酸変性、硫黄変性から選ばれた2種以上の変性を組み合わせて施すことにより得られる変性化合物が挙げられる。
【0115】
(E)成分の重量平均分子量は好ましくは1000~20000、より好ましくは1000~15000であり、特に好ましくは2000~9000である。
【0116】
潤滑油組成物が(E)成分を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、変速ショック防止性、ベアリング疲労寿命、クラッチトルク容量、及び潤滑油組成物の耐コーキング性(耐熱性)をさらに高める観点から、好ましくは0.2質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、一の実施形態において1質量%以上であり、ベアリング疲労寿命、省燃費性、及びクラッチトルク容量をさらに高める観点から、好ましくは8質量%以下、より好ましくは6質量%以下、一の実施形態において5質量%以下であり、一の実施形態において0.2~8質量%、他の一の実施形態において0.5~6質量%、他の一の実施形態において1~5質量%であり得る。
【0117】
(E)成分としてホウ素変性化合物を用いる場合、潤滑油組成物中の(E)成分に由来するホウ素量は、変速ショック防止性、ベアリング疲労寿命、クラッチトルク容量、及び耐摩耗性をさらに高める観点から、潤滑油組成物全量基準で好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.003質量%以上であり、耐摩耗性および耐焼き付き性を高める観点から、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下であり、一の実施形態において0.001~0.05質量%、他の一の実施形態において0.003~0.03質量%以下であり得る。
【0118】
<(F)アミン系摩擦調整剤>
一の実施形態において、クラッチトルク容量をさらに高める観点から、潤滑油組成物は、(F)アミン系摩擦調整剤(以下において「(F)成分」ということがある。)を実質的に含有しないことが好ましい。本明細書において、「アミン系摩擦調整剤を実質的に含有しない」とは、潤滑油においてアミン系摩擦調整剤として用いられる成分を全く含有していないか、又はその影響が無視できる程度に含有量が微量であることを意味する。潤滑油においてアミン系摩擦調整剤として用いられる成分とは、炭素数9~50のアルキル又はアルケニル基を少なくとも1個と、脂肪族炭素に結合した第1級または第2級アミノ基を少なくとも1個とを分子中に有するアミン化合物である。このようなアミン化合物は、アミン系摩擦調整剤として知られている。アミン系摩擦調整剤は、第1級アミンのアルキレンオキサイド付加物であってもよい。第1級アミンのアルキレンオキサイド付加物は官能基として第2級アミノ基およびヒドロキシ基を有する。より具体的には、潤滑油組成物中のアミン系摩擦調整剤の含有量は、好ましくは0~50質量ppm、より好ましくは0~20質量ppm、さらに好ましくは0~10質量ppm、特に好ましくは0~5質量ppmであり、一の実施形態において0~50質量ppmであり得る。
【0119】
<その他の添加剤>
一の実施形態において、潤滑油組成物は、(D)成分以外の摩耗防止剤または極圧剤、酸化防止剤、(B)成分以外の流動点降下剤、腐食防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、消泡剤、抗乳化剤、および着色剤から選ばれる1種以上の添加剤をさらに含み得る。
【0120】
(D)成分以外の摩耗防止剤または極圧剤としては、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類等の硫黄系化合物等が挙げられる。潤滑油組成物が(D)成分以外の摩耗防止剤または極圧剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、例えば0.01~5質量%であり得る。
【0121】
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系等の無灰酸化防止剤、銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。具体的には例えば、フェノール系無灰酸化防止剤としては、4,4’-メチレンビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)、4,4’-ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェノール)等が挙げられ、アミン系無灰酸化防止剤としては、フェニル-α-ナフチルアミン、アルキルフェニル-α-ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン等が挙げられる。潤滑油組成物が酸化防止剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、例えば0.01~5質量%であり得る。
【0122】
(B)成分以外の流動点降下剤としては、使用する潤滑油基油の性状に応じて、例えば(B)成分に該当しないポリ(メタ)アクリレート系ポリマー等の公知の流動点降下剤を用いることができる。潤滑油組成物が(B)成分以外の流動点降下剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、例えば0.05~0.5質量%、一の実施形態において0.05~0.3質量%であり得る。
【0123】
腐食防止剤としては、例えば、チアジアゾール系、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、及びイミダゾール系化合物等の公知の腐食防止剤を用いることができる。潤滑油組成物が腐食防止剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005~5質量%である。
【0124】
防錆剤としては、例えば石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、及び多価アルコールエステル等の公知の防錆剤を用いることができる。潤滑油組成物が防錆剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005~5質量%である。
【0125】
金属不活性化剤としては、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール及びその誘導体、チアジアゾール及びその誘導体、2-(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、並びにβ-(o-カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリル等の公知の金属不活性化剤を用いることができる。潤滑油組成物が金属不活性化剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005~1質量%である。
【0126】
消泡剤としては、例えば、シリコーン、フルオロシリコーン、及びフルオロアルキルエーテル等の公知の消泡剤を用いることができる。潤滑油組成物が消泡剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.0005~1質量%である。
【0127】
抗乳化剤としては、例えばポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤等の公知の抗乳化剤を用いることができる。潤滑油組成物が抗乳化剤を含有する場合、その含有量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.005~5質量%である。
【0128】
着色剤としては、例えばアゾ化合物等の公知の着色剤を用いることができる。
【0129】
<潤滑油組成物>
潤滑油組成物の100℃における動粘度は、潤滑箇所における油膜の形成を十分にして耐摩耗性を高める観点から、2.5mm2/s以上、好ましくは2.7mm2/s以上、一の実施形態において2.9mm2/s以上であり、また省燃費性を高める観点から4.9mm2/s以下、好ましくは4.4mm2/s以下、より好ましくは3.9mm2/s以下、一の実施形態において3.7mm2/s以下であり、一の実施形態において2.5~4.9mm2/sであり得る。
【0130】
潤滑油組成物の40℃における動粘度は、潤滑箇所における油膜の形成を十分にして耐摩耗性を高める観点から、好ましくは9mm2/s以上、より好ましくは10mm2/s以上、一の実施形態において11mm2/s以上であり、また省燃費性をさらに高める観点から、好ましくは30mm2/s以下、より好ましくは25mm2/s以下、一の実施形態において16mm2/s以下である。
【0131】
(用途)
本発明の潤滑油組成物は、自動車用の自動変速機油として好ましく用いることができ、湿式多板クラッチ等の湿式クラッチを有する変速機の潤滑に特に好ましく用いることができる。
【実施例】
【0132】
以下、実施例及び比較例に基づき、本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0133】
<実施例及び比較例>
表1~6に示されるように、本発明の潤滑油組成物(実施例)、及び比較用の潤滑油組成物(比較例)をそれぞれ調製した。表中、「基油組成」の項目における「mass%」は基油全量を基準(100質量%)とする質量%を意味し、他の項目における「mass%」は組成物全量を基準(100質量%)とする質量%を意味する。また表中、「mass ppm/Ca」は、組成物全量を基準とするカルシウム量としての質量ppmを意味し、「mass ppm/P」は、組成物全量を基準とするリン量としての質量ppmを意味する。成分の詳細は次の通りである。
【0134】
((A)潤滑油基油)
A-1:APIグループIII基油、動粘度(100℃):2.7mm2/s、動粘度(40℃):9.6mm2/s、粘度指数:125、硫黄分:1質量ppm未満、%CP:92.2、%CN:7.8、%CA:0
A-2:APIグループII基油、動粘度(100℃):3.1mm2/s、動粘度(40℃):12.7mm2/s、粘度指数:105、硫黄分:1質量ppm未満、%CP:70.8、%CN:29.2、%CA:0
A-3:APIグループI基油、動粘度(100℃):2.1mm2/s、動粘度(40℃):6.87mm2/s、粘度指数:96、硫黄分:0.15質量%、%CP:63、%CN:31、%CA:6
A-4:APIグループIV基油(INEOS社製DURASYN(登録商標)162)、動粘度(100℃):1.78mm2/s、動粘度(40℃):5.40mm2/s
A-5:APIグループV基油(アゼライン酸ビス(2-エチルヘキシル))、動粘度(100℃):2.9mm2/s、動粘度(40℃):10.3mm2/s
【0135】
((B)ポリマー)
B-1:非分散型ポリアルキルメタクリレート、重量平均分子量:12,000、側鎖アルキル基(一般式(1)中のR2):分岐鎖アルキル基および直鎖アルキル基、側鎖アルキル基の炭素数:C12~15
B-2:非分散型ポリアルキルメタクリレート、重量平均分子量:20,000、側鎖アルキル基(一般式(1)中のR2):C1(メチル基)(60mol%)、直鎖C12~16アルキル基(20mol%)、分岐鎖C22アルキル基(20mol%)の組み合わせ
B-3:非分散型ポリアルキルメタクリレート、重量平均分子量:20,000、側鎖アルキル基(一般式(1)中のR2):C1(メチル基)(45mol%)、直鎖C12~15アルキル基(55mol%)の組み合わせ
B*-4:非分散型ポリアルキルメタクリレート、重量平均分子量:35,000、側鎖アルキル基(一般式(1)中のR2):分岐鎖アルキル基および直鎖アルキル基、側鎖アルキル基の炭素数:C1、C12~16、C18、C22の組み合わせ
B*-5:エチレンプロピレンコポリマー、重量平均分子量:13,000
B-6:非分散型ポリアルキルメタクリレート、重量平均分子量:8,000、側鎖アルキル基(一般式(1)中のR2):分岐鎖C6(2-メチルペンチル基)(15mol%)、分岐鎖C8(2-エチルヘキシル基)(5mol%)、直鎖C12~15アルキル基(45mol%)、分岐鎖C12~15アルキル基(35mol%)
B-7:非分散型ポリアルキルメタクリレート、重量平均分子量:5,000、側鎖アルキル基(一般式(1)中のR2):分岐鎖アルキル基および直鎖アルキル基、側鎖アルキル基の炭素数:C12~15
B-8:非分散型ポリアルキルメタクリレート、重量平均分子量:8,000、側鎖アルキル基(一般式(1)中のR2):分岐鎖C8アルキル基
B-9:非分散型ポリアルキルメタクリレート、重量平均分子量:8,000、側鎖アルキル基(一般式(1)中のR2):直鎖C18アルキル基
【0136】
((C)カルシウムスルホネート清浄剤)
C-1:イソブテンオリゴマー(4~7量体)でベンゼンをアルキル化することにより得られるアルキルベンゼンをスルホン化することにより得られるアルキルベンゼンスルホン酸のCa塩の過塩基性塩であるCaスルホネート(一般式(7)及び(8)においてR10がイソブテンオリゴマーの一方の主鎖末端を含む分岐鎖アルキル基(-CH2-(C(CH3)2-CH2)n-1-H基、nはイソブテンオリゴマーの重合度)であり、R11及びR12がともにメチル基であるアルキルベンゼンスルホン酸のCa塩の過塩基性塩であるCaスルホネートと、一般式(7)及び(8)においてR10がイソブテンオリゴマーの一方の主鎖末端を含む分岐鎖アルキル基(-(C(CH3)2-CH2)n-1-H基、nはイソブテンオリゴマーの重合度)であり、R11がイソブテンオリゴマーの他方の主鎖末端を含む分岐鎖アルキル基(イソプロピル基)であり、R12が水素原子であるアルキルベンゼンスルホン酸のCa塩の過塩基性塩であるCaスルホネートとの混合物)、塩基価300mgKOH/g、Ca:10質量%
C-2:直鎖α-オレフィン(C20~C26)でベンゼンをアルキル化することにより得られるアルキルベンゼンをスルホン化することにより得られるアルキルベンゼンスルホン酸のCa塩の過塩基性塩であるCaスルホネート(一般式(5)及び(6)において、R7が直鎖α-オレフィンの1-位の炭素を含む炭素数1~4の直鎖アルキル基であり、R8が直鎖α-オレフィンのω-位の炭素を含む直鎖アルキル基であるアルキルベンゼンスルホン酸のCa塩の過塩基性塩であるCaスルホネートの混合物)、塩基価300mgKOH/g、Ca:12質量%
【0137】
((D)リン含有添加剤)
D-1:トリオクチルジチオホスフェート(一般式(10)においてX4~X7のうち2つが酸素原子、残り2つが硫黄原子、R16~R18がオクチル基)、P:6.6質量%
D-2:ビス(3-チアウンデシル)ハイドロジェンホスファイト(一般式(9)においてX1~X3が酸素原子、R13及びR14が3-チアウンデシル基、R15が水素)、P:7.3質量%
D-3:ジブチルハイドロジェンホスファイト(一般式(9)においてX1~X3が酸素原子、R13及びR14がブチル基、R15が水素)、P:15.9質量%
【0138】
((E)無灰分散剤)
E-1:アルケニルコハク酸イミド無灰分散剤、アルケニル基の数平均分子量:3000、N:1.6質量%
E-2:ホウ素変性アルケニルコハク酸イミド分散剤、アルケニル基の数平均分子量:3000、N:1.6質量%、B:0.6質量%
【0139】
((F)アミン系摩擦調整剤)
F-1:オレイルアミン-エチレンオキサイド付加物
【0140】
その他の添加剤:アミン系酸化防止剤(1質量%)、フェノール系酸化防止剤(1質量%)、金属不活性化剤(0.1質量%)、及び流動点降下剤(0.2質量%)からなる添加剤パッケージ(カッコ内は潤滑油組成物全量基準での含有量)
【0141】
【0142】
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
(SAE No.2摩擦試験:変速ショック指数の評価)
潤滑油組成物のそれぞれについて、SAE No.2試験機(神鋼造機製)を用い、JASO M348:2002に準拠して動摩擦試験を行った。2500サイクル後のフリクションプレート(NW461E材)とスチールプレートとの間の動摩擦係数μd及びμ0を測定し、変速ショック指数μ0/μdを算出した。
結果を表1~6に示している。本試験で測定されたμd及びμ0より算出された変速ショック指数μ0/μdが小さいほど、変速ショック防止性が良好であることを意味する。
【0148】
(ユニスチール試験:ベアリング疲労寿命の評価)
潤滑油組成物のそれぞれについて、ユニスチール転がり疲労試験機(株式会社東京試験機製3連式高温転がり疲れ試験機TRF-1000/3-01H)を用いて、ユニスチール試験(イギリス石油学会法:IP305/79)によりスラストベアリングの転がり疲労寿命を測定した。スラストニードルベアリング(NSK製FNTA-2542C)の片側の軌道輪を平坦な試験片(材質:SUJ2)で置き換えてなる試験軸受について、荷重4000N、面圧1.5GPa、回転数1500rpm、油温120℃の条件下で、ころ又は試験片のいずれかが疲労損傷するまでの時間を測定した。なお、ユニスチール転がり疲労試験機に備えられた振動加速度計により測定される試験部の振動加速度が0.5m/s2に達したとき、疲労損傷が発生したと判断した。10回の繰り返し試験における疲労損傷までの時間から、ワイブルプロットにより疲労寿命を50%寿命(L50:累積確率が50%になる時間)として算出した。結果を表1~6に示している。本試験で測定されたベアリング疲労寿命L50が長いほど、ベアリングの疲労寿命をより改善できることを意味する。
【0149】
(ベーンポンプ摩耗試験)
潤滑油組成物のそれぞれについて、ベーンポンプの摩耗を評価した。ベーンポンプ(Eaton Corporation製Vickers(登録商標)ベーンポンプV104C)を用いて、回転数1200rpm、吐出圧力3.0MPaの条件でタンク内の試料油(30L、油温80℃)をポンピングすることにより試料油を循環させる運転を100時間行い、運転後のベーンポンプの摩耗量(mg)を測定した。さらに、運転後の試料油の動粘度(100℃)の低下率(%)を測定した。本試験で測定されたベーンポンプの摩耗量が少ないほど、ベーンポンプの摩耗をより低減できることを意味する。また運転後の試料油に動粘度の低下が観察されないことは、ベーンポンプにおいて潤滑油が受けるせん断がベーンポンプの摩耗に関与しないことを意味する。
(せん断安定性試験)
潤滑油組成物のそれぞれについて、JPI-5S-29-88に準拠したせん断安定度試験により、潤滑油組成物のせん断安定性を評価した。試料油に振動子から周波数10kHz、振動子の振れ幅28μmの超音波を2時間照射し、超音波照射後の試料油の100℃における動粘度の、超音波照射前の試料油の100℃における動粘度に対する低下率(%)を算出した。結果を表1~6に示している。動粘度の低下率が低いほど、せん断安定性が高く耐久性が良好であることを意味する。本試験において動粘度(100℃)の低下率は4.5%以下であることが好ましい。
【0150】
(評価結果)
実施例の潤滑油組成物は、変速ショック指数、ならびにベアリング疲労寿命L50のいずれにおいても良好な結果を示した。
(B)成分(ポリ(メタ)アクリレート)を含有しない比較例1の組成物は、変速ショック指数およびベアリング疲労寿命L50、ならびにベーンポンプの摩耗において劣った結果を示した。
(B)成分(ポリ(メタ)アクリレート)の重量平均分子量が25,000を超える比較例2の組成物は、変速ショック指数およびベアリング疲労寿命L50、ならびにベーンポンプの摩耗において劣った結果を示した。
(B)成分としてポリ(メタ)アクリレートに代えてエチレンプロピレンコポリマー(重量平均分子量:13,000)を含有する比較例3の組成物は、変速ショック指数およびベアリング疲労寿命L50、ならびにベーンポンプの摩耗において劣った結果を示した。