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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】シクロスポリン組成物および使用方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 7/64 20060101AFI20240507BHJP
   A61K 38/13 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 47/60 20170101ALI20240507BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 27/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 13/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240507BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240507BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C07K7/64
A61K38/13
A61K47/60
A61P29/00
A61P1/00
A61P11/00
A61P17/00
A61P27/02
A61P27/00
A61P15/00
A61P13/00
A61P31/00
A61K45/00
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P43/00 121
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021533380
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 US2019047354
(87)【国際公開番号】W WO2020041378
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-08-15
(31)【優先権主張番号】62/721,195
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521075240
【氏名又は名称】バカイン バイオセラピューティクス, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100193493
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 健史
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー クリス
(72)【発明者】
【氏名】ファーカー ロナルド
(72)【発明者】
【氏名】ドーレ ローランド イー
【審査官】藤山 純
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0196749(US,A1)
【文献】特表2011-529451(JP,A)
【文献】特表2000-510097(JP,A)
【文献】特表2016-539108(JP,A)
【文献】特表2014-505035(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
A61K 38/13
A61K 47/56
A61K 45/00
A61K 39/395
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】
の構造を有する化合物、その立体異性体、又は前記のいずれかの薬剤的に許容される塩(式中、
1は、無置換のC 1 ~C 4 アルキル基又は一つ以上のF置換されてい 1 ~C4アルキル基であり;
Rは、40~50個のエチレンオキシド単位を有するPEGであり、ここで、PEGはリンカー基L2を含み、L 2 は、1又は2個の窒素原子を有するC 3-6 非置換ヘテロアルキレンである)。
【請求項2】
Rが-NH(CH2 3-6(CH2CH2O)42-46-O(CH20-5CH3 である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Rが、CH3O-(CH2CH2O)44-CH2CH2CH2NH-である、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
1が、エチレン基又はプロピレン基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
2-CH 2 CH 2 CH 2 NH-である、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項6】
式IAの構造を有する請求項1に記載の化合物、その立体異性体、又は前記のいずれかの薬剤的に許容される塩:
【化2】
【請求項7】
請求項1~のいずれか一項に記載の化合物と薬剤的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項8】
それを必要とする哺乳動物対象の標的組織における好中球媒介性炎症と関連する疾患を治療するための医薬組成物であって、請求項1~のいずれか一項に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項9】
前記疾患が、腸疾患、大腸炎、炎症性肺疾患、炎症性皮膚疾患、眼疾患、泌尿生殖器疾患、及び性感染症からなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記腸疾患が、直腸炎、精巣炎、クローン病、及びセリアック病からなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記大腸炎が、潰瘍性結腸炎(colitis ulcerosa)としても知られる潰瘍性大腸炎、感染性/非感染性腸炎、及び炎症性腸疾患(IBD)からなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記炎症性肺疾患が、肺炎球菌感染症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺線維症からなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記炎症性皮膚疾患が、皮膚炎(湿疹)、酒さ、脂漏性皮膚炎、及び乾癬からなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項14】
前記眼疾患が、ぶどう膜炎、網膜炎、角膜炎、及び黄斑変性からなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項15】
前記泌尿生殖器疾患が尿路感染症を含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項16】
前記性感染症が、骨盤内炎症性疾患、淋菌感染症、クラミジア感染症、ヘルペス、及び尿道炎からなる群から選択される、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項17】
局所投与及び前記標的組織の管腔表面での投与からなる群から選択される投与のための、請求項8~16のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記炎症が非感染性炎症である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記炎症が感染性炎症である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項20】
多剤耐性タンパク質2(MRP2)及びHXA3シンターゼの一つ以上を阻害する一つ以上の第二の化合物と組み合わせて投与するための医薬組成物であって、前記第二の化合物が、好中球の前記標的組織への遊走を減少させる、請求項8~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項21】
多剤耐性タンパク質1(MRP1)を増大させる一つ以上の第三の化合物と組み合わせて投与するための医薬組成物であって、前記第三の化合物が好中球の前記標的組織への遊走を減少させる、請求項8~19のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項22】
一つ以上のN-アシルエタノールアミン(NAE)を増大させる一つ以上の第三の化合物と組み合わせて投与するための医薬組成物であって、前記第三の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる、請求項8~21のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項23】
前記炎症がクローン病と関連し、前記治療、メサラミン製品、コルチコステロイド製剤、回腸放出ブデソニド、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、及びメトトレキサートを含む糖質コルチコステロイド/EEN免疫調節剤、インフリキシマブ、アダリムマブ、及びセルトリズマブを含む抗腫瘍壊死因子(TNF)薬、ペゴル、抗α-4β-7インテグリン抗体ベドリズマブ、ABT-494、及びフィルゴチニブの一つ以上を投与することをさらに含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項24】
前記炎症が潰瘍性大腸炎と関連し、前記治療、5-アミノサリチレート、メサラミン、コルチコステロイド、マルチマトリックスブデソニド、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、インフリキシマブ、アダリムマブ、及びゴリムマブを含む抗TNF薬、ベドリズマブ、トファシチニブ、ABT-494、及びフィルゴチニブの一つ以上を投与することをさらに含む、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項25】
前記治療、ダルババンシン、オリタバンシン、キュビシン、テジゾリド、セフトビプロール、セフトビプロール、セフトロザン-タゾバクタム、ムピロシン、硫酸ネオマイシンバシトラシン、ポリミキシンB、1-オフロキサシン、リン酸クリンダマイシン、硫酸ゲンタマイシン、メトロニダゾール、ヘキシルレゾルシノール、塩化メチルベンゼトニウム、フェノール、第四級アンモニウム化合物、ティーツリー油、ステロイド薬、例えばコルチコステロイド、例えばヒドロコルチゾン、ヒドロキシルトリアムシノロンαメチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デソキシメタゾン、酢酸デスオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン、ジフロラゾンジアセタート、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクラロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン)、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、ジフルオロゾンジアセタート(difluorosone diacetate)、フルラドレナロンアセトニド(fluradrenalone acetonide)、メドリゾン、アムシアフェル、アムシナフィド、ベタメタゾン、クロルプレドニゾン、酢酸クロルプレドニゾン、クロコルテロン(clocortelone)、クレシノロン(clescinolone)、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンシクロペンチルプロプリオネート(hydrocortisone cyclopentylproprionate)、ヒドロコルタメート(hydrocortamate)、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、トリアムシノロン、非ステロイド剤、例えばCOX阻害剤、LOX阻害剤、p38キナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、及びサイトカイン合成阻害剤、テトラサイクリン、ミノサイクリン、及びドキシサイクリン、又はその任意の組み合わせからなる群から選択される一つ以上の抗生物質及び/又は抗炎症薬を投与することをさらに含む、請求項8~24のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記治療、Clostridium difficile毒素を標的とする抗体、腫瘍壊死因子(TNF)を標的とする抗体、インターロイキンを標的とする抗体、及びメタロプロテイナーゼ-9を標的とする抗体からなる群から選択される一つ以上の抗体を投与することをさらに含む、請求項8~25のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項27】
式Iの前記化合物が、未処置対照組織と比較して、好中球の前記標的組織への遊走を減少させる、請求項8~26のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2018年8月22日に出願された、米国特許仮出願番号62/721,195号の優先権を主張し、その内容は、参照により全体として本明細書中に組み込まれる。
【0002】
本開示の技術は、好中球媒介性炎症と関連する疾患の治療または予防用方法、化合物、および組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
炎症、特に、慢性炎症性疾患(CID)は、世界的に高度に蔓延し、心血管疾患、糖尿病、肥満症、骨粗しょう症、関節リウマチ、炎症性腸疾患、喘息、並びにCNS関連性疾患、例えば、抑うつおよびパーキンソン病のような様々な疾患の発生の主な原因のうちの一つとみなされる。上皮細胞は、Salmonella enterica serovar Typhimurium(Salmonella typhimurium)または様々な他の病原体での感染に応答して膜ABCトランスポーター多剤耐性タンパク質2(MRP2)の表面発現を劇的に増大させる。エイコサノイドHXAの細胞内生合成経路が同時に上方調節され、表面の増大したMRP2は、HXAを腸管腔中に輸送する働きをする。このことにより、上皮を越えるHXAの濃度勾配が確立され、好中球の走化性は基底外側から管腔へ向けられ、重大な炎症過程が生じる。したがって、MRP2の阻害は、炎症性疾患の治療又は予防のための手段である。
【0004】
グルテンを含有する穀物、例えば、小麦、ライ麦及び大麦は、人間の食事の重要な一部である。しかしながら、グルテンの主成分であるグリアジンは、セリアック病、過敏性腸症候群、非セリアックグルテン過敏症、1型糖尿病、統合失調症、及び自閉症をはじめとする様々な障害に関与している。グリアジンは、腸上皮透過性を増大させ、FPR1に対する結合により、fMet-Leu-Pheと同様の有効性の好中球化学誘引因子としての働きをすることが示されている。したがって、FPR1の阻害は、グリアジンに関連する状態の治療又は予防のための手段である。
【発明の概要】
【0005】
一態様において、本開示は式I
【化1】
の構造を有する化合物、その立体異性体、又は先行のいずれかの薬剤的に許容される塩に関し、式中、
は、一つ以上のFで任意選択的に置換されていてもよいC~Cアルキル基であり;Rは、-OH及びPEGからなる群から選択され、ここで、PEGは、任意選択的にリンカー基Lを含んでもよい。
【0006】
いくつかの実施形態において、Rは、-OH又は-NH(CH2-6(CHCHO)42-46-O(CH0-5CHから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、CHO-(CHCHO)44-CHCHCHNH-(BT051)、CHO-(CHCHO)44-CHCHNH-(BT090)、及びHO-(BT070)からなる群から選択される。
【0007】
いくつかの実施形態において、Lは、エチレン基又はプロピレン基である。
【0008】
いくつかの実施形態において、Rは、40~50個のエチレンオキシド単位を有するPEGである。
【0009】
いくつかの実施形態において、Lは、置換又は非置換ヘテロアルキレン基である。
【0010】
いくつかの実施形態において、Lは、1又は2個の窒素原子を有するC1-6非置換ヘテロアルキレンである。
【0011】
いくつかの実施形態において、化合物は、
式IAの構造を有するか、その立体異性体、又は先行のいずれかの薬剤的に許容される塩である:
【化2】
【0012】
いくつかの実施形態において、本開示は、化合物と薬剤的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0013】
一態様において、本開示は、それを必要とする哺乳動物対象の標的組織における好中球媒介性炎症と関連する疾患を治療する方法であって、治療上有効な量の、式I:
【化3】
の化合物又はその薬剤的に許容される塩を対象に投与する方法に関し;式中、Lは、一つ以上のFで任意選択的に置換されていてもよいC~Cアルキル基であり;Rは、-OH及びPEGからなる群から選択され、PEGは、任意選択的にリンカー基を含んでもよく、Lは本明細書中で定義するとおりである。いくつかの実施形態において、PEG基は、40~50個のエチレンオキシド単位を有し、Lは、置換又は非置換ヘテロアルキレン基、例えば非置換アミノアルキレン基である。いくつかの実施形態において、Rは、-OH又は-NH(CH2-6(CHCHO)42-46-O(CH0-5CHから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、CHO-(CHCHO)44-CHCHCHNH-(BT051)、CHO-(CHCHO)44-CHCHNH-(BT090)、及びHO-(BT070)からなる群から選択される。
【0014】
いくつかの実施形態において、Lはエチレンであってよく、式Iの化合物は式IA:
【化4】
を有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、疾患は、腸疾患、大腸炎、炎症性肺疾患、炎症性皮膚疾患、眼疾患、泌尿生殖器疾患、及び性感染症からなる群から選択される。
【0016】
いくつかの実施形態において、腸疾患は、直腸炎、精巣炎、クローン病、及びセリアック病からなる群から選択される。
【0017】
いくつかの実施形態において、大腸炎は、潰瘍性結腸炎(colitis ulcerosa)とも呼ばれる潰瘍性大腸炎、感染性/非感染性腸炎、及び炎症性腸疾患(IBD)からなる群から選択される。
【0018】
いくつかの実施形態において、炎症性肺疾患は、肺炎球菌感染症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺線維症からなる群から選択される。
【0019】
いくつかの実施形態において、炎症性皮膚疾患は、皮膚炎(湿疹)、酒さ、脂漏性皮膚炎、及び乾癬からなる群から選択される。
【0020】
いくつかの実施形態において、眼疾患は、ぶどう膜炎、網膜炎、角膜炎、及び黄斑変性からなる群から選択される。
【0021】
いくつかの実施形態において、泌尿生殖器疾患には尿路感染症が含まれる。
【0022】
いくつかの実施形態において、性感染症は、骨盤内炎症性疾患、淋菌感染症、クラミジア感染症、ヘルペス、及び尿道炎からなる群から選択される。
【0023】
いくつかの実施形態において、投与ステップは、局所投与及び標的組織の管腔表面での投与からなる群から選択される。
【0024】
いくつかのは実施形態において、炎症は非感染性炎症である。いくつかの実施形態において、炎症は感染性炎症である。
【0025】
いくつかの実施形態において、方法は、対象に、治療上有効な量の、多剤耐性タンパク質2(MRP2)及びHXAシンターゼの一つ以上を阻害する一つ以上の第二の化合物を投与することをさらに含み、治療量の第二の化合物は好中球の標的組織への遊走を低減する。
【0026】
いくつかの実施形態において、方法は、対象に、治療上有効な量の、多剤耐性タンパク質1(MRP1)を増大させる一つ以上の化合物を投与することをさらに含み、治療量の第三の化合物は、好中球の標的組織への遊走を低減する。
【0027】
いくつかの実施形態において、方法は、多剤耐性タンパク質2(MRP2)及びヘポキシリンA3(HXA)シンターゼの一つ以上を阻害する一つ以上の化合物を投与することをさらに含み、治療量の第二の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる。
【0028】
いくつかの実施形態において、方法は、対象に対して、治療上有効な量の、一つ以上のN-アシルエタノールアミン(NAE)を増加させる一つ以上の化合物を投与することをさらに含み、治療量の第三の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる。
【0029】
いくつかの実施形態において、炎症はクローン病に関連し、治療又は予防は、メサラミン製品、コルチコステロイド製剤、回腸放出ブデソニド、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、及びメトトレキサートを含む糖質コルチコステロイド/EEN免疫調節剤、インフリキシマブ、アダリムマブ、及びセルトリズマブを含む抗腫瘍壊死因子(TNF)薬、ペゴル、抗α-4β-7インテグリン抗体ベドリズマブ、ABT-494、及びフィルゴチニブの一つ以上を投与することをさらに含む。
【0030】
いくつかの実施形態において、炎症は潰瘍性大腸炎と関連し、治療又は予防は、5-アミノサリチレート、メサラミン、コルチコステロイド、マルチマトリックスブデソニド、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、インフリキシマブ、アダリムマブ、及びゴリムマブを含む抗TNF薬、ベドリズマブ、トファシチニブ、ABT-494、及びフィルゴチニブの一つ以上を投与することをさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態において、方法は:ダルババシン、オリタバンシン、キュビシン、テジゾリド、セフトビプロール、セフトビプロール、セフトロザン-タゾバクタム、ムピロシン、硫酸ネオマイシンバシトラシン、ポリミキシンB、1-オフロキサシン、リン酸クリンダマイシン、硫酸ゲンタマイシン、メトロニダゾール、ヘキシルレゾルシノール、塩化メチルベンゼトニウム、フェノール、第四級アンモニウム化合物、ティーツリー油、ステロイド薬、例えばコルチコステロイド、例えばヒドロコルチゾン、ヒドロキシルトリアムシノロンαメチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デソキシメタゾン、酢酸デスオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン、ジフロラゾンジアセタート、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクラロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(フルプレドニリデン)、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、ジフルオロゾンジアセタート(difluorosone diacetate)、フルラドレナロンアセトニド(fluradrenalone acetonide)、メドリゾン、アムシアフェル、アムシナフィド、ベタメタゾン、クロルプレドニゾン、酢酸クロルプレドニゾン、クロコルテロン(clocortelone)、クレシノロン(clescinolone)、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンシクロペンチルプロプリオネート(hydrocortisone cyclopentylproprionate)、ヒドロコルタメート(hydrocortamate)、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、トリアムシノロン、非ステロイド剤、例えばCOX阻害剤、LOX阻害剤、p38キナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、及びサイトカイン合成阻害剤、テトラサイクリン、ミノサイクリン、及びドキシサイクリン、又はその任意の組み合わせからなる群から選択される一つ以上の抗生物質及び/又は抗炎症薬を投与することをさらに含む。
【0032】
いくつかの実施形態において、方法は:Clostridium difficile毒素を標的とする抗体、腫瘍壊死因子(TNF)を標的とする抗体、インターロイキンを標的とする抗体、及びメタロプロテイナーゼ-9を標的とする抗体からなる群から選択される一つ以上の抗体を投与することをさらに含む。
【0033】
いくつかの実施形態において、式Iの化合物は、未処置対照組織と比較して、標的組織への好中球の遊走を低減する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、好中球遊走の阻害に対するBT051およびBT070の用量応答を示すチャートである。
図2A図2Aは、疑似腸液(SIF)におけるBT090の安定性を示すチャートである。
図2B図2Bは、疑似胃液(SGF)におけるBT090の安定性を示すチャートである。
図2C図2Cは、糞便におけるBT090の安定性を示すチャートである。
図3A図3Aは、fMLP媒介性好中球遊出/活性化の阻害により測定される、BT051(図3A)並びにBT051及びBT070(図3B)によるホルミルペプチドレセプタ1(FPR1)の阻害を示すチャートである。
図3B図3Bは、fMLP媒介性好中球遊出/活性化の阻害により測定される、BT051(図3A)並びにBT051及びBT070(図3B)によるホルミルペプチドレセプタ1(FPR1)の阻害を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
I.定義
以下の用語を本明細書中で使用し、その定義を指針として提示する。
【0036】
概して、「置換された」とは、ここに含まれる水素原子に対する一つ以上の結合が、非水素または非炭素原子に対する結合で置換されている、以下で定義するような有機基(例えば、アルキル基)を指す。置換された基はまた、炭素(複数可)又は水素(複数可)原子に対する一つ以上の結合が、ヘテロ原子に対する、二重又は三重結合を含む、一つ以上の結合で置換されている基も含む。したがって、置換された基は、別段の定めのある場合を除き、一つ以上の置換基で置換されている。いくつかの実施形態において、置換された基は、1、2、3、4、5、又は6個の置換基で置換されている。本技術の置換された基は、それらが出現する化合物の単離を可能にする化学的に安定な基であることは理解されるであろう。置換基の例としては:ハロゲン(すなわち、F、Cl、Br、及びI);ヒドロキシル;アルコキシ、アルケノキシ、アリールオキシ、アルアルキルオキシ、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロシクリルオキシ、およびヘテロシクリルアルコキシ基;カルボニル(オキソ);カルボキシレート;エステル;ウレタン;オキシム;ヒドロキシルアミン;アルコキシアミン;アルアルコキシアミン;チオール;スルフィド;スルホキシド;スルホン;スルホニル;スルホンアミド;アミン;N-オキシド;アジド;アミド;尿素;アミジン;グアニジン;ニトロ基;ニトリル(すなわち、CN);などが挙げられる。
【0037】
アルキル基は、(別段の指示がない限り)1~12個の炭素原子、及び典型的には1~10個の炭素または、いくつかの実施形態では、1~8、1~6、又は1~4個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖アルキル基を含む。アルキル基は、置換されていても、置換されていなくてもよい。直鎖アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-へプチル、及びn-オクチル基などの基が挙げられる。分枝アルキル基の例としては、限定されるものではないが、イソプロピル、イソ-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ネオペンチル、イソペンチル、及び2,2-ジメチルプロピル基が挙げられる。代表的置換アルキル基は、上記のもののような置換基で一回以上置換されていてもよく、制限なく、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル)、ヒドロキシアルキル、チオアルキル、アミノアルキル、アルキルアミノアルキル、ジアルキルアミノアルキル、アルコキシアルキル、カルボキシアルキルなどが含まれる。いくつかの実施形態において、アルキル基は、1、2、又は3個の置換基で置換されている。
【0038】
アルケニル基は、少なくとも一つの二重結合が2個の炭素原子の間に存在することを除いて、上記定義のような直鎖及び分岐鎖アルキル基を含む。アルケニル基は、置換されていてもよいし、又は置換されていなくてもよい。アルケニル基は、2~12個の炭素原子、及び典型的には2~10個の炭素又は、いくつかの実施形態では、2~8、2~6、又は2~4個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態において、アルケニル基は、1、2、又は3個の炭素-炭素二重結合を有する。例としては、限定されるものではないが、ビニル、アリル、-CH=CH(CH)、-CH=C(CH、-C(CH)=CH、-C(CH)=CH(CH)、-C(CHCH)=CHが特に挙げられる。代表的な置換アルケニル基は、一置換されていてもよいし、又は複数回置換されていてもよく、例えば、限定されるものではないが、上記のものなどの置換基で一、二又は三置換されていてもよい。
【0039】
ヘテロアルキル基及びヘテロアルケニル基は、それぞれ、N、O及びSから選択される1~6個のヘテロ原子を含むアルキル基(本明細書中で定義する通り)及びアルケニル基(本明細書中で定義する通り)である。存在する各ヘテロ原子は、ヘテロアルキル又はヘテロアルケニル基内の少なくとも1個の炭素原子に結合していると理解される。いくつかの実施形態において、ヘテロアルキル又はヘテテロ(hetetero)アルケニル基は、1、2、又は3個のヘテロ原子を含む。ヘテロアルキル及びヘテロアルケニル基は置換されていてもよいし、又は置換されていなくてもよい。ヘテロアルキル基の例としては、限定されるものではないが、CHCHOCH、CHNHCH、CHCHN(CH)CH、CHCHSCH、CHCHOCHCHOCHCHが挙げられる。ヘテロアルケニル基の例としては、限定されるものではないが、CH2=CHOCH、CH=CHN(CH)CH、及びCH=CHSCHが挙げられる。代表的な置換ヘテロアルキル又はヘテロアルケネイル(heteroalkeneyl)基は、前述のものなどの置換基で1回以上(例えば、1、2又は3回)置換されていてもよく、限定されるものではないが、ハロヘテロアルキル(例えば、トリフルオロメチルオキシエチル)、カルボキシアルキルアミノアルキル、メチルアクリレートなどが挙げられる。
【0040】
シクロアルキル基としては、環(複数可)中に3~12個の炭素原子、あるいは、いくつかの実施形態では、3~10、3~8、又は3~4、5、若しくは6個の炭素原子を有する単環式、二環式又は三環式アルキル基が挙げられる。シクロアルキル基は、置換されていてもよいし、又は置換されていなくてもよい。例示的単環式シクロアルキル基としては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、及びシクロオクチル基が挙げられる。いくつかの実施形態において、シクロアルキル基は3~8の環員を有するのに対して、他の実施形態では、環炭素原子の数は、3~5、3~6、又は3~7の範囲である。二環式及び三環式環系には、架橋シクロアルキル基及び縮合環の両方、例えば、限定されるものではないが、ビシクロ[2.1.1]ヘキサン、アダマンチル、デカリニルなどが含まれる。置換シクロアルキル基は、上記定義の非水素及び非炭素基で1回以上置換されていてもよい。しかしながら、置換シクロアルキル基はまた、上記定義の直鎖又は分岐鎖アルキル基で置換された環も含む。代表的置換シクロアルキル基は、一置換であってもよいし、又は複数回置換されていてもよく、例えば、限定されるものではないが、2,2-、2,3-、2,4-2,5-又は2,6-二置換シクロヘキシル基であってよく、上記のものなどの置換基で置換されていてもよい。
【0041】
シクロアルキルアルキル基は、アルキル基の水素又は炭素結合が、上記定義のようなシクロアルキル基に対する結合で置換された、上記定義のようなアルキル基である。シクロアルキルアルキル基は、置換されていてもよいし、又は置換されていなくてもよい。いくつかの実施形態において、シクロアルキルアルキル基は、4~16個の炭素原子、4~12個の炭素原子、典型的には4~10個の炭素原子を有する。置換シクロアルキルアルキル基は、基のアルキル、シクロアルキル又はアルキル及びシクロアルキル部分の両方で置換されていてもよい。代表的な置換シクロアルキルアルキル基は一置換であっても、又は複数回置換されていてもよく、例えば、限定されるものではないが、上記のものなどの置換基で一置換、二置換、若しくは三置換されていてもよい。
【0042】
本技術の化合物内に二つ以上の結合点を有する(すなわち、二価、三価、又は多価)、本明細書中で記載する基は、接尾辞「エン」の使用によって指定される。例えば、二価アルキル基はアルキレン基であり、二価シクロアルキル基はシクロアルキレン基であり、二価ヘテロアルキル基はヘテロアルキレン基であり、二価アルケニル基はアルケニレン基であるなど。本技術の化合物に対して単一の結合点を有する置換された基は、「エン」という表示で言及されない。したがって、クロロエチルを本明細書ではクロロエチレンとは呼ばない。
【0043】
分子を対象に「投与する」という語は、当該分子を当該対象に送達することを意味する。「投与する」には、組成物の予防的投与(すなわち、疾患及び/又は疾患の一つ以上の症状が検出可能になる前)及び/又は組成物の治療的投与(すなわち、疾患及び/又は疾患の一つ以上の症状が検出可能になった後)が含まれる。本技術の方法には、一つ以上の化合物を投与することが含まれる。複数の化合物が投与されるならば、化合物をあわせて実質的に同時に投与することができる、及び/又は任意の順序で異なる時間に投与することができる。また、本技術の化合物は、別の種類の薬物若しくは治療手段(例えば、手術)の投与前、投与と同時、及び/又は投与後に投与することができる。
【0044】
「変更する」及び「修飾する」という語は、第二サンプル(又は第二対象)に対しての、第一サンプル(又は第一対象)における任意の分子(例えば、多剤耐性タンパク質2(MRP2)、多剤耐性タンパク質1(MRP1)、ヘポキシリンA3(HXA)シンターゼ、N-アシルエタノールアミン(NAE)、アミノ酸配列、核酸配列、抗体など)、細胞、及び/又は現象(例えば、多剤耐性タンパク質2(MRP2)及び/又は多剤耐性タンパク質1(MRP1)及び/又はヘポキシリンA3(HXA)シンターゼ及び/又はN-アシルエタノールアミン(NAE)の活性レベル、遺伝子の発現レベル、疾患症状、二つの分子の結合、例えばホルモンリガンドのそのホルモンレセプタに対する結合のレベル、二つの分子の結合の特異性、二つの分子の結合親和性、疾患症状、疾患に対する特異性、疾患に対する感受性、結合の親和性、酵素活性など)に関する場合、増加及び/又は減少を指す。
【0045】
「カンナビノイドレセプタ2型」(「CB2」)は、ヒトにおいては、CNR2遺伝子によってコード化されるカンナビノイドレセプタファミリーからのGタンパク質共役型レセプタである。CB2レセプタの主な内因性リガンドは2-アラキドノイルグリセロール(2-AG)である。
【0046】
一つ以上の要素を有する化合物、組成物又は方法の実施形態を記載又は定義するための、「含む(comprising)」、「包含する(including)」という語又は類似の語の使用は、その要素「からなる」又は「から本質的になる」実施形態も開示し、逆の場合も同じであると理解されたい。言い換えると、列挙したものを越える要素に対してオープンである(「含む」)実施形態の開示もまた、さらなる要素に対してクローズされた(「からなる」)又は実施形態の特徴に実質的に影響を及ぼさないさらなる要素のみを含み得る(「から本質的になる」)実施形態を開示すると理解すべきである。同様に、列挙した要素からなるか又は本質的になる実施形態は、それらの要素を含む実施形態を開示すると理解されたい。
【0047】
「コンジュゲートする(conjugating)」という語及び文法上同等のものは、関心対象の分子及びポリマーのコンジュゲートについて言及する場合、関心対象の分子をポリマーに共有的に連結することを意味する。連結は直接的であってよい。あるいは、連結は、連結基又は部分を介した間接的なものであってもよい。ポリマーへのコンジュゲーションのための方法は、当該技術分野で公知であり、ポリペプチドにコンジュゲートさせて、融合タンパク質を産生する方法を含む(Pasut,Polymers 6:160-178(2014);Medscape,Nanomedicine 5(6):915-935(2010))。いくつかの実施形態において、コンジュゲートは、PEGポリマーにコンジュゲートされたシクロスポリンAを含む。かかるシクロスポリンAコンジュゲートの前駆体には、例えば、PEGポリマーを含まず、連結基で修飾されたシクロスポリンAが含まれる。連結基はポリマーをシクロスポリンAに連結する。
【0048】
本明細書中で使用する場合、「有効量」又は「治療上有効な量」、又は「薬剤的に有効な量」という語は、所望の治療及び/又は予防効果を達成するために充分な量、例えば、それを必要とする対象において、炎症(例えば、標的組織への好中球遊走に関連する炎症)又は炎症に関連する疾患若しくは障害若しくは症状の完全若しくは部分的改善をもたらす量を指す。治療又は予防的応用の関連で、対象に投与される組成物の量は、疾患の種類及び重篤度並びに個体の特徴、例えば、全体的な健康、年齢、性別、体重及び薬物耐性に依存するであろう。また、疾患の程度、重篤度及び種類にも依存するであろう。熟練した技術者は、これらや他の因子に応じて適切な投与量を決定できるであろう。組成物はまた、一つ以上の追加の治療化合物と組み合わせて投与することもできる。いくつかの実施形態では、複数回投与する。付加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、複数の治療組成物又は化合物を投与する。本明細書中で記載する方法では、治療化合物は、炎症(例えば、組織への好中球遊走の増加と関連する炎症)と関連する疾患又は障害の一つ以上の兆候又は症状を有する対象に投与することができる。
【0049】
「エンドカンナビノイド」(「EC」)は、カンナビノイドレセプタCB1及びCB2、並びに最近記載された非定型的レセプタGPR55及びGPR119と結合する化合物である。エイコサノイドタイプECの二つの主なクラスは、「N-アシルエタノールアミン」(「NAE」)及びモノアシルグリセロール(MAG)であり、これらはそれぞれ、脂肪酸アミドヒドロラーゼ(FAAH)及びモノアシルグリセロールリパーゼ(MAGL)によって代謝される。「N-アシルエタノールアミン」はエンドカンナビノイドであり、数種類のアシル基のうちの一つがエタノールアミンの窒素原子に連結される場合に形成される脂肪酸アミドの一種である。N-アシルエタノールアミンは、脂肪酸アミドヒドロラーゼ(FAAH)によって代謝される。例示的N-アシルエタノールアミンエンドカンナビノイドとしては、エタノールアミン、アラキドン酸(20:4ω-6)オレイルエタノールアミド(OEA)のアミドであるアナンダミド(AEA)(N-アラキドノイルエタノールアミン)、及びα-リノレノイルエタノールアミド(α-LEA)が挙げられる。
【0050】
「脂肪酸アミドヒドロラーゼ」、「FAAH」、及び「EC3.5.1.99」は、同義的に、酵素のセリンヒドロラーゼファミリーのメンバーを指す。これは、最初に、アナンダミドを分解することが示された。ヒトでは、遺伝子FAAHによってコード化される。
【0051】
「ヘポキシリンA3シンターゼ」、「HXAシンターゼ」、「ALOX12」、「12-リポキシゲナーゼ」、「アラキドネート12-リポキシゲナーゼ」、「12S-リポキシゲナーゼ」、「12-LOX」、及び「12S-LOX」は、同義的に、ヒトにおいては、ALOX12遺伝子によってコード化されるリポキシゲナーゼ型酵素(すなわち、シス,シス-1,4-ペンタジエン構造を含む脂質中の多不飽和脂肪酸の二原子酸素添加を触媒する酵素)を指し、これは、他のリポキシゲナーゼと共に染色体17p13.3上に位置する。
【0052】
「増大させる」という語は、化合物、例えば、N-アシルエタノールアミンについて言及する場合は、N-アシルエタノールアミンのレベル及び/又は活性を増大させることを意味する。「増大させる」、「増強する」、「上昇させる」という語、及び文法上同等のもの(「より高い」、「より大きい」などを含む)は、第二サンプル(又は第二対象)に対して第一サンプル(又は第一対象)における任意の分子(例えば、多剤耐性タンパク質2(MRP2)、多剤耐性タンパク質1(MRP1)、ヘポキシリンA3(HXA)シンターゼ、N-アシルエタノールアミン(NAE)、アミノ酸配列、及び核酸配列、抗体など)、細胞、及び/又は現象(例えば、多剤耐性タンパク質2(MRP2)及び/又は多剤耐性タンパク質1(MRP1)及び/又はヘポキシリンA3(HXA)シンターゼ及び/又はN-アシルエタノールアミン(NAE)の活性のレベル、遺伝子の発現のレベル、疾患症状、二つの分子の結合、例えば、ホルモンリガンドのそのホルモンレセプタに対する結合のレベル、二つの分子の結合の特異性、二つの分子の結合の親和性、疾患症状、疾患に対する特異性、疾患に対する感受性、結合の親和性、酵素活性など)のレベルに関する場合、第一サンプル(又は第一対象)における分子、細胞及び/又は現象の量が、任意の当該技術分野で認められた統計的分析法を使用して統計的に有意な任意の量だけ第二サンプル(又は第二対象)におけるよりも大きいことを意味する。一実施形態において、第一サンプル(又は第一対象)における分子、細胞及び/又は現象の量は、第二サンプル(又は第二対象)における同じ分子、細胞及び/又は現象の量よりも、少なくとも10%大きい、少なくとも25%大きい、少なくとも50%大きい、少なくとも75%大きい、及び/又は少なくとも90%大きい。これは、制限なく、第二サンプル(又は第二対象)における同じ分子、細胞及び/又は現象の量よりも、少なくとも10%大きい、少なくとも15%大きい、少なくとも20%大きい、少なくとも25%大きい、少なくとも30%大きい、少なくとも35%大きい、少なくとも40%大きい、少なくとも45%大きい、少なくとも50%大きい、少なくとも55%大きい、少なくとも60%大きい、少なくとも65%大きい、少なくとも70%大きい、少なくとも75%大きい、少なくとも80%大きい、少なくとも85%大きい、少なくとも90%大きい、及び/又は少なくとも95%大きい、第一サンプル(又は第一対象)における分子、細胞、及び/又は現象の量を含む。一実施形態において、第一サンプル(又は第一対象)は、限定されるものではないが、本技術の組成物及び/又は方法を用いて操作されたサンプル(又は対象)によって例示される。さらなる実施形態において、第二サンプル(又は第二対象)は、限定されるものではないが、本技術の組成物及び/又は方法を用いて操作されなかったサンプル(又は対象)によって例示される。別の実施形態において、第二サンプル(又は第二対象)は、限定されるものではないが、第一対象と比較して、異なる投与量及び/又は異なる期間及び/又は異なる投与経路で、本技術の組成物及び/又は方法を使用して操作したサンプル(又は対象)によって例示される。一実施形態において、例えば、一つのサンプル(又は対象)に関して本技術の組成物及び/又は方法の(例えば、投与量、期間、投与経路などの)異なるレジメンの効果を決定することが求められる場合、第一及び第二サンプル(又は対象)は、同じであってよい。別の実施形態において、例えば、一つのサンプル(対象)に対する本技術の組成物及び/又は方法の効果を比較する場合、第一及び第二サンプル(又は対象)は、例えば、臨床試験に参加している患者と入院している別の個人など、異なっていてもよい。
【0053】
「阻害する」という語は、化合物、例えば、多剤耐性タンパク質2(MRP2)、ヘポキシリンA3(HXA)シンターゼ等に関して使用する場合、HXAの活性及び/又はレベルを阻害することを意味する。「阻害する」、「低減する」、「軽減する」、「抑制する」、「減少させる」という語及び文法上同等のもの(「より低い」、「より小さい」などを含む)は、第二サンプル(又は第二対象)に対して第一サンプル(又は第一対象)における任意の分子(例えば、多剤耐性タンパク質2(MRP2)、多剤耐性タンパク質1(MRP1)、ヘポキシリンA3(HXA)シンターゼ、N-アシルエタノールアミン(NAE)、アミノ酸配列、及び核酸配列、抗体など)、細胞、及び/又は現象(例えば、多剤耐性タンパク質2(MRP2)及び/又は多剤耐性タンパク質1(MRP1)及び/又はヘポキシリンA3(HXA)シンターゼ及び/又はN-アシルエタノールアミン(NAE)の活性のレベル、遺伝子の発現レベル、疾患症状、二つの分子の結合、例えば、ホルモンリガンドのそのホルモンレセプタに対する結合のレベル、二つの分子の結合の特異性、二つの分子の結合の親和性、疾患症状、疾患に対する特異性、疾患に対する感受性、結合の親和性、酵素活性など)のレベルに関する場合、第一サンプル(又は第一対象)における分子、細胞、及び/又は現象の量が、第二サンプル(又は第二対象)において、任意の当該技術分野で認められた統計的分析法を用いて統計的に有意である任意の量だけ少ないことを意味する。一実施形態において、第一サンプル(又は第一対象)における分子、細胞及び/又は現象の量は、第二サンプル(又は第二対象)における同じ分子、細胞及び/又は現象の量よりも、少なくとも10%少ない、少なくとも25%少ない、少なくとも50%少ない、少なくとも75%少ない、及び/又は少なくとも90%少ない。別の実施形態において、第一サンプル(又は第一対象)中の分子、細胞、及び/又は現象の量は、第二サンプル(又は第二対象)中の同じ分子、細胞及び/又は現象の量よりも、5%~100%の任意の数値パーセンテージ少ない、例えば限定されるものではないが、10%~100%、20%~100%、30%~100%、40%~100%、50%~100%、60%~100%、70%~100%、80%~100%、及び90%~100%少ない。一実施形態において、第一サンプル(又は第一対象)は、限定されるものではないが、本技術の組成物及び/又は方法を用いて操作されたサンプル(又は対象)によって例示される。さらなる実施形態において、第二サンプル(又は第二対象)は、限定されるものではないが、本技術の組成物及び/又は方法を用いて操作されなかったサンプル(又は対象)によって例示される。別の実施形態において、第二サンプル(又は第二対象)は、限定されるものではないが、第一対象と比較して、異なる投与量及び/又は異なる期間及び/又は異なる投与経路により、本技術の組成物及び/又は方法を使用して操作したサンプル(又は対象)によって例示される。一実施形態において、例えば、一つのサンプル(又は対象)に関する本技術の組成物及び/又は方法の(例えば、投与量、期間、投与経路などの)異なるレジメンの効果を決定することが求められる場合、第一及び第二サンプル(又は対象)は、同じであってよい。別の実施形態において、例えば、一つのサンプル(対象)に対する本技術の組成物及び/又は方法の効果を比較する場合、第一及び第二サンプル(又は対象)は、例えば、臨床試験に参加している患者と入院している別の個人など、異なっていてもよい。
【0054】
「多剤耐性関連タンパク質2」、「多剤耐性タンパク質2」(「MRP2」)、「小管多特異的有機アニオントランスポーター1」(「cMOAT」)、「ATP結合カセットサブファミリーCメンバー2」(「ABCC2」)は同義的に使用されて、ヒトにおいてABCC2遺伝子によってコード化されるタンパク質を意味する。
【0055】
「多剤耐性タンパク質1」、「MRP1」及び「ABCC1」は同義的に使用され、重要な治療法を含む広範の基質特異性を有する一方向性排出トランスポータータンパク質を意味する。このトランスポーターの主な役割の一部は:(i)生体異物及び内因性代謝物の排出;(ii)炎症性メディエータ(例えば、LTC4)の輸送;及び(iii)酸化的ストレスに対する防御である。190-kDa MRP1は、二つの膜貫通ドメイン(TMD)であって、各々の後に続くヌクレオチド結合ドメイン(NBD)からなるコア構造を有する。MRP2、3、6、及び7と共通して、MRP1は、五つの予想される膜貫通セグメントと、リンカー領域(L0)によってコア構造に接続された追加の細胞質NH末端とを有する第三のTMD(TMD0)を含む(Rosenberg et al.,J.Biol.Chem.276(19):13076-16082(2001))。TMD0は、原形質膜へのMRP1輸送にとって重要であるようであり(Bakos et al.,J.Cell Sci.113(Pt24):4451-4461(2000))、TMD0及びL0の正確な役割、機構、及び依存状態は、重要な研究の対象である(Westlake et al.Mol.Biol.Cell 16(5):2483-2492(2005))。MRP1は広範な基質特異性を有し、疎水性及びアニオン性分子、グルクロニド及びグルタチオンコンジュゲート、並びに内因性グルタチオンを輸送する。多くのMRP1基質はグルタチオンに対してコンジュゲートするが、遊離グルタチオンの共輸送がしばしば観察され、例えば、ビンクリスチン及びダウノルビシンの輸送を刺激するようである(Hooijberga et al.,FEBS Letters 469:47-51(2000))。グルタチオン自体は、MRP1の低親和性基質である(Km=1~5mM)。複数のアロステリック協同的なオーバーラップしない基質結合部位を前提とし、これは様々な基質が交差阻害し、かつ交差刺激する理由を説明することができる(Bakos et al.,Pflugers Arch-Eur J Physiol 453:621-641(2007))。炎症性サイトカインLTC4及びその主な代謝産物LTD4は最高の親和性MRP1基質の一部であり、LTC4産生細胞からのサイトカイン放出におけるMRP1の重要な役割を示唆する。実際、細胞内LTC4蓄積がmrp1(-/-)マウスにおいて観察された(Robbiani et al.,Cell 103:757-768(2000))。さらに、正常表現型では生存可能、健常、かつ繁殖性であるが、ノックアウトmrp1(-/-)マウスは細胞傷害性薬物に対して過敏性であった(Wijnholds et al.,Nat.Med.3:1275-1279(1997))。MRP1は、DNA配列NCBI参照配列:NG_028268.1によってコード化されるヒトタンパク質配列NCBI参照配列:NP_004987.2によって例示される。少なくとも15の、MRP1と特定される天然に存在する変異が存在し、それらの多くはそのインビトロ輸送活性に影響を及ぼすことが判明している。多形性及び突然変異生成研究は、He et al.,Curr.Med.Chem.18:439-481(2011)で概説されている。多くのMRP1 SNPが知られているが、集団におけるそれらの発生率は、比較的低いと報告されている。中華人民共和国人の集団では、Cys43Ser(128G>C)、Thr73Ile(218C>T)、Arg723Gln(2168G>A)及びArg1058Gln(3173G>A)のMRP1多形性対立遺伝子頻度は、それぞれ、0.5%、1.4%、5.8%及び0.5%であった(Ji-Ye Yin et al.,Pharmacogenet.Genomics 19(3):206-216(2009))。
【0056】
「P-糖タンパク質」(「P-gp」)は排出膜トランスポーターであり、細胞取り込み及び生体異物及び毒性物質の分布の限定の一因となる。
【0057】
本明細書中に記載する化合物の薬剤的に許容される塩は、本技術の範囲内であり、所望の薬理学的活性を保持し、生物学的に望ましくないものではない酸又は塩基付加塩を含む(例えば、塩は、極度に毒性、アレルギー誘発性、又は刺激性ではなく、生物学的に利用可能である)。本技術の化合物が、例えばアミノ基等の塩基性基を有する場合、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸(hydroboric acid)、硝酸、硫酸、及びリン酸)、有機酸(例えば、アルギネート、ギ酸、酢酸、安息香酸、グルコン酸、フマル酸、シュウ酸、酒石酸、乳酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、及びp-トルエンスルホン酸)又は酸性アミノ酸(例えば、アスパラギン酸及びグルタミン酸)と薬剤的に許容される塩を形成することができる。本技術の化合物が例えば、カルボン酸基などの酸性基を有する場合、それは、アルカリ及びアルカリ土類金属などの金属(例えば、Na、Li、K、Ca2+、Mg2+、Zn2+)、アンモニア又は有機アミン(例えば、ジシクロヘキシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ピコリン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン)又は塩基性アミノ酸(例えば、アルギニン、リジン及びオルニチン)と塩を形成することができる。そのような塩は、化合物の単離及び精製の間にインサイチュで、又は精製された化合物をその遊離塩基又は遊離酸形態で、それぞれ、好適な酸又は塩基と別々に反応させ、このようにして形成された塩を単離することによって、調製することができる。
【0058】
「ポリマー」は、多数の結合した類似の単位から主に又は全体的に構成される分子構造を有する物質である。ポリマーは、天然に存在し得る(例えば、セルロース、ポリペプチド、ヌクレオチド配列など)又は人工的(例えば、プラスチック、樹脂など)である。ポリマーは、それらがコンジュゲートされる薬物の担体として使用することができ、コンジュゲートした薬物の溶解度を増強し、その薬物動態プロファイルを改善し、薬物を分解から保護し、pHの変化又は酵素、例えばエステラーゼ、リパーゼ若しくはプロテアーゼの存在下などの、ある特定の条件下で薬物を放出させることができる。加えて、ターゲティング部分又は可溶化剤もまた、コンジュゲートに導入して、その治療指数を増強することができる(Medscape,Nanomedicine 5(6):915-935(2010))。ポリマーはまた、例えば、コンジュゲートした薬物が特定の身体区画(body compartment)へと(例えば、胃腸管腔から下層組織へと)横断するのを防止することによって、それとコンジュゲートした薬物の分布を限定するために利用することもできる。ポリマーは、天然ポリマー及び/又は合成直鎖ポリマーであってよく、ポリエチレングリコール(PEG)、デキストラン、過ヨウ素酸塩-酸化デキストラン、ポリシアル酸(PSA)、ヒアルロン酸(HA)、デキストリン、ヒドロキシエチル-デンプン(HES)、ポリ(2-エチル2-オキサゾリン)(PEOZ)、ポリグルタミン酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLA/PLGA)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタアクリルアミド)、ポリグリセロール、25ポリアミドアミン(PAMAM)、ポリエチレンイミン(PEI)、及びポリペプチドが挙げられる。
【0059】
「SipA」及び「Salmonella T3SSエフェクタタンパク質」は同義的に使用されて、Salmonella enterica subsp.enterica serovar Typhimurium str.SL1344、完全ゲノム配列(NCBI参照配列:NC_016810.1)のDNA配列(Locus taq)SL1344_2861によってコード化されたSalmonella enterica subsp.enterica serovar Typhimurium str.SL1344(GenBank:AAA86618.1)のアミノ酸配列によって例示される、Salmonellaによって産生されるタンパク質を指す。SipA配列は国際公開第2015/089268号で提示されている。
【0060】
炎症に冒される可能性がある「標的組織」としては、限定されることなく、上皮組織、粘膜組織等が挙げられる。例示的上皮組織及び/又は粘膜組織としては、胃腸、肺(例えば、気管支組織)、肝臓、胃、結腸、脳、胆嚢、腎臓、女性生殖管、眼、尿路等が挙げられ、例えば、腸疾患(直腸炎、精巣炎、クローン病、大腸炎(例えば、潰瘍性結腸炎(colitis ulcerosa)とも呼ばれる潰瘍性大腸炎)、感染性/非感染性腸炎、炎症性腸疾患(IBD)などによって例示される)、炎症性肺状態(例えば、肺炎球菌感染症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺線維症)、炎症性皮膚疾患(例えば、皮膚炎(湿疹)、酒さ、脂漏性皮膚炎、及び乾癬)、眼疾患(ぶどう膜炎、網膜炎、角膜炎、黄斑変性などによって例示される)、泌尿生殖器疾患(例えば、尿路感染症)、性感染症(例えば、淋菌感染症及び/又はクラミジア感染症、並びにヘルペスによって例示される潰瘍性疾患によって例示される炎症性疾患を含む骨盤内炎症性疾患)、尿道炎などの「炎症性疾患」をもたらす。本明細書中で使用する場合、「標的組織」はまた、解剖学的空間、例えば、腸管腔も包含する。
【0061】
「治療している(Treating)」、「治療する(treat)」、「治療された(treated)」、又は「治療(treatment)」は、本明細書中で使用する場合、対象、例えばヒトにおける、本明細書中で記載する疾患又は障害(例えば、炎症)の治療を対象とし:(i)疾患又は障害を阻害すること、すなわち、その発生を停止すること;(ii)疾患又は障害を緩和すること、すなわち、障害の退縮を引き起こすこと;(iii)障害の進行を減速させること;及び/又は(iv)疾患の一つ以上の症状又は障害を阻害すること、緩和すること、又は進行を減速させることを包含する。症状は、当該技術分野で公知の方法、例えば、バイオプシー及び組織学、並びに関連する酵素レベル、代謝産物又は循環抗原若しくは抗体(又は他のバイオマーカー)を決定するための血液検査、生活の質の質問票、患者が報告した症状スコア、及び画像検査によって評価することができる。
【0062】
本明細書中で使用する場合、障害又は状態の「予防」又は「予防すること」は、統計サンプルにおいて、対照サンプルに対して治療サンプルにおける障害又は状態の発生率を低減する、又は対照サンプルに対して障害又は状態の一つ以上の症状の開始を遅らせる化合物を指す。
【0063】
また、記載されるような医学的疾患及び状態の治療又は予防の様々な様式が、「実質的」であって、全体的治療又は予防を含むが、全体に満たない治療又は予防も含み、一部の生物学的又は医学的関連結果が達成されることを意味することを意図すると理解されるべきである。
【0064】
本明細書中で使用する場合、「対象」、「個体」、又は「患者」という語は、個々の生物、脊椎動物、哺乳動物、又はヒトであり得る。「哺乳動物」には、ヒト、ヒト以外の霊長類、ネズミ(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター)、ヒツジ、ウシ、反芻動物、ウサギ目、ブタ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、aveなどが含まれる。いくつかの実施形態において、哺乳動物はネズミである。いくつかの実施形態において、哺乳動物はヒトである。
【0065】
本技術の方法及び/又は組成物による治療を「必要とする」対象としては、炎症に「苦しんでいる」対象(すなわち、炎症の一つ以上の臨床及び/又は亜臨床症状を経験及び/又は示している対象)、及び炎症の「リスクがある」対象が挙げられる。治療を「必要とする」対象としては、炎症の動物モデルが挙げられる。炎症の「リスクがある」対象は、炎症症状を現在示しておらず、疾患の一つ以上の症状を発現する素因のある対象を指す。この素因は、家族歴、遺伝因子、環境因子、例えば環境中に存在する有害化合物への曝露などに基づく可能性がある。本技術は、特定の兆候又は症状に限定されることを意図しない。したがって、本技術は、亜臨床症状から本格的な炎症性疾患までの様々な疾患を経験している対象を包含することを意図し、対象は、炎症性疾患に関連する少なくとも一つの兆候(例えば、兆候及び症状)を示す。
【0066】
「実質的に同じ」、「実質的に改変することなく」、「実質的に改変無しの」、及び文法上同等のものは、任意の分子(例えば、多剤耐性タンパク質2(MRP2)、多剤耐性タンパク質1(MRP1)、ヘポキシリンA3(HXA)シンターゼ、N-アシルエタノールアミン(NAE)、アミノ酸配列、核酸配列、抗体など)、細胞、及び/又は現象のレベル(例えば、多剤耐性タンパク質2(MRP2)及び/又は多剤耐性タンパク質1(MRP1)及び/又はヘポキシリンA3(HXA)シンターゼ及び/又はN-アシルエタノールアミン(NAE)の活性のレベル、遺伝子の発現レベル、疾患症状、二つの分子の結合、例えば、ホルモンリガンドのそのホルモンレセプタに対する結合のレベル、二つの分子の結合の特異性、二つの分子の結合の親和性、疾患症状、疾患に対する特異性、疾患に対する感受性、結合の親和性、酵素活性など)に関する場合、第一サンプル(又は第一対象)における分子、細胞、及び/又は現象の量が、第二サンプル(又は第二対象)に対して統計的に有意な量で増加も減少もしないことを意味する。したがって、一実施形態において、第一サンプル(又は第一対象)における分子、細胞、及び/又は現象の量は、第二サンプル(又は第二対象)における量の90%~100%(例えば、91%~100%、92%~100%、93%~100%、94%~100%、95%~100%、96%~100%、97%~100%、98%~100%、及び/又は99%~100%を含む)である。
【0067】
本明細書中で使用する場合、成分の「重量パーセント」は、特に別段の記載が無い限り、当該成分が含まれている処方又は組成物の総重量に基づく。
【0068】
II 総論
一態様において、本技術は、ホルミルペプチドレセプタ1(FPR1)を阻害するため、及びFPR1活性化と関連する疾患を治療するための、方法、化合物、及び組成物を提供する。いくつかの実施形態において、FPR1活性化と関連する疾患には、セリアック病が含まれる。
【0069】
一態様において、本技術は、好中球媒介性炎症及び好中球媒介性炎症と関連する疾患を治療するための方法、化合物、及び組成物を提供する。特に、本技術は、それを必要とする哺乳動物対象の標的組織における好中球媒介性炎症を治療するための方法であって、対象に対して、治療上有効な量の、多剤耐性タンパク質1(MRP1)のレベル及び/又は活性を増大させる一つ以上の第一の化合物であって、好中球の標的組織への遊走を減少させる、治療量の第一の化合物を投与すること、及び/又は治療上有効な量の、多剤耐性タンパク質2(MRP2)、及びヘポキシリンA3(HXA)シンターゼの一つ以上を阻害する一つ以上の第二の化合物であって、好中球の標的組織への遊走を減少させる、治療量の第二の化合物を投与すること、及び/又は治療上有効な量の、一つ以上のN-アシルエタノールアミン(NAE)を増大させる一つ以上第三の化合物を投与することを含む方法を提供し、治療量の第三の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる。
【0070】
一実施形態において、本開示は、炎症誘発性MRP2/HXA経路を標的とすることによって好中球媒介性炎症を治療する方法であって、対象に対して、治療上有効な量の、多剤耐性タンパク質2(MRP2)及びヘポキシリンA3(HXA)シンターゼの一つ以上の活性及び/又はレベルを阻害する一つ以上の化合物を投与することを含む方法を提供し、治療量の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる。
【0071】
別の実施形態において、本開示はまた、抗炎症P-gp/エンドカンナビノイド経路を標的とすることによって好中球媒介性炎症を治療する方法であって、治療上有効な量の、一つ以上のN-アシルエタノールアミン(NAE)のレベル及び/又は活性を増大させる一つ以上の化合物を対象に投与することを含む方法を提供し、治療量の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる。
【0072】
さらなる実施形態において、本開示は、好中球媒介性炎症を治療する方法であって、対象に対して、治療上有効な量の、多剤耐性タンパク質1(MRP1)のレベル及び/又は活性を増大させる一つ以上の第二の化合物を投与することを含む方法をさらに提供し、治療量の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる。
【0073】
さらに別の実施形態において、本開示は、抗炎症P-gp/エンドカンナビノイド、及び炎症誘発性MRP2/HXA経路の両方を標的とすることによって好中球媒介性炎症を治療する方法であって、治療上有効な量の、(A)多剤耐性タンパク質2(MRP2)及びヘポキシリンA3(HXA)シンターゼの一つ以上の活性及び/又はレベルを阻害する一つ以上の第一の化合物と、(B)一つ以上のN-アシルエタノールアミン(NAE)のレベル及び/又は活性を増大させる一つ以上の第二の化合物とを対象に投与することを含む方法を提供し、治療量の第一及び第二の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる。
【0074】
III 本技術の化合物
本技術は、好中球媒介性炎症及びこれと関連する状態を治療するための組成物を提供する。いくつかの実施形態において、本技術は、多剤耐性タンパク質1(MRP1)のレベル及び/又は活性を増大させる一つ以上の第一の化合物、多剤耐性タンパク質2(MRP2)及びヘポキシリンA3(HXA)シンターゼの一つ以上を阻害する第二の化合物、並びに/又は一つ以上のN-アシルエタノールアミン(NAE)を増大させる第三の化合物を含む組成物を提供する。
【0075】
いくつかの実施形態において、本技術は、式I:
【化5】
によって定義されるシクロスポリンA-ポリマーコンジュゲート及びその前駆体、その立体異性体、又は先行のいずれかの薬剤的に許容される塩を開示する。式I中、Lは、一つ以上のFで任意選択的に置換されていてもよいC~Cアルキル基であってよい。例えば、いくつかの実施形態において、Lは、メチレン、エチレン、プロピレン又はブチレンであり得る。いくつかの実施形態において、LはCであり得る。いくつかの実施形態において、LはC1-C4フルオロアルキル(fluoroalky)であり得る。フルオロアルキルは、1、2、3、4又はそれ以上のFを有していてもよい、及び/又は全フッ素置換されていてもよい。式I中、Rは、-OH又は任意選択的にリンカー基Lを含んでもよいポリマーであり得る。
【0076】
いくつかの実施形態において、Rのポリマーは、デキストラン、ポリエチレングリコール(PEG)、過ヨウ素酸塩-酸化デキストラン、ポリシアル酸(PSA)、ヒアルロン酸(HA)、デキストリン、ヒドロキシエチル-デンプン(HES)、ポリ(2-エチル2-オキサゾリン)(PEOZ)、ポリグルタミン酸(PGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸-コ-グリコール酸(PLGA)、ポリ(D,L-ラクチド-コ-グリコリド)(PLA/PLGA)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタアクリルアミド)、ポリグリセロール、25ポリアミドアミン(PAMAM)、ポリエチレンイミン(PEI)、及びポリペプチドからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、ポリマーはPEGである。PEGポリマーは、直線状モノ-アミン及びモノアルデヒド、直線状ビアミン及びビアルデヒド、分岐(multi-arm)アミン及び分岐アルデヒド、分岐モノ-、ビ-及び分岐アミン及びアルデヒド並びに分岐フォーク型アミン及びアルデヒドを含むアミン(NH)及び/又はアルデヒド(CHO)で官能化されていてもよい。いくつかの実施形態において、ポリマーは、40~50個のエチレンオキシドサブユニット、すなわち、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49又は50個又は先行値のいずれか二つの間で両端を含む範囲のエチレンオキシドサブユニットを有するPEGである。ポリマーは、本明細書中で記載される任意の分子量のものであり得る。
【0077】
いくつかの実施形態において、ポリマーは、約100Da~約800kDaの範囲内の平均分子量を有する(別段の指示がない限り、「平均分子量」は重量平均分子量を意味する)。いくつかの実施形態において、ポリマーは、約1kDa~約800kDaの範囲内の平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、ポリマーは1kDa未満の平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、ポリマーは10kDa未満の平均分子量を有する。いくつかの実施形態において、ポリマーの平均分子量は、約1kDa、2kDa、5kDa、10kDa、20kDa、30kDa、40kDa、50kDa、60kDa、70kDa、80kDa、90kDa、100kDa、125kDa、150kDa、175kDa、200kDa、225kDa、250kDa、275kDa、300kDa、325kDa、350kDa、375kDa、400kDa、425kDa、450kDa、475kDa、500kDa、550kDa、600kDa、650kDa、700kDa、750kDa、800kDa、又はこれらの値のうちの二つの間で両端を含む任意の範囲である。
【0078】
本明細書中で記載するポリマーは、任意の数の異なる形状を有し得る。例えば、いくつかの実施形態において、ポリマーは、直線状ポリマー、分岐ポリマー、フォーク型ポリマー、又はこれらのポリマーの任意の組み合わせである。
【0079】
上述のように、式I(又はIA)の化合物中のR基は、任意選択的にリンカーLを含んでもよい。いくつかの実施形態において、リンカーLは生分解性リンカーである。いくつかの実施形態において、生分解性リンカーは、2~10個のアミノ酸残基を有するオリゴペプチドを含む。残基は、天然に存在するアミノ酸から選択することができる。
【0080】
いくつかの実施形態において、リンカーLは、置換又は非置換C-Cアルキレン、シクロアルキレン、シクロアルキルアルキレン、ヘテロアルキレン、アルケニレン、又はヘテロアルケニレン基を含み、xは、1~12の任意の整数、すなわち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12であり得る。例えば、Lは、水素原子の一つ以上がフッ素原子、例えば、1、2若しくは3又はそれ以上のフッ素である、C1-Cxフルオロアルキル基を含んでもよい。いくつかの実施形態において、Lは、1又は2個のNH基を含むヘテロアルキレンであってよく、限定されるものではないが、(C-C10アルキレン)-NH(例えば、CHCHNH、CHCHCHNH、CHCHCHCHNH、CHCH(CH)CH(CH)CHNH)、(Cアルキレン)NH(Cアルキレン)を含み、ここで、n、pは独立して1~10の整数であるが、n+pは10を越えない(例えば、CHCHCHNHCHCH)、NH-(C-C10アルキレン)NH(例えば、NH(CHNH、NH(CHNH、NH(CHNH)、又はNH(Cアルキレン)NH(Cアルキレン)、ここで、n及びpは上記定義の整数である(例えば、NHCHCHCHNHCHCH、NH(CHNHCH)。いくつかの実施形態において、Lは、1又は2個の酸素原子を含むヘテロアルキレンであってよく、限定されるものではないが、(C-C10アルキレン)-O(例えば、CHCHO、CHCHCHO、CHCHCHCHO、CHCH(CH)CH(CH)CHO)、(Cアルキレン)O(Cアルキレン)、ここで、n、pは1~10の整数であるが、n+pは10を越えない(例えば、CHCHCHOCHCH)、O-(C-C10アルキレン)O(例えば、O(CHO、O(CHO、O(CHO)、又はO(Cアルキレン)O(Cアルキレン)、ここで、n及びpは上記定義の整数である(例えば、OCHCHCHOCHCH、O(CHOCH)を含む。いくつかの実施形態において、Lは、O及びNH基を含むヘテロアルキレンであってよく、限定されるものではないが、NH-(C-C10アルキレン)O、(例えば、NH(CHO、NH(CHO、NH(CHO)、又はNH(Cアルキレン)O(Cアルキレン)を含み、ここで、n及びpは上記定義の整数である(例えば、NHCHCHOCHCH、O(CHNHCH)。
【0081】
式I(式IAを含む)の化合物のいくつかの実施形態において、Rは、-OH又は40~50個のエチレンオキシド単位を有するPEG基であり、置換又は非置換ヘテロアルキレン基、例えば、非置換アミノアルキレン基であるリンカーLを含む。いくつかの実施形態において、Rは、-OH又は-NH(CH2-6(CHCHO)42-46-O(CH0-5CHから選択される。いくつかの実施形態において、Rは、CHO-(CHCHO)44-CHCHCHNH-(BT051)、CHO-(CHCHO)44-CHCHNH-(BT090)、及びHO-(BT070)からなる群から選択される。任意のそのような実施形態において、mは2であり得、式IAの構造を有し得る。
【0082】
シクロスポリンA-ポリマーコンジュゲート及び前駆体は、当該技術分野で公知の標準的技術を使用して調製することができる。いくつかの実施形態において、N、O、及びSから選択されるヘテロ原子を含む少なくとも二つの官能基を含む二官能性リンカーであって、官能基のうちの一つが保護されているものは、標準的エステル、チオエステル及びアミド結合形成技術を用いてコンジュゲートすることができる。例えば、アミノ基のうちの一つがウレタン保護基(例えば、Boc、Cbzなど)で保護されているジアミノ-アルキレンリンカーをカップリング剤(例えば、DCC、EDC/HOBtなど)の存在下でシクロスポリンAとカップリングさせることができる。あるいは、シクロスポリンAの活性エステル、混合無水物又は酸ハロゲン化物誘導体を調製し、一保護ジアミンと反応させることができる(例えば、Bodansky,M.&Bodanszky,A.,The Practice of Peptide Synthesis, Springer-Verlag,New York,1984を参照)。保護基を除去することができ、遊離アミンをポリマーのアルデヒド誘導体と還元条件下で反応させて、コンジュゲートを提供することができる。同様に、保護アルデヒド(例えば、1,1-ジメトキシ)及びアミンを有するリンカーをシクロスポリンAとカップリングさせ、脱保護してアルデヒドを形成し、アミノを有するポリマーとの還元的アミノ化に供してコンジュゲートを形成することができる。α,ω-カルボキシアミン、α,ω-アミノアルコール、α,ω-カルボキシアルコール、α,ω-アミノチオールなどを使用してシクロスポリンA及びポリマーを連結するこれらのスキームの変形は、当業者には容易に理解されるであろう。
【0083】
いくつかの実施形態において、本技術のシクロスポリンA化合物は、炎症性疾患の治療のために(多剤耐性タンパク質1)MRP1を増大させる一つ以上の化合物と組み合わせて用いられる。
【0084】
いくつかの実施形態において、本技術のシクロスポリンA化合物は、炎症性疾患の治療のために一つ以上多剤耐性タンパク質2(MRP2)阻害剤と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態において、MRP2阻害剤は、MRP2 RNAi;3-([3-(2-[7-クロロ-2-キノリニル]エテニル)フェニル-(3-ジメチルアミノ-3-オキソプロピル)-チオ-メチル]チオ)プロパン酸(「MK571」及びCysLT1(LTD)ロイコトリエンレセプタ逆アゴニストとも呼ばれる)(Tocris、Minneapolis、USA)(Genuuso et al.(2004)PNAS 101:2470-2475);MRP2のプロベネシド阻害により例示される、プロベネシド(「PROBALAN(商標)」とも呼ばれる);FUROSEMIDE(登録商標);RITONAVIR(登録商標);SAQUINAVIR(登録商標);LAMIVUDINE(登録商標);ABACAVIR(登録商標);EMTRICITABINE(登録商標);EFAVIRENZ(登録商標);DELAVIRDINE(登録商標);NEVIRAPINE(登録商標);CIDOFOVIR(登録商標);ADEFOVIR(登録商標);及びTENOFOVIR(登録商標)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、化合物をポリマーにコンジュゲートさせる。
【0085】
いくつかの実施形態において、MRP2を阻害する化合物は、ヘポキシリンA3シンターゼ、例えば、ヘポキシリンA3シンターゼRNAiを阻害する一つ以上の化合物を含む。いくつかの実施形態では、化合物をポリマーにコンジュゲートさせる。
【0086】
いくつかの実施形態において、MRP2を阻害する化合物は、脂肪酸アミドヒドロラーゼ(FAAH)を阻害する一つ以上の化合物、例えば、FAAH RNAi;FAAH阻害剤I(PubChem CID:295380)4-フェニルメトキシフェニル)N-ブチルカーバメート);URB597(PubChem CID:1383884)3’-カルバモイル-[1,1’-ビフェニル]-3-イルシクロヘキシルカーバメート;FAAH阻害剤1(PubChem CID:1190414)N-(4-(6-メチルベンゾ[d]チアゾール-2-イル)フェニル)-1-(チオフェン-2-イルスルホニル)ピペリジン-4-カルボキサミド;FAAH阻害剤、2l(PubChem CID:71699786);FAAH阻害剤、2i(PubChem CID:71699785)N-シクロヘキシルカルバミン酸4-(ジメチルアミノ)-3-フェニルフェニルエステル;FAAH阻害剤、2h(PubChem CID:71699784)N-シクロヘキシルカルバミン酸4-(ヒドロキシメチル)-3-フェニルフェニルエステル;FAAH阻害剤、2j(PubChem CID:58801136);FAAH阻害剤、2e(PubChem CID:58801135);FAAH阻害剤、2a(PubChem CID:58801134);FAAH阻害剤、2b(PubChem CID:58801129);FAAH阻害剤、2f(PubChem CID:58801126)カルバミン酸、シクロヘキシル-、6-メチル[1,1’-ビフェニル]-3-イルエステル;FAAH阻害剤、2k(PubChem CID:58801125);FAAH阻害剤、2c(PubChem CID:57582480);FAAH阻害剤、2g(PubChem CID:44626363);FAAH阻害剤、2d(PubChem CID:44626362);AM374、パルミチルスルホニルフルオリド;ARN2508、フルルビプロフェンの誘導体;BIA10-2474;BMS-469908;CAY-10402;JNJ-245;JNJ-1661010;JNJ-28833155;JNJ-40413269;JNJ-42119779;JNJ-42165279;LY-2183240;カンナビジオール;MK-3168;MK-4409;MM-433593;OL-92;OL-135;PF-622;PF-750;PF-3845;PF-04457845;PF-04862853;RN-450;SA-47;SA-73;SSR-411298;ST-4068;TK-25;URB524;URB597(KDS-4103、Kadmus Pharmaceuticals);URB694;URB937;VER-156084;V-158866;及びChemCruz(登録商標)Biochemicals、Dallas、Texas製)の複数のFAAH阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、化合物をポリマーにコンジュゲートさせる。
【0087】
いくつかの実施形態において、MRP2を阻害する化合物は、P-糖タンパク質(P-gp)を阻害する一つ以上の化合物、例えば、P-gp RNAi;SipA;及び小分子(例えば、ゾスキダル三塩酸塩(LY335979);VALSPODAR(登録商標)(PSC833)(P-gp媒介性MDRの阻害剤);CP100356塩酸塩(Sigma-Aldrich);及びエラクリダル塩酸塩(R&D Systems)を含む。国際公開第2004071498A1号;国際公開第2014106021A1号;国際公開第2005033101A1号;国際公開第2004009584A1号;国際公開第2002030915A2号;米国特許出願第20100029755A1号;及び米国特許出願第20060073196A1号も参照)。いくつかの実施形態では、化合物をポリマーにコンジュゲートさせる。
【0088】
いくつかの実施形態において、本技術のシクロスポリンA化合物(限定されるものではないが、式I及びIAの化合物を含む)は、炎症性疾患の治療のために、N-アシルエタノールアミン(NAE)を増大させる一つ以上の化合物と組み合わせて使用される。いくつかの実施形態において、NAEを増大させる化合物は、カンナビノイドレセプタ2型(CB2)「アゴニスト」(すなわち、CB2と特異的に結合し、活性化させる化合物)である。例示的CB2アゴニストとしては、GW-405,833;AM-1241;HU-308;JWH-015;JWH-133;L-759,633;L-759,656;β-カリオフィレン;アラキドニルシクロプロピルアミド;及びアラキドニル-2’-クロロエチルアミドが挙げられる。いくつかの実施形態において、化合物をポリマーにコンジュゲートさせる。
【0089】
IV 本技術の組成物の使用
本技術は、それを必要とする哺乳動物対象の標的組織において好中球媒介性炎症を治療、予防、又は改善する方法であって、対象に対して、治療上有効な量の、多剤耐性タンパク質2(MRP2)及びヘポキシリンA3(HXA)シンターゼの一つ以上を阻害する一つ以上の第一の化合物を投与することを含む方法を提供し、治療上有効な量の第一の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる。いくつかの実施形態において、第一の化合物は、シクロスポリンAコンジュゲート又はその前駆体、例えば、式I又はIAの化合物である。いくつかの実施形態において、方法は、対象に対して、治療上有効な量の、一つ以上のN-アシルエタノールアミン(NAE)を増大させる一つ以上の第二の化合物を投与することをさらに含み、治療量の第二の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる。さらなる実施形態において、方法は、対象に対して、治療上有効な量の、多剤耐性タンパク質1(MRP1)のレベル及び/又は活性を増大させる一つ以上の第二及び/又は第三の化合物を投与することをさらに含み、治療量の一つ以上の第二及び/又は第三の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる。別の実施形態では、本技術の化合物を、単独若しくは任意の組み合わせで標的組織の局部表面へ、及び/又は標的組織の管腔表面で投与される。さらなる実施形態において、好中球の標的組織への遊走を減少させる第一の化合物をポリマーにコンジュゲートさせる。別の実施形態では、炎症は、非感染性及び/又は感染性炎症である。
【0090】
本技術はまた、それを必要とする哺乳動物対象の標的組織における好中球媒介性炎症を治療、改善、又は予防する方法であって、対象に対して、治療上有効な量の、一つ以上のN-アシルエタノールアミン(NAE)を増大させる一つ以上の第一の化合物を投与することを含む方法も提供し、治療量の第一の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる。一実施形態において、方法は、対象に対して、治療上有効な量の、多剤耐性タンパク質2(MRP2)及びHXAシンターゼの一つ以上を阻害する一つ以上の第二の化合物を投与することをさらに含み、治療量の第二の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる。いくつかの実施形態において、第二の化合物は、シクロスポリンAコンジュゲート又はその前駆体、例えば、式I又はIAの化合物である。別の実施形態において、方法は、対象に対して、治療上有効な量の、多剤耐性タンパク質1(MRP1)のレベル及び/又は活性を増大させる一つ以上の第二及び/又は第三の化合物を投与することをさらに含み、治療量の一つ以上の第二及び/又は第三は、好中球の標的組織への遊走を減少させる。さらなる実施形態において、一つ以上のNAEを増大させる一つ以上の第一の化合物はカンナビノイドレセプタ2型(CB2)アゴニストである。別の実施形態では、好中球の標的組織への遊走を減少させる第一の化合物をポリマーにコンジュゲートさせる。
【0091】
一態様において、本技術の方法、化合物、及び組成物は、式Iによって定義されるシクロスポリンA-ポリマーコンジュゲート及び前駆体並びにそれらの立体異性体、及び先行のいずれかの薬剤的に許容される塩に関する:
【化6】
式中、L及びRは本明細書中で定義のとおりであり得、また、一つ以上のこれらの化合物(限定されるものではないが、式IA、BT-051、BT-090、BT122、BT123、BT125、及びBT126を含む)の、それを必要とする対象の標的組織における好中球媒介性炎症を治療、改善、又は予防するための使用に関する。他の実施形態では、式I及びIAの化合物は、一つ以上の化合物(例えば、MRP1のレベル及び/又は活性を増大させる化合物、又はNAEを増大させる化合物)と組み合わせると、この点に関して相乗効果を示すであろう。
【0092】
いくつかの実施形態において、本技術の方法、化合物、及び組成物は、炎症性腸疾患(IBD)、例えば潰瘍性大腸炎(UC)、クローン病(CD)、及び感染性/非感染性腸炎を治療、改善、又は予防するための、式I及びIAのシクロスポリンA化合物の一つ以上の使用に関する。他の実施形態では、一つ以上の化合物(例えば、MRP1のレベル及び/又は活性を増大させる化合物、又はNAEを増大させる化合物)と組み合わせた式Iの化合物(限定されるものではないが、式IA、BT-051、BT-090、BT122、BT123、BT125、及びBT126を含む)は、この点に関して相乗効果を示すであろう。
【0093】
いくつかの実施形態において、本技術の方法及び組成物は、限定されるものではないが、肺炎球菌感染症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺線維症を含む感染性及び非感染性炎症性肺状態を治療、改善、又は予防するための、一つ以上の式Iの化合物の使用に関する。他の実施形態では、一つ以上の化合物(例えば、MRP1のレベル及び/又は活性を増大させる化合物、又はNAEを増大させる化合物)と組み合わせたシクロスポリンA化合物は、この点に関して相乗効果を示すであろう。
【0094】
いくつかの実施形態において、本技術の方法、化合物及び組成物は、限定されるものではないが、皮膚炎(湿疹)、酒さ、脂漏性皮膚炎、及び乾癬を含む炎症性皮膚疾患を治療、改善、又は予防するための、一つ以上の式IのシクロスポリンA化合物の使用に関する。他の実施形態では、一つ以上の化合物(例えば、MRP1のレベル及び/又は活性を増大させる化合物、又はNAEを増大させる化合物)と組み合わせたシクロスポリンA化合物は、この点に関して相乗効果を示すであろう。
【0095】
本技術の方法は、身体の部分が損傷及び/又は感染に反応する限局性身体状態である「炎症」を治療するために有用である。炎症の典型的症状は、熱、発赤、腫張、疼痛、及び/又は機能喪失である。これらは、炎症過程の間に起こる生理学的変化の兆候である。この過程の三つの主な成分は:(1)血管の内径の変化及びそれらを通る血流速度の変化(血行動態変化);(2)毛細管透過性の増加;及び(3)白血球滲出である。「好中球媒介性炎症」は、白血球滲出及び炎症の段階であって、好中球が微小血管の内膜へ移動(辺縁趨向)し、緊密に充填された構造で内皮を裏打ち(ペイブメントする(pavementing))段階を指す。最終的に、これらの好中球は、内皮空間(endothelial space)を通って移動し、血管外空間へ脱出する(遊出)。一旦、それらが血管の外側になると、それらは自由に移動でき、また走化性により、損傷部位へ引き付けられる。炎症の領域での好中球(及びマクロファージ)の蓄積は、食作用により外来粒子を中和する働きをする。
【0096】
炎症としては、通常、突然発症するものであり、熱、発赤、腫張、疼痛、及び機能喪失の典型的な兆候を特徴とし、血管及び滲出過程が優勢である急性炎症;粘液及び上皮デブリの大量排出を特徴とする、粘膜表面に主に影響を及ぼす形態である、カタル性炎症;主に新しい結合組織形成を特徴とする、長期間続く持続性炎症である慢性炎症;これは、急性形態又は長期間続く低悪性度形態の継続であり得る;主に器官の間質に影響を及ぼす炎症である、間質性炎症;創傷又は損傷に続いて起こるものである、外傷性炎症;表面上又は表面付近の壊死が組織の喪失及び局所欠陥(潰瘍)の創出に至る、潰瘍性炎症が挙げられる。
【0097】
炎症は感染性及び/又は非感染性であり得る。「感染性」炎症は、体内に通常存在しない細菌、ウイルス、及び寄生生物などの微生物の侵入及び増殖に関連及び/又は起因する炎症を指す。対照的に、「非感染性」炎症は、体内に通常存在しない、細菌、ウイルス、及び寄生生物などの微生物の侵入及び増殖に関連しない及び/又は起因しない炎症を指す。
【0098】
別の実施形態において、本技術は、炎症誘発性MRP2/HXA経路を標的とすることによって、好中球媒介性炎症を治療するための方法を提供する。特定の実施形態において、それを必要とする哺乳動物対象の標的組織における好中球媒介性炎症を治療するこの方法は、対象に対して、治療上有効な量の、多剤耐性タンパク質2(MRP2)及びヘポキシリンA3(HXA)シンターゼの一つ以上の活性及び/又はレベルを阻害する一つ以上の第一の化合物を投与することを含み、治療量の第一の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる。いくつかの実施形態において、化合物は、シクロスポリンAコンジュゲート又は前駆体、例えば、式Iの化合物(限定されるものではないが、式IA、BT-051、BT-090、BT122、BT123、BT125、及びBT126を含む)である。
【0099】
様々な実施形態において、好適なインビトロ又はインビボアッセイを実施して、本技術の特定の組成物の効果及びその投与が治療に適応されるか否かを判定する。様々な実施形態において、インビトロアッセイは、好中球遊走アッセイなどの代表的な細胞ベースのアッセイを用いて実施することができる。他の実施形態では、動物モデルに代表されるインビボモデルを使用して、所与のシクロスポリンAコンジュゲート(又は前駆体)が単独又は一つ以上のさらなる化合物(例えば、MRP2及びHXAシンターゼの一つ以上を阻害するさらなる化合物、MRP1のレベル及び/又は活性を増大させる化合物、又はNAEを増大させる化合物)との組み合わせで、疾患又は状態を治療する際に所望の効果を発揮するか否かを判定することができる。治療において使用するための化合物は、ヒト対象において試験する前に、限定されるものではないが、ラット、マウス、ニワトリ、ウシ、サル、ウサギなどを含む好適な動物モデル系で試験することができる。同様に、インビボ試験のために、当該技術分野で公知の動物モデル系のいずれかを、ヒト対象に対する投与前に使用することができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、本技術の方法は、一つ以上の抗生物質及び/又は抗炎症薬を投与することをさらに含む。本技術の方法において単独又は組み合わせで使用される抗生物質/抗炎症薬の例としては、限定されるものではないが、ダルババシン(DALVANCE(著作権)、XYDALBA(著作権))、オリタバンシン(ORBACTIVE(著作権))ダプトマイシン(Cubicin(著作権))、テジゾリド(SIVEXTRO(著作権))、セフトビプロール(ZEVTERA(著作権)、MABELIO(著作権))、セフトロザン-タゾバクタム(ZERBAXA(著作権))ムピロシン、硫酸ネオマイシンバシトラシン、ポリミキシンB、1-オフロキサシン、リン酸クリンダマイシン、硫酸ゲンタマイシン、メトロニダゾール、ヘキシルレゾルシノール、塩化メチルベンゼトニウム、フェノール、第四級アンモニウム化合物、ティーツリー油、ステロイド薬、例えばコルチコステロイド、例えばヒドロコルチゾン、ヒドロキシルトリアムシノロンαメチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デソキシメタゾン、酢酸デスオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン、ジフロラゾンジアセタート、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクラロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、フルプレドニデン酢酸(フルプレドニリデン)、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、ジフルオロゾンジアセタート(difluorosone diacetate)、フルラドレナロンアセトニド(fluradrenalone acetonide)、メドリゾン、アムシアフェル、アムシナフィド、ベタメタゾン、クロルプレドニゾン、酢酸クロルプレドニゾン、クロコルテロン(clocortelone)、クレシノロン(clescinolone)、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンシクロペンチルプロプリオネート(hydrocortisone cyclopentylproprionate)、ヒドロコルタメート(hydrocortamate)、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、トリアムシノロン、非ステロイド剤、例えばCOX阻害剤、LOX阻害剤、p38キナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、及びサイトカイン合成阻害剤、テトラサイクリン、ミノサイクリン、及びドキシサイクリン、又はその任意の組み合わせが挙げられる。
【0101】
いくつかの実施形態において、本技術の方法は、一つ以上の抗体を投与することをさらに含み、そのような抗体は、Clostridium difficile毒素、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン、メタロプロテイナーゼ-9(例えば、抗体GS-5745、Gilead)の一つ以上を標的とする。
【0102】
例えば、クローン病において、本技術の方法のうちのいずれか一つが、一つ以上のメサラミン製品、コルチコステロイド製剤、従来型コルチコステロイド及び回腸放出ブデソニドの両方、糖質コルチコステロイド/EEN免疫調節剤(例えば、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、及びメトトレキサート)、抗腫瘍壊死因子(TNF)薬(例えば、インフリキシマブ(Remicade、Janssen)、アダリムマブ(Humira、AbbVie)、及びセルトリズマブペゴル(Cimzia、UCB))、抗α-4β-7インテグリン抗体ベドリズマブ(Entyvio、Takeda)、JAK阻害剤ABT-494(AbbVie)、及びフィルゴチニブ(GLPG0634、Galapagos and Gilead)を投与することをさらに含むことが望ましい場合がある(Sandborn,The Present and Future of Inflammatory Bowel Disease Treatment Gastroenterology & Hepatology,Volume 12,Issue 7,July 2016)。
【0103】
潰瘍性大腸炎に関して、本技術の方法のいずれか一つが、5-アミノサリチレート、メサラミン、薬物を結腸へ送達する従来型コルチコステロイド又はマルチマトリックスブデソニド(Uceris、Salix)、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、抗TNF薬(例えば、インフリキシマブ、アダリムマブ、及びゴリムマブ(Simponi、Janssen))、ベドリズマブ、Janusキナーゼ(JAK)阻害剤(例えば、トファシチニブ(Xeljanz、Pfizer)ABT-494(AbbVie)、及びフィルゴチニブ(GLPG0634、Galapagos and Gilead))のうちの一つ以上を投与することをさらに含むことが望ましい場合がある(Sandborn 2016)。
【0104】
V 併用療法
いくつかの実施形態では、本技術のシクロスポリンA化合物は、疾患又は状態の予防、改善、又は治療のための一つ以上のさらなる治療薬と組み合わせることができる。
【0105】
一実施形態では、さらなる治療薬は、相乗的治療効果が得られるように、本技術のシクロスポリンAコンジュゲート又は前駆体(例えば、限定されるものではないが、式IAを含む式Iの化合物、BT-051、BT-090、BT122、BT123、BT125、及びBT126)と組み合わせて対象に投与される。
【0106】
いくつかの実施形態では、本技術のシクロスポリンA化合物(例えば、限定されるものではないが、式IAを含む式Iの化合物、BT-051、BT-090、BT122、BT123、BT125、及びBT126)を、セリアック病又はセリアック病と関連する症状の治療又は予防のための一つ以上の方法又は化合物と組み合わせる。いくつかの実施形態において、一つ以上の化合物は抗炎症薬を含む。いくつかの実施形態において、一つ以上の化合物はインフリキシマブを含む。いくつかの実施形態において、一つ以上の方法はグルテン除去食を含む。
【0107】
いくつかの実施形態では、本技術のシクロスポリンA化合物(例えば、限定されるものではないが、式IAを含む式Iの化合物、BT-051、BT-090、BT122、BT123、BT125、及びBT126)を、前述の多剤耐性タンパク質1(MRP1)のレベルを増大させる一つ以上の化合物と組み合わせる。
【0108】
いくつかの実施形態では、本技術のシクロスポリンA化合物(例えば、限定されるものではないが、式IAを含む式Iの化合物、BT-051、BT-090、BT122、BT123、BT125、及びBT126)を、前述の多剤耐性タンパク質2(MRP2)及びヘポキシリンA3(HXA)シンターゼの一つ以上を阻害する一つ以上のさらなる化合物と組み合わせる。
【0109】
いくつかの実施形態では、本技術のシクロスポリンA化合物(例えば、限定されるものではないが、式IAを含む式Iの化合物、BT-051、BT-090、BT122、BT123、BT125、及びBT126)を、前述のN-アシルエタノールアミン(NAE)を増大させる一つ以上のさらなる化合物を組み合わせる。
【0110】
いくつかの実施形態では、本技術のシクロスポリンA化合物(例えば、限定されるものではないが、式IAを含む式Iの化合物、BT-051、BT-090、BT122、BT123、BT125、及びBT126を含む)を、限定されるものではないが、潰瘍性大腸炎及びクローン病を含む、好中球媒介性炎症及びこれと関連する状態を治療するための一つ以上のさらなる治療薬と組み合わせる。いくつかの実施形態において、本技術は、多剤耐性タンパク質1(MRP1)のレベル及び/又は活性を増大させる第一の化合物、多剤耐性タンパク質2(MRP2)及びヘポキシリンA3(HXA)シンターゼの一つ以上を阻害する、第二の化合物、例えばシクロスポリンAコンジュゲート、及び/又は一つ以上のN-アシルエタノールアミン(NAE)を増大させる第三の化合物のうちの一つ以上を含む組成物を提供する。
【0111】
複数の治療薬(例えば、シクロスポリンAコンジュゲート、MRP1のレベル及び/又は活性を増大させる化合物、MRP2及びHXAシンターゼのさらなる阻害剤、及び/又はNAEを増大させる化合物)は、任意の順序で、又はさらには同時に投与することができる。同時の場合、複数の治療薬を単一の統一形態で、又は複数の形態で(ほんの一例として、単一処方として、又は二つの別個の処方としてのいずれかで)提供することができる。治療薬の一方を複数回投与で投与してもよいし、又は両方を複数回投与として投与してもよい。同時出ない場合、複数回投与間のタイミングは、0週超から4週未満で変化し得る。加えて、結合法、組成物及び処方は、二つの薬剤のみの使用に限定されない。
【0112】
いくつかの実施形態において、本技術の方法は、対象に対して、治療上有効な量の、一つ以上のN-アシルエタノールアミン(NAE)のレベル及び/又は活性を増大させる少なくとも一つの化合物を投与することをさらに含み、治療量の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる。
【0113】
いくつかの実施形態において、NAEを増大させる化合物はカンナビノイドレセプタ2型(CB2)「アゴニスト」(すなわち、CB2と特異的に結合し、活性化させる化合物)である。CB2アゴニストは、GW-405,833;AM-1241;HU-308;JWH-015;JWH-133;L-759,633;L-759,656;β-カリオフィレン;アラキドニルシクロプロピルアミド;及びアラキドニル-2’-クロロエチルアミドによって例示される。
【0114】
いくつかの実施形態において、本技術の方法は、一つ以上の抗生物質及び/又は抗炎症薬を投与することをさらに含んでもよい。本技術の方法において単独又は組み合わせで使用される抗生物質/抗炎症薬の例としては、限定されるものではないが、ダルババシン(DALVANCE(著作権)、XYDALBA(著作権))、オリタバンシン(ORBACTIVE(著作権))ダプトマイシン(キュビシン(著作権))、テジゾリド(SIVEXTRO(著作権))、セフトビプロール(ZEVTERA(著作権)、MABELIO(著作権))、セフトビプロール(ZEVTERA(著作権)、MABELIO(著作権))、セフトロザン-タゾバクタム(ZERBAXA(著作権))ムピロシン、硫酸ネオマイシンバシトラシン、ポリミキシンB、1-オフロキサシン、リン酸クリンダマイシン、硫酸ゲンタマイシン、メトロニダゾール、ヘキシルレゾルシノール、塩化メチルベンゼトニウム、フェノール、第四級アンモニウム化合物、ティーツリー油、ステロイド薬、例えばコルチコステロイド、例えばヒドロコルチゾン、ヒドロキシルトリアムシノロンαメチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デソキシメタゾン、酢酸デスオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン、ジフロラゾンジアセタート、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクラロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン(酢酸フルプレドニリデン)、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、ジフルオロゾンジアセタート(difluorosone diacetate)、フルラドレナロンアセトニド(fluradrenalone acetonide)、メドリゾン、アムシアフェル、アムシナフィド、ベタメタゾン、クロルプレドニゾン、酢酸クロルプレドニゾン、クロコルテロン(clocortelone)、クレシノロン(clescinolone)、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンシクロペンチルプロプリオネート(hydrocortisone cyclopentylproprionate)、ヒドロコルタメート(hydrocortamate)、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、トリアムシノロン、非ステロイド剤、例えばCOX阻害剤、LOX阻害剤、p38キナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、及びサイトカイン合成阻害剤、テトラサイクリン、ミノサイクリン、及びドキシサイクリン、又はその任意の組み合わせが挙げられる。
【0115】
いくつかの実施形態において、本技術の方法は、一つ以上の抗体、例えば、Clostridium difficile毒素、腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン、メタロプロテイナーゼ-9(例えば、抗体GS-5745、Gilead)の一つ以上を標的とする抗体を投与することをさらに含み得る。
【0116】
いくつかの実施形態において、本開示は、クローン病の治療、改善又は予防の方法であって、一つ以上の本技術の化合物を、メサラミン産物、コルチコステロイド製剤、従来型コルチコステロイド及び回腸放出ブデソニドの両方、糖質コルチコステロイド/EEN免疫調節剤(例えばアザチオプリン、6-メルカプトプリン、及びメトトレキサート)、抗腫瘍壊死因子(TNF)薬(例えば、インフリキシマブ(Remicade、Janssen)、アダリムマブ(Humira、AbbVie)、及びセルトリズマブペゴル(Cimzia、UCB))、抗α-4β-7インテグリン抗体ベドリズマブ(Entyvio、Takeda)、JAK阻害剤ABT-494(AbbVie)、及びフィルゴチニブ(GLPG0634、Galapagos and Gilead)(Sandborn,Gastroenterology & Hepatology 12(7)(2016))の少なくとも一つ以上と組み合わせて投与することを含む方法を包含する。
【0117】
いくつかの実施形態において、本開示は、潰瘍性大腸炎の治療、改善、又は予防の方法であって、一つ以上の本技術の化合物を、5-アミノサリチレート、メサラミン、薬物を結腸へ送達する従来型コルチコステロイド又はマルチマトリックスブデソニド(Uceris、Salix)、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、抗TNF薬(例えばインフリキシマブ、アダリムマブ、及びゴリムマブ(Simponi、Janssen))、ベドリズマブ、Janusキナーゼ(JAK)阻害剤(例えば、トファシチニブ(Xeljanz、Pfizer)ABT-494(AbbVie)、及びフィルゴチニブ(GLPG0634、Galapagos and Gilead))(Sandborn、2016)の少なくとも一つ以上と組み合わせて投与することを含む方法を包含する。
【0118】
VI 投与様式
細胞、器官、又は組織を本技術の化合物と接触させるための当業者に公知の任意の方法を用いることができる。好適な方法には、インビトロ法、エクソビボ法、又はインビボ法が含まれる。
【0119】
インビトロ法は、典型的には、培養されたサンプルを含む。例えば、細胞を容器(例えば、組織培養プレート)中に入れ、所望の結果を得るために適した適切な条件下で化合物と共にインキュベートすることができる。好適なインキュベーション条件は、当業者が容易に決定することができる。
【0120】
エクスビボ法は、典型的には、ヒトなどの哺乳動物から摘出された細胞、器官又は組織を含む。細胞、器官又は組織は、例えば、適切な条件下で化合物と共にインキュベートすることができる。接触した細胞、器官又は組織は、典型的には、ドナーに戻されるか、レシピエントに入れられるか、又は将来の使用のために保存される。したがって、化合物は、概して、薬剤的に許容される担体中にある。
【0121】
インビボ法は、典型的には、本技術の化合物のヒトなどの哺乳動物への投与を含む。治療のためにインビボで使用する場合、本技術の化合物は、例えば、哺乳動物の治療の所望の結果を得るために有効な量で哺乳動物に投与される。有効量は、医師及び臨床医によく知られている方法によって、前臨床試験及び臨床試験の間に決定される。用量及び投薬計画は、対象における疾患又は状態の程度、使用する特定の本技術の化合物の特徴、例えば、その治療指数、対象、及び対象の病歴に依存するであろう。
【0122】
例えば、医薬組成物又は薬剤で、本方法において有用な本技術の化合物の有効量を、それを必要とする哺乳動物に、医薬組成物又は薬剤を投与するための多くの周知方法のいずれかによって投与することができる。本技術の化合物は、全身又は局所投与することができる。
【0123】
本明細書中で記載する本技術の化合物は、本明細書中で記載する障害の治療又は予防のために、対象に対して、単独又は組み合わせで、投与用の医薬組成物に組み入れることができる。そのような組成物は、典型的には、活性剤と薬剤的に許容される担体とを含む。本明細書中で使用する場合、「薬剤的に許容される担体」という語は、賦形剤生理食塩水、溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などを包含する。補助活性化合物も、組成物に組み入れることができる。
【0124】
いくつかの実施形態において、本開示の医薬組成物は、化合物又は混合物を、錠剤、カプセル若しくはピルとして経口的に、あるいは非経口、静脈内、皮内、筋肉内若しくは皮下、又は経皮的に投与可能にするために適した、薬剤的に許容される担体及び/又は賦形剤を含む。
【0125】
医薬組成物は、典型的には意図される投与経路と適合するように処方される。本開示の医薬組成物の投与は、熟練した技術者に公知の任意の手段によって達成することができる。投与経路としては、限定されるものではないが、非経口、静脈内、筋肉内、皮内、腹腔内、気管内、皮下、経口、鼻内/呼吸(例えば、吸入)、経皮(局所)、舌下、眼、膣、直腸、及び経粘膜投与が挙げられる。全身経路には、経口及び非経口が含まれる。数種類の装置は、吸入による投与のために通常使用される。これらの種類の装置としては、計量式吸入具(MDI)、呼吸作動(breath-actuated)MDI、乾燥粉末吸入具(DPI)、MDIと組み合わせたスペーサー/保持チャンバー、及びネブライザーが挙げられる。
【0126】
経口投与のために、化合物は、活性化合物(複数可)を当該技術分野で周知の薬剤的に許容される担体と組み合わせることによって容易に処方することができる。そのような担体は、治療される対象による経口摂取のために、本開示の化合物を錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁液などとして処方することを可能にする。経口使用のための製剤は、任意選択的に結果として得られる混合物を粉砕し、所望により好適な補助剤を添加した後に、顆粒の混合物を加工して、錠剤又は糖衣錠コアを得ることによって、固体賦形剤として得ることができる。好適な賦形剤は、ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトール;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)をはじめとする糖などのフィラーである。所望により、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはその塩、例えばアルギン酸ナトリウムなどの崩壊剤を添加してもよい。任意選択的に、経口処方はまた、内部酸状態を中和するための生理食塩水若しくは緩衝液中で処方することができる、又は担体なしで投与することができる。
【0127】
経口的に使用できる製剤には、ゼラチンで作られたプッシュフィットカプセル、並びにゼラチン及び可塑剤、例えばグリセロール又はソルビトールで作られた密封ソフトカプセル(soft,sealed capsule)が含まれる。プッシュフィットカプセルは、フィラー、例えばラクトース、結合剤、例えばデンプン、及び/又は潤滑剤、例えばタルク若しくはステアリン酸マグネシウム及び、任意選択的に安定剤との混合物中に活性成分を含み得る。ソフトカプセルでは、活性化合物を好適な液体、例えば脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコール中に溶解又は懸濁させてもよい。加えて、安定剤を添加してもよい。経口投与用に処方されたミクロスフィアも使用することができる。そのようなミクロスフィアは当該技術分野で明確に定義されている。経口投与用のすべての処方は、そのような投与に適した投与量でなければならない。
【0128】
口腔投与に関して、組成物は、従来の方式で処方された錠剤又はロゼンジの形態をとり得る。
【0129】
吸入による投与に関して、本開示に係る使用のための化合物は、好適なプロペラント、例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素又は他の好適なガスを使用して、加圧パック又はネブライザーからエアゾールスプレープレゼンテーションの形態で都合よく送達することができる。加圧エアゾールの場合、投与量単位は、計量された量を送達するためにバルブを提供することによって決定することができる。吸入具又は吸入器で使用するためのゼラチンのカプセル及びカートリッジは、化合物と好適な粉末基剤、例えばラクトース又はデンプンとの粉末混合物を含むように処方することができる。
【0130】
化合物は、全身的に送達されることが望ましい場合、注射による、例えば、ボーラス注射又は持続注入による非経口投与用に処方することができる。注射用処方は、単位投与形態で、例えば、防腐剤を添加した、アンプル中又は複数回投与用容器(multi-dose container)中で、提示することができる。組成物は、油性若しくは水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルションなどの形態をとることができ、懸濁剤、安定化剤及び/又は分散剤などの処方剤(formulatory agent)を含んでもよい。
【0131】
非経口投与用の製剤処方は、水溶性形態の活性化合物の水溶液を含む。さらに、活性化合物の懸濁液は、適切な油性注射懸濁液として調製することができる。好適な親油性溶媒又はビヒクルとしては、脂肪油、例えばゴマ油、又は合成脂肪酸エステル、例えばエチルオレエート又はトリグリセリド、又はリポソームが挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘度を増大させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストランを含み得る。任意選択的に、懸濁液はまた、好適な安定剤又は化合物の溶解度を増大させて、高濃度の溶液の調製を可能にする薬剤も含み得る。
【0132】
あるいは、活性化合物は、使用前に、好適なビヒクル、例えば、滅菌パイロジェンフリー水で構成される粉末形態であってもよい。
【0133】
化合物は、例えば、従来型坐剤基剤、例えばカカオ脂又は他のグリセリドを含む、坐剤又は停留浣腸などの直腸又は膣組成物に処方することもできる。
【0134】
いくつかの実施形態において、投与は、局所及び/又は治療される組織の管腔表面である。組成物の「局所」投与は、組成物を皮膚と接触させることを意味する。「管腔表面」は、管状臓器の内部開放空間又は空洞、たとえば、動脈又は静脈の内部中央空間であって、その中を血液が流れる、内部中央空間;消化管の内部;肺の気管支の経路;尿細管及び集合尿細管(urinary collecting duct)の内部;膣の単一経路から始まり、子宮中で二つの内腔に分かれ、その両方が卵管を通って続く、女性生殖管の経路を指す。
【0135】
いくつかの実施形態において、本技術の化合物は、局所的、及び/又は標的組織の管腔表面で投与される。これは、化合物の潜在的全身性中毒性副作用を低減するために有利である。
【0136】
他の送達系は、徐放性、遅延放出又は持続放出送達系を含み得る。そのような系は、化合物の反復投与を回避することができ、対象及び医師の利便性を向上する。多くの種類の放出送達系が利用可能であり、当業者に知られている。それらには、ポリマーベースの系、例えばポリ(ラクチド-グリコリド)、コポリオキサレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、及びポリ無水物が含まれる。薬物を含む上記ポリマーのマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。送達系はまた:コレステロール、コレステロールエステル及び脂肪酸などのステロール又はモノ-、ジ-、及びトリ-グリセリドなどの天然脂肪を含む脂質;ヒドロゲル放出系;シラスティック系;ペプチドベースの系;ワックスコーティング;従来型結合剤及び賦形剤を使用する圧縮錠;部分融合インプラントなどである非ポリマー系も含む。具体例としては、限定されるものではないが:(a)米国特許第4,452,775号、同第4,675,189号、及び同第5,736,152号に記載されているものなどの、本開示の薬剤がマトリックス内の形態に含まれる浸食系、並びに(b)米国特許第3,854,480号、同第5,133,974号及び同第5,407,686号などに記載されている、活性成分が制御された速度でポリマーから浸透する拡散系が挙げられる。加えて、ポンプベースのハードウェア送達系を使用することができ、その一部を移植に適応させることができる。
【実施例
【0137】
本技術を、以下の実施例によってさらに説明するが、この実施例は決して限定的であると解釈されるべきではない。
【0138】
実施例1:PEG-シクロスポリンAコンジュゲートの合成。
PEG-シクロスポリンAコンジュゲートの一般的合成の実例をスキーム1及び2に示す。当業者には理解されるように、PEGが結合される側鎖は、オレフィン系エステルの好適なホモログ1を使用することによって長さを変えることができる。例えば、ベンジルペント-4-エノエートは、ベンジルプロプ-2-エノエート(ベンジルアクリレート)、ベンジルブト-3-エノエート、ベンジルヘキシ-5-エノエート、又はベンジルヘプト-6-エノエートで置換して、より短い又はより長い側鎖を得ることができる。そのようなホモログの使用は当該分野の技術範囲内である。
スキーム1
【化7】
【0139】
中間体1の合成。メカニカルスターラー及び熱電対を備えた2Lの丸底フラスコを窒素でパージした。水素化ナトリウム(18.9g、1.05当量、鉱油中60%分散液、Sigma)、続いて無水THF(540mL、10vol、Sigma)を添加した。混合物を氷水浴中で<10℃まで冷却した。次いで、ベンジルアルコール(50.9mL、0.473mol、1.05当量、Sigma)を45分にわたって滴下した。内温は、添加の間<10℃に維持した。氷浴を外し、反応混合物を周囲温度まで温め、15分間撹拌した。混合物を再度<10℃まで冷却した。4-ペンタノイルクロリド(50mL、1当量、0.450mol、Sigma)を60分にわたって滴下した(内温は添加の間に5℃から15℃になった)。反応を周囲温度まで温め、20時間撹拌した。反応を30mLの飽和NHClでクエンチし、EtOAc(250mL)を添加した。層を分離し、有機層を飽和NaHCO(200mL)、次いで塩水(200mL)で洗浄した。有機層を無水NaSO上で乾燥させ、ろ過し、ろ液をロータリーエバポレーションによって濃縮して、粗物質1を油状物として得た。粗物質をクロマトグラフィ(SiO、1kg、25cm×10cm、10%EtOAc/ヘプタン)によって精製して、中間体1(81.9g、収率95%)を透明液体として得た。H NMRは指定された構造と一致し、HPLC純度は98.9%であった。
【0140】
中間体3の合成。磁気撹拌棒を備えた25mLの丸底フラスコを窒素のブランケット下に置いた。化合物2(1.40g、1.16mmol、1.0当量)と、続いてDCM(35mL、窒素パージによって脱気)を添加して、溶液を得た。これに、中間体1(1.87g、9.84mmol、8.5当量)を添加した。この混合物を、5分間窒素パージすることによって脱気した。フラスコに次いでGrubbの第二世代触媒(0.11g、0.13mmol、0.13当量、Sigma-Aldrich)を装填し、混合物を、5分間窒素パージすることで再度脱気した。混合物を17時間激しく撹拌しながらアルゴン下で還流させた。反応混合物を周囲温度まで冷却し、蒸発乾固させた。残留物をクロマトグラフィ(ISCO、SiO、0-10%MeOH/DCM)によって精製して、中間体3(1.1g)を明黄色固体として得、これはHPLC分析によって測定して7.3%の化合物2を含む。
【0141】
反応を5gスケール(化合物2)にて同じ条件下で繰り返した。得られた粗物質をカラムクロマトグラフィにより精製する。
【0142】
中間体4(BT-070)の合成。150mLのFisher Porterビンに中間体3(1.0g、0.74mmol、1.0当量)、10%Pd/C(0.40g、50%水、Johnson Matthey)、及びEtOH(20mL)を装填した。フラスコを真空により空にし、H2で3回再充填し、50PSIの水素圧下で23時間撹拌した。反応混合物をCeliteのパッドでろ過し、パッドをメタノール(2×10mL)で洗浄した。合わせたろ液をロータリーエバポレーションにより濃縮して、中間体4を固体(0.95g)として得た。本明細書中で使用する場合、スキーム1の中間体4はBT-070とも称する。
【0143】
BT-051の合成。窒素でフラッシュした、磁気撹拌棒を備えた50mLのR.B.フラスコに粗中間体4(0.57、AMRI、JWU-B-5-1)、MEPA-20H(1.00g、NOF)、HOBt・HO(0.096g、Aldrich)を装填した。混合物をNブランケット下に置き、アセトニトリル(10mL、Sigma Aldrich)中に溶解させた。TEA(0.18mL)を添加し、混合物を氷水浴中で冷却した。EDC・HCl(0.104g、Sigma-Aldrich)を一度に添加し、反応物を氷浴から取り出して、徐々に周囲温度まで戻した。HPLC分析によって21時間後に反応は完了したと判定された。反応物をDCM(50mL)で希釈し、DI HO(2×20mL)及び塩水(20mL)で洗浄した。有機層を無水NaSO上で乾燥させ、ろ過し、ろ液を減圧下で濃縮した。粗物質をクロマトグラフィ(SiO2、5-15%MeOH/DCM)により精製して、BT-051を白色固体として得た(0.40g、収率27%)。H NMRは指定された構造と一致し、HPLC純度は98.2%であった。
【0144】
スキーム1に示すようなPEG-シクロスポリンAコンジュゲートの一般的合成でも、以下に示す、BT-070及びBT-051の+/-CH誘導体が産生される。理論によって拘束されることを望まないが、+/-CH誘導体は、二重結合遊走を促進する、合成の第一段階でのGrubb触媒の使用のために、スキームによって生成されたと考えられる。リンカー中に一つの追加の炭素を有する(L=-CHCHCH-)BT-070の誘導体はBT125である。リンカー中の炭素が一つ少ない(L=-CH-)BT-070の誘導体はBT122である。リンカー中に一つの追加の炭素を有する(L=-CHCHCH-)BT-051の誘導体はBT126である。リンカー中の炭素が一つ少ない(L=-CH-)誘導体はBT123である。
【化8-1】
【化8-2】
スキーム2
【化9】
【0145】
BT-090の合成。反応条件:1.0当量のCsA酸(BT070、aka中間体4)1.25当量のPLS-269、1.4当量のEDC・HCl、1.25当量のHOBt、1当量のTEA、MeCN(4mL、31.7vol)、0℃-rt、28.5時間(スキーム2)。HOU-E-63-3(0.126g、AMRI)を含む100mLのR.B.に、MEPA-20H(0.230g、NOF)、HOBt・HO(0.019g、Aldrich)、及び撹拌棒を装填した。試薬をNのブランケット下に置き、アセトニトリル(3.2mL、Sigma Aldrich)、次いでTEA(0.013mL、Aldrich)中に溶解させ、撹拌しながら10分間氷浴中に入れた。EDC・HCl(0.027g、Sigma-Aldrich)を一度に添加し、反応物を氷浴から取り出し、徐々に室温に戻した。21時間後、反応物をDCM(50mL、Pride)で希釈し、DI HO(2×20mL)、塩水(20mL)で抽出し、NaSO上で乾燥させ、減圧下で濃縮した。粗物質をクロマトグラフィ(SiO、5-15%MeOH/DCM)により精製して、生成物を得た(0.181g、61%)。物質を最小量の水中に溶解させ、ドライアイス/アセトン浴中で一様に凍結させ、乾燥するまで凍結乾燥させて、白色固体を得た。
【0146】
実施例2:本技術の化合物による好中球遊走の阻害。
この実施例は、インビトロでの好中球遊走の阻害における本技術の化合物の有効性と、本技術の化合物が好中球遊走の用量応答性阻害を示すこととを証明する。
【0147】
PMN遊出アッセイ。T84結腸直腸がん細胞を24ウェルトランスウェル(登録商標)プレートの12ウェルポリカーボネート膜インサートの底部側でコンフルーエンスになるまで増殖させた。これらの上皮細胞の密集成長の結果、トランスウェル中に生理学的に適切な心尖部(内腔)及び基底外側表面が得られた。
【0148】
単分子層の先端面をBT051、BT070、BT090、BT122、BT123、BT125、又はBT126で用量範囲にわたって1時間処理した。単分子層を次いで先端面で、Salmonella typhimuriumで2時間感染させて、MRP2膜タンパク質を通り、心尖部腔(apical chamber)へとヘポキシリンA3(HXA)排出を引き起こした。
【0149】
細菌は、単分子層を洗い流し、先端面をBT051、BT070、BT090、BT122、BT123、BT125、又はBT126に再曝露した。新たに単離し、調製したヒト好中球を次いで基底外側に添加し、単分子層を通って2時間遊出させた。(HXA勾配により)心尖部腔へ遊走した好中球の数を、ミエロペルオキシダーゼ活性(好中球バイオマーカー)の決定によりアッセイした。遊出の阻害は、心尖部腔におけるより低いMPO活性によって示される。
【0150】
結果。図1に示すように、BT051及びBT070は好中球遊走の用量応答性阻害を示す。50%阻害は31.25nMの化合物濃度で観察された。
【0151】
表Aに示すように、BT051及びBT070は100nMの用量で好中球遊走の阻害を示す。しかしながら、BT090は100nMの用量で好中球遊走の阻害を示さない。表Aの目的に関して、PEG-シクロスポリンAコンジュゲート/前駆体は、以下の式を有する化合物によって表される:
【化10】
【表1】
【0152】
表Bに示すように、リンカー中に一つのさらなる炭素を有するBT051の誘導体(BT126)又はリンカー中に一つ少ない炭素を有するBT051の誘導体(BT123)、及びリンカー中に一つのさらなる炭素を有するBT070の誘導体(BT125)又はリンカー中BT070の誘導体に一つ少ない炭素を有する(BT122)は、100nMの用量で好中球遊走の阻害を示す。表Bの目的のために、PEG-シクロスポリンAコンジュゲート/前駆体は、以下の式を有する化合物によって表される:
【化11】
【表2】
【0153】
これらの結果は、ある特定のPEG-シクロスポリンAコンジュゲート/前駆体が好中球遊走を阻害する驚くべき予想外の可能性を示す。したがって、これらの結果は、本技術の化合物が、好中球遊走の阻害法、例えば、好中球遊走に起因するか、好中球遊走をもたらすか、又はさもなければ好中球遊走に関連する、疾患または状態の予防または治療のための方法で有用であることを示す。
【0154】
実施例3:疑似腸液、疑似胃液、及び糞便中のPEG-シクロスポリンA化合物の安定性
この実施例は、本技術のPEG-シクロスポリンA化合物(コンジュゲートを含む)が疑似腸液、疑似胃液、及び糞便において安定であることを証明する。
【0155】
A.BT090
糞便安定性。研究の直前に、オスSprague-Dawleyラット糞便をドライ及びウェットアイスの混合物上で一晩集めた。糞便を次いでpH6.5のリン酸塩緩衝液中で均質化し、ろ過して粒子を除去した。BT090(10μM)を二連で37℃にて合計24時間、新たに調製したラット糞便ホモジネート中でインキュベートした。選択された時点(0.5、2、6及び24時間)で、25μLアリコートをインキュベーション混合物から取り、内部標準(IS)を含む225μLのアセトニトリルでクエンチした。サンプルを次いで遠心分離してペレットにし、沈殿したタンパク質及び上清を5倍希釈した。0時のサンプルをあらかじめクエンチした糞便ホモジネートからインキュベーション期間の最後まで調製した。すべてのクエンチされたサンプルを次いでLC-MS/MS定量化のためにバイオ分析に供した。
【0156】
SGF/FeSSIF安定性手順。BT090(10μM)を二連で37℃にて合計6時間、疑似胃液(SGF)(Ricca、Arlington、TX)及びFed State Simulated Intestinal Fluid(FeSSIF)(Biorelevant、London、UK)中でインキュベートした。被験物質(1mM水ストック溶液)のそれらの各緩衝液をスパイクすることによって反応を開始した。選択された時点(0、0.5、1、2、4、及び6時間)で、50μLアリコートをインキュベーション混合物から取り、-80℃で凍結した。インキュベーション期間の最後で、内部標準(IS)を含む200μLの50:50アセトニトリル:水を各チューブに添加し、よくボルテックスした。0時のサンプルをあらかじめクエンチしたSGF又はFeSSIF中で調製した。すべてのクエンチしたサンプルを次いでLC-MS/MS定量化のためにバイオ分析に供した。
【0157】
バイオ分析。BT090サンプルは、Thermo Accela UPLC及びThermo Q-Exactive質量分析計を用いてLC-MS/MSによって分析した。化合物及び内部標準の[M+H]+付加物を、エグザクトマスモードでのポジティブモードエレクトロスプレイイオン化を用いてモニタリングした。分析物をC18カラムに注入し、水中0.1%ギ酸及び20/80イソプロピルアルコール/アセトニトリル移動相中0.1%ギ酸を用いてクロマトグラフにかけた。ポリマー混合物において数種存在するので、5つの最も顕著なピークを積分した(トラッキングした質量:768.8、779.8、792.0、801.8、813.0;すべて4+荷電状態)
【0158】
結果。図2Aで示すように、BT090は疑似腸液中で安定である。化合物をFeSSIF中で6時間にわたってインキュベートし、指定された時点で残存する化合物について分析した。図2Bで示すように、BT090は疑似胃液中で安定である。化合物をSGF中で6時間にわたってインキュベートし、指定された時点で残存する化合物について分析した。図2Cで示すように、BT090は新鮮なラット糞便ホモジネート中で安定である。化合物を糞便中で24時間にわたってインキュベートし、指定された時点で残存する化合物について分析した。
【0159】
B.BT051及びBT070
糞便安定性。研究の直前に、オスSprague-Dawleyラット糞便をドライおよびウェットアイスの混合物上で一晩収集する。糞便を次いでpH6.5のリン酸塩緩衝液中で均質化し、ろ過して粒子を除去した。BT051及びBT070(10μM)を37℃で合計24時間、新たに調製されたラット糞便ホモジネートにおいて二連でインキュベートする。選択された時点(0.5、2、6及び24時間)で、25μLアリコートをインキュベーション混合物から取り、内部標準(IS)を含む225μLのアセトニトリルでクエンチする。サンプルを次いで遠心分離して沈殿したタンパク質をペレット化し、上清を5倍希釈する。0時サンプルを、インキュベーション期間の最後に向かって、あらかじめクエンチした糞便ホモジネート中で調製する。全てのクエンチされたサンプルを次にLC-MS/MS定量化のためのバイオ分析に供する。
【0160】
SGF/FeSSIF安定性手順。BT051及びBT070(10μM)を37℃にて合計6時間、疑似胃液(SGF)(Ricca、Arlington、TX)及びFed State Simulated Intestinal Fluid(FeSSIF)(Biorelevant、London、UK)中、二連でインキュベートする。被験物質(1mM水ストック溶液)をそれらの各緩衝液中にスパイクすることによって、反応を開始する。選択された時点(0、0.5、1、2、4、及び6時間)で、50μLアリコートをインキュベーション混合物から取り、-80℃で凍結する。インキュベーション期間の最後で、200μLの50:50アセトニトリル:内部標準(IS)を含む水を各チューブに添加し、よくボルテックスする。0時サンプルをあらかじめクエンチしたSGF又はFeSSIF中で調製する。全てのクエンチされたサンプルを次にLC-MS/MS定量化のためのバイオ分析に供する。
【0161】
バイオ分析。BT051及びBT070サンプルは、Thermo Accela UPLC及びThermo Q-Exactive質量分析計を使用してLC-MS/MSによって分析する。化合物及び内部標準の[M+H]+付加物は、エグザクトマスモードでポジティブモードエレクトロスプレイイオン化を用いてモニタリングする。分析物をC18カラムに注入し、水中0.1%ギ酸及び20/80イソプロピルアルコール/アセトニトリル移動相中0.1%ギ酸を含む逆相勾配を用いてクロマトグラフにかける。ポリマー混合物中にいくつかの種が存在するので、5つの最も顕著なピークを積分する(トラッキングされた質量:768.8、779.8、792.0、801.8、813.0;すべて4+荷電状態)
【0162】
結果。BT051及びBT070は、疑似腸液、疑似胃液、及び新鮮なラット糞便ホモジネート中で安定であることが予想される。
【0163】
これらの結果は、本技術の化合物が、化合物を小腸液、胃液、及び糞便材料に曝露する方法、例えば、胃腸病の治療のための方法に有用であることを示す。
【0164】
実施例4:PEG-本技術のシクロスポリンA化合物の薬物動態。
この実施例は本技術の化合物の薬物動態を示す。
【0165】
三匹のカニューレ装着した絶食オスSprague-Dawleyラットに、10mg/kgのBT090、BT051、又はBT070を、t=0hにて10mL/kgの投与速度で経口投与した。血液サンプルを指定された時点で収集し、処理して血漿を得た。BT090の血漿濃度をLC-MS/MSによりアッセイした。糞便をt=0~4時間、4~8時間、及び8~24時間にわたって収集し、緩衝液中で均質化し、LC-MS/MSによってBT090濃度についてアッセイした。各時間間隔で収集した合計糞便重量を記録した。BT090を1%NMP、0.5%メチルセルロース中0.3%Tween-80中で処方した。
【0166】
表1~4は、それぞれ、化合物BT090、BT051、BT070(経口投与したBT051の分解産物)、及びBT070(別に投与)の経口バイオアベイラビリティを示す。表1に示すように、BT090は経口的に、生物学的に利用可能でない。BT090は、ラットにおいて10mg/kgで経口投与した場合、15分から24時間まで血漿中で検出可能でなかった。ラット「C」のみが15分で検出可能なレベルを示し、このレベルはアッセイの検出限界(25ng/mL)に近かった。NQ-バイオ分析アッセイの検出限界未満。NC-データがないため計算しなかった。表2に示すように、BT051は経口的に、生物学的に利用可能である。BT051は、ラットにおいて10mg/kgで経口投与された場合、ラット対象(A~E)の各々において15分で血漿において検出可能であった。表3において示すように、BT051の分解産物(すなわち、BT070)は、ラットにおいて10mg/kgでBT051の経口投与後に経口的に生物学的に利用可能でない。表4に示すように、BT070は、ラットにおいて10mg/kgにて別に経口投与した場合、全ての対象ラットにおいて15分から24時間まで血漿中に存在する。
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】
【0167】
表5~8は、それぞれ、経口投与したSprague Dawleyラットの糞便中に存在するBT090、BT051、BT070(BT051の分解産物)、及びBT070(別に投与)の量を示す。量は、糞便1グラムが1mlに等しいと仮定する。
【表7】

【表8】

【表9】

【表10】
【0168】
実施例5:本技術の化合物によるFPR1の阻害。
この実施例は、fMLP誘導性好中球遊走の阻害によって測定される、FPR1の阻害のための本技術の化合物の使用を証明する。
【0169】
A BT051
T84結腸直腸がん細胞を、24ウェルトランスウェル(登録商標)プレートの12ウェルポリカーボネート膜インサートの底部側でコンフルーエンスまで成長させた。これらの上皮細胞の密集成長の結果、トランスウェルの生理学的に適切な心尖部(内腔)及び基底外側表面が得られる。新たに単離され調製されたヒト好中球を化合物(BT051又はシクロスポリンA)中で1時間氷上にて前処理した。
【0170】
BT051又はシクロスポリンAを単分子層の先端面に添加した。有効な好中球化学誘因物質であるN-ホルミル-メチオニル-ロイシル-フェニルアラニン(fMLP)(100nM)は、好中球上でFPR1タンパク質とのその相互作用を介して好中球遊走を活性化するが、単分子層の心尖部側にも添加した。化合物で処理した好中球を次いで基底外側に添加し、単分子層を通して2時間遊出させた。(fMLP勾配により)心尖部腔に遊走した好中球の数を、次いでミエロペルオキシダーゼ活性の決定により分析した(好中球バイオマーカー)。遊出の阻害は、心尖部腔における低いMPO活性によって示される。
【0171】
結果。図3Aに示すように、BT051は、fMLP媒介性多形核細胞(PMN)遊出/活性化を阻害する。ヒトPMNをBT051で前処理し、トランスウェル系における上皮単分子層の「基底外側」に添加した。fMLPは、トランスウェルの「心尖部」側に化学誘因物質/好中球活性化因子として存在していた。BT051は、公知FPR1阻害剤シクロスポリンA(CsA)と同様に、心尖部側への移動並びに10uM及び1uM濃度で有意なPMN活性化を阻害した。
【0172】
これらの結果は、本技術の組成物がFPR1を阻害することを示す。したがって、化合物は、例えば、FPR1媒介性疾患、例えばセリアック病の治療において、FPR1の阻害を含む方法において有用である。
B BT070及びBT090
【0173】
T84結腸直腸がん細胞を、24ウェルトランスウェル(登録商標)プレートの12ウェルポリカーボネート膜インサートの底部側でコンフルーエンスになるまで成長させる。これらの上皮細胞の密集成長の結果、トランスウェルの生理学的に適切な心尖部(内腔)及び基底外側表面が得られる。新たに単離され調製されたヒト好中球をBT070、BT090、又はシクロスポリンA中、1時間氷上で前処理する。
【0174】
BT070、BT090、又はシクロスポリンAを単分子層の先端面に添加する。有効な好中球化学誘因物質であるN-ホルミル-メチオニル-ロイシル-フェニルアラニン(fMLP)は、好中球遊走を活性化するが、これも、単分子層の心尖部側に添加する。化合物で処理した好中球を次いで基底外側に添加し、単分子層を通して2時間遊出させる。(fMLP勾配により)心尖部腔に遊走した好中球の数は、次いでミエロペルオキシダーゼ活性(好中球バイオマーカー)の決定により分析する。遊出の阻害は、心尖部腔における低いMPO活性により示される。
【0175】
結果。図3Bで示すように、BT070及びBT051はfMLP媒介性多形核細胞(PMN)遊出/活性化を阻害する。BT090はまたfMLP媒介性PMN移動/活性化を阻害することが予想される。BT070はPMN遊出/活性化を約50%阻害した。この実験では、BT051はPMN移動/活性化を10uM濃度で50%阻害した。
【0176】
これらの結果は、本技術の組成物がFPR1を阻害することを示す(又は示すであろう)。したがって、化合物は、FPR1の阻害を含む方法において、例えば、FPR1媒介性疾患、例えばセリアック病の治療において有用である。
【0177】
実施例6:大腸炎の予防及び治療のための本技術の化合物
この実施例は、動物モデル及びヒト対象における大腸炎の予防及び治療のための本技術の化合物の使用を示す。
【0178】
動物モデル
この実施例における使用に適した動物モデルとしては、限定されるものではないが、大腸炎を有する動物、例えば、本明細書中で記載するものが挙げられる。当業者は、以下の説明が例示的であり、他の動物モデルに適切なように適用され得ることを理解するであろう。
【0179】
概要。C57BL/6及びcnr2-/-マウスをJackson laboratoriesから購入し;FVB wt及びmdr1a-/-をTaconicから購入する。メスマウスを6~12週令で使用し、遺伝子型を実験に先立って2~4週間混合して、微生物叢を均質化する。マウスを飲料水中3%DSS(分子量36,000~50,000、MP Biomedicals)で7日間処理し、次いで基準水に戻し、疾患のピークであった第9日に処分する。中央及び遠位結腸からのサンプルを10%ホルマリン中で固定し、パラフィン包埋し、薄片にし、ヘマトキシリン及びエオシンを用いた組織病理学的分析のために染色する。各サンプルを、四つの基準:(1)上皮過形成及び杯細胞枯渇の程度;(2)固有層における白血球浸潤;(3)冒された組織の面積;及び(4)重度の炎症、例えば陰窩膿瘍、粘膜下炎症、及び潰瘍のマーカーの存在について0~3まで半定量的に採点する。サンプルは、サンプル同一性、並びに中央及び遠位値に対しての予備知識のない、訓練を受けた調査員が採点し、平均して、結腸組織病理スコアを得る。
【0180】
対象に、本技術の化合物を、本明細書中に記載する方法にしたがって、例えば直腸内投与によって投与する。いくつかの実施形態において、化合物を、毎日一回、毎週一回、又は毎月一回投与する。いくつかの実施形態において、化合物を、毎日複数回、毎週複数回、又は毎月複数回投与する。対照対象にビヒクル単独を投与する。
【0181】
固有層白血球の単離及びフローサイトメトリ。固有層からの細胞懸濁液を以前に記載されているとおりに調製する(Buonocore et al.,2010)。腸組織を小さく切り、10%FBS及び5mM EDTAを含むRPMIで処理して上皮細胞を除去し、次いで100U/mLのCollagenase Type VIII(Sigma-Aldrich)とともに2時間にわたってインキュベートする。細胞を次いでPercoll(GE Healthsciences)の不連続30/40/75%勾配に適用し、40/70%境界面から収集する。細胞をPBS/0.1%BSA中で洗浄し、抗Fcレセプタ(αCD16/32、eBioscience)とともにインキュベートし、Zombie Live/Dead赤外染色(eBioscience)で染色し、次いで表面をCD45、CD11b、Ly6G、及びLy6C又はGr1に対する抗体で染色する。サンプルをMACSquant Analyzer 10(Miltenyi Bioscience)にかけ、FlowjoソフトウェアVersion 10(Treestar)を用いて分析する。
【0182】
マウスサンプル中のミエロペルオキシダーゼ含有量の分析。サンプルを、記載するようにミエロペルオキシダーゼ活性について分析する。結腸の組織セクションを液体N中で凍結させ、使用するまで-80℃で保存する。セクションを、溶解性マトリックスD(MP Biomedicals)を含むヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド(HTAB、Sigma)緩衝液中に入れ、FastPrep-24ホモジナイザでレベル6にて40秒間均質化する。サンプルをABTSと組み合わせ、ホモジナイザを8分にわたって読み取る。勾配は、Graphpad Prismを用いた線形回帰によって計算し、Bicinchonic Acidアッセイ(BioRad)によって測定した個々のサンプルのタンパク質含有量に対して正規化する。糞便サンプルの分析のために、糞便含有量を秤量し、HTAB緩衝液を10μL/mgの割合で添加し、算出した勾配を直接使用する。
【0183】
結腸粘膜におけるHXAの質量分析。マウスに、それらの飲料水中で5%DSSを投与し、第7日に処分する。未処置又はDSS処置マウス(9マウス/群)からの近接結腸を収集し、三つの腸セグメントをプールする。粘膜剥離物は、腸表面をゴム製ポリスマンで剥離させることによってPBS中に収集し、HXA含有量を以前に記載されたようにして分析する(Mumy,K.L.et al.,Infect.Immun.76:3614-3627(2008)。
【0184】
結果。本技術の化合物の直腸内投与は、対照動物と比較して、腸病理及びDSSによって誘導される結腸短縮を有意に低減するであろうことが予想される。結腸組織病理の分析は、化合物で処置されたマウスが結腸管腔への好中球浸潤を低減したことを示し、これは、糞便サンプル中のミエロペルオキシダーゼの有意な低減によって確認されるであろう。
【0185】
したがって、これらの結果は、本技術の化合物が、インビボでの好中球浸潤を低減する方法において、例えば、好中球遊走に関連する炎症性状態、例えば大腸炎の予防及び治療において有用であることを示すことが予想される。
ヒト対象
【0186】
大腸炎又は関連する障害を有していると診断されたか又は有することが疑われ、大腸炎又は関連する障害の一つ以上の症状及び/又は病状を現在示しているヒト対象を、当該技術分野で公知かつ承認された選択基準を用いて募集する。
【0187】
予防及び治療の方法:対象に、疾患の段階及び重篤度にふさわしい投与量及び頻度で本技術の化合物を投与する。いくつかの実施形態において、化合物を毎日一回、毎週一回、又は毎月一回投与する。いくつかの実施形態において、化合物を毎日、毎週、又は毎月複数回投与する。
【0188】
ヒトにおける予防及び治療の方法を示すために、対象に、大腸炎又は関連する障害の症状及び/又は病状の発生前又は発生後に本技術の化合物を投与し、当該技術分野で公知の方法を用いて症状/病状の逆転又は予想される症状/病状の減弱について評価する。
【0189】
結果:本技術の化合物は、ヒト対象における大腸炎及び関連する障害の症状及び/又は病状の逆転を誘導することが予想される。これらの結果は、本技術の化合物が、そのような障害の予防及び治療に有用かつ有効であることを示す。
【0190】
実施例7:好中球媒介性皮膚障害の予防及び治療の本技術の化合物
この実施例は、動物モデル及びヒト対象における、好中球媒介性皮膚障害、例えば皮膚炎(湿疹)、酒さ、脂漏性皮膚炎、及び乾癬の予防及び治療のための本技術の化合物を示す。当業者は、乾癬に関する以下に記載する実施例が好中球媒介性皮膚障害を例示するものであり、方法は任意の好中球媒介性皮膚障害に適用可能であることを理解するであろう。
【0191】
動物モデル
この実施例に適した動物モデルとしては、限定されるものではないが、自然突然変異を有するモデル、遺伝子組換え動物、免疫学的モデル、及び薬理学的モデルを含む任意の承認された乾癬モデルが挙げられる。自然突然変異モデルとしては、限定されるものではないが、asebia(Scd1ab/Scd1ab)、慢性増殖性皮膚炎(Sharpincpdm/Sharpincpdm)、かさかさの皮膚(Ttc7fsn/Ttc7fsn)変異のホモ接合性のマウスが挙げられる。遺伝子組換えモデルとしては、当該技術分野で公知の、主要調節分子を異所的に発現するか、又は主要調節分子が欠損した動物が挙げられる。免疫学的モデルとしては、当該技術分野で公知の養子免疫伝達又は関連する方法に供される動物対象が挙げられる。薬理学的モデルとしては、乾癬又は乾癬関連状態を含む薬剤を投与された対象が挙げられる。例えば、対象は、イミキモド(IMQ)、トール様レセプタ(TLR)-7及びTLR-8アゴニストを局所投与された。
【0192】
当業者は、以下の説明が例示的であり、他の動物モデルに適切なように適用することができることを理解するであろう。
【0193】
材料。イミキモド(IMQ、5%クリーム、Beselna(登録商標))を持田製薬株式会社(日本、東京)から購入する。ベタメタゾンブチレートプロピオネート(0.05%軟膏、Antebate(登録商標))を鳥居薬品株式会社(日本、東京)から購入する。リアルタイムPCRプローブ及び関連する薬剤をApplied Biosystems(Massachusetts、USA)から購入する。
【0194】
動物。7~12週令のメスBALB/cマウス及びオスCB-17scidマウスを特定の病原体のない条件下、23±3℃の室温及び55±15%の空気湿度で、12時間の明暗サイクル環境において飼育し、食餌及び水を自由に与える。
【0195】
皮膚炎症の誘導。IMQ5%クリームを、左耳皮膚の内側及び/又は外側に一日一回塗布する。用IMQの用量は、耳の外側に250ug、外側に500ug、又は内側及び外側の両方で250ugのいずれかである。ベタメタゾン軟膏又は関連する軟膏基剤を、左耳に一日二回、内側及び/又は外側の両方に5uLの体積で塗布する。左耳の厚さを、厚さ計(IDA-112M、株式会社ミツトヨ、日本川崎市)を利用してIMQの塗布前に一日一回皮膚炎症の量的指数として測定する。対照対象にビヒクル単独を投与する。
【0196】
予防方法に関して、対象を、IMQ曝露前の所定の期間、局所適用によって本技術の化合物で前処理する。
【0197】
治療方法に関して、当該技術分野で公知の方法を用いたIMQ誘発性炎症の確認後に、対象に所定の期間、本技術の化合物を局所投与する。
【0198】
対象を二酸化炭素ガスによって安楽死させ、紅斑及びスケーリングについての全体的形態の検査後に左耳を採取する。採取した組織の一部をスライスし、緩衝10%ホルマリン溶液で固定し、組織学的パラフィンセクションの調製のために処理する。セクションをヘマトキシリン及びエオシンで染色し、光学顕微鏡検査に供する。残存する組織をリアルタイムPCRによるmRNA分析のために-80℃で保存する。
【0199】
リアルタイムPCRアッセイ。耳組織の全RNAサンプルは、RNeasy(登録商標)Lipid Tissue Mini Kit(QIAGEN、Venlo、the Netherlands)で、製造業者の指示に従って得る。本研究において関心対象のサイトカインをコードする転写産物のレベルを、RNA-to-Ct(商標)1-Step Kitを用いてTaqMan Gene発現アッセイによって測定する。
【0200】
例示的標的としては、限定されるものではないが、IFN-γ、IL-13、IL-17、IL-22、IL-23、TNF-α、及びIL-1βが挙げられる。標的転写産物レベルをGAPDH転写産物レベルに対して正規化する。
【0201】
統計分析。耳の厚さの値を、第1日で測定した治療前の値からの増加として示し、平均±標準偏差(S.D.)として表す。統計的有意性を、F試験とそれに続くAspin-Welchのt試験及び耳厚さにおいてのBartlett試験とそれに続くDunnett試験又はSteel試験、及びmRNA転写産物レベルにおいてのBartlett試験とそれに続くTukey試験又はSteel-Dwass試験により分析する。0.05未満のp値は統計的に有意であるとみなした。
【0202】
結果。本技術の化合物の投与は、組織厚さ、炎症性遺伝子発現、及び皮膚好中球浸潤によって測定して、IMQ誘導炎症を予防又は低減することが予想される。これらの結果は、本技術の化合物が、限定されるものではないが、皮膚炎(湿疹)、酒さ、脂漏性皮膚炎、及び乾癬を含む、炎症及び皮膚好中球浸潤と関連する状態の予防及び治療に有用であることを示す。
【0203】
ヒト対象
皮膚炎(湿疹)、酒さ、脂漏性皮膚炎、又は乾癬などの、好中球媒介性皮膚障害を有すると診断されるか又は有することが疑われ、一つ以上の症状及び/又は障害の病状を現在示しているヒト対象を、当該技術分野で知られ、承認された選択基準を用いて募集する。
【0204】
予防及び治療の方法。対象に、本技術の化合物を、疾患の段階及び重篤度にふさわしい投与量及び頻度で投与する。いくつかの実施形態において、化合物を、毎日一回、毎週一回、又は毎月一回投与する。いくつかの実施形態において、化合物を毎日、毎週、又は毎月複数回投与する。
【0205】
ヒトにおける予防及び治療の方法を示すために、対象を、好中球媒介性皮膚障害の症状及び/又は病状の発生前又は発生後に本技術の化合物を投与し、当該技術分野で公知の方法を用いて症状/病状の逆転又は予想される症状/病状の減弱について評価する。例えば、対象に、好中球媒介性皮膚障害又はその症状の発生前又は発生後に本技術の化合物を投与する。対象を次に、当該技術分野で公知の方法を用いて、障害又は症状の予防、逆転、又は減弱について評価する。
【0206】
結果。本技術の化合物は好中球媒介性皮膚障害、例えば皮膚炎(湿疹)、酒さ、脂漏性皮膚炎、及び乾癬の症状及び/又は病状の逆転を誘導するであろうことが予想される。これらの結果は、本技術の化合物がヒト対象における好中球媒介性皮膚障害の予防及び治療に有用かつ有効であることを示す。
【0207】
実施例8:セリアック病の予防及び治療のための本技術の化合物
この実施例は、セリアック病の予防及び治療のための本技術の化合物の使用を示す。当業者は、以下で記載する実施例がグルテン不寛容障害一般を例示するものであり、当該方法は、概して、セリアック病及び関連する障害に適用可能であることを理解するであろう。
【0208】
動物モデル
この実施例に適した動物モデルとしては、限定されるものではないが、当該技術分野で公知のイヌ及びサルモデルなどの自然発症モデル、出生直後にグリアジンを投与した無菌Wistar AVNラットなどの誘導モデル、及びIL-15を過剰発現する動物などのトランスジェニックモデルを含む任意の許容されたセリアックモデルが挙げられる。当業者は、以下の説明が例示的であり、他の動物モデルに適切なように適用され得ることを理解するであろう。
【0209】
概要。動物モデルを当該技術分野で公知の関連基準にしたがって選択し維持する。対象に本技術の化合物を本明細書中で記載する方法にしたがって、例えば経口投与によって投与する。いくつかの実施形態において、化合物を毎日一回、毎週一回、又は毎月一回投与する。いくつかの実施形態において、化合物を毎日複数回、毎週複数回、又は毎月複数回投与する。対照対象にビヒクル単独を投与する。
【0210】
予防方法に関して、対象に、セリアック病又は関連する障害の症状及び/又は病状の発生前又は発生後に本技術の化合物を投与し、当該技術分野で公知の方法を用いて予測される症状/病状の逆転又は症状/病状の減弱について評価する。
【0211】
結果:本技術の化合物は、動物モデルにおけるセリアック病及び関連する障害の症状及び/又は病状の逆転を誘導するであろうことが予想される。これらの結果は、本技術の化合物がセリアック病及び関連する障害の予防及び治療に有用かつ有効であることを示すであろう。
【0212】
ヒト対象
セリアック病又は関連する障害を有すると診断されたか又は有する疑いがあり、現在、セリアック病又は関連する障害の一つ以上の症状及び/又は病状を呈しているヒト対象を、当該技術分野で公知かつ認められた選択基準を用いて募集する。
【0213】
予防及び治療の方法:対象に本技術の化合物を、疾患の段階及び重篤度にふさわしい投与量及び頻度で投与する。いくつかの実施形態では、化合物を毎日一回、毎週一回、又は毎月一回投与する。いくつかの実施形態では、化合物を毎日、毎週、又は毎月複数回投与する。
【0214】
予防方法に関して、対象に、セリアック病又は関連する障害の症状及び/又は病状の発生前又は発生後に本技術の化合物を投与し、症状/病状の逆転又は予想される症状/病状の減弱について、当該技術分野で公知の方法を用いて評価する。
【0215】
結果:本技術の化合物は、ヒト対象においてセリアック病及び関連する障害の症状及び/又は病状の逆転を誘導するであろうことが期待される。これらの結果は、本技術の化合物が、セリアック病及び関連する障害の予防及び治療に有用かつ有効であることを示すであろう。
【0216】
均等物
本技術は、本願で記載する特定の実施形態に関して限定されるものではなく、本技術の個々の態様の一つの例示として意図されている。当業者には明らかであるように、本技術の多くの修飾および変形は、その主旨および範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に列挙されたものに加えて、本技術の範囲内の機能的に均等な方法および装置は、前述の説明から当業者には明らかであろう。そのような修飾および変形は、添付の特許請求の範囲内にあることが意図されている。本技術は、添付の特許請求の範囲の用語、およびそのような特許請求の範囲が権利を与えられる均等物の全範囲によってのみ制限されるべきである。本技術は、特定の方法、試薬、化合物組成物、または生物学的系に限定されず、これらはもちろん変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、限定することを意図するものではないことも理解されたい。
【0217】
上記明細書に記載されているすべての刊行物および特許は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。本技術の記載された方法および系の様々な修飾および変形は、本技術の範囲および精神から逸脱することなく、当業者には明らかになるであろう。本技術を特定の実施形態に関連して説明してきたが、特許請求される本技術は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではない。実際、当業者およびそれに関連する分野において明らかである、本技術を実施するための記載された様式の様々な修飾は、以下の特許請求の範囲内にあることが意図される。
次に、本発明のまた別の好ましい態様を示す。
1. 式I

の構造を有する化合物、その立体異性体、又は前記のいずれかの薬剤的に許容される塩(式中、
1 は、一つ以上のFで任意選択的に置換されていてもよいC 0 ~C 4 アルキル基であり;
Rは、-OH及びPEGからなる群から選択され、ここで、PEGは、任意選択的にリンカー基L 2 を含んでもよい)。
2. Rが、-OH又は-NH(CH 2 2-6 (CH 2 CH 2 O) 42-46 -O(CH 2 0-5 CH 3 から選択される、上記1に記載の化合物。
3. Rが、CH 3 O-(CH 2 CH 2 O) 44 -CH 2 CH 2 CH 2 NH-(BT051)、CH 3 O-(CH 2 CH 2 O) 44 -CH 2 CH 2 NH-(BT090)、及びHO-(BT070)からなる群から選択される、上記1に記載の化合物。
4. L 1 が、エチレン基又はプロピレン基である、上記1~3のいずれか一項に記載の化合物。
5. Rが、40~50個のエチレンオキシド単位を有するPEGである、上記1~4のいずれか一項に記載の化合物。
6. L 2 が置換又は非置換ヘテロアルキレン基である、上記1~5のいずれか一項に記載の化合物。
7. L 2 が、1又は2個の窒素原子を有するC 1-6 非置換ヘテロアルキレンである、上記6に記載の化合物。
8. 式IAの構造を有する上記1に記載の化合物、その立体異性体、又は前記のいずれかの薬剤的に許容される塩:

9. 上記1~8のいずれか一項に記載の化合物と薬剤的に許容される担体とを含む医薬組成物。
10. それを必要とする哺乳動物対象の標的組織における好中球媒介性炎症と関連する疾患を治療する方法であって、前記対象に対して、治療上有効な量の式I:

の化合物、その立体異性体、又は前記のいずれかの薬剤的に許容される塩を投与することを含む方法(式中、
1 は、一つ以上のFで任意選択的に置換されていてもよいC 0 ~C 4 アルキル基であり;
Rは、-OH及びPEGからなる群から選択され、ここで、PEGは、任意選択的にリンカー基L 2 を含んでもよい)。
11. Rが、-OH又は-NH(CH 2 2-6 (CH 2 CH 2 O) 42-46 -O(CH 2 0-5 CH 3 から選択される、上記10に記載の方法。
12. Rが、CH 3 O-(CH 2 CH 2 O) 44 -CH 2 CH 2 CH 2 NH-(BT051)、CH 3 O-(CH 2 CH 2 O) 44 -CH 2 CH 2 NH-(BT090)、及びHO-(BT070)からなる群から選択される、上記10に記載の方法。
13. L 1 がエチレン基又はプロピレン基である、上記10~12のいずれか一項に記載の方法。
14. Rが、40~50個のエチレンオキシド単位を有するPEGである、上記10~13のいずれか一項に記載の方法。
15. L 2 が置換又は非置換ヘテロアルキレン基である、上記10~14のいずれか一項に記載の方法。
16. 式IAの前記構造又はその薬剤的に許容される塩を有する上記10~12又は14~15のいずれか一項に記載の方法:

17. 前記化合物が、前記化合物と薬剤的に許容される担体とを含む医薬組成物として処方される、上記10~16のいずれか一項に記載の方法。
18. 前記疾患が、腸疾患、大腸炎、炎症性肺疾患、炎症性皮膚疾患、眼疾患、泌尿生殖器疾患、及び性感染症からなる群から選択される、上記10~17のいずれか一項に記載の方法。
19. 前記腸疾患が、直腸炎、精巣炎、クローン病、及びセリアック病からなる群から選択される、上記18に記載の方法。
20. 前記大腸炎が、潰瘍性結腸炎(colitis ulcerosa)としても知られる潰瘍性大腸炎、感染性/非感染性腸炎、及び炎症性腸疾患(IBD)からなる群から選択される、上記18に記載の方法。
21. 前記炎症性肺疾患が、肺炎球菌感染症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び肺線維症からなる群から選択される、上記18に記載の方法。
22. 前記炎症性皮膚疾患が、皮膚炎(湿疹)、酒さ、脂漏性皮膚炎、及び乾癬からなる群から選択される、上記18に記載の方法。
23. 前記眼疾患が、ぶどう膜炎、網膜炎、角膜炎、及び黄斑変性からなる群から選択される、上記18に記載の方法。
24. 前記泌尿生殖器疾患が尿路感染症を含む、上記18に記載の方法。
25. 前記性感染症が、骨盤内炎症性疾患、淋菌感染症、クラミジア感染症、ヘルペス、及び尿道炎からなる群から選択される、上記18に記載の方法。
26. 前記投与ステップが、局所投与及び前記標的組織の管腔表面での投与からなる群から選択される、上記10~25のいずれか一項に記載の方法。
27. 前記炎症が非感染性炎症である、上記10に記載の方法。
28. 前記炎症が感染性炎症である、上記10に記載の方法。
29. 前記方法が、前記対象に対して、治療上有効な量の、多剤耐性タンパク質2(MRP2)及びHXA 3 シンターゼの一つ以上を阻害する一つ以上の第二の化合物を投与することをさらに含み、前記治療量の前記第二の化合物が、好中球の前記標的組織への遊走を減少させる、上記10~28のいずれか一項に記載の方法。
30. 前記方法が、前記対象に対して、治療上有効な量の、多剤耐性タンパク質1(MRP1)を増大させる一つ以上の化合物を投与することをさらに含み、前記治療量の前記第三の化合物が好中球の前記標的組織への遊走を減少させる、上記10~28のいずれか一項に記載の方法。
31. 前記方法が、多剤耐性タンパク質2(MRP2)及びヘポキシリンA3(HXA 3 )シンターゼの一つ以上を阻害する一つ以上の化合物を投与することをさらに含み、前記治療量の前記第二の化合物が、好中球の標的組織への遊走を減少させる、上記10~30のいずれか一項に記載の方法。
32. 前記方法が、前記対象に対して、治療上有効な量の、一つ以上のN-アシルエタノールアミン(NAE)を増大させる一つ以上の化合物を投与することをさらに含み、前記治療量の前記第三の化合物は、好中球の標的組織への遊走を減少させる、上記10~30のいずれか一項に記載の方法。
33. 前記炎症がクローン病と関連し、前記治療又は予防が、メサラミン製品、コルチコステロイド製剤、回腸放出ブデソニド、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、及びメトトレキサートを含む糖質コルチコステロイド/EEN免疫調節剤、インフリキシマブ、アダリムマブ、及びセルトリズマブを含む抗腫瘍壊死因子(TNF)薬、ペゴル、抗α-4β-7インテグリン抗体ベドリズマブ、ABT-494、及びフィルゴチニブの一つ以上を投与することをさらに含む、上記10に記載の方法。
34. 前記炎症が潰瘍性大腸炎と関連し、前記治療又は予防が、5-アミノサリチレート、メサラミン、コルチコステロイド、マルチマトリックスブデソニド、アザチオプリン、6-メルカプトプリン、インフリキシマブ、アダリムマブ、及びゴリムマブを含む抗TNF薬、ベドリズマブ、トファシチニブ、ABT-494、及びフィルゴチニブの一つ以上を投与することをさらに含む、上記10に記載の方法。
35. ダルババシン、オリタバンシン、キュビシン、テジゾリド、セフトビプロール、セフトビプロール、セフトロザン-タゾバクタム、ムピロシン、硫酸ネオマイシンバシトラシン、ポリミキシンB、1-オフロキサシン、リン酸クリンダマイシン、硫酸ゲンタマイシン、メトロニダゾール、ヘキシルレゾルシノール、塩化メチルベンゼトニウム、フェノール、第四級アンモニウム化合物、ティーツリー油、ステロイド薬、例えばコルチコステロイド、例えばヒドロコルチゾン、ヒドロキシルトリアムシノロンαメチルデキサメタゾン、リン酸デキサメタゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、吉草酸クロベタゾール、デソニド、デソキシメタゾン、酢酸デスオキシコルチコステロン、デキサメタゾン、ジクロリゾン、ジフロラゾンジアセタート、吉草酸ジフルコルトロン、フルアドレノロン、フルクラロロンアセトニド、フルドロコルチゾン、ピバル酸フルメタゾン、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルコルチンブチルエステル、フルオコルトロン、フルプレドニデン酢酸(フルプレドニリデン)、フルランドレノロン、ハルシノニド、酢酸ヒドロコルチゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンアセトニド、コルチゾン、コルトドキソン、フルセトニド、フルドロコルチゾン、ジフルオロゾンジアセタート(difluorosone diacetate)、フルラドレナロンアセトニド(fluradrenalone acetonide)、メドリゾン、アムシアフェル、アムシナフィド、ベタメタゾン、クロルプレドニゾン、酢酸クロルプレドニゾン、クロコルテロン(clocortelone)、クレシノロン(clescinolone)、ジクロリゾン、ジフルプレドナート、フルクロロニド、フルニソリド、フルオロメタロン、フルペロロン、フルプレドニゾロン、吉草酸ヒドロコルチゾン、ヒドロコルチゾンシクロペンチルプロプリオネート(hydrocortisone cyclopentylproprionate)、ヒドロコルタメート(hydrocortamate)、メプレドニゾン、パラメタゾン、プレドニゾロン、プレドニゾン、ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ジプロピオン酸ベタメタゾン、トリアムシノロン、非ステロイド剤、例えばCOX阻害剤、LOX阻害剤、p38キナーゼ阻害剤、免疫抑制剤、例えばシクロスポリン、及びサイトカイン合成阻害剤、テトラサイクリン、ミノサイクリン、及びドキシサイクリン、又はその任意の組み合わせからなる群から選択される一つ以上の抗生物質及び/又は抗炎症薬を投与することをさらに含む、上記10~34のいずれか一項に記載の方法。
36. Clostridium difficile毒素を標的とする抗体、腫瘍壊死因子(TNF)を標的とする抗体、インターロイキンを標的とする抗体、及びメタロプロテイナーゼ-9を標的とする抗体からなる群から選択される一つ以上の抗体を投与することをさらに含む、上記10~35のいずれか一項に記載の方法。
37. 式Iの前記化合物が、未処置対照組織と比較して、好中球の前記標的組織への遊走を減少させる、上記10~36のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B