IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アッドアップの特許一覧

<>
  • 特許-粉末スプレー3D印刷用のヘッド 図1
  • 特許-粉末スプレー3D印刷用のヘッド 図2
  • 特許-粉末スプレー3D印刷用のヘッド 図3
  • 特許-粉末スプレー3D印刷用のヘッド 図4
  • 特許-粉末スプレー3D印刷用のヘッド 図5
  • 特許-粉末スプレー3D印刷用のヘッド 図6
  • 特許-粉末スプレー3D印刷用のヘッド 図7
  • 特許-粉末スプレー3D印刷用のヘッド 図8
  • 特許-粉末スプレー3D印刷用のヘッド 図9
  • 特許-粉末スプレー3D印刷用のヘッド 図10
  • 特許-粉末スプレー3D印刷用のヘッド 図11
  • 特許-粉末スプレー3D印刷用のヘッド 図12
  • 特許-粉末スプレー3D印刷用のヘッド 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】粉末スプレー3D印刷用のヘッド
(51)【国際特許分類】
   B23K 26/14 20140101AFI20240507BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240507BHJP
   B23K 26/34 20140101ALI20240507BHJP
   B22F 10/73 20210101ALI20240507BHJP
   B22F 10/25 20210101ALI20240507BHJP
   B22F 12/50 20210101ALI20240507BHJP
   B22F 12/44 20210101ALI20240507BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
B23K26/14
B33Y30/00
B23K26/34
B22F10/73
B22F10/25
B22F12/50
B22F12/44
B28B1/30
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021537814
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-21
(86)【国際出願番号】 EP2019087112
(87)【国際公開番号】W WO2020136268
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】1874350
(32)【優先日】2018-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517160927
【氏名又は名称】アッドアップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100170634
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 航介
(72)【発明者】
【氏名】セバル ジャン-リュック
(72)【発明者】
【氏名】カドュー ギヨーム
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/081767(WO,A1)
【文献】特表2017-507032(JP,A)
【文献】米国特許第05961862(US,A)
【文献】欧州特許出願公開第02502729(EP,A1)
【文献】特開2016-182635(JP,A)
【文献】米国特許第06305884(US,B1)
【文献】独国特許出願公開第102004034777(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/14
B33Y 30/00
B23K 26/34
B22F 10/73
B22F 10/25
B22F 12/50
B22F 12/44
B28B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層造形機械用の積層造形のための粉末を分配する粉末分配ヘッド(1;5;8)であって、
高エネルギービーム(L)を溶融ポイントに向かって通過できるように設計された貫通開口部(O)と、
前記溶融ポイントに向かうN個の粉末搬送ダクト(21;92)を含み、該ダクトが前記貫通開口部(O)の周りに均一に分布し且つ前記溶融ポイントに向かって収束する、本体(2;6;9)と、
を備え、
前記分配ヘッド(1;5;8)が更に、少なくとも1つの粉末分配チャンバ(31,32;71,72;101,102))を含む分配部材(3;7;10)を備え、当該少なくとも1つの粉末分配チャンバ(31,32;71,72;101,102))は、ガスによって輸送される粉末用の入口(311、321;311、321;311、321;711、721;1011、1021)と、各粉末出口がそれぞれの粉末搬送ダクト(21;92)に接続できるようにされた、前記貫通開口部(O)の周りに均一に分布されたN個の粉末出口(312;1022)と、を有し、
前記本体(2;6;9)及び前記分配部材(3;7;10)が、本体(2;6;9)に対する前記分配部材(3;7;10)の相対位置に応じた粉末搬送ダクト(21;92)に対し前記粉末出口(312、322;1022)を流体接続又は接続解除するように、互いに対して移動できるように構成されており、前記Nが2以上である、粉末分配ヘッド。
【請求項2】
前記分配部材が、
貫通開口部(O)の周りに均一に分布している第1の粉末入口(311;711;1011)及びN個の第1の粉末出口(312)を有する第1の粉末分配チャンバ(31;71;101)と、
第2の粉末入口(321;721;1021)及びN個の第2の粉末出口(322;1022)を有する第2の粉末分配チャンバ(32;72、102)と、
を含み、
前記本体(2;9)及び前記分配部材(3;10)は、前記第1の粉末出口(312)又は前記第2の粉末出口(322;1022)がそれぞれの前記粉末搬送ダクト(21;92)に流体接続される少なくとも1つの位置を有する、請求項1に記載の粉末分配ヘッド。
【請求項3】
前記分配部材が、
前記貫通開口部(O)の周りに均一に分布している第1の粉末入口(711)及びN個の第1の粉末出口を有する第1の粉末分配チャンバ(71)と、
第2の粉末入口(721)及びN個の第2の粉末出口を有する第2の粉末分配チャンバ(72)と、
を含み、前記分配部材(7)が更に、第1の粉末出口及び第2の粉末出口を共通の粉末搬送ダクト(21)に同時に接続する1又は2以上の粉末混合手段を含む、請求項1に記載の粉末分配ヘッド(5)。
【請求項4】
前記本体(2;9)は、前記粉末を再循環容器(RA、RB)に除去するように構成された粉末リサイクル回路(22、23)を更に含み、
前記分配部材(3;10)は、前記第1の粉末出口(312)又は前記第2の粉末出口(322)が前記搬送ダクト(21)から接続解除されたときに、前記第1の粉末出口(312)又は前記第2の粉末出口(322)を前記リサイクル回路(22、23)に流体接続するように構成されている、請求項2に記載の粉末分配ヘッド。
【請求項5】
前記本体は、粉末(PA、PB)をそれぞれのリサイクル容器(RA、RB)に除去するように各々が構成された第1のリサイクル回路(22)、及び第2のリサイクル回路(23)を含み、前記第1の出口(311)及び前記第2の出口(322)が、前記粉末搬送ダクト(21)から接続解除されたときに、前記第1の出口(311)及び前記第2の出口(322)がそれぞれの前記リサイクル回路(22、23)に接続されるように構成されている、請求項4に記載の粉末分配ヘッド。
【請求項6】
前記分配部材は更に、ガス入口(331)及びN個のガス出口(332)を有するパージガス分配チャンバ(33)を含み、
前記本体(2)及び前記分配部材(3)は、前記ガス出口(332)が前記粉末搬送ダクト(21)、前記第1のリサイクル回路(22)、又は前記第2のリサイクル回路(23)に流体接続される少なくとも1つの位置を有する、請求項5に記載の粉末分配ヘッド。
【請求項7】
前記本体(9)は、前記粉末出口(1022)と流体連通するように設計され且つ前記溶融ポイントに向かって前記粉末を搬送するように構成されたN個の外部粉末搬送ダクト(92)を含む、請求項2、又は4から6の何れか1項に記載の粉末分配ヘッド(8)。
【請求項8】
前記本体は、前記貫通開口部(O)の周りに均一に分布し且つ前記溶融ポイントに向かって収束するN個の粉末搬送ダクト(21)を含み、前記第1のリサイクル回路(22)及び前記第2のリサイクル回路(23)は各々、粉末搬送ダクト(21)の入口(211)に各々隣接するN個の入口(221;231)を有し、
前記第1の粉末分配チャンバ(31)及び前記第2の粉末分配チャンバ(32)並びに前記ガスチャンバ(33)は各々、N個の出口(313;322;332)をリング上に分布させ、前記N個の出口(313;322;332)の各々が前記本体のN個の入口(211;221;231)の1つに面するようになり、前記Nは2以上である、請求項6に記載の粉末分配ヘッド(1)。
【請求項9】
液体入口(241)と液体出口(242)との間で液体冷却剤を循環させるように構成された冷却回路(24)を更に備える、請求項1~8の何れか1項に記載の粉末分配ヘッド(1;5;8)。
【請求項10】
前記ヘッドが積層造形によって得られ、前記冷却回路は、前記本体(2)の様々な外部及び内部部分を通過する組み込みネットワークの形態である、請求項に記載の粉末分配ヘッド(1;5;8)。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載の粉末分配ヘッド(1;5;8)を備える粉末噴射積層造形機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3D印刷を使用する製造分野に関するものであり、自動車分野又は航空分野などの多くの技術分野で採用されている。
【背景技術】
【0002】
より具体的には、本発明は、粉末噴射3Dプリンターのヘッド、及びこのようなヘッドを含むプリンターに関する。
【0003】
積層造形又は3D印刷は、デジタルモデルに基づいて、例えば金属又はプラスチック材料などの材料の層を重ね合わせることによって、物体を製造できるようにする方法の集合を意味する。
【0004】
この製造プロセスにより、材料の除去を伴う従来の機械加工技術を使用して作成できるものよりも複雑な形状を作成することができる。
【0005】
粉末噴射積層造形は、最も有望な積層造形技術の1つである。この技術は、例えばレーザービームなどの高エネルギービームを使用して1又は2以上の粉末を溶融し、十分に制御された寸法の堆積物を設けることからなる。材料の層を連続して積み重ねて、機能的技術部品を生成する。
【0006】
更に、この技術は、材料の除去が、例えば、完成部品の80%程に達する可能性がある従来の機械加工と比較して、材料の節減を可能にする。
【0007】
粉末噴射3Dプリンターは、粉末を粉末搬送ダクトに分配する粉末ディスペンサーを介して少なくとも1つの粉末供給源に接続された印刷ヘッドを有する。粉末は、例えば、アルゴンなどのキャリアガスのストリーム中に搬送され、溶融ポイントに運ばれて、例えばレーザービームなどのビームによって溶融されることになる。
【0008】
従来技術の既知の3Dプリンターでは、ディスペンサーの設置は、スペース及び保守上の理由から、一般的に機械チャンバの外側で印刷ヘッドから離れている。
【0009】
これは、搬送ダクトがかなり長いことを意味し、開始から粉末の到着までの応答時間が極めて長くなる。この応答時間は、レーザーショットなしでは印刷ヘッドの2つの動きの間の粉末の流れを止めることができないので、有害である。従って、これにより、構成要素の製造中の粉末の大幅な損失を引き起こす可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、粉末損失を制限することができる粉末分配ヘッド及びこのような分配手段を備えた3D製造機械を提案することによって、上記の問題に対する解決策を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明の1つの主題は、積層造形機械用の印刷ヘッドとしても知られる粉末分配ヘッドであり、上記ヘッドは、
-溶融ポイントにつながる少なくとも1つの粉末搬送ダクトを含み、製造が行われている基板上に実質的に配置することができる本体と、
-粉末と相互作用するために、高エネルギービームが溶融ポイントに向かって通過できるように設計された貫通開口部と、
を含む。
【0012】
高エネルギービームは、例えば、レーザービームである。
【0013】
本発明によれば、上記分配ヘッドは更に、第1の粉末入口及び少なくとも1つの第1の粉末出口を有する少なくとも第1の粉末分配チャンバを含む分配部材を備え、本体及び分配部材は、互いに相対移動して、本体に対する上記分配部材の相対位置に従って粉末搬送ダクトに対して第1の粉末出口を流体的に接続又は接続解除するように構成されている。この相対移動は、例えば、一方が他方に対して並進又は回転移動とすることができる。
【0014】
従って、分配部材が印刷ヘッドから離れている既知のプリンターとは異なり、本発明によれば、粉末分配部材は、3D印刷ヘッド内に含まれる。これにより、粉末を溶融ポイントまで運ぶ粉末搬送ダクトの長さが大幅に短縮される。
【0015】
更に、ヘッド本体と分配部材との間の相対移動のお陰で、レーザーが遮断されたときに粉末の供給を迅速に遮断することができる。これにより、粉末が大幅に節減される。
【0016】
1つの実施形態によれば、分配部材は、
-第1の粉末入口及び少なくとも1つの第1の粉末出口を有する第1の粉末分配チャンバと、
-第2の粉末入口及び少なくとも1つの第2の粉末出口を有する第2の粉末分配チャンバと、
を含むことができる。
【0017】
本体及び分配部材は、第1の粉末出口又は第2の粉末出口が粉末搬送ダクトに流体接続される少なくとも1つの位置を有する。
【0018】
従って、複数材料構成要素を製造するために、第1の粉末から異なる種類の第2の粉末に切り替えることが可能である。
【0019】
有利には、分配部材は、第1のチャンバから出るある割合の第1の粉末と、第2のチャンバから出るある割合の第2の粉末とから構成される混合物を粉末搬送ダクトに送るように構成された混合手段を備える。
【0020】
これにより、粉末の混合物で構成される物体の製造が可能になる。更に、PAとPBの2つの粉末の比例計量により、製造中にPA及びPBの濃度を変更することで特性を変更できる構成要素の製造が可能になる。
【0021】
有利なことに、本体は更に、粉末をリサイクル容器に除去するように構成された粉末リサイクル回路を含み、分配部材は、第1の粉末出口又は第2の粉末出口が搬送ダクトから接続解除されたときに、第1の粉末出口又は第2の粉末出口をリサイクル回路に流体接続するように構成される。
【0022】
これは、粉末をリサイクルすることができ、キャリアガスの一定の流れを維持して、粉末の残留物がダクト内に沈殿するのを防ぐことができることを意味する。
【0023】
1つの実施形態によれば、本体は、粉末をそれぞれのリサイクル容器に除去するように各々が構成された2つのリサイクル回路を含み、第1の出口及び第2の出口は各々、粉末搬送ダクトから切り離されたときに、それぞれのリサイクル回路に接続されるように構成される。
【0024】
従って、2つの粉末をリサイクルすることができる。
【0025】
有利には、分配部材は更に、パージガス、ガス入口と少なくとも1つのガス出口とを有する、好ましくはアルゴンなどの純ガス用のパージガス分配チャンバを含み、本体及び分配部材は、ガス出口が粉末搬送ダクト、第1のリサイクル回路又は第2のリサイクル回路に流体接続されている少なくとも1つの位置を有する。
【0026】
パージガスにより、様々な回路、特に第1チャンバ及び第2チャンバから粉末残留物をパージすることができる。
【0027】
1つの実施形態によれば、本体は、粉末出口と流体連通するように設計され且つ第1の粉末又は第2の粉末を溶融ポイントに向かって運ぶように構成された外部粉末搬送ダクトを含むことができる。
【0028】
これにより、印刷ヘッド内部の主搬送ダクトを介して通過することなく粉末を注入することが可能となる。具体的には、積層造形ヘッドは、レーザービームに関連する熱と、製造プロセスにおいて構成要素から放出される放射線に晒される。従って、第1の粉末が高い入熱を必要とし、第2の粉末が必要としない場合、第1の粉末は主搬送ダクトを介して注入され、第2の粉末は、外部ダクトを介して注入される。これにより、第2の粉末を不必要に加熱することなく溶融池に含めることができる。
【0029】
有利には、粉末分配ヘッドは、上記流体用の入口と出口との間で冷却流体、例えば液体を循環させるように構成された冷却回路を更に備える。
【0030】
液体を使用した冷却により、ヘッドの良好な冷却が保証される。ヘッド本体に熱が伝わり、ヘッドの先端が極めて細かくて脆弱であるので、スラグの付着効果が加速し、従って、粉末の集束した流れが劣化する。
【0031】
ヘッド内の水循環ネットワークは、内部機械部品及びシールのための熱シールドを構成し、特に本体は、冷却システムと交換するための極めて高い表面積の恩恵を受けることができる。
【0032】
本発明の1つの実施形態によれば、本体は円錐形を有し、貫通開口部は、円錐のベースと頂点との間に配置されている。
【0033】
本発明の別の実施形態によれば、分配部材は、円錐のベースと協働するように設計されたリングの形状を有し、これに対して回転することができる。
【0034】
有利なことに、貫通開口部は円錐の軸を通過する。この場合、コーンのベースに対するリングの回転は、コーンの軸を中心に行うことができる。
【0035】
有利なことに、本体は、貫通開口部の周りに均一に分布し、溶融ポイントに向かって収束するN個の粉末搬送ダクトを含む。Nは2以上とすることができる。
【0036】
有利には、第1及び/又は第2のリサイクル回路は、粉末搬送ダクトの入口に隣接するN個の入口を有する。
【0037】
有利には、第1及び/又は第2の粉末分配チャンバ及び/又はガスチャンバは、リング上に均一に分布されたN個の出口を有する。
【0038】
上記の特定の特徴を組み合わせた1つの実施形態によれば、積層造形機械用の粉末分配ヘッドは、
-高エネルギービームが溶融ポイントに向かって通過できるように設計された貫通開口部と、
-溶融ポイントに向かってつながるN個の粉末搬送ダクトを含む本体と、
を備え、上記ダクトは、貫通開口部の周りに均一に分布し、溶融ポイントに向かって収束する。
【0039】
分配ヘッドは更に、粉末(粉末はガスによって輸送される)用の入口と、貫通開口部の周りに均一に分布されるN個の粉末出口と、を有する少なくとも1つの粉末分配チャンバを含む分配部材を備えることができ、各粉末出口は、それぞれの粉末搬送ダクトに接続されるようにされ、本体及び分配部材は、上記の分配部材の本体に対する相対位置に従って粉末搬送ダクトに対して粉末出口を流体接続又は接続解除するように、互いに対して移動できるように構成され、Nは2以上である。
【0040】
複数の粉末搬送ダクト及び複数の粉末出口は、粉末が溶融ポイントまで均一に分配及び搬送されて、より良好に溶融することができることを意味する。具体的には、分配チャンバにより、粉末が粉末出口を介して搬送ダクトの上流に分配することが可能にされ、その後、粉末はそれぞれの搬送ダクトによって搬送され、レーザービームの周囲に分配されるように溶融ポイントに到達し、溶融ポイントに極めて迅速に到達することができる。
【0041】
この構成は、従来技術の既知の積層造形ヘッドと比較して有利である。具体的には、既知の積層造形ヘッドでは、粉末搬送ダクトの上流に分布がなく、粉末は単一の経路を介して到着する。この場合、粉末はリング状のくぼみを介して本体内に分配され、次に集束コーン又は同心ノズルに分配される必要がある。この分配には十分なバッファー量が必要であり、焦点で均一な流れを得るのに必要な応答時間が大幅に長くなる。従って、このシステムでは、「一時停止」時間を観察して粉末の均一な流れを確保する必要があり、この結果、粉末の損失と時間の損失につながる。
【0042】
1つの実施形態によれば、分配部材は、
-貫通開口部の周りに均一に分布している第1の粉末入口及びN個の第1の粉末出口を有する第1の粉末分配チャンバと、
-第2の粉末入口及びN個の第2の粉末出口を有する第2の粉末分配チャンバと、
を備えることができ、本体及び分配部材が、第1の粉末出口又は第2の粉末出口がそれぞれの粉末搬送ダクトに流体接続される少なくとも1つの位置を有する。
【0043】
更に別の実施形態によれば、分配部材は、
-貫通開口部の周りに均一に分布された第1の粉末入口及びN個の第1の粉末出口を有する第1の粉末分配チャンバと、
-第2の粉末入口及びN個の第2の粉末出口を有する第2の粉末分配チャンバと、
を備え、分配部材は、第1の粉末出口及び第2の粉末出口を共通の粉末搬送ダクトに同時に接続する1又は2以上の粉末混合手段を更に備える。
【0044】
有利には、第1の粉末出口及び第2の粉末出口から構成される各ペアは、混合手段によってそれぞれの粉末搬送ダクトに接続することができる。
【0045】
別の実施形態によれば、
-本体は、貫通開口部の周りに均一に分布し、溶融ポイントに向かって収束するN個の粉末搬送ダクトを含み、第1のリサイクル回路及び第2のリサイクル回路は各々が、粉末搬送ダクトの入口に隣接するN個の入口を有し、
-第1及び第2の粉末分配チャンバとガスチャンバが各々、リング上に分配されたN個の出口を有し、N個の出口の各々が、本体のN個の入口の1つに面して、Nは2以上である。
【0046】
搬送ダクトと粉末出口が複数であることは、粉末を溶融ポイントまで均一に分配及び搬送できることを意味する。言い換えれば、粉末は、レーザービームの周りに分布するように溶融ポイントに達し、この粉末のより良い溶融を可能にする。
【0047】
粉末分配ヘッドは、有利には、3D印刷を使用して製造することができる。この場合、粉末分配ヘッドは、様々な外部及び内部本体部分を通過することにより、本体の全てのレベルで機能する組み込み冷却ネットワークを備えることができる。
【0048】
ヘッドが一般に冷却カラーを備えている既知のシステムとは異なり、本発明による冷却システムは、本体全体を内側及び外側に通過する冷却ダクトのネットワークである。これにより、外側に向けて熱シールドを生成することを可能にし、部材の内部冷却を確保する。
【0049】
本発明はまた、上記の説明による粉末分配ヘッドを備えた粉末噴射積層造形機械に関する。
【0050】
上記の実施形態の特徴は、別々に又は一緒に、或いは様々に組み合わせて考慮することができる。
【0051】
添付図面を参照した以下の説明を読むことにより、本発明はよりよく理解され、更なる特徴及び利点が明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】従来技術による既知の3D印刷設備の概略及び部分図である。
図2】本発明によるプリントヘッドの全体図である。
図3図2による分配部材を示す図である。
図4図2によるヘッド本体の主要部分を示す図である。
図5図3の分配部材の垂直断面図である。
図6図4の主本体の垂直断面図である。
図7図2による印刷ヘッドの垂直断面図である。
図8】本発明による印刷ヘッド本体の分解図である。
図9図2のヘッドの変形形態である。
図10図2のヘッドの変形形態である。
図11】2つの粉末を混合するための手段を備えた印刷ヘッドの断面図である。
図12】低温状態で粉末の混合物を作成できる、図11のヘッドの変形形態を示している。
図13】低温状態で粉末の混合物を作成できる、図11のヘッドの変形形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1は、従来技術の既知の粉末噴射3D印刷設備の例を示している。この設備は、粉末PAの第1の供給源A及び粉末PBの第2の供給源Bに接続された印刷ヘッドTを備える。物体Mを製造するために、搬送ダクトPは、レーザー源Lによって放出されたビームがこれらの粉末を別々に又は混合物の形で溶融する溶融ポイントFまで粉末PA、PBを搬送する。各粉末はキャリアガスにより搬送される場合、リサイクルシステムにより、未使用の粉末PA、PBをそれぞれの粉末回収容器RA、RBに回収することが可能となる。
【0054】
図示されていない他の例では、施設は、単一材料施設とすることができ、或いは、より多くの粉末供給源を含むこともできる。
【0055】
この施設はまた、パージガスGの供給源、並びにスイッチオーバーシステムCとしても知られる粉末分配システムを含む。このシステムにより、粉末PA、PBの供給源A、B、及びガス供給源Gを搬送ダクトP又は粉末回収容器RA、RBに接続及び接続解除することができるようになる。
【0056】
この設備は、最終的に、印刷ヘッドTを移動させるための移動システムZと、特に製造中に平面X、Yの2つの方向に物体Mを移動させるように設計された移動システムDとを備える。最後に、制御システムCTは、施設を制御する。
【0057】
施設はまた、粉末PA及びPBを計量するための、図示されていない装置を含むことができる。
【0058】
粉末は、炭素鋼及びステンレス鋼などの金属粉末、又は何れかの金属合金、例えば、ニッケル基、コバルト基、チタン、銅又はアルミニウムの合金、セラミック、金属間化合物、並びにポリマー又は他の複合材料とすることができる。粉末は、完全な構成要素の製造、摩耗した構成要素の補修、又は金属構成要素の表面コーティングをするために、別々に又は別個の層で使用できる。
【0059】
更に、図示の例では、粉末分配システムは施設内にあるが、ヘッドTから離れている。しかしながら、ほとんどの既知の3Dプリンターでは、粉末分配システムはプリンターの外部にある。
【0060】
図2は、本発明の第1の実施形態による粉末分配ヘッド1の全体図を示している。ヘッド1は、全体が円錐形の本体2と分配部材3とを備える。
【0061】
図3は、分配部材3の第1の例示的な実施形態を示している。この例示的な実施形態では、分配部材3はリングの形態である。
【0062】
図示されていない他の例示的な実施形態では、分配部材は、リングの形状とは異なる形状を有することができる。例えば、分配部材は、円盤状又は矩形形状とすることができる。
【0063】
図4は、ボディ2の部分図を示す。より具体的には、図4は、本明細書の残りの部分で本体2Aと呼ばれる本体の一部を示している。
【0064】
図示の例の主本体2Aは、全体が円筒形であり、分配部材3のリングを受け入れることを目的としたリングの形態のボア20を有する。図1を参照して説明したように、本体は、レーザービームLが通過する貫通開口部Oも有する。
【0065】
図2に示すようにヘッドが組み立てられるとき、分配部材3のリングは、主本体2Aと接触している。より具体的には、リングは、主本体2Aのボア20に挿入される。2つの構成要素2A及び3は、リングが主本体に対して回転できるように、又はその逆に、リングが固定されている場合、リングに対して回転するのは主本体であるように配置されている。
【0066】
図5は、リング3の回転軸を通過する垂直断面図を示している。図示されるように、リング3は、第1の粉末PAを分配することを目的とした環状の第1のチャンバ31を有する。第1のチャンバ31は、第1の粉末PAの供給源に接続されることを意図した粉末入口311を有する。また、第1のチャンバ31は、粉末PAを分配することを可能にする複数の粉末出口312を有する。
【0067】
リング3はまた、第2の粉末PBを分配することを目的とした第2のチャンバ32を有する。第2のチャンバ32は、第2の粉末PBの供給源に接続されることを意図した粉末入口321を有する。これはまた、第2の粉末PBを分配することを可能にする複数の粉末出口322を有する。
【0068】
リング3は更に、アルゴンなどのパージガスGを分配することを目的とした第3のチャンバ33を有する。第3のチャンバ33は、パージガス供給源に接続することを目的としたガス入口331を有する。第3のチャンバ33はまた、パージガスGを分配することを可能にする複数のガス出口332を有する。
【0069】
3つのチャンバ31、32、33の出口は、3つの連続する出口の各セットが、第1のチャンバ31の第1の出口312、第2のチャンバ32の第2の出口322、及び第3チャンバの33の第3の出口332を含む必要があるように均一に配置される。
【0070】
図6は、図4の主本体2Aを通り、その中心軸を実質的に通過する垂直断面図を示している。
【0071】
主本体2Aは、溶融ポイントまで粉末を運ぶ複数の粉末搬送ダクト21を有する。各ダクト21は、粉末出口312、322又はガス出口332に面するように設計された入口221を有する。これらのダクト21の1つが図6に表示されている。
【0072】
主本体2Aはまた、粉末をリサイクル容器RA、RBにそれぞれ除去するように構成された2つの粉末リサイクル回路22、23を備える。
【0073】
第1のリサイクル回路22は、図4に示されるように、複数の入口221及び出口222を有する。第2のリサイクル回路23は、図4に示すように、複数の入口231及び出口232を有する。出口222及び232は、それぞれリサイクルコンテナRA、RBに接続することを目的としている。
【0074】
有利には、粉末搬送ダクト21の数、及び各リサイクル回路22、23の入口221、231の数は、粉末出口312、322の数及びガス出口332の数に等しい。搬送ダクト21及びリサイクル回路22、23の入口211、221、231は均一に配置されており、3つの連続する入口の各セットは、搬送ダクトの入口211、第1のリサイクル回路の入口221及び第2のリサイクル回路の入口231を含まなければならない。
【0075】
一例として、分配リング3が本体2に対して回転するとき、以下の構成が可能である。
【0076】
構成1:第1の粉末PAの注入。
-粉末PAの各第1の出口312は、粉末搬送ダクト21に流体接続されている。この場合、構成要素は第1の粉末PAに基づいて製造される。
-各第2の粉末出口322は、第2の粉末PBをリサイクルするために、第2のリサイクル回路23の入口231に接続されている。
-各ガス出口332は、第1の粉末PAの残留物をこの回路からパージするように、第1のリサイクル回路22の入口221に接続され、この残留物は容器RAに送られる。
【0077】
代替の使用法によれば、粉末PBが必要でない場合、その供給を遮断することができる。
【0078】
構成2:第2の粉末PBの注入。
-粉末PBの各第2の出口322は、粉末搬送ダクト21に流体接続されている。この場合、構成要素は第2の粉末PBに基づいて製造される。
-粉末PAの各第1の出口312は、第1の粉末PAをリサイクルするために、第1のリサイクル回路22の入口221に接続されている。
-各ガス出口332は、第2の粉末PBの残留物をこの回路からパージするように、第2のリサイクル回路23の入口231に接続され、この残留物は、容器RBに送られる。
【0079】
代替の使用法によれば、粉末PAが不要な場合、その供給を遮断することができ、回路がパージされるとすぐにリサイクルガスを遮断することができる。
【0080】
構成3:粉末の注入を遮断する。
-各ガス出口332は、粉末搬送ダクト21に流体接続されている。この場合、溶融ポイントでの粉末の注入が遮断される。
-粉末PAの各第1の出口312は、第1の粉末PAをリサイクルするために、第1のリサイクル回路22の入口221に接続することができる。
-各第2の粉末出口322は、第2の粉末PBをリサイクルするために、第2のリサイクル回路23の入口231に接続することができる。
【0081】
図4及び図6に示されるように、主本体2Aはまた、液体入口241と液体出口242との間で液体冷却剤を循環させるように構成された冷却回路24を含むことができる。
【0082】
同様に任意選択的に、主本体は、貫通開口Oにガスのストリームを供給するためのダクト27を含むことができる。このガスのストリームは、粉末が貫通開口部Oに引き戻されるのを防ぐのに役立つ。
【0083】
主本体はまた、溶融ポイントにガスのストリームを供給する供給ダクト28を含むことができる。このガスのストリームは、特に粉末がポイントに過度に狭く集束しないようにすることで、粉末により覆われる領域のサイズを適合化するのに役立つ。これは、レーザービームによる粉末のより良好な溶融に寄与する。
【0084】
図7は、図2から6に示される印刷ヘッド1の垂直断面を示している。この図は、上記のように、分配部材3を備えた本体2のレイアウトを示している。
【0085】
図7の実施形態では、図8にも示されているように、本体2は、円錐形の全体形状であり、3つの部分:
-コーンのベース25及び粉末搬送ダクト21の上部21Aを含む本体2A;
-粉末搬送ダクト21の下部21Bを含む、円錐形の中間本体2B;及び
-中間本体2Bを本体2Aに固定し、円錐26の頂点を形成する外側本体2C
を含む。
【0086】
この有利な構成により、既存のモデルと比較して、印刷ヘッドの保守が簡素化される。
【0087】
図9は、本発明による3D印刷ヘッドの変形形態を示している。90°の肘部を備えたこのヘッド1’は、主に、チューブTB、特に内径が100ミリメートル以上であるチューブの内部を補修するために材料を付加することを目的としている。
【0088】
上記の印刷ヘッド1と比較した主な相違点は、分配部材3の上方に位置する従来技術から知られている接続及び他の構成要素の高さを低減する90°の肘部を有するその形状にある。これらの接続は、主に分配部材3の片側に配置されている。これによりチューブ内への挿入が容易となる。
【0089】
より具体的には、ヘッド1’は、レーザービームLを溶融ポイントに向けて反射することができるミラーMRを備える。
【0090】
図10は、図9の3D印刷ヘッド1’の変形形態を示している。ヘッド1”は更に、ヘッド1”のベース上にクイックカップリングシステムCRを備えている。このクイックカップリングシステムCRにより、ヘッドの迅速な保守及び交換が可能となる。
【0091】
図11は、ヘッド5が、図2のヘッド1の本体2と実質的に同様の本体6を含む第2の実施形態を示している。主な相違点は、分配部材7にある。図11に示す例では、分配リング7は、それぞれ粉末入口711、721を有する2つの分配チャンバ71、72を含む。また、分配リング7は、第1のチャンバ71から離れる第1の粉末PAの割合と第2のチャンバ72から離れる第2の粉末PBの割合とから構成される混合物を粉末搬送ダクト21に送るように構成された混合手段を備える。
【0092】
混合手段は、例えば、一方が第1のチャンバ71に接続され、他方が第2のチャンバ72に接続されて、粉末搬送ダクト21の入口211に向かって収束した(交差収束)カナルのペアを含むことができる。
【0093】
2つの粉末PA、PBの比例計量により、粉末PA及びPBの濃度に応じて可変である、部品の製造が可能になる。
【0094】
この場合、粉末PA及びPBを計量するための、図示されていない装置が、ヘッド5の外側に提供される。
【0095】
図示されていない実施形態では、3つ以上の粉末の比例混合物が使用される。
【0096】
図12及び13は、粉末の混合物の作成を可能にする図11のヘッドの変形形態を示しており、これらの粉末の混合物は、外部ダクト92を通過するため、それほど強く加熱されない。
【0097】
或いは、外部ダクト92のみに粉末が供給される。
【0098】
粉末分配ヘッド8は、本体9及び分配部材10を備える。
【0099】
分配部材10は、前述のヘッド5の分配部材7と実質的に同様である。分配部材10は、粉末の混合物を粉末搬送ダクト21に運ぶことを可能にする混合手段を含まないという点で異なる。
【0100】
分配部材10は、粉末入口1011及び1又は2以上の粉末出口(図13には見えない)を備えた第1の粉末分配チャンバ101を含み、これらの各々は、第1の粉末PAを粉末搬送ダクト21に注入することを意図している。分配部材10はまた、粉末PBのための入口1021及び1又は2以上の粉末出口1022を備えた第2の粉末分配チャンバ102を備える。
【0101】
本体9は、図11を参照して説明した本体6と同様である。本体9は、主本体9A、中間本体9B、外側本体9Cを備える。主本体9Aは更に、出口1022を本体9Aの周辺に接続することを可能にする内部ダクト91を備える。
【0102】
本体9は更に、例えば、主本体の周りにねじ止めされるリングの形態の追加本体9Dを備える。追加本体9Dは、内部ダクト91を介して粉末出口1022と流体連通するように設計された粉末搬送外部ダクト92を備える。このようにして、第2の粉末PBは、外部ダクト92を介して溶融ポイントに運ばれ、混合され冷却されて溶融池に入る。
【符号の説明】
【0103】
5 粉末分配ヘッド
6 本体
7 分配部材
21 粉末搬送ダクト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13