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特許7482886掘削穴支持システムの土留め構造のブレース脚を補強するための方法、及びこの方法の目的のために使用される要素のシステム
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  • 特許-掘削穴支持システムの土留め構造のブレース脚を補強するための方法、及びこの方法の目的のために使用される要素のシステム 図1
  • 特許-掘削穴支持システムの土留め構造のブレース脚を補強するための方法、及びこの方法の目的のために使用される要素のシステム 図2
  • 特許-掘削穴支持システムの土留め構造のブレース脚を補強するための方法、及びこの方法の目的のために使用される要素のシステム 図3
  • 特許-掘削穴支持システムの土留め構造のブレース脚を補強するための方法、及びこの方法の目的のために使用される要素のシステム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】掘削穴支持システムの土留め構造のブレース脚を補強するための方法、及びこの方法の目的のために使用される要素のシステム
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/04 20060101AFI20240507BHJP
   E02D 5/04 20060101ALI20240507BHJP
   E02D 5/12 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
E02D17/04 D
E02D5/04
E02D5/12
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2021548191
(86)(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-06
(86)【国際出願番号】 PL2020000014
(87)【国際公開番号】W WO2020167148
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】P.428941
(32)【優先日】2019-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】PL
(73)【特許権者】
【識別番号】521361143
【氏名又は名称】イ - エスペエス エスペ. ズ オ. オ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クワルチンスキー、パヴェル
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公開第02166774(GB,A)
【文献】特開平08-041876(JP,A)
【文献】特開平10-265200(JP,A)
【文献】特開2004-108143(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/04
E02D 5/04
E02D 5/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレース脚のリム及びスプレッダを有する構成を使用して、掘削穴支持システムの土留め構造においてブレース脚を補強するための方法であって、好適にはテレスコピック式であるスプレッダ(3)が、各ブレース脚(2)の一方の端部に取り付けられ、それにより前記ブレース脚の伸長部を形成し、一方で、延伸ロック構成を有する伸長可能テンションユニット(4)が、同じ前記ブレース脚(2)の他方の端部に取り付けられ、それによりやはり前記ブレース脚の伸長部を形成し、そして、対向する掘削穴シートパイル(1)の間の距離が測定され、且つ上記のように準備された前記ブレース脚(2)の長さが、得られた測定結果に従って予め設定されると、前記ブレース脚(2)は、スプレッダ(3)のところで終端する前記ブレース脚(2)の端部が、掘削穴のコーナーで、テンションユニットのところで終端する次のブレース脚(2)の端部と連結されるように、予め想定される深さのところで掘削穴の内部に配置され、また、すべての前記ブレース脚(2)が、好適にはピン(8)を使用して互いに連結されると、前記ブレース脚(2)は、前記掘削穴のコーナーで前記掘削穴シートパイル(1)に対して押し付けられ、そして、前記スプレッダ(3)が取り付けられた前記ブレース脚(2)の前記端部の位置は、次のブレース脚(2)に取り付けられた前記テンションユニット(4)によって固定されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
スプレッダと2対の対向するブレース脚とを有し、それにより四角形のリムを形成して掘削穴シートパイルを支持する掘削穴支持システムの土留め構造において前記ブレース脚を補強するための要素のシステムであって、好適にはテレスコピック式でありスプレッダ取付ラグ(31)のところで終端するスプレッダ(3)が、各ブレース脚(2)の一方の端部に取り付けられ、それにより前記ブレース脚の伸長部を形成し、一方で、伸長可能テンションユニット(4)が、同じ前記ブレース脚(2)の他方の端部に取り付けられ、それによりやはり前記ブレース脚の伸長部を提供し、前記テンションユニット(4)はI形材(41)を有し、前記I形材(41)は、一方の端部に取り付けられた軸方向配置ラグ(42)と、他方の端部に堅固に取り付けられた保持ブロック(43)であって、中央に配置された直線貫通ブロック孔(44)を特徴とする保持ブロック(43)とを有し、前記軸方向配置ラグ(42)と前記保持ブロック(43)との間で前記I形材の上に着座するスライドパネル(5)があり、前記スライドパネル(5)は、前記I形材(41)の輪郭を越えて突出するベースプレート(51)と、スペーサプレート(52)によって前記ベースプレートの側部に取り付けられた2つの制限プレート(53)とから構成され、前記制限プレート(53)は前記ベースプレート(51)に取り付けられ、前記ベースプレート(51)、前記スペーサプレート(52)及び前記制限プレート(53)は、一体に緊密に固定されると、前記I形材(41)のフランジを緩く取り囲み、さらに、前記ベースプレート(51)に溶接された横方向保持要素(55)があり、前記横方向保持要素(55)は、中央に配置された直線貫通テンション孔(56)と2つの平行な側方ラグ(57)とを有し、前記ブロック孔(44)及び前記テンション孔(56)は、両端部に作用ナット(71)を有するテンションスタッド(7)により貫通されており、前記ブレース脚(2)の前記リムの4つのコーナーの各々において、第1の対のブレース脚のうちの1つの前記ブレース脚(2)に取り付けられた前記スプレッダ(3)が、前記スプレッダ取付ラグ(31)及び前記一対の側方ラグ(57)の重なり合う孔の中に挿入されたピン(8)によって、第2の対のブレース脚のうちの1つのブレース脚(2)に取り付けられた前記テンションユニット(4)と連結されることを特徴とする、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、掘削穴支持システム(excavation support system)の土留め構造のブレース脚を補強する(strutting;突っ張る)ための方法、及びこの方法の目的のために使用される要素のシステムである。
【背景技術】
【0002】
コーナー・ストラットと、さらには掘削穴の壁(excavation wall)に対して垂直であるストラットとを用いた掘削穴支持システムの土留め構造のブレース脚を補強するための既知の方法が存在し、ここでは、土留め構造のシートパイル(矢板)に接触させた状態でブレース脚を保持する力が、約60~70cmの動程を有するテレスコピック式の油圧スプレッダによって、さらには、この油圧スプレッダにも結合される、0.5m、1m、2mなどの長さを有する相互結合式の剛体補強ビームによって発生する。掘削穴支柱のバリエーションによっては、これらの要素が掘削穴の保持壁を支持するブレース脚の間に設置され、これらの要素は、I形材のブレース脚上に着座する取り外し可能なストラット・ラグによりブレース脚に固定される。ストラットが特定のロケーションに配置されるたび、これらの脚部は、これらのラグに溶接された移動ロック要素により、ブレース脚に沿って制御されずに移動しないように固定される。特定の掘削穴を固定することを目的としてこの既知の方法に従ってストラットを使用することは、ストラット及びブレース脚を結合する個別のポイントの間の距離に対応するストラットのそれぞれの長さを最初に決定することからなり、これが、油圧スプレッダのストラットの中で連結されているスライドアウトするピストン(slid out piston)の突出量を調整することにより実施され、ここでは、すべてのストラットがストラット・ラグに結合された後ですべての油圧スプレッダに同時に動作圧力が提供され、動作圧力の作用が掘削穴の壁を形成する土壌に対してのシートパイルの均一な押圧力となる。すべての油圧スプレッダ内の動作圧力を同時に低減することにより、ブレース脚に対してのストラットの押圧力が解放される。当該方法を利用する典型的な解決策が米国特許第4787781号による支柱デバイスの説明で提示されている。
【0003】
この既知の方法の欠点は、同じブレース脚を複数回使用する場合に、新しい移動ロック要素を、以前とは異なる新しいブレース脚のロケーションに溶接することが必要となることである。これにより、古い要素を取り外すとき、ブレース脚表面から塗料を除去するとき、新しいロック要素を溶接するとき、及び新しいロック要素に塗装を行うとき、いくつかの追加の作業を実施することが必要となる。この既知の方法の別の短所は、掘削穴を支柱で支える時間の全体にわたってストラット構造の中に油圧スプレッダを残しておくことが必要となることであり、これにより、コストが増大することに加えて、通常は同じ掘削穴で多数のストラットが使用されることを理由としてスプレッダ・シリンダからオイルが漏洩するリスクも伴い、それにより結果として掘削穴支柱構造の全体が経過的に脆化する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第4787781号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による、ブレース脚を補強するための方法が、ブレース脚のリムの四角形の構成の、掘削穴支持システムの土留め構造に適用される。当該方法の通り、好適にはテレスコピック式であるスプレッダが各ブレース脚の一方の端部に取り付けられ、それによりブレース脚の延伸(すなわち伸長)が可能となり、対して、延伸ロック構造部を有する延伸可能なテンションユニットが同じブレース脚のもう一方の端部に取り付けられ、それによりブレース脚の延伸が可能となる。次いで、対向する掘削穴シートパイル(excavation sheet pile)の間の距離が測定され、上記のように用意されたブレース脚の長さが、測定結果に従って予め設定されると、掘削穴のコーナーにおいてスプレッダのところで終端するブレース脚の端部を、テンションユニットのところで終端する次のブレース脚の端部に結合させるように、ブレース脚は、掘削穴の内部の予め想定される深さのところに配置される。好適にはピンを使用して、すべてのブレース脚が互いに結合されると、ブレース脚は、掘削穴のコーナーにおいてシートパイルに対して押圧され、スプレッダを取り付けたブレース脚の端部の位置が、次のブレース脚に取り付けられるテンションユニットによって固定される。
【0006】
本発明による、ブレース脚を補強することを意図した要素のシステムが、掘削穴シートパイルを支持するブレース脚の四角形のリムの4つのコーナーのうちの1つのコーナーの接続具を構成する。この解決策の重要な点は、スプレッダ取付ラグのところで終端する好適にはテレスコピック式であるスプレッダが、各々の4つのブレースの一方の端部に取り付けられることであり、それによりブレース脚の延伸が確立される。また、テンションユニットが同じブレース脚のもう一方の端部に取り付けられ、これもブレース脚の延伸を可能にする。テンションユニットはI形材を有し、I形材の一方の端部のところに軸方向配置ラグが設置され、反対側には、中央に配置された直線貫通ブロック孔を特徴とする保持ブロックが堅固に設置される。この保持要素の後方では、スライドパネルがI形材の上に着座される。パネルは、I形材の輪郭を越えて突出するベースプレートと、スペーサプレートによってベースプレートの側部に取り付けられる2つの制限プレートとから構成される。制限プレートは2列の設置ボルトによりベースプレートに固定され、そして、ベースプレート、スペーサプレート及び制限プレートが一体に堅固に固定されると、これらのベースプレート、スペーサプレート及び制限プレートは、I形材のフランジを緩く取り囲む。中央に配置される直線貫通テンション孔(tensioning hole)及び2つの平行な側方ラグを有する横方向の保持要素が存在し、ベースプレートに溶接される。ブロック孔及びテンション孔には、両端部に作用ナット(working nut)を有するテンションスタッドが貫通する。ブレース脚のリムの4つの各々のコーナーにおいて、第1の対のブレース脚のうちの1つのブレース脚にスプレッダが取り付けられ、このスプレッダは、第2の対のブレース脚のうちの1つのブレース脚に取り付けられたテンションユニットと結合される。ブレース脚のリムのコーナーにおいてスプレッダとテンションユニットとの間の結合を実現するための要素は、スプレッダ取付ラグ及び一対の側方ラグの重なり合う孔の中に挿入されるピンである。
【0007】
本発明の実例が一連の図に描かれている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】掘削穴シートパイルを支持するブレース脚でなるリムの一部分を示す図である。
図2】ブレース脚でなるリムのコーナーのうちの1つのコーナーを示す拡大図である。
図3】テンションユニットを示す不等角投影図である。
図4】テンションユニットを示す長手方向部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施変形形態の例に示されるように、掘削穴シートパイル1を支持する四角形のリムが、2対の対向するブレース脚2を特徴としている。取付ラグ31のところで終端するテレスコピック式のスプレッダ(延伸器)3が各ブレース脚2の一方の端部に取り付けられ、それによりブレース脚の延伸が可能となる。同じブレース脚2のもう一方の端部にテンションユニット4が取り付けられ、それによりやはりブレース脚を延伸させる。テンションユニット4はI形材41を有し、I形材41の一方の端部のところに軸方向配置ラグ42が設置され、反対側には、中央に位置する直線貫通ブロック孔44を特徴とする保持ブロック43が堅固に(リジッドに)取り付けられている。軸方向配置ラグ42と保持ブロック43との間には、I形材41の上に着座するスライドパネル5が存在する。パネル5は、I形材41の輪郭を越えて突出するベースプレート51と、スペーサプレート52によりベースプレートの側部に取り付けられる2つの制限プレート53とから構成される。制限プレート53は2列の設置ボルト54によりベースプレート51に固定され、そしてベースプレート51、スペーサプレート52及び制限プレート53が一体に緊密に固定された後、これらは、I形材41のフランジを緩く取り囲む。中央に配置される直線貫通テンション孔56と2つの平行な側方ラグ57とを有する横方向保持要素55が存在し、これはベースプレート51に溶接される。ブロック孔44及びテンション孔56には、両端部に作用ナット71を有するテンションスタッド7が貫通している。複数のブレース脚からなるリムの4つのコーナーの各々において、第1の対のブレース脚のうちの1つのブレース脚2にスプレッダ3が取り付けられ、スプレッダ3は、第2の対のブレース脚のうちの1つのブレース脚2に取り付けられたテンションユニット4と結合される。ブレース脚からなるリムのコーナーでのスプレッダ3とテンションユニット4との間の結合は、スプレッダ取付ラグ31及び一対の側方ラグ57の重なり合う孔の中に挿入されるピン8によって提供される。
【0010】
本発明による解決策の使用は、ブレース脚2を掘削穴の内部に設置する前に、掘削穴の複数のコーナーで、対向するシートパイル1の最も突出した表面の間の距離を測定することからなり、ここでは、各々のブレース脚を形成するセグメントの適切な数及びユニット長さを適切に選択して、個々のブレース脚2が、どちらもブレース脚の端部に取り付けられたスプレッダ3及びテンションユニット4と共に組み立てられ、それにより、これらの全長が、測定結果によって確立された範囲内に収まる。この時点で、ブレース脚2を掘削穴の中に配置した後で延伸調整するのを可能にするように、スプレッダ3を伸ばす範囲が予め概略的に設定される。さらに、テンションユニット4内において、スタッド7上のナット71が可能な限り緩められ、それにより、ラグ57を有するパネル5が保持ブロック43から可能な限り離れるように移動させられ得る。4つのすべてのブレース脚2が個々のコーナーにおいて、シートパイル1に適合した適切な高さのところで掘削穴の中に設置されると、スプレッダ3の取付ラグ31及びテンションユニット4の側方ラグ57がピン8を使用して結合され、ここで、ブレース脚2の長さは、スプレッダ3のテレスコピック式のロッドを延伸させることによって掘削穴の壁の寸法に適合するように予め調整される。次いで、テンションスタッド7の長さを低減するための作用ナット71を使用することによって、隣接するブレース脚2の端部が、支持されているシートパイルに対して押圧される。この手順が掘削穴のすべてのコーナーにおいて連続して繰り返され、それにより、ブレース脚2からなるリム全体によってすべてのシートパイル1に加えられる均一分布の圧力が得られる。
【0011】
本発明による解決策の利点は、ブレース脚によりシートパイルに加えられる十分な圧力を得るのに、高い荷重容量及び大きい動程を有する内蔵式の油圧シリンダを特徴とする高価なテレスコピック式のスプレッダを使用することを必要としないことである。この解決策の別の利点は、油圧シリンダの完全性の潜在的な損失により構造的欠陥又は構造崩壊さえ引き起こす可能性があるような従来の解決策の場合のように油圧シリンダを圧縮する代わりに、スタッドにテンションを与える形の荷重容量を有する要素に対して土圧が伝達されることを理由として構造安全性が向上することが保証されることである。市販されており一般的に利用されている解決策を考慮すると、あらゆる事例の油圧シリンダの完全性の損失によって土壌及び地下水が汚染されることになることを強調しておかなければならない。上記に関連して、本発明による解決策はさらに、自然環境の汚染公害(pollution)のリスク、及び潜在的汚染を排除するためのコストを低減するものである。
図1
図2
図3
図4