(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】航空機のターボジェットエンジンのナセルの空気取入口を操作する方法、及び航空機のターボジェットエンジン
(51)【国際特許分類】
B64D 33/02 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B64D33/02
(21)【出願番号】P 2021558559
(86)(22)【出願日】2020-04-08
(86)【国際出願番号】 EP2020060029
(87)【国際公開番号】W WO2020212225
(87)【国際公開日】2020-10-22
【審査請求日】2023-03-22
(32)【優先日】2019-04-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミンク ダニエル-チプリアン
(72)【発明者】
【氏名】ラリア マシュー パトリック ジャン-ルイ
(72)【発明者】
【氏名】シルビン ニコラス ヨセフ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォロティンスカ ヤゴダ アリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ダウトレッペ フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】バインダー アンソニー
(72)【発明者】
【氏名】ルボー エヴァ ジュリー
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】英国特許出願公告第01565212(GB,A)
【文献】特開2017-089651(JP,A)
【文献】特開平10-054299(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0372025(US,A1)
【文献】特開2019-006374(JP,A)
【文献】特開2019-085097(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64D 33/00-33/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部において内側気流(F-INT)が推力段階中に上流から下流に循環し、逆気流(F-INV)が推力逆転段階中に下流から上流に循環する、上流から下流に向いた軸線X沿いに延在する航空機のターボジェットエンジン(1)のナセルの空気取入口(2)を操作する方法であって、
前記空気取入口(2)は、軸線X周りに周方向に延在し、そして、軸線Xに面して前記内側気流(F-INT)及び前記逆気流(F-INV)を誘導するように構成された内壁(21)と、
前記内壁(21)の反対側にあって外側気流(F-EXT)を誘導するように構成された外壁(22)と、を備え、
前記内壁(21)と前記外壁(22)とは、空気取入口リップ(23)によって互いに接続されて環状空洞(20)を形成し、
前記空気取入口リップ(23)は、少なくとも1つの固定式部分、及び少なくとも1つの、第1位置(A)と第2位置(B)との間での可動部分(3、3’、7)を備えており、
前記空気取入口リップ(23)の少なくとも1つの可動部分(3、3’、7)は、前記第1位置(A)にあり、該第1位置において、前記空気取入口リップ(23)は、前記内壁(21)上方の前記内側気流(F-INT)を誘導して推力段階を推進するような空気力学プロファイルを有し、
前記空気取入口リップ(23)は、第1半径方向厚さ(EA)を有しており、
前記方法は、前記ターボジェットエンジン(1)の推力逆転段階中に、前記第2位置(B)において前記可動部分(3、3’、7)を前記固定式部分に対して下流に向かって並進させるステップであって、それにより、前記空気取入口リップ(23)が前記第1半径方向厚さ(EA)よりも小さい第2半径方向厚さ(EB)を備えることで逆推力を促進する、ステップを備える、方法。
【請求項2】
前記空気取入口リップ(23)は、軸線X周りの前記空気取入口(2)の周囲に分布した複数の可動部分(3、3’、7)を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記空気取入口リップ(23)は、軸線X周りに周方向に延在する単一の可動部分(3、3’、7)を備える、請求項1に記載の方法
。
【請求項4】
前記空気取入口(2)は、前記可動部分(3、3’、7)を前記第1位置(A)から前記第2位置(B)まで動かすための少なくとも1つの制御可能な移動式部材(9)を備える、請求項1~
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ターボジェットエンジン(1)は、逆推力を提供するように構成されたファン(11)を備える、請求項1~
4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
内部において内側気流(F-INT)が推力段階中に上流から下流まで循環し、逆気流(F-INV)が推力逆転段階中に下流から上流まで循環する、上流から下流に向いた軸線X沿いに延在する航空機のターボジェットエンジン(1)であって、
前記ターボジェットエンジン(1)は、可変ピッチベーンを備える、逆推力を提供するように構成されたファン(11)を備え、
前記ターボジェットエンジン(1)は、軸線X周りに周方向に延在する空気取入口(2)を備えるナセルを備え、
該空気取入口(2)は、軸線Xに面して前記内側気流(F-INT)及び前記逆気流(F-INV)を誘導するように構成された内壁(21)と、前記内壁(21)の反対側にあって外側気流(F-EXT)を誘導するように構成された外壁(22)と、を備えており、前記内壁(21)と外壁(22)とが、空気取入口リップ(23)によって互いに接続されて環状空洞(20)を形成する、ターボジェットエンジン(1)において、
前記空気取入口リップ(23)は、少なくとも1つの固定式部分、及び
-第1位置(A)において、前記空気取入口リップ(23)が、前記内壁(21)上方の前記内側気流(F-INT)を誘導して推力を促進するような空気力学プロファイルを有し、前記空気取入口リップ(23)が、第1半径方向厚さ(EA)を有する、第1位置(A)と、
-第2位置(B)において、可動部分(3、3’、7)が、前記固定式部分に対して前記第2位置(B)に動かされ、それにより、前記空気取入口リップ(23)が、前記第1半径方向厚さ(EA)よりも小さい第2半径方向厚さ(EB)を備えることで逆推力を促進する、第2位置(B)と、
の間で可動である少なくとも1つの部分(3、3’、7)を備え、
少なくとも1つの可動部分(3、3’、7)は、前記第1位置(A)と前記第2位置(B)の間で並進可能に装着されていることを特徴とする、航空機のターボジェットエンジン(1)
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機ターボジェットエンジンの分野に関し、より具体的には、航空機ターボジェットエンジンナセルの空気取入口を対象にする。
【背景技術】
【0002】
既知の方法において、航空機は、ターボジェットエンジン内で上流から下流まで循環する気流の加速によってそれの推進を可能にするための1つ又は複数のターボジェットエンジンを備えている。
【0003】
図1を参照すると、ターボジェットエンジン100が表されており、該ターボジェットエンジンは、軸線X沿いに延在し、そして、外側シェル102内に軸線X周りに回転可能に装着されたファン101を備えることにより、ターボジェットエンジン100の推力中に、内側気流F-INTと呼ばれる、ターボジェットエンジン100内で上流から下流まで循環する気流を加速する。以下に、用語「上流」及び「下流」は、内側気流F-INTの循環について定義される。
【0004】
既知の方法において、ターボジェットエンジン100は、それの上流側端部に、軸線Xに面する内壁201と、内壁201の反対側の外壁202と、を備える空気取入口200を備えるナセルを備える。壁201、202は、前縁部を備える空気取入口リップ203によって接続されることにより、環状空洞220を形成する。空気取入口200は、上流側気流Fを内壁201によって誘導される内側気流F-INTと、外壁202によって誘導される外側気流F-EXTと、に分離するための空気力学プロファイルを有する。以下において、用語「内側」及び「外側」は、ターボジェットエンジン100の軸線Xに関して半径方向に定義される。
【0005】
特に着陸中に、航空機の制動距離を低減するために、排気における気流の向きを変更して推力逆転段階を可能にするための推力逆転システムをナセル内に統合することが知られている。既知の方法において、逆推力が、ストレートナの下流の2次流れ内にフラップ及び/又はグリルを開放して、気流を半径方向外向き又は上流に導くことによって獲得される。
【0006】
高バイパス比ターボジェットエンジンについて、ナセルは、大きい直径を有し、それで、従来の推力逆転システムを統合することは、これがターボジェットエンジンの重量、全体寸法、及び抗力にとってかなり不利なので望ましくない。
【0007】
推力逆転段階を可能にするために、別の解決策が可変ピッチファン又はVPFを提供することにあり、それにより、ターボジェットエンジンの2次流れ内の気流循環を逆転させ、それで、航空機が着陸中に減速できる逆推力を生成することを可能にする。
【0008】
図2を参照すると、推力逆転段階中に、逆気流F-INVがターボジェットエンジン100内で下流から上流まで、すなわち、
図1の内側気流F-INTとは逆に循環する。より詳細には、逆気流F-INVは、ファンベーン101の頭部と外側シェル102との間で循環する。逆気流F-INVは、軸線Xに対して実質的に軸方向に内壁201によって上流に誘導される。この逆気流F-INVは、次いで上流側気流Fに対抗し、それによって推力逆転を可能にする。
【0009】
実際に、
図2に示すように、逆気流F-INVの部分は、実質的に半径方向に沿って空気取入口200の空気力学プロファイルをバイパスし、それは、空気取入口リップ203の近傍に局所減圧領域Pの発生をもたらす。かかる局所減圧Pは、上流に向かう吸引、すなわち逆推力に対抗する力を発生させる。実際、この現象は、推力逆転段階にかなり有意に影響を及ぼす。
【0010】
本発明は、したがって、推力段階中の、すなわち気流が逆転されないときの上記航空機の性能に影響を及ぼさずに、この現象を抑制して推力逆転段階中のターボジェットエンジンの性能を増強することを目的とする。
【0011】
特許文献1、特許文献2、及び特許文献3からの先行技術において、推力段階中の、特に離陸及び/又は着陸中の空気循環を改善するために並進方向に動かされてもよい上流側部分を備える空気取入口が知られている。
【0012】
特許文献4から、推力段階中の操作条件に適合するための長さ及び厚さにおける柔軟性がある空気取入口が、また知られている。
【0013】
特許文献5から、推力段階中の給気を改善するための薄いナセルを形成するブレードの形式の空気取入口が、また知られている。かかる空気取入口は、推力逆転段階を促進しない。
【0014】
ホバークラフトの関係の薄い分野において、特許文献6から、膨張式部材によって可変である上流側端部形状を有するフェアリングに装着されたプロペラが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【文献】米国特許第5014933号明細書
【文献】米国特許第3652036号明細書
【文献】欧州特許第3421373号明細書
【文献】欧州特許第1992810号明細書
【文献】米国特許出願公開第2014/363276号明細書
【文献】英国特許第1565212号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、内部において内側気流が推力段階中に上流から下流まで循環し、逆気流が推力逆転段階中に下流から上流まで循環する、上流から下流に向いた軸線X沿いに延在する航空機ターボジェットエンジンナセルの空気取入口を操作する方法に関し、空気取入口は、軸線X周りに周方向に延在し、軸線Xに面して内側気流及び逆気流を誘導するように構成された内壁と、内壁の反対側にあって外側気流を誘導するように構成された外壁と、を備え、内壁と外壁とは、空気取入口リップによって接続されて環状空洞を形成し、空気取入口リップは、少なくとも1つの固定式部分、及び、第1位置と第2位置との間で可動である少なくとも1つの部分を備えている。
【0017】
空気取入口リップの少なくとも1つの可動部分が第1位置にあり、空気取入口リップがは、内壁上方の内側気流を誘導して推力段階を促進するような空気力学プロファイルを有し、空気取入口リップが第1半径方向厚さを有するとき、方法は、上記ターボジェットエンジンの推力逆転段階中に、可動部分を固定式部分に対して第2位置まで動かすステップを備え、それにより、空気取入口リップが第1半径方向厚さよりも小さい第2半径方向厚さを有することで逆推力を促進する。
【0018】
本発明によって、空気取入口リップは、推力段階と逆推力段階との間で変更される。有利なことに、推力逆転段階中に、リップの半径方向厚さが低減されて、気流内に不連続部/不規則部を形成することを可能にし、それによって、逆気流が空気取入口リップの形状に密接に追従することを防止し、従来技術の場合のような局所減圧だけでなく逆推力に対抗する力を発生させる。言い換えると、逆気流は、有利なことに、逆推力中に空気取入口リップから分離される。
【0019】
好ましくは、可動部分は剛性である。剛性部分は、弾性エンベロープに対抗する。
【0020】
本発明の一態様に従うと、空気取入口リップは、軸線X周りに空気取入口の周囲に分布した複数の可動部分を備えることにより、抗力を低減する。
【0021】
本発明の一態様に従うと、空気取入口リップは、軸線X周りに周方向に延在する単一の可動部分を備えることにより、空気取入口リップの周囲全体にわたって均一な逆気流分離を確実にする。
【0022】
本発明の一態様に従うと、半径方向内側部分と、半径方向外側部分と、を同じ縦方向面内に備える空気取入口リップによって、上記部分のうちの少なくとも1つは、第1位置と第2位置との間で回転方向に可動である。好ましくは、半径方向内側部分及び半径方向外側部分は、可動である。
【0023】
本発明の一態様に従うと、少なくとも1つの可動部分は、第1位置と第2位置との間で回転可能にヒンジ結合されている。
【0024】
本発明の一態様に従うと、空気取入口リップは、第1半径方向内側部分と、第2半径方向外側部分と、を備え、これらの部分のうちの1つは、第1位置と第2位置との間で回転可能にヒンジ結合されている。したがって、空気取入口リップの一部分だけが動かされて、不連続部を形成する。
【0025】
好ましくは、第1半径方向内側部分と第2半径方向外側部分とは、軸線Xに直交する同じ平面内に、特に同じ角度位置に設置される。
【0026】
本発明の一態様に従うと、空気取入口リップは、半径方向内側部分と、半径方向外側部分と、を備え、両部分は、第1位置と第2位置との間で回転可能にヒンジ結合されている。
【0027】
好ましくは、たわみは、均一で(周囲において一様なたわみ)あってもよく、又は不均一(周囲において異なる程度のたわみ)であってもよい。不均一なたわみの例として、可動部分は、周囲において異なる程度で拡張されてもよい。
【0028】
好ましくは、半径方向内側部分と半径方向外側部分とは、直線の境界線によって分離され、好ましくは、軸線Xと整列させられることにより、逆気流について鋭い不連続部を形成する。
【0029】
本発明の一態様に従うと、空気取入口リップは、第1位置と第2位置との間で回転可能にヒンジ結合されている上流側部分を備えている。
【0030】
本発明の一態様に従うと、少なくとも1つの可動部分は、第1位置と第2位置との間で並進可能に、好ましくは軸線X沿いに装着されている。
【0031】
本発明の一態様に従うと、空気取入口リップは、半径方向内側部分と、半径方向外側部分と、を備え、これら部分のうちの1つは、第1位置と第2位置との間で並進可能に装着されている。それで、空気取入口リップの部分だけが動かされて、不連続部を形成する。
【0032】
好ましくは、半径方向内側部分と半径方向外側部分とは、直線の境界線によって分離され、好ましくは軸線Xと整列させられて、逆気流の循環について鋭い不連続部を形成する。
【0033】
本発明の一態様に従うと、空気取入口は、可動部分を第1位置から第2位置まで動かすための少なくとも1つの制御可能な移動式部材を備える。
【0034】
本発明の一態様に従うと、上記ターボジェットエンジンは、逆推力を提供するように構成されたファンを備える。好ましくは、ファンは可変ピッチベーンを備える。
【0035】
本発明は、また、内部において内側気流が推力段階中に上流から下流まで循環し、逆気流が推力逆転段階中に下流から上流まで循環する、上流から下流に向いた軸線X沿いに延在する航空機ターボジェットエンジンナセルの空気取入口に関し、空気取入口は、軸線X周りに周方向に延在し、そして軸線Xに面して内側気流と逆気流を誘導するように構成された内壁と、内壁の反対側にあって外側気流を誘導するように構成された外壁と、を備え、内壁と外壁とは、空気取入口リップによって接続されて環状空洞を形成し、空気取入口リップは、少なくとも1つの固定式部分、及び、第1位置と第2位置との間で可動である少なくとも1つの部分を備え、第1位置において、空気取入口リップが、内壁上方の内側気流を誘導して推進を促進するための空気力学プロファイルを有し、空気取入口リップが第1半径方向厚さを有する、第1位置と、第2位置において、可動部分が、固定式部分に対して第2位置まで動かされることにより、空気取入口リップが、第1半径方向厚さよりも小さい第2半径方向厚さを有することで逆推力を促進する。
【0036】
本発明は、単に例として与えられた以下の説明を読み、同じ参照符が同様の対象に付与されている、非限定的な例として与えられた以下の添付図面を参照するとよりよく理解されるであろう。
【0037】
留意すべきは、これら図は、発明を実装するために本発明を詳細に開示し、言うまでもなく必要に応じて本発明をより良く規定するのにこれらの図が役立ち得ることである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】先行技術に従う、推力段階中のターボジェットエンジンナセルについての縦断面図の略図である。
【
図2】先行技術に従う、推力逆転段階中のターボジェットエンジンナセルについての縦断面図の略図である。
【
図3】本発明に従う、推力段階中のターボジェットエンジンナセルについての縦断面図の略図である。
【
図4】本発明に従う、推力逆転段階中のターボジェットエンジンナセルについての縦断面図の略図である。
【
図5】可動部分の列を備える空気取入口についての横断面図の略図である。
【
図6】単一の周囲可動部分を備える空気取入口についての横断面図の略図である。
【
図7A】第1位置に従う、並進可能に装着された上側可動部分を備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図7B】第2位置に従う、並進可能に装着された上側可動部分を備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図8A】第1位置に従う、並進可能に装着された内側可動部分を備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図8B】第2位置に従う、並進可能に装着された内側可動部分を備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図9A】第1位置に従う、外向きに回転可能に装着された外側可動部分を備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図9B】第2位置に従う、外向きに回転可能に装着された外側可動部分を備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図9C】第2位置に従う、内向きに回転可能に装着された内側可動部分を備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図10A】第1位置に従う、外向きに回転可能に装着された上流側可動部分を備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図10B】第2位置に従う、外向きに回転可能に装着された上流側可動部分を備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図10C】第2位置に従う、内向きに回転可能に装着された上流側可動部分を備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図11A】第1位置に従う、外向きに回転可能に装着された内側可動部分を備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図11B】第2位置に従う、外向きに回転可能に装着された内側可動部分を備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図11C】第2位置に従う、内向きに回転可能に装着された内側可動部分を備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図12A】第1位置に従う、並進可能に装着された中間可動部分を備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【
図12B】第2位置に従う、並進可能に装着された中間可動部分を備える空気取入口についての縦断面図の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図3及び4を参照すると、本発明に従うターボジェットエンジン1が表されており、該ターボジェットエンジンは、上流から下流に向いた軸線X沿いに延在し、空気流れを画定する外側シェル12内に軸線X周りに回転可能に装着されたファン11を備えている。既知の方式において、ファン11は、推力段階中に、内側気流F-INT(
図3)として知られた、ターボジェットエンジン1内で上流から下流に循環する気流を加速し、推力逆転段階中に、逆気流F-INV(
図4)として知られた、ターボジェットエンジン1内で下流から上流に循環する気流を加速するように構成されている。実際には、逆気流F-INVは、空気流れの半径方向外側部分内で、特に空気流れ半径の1/3にわたって、下流から上流に循環する。内側気流F-INTは、空気流れの半径方向内側部分内で、特に空気流れ半径の2/3にわたって、上流から下流に常に循環する。内側気流F-INTは、十分な流速を保証することにより、ターボジェットエンジンのいかなるポンピング現象も解消する。
【0040】
図3に示すように、ターボジェットエンジン1は、ナセルを備え、該ナセルは、それの上流側端部に、軸線X周りに周方向に延在する空気取入口2を備え、該空気取入口は、軸線Xに面して、内側気流F-INT及び逆気流F-INVを誘導するように構成された内壁21と、内壁21の反対側にあって、外側気流F-EXTを誘導するように構成された外壁22と、を備えている。壁21、22は、空気取入口リップ23によって接続されて、環状空洞20を形成する。
【0041】
この例では、ターボジェットエンジン1は、推力逆転手段、特に、可変ピッチファン11又はVPFを備えることにより、空気流れの半径方向外側部分において気流を逆転させ、それで、着陸中の航空機の減速を可能にする逆推力を生成することを可能にする。
【0042】
本発明に従って、
図3及び4を参照すると、空気取入口リップ23は、少なくとも1つの固定式部分と、第1位置A(
図3)と第2位置B(
図4)との間で可動であるように装着された少なくとも1つの部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7と、を備え、
- 該第1位置Aにおいて、空気取入口リップ23が、内壁21上方の内側気流F-INTを誘導して推力を助長するような空気力学プロファイルを有し、空気取入口リップ23が、第1位置Aにおいて第1半径方向厚さEAを有し、
- 該第2位置Bにおいて、空気取入口リップ23が、第2位置Bにおいて、第1半径方向厚さEAよりも小さい第2半径方向厚さEBを有するように、部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7が、固定式部分に対して動かされる。
【0043】
半径方向厚さEA、EBは、軸線Xに垂直な同じ平面において、特に同じ角度位置において測定される。
【0044】
有利なことに、第1位置Aにおいては、可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7は、空気取入口リップ23の空気力学性能に影響を及ぼさない。推力は、したがって最適である。
【0045】
それの動作の結果として、第2位置Bにおいて、空気取入口リップの半径方向厚さが低減されて、逆気流F-INVの分離Dを増進することを可能にする空気力学プロファイルをもはや有していない。言い換えると、逆気流F-INV全体が、軸線Xに対して実質的に軸方向に循環して上流側気流Fに対抗するように誘導され、その結果、逆推力を生成する。逆推力の性能を低減する、先行技術におけるような強い局所減圧Pが、もはや存在しない。より薄い内側空気取入口リップ23が、空気力学プロファイルを有する厚い空気取入口リップ23とは対照的に分離を助長する。
【0046】
図5を参照すると、複数の可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7を備える空気取入口リップ23が表されており、該可動部分は、軸線X周りの空気取入口2の周囲に分布していることにより、空気取入口2の周囲において一様に改善された推力逆転段階を可能にする。好ましくは、
図5を参照すると、可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7の方位長さは、それの表面が小さい全体寸法で、薄く、容易に拡張可能であるようなものである。
【0047】
好ましくは、2つの連続した可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7の間の方位間隔13が十分に小さいので、可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7は、重複せずに延在されたときに、最大方位表面領域をカバーする。好ましくは、可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7の数は、空気取入口2の周囲全体にわたる分離Dを可能にするのに十分に大きく、並びに重量及び抗力を低減するのに十分に小さい。
【0048】
可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7を内向きに拡張するとき、可動部分の形状及び数は、重複を伴わずに、周囲方向の均一な又は不均一な拡張を可能にするように適合される。可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7の外向き拡張は、より制限が少ない。
【0049】
好ましくは、可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7は、列状に編成され、それぞれの列は、軸線Xから同じ半径方向距離のところに設置された複数の可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7を備えている。例として、単一の列が、
図5に表されているけれども、言うまでもなく、列の数はより多くてもよい。いくつかの列の使用、特に、千鳥状の列の使用は、維持が容易である互いに間隔があいた可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7を用いながら、空気取入口2の周囲沿いに実質的に連続したたわみを達成することを可能にする。
【0050】
望ましくは、
図5を参照すると、第1位置Aにおいて、パラメータL3が可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7の半径方向厚さであり、パラメータL2が空気取入口2の半径方向厚さである場合の比L3/L2は、5と1との間にある。
【0051】
その代替として、
図6を参照すると、空気取入口2は、軸線X周りに周囲方向に延在する単一の可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7を備える。かかる可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7は、空気取入口2の周囲における推力逆転中の規則的なたわみを保証する。言うまでもなく、たわみは、また、逆気流F-INVを指向するために周囲において不均一であってもよい。
【0052】
本発明は、異なる実施形態を説明するときによりよく理解されるであろう。本発明の異なる態様は、いくつかの実施形態に従って以下で説明され、連続して及び単独で例として記載される。言うまでもなく、本発明は、これらの実施形態に限定されないが、記載された実施形態の様々な技術的な特性のいずれかの可能な組合せを包含する。
【0053】
図7A及び7Bに示す第1実施形態に従うと、特に軸線Xに平行な方向に沿って並進可能である可動部分3が表されている。それでもやはり、言うまでもなく並進軸線は、軸線Xに対して傾斜していてもよい。
【0054】
図7A及び7Bに示すように、空気取入口リップ23は、半径方向内側部分31と、半径方向外側部分32と、を備える。この例では、半径方向内側部分31は、固定式であり、一方、半径方向外側部分32は、可動式であって可動部分3を形成する。この実施形態では、可動部分3は、空気取入口リップ23の半径方向厚さEAの50%を占める。好ましくは、可動部分3は、空気取入口リップ23の半径方向厚さEAの5%から70%までを占める。可動部分3は、十分に強固であることにより、操作中の力に耐えることを可能にする。
【0055】
半径方向内側部分31と半径方向外側部分32とは、好ましくは軸線Xと整列した、直線の境界線によって分離されることにより、逆気流F-INVの循環に対して鋭い不連続を形成する。
【0056】
この例では、空気取入口2は、制御可能な移動式部材9を備えることにより、可動部分3を第1位置Aから第2位置Bまで並進方向に動かす。例として、この制御可能な移動式部材9は、計算機からの制御コマンドを受け取ることの結果としての動作を可能にするため、油圧、電気、又は別の作動装置の形式のものである。好ましくは、制御可能な移動式部材9は、また、第2位置Bから第1位置Aまでの可動部分3の並進動作を可能にする。空気取入口2は、1つ又は複数の制御可能な移動式部材9を備えてもよい。
【0057】
依然として
図7A及び7Bを参照すると、制御可能な移動式部材9は、外側可動部分3、32を下流に動かされることにより、空気取入口リップ23の半径方向厚さを低減することを可能にする。第2位置B(
図7B)において、空気取入口リップ23の半径方向厚さEBは、第1位置Aにおける半径方向厚さEA(
図7A)と比較して半分まで低減される。第2位置Bにおいて、空洞CCが、それの第1位置Aにおける可動部分3の代わりに形成される。
【0058】
図7Bに示すように、より薄い内側空気取入口リップ23は、逆気流F-INVが内壁21から外壁22まで循環するときに、逆気流F-INVの分離Dを生じさせる。その分離Dのために、逆気流F-INVは、空気取入口リップ23の形状に密接には追従せず、それから間隔をあけており、それが、先行技術の場合のような強い局所減圧の形成を防止する。言い換えると、推力逆転段階中の性能が、増強される。
【0059】
図8A及び8Bを参照すると、別の代替の実施形態が表されている。明瞭さのために、相似する参照番号が用いられれて、同じ又は類似の機能又は構造の要素を示している。
【0060】
図8A及び8Bを参照すると、半径方向外側部分32’は、固定式であり、一方、半径方向内側部分31’は、可動式であって可動部分3’を形成する。
図8Bに示すように、より薄い内側空気取入口リップ23は、逆気流F-INVが内壁21から外壁22まで循環するときに逆気流F-INVの分離Dを生じさせる。それの分離Dに起因して、逆気流F-INVは、空気取入口リップ23の形状に密接には追従せずにそれから間隔をあけており、それで、先行技術の場合のような強い局所減圧の形成を防止する。
【0061】
第2実施形態に従って、
図9A及び9Bを参照すると、可動部分4が表されており、可動部分4は、それが半径方向外向きに動くのを可能にするように軸線Xに直交する方位軸線周りに回転方向に動かされる。
【0062】
図9A及び9Bに示すように、空気取入口リップ23は、半径方向内側部分41と、半径方向外側部分42と、を備える。この例では、半径方向内側部分41は、固定式であり、一方、半径方向外側部分42は、可動式であって可動部分4を形成する。可動部分4は、方位軸線を有するヒンジ43によって固定式部分41にヒンジ結合されており、該ヒンジは、環状空洞20内の、空気取入口リップ23の上流側端部の下流、すなわち、両方の壁21、22の間に位置している。この実施形態では、可動部分4は、空気取入口リップ23の半径方向厚さの50%を占める。好ましくは、可動部分4は、空気取入口リップ23の半径方向厚さEAの5%から70%までを占める。半径方向内側部分41と半径方向外側部分42とは、好ましくは、軸線Xと整列した直線の境界線によって分離されることにより、逆気流F-INVの循環に対して鋭い不連続を形成する。
【0063】
上記のものに相似した方式で、空気取入口2は、制御可能な移動式部材9を備えることにより、可動部分4を第1位置Aから第2位置Bまで回転方向に動かす。好ましくは、制御可能な移動式部材9は、また、第2位置Bから第1位置Aまで可動部分4を動かすためのものである。空気取入口2は、1つ又は複数の制御可能な移動式部材9を含んでもよい。
【0064】
依然として
図9A及び9Bを参照すると、制御可能な移動式部材9は、外側可動部分4、42が下流に半径方向外向きに動くことを可能にすることにより、空気取入口リップ23の半径方向厚さを低減する。第2位置Bにおいて、空気取入口リップ23の半径方向厚さEBは、第1位置Aにおける半径方向厚さEAと比較して半分まで低減される。第2位置Bにおいて、空洞CCは、第1位置Aにおける可動部分4の代わりに形成される。
【0065】
図9Bに示すように、より薄い内側空気取入口リップ23は、逆気流F-INVが内壁21から外壁22まで循環するとき、逆気流F-INVの分離Dを生じさせる。それの分離Dに起因して、逆気流F-INVは、空気取入口リップ23の形状に密接に追従せずにそれから間隔をあけており、それで、先行技術の場合のような強い局所減圧の形成を防止する。言い換えると、推力逆転中の性能が増強される。
【0066】
図9Cを参照すると、第2実施形態の一代替実施形態が表されている。明瞭のために、相似の参照番号が用いられれて、同じ又は類似の機能又は構造の要素を示している。
【0067】
その代替として、
図9Cを参照すると、半径方向外側部分42’は、固定式であり、一方、半径方向内側部分41’は、可動式であって可動部分4’を形成する。制御可能な移動式部材9は、内側可動部分4’、41’が下流に半径方向内向きに動かされて、半径方向厚さを低減することを可能にする。有利なことに、第2位置Bにおいて、可動部分4’は、ファン11によって加速された逆気流F-INV内に拡張され、それで、強い局所減圧の形成を防止する。
【0068】
図9Cに示すように、より薄い内側空気取入口リップ23は、逆気流F-INVが内壁21から外壁22まで循環するとき、逆気流F-INVの分離Dを生じさせる。その分離Dに起因して、逆気流F-INVは、空気取入口リップ23の形状に密接には追従せずにそれから間隔をあけており、それで、先行技術の場合のような強い局所減圧の形成を防止する。
【0069】
第3実施形態に従って、
図10A及び10Bを参照すると、上流側可動部分5が示されており、該上流側可動部分5は、これが半径方向外向きに動くことを可能にするように軸線Xに直交する方位軸線周りに回転方向に動かされる。
【0070】
図10A及び10Bに示すように、空気取入口リップ23は、固定式下流側部分51と、可動部分5を形成する上流側可動部分52と、を備える。可動部分5は、方位軸線を有するヒンジ53によって固定式下流側部分51にヒンジ結合されており、該ヒンジは、
図10Aに示すように、外壁22にある空気取入口リップ23の上流側端部の下流に設置されている。この実施形態では、可動部分5は、空気取入口リップ23の部分を形成する上流側凸表面57と、下流側凹表面58と、を備える。下流側凹表面58は、固定式下流側部分51と形状適合した態様で協働し、該固定式下流側部分は、
図10Bに示すような上流側凸表面59を有する。第2位置Bにおいて、空洞CCは、それの第1位置Aにおける可動部分5の代わりに形成される。
【0071】
上記と同様に、空気取入口2は、可動部分5を第1位置Aから第2位置Bまで回転させるための制御可能な移動式部材9を備える。好ましくは、制御可能な移動式部材9は、また、可動部分5が第2位置Bから第1位置Aまで動かされることを可能にする。空気取入口2は、1つ又は複数の制御可能な移動式部材9を備えてもよい。
【0072】
依然として
図10A及び10Bを参照すると、制御可能な移動式部材9は、上流側可動部分5が半径方向厚さを低減するために半径方向外向きに下流側に動かされることを可能にする。第2位置Bにおいて、空気取入口リップ23の半径方向厚さEBは、下流側固定式部分51の半径方向厚さに一致する。
【0073】
図10Bに示すように、より薄い内側空気取入口リップ23は、逆気流F-INVが内壁21から外壁22まで循環するとき、逆気流F-INVの分離Dを生じさせる。その分離Dに起因して、逆気流F-INVは、空気取入口リップ23の形状に密接に追従せずにそれから間隔をあけており、それで、先行技術の場合のような強い局所減圧の生成を防止する。言い換えると、推力逆転中の性能が、増強される。実際に、逆気流F-INVは、固定式部分51の上流側凸表面59及び可動部分5と接触するようになり、それらのプロファイル全体は、空気力学的ではなく、分離Dを生じさせる。
【0074】
図10Cを参照すると、第3実施形態の一代替実施形態が表されている。明瞭のために、相似の参照番号が用いられて、同じ又は類似の機能又は構造の要素を示す。
【0075】
その代替として、
図10Cを参照すると、可動部分5’は、方位軸線を有するヒンジ53’によって固定式下流側部分51’にヒンジ結合されており、該ヒンジは、内壁21に、空気取入口リップ23の上流側端部の下流に設置されている。制御可能な移動式部材9は、上流側可動部分52’が下流に半径方向内向きに動かされて半径方向厚さを低減することを可能にする。逆気流F-INVの循環内に位置する可動部分5’は、分離Dを助長する。好ましくは、可動部分5’が、複数の列に分布しているか、又は同じ列の可動部分5’が、重複している。
【0076】
図10Cに示すように、より薄い内側空気取入口リップ23は、逆気流F-INVが内壁21から外壁22まで循環するとき、逆気流F-INVの分離Dを生じさせる。それの分離Dに起因して、逆気流F-INVは、空気取入口リップ23の形状に密接に追従せずにそれから間隔をあけており、それで、先行技術の場合のような強い局所減圧の形成を防止する。
【0077】
第4実施形態に従って、
図11A及び11Bを参照すると、内壁21の延在部として延在する内側可動部分6が示されており、該内側可動部分6は、可動部分6が環状空洞20内へと半径方向外向きに動くことを可能にするように軸線Xに直交する方位軸線周りに回転方向に動かされる。
【0078】
図11A及び11Bに示すように、空気取入口リップ23は、固定式半径方向外側部分62と、可動部分6を形成する可動半径方向内側部分61と、を備える。可動部分6は、方位軸線を有するヒンジ63によって固定式部分62にヒンジ結合されており、該ヒンジは、
図11Aに示すように、空気取入口リップ23の上流側端部に位置している。この実施形態では、可動部分6は、角度付きフラップの形式のものであり、該フラップは、環状空洞20内側で第2位置Bまで、すなわち、内側移動に従って動かされる。好ましくは、空気取入口リップ23は、可動カバー部材(図示せず)によって保護されている、環状空洞20へのアクセス開口を備えており、該可動カバー部材は、一方で、第2位置Bからの移動中に環状空洞20内に可動部分6が通過すること、他方で、可動部分6が環状空洞20内に設置されたときにアクセス開口を閉鎖することを可能にするように構成されている。これは、有利なことに環状空洞20内での逆気流F-INVの循環を防止することを可能にする。
【0079】
好ましくは、可動カバー部材は、1つ又は複数の可動部分を備えるフラップの形式のものである。もちろん、カバー部材は、様々な形状のものであってもよい。
【0080】
上記と同様に、空気取入口2は、可動部分6を第1位置Aから第2位置Bまで回転方向に動かすための制御可能な移動式部材9を備える。好ましくは、制御可能な移動式部材9は、また、第2位置Bから第1位置Aまで可動部分6を動かすためのものである。空気取入口2は、1つ又は複数の制御可能な移動式部材9を含んでもよい。好ましくは、制御可能な移動式部材9は、また、カバー部材に作用してもよい。
【0081】
依然として
図11A及び11Bを参照すると、制御可能な移動式部材9は、可動部分6、61が下流に半径方向外向きに動かされて、空気取入口リップ23の半径方向厚さを低減することを可能にする。可動部分6、6’は、環状空洞20内へと後退させられる。第2位置Bにおいて、空気取入口リップ23の半径方向厚さEBは、半径方向外側固定式部分62の半径方向厚さに一致する。第2位置Bにおいて、空洞CCが、それの第1位置Aにおける可動部分6の代わりに形成される。
【0082】
図11Bに示すように、より薄い内側空気取入口リップ23が、逆気流F-INVが内壁21から外壁22まで循環するとき、逆気流F-INVの分離Dを生じさせる。その分離Dに起因して、逆気流F-INVは、空気取入口リップ23の形状に密接には追従せずにそれから間隔をあけており、それで、先行技術の場合のような強い局所減圧の形成を防止する。言い換えると、推力逆転中の性能が増強される。
【0083】
図11Cを参照すると、第4実施形態に代替する別のものが表されている。明瞭のために、相似の参照番号が用いられて、同じ又は相似の機能又は構造の要素を示す。
【0084】
その代替として、
図11Cを参照すると、外壁22の延在部として延在する外側可動部分6’、62が表されており、該外側可動部分は、可動部分6’が環状空洞20内へと半径方向内向きに動くことを可能にするように軸線Xに直交する方位軸線沿いに回転方向に動かされる。この実施形態では、外側可動部分6’は、環状空洞20内で重複して、空気取入口2の周囲をカバーする。その代替として、複数の列の可動部分6’が提供されてもよく該可動部分6’、又は軸線Xに直交する平面に対して傾いた回転軸線を連続的に制御してもよい。
【0085】
図11Cに示すように、より薄い内側空気取入口リップ23は、逆気流F-INVが内壁21から外壁22まで循環するとき、逆気流F-INVの分離Dを生じさせる。それの分離Dに起因して、逆気流F-INVは、空気取入口リップ23の形状に密接には追従せずにそれから間隔をあけており、それで、先行技術の場合のような強い局所減圧の形成を防止する。
【0086】
第5実施形態に従って、
図12A及び12Bを参照すると、可動中間部分7が表されており、該可動中間部分は、軸線Xに平行な方向に沿って並進方向に動かされる。それでもやはり、言うまでもなく、並進軸線は、軸線Xに対して傾斜していてもよい。
【0087】
図12A及び12Bに示すように、空気取入口リップ23は、半径方向内側部分71と、中間部分73と、半径方向外側部分72と、を備える。この例では、半径方向内側部分71及び半径方向外側部分73は、固定式であり、一方、中間部分73は可動式であって可動部分7を形成する。この実施形態では、可動部分7は、空気取入口リップ23の半径方向厚さのうちの30%から90%までを占める。好ましくは、空気取入口リップ23の上流側端部は、中間部分73に属している。
【0088】
上記と同様に、空気取入口2は、中間部分73を第1位置Aから第2位置Bまで並進方向に動かすための制御可能な移動式部材9を備える。好ましくは、制御可能な移動式部材9が、また用いられて、可動部分7を第2位置Bから第1位置Aまで動かす。空気取入口2は、1つ又は複数の制御可能な移動式部材9を含んでもよい。
【0089】
依然として
図12Aと12Bを参照すると、制御可能な移動式部材9は、中間部分7、73が下流に動かされて、空気取入口リップ23の半径方向厚さを低減することを可能にする。第2位置Bにおいて、空気取入口リップ23の半径方向厚さEBは、半径方向内側部分71及び半径方向外側部分72の半径方向厚さEB1、EB2の合計に一致する。第2位置Bにおいて、空洞CCは、それの第1位置Aにおける可動部分7の代わりに形成され、それで、有利なことに、半径方向内側部分71と半径方向外側部分72との間に不連続部を形成して、分離Dを改善する。
【0090】
好ましくは、中間部分73は、周方向に延在し、好ましくは、実質的に円柱形部分の形式である。
【0091】
図12Bに示すように、中間不連続部を有するより薄い内側空気取入口リップ23は、逆気流F-INVが内壁21から外壁22まで循環するとき、逆気流F-INVの大きい分離Dを生じさせる。それの分離Dに起因して、逆気流F-INVは、空気取入口リップ23の形状に密接には追従せずにそれから間隔をあけており、それで、先行技術の場合のような強い局所減圧の形成を防止する。言い換えると、推力逆転中の性能が、増強される。
【0092】
上記された本発明に従う空気取入口2を操作するための方法が、以下で説明される。明瞭のために、単一の可動部分の動作が記述されているけれども、言うまでもなく、複数の可動部分が、付随して又は連続して動かされてもよい。
【0093】
推力段階中に、ファン11は、内側気流F-INTが加速されることを可能にし、該内側気流F-INTは、推力を助長する空気力学プロファイルを有する空気取入口2によって誘導される。可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7は、ターボジェットエンジン1の推力中、第1位置Aにあり、それにより、空気取入口2は、気流を誘導するような空気力学プロファイルを有する。空気取入口リップ23は、第1位置Aにおいて第1半径方向厚さEAを有する。
【0094】
上記ターボジェットエンジン1の推力逆転段階中、特に、ファンベーン11のピッチの変更に続いて、方法は、可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7を第1位置Aから第2位置Bまで動かすステップを含み、該ステップ中に、可動部分は、第2位置Bにおける固定式部分に対して動かされることにより、空気取入口リップ23は、第1半径方向厚さEAよりも小さい第2半径方向厚さEBを有する。逆気流F-INVの分離は、逆推力段階中に厚さが低減された空気取入口リップによって助長される。
【0095】
有利なことに、この動作ステップは、内側気流F-INTが不変状態に保持されている推力段階中、及び可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7が内壁21からの逆気流F-INVの分離Dを生じさせる推力逆転段階中の両方において、航空機に良好な性能を提供する。
【0096】
本発明の一態様に従うと、可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7の一部分だけが、動作ステップ中に動かされることにより、異なる操作(制動等)条件に適合し、空気取入口2の周囲において程度の異なる分離を達成する。逆気流は、より良好に制御されることにより、所望の逆推力を達成する。同様に、同等の効果を達成するために、可動部分は、異なる程度に拡張されてもよい。
【0097】
本発明によって、ターボジェットエンジン1の性能は、逆推力段階中に有意に改善され、一方、推力段階中に従来の性能を維持する。実際、可動部分3、3’、4、4’、5、5’、6、6’、7は、第2位置Bにおいて、内壁21からの逆気流F-INVの分離Dを生じさせ、該分離は、逆気流F-INV全体が上流側気流Fと反対の意味を有する実質的に軸方向に向けられることを可能にし、その結果、重量及び抗力の低減を生じさせながら、推力逆転を生成する。第1位置Aにおいて、空気取入口2は、有利なことにそれの空気力学プロファイルを維持する。