(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】内燃エンジンコントローラー
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
F02D45/00 372
F02D45/00 376
(21)【出願番号】P 2021561009
(86)(22)【出願日】2020-04-24
(86)【国際出願番号】 EP2020025187
(87)【国際公開番号】W WO2020216472
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2023-04-11
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501169419
【氏名又は名称】パーキンズ エンジンズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Perkins Engines Company Limited
【住所又は居所原語表記】Eastfield Peterborough PE1 5FQ United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムズ、ギャビン
(72)【発明者】
【氏名】ラドロー、ピーター
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-146290(JP,A)
【文献】特開2014-026516(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第01340888(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃エンジンコントローラーであって、
複数の制御マップを格納するように構成されるメモリーであって、各制御マップが内燃エンジンコントローラーへの複数の入力変数に基づいて内燃エンジンのアクチュエーターを制御するためのアクチュエーター設定点の超曲面を画定する、メモリーと、
プロセッサーであって、
前記複数の入力変数によって画定される前記それぞれの制御マップの前記超曲面上の位置に基づいて、アクチュエーター設定点を各アクチュエーターに出力するように構成される、エンジン設定点モジュールと、
前記複数の入力変数によって画定される前記位置で前記制御マップの前記超曲面のうちの一つまたは複数を最適化するように構成されるマップ更新モジュールであって、
(i) アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットを選択するために、前記制御マップの初期アクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルを実行し、前記内燃エンジンの性能モデルに従って、アクチュエーター設定点の候補グループの前記第一のセットを評価し、アクチュエーター設定点の候補グループの前記第一のセットのそれぞれに関連付けられるコストを計算する
第1のステップ、
(ii) アクチュエーター設定点の候補グループの前記第一のセットに関連付けられる前記コストに基づいて、第一のコスト最小値に及ぶ、前記初期アクチュエーター設定点検索空間内の検索ラインを決定する
第2のステップ、
(iii) 前記検索ラインに沿ってライン検索を実行して、前記第一のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点の最適化されたグループを計算する
第3のステップを実行することによって、アクチュエーター設定点の最適化されたグループを検索するように構成されるオプティマイザーモジュールを含む、マップ更新モジュールとを含む、プロセッサーとを含み、
前記マップ更新モジュールが、アクチュエーター設定点の前記最適化されたグループに基づいて、前記複数の入力変数によって画定される前記位置で、前記一つまたは複数の超曲面を更新する、内燃エンジンコントローラー。
【請求項2】
前記オプティマイザーモジュールが、
(iv) アクチュエーター設定点の候補グループの第二のセットを選択するために、制約されたアクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルを実行し、前記制約されたアクチュエーター設定点検索空間が、アクチュエーター設定点の前記最適化されたグループに基づいて制約され、および前記内燃エンジンの性能モデルに従って、アクチュエーター設定点の候補グループの前記第二のセットを評価し、アクチュエーター設定点の候補グループの前記第二のセットのそれぞれに関連付けられるコストを計算する
第4のステップ、
(v) アクチュエーター設定点の候補グループの前記第二のセットに関連付けられる前記コストに基づいて、第二のコスト最小値に及ぶ前記制約されたアクチュエーター設定点検索空間におけるさらなる検索ラインを決定する
第5のステップ、
(vi) 前記さらなる検索ラインに沿ってライン検索を実行して、前記第二のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点のグループを計算する
第6のステップ、
(vii) コスト削減が達成された場合に、前記第二のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点の前記グループに基づいて、アクチュエーター設定点の前記最適化されたグループを更新する
第7のステップを実行することによって、アクチュエーター設定点の最適化されたグループを検索するようにさら
に構成される、請求項1に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項3】
前記オプティマイザーモジュールが、
前記第4のステップ、前記第5のステップ、前記第6のステップ、および
前記第7のステップの実行を少なくとも一回繰り返すように構成される、請求項2に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項4】
前記オプティマイザーモジュールが、
アクチュエーター設定点の前記最適化されたグループを更新する際に達成される前記コスト削減が、収束限界を下回る、および/または
前記検索を実行するのにかかる時間が、時間制限を超えるまで
前記第4のステップ、前記第5のステップ、前記第6のステップ、および
前記第7のステップの実行を繰り返すように構成される、請求項3に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項5】
アクチュエーター設定点の一つの候補グループが、前記複数の入力変数によって画定される各超曲面上の前記位置に対応する、請求項1~4のいずれか一項に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項6】
前記マップ更新モジュールが、
アクチュエーター設定点の前記最適化されたグループと、前記複数の入力変数によって画定される前記制御マップの各超曲面上の前記位置に対応するアクチュエーター設定点の前記候補グループに関連付けられる前記コストとの間のコスト差を決定することによって、前記制御マップの前記超曲面を最適化するように構成され、
前記コスト差が更新閾値よりも小さい場合、前記制御マップの前記超曲面は更新されない、請求項5に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項7】
前記初期アクチュエーター設定点検索空間内の前記検索ライ
ンが、最低コストを有するアクチュエーター設定点の前記二つの候補グループに基づいて計算される、請求項
1に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項8】
前記初期アクチュエーター設定点検索空間内の前記検索ラインおよび/または前記制約されたアクチュエーター設定点検索空間内の前記さらなる検索ラインが、最低コストを有するアクチュエーター設定点の前記二つの候補グループに基づいて計算される、請求項2~6のいずれか一項に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項9】
前記初期アクチュエーター設定点検索空間の前記層状サンプ
ルが、前記それぞれのアクチュエーター設定点検索空間のラテンハイパーキューブサンプルである、請求項
1、または7に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項10】
前記初期アクチュエーター設定点検索空間の前記層状サンプルおよび/または前記制約されたアクチュエーター設定点検索空間の前記層状サンプルが、前記それぞれのアクチュエーター設定点検索空間のラテンハイパーキューブサンプルである、請求項2~6、または8のいずれか一項に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項11】
前記初期アクチュエーター設定点検索空間が、前記制御マップの各々の上限および下限アクチュエーター制約によって画定される、請求項1~
10のいずれか一項に記載の内燃エンジンコントローラー。
【請求項12】
内燃エンジンを制御する方法であって、
複数の制御マップを提供することであって、各制御マップが内燃エンジンコントローラーへの複数の入力変数に基づいて、内燃エンジンのアクチュエーターを制御するためのアクチュエーター設定点の超曲面を画定するように、提供することと、
前記複数の入力変数によって画定される前記それぞれの制御マップの前記超曲面上の位置に基づいて、アクチュエーター設定点を各アクチュエーターに出力することと、
(i) アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットを選択するために、前記制御マップの初期アクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルを実行し、前記内燃エンジンの性能モデルに従って、アクチュエーター設定点の候補グループの前記第一のセットを評価し、アクチュエーター設定点の候補グループの前記第一のセットのそれぞれに関連付けられるコストを計算する
第1のステップと、
(ii) アクチュエーター設定点の候補グループの前記第一のセットに関連付けられる前記コストに基づいて、第一のコスト最小値に及ぶ、前記初期アクチュエーター設定点検索空間内の検索ラインを決定する
第2のステップと、
(iii) 前記検索ラインに沿ってライン検索を実行して、前記第一のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点の最適化されたグループを計算する
第3のステップとを含む、アクチュエーター設定点の最適化されたグループを検索すること、および
アクチュエーター設定点の前記最適化されたグループに基づいて、前記複数の入力変数によって画定される前記位置で前記一つまたは複数の超曲面を更新することによって、前記複数の入力変数によって画定される前記位置で、前記制御マップの前記超曲面のうちの一つまたは複数を最適化することとを含む、方法。
【請求項13】
アクチュエーター設定点の最適化されたグループを検索することが、
(iv) アクチュエーター設定点の候補グループの第二のセットを選択するために、制約されたアクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルを実行し、前記制約されたアクチュエーター設定点検索空間が、アクチュエーター設定点の前記最適化されたグループに基づいて制約され、および前記内燃エンジンの性能モデルに従って、アクチュエーター設定点の候補グループの前記第二のセットを評価し、アクチュエーター設定点の候補グループの前記第二のセットのそれぞれに関連付けられるコストを計算すること
第4のステップと、
(v) アクチュエーター設定点の候補グループの前記第二のセットに関連付けられる前記コストに基づいて、第二のコスト最小値に及ぶ前記制約されたアクチュエーター設定点検索空間におけるさらなる検索ラインを決定する
第5のステップと、
(vi) 前記さらなる検索ラインに沿ってライン検索を実行して、前記第二のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点のグループを計算する
第6のステップと、
(vii) コスト削減が達成された場合に、前記第二のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点の前記グループに基づいて、アクチュエーター設定点の前記最適化されたグループを更新する
第7のステップとをさらに含む、請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
前記第4のステップ、前記第5のステップ、前記第6のステップ、および
前記第7のステップが少なくとも1回繰り返される、請求項
13に記載の方法。
【請求項15】
前記第4のステップ、前記第5のステップ、前記第6のステップ、および
前記第7のステップが、
アクチュエーター設定点の前記最適化されたグループを更新する際に達成される前記コスト削減が、収束限界を下回る、および/または
前記検索を実行するのにかかる時間が、時間制限を超えるまで繰り返される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
アクチュエーター設定点の一つの候補グループが、前記複数の入力変数によって画定される各超曲面上の前記位置に対応する、請求項
12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記制御マップの前記超曲面を前記最適化することが、
アクチュエーター設定点の前記最適化されたグループに関連付けられる前記コストと、前記複数の入力変数によって画定される前記制御マップの各超曲面上の前記位置に対応するアクチュエーター設定点の前記候補グループに関連付けられる前記コストとの間のコスト差を決定することを含み、
前記コスト差が更新閾値よりも小さい場合、前記制御マップの前記超曲面は更新されない、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記初期アクチュエーター設定点検索空間内の前記検索ライ
ンが、最低コストを有するアクチュエーター設定点の前記二つの候補グループに基づいて計算される、請求項
12に記載の方法。
【請求項19】
前記初期アクチュエーター設定点検索空間内の前記検索ラインおよび/または前記制約されたアクチュエーター設定点検索空間内の前記さらなる検索ラインが、最低コストを有するアクチュエーター設定点の前記二つの候補グループに基づいて計算される、請求項13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記初期アクチュエーター設定点検索空間の前記層状サンプ
ルが、前記それぞれのアクチュエーター設定点検索空間のラテンハイパーキューブサンプルである、請求項
12または18に記載の方法。
【請求項21】
前記初期アクチュエーター設定点検索空間の前記層状サンプルおよび/または前記制約されたアクチュエーター設定点検索空間の前記層状サンプルが、前記それぞれのアクチュエーター設定点検索空間のラテンハイパーキューブサンプルである、請求項13~17、または19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記初期アクチュエーター設定点検索空間が、前記制御マップの各々の上限および下限アクチュエーター制約によって画定される、請求項
12~21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃エンジンの制御に関する。より具体的には、本開示は、内燃エンジンのアクチュエーターを制御するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃エンジンは、多くの場合、内燃エンジンの排気からの排出物を管理するための一つまたは複数のシステムを含む。例えば、内燃エンジンは多くの場合、内燃エンジンによって生成される排気ガスを処理するための後処理システムを含む。
【0003】
典型的な後処理システムは、多くのセンサーおよび(制御)アクチュエーターを含み得る。さらなるセンサーおよびアクチュエーターは、内燃エンジンの排気ガス、性能、および/または効率を監視するための内燃エンジンに設けられてもよい。従って、内燃エンジンは、多くの独立した制御可能な変数および較正値を含み得る。従って、内燃エンジン用のエンジン制御システムの設計は、多次元制御問題である。
【0004】
エンジン制御システムは、内燃エンジンの動作状態のリアルタイム変化に応答して、内燃エンジンのアクチュエーターに設定点を提供する必要がある。排出規制を満たす高効率の内燃エンジンに対する要求は、制御システムの設計をさらに制限する。制御システムの設計に対するさらなる制限は、エンジン制御システムに利用可能な計算能力の量が制限され得ることである。
【0005】
従来、内燃エンジンおよび後処理システムの制御は、オンボードプロセッサー(エンジン制御モジュール)によって管理される。内燃エンジンおよび後処理システムの複雑さのために、実装されたエンジン制御は、通常、内燃エンジンおよび後処理システムに対する事前較正された、時間不変のエンジン設定点を含む一連の「制御マップ」に基づくオープンループ制御システムを利用する。典型的には、制御されるエンジン設定点は、燃料質量、注入開始(SOI)、排気ガス再循環(EGR)、および入口マニホールド絶対圧力(IMAP)を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一部の単純な制御マップは、いくつかの時間不変のエンジン設定点が、異なるエンジン動作条件と関連付けられて記憶される、複数の早見表を含む。エンジン制御モジュールは、所望のエンジン動作に関連付けられる制御マップからエンジン設定点を単に読み取ることができる。また、一部のエンジン制御マップは、限定された数の他の変数の関数として、一つの変数の推定値を提供することもできる。エンジン設定点マップは、追加の変数が含まれるにつれて、メモリーの指数関数的増加、およびマップの複雑さのため、限られた数の入力変数のみに基づくことができる。場合によっては、システムメモリーが補間誤差という代償を払って不都合であり得る。
【0007】
オープンループ制御スキームの性能に対する影響を低減するための一つの方法は、異なる動作レジームに対して異なる制御マップを提供することである。例えば、異なる制御マップが、アイドル動作およびフルフルスロットル動作、または起動のために提供され得る。内燃エンジンごとに多くの異なるエンジン制御マップを提供することにより、各内燃エンジンの較正は高額かつ時間がかかる。さらに、これらの事前較正されたマップは、時間不変の早見表である。従って、これらの時間不変制御マップは、例えば、エンジン部品における部品間の変動、または湿度などの未測定の影響を考慮に入れることができない。また、時間不変制御マップは、経時的なエンジン部品性能の変動にも対応できない。
【0008】
代替的なアプローチは、較正前制御マップを置き換えるために、エンジンのリアルタイム、オンボード、モデルベースの制御を実装することである。このように、エンジンモデルは、内燃エンジンの一つまたは複数の設定点を直接制御する。モデルベースのエンジン制御は、エンジン性能、排出、および動作状態を予測するための動的エンジンモデルを含み得る。予測エンジン性能をモデルにフィードバックして、エンジン設定点をさらに最適化することができる。このように、モデルベースの制御方法は、性能および排出を改善するために、ネガティブフィードバックの形態をエンジン制御システムに効果的に組み込む。
【0009】
モデルベースの制御は、エンジン設定点がリアルタイムに計算されなければならないため、実施が困難である。従って、予測要素を含むモデルベースのエンジンコントローラーは、理想的には、それらの予測をリアルタイムに完了する。従って、多くのモデルベースの制御スキームは、内燃エンジンを制御するのに好適な時間スケール内でモデル出力を最適化するために、かなりの計算リソースを必要とする。
【0010】
本開示の第一の態様によれば、内燃エンジンコントローラーが提供される。内燃エンジンコントローラーは、メモリーおよびプロセッサーを含む。メモリーは、複数の制御マップを記憶するように構成され、各制御マップは、内燃エンジンコントローラーへの複数の入力変数に基づいて、内燃エンジンのアクチュエーターを制御するためのアクチュエーター設定点の超曲面を画定する。プロセッサーは、エンジン設定点モジュールおよびマップ更新モジュールを含む。エンジン設定点モジュールが複数の入力変数によって画定されるそれぞれの制御マップの超曲面上の位置に基づいて、アクチュエーター設定点を各アクチュエーターに出力するように構成される。マップ更新モジュールは、複数の入力変数によって画定される位置で、制御マップの超曲面のうちの一つまたは複数を最適化するように構成される。マップ更新モジュールは、オプティマイザーモジュールを含む。オプティマイザーモジュールは、
(i) アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットを選択するために、制御マップの初期アクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルを実行し、内燃エンジンの性能モデルに従って、アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットを評価し、アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットのそれぞれに関連付けられるコストを計算すること、
(ii) アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットに関連付けられるコストに基づいて、第一のコスト最小値に及ぶ、初期アクチュエーター設定点検索空間内の検索ラインを決定すること、
(iii) 検索ラインに沿ってライン検索を実行して、第一のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点の最適化されたグループを計算することにより、アクチュエーター設定点の最適化されたグループを検索するように構成され、
マップ更新モジュールが、アクチュエーター設定点の最適化されたグループに基づいて、複数の入力変数によって画定される位置で、一つまたは複数の超曲面を更新する。
【0011】
従って、内燃エンジンコントローラーは、二つの処理モジュール、エンジン設定点モジュールおよびマップ更新モジュールを含む。エンジン設定点モジュールは、内燃エンジンの複数のアクチュエーターを制御するように構成される。例えば、エンジン設定点モジュールは、SOI、EGR、燃料質量、および内燃エンジンに対して要求される入口マニホールド絶対圧力(IMAPR)のうちの一つまたは複数を制御し得る。エンジン設定点モジュールは、例えば、トルク、エンジン速度などのユーザーの需要、または内燃エンジンからの指定されたセンサーデータ(例えば、現在のIMAP)など、内燃エンジンへの性能入力に基づいて、これらのアクチュエーターを制御する。各アクチュエーターの制御は、各アクチュエーターの制御マップに基づいて決定される。各制御マップは、内燃エンジンコントローラーへの複数の入力変数に基づいて、内燃エンジンのアクチュエーターを制御するための超曲面を画定する。このように、エンジン設定点モジュールは、制御マップに格納されるアクチュエーター設定点を利用して、効果的にアクチュエーターを制御する、オープンループ制御モジュールである。
【0012】
マップ更新モジュールは、エンジン設定点モジュールのオープンループ制御とは独立して効果的に動作する。マップ更新モジュールは、制御マップの超曲面を入力変数によって画定される位置に、更新することによって、内燃エンジンの制御を最適化するように構成される。制御される複数のアクチュエーターがあるため、超曲面の最適化は、多次元最適化問題である。第一の態様による内燃エンジンコントローラーは、多次元最適化問題を、計算的に効率的な方法でリアルタイムで解決することを目指す、マップ更新モジュールを提供する。このように、マップ更新モジュールは、内燃エンジンのオンボードエンジン制御モジュールに利用可能な計算リソースを念頭に置いて設計される。
【0013】
超曲面を最適化するために、内燃エンジンの性能モデルを使用して、アクチュエーター設定点の候補グループに対する内燃エンジンの性能を評価し、コストを決定する。決定されたコストは、性能モデルによって画定される内燃エンジンの一つまたは複数の性能特性を反映し得る。性能モデルは、例えば、制御マップへの入力変数、他のセンサーデータおよび/または後処理情報など、内燃エンジンコントローラーが利用可能な他の入力パラメーターを考慮に入れ得る。結果として、内燃エンジンの性能モデルは、高非線形であり得る。アクチュエーター設定点検索空間の多次元的性質により、性能モデル出力は、グローバル最小値に加えて、ローカル最小値の数を画定し得る。第一の態様のオプティマイザーモジュールは、グローバル最小値に対応する最適化されたアクチュエーター設定点のグループを検索するように構成される。アクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルから検索手順を開始することにより、オプティマイザーモジュールは、検索がローカル最小値に到着する可能性を低減または除去することを目指す。
【0014】
従って、オプティマイザーモジュールは、内燃エンジンコントローラーに搭載された最適化された設定点を計算するように配置される。従って、オプティマイザーモジュールは、内燃エンジンの動作中に最適化されたアクチュエーター設定点を計算する。オプティマイザーモジュールの検索方法は、内燃エンジンコントローラーの(限定された)利用可能な処理能力を使用して、最適化された設定点をリアルタイムに出力するよう適合される。すなわち、オプティマイザーモジュールの検索方法は、利用可能なコンピューティング能力に制限なくオフラインで実行できる検索方法ではなく、リアルタイム操作に適合している。
【0015】
複数の更新可能な制御マップを提供することによって、限定された数の制御マップを使用して異なる動作点の範囲に最適化され得る、制御マップベースのコントローラーが提供され得る。従って、本開示の更新可能なマップは、別々の制御マップが過去に較正されたことがある、異なる動作点の範囲をカバーする制御を提供することができるので、内燃エンジンに対して較正する必要のある制御マップの数が減少され得る。従って、内燃エンジンの初期較正およびセットアップの複雑さが低減され得る。
【0016】
さらに、当技術分野で公知の時間不変制御マップは、典型的には、経時的な内燃エンジンの変化に対応するために、比較的大きな安全マージンで較正される。対照的に、第一の態様によるマップ更新モジュールは、内燃エンジンのリアルタイム性能の変化に応答して、制御マップのアクチュエーター設定点を更新し得る。従って、第一の態様の制御マップは、内燃エンジンに、より最適な性能条件下で動作させるように構成され得る。
【0017】
制御マップの初期アクチュエーター設定点検索空間は、制御マップの各々のアクチュエーター設定点の可能な範囲によって画定される多次元検索空間であり得る。例えば、内燃エンジンコントローラーは、内燃エンジンのアクチュエーターX、YおよびZを制御するための三つの制御マップを含んでもよい。従って、初期アクチュエーター設定点検索空間は、制御マップのX、YおよびZのそれぞれに対する、すなわち、三つのアクチュエーターに対する三次元検索空間に対する設定点値の範囲によって画定される。
【0018】
第一の態様によれば、マップ更新モジュールは、アクチュエーター設定点の最適化されたグループに基づいて、複数の入力変数によって画定される位置で、一つまたは複数の超曲面を更新する。超曲面を更新するステップは、アクチュエーター設定点の最適化されたグループに基づいてもよいことが理解されよう。このように、いくつかの実施例では、超曲面のうちの一つまたは複数上の現在位置は、アクチュエーター設定点の最適化されたグループによって画定される位置よりも好ましくあり得る。従って、いくつかの実施例では、更新のステップは、制御マップの一つまたは複数の超曲面を変更しないことを選択する、マップ更新モジュールを含んでもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、初期アクチュエーター設定点検索空間は、上限アクチュエーター制約および下限アクチュエーター制約のうちの一つまたは複数によって画定され得る。上限アクチュエーター制約および下限アクチュエーター制約は、内燃エンジンのアクチュエーターが特定の物理的限界内で動作するように選択され得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、アクチュエーター設定点の一つの候補グループは、複数の入力変数によって画定される各超曲面上の位置に対応し得る。従って、第一の態様の内燃エンジンコントローラーは、初期アクチュエーター設定点検索空間の層状サンプル中の内燃エンジンの現在動作点(すなわち、現在のアクチュエーター設定点)を常に評価し得る。従って、内燃エンジンの現在の動作点がグローバル最小コストにすでに対応している場合、オプティマイザーモジュールは、(複数の入力変数によって画定される各超曲面上の位置によって決定される)現在のアクチュエーター設定点を、アクチュエーター設定点の最適化されたグループとして返し得る。
【0021】
いくつかの実施形態では、アクチュエーター設定点検索空間内の検索ラインは、最低コストを有するアクチュエーター設定点の二つの候補グループに基づいて計算され得る。従って、オプティマイザーモジュールは、計算的に効率的な様式で、検索ライン(すなわち、初期アクチュエーター設定点検索空間内の検索方向、または検索ベクトル)を決定し得る。
【0022】
マップ更新モジュールは、アクチュエーター設定点の最適化されたグループに関連付けられるコストと、複数の入力変数によって画定される制御マップの各超曲面上の位置に対応するアクチュエーター設定点の候補グループに関連付けられるコストとの間のコスト差を決定するようにさらに構成され得る。コスト差が更新閾値より小さい場合、制御マップの超曲面は更新されない。従って、内燃エンジンコントローラーは、性能のわずかな増加のみが取得され得る場合、制御マップを更新しないことを選択し得る。例えば、定常状態動作下では、比較的小さな性能上の利益のために、アクチュエーター設定点を頻繁に(それによってアクチュエーターに摩耗を誘発する)マイナーに更新することは望ましくないことがあり得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、オプティマイザーモジュールは、
(iv) アクチュエーター設定点の候補グループの第二のセットを選択するために、制約されたアクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルを実行し、制約されたアクチュエーター設定点検索空間が、アクチュエーター設定点の最適化されたグループに基づいて制約され、および内燃エンジンの性能モデルに従って、アクチュエーター設定点の候補グループの第二のセットを評価し、アクチュエーター設定点の候補グループの第二のセットのそれぞれに関連付けられるコストを計算すること、
(v) アクチュエーター設定点の候補グループの第二のセットに関連付けられるコストに基づいて、第二のコスト最小値に及ぶ制約されたアクチュエーター設定点検索空間におけるさらなる検索ラインを決定すること、
(vi) さらなる検索ラインに沿ってライン検索を実行して、第二のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点のグループを計算すること、
(vii) コスト削減が達成された場合に、第二のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点のグループに基づいて、アクチュエーター設定点の最適化されたグループを更新することによって、アクチュエーター設定点の最適化されたグループを検索するようにさらに構成され得る。
【0024】
従って、第一の態様のマップ更新モジュールは、計算されたアクチュエーター設定点の最適化されたグループを繰り返し得る。計算を反復することによって、オプティマイザーモジュールは、グローバル最小コストにより密接に対応するアクチュエーター設定点のグループを識別し得る。以前に計算されたアクチュエーター設定点の最適化されたグループが、ローカル最小コストの範囲内にある場合、反復検索戦略によって、オプティマイザーモジュールが、グローバル最小値が依然として見出されるように、(層状サンプルを介して)アクチュエーター設定点の最適化されたグループの回りを探索することを可能にする。
【0025】
制約されたアクチュエーター設定点検索空間は、初期アクチュエーター設定点検索空間と類似したアクチュエーター設定点検索空間である。効果的に、制約されたアクチュエーター設定点検索空間は、初期アクチュエーター設定点検索空間のサブセットである。すなわち、検索される各アクチュエーター設定点の範囲は、初期設定点検索空間に対して制約され得る。制約されたアクチュエーター設定点検索空間は、以前に計算されたアクチュエーター設定点の最適化されたグループ(例えば、アクチュエーター設定点の第一の最適化されたグループ)に基づいて制約され得る。制約されたアクチュエーター設定点検索空間は、層状サンプル(例えば、初期アクチュエーター設定点検索空間、または以前の制約されたアクチュエーター設定点検索空間)を実施するためのアクチュエーター設定点検索空間を画定するために使用される各アクチュエーターについて、上限アクチュエーター制約および下限アクチュエーター制約を更新することによって制約され得る。いくつかの実施形態では、各アクチュエーターに対して利用可能な検索範囲は、少なくとも30%、40%、50%、60%、または70%減少し得る。いくつかの実施形態では、各アクチュエーターに対する上限アクチュエーター制約および下限アクチュエーター制約は、以前に計算されたアクチュエーター設定点の最適化されたグループが、制約されたアクチュエーター設定点検索空間の中心(すなわち、可能な限り中央)の方に位置するように選択され得る。
【0026】
第二のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点のグループを計算することによって、オプティマイザーモジュールは、第一のコスト最小値が、性能モデルに対するグローバル最小値ではない可能性を可能にする。従って、第一の態様による内燃エンジンコントローラーは、反復されるように計算された最適化されたアクチュエーター設定点を可能にする。
【0027】
いくつかの実施形態では、オプティマイザーモジュールは、(iv)、(v)、(vi)、および(vii)のステップを複数回繰り返すように構成される。従って、オプティマイザーモジュールは、設定点の最適化されたグループの計算を複数回繰り返し得る。これらのステップを繰り返すことで、アクチュエーター設定点の最適化されたグループがグローバル最小コスト内に位置するという確実性が増大し得る。
【0028】
いくつかの実施形態では、オプティマイザーモジュールによるステップ(iv)、(v)、(vi)、および(vii)の繰り返しが、アクチュエーター設定点の最適化されたグループを更新する際に達成されるコスト削減が、収束限界を下回る、および/または検索が時間制限を超えるまで継続し得る。従って、オプティマイザーモジュールは、計算リソースの需要、およびさらに反復が行われる場合に計算されたアクチュエーター設定点の最適化されたグループに対するさらなる改善を得る可能性/相対的利益を考慮に入れ得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、アクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルは、初期アクチュエーター設定点検索空間または制約されたアクチュエーター設定点検索空間のラテンハイパーキューブサンプルである。ラテンハイパーキューブサンプルを使用することにより、選択されたアクチュエーター設定点の候補グループは、検索空間全体に均等に分布され得る。アクチュエーター設定点の候補グループを検索空間全体に分散させることにより、オプティマイザーモジュールは、アクチュエーター設定点の最適化されたグループを検索するための堅牢なアルゴリズムを提供するために、グローバルコスト最小値内で、少なくとも一つのアクチュエーター設定点の候補グループを選択することを目的としている。
【0030】
本開示の第二の態様によれば、内燃エンジンを制御する方法が提供され得る。方法は、複数の制御マップを提供することであって、各制御マップが、内燃エンジンコントローラーへの複数の入力変数に基づいて、内燃エンジンのアクチュエーターを制御するためのアクチュエーター設定点の超曲面を画定するように、提供することと、複数の入力変数によって画定されるそれぞれの制御マップの超曲面上の位置に基づいて、アクチュエーター設定点を各アクチュエーターに出力することと、複数の入力変数によって画定される位置で制御マップの超曲面の一つまたは複数を最適化することとを含む。制御マップの一つまたは複数の超曲面を最適化することは、アクチュエーター設定点の最適化されたグループを検索することと、アクチュエーター設定点の最適化されたグループに基づいて複数の入力変数によって画定される位置で一つまたは複数の超曲面を更新することとを含む。アクチュエーター設定点の最適化されたグループを検索することは、
(i) アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットを選択するために、制御マップの初期アクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルを実行し、内燃エンジンの性能モデルに従って、アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットを評価し、アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットのそれぞれに関連付けられるコストを計算することと、
(ii) アクチュエーター設定点の第一の候補グループのセットに関連付けられるコストに基づいて、第一のコスト最小値に及ぶ、初期アクチュエーター設定点検索空間内の検索ラインを決定することと、
(iii) 検索ラインに沿ってライン検索を実行して、第一のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点の最適化されたグループを計算することとを含む。
従って、第二の態様の方法は、第一の態様に従って内燃エンジンコントローラーによって実施され得る。従って、第一の態様に関連して記載される利点は、第二の態様の方法に適用され得ることが理解されよう。さらに、第一の態様に関連して説明される任意の特徴は、本開示の第二の態様に等しく適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
ここで、本発明は、以下の非限定的な図に関して記述される。本開示のさらなる利点は、以下の図と併せて考慮されるとき、詳細な説明を参照することによって明らかである。
【0032】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態による、内燃エンジンに接続された内燃エンジンコントローラーのブロック図を示す。
【
図2】
図2aは、本開示の実施形態による早見表制御マップの例を示す。
図2bは、
図2aの早見表制御マップの例によって画定される超曲面のグラフィック表現である。
【
図3】
図3は、本開示の実施形態による内燃エンジンコントローラーの一部のブロック図を示す。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態による、初期アクチュエーター設定点検索空間の一部および性能モデルのグラフィック表現を示す。
【
図5】
図5は、層状サンプルに従って選択されたアクチュエーター設定点候補グループを表す点を含む、
図4の性能モデルの等高線プロット表示を示す。
【
図6】
図6a、
図6b、および
図6cは、性能異議関数、排出関数、およびエンジン制約関数それぞれに対する適切な関数のグラフィック表現を示す。
【
図7】
図7は、
図4および5に示される検索ラインに沿ったコスト関数のグラフィック表現を示す。
【
図8】
図8は、本開示のさらなる実施形態による内燃エンジンコントローラーの一部の図のブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本開示の実施形態による内燃エンジン1および内燃エンジンコントローラー10の一般的なシステム図が
図1に示される。
【0034】
内燃エンジンコントローラー10は、プロセッサーおよびメモリーを含んでもよい。このように、内燃エンジンコントローラー10は、当技術分野で公知の任意の適切なコンピューティングデバイス上に実装され得る。内燃エンジンモジュールは、一つまたは複数のプロセッサーおよび集積メモリーを含む専用エンジン制御ユニット(例えば、エンジン制御モジュール)上に提供され得る。内燃エンジンコントローラー10は、本開示の制御スキームを実施するために、さまざまな入力および出力に接続され得る。このように、内燃エンジンコントローラー10は、さまざまな入力変数信号、センサーデータ、および制御スキームで使用され得る任意の他の信号を受信するように構成され得る。例えば、内燃エンジンコントローラー10は、エンジン速度、気圧、周囲温度、IMAP、入口マニホールド空気温度(IMAT)、EGR質量率(またはEGR質量推定値を導出するために使用されるセンサー)、燃料レール圧力、および/または空気システムのバルブ位置、燃料質量の推定値、などのエンジンセンサーデータおよび/またはエンジン出力NOx、テールパイプNOx、ディーゼル粒子フィルターdP/RFすすセンサー、ディーゼル酸化触媒の入口温度、および/またはSCRの入口温度、などの後処理センサーデータを受信するように構成され得る。
【0035】
図1に示すように、内燃エンジンのアクチュエーターは、複数のエンジンアクチュエーター設定点によって制御される。エンジンアクチュエーター設定点は、内燃エンジンコントローラー10によって制御される。
図1の実施形態では、制御されるエンジンアクチュエーターは、EGR、SOI、燃料質量、および要求入口マニホールド絶対圧力(IMAP)である。当然のことながら、他の実施形態では、制御されるエンジンアクチュエーターは変化し得る。
【0036】
図1に示すように、内燃エンジンコントローラーは、エンジン設定点モジュール20を含む。エンジン設定点モジュール20は、エンジン設定点モジュール20複数の制御マップ30および入力変数に基づいて、制御信号を各アクチュエーターに出力するように構成される。従って、エンジン設定点モジュール20の動作は、先行技術で公知のオープンループ、エンジンマップベースの制御スキームと類似している。このようなオープンループ制御スキームは、より複雑なモデルベースの制御スキームと比較して、比較的小さな計算要件を有する。
【0037】
エンジン設定点モジュール20への入力変数は、内燃エンジン1の現在の動作に由来する異なる変数の組み合わせであり得る。入力変数の一部は、内燃エンジンの性能要求に基づいてもよい。入力変数の一部は、例えば、さまざまなセンサーによって測定されるように、内燃エンジン1の現在の動作状態に基づいてもよい。入力変数は、制御マップに基づいてアクチュエーター設定点を決定するために使用されるので、制御マップ当たりの入力変数の総数は、内燃エンジンコントローラー10に利用可能な計算リソースによって制限され得ることが理解されよう。
【0038】
図1の実施形態では、入力変数は、要求トルク(TqR)、現在のエンジン速度(N)、および現在の入口マニホールド絶対圧力(IMAP)である。他の実施形態では、現在のEGR(すなわち、EGRバルブの現在の位置)などの他の入力変数を使用し得る。
【0039】
複数の制御マップ30の各々は、一つまたは複数の入力変数とアクチュエーター設定点との間の関係を画定する。
図1の実施形態では、四つの制御マップ30が提供され、一つは、EGR、SOI、燃料質量、およびIMAPの各々を制御するためのものである。制御マップ30の各々は、入力変数TqR、NおよびIMAPのうちの一つまたは複数に基づいて、エンジンアクチュエーター設定点を画定し得る。例えば、一実施形態では、EGR制御マップは、TqR、N、およびIMAPCに基づいて、アクチュエーター設定点の超曲面を画定し得る。従って、TqR、N、およびIMAPCの組み合わせは、EGRに対するアクチュエーター設定点を計算できる超曲面の位置を画定する。同様に、SOIおよび燃料質量の制御マップ30は、TqR、N、およびIMAPCの関数である超曲面によっても画定され得る。
図1の実施形態におけるIMAPRの制御マップは、TqRおよびNの関数である超曲面によって画定され得る。そのため、複数の制御マップ30の異なる制御マップは、異なる次元数(すなわち、異なる数の入力変数)を有し得る。
【0040】
図1の制御マップ30の各々は、早見表として実装され得る。エンジンコントローラーの早見表制御マップ30は、当該技術分野で周知である。例示的な早見表制御マップ31を
図2aに示す。
図2aに示される早見表制御マップ31は、二つの入力次元および単一の出力次元を有する。従って、
図2aの実施形態では、制御マップ31は、二次元制御マップであり、列挙された次元の数が、入力次元の数によって決定される。
図2aの制御マップ31は、入力変数1(すなわち、第一の入力変数)および入力変数2(第二の入力変数)を含む。早見表は、入力変数1と入力変数2の異なる組み合わせに対して、複数の値(アクチュエーター設定点)を画定する。従って、早見表制御マップ31は、入力変数1および2の値に基づいてアクチュエーター設定点を選択するために使用され得る。
図2bは、早見表制御マップ31内の値によって画定される超曲面のグラフィック表現である。当技術分野で公知のように、早見表に画定される設定点の補間を使用して、一つまたは複数の入力変数が早見表に格納される値と厳密に一致しない、超曲面上の位置を見つけることができる。
【0041】
他の実施形態では、代替的な手段を使用して、各制御マップ30の超曲面を記述することができる。例えば、超曲面は、入力変数の関数として画定され得る。超曲面を画定するための適切な多次元関数は、ユニバーサル近似関数であり得る。好適なユニバーサル近似関数には、人工ニューラルネットワーク(例えば、放射状基底関数、多層パーセプトロン)、多変量多項式、ファジー論理、不規則な補間、クリングが含まれ得る。
【0042】
複数の制御マップ30は、内燃エンジンコントローラー10のさまざまな処理モジュールが制御マップ30にアクセスできるように、内燃エンジンコントローラー10のメモリーに記憶され得る。
【0043】
図1に示すように、内燃エンジンコントローラー10はまた、マップ更新モジュール40を含む。マップ更新モジュール40は、複数の入力変数によって画定される位置で、制御マップの超曲面のうちの一つまたは複数を最適化するように構成される。
図1の実施形態では、マップ更新モジュール40は、制御マップ30の各々に対して最適化された超曲面を同時に計算する。マップ更新モジュール40は、複数の入力変数によって画定される位置で制御マップを更新する。
【0044】
マップ更新モジュール40は、最適化された超曲面に基づいて、制御マップ30の超曲面を更新するように構成される。従って、一つまたは複数の制御マップ30の超曲面は、内燃エンジン1の動作中に更新され得る。アップダブル制御マップ30のセットを提供することによって、異なる動作点の範囲に最適化され得る制御マップ30のセットが提供され得る。従って、内燃エンジン1に対して較正される必要のある制御マップの数は、本開示の更新可能な制御マップ30のセットが、別個の制御マップのセット(すなわち、複数の制御マップのセット)が過去に較正されたことがある、異なる動作点の範囲をカバーする、制御を提供し得るため、減少され得る。
【0045】
図3は、本開示の実施形態による内燃エンジンコントローラーを代表するブロック図を示す。ブロック図は、エンジン設定点モジュール20およびマップ更新モジュール40を示す。このように、本実施形態の内燃エンジンコントローラー10は、
図1に示す内燃エンジンコントローラーの構造と類似の一般構造を有する。従って、
図1および対応する説明を参照すると、エンジン設定点モジュール20は、複数の入力変数によって画定される、それぞれの制御マップ30の超曲面上の位置に基づいて、複数のアクチュエーター設定点を出力するように動作することが理解されよう。
【0046】
図3に示すように、マップ更新モジュール40は、アクチュエーター設定点の最適化されたグループを検索するように構成されるオプティマイザーモジュール50を含む。アクチュエーター設定点の最適化されたグループを検索するプロセスは、オプティマイザーによって実行されることを含み、三つのサブモジュール51、52、53に分割されるとみなされ得る。第一のサブモジュール51では、オプティマイザーモジュールは、アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットを選択するために、制御マップの初期アクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルを実行して、内燃エンジンの性能モデルに従って、アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットを評価し、アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットのそれぞれに関連付けられるコストを計算する。第二のサブモジュール52では、オプティマイザーモジュール50は、アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットに関連付けられるコストに基づいて、第一のコスト最小値に及ぶ、初期アクチュエーター設定点検索空間内の検索ラインを決定する。第三のサブモジュール53では、オプティマイザーモジュール50は、検索ラインに沿ってライン検索を実行して、第一のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点の最適化されたグループを計算する。アクチュエーター設定点の最適化されたグループを検索する三つのステッププロセスは、
図3のブロック図に示されるサブモジュール51、52、および53によって示される。
【0047】
第一のサブモジュール51は、制御マップの初期アクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルを実施する。初期アクチュエーター設定点検索空間は、多次元検索空間であってもよく、次元数は、制御マップの数(すなわち、内燃エンジンコントローラーによって制御される内燃エンジンのアクチュエーターの数)に対応する。内燃エンジンの各アクチュエーターは、所定の範囲のアクチュエーター設定点を有し得る。制御マップに対するアクチュエーター設定点の所定の範囲は、上限アクチュエーター制約および下限アクチュエーター制約のうちの一つまたは複数によって画定され得る。上限アクチュエーター制約および下限アクチュエーター制約は、内燃エンジンのアクチュエーターが常に特定の物理的限界内で動作するように選択され得る。例えば、EGRアクチュエーターについて、上限EGRアクチュエーター制約は360kg/時間であってもよく、下限EGRアクチュエーター制約は0kg/時間であり得る。従って、初期アクチュエーター設定点検索空間は、内燃エンジンコントローラーの各制御マップに対して、上限アクチュエーター制約および下限アクチュエーター制約によって画定され得る。上述のように、初期アクチュエーター設定点検索空間は、内燃エンジンのアクチュエーターの物理的限界を反映するようにあらかじめ設定され得る。初期アクチュエーター設定点検索空間を画定する各制御マップに対する上限アクチュエーター制約および下限アクチュエーター制約は、内燃エンジンコントローラーのメモリーに記憶され得る。
【0048】
いくつかの実施形態では、初期アクチュエーター設定点検索空間は、内燃エンジンの所望の動作点に従って変化し得る。例えば、EGRアクチュエーターの検索空間は、内燃エンジンの所望の動作負荷および/または所望のエンジン速度に応じて変化し得る。例えば、上限アクチュエーター制約は、所望の動作点に従って変化し得る。一実施形態では、上限EGRアクチュエーター制約は、内燃エンジンの所望の負荷および/またはエンジン速度に応じて変化し得る。例えば、360kg/時間の上限EGRアクチュエーター制約が、高速高負荷で提供され得る。低速および低負荷では、EGRを低減することが望ましくありえ、そのため、上限EGRアクチュエーター制約が低減されるか、またはさらに0kg/時間に設定されて、この変数に対してオプティマイザーを“クランプ”し得る。
【0049】
初期アクチュエーター設定点検索空間は、内燃エンジンコントローラーによって評価され得る、全ての可能な動作点を効果的に画定する。オプティマイザーモジュール50は、オプティマイザーモジュール50による評価のために、初期アクチュエーター設定点検索空間内からアクチュエーター設定点の候補グループを選択するように構成される。アクチュエーター設定点の各候補グループは、内燃エンジン1の潜在的な動作点を効果的に表す。第一のステップの一部として、オプティマイザーモジュール50は、アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットを取得するために、初期アクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルを実行するように構成される。層状サンプルを使用して初期アクチュエーター設定点検索空間をサンプリングすることによって、オプティマイザーモジュールは、選択されたアクチュエーター設定点の候補グループがアクチュエーター設定点検索空間全体に分布することを確実にする。従って、層状サンプルは、初期アクチュエーター設定点検索空間の純粋にランダムなサンプルよりも、初期アクチュエーター設定点検索空間にわたって、アクチュエーター設定点候補グループのより均一な分布を提供し得ることが理解されよう。
【0050】
多次元検索空間の層状サンプルを実施するさまざまな方法が、当業者に公知である。本開示の一実施形態では、オプティマイザーモジュール50は、初期アクチュエーター設定点検索空間のラテンハイパーキューブサンプルを実施する。従って、N変数の初期アクチュエーター設定点検索空間について、各アクチュエーター(上限および下限アクチュエーター制約により画定される)の範囲は、Mの等確率の間隔に分割される。次に、M個のサンプル点を配置し、各サンプル点が、各軸整列ハイパー平面において一つのみである。例えば、少なくとも5つのサンプル点、または少なくとも7、または少なくとも9が採取される。他の実施形態では、直交サンプリング方法を使用して、層状サンプル、または初期アクチュエーター設定点検索空間にわたるアクチュエーター設定点の候補グループの分布を提供する、任意の他の適切な層状サンプリング方法を決定し得る。
【0051】
第一のサブモジュール51は、内燃エンジンの性能モデルに従って、(第一のセットの)アクチュエーター設定点の各候補グループを評価する。第一のサブモジュール51は、性能モデルを使用して、第一のセットのアクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられるコストを計算する。
【0052】
図4は、本開示の実施形態による、初期アクチュエーター設定点検索空間の一部と、性能モデルによって生成されるコスト表面とのグラフィック表現を示す。
図4の実施形態では、初期アクチュエーター設定点検索空間は、二つのアクチュエーター変数A
1およびA
2(すなわち、二次元初期アクチュエーター設定点検索空間)によって画定される。従って、
図4に示すように、性能モデルは、初期アクチュエーター設定点検索空間におけるコストの表面を画定する。
図4のコスト表面のさらなる等高線プロット図が
図5に示される。上述のように、初期アクチュエーター設定点検索空間の一部のみを示す。各アクチュエーター変数(A
1およびA
2)は、より下限制約限界(
図4および5には示されていない、それぞれlc1およびlc2)から、上限制約限界(それぞれ、uc1およびuc2)までの検索範囲を有する。
図4および
図5は、A
1およびA
2の中間値から、それぞれ、uc1およびuc2までの初期アクチュエーター設定点検索空間を示す。
図4および
図5に示すコスト表面は、可能性のあるアクチュエーター設定点検索空間および結果として生じるコスト表面の一例にすぎず、他の実施形態では、三つ以上の次元を有するアクチュエーター設定点検索空間が企図されることが理解されよう。
【0053】
一連の点a、b、c、d、e、f、およびgが、
図4および5に示され、第一のサブモジュール51によって選択されアクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットを表す。点a、b、c、d、e、f、およびgは、初期アクチュエーター設定点検索空間の層状サンプル(ラテンハイパーキューブサンプル)を表す。
【0054】
アクチュエーター設定点の各候補グループを評価するために使用される性能モデルは、内燃エンジンの性能を評価するための任意の適切な性能モデルであり得る。性能モデルは、オプティマイザーモジュール50に利用可能な入力変数および処理能力に依存し得る。内燃エンジンの性能モデルは、内燃エンジン1のリアルタイム性能モデルとすることができる。リアルタイム性能モデルによって、評価は、例えば、履歴エンジンデータのオフライン計算ではなく、リアルタイムに計算される、性能内燃エンジンのモデルに基づくことが理解される。リアルタイム性能モデルは、内燃エンジン1および複数の入力変数(すなわち、内燃エンジンへのリアルタイム入力変数)からのセンサーデータを使用し得る。このように、リアルタイム性能モデルは、制御マップを最適化するために、制御マップへの入力変数に加えて、内燃エンジン1からの追加のセンサーデータを使用し得る。効果的に、本開示の内燃エンジンコントローラー10は、マップベースの制御の計算複雑さを著しく増加させない方法で、内燃エンジンの制御に追加的な変数(直接および/または間接のセンサーデータ変数)を組み込んでもよい。
【0055】
内燃エンジン1の性能モデルは、一つまたは複数のエンジン性能変数を計算するように配置されるエンジンモデルと、一つまたは複数のエンジン性能変数に基づいてコストを計算するように配置されるコストモデルとを含んでもよい。エンジンモデルは、エンジン性能変数を計算するために、内燃エンジンの一つまたは複数の物理モデル、および/またはさらなるエンジン性能変数を計算するように配置される一つまたは複数の経験モデルを利用し得る。このように、内燃エンジン1の性能モデルは、“グレーボックス”タイプの性能モデルとすることができる。
【0056】
性能モデルへの入力は、制御マップの複数の入力変数、ならびに内燃エンジンからのセンサー入力、およびアクチュエーター設定点の候補グループである。このように、性能モデルは、内燃エンジンのリアルタイム動作に関連付けられる複数の変数を含む。従って、性能モデルによって計算されるエンジン性能変数は、内燃エンジン1のリアルタイム性能を表すことができる。
【0057】
好適な性能モデルの一例を
図3を参照して説明する。
図3の実施形態では、性能モデルは、SOI、燃料質量、要求EGR、およびIMAPRのアクチュエーター設定点の候補グループを含む。また、性能モデルは、内燃エンジンのセンサーからの複数のリアルタイムデータを含む。内燃エンジン1からのセンサーデータは、内燃エンジンに関連付けられるさまざまなセンサーからの情報を含み得る。センサーデータはまた、内燃エンジンの一つまたは複数のセンサーからのデータに由来するさまざまな変数を含んでもよい。例えば、センサーデータは、入口マニホールド圧力、入口マニホールド温度、燃料レール圧力、背圧バルブ位置、質量EGRフロー、質量総気流、燃料質量フロー、燃料レール圧力(FRP)を含み得る。
【0058】
性能モデルは、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる複数のエンジン性能変数を計算するように構成される一つまたは複数のモデルを含み得る。性能モデルへの入力は、内燃エンジンに対するアクチュエーター設定点およびセンサーデータを含むため、エンジン性能変数は、それらのアクチュエーター設定点に基づく内燃エンジン1のリアルタイム性能を表すことが理解されよう。計算されるエンジン性能変数には、エンジントルク、質量空気流、ブレーキ平均有効圧力(BMEP)、正味表示平均有効圧力(IMEP)、ポンピング平均有効圧力(PMEP)、摩擦平均有効圧力(FMEP)、排気マニホールド温度、ピークシリンダー圧力、NOx量(例えば、正味表示特定NOx、ブレーキ表示特定NOx)、すす量(例: 正味表示特定すす、ブレーキ表示の特定のすす)、NOx/すす比、最小フレッシュチャージ、EGRポテンシャルが含まれてもよい。上記のエンジン性能変数と、性能モデルに提供される入力との間の物理的関係は、当業者に周知である。上述したように、性能モデルは、物理学ベースのモデル、経験モデル、または経験ベースモデルと物理学ベースのモデルの組み合わせ(すなわち、半物理/グレーボックスモデル)を使用して、上記のエンジン性能変数のうちの一つまたは複数を計算し得る。
【0059】
例えば、性能モデルは、平均値エンジンモデルを含み得る。平均値エンジンモデルは、BMEP、エンジントルク、質量空気流などのエンジン性能パラメーターをモデル化するために当業者に周知である。本開示の使用に適した平均値エンジンモデルのさらなる説明は、Urs Christen et al、SAE Technical Paper Seriesによる「コントローラー設計のためのDIディーゼルエンジンのイベントベースの平均値モデリング」で見出され得る。従って、性能モデルは、入力に基づいてエンジン性能変数を計算するために使用され得る。
【0060】
平均値モデルの使用に加えて、性能モデルは、一つまたは複数のエンジン性能変数を計算するための一つまたは複数のニューラルネットワークベースのモデルを含み得る。例えば、正味表示特定NOx(NISNOx)エンジン性能変数は、適切に訓練されたニューラルネットワークを使用して、センサーデータから計算され得る。ニューラルネットワークを使用してNISNOxなどのエンジン性能変数を計算するための適切な手法の詳細については、Michele Steyskal et al、SAE Technical Paper Seriesによる「大口径天然ガスエンジンからのNOx排出量を予測するためのPEMSモデルの開発」を参照し得る。
【0061】
上述のモデルの加え、一つまたは複数の内燃エンジン構成要素の物理学ベースのモデルが提供され得る。例えば、適切なエンジン性能変数を計算するのを助けるために、コンプレッサーモデル、タービンモデル、または排気ガス再循環冷却器モデルが提供され得る。
【0062】
性能モデルは、エンジン性能変数をコストモデルに出力する。コストモデルは、一つまたは複数のエンジン性能変数を評価し、エンジン性能変数に基づいてアクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられるコストを出力するように構成される。
【0063】
コストモデルは、アクチュエーター設定点の候補グループに従い、内燃エンジン1の性能を評価するために、コストをさまざまな性能目標に割り当てるように構成される複数の関数を含んでもよい。例えば、複数の関数は、一つまたは複数の性能目的関数、一つまたは複数の排出関数、および一つまたは複数のエンジン制約関数を含んでもよい。複数の関数の各々は、一つまたは複数のエンジン性能変数および一つまたは複数のコストパラメーターの関数に基づいて、コストを出力するように構成され得る。コストパラメーターは、各エンジン性能パラメーターに関連付けられるコストの大きさを決定する。
図3の実施形態では、コスト関数は、より低いコストがより最適な性能と関連付けられるように構成される。
【0064】
性能目的関数は、特定の性能目的を満たすために内燃エンジン1を最適化するように構成される関数であり得る。例えば、性能目的は、ブレーキ特定燃料消費量(BSFC)または正味表示特定燃料消費量(NISFC)を最小化することであり得る。さらなる性能目的は、トルク誤差(すなわち、実際の出力トルクと要求トルクとの間の差)を最小化することであり得る。こうした形態の性能目的関数は、重み付き二乗法則関係を有する関数(すなわち、Cost=Weight*(エンジン性能変数)^2の形態)によって表され得る。従って、性能目的関数の場合、性能目的関数の重みはコストパラメーターである。適切な性能目的関数のグラフィック表現を
図6aに示す。例えば、NISFC(Cost
NISFC)の性能目的は、
Cost
NISFC=Weight
NISFC*NISFC^2であり得る。
【0065】
排出関数は、内燃エンジンによって生成される排出物に関連して特定の目的を満たすために、内燃エンジンを最適化するように構成される関数であり得る。例えば、一つまたは複数の排出関数は、内燃エンジンによって生成される排出物に関連するエンジン性能変数に基づいて提供され得る。従って、一つまたは複数の排出関数は、NOx量(NISNOx、すす(NISCF)、NOxすす比、最小フレッシュ電荷、および/またはEGR電位に基づいてもよい。排出関数は、任意の適切な関数を使用して、コストとエンジン性能変数との間の関係を画定し得る。例えば、
図3の実施形態では、排出関数は、一辺の正方形の法則関数として提供され得る。適切な排出関数のグラフィック表現を
図6bに示す。
【0066】
本開示では、正味表示特定NOx(NISNOx)は、後処理システムにおける処置の前に、内燃エンジンによって出力されるNOx量を指すことがさらに意図される。当然のことながら、当業者は、NOx量も後処理システムの下流で推定され得ること(例えば、テールパイプNOx)を理解するであろう。
【0067】
例えば、排出関数は、標的上限(T)を含み得る。標的上限は、それを超えると発生するコストが有意となるエンジン性能変数の値を画定することができ、標的上限を下回る値については、コストなし、または最小コストが発生する。例えば、一部の内燃エンジンについては、NISNOxの標的上限は4g/kWhとし得る。従って、排出関数に対して、標的上限および/または重量は、コストパラメーターとし得る。他の実施形態では、標的限界は、標的下限として提供され得る。
【0068】
従って、エンジン性能変数NISNOxに基づく排出関数(CostNOx)は、
NISNOx<Tのとき、 CostNOx=0、
NISNOx≧Tのとき、 CostNOx=WeightNOx*(NISNOx-T)^2であり得る。
【0069】
エンジン制約関数は、内燃エンジンの性能に関連付けられる制約を反映するように構成される関数であり得る。従って、内燃エンジンコントローラーが特定の動作状態の元で、内燃エンジン1を動作することを妨げ、または防止するために、一つまたは複数のエンジン制約関数が提供され得る。例えば、一つまたは複数のエンジン制約関数は、内燃エンジンの物理的要件のために超えることができない固定限界を有するエンジン性能変数に基づいてもよい。このように、一つまたは複数のエンジン制約関数は、ピークシリンダー圧力(PCP)、排気マニホールド温度、コンプレッサー出口温度に基づいてもよい。また、最大トルク誤差などの望ましい固定限界を有し得るさらなるエンジン性能変数は、対応するエンジン制約関数を有し得る。各エンジン制約関数は、任意の適切な関数を使用して、コストと一つまたは複数のエンジン性能変数との間の関係を画定し得る。例えば、
図3の実施形態では、エンジン制約関数は、Cost=1/エンジン性能変数の形態で提供され得る。適切なエンジン制約関数のグラフィック表現を
図6cに示す。
【0070】
例えば、エンジン性能変数PCPに対するエンジン制約関数は、制限Lに基づいて提供され得る。エンジン制約関数によって計算されたコストは、制限Lが近づくにつれて非対称的に上昇し得る。従って、限界Lはまた、コストパラメーターであり得る。従って、エンジン性能変数PCPに基づくエンジン制約関数(CostPCP)は、
CostPCP=1/(L-PCP)であり得る。
【0071】
上述のように、性能目的関数、排出関数、およびエンジン制約関数に関して、さまざまなコストパラメーターが記述される。コストパラメーターは、例えば、コストパラメーターベクトルとして、コストモデルによって保存され得る。いくつかの実施形態では、コストパラメーターは、時間変化であり得る。すなわち、いくつかの実施形態では、コストモデルは、異なるエンジン性能変数に関連付けられる相対コストの変化をもたらすために、一つまたは複数のコストパラメーターを更新し得る。例えば、コストモデルは、以下に記載されるように、後処理システムの再生を開始するために、一つまたは複数のコストパラメーターを更新し得る。
【0072】
例えば、コストモデルは、後処理システムの再生が実施されると決定するために、後処理システムからのデータを利用し得る(例えば、ディーゼル微粒子フィルターの再生が必要であるという後処理システムからの表示)。コストモデルは、後処理システムの再生を実施するために、モデルのコスト関数の一部を更新し得る。例えば、排気最小温度を制御するために、コスト関数(例えば、性能目的関数)が提供され得る。後処理システムを再生成するために、排気温度の最小値ペナルティを増加(例えば、400℃に)して、オプティマイザーが、排気温度を増加させる最適化された超曲面を計算することを促し得る。内燃エンジンは、このような排気温度に達することができない場合があるが、この値からの偏差を最小化する解を見つけることが促される。後処理熱管理が不要な場合、排気温度最小ペナルティを無視できる値(例えば、-180℃)に設定し得る。従って、必須でない場合、コスト関数はこの用語を考慮しない。
【0073】
従って、コストモデルは、上で計算された各コスト関数によって計算されたコストに基づいて、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる総コストを計算し得る。アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられる総コストは、さらなる処理のためにオプティマイザーモジュール50に提供され得る。
【0074】
従って、アクチュエーター設定点の各候補グループに関連付けられるコストを計算するための性能モデルが提供され得る。当業者は、上記の性能モデルに対するさまざまな修正または変形を企図し得ることが理解されよう。特に、性能モデルは、内燃エンジンコントローラー10が制御するように意図される特定の内燃エンジン1に基づいて適合され得る。
【0075】
第二のステップでは、オプティマイザーモジュール50の第二のサブモジュール52は、アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットに関連付けられるコストに基づいて、第一のコスト最小値に及ぶ、初期アクチュエーター設定点検索空間内の検索ラインを決定する。
【0076】
一実施形態では、検索ラインは、最低のコストでアクチュエーター設定点の二つの候補グループに基づいて決定される。例えば、
図4および
図5の検索空間で示されるように、検索ベクトルは、最低コストを有するアクチュエーター設定点の二つの候補グループ間の線に沿った初期アクチュエーター設定点検索空間のベクトルとして決定される。検索ベクトルに沿ったコスト関数の値は、
図7にグラフィカルに表される。検索ベクトルを決定する目的は、アクチュエーター設定点の最適化されたグループを識別するために、最小値をさらに検索する方向を提供することである。
【0077】
検索ベクトルが決定されると、サブモジュール52は、最小コストをまたぐ検索ベクトルに沿った線を決定する。関数(すなわち、性能モデル)の最小値が、線上の二点の間にあるかどうかを決定するためのさまざまな方法が、当業者に既知である。検索ラインを決定するための一例を、以下でより詳細に論じる。検索ラインが、最小値が横たわることが知られているラインに沿って決定されると、サブモジュール52は、検索ラインを画定する情報を第三のサブモジュール53に出力する。検索ラインは、例えば、座標(すなわち、アクチュエーター設定点の二つの候補グループ)として、または方程式として、さまざまな方法で画定され得ることが理解されよう。
図7は、点eとfとの間に延びる検索ラインを太字で示す。
【0078】
最小値が検索ラインに沿って存在するかどうかをチェックする一つの方法は、検索ラインに沿って(すなわち、検索ラインの開始点と終了点を画定するアクチュエーター設定点の二つの候補グループの間で)第三の点(x
1)でコスト関数を評価することである。評価される第三の点に、検索ラインの二つの終点のいずれかよりも低いコストがある場合、これは、二つの終点の間の検索ライン上に最小の最小値があることを示す。最小値が検索ラインに沿って存在しないと判定された場合、検索ラインの終点は、初期アクチュエーター設定点検索空間内の検索ベクトルに沿って拡張され、再評価され得る。このプロセスは、最小値(例えば、
図4および5に示す通り)をまたぐ検索ラインが見つかるまで反復され得る。この方法の一つの利点は、評価される必要のあるアクチュエーター設定点の候補グループの数が低減され得ることである。すなわち、検索ベクトルに沿って全ての点を評価する必要はない。多くの場合、層状検索によって識別される最低コストを有するアクチュエーター設定点の候補グループは、最小値をまたぎ、従って、検索ラインに沿った一つのさらなる点(すなわち、アクチュエーター設定点の一つのさらなる候補グループ)のみが、最小値がライン上にあることを確認するために評価される。例えば、
図5の実施例に示されるように、検索ラインに沿った性能モデルのコストは、候補グループeとfとの間の点で最小化される。
【0079】
第三のステップでは、オプティマイザーモジュール50の第三のサブモジュール53は、検索ラインに沿ってライン検索を実行して、第一のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点の最適化されたグループを計算する。そのため、ライン検索は、コスト最小値に対応する初期アクチュエーター設定点検索空間内の検索ラインに沿った点を識別することを目指す。ラインに沿って関数の最小値を検索するためのさまざまなライン検索方法が、当業者に公知である。
【0080】
図7の検索ラインを参照すると、黄金分割ライン検索方法を使用して、最小値を見つけることができる。黄金分割ライン検索は、評価される次の点(アクチュエーター設定点のグループ)を選択するために、黄金比(1+√5)/2)が使用される、分割アルゴリズムの一形態である。他の分割アルゴリズム(例えば、二等分)も適切であり得る。黄金分割ライン検索の一つの利点は、以前に識別されたアクチュエーター設定点の候補グループをアルゴリズム内で再利用することができ、それによって、オプティマイザーモジュール50の計算要件を減少させることである。黄金分割アルゴリズムは、曲線上の三点を使用し、最小値は、三点の間に位置すると考えられる。
【0081】
図7の実施形態では、点x
1は、黄金比を使用して、検索ラインの終点の間で選択され得る。
図7に示すように、評価されるアクチュエーター設定点の次の候補グループ(点x
2で表される)は、検索ラインを確立するために使用される二つの点に基づいて選択されてもよく、点x
1は、検索ラインが最小値をまたぐことを確認するために使用される。点x
2は、距離bがa+cと等しくなるように、検索ライン上で選択される。点×
2におけるコストの値に応じて、黄金分割アルゴリズムは、コスト最小値を画定する3点を更新する。例えば、
図7の実施形態では、点の次の三重線は、x
1、x
2、およびfである。
【0082】
黄金分割ライン検索は、検索ラインに沿った最小値が特定されるまで、検索を反復し得る。終了基準に達したら、黄金分割ライン検索を終了し得る。終了基準は、最大反復回数、および特定の閾値を下回る二つの反復間のコストの減少(すなわち、検索が、アクチュエーター設定点の最適化されたグループに収束した)のうちの一つに基づいてもよい。
【0083】
オプティマイザーモジュールがアクチュエーター設定点の最適化されたグループを識別すると、マップ更新モジュール40は、アクチュエーター設定点の最適化されたグループに基づいて、制御マップ30の一つまたは複数の超曲面を更新する。超曲面は、複数の入力変数によって画定される各制御超曲面上の位置で更新され、これらは、アクチュエーター設定点の候補グループに関連付けられるコストを評価するために使用される入力変数である。各制御マップの超曲面は、複数の入力変数によって画定される各制御超曲面上の位置で、アクチュエーター設定点の最適化されたグループにおけるアクチュエーター設定点を反映するように更新され得る。このように、マップ更新モジュール40は、制御マップによって画定される内燃エンジン1のリアルタイム動作点を更新し得る。
【0084】
マップ更新モジュール40は、アクチュエーター設定点の最適化されたグループに基づいて制御マップを更新するかどうかを決定するためのさらなるチェックを含み得る。マップ更新モジュール40は、アクチュエーター設定点の最適化されたグループに関連付けられるコストと、複数の入力変数によって画定される制御マップの各超曲面上の位置に対応するアクチュエーター設定点候補グループに関連付けられるコストとの間のコスト差を決定し得る。コスト差が更新閾値よりも小さい場合、制御マップの超曲面は更新されなくてもよい。アクチュエーター設定点のいくつかの最適化されたグループについて、制御マップの超曲面上の位置によって画定される現在のアクチュエーター設定点に対する性能の改善は、比較的小さい場合があることが理解されよう。一部の内燃エンジン1については、性能の比較的控えめな改善のためにアクチュエーター設定点を頻繁に変更することは望ましくないことがあり得る。従って、最適化された設定点へのアクチュエーター設定の変更に関連付けられるコスト削減が所定の閾値よりも小さい場合、マップ更新モジュールは、制御マップ30を更新しないことを選択し得る。例えば、所定の閾値は、以前のコストの割合であり得る。すなわち、変化が10%、5%、3%、または1%未満である場合には、マップ更新モジュール40は、制御マップ30を更新しなくてもよい。
【0085】
本開示のさらなる実施形態によれば、オプティマイザーモジュールは、アクチュエーター設定点の最適化されたグループを計算するためのプロセスを反復するように構成され得る。
図8は、オプティマイザーが、アクチュエーター設定点の最適化されたグループの計算を繰り返す、本開示のさらなる実施形態のブロック図である。
【0086】
図8に示すように、オプティマイザーモジュール50は、制御マップ30からの入力を組み込むようにさらに変更され得る。オプティマイザーモジュール50は、エンジン設定点モジュール20の制御信号出力に基づいて、アクチュエーター設定点の一つの候補グループを選択するように構成され得る。このように、内燃エンジンコントローラー10によって出力される電流制御信号は、アクチュエーター設定点の候補グループの一つとして評価されるために、マップ更新モジュール40に提供され得る。従って、マップ更新モジュール40は、最適化されたアクチュエーター設定点のグループを計算する際に、制御マップ30によって画定される現在の超曲面上の位置を評価し得る。
【0087】
当業者によって理解されるように、エンジン設定点モジュール20の出力は、マップ更新モジュール40によって以前に更新される制御マップ30に基づいてもよい。従って、エンジン設定点モジュール20の制御信号出力に基づくアクチュエーター設定点の候補グループは、以前に計算された最適化された超曲面を反映し得る。このように、内燃エンジンコントローラー10は、以前に計算された最適化された超曲面が、オプティマイザーモジュール50によって評価されるアクチュエーター設定点の候補グループに影響を与え得る、メモリーの形態を効果的に組み込み得る。
【0088】
上述の
図3の実施形態と同様に、
図8のオプティマイザーモジュール50は、初期アクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルを実行し、アクチュエーター設定点の(第一の)最適化されたグループを計算するように配置される。オプティマイザーモジュール50は、
図3の実施形態について上述したように、実質的にアクチュエーター設定点の第一の最適化されたグループを計算し得る。
【0089】
第一の最適化されたアクチュエーター設定点が計算されると、オプティマイザーモジュールは、上述の検索プロセスを繰り返すことによって発見された解を反復することを選択し得る。最適化されたアクチュエーター設定点を改善するために、オプティマイザーモジュールは、更新された検索空間を使用して検索プロセスを繰り返す。従って、初期アクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルを実施する代わりに、オプティマイザーモジュールは、制約されたアクチュエーター設定点検索空間(すなわち、初期アクチュエーター設定点検索空間のサブセット)の層状サンプルを実施する。
【0090】
制約されたアクチュエーター設定点検索空間は、以前に計算されたアクチュエーター設定点の最適化されたグループ(例えば、アクチュエーター設定点の第一の最適化されたグループ)に基づいて制約され得る。検索空間は、層状サンプル(例えば、初期アクチュエーター設定点検索空間)を実施するための検索空間を画定するために使用される各アクチュエーターの上限アクチュエーター制約および下限アクチュエーター制約を更新することによって制約され得る。各アクチュエーターに対して利用可能な検索範囲は、少なくとも30%、40%、50%、60%、または70%減少し得る。各アクチュエーターに対する上限アクチュエーター制約および下限アクチュエーター制約は、以前に計算されたアクチュエーター設定点の最適化されたグループが、制約されたアクチュエーター設定点検索空間の中心に位置するように選択され得る。当然ながら、いくつかの実施例では、以前に計算されたアクチュエーター設定点の最適化されたグループを、制約されたアクチュエーター設定点検索空間の中心に位置付けることは可能ではないことがあり得る、例えば、以前に計算されたアクチュエーター設定点の最適化されたグループは、初期アクチュエーター設定点検索空間の一つまたは複数の上限または下限制約に近い。このような場合、制約されたアクチュエーター設定点範囲は、関連する上限または下限アクチュエーター制約から画定されてもよく、その結果、以前に計算されたアクチュエーター設定点の最適化されたグループが、制約されたアクチュエーター設定点検索空間内に可能な限り中央に位置する。
【0091】
制約されたアクチュエーター設定点検索空間が決定されると、オプティマイザーモジュール50は、アクチュエーター設定点の候補グループの第二のセットを選択するために、制約されたアクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルを実行するように構成される。制約されたアクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルは、初期アクチュエーター設定点検索空間の層状サンプルと実質的に同じ様式で行われてもよい。いくつかの実施形態では、アクチュエーター設定点の候補グループのうちの一つは、以前に計算されたアクチュエーター設定点の最適化されたグループであり得る。従って、オプティマイザーモジュール50は、以前の解が後続の反復で評価されることを確実にし、また評価される必要がある第二のセット内のアクチュエーター設定点の候補グループの数を減少させる。
【0092】
オプティマイザーモジュール50は、内燃エンジンの性能モデルに従って、アクチュエーター設定点の候補グループの第二のセットを評価し、アクチュエーター設定点の候補グループの第二のセットのそれぞれに関連付けられるコストを計算する。アクチュエーター設定点の候補グループの第二のセットの各々の評価は、アクチュエーター設定点の候補グループの第一のセットについて上述したのと実質的に同じ方法で行われてもよい。
【0093】
次に、オプティマイザーモジュール50(例えば、第二のサブモジュール52)は、アクチュエーター設定点の候補グループの第二のセットに関連付けられるコストに基づいて、第二のコスト最小値に及ぶ、制約されたアクチュエーター設定点検索空間内のさらなる検索ラインを決定する。
【0094】
次に、オプティマイザーモジュール50(例えば、第三のサブモジュール53)は、さらなる検索ラインに沿ってライン検索を実行して、第二のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点のグループを計算する。オプティマイザーモジュールは、上述したように実質的にライン検索を実行し得る。
【0095】
第二のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点のグループが計算されると、オプティマイザーモジュールは、第一のコスト最小値(すなわち、以前に計算されたアクチュエーター設定点の最適化されたグループ)に対してコスト削減が達成されたかどうかを評価する。オプティマイザーモジュール50は、コスト削減が達成された場合、第二のコスト最小値に関連付けられるアクチュエーター設定点のグループに基づいて、アクチュエーター設定点の最適化されたグループを更新する。コスト削減が達成されない場合、アクチュエーター設定点の最適化されたグループは更新されない。
【0096】
従って、オプティマイザーモジュールは、アクチュエーター設定点の最適化されたグループの計算を繰り返し得る。
図6の実施形態から、オプティマイザーモジュール50は、アクチュエーター設定点の最適化されたグループの計算を何回か繰り返し得ることが理解されよう。計算が反復されるたびに、制約されたアクチュエーター設定点検索空間は、以前の計算と比較して、さらにサイズを小さくすることができる。オプティマイザーモジュールは、計算を少なくとも3回、少なくとも5回、または少なくとも7回反復するように配置され得る。
【0097】
図8の実施形態に示すように、オプティマイザーモジュール50は、候補アクチュエーター設定点の最適化されたグループをいつ反復終了するかを決定するように構成される終了モジュール54を含む。終了モジュール54は、アクチュエーター設定点の最適化されたグループを更新する際に達成されたコスト削減が収束限界を下回るとき、および/または反復の実行にかかる時間が時間制限を超えるとき、反復を終了し得る。時間制限は、オプティマイザーモジュール50に利用可能な計算リソースに基づいて画定され得る。時間制限は、オプティマイザーモジュールが例えば、少なくとも7回実行できるように設定され得る。
【0098】
オプティマイザーモジュール50の終了モジュール54が、最適化されたアクチュエーター設定点の反復を終了すると、最適化されたアクチュエーター設定点は、制御マップを更新するかどうかを決定するために、マップ更新モジュール40によって評価され得る。
【0099】
本開示は、内燃エンジンコントローラーの動作を説明する。本明細書に記載の内燃エンジンコントローラーは、一つまたは複数のプロセッサーを含み、一つまたは複数のメモリーモジュールへのアクセスを有する。内燃エンジンコントローラーによって実行される処理動作は、さまざまな処理作業を実施するように構成されるさまざまなモジュールに関して記述される。いくつかの実施形態では、さまざまなモジュールは、別個のコンピュータープロセッサーによって実行されてもよく、他の実施形態では、処理モジュールの一部または全てが、単一のプロセッサーによって実行され得る。従って、本明細書に記載の処理モジュールは、一つまたは複数のプロセッサーによって実行されるコンピュータープログラム内のさまざまな機能を表すことができることが理解されよう。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本開示の内燃エンジンコントローラー10は、さまざまな構成で内燃エンジンを制御するように構成され得る。
一つの用途は、
図1に示すように、内燃エンジンのアクチュエーター設定点を制御するためのものであり得る。内燃エンジンは、例えば、車両または機械の一部に取り付けてもよく、または発電機の一部を形成し得る。