(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】CMOS適合高速低電力乱数生成器
(51)【国際特許分類】
G06F 7/58 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
G06F7/58 680
(21)【出願番号】P 2021567907
(86)(22)【出願日】2020-05-11
(86)【国際出願番号】 IB2020054426
(87)【国際公開番号】W WO2020229996
(87)【国際公開日】2020-11-19
【審査請求日】2022-10-21
(32)【優先日】2019-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390009531
【氏名又は名称】インターナショナル・ビジネス・マシーンズ・コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL BUSINESS MACHINES CORPORATION
【住所又は居所原語表記】New Orchard Road, Armonk, New York 10504, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100112690
【氏名又は名称】太佐 種一
(72)【発明者】
【氏名】ヘクマットショアータバリ、バーマン
(72)【発明者】
【氏名】シャヒディ、ガーヴァン
【審査官】征矢 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-175458(JP,A)
【文献】特開2019-004163(JP,A)
【文献】特開2006-237760(JP,A)
【文献】特開2002-366347(JP,A)
【文献】特開2010-225768(JP,A)
【文献】特開2012-253241(JP,A)
【文献】特開2016-058667(JP,A)
【文献】特開平06-268168(JP,A)
【文献】特開2003-196080(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0042806(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F7/58
G09C1/00
G11C29/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乱数生成器であって、
増幅されたノイズ信号を生成するように構成されているノイズ増幅ユニットであって、
0付近の閾値電圧(Vt,amp)を有するノイズ増幅ユニット・トランジスタを備える、前記ノイズ増幅ユニットと、
乱数のストリームを生成するために前記ノイズ増幅ユニットからの前記増幅されたノイズ信号を処理するように構成されているコンピューティング・ユニットであって、前記ノイズ増幅ユニット内の前記ノイズ増幅ユニット・トランジスタの前記Vt,ampよりも大きいVt,computeの絶対値を有するコンピューティング・ユニット・トランジスタを備える、前記コンピューティング・ユニットと
を備える、乱数生成器。
【請求項2】
前記ノイズ増幅ユニットおよび前記コンピューティング・ユニットは、同じ集積回路チップ上にモノリシックに統合されている、請求項1に記載の乱数生成器。
【請求項3】
前記ノイズ増幅ユニットおよび前記コンピューティング・ユニットは、1つに接合されている別個の集積回路チップ上に製造されている、請求項1に記載の乱数生成器。
【請求項4】
前記ノイズ増幅ユニット・トランジスタの全てが共通のチャネル型を有し、前記共通のチャネル型はnチャネルまたはpチャネルである、請求項1ないし3のいずれかに記載の乱数生成器。
【請求項5】
前記ノイズ増幅ユニット内の前記ノイズ増幅ユニット・トランジスタの前記Vt,ampは、前記
ノイズ増幅ユニット・トランジスタの基板に電圧バイアスをかけることによってゼロ・ボルト付近までシフトされる、請求項1ないし4のいずれかに記載の乱数生成器。
【請求項6】
前記ノイズ増幅ユニット・トランジスタの前記Vt,ampは約-0.3Vから約0.3Vまでであり、これらの間の値をとる、請求項1ないし5のいずれかに記載の乱数生成器。
【請求項7】
前記ノイズ増幅ユニット・トランジスタは、
少なくとも1つの負荷トランジス
タと、
少なくとも1つの増幅トランジスタと、
を備える、請求項1ないし6のいずれかに記載の乱数生成器。
【請求項8】
前記少なくとも1つの負荷トランジスタおよび前記少なくとも1つの増幅トランジスタの前記Vt,ampは0付近である、請求項7に記載の乱数生成器。
【請求項9】
前記ノイズ増幅ユニットはN段ノイズ増幅器を備え、少なくとも1つの段は、
DCブロッキング・コンデンサ(Cb)とバイアス抵抗器(Rbias)とを備える高域フィルタを備える、請求項7または8のいずれかに記載の乱数生成器。
【請求項10】
前記ノイズ増幅ユニットはN段ノイズ増幅器を備え、少なくとも1つの段は、
DCブロッキング・コンデンサ(Cb)とバイアス・トランジスタ(Mbias)とを備える高域フィルタを備える、請求項7または8のいずれかに記載の乱数生成器。
【請求項11】
前記
ノイズ増幅ユニット・トランジスタはゼロのゲート-ソース電圧でバイアスされ、閾値下レジームで動作する、請求項1ないし10のいずれかに記載の乱数生成器。
【請求項12】
前記
ノイズ増幅ユニット・トランジスタは、前記
ノイズ増幅ユニット・トランジスタの前記Vt,ampを0付近に調節するように構成されている少なくとも1種の仕事関数設定金属を含む、請求項1ないし11のいずれかに記載の乱数生成器。
【請求項13】
前記コンピューティング・ユニット・トランジスタおよび前記ノイズ増幅ユニット・トランジスタはいずれもnチャネル・トランジスタを備え、前記ノイズ増幅ユニット内の前記nチャネル・トランジスタの金属ゲート電極の仕事関数は、前記コンピューティング・ユニット内の前記nチャネル・トランジスタの金属ゲート電極の仕事関数よりも低い、請求項12に記載の乱数生成器。
【請求項14】
前記コンピューティング・ユニット・トランジスタおよび前記ノイズ増幅ユニット・トランジスタはいずれもpチャネル・トランジスタを備え、前記ノイズ増幅ユニット内の前記pチャネル・トランジスタの金属ゲート電極の仕事関数は、前記コンピューティング・ユニット内の前記pチャネル・トランジスタの金属ゲート電極の仕事関数よりも高い、請求項12に記載の乱数生成器。
【請求項15】
前記
ノイズ増幅ユニット・トランジスタおよび前記コンピューティング・ユニット・トランジスタは共通のチャネル型を有し、前記
ノイズ増幅ユニット・トランジスタは、前記コンピューティング・ユニット・トランジスタのチャネル・ドーピング濃度よりも低いチャネル・ドーピング濃度を有する、請求項1ないし14のいずれかに記載の乱数生成器。
【請求項16】
前記
ノイズ増幅ユニット・トランジスタおよび前記コンピューティング・ユニット・トランジスタは共通のチャネル型を有し、前記
ノイズ増幅ユニット・トランジスタは前記コンピューティング・ユニット・トランジスタよりも薄いチャネルを有する、請求項1ないし15のいずれかに記載の乱数生成器。
【請求項17】
前記
ノイズ増幅ユニット・トランジスタおよび前記コンピューティング・ユニット・トランジスタは共通のチャネル型を有し、前記
ノイズ増幅ユニット・トランジスタは、前記コンピューティング・ユニット・トランジスタのチャネル・ドーパントとは反対の極性のチャネル・ドーパントを含む、請求項1ないし16のいずれかに記載の乱数生成器。
【請求項18】
前記コンピューティング・ユニットはアナログ-デジタル変換器とデジタル・プロセッサとを備え、前記アナログ-デジタル変換器は前記増幅されたノイズ信号をデジタル化するように構成されており、前記デジタル・プロセッサは、乱数のストリームを生成するために、前記アナログ-デジタル変換器によってデジタル化されている前記増幅されたノイズ信号を処理するように構成されており、前記コンピューティング・ユニットは、前記少なくとも1つの負荷トランジスタおよび前記少なくとも1つの増幅トランジスタの前記Vt,ampよりも大きいVt,computeの正の絶対値を有するコンピューティング・ユニット・トランジスタを備える、請求項7ないし17のいずれかに記載の乱数生成器。
【請求項19】
前記コンピューティング・ユニットは、
サンプル・ホールド回路と比較器とを備えるコンピューティング・ユニットを備え、前記サンプル・ホールド回路は前記増幅されたノイズ信号をサンプリングするように構成されており、前記比較器は、乱数のストリームを生成するために前記サンプル・ホールド回路によってサンプリングされた前記増幅されたノイズ信号を基準電圧(Vref)と比較するように構成されており、前記コンピューティング・ユニットは、前記少なくとも1つの負荷トランジスタおよび前記少なくとも1つの増幅トランジスタの前記Vt,ampよりも大きいVt,computeの正の絶対値を有するコンピューティング・ユニット・トランジスタを備える、請求項7ないし17のいずれかに記載の乱数生成器。
【請求項20】
前記少なくとも1つの負荷トランジスタおよび前記少なくとも1つの増幅トランジスタは約-0.3Vから約0.3VまでのVt,ampを各々有し、これらの間の値をとる、請求項18または19のいずれかに記載の乱数生成器。
【請求項21】
コンピュータ装置に実装された乱数生成器による乱数生成のための方法であって、
前記乱数生成器は、
0付近の閾値電圧(Vt,amp)を有するノイズ増幅ユニット・トランジスタを備える、ノイズ増幅ユニットと、
前記ノイズ増幅ユニット・トランジスタの前記Vt,ampよりも大きいVt,computeの正の絶対値を有するコンピューティング・ユニット・トランジスタを備える、コンピューティング・ユニットと、
を含み、
前記ノイズ増幅ユニット
により、増幅されたノイズ信号を生成するステップと、
乱数のストリームを生成するために
、前記コンピューティング・ユニット
により、前記ノイズ増幅ユニットからの前記増幅されたノイズ信号を処理するステッ
プと、
を含む、方法。
【請求項22】
前記ノイズ増幅ユニット・トランジスタの前記Vt,ampは約-0.3Vから約0.3Vまでであり、これらの間の値をとる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記増幅されたノイズ信号をアナログ-デジタル変換器を使用してデジタル化するステップと、
前記乱数のストリームを生成するために、前記アナログ-デジタル変換器によってデジタル化されている前記増幅されたノイズ信号を処理するステップと、
を更に含む、請求項21または22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
サンプル・ホールド回路を使用して前記増幅されたノイズ信号をサンプリングするステップと、
前記乱数のストリームを生成するために、前記サンプル・ホールド回路によってサンプリングされた前記増幅されたノイズ信号を基準電圧(Vref)と比較するステップと、
を更に含む、請求項21ないし23のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は乱数生成に関し、より詳細には、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)適合の高速低電力乱数生成器、および乱数生成のためのその使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
乱数生成はセキュアなシステムの重要な要素であり、暗号化およびセキュアな通信において広く使用されている。例えば、(数学的アルゴリズムから生成される疑似乱数ではなく)真の乱数に基づいて生成された場合に他のホストおよびユーザが原則的に復号不可能な、一意のランダム・キーが生成され、ホストとユーザの間で転送され得る。乱数は確率的計算においても注目される。
【0003】
しかしながら、ランダムな揺らぎの物理的発生源は一般に以下の制限、(i)生成するのに高電力が必要である、例えばアバランシェ・ダイオードのショット・ノイズ、(ii)増幅するのに高電力が必要である、例えば抵抗器の熱雑音、(iii)半導体技術と適合しない、例えば、真空管のショット・ノイズ、のうちの、1つまたは複数を呈する。電力消費は、システムの計算および信号送信がバッテリ電力によって予め制約を受ける多くの用途において、重要な要因である。
【0004】
例えば、アバランシェ・ダイオード(および程度は劣るがツェナー・ダイオード)などのソリッド・ステート・デバイスは大きなショット・ノイズを生み出すことができるが、このレジームで動作させるためには、高いバイアス電圧またはバイアス電流あるいはその両方を必要とする。そのようなデバイス(例えば、逆のバイアスをかけられるバイポーラ・トランジスタのベース-エミッタ接合)は、乱数生成用のノイズ源として使用されている。しかしながら、この必要な電力は、電力消費に厳しい制約のあるモノのインターネット(IoT)などの用途にとっては高過ぎる。
【0005】
したがって、低電力で高速の乱数生成のための技術が望ましいと考えられる。
【発明の概要】
【0006】
第1の観点から見ると、本発明は、乱数生成器であって、0付近の閾値電圧(Vt,amp)を有するノイズ増幅ユニット・トランジスタと、乱数のストリームを生成するためにノイズ増幅ユニットからの増幅されたノイズ信号を処理するように構成されているコンピューティング・ユニットであって、ノイズ増幅ユニット内のノイズ増幅ユニット・トランジスタのVt,ampよりも大きいVt,computeの絶対値を有するコンピューティング・ユニット・トランジスタを備える、コンピューティング・ユニットと、を備える、乱数生成器、を提供する。
【0007】
また別の観点から見ると、本発明は、乱数生成のための方法であって、ゼロ付近のVt,ampを有するノイズ増幅ユニット・トランジスタを備えるノイズ増幅ユニットを使用して、増幅されたノイズ信号を生成するステップと、乱数のストリームを生成するためにコンピューティング・ユニットを使用してノイズ増幅ユニットからの増幅されたノイズ信号を処理するステップであって、コンピューティング・ユニットは、ノイズ増幅ユニット・トランジスタのVt,ampよりも大きいVt,computeの正の絶対値を有するコンピューティング・ユニット・トランジスタを備える、処理するステップと、を含む方法を提供する。
【0008】
また別の観点から見ると、本発明は、乱数生成器であって、増幅されたノイズ信号を生成するように構成されているノイズ増幅ユニットであって、少なくとも1つの負荷トランジスタ、および、0付近のVt,ampを有する少なくとも1つの増幅トランジスタを備えるノイズ増幅ユニットと、アナログ-デジタル変換器およびデジタル・プロセッサを備えるコンピューティング・ユニットであって、アナログ-デジタル変換器は増幅されたノイズ信号をデジタル化するように構成されており、デジタル・プロセッサは、乱数のストリームを生成するために、アナログ-デジタル変換器によってデジタル化されている増幅されたノイズ信号を処理するように構成されており、コンピューティング・ユニットは、少なくとも1つの負荷トランジスタおよび少なくとも1つの増幅トランジスタのVt,ampよりも大きいVt,computeの正の絶対値を有するコンピューティング・ユニット・トランジスタを備える、コンピューティング・ユニットと、を備える乱数生成器を提供する。
【0009】
また別の観点から見ると、本発明は、乱数生成器であって、増幅されたノイズ信号を生成するように構成されているノイズ増幅ユニットであって、少なくとも1つの負荷トランジスタ、および、0付近のVt,ampを有する少なくとも1つの増幅トランジスタを備えるノイズ増幅ユニットと、サンプル・ホールド回路および比較器を備えるコンピューティング・ユニットであって、サンプル・ホールド回路は増幅されたノイズ信号をサンプリングするように構成されており、比較器は、乱数のストリームを生成するためにサンプル・ホールド回路によってサンプリングされた増幅されたノイズ信号を基準電圧(Vref)と比較するように構成されており、コンピューティング・ユニットは、少なくとも1つの負荷トランジスタおよび少なくとも1つの増幅トランジスタのVt,ampよりも大きいVt,computeの正の絶対値を有するコンピューティング・ユニット・トランジスタを備える、コンピューティング・ユニットと、を備える乱数生成器を提供する。
【0010】
本発明は、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)適合高速低電力乱数生成器、および乱数生成のためのその使用法を提供する。
【0011】
本発明の一態様では、乱数生成器が提供される。乱数生成器は、増幅されたノイズ信号を生成するように構成されているノイズ増幅ユニットであって、0付近の閾値電圧(Vt,amp)を有するノイズ増幅ユニット・トランジスタを含む、ノイズ増幅ユニットと、乱数のストリームを生成するためにノイズ増幅ユニットからの増幅されたノイズ信号を処理するように構成されているコンピューティング・ユニットであって、ノイズ増幅ユニット内のノイズ増幅ユニット・トランジスタのVt,ampよりも大きいVt,computeの絶対値を有するコンピューティング・ユニット・トランジスタを備える、コンピューティング・ユニットと、を含む。
【0012】
本発明の別の態様では、別の乱数生成器が提供される。乱数生成器は、増幅されたノイズ信号を生成するように構成されているノイズ増幅ユニットであって、少なくとも1つの負荷トランジスタ、および0付近のVt,ampを有する少なくとも1つの増幅トランジスタを含むノイズ増幅ユニットと、アナログ-デジタル変換器およびデジタル・プロセッサを有するコンピューティング・ユニットであって、アナログ-デジタル変換器は増幅されたノイズ信号をデジタル化するように構成されており、デジタル・プロセッサは、乱数のストリームを生成するために、アナログ-デジタル変換器によってデジタル化されている増幅されたノイズ信号を処理するように構成されており、コンピューティング・ユニットは、少なくとも1つの負荷トランジスタおよび少なくとも1つの増幅トランジスタのVt,ampよりも大きいVt,computeの正の絶対値を有するコンピューティング・ユニット・トランジスタを含む、コンピューティング・ユニットと、を含む。
【0013】
本発明の更に別の態様では、更に別の乱数生成器が提供される。乱数生成器は、増幅されたノイズ信号を生成するように構成されているノイズ増幅ユニットであって、少なくとも1つの負荷トランジスタ、および、0付近のVt,ampを有する少なくとも1つの増幅トランジスタを含むノイズ増幅ユニットと、サンプル・ホールド回路および比較器を有するコンピューティング・ユニットであって、サンプル・ホールド回路は増幅されたノイズ信号をサンプリングするように構成されており、比較器は、乱数のストリームを生成するためにサンプル・ホールド回路によってサンプリングされた増幅されたノイズ信号を基準電圧(Vref)と比較するように構成されており、コンピューティング・ユニットは、少なくとも1つの負荷トランジスタおよび少なくとも1つの増幅トランジスタのVt,ampよりも大きいVt,computeの正の絶対値を有するコンピューティング・ユニット・トランジスタを備えるコンピューティング・ユニットと、を含む。
【0014】
本発明のまた更に別の態様では、乱数生成のための方法が提供される。方法は、ゼロ付近のVt,ampを有するノイズ増幅ユニット・トランジスタを有するノイズ増幅ユニットを使用して、増幅されたノイズ信号を生成するステップと、乱数のストリームを生成するためにコンピューティング・ユニットを使用してノイズ増幅ユニットからの増幅されたノイズ信号を処理するステップであって、コンピューティング・ユニットは、ノイズ増幅ユニット・トランジスタのVt,ampよりも大きいVt,computeの正の絶対値を有するコンピューティング・ユニット・トランジスタを有する、処理するステップと、を含む。
【0015】
本発明ならびに本発明の更なる特徴および利点のより完全な理解は、以下の詳細な説明および図面を参照することによって得られるであろう。
【0016】
ここで本発明について、以下の図に示されているような好ましい実施形態を参照して、単なる例として記載する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る、本願の乱数生成器の例示的なデジタル実装形態を示す図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る、本願の乱数生成器の例示的なアナログ実装形態を示す図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る、例示的なサンプル・ホールド回路を示す図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る、例示的な比較器を示す図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る、基準電圧(V
ref)を較正するための例示的なシステムを示す図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る、V
refを生成するための例示的なシステムを示す図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る、例示的なフィン型電界効果トランジスタを示す図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る
図7のフィンFETの断面図を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態に係る、例示的なプレーナ型FETを示す断面図である。
【
図10】本発明の実施形態に係る、コンピューティング・ユニットを含むチップをノイズ増幅ユニットを含むチップに接合するために使用されているはんだバンプ接合を示す断面図である。
【
図11】本発明の実施形態に係る、例示的なノイズ増幅器回路を示す断面図である。
【
図12】本発明の実施形態に係る、少なくとも1つの改変された負荷トランジスタおよび少なくとも1つの改変された増幅トランジスタを有する例示的なノイズ増幅器回路を示す断面図である。
【
図13】本発明の実施形態に係る多段ノイズ増幅器設計のN段目のノイズ増幅器回路を示す断面図である。
【
図14】本発明の実施形態に係る、例示的なN段ノイズ増幅器回路を示す断面図である。
【
図15】本発明の実施形態に係る、バイアス・トランジスタ(M
bias)を有する例示的なN段ノイズ増幅器回路を示す断面図である。
【
図16】本発明の実施形態に係る、本願の乱数生成器を使用する乱数生成のための例示的な手法を示す図である。
【
図17】本発明の実施形態に係る、閾値下レジームにおいてノイズ増幅ユニットのトランジスタがゼロのゲート-ソース電圧でどのようにバイアスを受け動作し得るかを示すプロットである。
【
図18】本発明の実施形態に係る、例示的な高速低電力ノイズ増幅ユニットの様々な段のシミュレーションされた出力を示す、例示のシミュレーション・プロットである。
【
図19】本発明の実施形態に係る、本明細書に提示する技術を実施するための例示的な装置を示す図である。
【
図20】本発明の実施形態に係る、ゲート電極仕事関数の選択的な改変によって、ノイズ増幅ユニットをコンピューティング・ユニットとモノリシックに一体製造する(co-fabricate)ための例示的な手法を示す図である。
【
図21】本発明の実施形態に係る、基板のドーピングの選択的な改変によって、ノイズ増幅ユニットをコンピューティング・ユニットとモノリシックに一体製造するための例示的な手法を示す図である。
【
図22】本発明の実施形態に係る、SOI基板厚さを選択的に大きくするためにエピタキシャル成長を使用するSOI基板厚さの選択的な改変によって、ノイズ増幅ユニットをコンピューティング・ユニットとモノリシックに一体製造するための例示的な手法を示す図である。
【
図23】本発明の実施形態に係る、SOI基板厚さを選択的に小さくするためにエッチングを使用するSOI基板厚さの選択的な改変によって、ノイズ増幅ユニットをコンピューティング・ユニットとモノリシックに一体製造するための例示的な手法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上で示したように、乱数生成用のノイズ源として、アバランシェ・ダイオードおよびツェナー・ダイオードなどの、ソリッド・ステート・デバイスを使用することができる。しかしながら、これらのデバイスは動作に高いバイアス電圧またはバイアス電流あるいはその両方を必要とし、したがってIoTなどの超低電力用途には適していない。
【0019】
他方で、弱いノイズ源が使用される場合には、増幅のために高利得の増幅器が必要である。高利得の増幅器には、カスケード接続(したがって複数の段に起因するより高い電流)、カスコード接続(したがって、トランジスタの飽和状態の維持を補償するためのより高い電圧)、または両方が必要である。このため、高利得の増幅器に必要な電力は、IoTなどの超低電力用途にとっては高過ぎる。
【0020】
有利には、本明細書では、CMOS適合高速低電力乱数生成器、および乱数生成においてこれを使用するための技術が提供される。上で示したように、本願の乱数生成器は、コンピューティング・ユニットと高速低電力ノイズ増幅ユニットとを有するハイブリッド・システムである。好ましくは、ノイズ増幅ユニットは、動作周波数が100メガヘルツ(MHz)を超え、電力消費が10マイクロワット(μW)未満である。例えば、1つの例示的な実施形態では、ノイズ増幅ユニットは、動作周波数が約500MHz、電力消費が約1μWである。以下で詳細に説明するように、コンピューティング・ユニットは、標準的なデジタル、アナログ、および混合信号回路として構成されている、標準的なノーマリ・オフ型(エンハンスメント・モード)トランジスタを含む。ノーマリ・オフ型トランジスタは、絶対的な正の値(すなわち、nチャネル・トランジスタの場合の正の閾値電圧値、およびpチャネル・トランジスタの場合の負の閾値電圧値)を有する閾値電圧を有する。高速低電力ノイズ増幅ユニットは、ゼロ付近の閾値電圧(Vt)を有し、トランジスタおよび抵抗性バイアスのネットワークによって生成されるノイズの増幅のための増幅器回路として構成されている、トランジスタを含む。明確にするために、コンピューティング・ユニット・トランジスタの閾値電圧を本明細書においてVt,computeと呼ぶ場合もあり、ノイズ増幅ユニット・トランジスタの閾値電圧を本明細書においてVt,ampと呼ぶ場合もある。
【0021】
各増幅器回路は、少なくとも1つの増幅トランジスタと1つの負荷トランジスタとを含む。以下で詳細に説明するように、1つの例示的な実施形態では、増幅トランジスタおよび負荷トランジスタには、ゼロのゲート-ソース電圧でバイアスされ、閾値下レジームで動作する。増幅器回路によって生成された増幅されたノイズは次いで、乱数のストリームを生成するためにコンピューティング・ユニットによって処理される。
【0022】
本願の乱数生成器の概要が
図1および
図2に示されている。例えば、1つの例示的な実施形態によれば、乱数生成器のデジタル実装形態が、
図1においてシステム100として示されている。
図1に示すように、(ノイズ増幅ユニット内の)ノイズ増幅器102によって増幅されたノイズは、アナログ-デジタル変換器(A/D)104を使用してデジタル化される。(コンピューティング・ユニット内の)デジタル・プロセッサ106は次いで、デジタル化されたノイズ信号を処理して乱数を生成するために使用される。例えば、単に例として、V
ref=0について、増幅されたノイズ信号がゼロまたは正の値を有する場合、これはロジック「1」を登録することができ、これが負の値を有する場合、これはロジック「0」を登録することができ、またはこの逆も成り立つ。後で説明する
図18も参照されたい。いくつかの実施形態では、デジタル・プロセッサ106は、乱数を生成するタスクに専用の特定用途向けプロセッサである。他の実施形態では、デジタル・プロセッサ106は、乱数の生成に加えて様々なコンピューティング・タスクを実行する、中央処理装置(CPU)などの汎用プロセッサである。ノイズ増幅ユニットは、一般にアナログ増幅器回路と共に使用されるようなバッテリ、電圧調整器、またはノイズ・シールド、あるいはその組合せなどの、他の構成要素を含み得る。コンピューティング・ユニットは、より大きいコンピューティング・システムの様々な他の構成要素を含み得るか、またはそれらと連携して動作し得る(例えば、後で説明する
図19を参照)。
【0023】
別の例示的な実施形態によれば、本願の乱数生成器のアナログ実装形態が、
図2においてシステム200として示されている。
図2に示すように、ノイズ増幅器202(すなわちノイズ増幅ユニット)によって増幅されたノイズ信号は、サンプル・ホールド(S&H)回路204を使用してサンプリングされる。乱数を生成するために、(コンピューティング・ユニット内の)比較器206が、増幅されたノイズ信号を基準電圧(V
ref)と比較する。例えば、単に例として、増幅されたノイズ信号がV
ref以上である場合、これはロジック「1」を登録することができ、増幅されたノイズ信号がV
ref未満の場合、これはロジック「0」を登録することができ、またはこの逆も成り立つ。例えば、単に例として、Vdd=1Vであるドレイン-ドレイン供給電圧およびVss=0Vであるソース-ソース供給電圧を使用して、ノイズ増幅器202にバイアスをかける場合、V
refは、V
ref=Vdd/2=0.5Vとなるように選ぶことができる(例えば、後で説明する
図18を参照)。基準電圧V
refは、例えば低域フィルタ(以下を参照)を使用して、ノイズ増幅器出力のDCレベルを平均化、すなわちプロービングすることによって較正できる。いくつかの実施形態では、S&H回路204および比較器回路206は、集積回路として製造されるアナログまたは混合信号プロセッサの一部であり、より大きいコンピューティング・システムにおいて採用される(例えば、後で説明する
図19を参照)。
【0024】
本願の技術に従って利用され得る例示的なサンプル・ホールド(S&H)回路300が、
図3に示されている。サンプル・ホールド回路300は、連続的に変動するノイズ信号(信号入力)をサンプリングし、その値を一定レベルに保持する(出力(保持値))アナログ・デバイスである。
【0025】
本願の技術に従って利用され得る例示的な比較器400が、
図4に示されている。V
IN>V
REFである場合にはV
OUT=+V
Cであり、V
IN<V
REFである場合にはV
OUT=-V
Cである。電力消費を更に低減するために、ノイズ増幅器202、比較器400、およびS&H回路300への電力供給を、キー生成の所望の開始時間まで遮断してもよい。
【0026】
上で示したように、V
refは、ノイズ増幅器502の出力を平均化することによって較正できる。例えば、
図5を参照されたい。
図5に示すように、例示的な実施形態によれば、ノイズ増幅器502のDCレベル出力は、V
refを生成するために、低域フィルタ506を使用して平均化される。負荷が引き込んだ電流の影響を信号が受けるのを防止するために、電圧バッファ504を利用することができる。
【0027】
V
refを生成するために、ノイズ増幅器502からの出力の平均化を連続的に行うことができる。
図6を参照されたい。
図6に示すように、ノイズ増幅器502の出力は、直結フィードバック・ループを有するオペアンプ(OP-AMP)を含む電圧バッファ602に供給される。電圧バッファ602からの出力上には抵抗器RおよびコンデンサCが存在して、この結果パッシブ(RC)低域フィルタが形成されている。別法として、ノイズ増幅器502からの出力を、ランダムな数列、例えばキーの生成の開始前に、所望の時間間隔にわたって平均化することができる。いくつかの実施形態では、パッシブRC低域フィルタをアクティブ低域フィルタで置き換えてもよい。そのようなアクティブ低域フィルタが高い入力インピーダンスを有する場合、電圧バッファを省略できる。
【0028】
トランジスタ:上で強調したように、コンピューティング・ユニットは、標準的なデジタル、アナログ、および混合信号回路として構成されている、標準的なノーマリ・オフ型(エンハンスメント・モード)トランジスタを含む。「ノーマリ・オフ型」とは、コンピューティング・ユニット内のトランジスタが、閾値電圧の正の絶対値(すなわち、nチャネル・トランジスタでは正、pチャネル・トランジスタでは負)を有することを意味している。
【0029】
他方で、上で強調したように、ノイズ増幅ユニットは、ゼロ付近の閾値電圧(Vt)、すなわち、Vt,ampを有するトランジスタを含む。単に例として、ゼロ付近のVt,ampは0±0.3ボルト(V)であり得る、すなわち、Vt,ampは約-0.3Vから約0.3Vまでであり、これらの間の値をとる。一般に、各トランジスタは、チャネルによって相互接続されているソースおよびドレインを含む。ゲートはチャネルを通る電子の流れを制御する。
【0030】
電界効果トランジスタ(FET)デバイスに関して、Vt≒VFB+2φF+QB/Coxであり、式中、VFBはフラット・バンド電圧であり、φFは半導体チャネル材料の真性フェルミ準位に対するフェルミ・ポテンシャルであり、QBはゲート下のチャネルにおける空乏領域の電荷であり、Coxはゲートの単位面積あたりの誘電体キャパシタンスである。更に、n型チャネル・ドーピングではVFB=φMS-Qox/Cox、φF=-Vth ln(ND/ni)、p型チャネル・ドーピングではφF=Vth ln(NA/ni)であり、φMSはゲート電極とチャネル半導体材料の間の仕事関数の差であり、Qoxはゲート誘電体と関連付けられた等価な電荷であり(固定電荷および界面電荷を含む)、Vthは熱電圧(室温で約26mV)であり、NDは半導体チャネル材料におけるn型ドーピング(ドナー)の濃度であり、NAは半導体チャネルにおけるp型ドーピング(アクセプタ)の濃度であり、niは半導体チャネル材料における固有のキャリア濃度であり、φMS=φM-φSであって、式中、φMはゲート電極の仕事関数であり、φSはφS=χ+Eg/2q+φFによって与えられる半導体チャネル材料の仕事関数であり、式中、χは半導体チャネル材料の電子親和力であり、Egは半導体チャネル材料のバンドギャップであり、qは電子電荷である。空乏領域の幅WDがSOI層の厚さtchannelよりも小さい(すなわち、WD<tchannel)、バルク基板トランジスタおよび部分空乏型シリコン・オン・インシュレータ(SOI)トランジスタに関して、n型チャネル・ドーピングではQB=-qNDWD、およびp型チャネル・ドーピングではQB=qNAWDであり、式中、n型チャネル・ドーピングではWD=[=-2εS・2φF/qND]1/2、およびp型チャネル・ドーピングではWD=[2εS・2φF/qNA]1/2であり、式中、εSは半導体チャネル材料の誘電率である。完全空乏型チャネル・トランジスタの場合、n型チャネル・ドーピングではQB=-qND tchannel、p型チャネル・ドーピングではQB=qNA tchannelである。
【0031】
したがって、Vtは、製造プロセス中に上記したパラメータ、具体的には基板ドーピングNAまたはND、ゲート誘電体キャパシタンスCox、ゲート電極仕事関数φM、(完全空乏型SOIに適用可能な)SOI厚さtchannel、およびこれらの組合せを調整することによって調節できる。更に、バルク・トランジスタまたはSOIトランジスタのキャリア基板の本体にバイアス電圧VBを印加することによって、製造プロセス後にVtを変更してもよい。バルク・トランジスタに関して、結果的なVtシフトはおおよそ、p型チャネル・ドーピングでは[2εSqNA(-VB)]1/2/Cox、n型チャネル・ドーピングでは-[2εSqND(VB)]1/2/Coxである。完全空乏型SOIトランジスタに関して、Vtのシフトはおおよそ-VBCbox/Coxであり(チャネル・ドーピングが無いかまたは少ないこと、薄いSOI、または背面のチャネル反転層、あるいはその組合せを仮定した場合)、式中、Cboxは埋込み絶縁体の誘電体キャパシタンスである。上記の等式は指針として提供されているが、これらは妥当性の範囲に限界のある近似的なものであり、当技術分野で一般的に知られているように、精密な調整のために、必要に応じてより高次のデバイス・モデル、数値シミュレーション、または実験、あるいはその組合せと組み合わせ可能であることに留意すべきである。
【0032】
例示的なフィンFET700が
図7に示されている。以下に詳細に記載するように、本願の技術は、プレーナ型および非プレーナ型トランジスタ構造体(例えば、フィンFET)をバルクまたはシリコン・オン・インシュレータ(SOI)ウエハ技術と連携させて使用して実施され得る。したがって、
図7のフィンFETデバイスの描写は単に説明の目的のためのものであり、本願の教示を1つの特定のタイプのトランジスタ構造体に限定することは意図していない。
【0033】
図7に示すように、ソースおよびドレインは、少なくとも1つの(この場合は「フィン形状の」)チャネルによって相互接続されている。フィンを覆ってゲート電極が存在している。ゲート電極は、ゲート・スペーサによってソースおよびドレインからオフセットされている。この例では、フィンFET700はSOIウエハ上に形成されている。一般に、SOIウエハは、埋込み絶縁体によって下にある基板から分離されているSOI層を含む。埋込み絶縁体が酸化物である場合、本明細書ではこれを埋込み酸化物またはBOXとも呼ぶ。フィンはSOI層内にパターニングされる。
【0034】
上で説明したように、コンピューティング・ユニットで利用されるトランジスタは、絶対的な正のV
t値であるV
t,computeをもたらす標準値を有するパラメータを使用して製造される。ノイズ増幅ユニット用のトランジスタのV
tをゼロ付近のV
t,ampの値を有するように調節することは、いくつかの方法で実現可能である。例えば、1つの例示的な実施形態では、トランジスタは、フィンFET(バルクまたはシリコン・オン・インシュレータ(SOI))などの高誘電率(high-κ)/金属ゲート電極トランジスタ、完全空乏型SOI(FDSOI)トランジスタ、または部分空乏型SOI(PDSOI)トランジスタ、あるいはその組合せであり、これらにおいては高誘電率ゲート誘電体がチャネルから金属ゲート電極を分離している。用語「高誘電率」とは、二酸化ケイ素の比誘電率よりも遥かに高い比誘電率κを有する材料を指す(例えば、SiO
2の4とは異なり、酸化ハフニウム(HfO
2)では誘電率κ=25)。その場合、ゼロ付近のV
t,ampを達成するために、nチャネル/pチャネルの高誘電率/金属ゲート・トランジスタに、(コンピューティング・ユニット内のトランジスタに使用されるものと比較して)それぞれより低い/より高い仕事関数を有する金属ゲート電極を使用することができる。例えば、
図8を参照されたい。
【0035】
図8は、フィンFET700の線A-A’(
図7を参照)に沿った断面図である。ここでも、フィンFETのアーキテクチャの描写は、単に本願の技術を説明するために提供された、非限定的な例である。
図8に示すように、ゲート誘電体がゲート電極からフィン/チャネルを分離する。例示的な実施形態によれば、ゲート電極は金属ゲートであり、ゲート誘電体は高誘電率ゲート誘電体である。その場合、ゼロ付近のV
t,ampを達成するために、nチャネル/pチャネルの高誘電率/金属ゲート・トランジスタに、コンピューティング・ユニットに使用されるものと比較してそれぞれより低い/より高い仕事関数を有するゲート電極金属を使用することができる。例えば、単に例として、コンピューティング・ユニット内で使用されるnチャネル・トランジスタと比較して、ノイズ増幅ユニット内のnチャネル・トランジスタについての所望のV
t減少量が0.3Vである場合には、ノイズ増幅ユニット内のnチャネル・トランジスタには、コンピューティング・ユニット内のnチャネル・トランジスタに使用されるものよりも0.3電子ボルト(eV)低い仕事関数を有するゲート電極金属を使用することができる。
【0036】
好適なn型仕事関数設定ゲート電極金属(work-function setting gate electrode metal)としては、限定するものではないが、窒化チタン(TiN)、窒化タンタル(TaN)、あるいは、チタン・アルミナイド(TiAl)、チタン・アルミニウム・ナイトライド(TiAlN)、チタン・アルミニウム・カーバイド(TiAlC)、タンタル・アルミナイド(TaAl)、タンタル・アルミニウム・ナイトライド(TaAlN)、もしくはタンタル・アルミニウム・カーバイド(TaAlC)、またはその組合せなどの、アルミニウム(Al)含有合金、あるいはその組合せが挙げられる。好適なp型仕事関数設定ゲート電極金属としては、限定するものではないが、TiN、TaN、およびタングステン(W)が挙げられる。TiNおよびTaNは、p型仕事関数設定金属として使用する場合、比較的厚い(例えば、約2nmよりも厚い)。ただし、ゲートのリーク電流などの電気的特性を改善するために、n型仕事関数スタック(n-type work-function stack)となったAl含有合金の下で、非常に薄いTiNまたはTaNの層(例えば、約2nm未満)を使用してもよい。このように、上に示した例示的なn型およびp型仕事関数設定金属には、ある程度の重複が存在する。好適な高誘電率ゲート誘電体としては、限定するものではないが、HfO2または酸化ランタン(La2O3)あるいはその両方が挙げられる。
【0037】
単に例として、高誘電率/金属ゲート・トランジスタに関する仕事関数を、採用される仕事関数設定ゲート電極金属または金属の組合せの特定のタイプ/量に基づいて、大きく/小さくすることができる。例えば、約10nm厚さのTaNキャップを約3.6nm厚さのTiNゲート上に適用することで、約4.3電子ボルト(eV)から約4.8eVまでゲートの実効仕事関数(EWF)が大きくなるが、一方で、このTiNゲート上に同じ厚さのTiNキャップがある場合、EFWは約4.6eVまでしか大きくならない。例えば、K. Choiらの“The Effect of Metal Thickness, Overlayer and High-k Surface Treatment on the Effective Work Function of Metal Electrode,” Proceedings of 35th European Solid-State Device Research Conference, 2005 (ESSDERC 2005), pp. 101-104(2005年9月)を参照されたい。
【0038】
別法として、別の例示的な実施形態によれば、ノイズ増幅器で使用されるトランジスタは部分空乏化(PD)され、コンピューティング・ユニット内のトランジスタに使用されるものと比較してより低いドーピング濃度のチャネルを使用することによって、ゼロ付近の閾値電圧V
t,ampを有するように調節される。好適なn型ドーパントとしては、限定するものではないが、リン(P)またはヒ素(As)あるいはその両方が挙げられる。好適なp型ドーパントとしては、限定するものではないが、ホウ素(B)が挙げられる。これらのトランジスタは、プレーナ型バルクまたはPDSOIウエハ技術で実装され得る。例えば、
図9を参照されたい。
【0039】
図9は、本願の技術に従って利用され得るプレーナ型FET900の断面図である。ここでも、この特定のFETのアーキテクチャの描写は、単に本願の技術を説明するために提供された、非限定的な例である。
図9に示すように、ソースとドレインを相互接続するチャネルは、部分的に空乏化している。ゼロ付近のV
t,ampを達成するために、部分的に空乏化したチャネルのドーピング濃度を、コンピューティング・ユニットで使用される濃度と比較して(コンピューティング・ユニットのV
t,computerに対して)下げることができる。上で説明したように、例えばnチャネル・トランジスタについて、所望のV
t減少量ΔV
tは、ΔV
t=V
t,amp-V
t,compute=φ
F,amp-φ
F,compute+(Q
B,amp-Q
B,compute)/C
ox=V
th ln(N
A,amp/N
A,compute)+2(ε
SqV
th)
1/2{[N
A,amp ln(N
A,amp/n
i)]
1/2-[N
A,compute ln(N
A,compute/n
i)]
1/2}/C
oxによって与えられ、式中、下付き文字「compute」および「amp」はそれぞれ、コンピューティング・ユニットおよびノイズ増幅ユニットにおける値を指す。所望のΔV
tに必要とされるN
A,ampは、上記の等式を数学的に解くことによって求めることができる。
【0040】
更に別の例示的な実施形態によれば、ノイズ増幅器で使用されるトランジスタはPDSOIトランジスタであり、チャネル厚さT
CHANNEL(
図9を参照)を小さくすることによって、ゼロ付近の閾値電圧、V
t,ampを有するように改変されている。PDSOIトランジスタは多くの場合、約50ナノメートル(nm)から約100nmまでのチャネル厚さを有する。この場合、例示的な実施形態によれば、PDSOIトランジスタのT
CHANNELは約20nmから約50nmまでであり、これらの間の値をとる。上で説明したように、例えばnチャネル・トランジスタについて、所望のΔV
tは、ΔV
t=V
t,amp-V
t,compute=(Q
B,amp-Q
B,compute)/C
ox=(qN
At
channel,amp-qN
At
channel,compute)/C
ox=qN
AΔt
channel/C
oxによって与えられ、式中、下付き文字「compute」および「amp」およびはそれぞれ、コンピューティング・ユニットおよびノイズ増幅ユニットにおける値を指す。したがって、チャネル厚さをΔt
channel=ΔV
tC
ox/qN
Aだけ小さくすることで、所望のΔV
tを得ることができる。
【0041】
また更に別の例示的な実施形態では、ノイズ増幅ユニットで使用されるトランジスタのVtは、コンピューティング・ユニット内の同じチャネル型を有するエンハンスメント・モード・トランジスタに使用されるものと比較して反対のチャネル・ドーピングを使用することによって、ゼロ付近になるように調節され、この結果、ノイズ増幅ユニット内に空乏モード・トランジスタが作り出される。チャネル型(nチャネルまたはpチャネル)とは、チャネル内で導電を担うキャリアの型(それぞれ電子または正孔)を指し、一方、チャネル・ドーピング(n型またはp型)とは、チャネルにおけるドーパントの型(それぞれドナーまたはアクセプタ)を指すことに留意されたい。例えば、p型チャネル・ドーピングを有するエンハンスメント・モード・トランジスタはnチャネル・トランジスタであり、一方、p型チャネル・ドーピングを有する空乏モード・トランジスタはpチャネル・トランジスタである。
【0042】
1つの非限定的な例では、エンハンスメント・モード・トランジスタのチャネルには、コンピューティング・ユニット内でそのソースおよびドレインに使用されるドーパントと反対になる、反対の極性のドーパント(n型またはp型ドーパント)が使用され、一方、空乏モード・トランジスタのチャネルには、ノイズ増幅ユニット内のそのソースおよびドレインに使用されるドーパントと同じ極性のドーパント(n型またはp型ドーパント)が使用される。例えば、この例では、エンハンスメント・モード・トランジスタのソースおよびドレインがn型ドーパントでドープされるとき、そのチャネルはp型ドーパントでドープされ、この逆も成り立ち、一方で、空乏モード・トランジスタのソースおよびドレインがn型ドーパントでドープされるとき、そのチャネルもまたn型ドーパントでドープされ、この逆も成り立つ。ノイズ増幅ユニット内の空乏モード・トランジスタのチャネル・ドーピング濃度は、ゼロ付近の閾値電圧が、すなわち、p型チャネル・ドーピングではVt,amp≒φM-χ-Eg/2q+[2εSqNAVth ln(NA/ni)]1/2/Cox≒0、およびn型チャネル・ドーピングではVt,amp≒φM-χ-Eg/2q-[2εSqNDVth ln(ND/ni)]1/2/Cox≒0が、得られるように選ばれる。
【0043】
ノイズ増幅ユニットおよびコンピューティング・ユニットのために使用されるトランジスタは、標準的な相補型金属酸化膜半導体(CMOS)適合技術を使用して製造される。例示的な実施形態によれば、ノイズ増幅ユニットは、例えば同じ集積回路チップ上で、コンピューティング・ユニットとモノリシックに製造される。例えば、後で説明する、例示的なモノリシック製造プロセス・フローを描いた
図20~
図23を参照されたい。
【0044】
別法として、Vt≒0Vを有するように調節されたノイズ増幅器用のトランジスタを別個のチップ上で製造し、フリップ・チップ・ボンディングなどの知られている技術を使用して、(コンピューティング・ユニットを含む)標準的なチップに接合することができる。いくつかの実施形態では、このアプローチは、コンピューティング・ユニットに使用される標準的なトランジスタの製造プロセス・フローに影響を与えることなく、ノイズ増幅ユニットで使用されるトランジスタの製造プロセス・フローの大きな変更(例えば様々なデバイス・パラメータの同時の変更)を可能にする、という点で有利である。
【0045】
本明細書では、コンピューティング・ユニットおよびノイズ増幅ユニットの両方が、全てのトランジスタに正のV
tをもたらす標準的なパラメータを使用して標準的なチップ上に製造される実施形態も企図される。次いでチップは1つに接合される。次いでノイズ増幅チップの基板(バルク・トランジスタの場合)またはキャリア基板(SOIトランジスタの場合)にバイアス電圧が印加され、この結果V
tがゼロ付近へと変更される。例えば、
図10を参照されたい。
図10に示すように、はんだバンプ接合を使用して、ノイズ増幅ユニット用の少なくとも1つのトランジスタを含むチップ(「増幅器チップ」と標示)が、コンピューティング・ユニット用の少なくとも1つの標準的なトランジスタを含むチップ(「標準的なチップ」と標示)に、それぞれのチップの接合面上の金属パッド同士の間のはんだボールを介して接合される。接合部はアンダーフィル材料によって封入される。次いで増幅器チップ内のトランジスタの閾値電圧が、nチャネル(またはpチャネル)トランジスタのキャリア基板に正の(または負の)バイアスをかけることによって、ほぼゼロとなるようにシフトされる。標準的なチップのキャリア基板は、例えば、システムのグローバル接地としてグラウンドに接続され得る。したがって、この例示的な実施形態では、ノイズ増幅器およびコンピューティング・ユニットの両方について標準的なトランジスタが製造され、ノイズ増幅器トランジスタに選択的に基板電圧バイアスをかけることによって、ノイズ増幅器用のトランジスタの改変が行われる。
【0046】
ノイズ増幅器:出力電圧(V
out)を生む、対応するソースとドレインが相互接続されいている負荷トランジスタ1102(「M
LOAD」)および増幅トランジスタ1104(「M
AMP」)を有する増幅器回路1100が、
図11に概略的に示されている。従来の増幅器回路1100では、負荷トランジスタ1102および増幅トランジスタ1104は標準的なトランジスタである。入力電圧(V
in)の直流(DC)部分をブロックするために、コンデンサ(C
b)が利用される。当技術分野で知られているように、信号のDC部分を(C
bで形成されるもののような)高域フィルタでブロックすることによって、信号のDC近傍低周波数部分も不可避的にブロックされる。C
bが大きくなるほど、効果的にブロックされる最大周波数はより低くなる。V
inとドレイン-ドレイン電圧(Vdd)の間、およびV
inとソース-ソース電圧(Vss)ソースの間に、それぞれバイアス抵抗器(R
1,biasおよびR
2,bias)が存在する。
【0047】
この増幅器回路1100に関して、増幅器電圧利得A
Vは、
【数1】
であり、式中、g
m,loadは負荷トランジスタ1102の相互コンダクタンスであり、g
m,Ampは増幅トランジスタ1104の相互コンダクタンスであり、r
ds,Ampは増幅トランジスタ1104のドレイン-ソース抵抗であり、「||」は並列接続を表す(2つの所与の抵抗器R
1およびR
2について、2つの抵抗器の並列接続の結果生じる抵抗は、R
1||R
2=(1/R
1+1/R
2)
-1で与えられる)。この理由は、M
LOADのドレイン端子がそのゲート端子に接続されており、したがってM
LOADの実効出力抵抗が1/
gm,Loadと等しいからである。したがって、大きい電圧利得(A
V=V
in/V
out)には、M
AMPの大きいトランジスタ幅/長さ(W/L)を、およびしたがって、高い待機電力消費をもたらす大きいバイアス電流が必要である。更に、Lは通常、製造される集積回路において固定されているので、大きいW/Lは大きいWを、およびしたがって、帯域幅を小さくする大きいゲート・キャパシタンスを意味する。大きいゲート・キャパシタンスはまた、大きい動的(スイッチング)電力消費ももたらす。更に、入力バイアスのネットワークは(M
AMPに正のDCゲート電圧バイアスを提供するために)待機電力を消費するが、このことが電力消費を更に大きくする。M
AMPは、正のV
tを有するので、正のDCゲート電圧バイアスを必要とする。
【0048】
比較として、本願の技術によるノイズ増幅器回路1200が、
図12に概略的に描写されている。
図12に示すように、ノイズ増幅器回路1200は、少なくとも1つの負荷トランジスタ(「M
LOAD」)1202および少なくとも1つの増幅トランジスタ(「M
AMP」)1204を含み、これらの対応するソースとドレインは相互接続されており、これらが相まって出力電圧(V
out)が生まれる。負荷トランジスタ1202および増幅トランジスタ1204は、ゼロ・ボルト付近のV
tを有する。単に例として、例示的な実施形態によれば、負荷トランジスタ1202および増幅トランジスタ1204は、約-0.3Vから約0.3VまでのV
tを有するように各々改変されており、これらの間の値をとる。負荷トランジスタ1202および増幅トランジスタ1204などのトランジスタがゼロ付近のV
tを有するのを容易にするための技術を、上に示した。
【0049】
図12に示すように、入力電圧(V
in)のDC部分をブロックするために、コンデンサ(C
b)が利用される。V
inとVssの間にバイアス抵抗器(R
bias)が存在する。C
bおよびR
bias(またはM
bias)が高域フィルタを作り出す。上で説明したように、(C
bおよびR
biasで形成されるもののような)高域フィルタは、DCに加えて、信号のDC近傍低周波数部分を不可避的にブロックする。C
bが大きくなるほどおよびR
biasが大きくなるほど(より具体的には、RC遅延として知られる積R
biasC
bが大きくなるほど)、高域フィルタによって効果的にブロックされる最大周波数がより小さくなる(すなわち、高域フィルタの阻止帯域がより狭くなる)。以下で詳細に説明するように、本明細書では、R
biasをバイアス・トランジスタM
biasで置き換えた実施形態も企図される。
【0050】
有利には、増幅器段1200に関して、増幅器電圧利得AVは、
AV≒-gm,Amp(rds,Amp||rds,Load) (1)
であり、式中、gmはトランジスタ1204(gm,Amp)への入力であり、rds,Load、rds,Ampはそれぞれ、負荷トランジスタ1202および増幅トランジスタ1204のドレイン-ソース抵抗である。この理由は、負荷端子1202のゲート端子がそのソース端子に接続されており、したがってMLOADの実効出力抵抗がrds,Loadと等しいからである。rds≫1/gmであるため、rds,AMPおよびrds,Loadが大きい限りは、大きいW/Lおよび大きいバイアス電流(上を参照)を必要とすることなく、大きいAVが達成され得る。更に、入力バイアスのネットワークは、ゼロのゲート-ソース電圧でMAMPにバイアスをかけることができるので(Vt≒0Vであるため)、待機電力を消費しない。
【0051】
以下で詳細に説明するように、本願のノイズ増幅器は、多段(すなわち、N段)設計で利用され得る。
図13は、その多段ノイズ増幅器設計の単段ノイズ増幅器回路1300を示す概略図である。上で
図12の説明に従って記載されたノイズ増幅器回路1200と同様に、ノイズ増幅器回路1300は、少なくとも1つの負荷トランジスタ(「M
LOAD」)1302および少なくとも1つの増幅トランジスタ(「M
AMP」)1304を含み、これらの対応するソースとドレインは相互接続されている。ノイズ増幅器回路1300は、その入力において等価入力雑音電圧(equivalent input noise voltage)(V
n,in)を受けると、その出力において等価な出力雑音電圧(V
n,out)を生み、所与の周波数におけるV
n,out/V
n,inの比は、その周波数における増幅器回路1300の電圧利得と等しい。負荷トランジスタ1302および増幅トランジスタ1304は、ゼロ付近のV
tを有する。
【0052】
単に例として、例示的な実施形態によれば、負荷トランジスタ1302および増幅トランジスタ1304は、約-0.3Vから約0.3VまでのVtを有し、これらの間の値をとる。ゼロ付近のVtを有するように負荷トランジスタ1302および増幅トランジスタ1304などのトランジスタを提供するための技術を、上に示した。VinとVssの間に、MAMPのゲート-ソースにわたってゼロ・ボルトのDC電圧バイアスを提供するバイアス抵抗器(Rbias)が存在する。以下で詳細に説明するように、本明細書では、Rbiasをバイアス・トランジスタMbiasで置き換えた実施形態も企図される。
【0053】
本願の多段ノイズ増幅器設計の単段ノイズ増幅器回路1300では、以下の通りである:
【数2】
【数3】
【数4】
【数5】
更に、本明細書で企図されるいくつかの例示的な実施形態では、R
biasはバイアス・トランジスタM
biasで置き換えられる:
【数6】
例えば、後で
図15に示す、バイアス・トランジスタを採用したN段ノイズ増幅器設計の例を参照されたい。上記の式では、r
outは増幅器回路1300の出力抵抗(r
out≒r
ds,Load||r
ds,Amp)であり、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度であり、KはトランジスタM
LoadおよびM
Ampのフリッカ・ノイズ定数であり、fは周波数であり、A
Vは増幅器回路1300の電圧利得である。
【数7】
および
【数8】
の記号はそれぞれ、雑音電圧および雑音電流のスペクトル密度(すなわち、スペクトル)を表す。例えば、
【数9】
はM
Loadの雑音電流のスペクトル密度であり、
【数10】
はR
biasまたはM
biasの雑音電圧のスペクトル密度である。
【0054】
上記の等式(2)~(6)では、雑音電圧および雑音電流は、(慣例的に定義上)回路の単位帯域幅あたりで与えられている。C
bおよびR
bias(またはM
bias)は、1つまたは複数の実施形態において、近似形態|H(f)|
2≒f
2/[1+(f/f
L)
2]を有する伝達関数を有する高域フィルタを作り出し、式中、R
biasではf
L≒1/(2πR
biasC
b)、またはM
biasではf
L≒1/(2π
rds,biasC
b)であり、1つまたは複数の実施形態において、出力ノードを帯電させるキャパシタンスC
load(例えば、A/Dの入力キャパシタンス)またはトランジスタの固有のカット・オフの、いずれかより低い方が、近似形態|H(f)|
2≒1/[1+(f/f
H)
2]を有する伝達関数を有する低域フィルタを作り出し、式中、それぞれf
H≒1//(2πr
outC
load)またはf
H≒(g
m/2πC
gs)
Ampであり、式中、C
gsはM
Ampのゲート-ソース・キャパシタンスである。したがって、例示的な実施形態によれば、単段ノイズ増幅器からの合計雑音電圧出力(すなわち、全周波数にわたって統合したもの)は、次のように求められる:
【数11】
【0055】
例示的な実施形態によれば、fH≧100MHz、例えば、fH≧500MHzであり、fLは、MAmp、MLoad、およびMbiasのコーナ周波数(fC)以上(すなわち、fL≧fC)となるように選ばれる。コーナ周波数とは、(フリッカ・ノイズが1/fに依存する場合に)それを超えるとフリッカ・ノイズが熱雑音よりも小さくなる周波数を指す。すなわちfC=3Kgm/8kTCoxWLである。したがって、そのような実施形態では、ノイズの周波数依存(非ホワイト)部分(すなわち、等式(3)、(4)、および(6)の右辺の第2項)が効果的に排除され、結果的に、約1.4fLから約1.4fHまでの周波数において、実質的に周波数不変(ホワイト)のVn,outが得られる。例示的な実施形態によれば、fCは約100Hzから約100KHzまでの範囲内であり、これらの間の値をとる、例えば、約1KHzから約10KHzまでであり、これらの間の値をとる。上記の等式(1)~(7)は回路1300の近似的な記述を提供する一次式であり、したがって、本願の技術に従うノイズ増幅回路の記述または設計のための指針として有用であるが、決定的または制限的なものとなることは意図していないことに注目すべきである。
【0056】
図14は、本願の技術に係る、例示的なN段ノイズ増幅器回路1400を示す概略図である。
図14に示すように、ノイズ増幅器回路1400は、複数の段、すなわち、段1、2、3、…、N-1、およびNを含む。各段は、例えば、上の
図12および
図13の説明に従って記載されているように構成されている。例えば、各段は少なくとも1つの負荷トランジスタ1402および少なくとも1つの増幅トランジスタ1404を含み、これらの対応するソースおよびドレインは相互接続されており、これらが相まって出力電圧(段1のV
out,1、段2のV
out,2、等)が生まれる。上で詳細に記載したように、負荷トランジスタ1402および増幅トランジスタ1404は、ゼロ付近のV
tを有する。単に例として、例示的な実施形態によれば、負荷トランジスタ1402および増幅トランジスタ1404は、約-0.3Vから約0.3VまでのV
tを有し、これらの間の値をとる。ゼロ付近のV
tを有する負荷トランジスタ1402および増幅トランジスタ1404などのトランジスタを提供するための技術を、上に示した。
【0057】
図14に示すように、前の段から受けた入力電圧のDC部分をブロックするために、段同士の間でコンデンサ(C
b)が利用される。C
bはバイアス抵抗器(R
bias)と共に高域フィルタを作り出す。いくつかの実施形態では、V
out,NのDC部分をブロックするために、V
out,Nとコンピューティング・ユニット内の
Vout,Nを受ける要素(例えばA/D変換器)の間に、追加のDCブロッキング・コンデンサ(例えば、C
b)を設置してもよい。上で説明したように、C
bは、それを通過する信号の低周波数DC近傍部分をブロックする。
【0058】
上で強調したように、R
biasをバイアス・トランジスタM
biasで置き換えることができる。その場合、C
bおよびM
biasは広域フィルタを作り出す。例えば、
図15を参照されたい。
図15は、本願の技術に係る、例示的なN段ノイズ増幅器回路1500を示す概略図である。ノイズ増幅器回路1500は、(ノイズ増幅器回路1400の)バイアス抵抗器(R
bias)がバイアス・トランジスタ(M
bias)1506と置き換えられている点を除いて、ノイズ増幅器回路1400(
図14)と同じに構成されている。この例示的な実施形態では、M
biasのゲート端子およびソース端子が互いに接続されており、この結果、M
biasのドレイン-ソース抵抗であるr
ds,biasに等しい、等価なバイアス抵抗が作り出される。
【0059】
すなわち、
図15に示すように、ノイズ増幅器回路1500は、複数の段、すなわち、段1、2、3、…、N-1、およびNを含む。各段は、例えば、上の
図12および
図13の説明に従って記載されているように構成されている。例えば、各段は少なくとも1つの負荷トランジスタ1502および少なくとも1つの増幅トランジスタ1504を含み、これらの対応するソースおよびドレインは相互接続されており、これらが相まって出力電圧(段1のV
out,1、段2のV
out,2、等)が生まれる。上で詳細に記載したように、負荷トランジスタ1502および増幅トランジスタ1504は各々、ゼロ付近のV
tを有するように改変される。単に例として、例示的な実施形態によれば、負荷トランジスタ1502および増幅トランジスタ1504は、約-0.3Vから約0.3VまでのV
tを有し、これらの間の値をとる。ゼロ付近のV
tを有する負荷トランジスタ1502および増幅トランジスタ1504などのトランジスタを提供するための技術を、上に示した。
【0060】
図15に示すように、前の段から受けた入力電圧からのDCをブロックするために、段同士の間でコンデンサ(C
b)が利用される。この場合、C
bはバイアス・トランジスタ(M
bias)1506と共に、約r
ds,bias C
bのRC遅延を有する高域フィルタを作り出す。
図14の増幅器回路1400と同様に、DCブロッキング・コンデンサ(例えば、C
b)もまた、V
out,Nとコンピューティング・ユニット内の受け入れ側要素との間に設置される。
【0061】
図16は、
図1のシステム100(少なくとも一部がデジタル実装形態)または
図2のシステム200(少なくとも一部がアナログ実装形態)などの、本願の乱数生成器を使用する、乱数生成のための例示的な手法1600を示す図である。上で示したように、本願の乱数生成器は、コンピューティング・ユニットとノイズ増幅ユニットとを有するハイブリッド・システムである。「ハイブリッド」とは、異なるタイプのトランジスタが組み合わされて乱数生成器を形成する、すなわち、コンピューティング・ユニットでは標準的なトランジスタが使用されるが、ノイズ増幅ユニットではゼロ近傍のV
tを有するトランジスタが使用されることを意味している。具体的には、コンピューティング・ユニットは、標準的なデジタル、アナログ、および混合信号回路として構成されている、絶対的な正のV
tを有する標準的なノーマリ・オフ型トランジスタを含む。他方で、ノイズ増幅ユニットは、ゼロ付近のV
tを有し、トランジスタおよび抵抗性バイアスのネットワークによって生成されるノイズの増幅のための増幅器回路として構成されている、トランジスタを含む。
【0062】
具体的には、上で例えば
図12および
図13の説明と関連させて記載したように、ノイズ増幅ユニットは少なくとも1つの負荷トランジスタと少なくとも1つの増幅トランジスタとを有することができ、これらの各々は約-0.3Vから約0.3VのV
tを有し、これらの間の値をとる。いくつかの例示的な実施形態では、上記したように、負荷トランジスタおよび増幅トランジスタには、閾値下レジームで動作するように、ゼロのゲート-ソース電圧においてバイアスがかかる。いくつかの例示的な実施形態では、上記したように、ノイズ増幅器内のトランジスタのV
tは、nチャネル(pチャネル)トランジスタの基板(例えば、バルク・トランジスタの場合のバルク基板およびSOIトランジスタの場合のキャリア基板)に正の(負の)バイアスをかけることによって、ゼロ付近までシフトされる。上で更に説明したように、コンピューティング・ユニットで使用されるもののような標準的なノーマリ・オフ型トランジスタと比較して、nチャネル(pチャネル)トランジスタにより低い(より高い)ゲート電極仕事関数を使用することによって、より低いドーピング濃度のトランジスタ・チャネルを使用することによって、反対のドーピング型のトランジスタ・チャネルを使用することによって、またはより薄いトランジスタ・チャネルを使用することによって、あるいはその組合せで、負荷トランジスタおよび増幅トランジスタのV
tも、ゼロ付近に調節することができる。したがって、改変した場合、ノイズ増幅ユニットのトランジスタはゼロ付近のV
tを有し、これに対し、標準的なトランジスタの場合はV
tの正の絶対値である。
【0063】
ステップ1602において、ノイズ増幅ユニットは、
図13の単段増幅器回路1300、ならびに
図14および
図15におけるそれぞれの多段増幅器回路1400および1500でのその使用に関して上で説明したように、(印加される電圧Vdd/Vssに基づいて)トランジスタおよび抵抗性バイアス・ネットワークによって生成されるノイズを増幅するために使用される。例えば、
図14および
図15に関して、段1におけるM
Ampの入力換算熱雑音電圧(input-referred thermal noise-voltage)のスペクトル密度は、4kT(2/3g
m,Amp)によって与えられる。増幅器の全段が同じ電圧利得A
Vを有すると仮定すると、増幅器の(増幅器帯域幅内での)雑音電圧出力のスペクトル密度への、M
Ampの熱雑音の寄与は、4kT(2/3g
m,Amp)・(A
V)
2Nによって与えられる。増幅器出力における雑音電圧の合計スペクトル密度
【数12】
は、回路内のトランジスタおよび抵抗器の各々が寄与する増幅されたノイズのスペクトル密度の合計である。
【0064】
1つの例示的な実施形態によれば、乱数生成器のデジタル実装形態が利用され、その場合、ノイズ増幅ユニットからの増幅されたノイズは、例えばA/D変換器を使用してデジタル化される。ステップ1604を参照されたい。別法として、別の例示的な実施形態によれば、乱数生成器のアナログ実装形態が利用され、その場合、ノイズ増幅ユニットからの増幅されたノイズが、例えばS&H回路を使用してサンプリングされる。ステップ1606を参照されたい。
【0065】
ステップ1608において、ノイズ増幅ユニットからの増幅されたノイズは、コンピューティング・ユニットによって処理されて、乱数のストリームが生成される。デジタル実装形態(上記したステップ1604を参照)を用いると、A/D変換器からのデジタル化された増幅されたノイズ信号は、コンピューティング・ユニットによって処理されて、乱数のストリームが生成される。例えば、上に示したように、増幅されたノイズ信号がVref以上である場合、コンピューティング・ユニット内のデジタル処理ユニットはロジック「1」を登録することができ、増幅されたノイズ信号がVref未満の場合には、コンピューティング・ユニット内のデジタル処理ユニットはロジック「0」を登録することができ、またはこの逆も成り立つ。例えば、Vref=0について、増幅されたノイズ信号がゼロまたは正の値を有する場合、これはロジック「1」を登録することができ、これが負の値を有する場合、これはロジック「0」登録することができ、またはこの逆も成り立つ。別法として、アナログ実装(上記したステップ1606を参照)を用いると、S&H回路からのサンプリングされた増幅されたノイズ信号を、コンピューティング・ユニットによって基準電圧(Vref)と比較して、乱数のストリームを生成することができる。例えば、上で示したように、増幅されたノイズ信号がVref以上である場合、これはロジック「1」を登録することができ、増幅されたノイズ信号がVref未満の場合、これはロジック「0」を登録することができ、またはこの逆も成り立つ。
【0066】
図17は、閾値下レジームにおいてノイズ増幅ユニットのトランジスタがゼロのゲート-ソース電圧でどのようにバイアスを受け動作し得るかを示すプロット1700である。この例では、増幅ユニット内の増幅トランジスタおよび負荷トランジスタのために、高誘電率/金属ゲート・バルク・フィンFETトランジスタを利用したが、各フィンFETトランジスタは、ゲート長さL=30nm、フィンのピッチF
pitch=80nm、本体(フィン)厚さt
FIN=15nmであった。プロット1700に示すように、4.61eVの金属ゲートの仕事関数(Φ
gate)を有する標準的なトランジスタは、正の閾値電圧(約0.5V)を有する。しかしながら、4.28eVのΦ
gateを有する金属ゲートを使用することによって、閾値電圧がゼロ付近のボルト(約0.2V)まで下がり、トランジスタはゼロ・ボルトのゲート-ソース電圧(V
GS)において閾値下で動作する(V
GS=0VがVt≒0.2Vよりも約0.2V低いため)。いくつかの実施形態では、標準的なトランジスタ(Φ
gate=4.61eVを有する)およびV
tがゼロ近傍のトランジスタ(Φ
gate=4.28eVを有する)は、上で説明したように、モノリシック製造プロセスを使用して一体に統合される。
【0067】
図18は、ノイズ増幅ユニットの高速低電力特性を示す例示的なシミュレーション・プロット1800であり、この例では、上で
図17の説明に従って記載されているフィンFETデバイス(Φ
gate=4.28eV)を使用して、Vdd=1V、Vss=0、R
bias=100MΩ、C
b=1pFである、4段増幅器として実装されている。この例では、V
refを、V
dd/2=0.5Vに等しくなるように選ぶことができる。したがって、増幅されたノイズ信号が0.5V以上の値を有するとき、コンピューティング・ユニットはロジック「1」を登録することができ、同じく0.5V未満の値を有するとき、コンピューティング・ユニットはロジック「0」を登録することができ、逆も成り立つ。この取り決めを使用して、V
out,4を例えば20ns、40ns、60ns、80ns、100nsでサンプリングすることにより、ランダムな数列11010を生成することができる。別法として、いくつかの例示的な実施形態では、出力段とコンピューティング・ユニットの間にDCブロッキング・コンデンサ(例えば、C
b)が設置され、V
refはゼロ・ボルトになるように選ばれる。この例では、各段は、約1V×10μA=10μW(4段では合計で40μW)のDC(待機)電力を消費する。
【0068】
図12~
図15の例示的な実施形態で使用されるトランジスタはnチャネル・トランジスタであるが、(pチャネル・トランジスタについての反対のバイアス極性を考慮した必要な調節の後で)pチャネル・トランジスタを使用してもよいことを理解されたい。好ましくは、ノイズ増幅ユニットで使用されるトランジスタの全ては、nチャネルまたはpチャネルのいずれかである。すなわち、ノイズ増幅ユニットは、nチャネル・トランジスタとpチャネル・トランジスタの組合せ(単一の段内のM
AmpおよびM
Loadが反対のチャネル型を有する実施形態を含む)によって実装できるが、pチャネル・トランジスタおよびnチャネル・トランジスタの両方について、ゼロ付近になるようにV
tを調節するには、1つのチャネル型のみについてゼロ付近になるようにV
tを調節するよりも、大きい労力(例えば、モノリシックな一体統合におけるより多数の製造プロセス・ステップ)が必要となる。更に、単一のチャネル型(nチャネルまたはpチャネルのいずれか)を有するノイズ増幅ユニットを実装することによって、既に説明したように基板に(例えば、SOIトランジスタのキャリア基板)に単一のバイアス電圧を適用することでV
tをゼロ付近へとシフトさせることが容易になる。
【0069】
単に例として、本願の乱数生成器は、
図19の装置1900などのコンピュータ・ベースの装置において実装され得る。
図19に示すように、装置1900は、コンピュータ・システム1910と取り外し可能なメディア1950とを含む。コンピュータ・システム1910は、プロセッサ・デバイス1920と、ネットワーク・インターフェース1925と、メモリ1930と、メディア・インターフェース1935と、任意選択的なディスプレイ1940と、を含む。ネットワーク・インターフェース1925によって、コンピュータ・システム1910がネットワークに接続することが可能になり、またメディア・インターフェース1935によって、コンピュータ・システム1910がハード・ドライブまたは取り外し可能なメディア1950などのメディアとやりとりすることが可能になる。
図19の例示的な実施形態では、別個のチップ上に乱数生成器が製造されて、入力/出力(I/O)ラインを介してプロセッサと通信しているが、このラインは、単に例として、
図10に示すような標準的なチップに接合された増幅器チップの間の接続、または当技術分野で知られているより進んだシリコン貫通ビア(TSV)接続を表し得る。他の実施形態では、乱数生成器はプロセッサ・デバイスの少なくとも一部と一体に統合され(モノリシックに製造され)、したがってブロック1920の一部となっている。
【0070】
プロセッサ・デバイス1920は、本明細書で開示する方法、ステップ、および機能を実施するように構成され得る。メモリ1930は分散されていてもローカルであってもよく、プロセッサ・デバイス1920は分散されていても単一のものであってもよい。メモリ1930は、電気的、磁気的、もしくは光学的メモリ、または、これらのもしくは他のタイプのストレージ・デバイスの任意の組合せとして実装されてもよい。更に、用語「メモリ」は、プロセッサ・デバイス1920によってアクセスされるアドレス指定可能スペースから読み取りまたはこれに書き込み可能な任意の情報を包含するように、十分に広く解釈されるべきである。この定義によれば、ネットワーク・インターフェース1925を介してアクセス可能なネットワーク上の情報は、プロセッサ・デバイス1920がネットワークから情報を読み出すことができるので、やはりメモリ1930の範囲内にある。プロセッサ・デバイス1920を構成する分散された各プロセッサは一般に、それ自体のアドレス指定可能メモリ・スペースを含むことに留意すべきである。コンピュータ・システム1910の一部または全部を特定用途向け集積回路または汎用集積回路に組み込むことができることにも、留意すべきである。
【0071】
任意選択的なディスプレイ1940は、人間である装置1900のユーザとやりとりするのに適した、任意のタイプのディスプレイである。一般に、ディスプレイ1940はコンピュータ・モニタまたは他の類似のディスプレイである。
【0072】
上で示したように、1つの例示的な実施形態では、ノイズ増幅ユニットは、例えば同じ集積回路チップ上で、コンピューティング・ユニットとモノリシックに製造される。以下で記載するように、このモノリシック製造プロセスは、いくつかの異なる方法で実行することができる。いずれの場合も、標準的なCMOS適合プロセス・フローが、特定のステップをコンピューティング部分ではなくノイズ増幅部分に、またはその逆で、選択的に実行できるように、僅かに改変されて利用される。したがって、以下の説明では、標準的なプロセス・フローに対するこれらの改変に注目することとし、ノイズ増幅ユニット・トランジスタおよびコンピューティング・ユニット・トランジスタの両方に同時に実行される標準的な一体製造ステップに対し、ノイズ増幅ユニットのトランジスタのみに実行される製造ステップ、およびコンピューティング・ユニットのトランジスタのみに実行される製造ステップに言及することとする。本明細書で使用する場合、「標準的な」CMOS適合プロセスとは、集積回路のモノリシック製造に使用される任意の知られている確立された製造プロセスを指す。当業者には知られていることだが、そのような製造プロセスの詳細は、異なる技術ノード(例えば、45nmと14nmの間の技術ノード)の間で、または異なる研究開発施設によって採用もしくは実施される場合に、異なり得る。上で強調したように、各トランジスタは一般に、チャネルによって相互接続されているソースおよびドレイン、ならびに、チャネルを通る電子の流れを制御する(ゲート誘電体によってチャネルから分離されている)ゲートを含む。トランジスタは基板上に製造され、この基板はバルク半導体基板、または埋込み絶縁体(例えば、BOX)を覆うSOI層を有するSOI基板であり得る。ドーピング型(例えば、n型またはp型)を含むソース/ドレインおよびチャネルのドーピングを、標準的なイオン注入技術を使用して、所望の濃度において適切なドーパントを用いて行うことができる。
【0073】
ここで
図20の手法2000を参照して記載すると、1つの例示的な実施形態では、集積回路のノイズ増幅部分内のトランジスタは、集積回路のコンピューティング部分内の同じチャネル型(すなわち、n型またはp型)のトランジスタのものと全く同じ構造および製造プロセスを使用して製造されるが、ノイズ増幅ユニット内のトランジスタがゼロ付近のVtを有するように、ノイズ増幅部分で使用されるゲート電極がコンピューティング部分で使用されるものとは異なる仕事関数を有する金属で形成される点が異なる。
【0074】
手法2000を参照すると、ステップ2002において、バルク半導体またはSOI基板が提供され、ステップ2004において、ゲート電極金属堆積ステップまで、ノイズ増幅ユニット・トランジスタおよびコンピューティング・ユニット・トランジスタが製造される。次に、ステップ2006において、標準的なプロセス・フローは、コンピューティング部分上へのゲート電極金属堆積の前に、ノイズ増幅部分を(例えば、フォトレジストまたは誘電体マスクあるいはその両方で)マスクすることによって改変される。このマスクがノイズ増幅部分の所定位置を覆っている状態で、ステップ2008において、コンピューティング部分上に(第1の)ゲート電極金属が堆積される。
【0075】
ステップ2010において、マスクはノイズ増幅部分から除去され、その後、ノイズ増幅部分のためのゲート金属を堆積させるために工程が繰り返される。すなわち、ステップ2012において、コンピューティング部分は(例えば、フォトレジストまたは誘電体マスクあるいはその両方で)マスクされ、ステップ2014において、ノイズ増幅部分上に、(コンピューティング部分に使用されるものとは異なる)(第2の)ゲート電極金属が堆積される。ステップ2016において、マスクはコンピューティング部分から除去され、ステップ2018において、標準的な様式でトランジスタおよびチップ製造プロセスが継続される。
図20に示すように、ステップ2006の前およびステップ2016の後のプロセス・ステップは、両方(ノイズ増幅/コンピューティング)のトランジスタのタイプにとって全く同じであり、したがって、チップ上の2つの部分上で共有(すなわち、同時に実行)される。
【0076】
ここに
図21の手法2100を参照して記載する、別の例示的な実施形態では、集積回路のノイズ増幅部分内のトランジスタは、集積回路のコンピューティング部分内の同じチャネル型(n型またはp型)のトランジスタのものと全く同じ構造および製造プロセスを使用して製造されるが、ノイズ増幅ユニット内のトランジスタがゼロ付近のV
tを有するように、ノイズ増幅部分内の基板がコンピューティング部分で使用されるものよりも低い濃度にドープされる点が異なる。
【0077】
手法2100を参照すると、ステップ2102において、バルク半導体またはSOI基板が提供され、ステップ2104において、トランジスタ・チャネルのドーピング濃度がイオン注入によって定められる基板イオン注入ステップまで、ノイズ増幅ユニット・トランジスタおよびコンピューティング・ユニット・トランジスタが製造される。次に、ステップ2106において、標準的なプロセス・フローは、コンピューティング部分における基板へのイオン注入の前に、ノイズ増幅部分を(例えば、フォトレジストまたは誘電体マスクあるいはその両方で)マスクすることによって改変される。このマスクがノイズ増幅部分の所定位置を覆っている状態で、ステップ2108において、コンピューティング部分における基板へのイオン注入が行われて、コンピューティング部分のチャネル・ドーピング濃度が定められる。
【0078】
ステップ2110において、マスクはノイズ増幅部分から除去され、その後、ノイズ増幅部分のチャネル・ドーピング濃度を定めるために工程が繰り返される。すなわち、ステップ2112において、コンピューティング部分は(例えば、フォトレジストまたは誘電体マスクあるいはその両方で)マスクされ、ステップ2114において、(コンピューティング部分に使用されるものとは異なるイオン用量またはエネルギーあるいはその両方での)ノイズ増幅部分における基板へのイオン注入が行われる。ステップ2116において、マスクはコンピューティング部分から除去され、ステップ2118において、標準的な様式でトランジスタおよびチップ製造プロセスが継続される。
図21に示すように、ステップ2106の前およびステップ2116の後のプロセス・ステップは、両方(ノイズ増幅/コンピューティング)のトランジスタのタイプにとって全く同じであり、したがって、チップ上の2つの部分上で共有(すなわち、同時に実行)される。
【0079】
ここで
図22の手法2200を参照して記載すると、更に別の例示的な実施形態では、集積回路のノイズ増幅部分内のトランジスタは、集積回路のコンピューティング部分内の同じチャネル型のトランジスタのものと全く同じ構造および製造プロセスを使用して製造されるが、ノイズ増幅ユニット内のトランジスタがゼロ付近のV
tを有するように、ノイズ増幅部分におけるSOI基板厚さがコンピューティング部分で使用されるものよりも薄い点が異なる。
【0080】
手法2200を参照すると、ステップ2202においてSOI基板が準備される。次に、標準的なプロセス・フローは、ステップ2204において、ノイズ増幅部分を(例えば、誘電体マスクで)マスクすること、および、ステップ2206において、選択的エピタキシャル成長を使用してコンピューティング部分内のSOIの厚さを大きくすることによって、改変される。ステップ2208において、マスクはノイズ増幅部分から除去され、ステップ2210において、標準的な様式でトランジスタおよびチップ製造プロセスが継続される。
図22に示すように、ステップ2204の前およびステップ2208の後のプロセス・ステップは、両方(ノイズ増幅/コンピューティング)のトランジスタのタイプにとって全く同じであり、したがって、チップ上の2つの部分上で共有(すなわち、同時に実行)される。
【0081】
ここに
図23の手法2300を参照して記載する、また更に別の例示的な実施形態では、(上記した
図22の手法2200の場合のように)コンピューティング部分におけるSOIの厚さを大きくするために選択的エピタキシャル成長を使用する代わりに、ノイズ増幅ユニットにおけるSOI厚さが選択的に低減される。例えば、手法2300を参照すると、ステップ2302においてSOI基板が準備される。次に、標準的なプロセス・フローは、ステップ2304において、コンピューティング部分を(例えば、誘電体マスクで)マスクすることによって、および、ステップ2306において、選択的(例えば、ウェット)エッチング処理を使用してSOIノイズ増幅部分の厚さを小さくすることによって、改変される。ステップ2308において、マスクはコンピューティング部分から除去され、ステップ2310において、標準的な様式でトランジスタおよびチップ製造プロセスが継続される。
図23に示すように、ステップ2204の前およびステップ2208の後のプロセス・ステップは、両方(ノイズ増幅/コンピューティング)のトランジスタのタイプにとって全く同じであり、したがって、チップ上の2つの部分上で共有(すなわち、同時に実行)される。
【0082】
本明細書で企図されるモノリシック製造に関する標準的なプロセス・フローの改変の他の例としては、限定するものではないが、ノイズ増幅ユニットに異なる高誘電率材料または異なる厚さを有する高誘電率材料あるいはその両方を使用すること(マスクするステップは、上記の
図20の手法2000の説明に従うゲート金属の変更に関して記載したものと同じとなる)、および、ノイズ増幅ユニットに反対のチャネル・ドーピング型を使用すること(マスクするステップは、上記の
図21の手法2100の説明に従うイオン注入によるチャネル・ドーピング濃度の変更に関して記載したものと同じとなる)が挙げられる。当業者には諒解されるであろうが、ノイズ増幅部分のVtを調節するために、2つ以上のデバイス・パラメータ(例えば、チャネル・ドーピングおよび金属仕事関数の両方)を変えることも可能であるが、この結果、モノリシックなプロセスにおけるノイズ増幅部分の同時組み込みに対応するために、より多数の追加のプロセス・ステップが生じる。
【0083】
本願発明の例示的な実施形態を本明細書で説明したが、本発明はこれらの厳密な実施形態に限定されないこと、ならびに、当業者は本発明の範囲から逸脱することなく様々な他の変更および修正を行い得ることを、理解されたい。