(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】部品生産ライン
(51)【国際特許分類】
B23P 21/00 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
B23P21/00 307P
(21)【出願番号】P 2022053223
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100155457
【氏名又は名称】野口 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 陽祐
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-205332(JP,A)
【文献】特開2002-263760(JP,A)
【文献】特開2011-016179(JP,A)
【文献】特表2018-510783(JP,A)
【文献】特開2004-136300(JP,A)
【文献】特開平5-116764(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0071808(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23P 19/00 - 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス部品を次々に生産するプレス部と、生産されたプレス部品が仮置きされる仮置台、及び生産されたプレス部品を前記仮置台に順次搬送する搬送ロボットを有する部品搬送部とを備え、前記プレス部及び前記部品搬送部がライン稼働中の立ち入りが規制されている危険エリアに設置された部品生産ラインにおいて、
危険エリア外に、前記プレス部で生産されるプレス部品に応じて人手作業で交換されるプレス部品の支持治具が装着された支持部材の作製用エリアが設けられ、
前記搬送ロボットは、前記プレス部で生産されるプレス部品の変更に伴う段取り替え作業の実施中に、前記支持部材の作製用エリアで作製された前記支持部材を前記仮置台に搬送可能であることを特徴とする部品生産ライン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品生産ラインに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車の外装パネル等の大型のプレス部品が次々に生産(成形)される部品生産ラインにおいては、次々に生産されるプレス部品のパレットへの積み込みが、伸縮、起伏、回転及び旋回等の三次元動作が可能なアームを有する多関節(多軸)ロボットを用いて行われる場合が多い(例えば、特許文献1)。これにより、上記の積み込み作業を、人手を要することなく、スムーズに、正確にかつ安全に行うことができる。
【0003】
上記のような部品生産ラインにおいて、生産するプレス部品が変更されるときには、プレス機及び積み込みロボットのロボットアームにそれぞれ取り付けられているプレス金型及びアタッチメント等を次に生産されるプレス部品(生産予定のプレス部品)に対応したものに変更する、いわゆる段取り替え作業が行われる。この段取り替え作業には、「外段取り替え作業」と「内段取り替え作業」とがある。「外段取り替え作業」は、プレス機や積み込みロボットが自動運転されているライン稼働中であっても、これと並行して危険エリア(ライン稼働中の立ち入りが制限されているプレス機や積み込みロボットの動作範囲)の外側で実施可能な作業であり、「内段取り替え作業」は、ライン停止中に上記危険エリア内で実施される作業である。「外段取り替え作業」としては、例えば、生産予定のプレス部品に対応するプレス金型やアタッチメントを準備し、これらを所定の待機位置に配置する作業を挙げることができる。また、「内段取り替え作業」としては、例えば、現に取り付けられているプレス金型及びアタッチメントを、生産予定のプレス部品に対応するプレス金型及びアタッチメントに交換する作業を挙げることができる。
【0004】
段取り替え作業のうち、内段取り替え作業は、ライン停止中に実施する必要がある(ライン稼働中に並行して実施できない)ことから、その作業時間が長くなるほどライン停止時間(ダウンタイム)が長くなってライン稼働率が低下する。従って、内段取り替え作業の作業時間はできるだけ短縮することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上段で例示した内段取り替え作業としてのプレス金型やアタッチメントの交換作業は、プレス機や積み込みロボットがこれらを自動で実施可能な機能を有している場合が多いため、その作業時間は比較的短く、またその作業時に作業者が危険エリアに立ち入る必要も基本的にはない。しかしながら、内段取り替え作業には、危険エリアに作業者が立ち入って実施する必要があるものが依然として存在する。
【0007】
具体例を挙げると、パレットに積み込まれる(積み込みロボットに取得される)プレス部品が仮置きされる仮置台と、積み込みロボットとは別の搬送ロボットとが危険エリア内に設置され、上記搬送ロボットが生産されたプレス部品を仮置台に搬送すると共に、仮置台に仮置きされたプレス部品が積み込みロボットによってパレットに積み込まれる部品生産ラインであって、仮置台が、床面上に固定的に設置された基台に対し、生産されるプレス部品の形状等に対応した専用の支持治具を人手作業で取り付ける必要があるもの、を挙げることができる。すなわち、このような仮置台が設置された部品生産ラインでは、生産するプレス部品の変更時に、作業者が危険エリアに立ち入って、内段取り替え作業としての支持治具の交換作業(専用の仮置台の作製作業)を実施する必要がある場合がある。この場合には、ダウンタイムが長くなり易く、プレス部品の生産性を高める上での障害となっているのが実情である。
【0008】
係る実情に鑑み、本発明の主な目的は、プレス部品の生産性を高めるべく、生産ラインの稼働率向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明では、プレス部品を次々に生産するプレス部と、生産されたプレス部品が仮置きされる仮置台、及びプレス部で生産されたプレス部品を仮置台に順次搬送する搬送ロボットを有する部品搬送部とを備え、プレス部及び部品搬送部がライン稼働中の立ち入りが規制されている危険エリアに設置された部品生産ラインにおいて、危険エリア外に、プレス部で生産されるプレス部品に応じて人手作業で交換されるプレス部品の支持治具が装着された支持部材の作製用エリアが設けられ、搬送ロボットは、プレス部で生産されるプレス部品の変更に伴う段取り替え作業の実施中に、支持部材の作製用エリアで作製された支持部材を仮置台に搬送可能であることを特徴とする部品生産ラインを提供する。
【0010】
上記構成を有する本発明に係る部品生産ラインによれば、生産するプレス部品の変更時に、内段取り替え作業として実施する必要があった専用の仮置台の作製・設置作業を、外段取り替え作業として実施することが可能となる。これにより、部品生産ラインのダウンタイムを減じて当該ラインの稼働率を高め、プレス部品の生産性向上に寄与することができる。また、仮置台の作製に際して作業者が危険エリアに立ち入る必要がなくなるので、安全性向上に寄与することもできる。
【0011】
支持治具には、複数のプレス部品を互いに非接触の状態で支持可能な形状を有するものを好ましく使用することができる。係る構成によれば、例えばパレットにプレス部品を積み込む際、各プレス部品にキズ等の欠陥を生じさせることなく、複数のプレス部品をまとめてパレットに積み込むことが可能となる。これにより、部品生産ラインの一層の生産性向上に寄与することができる。
【0012】
また、各支持部材には、上記搬送ロボットがこれを搬送するときに掴むための把手を設けることができる。各支持部材に上記の把手を設け、かつこの把手を同一部品で構成しておけば、搬送ロボットによって実施されることになる支持部材の交換作業を効率良く実施することができる。
【発明の効果】
【0013】
以上より、本発明に係る部品生産ラインによれば、プレス部品の生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るプレス部品の生産ラインの概略平面図である。
【
図2】(a)図は、プレス部品の支持部材の概略平面図、(b)図は、同支持部材の概略側面図、(c)図は、同支持部材に装着される支持治具の概略斜視図である。
【
図3】段取り替え作業時における搬送ロボットの動作手順の一例を示すフロー図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る部品生産ラインの動作態様、及び当該ラインで実施される段取り替え作業を簡単に時系列表示した参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るプレス部品の生産ラインの概略平面図である。
図1に示す生産ライン1は、次々に生産(成形)される大型のプレス部品(例えば自動車の外装パネル)を順次パレットに積み込んで後工程に向けて払い出すように構成されたものであって、プレス部2と、パレット搬送部3と、プレス部2とパレット搬送部3の間に設けられた部品搬送部4とを備える。そして、上記の各部2~4が制御プログラムに基づいて自動運転されることにより、プレス部品の生産~生産されたプレス部品の後工程に向けての払い出しが自動で行われる。
【0017】
プレス部2、パレット搬送部3及び部品搬送部4が自動運転されている生産ライン1の稼働中に、作業者が上記の各部2~4を構成する機械装置の動作範囲内に立ち入るのを規制(制限)するため、生産ライン1には、プレス部2、パレット搬送部3及び部品搬送部4を囲う安全柵11が設置されている。この安全柵11で囲われた領域が本発明でいう危険エリア12に相当する。
【0018】
プレス部2は、プレス用鋼板が平置き姿勢の状態で間欠送りされる直線状の搬送路5aと、この搬送路5aに沿って間隔を空けて配設された一又は複数台のプレス金型(図示省略)とを有するプレス装置(例えば、タンデムプレス)5を備える。このプレス装置5(プレス部2)では、搬送路5aに沿って間欠送りされるプレス用鋼板を一又は複数のプレス金型(に設けられた凹凸形状の型部)に倣って変形させることにより、所定形状のプレス部品が次々に成形される。プレス金型は、生産するプレス部品が変更される毎に交換される。この交換作業は、生産予定のプレス部品に対応したプレス金型を所定の待機位置に準備・配置しておけば、生産するプレス部品が変更されるときに実施される段取り替え作業時に自動で実施される。
【0019】
パレット搬送部3は、プレス部品が積み込まれる積み込み位置LPまで空のパレットPを搬送し、この積み込み位置LPでプレス部品が所定数積み込まれたパレットPを積み込み位置LPから払い出し、後工程に搬送する。図示は省略しているが、プレス部品は、例えば縦姿勢(起立姿勢)でパレットPに積み込まれる。パレットPに複数のプレス部品を縦姿勢で積み込む場合、パレットPとしては、隣り合うプレス部品間に介在して隣り合うプレス部品同士を非接触の状態に維持する受け部が設けられたものが好ましく使用される。これにより、パレットPに積み込まれたプレス部品同士が接触することによってプレス部品にキズ等の欠陥が形成されるのを防止することができる。
【0020】
なお、本実施形態の生産ライン1では、上記の積み込み位置LPが、直線状をなすプレス装置5の搬送路5aの延長線上にある。また、生産されたプレス部品がパレットPに積み込まれるまでに経由する(仮置きされる)第1仮置台6及び第2仮置台7も搬送路5aの延長線上に配置されている。このため、プレス部2で生産されたプレス部品は、搬送路5aの延長線に沿って搬送された後、パレットPに積み込まれる。
【0021】
部品搬送部4は、プレス部2で生産されたプレス部品をパレット搬送部3に向けて搬送する部位であり、搬送路5aの延長線上に間隔を空けて配置された第1仮置台6及び第2仮置台7と、両仮置台6,7の間に設置され、第1仮置台6に仮置きされたプレス部品を第2仮置台7に搬送する搬送ロボット8と、第2仮置台7に平置き姿勢で仮置きされたプレス部品を上記の積み込み位置LPに位置するパレットPに積み込む二台(左右一対)の積み込みロボット9,10とを備える。図示は省略しているが、部品搬送部4は、プレス部2と第1仮置台6の間に設置され、プレス部2で生産されたプレス部品を第1仮置台6に搬送するための搬送手段をさらに備える。この搬送手段としては、例えば、上記の搬送ロボット8とは別の搬送ロボット、あるいは搬送コンベアを採用することができる。
【0022】
搬送ロボット8及び二台の積み込みロボット9,10には、何れも、伸縮、起伏、回転及び旋回等の三次元動作が可能なロボットアームを有する多関節(多軸)ロボットが使用される。搬送ロボット8のロボットアームの先端部にはロボットハンド等のアタッチメントが取り外し可能に装着され、また、積み込みロボット9,10のロボットアームの先端部にもアタッチメントが取り外し可能に装着される。積み込みロボット9,10に装着されるアタッチメントは、第2仮置台7に仮置きされたプレス部品を把持するものであり、プレス部2で生産されるプレス部品に応じて交換される。
【0023】
安全柵11を挟んで危険エリア12の外側、ここでは搬送ロボット8の背面側(
図1の紙面右側)には、プレス部品が次々に生産される生産ライン1の稼働中に、作業者がこれと並行して実施可能な外段取り替え作業を行うための作業エリア13が設けられている。
【0024】
作業エリア13で実施される外段取り替え作業としては、搬送ロボット8のロボットアームに装着される種々のアタッチメントを準備(用意)して所定の待機位置に配置する作業があり、当該作業を実施するためのアタッチメント準備エリア15が作業エリア13内に設けられている。搬送ロボット8に装着されるアタッチメントには、搬送するプレス部品(プレス部2で生産されるプレス部品)を把持可能な構造を有するプレス部品用アタッチメントがあり、プレス部品用アタッチメントは、生産されるプレス部品に応じて交換される。また、作業エリア13で実施される外段取り替え作業としては、上記のアタッチメント準備作業以外に、生産されるプレス部品に応じて準備する必要がある支持部材20を作製する作業があり、当該作業を実施するための支持部材作製エリア14も作業エリア13内に設けられている。
【0025】
上記のとおり、積み込みロボット9,10に装着されるアタッチメントは、搬送ロボット8に装着されるアタッチメントと同様にプレス部品に応じて交換されるが、そのアタッチメントは上記の作業エリア13では準備されておらず、例えば図示しない可動台車上に準備・保管されている。
【0026】
プレス部品が平置き姿勢で仮置きされる第2仮置台7としては、図示しない基台に、
図2(a)~(c)に示す部材を組み合わせた支持部材20を取り外し可能に取り付けたものが使用される場合と、この支持部材20が取り付けられていないものが使用される場合とがある。従って、プレス部品は、第2仮置台7に設置した支持部材20上に仮置きされる場合と、第2仮置台7上に直置きされる場合とがある。支持部材20は、プレス部品を平置き姿勢で支持するものであり、
図2(a)(b)に示す、治具装着部22及び把手23が取り付けられた基枠21の治具装着部22に、
図2(c)に示すような支持治具24を作業者が装着することで作製される。この支持部材20の作製作業(支持治具24の交換作業)が、作業エリア13に設けられた支持部材作製エリア14で行われる。
【0027】
基枠21は、アルミ合金等の金属材料で形成されたL型アングルやコの字アングルを梯子状に連結したもので構成されており、治具装着部22は、基枠21の幅方向[
図2(a)の紙面上下方向]両端部に長手方向に間隔を空けて複数(図示例では計12個)取り付けられている。把手23は、搬送ロボット8が支持部材20を搬送するときに搬送ロボット8に掴まれる部品であり、枠体21の長手方向中央部であって、かつ幅方向中央部から所定量幅方向外側にシフトした位置に設けられている。これは、プレス部品の搬送時に搬送ロボット8が把手23に干渉するのを防止するためである。
【0028】
支持治具24は、複数の直線状金属部材(金属パイプ等)を管継手を介して接続してなる治具本体25と、治具本体25の長手方向一方側の端部に設けられ、治具装着部22(に形成された孔部)に嵌合される軸部26と、治具本体25の長手方向他方側の端部に設けられ、プレス部品を下方側から接触支持する支持部27とを有する。この支持治具24は、作業者の人手作業によって軸部26を治具装着部22(に設けられた孔部)に嵌合することで基枠21に装着される。図示例の支持治具24は、上下に間隔を空けて設けられた二つの支持部27を有することから、二枚のプレス部品を互いに非接触の状態で支持可能である。
【0029】
支持部材20の仕様、例えば、支持治具24の設置個数や設置位置、及び基枠21に対する支持部27の相対位置等は、支持すべきプレス部品(プレス部2で生産されるプレス部品)に応じて変更される。上記のとおり、支持治具24の治具本体25は、複数の金属部材を管継手を介して接続することで形成されていることから、支持治具24の形態、さらに言えば基枠21に対する支持部27の相対位置は任意に変更可能である。そのため、基枠21の治具装着部22には、作業者の手作業により、支持すべきプレス部品の形状に応じて形態が調整された支持治具24が装着される。支持治具24の形態は、治具装着部22に装着する前に調整しても良いし、治具装着部22に装着した後に調整しても良い。
【0030】
以下、
図3及び
図4も参照しながら、以上の構成を有する本実施形態の生産ライン1において、所定形状のプレス部品(以下、「部品A」と言う)を所定数生産した後、部品Aとは形状等が異なるプレス部品(以下、「部品B」と言う)を生産する場合を例にとって、生産ライン1の動作態様と作業者による人手作業の実施態様とを簡単に説明する。
【0031】
まず、プレス部2で部品Aが生産(プレス成形)されると、この部品Aは、搬送ロボット8とは別に設けられた図示しない搬送手段によって仮置台6に搬送されてから、搬送ロボット8によって仮置台7に搬送される。このとき、仮置台7には部品Aを支持するための支持部材20が設けられており、仮置台7に搬送された部品Aは、支持部材20に設けられた支持治具24の支持部27により平置き姿勢で支持(仮置き)される。本実施形態の支持治具24には上下に間隔を空けて2つの支持部27が設けられていることから、仮置台7に搬送された部品Aは、まず下側の支持部27により平置き姿勢で支持され、続けて仮置台7に搬送される部品Aが上側の支持部27により平置き姿勢で支持される。このとき、二枚の部品Aは、互いに非接触の状態で支持される。係る態様で二枚の部品Aが支持治具24に支持(仮置台7に仮置き)されると、一対の積み込みロボット9,10が作動する。積み込みロボット9,10は、二枚の部品Aをまとめて把持して持ち上げた後、二枚の部品Aの姿勢を平置き姿勢から縦姿勢に変更した上で積み込み位置LPに位置しているパレットPに二枚の部品Aを同時に積み込む。以降、上記同様にして、プレス部2で生産された部品AがパレットPに積み込まれる。
【0032】
生産ライン1で部品Aが次々に生産されるのと並行して、作業者は、危険エリア12外の作業エリア13において、段取り替え作業としての外段取り替え作業を実施する(
図4を参照)。外段取り替え作業としては、作業エリア13に設けられたアタッチメント準備エリア15で実施される、搬送ロボット8のロボットアームに装着されるアタッチメントの準備作業がある。ここでは、部品Bを把持可能な構造を有するプレス部品用アタッチメントが準備される。
【0033】
また、作業者が作業エリア13において実施する外段取り替え作業としては、作業エリア13に設けられた支持部材作製エリア14で実施される、支持部材20の作製作業がある。ここでは、部品Bに対応した仕様を有する支持治具24を枠体20の治具装着部22に装着することにより、部品Bを支持するのに適した支持部材20が作製される。
【0034】
そして、部品Aが予定数生産され、最後に生産された部品AがパレットPに積み込まれて後工程に払い出されると、生産ライン1は停止する。生産ライン1が停止すると、内段取り替え作業として、例えば以下の作業C1~C4が自動で実施される。
C1:プレス部2(プレス装置5)に取り付けられているプレス部品の成形用金型を、部品Aの成形用金型から部品Bの成形用金型に交換する金型交換作業。
C2:搬送ロボット8のロボットアームに装着されるアタッチメントを、部品Aの搬送用アタッチメントから部品Bの搬送用アタッチメントに交換するアタッチメント交換作業。
C3:第2仮置台7を構成する(第2仮置台7に設置される)支持部材20を、部品A用の支持部材から部品B用の支持部材に交換する支持部材交換作業。
C4:積み込みロボット9,10のロボットアームに装着されるアタッチメントを、部品Aの把持用アタッチメントから部品Bの把持用アタッチメントに交換するアタッチメント交換作業。
【0035】
なお、搬送ロボット8が実施することになる上記の作業C2,C3は、例えば
図3に示すような手順で実施される。すなわち、まずは、部品A搬送用のアタッチメントを取り外す第1ステップS1が実施され、次いで、第2仮置台7(を構成する基台)から部品A用の支持部材20を撤去する第2ステップS2が実施される。撤去された部品A用の支持部材20は、支持部品作製エリア14に搬送される。そして、支持部品作製エリア14で予め作製されていた部品B用の支持部材20を第2仮置台7(を構成する基台)に搬送して設置する第3ステップS3が実施され、最後に、搬送ロボット8に部品B搬送用のアタッチメントを取り付ける第4ステップが実施される。
【0036】
上記の内段取り替え作業(作業C1~C4)が終了すると、生産ライン1で部品Bの生産が開始される。なお、部品Bは、部品Aを生産する場合と同様にして次々に生産され、パレットPに積み込まれた上で後工程に払い出される。
【0037】
以上で説明した本実施形態の部品生産ライン1は、小括すると、プレス部品を次々に生産するプレス2と、生産されたプレス部品が仮置きされる仮置台(第2仮置台7)、及び生産されたプレス部品を第2仮置台7に順次搬送する搬送ロボット8を有する部品搬送部4とを備え、プレス部2及び部品搬送部4がライン稼働中の立ち入りが規制(制限)されている危険エリア12に設置された部品生産ライン1であって、危険エリア12の外側に、プレス部2で生産されるプレス部品に応じて人手作業で交換されるプレス部品の支持治具24が装着された支持部材20の作製用エリア(支持部材作製エリア)14が設けられ、搬送ロボット8は、プレス部2で生産されるプレス部品の変更に伴う段取り替え作業の実施中に、支持部材作製エリア14で作製された支持部材(生産予定のプレス部品の支持部材)20を第2仮置台7に搬送可能であることを特徴としている。
【0038】
係る構成を有する本実施形態の部品生産ライン1では、生産するプレス部品の変更時に、内段取り替え作業として実施する必要があった仮置台の作製作業を、外段取り替え作業として実施することが可能となる(
図4中に示す「ハ」を参照)。これにより、部品生産ライン1のダウンタイムを減じて当該ラインの稼働率を高め、プレス部品の生産性向上に寄与することができる。また、仮置台(第2仮置台7)の作製に際して作業者が危険エリア12に立ち入る必要がなくなるので、安全性向上に寄与することもできる。
【0039】
以上、本発明の一実施形態に係る部品生産ライン1について説明を行ったが、本発明は、以上で説明したものに限定適用されるわけではなく、その要旨を変更しない範囲において種々の変更を施すことが可能である。
【0040】
例えば、以上で説明した実施形態では、プレス部2で生産するプレス部品の変更(部品A→部品B)に伴う段取り替え作業の実施時に、第2仮置台7に設置されていた部品A用の支持部材20を部品B用の支持部材20に交換するようにしたが、プレス部2で生産するプレス部品によっては、生産するプレス部品の変更前後で支持部材20の交換作業が不要な場合等もある。そのため、プレス部2で生産するプレス部品の変更に伴う段取り替え作業の実施時に、搬送ロボット8は、支持部材20の搬送に関して以下に示すD1~D3のような対応を採る場合もある。
D1:支持部材作製エリア14と第2仮置台7との間で支持部材20を搬送しない。
D2:第2仮置台7に設置されていた支持部材20を取り除き、この支持部材20を支持部材作製エリア14に搬送する動作のみを実施。
D3:支持部材作製エリア14で準備していた支持部材20を第2仮置台7に搬送する動作のみを実施。
【0041】
因みに、上記D1の対応は、生産するプレス部品の変更前後で共通の支持部材20を使用することができる場合、及び生産するプレス部品の変更前後で支持部材20を使用する必要がない場合に採られる。また、上記D2の対応は、プレス部2で生産されるプレス部品が、支持部材20を使用(支持部材20で支持)する必要があるものから支持部材20を使用する必要がないもの(第2仮置台7に直置きされるもの)に変更される場合に採られる。また、上記D3の対応は、プレス部2で生産されるプレス部品が、支持部材20を使用する必要がないものから支持部材20を使用する必要があるものに変更される場合に採られる。
【0042】
また、以上で説明した実施形態では、部品搬送部4に二台の仮置台6,7を設置しているが、仮置台は一台のみとすることも可能である。この場合、搬送ロボット8は、一台の仮置台と支持部材作製エリア14との間で支持部材20を搬送可能とする。
【符号の説明】
【0043】
1 部品生産ライン
2 プレス部
3 パレット搬送部
4 部品搬送部
7 第2仮置台(仮置台)
8 搬送ロボット
11 安全柵
12 危険エリア
13 作業エリア
14 支持部材作製エリア
15 アタッチメント準備エリア
20 支持部材
22 治具装着部
23 把手
24 支持治具
25 治具本体
27 支持部