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特許7482944血液の流れ及び呼吸の流れを監視するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】血液の流れ及び呼吸の流れを監視するための装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/0295 20060101AFI20240507BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20240507BHJP
   A61B 5/08 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
A61B5/0295
A61B5/026 140
A61B5/08
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2022098804
(22)【出願日】2022-06-20
(62)【分割の表示】P 2019533447の分割
【原出願日】2017-11-21
(65)【公開番号】P2022120192
(43)【公開日】2022-08-17
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】2016/5953
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(73)【特許権者】
【識別番号】519219070
【氏名又は名称】イダヘルス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】アモローソ,ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】キャンプ,デイヴィッド,ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ブッティニョール,ガブリエーレ
(72)【発明者】
【氏名】デ フリース,ヘリット
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-028309(JP,U)
【文献】特開平08-154906(JP,A)
【文献】特開2006-271610(JP,A)
【文献】国際公開第2015/193045(WO,A1)
【文献】特開2013-236690(JP,A)
【文献】特開2007-020654(JP,A)
【文献】特表2016-538062(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0287923(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/02-5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体内の少なくとも1つの動脈内の血流を監視するように構成された血流監視装置であって、当該装置は、
動脈上の皮膚の一部を覆い、動脈を通る脈動血流による動脈壁の動きに応じて変形するように配置される可変抵抗を有するものであって、前記可変抵抗は少なくとも部分的に、導電性エラストマーの変化量に依存する導電性エラストマーと、
前記導電性エラストマーと通信し、前記可変抵抗に少なくとも部分的に基づいて脈動血流を示す信号を生成するように構成された信号生成回路と、
動脈上の皮膚の部分と前記導電性エラストマーとの間に位置付け可能な延長部材であり、動脈壁の動きを前記導電性エラストマーに伝達して、脈動血流に応じて前記導電性エラストマーを変形させるように構成された延長部材と、を含み
前記導電性エラストマーは、複数に分割され、橈骨動脈壁および尺骨動脈壁の動きに応答して変形するように構成され、
前記信号生成回路によって生成された信号は、橈骨動脈および尺骨動脈における脈動血流を示し、
前記信号生成回路と通信し、第1の導電性エストマーを介して橈骨動脈における第1の血流を決定するとともに、第2の導電性エストマーを介して尺骨動脈における第2の血流を決定するように構成される第1の処理回路をさらに含む装置。
【請求項2】
前記導電性エラストマーの第1のセグメントは橈骨動脈壁の動きに応じて変形するように構成され、
前記導電性エラストマーの第2のセグメントは尺骨動脈壁の動きに応じて変形するように構成される、請求項に記載の装置。
【請求項3】
前記導電性エラストマーは、非導電性エラストマーの層によって分離される導電性エラストマーの少なくとも2つの層を含み、
前記導電性エラストマーの各層は、前記信号生成回路と通信する、
請求項1又は2のいずれかに記載の装置。
【請求項4】
前記導電性エラストマーが、前記導電性エラストマーの長さに亘って非導電性セグメントが点在する導電性セグメントを含む、請求項1乃至のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記導電性セグメントがエラストマーであり、前記非導電性セグメントがエラストマーではない、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記信号生成回路と通信し、生成された前記信号の一次および二次導関数に基づいて脈動血流の脈拍数を決定するように構成される第2の処理回路をさらに備える、請求項1乃至のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記延長部材が前記導電性エラストマーに挿通される、請求項1乃至のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
複数の延長部材をさらに含み、各延長部材が異なる動脈上に位置付け可能である、請求項1乃至のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
生体の少なくとも1つの動脈を通る血流の特徴を決定するように構成される血流監視装置であって、当該装置は、
非導電性セグメントによって分離される複数の導電性エラストマーセグメントを含み、各導電性エラストマーセグメントは、動脈内の血流によって引き起こされる前記各導電性エラストマーセグメントの変形に伴って変化する抵抗を有するエラストマー構造と、
動脈壁の動きを前記エラストマー構造に伝達するように構成される延長部材であって、動脈を覆う皮膚と前記エラストマー構造との間に位置付け可能な延長部材と、
前記エラストマー構造と通信し、少なくとも一の導電性エラストマーセグメントの抵抗の変化であって、前記少なくとも一の導電性エラストマーセグメントの変形から生じる抵抗の変化に応じて変化する信号を処理するように構成された処理回路と、を含
第1の導電性エラストマーセグメントが、橈骨動脈壁の動きに応じて変形するように構成され、
第2の導電性エラストマーセグメントが、尺骨動脈壁の動きに応じて変形するように構成される、
装置。
【請求項10】
前記エラストマー構造は、非導電性エラストマーの層によって分離される導電性エラストマーの少なくとも2つの層を含み、導電性エラストマーの各層は、前記処理回路と通信する、請求項に記載の装置。
【請求項11】
前記エラストマー構造は、前記エラストマー構造の長さに亘って非導電性セグメントが点在する導電性セグメントを含む、請求項又は1のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記延長部材が前記エラストマー構造のセグメントに挿通される、請求項乃至1のいずれか1項に記載の装置。
【請求項13】
複数の延長部材をさらに含み、各延長部材が異なる動脈上に位置付け可能である、請求項乃至1のいずれか1項に記載の装置。
【請求項14】
各延長部材が、動脈を覆う皮膚と前記導電性エラストマーセグメントとの間に位置付け可能である、請求項1に記載の装置。
【請求項15】
前記延長部材がビードである、請求項乃至1のいずれか1項に記載の装置。
【請求項16】
前記処理回路と通信し、処理された信号を無線で送信するように構成された無線送信機をさらに備える、請求項乃至1のいずれか1項に記載の装置。
【請求項17】
前記処理回路は、前記信号の振幅の変化を決定するように構成される、請求項乃至1のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、血液の流れ及び呼吸の流れを監視するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
20世紀初頭に開発されたプレチスモグラフィは、人間又は動物の臓器又は身体全体の容積の変化を測定することを可能にし、とりわけ末梢血流又は表面血流を測定するために使用される。特に、R J Whitneyは、1940年代の終わり頃に、水銀を含むゴム製ケーシングによって形成された二重リードを有する変形ゲージシステムを開発した(J Physiol, 121, 1-27, 1953)。その技術はその後改良されてきた。例えば、手首の動脈を照らして動脈容積の変化を測定する光電センサを使用し、次に血液学的情報を得るために様々な方法によって解析することができる電気信号を生成することを可能にする様々な技術が記載される。プレチスモグラフィ法の概要は、インターネットで入手可能である(http://level1diagnostics.com/research/P/L1D-PulseWaveMonograph.pdf)。しかしながら、使用するのは非常に単純且つ実用的であるが、現在利用可能なプレチスモグラフィ技術は精度の欠如に悩まされている。
【0003】
より一般的にはテンシオメータ(tensiometer)という用語で知られている血圧計の開発は、プレチスモグラフィの放棄を徐々にもたらした。テンシオメータは、心臓の圧力と装置によって生成された空気の圧力との両方に曝される動脈の反応を記録するマノメーターの原理に基づいている。テンシオメータは、プレチスモグラフィよりも精度が劣るが短期間で行え、医師の手術での使用が簡単なため採用されている。しかしながら、そのテンシオメータは、短期間に亘った、血流を表す圧力のおおよその評価だけを可能にする。
【0004】
同時に、心電図検査は、心臓の電気的活動を表すため、心臓専門医の検査の選択肢となっている。しかしながら、この検査は、複数の電極を身体上の様々な場所に配置し、電極を収集した信号を監視するための解析ユニットに接続することを必要とする。
【0005】
ドップラー超音波検査はまた、心臓内及び血管内の血流を調査するためにも使用される。施術者は、血流の方向及び速度を決定するために、解析対象の臓器に沿ってセンサを動かす。しかしながら、この検査は長期間の使用とは相容れず、施術者の積極的な存在を必要とする。
【0006】
心血管疾患は、世界の死亡の主な原因である。過去30年の間に、研究によって、いくつかの心臓病に対して多くの医学的治療法を開発することが可能になった。同時に、外科的技術は、かなり向上しており、例えば動脈のように、特に橈骨動脈を介してステント等の動脈支持装置の設置を可能にすることによって、心臓切開術を可能な限り最大限に回避することを可能にしている。
【0007】
そのような装置を設置するための手術数の増加に直面して、以前は心臓外科医だけが行っていたが、法律は、この処置を行うことができる施術者の数の増加を可能にした。そのような手術数の増加はまた術後の問題の数の増加を伴っている。
【0008】
呼吸周期、すなわち単位時間当たりの吸気数と呼気数も血流に影響を与えることが分かった。
【0009】
特に、1つの頻繁な合併症は、医療装置が挿入された動脈の術後の狭窄又は閉塞(狭窄)であり、これは同じ動脈を介して更なる手術を行うことは無効であるか又は危険でさえある。しかしながら、同じ患者がこの患者の人生の過程で同じタイプのいくつかの手術を必要とすることは珍しくない。この問題は、Muhammad Rashidらの(J Am Heart Assoc. 2016; doi:10.1161/JAHA.115.002686)により詳細に記載されている。この動脈閉塞/狭窄を説明するための最新の考えられる原因の1つは、手術の開始時に行われた動脈の切開から生じる創傷部に対する圧迫時間及び適さない圧力である。正しく行われた圧迫は、実際には、記事
http://www.invasivecardiolgy.com/articles/ulnar-artery-transient-compression-facilitating-radial-artery-patent-hemostasis-ultra-novelに記載されるように、閉塞の危険性を減らすことを可能にする。現在のところ、(この文脈では実施するのに実際的ではない超音波監視とは別に、)外科手術中も介入後の創傷部の圧迫段階でも、創傷部の環境における動脈機能を監視するための技術は使用されていない。
【0010】
従って、外科手術中及び手術後の創傷部の圧迫段階中にリアルタイムで動脈機能を正確に監視することを可能にするであろう単純で自己完結型でコンパクトな装置が現在欠如している。この監視は、施術者が、動脈閉塞等の術後の問題の危険性を最小限に抑えるために、施術者の手術手技と創傷部にかかる圧力との両方をリアルタイムで適応させることを可能にし得る。
【0011】
これが本発明によって解決される問題である。本発明は、プレチスモグラフィ技術に対する改良を提案し、有利には導電性材料の分野における進歩した技術を使用する。
【0012】
Heeger、MacDiarmid、及びShirawaは、ポリマーの共役二重結合に沿った電子の移動を促進し、且つこのポリマーを導電性にするために、非導電性ポリマーを「ドープ」できることを示している。国際公開第2015/049067号は、これらのポリマーを導電性にするために、ポリマー、特にエラストマーに、グラフェンタイプのナノ材料、特にカーボンベースのナノ材料をドープする方法を詳述している。これらの導電性エラストマーは、それらの長さ、すなわちその導電性エラストマーに加えられる応力の関数として抵抗が変化するという特性を有する。これは、上記特許文献に詳述されており、この文献は、脈拍又は呼吸等の微細な生理学的運動を測定するためにこの特性の使用を示唆する。
【0013】
本発明は、特に手術室で使用することができ、施術者に問題を生じさせない、可変抵抗を有する導電性エラストマーを含む非侵襲性プレチスモグラフ装置に関する。
【発明の概要】
【0014】
こうして、本願の発明の主題は、第1に、血流が移動するチャネルのネットワークを含む身体要素の血流を監視するための非侵襲的装置であり、この装置は、
身体要素の周囲に亘って延び、且つ身体要素の周囲の長さに感応(sensitive)するように配置された可変抵抗を有する導電性エラストマーの少なくとも1つのセグメントと、
可変抵抗によって長さを捕捉し、且つ長さを表す信号を供給するための手段と、
信号を処理するための手段であって、監視対象の血流のパラメータを抽出するための手段を含む処理するための手段と、を含む。
【0015】
本願の発明の主題はまた、身体要素の周囲の長さの変化を引き起こす人間又は動物の体の呼吸周期を監視するための非侵襲的装置であって、この装置は、
身体要素の周囲に沿って延び、且つ身体要素の周囲の長さに感応するように配置された可変抵抗を有する導電性エラストマーの少なくとも1つのセグメントと、
可変抵抗によって長さを捕捉し、且つ長さを表す信号を供給するための手段と、
信号を処理するための手段であって、監視対象の呼吸周期のパラメータを抽出するための手段を含む処理するための手段と、を含む。
【0016】
従って、本出願人は、上記の問題を解決するために、国際公開第2015/049067号から出発している。しかしながら、この文献は、可変抵抗を有する導電性エラストマーをプレチスモグラフィ装置に適用することを記載しておらず、従って、先行技術の分野から法的に除外されている。この文献を読む当業者、特にセンサに関する段落(第24頁第24~33行目)は、そのようなセンサの使用の可能性の広い分野に直面しており、可変抵抗を有する導電性エラストマーを用いたプレチスモグラフィ装置の特定の実施に導くことができなかった。
【0017】
血流は、血管と心臓における血流に対応する。血管は、血液を運ぶ全ての導管であり、動脈、静脈、細静脈、及び毛細血管を含む。
【0018】
非侵襲的監視装置は、皮膚への相互作用を必要としない、1つ又は複数のパラメータを監視することを可能にする装置である。単純な血液の採取及び製品の注射もまた非侵襲的な性質のものであると一般に認められている。装置のあるアイテムの非侵襲的な性質は、一般に危険がないことを意味する。
【0019】
好ましい実施形態では、可変抵抗を有する導電性エラストマーのセグメントは、身体要素を取り囲むように配置されており、且つ身体要素の周囲の長さに感応する。
別の有利な実施形態では、可変抵抗を有する導電性エラストマーのセグメントは接着片に固定される。
いずれにせよ、導電性エラストマーは、明らかに、皮膚と直接的に接触して配置される。衣料品等の皮膚を覆う布の上にエラストマーを置くと、装置の感度が著しく低下する。
【0020】
身体要素とは、ここでは、エラストマーセグメントによって全体的に又は部分的に覆われるか又は取り囲まれ得る身体の任意の部分を意味する。これらの身体要素は、肺、胴体、又は喉を含み得る。それらは人間又は動物に属し得る。
【0021】
身体要素の周囲とは、この身体要素の表面の境界を形成する線を指す。エラストマーセグメントは、例えば胴体又は首の一部に亘って延びてもよい。周囲の長さは、身体要素の周囲の長さのほんの一部であり得る。さらに、「肢を取り囲む」とは、捕捉手段及び処理手段が肢の周りに配置されるので、セグメントが肢の周りでそのセグメント自体で閉じていることを必ずしも意味しない。「巻付け(turn)」及び「周囲(periphery)」という用語は、この文書の残りの部分では区別なく使用される。
【0022】
ここで接着片とは、その表面の少なくとも一方が接着剤又は粘着性物質で覆われているポリマー薄膜(tissue)又は任意の他の適切な材料の薄層を指し、接着剤又は粘着性物質は、その接着片が配置される身体要素において皮膚に永続的に接着することを可能にする。そのような接着片は、特に包帯剤又はパッチと一般に呼ばれるものに使用される。
【0023】
本発明の好ましい実施形態では、長さを捕捉するための手段は、少なくとも1つの測定ブリッジを含み、そのうちの少なくとも1つの抵抗は、可変抵抗を有する導電性エラストマーによって形成される。測定ブリッジから出力される電気信号は、周囲の長さのイメージである。
【0024】
測定ブリッジは、ここでは少なくとも1つの抵抗を含む電子アセンブリを指し、その値は測定対象のパラメータ、ここでは長さに従って変化する。測定ブリッジのよく知られた例はホイートストンブリッジであるが、測定精度を向上させることを可能にする交流ブリッジ、オーウェンブリッジ、シェリングブリッジ、及びロビンソンブリッジ等の多数の変形も存在する。
【0025】
導電性エラストマーの長さの変化、すなわち監視対象の身体部分の周囲の長さの変化は、導電性エラストマーの抵抗の変化を引き起こし、その変化は、測定ブリッジによって評価され、且つ導電性エラストマーが周囲に配置されている身体部分における血流のイメージである。ホイートストンブリッジの原理は当業者にはよく知られている。変形ゲージへのその応用は広く文書化されている(What’s The Difference Between Operational Amplifiers And Instrumentation Amplifiers, Electric Design, 26 August 2015; Signal Conditioning Wheatstone Resistive Bridge Sensors, Texas Instrument, Application Report SLOA034, September 1999)。一般則として、測定ブリッジは、ここでは電子増幅器の機能を実行し、且つ演算増幅器、差動増幅器、又は計測用増幅器であり得る。測定ブリッジは測定回路とも呼ばれ得、ブリッジの概念は、可変抵抗導電性エラストマーの存在と関連している。
【0026】
本発明の有利な実施形態では、処理手段は電子的手段であり、監視対象の血流のパラメータを抽出するための手段は、監視対象の血流のパラメータをその長さから抽出するために、長さに関する情報を受け取るように構成されたアルゴリズムを含む。
【0027】
そのようなアルゴリズムは、BioMedical Engineering OnLine, 20054:48(DOI:10.1186/1475-925X-4-48)に記載されている。それらアルゴリズムは、特に、動脈流に関する情報を静脈モード及び/又は呼吸周期に関する情報から分離することを可能にする。それらアルゴリズムはまた、これら2つの流れの間の関係を解析することも可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本発明による血流を監視するための装置の概略図である。
図2】患者の手首の周りの図1の装置を示す図である。
図3】捕捉及び処理ボックスを有する図1の装置の詳細な図である。
図4】導電性エラストマーのセグメントを含み、患者の手首の周りに位置付けされた、血流を監視するための装置の別の実施形態を示す図である。
図5】手首の動脈及び橈骨動脈に形成された切開部に関して、手首の内側にある図5の装置の配置を示す図である。
図6】導電性エラストマーの2つのセグメントを含み、患者の手首の周りに位置付けされた、血流を監視するための装置の別の実施形態を示す図である。
図7】捕捉及び処理ボックスを有する図6の装置の詳細な図である。
図8】導電性エラストマーのセグメントの形態を示す図である。
図9a】可変エラストマーセグメントの長さを調整するためのシステムを含む、血流を監視するための装置の別の実施形態を示す図である。
図9b】可変エラストマーセグメントの長さを調整するためのシステムを含む、血流を監視するための装置の別の実施形態を示す図である。
図10】導電性エラストマーのセグメントの特定の構成を示す図である。
図11】本発明の装置の可能な用途を示す図である。
図12】接着片に一体化された本発明の装置を示す図である。
図13】本発明の装置のアルゴリズムを示す図である。
図14】本発明による装置の導電性エラストマーの延長部材を含む本発明の装置を示す図である。
図15】自動圧迫式ブレスレットに関連する本発明の装置を示す図である。
図16】スマートウォッチのブレスレットに一体化された本発明の装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、添付の図面を参照しながら、本発明のいくつかの実施形態の以下の説明によってよりよく理解されるであろう。
図1図3を参照すると、本発明のプレチスモグラフィ装置は、信号を捕捉し処理するためのボックス2を保持するためのブレスレット1と、ここではデータ処理システム4に収容されたアルゴリズム3とを含み、そのアルゴリズムの機能は、ボックス2の処理手段のそれらと組み合わされる。
【0030】
ブレスレット1は、ここでは手首5を部分的に取り囲むように意図され、且つボックス2を手首5上に保持するためにボックス2に固定されるエラストマーのセグメントである。たとえば、登録商標「Velcro」の下にある接着性テープ、又は時計のケースを保持する時計ブレスレットのような方法で、エラストマーセグメント及びボックスは、単純な標準的な方法で接続することができる。ブレスレット1は、手首5の皮膚に押し付けられるように意図された導電性ポリマーから作製される。
【0031】
ボックス2は、電源7によって供給され、その出力が無線送信機8に接続されたホイートストンブリッジ6を含む。ブレスレット1は、評価対象の未知の抵抗としてブリッジ6に組み込まれ、(送信機8に接続される)検出器10が配置されるブリッジ6の対角線の両端うちの1つの端部9に接続され、且つブリッジ6の他方の対角線の両端のうちの1つの端部11において電源7に接続される。
【0032】
アルゴリズム3がロードされるデータ処理システム4は、ボックス2の送信機8に接続されるように配置された受信機12を含む。従って、アルゴリズム3は、測定ブリッジ6、無線送信機8、及び無線受信機12と協働する。
電源7としては、電池又は充電式バッテリが考えられる。
送信機8と受信機12との間の接続は、ブルートゥース(登録商標)又はWiFi(登録商標)接続、又は他の任意の無線技術であり得る。
データ処理システムとして、コンピュータ、タッチタブレット、スマートフォン、さらにはコネクテッド時計さえ考えられる。
【0033】
最適な品質の信号を得るためには、導電性エラストマーの正確な位置付け及びその張力の調整が重要である。エラストマーの長さは、導電性エラストマーの張力がその長さの変化、従って抵抗を検出するのに十分であるが、大き過ぎないように調整され得、その結果、血液循環は影響を受けない。ブレスレット1の長さは、手首の周囲に手動で又は自動的に調整することができる。
【0034】
本発明の装置の構造的特徴について説明したので、次にその機能について説明する。
機能している間に、導電性エラストマーの長さは、静脈の流れ、動脈の流れ、及び呼吸の量によって変化する。導電性エラストマーから作製されたブレスレット1を含むホイートストンブリッジ6は、これらの生理学的パラメータのイメージである電気信号を生成するだろう。次に、この信号は、送信機8によってアルゴリズム3を含むデータ処理システム4の受信機12に送信される前に増幅することができ、これは受信した信号からその様々な成分を抽出することを可能にする。
【0035】
アルゴリズム3は、特に、動脈拍動に関する電気信号と静脈流に関する電気信号とを分離することを可能にする。そのアルゴリズム3は、これら2つの流れの間の差、だけでなくこれら2つの流れの間の差の一次又は二次導関数を解析することも可能にする。より良い信号品質のために、流れをより明確に分離するために周波数解析をさらに含むこともできる。次に、この情報はデータ処理システム4のスクリーン13上に表示してもよい。
【0036】
表示される情報は多様であり、本発明の装置の使用状況に適している。典型的には、アルゴリズム3によって計算された時間の関数としての生理学的パラメータの変化、又は互いの関係は、施術者が解析するのが簡単な方法で表示されるであろう。
【0037】
例えば橈骨動脈を通してステントタイプの装置を導入することを目的とした外科手術中に、前腕の橈骨動脈に切開部が形成される。次に手と切開部との間にブレスレット1を位置付けすることが考えられる。これは、嵩張らず、施術者の作業を妨げる可能性のある電気的接続を含まない、小型のブレスレット1によって可能になる。その後、施術者は、ステントの導入中に、手首での動脈及び静脈の流れをリアルタイムで監視し、それに応じて自分の手術を適応させることができる。同様に、手術の終わりに、出血を止めるために、施術者は動脈の切開によって生じる創傷部に圧力を加えるであろう。動脈及び静脈の流れをリアルタイムで監視することができることによって、施術者は創傷部に加えられる圧力を適合させることができるだろう。
【0038】
図15に示される場合に、この創傷部の圧迫段階は、例えばTerumo TR Band(登録商標)(http://www.medicalexpo.fr/prod/terumo-medical/product-71204-454828.html)によって提示されているもの等の自動創傷部圧迫装置14によって管理されるであろう。自動圧迫装置によって加えられる圧力は、データ処理システム4にブレスレット1によって供給されるデータの解析の関数として統合された追加のアルゴリズムによって、無線で制御されることが考えられ得る。医療用圧迫装置は、データ処理システムに無線で、又は状況に応じて、ブレスレットボックスへの直接有線接続を介して接続することができる。直接及び/又は無線で接続された測定装置を介して、異なるタイプの圧迫を適用及び制御することができる。圧迫は、例えば硬質又は軟質球体、空気チャンバ、又は場合により圧縮可能な流体を含むチャンバ等の外部要素からの圧力により行うことができる。
【0039】
エラストマーセグメント1の正確な位置付け及びその張力の調整は、測定される信号の品質、従って検出及び解析アルゴリズムによって抽出されるパラメータの品質にとって重要である。操作者は、手の近くであるが、外科手術を妨害しない位置の手首にブレスレットを容易に位置付けする。巧妙な調整は、その圧力又は張力を調整するためにブレスレットを主に締め付けることから成っている。これは、導電性エラストマーテープの長さを、エラストマーが十分に柔軟でありながら弛み過ぎない最適な力又は張力に調整することによって管理される。エラストマーにかかる絶対的な力が測定ではなくその精度に影響を与えることに留意することが重要である。これは、エラストマーの物理的特性、例えばその弾性率、その温度、及びその寸法等に関連している。エラストマーは、このエラストマーがより柔軟であるように特定の形態で製造してもよく、これはその柔軟性がより高い精度を与え、そしてその長さが調整し易いことを意味する。
【0040】
エラストマーの長さの調整は、有利には、導電性エラストマーのセグメントと協働するロックシステムを使用することによって容易にすることができる。この協働を容易にするために、導電性エラストマーテープ1は、例えば図8に示されるような反復レリーフ111等の特定のレリーフを有する連続材料110から構成することができる。ここでレリーフは、角が丸みを帯びた長方形の形状を有する穿孔であるが、そのレリーフは、ブレスレット1に要求される強度、精度、可撓性、及び抵抗性に適合するあらゆる形態を採用することができる。レリーフは、例えば締付けカラー上で使用されるような詰まり(jamming)パターンであり得る。この実施形態はまた、導電性エラストマーとボックス2の電子部品に接続された機械部品との間の電気的接触を改善する。
【0041】
同様に、ブレスレット1が手首に装着されたときのブレスレット1の調整も、ブレスレット1によって供給されたデータの解析に従って、データ処理システム4に統合されたさらに別のアルゴリズムによって制御することができ、駆動部材は、導電性エラストマーを監視に最適な張力に締め付けることを可能にする。
【0042】
図9a及び図9bを参照すると、手首310の皮膚311は、導電性エラストマー313のセグメントと、装置の電子素子だけでなく締付部材316を含むボックス312とによって取り囲まれている。締付部材316は、クランプリング314によって、その端部313Bで導電性エラストマーのセグメントの移動を可能にし、こうしてその長さを調整するモータ315を含み、他端313Bがボックス312に固定される。モータ315は、データ処理システム4によって制御され得、エラストマーセグメント313をその最適な張力に締め付け又は緩めさせる。この張力は、エラストマーの抵抗に比例し、装置によって生成された電気信号から抽出することができる。調整操作の終了は、例えばボックス2上の可視光信号、データ処理システム4のスクリーン13上のメッセージ、ボックス2又はデータ処理システム4で発せられる可聴信号、装置の要素の振動、又はこれらの複数の信号の組合せによって、操作者に知らせることができると考えられる。
【0043】
本発明の1つの有利な用途は、複数のブレスレット1を同時に使用することである。第2のブレスレットは、第1の電気信号に関して解析することができる第2の電子信号を生成するために肘と肩の間に配置することができ、施術者が腕全体の血流に関する追加情報を入手する。同様に、手術を受けている腕の血流を比較することができるいわゆる「基準」信号を得るために、1つ又は複数のブレスレットを第2の腕に対称的に配置してもよい。
【0044】
図4及び図5を参照すると、本発明の非侵襲性プレチスモグラフィ監視装置は、身体部分を取り囲むように配置された導電性エラストマーの2つのセグメントを含むことができる。
【0045】
導電性エラストマーの2つのセグメント101a及び101bはそれぞれ、一端がボックス102aに、他端がボックス102bに接続され、手首5を部分的に取り囲む。2つのボックス102a及び102bはそれぞれ、前述した装置と同様に構成される。ブレスレットが装着されると、第1のボックス102aは橈骨動脈15と尺骨動脈16との間に配置され、第2のボックス102bは手首の上に配置される。この構成では、導電性エラストマーのセグメント101aの長さの変化は橈骨動脈15に関連し、導電性エラストマーのセグメント101bの長さの変化は尺骨動脈16に関連する。この構成は、ボックス102a及び102bの無線通信ユニットによってアルゴリズム3を含むデータ処理ユニット4に送信することができる2つの別々の電気信号を取得することが可能にし、データ処理ユニット4は、それら電気信号から血流パラメータを抽出するためにこれらの信号を処理することができ、施術者が各動脈に関するより正確な情報を別々に取得するのを可能にする。特に、施術者が橈骨動脈上に切開部17を形成する場合に、施術者は、手首上の2つの動脈内の血流を比較し、必要ならば施術者の手術を適応させることができる。ここではホイートストンブリッジ型回路を使用したが、当業者に周知の任意の適切なアナログシステムによって、エラストマーセグメントの長さ情報を電流及び/又はデジタル情報に変換することを可能にすることは、例えば他の形態の測定ブリッジ又は増幅器、特に差動増幅器等も考えられることは明らかである。
【0046】
図6及び図7を参照すると、尺骨動脈16及び橈骨動脈17に関する信号を別々に解析する代替の変形例は、導電性エラストマーの2つのセグメント201a及び201bを使用することである。これらはそれぞれ一端がボックス202に、他端が固定要素218に接続され、手首5を部分的に取り囲む。この場合に、ボックス202は2つのホイートストンブリッジ206a及び206bを含み、各ブリッジは2つのエラストマーセグメント201a及び201bのうちの1つを未知の抵抗として含む。正しく機能させるためには、エラストマーの各端部をホイートストンブリッジに接続しなければならないので、それぞれのホイートストンブリッジにおいてエラストマーセグメント201a及び201bによってそれぞれ形成されたループを完成する2本の導線219a及び219bを追加する必要がある。これらのホイートストンブリッジはそれぞれ、検出器210a及び210bにそれぞれ接続され、両方とも送信機208及び電源207に接続される。同様の構成を3つ以上のエラストマーセグメントを用いて想定することができ、各セグメントが測定ブリッジに含まれるが、全てが同じ送信機に接続される。
【0047】
同様に、本発明の装置の使用は手首又は腕に限定されない。その装置は、施術者の要求に応じて他の身体部分又は臓器にも使用できる。例えば、ステントを取り付けることが大腿動脈を介して行われるとき、ブレスレットは大腿部に配置することができる。
【0048】
本発明の使用は外科手術中の使用に限定されない。本発明は血流及び/又は呼吸周期を監視する他のあらゆる活動にも適用することができる。
【0049】
一例は睡眠時無呼吸の監視である。次に患者は、睡眠中に自分のスマートフォン等の周囲解析装置に接続されたブレスレット又はパッチの形態で、本発明の装置を装着することができ、周囲解析装置は、装置の電子装置によって送信された信号を解析するアプリケーションを含み、無呼吸が患者にとって危険になるならば、患者を起こすように意図された可聴及び/又は光信号を発することができる。
【0050】
導電性エラストマーの1つ又は複数のセグメントを含む血流及び/又は呼吸周期を監視するための装置は、身体の多数の部分に使用することができる。その装置は手術前、手術中、又は手術後に使用することができる。その装置はまた、例えば動脈流及び/又は静脈流及び患者の心臓のコヒーレンス等の、患者の生理学的パラメータを監視するために、数日間、数週間、又は数カ月間に亘ったより長期間使用することもできる。
【0051】
図10を参照すると、本発明の装置を手首1606、足首1610、又は膝1609で使用して脚の静脈の問題を監視し、大腿部の頂部1607で大腿動脈を監視する、又は大腿部の下部1608で動脈閉塞及び/又は静脈閉塞を検出することができる。動脈閉塞及び/又は静脈閉塞を検出するために、その装置を様々なレベル(level)の上腕1603及び1604及び/又は前腕1605及び1606にも適用することができる。その装置は、勃起不全のタイプを明確にするために、陰茎の生理学的行動を監視するためにも有利に使用することができる。
【0052】
首部1602での装置の適用は、呼吸リズム、呼吸周期の不安定性、及び脳への動脈及び/又は静脈の流れを監視することを可能にする。
【0053】
導電性エラストマーのセグメントを監視することは、例えば腹部の動きを監視するために(例えば、腸手術後の腹壁の挙動を監視するために)腰部1627の周りで胴体に、又は呼吸周期、心臓のコヒーレンス、並びに動脈及び/又は静脈の心臓活動を監視するために胸部1626に設置することもできる。
【0054】
第二に、本発明の装置は、エレガントで実用的で快適な方法で日中及び夜間に使用できるように、一種の宝石として審美的に配置することができる。
【0055】
本発明の別の非常に有用で新規な実施形態は、パッチタイプの装置を形成するために、セグメント又は導電性エラストマーと捕捉及び/又は処理手段とを接着部分に接続することである。
【0056】
図12を参照すると、導電性エラストマーのセグメント1621は、電気コネクタ1623によって捕捉装置1620に接続される。エラストマー1621及び捕捉装置1620は、接着部分1622の粘着面に配置され、全体がパッチ1624を形成する。捕捉装置1620は、既に説明したボックス2及び202と同じ要素を含む。このパッチ1624は、例えば心臓のコヒーレンス、呼吸数、及び血液循環を測定するために胸部又は腹部で使用することができる。特に、このパッチは、患者の呼吸が深いか又は肺の上部のみで行っているか(インコヒーレンスであるか)を評価するのに役立ち、これは患者の代謝の交感神経又は副交感神経の平衡の指標である。パッチ1624は、膀胱の機能を測定するためにも使用することもでき、これは患者が集中治療を受けているときに非常に重要なパラメータである。
【0057】
サイズ、製造コスト、及び重量を減少させ、同時にその感度及び測定精度を高めるために、本発明の導電性エラストマーのセグメントを「層状に」製造することが可能である。この多層構造は、導電性エラストマーの層と非導電性エラストマーの層との交互層から構成される。この有利な構成により、1つの層状セグメント1500だけを使用して複数の測定を実行することが可能になる。
【0058】
図10を参照すると、ここでのエラストマーセグメント1500は、同一又は異なる剛性値を有し得る導電性エラストマー1501の層(a、b、及びc)と非導電性エラストマー1502の層(a、b、及びc)との交互層から構成される。導電性エラストマーの層1501a、b、及びcはまた、互いに異なる導電率の値を有してもよい。これらの層1501a、b、及びcは、電気コネクタによって装置の残りの部分に接続される。非導電性エラストマーの層1502aは、装置を電気的に絶縁するために、患者の皮膚と接触するように意図された外層を有利に形成する。
一実施形態では、全ての導電層がセグメント1500の全長を覆っている。
【0059】
導電層の一部、ここでは層1501bが「分割」され、すなわち導電部分1504、1505、及び1506を形成するために、その長さに亘って非導電部分1503が点在していてもよいことも考えられる。各導電性セグメントは、慎重に配置された電気コネクタによって装置の残りの部分に接続される。この分割により、層1501bに、導電性エラストマーの複数のセグメントから構成されるブレスレットについて前述した特性が付与され、例えば尺骨動脈に及び橈骨動脈に関する流れ等の、異なる静脈又は動脈の流れから来る信号を分離することが可能になる。
【0060】
非導電性セクション1503は、エラストマーから作製しても、作製しなくてもよく、オプションで異なる材料から製造してもよい。
セグメント1500は、複数の同一の導電層を含むことができ、各層は、別々に又は統計的に、或いは類似の層からの信号の相互作用を計算することによって処理することができる信号を生成する。
【0061】
一般に、電気接続は、例えば銅等の金属と導電性インクとの両方等の、任意の適切な材料から製造することができる。
特定の監視のために設計された装置を設計するために、1つの層又は複数の層の重ね合せを含むエラストマーセグメントを使用することができる。例えば、大腿動脈を監視するために設計されたエラストマーセグメントは、手首で橈骨動脈を監視するために設計されたエラストマーのセグメントと同じ構造を有することができるが、用途に応じてその寸法が適合されるであろう。
【0062】
監視対象の血流及び/又は呼吸の流れのパラメータを抽出するための手段は、測定ブリッジで測定された信号を操作者によって見ることができる信号に変換するために一定数のステップを使用するアルゴリズムを含む。
【0063】
図13を参照すると、第1のステップ2001において、電気信号s、ここでは電圧vがエラストマーセグメント毎に時間tに亘って測定される。電気信号は、最大電圧と最小電圧を含み、それらから平均心周波数fcが抽出される。例えば、人間の場合に、心周波数は0.25~4ヘルツ(Hz)の間である。正確な測定のためには、200Hzのサンプリング周波数、すなわち心周波数の抽出を行うことができる周波数が十分である。実際には、心周波数fcの抽出2002は、複数のステップ2003~2011を含む。
【0064】
第1のステップ2003において、信号Sは帯域フィルタを通過する。すなわち、例えばFIR(有限インパルス応答)タイプのフィルタ等の、フィルタの低カットオフ周波数と高カットオフ周波数との間にある周波数の帯域又は範囲のみを通過させることができる。結果として生じる信号Sfから、第2のステップ2004において、一次S’及び二次S’’の導関数が抽出される。デジタルモードでは、一次導関数及び二次導関数は、S’(n)=S(n+1)-S(n)及びS’’(n)=S’(n+1)-S’(n)によって従来通りに計算される。ここで、nはサンプルの番号である。
【0065】
ステップ2005において、一次導関数S’は、信号S’bに二値化され、信号S’の正の値を1に、負の値を0に置き換える。ステップ2006と独立して及び/又は並列して、二次導関数は、全ての負の値を0に設定することにより信号S’’pに修正される。
【0066】
計算ステップ2007において、2値化された一次導関数S’bと修正された二次導関数S’’pとの積が信号Wを与え、この信号Wからステップ2008において、最大値Wmaxを特定することが可能である。ステップ2009において、いわゆる「重み」デジタルフィルタを適用することにより、これらの最大値Wmaxから動脈周波数に関する成分Wmaxfを抽出することが可能になる。次に、信号Wmaxfは、帯域フィルタリング2010によって、その抽出した成分から「ノイズ」を除去するためにもう一度処理される。
【0067】
次に、ステップ2011において、その動脈拍動信号から心周波数を抽出するために、動脈拍動信号の2つの最大値の間の時間間隔を検出することが可能である。
Heartmath Instituteによって規定されるように、心臓のコヒーレンス、すなわち心周波数の変化はそこから推定することができる。
【0068】
心臓のコヒーレンスは、前の拍動と比較して心拍数を解析するモニタリングである。このプロセスは、身体の交感神経系と副交感神経系の平衡のもとにある。このモニタリングは、特に被検体のストレスレベルを評価し、オプションで、心身の疲労、鬱病、又は卒中等の症状の発現を検出することを可能にし得る。
【0069】
装置が複数のエラストマーセグメントを含む場合に、各セグメントに対応する信号は別々に処理され、各信号はステップ2003~2011の全てを経る。
帯域フィルタリングステップ2003から発せられる同じ信号Sfから、血流及び呼吸周期の他のパラメータも抽出することができる。
【0070】
ステップ2012において、エラストマーセグメント毎に、信号Sfが高速フーリエ変換(FFT)を利用する振動解析によって処理され、その解析から周波数グループ毎のスペクトルパワー密度PSDiが抽出される。すなわち各帯域が別個の生理学的パラメータに対応する周波数帯域上で、例えば、静脈系及び動脈系の周波数並びに呼吸数等が抽出される。各生理学的機能は、実際に、一組の周波数と関連付けることができ、そのサイクル、そのエネルギー、及びそのダイナミクスにおいてその周波数を特徴付けることを可能にする。次に、測定された各生理学的機能を表す信号Wi、例えば呼吸信号Wr、静脈信号Wv、又は動脈信号Waを生成するために、ステップ2013において、周波数帯域毎に得られた信号PDSiをそれらのエネルギー及び強度によって重み付けすることもできる。
【0071】
エラストマーセグメント毎に考慮される周波数帯域は、身体要素上のセグメントの特定の配置及びこれらの位置について予想される優勢な信号に依存し得る。
装置が複数のエラストマーセグメントを含む場合に、エラストマーセグメント毎に主に検出される生理学的パラメータのタイプの自動検出を容易にするために、セグメント毎に得られた信号Wiを比較することができる。
【0072】
上述したアルゴリズム300の全てのステップは、データ処理システムによってリアルタイムで生成され、そこから生じる信号はオペレータが見ることができる。
アルゴリズム300のステップの実行中に、全ての測定値、信号、又は計算結果は、例えばハードディスク又はクラウド等のローカル又はリモートの不揮発性メモリに保存することができる。
【0073】
アルゴリズム300のステップが、例としてここに詳述される。ステップの性質、数、及び順序は、可変エラストマーセグメントの長さの測定から、施術者によって使用され得る任意の情報を抽出することを可能にするアルゴリズムを構築するために、明らかに異なり得る。
【0074】
図14を参照すると、本出願人は、ボックス402に接続された導電性エラストマー401のセグメントと、手首5の周囲、特に橈骨動脈15のレベルにおける手首5との間に位置付けされたエラストマーのセグメントの静的長さの延長部材、ここではビード404の挿入を観察し、これがこの橈骨動脈15に関連して測定された信号の精度を著しく高めることを可能にすることに驚いた。
【0075】
実際に、ビードの存在は、幾何学的効果によって、エラストマーセグメント402を腕5から僅かに離すことによって、橈骨動脈の直径の変化による長さの変化を増幅すること、すなわち、その感度を高めることによって信号の振幅を増幅することを可能にする。
【0076】
本明細書ではビーズを使用する。ビーズはエラストマーセグメント上に滑り込んでおり、滑らせることによってその中で容易に動くことができ、そこから外れる恐れがない。しかしながら、他の位置付け可能な剛性要素、つまり、例えば皮膚とエラストマーとの間の監視対象の動脈のレベル(位置)等、身体部分の特定の位置に経時的に安定して位置付けされるのに適した要素も考えられ得る。要素は、例えば、立方体、半球形状、又は当業者によって適切であると考えられる他の任意の形状を有することができる。剛性要素は、任意の適切な材料を用いて製造され得、例えば木材又はプラスチックから作製され得る。
【0077】
導電性エラストマーの複数のセグメントを含む装置のアイテムの場合に、複数の動脈を監視するために、複数の延長部材(それぞれが位置付け可能である)をエラストマーのセグメント上に取り付けることが考えられ得る。例えば、各々が手首の全周を覆う2つのエラストマーセグメントを含む本発明による装置のアイテムは、各セグメント上に位置付け可能な延長部材を含み得る。使用中に、第1の延長部材は橈骨動脈の位置で第1のエラストマーセグメントと皮膚との間に位置付けされ、第2の延長部材は尺骨動脈の位置で第2のエラストマーセグメントと皮膚との間に配置される。こうして、装置はこれら2つの動脈に関する情報を非常に正確に測定することができる。例えば静脈流を測定するために、延長部材を有する更なるセグメントを追加することができる。
【0078】
こうして、本発明による装置は、好ましくは血流が移動するチャネルである関心点の位置で、装置の導電性エラストマーのセグメントと監視対象の身体要素の周囲との間に位置付け可能な少なくとも1つの延長部材を含む。
【0079】
の延長部材を使用して、小型の追加の測定器具を内部に一体化することによって他の測定を行うことが考えられ得る。例えば、音波又は超音波マイクロフォンを延長部材と関連付けることにより、プレチスモグラフ測定と並行して、動脈流に対してドップラー式測定を行うことが可能になる。この測定の結果は、その精度、品質、及び範囲を向上させるために、本発明の装置によって生成された他の情報と組み合わせることができる。
【0080】
上述したように、信号データ処理システムは、とりわけスマートウォッチであり得る。図16を参照すると、スマートウォッチ503は、時計ブレスレット留め具506のうちの1つの位置に、接続ポート504を備えている。本発明の装置、すなわち少なくとも1つの導電性エラストマーセグメント501(ここでは2つが示されている)と、セグメント501の長さを捕捉するための手段、信号処理手段、及びオプションでバッテリを含む回路502とを、時計503のブレスレット501内に一体化することが考えられ得る。信号が処理されると、その処理された信号は、時計503の接続ポート504を介して、時計にインストールされているソフトウェアプログラム又はアプリケーション506に送信される。スマートウォッチ503、すなわち、例えばWi-Fi(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、或いは3G又は4Gを介した通信に適したものは、被検体の血流又は呼吸サイクルに関連する問題が特定された場合に医療緊急サービスに自動的に通報するようにプログラムされ得る。この構成は、心不全又は重大な肺疾患の問題の高い危険性を示す被検体にとって特に興味深いものである。緊急サービスによって迅速に介入することができるだけでなく、患者の腕時計ブレスレットに統合された装置によって供給される情報によってそれらの介入を直接的に適合させることもできる。
【0081】
本発明のブレスレット及び装置は、スマートウォッチと、一方を機械的に、他方を電子的に接続するのに適したアセンブリを形成する。
例えば海中潜水のためのぬれた環境での使用のために、本発明の装置を支持する時計ブレスレットは、その装置を防水するためにシリコーンで被覆することができる。
【0082】
本明細書ではスマートウォッチという用語が使用されているが、この用語は、例えばアップルウォッチ(登録商標)等の異なる技術を統合するあらゆる時計サイズの携帯用監視システムを指すものとして理解すべきである。
【0083】
本発明の装置は、乳児の呼吸及び/又は心臓の活動を監視するためにも使用され得る。例えばマットレスの下に置かれるセンサマット等の、赤ちゃんの呼吸モニタと組み合わせることも考えられ得る。このタイプのマットは感度に乏しく、誤警報が発生する。マットによって記録された情報を本発明のブレスレットからの情報と組み合わせることは、全体の感度を有利に高めることができる
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9a
図9b
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16