(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】自動車投光器用の光学システム
(51)【国際特許分類】
F21S 41/27 20180101AFI20240507BHJP
F21S 41/24 20180101ALI20240507BHJP
F21S 41/19 20180101ALI20240507BHJP
F21W 102/20 20180101ALN20240507BHJP
F21W 102/155 20180101ALN20240507BHJP
【FI】
F21S41/27
F21S41/24
F21S41/19
F21W102:20
F21W102:155
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022197975
(22)【出願日】2022-12-12
【審査請求日】2023-02-16
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593045569
【氏名又は名称】ツェットカーヴェー グループ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100080816
【氏名又は名称】加藤 朝道
(74)【代理人】
【識別番号】100098648
【氏名又は名称】内田 潔人
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー シャーガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス エートレェツベルガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ケルン
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル ファールングルーバー
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル マーダー
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン ヴァクセンエッガー
(72)【発明者】
【氏名】パトリック ヴィッペル
【審査官】山崎 晶
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/038855(WO,A1)
【文献】特開2009-094014(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03653926(EP,A1)
【文献】特開2009-134962(JP,A)
【文献】特開2008-105500(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198527(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0198877(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 41/27
F21S 41/24
F21S 41/19
F21W 102/20
F21W 102/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車投光器用の光学システムであって、前記光学システム(1)は、少なくとも2つの光学体(2a、2b)を有し、前記光学体(2a、2b)は、それぞれ、
前記光学体(2a、2b)内に光線を入射するための光入射領域(3)と、
前記光学体(2a、2b)内に入射された光線を出射するための光出射領域(4)と、但し前記光出射領域(4)は、投射レンズ(4a)として構成されており、前記投射レンズ(4a)は、光軸線(x)と焦点面(f)を有し、
前記光学体(2a、2b)を画定し、前記光学体(2a、2b)内に入射された光線を偏向するための側面部(5)とを含み、前記側面部(5)は、前記光入射領域(3)と前記光出射領域(4)の間に延在し、前記側面部(5)の一部分が、光学的に有効な絞りエッジ(6a)を有する光線絞り(6)として構成されており、光学的に有効な前記絞りエッジ(6a)は、前記光学システム(1)を用いて生成可能な遠域配光内の明暗境界を形成するように構成されており、光線絞り(6)として構成された前記側面部(5)の前記部分は、規定面内に位置し、
前記投射レンズ(4a)と前記光線絞り(6)は、前記投射レンズ(4a)の前記光軸線(x)が前記規定面内に位置するように互いに配設されており、前記光線絞り(6)の光学的に有効な前記絞りエッジ(6a)は、前記投射レンズ(4a)の前記焦点面(f)内に位置し、
前記光学システム(1)は、少なくとも2つの付設光学系(7a、7b)を有し、各前記光学体(2a、2b)には、1つの付設光学系(7a、7b)が割り当てられており、各前記付設光学系(7a、7b)は、光源を有し、また前記光源の光を当該付設光学系に割り当てられた前記光学体(2a、2b)の前記光入射領域(3)に向けて導くように構成されており、更に、
少なくとも2つの前記付設光学系(7a、7b)の第1付設光学系(7a)は、前記第1付設光学系(7a)に割り当てられた光源の光線を、第1入射方向に沿った第1光線束として、前記第1付設光学系(7a)に割り当てられた前記光学体(2a)の前記光入射領域(3)に向けて導くように構成されており、前記第1光線束は、当該光学体(2a)の光学的に有効な前記絞りエッジ(6a)の領域への前記光入射領域(3)を介した入射後に、前記第1光線束が、当該光学体(2a)の前記光軸線(x)に対して直角に位置する切断面内で、光学的に有効な前記絞りエッジ(6a)において最大の光線密度を有するように集束され、前記第1光線束の第1部分は、前記光線絞り(6)により遮られ、前記第1光線束の第2部分は、前記絞りエッジ(6a)を通過して前記投射レンズ(4a)の方向に伝播し、前記第1入射方向は、当該光学体(2a)の前記光軸線(x)に対して第1入射角(α1)で配向されており、
少なくとも2つの前記付設光学系(7a、7b)の第2付設光学系(7b)は、前記第2付設光学系(7b)に割り当てられた光源の光線を、第2入射方向に沿った第2光線束として、前記第2付設光学系(7b)に割り当てられた前記光学体(2b)の前記光入射領域(3)に向けて導くように構成されており、前記第2光線束は、当該光学体(2b)の光学的に有効な前記絞りエッジ(6a)の領域への前記光入射領域(3)を介した入射後に、前記第2光線束が、当該光学体(2b)の前記光軸線(x)に対して直角に位置する切断面内で、光学的に有効な前記絞りエッジ(6a)において最大の光線密度を有するように集束され、前記第2光線束の第1部分は、前記光線絞り(6)により遮られ、前記第2光線束の第2部分は、前記絞りエッジ(6a)を通過して前記投射レンズ(4a)の方向に伝播し、前記第2入射方向は、当該光学体(2b)の前記光軸線(x)に対して第2入射角(α2)で配向されており、
前記第1付設光学系(7a)と第1光学体(2a)は、第1遠域配光を構成する第1光束を放射するように構成されて備えられており、前記第1遠域配光は、少なくとも部分的に真っ直ぐの明暗境界を有し、当該明暗境界は、少なくとも部分的にHHラインの下側に位置し、
前記第2付設光学系(7b)と第2光学体(2b)は、第2遠域配光を構成する第2光束を放射するように構成されて備えられており、前記第2遠域配光は、前記第1遠域配光の明暗境界の下側に位置すること、
及び、
前記第1遠域配光を構成する前記第1光束は、前記第2遠域配光を構成する前記第2光束と、前記光学システム(1)に対して25mの間隔で位置する遠域において、少なくとも部分的に重なり合い、前記第1光束と前記第2光束は、前記光学システム(1)の前方200mmに至るまでの間隔で位置する近域において重なり合うことはないこと、
を特徴とする光学システム。
【請求項2】
前記第1遠域配光は、第1勾配を有し、前記第2遠域配光は、第2勾配を有し、前記第1勾配は、前記第1遠域配光の明暗境界により垂直方向の断面に沿って決定され、前記第2勾配は、前記第2遠域配光の明暗境界により垂直方向の断面に沿って決定され、前記第1勾配は、前記第2勾配よりも小さく、前記第1遠域配光は、ロービーム配光内の50Vと50Rのポイントで規定される照度値を満たすこと、
を特徴とする、請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記第1光学体(2a)と前記第2光学体(2b)は、同じ構造であり、前記第1入射角(α1)と前記第2入射角(α2)は、異なっており、前記第1光学体(2a)の前記光軸線(x)と前記第2光学体(2b)の前記光軸線(x)は、互いに平行に配向されていること、
を特徴とする、請求項1に記載の光学システム。
【請求項4】
前記第1付設光学系(7a)と前記第2付設光学系(7b)は、異なって構成されており、光源の光をそれぞれの前記光学体(2a、2b)の方向に放射させる前記第1付設光学系(7a)の光出射面(8)と前記第2付設光学系(7b)の光出射面(8)は、異なる大きさで構成されていること、
を特徴とする、請求項1に記載の光学システム。
【請求項5】
前記第1付設光学系(7a)は、前記第1光学体(2a)に対し、前記第1付設光学系(7a)の光出射面(8)の中心点と、前記第1光学体(2a)の前記絞りエッジ(6a)と前記第1光学体(2a)の前記光軸線(x)の交点との間の距離として規定されている第1間隔を置いて、互いに配設されており、前記第2付設光学系(7b)は、前記第2光学体(2b)に対し、前記第2付設光学系(7b)の光出射面(8)の中心点と、前記第2光学体(2b)の前記絞りエッジ(6a)と前記第2光学体(2b)の前記光軸線(x)の交点との間の距離として規定されている第2間隔を置いて、互いに配設されており、前記第1間隔は、前記第2間隔よりも小さいこと、
を特徴とする、請求項1に記載の光学システム。
【請求項6】
前記第1光学体(2a)と前記第1付設光学系(7a)は、垂直方向で前記第2光学体(2b)と前記第2付設光学系(7b)の上に配設されており、前記第1光学体(2a)は、前記第2光学体(2b)に対し、前記第1光学体(2a)の前記投射レンズ(4a)が前記第2光学体(2b)の前記投射レンズ(4a)に対し、前記第1光学体(2a)の前記光軸線(x)と平行に配向されている方向に沿って、互いにずらされて配設されているように配設されており、前記第1光学体(2a)の前記光入射領域(3)及び/又は前記第2光学体(2b)の前記光入射領域(3)は、湾曲した表面を有し、前記第1光学体(2a)の前記光入射領域(3)及び/又は前記第2光学体(2b)の前記光入射領域(3)は、部分球形状に構成されていること、
を特徴とする、請求項1に記載の光学システム。
【請求項7】
前記第1光学体(2a)を用いて生成可能であり前記第1遠域配光を構成する前記第1光束は、第1水平放射角を有し、前記第2光学体(2b)を用いて生成可能であり前記第2遠域配光を構成する前記第2光束は、第2水平放射角を有し、前記第1水平放射角は、前記第2水平放射角よりも小さいこと、
を特徴とする、請求項1に記載の光学システム。
【請求項8】
前記第1光学体(2a)ないし前記第2光学体(2b)を用いて生成可能な前記第1遠域配光ないし前記第2遠域配光は、それぞれ最大照度を有し、前記第2光学体(2b)の前記光軸線(x)は、前記第1光学体(2a)の前記光軸線(x)に対し、0°よりも大きい傾斜角で傾けられており、前記傾斜角は、前記第2遠域配光の最大照度が前記第1遠域配光の最大照度内に位置するような傾斜角であり、前記傾斜角は、0.1°から0.5°までの値、又は0.3°の値をとること、
を特徴とする、請求項1に記載の光学システム。
【請求項9】
前記第1光学体(2a)と前記第2光学体(2b)の間には、遮光要素が配設されており、前記遮光要素は、前記第1付設光学系(7a)により前記第2光学体(2b)の方向に放射される散乱光を遮るように構成されていること、
を特徴とする、請求項1に記載の光学システム。
【請求項10】
前記第1光学体(2a)の前記光入射領域(3)は、側方エッジにより画定されており、垂直方向で最も高くに位置する側方エッジは、少なくとも1つの湾曲したエッジ部分を有し、前記エッジ部分は、2つの湾曲していないエッジ部分の間に配設されており、垂直方向で最も高くに位置する側方エッジの下側に位置し、垂直面内に位置する側方エッジは、一様な凹状又は凸状の曲率を有し、垂直方向で最も低くに位置する側方エッジは、真っ直ぐであること、
を特徴とする、請求項1に記載の光学システム。
【請求項11】
前記第2光学体(2b)は、第2光入射領域と、垂直方向でその光学的に有効な前記絞りエッジ(6a)の下側に位置する光学的に有効な第2絞りエッジ(6b)とを有し、前記第2光入射領域を介して前記第2光学体(2b)内に入射される光は、光学的に有効な前記第2絞りエッジ(6b)に当たり、前記第2絞りエッジ(6b)は、前記第2付設光学系(7b)と協働して、他の配光を生成するように構成されていること、
を特徴とする、請求項1に記載の光学システム。
【請求項12】
前記第1付設光学系(7a)と前記第2付設光学系(7b)は、それぞれ、同じ面内に配設されている光出射面(8)を有し、前記面は、前記第1光学体(2a)の前記光軸線(x)に対して直角に配設されていること、
を特徴とする、請求項1に記載の光学システム。
【請求項13】
光線絞り(6)として構成された前記側面部(5)の前記部分が位置する前記規定面は、前記光学システム(1)が自動車投光器内に取り付けられている状態で、実質的に水平面であり、前記第1付設光学系(7a)の光源と前記第2付設光学系(7b)の光源は、同じ面内に位置し、前記第1付設光学系(7a)の光源と前記第2付設光学系(7b)の光源は、同じプリント基板上に配設されていること、
を特徴とする、請求項1に記載の光学システム。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の光学システムを備えた自動車投光器。
【請求項15】
各前記光学体(2a、2b)には、正に1つの付設光学系(7a、7b)が割り当てられていること、
を特徴とする、請求項1に記載の光学システム。
【請求項16】
前記明暗境界は、完全にHHラインの下側に位置すること、
を特徴とする、請求項1に記載の光学システム。
【請求項17】
前記他の配光は、サインライト配光であること、
を特徴とする、請求項
11に記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月23日付けでパリ条約に基づいて提出された欧州特許出願第21217502.0号の優先権主張に基づくものであり、同出願の全記載内容は、引用をもって本明細書に組み込み記載されているものとする。
【0002】
本発明は、自動車投光器用の光学システムに関し、この際、該光学システムは、少なくとも2つの光学体を有し、これらの光学体は、それぞれ、
光学体内に光線を入射(入射結合)するための光入射領域と、
光学体内に入射された光線を出射(出射結合)するための光出射領域と、但し光出射領域は、投射レンズとして構成されており、投射レンズは、光軸線と焦点面を有し、
光学体を画定し、光学体内に入射された光線を偏向するための側面部とを含み、側面部は、光入射領域と光出射領域の間に延在し、この際、側面部の一部分が、光学的に有効な絞りエッジを有する光線絞りとして構成されており、この際、光学的に有効な絞りエッジは、該光学システムを用いて生成可能な遠域配光内の明暗境界を形成するように構成されており、この際、光線絞りとして構成された側面部の前記部分は、規定面内に位置し、
この際、投射レンズと光線絞りは、投射レンズの光軸線が前記規定面内に位置するように互いに配設されており、光線絞りの光学的に有効な絞りエッジは、投射レンズの焦点面内に位置し、
この際、該光学システムは、少なくとも2つの付設光学系(前置光学系)を有し、この際、各光学体には、1つの付設光学系、好ましくは正に1つの付設光学系が割り当てられており、この際、各付設光学系は、光源を有し、また光源の光をこの付設光学系に割り当てられた光学体の光入射領域に向けて導くように構成されている。
【背景技術】
【0003】
上記の形式の光学システムは、先行技術から知られている。そのような光学システムを用いて生成することのできる配光は、通常は、所定の法的な規則を満たしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2021/038855号
【文献】独国特許出願公開第112017000365号
【文献】欧州特許出願公開第3653926号
【文献】国際公開第2020/235609号
【文献】欧州特許出願公開第3249284号
【文献】独国特許出願公開第102008051109号
【文献】特開2008-277130号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、法的規定を超える追加的な要件が満たされるべき場合には、通常は、その追加的な要件を満たす追加的な照射装置が提供される。しかしこのことは、高コストと結び付いている。
【0006】
本発明の課題は、先行技術の欠点を軽減ないし排除することである。従って本発明は、特に配光の生成が改善される光学システムを創作することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題は、第1の視点に従い、以下の自動車投光器用の光学システムにより解決される。前記光学システムは、少なくとも2つの光学体を有し、前記光学体は、それぞれ、
前記光学体内に光線を入射するための光入射領域と、
前記光学体内に入射された光線を出射するための光出射領域と、但し前記光出射領域は、投射レンズとして構成されており、前記投射レンズは、光軸線と焦点面を有し、
前記光学体を画定し、前記光学体内に入射された光線を偏向するための側面部とを含み、前記側面部は、前記光入射領域と前記光出射領域の間に延在し、前記側面部の一部分が、光学的に有効な絞りエッジを有する光線絞りとして構成されており、光学的に有効な前記絞りエッジは、前記光学システムを用いて生成可能な遠域配光内の明暗境界を形成するように構成されており、光線絞りとして構成された前記側面部の前記部分は、規定面内に位置し、
前記投射レンズと前記光線絞りは、前記投射レンズの前記光軸線が前記規定面内に位置するように互いに配設されており、前記光線絞りの光学的に有効な前記絞りエッジは、前記投射レンズの前記焦点面内に位置し、
前記光学システムは、少なくとも2つの付設光学系を有し、各前記光学体には、1つの付設光学系、好ましくは正に1つの付設光学系が割り当てられており、各前記付設光学系は、光源を有し、また前記光源の光を当該付設光学系に割り当てられた前記光学体の前記光入射領域に向けて導くように構成されており、更に、
少なくとも2つの前記付設光学系の第1付設光学系は、前記第1付設光学系に割り当てられた光源の光線を、第1入射方向に沿った第1光線束として、前記第1付設光学系に割り当てられた前記光学体の前記光入射領域に向けて導くように構成されており、前記第1光線束は、当該光学体の光学的に有効な前記絞りエッジの領域への前記光入射領域を介した入射後に、前記第1光線束が、当該光学体の前記光軸線に対して直角に位置する切断面内で、光学的に有効な前記絞りエッジにおいて最大の光線密度を有するように集束され、前記第1光線束の第1部分は、前記光線絞りにより遮られ、前記第1光線束の第2部分は、前記絞りエッジを通過して前記投射レンズの方向に伝播し、前記第1入射方向は、当該光学体の前記光軸線に対して第1入射角で配向されており、
少なくとも2つの前記付設光学系の第2付設光学系は、前記第2付設光学系に割り当てられた光源の光線を、第2入射方向に沿った第2光線束として、前記第2付設光学系に割り当てられた前記光学体の前記光入射領域に向けて導くように構成されており、前記第2光線束は、当該光学体の光学的に有効な前記絞りエッジの領域への前記光入射領域を介した入射後に、前記第2光線束が、当該光学体の前記光軸線に対して直角に位置する切断面内で、光学的に有効な前記絞りエッジにおいて最大の光線密度を有するように集束され、前記第2光線束の第1部分は、前記光線絞りにより遮られ、前記第2光線束の第2部分は、前記絞りエッジを通過して前記投射レンズの方向に伝播し、前記第2入射方向は、当該光学体の前記光軸線に対して第2入射角で配向されており、
前記第1付設光学系と第1光学体は、第1遠域配光を構成する第1光束を放射するように構成されて備えられており、前記第1遠域配光は、少なくとも部分的に真っ直ぐの明暗境界を有し、当該明暗境界は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、HHラインの下側に位置し、
前記第2付設光学系と第2光学体は、第2遠域配光を構成する第2光束を放射するように構成されて備えられており、前記第2遠域配光は、前記第1遠域配光の明暗境界の下側に位置すること、
を特徴とする(形態1)。
より詳しくは、前記第1の視点において、
自動車投光器用の光学システムであって、前記光学システムは、少なくとも2つの光学体を有し、前記光学体は、それぞれ、
前記光学体内に光線を入射するための光入射領域と、
前記光学体内に入射された光線を出射するための光出射領域と、但し前記光出射領域は、投射レンズとして構成されており、前記投射レンズは、光軸線と焦点面を有し、
前記光学体を画定し、前記光学体内に入射された光線を偏向するための側面部とを含み、前記側面部は、前記光入射領域と前記光出射領域の間に延在し、前記側面部の一部分が、光学的に有効な絞りエッジを有する光線絞りとして構成されており、光学的に有効な前記絞りエッジは、前記光学システムを用いて生成可能な遠域配光内の明暗境界を形成するように構成されており、光線絞りとして構成された前記側面部の前記部分は、規定面内に位置し、
前記投射レンズと前記光線絞りは、前記投射レンズの前記光軸線が前記規定面内に位置するように互いに配設されており、前記光線絞りの光学的に有効な前記絞りエッジは、前記投射レンズの前記焦点面内に位置し、
前記光学システムは、少なくとも2つの付設光学系を有し、各前記光学体には、1つの付設光学系が割り当てられており、各前記付設光学系は、光源を有し、また前記光源の光を当該付設光学系に割り当てられた前記光学体の前記光入射領域に向けて導くように構成されており、更に、
少なくとも2つの前記付設光学系の第1付設光学系は、前記第1付設光学系に割り当てられた光源の光線を、第1入射方向に沿った第1光線束として、前記第1付設光学系に割り当てられた前記光学体の前記光入射領域に向けて導くように構成されており、前記第1光線束は、当該光学体の光学的に有効な前記絞りエッジの領域への前記光入射領域を介した入射後に、前記第1光線束が、当該光学体の前記光軸線に対して直角に位置する切断面内で、光学的に有効な前記絞りエッジにおいて最大の光線密度を有するように集束され、前記第1光線束の第1部分は、前記光線絞りにより遮られ、前記第1光線束の第2部分は、前記絞りエッジを通過して前記投射レンズの方向に伝播し、前記第1入射方向は、当該光学体の前記光軸線に対して第1入射角で配向されており、
少なくとも2つの前記付設光学系の第2付設光学系は、前記第2付設光学系に割り当てられた光源の光線を、第2入射方向に沿った第2光線束として、前記第2付設光学系に割り当てられた前記光学体の前記光入射領域に向けて導くように構成されており、前記第2光線束は、当該光学体の光学的に有効な前記絞りエッジの領域への前記光入射領域を介した入射後に、前記第2光線束が、当該光学体の前記光軸線に対して直角に位置する切断面内で、光学的に有効な前記絞りエッジにおいて最大の光線密度を有するように集束され、前記第2光線束の第1部分は、前記光線絞りにより遮られ、前記第2光線束の第2部分は、前記絞りエッジを通過して前記投射レンズの方向に伝播し、前記第2入射方向は、当該光学体の前記光軸線に対して第2入射角で配向されており、
前記第1付設光学系と第1光学体は、第1遠域配光を構成する第1光束を放射するように構成されて備えられており、前記第1遠域配光は、少なくとも部分的に真っ直ぐの明暗境界を有し、当該明暗境界は、少なくとも部分的にHHラインの下側に位置し、
前記第2付設光学系と第2光学体は、第2遠域配光を構成する第2光束を放射するように構成されて備えられており、前記第2遠域配光は、前記第1遠域配光の明暗境界の下側に位置すること、及び、
前記第1遠域配光を構成する前記第1光束は、前記第2遠域配光を構成する前記第2光束と、前記光学システムに対して25mの間隔で位置する遠域において、少なくとも部分的に重なり合い、前記第1光束と前記第2光束は、前記光学システムの前方200mmに至るまでの間隔で位置する近域において重なり合うことはないこと、
を特徴とする。
前記課題は、第2の視点に従い、本発明による光学システムを備えた自動車投光器により解決される(形態15)。
(尚、HHライン(水平面ライン)とは、ECE測定スクリーン上の水平線のラインであり、ここで投光器の光軸線は、水平面(H-H)内及び垂直面(V-V)内に延在する。(ECE:欧州経済委員会))
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の好ましい形態を記す。
(形態1)
本発明の第1の視点を参照。
(形態2)
前記第1遠域配光は、第1勾配を有し、前記第2遠域配光は、第2勾配を有し、前記第1勾配は、前記第1遠域配光の明暗境界により垂直方向の断面に沿って決定され、前記第2勾配は、前記第2遠域配光の明暗境界により垂直方向の断面に沿って決定され、前記第1勾配は、前記第2勾配よりも小さく、好ましくは、前記第1遠域配光は、ロービーム配光内の50Vと50Rのポイントで規定される照度値を満たすこと、
を特徴とする、形態1に記載の光学システム。
(形態3)
前記第1遠域配光を構成する前記第1光束は、前記第2遠域配光を構成する前記第2光束と、前記光学システムに対して25mの間隔で位置する遠域において、少なくとも部分的に重なり合い、好ましくは、前記第1光束と前記第2光束は、前記光学システムの前方200mmに至るまでの間隔で位置する近域において重なり合うことはないこと、
を特徴とする、形態1又は2に記載の光学システム。
(形態4)
前記第1光学体と前記第2光学体は、同じ構造であり、好ましくは前記第1入射角と前記第2入射角は、異なっており、特に前記第1光学体の前記光軸線と前記第2光学体の前記光軸線は、互いに平行に配向されていること、
を特徴とする、形態1~3のいずれか1つに記載の光学システム。
(形態5)
前記第1付設光学系と前記第2付設光学系は、異なって構成されており、特に、光源の光をそれぞれの前記光学体の方向に放射させる前記第1付設光学系の光出射面と前記第2付設光学系の光出射面は、異なる大きさで構成されていること、
を特徴とする、形態1~4のいずれか1つに記載の光学システム。
(形態6)
前記第1付設光学系は、前記第1光学体に対し、前記第1付設光学系の光出射面の中心点と、前記第1光学体の前記絞りエッジと前記第1光学体の前記光軸線の交点との間の距離として規定されている第1間隔を置いて、互いに配設されており、前記第2付設光学系は、前記第2光学体に対し、前記第2付設光学系の光出射面の中心点と、前記第2光学体の前記絞りエッジと前記第2光学体の前記光軸線の交点との間の距離として規定されている第2間隔を置いて、互いに配設されており、前記第1間隔は、前記第2間隔よりも小さいこと、
を特徴とする、形態1~5のいずれか1つに記載の光学システム。
(形態7)
前記第1光学体と前記第1付設光学系は、垂直方向で前記第2光学体と前記第2付設光学系の上に配設されており、好ましくは、前記第1光学体は、前記第2光学体に対し、前記第1光学体の前記投射レンズが前記第2光学体の前記投射レンズに対し、前記第1光学体の前記光軸線と平行に配向されている方向に沿って、互いにずらされて配設されているように配設されており、好ましくは、前記第1光学体の前記光入射領域及び/又は前記第2光学体の前記光入射領域は、湾曲した表面を有し、好ましくは、前記第1光学体の前記光入射領域及び/又は前記第2光学体の前記光入射領域は、部分球形状に構成されていること、
を特徴とする、形態1~6のいずれか1つに記載の光学システム。
(形態8)
前記第1光学体を用いて生成可能であり前記第1遠域配光を構成する前記第1光束は、第1水平放射角を有し、前記第2光学体を用いて生成可能であり前記第2遠域配光を構成する前記第2光束は、第2水平放射角を有し、前記第1水平放射角は、前記第2水平放射角よりも小さいこと、
を特徴とする、形態1~7のいずれか1つに記載の光学システム。
(形態9)
前記第1光学体ないし前記第2光学体を用いて生成可能な前記第1遠域配光ないし前記第2遠域配光は、それぞれ最大照度を有し、前記第2光学体の前記光軸線は、前記第1光学体の前記光軸線に対し、0°よりも大きい傾斜角で傾けられており、前記傾斜角は、前記第2遠域配光の最大照度が前記第1遠域配光の最大照度内に位置するような傾斜角であり、好ましくは、前記傾斜角は、0.1°から0.5°までの値、特に0.3°の値をとること、
を特徴とする、形態1~8のいずれか1つに記載の光学システム。
(形態10)
前記第1光学体と前記第2光学体の間には、遮光要素が配設されており、前記遮光要素は、前記第1付設光学系により前記第2光学体の方向に放射される散乱光を遮るように構成されていること、
を特徴とする、形態1~9のいずれか1つに記載の光学システム。
(形態11)
前記第1光学体の前記光入射領域は、好ましくは4つの側方エッジにより画定されており、垂直方向で最も高くに位置する側方エッジは、少なくとも1つの湾曲したエッジ部分を有し、前記エッジ部分は、好ましくは、2つの湾曲していないエッジ部分の間に配設されており、好ましくは、垂直方向で最も高くに位置する側方エッジの下側に位置し、垂直面内に位置する側方エッジは、一様な凹状又は凸状の曲率を有し、垂直方向で最も低くに位置する側方エッジは、真っ直ぐであること、
を特徴とする、形態1~10のいずれか1つに記載の光学システム。
(形態12)
前記第2光学体は、第2光入射領域と、垂直方向でその光学的に有効な前記絞りエッジの下側に位置する光学的に有効な第2絞りエッジとを有し、前記第2光入射領域を介して前記第2光学体内に入射される光は、光学的に有効な前記第2絞りエッジに当たり、前記第2絞りエッジは、前記第2付設光学系と協働して、他の配光、特にサインライト配光を生成するように構成されていること、
を特徴とする、形態1~11のいずれか1つに記載の光学システム。
(形態13)
前記第1付設光学系と前記第2付設光学系は、それぞれ、同じ面内に配設されている光出射面を有し、前記面は、前記第1光学体の前記光軸線に対して直角に配設されていること、
を特徴とする、形態1~12のいずれか1つに記載の光学システム。
(形態14)
光線絞りとして構成された前記側面部の前記部分が位置する前記規定面は、前記光学システムが自動車投光器内に取り付けられている状態で、実質的に水平面であり、好ましくは、前記第1付設光学系の光源と前記第2付設光学系の光源は、同じ特に平坦な面内に位置し、好ましくは、前記第1付設光学系の光源と前記第2付設光学系の光源は、同じ特に平坦なプリント基板上に配設されていること、
を特徴とする、形態1~13のいずれか1つに記載の光学システム。
(形態15)
本発明の第2の視点を参照。
【0009】
上記構成により、合成された遠域配光を1つの同じ光学システムで生成できるという利点が得られる。また複数の付設光学系が唯一の光学体に割り当てられていることもできる。これらの付設光学系は、唯一の光学体の光入射領域を、対称的に、或いは非対称的にも照らすことができる。光学体の入射面は、当たる光が、光学的に有効な絞りエッジに焦点合わせされるように構成されていることが可能である。投射レンズの焦点面は、所定の曲率を有するペッツバール面として理解することができ、この際、光線絞りの絞りエッジは、投射レンズのペッツバール面に対し、絞りエッジがペッツバール面内に位置するように追従する。それにより絞りエッジを用いて生成された明暗境界の鮮明な結像を達成することができる。光学システムを用いて生成可能であり第1遠域配光と第2遠域配光から合成されている全遠域配光は、特にロービーム配光である。
【0010】
第1遠域配光は、第1勾配を有し、第2遠域配光は、第2勾配を有し、この際、第1勾配は、第1遠域配光の明暗境界により垂直方向の断面に沿って決定され、第2勾配は、第2遠域配光の明暗境界により垂直方向の断面に沿って決定され、この際、第1勾配は、第2勾配よりも小さく、またこの際、好ましくは、第1遠域配光は、ロービーム配光内の50Vと50Rのポイントで規定される照度値を満たす。配光の明暗移行部の定量化は、明暗境界を介した垂直方向の断面に沿った勾配の最大値により行われる。そのために0.1°間隔の測定点で照射強度の対数が計算され、それらの差が形成され、それにより勾配関数が得られる。この関数の最大値がHD境界(明暗境界)の勾配と呼ばれる。この定義は、人間の照度知覚を不正確に模倣しているだけなので、異なって知覚されたHDラインが測定上同じ勾配値を有することもあり、ないし同じように見えるHDラインでは、異なる勾配が測定されることもある。当業者には、明暗境界の勾配の意味と算出は既知であるが、それでもこの関連では、UNECE規則ガイドライン「UN-R 123/02 Suppl. 2、ページ67-69」が参照される。更に「連邦道路研究所の報告、車両技術F65号、積極的な車両安全性のためのNCAPに関する車両照明の評価のための基準の開発、ページ37」も参照される。
【0011】
第1遠域配光を構成する第1光束は、第2遠域配光を構成する第2光束と、光学システムに対して25mの間隔で位置する遠域(ファーフィールド)において、少なくとも部分的に重なり合うことができ、この際、好ましくは、第1光束と第2光束は、光学システムの前方200mmに至るまでの間隔(光学システムの前方0mmから200mmに至るまでの間隔)で位置する近域(ニアフィールド)において重なり合うことはない。50Vのポイントは、ECE準拠の測定スクリーンにおいて、水平方向で0°、垂直方向で-0.86°に位置する。50Rのポイントは、ECE準拠の測定スクリーンにおいて、水平方向で-1.72°、垂直方向で-0.86°に位置する。近域は、投射レンズの焦点距離の長さの10倍よりも近い領域として理解することができる。
【0012】
第1光学体と第2光学体は、同じ構造であることができる。それにより製造コストが削減されるという利点が得られる。
【0013】
第1入射角と第2入射角は、異なっていることができる。特に第1入射角は、第2入射角よりも小さいことが可能である。
【0014】
第1光学体の光軸線と第2光学体の光軸線は、互いに平行に配向されていることができる。
【0015】
第1付設光学系と第2付設光学系は、異なって構成されていることができ、この際、特に、光源の光をそれぞれの光学体の方向に放射させる第1付設光学系の光出射面と第2付設光学系の光出射面は、異なる大きさで構成されている。それにより光出射面の大きさを介し、対応の光学体内に入射可能である光量を変更することができるという利点が得られる。
【0016】
第1付設光学系は、第1光学体に対し、第1付設光学系の光出射面の中心点と、第1光学体の絞りエッジと第1光学体の光軸線の交点との間の距離として規定されている第1間隔を置いて、互いに配設されており、第2付設光学系は、第2光学体に対し、第2付設光学系の光出射面の中心点と、第2光学体の絞りエッジと第2光学体の光軸線の交点との間の距離として規定されている第2間隔を置いて、互いに配設されていることができ、この際、第1間隔は、第2間隔よりも小さい。第2光学体に対する第2付設光学系の間隔がより大きいことにより、第2光学体と第2付設光学系を用いて放射可能な第2光束は、第1光束よりも幅広とすることができる。更に第2光束は、第1光束よりも低い照射強度を有することができる。それにより(第1遠域配光と第2遠域配光から形成されていることが可能な全遠域配光を構成することのできる)第1光束と第2光束から形成された全光束は、第1光束よりもより幅広で且つより均質であり得る。
【0017】
第1光学体と第1付設光学系は、垂直方向で第2光学体と第2付設光学系の上に配設されていることができる。それにより光学システムが特にコンパクトであるという利点が得られる。
【0018】
第1光学体は、第2光学体に対し、第1光学体の投射レンズが第2光学体の投射レンズに対し、第1光学体の光軸線と平行に配向されている方向に沿って、互いにずらされて配設されているように配設されていることができる。
【0019】
第1光学体の光入射領域、及び/又は第2光学体の光入射領域は、湾曲した表面を有することができる。
【0020】
第1光学体の光入射領域、及び/又は第2光学体の光入射領域は、部分球(ないし球台)形状に構成されていることができる。それにより第1光学体内及び/又は第2光学体内への光入射を特に効率的に行うことができるという利点が得られる。
【0021】
第1光学体を用いて生成可能であり第1遠域配光を構成する第1光束は、第1水平放射角を有し、第2光学体を用いて生成可能であり第2遠域配光を構成する第2光束は、第2水平放射角を有し、この際、第1水平放射角は、第2水平放射角よりも小さい。水平放射角は、水平面内の遠域配光の放射幅として理解することができる。換言すると、第2遠域配光は、第1遠域配光よりもより幅広であり得る。特に第1遠域配光は、法的な(幅の)要求を満たすことができ、第2遠域配光は、第1遠域配光と比較してより幅広の領域を照らすことができる。また第1光学体は、中央の遠域配光を生成し、第2光学体は、非中央の遠域配光を生成することができ、この際、非中央の遠域配光は、中央の遠域配光の左側又は右側の縁部に配設されている。一実施例では、3つの光学体を設けることができ、この際、第2光学体は、中央の遠域配光の左側の領域を照らし、第3光学体は、中央の遠域配光の右側の領域を照らす。この実施例において全遠域配光は、3つの部分遠域配光から合成されており、この際、個々の部分配光は、部分的に重なり合うことができる。
【0022】
第1光学体ないし第2光学体を用いて生成可能な第1遠域配光ないし第2遠域配光は、それぞれ最大照度を有し、この際、第2光学体の光軸線は、第1光学体の光軸線に対し、0°よりも大きい傾斜角で傾けられていることができ、この際、その傾斜角は、第2遠域配光の最大照度ないし最大照度領域が第1遠域配光の最大照度内ないし最大照度領域内に位置するような傾斜角である。換言すると、第1光学体は、第2光学体に対して傾けられていることが可能であり、この際、その傾斜角は、好ましくは0°より大きい。
【0023】
前記傾斜角は、0.1°から0.5°までの値、特に0.3°の値をとることができる。前記傾斜角は、好ましくは0.1°と5°の間、特に0.1°と3°の間、特に好ましくは0.1°と1°の間である。
【0024】
第1光学体と第2光学体の間には、遮光要素が配設されていることができ、該遮光要素は、第1付設光学系により第2光学体の方向に放射される散乱光を遮るように構成されている。遮光要素は、絞り(シェード)とすることができる。
【0025】
第1光学体の光入射領域は、好ましくは4つの側方エッジにより画定されていることができ、この際、垂直方向で最も高くに位置する側方エッジ(上側エッジと呼ぶことができる)は、少なくとも1つの湾曲したエッジ部分を有し、該エッジ部分は、好ましくは2つの湾曲していないエッジ部分の間に配設されており、この際、好ましくは、垂直方向で最も高くに位置する側方エッジの下側に位置し、垂直面内に位置する2つの側方エッジは、一様な凹状又は凸状の曲率を有し、この際、特に、上側エッジに向かい合って配設され、下側エッジと呼ぶことができる、垂直方向で最も低くに位置する側方エッジは、真っ直ぐに形成されていることが可能である。垂直方向で最も高くに位置する側方エッジは、実質的にS字状の延在形状を有することができる。垂直方向で最も高くに位置する側方エッジは、特に、一定でない或いは変化する曲率(側方エッジに沿って符号が変化する曲率)を有し、この際、残りの側方エッジは、好ましくは一定の曲率を有し、この曲率は、凸状又は凹状であり得る。垂直方向で最も低くに位置するエッジ、即ち下側エッジは、真っ直ぐに形成されていることが可能であり、特に、第1光学体の光軸線と平行な方向において、上側エッジよりも付設光学系の近くに位置することができる。湾曲したエッジ部分により、25mのECE測定スクリーンにおいてセグメント10(垂直方向で-4°のところの強度)内に位置する光を減少させることができる。それにより光強度を、配光の、特に水平方向の、下側の境界において均一化させることができる。
【0026】
第2光学体は、第2光入射領域と、垂直方向でその光学的に有効な絞りエッジの下側に位置する光学的に有効な第2絞りエッジとを有し、この際、第2光入射領域を介して第2光学体内に入射される光は、光学的に有効な第2絞りエッジに当たり、この際、第2絞りエッジは、第2付設光学系と協働して、他の配光、特にサインライト配光を生成するように構成されている。
【0027】
第1付設光学系と第2付設光学系は、それぞれ、同じ面内に配設されている光出射面を有することができ、この際、前記面は、第1光学体の光軸線に対して直角に配設されている。
【0028】
光線絞りとして構成された側面部の部分が位置する規定面は、光学システムが自動車投光器内に取り付けられている状態で、実質的に水平面であることができる。
【0029】
第1付設光学系の光源と第2付設光学系の光源は、同じ好ましくは平坦な面内に位置することができる。
【0030】
第1付設光学系の光源と第2付設光学系の光源は、同じ好ましくは平坦なプリント基板上に配設されていることができる。
【0031】
自動車投光器は、本発明による光学システムを有することができる。
【0032】
本開示の意味における遠域配光は、測定スクリーン上で見ることのできる配光として理解され、(光学システムにより生成された照射を検査するための)この測定スクリーンは、光学システム(ないし光学システムを有する自動車投光器)の前方に25mの距離を置き、光学システムの光軸線に対して垂直に立設されている。これに関しては、非対称のロービーム及び/又はハイビーム用の自動車投光器の認可のための条件を規定する、国際連合欧州経済委員会(UN/ECE)の規則の1番が参照される。
【0033】
本明細書の枠内では、「上方」、「下方」、「水平方向」、「垂直方向」との概念は、当該光学システムが自動車投光器内に組み込まれた後に通常の使用位置に配設されている場合の向きの記載として理解されるべきである。
【0034】
以下、有利な実施例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、それらの実施例に限定されるべきものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明による光学システムの第1実施形態を示す図である。
【
図2】本発明による光学システムの第2実施形態を示す図である。
【
図3】付設光学系を有する一光学体の側面図を示す図である。
【
図4】
図3の付設光学系を有する光学体の斜視図を示す図である。
【
図5】付設光学系を有する他の一光学体の斜視図を示す図である。
【
図5a】一配光の他の等照度グラフを示す図である。
【
図7】一光学体の更に他の一実施形態を示す図である。
【実施例】
【0036】
図1と図2は、自動車投光器用の本発明による光学システム1の第1実施形態
と第2実施形態を示しており、この際、光学システム1は、少なくとも2つの光学体2a、2bを有し、
図2に図示の実施例では、4つの光学体2a、2b、2c、2dを有する。これらの光学体2a、2b、2c、2dは、好ましくは同じ構造で構成されている。全般的に各実施形態は、少なくとも2つ、好ましくは3つ、4つ、又はそれよりも多くの光学体2と、それらの光学体2に割り当てられた付設光学系(前置光学系)7とを有することができる。
【0037】
【0038】
図示の4つの光学体2a、2b、2c、2dの各光学体は、光学体2a、2b、2c、2d内に光源の光線を入射(入射結合)するための光入射領域3と、光学体2a、2b、2c、2d内に入射された光線を出射(出射結合)するための光出射領域4とを有する。光出射領域4は、投射レンズ4aとして構成されており、投射レンズ4aは、光軸線xと焦点面fを有する。
【0039】
各光学体2a、2b、2c、2dは、光学体2a、2b、2c、2d内に入射された光線を偏向するように構成されている側面部5により画定される。側面部5は、光入射領域3と光出射領域4の間に延在し、この際、側面部5の一部分が、光学的に有効な絞りエッジ6aを有する光線絞り6として構成されている。各光学体2a、2b、2c、2dの光入射領域3は、湾曲した表面として構成されている。
【0040】
光学的に有効な絞りエッジ6aは、光学システム1を用いて生成可能な遠域配光内の明暗境界を形成するように構成されており、この際、光線絞り6として構成された側面部5の前記部分は、規定面内に位置する。この規定面は、光学システム1が自動車投光器内に取り付けられている状態では、実質的に水平面である。
【0041】
投射レンズ4aと、光学体2a、2b、2c、2dの光線絞り6は、投射レンズ4aの光軸線xが前記規定面内に位置するように互いに配設されており、光線絞り6の光学的に有効な絞りエッジ6aは、投射レンズ4aの焦点面f内に位置し、ないし投射レンズ4aのペッツバール面に追従する。光学体2a、2b、2c、2dは、互いに、光学体2a、2b、2c、2dの投射レンズ4aが垂直方向で上下に且つ水平方向でずらされて互いに配設されているように配設されている。
【0042】
光学システム1は、少なくとも2つの付設光学系(付属光学要素)7a、7bを有し、
図2に図示の実施例では、4つの付設光学系7a、7b、7c、7dを有し、この際、各光学体2a、2b、2c、2dには、正に1つの付設光学系7a、7b、7c、7dが割り当てられており、この際、各付設光学系7a、7b、7c、7dは、光源を有し、また光源の光をこの付設光学系に割り当てられた光学体2a、2b、2c、2dの光入射領域に向けて導くように構成されている。
【0043】
各付設光学系7a、7b、7c、7dは、自らに割り当てられた光源の光線を、所定の入射方向に沿った光線束として、自らに割り当てられた光学体2a、2b、2c、2dの光入射領域に向けて導くように構成されており、この際、その光線束は、光入射領域3を介した入射後に、当該光線束が、光学体2aの光軸線xに対して直角に位置する切断面内で、光学的に有効な絞りエッジ6aにおいて最大の光線密度を有するように集束される。入射方向は、それぞれ、光学体2a、2b、2c、2dの光軸線に対して入射角α1~α4で配向されている。入射角α1~α4は、異なるか又は同じであるとしてよい。付設光学系7a、7b、7c、7dは、異なって構成されており、この際、付設光学系7a、7b、7c、7dの光出射面8を介し、光源の光は、光学体2a、2b、2c、2dの方向に放射されるが、特に付設光学系7a、7b、7c、7dの光出射面8は、異なる大きさで構成されている。
【0044】
垂直方向で一番上の付設光学系7aとそれに割り当てられた光学体2aは、第1遠域配光を構成する第1光束を放射するように構成されて備えられており、この際、第1遠域配光は、少なくとも部分的に真っ直ぐの明暗境界を有し、当該明暗境界は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、HHライン(水平面ライン)の下側に位置する。
【0045】
垂直方向で一番上の光学体2aの下側に配設されている第2付設光学系7bと第2光学体2bは、第2遠域配光を構成する第2光束を放射するように構成されて備えられており、この際、第2遠域配光は、第1遠域配光の明暗境界の下側に位置する。
【0046】
第1遠域配光は、第1勾配を有し、第2遠域配光は、第2勾配を有し、この際、第1勾配は、第2勾配よりも小さい。第1遠域配光は、特にロービーム配光の50Vと50Rのポイントで規定される照度値を満たす。第1光束と第2光束は、光学システム1に対して25mの間隔で位置する遠域(ファーフィールド)において、少なくとも部分的に互いに重なり合う。第1光束と第2光束は、光学システム1の前方200mmに至るまでの間隔(光学システムの前方0mmから200mmに至るまでの間隔)で位置する近域(ニアフィールド)において重なり合うことはない。
【0047】
第2光学体2bの下側に配設されている第3光学体2cは、第3付設光学系7cを有し、この際、第3光学体2cと第3付設光学系7cは、好ましくは、追加の光機能、例えばサインライトを生成するように構成されている。サインライトの光機能を生成するために、第3(又はいずれか他の)光学体2cは、第2光入射領域と、垂直方向でその光学的に有効な絞りエッジ6aの下側に位置する光学的に有効な第2絞りエッジ6bとを有することができる(
図7を参照)。第2光入射領域を介して光学体2c内に入射される光は、光学的に有効な第2絞りエッジ6bに当たることができ、この際、第2絞りエッジ6bは、第2付設光学系7bと協働してサインライトの光機能を生成するように構成されている。
【0048】
各付設光学系7a、7b、7c、7dは、自らに割り当てられた光学体2a、2b、2c、2dに対し、所定の間隔を置いて配設されており、この間隔は、付設光学系7a、7b、7c、7dの光出射面8の中心点と、光学体2a、2b、2c、2dの絞りエッジ6aと光学体2a、2b、2c、2dの光軸線xの交点との間の距離として規定されている。4つの光学体2a、2b、2c、2dと、これらの光学体に割り当てられた付設光学系7a、7b、7c、7dは、垂直方向で上下に配設されている。
【0049】
図1による実施形態では、一番上の光学体2aと一番上の付設光学系7aとの間の間隔が最小であり、垂直方向で下方に位置する光学体2b、2c
では、対応の間隔は、徐々に大きくなる。
図1による実施形態では、
3つの付設光学系7a、7b、7c
が、1つの面内、ないし平坦なプリント基板9上に配設されており、この際、前記面は、垂直面である。
【0050】
図2による実施形態では、4つの付設光学系7a、7b、7c、7dが、1つの面内、ないし平坦なプリント基板(非図示)に配設されており、この際、前記面は、垂直面に対して<0°の角度で配向されている。
【0051】
図4aは、
図4による光学体2を用いて生成可能である配光の等照度グラフ(アイソルックス)を示している。
【0052】
図5は、光学体2の他の一実施形態を示している。光学体2の光入射領域3は、4つの側方エッジにより画定されており、この際、垂直方向で最も高くに位置する側方エッジは、少なくとも1つの湾曲したエッジ部分10aを有し、エッジ部分10aは、2つの湾曲していないエッジ部分10bの間に配設されている。湾曲したエッジ部分10aにより、光学体2と当該光学体2に割り当てられた付設光学系7とを用いて生成可能な配光において、配光の水平方向の下側境界における光強度を均一化することができる。この領域は、当業者にはセグメント10として知られている。左側と右側で一番上の側方エッジに隣接する側方エッジは、実質的に一様な凸状の曲率を有する。垂直方向で一番下の側方エッジは、実質的に真っ直ぐであり得る。一番上の側方エッジに接続する側方エッジも、一番下の側方エッジも、それぞれ凸状又は凹状で構成されていることが可能である。
【0053】
図5aは、
図5による光学体2を用いて生成可能である配光の等照度グラフ(アイソルックス)を示している。
【0054】
図5aでは、-4°のところの水平線(所謂セグメント10)が
図4aにおけるよりもより直線的に延在していることが見てとれる。このより直線的な延在形状は、光入射領域3の湾曲したエッジ部分10aによりもたらされている。
【0055】
図6は、光学体2の他の一実施形態を示しており、この実施形態において光学体2は、半球形状の凹部11を有し、半球形状の凹部11により、入射された光は、投射レンズ4上での出射時に光が配光内のセグメント10に当たらないように偏向される。凹部11は、その作用において、2つの湾曲していないエッジ部分10bの間に配設されている湾曲したエッジ部分10aを有する垂直方向で最も高くに位置する側方エッジに代わるものである。
図6に図示された光学体のバリエーションを用い、同様に
図5による光機能を生成することができる。
【0056】
本発明は、以下の付記として記載することができる。
[付記1]
自動車投光器用の光学システム。
前記光学システムは、少なくとも2つの光学体を有し、前記光学体は、それぞれ、
前記光学体内に光線を入射するための光入射領域と、
前記光学体内に入射された光線を出射するための光出射領域と、但し前記光出射領域は、投射レンズとして構成されており、前記投射レンズは、光軸線と焦点面を有し、
前記光学体を画定し、前記光学体内に入射された光線を偏向するための側面部とを含み、前記側面部は、前記光入射領域と前記光出射領域の間に延在し、前記側面部の一部分が、光学的に有効な絞りエッジを有する光線絞りとして構成されており、光学的に有効な前記絞りエッジは、前記光学システムを用いて生成可能な遠域配光内の明暗境界を形成するように構成されており、光線絞りとして構成された前記側面部の前記部分は、規定面内に位置し、
前記投射レンズと前記光線絞りは、前記投射レンズの前記光軸線が前記規定面内に位置するように互いに配設されており、前記光線絞りの光学的に有効な前記絞りエッジは、前記投射レンズの前記焦点面内に位置する。
前記光学システムは、少なくとも2つの付設光学系を有する。各前記光学体には、1つの付設光学系、好ましくは正に1つの付設光学系が割り当てられている。各前記付設光学系は、光源を有し、また前記光源の光を当該付設光学系に割り当てられた前記光学体の前記光入射領域に向けて導くように構成されている。
少なくとも2つの前記付設光学系の第1付設光学系は、前記第1付設光学系に割り当てられた光源の光線を、第1入射方向に沿った第1光線束として、前記第1付設光学系に割り当てられた前記光学体の前記光入射領域に向けて導くように構成されている。前記第1光線束は、当該光学体の光学的に有効な前記絞りエッジの領域への前記光入射領域を介した入射後に、前記第1光線束が、当該光学体の前記光軸線に対して直角に位置する切断面内で、光学的に有効な前記絞りエッジにおいて最大の光線密度を有するように集束される。前記第1光線束の第1部分は、前記光線絞りにより遮られ、前記第1光線束の第2部分は、前記絞りエッジを通過して前記投射レンズの方向に伝播する。前記第1入射方向は、当該光学体の前記光軸線に対して第1入射角で配向されている。
少なくとも2つの前記付設光学系の第2付設光学系は、前記第2付設光学系に割り当てられた光源の光線を、第2入射方向に沿った第2光線束として、前記第2付設光学系に割り当てられた前記光学体の前記光入射領域に向けて導くように構成されている。前記第2光線束は、当該光学体の光学的に有効な前記絞りエッジの領域への前記光入射領域を介した入射後に、前記第2光線束が、当該光学体の前記光軸線に対して直角に位置する切断面内で、光学的に有効な前記絞りエッジにおいて最大の光線密度を有するように集束される。前記第2光線束の第1部分は、前記光線絞りにより遮られ、前記第2光線束の第2部分は、前記絞りエッジを通過して前記投射レンズの方向に伝播する。前記第2入射方向は、当該光学体の前記光軸線に対して第2入射角で配向されている。
前記第1付設光学系と第1光学体は、第1遠域配光を構成する第1光束を放射するように構成されて備えられている。前記第1遠域配光は、少なくとも部分的に真っ直ぐの明暗境界を有し、当該明暗境界は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、HHラインの下側に位置する。
前記第2付設光学系と第2光学体は、第2遠域配光を構成する第2光束を放射するように構成されて備えられている。前記第2遠域配光は、前記第1遠域配光の明暗境界の下側に位置する。
[付記2]
上記光学システムにおいて、前記第1遠域配光は、第1勾配を有し、前記第2遠域配光は、第2勾配を有する。前記第1勾配は、前記第1遠域配光の明暗境界により垂直方向の断面に沿って決定され、前記第2勾配は、前記第2遠域配光の明暗境界により垂直方向の断面に沿って決定される。前記第1勾配は、前記第2勾配よりも小さい。好ましくは、前記第1遠域配光は、ロービーム配光内の50Vと50Rのポイントで規定される照度値を満たす。
[付記3]
上記光学システムにおいて、特に付記1又は2に記載の光学システムにおいて、前記第1遠域配光を構成する前記第1光束は、前記第2遠域配光を構成する前記第2光束と、前記光学システムに対して25mの間隔で位置する遠域において、少なくとも部分的に重なり合う。好ましくは、前記第1光束と前記第2光束は、前記光学システムの前方200mmに至るまでの間隔で位置する近域において重なり合うことはない。
[付記4]
上記光学システムにおいて、特に付記1~3のいずれか1つに記載の光学システムにおいて、前記第1光学体と前記第2光学体は、同じ構造である。好ましくは前記第1入射角と前記第2入射角は、異なっている。特に前記第1光学体の前記光軸線と前記第2光学体の前記光軸線は、互いに平行に配向されている。
[付記5]
上記光学システムにおいて、特に付記1~4のいずれか1つに記載の光学システムにおいて、前記第1付設光学系と前記第2付設光学系は、異なって構成されている。特に、光源の光をそれぞれの前記光学体の方向に放射させる前記第1付設光学系の光出射面と前記第2付設光学系の光出射面は、異なる大きさで構成されている。
[付記6]
上記光学システムにおいて、特に付記1~5のいずれか1つに記載の光学システムにおいて、前記第1付設光学系は、前記第1光学体に対し、前記第1付設光学系の光出射面の中心点と、前記第1光学体の前記絞りエッジと前記第1光学体の前記光軸線の交点との間の距離として規定されている第1間隔を置いて、互いに配設されており、前記第2付設光学系は、前記第2光学体に対し、前記第2付設光学系の光出射面の中心点と、前記第2光学体の前記絞りエッジと前記第2光学体の前記光軸線の交点との間の距離として規定されている第2間隔を置いて、互いに配設されている。前記第1間隔は、前記第2間隔よりも小さい。
[付記7]
上記光学システムにおいて、特に付記1~6のいずれか1つに記載の光学システムにおいて、前記第1光学体と前記第1付設光学系は、垂直方向で前記第2光学体と前記第2付設光学系の上に配設されている。好ましくは、前記第1光学体は、前記第2光学体に対し、前記第1光学体の前記投射レンズが前記第2光学体の前記投射レンズに対し、前記第1光学体の前記光軸線と平行に配向されている方向に沿って、互いにずらされて配設されているように配設されている。好ましくは、前記第1光学体の前記光入射領域及び/又は前記第2光学体の前記光入射領域は、湾曲した表面を有する。好ましくは、前記第1光学体の前記光入射領域及び/又は前記第2光学体の前記光入射領域は、部分球(ないし球台;kugelsegment)形状に構成されている。
[付記8]
上記光学システムにおいて、特に付記1~7のいずれか1つに記載の光学システムにおいて、前記第1光学体を用いて生成可能であり前記第1遠域配光を構成する前記第1光束は、第1水平放射角を有し、前記第2光学体を用いて生成可能であり前記第2遠域配光を構成する前記第2光束は、第2水平放射角を有する。前記第1水平放射角は、前記第2水平放射角よりも小さい。
[付記9]
上記光学システムにおいて、特に付記1~8のいずれか1つに記載の光学システムにおいて、前記第1光学体ないし前記第2光学体を用いて生成可能な前記第1遠域配光ないし前記第2遠域配光は、それぞれ最大照度を有する。前記第2光学体の前記光軸線は、前記第1光学体の前記光軸線に対し、0°よりも大きい傾斜角で傾けられている。前記傾斜角は、前記第2遠域配光の最大照度が前記第1遠域配光の最大照度内に位置するような傾斜角である。好ましくは、前記傾斜角は、0.1°から0.5°までの値、特に0.3°の値をとる。
[付記10]
上記光学システムにおいて、特に付記1~9のいずれか1つに記載の光学システムにおいて、前記第1光学体と前記第2光学体の間には、遮光要素が配設されており、前記遮光要素は、前記第1付設光学系により前記第2光学体の方向に放射される散乱光を遮るように構成されている。
[付記11]
上記光学システムにおいて、特に付記1~10のいずれか1つに記載の光学システムにおいて、前記第1光学体の前記光入射領域は、好ましくは4つの側方エッジにより画定されている。垂直方向で最も高くに位置する側方エッジは、少なくとも1つの湾曲したエッジ部分を有し、前記エッジ部分は、好ましくは、2つの湾曲していないエッジ部分の間に配設されている。好ましくは、垂直方向で最も高くに位置する側方エッジの下側に位置し、垂直面内に位置する側方エッジは、一様な凹状又は凸状の曲率を有する。垂直方向で最も低くに位置する側方エッジは、真っ直ぐである。
[付記12]
上記光学システムにおいて、特に付記1~11のいずれか1つに記載の光学システムにおいて、前記第2光学体は、第2光入射領域と、垂直方向でその光学的に有効な前記絞りエッジの下側に位置する光学的に有効な第2絞りエッジとを有する。前記第2光入射領域を介して前記第2光学体内に入射される光は、光学的に有効な前記第2絞りエッジに当たる。前記第2絞りエッジは、前記第2付設光学系と協働して、他の配光、特にサインライト配光を生成するように構成されている。
[付記13]
上記光学システムにおいて、特に付記1~12のいずれか1つに記載の光学システムにおいて、前記第1付設光学系と前記第2付設光学系は、それぞれ、同じ面内に配設されている光出射面を有する。前記面は、前記第1光学体の前記光軸線に対して直角に配設されている。
[付記14]
上記光学システムにおいて、特に付記1~13のいずれか1つに記載の光学システムにおいて、光線絞りとして構成された前記側面部の前記部分が位置する前記規定面は、前記光学システムが自動車投光器内に取り付けられている状態で、実質的に水平面である。好ましくは、前記第1付設光学系の光源と前記第2付設光学系の光源は、同じ特に平坦な面内に位置する。好ましくは、前記第1付設光学系の光源と前記第2付設光学系の光源は、同じ特に平坦なプリント基板上に配設されている。
[付記15]
上記光学システムを備えた自動車投光器、特に付記1~14のいずれか1つに記載の光学システムを備えた自動車投光器。
【0057】
尚、本発明の全開示(請求の範囲及び図面を含む)の枠内において、更にその基本的技術思想に基づいて、実施形態の変更・調整が可能である。また本発明の全開示の枠内において、種々の開示要素(各請求項の各要素、各実施形態の各要素、各図面の各要素等を含む)の多様な組み合わせ、ないし選択(非選択も含む)が可能である。即ち本発明は、請求の範囲及び図面を含む全開示、本発明の技術的思想に従って当業者であればなし得るであろう各種変形、修正を含むことは勿論である。特に本明細書に記載した数値範囲については、当該範囲内に含まれる任意の数値ないし小範囲が別段の記載のない場合でも具体的に記載されているものと解釈されるべきである。
【0058】
更に、請求項における参照符号は、特許請求される発明のよりよい理解のためにのみ付加され、これらの発明を、図面に図示した実施形態又は実施例に制限することを意図するものではない。
【0059】
上記の特許文献の全内容は、それらの引用により本明細書に含まれているものとする。
【符号の説明】
【0060】
1 光学システム
2a~2d 光学体
3 光入射領域
4 光出射領域
4a 投射レンズ
5 側面部
6 光線絞り
6a 絞りエッジ
7a~7d 付設光学系
8 光出射面
9 プリント基板
10a エッジ部分
10b エッジ部分
11 凹部
f 投射レンズ4aの焦点面
x 投射レンズ4aの光軸線
α1~α4 入射角