(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】蓄電素子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/562 20210101AFI20240507BHJP
H01M 50/566 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/553 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/588 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/593 20210101ALI20240507BHJP
H01M 50/176 20210101ALI20240507BHJP
H01G 11/74 20130101ALI20240507BHJP
【FI】
H01M50/562
H01M50/566
H01M50/553
H01M50/588
H01M50/593
H01M50/176
H01G11/74
(21)【出願番号】P 2022531835
(86)(22)【出願日】2021-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2021022668
(87)【国際公開番号】W WO2021256462
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2020103840
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】507151526
【氏名又は名称】株式会社GSユアサ
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中村 純
(72)【発明者】
【氏名】河合 章雄
(72)【発明者】
【氏名】富樫 英世
(72)【発明者】
【氏名】中谷 光宏
(72)【発明者】
【氏名】高田 登志広
(72)【発明者】
【氏名】犬飼 博史
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 宏司
(72)【発明者】
【氏名】濱口 直也
【審査官】川口 陽己
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/059826(WO,A1)
【文献】特開2021-077517(JP,A)
【文献】特開2018-081860(JP,A)
【文献】国際公開第2012/165567(WO,A1)
【文献】特開2016-207510(JP,A)
【文献】特開2002-324541(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/50-50/598
H01M 50/10-50/198
H01G 11/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記ケースに配置される金属製の外部端子と、を備え、
前記外部端子は、
前記ケースの外面に沿って広がる鍔部と、
前記鍔部から延びて前記ケースを貫通すると共に前記電極体と導通する軸部と、を有し、
前記鍔部は、前記軸部の貫通方向に積層される複数の金属層を有するクラッド材によって構成され、
前記複数の金属層において隣り合う金属層同士は、異なる種類の金属によって構成され、
前記鍔部における前記複数の金属層のうちの前記貫通方向における一方の端の金属層は、前記軸部と同じ種類の金属によって構成され、前記軸部と溶接されて
おり、
前記軸部は、純銅によって構成され、該軸部の前記鍔部を貫通している部位がカシメられることによって形成されている拡径部であって前記鍔部における前記ケースと反対側の面に沿って広がる拡径部を有し、
前記拡径部の前記ケースと反対側の面は、平らである、蓄電素子。
【請求項2】
電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記ケースに配置される金属製の外部端子と、
前記外部端子と前記ケースとの間に配置される絶縁部材と、を備え、
前記外部端子は、
前記ケースの外面に沿って広がる鍔部と、
前記鍔部から延びて前記ケースを貫通すると共に前記電極体と導通する軸部と、を有し、
前記鍔部は、前記軸部の貫通方向に積層される複数の金属層を有するクラッド材によって構成され、
前記複数の金属層において隣り合う金属層同士は、異なる種類の金属によって構成され、
前記鍔部における前記複数の金属層のうちの前記貫通方向における一方の端の金属層は、前記軸部と同じ種類の金属によって構成され、前記軸部と溶接されて
おり、
前記絶縁部材は、前記鍔部の周縁部を支持すると共に、該鍔部における前記支持されている部位の内側部位のケース側に空間を形成している、蓄電素子。
【請求項3】
電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記ケースに配置される金属製の外部端子と、を備え、
前記外部端子は、
前記ケースの外面に沿って広がる鍔部と、
前記鍔部から延びて前記ケースを貫通すると共に前記電極体と導通する軸部と、を有し、
前記鍔部は、前記軸部の貫通方向に積層される複数の金属層を有するクラッド材によって構成され、
前記複数の金属層において隣り合う金属層同士は、異なる種類の金属によって構成され、
前記鍔部における前記複数の金属層のうちの前記貫通方向における一方の端の金属層は、前記軸部と同じ種類の金属によって構成され、前記軸部と溶接されて
おり、
この鍔部と軸部との溶接部位は、該軸部の周方向において部分的に形成されている、蓄電素子。
【請求項4】
前記鍔部は、該鍔部の法線方向から見て長方形状であり、
前記溶接部位は、前記軸部の周方向における前記軸部と前記鍔部の短辺との間の領域に形成されている、請求項3に記載の蓄電素子。
【請求項5】
前記鍔部と前記軸部とは、該軸部がカシメられることによって接続されており、
前記一方の端の金属層と前記軸部との溶接部位の大きさは、前記軸部の前記カシメられた部位が破損したときに該破損の前後で該蓄電素子の抵抗変化がないように設定されている、請求項
2又は3に記載の蓄電素子。
【請求項6】
前記鍔部と前記軸部とは、該軸部がカシメられることによって接続されており、
前記鍔部と前記軸部のカシメ部との接触面積は、46mm
2以上で且つ75mm
2以下であり、
前記鍔部の前記貫通方向における寸法は、0.9mm以上で且つ1.1mm以下であり、
前記軸部と溶接されている金属層の前記貫通方向における寸法は、0.4mm以上で且つ0.6mm以下である、請求項
2又は3に記載の蓄電素子。
【請求項7】
電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記ケースに配置される金属製の外部端子と、を備え、
前記外部端子は、
前記ケースの外面に沿って広がる鍔部と、
前記鍔部から延びて前記ケースを貫通すると共に前記電極体と導通する軸部と、を有し、
前記鍔部は、前記軸部の貫通方向に積層される複数の金属層を有するクラッド材によって構成され、
前記複数の金属層において隣り合う金属層同士は、異なる種類の金属によって構成され、
前記鍔部における前記複数の金属層のうちの前記貫通方向における
ケース側の端である一方の端の金属層は、前記軸部と同じ種類の金属によって構成され、前記軸部と溶接されて
おり、
前記軸部は、前記鍔部の複数の金属層のうちの前記貫通方向における他方の端の金属層の途中まで挿入されている、蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、日本国特願2020-103840号の優先権を主張し、日本国特願2020-103840号の内容は、引用によって本願明細書の記載に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、外部端子を備える蓄電素子に関するものである。
【背景技術】
【0003】
従来から、複数の部材によって構成される外部端子を備えたリチウムイオン二次電池が知られている(特許文献1参照)。このリチウムイオン二次電池では、
図12に示すように、外部端子100において、軸部101と、軸部101から広がり且つバスバ等の他の部材が溶接される鍔部102と、が別部材によって構成されている。これら軸部101と鍔部102とは、カシメによって接続されている。
【0004】
このような外部端子100において、軸部101と鍔部102との接続をより強固にするために、軸部101と鍔部102とが溶接される場合がある。この場合、鍔部102に対する前記他の部材の溶接等の関係で、鍔部102が軸部101と異なる種類の金属によって構成されていると、異種金属同士の溶接となるため、軸部101と鍔部102との溶接強度が確保し難い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本実施形態は、外部端子において鍔部が軸部と異なる種類の金属を有していても、軸部と鍔部との溶接強度が確保された蓄電素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態の蓄電素子は、
電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記ケースに配置される金属製の外部端子と、を備え、
前記外部端子は、
前記ケースの外面に沿って広がる鍔部と、
前記鍔部から延びて前記ケースを貫通すると共に前記電極体と導通する軸部と、を有し、
前記鍔部は、前記軸部の貫通方向に積層される複数の金属層を有するクラッド材によって構成され、
前記複数の金属層において隣り合う金属層同士は、異なる種類の金属によって構成され、
前記鍔部における前記複数の金属層のうちの前記貫通方向における一方の端の金属層は、前記軸部と同じ種類の金属によって構成され、前記軸部と溶接されている。
【0008】
また、前記蓄電素子では、
前記鍔部と前記軸部とは、該軸部がカシメられることによって接続されており、
前記一方の端の金属層と前記軸部との溶接部位の大きさは、前記軸部の前記カシメられた部位が破損したときに該破損の前後で該蓄電素子の抵抗変化がないように設定されていてもよい。
【0009】
また、前記蓄電素子では、
前記鍔部と前記軸部とは、該軸部がカシメられることによって接続されており、
前記鍔部と前記軸部のカシメ部との接触面積は、46mm2以上で且つ75mm2以下であり、
前記鍔部の前記貫通方向における寸法は、0.9mm以上で且つ1.1mm以下であり、
前記軸部と溶接されている金属層の前記貫通方向における寸法は、0.4mm以上で且つ0.6mm以下であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本実施形態に係る蓄電素子の斜視図である。
【
図3】
図3は、前記蓄電素子が備える電極体の構成を説明するための図である。
【
図4】
図4は、前記蓄電素子の正極端子及びその周辺の拡大断面図である。
【
図7】
図7は、負極鍔部の構成を説明するための断面図である。
【
図8】
図8は、カシメられていない状態の負極軸部及びその周辺の構成を示す断面図である。
【
図9】
図9は、負極軸部がカシメられていない状態の負極外部端子を第三拡径部相当部位側から見た斜視図である。
【
図10】
図10は、他実施形態に係る負極端子の構成を説明するための拡大断面図である。
【
図11】
図11は、前記蓄電素子を備える蓄電装置の模式図である。
【
図12】
図12は、従来の外部端子の構成を説明するための拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本実施形態の蓄電素子は、
電極体と、
前記電極体を収容するケースと、
前記ケースに配置される金属製の外部端子と、を備え、
前記外部端子は、
前記ケースの外面に沿って広がる鍔部と、
前記鍔部から延びて前記ケースを貫通すると共に前記電極体と導通する軸部と、を有し、
前記鍔部は、前記軸部の貫通方向に積層される複数の金属層を有するクラッド材によって構成され、
前記複数の金属層において隣り合う金属層同士は、異なる種類の金属によって構成され、
前記鍔部における前記複数の金属層のうちの前記貫通方向における一方の端の金属層は、前記軸部と同じ種類の金属によって構成され、前記軸部と溶接されている。
【0012】
このように、鍔部が軸部と異なる種類の金属を有していても、鍔部をクラッド材にして軸部と溶接される部位(金属層)に該軸部と同じ種類の金属が配置される構成とすることにより、軸部と鍔部との溶接強度が十分に確保される。
【0013】
また、前記蓄電素子では、
前記鍔部と前記軸部とは、該軸部がカシメられることによって接続されており、
前記一方の端の金属層と前記軸部との溶接部位の大きさは、前記軸部の前記カシメられた部位が破損したときに該破損の前後で該蓄電素子の抵抗変化がないように設定されていてもよい。
【0014】
かかる構成によれば、使用時において蓄電素子における電気抵抗値の上昇が生じ難くなる(即ち、蓄電素子の電気導通の信頼性を確保することができる)。
【0015】
また、前記蓄電素子では、
前記鍔部と前記軸部とは、該軸部がカシメられることによって接続されており、
前記鍔部と前記軸部のカシメ部との接触面積は、46mm2以上で且つ75mm2以下であり、
前記鍔部の前記貫通方向における寸法は、0.9mm以上で且つ1.1mm以下であり、
前記軸部と溶接されている金属層の前記貫通方向における寸法は、0.4mm以上で且つ0.6mm以下であってもよい。
【0016】
かかる構成によれば、カシメ及び溶接による鍔部と軸部との接続強度及び導通性能を十分に確保することができる。
【0017】
以上より、本実施形態によれば、外部端子において鍔部が軸部と異なる種類の金属を有していても軸部と鍔部との溶接強度が確保された蓄電素子を提供することができる。
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図9を参照しつつ説明する。尚、本実施形態の各構成部材(各構成要素)の名称は、本実施形態におけるものであり、背景技術における各構成部材(各構成要素)の名称と異なる場合がある。
【0019】
本実施形態の蓄電素子は、非水電解質二次電池である。より詳しくは、蓄電素子は、リチウムイオンの移動に伴って生じる電子移動を利用したリチウムイオン二次電池である。この種の蓄電素子は、電気エネルギーを供給する。蓄電素子は、単一又は複数で使用される。具体的に、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧が小さいときには、単一で使用される。一方、蓄電素子は、要求される出力及び要求される電圧の少なくとも一方が大きいときには、他の蓄電素子と組み合わされて蓄電装置に用いられる。前記蓄電装置では、該蓄電装置に用いられる蓄電素子が電気エネルギーを供給する。
【0020】
蓄電素子は、
図1及び
図2に示すように、電極体2と、電極体2を収容するケース3と、ケース3に配置される金属製の外部端子4と、を備える。また、蓄電素子1は、電極体2と外部端子4とを導通させる集電体5と、電極体2とケース3との間に配置される絶縁部材6等も、備える。尚、
図2に示す外部端子4(詳しくは、負極端子4Bの負極軸部42B)は、カシメられる前の形状である。
【0021】
電極体2は、
図3にも示すように、巻回されている電極(正極23及び負極24)を有する。具体的に、電極体2は、巻芯21と、巻芯21の周囲に巻回された電極によって構成される積層体22と、を有する。この積層体22では、正極23と負極24とが互いに絶縁された状態で積層されている。電極体2においてリチウムイオンが正極23と負極24との間を移動することにより、蓄電素子1が充放電する。
【0022】
正極23は、帯状の金属箔231と、金属箔231に重ねられる正極活物質層232と、を有する。この正極活物質層232は、金属箔231における幅方向の一方の端縁部(非被覆部)を露出させた状態で、該金属箔231に重ねられている。本実施形態の金属箔231は、例えば、アルミニウム箔である。
【0023】
負極24は、帯状の金属箔241と、金属箔241に重ねられる負極活物質層242と、を有する。この負極活物質層242は、金属箔241における幅方向の他方(正極23の金属箔231の非被覆部と反対側)の端縁部(非被覆部)を露出させた状態で、該金属箔241に重ねられている。本実施形態の金属箔241は、例えば、銅箔である。
【0024】
本実施形態の電極体2では、正極23と負極24とがセパレータ25によって絶縁された状態で巻回されている。即ち、本実施形態の積層体22では、正極23、負極24、及びセパレータ25が積層されている。
【0025】
セパレータ25は、絶縁性を有する部材であり、正極23と負極24との間に配置される。これにより、電極体2(詳しくは、積層体22)において、正極23と負極24とが互いに絶縁される。また、セパレータ25は、ケース3内において、電解液を保持する。これにより、蓄電素子1の充放電時において、セパレータ25を挟んで交互に積層される正極23と負極24との間を、リチウムイオンが移動可能となる。
【0026】
このセパレータ25は、帯状であり、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、セルロース、ポリアミドなどの多孔質膜によって構成される。本実施形態のセパレータ25は、多孔質膜によって形成された基材と、該基材の上に設けられた無機層と、を有する。この無機層は、SiO2粒子、Al2O3粒子、ベーマイト(アルミナ水和物)等の無機粒子を含む。また、基材は、例えば、ポリエチレンによって形成される。
【0027】
セパレータ25の幅方向の寸法は、負極活物質層242の幅より大きい。セパレータ25は、正極活物質層232と負極活物質層242とが厚さ方向(積層方向)に重なるように幅方向に位置ずれした状態で重ね合わされた正極23と負極24との間に配置される。このとき、正極23の非被覆部と、負極24の非被覆部とは重なっていない。即ち、正極23の非被覆部が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向(積層方向と直交する方向)に突出し、且つ、負極24の非被覆部が、正極23と負極24との重なる領域から幅方向(正極23の非被覆部の突出方向と反対の方向)に突出する。このような積層状態(相対位置)となるように、正極23、負極24、及びセパレータ25が巻芯21の周囲に巻回されることによって、電極体2が形成される。また、本実施形態の電極体2では、正極23の非被覆部又は負極24の非被覆部のみが積層された部位によって、電極体2における非被覆積層部26が構成される。
【0028】
非被覆積層部26は、電極体2の各極に設けられる。即ち、正極23の非被覆部のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における正極の非被覆積層部を構成し、負極24の非被覆部のみが積層された非被覆積層部26が電極体2における負極の非被覆積層部を構成する。
【0029】
ケース3は、電極体2と共に電解液を収容する。具体的に、ケース3は、開口を有するケース本体31と、ケース本体31の開口を塞ぐ(閉じる)蓋板32と、を有する。このケース3は、電解液に耐性を有する金属によって形成される。本実施形態のケース3は、例えば、アルミニウム、又は、アルミニウム合金等のアルミニウム系金属によって形成される。
【0030】
電解液は、非水溶液系電解液である。電解液は、有機溶媒に電解質塩を溶解させることによって得られる。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート及びエチレンカーボネートなどの環状炭酸エステル類、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートなどの鎖状カーボネート類である。電解質塩は、LiClO4、LiBF4、及びLiPF6等である。本実施形態の電解液は、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネートを、エチレンカーボネート:ジメチルカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:2:5の割合で調整した混合溶媒に、1mol/LのLiPF6を溶解させたものである。
【0031】
ケース本体31は、板状の閉塞部311と、閉塞部311の周縁に接続される筒状の胴部(周壁)312と、を備える。
【0032】
閉塞部311は、ケース本体31が開口を上に向けた姿勢で配置されたときにケース本体31の下端に位置する(即ち、前記開口が上を向いたときのケース本体31の底壁となる)部位である。閉塞部311は、該閉塞部311の法線方向から見て、矩形状である。以下では、閉塞部311の長辺方向を直交座標系のX軸とし、閉塞部311の短辺方向を直交座標系のY軸とし、閉塞部311の法線方向を直交座標系のZ軸とする。
【0033】
胴部312は、角筒形状、より詳しくは、偏平な角筒形状である。胴部312は、閉塞部311の周縁における長辺から延びる一対の長壁部313と、閉塞部311の周縁における短辺から延びる一対の短壁部314と、を有する。即ち、一対の長壁部313は、Y軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における短辺に相当する間隔)を空けて対向し、一対の短壁部314は、X軸方向に間隔(詳しくは、閉塞部311の周縁における長辺に相当する間隔)を空けて対向する。短壁部314が一対の長壁部313の対応(詳しくは、Y軸方向に対向)する端部同士をそれぞれ接続することによって、角筒状の胴部312が形成される。
【0034】
以上のように、ケース本体31は、開口方向(Z軸方向)における一方の端部が塞がれた角筒形状(即ち、有底角筒形状)を有する。このケース本体31には、巻回中心軸C方向をX軸方向に向けた状態で電極体2が収容される。
【0035】
蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐ板状の部材である。本実施形態の蓋板32は、Z軸方向から見て、X軸方向に長い矩形状の板材である。この蓋板32は、ケース本体31の開口を塞ぐように、蓋板32の周縁部がケース本体31の開口周縁部34に重ねられる。蓋板32が開口周縁部34に重ねられた状態で、蓋板32とケース本体31との境界部が溶接され、これにより、ケース3が形成される。
【0036】
外部端子4は、蓄電素子1において他の蓄電素子の外部端子又は外部機器等と電気的に接続される部位である。外部端子4は、導電性を有する部材によって形成される。本実施形態の蓄電素子1は、正極端子4Aと負極端子4Bとの二種類の外部端子4を備える。これら二つの外部端子4は、X軸方向に間隔をあけた位置、より詳しくは、ケース3のX軸方向の各端部位置においてその一部42A、42Bをケース3に貫通させた状態で該ケース3に配置されている。
【0037】
尚、本実施形態の蓄電素子1では、外部端子4とケース3との間、及びケース3と集電体5との間に、絶縁部材7A、7Bが配置されている。この絶縁部材7Aは、外部端子4とケース3(本実施形態の例では、蓋板32)との間を絶縁すると共に、外部端子4におけるケース3を貫通している部位42A、42Bと該ケース3との間をシールする。また、絶縁部材7Bは、ケース3(本実施形態の例では、蓋板32)と集電体5との間を絶縁する。
【0038】
正極端子4Aは、
図4にも示すように、ケース3の外面に沿って広がる正極鍔部41Aと、正極鍔部41Aから延びてケース3を貫通すると共に電極体2と導通する正極軸部42Aと、を有する。正極端子4Aでは、正極鍔部41Aと正極軸部42Aとが一体である。本実施形態の正極端子4Aは、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属によって構成されている。
【0039】
正極鍔部41Aは、ケース3の蓋板32に沿って広がる。具体的に、正極鍔部41Aは、X軸方向に長尺な矩形の板状である。この正極鍔部41Aは、ケース3と反対側に溶接面411Aを有する。この溶接面411Aは、Z軸方向におけるケース3から離れる向きを向き、正極端子4Aを他の蓄電素子の外部端子や外部機器等と導通させるための部材(バスバ等の導通部材)が溶接される面である。
【0040】
正極軸部42Aは、Z軸方向に延びてケース3を貫通する。即ち、正極軸部42Aは、ケース3(蓋板32)をZ軸方向に貫通する。具体的に、正極軸部42Aは、Z軸方向に延びる正極軸部本体420Aと、Z軸方向から見て正極軸部本体420Aから広がっている正極拡径部421Aと、を有する。
【0041】
正極軸部本体420Aは、Z軸方向に延びる柱状の部位であり、ケース3(詳しくは、蓋板32)を貫通している。本実施形態の正極軸部本体420Aは、円柱状であり、絶縁部材7A、蓋板32、絶縁部材7B、及び集電体5を貫通している。
【0042】
正極拡径部421Aは、Z軸方向における正極鍔部41Aとの間に、ケース3及び集電体5を挟み込む。本実施形態の正極拡径部421Aは、正極鍔部41Aとの間に、絶縁部材7A、蓋板32、絶縁部材7B、及び集電体5を挟み込む。この正極拡径部421Aは、ケース3の内部において集電体5に沿って広がっている(拡径している)。
【0043】
負極端子4Bは、
図1、
図2、
図5~
図7に示すように、ケース3の外面に沿って広がる負極鍔部(鍔部)41Bと、負極鍔部41Bから延びてケース3を貫通すると共に電極体2と導通する負極軸部(軸部)42Bと、を有する。負極端子4Bでは、負極鍔部41Bと負極軸部42Bとが別体(別部材)である。これら負極鍔部41Bと負極軸部42Bとは、負極軸部42Bがカシメられることによって接続されている。
【0044】
負極鍔部41Bは、ケース3の蓋板32に沿って広がる。具体的に、負極鍔部41Bは、X軸方向に長尺な矩形の板状である。また、負極鍔部41Bは、負極軸部42Bが挿通される貫通孔412Bを有する。この貫通孔412Bは、負極鍔部41BをZ軸方向(換言すると負極鍔部41Bの厚さ方向)に貫通する。本実施形態の貫通孔412Bは、円形であり、負極鍔部41Bの中央部に配置されている。
【0045】
また、負極鍔部41Bは、ケース3と反対側に溶接面411Bを有する。溶接面411Bは、正極端子4Aの溶接面411Aと同様に、Z軸方向におけるケース3から離れる向きを向き、バスバ等の導通部材が溶接される面である。
【0046】
この負極鍔部41Bは、Z軸方向に積層される複数(本実施形態の例では二つ)の金属層411を有するクラッド材によって構成される。これら複数の金属層411において隣り合う金属層411同士は、異なる種類の金属によって構成されている。
【0047】
負極鍔部41Bにおいて、Z軸方向における複数の金属層411の一方(
図6及び
図7における下方)の端の金属層(第一金属層)411aは、負極軸部42Bと同じ種類の金属によって構成されている。この第一金属層411aは、負極軸部42Bと溶接されている(
図6の符号W(溶接部)参照)。また、負極鍔部41Bにおいて、Z軸方向における複数の金属層411のうちのZ軸方向の他方(
図6及び
図7における上方)の端の金属層(第二金属層)411bは、負極軸部42Bと異なる種類の金属によって構成されている。
【0048】
本実施形態の負極鍔部41Bは、第一金属層411aと第二金属層411bとの二つの金属層を有する。例えば、第一金属層411aは、銅又は銅合金等の銅系金属によって構成され、第二金属層411bがアルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミニウム系金属によって構成されている。具体的に、本実施形態の負極鍔部41Bの第一金属層411aは、純銅によって構成され、第二金属層411bは、アルミニウム合金によって構成されている。この負極鍔部41Bは、X軸方向の寸法が19mm以上で且つ21mm以下であり、Y軸方向の寸法が8mm以上で且つ8.5mm以下の矩形状である。本実施形態の負極鍔部41Bは、X軸方向の寸法が20mm、Y軸方向の寸法が8.3mmの矩形状である。また、負極鍔部41Bの厚さ(Z軸方向の寸法)は、0.9mm以上で且つ1.1mm以下である。
【0049】
第一金属層411aは、負極鍔部41Bにおいて第二金属層411bに対してケース3に近い位置にある。この第一金属層411aは、X-Y面(X軸方向とY軸方向とを含む面)方向に沿って広がり、貫通孔412Bを除いたX-Y面方向の各位置におけるZ軸方向の寸法(厚さ)は、一定である。本実施形態の第一金属層411aの厚さは、0.4mm以上で且つ0.6mm以下である。
【0050】
第二金属層411bは、負極鍔部41Bにおいて第一金属層411aに対してケース3から遠い位置にある。この第二金属層411bは、X-Y面(X軸方向とY軸方向とを含む面)方向に沿って広がり、貫通孔412Bを除いたX-Y面方向の各位置におけるZ軸方向の寸法(厚さ)は、一定である。本実施形態の第二金属層411bの厚さは、第一金属層411aの厚さと略同じである。また、負極鍔部41Bの溶接面411Bは、第二金属層411bにおけるケース3から離れる方向を向く面によって構成されている。
【0051】
負極軸部42Bは、Z軸方向に延びてケース3を貫通する。即ち、負極軸部42Bは、ケース3(蓋板32)をZ軸方向に貫通する。具体的に、負極軸部42Bは、Z軸方向に延びる負極軸部本体420Bと、Z軸方向から見て負極軸部本体420Bから広がっている複数の拡径部(第一拡径部421B、第二拡径部422B、第三拡径部423B)と、を有する(
図6参照)。これら負極軸部本体420Bと複数の拡径部421B、422B、423Bとは、一体である。負極軸部42Bは、例えば、銅又は銅合金等の銅系金属によって構成されており、本実施形態の負極軸部42Bは、純銅によって構成されている。
【0052】
負極軸部本体420Bは、Z軸方向に延びる柱状の部位であり、ケース3(詳しくは、蓋板32)を貫通している。本実施形態の負極軸部本体420Bは、円柱状であり、絶縁部材7A、蓋板32、絶縁部材7B、及び集電体5を貫通している。この負極軸部本体420Bの直径は、3.5mm以上で且つ4.5mm以下である。本実施形態の負極軸部本体420Bの直径は、4mmである。
【0053】
第一拡径部421Bは、負極鍔部41Bの第二金属層411bに沿って広がっている(拡径している)。この第一拡径部421Bは、ケース3に近づく方向を向き且つ第二金属層411bと接している(導通している)第一導通面(導通面)4210Bを、その表面に含む(
図6参照)。本実施形態の第一拡径部421Bは、負極軸部本体420BのZ軸方向の他方(
図6における上方)の端部から第二金属層411bにおける貫通孔412Bの周縁部に沿って広がり、Z軸方向から見た輪郭は、負極軸部本体420Bと同心の円形状である。具体的に、第一拡径部421Bの直径は、5.5mm以上で且つ7.5mm以下であり、厚さ(Z軸方向の寸法)は、0.5mm以上で且つ1.5mm以下である。本実施形態の第一拡径部421Bの直径は、6.55mmであり、厚さは、1mmである。また、この第一導通面4210Bの面積、即ち、負極鍔部41Bと負極軸部42Bの第一拡径部421Bとの接触面積は、46mm
2以上で且つ75mm
2以下である。
【0054】
第二拡径部422Bは、Z軸方向における第一拡径部421Bとの間に、負極鍔部41Bにおける貫通孔412Bの周縁部(貫通孔周縁部413B:
図7参照)を挟み込む。この第二拡径部422Bは、負極鍔部41Bの第一金属層411aに沿って広がっている(拡径している)。詳しくは、第二拡径部422Bは、第一金属層411aにおける貫通孔412Bの周縁部に沿って広がっている。この第二拡径部422Bは、ケース3から離れる方向を向き且つ第一金属層411aと接している(導通している)第二導通面4220Bを、その表面に含む(
図6参照)。本実施形態の第二拡径部422Bは、負極軸部本体420BのZ軸方向の途中位置から広がり、Z軸方向から見た輪郭は、負極軸部本体420Bと同心の円形である。具体的に、第二拡径部422Bの直径は、8mm以上で且つ8.55mm以下であり、厚さ(Z軸方向の寸法)は、2mm以上で且つ2.5mm以下である。本実施形態の第二拡径部422Bの直径は、8.2mmであり、厚さは、2.25mmである。また、第二導通面4220Bの負極鍔部41Bとの接触面積は、29mm
2以上で且つ44mm
2である。
【0055】
第三拡径部423Bは、Z軸方向における第二拡径部422Bとの間に、ケース3及び集電体5を挟み込む。本実施形態の第三拡径部423Bは、第二拡径部422Bとの間に、絶縁部材7A、蓋板32、絶縁部材7B、及び集電体5を挟み込む。具体的に、第三拡径部423Bは、ケース3の内部において集電体5に沿って広がっている(拡径している)。この第三拡径部423Bは、Z軸方向におけるケース3に近づく方向を向き且つ集電体5と接している(導通している)第三導通面4230Bを、その表面に含む(
図6参照)。本実施形態の第三拡径部423Bは、負極軸部本体420BのZ軸方向の一方(
図6における下方)の端部から広がり、Z軸方向から見た輪郭は、負極軸部本体420Bと同心の円形状である。
【0056】
以上の第一拡径部421B及び第三拡径部423Bは、負極鍔部41Bが負極軸部42Bに取り付けられる際や、負極軸部42B(又は負極端子4B)がケース3に取り付けられる際に形成される。具体的には、以下の通りである。
【0057】
負極軸部42Bにおいて、負極鍔部41Bが取り付けられる(固定される)前の第一拡径部421Bに相当する部位は、
図2及び
図8に示すように、負極鍔部41Bの貫通孔412Bを挿通可能な柱状の部位(第一拡径部相当部位)421B’である。この第一拡径部相当部位421B’が負極鍔部41Bの貫通孔412Bを挿通し、且つ負極鍔部41Bの貫通孔周縁部413Bが第二拡径部(貫通孔412Bより径の大きい部位)422Bに当接した状態(
図8参照)でカシメられる。これにより、第一拡径部相当部位421B’が貫通孔周縁部413Bに沿って広がり、その結果、第一拡径部421Bが形成される。
【0058】
本実施形態の負極端子4Bでは、以上のように負極軸部42Bがカシメられて該負極軸部42Bに負極鍔部41Bが取り付けられた後、さらに、負極鍔部41Bと負極軸部42Bとが溶接される。具体的には、負極鍔部41Bの第一金属層411aにおける貫通孔412Bの周縁部(貫通孔周縁部413B)と、負極軸部42Bの第二拡径部422Bと、が溶接される(
図6及び
図9の溶接部位W参照)。本実施形態の負極端子4Bでは、第一金属層411aにおける貫通孔412Bの周縁部と、負極軸部42Bの第二拡径部422Bと、が、
図9に示すように、X軸方向の一方の円弧状の領域と他方の円弧状の領域とのそれぞれにおいて溶接されている。
【0059】
この負極端子4Bにおける各溶接部位Wの大きさは、負極軸部42Bの第一拡径部(カシメられた部位)421Bが破損したときに、該破損の前後で蓄電素子1の抵抗変化がないように設定されている。即ち、各溶接部位Wの大きさは、第一拡径部421Bが破損等して第一拡径部421Bと負極鍔部41Bとの間(詳しくは、第一拡径部421Bの第一導通面4210Bと、負極鍔部41Bの第一金属層411aにおける貫通孔412Bの周縁部との間)の導通経路の一部又は全部が途切れても、第一拡径部421Bの前記破損等の前後で蓄電素子1の抵抗変化がないように設定されている。
【0060】
尚、前記の「蓄電素子1の抵抗変化がない」の「抵抗」とは、具体的には、負極鍔部41Bと、負極端子4Bが導通している集電体5と、の間の抵抗である。この「抵抗」は、例えば、負極鍔部41Bと負極軸部42B(詳しくは、第一拡径部421BのZ軸方向視における中央部)との間の抵抗と、集電体5(詳しくは、第一接続部51の貫通孔51aの周縁部)と負極軸部42B(詳しくは、第三拡径部423BのZ軸方向視における中央部)との間の抵抗と、に基づいて求められる。このときの抵抗の測定方法は、1Aの直流電流を流したときのDC抵抗を測定している。
【0061】
具体的に、溶接部位Wの大きさ(溶接面積)は、第一拡径部421Bの前記破損等が生じても、溶接部位Wの電気抵抗が0.005mΩ以下となるように設定されている。本実施形態の負極端子4Bにおける各溶接部位Wの溶接面積は、例えば、0.3mm2以上である。
【0062】
この溶接において、負極鍔部41Bの第一金属層411aにおける貫通孔412Bの周縁部と、負極軸部42Bの第二拡径部422Bとは、何れも同じ種類の金属(本実施形態の例では、銅系金属)によって構成されているため、異種金属同士が溶接される場合に比べ、溶接部位Wにおいて十分な溶接強度が得られる。尚、
図9に示す負極端子4Bの負極軸部42Bは、カシメられる前の形状である。
【0063】
また、負極軸部42Bにおいて、ケース3に取り付けられる(固定される)前の第三拡径部423Bに相当する部位は、
図2、
図8、及び
図9に示すように、絶縁部材7A、ケース3(本実施形態の例では蓋板32)、絶縁部材7B、集電体5に設けられた各貫通孔を挿通可能な筒状の部位(第三拡径部相当部位)423B’である。この第三拡径部相当部位423B’が、絶縁部材7A、ケース3、絶縁部材7B、集電体5の各貫通孔を挿通した状態(換言すると、各部材7A、3、7B、5を貫通した状態:
図8参照)でカシメられて拡径することで、第三拡径部423Bが形成される。
【0064】
尚、第一拡径部421Bと第三拡径部423Bとが形成される順番は、限定されない。第一拡径部421B、第三拡径部423Bの順で形成されてもよく、第三拡径部423B、第一拡径部421Bの順で形成されてもよい。また、第一拡径部421Bと第三拡径部423Bとが同じタイミングで形成されてもよい。
【0065】
図2に戻り、集電体5は、ケース3内に配置され、電極体2と導通可能に直接又は間接に接続される。本実施形態の集電体5は、クリップ部材50を介して電極体2と導通可能に接続される。即ち、蓄電素子1は、電極体2と集電体5とを導通可能に接続するクリップ部材50を備える。
【0066】
集電体5は、導電性を有する部材によって形成される。集電体5は、ケース3の内面に沿って配置される。本実施形態の集電体5は、外部端子4とクリップ部材50とを導通可能に接続する。具体的に、集電体5は、外部端子4と導通可能に接続される第一接続部51と、電極体2と導通可能に接続される第二接続部52と、第一接続部51と第二接続部52とを接続する屈曲部53と、を有する。集電体5では、屈曲部53がケース3内の蓋板32と短壁部314との境界近傍に配置され、第一接続部51が屈曲部53から蓋板32に沿って延びると共に、第二接続部52が屈曲部53から短壁部314に沿って延びる。第一接続部51は、貫通孔51aを有し、外部端子4の軸部(正極軸部42A又は負極軸部42B)が貫通孔51aを挿通した状態で、拡径部(正極拡径部421A又は第三拡径部423B)と導通している(
図4及び
図6参照)。また、本実施形態の第二接続部52は、例えば、超音波溶接によってクリップ部材50と接合される。
【0067】
以上のように構成される集電体5は、蓄電素子1の正極と負極とにそれぞれ配置される。本実施形態の蓄電素子1では、集電体5は、ケース3内において、電極体2の正極の非被覆積層部26と、負極の非被覆積層部26とに沿ってそれぞれ配置される。正極の集電体5と負極の集電体5とは、異なる素材によって形成される。具体的に、正極の集電体5は、例えば、アルミニウム又はアルミニウム合金等のアルミ系金属によって形成され、負極の集電体5は、例えば、銅又は銅合金等の銅系金属によって形成される。
【0068】
クリップ部材50は、電極体2の非被覆積層部26において積層された正極23又は負極24を束ねるように挟む。これにより、クリップ部材50は、非被覆積層部26において積層される正極23同士、又は負極24同士を確実に導通させる。本実施形態のクリップ部材50は、板状の金属材料を断面がU字状となるように曲げ加工することによって形成される。
【0069】
絶縁部材6は、ケース3(詳しくはケース本体31)と電極体2との間に配置される。この絶縁部材6は、所定の形状に裁断された絶縁性を有するシート状の部材を折り曲げることによって袋状に形成されている。
【0070】
以上の蓄電素子1では、負極鍔部41Bが負極軸部42Bと異なる種類の金属を有していても、負極鍔部41Bをクラッド材にして負極軸部42Bと溶接される部位に該負極軸部42Bと同じ種類の金属が配置される構成とすることにより、負極軸部42Bと負極鍔部41Bとの溶接強度が十分に確保されている。
【0071】
また、本実施形態の蓄電素子1では、各溶接部位Wの溶接面積が0.3mm2以上であるため、第一拡径部421Bと負極鍔部41Bの第二金属層411bとの間の導通経路が破壊された場合でも、負極鍔部41Bと負極軸部42Bとの間の抵抗変化が抑えられる。即ち、溶接部位Wの大きさ(本実施形態の例では、溶接面積)は、負極端子4Bの第一拡径部(カシメられた部位)421Bの損傷等によって第一拡径部421Bと負極軸部42Bとの間の導通経路が破壊されても(途切れても)、前記損傷等の前後で蓄電素子1の抵抗変化がないように設定されている。このため、使用時に蓄電素子1が過酷な環境下に長時間置かれた場合等でも、蓄電素子1における電気抵抗値の上昇が生じ難い(即ち、蓄電素子1の電気導通の信頼性を確保することができる)。
【0072】
また、本実施形態の蓄電素子1では、負極鍔部41Bと負極軸部42Bとは、該負極軸部42Bがカシメられることによって接続されており、負極鍔部41Bと負極軸部42Bの第一拡径部421Bとの接触面積は、46mm2以上で且つ75mm2以下であり、負極鍔部41Bの厚さは、0.9mm以上で且つ1.1mm以下であり、負極軸部42Bと溶接されている第一金属層411aの厚さは、0.4mm以上で且つ0.6mm以下である。このため、カシメ及び溶接による負極鍔部41Bと負極軸部42Bとの接続強度及び導通性能を十分に確保することができる。即ち、蓄電素子1が通常使用される状況において、使用に十分耐え得るような負極鍔部41Bと負極軸部42Bとの接続強度及び導通性能が確保される。
【0073】
尚、本発明の蓄電素子は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0074】
上記実施形態の蓄電素子1では、負極端子4Bのみで、鍔部(負極鍔部41B)と軸部(負極軸部42B)とが別部材によって構成されているが、この構成に限定されない。正極端子4Aにおいても、鍔部(正極鍔部41A)と軸部(正極軸部42A)とが別部材によって構成されていてもよい。
【0075】
上記実施形態の負極鍔部41Bの第一金属層411a及び負極軸部42Bが純銅によって構成され、負極鍔部41Bの第二金属層411bがアルミニウム合金によって構成されているが、この構成に限定されない。第一金属層411aと負極軸部42Bとが同じ金属(材質)で構成されていればよい。
【0076】
また、上記実施形態の負極鍔部41Bは、二つの金属層411(詳しくは、第一金属層411a及び第二金属層411b)を有するクラッド材によって構成されているが、この構成に限定されない。負極鍔部41Bは、三つ以上の金属層411を有するクラッド材によって構成されてもよい。この場合、隣り合う金属層411同士が異なる種類の金属であれば、クラッド材は、同じ種類の金属によって構成される金属層411を複数有していてもよい。これらの構成であっても、負極鍔部41Bと負極軸部42Bとの溶接部位Wにおいて、負極鍔部41Bの表層(溶接部位W側)の金属層411を構成する金属の種類と、負極軸部42Bを構成する金属の種類と、が同じであれば、十分な溶接強度を確保することができる。しかも、溶接される金属層411と異なる金属層411が前記表層を構成する金属(上記実施形態の例では、アルミ系金属)より固い金属(上記実施形態の例では、銅系金属)によって構成されていれば、負極鍔部41Bにおいて十分な強度が確保できる。
【0077】
上記実施形態の負極端子4Bでは、負極軸部42Bが負極鍔部41Bを貫通しているが、この構成に限定されない。負極端子4Bは、負極軸部42Bが負極鍔部41Bを貫通しない構成であってもよい(
図10参照)。
【0078】
また、上記実施形態の負極端子4Bでは、負極軸部42Bは、負極鍔部41Bとの接続位置に一対の拡径部(第一拡径部421B、第二拡径部422B)を有し、該一対の拡径部421B、422Bによって負極鍔部41Bの貫通孔周縁部413Bを挟み込んでいるが、この構成に限定されない。負極軸部42Bは、負極鍔部41Bとの接続位置に拡径部を備えない構成でもよい(例えば、
図10参照)。負極軸部42Bと負極鍔部41Bとが導通する(即ち、負極軸部42Bが負極鍔部41Bと導通する導通面4250Bを備える)構成であれば、負極軸部42Bと負極鍔部41Bとの接続部位の具体的な構成は、限定されない。
【0079】
また、上記実施形態においては、蓄電素子が充放電可能な非水電解質二次電池(例えばリチウムイオン二次電池)として用いられる場合について説明したが、蓄電素子の種類や大きさ(容量)は任意である。また、上記実施形態において、蓄電素子の一例として、リチウムイオン二次電池について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、本発明は、種々の二次電池、その他、一次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタの蓄電素子にも適用可能である。
【0080】
蓄電素子(例えば電池)1は、
図11に示すような蓄電装置(蓄電素子が電池の場合は電池モジュール)11に用いられてもよい。蓄電装置11は、少なくとも二つの蓄電素子1と、二つの(異なる)蓄電素子1同士を電気的に接続するバスバ部材12と、を有する。この場合、本発明の技術が少なくとも一つの蓄電素子1に適用されていればよい。
【0081】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更及び/又は改良することは容易に成し得ることであると認識すべきである。従って、当業者が実施する変更形態又は改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態又は当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0082】
1…蓄電素子、2…電極体、21…巻芯、22…積層体、23…正極、231…金属箔、232…正極活物質層、24…負極、241…金属箔、242…負極活物質層、25…セパレータ、26…非被覆積層部、3…ケース、31…ケース本体、311…閉塞部、312…胴部、313…長壁部、314…短壁部、32…蓋板、34…開口周縁部、4…外部端子、4A…正極端子(外部端子)、41A…正極鍔部、411A…溶接面、42A…正極軸部、420A…正極軸部本体、421A…正極拡径部、4B…負極端子(外部端子)、41B…負極鍔部(鍔部)、411B…溶接面、412B…貫通孔、413B…貫通孔周縁部、411…金属層、411a…第一金属層、411b…第二金属層、42B…負極軸部(軸部)、420B…負極軸部本体、421B…第一拡径部、421B’…第一拡径部相当部位、4210B…第一導通面、422B…第二拡径部、4220B…第二導通面、423B…第三拡径部、423B’…第三拡径部相当部位、4230B…第三導通面、4250B…導通面、5…集電体、50…クリップ部材、51…第一接続部、51a…貫通孔、52…第二接続部、53…屈曲部、6…絶縁部材、7A、7B…絶縁部材、11…蓄電装置、12…バスバ部材、100…外部端子、101…軸部、102…鍔部、C…巻回中心軸、W…溶接部位