IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータの特許一覧

特許7483010非一定のディフューザベーンピッチを有するディフューザ及び当該ディフューザを含む遠心ターボ機械
<>
  • 特許-非一定のディフューザベーンピッチを有するディフューザ及び当該ディフューザを含む遠心ターボ機械 図1
  • 特許-非一定のディフューザベーンピッチを有するディフューザ及び当該ディフューザを含む遠心ターボ機械 図2
  • 特許-非一定のディフューザベーンピッチを有するディフューザ及び当該ディフューザを含む遠心ターボ機械 図3
  • 特許-非一定のディフューザベーンピッチを有するディフューザ及び当該ディフューザを含む遠心ターボ機械 図4
  • 特許-非一定のディフューザベーンピッチを有するディフューザ及び当該ディフューザを含む遠心ターボ機械 図5
  • 特許-非一定のディフューザベーンピッチを有するディフューザ及び当該ディフューザを含む遠心ターボ機械 図6
  • 特許-非一定のディフューザベーンピッチを有するディフューザ及び当該ディフューザを含む遠心ターボ機械 図7
  • 特許-非一定のディフューザベーンピッチを有するディフューザ及び当該ディフューザを含む遠心ターボ機械 図8
  • 特許-非一定のディフューザベーンピッチを有するディフューザ及び当該ディフューザを含む遠心ターボ機械 図9
  • 特許-非一定のディフューザベーンピッチを有するディフューザ及び当該ディフューザを含む遠心ターボ機械 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】非一定のディフューザベーンピッチを有するディフューザ及び当該ディフューザを含む遠心ターボ機械
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
F04D29/44 X
F04D29/44 E
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022539680
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-08
(86)【国際出願番号】 EP2021025010
(87)【国際公開番号】W WO2021148237
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】102020000001216
(32)【優先日】2020-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】トニ、ロレンツォ
(72)【発明者】
【氏名】ミケラッシ、ヴィットリオ
【審査官】松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0280060(US,A1)
【文献】特開平07-259796(JP,A)
【文献】西独国特許出願公開第03705307(DE,A1)
【文献】特開2007-315333(JP,A)
【文献】特表2017-519154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/44
F04D 29/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心ターボ機械(1)のためのディフューザ(11)であって、
前記ディフューザ(11)は、ディフューザ軸(A-A)を中心として円周方向に配置されたN個(N≧3;Nは自然数)のディフューザベーン(11.1)を備え、
前記N個のディフューザベーン(11.1)における隣接するディフューザベーンは、前記ディフューザ軸(A-A)を中心として周方向に1番目からN番目のディフューザベーンの対を形成し、当該ディフューザベーンの各対が、第1のディフューザベーン(11.1)と、第2のディフューザベーン(11.1)と、を有し、
各前記ディフューザベーン(11.1)は、
前記ディフューザ軸(A-A)から第1の距離にある前縁(11.3)と、
前記ディフューザ軸(A-A)から第2の距離にある後縁(11.5)であって、前記第2の距離は、前記第1の距離よりも大きい、後縁(11.5)と、
半径方向内向きに面し、前記前縁(11.3)から前記後縁(11.5)まで延びている吸引側(11.7)と、
半径方向外向きに面し、前記前縁(11.3)から前記後縁(11.5)まで延びている圧力側(11.9)と、を含み、
前記ディフューザベーンのi番目(1≦i≦N;iは自然数)の対において、前記第1のディフューザベーン(11.1)の前記吸引側(11.7)と、前記第2のディフューザベーン(11.1)の前記圧力側(11.9)との間にi番目の流路が画定され、
前記i番目のディフューザベーンの対は、前記第1のディフューザベーン(11.1)の前記前縁(11.3)と前記第2のディフューザベーン(11.1)の前記前縁(11.3)の間のi番目のピッチ(Si)に対する前記第1のディフューザベーン(11.1)の翼弦(Bi)の比であるソリディティ(Bi/Si)が、一定のソリディティ値を中心とする範囲内になるように構成され、前記範囲が前記一定のソリディティ値の±20%に等しく、
1~N番目の前記ディフューザベーンの対は前記範囲を満たす複数の異なるピッチを有し、
前記1~N番目のディフューザベーンの少なくとも1つの対において、前記第1のディフューザベーン(11.1)の前記前縁(11.3)と前記第2のディフューザベーン(11.1)の前記前縁(11.3)は、半径方向に異なる位置に配置されている、ディフューザ(11)。
【請求項2】
前記範囲は、前記一定のソリディティ値の±10%に等しい、請求項1に記載のディフューザ(11)。
【請求項3】
前記範囲は、前記一定のソリディティ値の±5%に等しい、請求項2に記載のディフューザ(11)。
【請求項4】
前記範囲は、前記一定のソリディティ値の±2%に等しい、請求項3に記載のディフューザ(11)。
【請求項5】
前記N個のディフューザベーン(11.1)のうちの少なくともいくつかのディフューザベーン(11.1)は、互いに異なるプロファイルを有する、請求項1から4のいずれか1項記載のディフューザ(11)。
【請求項6】
前記1番目からN番目のディフューザベーン(11.1)の対の間で、前記ピッチ及び前記翼弦が不規則に設計されている、請求項1から5のいずれか1項記載のディフューザ(11)。
【請求項7】
前記ピッチ及び前記翼弦は両方とも、前記1番目のディフューザベーンの対からN番目のディフューザベーンの対まで徐々に減少する、請求項1から5のいずれか1項記載のディフューザ(11)。
【請求項8】
前記1番目からN番目のディフューザベーン(11.1)の対は、前記ディフューザ軸(A-A)を中心として第1のピッチと前記第1のピッチと異なる第2のピッチを交互に有するように配置される、請求項1から5のいずれか1項記載のディフューザ(11)。
【請求項9】
記N個のディフューザベーン(11.1)のうち少なくともいくつかのディフューザベーン(11.1)の前記後縁(11.5)は、半径方向に異なる位置に配置されている、請求項1から8のいずれか1項に記載のディフューザ(11)。
【請求項10】
前記N個のディフューザベーン(11.1)のうち少なくともいくつかのディフューザベーン(11.1)は、互いに異なる勾配を有する、請求項1から9のいずれか1項に記載のディフューザ(11)。
【請求項11】
前記N個のディフューザベーン(11.1)のうち少なくとも1つのディフューザベーン(11.1)において、前記ディフューザの高さは、接線方向及び流れ方向のうちの少なくとも1つにおいて変化する、請求項1から10のいずれか1項に記載のディフューザ(11)。
【請求項12】
回転軸(A-A)を中心として回転するように配置された少なくとも1つのインペラ(7)と、請求項1から11のいずれか1項に記載のディフューザ(11)と、を備える、遠心ターボ機械。
【請求項13】
前記遠心ターボ機械は、遠心圧縮機である、請求項12に記載の遠心ターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ラジアルターボ機械に関する。より具体的には、本開示の実施形態は、1つ以上の新規なブレード付きディフューザ、すなわちベーン付きディフューザを含む遠心ポンプ及び/又は遠心圧縮機などの、遠心ターボ機械に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心圧縮機は、ガスを昇圧するために様々な用途で使用される。遠心圧縮機は、ケーシングと、ケーシング内で回転するように構成された1つ以上のインペラと、を含む。インペラ(複数可)に送達された機械的エネルギーは、回転インペラにより、運動エネルギーの形態でガスに伝達される。インペラにより加速されたガスは、インペラを円周方向に取り囲むディフューザを通って流れ、ディフューザは、ガス流を収集し、その速度を低下させて、運動エネルギーをガス圧力に変換する。
【0003】
ディフューザを通るガス流をより良好に導くために、ベーン付きディフューザが開発されている。ディフューザベーンは、ガス流の向きを、より半径方向に変え、圧縮機の空気力学的効率を改善する。しかしながら、ディフューザベーンは、インペラブレードにおいて振動を励起する圧力パルスを生成する。インペラの振動は、高サイクル疲労(high cycle fatigue、HCF)に起因してインペラの故障を引き起こす場合がある。
【0004】
ディフューザベーンにより誘起される振動に起因するインペラ破損のリスクを軽減するために、いわゆる非周期的ディフューザを有する遠心圧縮機が開発されている。非周期的ディフューザは、ベーン付きディフューザであり、ディフューザベーンは、非対称的かつ非周期的な構成で配置されている。遠心圧縮機のための非周期的ディフューザは、例えば、米国特許第7,845,900号及び国際公開第2011/096981号に開示されている。
【0005】
遠心圧縮機用の非周期的ディフューザのいくつかの実施形態は、可変ピッチに従って配置されたディフューザベーンを含む。すなわち、ディフューザベーンは、ディフューザベーンの間に流路を画定する2つの隣接するディフューザベーンの角度間隔が、ディフューザベーンの間に別の流路を画定する2つの他の隣接するディフューザベーンの角度間隔とは異なるように配置されている。ディフューザベーンの不規則な(すなわち、非一定の)角度間隔が、インペラブレードにおける振動の励起を低減させることが発見された。
【0006】
しかしながら、ディフューザベーンの非対称で非周期的な設計は、圧縮機の動作範囲に悪影響を及ぼす。より具体的には、隣接するディフューザベーン間の角度間隔(ピッチ)が増加すると、関連する流路のソリディティが低下する。ソリディティは、ベーン翼弦(すなわち、ベーンの後縁と前縁との間の距離)と、2つの連続するベーン間のピッチとの間の比率である。ソリディティの低下は、圧縮機がストールなしで又は性能の著しい低下を伴わずに動作できる質量流量範囲の低下を引き起こす。ソリディティが低下する結果として、ストール状態が実現される最小質量流量は増加する。したがって、可変ベーンピッチは、振動低減の点では有益であるが、圧縮機の動作性の低下を考慮すると有害である。
【0007】
当該技術分野では、圧縮機の動作範囲への悪影響が少なく、インペラ振動の低減に関して圧縮機の挙動を改善する、新規なディフューザ設計が歓迎されるであろう。
【発明の概要】
【0008】
本開示の一態様によれば、遠心圧縮機(又は遠心ポンプ)などの遠心ターボ機械のためのディフューザが提供される。ディフューザは、ディフューザ軸を中心として円周方向に配置された複数のディフューザベーンを含む。各ディフューザベーンは、ディフューザ軸から第1の距離にある前縁と、ディフューザ軸から、第1の距離よりも大きい第2の距離にある後縁と、半径方向内向きに面し、前縁から後縁まで延びている吸引側と、半径方向外向きに面し、前縁から後縁まで延びている圧力側と、を含む。ディフューザベーンは、複数の流路を画定する。より具体的には、流路は、隣接する、すなわち連続したベーンの各対の間で、ディフューザベーンの各対の、第1のディフューザベーンの吸引側と第2のディフューザベーンの圧力側との間に画定される。ディフューザベーンは、ディフューザ軸を中心として非一定のピッチで配置されている。圧縮機の動作範囲を改善し、ピッチ変化が圧縮機の動作性に及ぼす悪影響を低減させるために、第1のディフューザベーンと第2のディフューザベーンとの間にそれぞれの流路を画定する、隣接する第1のディフューザベーン及び第2のディフューザベーンの各対の間のピッチは、この第1のディフューザベーン及びこの第2のディフューザベーンのうちの1つの翼弦に、具体的にはその翼弦長に相関している。
【0009】
より具体的には、ピッチと相関する翼弦は、ディフューザベーンの翼弦であり、ディフューザベーンの吸引側は、流路に面している。
【0010】
翼弦とピッチとの間の相関関係は、ディフューザベーン間の増加したピッチにより引き起こされるであろうソリディティの低下が、少なくとも部分的に翼弦長の増加により相殺されるような相関関係である。
【0011】
ディフューザ軸を中心として円周方向に配置された複数のディフューザベーンを含む、遠心ターボ機械、具体的には遠心圧縮機(又は遠心ポンプ)のためのベーン付きディフューザもまた、本明細書に開示される。各ディフューザベーンは、前縁と、後縁と、半径方向内向きに面し、前縁から後縁まで延びている吸引側と、半径方向外向きに面し、前縁から後縁まで延びている圧力側と、を含む。それぞれの流路は、互いに隣接して配置されたディフューザベーンの各対の、第1のディフューザベーンの吸引側と、第2のディフューザベーンの圧力側との間に画定される。ディフューザベーンは、ディフューザ軸を中心として非一定のピッチで配置されている。更に、ディフューザベーンは、非一定の翼弦を有し、第1のディフューザベーンの翼弦と、ディフューザベーンの各対の第1のディフューザベーンと第2のディフューザベーンとの間のピッチ、との比率は、実質的に一定である。
【0012】
ディフューザベーンは、全てのディフューザベーンの前縁が、ディフューザ軸を中心として同じ円周上に配置されるように配置することができる。そのような場合、ディフューザベーンの間にそれぞれの流路が形成される、隣接するディフューザベーン間のピッチは、流路を形成するその2つのディフューザベーンの2つの前縁の、その円周に沿った距離である。
【0013】
しかしながら、以下の実施形態の説明で更に詳細に説明するように、前縁が全て、ディフューザ軸を中心とする最小直径を有する同じ円周に沿って配置されることがないように、ディフューザベーンを配置できる。むしろ、流路を形成する少なくとも一対のディフューザベーンの2つのディフューザベーンは、それぞれの前縁が、ディフューザ軸から可変距離で配置され得る。
【0014】
したがって、より一般的な用語では、隣接する、すなわち連続する、ディフューザベーン間のピッチは、2つの隣接するディフューザベーンの翼形中心線間の距離を、2つのディフューザベーンが両方とも存在する、ディフューザ軸からの最小距離で測定した距離として定義することができる。
【0015】
本明細書ではまた、上記及び以下に定義されるような少なくとも1つのインペラ及び少なくとも1つのベーン付きディフューザを含む、ターボ機械、具体的には遠心圧縮機又は遠心ポンプが開示される。
【0016】
新規なディフューザ、及びディフューザを含む遠心ターボ機械の、追加の特徴及び実施形態が以下に概説され、添付の特許請求の範囲に記載され、これが本明細書の不可欠な部分をなす。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の開示の実施形態とそれに付随する利点の多くは、添付図面に関連して考えながら以下の発明を実施するための形態を参照することによって、理解が深まるにつれてすぐにより完全に分かるようになるであろう。
図1】圧縮機の回転軸を含む平面による圧縮機の概略断面図である。
図2】一実施形態における、図1の圧縮機のディフューザの図1の線II-IIによる断面図である。
図3図1の圧縮機のディフューザの等角図である。
図4図2の拡大詳細図である。
図5】圧縮機ステージの特徴的な動作曲線を概略的に示す、質量流量対圧力比のグラフである。
図6図5のグラフの2つの異なる動作点における流れ方向を示す図である。
図7】3つの実施形態における、本開示によるディフューザにおけるピッチ、翼弦、及びソリディティの変化の図である。
図8】3つの実施形態における、本開示によるディフューザにおけるピッチ、翼弦、及びソリディティの変化の図である。
図9】3つの実施形態における、本開示によるディフューザにおけるピッチ、翼弦、及びソリディティの変化の図である。
図10】別の実施形態における、図1の圧縮機のディフューザを図1の線II-IIによる断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ディフューザの流路を画定する隣接するディフューザベーン間のピッチの増加に起因する、圧縮機の動作性への悪影響は、その吸引側が流路に面するディフューザベーンの翼弦長の対応する増加により相殺され得ることが発見された。このように、ピッチの増加により引き起こされるソリディティの低下は、翼弦の対応する変化により低減され、少なくとも部分的に相殺される。いくつかの実施形態では、ピッチ及び翼弦の変化の組み合わせは、ソリディティがディフューザの近傍で、すなわち、ベーン付きディフューザの隣接するベーンの対の間に画定される様々な流路において、実質的に一定のままとなるようなものであってもよい。
【0019】
ここで図1を参照すると、遠心圧縮機1の一部分が、圧縮機の回転軸を含む平面に沿った断面図で示されている。図1に示す部分は、遠心圧縮機の1つのステージに限定されている。圧縮機ステージの数、したがって、インペラの数は、圧縮機設計及び圧縮機要件に応じて、圧縮機により異なり得る。本開示によるディフューザの新規な特徴は、所与の圧縮機のディフューザのうちの1つ、いくつか、又は好ましくは全てにおいて具体化することができる。
【0020】
圧縮機は、ケーシング3を備え、連続する圧縮機ステージを分離するダイヤフラム5が配置されている。各圧縮機ステージは、ケーシング3内で回転するように支持されたインペラ7を備える。インペラ7は、回転シャフト9に焼嵌めされ得る。図示していない他の実施形態では、インペラ7は、遠心圧縮機の当業者に知られている設計に従う、積み重ねたインペラとすることができ、本明細書では開示されていない。インペラ7は、インペラハブ7.1を有し、インペラハブ7.1から複数のインペラブレード7.3が突出している。各インペラブレード7.3は、前縁7.5及び後縁7.7を有する。前縁7.5は、インペラ入口に沿って配置され、後縁7.7は、インペラ出口に沿って配置されている。後縁7.7は、回転軸A-Aからの前縁7.5の距離よりも大きい距離に配置されている。
【0021】
図1に示す実施形態では、インペラ7は、シュラウド7.9を更に備える。図示していない他の実施形態では、インペラ7は、シュラウド無しインペラとすることができ、その場合、シュラウド7.9は省略される。
【0022】
インペラ出口の周りに、ディフューザ11が配置されている。ディフューザ11は、インペラ7を取り囲み、インペラ7と同軸である。ディフューザ11を分離して、図1の線II-IIに沿って見た図2の断面図で、及び図3の等角図で示す。図2の詳細の拡大図を図4に示す。ディフューザ11は、インペラ7の周りに円周方向に延び、シャフト9の回転軸A-Aと一致する軸を有する。
【0023】
ディフューザ11は、いわゆるベーン付きディフューザであり、ディフューザ軸A-Aを中心として配置された複数のディフューザベーン11.1が設けられている。ディフューザベーン11.1の目的は、流入するガス流の向きを、より半径方向に変化させること、すなわち、ディフューザ11から出るガス流の速度の接線成分を低減させ、圧力回復及び全体的なステージ効率を増加させることである。
【0024】
各ディフューザベーン11.1は、前縁11.3及び後縁11.5を含む。前縁11.3と後縁11.5との間の距離は、ディフューザベーン11.1の翼弦Bと称される。軸A-Aからの前縁11.3の距離は、後縁11.5の距離よりも小さい。
【0025】
各ディフューザベーン11.1は、吸引側11.7及び圧力側11.9を更に含む。各ディフューザベーン11.1への空気力学的負荷は、吸引側が、ディフューザ11の入口に向いているベーン側、すなわち、半径方向内向きに面するディフューザベーン11.1の側となるようなものである。逆に、圧力側は、ディフューザ11の出口に面する、すなわち半径方向外向きに面する、ディフューザベーン11.1の側である。
【0026】
ディフューザ11の入口におけるガス流方向は、圧縮機を通る質量流量に依存する。質量流量がより大きい場合は、より多くの半径方向の流れ(接線速度成分がより小さい)が発生し、質量流量がより小さい場合は、より多くの接線方向の流れ(接線速度成分がより大きい)が発生する。圧縮機ステージ間の圧力比は、質量流量が減少するにつれて増加する。
【0027】
図5は、遠心圧縮機ステージの特性曲線を、質量流量対圧力比のグラフで概略的に示す。質量流量を横軸にプロットし、圧力比を垂直軸にプロットしている。特性曲線は、CCとラベル付けされている。ディフューザ入口における流れ角、すなわち、ディフューザ11の入口におけるガス速度の方向は、質量流量が低下するにつれて接線により近づく。図6は、特性曲線の両側にある2つの動作点PA及びPBにおける流れ角を概略的に示す。VA及びVBは、それぞれ、動作点PA及びPBに対応するディフューザベーン11.1の前縁における速度ベクトルである。
【0028】
圧縮機の質量流量は、ストール状態が生じる下限を有する。この限界は、図5の図におけるストール限界SLとして示される。ディフューザベーン11.1は、主に吸引側11.7でストールする。速度ベクトルがベクトルVBの傾きに到達すると、流れは、ディフューザベーン11.1の吸引側11.7から分離する。圧縮機への損傷を防ぐために、圧縮機の動作点は、ストール限界SLから安全距離に維持されなければならない。
【0029】
ストール限界SLは、図5のグラフの右側にシフトする場合があり、したがって、ディフューザのソリディティが低下すると、質量流量に関する圧縮機の動作範囲は低下する。ソリディティは、ディフューザベーン11.1の翼弦と、2つの連続する、すなわち隣接して配置されたディフューザベーン11.1の間の間隔との間の比率として定義される。ディフューザベーン間のピッチが一定であるベーン付きディフューザでは、ソリディティは、次のように定義される。
【数1】
これは、各流路について同一である。Bは、ディフューザベーンの翼弦であり、Sは、ピッチ、すなわち隣接するディフューザベーン11.1間の間隔であり、すなわち、2つの連続的に配置されたディフューザベーン11.1の距離である。
【0030】
より低いソリディティがより早いストール、すなわち図5のグラフの右側に向かうストール限界のシフトを意味し得るという点で、ソリディティは、ストール限界に影響を及ぼす。
【0031】
円周方向に配置されたディフューザベーン11.1間のピッチが非一定である従来技術のベーン付きディフューザでは、ここでもソリディティは、i番目の流路の各々に対して、次のように定義される。
【数2】
式中、Siは、間隔、すなわちi番目の流路を画定する2つの連続するディフューザベーン11.1間のピッチである。ソリディティは、ディフューザの周りで非一定であるため、ストール状態は、最小のソリディティ、すなわち最大のピッチSiを有する流路で生じ得る。圧縮機が安全な状態で動作するためには、動作点は、最も重要な流路、すなわち最大のピッチを有する流路のストール限界から、安全距離になければならない。これは、圧縮機の動作性の範囲を実質的に低下させる。したがって、先行技術の圧縮機設計によれば、インペラの高サイクル疲労破損のリスクを低減させることを目的とした振動の低減は、圧縮機の動作性を低下させる。
【0032】
上述した欠点を緩和するために、本開示の実施形態は、ディフューザ設計における新規の手法を提供する。隣接するディフューザベーン11.1間のピッチの増加により決定されることになるソリディティの低減は、関連するディフューザベーンの、より具体的には、その吸引側においてストールが発生し得るディフューザベーン11.1の、翼弦の増加によりバランスが保たれる。このディフューザベーンは、その吸引側が、関連する流路に面しているディフューザベーンである。
【0033】
図1図2、及び図3を引き続き参照しながら、図4を参照すると、一般性を何ら損なうことなく、ディフューザ11の一部分の拡大が示されている。この実施形態では、ディフューザベーン11.1は、2つの異なるピッチ又は間隔S1及びS2に従って配置されている。より具体的には、間隔S2は、S1よりも大きい。
【0034】
より具体的には、この実施形態では、ディフューザベーン11.1の連続する対が、間隔S1及びS2で交互に配置されている。換言すれば、ディフューザ軸を中心として時計回りの向きに移動すると、第1の通路P1であって、第1の通路P1を画定するディフューザベーン11.1の間に間隔S1を有する、第1の通路P1、の次に、第2の通路P2であって、第2の通路P2を画定するそれぞれのディフューザベーン11.1の間に間隔S2(S2>S1)を有する、第2の通路P2が続く。次の通路は、再び間隔S1を有し、以下同様である。この実施形態では、通路P1、P2は、非一定のピッチを有する。
【0035】
通路P1及びP2を形成する3つの連続して配置されたベーンの翼弦Bが等しい場合、第1の通路P1のソリディティは、以下のように、第2の通路P2のソリディティよりも高くなる。
【数3】
式中、
Siは、i番目の流路のピッチ又は間隔である。
σPiは、i番目の流路Piのソリディティである。
【0036】
より低いソリディティを有する通路P2は、より早いストールを引き起こす場合がある。そのとき、P2が、圧縮機の動作性を制限する通路になる。これを回避するために、本明細書で開示される実施形態は、可変の、すなわち非一定の、翼弦Bを有するディフューザベーン11.1を提供する。より具体的には、ディフューザベーン11.1の翼弦Bは、ピッチ、すなわち連続する又は隣接するディフューザベーン11.1間の間隔Sに相関し、その結果、通路Pを形成するディフューザベーンのうちの1つの翼弦Bの増加が、通路のソリディティを以下のように再びバランスさせる。
【数4】
式中、Biは、i番目の通路Piを画定する2つディフューザベーン11.1のうちの1つの翼弦である。より具体的には、Biはディフューザベーンの翼弦であり、図4に示すように、ディフューザベーンの吸引側11.7がi番目の通路Piに面している。ディフューザの流路のソリディティは、この場合は、ディフューザベーン11.1の吸引側が流路に面しているディフューザベーン11.1の翼弦と、ディフューザベーン11.1の間に流路が画定される2つのディフューザベーン11.1間のピッチとの間の比率として定義される。
【0037】
i番目の流路Piの各々の第1のディフューザベーン11.1の翼弦Bを、通路を形成する2つのディフューザベーン間のピッチ又は間隔Siに依存させることにより、ピッチの変化により誘起されるソリディティの変化の影響は、翼弦の変化によりバランスが保たれる。
【0038】
したがって、増加したピッチにより引き起こされ得るソリディティの低下を、関連するディフューザベーン11.1の翼弦の増加でバランスさせることにより、圧縮機の動作性に悪影響を及ぼすことなく、インペラ振動の低減に関する、ピッチ変化の有益な効果が実現される。
【0039】
好ましい実施形態では、ディフューザベーン翼弦Biの各々と、i番目の流路Piの各々のベーンのピッチ又は間隔Siとの間の関係は、流路のソリディティσPiが一定に維持されるようなものである。
【0040】
しかしながら、厳密に一定のソリディティ値は必須ではない。圧縮機の改善された動作性に関して有益な効果は、ソリディティが事前に設定された値を中心として実質的に一定に維持される場合にも実現できる。本明細書で使用される場合、「実質的に一定」は、一定の事前に設定されたソリディティ値を中心とする±20%の範囲内にあるソリディティとして理解され得る。本明細書で開示される実施形態によれば、「実質的に一定」は、事前に設定された一定のソリディティ値を中心とする±10%の範囲内、好ましくは、±5%の範囲内、より好ましくは、±2%の範囲内に維持されるソリディティとして理解され得る。
【0041】
図7は、ピッチ(間隔)S及びコードBを、横軸にプロットされた流路の角度位置に対して示すグラフである。ディフューザベーンの連続的に配置された対のピッチは、S1、S2、...Si、...Snとラベル付けされている。各流路P1、P2、...Pi、...Pnにおける第1のディフューザベーン11.1の対応する翼弦は、B1、B2、...Bi、...Bnとラベル付けされている。水平直線σconstは、一定のソリディティ値を示すのに対し、σmin及びσmaxは、事前に設定された一定のソリディティ値σconstを中心とするソリディティ値の許容される範囲の最小値及び最大値を示す。上述したように、σminは、σconstから20%小さい、又は好ましくはσconstから10%小さい、又はより好ましくは5%小さい、又は更により好ましくは2%小さい場合がある。同様に、σmaxは、σconstから20%大きい、好ましくは、σconstから10%大きい、又はより好ましくは5%大きい、又は更により好ましくは2%大きい場合がある。
【0042】
図2図4では、2つの異なるピッチS1及びS2に従う、隣接するディフューザベーン11.1間のピッチSの周期的変化と、ベーン翼弦Bの対応する周期的変化と、が示されている。他の実施形態では、ベーンは、3つ以上の異なるピッチ又は間隔S1、S2(図7)に従って配置することができる。
【0043】
他の実施形態では、ピッチ及び翼弦の両方の変化は、周期的ではなく、図8に示すようにランダムであり得る。図10は、ランダムに配置されたディフューザベーン11.1を有するディフューザ11の断面図を示す。
【0044】
なお更なる実施形態では、変化を単調にすることができる。すなわち、ピッチ及び翼弦は、図9に示すように、最初の流路から始まり最後のディフューザ流路まで、ディフューザ軸A-Aの周りで徐々に減少してもよい。
【0045】
インペラブレードの振動を更に低減させるために、ディフューザベーンの追加の特徴をディフューザ軸の周りで可変にすることができる。いくつかの実施形態によれば、例えば、ディフューザベーン11.1は、可変プロファイルを有し得る。いくつかの実施形態では、ディフューザベーンは、半径方向位置が可変である前縁及び/又は後縁を有し得る。加えて又は代わりに、ディフューザベーンは、可変勾配を有し得る。
【0046】
更に、図1では、ディフューザは、一定の高さを有する一方で、いくつかの実施形態では、ディフューザは、接線方向及び/又は流れ方向に可変高さを有し得る。
【0047】
上述した実施形態は、具体的には遠心圧縮機を指す。しかしながら、本開示による新規のディフューザは、図1に示すものと同様の構造を有する遠心ポンプにおいても、利点と共に使用することができる。
【0048】
例示的な実施形態は、上記で開示され、添付の図面に示されている。以下の特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に具体的に開示されているものに、様々な変更、省略、及び追加を行ってもよいことが、当業者には理解されるであろう。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10