(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】着脱可能な移植片・留め具アセンブリを有する組織修復・シーリングデバイスおよびそれを使用するための方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/03 20060101AFI20240507BHJP
【FI】
A61B17/03
(21)【出願番号】P 2022545399
(86)(22)【出願日】2021-01-22
(86)【国際出願番号】 US2021014796
(87)【国際公開番号】W WO2021151026
(87)【国際公開日】2021-07-29
【審査請求日】2022-09-21
(32)【優先日】2020-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】522296398
【氏名又は名称】パッチクランプ メドテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】メイバーグ, マーク ロバート
【審査官】石川 薫
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-095096(JP,A)
【文献】特開平10-309313(JP,A)
【文献】特表2006-520232(JP,A)
【文献】特表2005-506122(JP,A)
【文献】特表2005-527330(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0249896(US,A1)
【文献】特開2012-213631(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0196377(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0221126(US,A1)
【文献】中国実用新案第201524102(CN,U)
【文献】特表2013-507161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/03
A61F 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織フェネストレーションを迅速に修復するためおよび耐圧水密シールを形成するために直視下(非MIS)手技または低侵襲手術(MIS)手技において
直視下で使用するための組織修復・シーリングデバイスであって、前記デバイスは、
a.近位端および遠位端を有する
剛性アプリケーターシャフトならびに近位端および遠位端を有する留め具保持・解放部材を備えるアプリケーターアセンブリであって、前記留め具保持・解放部材は、前記
剛性アプリケーターシャフトに
摺動可能に接続されている、アプリケーターアセンブリ、および
b.
変形可能な移植片
および展開可能な留め具を含む移植片サブアセンブリと、展開可能な留め具および中央カプラーを含むカプラーサブアセンブリとを動作可能な組み合わせで備える、着脱可能な移植片・留め具アセンブリ
を備え;
i.前記着脱可能な移植片・留め具アセンブリは、前記
変形可能な移植片を組織内表面上に配置し、前記展開可能な留め具を組織外表面上に配置するように構成されており、
ii.前記変形可能な移植片は、前記展開可能な留め具およびカプラーサブアセンブリの幾何学的中心にまたはその近傍に固定して取り付けられ、
iii.前記展開可能な留め具は、前記中央カプラーから半径方向に広がる複数の可撓性のストラットまたはスポークを含み、
i
v.前記着脱可能な移植片・留め具アセンブリは、
前記留め具保持・解放部材の近位端に折り畳まれ、かつ挿入されるとき、前記複数のストラットまたはスポークを介し
て前記アプリケーターアセンブリに取り付けられ
、
v.前記着脱可能な移植片・留め具アセンブリは、前記留め具保持・解放部材を前記剛性アプリケーターシャフトの遠位端に向かって摺動させ、それにより、前記留め具保持・解放部材から前記複数のストラットまたはスポークを解放することによって、前記アプリケーターアセンブリから完全に開放される、組織修復・シーリングデバイス。
【請求項2】
前記展開可能な留め具アセンブリが、前記留め具保持・解放部材によって保持されているとき、折り畳まれた配置をとるように、かつ
前記留め具保持・解放部材から解放されるとき、折り畳まれる前の状態に素早く開くように構成されている、請求項1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
【請求項3】
前記デバイスが展開されると、前記展開可能な留め具が開き、組織外表面と接触して、前記
変形可能な移植片を組織内表面に固定し、それにより、組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成する、
請求項1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
【請求項4】
前記展開可能な留め具が、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド-co-D,Lラクチド(PDLLA)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリラクチド-co-カプロラクトン(PLCL)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)およびポリラクチド-co-トリメチレンカーボネート(PL-TMC)からなる群より選択される生体高分子を含み、
前記生体高分子が、折り畳まれる前の状態に素早く開く能力を保持しつつ、前記生体高分子の折り畳みを可能にする、形状記憶および超弾性の特色を示す、
請求項1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
【請求項5】
前記展開可能な留め具アセンブリが、純チタン;チタンベースの合金;コバルトベースの合金;白金ベースの合金;およびモリブデンとタングステンとタンタルの合金からなる群より選択される生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーを備え、
前記生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーが、折り畳まれる前の状態に素早く開く能力を保持しつつ、前記ワイヤーの折り畳みを可能にする、形状記憶および超弾性の特色を示す、
請求項1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
【請求項6】
前記生体適合性で非強磁性の不動態化金属または不動態化金属合金が、ニッケル-チタン合金(ニチノール)およびニオブ-チタン合金からなる群より選択される、請求項5に記載の組織修復・シーリングデバイス。
【請求項7】
前記
変形可能な移植片が、自家移植片、同系移植片、同種移植片および異種移植片からなる群より選択され、
前記
変形可能な移植片が、ヒト組織、ウシ組織およびブタ組織からなる群より選択される動物組織に由来する、
請求項1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
【請求項8】
前記
変形可能な移植片が、ポリ(エチレンテレフタレート)および延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTF)からなる群より選択される1つまたはそれを超える合成材料を含む、請求項1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
【請求項9】
前記移植片
サブアセンブリが、コラーゲン、エラスチンおよび必要に応じて成長因子の無細胞性の多孔性細胞外マトリックス骨格を含む、請求項1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
【請求項10】
前記
変形可能な移植片が、Duraform(登録商標)硬膜移植片インプラント、Biodesign(登録商標)Dural Graft、DuraGen(登録商標)Matrix、Cerafix dural graft(登録商標)、PRECLUDE(登録商標)、Lyoplant Onlay Graft(登録商標)、Neuro-Patch Dural Graft(登録商標)、SEAMDURA(登録商標)およびDurepair(商標)Regeneration Matrixからなる群より選択される硬膜代替物を含む、請求項1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
【請求項11】
前記移植片
サブアセンブリが、薬物溶出マトリックスを含む、請求項1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
【請求項12】
前記移植片
サブアセンブリが、純チタン;チタンベースの合金;コバルトベースの合金;白金ベースの合金;およびモリブデンとタングステンとタンタルの合金からなる群より選択される生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーを備え、
前記生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーは、折り畳まれる前の状態に素早く開く能力を保持しつつ、前記ワイヤーの折り畳みを可能にする、形状記憶および超弾性の特色を示す、
請求項1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
【請求項13】
前記生体適合性で非強磁性の不動態化金属または不動態化金属合金が、ニッケル-チタン合金(ニチノール)およびニオブ-チタン合金からなる群より選択される、請求項1
2に記載の組織修復・シーリングデバイス。
【請求項14】
直視下(非MIS)手技または低侵襲手術(MIS)手技における
直視下での使用のための、組織修復・シーリングデバイスを備えるシステムであって、前記システムが、組織フェネストレーションを迅速に修復し、耐圧水密シールを形成するためのものであり、前記手技が、
(a)アプリケーターアセンブリに取り外し可能に取り付けられた着脱可能な移植片・留め具アセンブリを有する組織修復・シーリングデバイスを選択する工程であって、
前記着脱可能な移植片・留め具アセンブリは、展開可能な留め具に固定して取り付けられた
変形可能な移植片を有する移植片サブアセンブリ、ならびに半径方向ストラットまたはスポークおよび中央カプラーを有する展開可能な留め具を有するカプラーサブアセンブリを備え、
前記アプリケーターアセンブリは、
剛性アプリケーターシャフト、留め具保持・解放部材およびアクチュエータロッドを備える、工程;
(b)前記展開可能な留め具の半径方向ストラットまたはスポークを折り畳み、前記留め具保持・解放部材に挿入する工程;
(c)組織フェネストレーションを通って前記移植片
サブアセンブリを挿入し、前記
変形可能な移植片を組織内表面上に配置する工程;
(d)前記展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを組織外表面上に配置する工程;
(e)前記組織修復・シーリングデバイスを展開して、前記留め具保持・解放部材から前記展開可能な留め具を解放することにより、前記組織外表面と接触させ、前記
変形可能な移植片を前記組織内表面に固定し、前記組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成する工程
を含む、システム。
【請求項15】
前記デバイスが、前記留め具保持・解放部材を前記
剛性アプリケーターシャフトの遠位端に向かって
摺動させ、それにより、前記折り畳まれた展開可能な留め具を解放することによって展開され、
前記デバイスが展開されると、前記展開可能な留め具が開き、組織外表面と接触して、前記
変形可能な移植片を組織内表面に固定し、それにより、組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成する、
請求項1
4に記載のシステム。
【請求項16】
前記展開可能な留め具が、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド-co-D,Lラクチド(PDLLA)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリラクチド-co-カプロラクトン(PLCL)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)およびポリラクチド-co-トリメチレンカーボネート(PL-TMC)からなる群より選択される生体高分子を含み、
前記生体高分子が、折り畳まれる前の状態に素早く開く能力を保持しつつ、前記生体高分子の折り畳みを可能にする、形状記憶および超弾性の特色を示す、
請求項1
4に記載のシステム。
【請求項17】
前記展開可能な留め具アセンブリが、純チタン;チタンベースの合金;コバルトベースの合金;白金ベースの合金;およびモリブデンとタングステンとタンタルの合金からなる群より選択される生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーを備え、
前記生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーは、折り畳まれる前の状態に素早く開く能力を保持しつつ、前記ワイヤーの折り畳みを可能にする、形状記憶および超弾性の特色を示す、
請求項1
4に記載のシステム。
【請求項18】
前記
着脱可能な移植片
・留め具アセンブリ
は、(a)
前記変形可能な移植片が、組織フェネストレーションを通り抜けているときまたは前記留め具保持・解放部材によって保持されているとき、折り畳まれた配置をとるように、かつ(b)折り畳まれる前の状態に素早く開くように構成されている、請求項1
4に記載のシステム。
【請求項19】
前記
変形可能な移植片が、Duraform(登録商標)硬膜移植片インプラント、Biodesign(登録商標)Dural Graft、DuraGen(登録商標)Matrix、Cerafix dural graft(登録商標)、PRECLUDE(登録商標)、Lyoplant Onlay Graft(登録商標)、Neuro-Patch Dural Graft(登録商標)、SEAMDURA(登録商標)およびDurepair(商標)Regeneration Matrixからなる群より選択される硬膜代替物を含む、請求項1
4に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本PCT特許出願は、PCT特許出願第PCT/US21/14796号として2021年1月22日に出願されたものであり、2020年1月24日出願の米国仮特許出願第62/965,722号の利益を主張する。米国仮特許出願第62/965,722号の内容は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
本開示の背景
技術分野
本開示は、概して、医学の分野、特に、低侵襲手術(MIS)手技と直視下手術(非MIS)手技の両方を含む手術および外科手技に関する。組織フェネストレーション(例えば、外科手技中に生じるもの、または先天性、感染もしくは腫瘍形成のプロセスに起因するもの)を修復するための着脱可能な移植片・留め具アセンブリを備える組織修復・シーリングデバイスおよびそれを使用するための方法が本明細書中に開示される。本明細書中に記載される組織修復・シーリングデバイスは、組織内表面上に移植片を配置することおよび組織外表面上に展開可能な留め具を配置することを可能にする。留め具保持・解放部材をアプリケーターシャフトに沿って移動させて、展開可能な留め具を解放することによって、デバイスが展開され、それにより、移植片が組織内表面に固定され;組織フェネストレーションが迅速に修復され;耐圧水密シールが形成される。
【0003】
関連技術の説明
内視鏡技術、ロボット技術およびマイクロサージェリー技術の進歩により、小さな切開創を通って手術部位にアクセスする低侵襲手術(MIS)手技の急速な発展が可能となった。例えば、MIS手技は、体腔もしくは体内空間(例えば、腹腔、硬膜静脈洞、頭蓋内空間または脊髄周囲組織)または管腔経路(例えば、心臓血管系;胃腸系;頭蓋もしくは脊髄の脳脊髄液経路;または子宮、膀胱もしくは腎臓などの器官)内の作業空間にアクセスするために用いられる。
【0004】
作業スペースが限られていること、手術アクセスが限られていること、可視化が不良であること、およびある特定の組織はもろい性質であることをはじめとしたMIS手技に共通するいくつかの因子のせいで、皮膚の下にある組織の切創、裂傷または開口部(集合的に、組織フェネストレーション)を修復およびシールすることが困難になる。組織フェネストレーションを迅速に修復し、水密シールを形成することができないと、フェネストレーションを有する組織を通じて体液が漏出することがあり、それにより、組織の治癒が阻害され、感染が促進され、かなりの術後罹患率がもたらされる。
【0005】
MIS手技において組織フェネストレーションを閉鎖するための様々なデバイスおよび方法論が、当該分野において利用可能であり、それらには、(a)縫合またはステープリング、(b)組織接着剤の適用、および(c)組織移植片の配置および接着が、様々な組み合わせで含まれる。しかしながら、既存のデバイスおよび方法論では、組織フェネストレーションを迅速に修復することができず、耐圧水密シールを確実に形成することができないので、それらの実用性は限定的である。結果として、フェネストレーションを有する組織の治癒は、不十分となり、血液(出血、血腫 腫瘤効果)、脳脊髄液(髄膜炎、気脳症、頭蓋内圧低下)、胃腸内容物(感染、フィステル)および尿(フィステル、感染)をはじめとした体液の漏出によって、合併症が生じることが多い。
【0006】
組織フェネストレーションを直接縫合またはステープリングすることは、時間がかかり、MIS手技に特有の限られた空間および限られたアクセスでは技術的に困難である。結果として、MIS手技中に作製した組織フェネストレーションの修復で、迅速な修復および水密シールの形成はめったに達成されない。さらに、MIS手技中に遭遇するある特定の組織は、その性質がもろいこと、完全な閉鎖を可能にするには組織が十分でないこと、および極めて重要な構造に近接していることに起因して、縫合の対象とならない。また、永久的な金属インプラント(すなわちステープル)は、その後の磁気共鳴画像法を干渉し得る。
【0007】
吸収性および非吸収性の組織接着剤(例えば、フィブリン糊およびポリグリコールゲル)も、組織フェネストレーションの迅速な修復および耐圧水密シールの形成において有用性が限定的である。組織接着剤には、手術結果が不良になる一因となり得る多くの技術的課題がある。すなわち、(1)速硬化性の2液型接着剤で必要な混合およびその適用を狭い空間で行うことは困難であり;(2)移植片を別の組織(例えば、脂肪)で補強する必要があることが多く;(3)組織接着剤の接合強度は、耐圧水密シールの形成には不十分であり得る。
【0008】
自己(例えば、筋膜および脂肪)、異種(例えば、ウシ組織またはブタ組織)または合成(例えば、コラーゲンマトリックス)のパッチを含む組織パッチは、その場に保つために縫合糸の使用を必要とし、感染および組織拒絶を起こしやすい。治癒を促進するための茎状移植片の上敷きは、付着を確実にするために糊またはバットレスを必要とし、即時の水密性閉鎖を提供せず、外科的罹患率の上昇と関連する。
【0009】
移植片を組織フェネストレーションの外表面に付着させるための既存のデバイスの有用性は、MIS手技において限定的である。当該分野で公知のデバイスは、操作が難しく、通常、さらなる手技(例えば、補強用の組織を収集すること、および圧力勾配を小さくするためにドレーンを留置すること)を必要とする。さらに、組織外表面に付着させた組織移植片は、不全になりやすく、特に、フェネストレーションを有する組織(例えば、フェネストレーションを有する血管、硬膜または胃腸壁組織)の内側と外側との圧力差の影響を受けやすい。組織外表面に配置された移植片は、組織フェネストレーションを修復できず、水密シールを形成できないことが多いので、圧力がより高い組織内部から体液(例えば、血液、脳脊髄液または胃腸内容物)が漏出する。このため、治癒が悪く、感染症の発生率が高くなり、術後の合併症および罹患率が高くなり、入院期間が長くなる。
【0010】
米国特許第5,634,944号(「Magram」)には、硬膜などの隣接組織への縫合を必要とする移植片材料を使用するフランジ付き移植片が開示されている。PCT特許公開番号WO2019/055551(「Sansur」)には、組織フェネストレーションの外表面上に適合するように成形され、適所に縫合されるパッチを使用する熱成形吸収性二重層シーリングデバイスが開示されている。PCT特許公開番号WO2008/115849(「Baird」)には、組織開口部内に配置されるアンカーエレメント、組織開口部の外側に配置される可撓性の膜移植片、およびアンカーエレメントをその可撓性膜に固定し、組織開口部を閉塞させるためのラチェットコネクターを使用するデバイスが開示されている。
【0011】
米国特許出願公開第2015/0164489号(「Duggal」)には、欠損部(defect)を通って内部空間に挿入され、その後膨張し、内面に接して配置される膨張性バリアが開示されている。膨張性であり得る第2のバリアが、その欠損部の外表面に接して配置され、環状またはノッチ状の橋渡し部品を介して内側のバリアに接続される。
【0012】
米国特許第5,350,399号(「Erlebacher」)には、ラチェット式コネクターおよび鋸歯状ガイドを用いて管腔内および管腔外の生体吸収性閉鎖栓を適所に固定することにより、フェネストレーションの修復を達成する、血管(例えば、動脈穿刺)を修復するためのシーリングデバイスが開示されている。
【0013】
米国特許第7,169,168号(「Muijs Van De More」)には、閉塞エレメントが、ガイドワイヤーを用いて管腔に通されており、管腔外エレメントを固定する縫合糸様部品と付着していることにより、その閉塞エレメントを穿刺部位の内表面に接して保持する、動脈穿刺傷をシールするための経皮システムが開示されている。
【0014】
米国特許第8,105,352号(「Egneloev」)には、血管内壁に配置される内側部品および血管外壁に配置される外側部品を備える、血管壁の穿刺孔をシールするためのデバイスが開示されている。その内側および外側部品は、糸状の保持エレメントによって固定される。
【0015】
米国特許出願公開第20070093840号(「Rao」)には、組織欠損部の水密修復を達成するために組織欠損部の周辺縁をクランプする向かい合った2枚の輪状プレート(すなわち、外側プレートに結合した内側プレート)を有するデバイスが開示されている。その向かい合った2枚の輪状プレートは、位置を固定する機械的付着を介してフェネストレーションのいずれかの側に独立して配置される。それらのプレートを合わせた後、ラチェット式プレートコネクターを切り取らなければならない。
【0016】
外科手技における組織フェネストレーションを閉鎖するための既存の技術が利用可能であるにもかかわらず、組織フェネストレーションの迅速な修復および耐圧水密シールの確実な形成を可能にするデバイスおよび方法に対する未充足ニーズが当該分野に依然として存在する。本開示は、これらのニーズを満たし、低侵襲手術(MIS)手技において使用するのに適さない既存の技術にまさる、さらなる関連する利点を提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】米国特許第5,634,944号明細書
【文献】国際公開第2019/055551号
【文献】米国特許出願公開第2015/0164489号明細書
【文献】米国特許第5,350,399号明細書
【文献】米国特許第7,169,168号明細書
【文献】米国特許第8,105,352号明細書
【文献】米国特許出願公開第20070093840号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本開示の要旨
低侵襲手術(MIS)手技中に生じる組織フェネストレーションを含む組織フェネストレーションを修復およびシールするために当該分野において現在利用可能なデバイスおよび技術にまさる予想外の驚くべき利点を示す組織修復・シーリングデバイスが本明細書中に提供される。組織修復・シーリングデバイス、ならびに組織フェネストレーションを迅速に修復するため、およびフェネストレーションを有する組織の内側と外側との間に生じる圧力差などの圧力差に強い水密シールを確実に形成するために、MIS手技と直視下(非MIS)手技の両方においてそれらのデバイスを使用するための方法が、本明細書中に開示される。
【0019】
ある特定の実施形態内において、本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスは、(1)近位端および遠位端を有する留め具保持・解放部材を備えるアプリケーターアセンブリであって、その留め具保持・解放部材は、近位端および遠位端を有するアプリケーターシャフトに移動可能に取り付けられている、アプリケーターアセンブリ、および(2)展開可能な留め具の幾何学的中心(重心としても知られる)にまたはその近傍における中央カプラーを介して展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリの幾何学的中心にまたはその近傍に固定して取り付けられた着脱可能な移植片・留め具アセンブリ(組織フェネストレーションを通過した後、元の形状に広がる自己展開型の移植片を含む移植片サブアセンブリを有する)を動作可能な組み合わせで備える。
【0020】
本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスのある特定の実施形態は、中央カプラーと、着脱可能な移植片・留め具アセンブリの幾何学的中心にまたはその近傍におけるその中央カプラーから広がる複数の半径方向ストラットまたはスポークを有する展開可能な留め具とを有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリを使用する。これらの実施形態のある特定の態様において、着脱可能な移植片・留め具アセンブリは、アプリケーターシャフトの近位端において中央カプラーを介してアプリケーターアセンブリに取り付けられる。さらなる態様において、そのデバイスは、留め具保持・解放部材をアプリケーターシャフトに沿ってその遠位端に向かって摺動させ、それにより、保持・解放部材から留め具を解放することによって展開される。なおもさらなる態様内において、そのデバイスが展開されたら、留め具は、移植片を組織内表面に固定し、留め具を組織外表面に固定して、組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成する。
【0021】
操作の際、本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスは、(1)移植片サブアセンブリを組織内表面上に配置すること、および(2)展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを組織外表面上に配置することを可能にする。使用前に、着脱可能な移植片・留め具アセンブリは、アプリケーターシャフトの近位端において中央カプラーを介してアプリケーターアセンブリに取り付けられる。展開可能な留め具の半径方向スポークまたはストラットは、移植片サブアセンブリから離れて折り畳まれ、留め具保持・解放部材の近位端に挿入されて、展開可能な留め具を適所に保つ。アプリケーターアセンブリを使用して、移植片サブアセンブリは、組織フェネストレーションを通って挿入され、展開可能な留め具・カプラーアセンブリが、フェネストレーションを有する組織の外側のままで、組織内表面上に配置される。組織修復・シーリングデバイスは、留め具保持・解放部材をアプリケーターシャフトの遠位端に向かって移動させて、展開可能な留め具を解放することによって展開され、それにより、展開可能な留め具が開き、組織外表面に圧力をかけ、移植片サブアセンブリを組織内表面に固定し、それにより、組織フェネストレーションを迅速に修復し、耐圧水密シールを確実に形成することが可能になる。
【0022】
MIS手術において遭遇する特異的な技術的問題に対処する組織修復・シーリングデバイスのさらなる改変が本明細書中に記載される。これらには、(1)移植片サブアセンブリおよび展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリのサイズおよび形状の変更、(2)移植片サブアセンブリおよび展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリのために使用される材料の変更、(3)内視鏡的または経皮的手技において組織修復・シーリングデバイスの使用を可能にする配置(例えば、円錐形の移植片エレメント、およびガイドワイヤーを収容するためのチャネルを有する可撓性アプリケーターアセンブリの使用)、および(4)適用部位において連続的な薬物送達を提供するために移植片部品の代わりにまたはそれと組み合わせて薬物溶出マトリックス材を組み込むことが含まれる。
【0023】
カプラーから半径方向に広がる複数の可撓性のスポークまたはストラットを有する展開可能な留め具を備える展開可能なデバイスが、本明細書中に例証され、ここで、その展開可能な留め具は、組織内表面上に配置された移植片および組織外表面上に配置された留め具を固定し、それにより、組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成するのに適した生物物理的特性、サイズ、形状および寸法を示す。
【0024】
いくつかの態様内において、組織修復・シーリングデバイスは、着脱可能な移植片・留め具アセンブリを利用し、ここで、その移植片サブアセンブリならびに/または展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリの1つまたはそれを超えるエレメントは、例えば、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド-co-D,Lラクチド(PDLLA)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリラクチド-co-カプロラクトン(PLCL)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)およびポリラクチド-co-トリメチレンカーボネート(PL-TMC)からなる群より選択される生体高分子を含む、形状記憶および超弾性の特色を示す生体高分子を含む。ある特定の用途において、その生体高分子は、生体吸収性材料である。
【0025】
さらなる態様内において、本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスは、着脱可能な移植片・留め具アセンブリを利用し、ここで、その移植片は、自家移植片、同系移植片、同種移植片および異種移植片からなる群より選択される材料を含む。関連する態様において、移植片は、ヒト組織、ウシ組織およびブタ組織からなる群より選択される動物組織に由来し、例えば、真皮、心膜および腸からなる群より選択される動物組織を含む。
【0026】
関連する態様において、組織修復・シーリングデバイスは、着脱可能な移植片・留め具アセンブリを利用し、ここで、その移植片は、1つまたはそれを超える合成材料を含み、それらとしては、例えば、生体吸収性材料、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)および/または延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTF)が挙げられる。
【0027】
他の関連する態様において、組織修復・シーリングデバイスは、着脱可能な移植片・留め具アセンブリを利用し、ここで、その移植片は、硬膜代替物を含み、それらとしては、例えば、Duraform(登録商標)硬膜移植片インプラント、Biodesign(登録商標)Dural Graft、DuraGen(登録商標)Matrix、Cerafix dural graft(登録商標)、PRECLUDE(登録商標)、Lyoplant Onlay Graft(登録商標)、Neuro-Patch Dural Graft(登録商標)、SEAMDURA(登録商標)およびDurepair(商標)Regeneration Matrixからなる群より選択される硬膜代替物が挙げられる。
【0028】
いくつかの態様において、これらの実施形態に係る移植片は、自家移植片、同系移植片、同種移植片または異種移植片であり得る。他の態様において、その移植片は、組織、膜、メッシュ、マトリックスを含む。さらなる態様において、その移植片は、自己、同種または異種の材料である材料を含む。さらに他の態様において、その移植片は、ポリ(エチレンテレフタレート)および延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTF)からなる群より選択される1つまたはそれを超える合成材料を含む1つまたはそれを超える合成材料を含む。
【0029】
なおもさらなる態様において、移植片は、動物組織、例えば、ヒト組織、ウシ組織およびブタ組織からなる群より選択される動物組織に由来する材料を含み、その動物組織には、真皮、心膜および腸からなる群より選択される動物組織が含まれる。これらの実施形態に係る移植片は、以下:(1)無細胞性の多孔性細胞外マトリックス骨格;(2)コラーゲン;(3)エラスチン;および(4)成長因子のうちの1つまたはそれを超えるものを含み得る。いくつかの態様において、これらの実施形態に係る移植片は、細胞が進入すること、接着すること、およびリモデリングのサイクルを起こすことを可能にするのに十分な多孔度を有するメッシュを備える。
【0030】
さらなる態様において、これらの実施形態(embodiements)に係る移植片は、硬膜代替物、例えば、Duraform(登録商標)硬膜移植片インプラント、Biodesign(登録商標)Dural Graft、DuraGen(登録商標)Matrix、Cerafix dural graft(登録商標)、PRECLUDE(登録商標)、Lyoplant Onlay Graft(登録商標)、Neuro-Patch Dural Graft(登録商標)、SEAMDURA(登録商標)およびDurepair(商標)Regeneration Matrixからなる群より選択される硬膜代替物を含む。なおもさらなる態様において、これらの実施形態に係る移植片は、薬物溶出マトリックスを組み込むことにより、組織修復およびシーリングの部位の体液および組織に薬物を連続的に放出する。
【0031】
さらに他の態様内において、本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスは、コラーゲン、エラスチンおよび必要に応じて成長因子の無細胞性の多孔性細胞外マトリックス骨格を含む移植片を利用する。そのような移植片は、必要に応じて、細胞が進入すること、接着すること、およびリモデリングのサイクルを起こすことを可能にするのに十分な多孔度を有するメッシュを備える。移植片は、さらに薬物溶出マトリックスを備え得る。
【0032】
他の態様内において、本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスは、着脱可能な移植片・留め具アセンブリを利用し、ここで、移植片サブアセンブリおよび/または展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリのうちの1つまたはそれを超えるエレメントは、生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーを備える備え、そのワイヤーは、形状記憶および超弾性の特色を示し、その特色により、折り畳まれる前の状態に開く能力を保持しつつ、前記金属または金属合金の折り畳みが可能になる。好適な生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーとしては、純チタン;チタンベースの合金;コバルトベースの合金;白金ベースの合金;およびモリブデンとタングステンとタンタルの合金からなる群より選択される金属または金属合金を含むワイヤーが挙げられる。高温で強化される形状記憶および超弾性の特色を有する好適な金属または金属合金としては、例えば、ニッケル-チタン合金(ニチノール)およびニオブ-チタン合金が挙げられる。
【0033】
本開示の他の実施形態は、直視下(非MIS)手技または低侵襲手術(MIS)手技において本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスを使用して、組織フェネストレーションを迅速に修復するためおよび耐圧水密シールを形成するための方法を含む。そのような方法は、(a)アプリケーターアセンブリに取り外し可能に取り付けられた着脱可能な移植片・留め具アセンブリを有する組織修復・シーリングデバイスを選択する工程であって、前記着脱可能な移植片・留め具アセンブリは、展開可能な留め具に固定して取り付けられた移植片を有する移植片サブアセンブリ、ならびに半径方向ストラットまたはスポークおよび中央カプラーを有する展開可能な留め具を有するカプラーサブアセンブリを備え、前記アプリケーターアセンブリは、アプリケーターシャフト、留め具保持・解放部材およびアクチュエータロッドを備える、工程;(b)展開可能な留め具の半径方向ストラットまたはスポークを折り畳み、留め具保持・解放部材に挿入する工程;(c)組織フェネストレーションを通って前記移植片を挿入し、移植片を組織内表面上に配置する工程;(d)展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを組織外表面に配置する工程;および(e)組織修復・シーリングデバイスを展開して、留め具保持・解放部材から展開可能な留め具を解放することにより、組織外表面と接触させ、移植片を組織内表面に固定し、組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成する工程を含む。
【0034】
本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスおよび方法は、多種多様のヒト組織の直視的、経皮的および/または内視鏡的な修復およびシーリングにおいて使用され得る。本明細書中に記載および例証される組織修復・シーリングデバイスおよび方法は、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく改変されることより、フェネストレーションを有する組織の性質、状態および外科的露出に特異的な問題に対処する場合があることが、当業者によって理解されるだろう。そのような改変としては、例えば、フェネストレーションを有する組織のユニークな特色(characterists)に適合する材料の組成および/または留め具の配向の変更が挙げられ得る。改変には、(1)種々の移植片材料を手術中に置換することを可能にする部品の追加、(2)移植片-留め具ユニットのサイズおよび形状の変更、および(3)穿刺傷または造瘻部の経皮的または内視鏡的な修復およびシーリングのためのガイドワイヤーを有するまたは有しない可撓性アプリケーターも含まれ得る。
【0035】
本開示のこれらおよび他の関連する態様は、様々な実施形態のある特定の態様を例証する以下の図面および詳細な説明に照らして、よりよく理解されるだろう。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
組織フェネストレーションを迅速に修復するためおよび耐圧水密シールを形成するために直視下(非MIS)手技または低侵襲手術(MIS)手技において使用するための組織修復・シーリングデバイスであって、前記デバイスは、
a.近位端および遠位端を有するアプリケーターシャフトならびに近位端および遠位端を有する留め具保持・解放部材を備えるアプリケーターアセンブリであって、前記留め具保持・解放部材は、前記アプリケーターシャフトに移動可能に接続されている、アプリケーターアセンブリ、および
b.展開可能な留め具に固定して取り付けられた移植片を含む移植片サブアセンブリと、展開可能な留め具および中央カプラーを含むカプラーサブアセンブリとを動作可能な組み合わせで備える、着脱可能な移植片・留め具アセンブリ
を備え;
i.前記着脱可能な移植片・留め具アセンブリは、前記移植片を組織内表面上に配置し、前記展開可能な留め具を組織外表面上に配置するように構成されており、
ii.前記着脱可能な移植片・留め具アセンブリは、前記中央カプラーを介して前記アプリケーターシャフトの近位端において前記アプリケーターアセンブリに取り付けられる、
組織修復・シーリングデバイス。
(項目2)
前記展開可能な留め具アセンブリが、前記留め具保持・解放部材によって保持されているとき、折り畳まれた配置をとるように、かつ折り畳まれる前の状態に素早く開くように構成されている、項目1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
(項目3)
前記デバイスが、前記留め具保持・解放部材を前記アプリケーターシャフトの遠位端に向かって移動させ、それにより、前記折り畳まれた展開可能な留め具を解放することによって展開され、
前記デバイスが展開されると、前記展開可能な留め具が開き、組織外表面と接触して、前記移植片を組織内表面に固定し、それにより、組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成する、
項目1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
(項目4)
前記展開可能な留め具が、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド-co-D,Lラクチド(PDLLA)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリラクチド-co-カプロラクトン(PLCL)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)およびポリラクチド-co-トリメチレンカーボネート(PL-TMC)からなる群より選択される生体高分子を含み、
前記生体高分子が、折り畳まれる前の状態に素早く開く能力を保持しつつ、前記生体高分子の折り畳みを可能にする、形状記憶および超弾性の特色を示す、
項目1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
(項目5)
前記展開可能な留め具アセンブリが、純チタン;チタンベースの合金;コバルトベースの合金;白金ベースの合金;およびモリブデンとタングステンとタンタルの合金からなる群より選択される生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーを備え、
前記生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーが、折り畳まれる前の状態に素早く開く能力を保持しつつ、前記ワイヤーの折り畳みを可能にする、形状記憶および超弾性の特色を示す、
項目1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
(項目6)
前記生体適合性で非強磁性の不動態化金属または不動態化金属合金が、ニッケル-チタン合金(ニチノール)およびニオブ-チタン合金からなる群より選択される、項目5に記載の組織修復・シーリングデバイス。
(項目7)
前記移植片アセンブリが、(a)組織フェネストレーションを通り抜けているときまたは前記留め具保持・解放部材によって保持されているとき、折り畳まれた配置をとるように、かつ(b)折り畳まれる前の状態に素早く開くように構成されている、項目1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
(項目8)
前記移植片が、自家移植片、同系移植片、同種移植片および異種移植片からなる群より選択され、
前記移植片が、ヒト組織、ウシ組織およびブタ組織からなる群より選択される動物組織に由来する、
項目1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
(項目9)
前記移植片材料が、ポリ(エチレンテレフタレート)および延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTF)からなる群より選択される1つまたはそれを超える合成材料を含む、項目1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
(項目10)
前記移植片が、コラーゲン、エラスチンおよび必要に応じて成長因子の無細胞性の多孔性細胞外マトリックス骨格を含む、項目1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
(項目11)
前記移植片が、Duraform(登録商標)硬膜移植片インプラント、Biodesign(登録商標)Dural Graft、DuraGen(登録商標)Matrix、Cerafix dural graft(登録商標)、PRECLUDE(登録商標)、Lyoplant Onlay Graft(登録商標)、Neuro-Patch Dural Graft(登録商標)、SEAMDURA(登録商標)およびDurepair(商標)Regeneration Matrixからなる群より選択される硬膜代替物を含む、項目1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
(項目12)
前記移植片が、薬物溶出マトリックスを含む、項目1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
(項目13)
前記移植片が、純チタン;チタンベースの合金;コバルトベースの合金;白金ベースの合金;およびモリブデンとタングステンとタンタルの合金からなる群より選択される生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーを備え、
前記生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーは、折り畳まれる前の状態に素早く開く能力を保持しつつ、前記ワイヤーの折り畳みを可能にする、形状記憶および超弾性の特色を示す、
項目1に記載の組織修復・シーリングデバイス。
(項目14)
前記生体適合性で非強磁性の不動態化金属または不動態化金属合金が、ニッケル-チタン合金(ニチノール)およびニオブ-チタン合金からなる群より選択される、項目13に記載の組織修復・シーリングデバイス。
(項目15)
直視下(非MIS)手技または低侵襲手術(MIS)手技において組織修復・シーリングデバイスを使用して、組織フェネストレーションを迅速に修復し、耐圧水密シールを形成するための方法であって、
(a)アプリケーターアセンブリに取り外し可能に取り付けられた着脱可能な移植片・留め具アセンブリを有する組織修復・シーリングデバイスを選択する工程であって、
前記着脱可能な移植片・留め具アセンブリは、展開可能な留め具に固定して取り付けられた移植片を有する移植片サブアセンブリ、ならびに半径方向ストラットまたはスポークおよび中央カプラーを有する展開可能な留め具を有するカプラーサブアセンブリを備え、
前記アプリケーターアセンブリは、アプリケーターシャフト、留め具保持・解放部材およびアクチュエータロッドを備える、工程;
(b)前記展開可能な留め具の半径方向ストラットまたはスポークを折り畳み、前記留め具保持・解放部材に挿入する工程;
(c)組織フェネストレーションを通って前記移植片を挿入し、前記移植片を組織内表面上に配置する工程;
(d)前記展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを組織外表面上に配置する工程;
(e)前記組織修復・シーリングデバイスを展開して、前記留め具保持・解放部材から前記展開可能な留め具を解放することにより、前記組織外表面と接触させ、前記移植片を前記組織内表面に固定し、前記組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成する工程
を含む、方法。
(項目16)
前記デバイスが、前記留め具保持・解放部材を前記アプリケーターシャフトの遠位端に向かって移動させ、それにより、前記折り畳まれた展開可能な留め具を解放することによって展開され、
前記デバイスが展開されると、前記展開可能な留め具が開き、組織外表面と接触して、前記移植片を組織内表面に固定し、それにより、組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成する、
項目15に記載の方法。
(項目17)
前記展開可能な留め具が、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド-co-D,Lラクチド(PDLLA)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリラクチド-co-カプロラクトン(PLCL)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)およびポリラクチド-co-トリメチレンカーボネート(PL-TMC)からなる群より選択される生体高分子を含み、
前記生体高分子が、折り畳まれる前の状態に素早く開く能力を保持しつつ、前記生体高分子の折り畳みを可能にする、形状記憶および超弾性の特色を示す、
項目15に記載の方法。
(項目18)
前記展開可能な留め具アセンブリが、純チタン;チタンベースの合金;コバルトベースの合金;白金ベースの合金;およびモリブデンとタングステンとタンタルの合金からなる群より選択される生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーを備え、
前記生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーは、折り畳まれる前の状態に素早く開く能力を保持しつつ、前記ワイヤーの折り畳みを可能にする、形状記憶および超弾性の特色を示す、
項目15に記載の方法。
(項目19)
前記移植片アセンブリが、(a)組織フェネストレーションを通り抜けているときまたは前記留め具保持・解放部材によって保持されているとき、折り畳まれた配置をとるように、かつ(b)折り畳まれる前の状態に素早く開くように構成されている、項目15に記載の方法。
(項目20)
前記移植片が、Duraform(登録商標)硬膜移植片インプラント、Biodesign(登録商標)Dural Graft、DuraGen(登録商標)Matrix、Cerafix dural graft(登録商標)、PRECLUDE(登録商標)、Lyoplant Onlay Graft(登録商標)、Neuro-Patch Dural Graft(登録商標)、SEAMDURA(登録商標)およびDurepair(商標)Regeneration Matrixからなる群より選択される硬膜代替物を含む、項目15に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本開示のある特定の態様は、限定ではなく例証のために提示される図面を参照することにより、より明らかになるだろう。
【
図1A-B】
図1は、本開示の1つの実施形態に係る例示的な組織修復・シーリングデバイスを図示している図面である。
図1Aには、アプリケーターシャフトおよび留め具保持・解放部材を備えるアプリケーターアセンブリが示されており、ここで、その留め具保持・解放部材は、アプリケーターシャフトに摺動可能に接続されている。
図1Bには、移植片サブアセンブリおよび展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリが示されており、それは、着脱可能な移植片・留め具アセンブリをアプリケーターシャフトの近位端においてアプリケーターアセンブリに取り付けるための中央カプラーを備える。
図1Cは、本明細書中にさらに詳細に記載されるような例示的な組織修復・シーリングデバイスの斜視図を示しているCAD図面である。
【
図2】
図2は、例示的な着脱可能な移植片・留め具アセンブリの構成部品の空間配置を示す図面であり、ここで、移植片サブアセンブリは、その中心において、中央カプラーを介して展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリに固定して取り付けられる。
図2において、着脱可能な移植片・留め具アセンブリのある特定の態様は、(1)中央カプラーから半径方向に広がる、および(2)移植片サブアセンブリの表面と接触している、複数のストラットまたはスポークを有する展開可能な留め具を備える展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを含む。
図2に示されている特定の移植片サブアセンブリにおいて、展開可能な留め具のストラットまたはスポークは、移植片サブアセンブリの外縁を越えて広がって、展開可能な留め具の折り畳みおよびアプリケーターアセンブリ上の留め具保持・解放部材による保持を容易にする。
【
図3A】
図3Aは、アプリケーターアセンブリの留め具保持・解放部材による、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ(
図1および2に記載)の保持を示している図面である。展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリは、中央カプラーから半径方向に広がる複数の半径方向ストラットまたはスポークの各々において折り畳まれ、留め具保持・解放部材の近位端に挿入されることにより、組織修復・シーリングデバイスが展開されるまで、展開可能な留め具が折り畳まれた配置で保持される。
【
図3B-C】
図3B~3Eは、組織フェネストレーションを迅速に修復し、耐圧水密シールを確実に形成するための、本開示の様々な実施形態に係る組織修復・シーリングデバイスの使用を図示している図面である。
図3Bには、組織フェネストレーションを通って移植片サブアセンブリを挿入する前の組織修復・シーリングデバイスが示されている。この組織修復・シーリングデバイスは、着脱可能な移植片・留め具アセンブリに取り付けられたアプリケーターアセンブリを備え、ここで、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリのストラットまたはスポークは、移植片サブアセンブリから離れて折り畳まれ、留め具保持・解放部材の近位端に挿入されている。
図3Cには、組織フェネストレーションを通って移植片サブアセンブリを挿入した後の
図3Bの組織修復・シーリングデバイスが示されている。この移植片サブアセンブリは、組織修復・シーリングデバイスを展開する前に、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリが、フェネストレーションを有する組織の外側に留まったままで、組織内表面上に配置される。
図3Dには、留め具保持・解放部材をアプリケーターシャフトの遠位端に向かって摺動させることにより、展開可能な留め具を解放することによる、組織修復・シーリングデバイスの展開が示されている。
図3Eには、着脱可能な移植片・留め具アセンブリをアプリケーターアセンブリから分離し、展開可能な留め具・カプラーアセンブリを組織外表面に接して配置して、移植片サブアセンブリを組織内表面に固定することにより、組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成する様子が示されている。
【
図3F-3G】
図3Fおよび3Gは、25~50ミクロンの解像度を有する3D光造形(SLA)プリンターを用いてポリグリコール酸から製作された、
図3A~3Eに示される実施形態に係る例示的な展開可能な留め具・カプラーのプロトタイプの写真である。
図3Fは、開いた配置の展開可能な留め具・カプラーのプロトタイプを示しており、
図3Gは、留め具保持・解放部材の近位端への挿入のために複数の半径方向ストラットまたはスポークが折り畳まれた、閉じた配置の展開可能な留め具・カプラーを示している。単に説明目的で、展開可能な留め具のストラットまたはスポークは、アプリケーターシャフトに移動可能に接続された留め具保持・解放部材に挿入され、保持される展開可能な留め具の配置を強調するために、プラスチックテープによって結束されている。
【
図4】
図4は、中央カプラーが、展開可能な留め具に回転可能に取り付けられるように構成されており、それが移植片の角回転を可能にしている、本明細書中に開示される様々な組織修復・シーリングデバイスの自由選択の態様を示している図面である。
図4Bに示されている1つの例示的な態様において、中央カプラーは、MIS手技中に必要とされ得るような、アプリケーターシャフト
図4Aに対してある範囲の角度にわたって着脱可能な移植片・留め具アセンブリの向きを定めることを可能にする、ボールおよびソケット配置で製作されている。
【
図5A-B】
図5は、大口径針の穿刺または経皮的瘻造設術の部位を塞ぐための外科手技(例えば、腰椎穿刺および胃瘻造設術)において使用するように構成されている本開示の組織修復・シーリングデバイスの実施形態を図示している。
図5Aには、アプリケーターシャフトおよび留め具保持・解放部材を有するアプリケーターアセンブリ、ならびに移植片サブアセンブリおよび展開可能な留め具・カプラーアセンブリを有する着脱可能な移植片・留め具アセンブリを備える組織修復・シーリングデバイスが示されており、ここで、移植片は、円錐形の閉鎖栓移植片であり、アプリケーターシャフトは、可撓性材料から製作されており、アプリケーターシャフト、中央カプラーおよび移植片は、ガイドワイヤーを収容する中心チャネルを備えて構成されている。ある特定の態様において、円錐形の閉鎖栓移植片は、生体吸収型(bioabsobable)材料を含む。
図5Bには、円錐形の閉鎖栓移植片が、組織内表面上に配置され、展開可能な留め具の半径方向ストラットまたはスポークが、組織外表面上に配置されることにより、組織外表面に対して圧力をかけ、円錐形の閉塞移植片を固定し、それにより、組織フェネストレーション(すなわち、穿刺傷または瘻造設術部位)を修復し、耐圧水密シールを形成する、
図5Aに示される実施形態に係る組織修復・シーリングデバイスの展開が示されている。
【
図5C-E】
図5C~5Gは、
図5Aに示されているような組織修復・シーリングデバイスを、ガイドワイヤーの使用とともに用いて穿刺部位を修復する例示的な方法を示している。
図5Cに示されているように、ガイドワイヤーを、体液のドレナージのために組織バリアを通って挿入された大口径針に通す。この方法の代替の態様では、ガイドワイヤーを、除去前の留置カテーテルに通す場合がある。大口径針または留置カテーテルを除去した後、ガイドワイヤーは、適所に留まる(
図5D)。
図5Eは、円錐形の閉鎖栓移植片、中央カプラーおよびアプリケーターシャフト内の中心チャネルを通るガイドワイヤーの遠位(外側)端の通過を図示している。組織修復・シーリングデバイスは、ガイドワイヤーに沿って穿刺部位まで前進し、円錐形の閉鎖栓移植片は、穿刺孔を通り抜けて、穿刺組織の内表面に接して配置され、組織修復・シーリングデバイスは、留め具保持・解放部材をアプリケーターシャフトの遠位端に向かって移動させて、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを解放することによって展開される(
図5F)。展開可能な留め具は、組織外表面に接して配置され、組織外表面に圧力をかけることにより、円錐形の閉塞移植片を固定し、穿刺傷を修復し、耐圧水密シールを形成する。アプリケーターアセンブリは、穿刺部位に留まる着脱可能な移植片・留め具アセンブリから取り外され、アプリケーターアセンブリは、ガイドワイヤーに沿って摺動させることによって除去され、その後、ガイドワイヤーが除去される(
図5G)。
【
図6】
図6は、本明細書中に開示される様々な組織修復・シーリングデバイスの自由選択の態様を示している図面である。
図6Aには、アプリケーターシャフトおよび留め具保持・解放部材を備えるアプリケーターアセンブリが示されており、ここで、その留め具保持・解放部材は、アプリケーターシャフトに摺動可能に接続されている。
図6Bは、フォームリングが移植片の一方の表面に接着されている移植片サブアセンブリを備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリを示しており、ここで、そのフォームリングは、組織フェネストレーションを通って挿入している間、移植片の折り畳みを可能にするのに十分な可撓性を有し、かつ組織内表面上に配置する前に、移植片が開く(および元の形状をとる)のを可能にするのに十分な剛性を有する。本明細書中でさらに詳細(detain)に記載される本開示のいくつかの態様において、フォームリングは、生体吸収性材料を含む。
【
図7】
図7は、
図1~5に示されている組織修復・シーリングデバイスの自由選択の態様を示している図面であり、ここで、アプリケーターアセンブリ(
図7A)は、留め具保持・解放部材の一方の末端に取り付けられたアクチュエータロッドをさらに備え、そのアクチュエータロッドは、アプリケーターシャフトを通り越して伸びることにより、展開可能な留め具のかなり遠方から、着脱可能な移植片・留め具アセンブリからの留め具保持・解放部材から解放されるのを可能にする(
図7B)。
【
図8】
図8は、アプリケーターアセンブリ(
図8A)および着脱可能な移植片・留め具アセンブリ(
図8B)を備える、
図1~4および6~7に示されている組織修復・シーリングデバイスの自由選択の態様を示している図面であり、ここで、その着脱可能な移植片・留め具アセンブリは、移植片に固定して接着されたフォームリングを含む移植片サブアセンブリを備え、そのフォームリングは、組織フェネストレーションを通って挿入している間、移植片が折り畳まれるのを可能にするのに十分な可撓性を有し、かつ組織内表面上に配置する前に移植片が開くのを可能にするのに十分な剛性を有し(
図19に示されているように)、その移植片は、組織内表面への移植片の接着を改善するためにフォームリングを越えて広がっている。
【
図9】
図9は、移植片の内表面に固定して接着されたフォームリングを備える例示的な移植片サブアセンブリの構成部品の空間配置を示している図面である。その例示的なフォームリングは、リング安定化部材および中央カプラー受け部材と組み合わせて示されている。中央カプラー受け部材が突出するオリフィスを有する例示的な移植片サブアセンブリが示されている。
【
図10】
図10は、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリに取り付けられる移植片サブアセンブリ(
図9に示されているような)を備える例示的な着脱可能な移植片・留め具アセンブリの構成部品の空間配置を示している図面である。移植片サブアセンブリは、内表面において、リング安定化部材および中央カプラー受け部材を有するフォームリングに固定して接着された移植片を備える。この例示的な着脱可能な移植片・留め具アセンブリでは、移植片は、組織内表面との接触および接着を改善するためにフォームリングの外周を越えて広がっている。中央カプラーから広がる複数の半径方向スポークまたはストラットを有する展開可能な留め具を有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリが示されている。展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリは、中央カプラー受け部材を介して移植片サブアセンブリへ中央カプラーに固定して取り付けられる。
【
図11】
図11は、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリの中心を、
図10に示されているような中央カプラー受け部材において移植片サブアセンブリの中心に取り付けるための中央カプラーにおける凹部を示している展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリの図を示している図面である。
【
図12】
図12は、移植片サブアセンブリ(フォームリングまたは1つもしくはそれを超えるリング安定化部材を有するまたは有しないもの)と、中央カプラーおよび中央カプラーから半径方向に広がる複数の半径方向スポークまたはストラットを有する展開可能な留め具を備える展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリとを備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリの代表的な配置を示している図面である。
【
図13】
図13は、様々なサイズかつ種々の異なる組織内の組織フェネストレーションを迅速に修復し、それにより、水密シールを確実に形成するために移植片サブアセンブリを組織内表面に固定する際に使用するための展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリの最適化を可能にする複数の半径方向スポークまたはストラットを有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ(subassemby)を備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリの様々な自由選択の配置を示している図面である。
【
図13A】
図13Aは、(1)移植片を有する移植片サブアセンブリ(フォームリングまたはリング安定化部材を有するまたは有しないもの)、および(2)中央カプラーと、6つの半径方向スポークまたはストラットを有する展開可能な留め具とを有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリを示している図面である。
【
図13B】
図13Bは、(1)移植片を有する移植片サブアセンブリ(フォームリングまたはリング安定化部材を有するまたは有しないもの)、および(2)移植片を組織内表面に固定するとき、展開可能な留め具が発揮する力を高めるために12個の半径方向スポークまたはストラットを有する展開可能な留め具と中央カプラーとを有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリを示している図面である。
【
図13C】
図13Cは、(1)移植片を有する移植片サブアセンブリ(フォームリングまたはリング安定化部材を有するまたは有しないもの)、および(2)6つの半径方向スポークまたはストラットを有する展開可能な留め具と中央カプラーとを有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリを示している図面であり、ここで、半径方向スポークまたはストラットの各々は、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリの安定性を改善するために横方向延長部分をさらに備える。
【
図13D】
図13Dは、(1)移植片を有する移植片サブアセンブリ(フォームリングまたはリング安定化部材を有するまたは有しないもの)、および(2)6つの半径方向スポークまたはストラットを有する展開可能な留め具と中央カプラーとを有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリを示している図面であり、ここで、半径方向スポークまたはストラットの各々は、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリの安定性を改善するために2~6つの複数の横方向延長部分をさらに備える。
【
図14A-B】
図14は、本明細書中に示される組織修復・シーリングデバイスのある特定の実施形態に係る着脱可能な移植片・留め具アセンブリのある特定の態様を図示している。
図14Aは、(1)移植片を有する移植片サブアセンブリ(フォームリングまたはリング安定化部材を有するまたは有しないもの)、および(2)6つの半径方向スポークまたはストラットを有する展開可能な留め具と中央カプラーとを有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリを示している線画であり、ここで、半径方向スポークまたはストラットの各々は、太さが太くなるように、移植片サブアセンブリから離れて湾曲するように、および半径方向スポークまたはストラットの各々の端に1つまたはそれを超える返しを含むように、製作されている。
図14Bは、
図14Cに示されている着脱可能な移植片・留め具アセンブリの様々な態様を示しているCAD図面である。
図14D~14Fは、本明細書中に開示される様々な実施形態に係る着脱可能な移植片・留め具アセンブリのプロトタイプ(本明細書中にさらに詳細に記載されるように3D SLAプリンターを用いて製作された、
図14Aおよび14Bに示されているようなものを含む)の写真である。
【
図15】
図15は、自己組織移植片の使用、または組織修復・シーリングデバイスにおける他の非剛性の天然または合成の移植片材料の手術時の置換を可能にする、本開示の代替の実施形態に係る例示的な移植片サブアセンブリの構成部品の空間配置を示している図面である。この実施形態のある特定の態様内において、移植片サブアセンブリは、中央カプラーを受けるために、幾何学的中心にまたはその近傍に、中心オリフィスを有する移植片を備える。移植片は、その内表面の全体にわたってフォームリングに付着され、そのフォームリングは、中央カプラーから半径方向に広がる複数のリング安定化部材、および移植片サブアセンブリを固定するための移植片安定化突起を備える。
【
図16】
図16は、本開示の代替の実施形態に係る例示的な着脱可能な移植片・留め具アセンブリのある特定の態様の構成部品の空間配置を示している図面であり、ここで、第2のフォームリングには、その内側の外周に沿って複数の移植片安定化突起アラインメントリングが半径方向に配置されており、その第2のフォームリングは、フォームリングから突出していて移植片の内表面に付着された移植片安定化突起を受けるように、移植片の外表面の上に配置される。
【
図17】
図17は、本開示の代替の実施形態に係る例示的な着脱可能な移植片・留め具アセンブリのある特定の態様の構成部品の空間配置を示している図面であり(
図15および16を参照のこと)、ここで、その展開可能な留め具は、中央カプラー受けリング、および中央カプラー受けリングから広がる複数の半径方向スポークまたはストラットを備える。
【
図18】
図18は、
図15~17に示されている実施形態に係る、アプリケーターアセンブリへの取り付けおよび留め具保持・解放部材での結束に備えた、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリの中央カプラー受け部材の一方の端から広がる半径方向スポークまたはストラットの折り畳みを示している図面である。
【
図19】
図19は、体腔内、血管内、管腔内または他の身体内の構造内の体液、組織または空間に連続的な薬物送達を提供するように構成されている本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスの代替の実施形態の模式図である。
【
図20】
図20は、移植片アセンブリの実施形態を図示しており、ここで、その移植片は、複数の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーを備え、そのワイヤーは、形状記憶および超弾性の特色を示すことにより、移植片が折り畳まれる前の状態に開く能力を保持しつつ、その金属または金属合金の折り畳みを可能にする。
図20Aは、複数の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーが中央カプラーから半径方向に広がる、この実施形態の1つの態様を図示している。
図20Bに示されているように、複数の半径方向の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーは、移植片が中央カプラーから離れて傘またはパラソルの配置で折り畳まれることを可能にする。
図20Cに示されているように、複数の半径方向の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーは、留め具保持・解放部材に挿入するために直径を小さくするためにらせん状の配置で移植片をさらに折り畳むことも可能にする。
【
図21】
図21は、(a)アプリケーターシャフト、細長い留め具保持・解放部材およびアクチュエータロッドを有するアプリケーターアセンブリが、(b)移植片サブアセンブリおよび展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを有する着脱可能な移植片・留め具アセンブリに接続された、本開示の組織修復・シーリングデバイスを図示している(
図21A)。この実施形態によると、着脱可能な移植片・留め具アセンブリは、
図20に示されているような移植片アセンブリを利用し、ここで、その移植片は、複数の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーを備え、そのワイヤーは、形状記憶および超弾性の特色を示すことにより、折り畳まれる前の状態に開く能力を保持しつつ、その金属または金属合金の折り畳みを可能にする。
図21Bは、半径方向ストラットまたはスポークと移植片サブアセンブリの両方が折り畳まれ、留め具保持・解放部材に挿入されている
図21Aの組織修復・シーリングデバイスを図示している。
図21Cは、半径方向の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーがらせん状の配置をとれるような折り畳みによる移植片サブアセンブリのさらなる圧縮を図示しており、これは、組織バリアの下の空間が限られている組織のフェネストレーションの修復に有益である。
【
図22A-C】
図22は、
図20A~20Cおよび
図21A~21Cに図示されているような移植片サブアセンブリおよび展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを備える組織修復・シーリングデバイスを使用して、組織フェネストレーションを迅速に修復し、耐圧水密シールを形成するための方法を図示している。これらの組織修復・シーリングデバイスは、小さい組織フェネストレーションを有する、かつ/またはもろい性質の、フェネストレーションを有する組織の修復において特定の利点を提供する。この実施形態において、移植片サブアセンブリは、移植片の中心から半径方向に広がり、形状記憶および超弾性の特色を示す、複数の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーを備えるように構成されている。したがって、移植片サブアセンブリは、容易に変形して留め具保持・解放部材内にちょうど収まるように、かつ組織の内側に入り、留め具保持・解放部材を移動させたとき、元の形状に再拡大するように、構成されている。
図22Aは、展開前の例示的な組織修復・シーリングデバイスを図示している。着脱可能な移植片・留め具アセンブリは、アプリケーターシャフトの近位端においてアプリケーターアセンブリに取り付けられており、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリの折り畳まれた半径方向ストラットまたはスポークは、留め具保持・解放部材の近位端において保持されている。組織フェネストレーションを通って移植片サブアセンブリを挿入する前に、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリの半径方向ストラットまたはスポークは、中央カプラーを通る軸の中心に沿って移植片サブアセンブリから離れて折り畳まれ、留め具保持・解放部材の近位端に挿入される。この実施形態には、移植片の中心から半径方向に広がる複数の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーを備えており、かつ傘またはパラソルの配置で中央カプラーから離れて折り畳まれ、留め具保持・解放部材によって保持されている移植片を含む移植片サブアセンブリを収容するために細長い留め具保持・解放部材が示されている。
図22Bには、留め具保持・解放部材の近位端および移植片サブアセンブリが組織フェネストレーションを通過した後の、
図20A~20Cおよび
図21A~21Cの組織修復・シーリングデバイスが示されている。
図22Bには、留め具保持・解放部材をアプリケーターシャフトに沿ってその遠位端に向かって移動させ、留め具保持・解放部材の近位端が、フェネストレーションを有する組織の外側に到達したとき、止めることによる、移植片サブアセンブリの展開が示されている。次いで、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリが、フェネストレーションを有する組織の外側で、留め具保持・解放部材内に留まったままで、移植片が、フェネストレーションを有する組織の内表面と接触するように、移植片サブアセンブリが引き戻される。
図22Dには、留め具保持・解放部材をアプリケーターシャフトの遠位端に向かって摺動させ、それにより、展開可能な留め具のストラットまたはスポークを解放することによって留め具保持・解放部材から解放された展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリが示されており、その展開可能な留め具のストラットまたはスポークは、元の配置に急速に戻り、フェネストレーションを有する組織の外表面に対して圧力をかけ、それにより、移植片が最適な位置に固定されて、フェネストレーションがシールされる。
図22Eには、着脱可能な移植片・留め具アセンブリをアプリケーターアセンブリから分離し、展開可能な留め具・カプラーアセンブリを組織外表面に接して配置して、移植片サブアセンブリを組織内表面に固定することにより、組織フェネストレーションを迅速に修復し、耐圧水密シールを確実に形成する様子が示されている。
【
図23A】
図23は、本開示に係る組織修復・シーリングデバイスにおいて使用するための移植片サブアセンブリの物理的パラメータを試験するために使用される圧力チャンバーの様々な態様を図示しており、その圧力チャンバーは、様々なヒト身体のコンパートメントにおける流体に対応する内部流体の圧力波の確立を可能にする。
図23Aは、組織修復・シーリングデバイスにおいて使用するための移植片サブアセンブリが超正常の圧力において水密シールを維持する能力を試験するために使用されるインビトロ圧力チャンバーの写真であり、
図23Bは、そのCAD図面である。
図23Bに示されているように、圧力チャンバー160は、波形発生器141、移植片サンプルを配置するための開口部143、移植片サンプルを固定するためのアクリルプレート145、圧力センサー147および水の入口149を備える。
【
図23C】このインビトロ圧力チャンバーは、様々なヒト身体のコンパートメントにおける流体の圧力波に対応する内部流体の圧力波の発生を可能にする。この例では、ブタまたはヒツジの硬膜が、開口部に配置され、チャンバー内の連続的な圧力を記録するために埋め込まれた圧力センサーとともに、2枚のアクリルプレート(acrylic places)の間に保持される。チャンバーの流体において波形を発生させて、様々なヒト組織コンパートメントで見られる拍動性圧力波を再現する。
図23Cは、インビボにおけるヒトCSFの圧力波形であり、
図23Dは、
図23A~23Bに示されている圧力チャンバーを用いて得られたインビトロにおける圧力チャンバー波形である。
【
図24】
図24は、
図23に示されているインビトロ圧力チャンバーを用いて得られた、DuraSecure移植片材料を含む移植片サブアセンブリを試験している、圧力抵抗(pressure-resistence)のデータのグラフである。このグラフは、硬膜内のヒト脳脊髄液(CSF)を再現するインビトロチャンバーからの経時的な通常の圧力測定値を示している。この場合、チャンバー圧力は、まず、正常なヒトCSF圧力(10cmH
2O)にされた(broght)後、病的な高圧(>20cmH
2O)に達するまで2cmH
2Oずつ段階的に上昇され、その後、圧力の減衰なしにさらに2分間維持され、水密シールを示した。これらのデータは、この移植片サブアセンブリが、インビボにおける、ヒト脳脊髄液にとって正常な圧力(すなわち、10cmH
2O)から段階的に上昇させている時間にわたって圧力を維持し、2分間にわたって25cmH
2Oという高圧に耐えたことを実証している。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本開示の詳細な説明
本開示は、組織修復・シーリングデバイス、ならびに組織フェネストレーションを迅速に修復するためおよび耐圧水密シールを確実に形成するためにMIS手技と非MIS手技の両方においてそれを使用するための方法を提供する。ある特定の実施形態内において、本開示に係る組織修復・シーリングデバイスは、(1)アプリケーターシャフト(近位端および遠位端を有する)に移動可能に接続された留め具保持・解放部材(近位端および遠位端を有する)を有するアプリケーターアセンブリ、および(2)移植片サブアセンブリを組織内表面上に配置するためおよび展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを組織外表面上に配置するための展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリに固定して取り付けられた移植片サブアセンブリを備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリを備える。留め具保持・解放部材をアプリケーターシャフトに沿ってその遠位端に向かって移動させることによって組織修復・シーリングデバイスを展開すると、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリが解放されて、留め具が組織外表面上に配置され、移植片が組織内表面上に固定されることにより、組織フェネストレーションの迅速な修復および耐圧水密シールの確実な形成が達成される。
【0038】
本開示は、以下の定義を考慮すればより良く理解されるだろう。それらの定義は、明確化のために提供されるものであり、本明細書中に開示される主題の範囲を限定することを意図するものではない。
【0039】
定義
本開示において使用される各用語は、本明細書中で特に別段定義されない限り、関連技術分野の当業者にとっての意味と同じ意味を有する。
【0040】
本明細書中で使用されるとき、用語「低侵襲手術」および「MIS」は、切開サイズを限定することにより、従来の「非MIS」手技と比べて創傷治癒時間を短縮し、関連する疼痛を低減し、感染リスクを低下させる、非観血的手術または局所の手術を支持する、直視下の侵襲性手術の使用を回避する外科手技のことを指すために交換可能に(interchageably)使用される。MIS手技(例えば、例えば、内視鏡検査、腹腔鏡検査、関節鏡検査)は、腹腔鏡検査デバイスを使用すること、および内視鏡または類似のデバイスを通じて手術野を間接的に観察しながら(例えば、神経内視鏡法)、その装置を遠隔制御で操作することを必要とする。MIS手技には、皮下注射の使用、およびインターベンショナルラジオロジー(例えば、血管形成術)、冠動脈カテーテル法、脊髄電極および脳電極の永久留置、定位脳手術、Nuss手技、放射能ベースの医用画像法(例えば、ガンマカメラ、ポジトロン放出断層撮影およびSPECT(単光子放出型コンピュータ断層撮影))を用いた、空気圧注射、真皮下インプラント、屈折手術、経皮的手術、凍結手術、マイクロサージェリー、キーホールサージャリー、血管内手術も含まれる。関連する手技は、画像誘導手術およびロボット支援手術である。
【0041】
本明細書中で使用されるとき、用語「組織バリア」とは、身体の2つのコンパートメントを隔てる身体内の組織層のことを指す。「組織バリア」は、インビボにおいて、保護的な遮蔽物と、異なるコンパートメント間(例えば、血液と組織との間)の門番役との両方として機能し、上皮細胞および内皮細胞の外側の原形質膜に位置する特化した膜結合型タンパク質によって形成されている。そのようなバリアは、傍細胞の空間を塞ぐことによって、上皮および内皮の単層を越えた溶質および分子の自由な拡散を妨害し、それにより、器官特異的な恒常性環境を作り出す。組織バリアには、髄膜、神経系の硬膜、腹壁、筋膜、血管、食道、中咽頭、胃、小腸および大腸、直腸、気管、気管支、心臓、膀胱、尿管、尿道、子宮、腹膜、胸膜、ファロピウス管、眼の強膜、滑膜、鼓膜、または実質臓器(例えば、腎臓、肝臓および膵臓)の莢膜、組織バリアに包まれている体液もしくは空間(血液、脳脊髄液、胃腸内容物、胸膜腔、腹膜腔、硝子体液、内耳、ファロピウス管または関節腔)を含む組織が含まれる。
【0042】
本明細書中で使用されるとき、用語「髄膜」は、頭蓋骨および脊柱管を裏打ちし、脳および脊髄を囲み、中枢神経系を保護する3つの膜(硬膜、くも膜および軟膜)のことをまとめて指す。「髄膜炎」は、通常、感染性物質が原因である、髄膜の炎症である。
【0043】
本明細書中で使用されるとき、用語「硬膜(dura)」および「硬膜(dura mater)」は、交換可能に使用され、高密度で不規則な結合組織でできている髄膜と呼ばれる3層の膜(すなわち髄膜層)のうちの最外層(すなわち、頭蓋骨および椎骨に最も近い層)のことを指す。「硬膜(Dura mater)」(「硬膜(pachymeninx)」として知られる)は、主に神経堤細胞集団に由来し、沿軸中胚葉が出生後に寄与する。「硬膜」は、脳および脊髄を囲むことによって中枢神経系を保護している。
【0044】
本明細書中で使用されるとき、用語「くも膜」および「軟膜」とは、「硬膜(dura)」または「硬膜(dura mater)」によって包まれている2つの内側の髄膜層のことを指す。「くも膜」は、かなり厚い「硬膜」とより深部の「軟膜」との間に挟まれている。「くも膜」は、くも膜下腔によって「軟膜」と隔てられており、くも膜下腔(「SAS」)内における脳脊髄液(「CSF」)の保持に関わっている。「軟膜」は、薄い透水性の線維組織であって、血管が脳を通って、脳に栄養を与えることを可能にする線維組織である。「くも膜」および「軟膜」は、合わせて「軟髄膜」として知られており、CNSの表面における流体、溶質および細胞の移動、ならびにCNS実質内における流体および溶質の移動に対するバリアおよび促進役としての複雑な機能を有する。Wellerら、Acta Neuropathologica 135:363-385(2018)に概説されている。「くも膜」と「軟膜」の両方が、神経堤に由来する。
【0045】
本明細書中で使用されるとき、用語「フェネストレーション」とは、体組織バリアにおける開口部、例えば、切創、裂傷、穿刺傷、欠損部または他の裂け目のことを指す。フェネストレーションは、自然発症的なもの(例えば、先天性欠損による脳脊髄液の漏出);続発性のもの(例えば、腫瘍または感染症によって組織バリアが損なわれるもの);計画的なもの(例えば、血管、硬膜または身体器官の外壁の切開創または穿刺傷);または計画外のもの(例えば、偶発的硬膜切開、腸の裂け目または外科手技中の身体器官の壁の裂傷)であり得る。組織バリアにおけるフェネストレーションは、通常、重篤な合併症(例えば、感染、出血および創傷崩壊(wound breakdown))を予防するために修復およびシーリングを必要とする。しかしながら、MIS手技の場合、限られた作業空間とアクセスベクターとの組み合わせ、視野の制限、ならびにフェネストレーションを有する組織バリアの性質および堅牢性のせいで、従来の方法(例えば、縫合またはステープリング)による直接的な修復およびシーリングは著しく制限されている。
【0046】
本明細書中で使用されるとき、用語「硬膜切開」、「意図的でない硬膜切開」および「偶発の硬膜切開」とは、脊椎に対して行われるMIS手技(例えば、顕微鏡的腰椎椎間板切除術(lumbar micshaftiscectomy))中に通常生じる意図的でない硬膜の裂傷(硬膜裂傷)のことを指す。脊髄のMIS手技の複雑さは、「硬膜切開」の発生の一因となる。硬膜切開は、その後の髄膜炎を伴う脳脊髄液の漏出を含む術後合併症、または最も一般的には、周囲の硬膜が破壊した硬膜上腔内もしくはくも膜下腔内の、脊柱管における空気の蓄積(すなわち、脊柱管内気腫(pneumorachis)、気脊柱(aerorachia)または硬膜外気腫)を予防するために、速やかな修復および水密シーリングを必要とする。
【0047】
本明細書中で使用されるとき、用語「移植片」とは、一般に、好適な生物物理学的特性を示し、組織内表面への接着、組織フェネストレーションの修復および耐圧水密シールの形成にとって適切なサイズ、形状および他の寸法である、組織、膜、メッシュ、マトリックスなどのことを指す。「移植片」は、動物の器官組織および組織バリアなどの天然起源に由来することがあり、移植片には、レシピエントからの組織に対して規定の遺伝的関係を示すドナーからの組織、例えば、自家移植片(患者から得られた組織)、同系移植片(一卵性双生児から得られた組織)、同種移植片(別の人物から得られた組織)または異種移植片(非ヒト動物種から得られた組織)が含まれる。そのような天然起源からの移植片は、自己、同種または異種の移植片であり得、1つまたはそれを超える合成材料を組み込んでいてもよい。
【0048】
本明細書中で使用されるとき、用語「薬物溶出移植片」とは、制御された限局性の薬物放出を提供するために薬物溶出マトリックスを組み込んでいる移植片材料のことを指す。Han and Lelkes,Focal Controlled Drug Delivery,Advances in Delivery Science and Technology(Springer,Boston,2014).
本明細書中で使用されるとき、用語「非吸収性」とは、身体によって分解および吸収されないがゆえに、長期的な構造的用途を意図した材料のことを指す。「非吸収性」材料には、植え込み型のポリマー、例えば、ポリエチレンおよびポリケトン(PEEK)、相純度の高い(phase pure)βリン酸三カルシウム(TCP)およびヒドロキシアパタイト(HA)が含まれる。
【0049】
本明細書中で使用されるとき、用語「生体吸収性」とは、身体によって分解および吸収されるがゆえに、手作業で除去する必要のない材料のことを指す。生体吸収性材料としては、生体高分子およびその共重合体を含むポリマー、例えば、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド-co-D,Lラクチド(PDLLA)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリラクチド-co-カプロラクトン(PLCL)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリラクチド-co-トリメチレンカーボネート(PL-TMC)が挙げられ、これらは、機械的な性能パラメータ、生体適合性および吸収率を満たすようにカスタマイズできる。
【0050】
本明細書中で使用されるとき、用語「不動態化金属」または「不動態化金属合金」とは、天然の金属または金属合金と比べて、耐腐食性であり、高い生体適合性を示す金属および金属合金のことを指す。不動態化は、金属または金属合金の露出した表面にシールド材の外層をマイクロコーティングとして塗布することによって達成され得る。
【0051】
単数または複数を用いた単語および句は、それぞれその複数および単数も含む。例えば、「a」または「an」などの用語、ならびに「少なくとも1つの」および「1つまたはそれを超える」などの句は、単数と複数の両方を含む。「オープン」であることを意図した用語(例えば、単語「~を含む(comprise)」、「~を含む(comprising)」、「~を含む(include)」、「~を含む(including)」、「~を有する(have)」および「~を有する(having)」を含む)は、排他的または網羅的な意味ではなく、包括的な意味で解釈されるべきである。すなわち、用語「~を含む(including)」は、「~を含むがそれらに限定されない(including but not limited to)」と解釈されるべきであり、「~を含む(includes)」は、「~を含むがそれらに限定されない(includes but is not limited to)」と解釈されるべきであり、「~を有する」は、「~を少なくとも有する」と解釈されるべきである。
【0052】
請求項における用語「または」の使用は、選択肢のみを指すと明示的に示されない限り、または選択肢が相互排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢のみと「および/または」とを指す定義を支持する。
【0053】
さらに、用語「本明細書中」、「上記」および「下記」、ならびに同様の趣旨の単語は、本願で使用されるとき、本願全体を指すものとし、本願の任意の特定の部分を指すものではないものとする。
【0054】
本開示の特徴または態様が、マーカッシュ群の観点から説明される場合、本開示は、そのマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーのサブグループの観点から説明されることも意図されていることがさらに理解されるだろう。同様に、本明細書中に開示されるすべての範囲は、すべての可能な部分範囲および部分範囲の組み合わせも包含し、「~の間」、「最大」、「少なくとも」、「~を超える」、「~未満」などの言い回しは、その範囲に記載された数を含み、個々の各メンバーを含む。
【0055】
本開示の実施では、特に低侵襲手術(MIS)手技および非低侵襲手術(非MIS)手技とともに、医学の分野で一般的に使用されている従来の手法および方法論を採用することになる。そのような手法および方法論は、外科手技に関する学術論文ならびに医学文献、科学文献および特許文献において十分に説明されている。例えば、Hunter and Spight,“Atlas of Minimally Invasive Surgical Operations”(McGraw-Hill Education,Inc.,2018);Jones and Schwaltzberg,“Operative Endoscopic and Minimally Invasive Surgery”(CRC Press,2019);およびNahai,“The Art of Aesthetic Surgery”(2nd Ed.,Thieme,2010)を参照のこと。
【0056】
特許、特許出願および特許公報(米国、PCTまたは米国以外の外国を問わない)ならびにすべての技術、医学および/または科学刊行物を含むがこれらに限定されない、本明細書で引用されるすべての文献は、前出または後掲を問わず、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0057】
組織修復・シーリングデバイス
低侵襲手術(MIS)手技中に生じる組織フェネストレーションを含む組織フェネストレーションを修復およびシールするために当該分野において現在利用可能なデバイスおよび技術にまさる予想外の驚くべき利点を示す組織修復・シーリングデバイスが本明細書中に提供される。操作の際、本開示の組織修復・シーリングデバイスは、(1)移植片サブアセンブリを組織内表面上に配置し、(2)展開可能な留め具を組織外表面上に配置して、移植片を組織内表面に固定し、それにより、組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成する。
【0058】
ある特定の実施形態内において、本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスは、(1)近位端および遠位端を有する留め具保持・解放部材を備えるアプリケーターアセンブリであって、その留め具保持・解放部材は、近位端および遠位端を有するアプリケーターシャフトに移動可能に取り付けられている、アプリケーターアセンブリ、および(2)展開可能な留め具の幾何学的中心(重心としても知られる)にまたはその近傍における中央カプラーを介して展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリの幾何学的中心にまたはその近傍に固定して取り付けられた移植片サブアセンブリを有する着脱可能な移植片・留め具アセンブリを動作可能な組み合わせで備える。
【0059】
本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスのある特定の実施形態は、中央カプラーと、着脱可能な移植片・留め具アセンブリの幾何学的中心またはその近傍にその中央カプラーから広がる複数の半径方向ストラットまたはスポークを有する展開可能な留め具とを有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリを使用する。これらの実施形態のある特定の態様において、着脱可能な移植片・留め具アセンブリは、アプリケーターシャフトの近位端において中央カプラーを介してアプリケーターアセンブリに取り付けられる。さらなる態様において、そのデバイスは、留め具保持・解放部材をアプリケーターシャフトに沿ってその遠位端に向かって摺動させ、それにより、保持・解放部材から留め具を解放することによって、展開される。なおもさらなる態様内において、そのデバイスが展開されたら、留め具は、移植片を組織内表面に固定し、留め具を組織外表面に固定して、組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成する。
【0060】
操作の際、本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスは、(1)移植片サブアセンブリを組織内表面上に配置すること、および(2)展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを組織外表面上に配置することを可能にする。使用前に、着脱可能な移植片・留め具アセンブリは、アプリケーターシャフトの近位端において中央カプラーを介してアプリケーターアセンブリに取り付けられる。展開可能な留め具の半径方向スポークまたはストラットは、移植片サブアセンブリから離れて折り畳まれ、留め具保持・解放部材の近位端に挿入されて、展開可能な留め具が適所に保たれる。移植片サブアセンブリは、アプリケーターアセンブリを使用して、組織フェネストレーションを通って挿入され、展開可能な留め具・カプラーアセンブリが、フェネストレーションを有する組織の外側のままで、組織内表面上に配置される。組織修復・シーリングデバイスは、留め具保持・解放部材をアプリケーターシャフトの遠位端に向かって移動させて、展開可能な留め具を解放することによって展開され、それにより、展開可能な留め具が開き、組織外表面に圧力をかけ、移植片サブアセンブリを組織内表面に固定し、それにより、組織フェネストレーションを迅速に修復し、耐圧水密シールを確実に形成することが可能になる。
【0061】
MIS手術において遭遇する特異的な技術的問題に対処する組織修復・シーリングデバイスのさらなる改変が本明細書中に記載される。これらには、(1)移植片サブアセンブリおよび展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリのサイズおよび形状の変更、(2)移植片サブアセンブリおよび展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリのために使用される材料の変更、(3)移植片が、アプリケーターシャフトに対して垂直ではないような向きにされることにより、移植片の挿入中のフェネストレーションの視線可視化を改善できるような、連結部品の回転、(4)内視鏡的または経皮的手技において組織修復・シーリングデバイスの使用を可能にする配置(例えば、円錐形の移植片エレメント、およびガイドワイヤーを収容するためのチャネルを有する可撓性アプリケーターアセンブリの使用)、および(5)適用部位において連続的な薬物送達を提供するために移植片部品の代わりにまたはそれと組み合わせて薬物溶出マトリックス材を組み込むことが含まれる。
【0062】
カプラーから半径方向に広がる複数の可撓性のスポークまたはストラットを有する展開可能な留め具を備える展開可能なデバイスが、本明細書中に例証され、ここで、その展開可能な留め具は、組織内表面上に配置された移植片および組織外表面上に配置された留め具を固定し、それにより、組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成するのに適した生物物理的特性、サイズ、形状および寸法を示す。
【0063】
図1は、本開示の1つの実施形態に係る例示的な組織修復・シーリングデバイスを図示している。
図1Aには、近位端37および遠位端39を有する留め具保持・解放部材35を備えるアプリケーターアセンブリ20が示されており、ここで、留め具保持・解放部材35は、近位端27および遠位端29を有するアプリケーターシャフト25に摺動可能に接続されている。
図1Bには、移植片サブアセンブリ55および展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65を備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50が示されており、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65は、着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50をアプリケーターシャフト25の近位端27においてアプリケーターアセンブリ20に取り付けるための中央カプラー67、および半径方向スポークまたはストラット77を備える。
【0064】
図1に示されている着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50は、移植片サブアセンブリ55を組織内表面上に配置し、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65を組織外表面上に配置するように構成されている。これらの実施形態に係る組織修復・シーリングデバイスは、留め具保持・解放部材35をアプリケーターシャフト25の遠位端29に向かって摺動させて、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65を留め具保持・解放部材35の近位端37から解放することによって展開され、展開可能な留め具を介して移植片サブアセンブリ55を組織内側表面に、およびカプラーのサブアセンブリ65を組織外側表面上に固定することにより、組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成する。
【0065】
図1に示される実施形態のある特定の態様において、アプリケーターシャフト25は、扁平、銃剣状(bayonetted)および/または円筒状のアプリケーターシャフトである。
図1に示される実施形態の他の態様において、留め具保持・解放部材35は、近位端37および遠位端39を有する円筒状の留め具保持・解放部材であり、ここで、近位端37は、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65を受け取り、折り畳まれた配置で保持するように構成されている(
図3に示されている)。
図1に示される実施形態のさらなる態様において、移植片サブアセンブリ55は、一体化した移植片を備える。
図1に示される実施形態のなおもさらなる態様において、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65は、1つまたはそれを超える生体吸収性材料から製作される。
【0066】
使用の際、移植片サブアセンブリは、組織フェネストレーションのサイズおよび周囲組織の物理的特色(例えば、もろい性質)の視覚的評価に基づいて選択される。移植片サブアセンブリ55は、組織フェネストレーションを通って、組織バリアの内側の空間に挿入され、組織内表面に対して引き戻される。展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65は、留め具保持・解放部材35をアプリケーターシャフト25の遠位端29に向かって摺動させることによってアプリケーターアセンブリ20から解放され、それにより、組織外表面と接触し、移植片サブアセンブリ55を組織内表面に固定することにより、組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成する。
【0067】
図2は、例示的な着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50の構成部品の空間配置を図示しており、ここで、移植片サブアセンブリ55は、その中心59において、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65に、中央カプラー67の近位側69において固定して取り付けられる。
図2には、例示的な着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50のある特定の態様が示されており、それは、中央カプラー67の近位端69から半径方向に広がる複数のストラットまたはスポーク77であって、各々が移植片57の内表面と接触し、必要に応じて、移植片サブアセンブリ55の外縁を越えて広がる複数のストラットまたはスポーク77を有する展開可能な留め具を備える展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65を備えるが、これに限定されない。
【0068】
図3Aは、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65(
図1および
図2に記載)の半径方向ストラットまたはスポーク77の、留め具保持・解放部材35の近位端37における保持を図示している。展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65は、中央カプラー67の遠位側71から半径方向に広がる複数の半径方向ストラットまたはスポーク77の各々において折り畳まれる。展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65の折り畳まれた半径方向ストラットまたはスポーク77は、留め具保持・解放部材35の近位端37に挿入されることにより、組織修復・シーリングデバイスが展開されるまで、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65が折り畳まれた配置で保持される。
【0069】
図3B~3Eは、組織フェネストレーションを迅速に修復し、耐圧水密シールを形成するための、(a)アプリケーターシャフト25およびアクチュエータロッド45に移動可能に取り付けられた留め具保持・解放部材35を有するアプリケーターアセンブリ20、ならびに(b)
図1および
図2に図示されているような中央カプラー67および複数の半径方向ストラットまたはスポーク77を有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65に固定して取り付けられた移植片サブアセンブリ55を有する着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50を備える組織修復・シーリングデバイスの使用を図示している。
図3Bには、組織フェネストレーションを通って移植片サブアセンブリ55を挿入する前の組織修復・シーリングデバイスが示されている。組織修復・シーリングデバイスは、着脱可能な移植片・留め具アセンブリに取り付けられたアプリケーターアセンブリを備え、ここで、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリのストラットまたはスポーク77は、移植片サブアセンブリから離れて折り畳まれ、留め具保持・解放部材35の近位端に挿入されている。
【0070】
図3Cには、組織フェネストレーションを通って移植片サブアセンブリ55を挿入した後の
図3Bの組織修復・シーリングデバイスが示されている。移植片サブアセンブリ55は、組織修復・シーリングデバイスを展開する前に、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリが、フェネストレーションを有する組織の外側に留まったままで、組織内表面上に配置される。
【0071】
図3Dには、アクチュエータロッド45を使用して、留め具保持・解放部材35をアプリケーターシャフト25の遠位端29に向かって摺動させることにより、展開可能な留め具のストラットまたはスポーク77を解放することによる、組織修復・シーリングデバイスの展開が示されている。
【0072】
図3Eには、着脱可能な移植片・留め具アセンブリをアプリケーターアセンブリから分離し、展開可能な留め具・カプラーアセンブリを組織外表面に接して配置して、移植片サブアセンブリを組織内表面に固定することにより、組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成する様子が示されている。
【0073】
図3Fおよび
図3Gは、25~50ミクロンの解像度を有する3D光造形(SLA)プリンターを用いてポリグリコール酸から製作された、
図3A~3Eに示される実施形態に係る例示的な展開可能な留め具・カプラーのプロトタイプの写真である。
図3Fは、ストラットまたはスポーク77を開いた配置で有する展開可能な留め具65および中央カプラー67のプロトタイプを示しており、
図3Gは、留め具保持・解放部材の近位端への挿入のために複数の半径方向ストラットまたはスポーク77が折り畳まれた、閉じた配置の展開可能な留め具・カプラー65を示している。
【0074】
図4は、中央カプラー67が、複数の半径方向ストラットまたはスポーク77を有する展開可能な留め具75に回転可能に取り付けられるように構成されていることにより、移植片サブアセンブリ55の角回転が可能になる、本明細書中に開示される様々な組織修復・シーリングデバイスの自由選択の態様を図示している。
図4Bに示されている1つの例示的な態様において、中央カプラー67は、着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50を回転させるために、MIS手技(アクセスおよび可視性が制約されている)中に必要とされ得るような、アプリケーターアセンブリ20(
図4A)のアプリケーターシャフト25に対してある範囲の角度にわたって着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50の向きを定めることを可能にする、ボールおよびソケット配置で製作されている。
【0075】
図5は、大口径針の穿刺または経皮的瘻造設術の部位を塞ぐための外科手技(例えば、腰椎穿刺および胃瘻造設術)において使用するように構成されている本開示の組織修復・シーリングデバイスの実施形態を図示している。
図5Aには、(a)アプリケーターシャフト25および移動可能に取り付けられた留め具保持・解放部材35を有するアプリケーターアセンブリ20、ならびに(b)展開可能な留め具・カプラーアセンブリ65に固定して取り付けられた移植片サブアセンブリ55を有する着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50を備える組織修復・シーリングデバイスが示されており、ここで、移植片57は、円錐形の閉鎖栓移植片であり、アプリケーターシャフト25は、可撓性材料から製作されており、アプリケーターシャフト25、中央カプラー67および移植片57は、ガイドワイヤーを収容する中心チャネル123を備えて構成されている。ある特定の態様において、円錐形の閉鎖栓移植片57は、生体吸収型材料を含む。
図5Bには、円錐形の閉鎖栓移植片57が、組織内表面上に配置され、展開可能な留め具75の半径方向ストラットまたはスポーク77が、組織外表面上に配置されることにより、組織外表面に対して圧力をかけ、円錐形の閉塞移植片57を固定し、それにより、組織フェネストレーション(すなわち、穿刺傷または瘻造設術部位)を修復し、耐圧水密シールを形成する、
図5Aに示される実施形態に係る組織修復・シーリングデバイスの展開が示されている。
【0076】
図6は、本明細書中に開示される様々な組織修復・シーリングデバイスの自由選択の態様を図示しており、ここで、着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50は、移植片57に固定して接着されたフォームリング61を含む移植片サブアセンブリ55を備えており、フォームリング61は、組織フェネストレーションを通って挿入している間、移植片57が折り畳まれるのを可能にするに十分な可撓性を有し、かつ組織内表面上に配置するために組織フェネストレーションを通り抜けた後、移植片57が開くのに十分な剛性を有する。本開示のいくつかの態様において、フォームリング61は、生体吸収性材料を含む。
【0077】
図7は、
図1~4および6を含む本明細書中に示される組織修復・シーリングデバイスの自由選択の態様を図示しており、その組織修復・シーリングデバイスは、アプリケーターアセンブリ20(
図7A)および着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50(
図7B)を備え、アプリケーターアセンブリ20は、近位端47および遠位端49を有するアクチュエータロッド45をさらに備え、そのアクチュエータロッド45は、その近位端47において留め具保持・解放部材35の遠位端39に取り付けられている。操作の際、アプリケーターシャフト25の遠位端29を通り越して伸びるアクチュエータロッド45は、展開可能な留め具75の半径方向スポークまたはストラット77(
図3に示されているような)が、着脱可能な移植片・留め具アセンブリのかなり遠方から、留め具保持・解放部材35の近位端37から解放されるのを可能にする。
【0078】
図8は、
図1~4および6~7を含む本明細書中に示される組織修復・シーリングデバイスの自由選択の態様を図示しており、その組織修復・シーリングデバイスは、アプリケーターアセンブリ20(
図8A)および着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50(
図8B)を備え、着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50は、移植片57に固定して接着されたフォームリング61を含む移植片サブアセンブリ55を備え、フォームリング61は、組織フェネストレーションを通って挿入している間、移植片57が折り畳まれるのを可能にするのに十分、かつ組織内表面上に配置するために組織フェネストレーションを通り抜けた後、移植片57が開く(
図3B~3Eに示されているように)のを可能にするのに十分な、形状記憶および超弾性の特色を有し、移植片57は、組織内表面への移植片57の接着を改善するためにフォームリング61を越えて広がっている。
【0079】
図9は、移植片57の内表面91に固定して接着されたフォームリング61を備える例示的な移植片サブアセンブリ55の構成部品の空間配置を図示している。例示的なフォームリング61が、リング安定化部材62および移植片安定化突起63と組み合わせて示されている。その例示的な移植片サブアセンブリ55には、移植片安定化突起63が突出するオリフィス60が示されている。
【0080】
図10は、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65に取り付けられる移植片サブアセンブリ55(
図9に示されているような)を備える例示的な着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50の構成部品の空間配置を図示している。
図10に示されているように、移植片サブアセンブリ55は、内表面においてフォームリング61、フォームリング安定化部材62および移植片安定化突起63に固定して接着された移植片57を備える。この例示的な着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50では、移植片57は、組織内表面との接触および接着を改善するためにフォームリング61の外周部を越えて広がっている。中央カプラー67の近位側69から広がる複数の半径方向スポークまたはストラット77を有する展開可能な留め具75を有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65が示されている。展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65は、中央カプラー67(
図11に示されている)の近位側69において移植片安定化突起63を介して移植片サブアセンブリ55に固定して付く。
【0081】
図11は、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65の中心を、
図10に示されているような移植片安定化突起63において、移植片サブアセンブリ55の中心に取り付けるための中央カプラー67の近位側69における凹部70を示している展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65の図を示している。
【0082】
図12は、移植片サブアセンブリ55(フォームリング61またはリング安定化部材62を有するまたは有しないもの)と、中央カプラー67および中央カプラー67から半径方向に広がる複数の半径方向スポークまたはストラット77を有する展開可能な留め具75を備える展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65とを備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50の代表的な配置を図示している。移植片サブアセンブリ55および展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65の作製において使用される様々なサイズ、形状および材料のおかげで、着脱可能な移植片・留め具アセンブリの選択が可能になり、ここで、移植片サブアセンブリ55は、組織フェネストレーションを安全に通り抜けることができ、組織内側表面上の欠損部を完全に覆うことができ、望ましい生体吸収能、薬物溶出、ならびに組織フェネストレーションを修復するためおよび耐圧水密シールを形成するための他の生物物理的特性を示すことができる。
【0083】
移植片サブアセンブリ55および展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65において使用されるサイズ、形状および材料を問わず、着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50は、アプリケーターシャフト25の近位端27においてアプリケーターアセンブリ20に交換可能に取り付けられるようにデザインされており、着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50の各々は、アプリケーターアセンブリ20(本明細書中に描かれるような)の留め具保持・解放部材35によって保持されるように、およびアプリケーターアセンブリ20を展開したとき、着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50が留め具保持・解放部材35から解放されるように、構成されている。
【0084】
着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50が交換可能であること(interchageability)により、外科医が、外科手技中に移植片サブアセンブリ55を組織内表面上に配置し、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65を組織外表面上に配置した時に、所与の組織フェネストレーションを修復するための様々な移植片サブアセンブリの配置の適合性を迅速に評価するのが可能になることが、当業者によって理解されるだろう。
【0085】
図13は、種々の異なる組織内の様々なサイズの組織フェネストレーションを迅速に修復し、それにより、耐圧水密シールを確実に形成するために移植片サブアセンブリ55を組織内表面に固定する際に使用するための展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65の最適化を可能にするために、複数の半径方向スポークまたはストラット77(例えば、6つの半径方向スポークまたはストラットから12個の半径方向スポークまたはストラットまでの範囲)を有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65を備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50の様々な自由選択の配置を図示している。
【0086】
図13Aは、(1)移植片57を有する移植片サブアセンブリ55(フォームリング61またはリング安定化部材62を有するまたは有しないもの)、および(2)中央カプラー67と、6つの半径方向スポークまたはストラット77を有する展開可能な留め具75とを有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65を備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50を図示している。
【0087】
図13Bは、(1)移植片57を有する移植片サブアセンブリ55(フォームリング61またはリング安定化部材62を有するまたは有しないもの)、および(2)フェネストレーションを有する組織の内側と外側とでコンパートメント間に大きな圧力差がある状況において必要とされ得るような、移植片57を組織内表面に固定するとき、展開可能な留め具75が発揮する力を高める12個の半径方向スポークまたはストラット77を有する展開可能な留め具75と中央カプラー67とを有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65を備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50を図示している。
【0088】
図13Cは、(1)移植片57を有する移植片サブアセンブリ55(フォームリング61またはリング安定化部材62を有するまたは有しないもの)、および(2)6つの半径方向スポークまたはストラット77を有する展開可能な留め具75と中央カプラー67とを有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65を備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50を図示しており、ここで、半径方向スポークまたはストラット77の各々は、フェネストレーションを有する組織が、付着部位においてもろいかまたは複数のフェネストレーションを示すとき必要とされ得るような、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65の安定性を改善する横方向延長部分79をさらに備える。
【0089】
図13Dは、(1)移植片57を有する移植片サブアセンブリ55(フォームリング61またはリング安定化部材62を有するまたは有しないもの)、および(2)6つの半径方向スポークまたはストラット77を有する展開可能な留め具75と中央カプラー67とを有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65を備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50を図示しており、ここで、半径方向スポークまたはストラット77の各々は、フェネストレーションを有する組織が、付着部位においてもろいかまたは複数のフェネストレーションを示すとき必要とされ得るような、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65の安定性を改善する2~6つの複数の横方向延長部分79をさらに備える。
【0090】
図14Aは、(1)移植片57を有する移植片サブアセンブリ55(フォームリング61またはリング安定化部材62を有するまたは有しないもの)、および(2)6つの半径方向スポークまたはストラット77を有する展開可能な留め具75と中央カプラー67とを有する展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65を備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50を図示しており、ここで、半径方向スポークまたはストラット77の各々は、下にある組織への当該構築物の接着を改善するために、太さが太くなるように、移植片サブアセンブリ55から離れて湾曲するように、および半径方向スポークまたはストラット77の各々における遠位端80に返し81を含むように、製作されている。
図14Bは、アーチ形のスポークまたはストラットおよび硬膜ロックチャネルを備え、PLGA、または表1に示される所望の機械的特性のうちの1つまたはそれを超える特性を示す他の好適な生体適合性および/もしくは生体吸収性(bioresormable)の材料から製作され得る、着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50(
図14Aに図示されているような)のCAD図面である。半径方向スポークもしくはストラット77の太さの増大および湾曲ならびに/または返し81の追加は、フェネストレーションを有するコラーゲンの少ない(less collatenous)組織(例えば、腸粘膜)(この組織では、湾曲したストラットが、組織外表面に対してより大きな圧力をかけ、返し81によって、半径方向スポークまたはストラット77のストラット先端が適用部位の組織をわずかに穿通することが可能になる)において有益に採用され得ることが当業者によって認識されるだろう。
図14Cは、3Dプリンターを使用してPLGAを用いて製作された、例示的な着脱可能な移植片・湾曲留め具アセンブリ50である。
【0091】
図15は、自己組織移植片を使用すること、または手術時に組織修復・シーリングデバイスにおける他の非剛性の天然または合成の移植片材料を置換することを可能にする、本開示の代替の実施形態に係る例示的な移植片サブアセンブリ55の構成部品の空間配置を図示している。非剛性移植片、特に、自己移植片の場合、フェネストレーションを有する組織の内表面に接して移植片57を正確に配置すること、および開口部全体を完全に覆うことは、困難であり得、移植片57はフェネストレーションを通過した後、折り畳まれ得るかまたは変形し得る。
【0092】
この実施形態のある特定の態様内において、移植片サブアセンブリ55は、中央カプラー67を受けるために、幾何学的中心にまたはその近傍に、中心オリフィス60を有する移植片57を備える。移植片57は、その内表面91の全体にわたってフォームリング61に取り付けられ、そのフォームリング61は、複数のリング安定化部材62を備え、(1)その各々が、中央カプラー67から半径方向に広がり、(2)その各々が、その遠位端に移植片安定化突起64を有する。フォームリング61は、組織フェネストレーションを通り抜ける間、移植片57が折り畳まれるのを可能にするのに十分な可撓性、および移植片57が組織内表面上に配置されるために元の平らな形状に戻るのに十分な剛性を有することが理解されるだろう。
【0093】
図16は、本開示の代替の実施形態に係る例示的な着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50のある特定の態様の構成部品の空間配置を図示しており、ここで、第2のフォームリング61には、その内側の外周に沿って複数の移植片安定化突起アラインメントリング68が半径方向に配置されており、その第2のフォームリング61は、フォームリング61から突出していて移植片57の内表面91に付着される移植片安定化突起64を受けるように、移植片57の外表面92の上に配置される。
【0094】
図17は、本開示の代替の実施形態に係る例示的な着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50のある特定の態様の構成部品の空間配置を図示しており(
図15および16を参照のこと)、ここで、展開可能な留め具75は、中央カプラー受けリング95と、各々が中央カプラー受けリング95から広がる遠位端80を有する複数の半径方向スポークまたはストラット77とを備える。
【0095】
図15~17に示されている着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50は、外科手技の経過中に、1つの移植片57(例えば、自己、同種、異種または合成の移植片材料を含む第1の移植片57)を第2の移植片57(例えば、自己、同種、異種または合成の移植片材料を含む第2の移植片57)で置換することが望ましいそれらの臨床適用において、本開示の組織修復・シーリングデバイスの形で特定の有用性が見出される。自己移植片は、例えば、外科手技と同時に収集される患者組織を含み得る。したがって、移植片サブアセンブリ55は、患者の筋膜、頭蓋骨膜、粘膜または皮膚から収集された組織から製作された移植片57を使用し得る。あるいは、移植片57は、臨床の状況に従って、自己移植片に対して説明される方法によってそのデバイスにおいて置換され得る同種、異種または合成の移植片材料を含み得る。
【0096】
使用の際、移植片57は、円形に切断され、移植片57の中心を通る中央カプラー67の通路を収容するために中心オリフィス60を有するように形成される。次いで、その移植片は、その内表面91の外周において、複数の移植片安定化突起64を備えるフォームリング61に取り付けられる。複数の移植片安定化突起アラインメントリング68を備える第2のフォームリング61が、その外周に沿って移植片の外表面92に取り付けられる。次いで、変形可能な留め具75が、第2のフォームリング61の上に配置されることにより、変形可能な留め具75が、中央カプラー受け部材101において中央カプラー67に固定される。
【0097】
図18は、アプリケーターアセンブリ20への取り付けおよび留め具保持・解放部材35での結束に備えた、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65の中央カプラー受け部材101から近位端において広がる半径方向スポークまたはストラット77の折り畳みを図示している。
【0098】
図19は、体腔内、血管内、管腔内、または他の身体内の構造内の体液、組織または空間に連続的な薬物送達を提供するように構成されている本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスの代替の実施形態の模式図である。この実施形態において、移植片57は、薬物溶出マトリックス(例えば、薬物もしくは作用物質を組織内表面に送達するためおよび/またはそのマトリックスと接触した血液、体液もしくは組織実質に連続的に放出するための生体吸収性薬物溶出マトリックス)で取って代わられているか、またはそれを組み込んでいる。
【0099】
図20は、移植片アセンブリ55の実施形態を図示しており、ここで、移植片57は、複数の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤー64を含み、そのワイヤーは、形状記憶および超弾性の特色を示すことにより、移植片57が、折り畳まれる前の状態に開く能力を保持しつつ、その金属または金属合金の折り畳みを可能にする。
図20Aは、複数の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤー64が中央カプラー67から半径方向に広がる、この実施形態の1つの態様を図示している。
図20Bに示されているように、複数の半径方向の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤー64は、移植片57が中央カプラー67から離れて傘またはパラソルの配置で折り畳まれるのを可能にする。
図20Cに示されているように、複数の半径方向の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤー64は、留め具保持・解放部材35に挿入するために直径を小さくするためにらせん状の配置で移植片57をさらに(または代替的に)折り畳むことも可能にする。
【0100】
図21Aは、(a)アプリケーターシャフト25、細長い留め具保持・解放部材35およびアクチュエータロッド45を有するアプリケーターアセンブリ20が、(b)移植片サブアセンブリ55および展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65を有する着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50に接続された、本開示の組織修復・シーリングデバイスを図示している。この実施形態によると、着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50は、
図20に示されているような移植片アセンブリ55を使用し、ここで、移植片57は、複数の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤー64を含み、そのワイヤーは、形状記憶および超弾性の特色を示すことにより、折り畳まれる前の状態に開く能力を保持しつつ、その金属または金属合金の折り畳みを可能にする。
図21Bは、半径方向ストラットまたはスポーク77と移植片サブアセンブリ55との両方が折り畳まれ、留め具保持・解放部材35に挿入されている
図21Aの組織修復・シーリングデバイスを図示している。
図21Cは、半径方向の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤー64がらせん状の配置をとれるような折り畳みによる移植片サブアセンブリ55のさらなる圧縮を図示しており、これは、組織バリアの下の空間が限られている組織のフェネストレーションの修復に有益である。
【0101】
1.組織修復・シーリングデバイスにおいて使用するための移植片
ある特定の態様内において、本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスは、着脱可能な移植片・留め具アセンブリに直接組み込まれた(すなわち、「一体化した」)移植片、または本明細書中に記載されるようなフォームリングを用いて手術時に置換される移植片を備える。本開示に係る組織修復・シーリングデバイスは、着脱可能な移植片・留め具アセンブリをアプリケーターアセンブリに対して垂直の配向で維持する固定された中央カプラーを採用し得るか、または組織フェネストレーションおよび近くの構造の可視性の向上において使用するために、アプリケーターアセンブリを基準とした着脱可能な移植片・留め具アセンブリの移動を可能にする調整可能な中央カプラーを採用し得る。
【0102】
本明細書中で使用されるとき、用語「移植片」とは、一般に、好適な生物物理学的特性を示し、組織内表面への接着、組織フェネストレーションの修復および耐圧水密シールの形成にとって適切なサイズ、形状および他の寸法である、組織、膜、メッシュ、マトリックスなどのことを指す。「移植片」は、動物の器官組織および組織バリアなどの天然起源に由来することがあり、移植片には、レシピエントからの組織に対して規定の遺伝的関係を示すドナーからの組織、例えば、自家移植片(患者から得られた組織)、同系移植片(一卵性双生児から得られた組織)、同種移植片(別の人物から得られた組織)または異種移植片(非ヒト動物種から得られた組織)が含まれる。そのような天然起源からの移植片は、自己、同種または異種の移植片であり得、1つまたはそれを超える合成材料を組み込んでいてもよい。
【0103】
本明細書中で使用されるとき、用語「合成メッシュ」とは、ポリ(エチレンテレフタレート)(Dacron(登録商標)としても知られる)または延伸ポリテトラフルオロエチレン(expanded polytetrafluorethylene)(ePTFE,Goretex(登録商標))を含む、Patera and Schoen,Biomaterials Science pp.470-494(Elsevier Academic Press,San DEieto,CA(2004))に記載されている、非生物材料で作られた移植片のことを指す。「合成メッシュ」は、永続性の性質であることが多く、生体吸収を起こさず、慢性炎症および異物反応、硬度および線維症ならびに感染と関係がある。Schmatz,Cureus 10(1):e2127(2018)には、FDAの承認を受けた合成の生体吸収性移植片材料を用いた手術経験に関する報告が提供されている。
【0104】
本明細書中で使用されるとき、用語「生物学的メッシュ」とは、動物組織、通常、ヒトまたはブタの真皮に由来し、コラーゲンおよびエラスチンの無細胞性の多孔性細胞外マトリックス骨格に加工された移植片のことを指す。「生物学的メッシュ」は、内皮細胞および線維芽細胞を誘引する、起源組織由来の成長因子を含むことが多く、他の構造細胞の遊走をシグナル伝達するさらなる化学誘引物質を放出する。「生物学的メッシュ」の3次元性および多孔度により、細胞(主に線維芽細胞および炎症細胞)が、メッシュに侵入し、接着し、その生物学的メッシュの分解および宿主組織によるコラーゲン骨格の再生からなるリモデリングサイクルを起こすことが可能になる。この分解と再構築のプロセスのバランス、およびそのプロセスが起きる速度は、修復される組織の最終的な強度および構造に影響する。「生物学的メッシュ」は、移植片の硬さを増大させるために架橋され得るが、通常、架橋されていない生物学的メッシュでは、より大きな細胞浸潤が観察される。架橋はまた、コラーゲンの分解を防止でき、マクロファージの遊走(感染リスクをもたらし、高める)を阻害できる。
【0105】
本明細書中で使用されるとき、用語「硬膜代替物」とは、CSF漏出を防止し、手術後に硬膜の開口部の治癒を可能にするために、患者の組織を吸収し、その組織上で一体化することによって、硬膜組織のフェネストレーションをシールする際に使用するための、合成のまたは生物学的な、移植片のことを指す。本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスにおいて有益に使用され得る「硬膜代替物」としては、処理されたウシ腱から製造される、引張り強さが高い、コラーゲンベースの生体適合性材料であるDuraform(登録商標)硬膜移植片インプラント(Natus,Medical Inc.,Middleton,WI);ブタ小腸粘膜下層(SIS)由来の天然の細胞外マトリックス(ECM)を採用しているBiodesign(登録商標)Dural Graft and Duraplasty graft(Cook Medical,Bloomington,IN);コラーゲンマトリックスであるDuraGen(登録商標)Matrix(Integra LifeSciences,Princeton,NJ);合成の吸収性材料であるCerafix dural graft(登録商標);不活性なエラストマーのフルオロポリマー(fluropolymer)(ePTFE)であるPRECLUDE Dura Substitute(登録商標):吸収性コラーゲン二重層であるLyoplant Onlay Graft(登録商標):微多孔性フリースであるNeuro-Patch Dural Graft(登録商標);PGAが積層された共重合体膜であるSEAMDURA(登録商標);およびタイプIIIウシ胎仔組織に由来する非合成コラーゲンマトリックスであるDurepair(商標)Regeneration Matrix(Medtronic,Minneapolis,MN)が挙げられる。
【0106】
本明細書中で使用されるとき、用語「薬物溶出移植片」とは、制御された限局性の薬物放出を提供するために薬物溶出マトリックスを組み込んでいる移植片材料のことを指す。Han and Lelkes,Focal Controlled Drug Delivery,Advances in Delivery Science and Technology(Springer,Boston,2014).
本明細書中で使用されるとき、用語「非吸収性」とは、身体によって分解および吸収されないがゆえに、長期的な構造的用途を意図した材料のことを指す。「非吸収性」材料には、植え込み型のポリマー、例えば、ポリエチレンおよびポリケトン(PEEK)、相純度の高いβリン酸三カルシウム(TCP)およびヒドロキシアパタイト(HA)が含まれる。
【0107】
1つの実施形態において、支持のない移植片材料は、組織の欠損部を通過できるほど十分に可撓性であるだけでなく、配置中にその形状を保持できるほど十分に堅い。別の実施形態では、移植片5の外周に結合された薄い生体吸収性フォームリングが存在し、そのフォームリングは、その欠損部の通過中に変形し、その後、組織の内表面上で元の形状に戻れるほど十分に可撓性である。アプリケーターシャフトの着脱を可能にする連結部品6が移植片の中心に取り付けられる。
【0108】
これらの実施形態に係るある特定の展開可能なデバイスにおいて、展開可能な留め具は、可撓性で屈曲性の圧縮性材料から製作される。さらなる態様内において、その可撓性で屈曲性の圧縮性材料は、生体吸収性材料、例えば、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド-co-D,Lラクチド(PDLLA)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリラクチド-co-カプロラクトン(PLCL)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)およびポリラクチド-co-トリメチレンカーボネート(PL-TMC)からなる群より選択される1つまたはそれを超える生体高分子をはじめとした1つまたはそれを超える生体高分子を含む生体吸収性材料である。
【0109】
複数の可撓性のスポークまたはストラットがカプラーから半径方向に広がる展開可能な留め具を備える展開可能なデバイスが本明細書中に例証され、ここで、その展開可能な留め具は、組織内表面上に配置された移植片および組織外表面に配置された留め具を固定することにより、組織フェネストレーションを修復し、耐圧水密シールを形成するのに適した生物物理的特性、サイズ、形状および寸法を示す。
【0110】
これらの実施形態に係るある特定の展開可能なデバイスにおいて、移植片は、可撓性で屈曲性の堅い圧縮性材料を含む。これらの実施形態のいくつかの態様において、移植片は、形状記憶および超弾性の特色を示す。これらの実施形態に係る移植片は、展開可能な留め具と組み合わせて使用される場合、その移植片が組織内表面上に配置され、展開可能な留め具を用いて組織外表面上に固定されるとき、組織フェネストレーションの修復および耐圧水密シールの形成のために好適に使用される。
【0111】
ある特定の態様において、これらの実施形態に係る移植片は、自家移植片、同系移植片、同種移植片または異種移植片であり得る。他の態様において、その移植片は、組織、膜、メッシュ、マトリックスを含む。さらなる態様において、その移植片は、自己、同種または異種の材料である材料を含む。さらに他の態様において、その移植片は、ポリ(エチレンテレフタレート)および延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTF)からなる群より選択される1つまたはそれを超える合成材料をはじめとした1つまたはそれを超える合成材料を含む。なおもさらなる態様において、移植片は、動物組織、例えば、ヒト組織、ウシ組織およびブタ組織からなる群より選択される動物組織または真皮および腸からなる群より選択される動物組織に由来する材料を含む。これらの実施形態に係る移植片は、コラーゲン、エラスチンおよび必要に応じて成長因子の無細胞性の多孔性細胞外マトリックス骨格を含み得る。いくつかの態様において、これらの実施形態に係る移植片は、細胞が進入すること、接着すること、およびリモデリングのサイクルを起こすことを可能にするのに十分な多孔度を有するメッシュを含む。
【0112】
他の態様において、これらの実施形態に係る移植片は、1つまたはそれを超える生体高分子(例えば、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド-co-D,Lラクチド(PDLLA)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリラクチド-co-カプロラクトン(PLCL)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)およびポリラクチド-co-トリメチレンカーボネート(PL-TMC)からなる群より選択される生体高分子)を含む(comprsing)生体吸収性材料をはじめとした生体吸収性材料である、可撓性で屈曲性の堅い圧縮性材料から製作されている。
【0113】
さらなる態様において、これらの実施形態に係る移植片は、硬膜代替物、例えば、Duraform(登録商標)硬膜移植片インプラント、Biodesign(登録商標)Dural Graft、DuraGen(登録商標)Matrix、Cerafix dural graft(登録商標)、PRECLUDE(登録商標)、Lyoplant Onlay Graft(登録商標)、Neuro-Patch Dural Graft(登録商標)、SEAMDURA(登録商標)およびDurepair(商標)Regeneration Matrixからなる群より選択される硬膜代替物を含む。
【0114】
本明細書中に記載されるデバイスおよび方法は、身体内の複数の組織の直視的、経皮的または内視鏡的な修復およびシーリングに適用され得る。さらに、本明細書中に記載されるデバイスおよび方法は、フェネストレーションを有する組織の性質、状態および外科的露出に特異的な問題に対処するように改変され得、それらとしては、留め具の材料および配向の変更、手術中に異なる移植片材料による置換を可能にする部品、移植片-留め具ユニットのサイズおよび形状の変更、ならびにガイドワイヤーありまたはなしで可撓性アプリケーターを使用した穿刺傷または造瘻部の経皮的または内視鏡的な修復およびシーリングが挙げられる。
【0115】
修復・シーリングデバイスを使用する前に、展開可能な留め具は、折り畳まれ、摺動可能に取り付けられた留め具保持・解放部材に挿入される。フェネストレーションを有する組織の組織内表面上に移植片を配置し、組織外表面上に留め具を配置したら、留め具保持・解放部材をアプリケーターシャフトに沿ってその遠位端に向かって摺動させることによって、デバイスを展開する。デバイスが展開されると、留め具のストラットまたはスポークが、留め具保持・解放部材から解放され、フェネストレーションを有する組織の組織外表面と接触し、それにより、移植片および留め具を適所に固定して、組織フェネストレーションを修復し、水密シールを形成する。
【0116】
MIS手術において遭遇する特異的な技術的問題に対処する組織修復・シーリングデバイスのさらなる改変が本明細書中に記載される。これらには、移植片-留め具ユニットのサイズおよび形状の変更、視線およびアクセスを改善するように移植片をアプリケーターに対して配置することを可能にする連結デバイス(coupling devive)における回転式での取り付け、ストラットの材料および配置の変更、内視鏡的または経皮的手技において当該デバイスを使用するための可撓性アプリケーター・ガイドワイヤーチャネルの使用、ならびに移植片部品に薬物溶出マトリックス材を組み込むことによる適用部位での連続的な薬物送達の提供が含まれる。
【0117】
したがって、ある特定の実施形態内において、本明細書中に記載される組織修復・シーリングデバイスは、組織の修復およびシーリングの部位における体液および組織への連続的な薬物放出を提供する薬物溶出マトリックスを組み込む。
図19には、例示的な組織修復・シーリングデバイスが図示されており、ここで、移植片57が、体腔内、血管内、管腔内、または他の身体内の構造内の体液、組織または空間に連続的な薬物送達を提供するための生体吸収性薬物溶出マトリックスを組み込んでいるかまたはそれで置き換えられている。薬物溶出マトリックスを組織内表面上に配置することによって、多くのタイプの薬物または作用物質が、マトリックスと接触している血液、体液または組織実質に局所的に連続して放出され得る。そのデバイスは、上記のように剛性または可撓性であり得、直視下で、内視鏡によって、またはガイドワイヤーを用いた経皮的アプローチによって、通され得る。
【0118】
上記組織修復・シーリングデバイスは、薬物溶出マトリックス、または薬物溶出マトリックスを組み込む移植片を、組織内表面(硬膜、血管、食道壁、胃壁もしくは腸壁、膀胱壁、尿管、腹膜、胸膜、子宮、ファロピウス管、眼の強膜、滑膜、鼓膜、または実質臓器の莢膜から選択される組織を含むがこれらに限定されない)に固定する際に使用するように適合され得る。薬物溶出マトリックスに組み込まれる薬物は、組織バリアに包まれている体液または空間(血液、脳脊髄液、胃腸内容物、胸膜腔、腹膜腔、硝子体液、内耳、ファロピウス管または関節腔)に放出され、意図した治療効果を達成するために、薬物の性質、標的組織、および薬物溶出マトリックスの化学組成に基づいて所定の速度および濃度で薬物を分散するように作られ得る。
【0119】
ある特定の実施形態において、本明細書中に開示されるような組織修復・シーリングデバイスは、全身に分配するために動脈または静脈を介して血流に治療薬を連続的に送達するため、または全身分布を最小限に抑えつつ、下流組織において限局性の効果をもたらすためにインプラントから遠位の組織に供給する動脈の血流に治療薬を連続的に送達するため、または空洞内もしくは空間内の体液および/もしくは組織に治療薬を連続的に送達するために、有益に使用され得る。ある特定の適用において、放出された薬物は、薬物溶出マトリックスまたは薬物溶出マトリックスを含む移植片が固定された組織に対して局所的かつ直接的に作用し得る。したがって、本開示は、治癒を促進するため、局所的な細胞増殖(例えば、内膜増殖または過剰な瘢痕形成)を予防するため、局所麻酔を提供するため、受精を阻害するため、または感染を抗菌剤で処置するために、作用物質を局所送達する際に使用するための本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスの使用を企図する。いずれの実施形態の場合も、修復・シーリングデバイスおよび薬物マトリックスの生体吸収性の性質により、治療の終わりにデバイスを除去する必要が無くなり得る。
【0120】
本開示の組織修復・シーリングデバイスにおいて使用するために適合され得る薬物溶出マトリックスおよび移植片が、当該分野において説明されている。例えば、Alvarez-Lorenzo,Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 370:544(2019)(植え込み型のスマート薬物放出デバイスおよび材料を説明している);Concheiro,Advanced Drug Delivery Review 65(9):1188(2013)(薬物溶出医療機器において使用するための化学的に架橋され、移植されるシクロデキストリンヒドロゲルを説明している);Nie,Journal of Materials Chemistry 7:6515(2019)(骨軟骨(osteochondural)欠損修復の生物学的に作り出された軟骨-骨界面を含む一体化した移植片を説明している);Zilberman,299(Springer-Verlag 2010)(薬物溶出マトリックスおよび移植片を含む薬物溶出医療用インプラントを概説している);Zilberman,Journal of Controlled Release 130(3):202(2008)(薬物溶出マトリックスおよび移植片を含む抗生物質溶出医療機器を説明している);Zuckerman,Gels 6:9(2020)(シクロデキストリンヒドロゲルからの親和性ベースの放出を説明している);Richter,米国特許第7,048,714号(薬物放出のための拡張可能な部分を有する薬物溶出医療機器を説明している);Ding,米国特許第7,758,909号、Lye,米国特許出願公開第2005/0070989号およびFeng,米国特許出願公開第2008/0051881号(制御された薬物放出のための多孔性の表面/層を有する医療機器を説明している);Fennimore,米国特許第8,007,737号(薬物溶出医療機器における薬物の酸化および分解を防止するための酸化防止剤を説明している);Atanasoska,米国特許第8,815,273号(多孔性の層を有する薬物溶出医療機器を説明している);Jennings,米国特許第9,605,175号および米国特許第10,314,912号(医療機器において使用するためのポリマーコーティング組成物を説明している);Gemborys,米国特許第9,801,983号および米国特許第10,159,769号(生理活性物質を処置ポイントに送達するための医療機器を説明している);Speck,米国特許出願公開第2011/0295200号、Zilberman,米国特許出願公開第2016/0082161号およびHoffmann,米国特許出願公開第2011/0301697号(薬物溶出医療機器を説明している);Wong,PCT特許公開番号2006/135609(非対称性の薬物溶出血液透析移植片を説明している);Hanson,PCT特許公開番号2008/156487およびPeck,PCT特許公開番号2014/144188(組織への局所薬物送達のための薬物溶出移植片を説明している)を参照のこと。これらの科学論文および医学論文、特許ならびに特許公報の各々は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0121】
本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスとともに使用するための薬物溶出マトリックスおよび移植片は、1つまたはそれを超える薬物または治療薬を含み得、それらとしては、例えば、当該分野で周知かつ容易に入手可能な、抗感染薬、抗悪性腫瘍薬、生物製剤、心血管系薬剤、中枢神経系作用薬、凝固変更因子(coagulation modifiers)、消化器作用薬、泌尿生殖器作用薬、ホルモン、免疫学的作用物質および代謝性作用物質が挙げられる。
【0122】
2.組織修復・シーリングデバイスにおいて使用するための生体適合性材料
本開示の組織修復・シーリングデバイスは、天然材料または合成材料から構成される移植片を組織フェネストレーションの内表面上に配置するように構成されているいくつかの生体適合性および/または生体吸収性のエレメントを備え、配置時に、生分解性の留め具機構がその組織の外表面上に解放されることによって移植片が適所に固定される。詳細には、移植片が組織を通過し、その欠損部の内端を完全に覆うように配置された後、アプリケーター上の摺動性で円筒状の解放機構が、可撓性の生体吸収性留め具を解放して、その組織の外表面上に展開することにより、移植片が適所に固定され、その欠損部の速やかな水密修復およびシーリングが提供される。移植片-留め具ユニットは、着脱可能なアプリケーターシャフトを用いて適用され、そのアプリケーターシャフトは、移植片を配置する際には移植片-留め具ユニットに連結しており、その後、移植片が固定された後、取り外される。
【0123】
連結デバイスおよび留め具は、可撓性の生体吸収型(bioaborbable)材料から構成され、それは、必要とされる引張り強さの半径方向ストラットを適用することにより移植片を適所に固定するように、および移植片の治癒を可能にする時間にわたって完全に組織に吸収されるように、デザインされ得る。
【0124】
本明細書中で使用されるとき、用語「生体吸収性」とは、身体によって分解および吸収されるがゆえに、手作業で除去する必要のない材料のことを指す。生体吸収型材料としては、(1)金属またはその合金、通常、マグネシウムベースおよび鉄ベースの合金、ならびに(2)生体高分子およびその共重合体を含むポリマー、例えば、ポリラクチド(PLA)、ポリグリコリド(PGA)、ポリラクチド-co-D,Lラクチド(PDLLA)、ポリラクチド-co-グリコリド(PLGA)、ポリラクチド-co-カプロラクトン(PLCL)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリジオキサノン(PDO)、ポリラクチド-co-トリメチレンカーボネート(PL-TMC)が挙げられ、これらは、機械的な性能パラメータ、生体適合性および吸収率を満たすようにカスタマイズできる。
【0125】
生体吸収性材料は、射出成形、押し出し成形、圧縮成形および機械加工をはじめとした従来の製造方法によって加工され得る。これらのポリマーは、エレクトロスピニング、選択的レーザー焼結および溶融堆積モデリングなどの新規の製造方法においても使用され得る。
【0126】
良好な生体適合性を示し、代謝経路によって身体から排泄される分解産物を生成する、生体高分子が利用可能である。PLAベースの基材は、無毒性であり、細胞が分化して、例えば、細胞外マトリックス成分を生成することを可能にする。
【0127】
生体吸収性材料の機械的特性ならびに分解時間を延長する能力により、ポリラクチド(PLA)ポリ(ラクチド-co-グリコリド)(PLGA)およびポリ(L-ラクチド-co-D,Lラクチド)(PDLLA)が、特に有益な材料の選択肢となる。縫合糸アンカーと同様に、リン酸カルシウムの添加は、インプラントの適切な機能を可能にするのに十分遅い速度で吸収しつつ、骨成長の促進を助ける。生体吸収性ネジが完全に分解されると、干渉ネジ領域への骨組織の内方成長(ingrowth)によって、移植された腱の天然の組織固定が生じることが可能になり、患者のより良い結果をもたらすので、この制御された分解は、本願にとって非常に有益である。
【0128】
ポリL-ラクチド-co-D,Lラクチド(PDLLA)は、良好な引張り強さ、優れた機械的および熱的特性を有する。これらの用途のほとんどで、インプラントが高機械的負荷下に置かれる必要がないので、これらの処置に使用される生体吸収性材料は、生物学的応答の向上、および分解時に有害な副作用を引き起こすことなく、健康な骨再生を促進する能力の向上に焦点を合わせてきた。
【0129】
ポリジオキサノン(PDO)ポリマーは、所望の程度の可撓性、良好な機械的特性、および約6~約12ヶ月の範囲の高速から中程度の速度での分解プロファイルを有する材料を提供するために製作され得る。ポリジオキサノン(PDO)ポリマーは、本開示に係る移植片、留め具および中央カプラーの製造において使用するのに適しており、それらは、完全治癒を可能にするほど十分長く再生中の組織系を適所に固定することができ、完全治癒の後、移植片および縫合糸は、分解し、身体に吸収される。その分解プロファイルは、ポリマーの結晶化度、分子量、滅菌法およびインビボ環境などの複数の因子に依存する。
【0130】
本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスにおいて有利に使用され得る生体高分子は、表1に示される機械的特性のうちの1つまたはそれを超える特性を示す。
【0131】
【0132】
生体吸収性材料は、射出成形、押し出し成形、圧縮成形および機械加工をはじめとした従来の製造方法によって加工され得る。これらのポリマーは、エレクトロスピニング、選択的レーザー焼結および溶融堆積モデリングなどの新規の製造方法においても使用され得る。
【0133】
本開示の組織修復・シーリングデバイスにおいて使用するために適合され得る生体適合性(Biocompatable)材料および生体吸収性材料は、当該分野において説明されている。例えば、AZoM,Biomaterials,2630(2004)(医療機器において使用するためのバイオマテリアルの分類および物理的特色を説明している);Evonik,Medical Plastics News(医療機器における生体吸収性材料の用途を説明している);Gilding,Polymer 20(12):1459(1979)(医療機器、特に外科的デバイスにおいて使用するための、ポリグリコール酸(PGA)とポリ乳酸(PLA)とのホモ重合体および共重合体を含む生分解性ポリマーを説明している);Kadam,Medical Plastics News 15:22(2020)(効率的な医療機器技術を開発するための医療用ポリマーの用途を考察している);Middleton,Biomaterials 21(23):2335(2000)(整形外科用デバイスにおいて使用するための合成生分解性ポリマーを考察している);Santos,Tissue Engineering 225(Ed.Daniel Eberli,2010)(組織工学において使用するための生体吸収性ポリマーを概説している);およびSheikh,Materials 8:5744(2015)(骨修復および組織工学において使用するための生分解性材料を概説している)を参照のこと。これらの科学論文および医学論文の各々は、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0134】
ある特定の実施形態内において、本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスは、着脱可能な移植片・留め具アセンブリを利用し得、そのアセンブリでは、移植片サブアセンブリおよび/または展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリが、生体適合性で非強磁性の不動態化金属または不動態化金属合金を移植片57、フォームリング61、中央カプラー(central couper)67および/または展開可能な留め具75に組み込むことにより、組織修復・シーリングデバイスのそれらの構成部品の形状記憶および超弾性の特色が提供されるまたは向上する。
【0135】
本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスにおいて使用するのに適した生体適合性で非強磁性の不動態化金属または不動態化金属合金としては、コバルトベースの合金、純チタン、チタンベースの合金、白金ベースの合金、モリブデンとタングステンとタンタルの合金が挙げられるが、これらに限定されない。着脱可能な移植片・留め具アセンブリにおいて使用するのに適した不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤーは、望ましい形状記憶および超弾性の特色、例えば、ニッケル-チタン(ニチノール)および/またはニオブ-チタンが示す特色を示す。
【0136】
本開示の組織修復・シーリングデバイスにおいて使用するために適合され得る生体適合性で非強磁性の不動態化金属または不動態化金属合金は、当該分野において説明されている。例えば、参照により本明細書中に援用される、米国特許第8,349,249号(「Wachter」)および米国特許第8,992,761号(「Lin」)を参照のこと。
【0137】
組織修復・シーリングデバイスを使用するための方法
本開示は、フェネストレーションを有する組織の迅速な修復および耐圧水密シールの確実な形成を達成するために、MIS手技と非MIS手技の両方において組織修復・シーリングデバイスを使用するための方法を提供する。本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスは、(1)近位端および遠位端を有するアプリケーターシャフトに移動可能に取り付けられた、近位端および遠位端を有する留め具保持・解放部材を備えるアプリケーターアセンブリ、ならびに(2)移植片サブアセンブリと、移植片の中心に固定して取り付けられた展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリとを備える着脱可能な移植片・留め具アセンブリを動作可能な組み合わせで備える。
【0138】
したがって、ある特定の実施形態内において、本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスを使用するための方法は、(1)本明細書中に開示されるような着脱可能な移植片・留め具アセンブリを選択する工程、(2)その着脱可能な移植片・留め具アセンブリを、アプリケーターシャフトおよび留め具保持・解放部材を備えるアプリケーターアセンブリに取り付ける工程、(3)その留め具を折り畳み、留め具保持・解放部材に挿入する工程、(4)移植片を組織内表面上に配置する工程、(5)展開可能な留め具を組織外表面上に配置する工程、(6)展開可能な留め具を外表面上に解放することによって、移植片を組織内表面に固定する工程、(7)組織フェネストレーションを修復する工程、および(8)耐圧水密シールを形成する工程を含む。
【0139】
図3B~3Eは、組織フェネストレーションを迅速に修復し、耐圧水密シールを形成するための、
図1および
図2に図示されているような、移植片サブアセンブリおよび展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリを備える組織修復・シーリングデバイスを使用するための方法を図示している。
【0140】
図3Bは、組織フェネストレーションの修復およびシーリングにおいて使用するための例示的な組織修復・シーリングデバイスを準備する際の工程を図示している。着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50は、アプリケーターシャフト25の近位端27においてアプリケーターアセンブリ20に取り付けられ、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65の折り畳まれた半径方向ストラットまたはスポーク77は、留め具保持・解放部材35の近位端37において保持されている。組織フェネストレーションを通って移植片サブアセンブリ57を挿入する前に、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65の半径方向ストラットまたはスポーク77は、移植片サブアセンブリ55から離れて、かつ中央カプラー67を通過する軸の中心に沿って、折り畳まれ、留め具保持・解放部材35の近位端に挿入される。
【0141】
フェネストレーションのサイズおよび形状に関連して移植片サブアセンブリ55の最適なサイズおよび形状を決定するために、直接、顕微鏡的、または内視鏡的に見ながら、移植片を欠損部に近づける。展開可能な留め具・カプラーアセンブリ65上の中央カプラー67のおかげで、移植片が組織フェネストレーションをシールするのに最適なサイズ、形状および材料を提供するために、外科医が、着脱可能な移植片・留め具アセンブリ55を迅速に交換および選択することが可能になる。
【0142】
図3Cには、組織フェネストレーションを通って移植片サブアセンブリ57を挿入した後の
図3Bの組織修復・シーリングデバイスが示されており、移植片サブアセンブリ57は、欠損部の内側の開口部全体を覆い、次いで、フェネストレーションを有する組織の内表面に接触するように引き戻される一方で、組織修復・シーリングデバイスを展開する前に、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65は、フェネストレーションを有する組織の外側に留まっている。フェネストレーション通過後の移植片の再拡大は、可撓性で半剛性の移植片材料を使用すること、または生体吸収性材料の可撓性リングを移植片の外周の周りに組み込むことによって容易になり得る(
図6~8および
図13C~13Dに示されているように)。したがって、移植片サブアセンブリ55は、容易に変形して、組織フェネストレーションを何とか通り抜け、組織の内側に入ったら元の形状に再拡大するように構成されている。
【0143】
図3Dには、組織修復・シーリングデバイスの展開が示されている。移植片サブアセンブリ55が、内表面上に配置され、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65が、組織外表面上に配置されたら、そのデバイスは、留め具保持・解放部材35をアプリケーターシャフト25の遠位端29に向かって摺動させることによって展開され、それにより、展開可能な留め具のストラットまたはスポーク77が解放され、それらは、元の配置に急速に戻り、フェネストレーションを有する組織の外表面に対して圧力をかけることにより、移植片が最適な位置に固定されて、フェネストレーションがシールされる。
【0144】
図3Eには、アプリケーターアセンブリ20から着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50を分離し、展開可能な留め具・カプラーアセンブリ65を組織外表面に接して配置して、移植片サブアセンブリ55を組織内表面に固定することにより、組織フェネストレーションを迅速に修復し、耐圧水密シールを確実に形成する様子が示されている。
【0145】
図5は、中空の体器官または空洞への、通常、針を通じた体液のドレナージ、または注入管もしくはドレナージ管用に作られた注入用もしくはドレナージ用のチューブもしくはカニューレの留置(例えば、腰椎ドレーン、胃瘻造設術チューブ、胸腔穿刺ドレーン、腹腔穿刺、動脈カテーテル、恥骨上膀胱切開術(suprapubic cystostomy))に関連する、大口径針の穿刺(例えば、動脈穿刺または腰椎穿刺)または造瘻部(外科的開口部)をシールするように構成されている本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスの代替の実施形態を図示している。この実施形態において、アプリケーターシャフト25は、組織修復・シーリングデバイスが、内視鏡を通って、または着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50およびアプリケーターシャフト25における内部チャネルに通されたガイドワイヤーを用いる経皮的経路によって、通過することを可能にする可撓性材料から製作されている。
【0146】
図5C~5Gは、
図5Aおよび
図5Bに示されているような組織修復・シーリングデバイスを用いて、組織フェネストレーション(例えば、動脈壁、硬膜、胃または胸膜の穿刺傷を含む大口径針の穿刺による欠損部)を修復する例示的な方法を示している。これらの組織において、穿刺(その針を通じたドレーンまたはカニューレの留置を伴うまたは伴わないもの)は、その穿刺部位を通じた持続的な漏出を招くことがあり、重大な罹患(例えば、血腫形成、脳脊髄液漏出、腹膜炎または気胸症)を引き起こす。
図5Aおよび5Bに示されているように、閉鎖栓移植片57は、円錐形の形状を有し、ガイドワイヤーに沿って組織バリアにおける小さな穿刺傷を通過できるように変形可能であり、変形可能な円錐形の閉鎖栓移植片57の基材が組織の内表面上の穿刺傷を完全に覆うように再拡大する。閉鎖栓移植片は、シールされる欠損部のサイズに基づいてそのサイズが選択され得、本明細書中に記載されるような生体吸収性ポリマーを含み得、薬物を組織フェネストレーションの部位に送達するために薬物溶出部品をさらに備え得る。
【0147】
図5Cは、組織バリア125(例えば、動脈壁、硬膜、胃または胸膜)を通って配置され、先端が組織バリアの内側の管腔または空洞127に配置された、大口径針121を図示している。次いで、可撓性ガイドワイヤー123が、大口径針121を通って、その管腔または空洞に挿入される。ガイドワイヤーは、経皮的アプローチ(例えば、動脈カテーテル、腰椎脊髄ドレーン、脳室開窓術、胸膜穿刺管、胃瘻造設術または恥骨上膀胱切開術)によって留置された管またはカニューレとともに配置され得ることが理解されるだろう。この方法の代替の態様では、ガイドワイヤーは、その除去前に、留置カテーテルに通され得る(図示せず)。
【0148】
図5Dに示されているように、ガイド123が挿入されたら、組織フェネストレーションを通り抜けてガイドワイヤー123を適所に残して、大口径針121が除去される。
図5Eは、ガイドワイヤー123の外側端を円錐形の閉鎖栓移植片57の先端における開口部に挿入し、ガイドワイヤー123を円錐形の閉鎖栓移植片57、中央カプラー67、およびアプリケーターアセンブリ20の可撓性アプリケーターシャフト25の中心チャネルに通して、可撓性アプリケーターシャフト25の遠位端29から出ることによる、組織修復・シーリングデバイスの配置を図示している。組織修復・シーリングデバイスをガイドワイヤー123に沿って通す前に、複数の半径方向スポークまたはストラット77が、円錐形の閉鎖栓移植片57から離れて折り畳まれ、留め具保持・解放部材35の近位端37に挿入される。
【0149】
組織修復・シーリングデバイスは、ガイドワイヤー123に沿って穿刺部位まで前進し、円錐形の閉鎖栓移植片57は、穿刺孔を通り抜けて、穿刺組織の内表面に接して配置され、組織修復・シーリングデバイスは、留め具保持・解放部材35をアプリケーターシャフト25の遠位端29に向かって移動させて、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65を解放することによって展開される(
図5F)。展開可能な留め具75の複数の半径方向ストラットまたはスポーク77は、組織外表面に接して配置され、組織外表面に圧力をかけることにより、円錐形の閉塞移植片57を固定し、穿刺傷を修復し、耐圧水密シールを形成する。アプリケーターアセンブリ20は、穿刺部位に留まる着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50から取り外され、プリケーターアセンブリ20は、ガイドワイヤー123に沿って摺動させることによって除去され、その後、ガイドワイヤー123が除去される(
図5G)。
【0150】
図22A~22Eは、
図20A~20Cおよび
図21A~21Cに図示されているような移植片サブアセンブリ55および展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65を備える組織修復・シーリングデバイスを使用して、組織フェネストレーションを迅速に修復し、耐圧水密シールを形成するための方法を図示している。これらの組織修復・シーリングデバイスは、小さい組織フェネストレーションを有する、かつ/またはもろい性質の、フェネストレーションを有する組織の修復において特定の利点を提供する。この実施形態において、移植片サブアセンブリ55は、移植片57の中心から半径方向に広がり、形状記憶および超弾性の特色を示す、複数の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤー64を備えるように構成されている。したがって、移植片サブアセンブリ55は、容易に変形して留め具保持・解放部材35内にちょうど収まるように、かつ組織の内側に入り、留め具保持・解放部材35を移動させたとき、元の形状に再拡大するように、構成されている。
【0151】
図22Aは、展開前の例示的な組織修復・シーリングデバイスを図示している。着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50は、アプリケーターシャフト25の近位端27においてアプリケーターアセンブリ20に取り付けられており、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65の折り畳まれた半径方向ストラットまたはスポーク77は、留め具保持・解放部材35の近位端37において保持されている。組織フェネストレーションを通って移植片サブアセンブリ57を挿入する前に、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65の半径方向ストラットまたはスポーク77は、中央カプラー67を通る軸の中心に沿って移植片サブアセンブリ55から離れて折り畳まれ、留め具保持・解放部材35の近位端に挿入される。この実施形態には、移植片57の中心から半径方向に広がる複数の生体適合性で非強磁性の不動態化金属ワイヤーまたは不動態化金属合金ワイヤー64を備えており、かつ傘またはパラソルの配置で中央カプラー67から離れて折り畳まれ、留め具保持・解放部材35によって保持されている、移植片57を含む移植片サブアセンブリ55を収容するために細長い留め具保持・解放部材35が示されている。
【0152】
フェネストレーションのサイズおよび形状に関連して移植片サブアセンブリ55の最適なサイズおよび形状を決定するために、直接、顕微鏡的、または内視鏡的に見ながら、移植片を欠損部に近づける。展開可能な留め具・カプラーアセンブリ65上の中央カプラー67のおかげで、移植片が組織フェネストレーションをシールするのに最適なサイズ、形状および材料を提供するために、外科医が、着脱可能な移植片・留め具アセンブリ55を迅速に交換および選択することが可能になる。
【0153】
図22Bには、留め具保持・解放部材35の近位端および移植片サブアセンブリ55が組織フェネストレーションを通過した後の、
図20A~20Cおよび
図21A~21Cの組織修復・シーリングデバイスが示されている。
図22Cには、留め具保持・解放部材35をアプリケーターシャフト25に沿ってその遠位端に向かって移動させ、留め具保持・解放部材35の近位端が、中央カプラー67の部位において、フェネストレーションを有する組織の外側に到達したとき、止めることによる、移植片サブアセンブリ55の展開が示されている。次いで、
図22Cにおいて、展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65が、フェネストレーションを有する組織の外側で、留め具保持・解放部材35内に留まったままで、移植片57が、フェネストレーションを有する組織の内表面と接触するように、移植片サブアセンブリ55が引き戻される。
【0154】
図22Dには、留め具保持・解放部材35をアプリケーターシャフト25の遠位端29に向かって摺動させ、それにより、展開可能な留め具のストラットまたはスポーク77を解放することによって留め具保持・解放部材35から解放された(release)展開可能な留め具・カプラーサブアセンブリ65が示されており、その展開可能な留め具のストラットまたはスポーク77は、元の配置に急速に戻り、フェネストレーションを有する組織の外表面に対して圧力をかけ、それにより、移植片が最適な位置に固定されて、フェネストレーションがシールされる。
【0155】
図22Eには、アプリケーターアセンブリ20から着脱可能な移植片・留め具アセンブリ50を分離し、展開可能な留め具・カプラーアセンブリ65を組織外表面に接して配置して、移植片サブアセンブリ55を組織内表面に固定することにより、組織フェネストレーションを迅速に修復し、耐圧水密シールを確実に形成する様子が示されている。
【0156】
1.硬膜におけるフェネストレーションを修復およびシールするための方法
ある特定の実施形態内において、本明細書中に開示される組織修復・シールデバイスは、脳および脊椎を覆う硬膜におけるフェネストレーションに起因する脳脊髄液漏出を修復およびシールするように構成されている。硬膜の完全性は、脳脊髄液を中枢神経系の中に閉じ込めておくために不可欠である。脳脊髄液の圧力は、隣接組織または体内空間の圧力よりも高い。
【0157】
この圧力差によって、小さなフェネストレーションであってもそこを通った脳脊髄液の漏出が永続し、その自然治癒が阻害される。髄液が漏出すると、創傷感染症、髄膜炎、脳ヘルニア、頭蓋内出血、および頭蓋内圧低下に起因する頭痛をはじめとした数多くの合併症を招き得る。硬膜における開口部は、自発的に生じるか(例えば、先天性欠損、腫瘍、感染)、意図的に生じるか(例えば、開頭術または脊髄の手術のための硬膜切開、腰椎穿刺など)または不注意で生じる(脊髄の手術または内視鏡的洞手術における硬膜裂傷、外傷など)。脳脊髄液は、圧力下にあり、上記のように未修復のフェネストレーションを通って脳脊髄液が外向きに流出し続けるので、上のせ移植片または糊は、硬膜の外表面から外れがちであり、フェネストレーションの治癒が損なわれる。したがって、最初の手術において修復されなかった硬膜開口部の自然治癒は、不十分であり、脳脊髄液漏出を止めるためのその後の措置には、再入院、再手術、および/またはさらなる組織移植片の収集もしくは腰椎ドレナージカテーテルなどの他の手技が必要になることが多い。
【0158】
硬膜のフェネストレーションをシールする本方法は、いくつかの方法;直接縫合、天然または合成移植片の留置、組織シーラント、上のせ移植片修復を補強するための補助的な組織移植片、硬膜外への血液注射(「血液パッチ」)または腰椎ドレナージのうちの1つまたは組み合わせを含む。ヒト死体硬膜、ウシおよび/またはブタの心膜ならびに様々な合成マトリックス製剤をはじめとした商業的に入手可能な硬膜代替物がいくつか存在する。これらは、通常、上のせ移植片として、時折、縫合または糊を用いて、適用される。不完全にシールされた硬膜開口部に起因する脳脊髄液漏出の頻度は、手技の性質および位置によってかなり異なり、脊髄の手術での1~2%(再手術の場合、それより高い)から、下垂体およびある特定の後頭蓋窩の手術の場合の10~15%まで様々である。脳および脊椎に対するMISアプローチの今後の発展は、硬膜の完全性を再確立することの難しさによって大きく制限されている。MIS手技のために計画的または不注意に開いた硬膜の修復およびシールにおける大きな制約は、硬膜の縫合が困難であることである。これは、一般に、従来の縫合では硬膜切開の部位に到達しにくいこと、および/またはある特定の位置の硬膜がもろいことに起因する。また、極めて重要な神経構造(神経根、脳神経、脊髄、脳、血管)が近くにあるため、針が硬膜を通過してこれらの構造を不注意に損傷し得るので、多くの状況において縫合が危険になる。硬膜を閉鎖するための本明細書中に記載される本発明の別の用途は、硬膜の計画的な切開を行うことにより、開頭術または椎弓切除術の手技中に、下にある神経構造を露出する、頭蓋および脊椎の直視下(非MIS)手技に対するものであり得る。通常、その硬膜切開には縫合閉鎖が採用されるが、それは時間がかかり、水密でないことが多い。さらに、本デバイスは、アプリケーターシャフト上に固定された垂直配向の移植片-留め具ユニット、またはその移植片-留め具ユニットの回転を可能にする調整可能な連結デバイスを利用することにより、フェネストレーションおよび近傍構造の可視化を容易にし得る。
【0159】
2.脊髄硬膜の穿刺傷を修復およびシールするための方法
ある特定の実施形態内において、本明細書中に開示される組織修復・シールデバイスは、腰椎穿刺および脊髄ドレーンのための脊髄硬膜の穿刺部位を修復およびシールするように構成されている。そのような穿刺は、隣接する脊髄周囲組織への脳脊髄液の持続的な漏出を引き起こし、普通に生活できないほどの頭痛によって現れる頭蓋内圧低下を引き起こし得る。例えば、脳脊髄液漏出による頭痛の発生率は、脊髄麻酔のための硬膜穿刺後、80%もの高さであり得る。硬膜穿刺の漏出を閉鎖するための現行の方法としては、床上安静およびまたは硬膜外血液パッチの使用が挙げられる。本明細書中に記載される組織シーリングデバイスを用いた脊髄硬膜穿刺傷の経皮的な修復およびシーリングは、脊髄ドレーン時または脊髄穿刺針の除去時に、可撓性アプリケーターシャフトを有するそのデバイスをガイドワイヤーに沿って通すことによって達成される。本デバイスは、円錐形の生体吸収性閉鎖栓移植片が穿刺開口部を通過して硬膜内の空間に達するまで、ガイドワイヤーに沿って通される。その閉鎖栓移植片は、引き戻され、その基材が穿刺フェネストレーションを内表面上で覆った後、アプリケーターがガイドワイヤーに沿って引き抜かれる。結束している円筒が、アプリケーターとともに引き抜かれることにより、把持ストラットが解放され、穿刺フェネストレーションの硬膜の外表面上で展開することにより、移植片が固定され、即座に水密シールが提供される。この閉塞移植片は、生体吸収性であるので、除去する必要がないだろう。
【0160】
3.中空の内臓器官のフェネストレーションを修復およびシールするための方法
ある特定の実施形態内において、本明細書中に開示される組織修復・シールデバイスは、中空の内臓器官(食道、胃、小腸および大腸、直腸、膀胱、尿管、子宮ならびに膣を含むがこれらに限定されない)の壁におけるフェネストレーションを修復およびシールするように構成されている。そのようなフェネストレーションは、自発的に生じるか(例えば、腫瘍、感染)、意図的に生じるか(例えば、手術における器官の切開または生検)または不注意で生じる(手術における裂傷または穿刺)。そのような中空器官の壁におけるフェネストレーションは、腹膜炎または瘻孔形成を招き得る、腸内容物もしくは尿の腹腔内漏出または子宮もしくは膣を通じた細菌の侵入を防止するために、通常、修復を必要とする。そのような器官の迅速かつ水密な修復およびシーリングは、その手技時に、本明細書中に記載される組織修復・シーリングデバイスを用いて達成され得るので、漏出およびその後の感染が予防されるか、または再手術の必要がなくなる。これらの状況のいずれにおいても、移植片は、一体化した移植片-留め具ユニットとして直接組み込まれているか、または生体吸収性の移植片フレーム・ホルダー装置を用いて手術時に置換される、自己、同種、異種または合成の材料からなり得る。さらに、これらの状況のいずれにおいても、本デバイスは、アプリケーターシャフト上に固定された垂直配向の移植片-留め具ユニット、またはその移植片-留め具ユニットの回転を可能にする調整可能な連結デバイスを利用することにより、フェネストレーションおよび近傍構造の可視化を容易にし得る。
【0161】
4.穿刺傷、穿孔または造瘻部を修復およびシールするための方法
ある特定の実施形態内において、本明細書中に開示される組織修復・シールデバイスは、生検後またはチューブもしくはカニューレを除去した後の、腹部の中空器官における穿刺傷、穿孔または造瘻部を修復およびシールするように構成されている。生検に関連する使用例としては、経口もしくは経肛門の内視鏡的生検の際に生じる食道、胃、小腸もしくは大腸または直腸の穿孔、または経膣および経尿道の内視鏡的手技の際のそれぞれ膣および子宮または膀胱および尿管の穿孔が挙げられる。別の関連する実施形態では、本明細書中に記載される組織修復およびシーリングデバイスは、ドレナージ管を除去した後の中空器官の壁における造瘻部または針穿刺傷の経皮的修復のために使用され得る。この実施形態では、内視鏡を通じてまたはガイドワイヤーを伝って前進させる可撓性の修復・シーリングデバイスを使用し、食道、胃、小腸もしくは大腸、直腸または膀胱(恥骨上管)から除去される体外の経皮管、ドレーンまたはカニューレに対して使用され得る。これらの用途における移植片部品には、天然材料もしくは合成材料の平らな移植片、または円錐形の閉鎖栓移植片が含まれ得る。上記のように、管造瘻部の即座のシーリングの利点は、腹膜内への内液漏出の防止、または経皮的管路を介する皮膚を通じた内液漏出の防止である。
【0162】
5.体腔のフェネストレーションを修復およびシールするための方法
ある特定の実施形態内において、本明細書中に開示される組織修復・シールデバイスは、腹膜、胸膜腔、内耳または関節腔を含むがこれらに限定されない体腔のフェネストレーションを修復およびシールするように構成されている。胸腔穿刺を介した胸膜腔のドレナージは、胸膜における穿刺部位を通じて空気が入ることが原因の気胸症を併発し得る。同様に、外科的アクセスのための腹膜の経皮的もしくは内視鏡的な穿刺または腹腔穿刺(例えば、ドレナージ用または透析用)は、後に、皮膚切開部から漏れることがある。同様に、耳または関節の外科手技も、それぞれ鼓膜または滑膜にフェネストレーションを形成し得る。これらの状況において、平らまたは円錐形の移植片を有する、剛性または可撓性の形態の、本明細書中に記載される組織修復・シーリングデバイスは、穿刺部位を直ちにシールでき、その後の合併症を予防できる。さらに、本デバイスは、アプリケーターシャフト上に固定された垂直配向の移植片-留め具ユニット、またはその移植片-留め具ユニットの回転を可能にする調整可能な連結デバイスを利用することにより、フェネストレーションおよび近傍構造の可視化を容易にし得る。
【0163】
6.身体の筋膜(Facia)における欠損部を修復およびシールするための方法
ある特定の実施形態内において、本明細書中に開示される組織修復・シールデバイスは、腹壁、胸壁または筋肉および靭帯の筋膜を含むがこれらに限定されない身体の筋膜における欠損部のフェネストレーションを修復およびシールするように構成されている。これらの筋膜構造における欠損部は、その下にある組織のヘルニア形成または創傷崩壊を招き得る。本明細書中に記載されるデバイスを用いた身体の筋膜の修復には、筋膜の縁に適用される単一または複数の移植片クランプ部品を用いて直視下(非MIS)手技において筋膜を直接閉鎖すること、または大きな欠損部の場合、複数の移植片-留め具ユニットを用いて欠損部の縁に周方向に固定される天然材料もしくは合成材料の自由な移植片を組み込むことが含まれ得る。さらに、可撓性または剛性の組織修復・シーリングデバイスを用いて、内視鏡または経皮的アプローチを介して筋膜におけるフェネストレーションを閉鎖してもよい。これらの状況のいずれにおいても、本デバイスは、アプリケーターシャフト上に固定された垂直配向の移植片-留め具ユニット、またはその移植片-留め具ユニットの回転を可能にする調整可能な連結デバイスを利用することにより、フェネストレーションおよび近傍構造の可視化を容易にし得る。
【0164】
7.薬物および他の作用物質を局所的送達するための方法
ある特定の実施形態内において、本明細書中に開示される組織修復・シールデバイスは、移植片部品に組み込まれている薬物溶出マトリックスまたは移植片部品に取って代わる薬物溶出マトリックスから薬物および他の作用物質を連続的に局所的送達するように構成されている。薬物の局所的送達は、いくつかの利点;(a)薬物濃度が適用部位において最大になり、薬物の全身分布による有害作用が最小限に抑えられる点;(b)静脈内経路または経口経路によって投与された薬物が比較的到達しにくい身体コンパートメント(例えば、血液脳関門による制限に起因する脳脊髄液、膿瘍腔などの灌流の悪いコンパートメント)に十分な濃度で薬物を投与できる点;(c)連続的な送達によって、間欠投与で生じるピークとトラフの変動なく薬物の定常状態の治療的濃度が確保される点;(d)患者の服薬遵守が問題にならない点;および(e)薬物溶出マトリックスが、生分解性であり得、送達部位に応じて既知の速度および時間で特定の薬物を放出するように操作できる点を提供する。現在、多くの薬物溶出マトリックスが、臨床で使用されているが、ほとんどが、皮下組織または固形組織へのマトリックスの植え込みを必要とする。本実施形態では、臨床の状況および意図された治療効果に応じて、改変された組織修復・シーリングデバイスを用いて、任意のカテゴリーの薬物または生理活性な作用物質を身体内の任意の部位に移植および固定し得る。
【0165】
薬物の分布は、マトリックスの適用部位に依存し得る。例えば、血管の内表面上に留置されたマトリックスは、静脈インプラント部位の場合、全身性分布を提供し得るか、または動脈によって灌流される下流組織(例えば、新生物または単一の器官)への薬物の局所分布を提供する。さらに、組織バリアの内表面上に留置されたマトリックスは、そのバリアによって囲まれた体液または空洞への薬物送達を提供し得る(例えば、脳脊髄液に薬物を放出する硬膜インプラント、腹膜腔に薬物を放出する腹膜インプラント、または腸に薬物を放出する胃腸インプラント)。また、バリアの内側に留置されたマトリックスは、薬物を放出して、そのバリア自体を調節し得る(例えば、治癒の促進、瘢痕もしくは過形成の阻害、または局所疼痛管理)。最後に、実質臓器の莢膜または腫瘍の内側に、実質と接触して留置されたマトリックスインプラントは、その器官または腫瘍(例えば、腎臓、下垂体、悪性または良性の腫瘍)の部分への局所的な薬物送達を提供し得る。上記のように、この修復・シーリングデバイスの用途は、ほぼすべてのカテゴリーの薬物ならびにすべての体器官および組織のタイプに適用され得る。
【0166】
様々な実施形態を本明細書中に開示してきたが、他の実施形態が当業者には明らかであろう。本明細書中に開示される様々な実施形態は、説明目的であり、限定であると意図されておらず、真の範囲および趣旨は、請求項によって示される。本開示は、ある特定の実施形態を例証するために提供されているのであって、本開示または特許請求される主題の範囲を限定すると意図されていない、以下の実施例を参照してさらに説明される。
【実施例】
【0167】
実施例1
組織修復・シーリングデバイスを試験するためのインビトロモデル
この実施例は、本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスの様々な態様を試験するために適合および使用され得るインビトロモデル系を提供する。本明細書中に開示されるような組織修復・シーリングデバイスの様々な物理的特性および他のパラメータは、科学文献、医学文献および特許文献に記載されているインビトロモデル系、ならびに本明細書中に開示されるデバイスを用いた組織フェネストレーションの修復およびシーリングを試験するように構成され得るインビトロモデル系を含むインビトロモデル系において試験され得る。Dafford,The Spine Journal 15(5):1099(2015);Chauvet,Acta Neurochirurgica 153(12):2465(2011);およびWang,MATEC Web of Conferences 119:01044(2017)を参照のこと。
【0168】
Van Doormaal,Operative Neurosurgey 15(4):425(2018)およびKinaci,Expert Review of Medical Devices 16(7):549(2019)には、急性破裂圧、および頭蓋内圧に対する抵抗性を試験するため、ならびに修復およびシールされた組織フェネストレーションにおける脳脊髄液漏出を評価するために、新鮮なブタ硬膜を使用するインビトロモデル系が開示されている。
【0169】
Megyesi,Neurosurgery 55(4):950(2004);Chauvet,Acta Neurochir(Wien)153(12):2465(2011);およびKizmazoglu,Br.J.Neurosurgery 33(6):655(2019)には、修復およびシールされた組織フェネストレーションの水密性を計測するため、ならびに修復およびシールされた組織フェネストレーションが漏出する圧力を評価するために、着色した食塩水で満たされた円筒状の金属ガラスに付着させたヒト死体硬膜を使用するインビトロモデル系が開示されている。
【0170】
Lin,International Forum of Allergy and Rhinology 6(10):1034(2016);Lin,International Forum of Allergy and Rhinology 5(7):633(2015);Chorath,Allergy & Rhinology 10:1(2019);およびChen,American Journal of Rhinology and Allergy 33(6):757(2019)には、生理食塩水の注入を利用して、修復およびシールされた組織フェネストレーションの平均破損圧力を測定するために一方向の圧力を提供する閉鎖系の試験装置を使用するブタ硬膜のインビトロモデル系が開示されている。このインビトロモデル系は、一方の末端にキャップをしたポリ塩化ビニル(PVC)管を採用している。エンドキャップの側には、小さい穴が開けられており、その穴は、生理食塩水を注入し、チャンバー圧力をモニターするための三方コックを有するように構成されており、これにより、頭蓋内圧(ICP)の上昇がシミュレートされる。シリコーン製の脳を、円筒状管内の模擬篩板の下に配置する。本物の頭蓋底のコンピュータ断層撮影(Able,Lexington,MA)に従って、30mm-25mmの開口部を有する篩板の1区画をモデル化し、CAD(コンピュータ援用設計)ソフトウェア(3D Systems,Rockhill,SC)に取り込み、ポリカーボネート(Airwolf,Costa Mesa,CA)でプリントする。同一の開口部を有する第2の硬膜支持ディスクを調製し、模擬篩板切除の開口部にそろえて配置する。空洞の圧力を、圧力変換器(AMTEK,Inc,Ajman,UAE)でモニターし、その出力をWindaqXL(DATAQ,Akron,OH)を用いてエクセルスプレッドシートに直接転記書き込んだ。その変換器は、mmHgで較正され、すべての測定値を水のセンチメートル(cmH2O)に換算した。ヒト硬膜と機械的特性が似ているので、ブタ硬膜を使用する。ブタの硬膜および大腿筋膜を、安楽死させたブタから収集し、食塩水の中に入れ、4℃で保存した。硬膜の分解を避けるために、回収の5日以内に実験を行う。硬膜の欠損部を24mm-19mmの寸法に均一に切断する。
【0171】
様々な試験手順の要求を満たすために調整できるように圧力チャンバーを設計する。本体は、2つのフランジおよびエンドキャップが装備されているスケジュール80のPVC T字継手でできている。左側のエンドキャップには、本発明者らの試験流体の流入口として作用するプッシュコネクトチューブ継手用に穴が開けられ、栓が付けられている。この流体の流れを三方弁に通し、一方を電磁弁で、他方をシリンジで制御することにより、流体の流れを制御する2つの異なる方法を可能する。そのT字の右側にはフランジがあり、その上に膜がアクリル片でしっかり固定されている。このアクリルは、身体の自然な呼吸周期および他のヒトの機能を模倣する音波によって作り出される圧力変化を試験できる6.5”のスピーカーが取り付けられるように設計されている。そのT字の上部に、試験台を保持することになる別のフランジが存在する。その試験台は、商業的に入手可能な合成硬膜材料片を挟むことになる2片のアクリルからなる。下のアクリルプレートの下面に、電磁弁を制御しながら、試験の圧力変化をモニターする、圧力トランスミッターがある。
【0172】
本開示の移植片サブアセンブリを試験するために使用される圧力チャンバーは、
図23Aおよび
図23Bに示されている。
図23Cは、ヒトCSFの圧力波形であり、
図23Dは、
図23Aに示されている圧力チャンバーを用いて得られたインビトロでのチャンバー圧力波形である。試験のために、閉鎖デバイスは、片手で制御および操作されるプローブを備える。このデバイスは、生体吸収型のベース膜を切開創の下に送達する。挿入すると、外側に圧力網がかかり、水密シールが形成される。その留置が順調であれば、送達プローブを除去する。留置の調整が必要である場合、シーラントデバイスを調整または除去できることが重要である。
【0173】
外部スピーカーによる圧力分散が、CSFの流れの自然なリズム、患者の動き、咳およびくしゃみをはじめとした、身体によって自然に作り出される波形と類似の波形を作り出す。このシールは、硬膜と基材とが重なることによって形成される。水密シールに依存する物理的な力は、CSFの背圧、テンションアームからの一様荷重、および2つの表面間の摩擦係数である。CSFの背圧は、患者の身体および動きに応じて絶えず変動する。硬膜にかかる荷重は、PLGAの材料特性に起因して、各デバイスのサイズによって異なる。摩擦係数は、デバイスを適所に保つのを助ける。これらの力のいずれかに起因して生じる漏出が、試験において克服される。
【0174】
実施例2
組織修復・シーリングデバイスを試験するためのインビボモデル
この実施例は、本明細書中に開示される組織修復・シーリングデバイスの様々な態様を試験するために適合および使用され得るインビボモデル系を提供する。本明細書中に開示されるような組織修復・シーリングデバイスの様々な物理的特性および他のパラメータは、科学文献、医学文献および特許文献に記載されているインビボモデル系、ならびに本明細書中に開示されるデバイスを用いた組織フェネストレーションの修復およびシーリングを試験するように構成され得るインビボモデル系を含むインビボモデル系において試験され得る。
【0175】
de Almeida,Otolaryngology Head Neck Surgery 141(2):184(2009)およびSeo,Journal of Clinical Neuroscience 58:187(2018)には、脳脊髄液(CSF)の漏出を評価することによって、組織フェネストレーションの修復を試験するために適合され得る、インビボのブタ開頭術モデル系が説明されている。de Almeidaでは、ブタに、篩板を通って鼻腔へ抜けるフィステルを形成するための開頭術を行う。組織フェネストレーションの修復の前および後に、CSF漏出が内視鏡的に評価され得る。病理組織学的解析によって、炎症および骨再形成も評価され得る。
【0176】
Dafford,Spine Journal 15(5):1099(2015)には、子ウシ脊椎の静水学的モデル系における硬膜修復の手法の静水圧強度の比較が説明されている。硬膜の漏出は、静水圧と漏出面積との関数として計測される。分散分析(ANOVA)を用いて、漏出の流速、および漏出面積の減少率を求める。
【0177】
Deng,Neurological Research 38(9):799(2016);Preul,Neurosurgery 53(5):1189(2003);およびZerris,Journal of Biomedical Materials Research 83(2):580(2007)には、CSF漏出を評価するためのインビボのイヌ脳硬膜およびくも膜モデル系が説明されている。Dengは、硬膜修復の30および90日後における巨視的および微視的観察も報告している。Preulは、手術の1、4、7および56日後におけるヴァルサルヴァ試験ならびにコントロール動物および処置動物に対する病理組織学的解析の結果を報告している。
【0178】
Cosgrove,Journal of Neurosurgery 106:52(2007);Osbun,World Neurosurgery 78(5):498(2012);およびWeinstein,Journal of Neurosurgery 112(2):219(2010)には、ヒトにおけるCSF漏出を評価することによる、組織フェネストレーションの修復を試験するために適合され得るインビボ開頭術および頭蓋骨切除術の方法論が説明されている。Cosgroveにおいて使用された神経学的手技は、硬膜切開の長さが1.0~19.0cmの範囲の後頭下、側頭および前頭の外科的アプローチを用いてテント下またはテント上で行われる。Osbunは、硬膜閉鎖後に計画外の術後介入または再手術に至る合併症を評価し、手術部位感染、CSF漏出および他の神経学的合併症の発生を処置(硬膜修復)群とコントロール群の両方において比較している。
【0179】
したがって、本開示の範囲は、前述の説明によってではなく、添付の請求項によって示され、請求項の意味および同等性の範囲内に入るすべての変更は、本明細書中に包含されると意図されている。