(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-02
(45)【発行日】2024-05-14
(54)【発明の名称】有機ケイ素化合物グラフト共重合体および当該共重合体を含むタイヤ用ゴム組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 9/06 20060101AFI20240507BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20240507BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20240507BHJP
C08C 19/25 20060101ALI20240507BHJP
【FI】
C08L9/06
B60C1/00 Z
C08L23/26
C08C19/25
(21)【出願番号】P 2022557029
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2021037826
(87)【国際公開番号】W WO2022080396
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2020174246
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020174247
(32)【優先日】2020-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 勝好
(72)【発明者】
【氏名】溝渕 悠介
(72)【発明者】
【氏名】小松 千紘
(72)【発明者】
【氏名】市川 達也
(72)【発明者】
【氏名】田中 宏和
(72)【発明者】
【氏名】石井 雄二
(72)【発明者】
【氏名】樋口 和輝
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
【審査官】久保 道弘
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-246215(JP,A)
【文献】特開昭63-108015(JP,A)
【文献】特開2000-204127(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057724(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/026460(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 9/06
C08L 23/26
C08C 19/25
B60C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対して
、有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)を1~30質量部の範囲で含
み、
前記共重合体(X)が、エチレン・α‐オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部と、不飽和基を1つ以上含有する有機ケイ素化合物(B)に由来するグラフト部とを含み、
前記主鎖部が、重量平均分子量(Mw)が2,000~14,000の範囲、数平均分子量(Mn)が1,600~7,000の範囲、および分子量分布(Mw/Mn)が1.4~2.1の範囲にあるエチレン・α‐オレフィン共重合体(A)であることを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【請求項2】
エチレン・α‐オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部が、エチレンから導かれる成分が41~48質量%の範囲(但し、エチレンから導かれる成分とα‐オレフィンから導かれる成分の合計量を100質量%とする。)にあるエチレン・α‐オレフィン共重合体(A)であることを特徴とする請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
有機ケイ素化合物(B)に由来するグラフト部の質量が1%以上100%未満である〔主鎖部とグラフト部との合計量を100質量%とする。〕ことを特徴とする請求項1または2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
上記有機ケイ素化合物(B)が、ビニルトリメトキシシランであることを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)が、重量平均分子量(Mw)が1,800~13,000の範囲、数平均分子量(Mn)が1,500~6,500の範囲、および分子量分布(Mw/Mn)が1.4~2.1の範囲にある請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)が、さらに、GPCにより求められる分子量Mが
5≦LogM≦6
で規定される範囲にピークをもつ成分として規定される高分子成分の含有量が0~0.3質量%であることを特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項7】
さらに無機充填剤を5~150質量部の範囲で含むことを特徴とする請求項
1~6の何れか一項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項8】
無機充填剤がシリカである請求項
7に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項9】
上記ジエン系ゴムが、芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴムとしてSBRを含み、かつ当該SBRとBRとをSBR/BR=100/0~1/99(質量比)の割合で含むSBRとBRとの混合物であることを特徴とする、請求項
1~
8のいずれか一項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機ケイ素化合物グラフト共重合体、および当該共重合体を含む空気入りタイヤに好適な燃費性能と制動性能に優れたタイヤ用ゴム組成物に関する。
さらに詳細には、当該グラフト共重合体を樹脂やエラストマーなどの重合体の改質剤などに用いた場合に、当該グラフト共重合体を含む組成物を基材などに塗布した際に、平滑性に優れる組成物を得るに好適な有機ケイ素化合物グラフト共重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの高分子量のオレフィン系重合体に種々の不飽和シラン化合物(有機ケイ素化合物)成分をグラフト共重合した変性オレフィン系重合体が樹脂の改質剤、接着性付与剤、その他の用途に利用されている。
【0003】
とくに、ゴム状重合体などのエラストマーの配合技術の分野においては、エチレン・α-オレフィン系またはエチレン・α-オレフィン系共重合体を硅素含有ゴム状重合体に配合することにより、耐候性、耐老化性に優れ、かつ優れたゴム弾性を有するゴム状重合体組成物を提供することが試みられているが、その際単に両者を配合しただけでは得られる組成物の力学物性が低下するという欠点があることが知られている。
【0004】
かかる欠点を改良する方法として、エチレンと炭素原子数が3ないし20のα-オレフィンから構成されるエチレン系ランダム共重合体に、炭素原子数が2ないし20の不飽和シラン化合物成分がグラフト共重合してなる液状変性エチレン系ランダム共重合体であって、(i)該エチレン系ランダム共重合体のエチレン成分が25ないし75モル%およびα-オレフィン成分が25ないし75モル%の範囲にあること、(ii)該不飽和シラン化合物成分のグラフト割合が該エチレン系ランダム共重合体の100重量部に対して0.2ないし300重量部の範囲にあること、および、(iii)該液状変性エチレン系ランダム共重合体の135℃のデカリン中で測定した極限粘度[η]が0.01ないし1.5d/gの範囲にあること、によって特徴づけられる液状変性エチレン系ランダム共重合体を改質剤として用いることが提案されている(特許文献1)。
【0005】
一方、用途によっては、ブツの発生がより少なく、より平滑性に優れる組成物が得られる改質剤を含む組成物が望まれている。
また、自動車のタイヤトレッド用ゴム材料としては、一般にスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(SBR)が使用されている。自動車のタイヤには安全性の面から優れた制動性能が求められるが、近年、自動車の低燃費化要求の高まりによりタイヤにおいても優れた燃費性能の向上が検討されている。低燃費型のタイヤではタイヤトレッド部のゴム組成物には制動性能の改良としてシリカが配合されることが一般的となっている。また、シリカは凝集しやすい性質があり、シリカ凝集体が転がり抵抗の増大、すなわち燃費を悪化させる原因となるため、分散剤としてシランカップリング剤が配合されている。
【0006】
特許文献2には、さらなる燃費性能向上のため、シリカを分散させる目的で、ジエン系ゴム、酸変性ポリオレフィンおよびポリオレフィンを含有するゴム組成物が提案されている。
【0007】
しかしながら、特許文献2で提案されている不飽和カルボン酸で変性したエチレン・α-オレフィン系共重合体を配合すると、成形加工する際に粘度の上昇や押出性の悪化などの加工性の低下が問題となり、得られるタイヤの制動性能が低下する虞があることが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特公平6-2791号公報
【文献】特開2016-030800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、ブツの発生がより少なく、より平滑性に優れる潤滑油、塗料、接着剤などを得るに好適な改質剤を得ることにある。
また、本発明の目的は、制動性能と燃費性能の双方に優れるタイヤを得るに好適なタイヤ用ゴム組成物を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち、本発明は以下の[1]~[11]にかかわる。
[1]
エチレン・α‐オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部と、不飽和基を1つ以上含有する有機ケイ素化合物(B)に由来するグラフト部とを含むことを特徴とする有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)。
【0011】
[2]
エチレン・α‐オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部が、重量平均分子量(Mw)が2,000~14,000の範囲、数平均分子量(Mn)が1,600~7,000の範囲、および分子量分布(Mw/Mn)が1.4~2.1の範囲にあるエチレン・α‐オレフィン共重合体(A)であることを特徴とする項[1]に記載の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)。
【0012】
[3]
エチレン・α‐オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部が、エチレンから導かれる成分が41~48質量%の範囲(但し、エチレンから導かれる成分とα‐オレフィンから導かれる成分の合計量を100質量%とする。)にあるエチレン・α‐オレフィン共重合体(A)であることを特徴とする項[1]または[2]に記載の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)。
【0013】
[4]
有機ケイ素化合物(B)に由来するグラフト部の質量が1%以上100%未満である〔主鎖部とグラフト部との合計量を100質量%とする。〕ことを特徴とする項[1]~[3]の何れか一項に記載の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)。
【0014】
[5]
上記有機ケイ素化合物(B)が、ビニルトリメトキシシランであることを特徴とする項[1]~[4]の何れか一項に記載の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)。
【0015】
[6]
有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)が、重量平均分子量(Mw)が1,800~13,000の範囲、数平均分子量(Mn)が1,500~6,500の範囲、および分子量分布(Mw/Mn)が1.4~2.1の範囲にある項[1]に記載の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)。
【0016】
[7]
有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)が、さらに、GPCにより求められる分子量Mが
5≦LogM≦6
で規定される範囲にピークをもつ成分として規定される高分子成分の含有量が0~0.3質量%であることを特徴とする、項[1]~[6]の何れか一項に記載の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)。
【0017】
[8]
芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対して、項[1]に記載の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)を1~30質量部の範囲で含むことを特徴とするタイヤ用ゴム組成物。
【0018】
[9]
さらに無機充填剤を5~150質量部の範囲で含むことを特徴とする項[8]に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【0019】
[10]
無機充填剤がシリカである項[9]に記載のタイヤ用ゴム組成物。
[11]
上記ジエン系ゴムが、芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴムとしてSBRを含み、かつ当該SBRとBRとをSBR/BR=100/0~1/99(質量比)の割合で含むSBRとBRとの混合物であることを特徴とする、項[8]~[10]のいずれか一項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【発明の効果】
【0020】
本発明の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)はブツの発生がないので、かかる有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)を改質剤に用いることにより、平滑性に優れる潤滑油、塗料、接着剤などを得ることができる。
【0021】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は0℃におけるtanδが大きく、60℃におけるゴム組成物のtanδ(減衰率)が小さいので、制動性能と燃費性能の双方に優れるタイヤを形成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
《エチレン・α‐オレフィン共重合体(A)》
本発明の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)の主鎖部を形成するエチレン・α‐オレフィン共重合体(A)は、エチレンとα-オレフィンとの共重合体であり、エチレン・α‐オレフィン共重合体(A)を構成するα-オレフィンは、通常、炭素数が3~20のα-オレフィンであり、具体的には、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどの炭素原子数3~8のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。
【0023】
本発明に係るエチレン・α‐オレフィン共重合体(A)は、好ましくはエチレンから導かれる成分が39~50質量%、より好ましくは41~48質量%の範囲、α‐オレフィンから導かれる成分が50~61質量%、より好ましくは52~59質量%の範囲(但し、エチレンから導かれる成分とα‐オレフィンから導かれる成分の合計量を100質量%とする。)にある。
【0024】
本発明に係るエチレン・α‐オレフィン共重合体(A)は、好ましくは重量平均分子量(Mw)が2,000~14,000、より好ましくは2,200~13,500の範囲、数平均分子量(Mn)が1,400~7,000、より好ましくは1,650~6,800の範囲、および分子量分布(Mw/Mn)が1.4~2.1、より好ましくは1.5~2.0の範囲にある。
【0025】
上記好ましい範囲を満たすエチレン・α‐オレフィン共重合体(A)は、当該共重合体(A)を塗料に配合した際の塗装面の平滑性に優れる塗料が得られる。
本発明に係るエチレン・α‐オレフィン共重合体(A)のエチレンから導かれる成分量〔エチレン含有率(質量%)、Mnなどは、以下の方法で測定した。
【0026】
〈エチレン含有率(質量%)〉
13C-NMR法により、以下の装置及び条件を適用して、エチレン・α-オレフィン共重合体のエチレン含有率(質量%)を測定した。
【0027】
日本電子(株)製ECP500型核磁気共鳴装置を用い、溶媒としてオルトジクロロベンゼン/重ベンゼン(80/20容量%)混合溶媒、試料濃度55mg/0.6mL、測定温度120℃、観測核は13C(125MHz)、シークエンスはシングルパルスプロトンデカップリング、パルス幅は4.7μ秒(45°パルス)、繰り返し時間は5.5秒、積算回数は一万回以上、27.50ppmをケミカルシフトの基準値として測定した。
【0028】
エチレン含有率は上記のように測定された13C-NMRスペクトルから、G.J.Ray(Macromolecules,10,773(1977))、J.C.Randall(Macromolecules,15,353(1982))、K.Kimura(Polymer,25,4418(1984))らの報告に基づいて求めた。
【0029】
〈数平均分子量、重量平均分子量、分子量分布〉
本発明に係るエチレン・α‐オレフィン共重合体(A)の数平均分子量、重量平均分子量および分子量分布は、東ソー(株)製HLC‐8320GPCを用いて、以下のようにして測定した。分離カラムとして、TSKgel SuperMultiporeHZ-M(4本)を用い、カラム温度を40℃とし、移動相にはテトラヒドロフラン(富士フイルム和光純薬(株)製)を用いて、展開速度を0.35mL/分とし、試料濃度を5.5g/Lとし、試料注入量を20マイクロリットルとし、検出器として示差屈折率計を用いた。標準ポリエチレンとして、東ソー(株)製(PStQuick MP-M)のものを用いた。汎用校正の手順に従い、ポリスチレン分子量換算として重量平均分子量(Mw)並びに数平均分子量(Mn)を算出し、これらの値から分子量分布(Mw/Mn)を算出した。
【0030】
〈エチレン・α‐オレフィン共重合体(A)の製造方法〉
本発明に係るエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、種々公知の製造方法で製造し得るが、具体的には、例えば、特開昭57-123205号公報、特開2016-69406号公報などに記載の方法で製造し得る。
【0031】
《有機ケイ素化合物(B)》
本発明の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)のグラフト部を形成する不飽和基を1つ以上含有する有機ケイ素化合物(B)は、通常、炭素原子数が2ないし20の不飽和基を1つ以上含有する有機ケイ素化合物であり、具体的には、ビニルトリメトキシシラン(VTMOS)、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメチルシラン、ジエチルメチルビニルシラン、ジアセトキシエチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、エトキシジメチルビニルシラン、トリアセトキシビニルシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)ビニルシラン、トリフエニルビニルシラン、トリフエノキシビニルシランなどのモノビニルシラン、ジフエニルジビニルシラン、アリロキシジメチルビニルシランなどのようなポリビニルシランなどを例示することができる。
【0032】
<有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)>
本発明の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)は、上記エチレン・α‐オレフィン共重合体(A)に由来する主鎖部と、上記不飽和基を1つ以上含有する有機ケイ素化合物(B)に由来するグラフト部とを含むことを特徴とする有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)である。
【0033】
本発明の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)は、好ましくは、上記有機ケイ素化合物(B)に由来するグラフト部の質量が1%以上100%未満、より好ましくは3~50質量%〔主鎖部とグラフト部との合計量を100質量%とする。〕の範囲にある。
【0034】
本発明の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)における有機ケイ素化合物(B)に由来するグラフト量は、以下の方法で測定した。
ブルカー・バイオスピン(株)製、AVANCEIIIcryo-270型核磁気共鳴装置(270MHz)を用い、測定溶媒:重クロロホルム、測定温度:24.3℃、スペクトル幅:15.6ppm、パルス繰り返し時間:2.5秒、パルス幅:6.5μsecの測定条件下にて、1H-NMRスペクトルを測定し、グラフトされた有機ケイ素化合物(B)、例えば、ビニルトリメトキシシラン(VTMOS)のメトキシ基のピークの大きさを測定することで、グラフト量(グラフト率)を算出した。
【0035】
有機ケイ素化合物(B)に由来するグラフト部の質量が上記範囲にあると、樹脂との親和性及び添加したフィラー(シリカ等)との親和性の双方に優れる。
本発明の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)は、数平均分子量(Mn)が1,500~7,000、好ましくは、1,600~6,800、さらに好ましくは1,650~6,800の範囲、重量平均分子量(Mw)が2,400~13,000、好ましくは、2,500~12,500の範囲にある。また、分子量分布Mw/Mnが1.4~2.1、好ましくは、1.5~2.0の範囲にある。
【0036】
本発明の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)は、さらに、GPCにより求められる分子量Mが
5≦LogM≦6
で規定される範囲にピークをもつ成分として規定される高分子成分の含有量が0~0.3質量%であることが好ましい。
【0037】
なお、有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)に含まれる上記高分子量成分の測定は、東ソー(株)製HLC‐8320GPCのGPCワークステーションEcoSEC-WSの解析ソフトを用いて、ピーク面積、ピーク面積比率を算出し、(X)中の高分子量成分の含有量(質量%)を算出した。
【0038】
〈有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)の製造方法〉
本発明の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)は、本発明に係るエチレン・α‐オレフィン共重合体(A)と前記不飽和基を1つ以上含有する有機ケイ素化合物(B)をラジカル開始剤の存在下に反応させることにより製造することができる。
【0039】
有機ケイ素化合物(B)との反応は溶媒の存在下に実施することもできるし、溶媒の不存在下に実施することもできる。反応方法としては、たとえば加熱したエチレン・α‐オレフィン共重合体(A)に撹拌下に不飽和基を1つ以上含有する有機ケイ素化合物(B)およびラジカル開始剤を連続的にまたは間欠的に供給することにより反応させる方法を例示することができる。グラフト反応に供給される不飽和基を1つ以上含有する有機ケイ素化合物(B)の割合はエチレン・α‐オレフィン共重合体(A)100質量部に対して通常は1ないし150質量部、好ましくは1.2ないし120質量部の範囲であり、ラジカル開始剤の割合はエチレン・α‐オレフィン共重合体(A)100質量部に対して通常は0.04ないし5質量部、好ましくは0.1ないし1質量部の範囲である。反応の際の温度は120ないし200℃、好ましくは130ないし180℃の範囲であり、反応に要する時間は通常は30分ないし10時間、好ましくは1ないし5時間である。
【0040】
グラフト反応に使用されるラジカル開始剤として通常は有機過酸化物が使用され、とくにその半減期が1時間となる分解温度が100ないし180℃の範囲のものが好ましく、具体的には有機ペルオキシド、例えば、ジクミルペルオキシド(パークミルD)、ジ-tert-ブチルペルオキシド(パーブチルD)、1,1-ジ(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(パーヘキサC)、tert-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(パーブチルE)、ジ-tert-へキシルペルオキシド(パーへキシルZ)、t-へキシルペルオキシベンゾエート(パーへキシルZ)、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン(パーヘキサ25M)、tert-ブチルペルオキシベンゾエート(パーブチルZ)、tert-ブチルペルオキシイソプロピルモノカーボネート(パーブチルI)、が挙げられる(なお、括弧内の表示は何れも日油(株)社の製品名である)。
【0041】
<有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)の用途>
本発明の有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)は、潤滑油添加剤、塗料、接着剤、相溶化材などの用途に用いることにより、好適に使用し得る。
【0042】
《ジエン系ゴム》
本発明のゴム組成物に含まれる成分の一つであるジエン系ゴムは、主鎖に二重結合を有するものであれば特に限定されず、その具体例としては、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴム、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム(EPDM)、スチレン・イソプレンゴム、イソプレン・ブタジエンゴム、ニトリルゴム、水添ニトリルゴム等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよいが、2種以上のジエン系ゴムを併用した方が好ましい。
【0043】
これらジエン系ゴムの中でも、耐摩耗性が良好となり、加工性に優れるという観点から、芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴム、NR、BRを用いるのが好ましい。
本発明に係る芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴムとしては、例えば、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、スチレン・イソプレンゴム、スチレン・ブタジエン・イソプレンゴム(SBIR)等が挙げられ、中でも、SBRであるのが好ましい。
【0044】
これらジエン系ゴムの中でも、SBR単独あるいはSBRとBRとの混合物(組成物)が好ましく、SBR/BR=100/0~1/99(質量比)、より好ましくはSBR/BR=50/50~90/10(質量比)、さらに好ましくはSBR/BR=70/30~80/20(質量比)の範囲にある。
【0045】
上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴムは、末端がヒドロキシ基、ポリオルガノシロキサン基、カルボニル基、アミノ基等で変性されていてもよい。
更に、上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴムの重量平均分子量は特に限定されないが、加工性の観点から、10万~250万であるのが好ましく、30万~200万であるのがより好ましい。なお、芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴムの重量平均分子量(Mw)は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算により測定するものとする。
【0046】
上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴムは、加工性や耐摩耗性の観点から、芳香族ビニルを20~50質量%含むことが好ましく、共役ジエン中のビニル結合量を20~70質量%含むことがより好ましい。
【0047】
<タイヤ用ゴム組成物>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴムを含む上記ジエン系ゴム:100質量部に対し、上記有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)を1~30質量部、好ましくは2~20質量部含む。
【0048】
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)を上記範囲で含むことにより、優れたシリカ分散性すなわち低燃費性能を得ることができる。グラフト共重合体(X)がジエン系ゴム:100質量部に対し1質量部よりも小さい場合には、充分な低燃費性能を得ることができず、30重量部よりも大きい場合には、ゴム組成物としての硬度が高くなるために、タイヤとしての柔軟性が失われる。
【0049】
《無機充填剤》
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)に加え、無機充填剤を含むことが好ましい。
【0050】
本発明に係わる無機充填剤は、具体的には、シリカ(ホワイトカーボンとも呼称されている)、活性化炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、ケイ酸、クレー等が挙げられる。これらの無機充填剤は、1種単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
これら無機充填剤の中でも、ゴムマトリックスへの均一分散性と優れた補強性、および汎用性(コスト)という観点から、シリカからなる群より選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0052】
《シリカ》
本発明に係るシリカは特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシリカを用いることができる。
【0053】
本発明に係るシリカとしては、具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ、コロイダルシリカ等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
また、本発明に係るシリカは、シリカの凝集を抑制する観点から、CTAB吸着比表面積が50~300m2/gであるのが好ましく、80~250m2/gであるのがより好ましい。ここで、CTAB吸着比表面積は、シリカ表面への臭化n-ヘキサデシルトリメチルアンモニウムの吸着量をJIS K6217-3:2001「第3部:比表面積の求め方-CTAB吸着法」にしたがって測定した値である。
【0055】
本発明のタイヤ用ゴム組成物がシリカなどの無機充填剤を含む場合は、その含有量は、上記ジエン系ゴム100質量部に対して5~150質量部であるのが好ましく、10~120質量部であるのがより好ましく、20~100質量部であるのがさらに好ましい。
【0056】
《シランカップリング剤》
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)およびシリカなどの無機充填剤に加え、更にシランカップリング剤を含有するのが好ましい。本発明に係るシランカップリング剤は特に限定されず、タイヤ等の用途でゴム組成物に配合されている従来公知の任意のシランカップリング剤を用いることができる。
【0057】
本発明に係るシランカップリング剤としては、具体的には、例えば、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、ジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの1種または2種以上を事前にオリゴマー化させたものを用いてもよい。
【0058】
また、上記以外のシランカップリング剤としては、具体的には、例えば、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-[エトキシビス(3,6,9,12,15-ペンタオキサオクタコサン-1-イルオキシ)シリル]-1-プロパンチオールなどのメルカプト系シランカップリング剤;3-オクタノイルチオプロピルトリエトキシシランなどのチオカルボキシレート系シランカップリング剤;3-チオシアネートプロピルトリエトキシシランなどのチオシアネート系シランカップリング剤;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これらの1種または2種以上を事前にオリゴマー化させたものを用いてもよい。
【0059】
これらのうち、補強性改善効果の観点から、ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドおよび/またはビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドを使用することが好ましく、具体的には、例えば、Si69[ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド;エボニック・デグッサ社製]、Si75[ビス-(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド;エボニック・デグッサ社製]等が挙げられる。
【0060】
本発明のタイヤ用ゴム組成物が、上記シランカップリング剤を含む場合は、その含有量は、上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対して1質量部以上であるのが好ましく、1~10質量部であるのがより好ましい。
【0061】
また、上記シランカップリング剤の含有量は、上記シリカ100質量部に対して0.1~20質量部であるのが好ましく、0.5~15質量部であるのがより好ましい。
《カーボンブラック》
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、更にカーボンブラックを含有するのが好ましい。
【0062】
本発明に係るカーボンブラックとしては、具体的には、例えば、SAF、ISAF、HAF、FEF、GPE、SRF等のファーネスカーボンブラックが挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
また、本発明に係るカーボンブラックは、タイヤ用ゴム組成物の混合時の加工性等の観点から、窒素吸着比表面積(N2SA)が10~300m2/gであるのが好ましく、20~200m2/gであるのがより好ましい。
【0064】
ここで、N2SAは、カーボンブラック表面への窒素吸着量をJIS K 6217-2:2001「第2部:比表面積の求め方-窒素吸着法-単点法」にしたがって測定した値である。
【0065】
本発明のタイヤ用ゴム組成物が、上記カーボンブラックを含む場合は、その含有量は、上記芳香族ビニル-共役ジエン共重合ゴムを含むジエン系ゴム100質量部に対して、1~100質量部であるのが好ましく、5~80質量部であるのがより好ましい。
【0066】
《その他の成分》
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、上記成分に加え、以外に、中空ポリマーなどの化学発泡剤;硫黄等の加硫剤;スルフェンアミド系、グアニジン系、チアゾール系、チオウレア系、チウラム系などの加硫促進剤;酸化亜鉛、ステアリン酸などの加硫促進助剤;ワックス;アロマオイル;パラフェニレンジアミン類(例えば、N,N′-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン、N-1,3-ジメチルブチル-N′-フェニル-p-フェニレンジアミン等)、ケトン-アミン縮合物(例えば、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等)などのアミン系老化防止剤;可塑剤;等のタイヤ用のゴム組成物に一般的に用いられる添加剤を配合することができる。
【0067】
これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。例えば、ジエン系ゴム100質量部に対して、硫黄は0.5~5質量部、加硫促進剤は0.1~5質量部、加硫促進助剤は0.1~10質量部、老化防止剤は0.5~5質量部、ワックスは1~10質量部、アロマオイルは5~30質量部、それぞれ配合してもよい。
【0068】
<タイヤ用ゴム組成物の製造方法>
本発明のタイヤ用ゴム組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上述した各成分を、公知の方法、装置(例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、ロール等)を用いて、混練する方法等が挙げられる。
【0069】
また、本発明のタイヤ用ゴム組成物は、従来公知の加硫または架橋条件で加硫または架橋することができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例で用いたエチレン・α‐オレフィン共重合体(A)、有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)、ジエン系ゴムなどを以下に示す。
【0071】
〔エチレン・プロピレン共重合体(A-1)〕
エチレン・α‐オレフィン共重合体(A)〔表1では、「(A)」と表示〕として、Mwが12,500、Mnが6,600、Mw/Mnが1.9、エチレン含量44.8質量%のエチレン・プロピレン共重合体(A-1)を用いた。
【0072】
《有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)》
有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)〔表1では、「(X)」と表示〕として、下記の製造方法で得た有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐1)〔以下、「(X‐1)」と略称する場合がある。〕を用いた。
【0073】
〔有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐1)の製造〕
上記エチレン・プロピレン共重合体(A‐1):181g、不飽和基を1つ以上含有する有機ケイ素化合物(B)として、ビニルトリメトキシシラン(VTMOS)25.5gを一リットルのガラス製反応容器に入れ、系内を窒素置換した後、密閉した。ダブルアンカー翼で200rpmで攪拌しながら、温度を160℃まで昇温した。ジクミルパーオキサイド(日油(株)製、製品名:パークミルD)1.02gをトルエンに溶解させた溶液50mLを、400rpmで攪拌しながら60分かけて滴下フィードした。滴下フィード完了後、さらに90分攪拌を続けた。その後、攪拌回転数を300rpmに下げて、50℃まで冷却した。反応器を脱圧、開放し、反応溶液を取り出し、エバポレーターで溶媒のトルエン、VTMOSを減圧留去した。その後、90℃で真空乾燥させることにより、有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐1)を得た。
【0074】
有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐1)のVTMOSのグラフト量は11.1質量%であった。
また、得られた有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐1)は、重量平均分子量(Mw)が11,600、数平均分子量(Mn)が6,100、分子量分布(Mw/Mn)が1.9であった。
【0075】
〔エチレン・α‐オレフィン共重合体(A-2)〕
エチレン・α‐オレフィン共重合体(A)として、Mwが2,700、Mnが1,800、Mw/Mnが1.5、エチレン含量42.9質量%のエチレン・プロピレン共重合体(A-2)を用いた。
【0076】
《有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐2)》
有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)として、下記の製造方法で得た有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐2)を用いた。
【0077】
〔有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐2)の製造〕
上記エチレン・プロピレン共重合体(A‐2):177g、不飽和基を1つ以上含有する有機ケイ素化合物(B)として、ビニルトリメトキシシラン(VTMOS)25.5gを一リットルのガラス製反応容器に入れ、系内を窒素置換した後、密閉した。ダブルアンカー翼で200rpmで攪拌しながら、温度を160℃まで昇温した。ジクミルパーオキサイド(日油(株)製、製品名:パークミルD)1.02gをトルエンに溶解させた溶液50mLを、400rpmで攪拌しながら60分かけて滴下フィードした。滴下フィード完了後、さらに90分攪拌を続けた。その後、攪拌回転数を300rpmに下げて、50℃まで冷却した。反応器を脱圧、開放し、反応溶液を取り出し、エバポレーターで溶媒のトルエン、VTMOSを減圧留去した。その後、90℃で真空乾燥させることにより、有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐2)を得た。
【0078】
有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐2)のVTMOSのグラフト量は11.9質量%であった。
また、得られた有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐2)は、重量平均分子量(Mw)が2,600、数平均分子量(Mn)が1,650、分子量分布(Mw/Mn)が1.6であった。
【0079】
〔エチレン・α‐オレフィン共重合体(A-3)〕
エチレン・α‐オレフィン共重合体(A)として、Mwが4,800、Mnが2,800、Mw/Mnが1.7、エチレン含量41.3質量%のエチレン・プロピレン共重合体(A-3)を用いた。
【0080】
《有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐3)》
有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)として、下記の製造方法で得た有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐3)を用いた。
【0081】
〔有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐3)の製造〕
上記エチレン・プロピレン共重合体(A‐3):177g、不飽和基を1つ以上含有する有機ケイ素化合物(B)として、ビニルトリメトキシシラン(VTMOS)25.5gを一リットルのガラス製反応容器に入れ、系内を窒素置換した後、密閉した。ダブルアンカー翼で200rpmで攪拌しながら、温度を160℃まで昇温した。ジクミルパーオキサイド(日油(株)製、製品名:パークミルD)1.02gをトルエンに溶解させた溶液50mLを、400rpmで攪拌しながら60分かけて滴下フィードした。滴下フィード完了後、さらに90分攪拌を続けた。その後、攪拌回転数を300rpmに下げて、50℃まで冷却した。反応器を脱圧、開放し、反応溶液を取り出し、エバポレーターで溶媒のトルエン、VTMOSを減圧留去した。その後、90℃で真空乾燥させることにより、有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐3)を得た。
【0082】
有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐3)のVTMOSのグラフト量は12.1量%であった。
また、得られた有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐3)は、重量平均分子量(Mw)が4,600、数平均分子量(Mn)が2,750、分子量分布(Mw/Mn)が1.7であった。
【0083】
《有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐4)》
有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)として、下記の製造方法で得た有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐4)を用いた。
【0084】
〔有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐4)の製造〕
上記エチレン・プロピレン共重合体(A‐1):181g、不飽和基を1つ以上含有する有機ケイ素化合物(B)として、ビニルトリメトキシシラン(VTMOS)25.5gを一リットルのガラス製反応容器に入れ、系内を窒素置換した後、密閉した。ダブルアンカー翼で200rpmで攪拌しながら、温度を160℃まで昇温した。ジクミルパーオキサイド(日油(株)製、製品名:パークミルD)10.01gをトルエンに溶解させた溶液50mLを、400rpmで攪拌しながら60分かけて滴下フィードした。滴下フィード完了後、さらに90分攪拌を続けた。その後、攪拌回転数を300rpmに下げて、50℃まで冷却した。反応器を脱圧、開放し、反応溶液を取り出し、エバポレーターで溶媒のトルエン、VTMOSを減圧留去した。その後、90℃で真空乾燥させることにより、有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐4)を得た。
【0085】
有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐4)のVTMOSのグラフト量は10.9質量%であった。
また、得られた有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐4)は、GPC分子量測定において、2峰性が確認され、1峰目は、重量平均分子量(Mw)が14,600、数平均分子量(Mn)が6,300、分子量分布(Mw/Mn)が2.3であった。2峰目は、重量平均分子量(Mw)が458,100、数平均分子量(Mn)が412,700、分子量分布(Mw/Mn)が1.1であった。
【0086】
得られた有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)の物性は以下の方法で観察した。
〔表面観察〕
縦26mm×横26mmのガラス板2枚に、有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐1)をそれぞれ0.327gおよび0.109gを塗布(それぞれ膜厚0.6mmおよび0.2mmに相当、密度は0.838g/cm3とした。)し、ブツの有無を目視で観察した。
【0087】
〔有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)の高分子量成分の測定〕
上記記載の方法で、有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X)に含まれる高分子量成分を測定した。
【0088】
〔実施例1~4〕
上記記載の製造方法で得られた有機ケイ素化合物グラフト共重合体(X‐1)、(X‐2)、(X‐3)および(X‐4)を上記記載の方法で表面観察を行った結果、いずれもブツはなかった。一方、塗布する際に、(X‐1)、(X‐2)および(X‐3)は塗膜(0.6mm厚)に入る気泡がそれぞれ、0個、10個、90個で100個より少なかった(塗布性良好)のに対し、(X‐4)は塗膜(0.6mm厚)に入る気泡が150個で、100個以上250個未満(塗布性やや良い)であった。
【0089】
なお、表1では、塗布性については、評価基準を以下のように表した。
良好:塗膜(0.6mm厚)中に入る気泡が0~100個未満。
やや良い:塗膜(0.6mm厚)中に入る気泡が100個以上250個未満
不良:塗膜(0.6mm厚)中に入る気泡が250個以上
結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
《ジエン系ゴム》
(1)ジエン系ゴム-1:スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、Nipol(登録商標)NS116(日本ゼオン株式会社製);[スチレン含量=21%、ムーニー粘度=45 比重0.93]
(2)ジエン系ゴム-2:ブタジエンゴム(BR) Nipol(登録商標)1220(日本ゼオン株式会社製);[ムーニー粘度;44 比重;0.90]
《配合剤》
(1)亜鉛華:酸化亜鉛2種
(2)アロマ系プロセスオイル:ダイアナプロセス(登録商標)AH-16(出光興産製)
(3)湿式シリカ:ニプシル(商標)VN3(東ソー・シリカ株式会社)
(4)カーボンブラック:旭#80(旭カーボン株式会社)
(5)シランカップリング剤:シラノグラン(商標)Si69(株式会社テクノプレニードヒダ製)
(6)加硫促進剤(CBS):サンセラー(商標)CM(三新化学工業株式会社)
(7)加硫促進剤(DPG):サンセラー(商標)D-G(三新化学工業株式会社)
実施例および比較例で得られたゴム組成物等の物性は、以下の測定方法で測定した。
(1)圧縮永久ひずみ(CS)
JIS K 6262に従い、直径29mm、高さ(厚さ)12.5mmの架橋体を試験片とした。荷重をかける前の試験片高さ(12.5mm)に対して25%圧縮し、スペーサーごと70℃のギヤーオーブン中にセットして22時間熱処理した。次いで試験片を取出し、室温で30分間放置後、試験片の高さを測定し下記の計算式で圧縮永久ひずみ(%)を算出した。
【0091】
圧縮永久ひずみ(0℃)は、0℃の恒温槽中にセットして22時間処理した。次いで試験片を恒温槽内で取出し、30分放置後、試験片の高さを測定し以下の計算式で圧縮永久ひずみ(%)を算出した。
【0092】
圧縮永久ひずみ(%)={(t0-t1)/(t0-t2)}×100
t0:試験片の試験前の高さ
t1:試験片を前記条件で処理し室温で30分間放置した後の高さ
t2:試験片の測定金型に取り付けた状態での高さ
(2)動的粘弾性試験
1mm厚の加硫ゴムシートについて、レオメトリック社製の粘弾性試験機(型式RDS-2)を用いて、測定温度―70~100℃、周波数10Hzおよび歪率1.0%および昇温速度4℃/分の条件で損失正接tanδ(振動減衰性の指標)の温度依存性を測定した。0℃におけるゴム組成物のtanδ(減衰率)をタイヤの制動性能の指標とした。0℃におけるtanδが大きいほど制動性能が良くなる。また60℃におけるゴム組成物のtanδ(減衰率)を車の燃費の指標とした。60℃におけるtanδが小さいほど燃費が良くなる。
【0093】
〔実施例5〕
ジエン系ゴム―1、ジエン系ゴム-2、グラフト共重合体(X‐1)、シリカ、シランカップリング剤を表2に記載の分量で、1.7リットル密閉式バンバリー型ミキサーを用いて2分間混合した後、カーボンブラック、アロマ系オイル、亜鉛華、ステアリン酸を投入して2分間混合してマスターバッチを作成した。このマスターバッチと加硫促進剤、硫黄を前後ロール表面温度が50℃の8インチオープンロールで混合したゴム組成物を10×10×0.1cmの金型中で170℃×10分間プレス加硫して、加硫したタイヤ用ゴム組成物を得た。得られたタイヤ用ゴム組成物を用いて、動的粘弾性試験を行った。また、170℃で15分間の条件で架橋を行い、厚み12.5mm、直径29mmの加硫したゴム組成物を得た。得られたゴム組成物を用いて、圧縮永久ひずみの測定を行った。得られた加硫したタイヤ用ゴム組成物の物性を前記記載の方法で測定した。評価結果を表2に示す。
【0094】
〔実施例6〕
実施例5で用いたタイヤ用ゴム組成物に替えて、表2に記載の配合量にする以外は実施例5と同様に行い加硫したタイヤ用ゴム組成物を得た。得られた加硫したタイヤ用ゴム組成物の物性を前記記載の方法で測定した。評価結果を表2に示す。
【0095】
〔実施例7〕
実施例5で用いたゴタイヤ用ム組成物に替えて、表2に記載の配合量にする以外は実施例5と同様に行い加硫したタイヤ用ゴム組成物を得た。得られた加硫したタイヤ用ゴム組成物の物性を前記記載の方法で測定した。評価結果を表2に示す。
【0096】
〔比較例1〕
実施例1で用いたグラフト共重合体(X‐1)を用いないこと以外は、実施例1と同様に行い、加硫したゴム組成物を得た。得られた加硫したゴム組成物の物性を前記記載の方法で測定した。評価結果を表2に示す。
【0097】